説明

繊維集合体

【課題】 有機溶媒が加熱された場合であっても溶解することなく、性能を発揮することができる繊維集合体を提供すること。
【解決手段】 本発明の繊維集合体は、有機溶媒に可溶な第1ポリマーが、前記有機溶媒に不溶な第2ポリマーによって被覆された繊維からなる繊維集合体である。前記第2ポリマーが水に不溶であるのが好ましい。特には、第2ポリマーとして、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はポリビニルアルコール(PVA)であるのが好ましい。本発明の繊維集合体は電気二重層キャパシタ用セパレータ、イオン伝導膜用基材として好適に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維集合体に関する。特には、電気二重層キャパシタ用セパレータ、イオン伝導膜用基材として使用できる繊維集合体に関する。
【背景技術】
【0002】
有機溶媒に溶解した紡糸液を乾式紡糸して得た繊維を含む不織布などの繊維集合体を、有機溶媒と接触させると、前記繊維が溶解し、繊維集合体の形状を維持できないため、使用用途が限定されるという問題があった。
【0003】
例えば、前述のような繊維集合体を電気二重層キャパシタ用のセパレータとして使用しようとしても、電気二重層キャパシタの電解液は有機溶媒からなるため、繊維集合体が有機溶媒に溶解してしまい、セパレータとしての働きをなさない場合があった。
【0004】
そのため、本願出願人は繊維集合体に対して不溶化処理することを提案した(特許文献1)。具体的には、不溶化処理として、熱処理、電子線照射、ガンマ線照射などを例示した。しかしながら、このような不溶化処理によっては、十分に不溶化できず、有機溶媒によって溶解してしまう場合があることが判明した。例えば、有機溶媒を電解液とする電気二重層キャパシタは水分の存在を嫌うため、電極とセパレータとを積層した電極群を電解液に浸漬した状態、又は電極群のセパレータに電解液を含浸させた状態で加熱し、水分を除去するために加熱工程を経る場合があるが、この加熱工程でセパレータが溶解してしまい、セパレータとしての働きをなさないことが判明した。
【0005】
このように電気二重層キャパシタ用のセパレータとして使用する場合以外にも、繊維集合体に有機溶媒に溶解した樹脂を含浸した後、乾燥して有機溶媒を除去する場合にも同様の問題が生じていた。例えば、イオン伝導膜を補強するための基材(繊維集合体)に、有機溶媒に溶解したイオン伝導樹脂を含浸した後、加熱乾燥して有機溶媒を除去し、繊維集合体で補強したイオン伝導膜を製造する場合に、繊維集合体が溶解してしまい、補強作用をなさない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−266311号公報(特許請求の範囲、段落番号0022、0035など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そのため、本願発明者らは有機溶媒に不溶なポリマーからなる繊維の集合体から構成されていれば、前述のような問題は生じないと考えた。例えば、有機溶媒に不溶なカルボキシメチルセルロース又はポリビニルアルコールからなる繊維の集合体から構成すれば、前述のような問題は生じないと考えた。しかしながら、カルボキシメチルセルロース自体から繊維化することができず、繊維化するためには紡糸助剤が必要で、しかも生産性が非常に悪いため実用的はなかった。また、ポリビニルアルコールの繊維化は可能であるものの、紡糸中に繊維が溶解しやすいため、生産性が悪く、実用的ではなかった。
【0008】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、有機溶媒が加熱された場合であっても溶解することなく、性能を発揮することができる繊維集合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1にかかる発明は、「有機溶媒に可溶な第1ポリマーが、前記有機溶媒に不溶な第2ポリマーによって被覆された繊維からなる繊維集合体。」である。
【0010】
本発明の請求項2にかかる発明は、「前記第2ポリマーが水に不溶であることを特徴とする、請求項1記載の繊維集合体。」である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1にかかる発明は、有機溶媒に不溶な第2ポリマーによって有機溶媒に可溶な第1ポリマーが被覆されているため、有機溶媒が加熱された場合であっても、溶解することなく形態を維持し、繊維集合体の性能を発揮することができる。
【0012】
請求項2にかかる発明は、第2ポリマーが水に不溶であるため、耐水性の高いものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の繊維集合体を構成する繊維は、有機溶媒に可溶な第1ポリマーが、有機溶媒が加熱された場合であっても、溶解することなく形態を維持できるように、有機溶媒に不溶な第2ポリマーによって被覆されている。
【0014】
この第1ポリマーは有機溶媒に溶解した紡糸液を乾式紡糸して繊維を得ることができるように、有機溶媒に可溶である。このような第1ポリマーは有機溶媒に可溶である限り、特に限定するものではないが、例えば、ポリエステル、アクリル系樹脂(例えば、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル共重合体など)、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、フッ素系樹脂(例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン共重合体など)、ポリウレタン、パラ又はメタ系アラミドなどを挙げることができる。なお、第1ポリマーは1種類である必要はなく、2種類以上が混在していても良い。
【0015】
有機溶媒は第1ポリマーの種類によって異なり、第1ポリマーを可溶であれば良く、特に限定するものではないが、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、アセトニトリル、ギ酸、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、四塩化炭素、塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエタン、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、メチルエチルケトンなどを挙げることができる。なお、有機溶媒は1種である必要はなく、2種以上の混合溶媒であっても良い。
【0016】
本発明における「有機溶媒に可溶」とは、ポリマーをポリマー質量の100倍量の有機溶媒に投入し、100℃以下の沸点をもつ有機溶媒の場合には(沸点−10)℃で、100℃を超える沸点をもつ有機溶媒の場合には100℃で、60分間加熱し続けた時に、質量が70%以上減少することを意味する。
【0017】
本発明においては、前述のような第1ポリマーが可溶である有機溶媒に不溶な第2ポリマーによって被覆された繊維からなることによって、有機溶媒が加熱された場合であっても、溶解することなく繊維形態を維持できる。
【0018】
このような第2ポリマーは有機溶媒に不溶である限り、特に限定するものではないが、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)などを挙げることができる。なお、第2ポリマーは1種類である必要はなく、2種類以上が混在していても良い。
【0019】
第2ポリマーは耐有機溶媒性に優れているばかりでなく、耐水性にも優れているように、第2ポリマーは水に不溶であるのが好ましい。前述のようなCMCやPVAは水溶性であるため、水に不溶であるように処理するのが好ましい。例えば、CMCの場合には、カルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩であるのが好ましい。このカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩は加熱によってアンモニアがはずれ、水に不溶となるためである。他方、PVAの場合には、架橋剤によって架橋させ、水に不溶とするのが好ましい。このPVAの架橋剤は特に限定するものではないが、例えば、無水マレイン酸コポリマーを挙げることができる。なお、PVAとしては、不溶化しやすいように、完全けん化したPVAであるのが好ましい。
【0020】
本発明における「有機溶媒に不溶」とは、ポリマーをポリマー質量の100倍量の有機溶媒に投入し、100℃以下の沸点をもつ有機溶媒の場合には(沸点−10)℃で、100℃を超える沸点をもつ有機溶媒の場合には100℃で、60分間加熱し続けた時に、質量が70%以上残留することを意味する。また、「水に不溶」とは、ポリマーをポリマー質量の100倍量の水に投入し、90℃で60分間加熱し続けた時に、質量が70%以上残留することを意味する。
【0021】
本発明の繊維集合体を構成する繊維は第1ポリマーが第2ポリマーによって被覆された状態にあるが、第1ポリマーが第2ポリマーによって完全に被覆されていても、第2ポリマーによって部分的に被覆されていても良い。しかしながら、第1ポリマーが有機溶媒によって溶解しないように、完全に被覆され、第1ポリマーが表面に露出していないのが好ましい。なお、海島繊維のように、2つ以上の第1ポリマーを1つの第2ポリマーで被覆していても良い。
【0022】
本発明の繊維集合体を構成する繊維の平均繊維径は特に限定するものではないが、平均繊維径が小さいと、分離性能、液体保持性能、払拭性能、隠蔽性能、絶縁性能、或いは柔軟性など、様々な性能に優れているため、10nm〜2μmであるのが好ましい。なお、「平均繊維径」は50点における繊維径の算術平均値をいい、「繊維径」は繊維集合体の電子顕微鏡写真を基に算出される値をいう。
【0023】
本発明の繊維集合体は前述のような繊維からなるが、その集合状態は繊維集合体の使用用途によって異なるため、特に限定しない。例えば、不織布などの二次元的集合状態、円柱、中空円柱などの三次元的集合状態であることができる。
【0024】
本発明の繊維集合体の製造方法は、特に限定するものではないが、例えば、第1ポリマーを有機溶媒に溶解させた紡糸液を乾式紡糸して得た繊維からなる繊維集合体に対して、第2ポリマーを溶解させたコーティング液を付与し、前記第1ポリマーからなる繊維を第2ポリマーで被覆して製造することができる。このように、乾式紡糸して得た繊維の集合体を第2ポリマーで被覆しているため、生産性良く製造することのできる、実用的な繊維集合体である。
【0025】
好適である細い繊維を紡糸できる乾式紡糸法として、公知の静電紡糸法を採用することができる。つまり、この静電紡糸法は、紡糸液供給部から紡糸空間へ供給した、第1ポリマーを有機溶媒に溶解させた紡糸液に対して電界を作用させることにより、紡糸液を繊維化する方法である。この紡糸空間への紡糸液の供給は、例えば、1本又は2本以上のノズルで行うことができ、繊維が均一に分散するように、ノズルを往復移動させるのが好ましい。特に、ノズルを長円状に循環移動させると、ノズルの移動速度を一定にできるため繊維を均一に分散させることができる(例えば、特開2006−112023号公報に開示の方法)。
【0026】
なお、電界は、紡糸液供給部側(例えば、紡糸液供給部自体、紡糸液供給部への紡糸液の供給路)と、紡糸液供給部と対向して位置する捕集体側(例えば、捕集体自体、捕集体の裏面側に位置する対向電極)との間に電位差を設けることによって作用させることができる。また、捕集体として平板状のものを使用すれば、第1ポリマー繊維からなる不織布を形成することができ、捕集体として立体状のものを使用すれば、捕集体の形状に相当する中空部を有する、第1ポリマー繊維からなる繊維集合体を形成することができる。更に、任意の捕集体により捕集した後に、圧縮するなどして成形すれば、所望の形状を有する、第1ポリマー繊維からなる繊維集合体を形成することができる。
【0027】
なお、第1ポリマーからなる繊維の集合体に対して、第2ポリマーを溶解させたコーティング液を付与するが、第1ポリマーはコーティング液の溶媒によって溶解しないものを使用する。前述の通り、第2ポリマーとしてCMCやPVAが好ましく、これら第2ポリマーは水に可溶であるため、第1ポリマーは水に不溶であるのが好ましい。
【0028】
このように形成した第1ポリマーからなる繊維の集合体に対して、第2ポリマーを溶解させたコーティング液を付与し、第1ポリマーからなる繊維を第2ポリマーで被覆した繊維の集合体を製造することができる。
【0029】
このコーティング液の粘度が高いと、第2ポリマーの皮膜を形成しやすいため、繊維集合体の多孔性を損ないやすい傾向があり、他方で、粘度が低いと、第2ポリマーで第1ポリマーの繊維を十分に被覆しにくい傾向があるため、コーティング液の粘度は1〜500mPa・sであるのが好ましく、1〜100mPa・sであるのがより好ましい。なお、この「粘度」は粘弾性測定装置(HAAKE社製RheoStress6000)を用いて測定した、剪断速度100(s−1)の粘度をいう。
【0030】
なお、第2ポリマーを溶解させたコーティング液の付与量は特に限定するものではないが、第1ポリマーからなる繊維の質量に対して、5〜50%であるのが好ましい。5%よりも少ないと、第2ポリマーで第1ポリマー繊維を十分に被覆することができず、有機溶媒によって溶解しやすい傾向があり、50%を超えると、第1ポリマー繊維の集合体の空隙を埋めてしまい、多孔性の繊維集合体を形成することが困難になる傾向があるためで、より好ましくは10%〜30%である。
【0031】
また、第2ポリマーとして好適であるCMCやPVAは水溶性であり、溶媒として水を使用する場合が多いが、第1ポリマーからなる繊維の濡れ性が悪く、第1ポリマーからなる繊維を十分に第2ポリマーで被覆できない可能性がある場合には、第1ポリマーからなる繊維の濡れ性を良くするために、第2ポリマーを溶解させる溶媒としてアルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなど)を添加するのが好ましい。なお、第1ポリマーがアルコールで膨潤しやすい場合もあるため、第1ポリマーの種類によって、アルコールの添加量は適宜調節する。例えば、第1ポリマーがポリエーテルスルホンの場合、アルコールで膨潤しやすいため、アルコールの添加量は溶媒全体の15〜30vol%であるのが好ましい。
【0032】
コーティング液の第1ポリマーからなる繊維の集合体への付与方法は特に限定するものではないが、例えば、コーティング液中に第1ポリマーからなる繊維の集合体を浸漬する方法、第1ポリマーからなる繊維の集合体にコーティング液を塗布又は散布する方法、を挙げることができる。
【0033】
なお、コーティング液を構成する第2ポリマーが水に不溶となるように不溶化処理をするのが好ましい。この不溶化処理として、熱処理、電子線照射、ガンマ線照射などを例示できるが、前述のようなカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩、PVAに架橋剤(例えば、無水マレイン酸コポリマー)を添加した場合には、熱処理によって簡単に不溶化できる。
【0034】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0035】
(実施例1)
分子量50万のポリアクリロニトリル(Aldrich製、第1ポリマー)を、ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させ、ポリマー濃度が10mass%の紡糸液を調製した。
【0036】
次いで、この紡糸液を用いて、静電紡糸法により紡糸し、続いて150℃のオーブン中で30分間の熱処理を行い、ポリアクリロニトリル繊維からなる不織布(目付:5g/m、平均繊維径:320nm、厚さ:23μm)を作製した。なお、静電紡糸は紡糸液供給部として金属製ノズル1本を用い、捕集体として金属板を用いて、次の条件で実施した。
【0037】
吐出量:1g/hr
ノズルと捕集体表面との距離:10cm
印加電圧:+8kV
紡糸空間の雰囲気:温度25℃、相対湿度25%
【0038】
別途、カルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩(ダイセル化学工業製、DN−10L)を水に溶解させ、1mass%水溶液(粘度:20mPa・s)を調製した。
【0039】
続いて、前記ポリアクリロニトリル繊維不織布に、上記CMC水溶液を含浸した後、160℃で15分間の熱処理を実施してCMCを不溶化し、ポリアクリロニトリルがCMCによって完全に被覆された繊維からなる不織布(平均繊維径:350nm、厚さ:20μm)を得た。なお、CMC質量のポリアクリロニトリル質量に対する比率は15%であった。
【0040】
(耐有機溶媒性の評価)
前記不織布を直径25mmの円形に裁断して試料を採取した後、(1)キャパシタ用電解液である、テトラエチルアンモニウム・テトラフルオロボーレイトをプロピレンカーボネートに溶解させたもの(富山薬品工業製、LIPASTE−P/EAFIN)に浸漬した状態で、150℃で10分間の熱処理、(2)N,N−ジメチルホルムアミドに浸漬した状態で、80℃で10分間の熱処理、又は(3)N−メチルピロリドンに浸漬した状態で、80℃で10分間の熱処理、を行った。この時、電解液への浸漬前と熱処理後の試料の大きさの変化から、耐有機溶媒性を評価した。その結果、前記不織布は(1)〜(3)のいずれの場合であっても、浸漬前と熱処理後で大きさの変化のない、耐有機溶媒性に優れるものであった。
【0041】
(耐水性の評価)
前記不織布を10mm角に裁断して試料を採取した後、温度25℃、相対湿度50%の雰囲気中に15時間保持した後、質量(M1)を測定した。続いて、100℃のオーブンで30分間乾燥した後に質量(M2)を測定した。そして、乾燥前後の質量変化(ΔM=M1−M2)から含水率(=(ΔM/M1)×100、単位:%)を求めたところ、含水率は0.93%であった。
【0042】
(実施例2)
実施例1と同様にして、ポリアクリロニトリル繊維からなる不織布(目付:5g/m、平均繊維径:320nm、厚さ:23μm)を作製した。
【0043】
別途、完全けん化型ポリビニルアルコール(重合度1000、和光純薬製)と、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体(ISP製AN−119)とを質量比4:1で含む、1mass%水溶液(粘度:2mPa・s)を調製した。
【0044】
続いて、前記ポリアクリロニトリル繊維不織布に、上記PVA水溶液を含浸した後、160℃で30分間の熱処理を実施してPVAを不溶化し、ポリアクリロニトリルがPVAによって完全に被覆された繊維からなる不織布(平均繊維径:340nm、厚さ:20μm)を得た。なお、PVA質量のポリアクリロニトリル質量に対する比率は10%であった。
【0045】
なお、この不織布の耐有機溶媒性を実施例1と同様に評価したところ、前記不織布は(1)〜(3)のいずれの場合であっても、浸漬前と熱処理後で大きさの変化のない、耐有機溶媒性に優れるものであった。
【0046】
また、この不織布の耐水性を実施例1と同様に評価したところ、含水率は0.48%であった。
【0047】
(実施例3)
分子量5万のポリエーテルスルホン(住友化学製、第1ポリマー)を、ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させ、ポリマー濃度が25mass%の紡糸液を調製した。
【0048】
次いで、この紡糸液を用いて、静電紡糸法により紡糸し、続いて180℃のオーブン中で30分間の熱処理を行い、ポリエーテルスルホン繊維からなる不織布(目付:5g/m、平均繊維径:520nm、厚さ:17μm)を作製した。なお、静電紡糸は紡糸液供給部として金属製ノズル1本を用い、捕集体として金属板を用いて、次の条件で実施した。
【0049】
吐出量:1g/hr
ノズルと捕集体表面との距離:10cm
印加電圧:+12kV
紡糸空間の雰囲気:温度25℃、相対湿度20%
【0050】
別途、カルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩(ダイセル化学工業製、DN−10L)を水:イソプロパノール=8:2(体積比)からなる混合溶媒に溶解させ、1mass%溶液(粘度:21mPa・s)を調製した。
【0051】
続いて、前記ポリエーテルスルホン繊維不織布に、上記CMC溶液を含浸した後、160℃で15分間の熱処理を実施してCMCを不溶化し、ポリエーテルスルホンがCMCによって完全に被覆された繊維からなる不織布(平均繊維径:550nm、厚さ:16μm)を得た。なお、CMC質量のポリエーテルスルホン質量に対する比率は14%であった。
【0052】
なお、この不織布の耐有機溶媒性を実施例1と同様に評価したところ、前記不織布は(1)〜(3)のいずれの場合であっても、浸漬前と熱処理後で大きさの変化のない、耐有機溶媒性に優れるものであった。
【0053】
また、この不織布の耐水性を実施例1と同様に評価したところ、含水率は0.82%であった。
【0054】
(実施例4)
実施例3と同様にして、ポリエーテルスルホン繊維からなる不織布(目付:5g/m、平均繊維径:520nm、厚さ:17μm)を作製した。
【0055】
別途、完全けん化型ポリビニルアルコール(重合度1000、和光純薬製)と、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体(ISP製AN−119)とを質量比4:1で含む、濃度1mass%の溶液(溶媒は、水:イソプロパノール=8:2(体積比)、粘度:2mPa・s)を調製した。
【0056】
続いて、前記ポリエーテルスルホン繊維不織布に、上記PVA溶液を含浸した後、160℃で30分間の熱処理を実施してPVAを不溶化し、ポリエーテルスルホンがPVAによって完全に被覆された繊維からなる不織布(平均繊維径:550nm、厚さ:16μm)を得た。なお、PVA質量のポリエーテルスルホン質量に対する比率は12%であった。
【0057】
なお、この不織布の耐有機溶媒性を実施例1と同様に評価したところ、前記不織布は(1)〜(3)のいずれの場合であっても、浸漬前と熱処理後で大きさの変化のない、耐有機溶媒性に優れるものであった。
【0058】
また、この不織布の耐水性を実施例1と同様に評価したところ、含水率は0.77%であった。
【0059】
(比較例1)
実施例1と同様にして作製したポリアクリロニトリル繊維からなる不織布(目付:5g/m、平均繊維径:320nm、厚さ:23μm)の耐有機溶媒性を実施例1と同様に評価したところ、前記不織布は(1)〜(3)のいずれの場合も、熱処理後に溶解してしまい、原形をとどめていなかった。
【0060】
(比較例2)
実施例3と同様にして作製したポリエーテルスルホン繊維からなる不織布(目付:5g/m、平均繊維径:520nm、厚さ:17μm)の耐有機溶媒性を実施例1と同様に評価したところ、前記不織布は(1)〜(3)のいずれの場合も、熱処理後に溶解してしまい、原形をとどめていなかった。
【0061】
(比較例3)
実施例1と同様にして作成したポリアクリロニトリル繊維からなる不織布(目付:5g/m、平均繊維径:320nm、厚さ:23μm)に、210℃で1分間の熱処理を行い、不溶化処理を行った。この不溶化処理を行った不織布の耐有機溶媒性を実施例1と同様に評価したところ、前記不織布は(1)〜(3)のいずれの場合も、熱処理後に溶解してしまい、原形をとどめていなかった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の繊維集合体は耐有機溶媒性を必要とする用途に使用することができる。特には、電気二重層キャパシタ用セパレータ、イオン伝導膜用基材として好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒に可溶な第1ポリマーが、前記有機溶媒に不溶な第2ポリマーによって被覆された繊維からなる繊維集合体。
【請求項2】
前記第2ポリマーが水に不溶であることを特徴とする、請求項1記載の繊維集合体。

【公開番号】特開2011−69011(P2011−69011A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220510(P2009−220510)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】