説明

織物への光ファイバーの編み込みによる強化センサー

【課題】測定対象物に取り付ける際に光ファイバーが折れたり、破断したりするのを防止すると共に、計測精度の向上を図る。
【解決手段】本発明に係るセンサー10は、縦糸11に略直交するように横糸12が織り込まれて形成された織物13を備え、織物13の縦糸11と横糸12のうちの少なくともいずれか一方の繊維に光ファイバー14が含まれていることを特徴とし、光ファイバー14はFBGセンサーとして機能してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の歪み等を計測するセンサーに関し、特に、織物への光ファイバーの編み込みによる強化センサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバーを使用して、構造物や配管等の測定対象物の歪み、振動、温度等を計測するセンサーが知られている。しかし、この種のセンサーに使用される光ファイバーは直径100ミクロン程度の微細なグラスファイバーにより形成されており、繊細なため、測定対象物に取り付ける際に光ファイバーに損傷を与えないように十分に注意を払う必要があった。
【0003】
そこで、近年では、紫外線硬化樹脂膜やポリアミド膜等の保護膜で光ファイバーの表面を一体的に保護したセンサーや、ステンレス製フレキシブルチューブやPEEK(Poly Ether Ether Ketone)樹脂、PVDF(PolyVinylidene
DiFluoride)等の保護チューブで光ファイバーを間接的(非一体的)に保護したセンサー等が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−296110号公報
【特許文献2】特表2008−534982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前者の従来技術のように保護膜で光ファイバーの表面を一体的に保護したセンサーでは、相変わらずセンサーが細く繊細であるため、測定対象物に取り付ける際に光ファイバーが折れたり、破断したりするのを防止することは困難であった。
【0006】
一方、後者の従来技術のように保護チューブで光ファイバーを間接的(非一体的)に保護したセンサーでは、保護チューブと光ファイバーが一体化されていないため、保護チューブを測定対象物に取り付けたとしても、保護チューブ内の光ファイバーに測定対象物の歪み等が十分に伝わらず、計測の精度を高めることができないといった問題があった。
【0007】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、測定対象物に取り付ける際に光ファイバーが折れたり、破断したりするのを防止すると共に、計測精度の向上を図ることのできる織物への光ファイバーの編み込みによる強化センサーを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するため、本発明に係る織物への光ファイバーの編み込みによる強化センサーは、縦糸に略直交するように横糸が織り込まれて形成された織物を備え、該織物の縦糸と横糸のうちの少なくともいずれか一方の繊維に光ファイバーが含まれていることを特徴とする。
【0009】
そして、本発明に係る織物への光ファイバーの編み込みによる強化センサーにおいて、前記少なくともいずれか一方の繊維は、前記光ファイバーより引張り強度の大きい高強度繊維を含んでいるのが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る織物への光ファイバーの編み込みによる強化センサーにおいて、前記一方の繊維は前記光ファイバーを含む繊維束を形成しているのが好ましい。
【0011】
さらに、本発明に係る織物への光ファイバーの編み込みによる強化センサーにおいて、前記少なくともいずれか一方の繊維には、前記光ファイバーが複数本含まれていてもよい。
【0012】
さらにまた、本発明に係る織物への光ファイバーの編み込みによる強化センサーにおいて、前記光ファイバーはFBGセンサーとして機能してもよい。
【0013】
さらに、本発明に係る織物への光ファイバーの編み込みによる強化センサーには、前記光ファイバーのセンサー部を識別するための印が設けられているのが好ましい。
【0014】
さらに、本発明に係る織物への光ファイバーの編み込みによる強化センサーには、外面側に保護膜が設けられているのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、測定対象物にセンサーを取り付ける際に光ファイバーが折れたり、破断したりするのを防止し、センサーの信頼性を高めることができると共に、計測精度の向上を図ることができる等、種々の優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る織物への光ファイバーの編み込みによる強化センサーを示す平面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る織物への光ファイバーの編み込みによる強化センサーの繊維束を示す平面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る織物への光ファイバーの編み込みによる強化センサーの別の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。ここで、図1は本発明の実施の形態に係る織物への光ファイバーの編み込みによる強化センサーを示す平面図、図2は同センサーの繊維束を示す平面図である。
【0018】
本実施の形態に係るセンサー10は、縦糸11に略直交するように横糸12が織り込まれて形成された織物13を備えている。この織物13は例えば幅5〜1000mm程度の帯状を成しており、この織物13の縦糸11には、光ファイバー14が含まれている。
【0019】
図2に良く示されているように、縦糸11は繊維束15を形成しており、その一つの繊維束15は1本の光ファイバー14を含み、例えば、1本の光ファイバー14と99本のガラス繊維により形成されている。なお、縦糸11及び横糸12は、例えば炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維の他、ナイロン、ビニロン、ポリエステル等の合成繊維を使用することができるが、光ファイバー14の保護のためには、光ファイバー14より引っ張り強度の大きい高強度繊維を使用するのが好ましい。また、縦糸11をガラス繊維、横糸12を炭素繊維とするように縦糸11と横糸12の材質を変えたり、或いは、縦糸11や横糸12に複数の種類の繊維を混合したりする等、異種の繊維の組合せも可能である。
【0020】
光ファイバー14は、本実施の形態の場合、FBG(Fiber Bragg Grating)センサーとして機能する。このFBGセンサーは、光ファイバー14のコアに紫外線を照射することにより複数のセンサー部(図示省略)が形成された公知のセンサーであり、これらのセンサー部において反射する光の波長の変化を利用して測定対象物の歪み、圧力、温度等を計測するものである。
【0021】
このような構成を備えたセンサー10を使用して構造物や配管等の測定対象物の歪みを計測する場合、先ず、センサー10を、例えば巻物のように巻いた状態で測定対象物が位置する現場に搬入する。そして、光ファイバー14のセンサー部を接着剤やバンド等で測定対象物に固定した上で、測定対象物の歪みを計測する。
【0022】
このように上記した本発明の実施の形態に係るセンサー10によれば、光ファイバー14が繊維や繊維束15により保護されているため、測定対象物への取り付け作業が容易になると共に、測定対象物にセンサー10を取り付ける際に光ファイバー14が折れたり、破断したりするのを防止することができる。
【0023】
また、光ファイバー14のセンサー部を測定対象物に固定しているため、センサー部に測定対象物の歪み等が確実に伝わり、計測の精度を高めることができる。
【0024】
さらに、センサー10を巻いた状態で搬送することができるため、搬送作業の簡素化を図ることができる。
【0025】
また、光ファイバー14の端部同士を融着接続することによってセンサー10を延長し、測定対象物のサイズや形状等に合わせてセンサー10を簡単に測定対象物に取り付けることができるため、汎用性を高めることができる。
【0026】
さらにまた、縦糸11や横糸12に炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維等の高強度繊維を使用して測定対象物に貼付することにより、測定対象物の歪み等を計測すると共に、測定対象物の補強を行うこともできる。
【0027】
さらに、本発明は、高温・高放射線下に設置される高速炉プラント等の機器や配管の変位や振動の計測の他、橋梁における床板や橋桁の変位計測、コンクリートのクラック計測、トンネル接合部の変位計測、トンネルにおける岩の圧力計測、ダムにおける挙動計測、杭の張力計測、地すべり計測等、各種構造物において多種多様な計測を行うことができる。
【0028】
なお、図3に示されているように、センサー10の縦糸11に複数本の光ファイバー14a,14bが含まれていてもよい。この場合、一方の光ファイバー14aを近傍地点の計測用とし、他方の光ファイバー14bを遠方地点の計測用として使い分けしたり、或いは、一方の光ファイバー14aのみを測定対象物に接着し、他方の光ファイバー14bを非接着にして、測定対象物の温度変化を計測するために使用したりすることもできる。また、複数本の光ファイバー14a,14bを使用して同じ計測を行うことにより計測精度を向上させてセンサー10の信頼性を高めたり、或いは、他方の光ファイバー14bを予備として使用することにより故障時の対応を向上させたりすることもできる。
【0029】
また、上記した実施の形態では、光ファイバー14がFBGセンサーとして機能する場合について説明したが、これは単なる例示に過ぎず、本発明は、例えば、光の透過量の変化を検出して測定対象物の歪みを計測するいわゆるマイクロベンディング方式のセンサーや、光の反射量の変化を検出して測定対象物の歪みを計測するいわゆるレイリー散乱方式のセンサーの他、光ファイバー14を利用して測定対象物の振動、温度、圧力、超音波、中性子、γ線量等を計測するセンサー等、光ファイバー14がFBGセンサー以外のセンサーとして機能する場合にも適用可能である。
【0030】
また、上記した実施の形態では、光ファイバー14は縦糸11にのみ含まれているが、横糸12に含めたり、或いは、縦糸11と横糸12の両方に含めたりする等、光ファイバー14は縦糸11と横糸12のうちの少なくともいずれか一方の繊維に含まれていればよい。
【0031】
さらに、織物13や光ファイバー14に着色を付したり、記号等をプリントしたりして、前記センサー部の位置を識別するための印(図示省略)を設けてもよい。この場合、測定対象物の計測位置に確実にセンサー部を取り付けることができるため、計測精度をさらに高めることができる。
【0032】
さらにまた、センサー10の外面側に保護膜を塗装してもよく、これにより、光ファイバー14が損傷したりするのをより確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0033】
10 センサー
11 縦糸
12 横糸
13 織物
14 光ファイバー
15 繊維束



【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦糸に略直交するように横糸が織り込まれて形成された織物を備え、該織物の縦糸と横糸のうちの少なくともいずれか一方の繊維に光ファイバーが含まれていることを特徴とする織物への光ファイバーの編み込みによる強化センサー。
【請求項2】
前記少なくともいずれか一方の繊維は、前記光ファイバーより引張り強度の大きい高強度繊維を含んでいる請求項1に記載の織物への光ファイバーの編み込みによる強化センサー。
【請求項3】
前記一方の繊維は前記光ファイバーを含む繊維束を形成している請求項1又は2に記載の織物への光ファイバーの編み込みによる強化センサー。
【請求項4】
前記少なくともいずれか一方の繊維には、前記光ファイバーが複数本含まれている請求項1〜3のいずれか1の請求項に記載の織物への光ファイバーの編み込みによる強化センサー。
【請求項5】
前記光ファイバーはFBGセンサーとして機能する請求項1〜4のいずれか1の請求項に記載の織物への光ファイバーの編み込みによる強化センサー。
【請求項6】
前記光ファイバーのセンサー部を識別するための印が設けられている請求項5に記載の織物への光ファイバーの編み込みによる強化センサー。
【請求項7】
外面側に保護膜が設けられている請求項1〜6のいずれか1の請求項に記載の織物への光ファイバーの編み込みによる強化センサー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−58835(P2011−58835A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205983(P2009−205983)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【出願人】(505374783)独立行政法人 日本原子力研究開発機構 (727)
【出願人】(598072180)ファイベックス株式会社 (24)
【Fターム(参考)】