説明

織物をデジタル的に改質するための方法と装置

織物改質装置(1)を使用して、織物物品(T)をデジタル的に改質するための方法を提供する。この装置(1)は、織物(T)に物質を供給するための複数のノズルと、これらノズルに沿って織物(T)を搬送する搬送手段(2)とを有している。前記ノズルは、織物物品(T)の搬送方向に対して横方向に延びている連続的な複数の列(4,5,6,7)をなして配置されている。この方法は、第1の列(4)のノズルに沿って織物物品(T)をガイドする工程と、第1の列(4)のノズル(12)で、これらノズルに沿って搬送された織物物品(T)のペイント、コーテング、もしくは仕上げの処理を果たす工程と、第2の列(5)のノズル(12)に沿って織物物品(T)をガイドする工程と、第2の列(5)のノズル(12)で、これらノズルに沿って搬送された織物物品(T)のペイント、コーテング、若しくは仕上げの処理の前記処理とは異なる処理を果たす工程とを有している。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、織物をデジタル的に改質するための方法と装置とに関するもので、2003年9月22日付けのオランダ出願1024335号と、2003年11月28日付けのPCT出願No.PCT/NL03/00841とから優先権を主張している。両出願の内容は、全体の参照によって本発明に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
織物の製造では、以下の5つの生産工程に大別されることができる。即ち、繊維の製造と、繊維の紡ぎと、布(例えば、織られるか編まれた布、タフト材かフェルト並びに不織物材)の製造と、布の改質と、最終製品の製造もしくは生産とである。前記布の改質とは、使用者によって所望されている外観と物理的な特性とを織物に与えるという目的を有する処理の全体のことである。前記布の改質としては、特に、織物物品の準備、漂白、オプションによるホワイテングと、カラーリング(ペイント並びに/もしくはプリント)、コーテング、並びに仕上げがある。
【0003】
織物を改質するための一般的なプロセスは、複数の部分プロセス、即ち改質工程、即ち、織物物品(基体と称されている)の前処理、基体のペイント、基体のコーテング、基体の仕上げ、並びに基体の後処理からなっている。
【0004】
織物をプリントするための知られた技術は、所謂テンプレート(template)技術である。インクが、カットアウトされた葉又は部材に供給され、文字や記号のような所望のパターンが、テンプレート技術で、基体に与えられることができる。織物をプリントするための他の知られた技術は、所謂平台(flatbed)プリント技術である。プリントイメージは一面に位置され、プリントの部分は、プリントエリアを形成しないようにモールド成形されている。これの一例は、所謂オフセットプリントであり、このプリントプロセスは間接的に行なわれる。プリントの間、プリントエリアは、最初、シリンダの周りに張られたゴム繊維部に移送され、ここからプリントのための部材に移送される。さらなる技術が、スクリーンプリントであり、供給のための物質は、プリントテンプレートの開口部を通って、プリントされるための織物に適用される。
【0005】
上述した技術は全て、基体、特に織物をプリントする改質工程に関する。言い換えると、これら技術は、色付けされた物質のパターンを基体に与えることに関する。
【0006】
図1にすでに示されているように、基体のペイントは、他の改質工程である。このペイント工程は、色付けされた化学物質を全面に与えて、均一に一色にする。このペイント工程は、ペイント浴中に織物物品を浸して、色付けされた物質を織物の両面に与えることによって果たされる。
【0007】
他の改質工程は、織物のコーテングである。織物のコーテングは、基体を保護する(並びに基体の耐久性を高める)ように、オプションで(半)透過性の薄層を織物に与えることを含んでいる。溶剤もしくは水ベースでコーテングするための通常の技術は、所謂ロール式ナイフ塗布機や反転ロール式浸漬塗付機である。水中でのポリマー物質の分散が、通常は布に与えられ、この後に、過剰のコーテングが、ドクターブレイドにより剥がし取られる。
【0008】
更なる改質工程は、織物の仕上げを含んでいる。この仕上げは、また、良質の改質として称され、物質の特性を変化、並びに/若しくは向上させる目的で、織物の物理的な特性、並びに/若しくは織物に適用された物質を変化させることを含んでいる。仕上げで得られることが望まれる特性は、特に、基体の表面の軟質性、基体の耐火性もしくは耐炎性、撥水性並びに/もしくは撥油性、耐しわ性、耐縮性、耐腐食性、非滑り性、折り維持性、並びに/もしくは帯電防止性である。仕上げに度々使用される技術は、フラール処理(foularding)(含浸並びにプレス)である。
【0009】
図1に示されている改質工程の各々は、複数の処理からなりたっている。化学的に異なる形式の異なる処理が、基体の性質並びに所望の最終物に対応して要求されている。プリント、ペイント、コーテング、並びに仕上げの改質工程において、これら4つの繰り返し工程が、一般的には区別され、これらは、同じシーケンスで度々生じる。これら処理は、専門的な分野ではユニット操作と称されている。これらは、含浸処理(即ち、化学薬品の適用もしくは導入)と、反応/定着処理(即ち、基体への化学薬品の結合)と、洗浄処理(即ち、過度の化学薬品並びに補助の化学薬品の除去)と、乾燥処理とである。
【0010】
改質の通常の方法の1つの欠点は、各改質工程(ペイント、コーテング、仕上げ)で、ユニット操作の2つ以上のサイクルが、所望の結果を得るために果たされなければならないことである。ユニット操作の3つ以上のサイクルが、コーテングに度々必要とされ、このコーテングには、比較的高い環境影響が伴い、長いスループット時間を必要とし、比較的高い製造コストがかかる。ユニット操作の4つ以上のサイクルが、ペイントのためにさらに必要とされる。通常のペイントプロセスは、例えば増粘剤のような過度の化学薬品をすすぐように、例えば、複数回のすすぎ(洗浄並びに石鹸処理)の最終処理を有している。すすぎには、多量の水を使用する。すすぎに続いて、乾燥プロセスがある。この乾燥プロセスは、通常、圧縮ローラ並びに/若しくはバキュームシステムを使用した機械的な乾燥工程、続いて、例えば幅出機(tenter-frames)を使用した熱乾燥工程でできている。
【0011】
更に、現在では、別々の装置で織物の異なる改質工程を行なうことが一般的である。このことは、例えば、ペイントは、目的に適した夫々異なる複数のペイント浴内でなされ、プリントとコーテングとは、別々のプリント装置とコーテング機構とでなされ、仕上げは、更に異なる装置でなされることを、意味している。異なる操作が、別々の装置により個々に行われるので、織物の処理のために、通常は異なり複数のルーム領域に渡る比較的広いスペースが必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、上述された欠点と従来技術に関連した他の欠点とをなくすように、織物の基体を改質、即ちペイント、コーテング、並びに/若しくは仕上げるための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明において、上記の課題のために、以下の改質装置を使用して織物物品をデジタル的に改質するための方法が与えられている。この改質装置は、織物に1種以上の物質を供給するための複数のノズルと、さらに、これらノズルに沿って織物を搬送するためのコンベヤとを有している。これらノズルは、織物物品の搬送方向に対して横方向に延びている連続的な複数の列をなして配設されている。この方法は、また、第1の列のノズルに沿って織物物品をガイドする工程と、第1の列のノズルに沿って搬送された織物物品のペイント、コーテング、若しくは仕上げの処理のうちの1つを第1の列のノズルで行なう工程と、続いて第2の列のノズルに沿って織物をガイドする工程と、第2の列のノズルに沿って搬送された織物物品のペイント、コーテング、並びに仕上げの処理の前記処理とは異なる処理を行なう工程とを有している。
【0014】
この方法は、高濃度の正確な量の化学物質を供給するという選択肢を与えている。所望の改質の結果は、ユニット操作の1つのサイクルのみで得ることができる。連続して配設された複数の列のノズルを使用し、1つの処理操作のみで化学物質を供給することによって、各処理操作の効率は、かなり向上される。ノズルの非常に正確な量と制御とが可能であるため、非常に均一な層が、また、与えられ得る。化学物質は、比較的高濃度(溶液)で与えられ、高濃度であることによって、一時的な乾燥が、多くの場合で不要とされる。
【0015】
ランダム操作が、各列のノズルで行なわれることができ、即ち、ペイント、コーテング、若しくは仕上げの操作が、所望並びにランダムシーケンスで、各列において行なわれることができる。
【0016】
前記装置のノズルは、好ましい固定位置を有しており、織物は、これらノズルに沿ってガイドされる。このため、処理スピードは速く、パターンの非常に正確な形成が可能である。これらノズルを与える更なる効果は、オンデマンドの吐出を可能にすることであり、これらノズルで、適切な物質の液滴が射出される。異なる織物物品のより短い連続処理は、環境影響を有する複雑な交換操作なしに、単一の改質装置で行なわれることができる。
【0017】
上述された方法で物質(一般に化学薬品、特に、ペイント剤、コーテング剤、仕上げ剤)を供給することによって、各改質工程を含んだ(浸含、付着/反応、すすぎ、並びに乾燥のような)ユニット操作のサイクルの回数は、かなり減じられることができる。
【0018】
織物は単一方向で異なる処理を受けることができるため、さらに、かなりのスペースが、節約される。さらに、ペイント浴が染色(ペイント)の適用のためにもはや必要とされないので、約95%もの水が節約されることができる。また、染料を節約することが可能であり、少ない染料が織物に適用される必要がある。染料を与える方法並びに特性は、さらに、良く制御されることができる。
【0019】
標準の方法での基体のペイントにおいて、基体は、ペイント浴中に浸されることによって全体的にペイントされる。これは、基体の両面が、同じ方法で常に処理されることを意味している。しかし、更なる好ましい実施形態において、基体は、一面が他面とは異なるように処理されることができる。この目的のために、この方法は、織物の両面を改質するように、織物の両面に位置されたノズルに沿って織物を搬送することを有することが好ましい。これは、例えば、一度の搬送移動で、織物の両面が色付けされ得ることを意味し、一面の色は、他面の色と同じである必要はない。
【0020】
特に好ましい実施形態において、この方法は、織物物品を第1の列のノズルでペイントし、次に織物物品を第2の列のノズルでコーテングし、最後に織物物品を第3の列のノズルで仕上げることを有している。
【0021】
他の好ましい実施形態において、この方法は、織物物品を第1の列のノズルでプリントし、次に織物物品を第2の列のノズルでコーテングし、最後に織物物品を第3の列のノズルで仕上げることを有している。
【0022】
更なる他の好ましい実施形態において、この方法は、織物物品を第1の列のノズルでペイントし、次に織物物品を第2の列のノズルでコーテングし、最後に織物物品を第3の列のノズルで仕上げることを有している。
【0023】
更なる他の好ましい実施形態は、なされなければならない処理工程の選択と、処理工程が果たされるシーケンスとが、必要に応じて変更され得ることを明らかにしている。
【0024】
連続的なインクの射出とマルチレベルで偏向可能な技術とを利用した織物の改質装置が、所定の方法を行なうために与えられていることが好ましい。ノズルから出る物質は、正確な量の物質が正確な位置に付着されるように、電界によって偏向される。電界によって物質の液滴を偏向可能にするために、液滴は荷電される必要がある。かくして、この方法は、ほぼ連続した流れでノズルに物質を供給することと、夫々の液滴を射出するように前記ノズル内の連続した流れを分断することと、前記液滴を荷電若しくは放電することと、電界をあたえることと、前記液滴を偏向して、これら液滴が織物物品上の適切な位置に付着されるように、前記電界を変化させることとを有している。
【0025】
連続したインクの射出方法を使用することによって、毎秒85,000ないし1,000,000の液滴を発生させることが可能である。この多くの液滴と前記布の全幅に渡った相互に隣接した複数のヘッドとによって、プリントパターンの比較的高い生産性と品質とがもたらされる。高速のスプレーを考慮した場合、この技術を使用して毎分約20mの生産速度が、さらに、原則的に実現可能であり、また、前記ノズルに関連した容積の小さいリザーバを考慮した場合、非常に短時間(2分以内)での色の変更が、また、実現可能である。
【0026】
各列のノズルが異なる処理工程を果たす場合が必ずしも必要であるわけではない。さらに、複数の各列のノズルに同じ処理工程を連続的に果たさせることが、同様に可能である。
【0027】
さらに、CMYKのプロセスカラーが中に収容されたリザーバに、ノズルを接続することが可能である。CMYKは、フルカラープリントの文書に使用される標準のカラーモデルである。これら4つのベーシックカラーのみが、プリントプロセスに使用されている。例えばシアン色の物質、マゼンタ色の物質、黄色の物質、並びに黒色の物質が、ランダムシーケンスで少なくとも4つの列のノズルのリザーバ中に連続的に収容されている場合、ランダムの最終カラーでのプリント操作は、4つの列のノズルで果たされることができる。しかし、適切な混合色の物質を前記リザーバに与えることも可能である。
【0028】
すでに上述されているように、ペイントの処理工程は、織物物品の幅全体に渡って物質をほぼ均一に供給することを有している。プリントの処理工程は、織物物品に物質の1つ以上のパターンを与えることを有している。コーテングの処理工程は、織物の表面に薄層の物質を与えることを有している。仕上げの処理工程は、織物物品に以前与えられた物質、並びに/若しくは織物物品自体の物質の物理的な特性を変化させることを有している。更なる好ましい実施形態において、処理工程は、織物物品を乾燥させるために、織物物品を赤外線で照射することを有している。この赤外線は、ノズル間に配置された複数の赤外線源によって放射されることが好ましい。
【0029】
この方法は、ノズルの列に沿って第1の織物物品を連続的に搬送し、異なる列のノズルによって所定のランダムシーケンスで異なる処理工程を果たすことと、これらノズルの列に沿って第2の織物物品を搬送し、異なる列のノズルによって所定の他のシーケンスで異なる処理工程を果たすこととを有している。これは、別々の織物物品が別々の方法で連続的に改質され得ることを意味している。第1の織物物品は、例えば、織物物品のプリント、コーテング、並びに仕上げによって処理されることができ、このすぐ後に、所定の織物物品が、ペイント、コーテング、並びに仕上げられる。このため、織物改質装置の非常に融通の利いた使用が可能である。
【0030】
好ましくは、コンベヤは、エンドレスコンベヤベルトである。さらに、織物物品はコンベヤに確実に固定され、このためにずれが防止されることは特に望ましい。これは、液滴の付着の精度が、例えばマルチカラープリントのために必要とされるような場合には、特に重要である。このようにして、高速の処理が、正確な液滴の付着を保証しながら、果たされることができる。織物は、着脱可能な接着剤によってコンベヤに固定されることができる。
【0031】
この方法は、中央制御部で個々のノズルを方向付けることを有することが好ましい。この中央制御部は、例えばコンピューターによって形成されている。
【0032】
本発明の更なる効果、特徴、並びに詳細は、本発明の好ましい実施形態の以下の説明に基づいて、明らかとなるであろう。
【0033】
添付図面の説明がなされている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
図2ないし5は、本発明の好ましい実施の形態に係わる織物(編物)改質機1を示している。この織物改質機1は、電気モータ(図示せず)を使用して駆動されるエンドレスの搬送ベルト2を有している。この搬送ベルト2の上には、ハウジング3に沿って矢印Pの方向に搬送される織物(編物)物品(textile article)Tが固定されている。前記ハウジング内で織物には幾つかの処理がなされる。この織物は、接着によりコンベヤに物理的に固定されて、処理の間にずれることが防止される。最後に、この織物は、前記接着を解除することにより、矢印Pの方向に排出される。多数のノズル12が、ハウジング3内に配設されている。これらノズルは、連続して配置された複数のビーム14に支持されている。かくして、第1の列4、第2の列5、第3の列6、及び更なる列が形成されている。これら列の数は、変更されることができ(図5では点線で示されている)、例えば、処理の数に主に依存している。各列当たりのノズルの数もまた、変更されることができ、織物に適用されるデザインの所望の解像度に主に依存している。特定の好ましい実施形態において、前記ビームの有効な幅は、約1mであり、また、これらビームには、約29個のスプレイヘッドが固定して配設されている。そして、各ヘッドには、50μmの約8個のノズルが設けられている。これらノズル12の各々は、(黒並びに/若しくは白を含む)色づけされた物質、若しくは改質剤の液滴の流れを発生させることができる。
【0035】
好ましい連続インクジェット方法では、ポンプが、ノズルの1もしくは複数の非常に小さい孔を通るインクの一定の流れを生じさせる。1もしくは複数のインクが、これら孔を通って射出される。励起(excitation)機構の影響のもとで、インクジェットは、同じサイズの液滴の一定の流れへと分断する。最も良く使用される励起機構は、ピエゾ結晶である。発生される同じサイズの液滴の一定の流れから、織物の基体に与えられなければならない液滴と与えられてはならない液滴とが選定されなければならない。この目的のために、液滴は、荷電若しくは放電される。液滴を織物上に位置させる2つの変形例がある。1つの方法に係われば、与えられた電界が、荷電された液滴を偏向し、荷電された液滴は、基体上に達する。この方法は、バイナリー偏向(binary deflection)とも称されている。マルチレベル(multi−level)法として知られている他の好ましい方法に係われば、荷電された液滴は、通常は織物へと導かれ、放電された液滴は、偏向される。これでは、液滴は、電界にさらされ、この電界は、異なる液滴が基体上に達する最終位置が調節されることができるように、複数のレベル間で変更される。
【0036】
図5には、異なるノズル12が、ネットワーク15により、中央制御ユニット16に有線もしくは無線で接続されていることが点線で示されている。この制御ユニットは、例えば、マイクロコントローラもしくはコンピュータを有している。前記搬送ベルト2の駆動手段は、ネットワーク15’により、前記制御ユニットに接続されている。この制御ユニットは、前記駆動手段と個々のノズルとを要求に応じて駆動させることができる。
【0037】
前記ノズル4ないし11の各列には、与えられる色づけされた物質が中に収容されている2重リザーバが配設されている。ノズルの第1の列4には、リザーバ14a,14bが、第2の列5には、リザーバ15a,15bが、第3の列6には、リザーバ16a,16bが、そして他の列にも夫々リザーバが設けられている。適当な物質が、各列の2つのリザーバのうちの少なくとも一方の中に収容されている。
【0038】
異なるリザーバには、夫々適当な物質が充填されており、また、異なる列に配設されているノズル12は、織物物品が正しく処理されるように、方向付けられている。図6に示されている状態では、第1の列4のリザーバ14aは、シアン色のインクを収容しており、第2の列5のリザーバ15は、マゼンタ色のインクを収容しており、第3の列6のリザーバ16aは、黄色のインクを収容しており、第4の列17のリザーバ17aは、黒色のインクを収容している。織物物品は、ペイント/プリント処理により、パターンが列4ないし7で、与えられる。3つの続く列8ないし10のリザーバは、織物をコーテングするために、3つの通路で処理される織物のコーテングを果たす1もしくは複数の物質を収容している。第8のリザーバ11は、プリント並びにコーテングされた織物を仕上げることができる物質を収容している。この実施の形態では、織物物品Tは、仕上げのコーテングに影響を与えるように、光源13からの赤外線により第5ないし第8の列の所で好ましくは処理される。
【0039】
図7は、織物が他の処理シーケンスを受ける他の位置を示している。織物物品Tは、最初にノズルの第1の列4と第2の列5とに沿ってガイドされることにより、プリントが形成される。両列のノズルは、同色の物質を供給する。このプリントされた織物は、第3の列ないし第5の列(6ないし8)で、コーテングされ、この後、仕上げ工程が、第6の列(9)と第7の列(10)でなされる。
【0040】
図8に示されている実施の形態では、織物物品は、最初に、織物の全幅に渡って織物をペイントするノズルの第1の列(4)に沿ってガイドされる。続いて、この織物物品は、コンベヤベルトにより第2の列(5)と第3の列(6)とに沿ってガイドされ、パターンが、ペイントされた織物にプリントされる。そして、織物は、第4の列ないし第6の列(7ないし9)に沿ってガイドされて、ペイント並びにプリントされた織物にこれら3つの通過でコーテングがなされる。この後に、最終の仕上げ処理工程が、第7の列(10)と第8の列(11)とでなされる。
【0041】
異なる、連続して搬送される複数の織物物品を異なる方法で処理することが可能であり、これは、幾つかの場合には、織物は搬送が阻止されないでなされる。各場合で異なったデザインの織物物品を連続して供給するために、ノズル12を正確に方向付けることにより、例えば、可能である。また、リザーバを正確に選択することにより、1つの織物に異なる物質を適用させることも可能である。第1のリザーバ(14a,15a,16a)は、例えば、第1の形式の織物のための各場合で使用され、そして、第2のリザーバ(14b,15b,16b)は、他の形式の織物のために使用される。
【0042】
本発明の環境に対する効果を決定するために、代表的な改質プロセスの例が使用されることができる。この例では、基体は、ペイントのためのユニット操作の4つのサイクルを通った後に、コーテングのための4つのサイクルを通り、最後に仕上げのための2つのサイクルを通る。定量化は、1800mの長さと約1.6mの幅とを有し、基体の1平方m当たり100グラムの重量を有し、漂白かつ乾燥されたコットンの基体に基づいている。色付けと、コーテングと、仕上げとは、ここでは各々1つのプロセスユニットでなされ、これらプロセスユニット間に、必要な後処理並びに/もしくは前処理が行われる。もし、これら処理が1つのプロセスユニット内で行われることができれば、環境効果は、より高くなるであろう。
【0043】
一般的な改質プロセスにおいて、特に、全ての処理(ペイント、コーテング、並びに仕上げ)は、高水溶液内で並びに/もしくは高水溶液を用いて行われている。本発明に係わるデジタルプロセスでは、高濃度の溶液が、高精度に制御された量で、基体に直接吹き付けられる。このために、使用される水は少ない。過度の化学物質や補助化学物質をすすぐ/洗う(rinsing/washing)ために、特にユニット操作のどのサイクルもすすぎ工程を含んでいる。これら工程の回数は、既存のプロセス(4度のペイントと、4度のコーテングと、2度の仕上げ)での10回から本発明のデジタルプロセス(即ち、1度のペイントと1度のコーテングと1度の仕上げ)の3回へと減じられることができる。従って、7回のすすぎ工程が減じられる。このことは、水の消費のかなりの減少が、すすぎを少なくすることにより、既に実現されることができることを意味している。この水の消費の全削減は、多くの場合90%よりも多い。
【0044】
また、エネルギの消費も減少できることが考えられる。これは、特に強制的な乾燥が必要でなくなるか、非常に制限された僅かの程度しか必要とされないことと、熱い/暖かいすすぎ(hot/warm rinsing)水を使用するすすぎが必要でなくなるか、非常に制限された程度しか必要とされないことと、基体の機械的な取り扱いが非常に減じられるためです。
【0045】
既知の改質プロセスにおいて、乾燥は、一般には異なるユニットコンポーネント間で、また、サイクルが繰り替えされなければならない場合には前記操作内でなされる。基体は、自身の重量の数倍の重量の水を含むことができる。乾燥は、一般的に2つの工程で行われる。即ち、第1の工程で、水分の大部分が基体から機械的に除去される。そして、第2の工程で、熱的に乾燥されて、基体に残っている水分が蒸発される。
【0046】
しかし、本発明のデジタル改質プロセスは、ほとんど水を必要としないで実行されるので、異なる改質工程間や最終の改質工程後に、例えば、乾燥によって水分を蒸発させる必要がない。このため、かなりのエネルギの節約が実現される。幾つかの場合に必要とされる限定的な乾燥は、多くの場合に、指向性のあるUVドライヤーによって実現されることができる。一般に、重量でわずか70%の水が、コーテング材に必要とされ得る。
【0047】
このデジタルプロセスでは、必要とされる基体の洗浄がないか、かなり制限されている。従って、乾燥も、必要とされないか、かなり制限された程度だけ必要である。このデジタル改質で、既存の改質プロセスと比較して、異なる改質操作間での基体の搬送を含む機械的な操作の回数をかなり減じることが、また、可能であろう。これによって、電気エネルギの消費も、かなり削減されるであろう。
【0048】
全体で、90%より多いエネルギ消費の削減を実現することができる。
【0049】
現在の生産技術では、1平方m当たり約150グラムの湿質物質(化学物質)が、与えられる。デジタルプリントにおいては、織物への適用をより正確にし、織物への圧力を小さくし、そして、織物への吸収を少なくしているので、適用される化学物質の量は、1平方m当たり約50グラムの湿質物質に減じられることができる。この結果、約66%の化学物質を削減することが可能である。この削減は、主化学物質だけでなく、塩のような添加物にも関係しており、デジタルプロセスにおいて、基体は、主化学物質の作用、定着、並びに/若しくは反応を容易にするように、添加物で前処理される。かくして、これら添加物にも、66%の影響が果たされ得ることが期待される。
【0050】
最後に、排水の生成並びに排水の汚染効果は、90%より多く減じられることができる。
【0051】
本発明は上述の好ましい実施形態に限定されない。特に、権利範囲は、請求項によって規定されており、多くの変形例が、請求項の範囲内で考えられることができる。
【0052】
本発明は、上述された好ましい実施形態に限定されない。請求される権利は、請求項によって規定されており、本発明の範囲内で、多くの変更が考えられる。“織物物品”という用語は、一般に、基体、より詳細には織物、特に、布、旗、テント生地等に使用され、これらに、ペイント、コーテング、並びに/若しくは仕上げ(及びプリント)が、なされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】基体を改質するためのプロセスの概略的なブロック図である。
【図2】本発明の第1の好ましい実施形態に係わる織物改質機構の斜視図である。
【図3】図2に示す織物改質機構の概略的な側面図である。
【図4】図2に示す織物改質機構の概略的な正面図である。
【図5】図2に示す織物改質機構の概略的な断面図である。
【図6】異なるプロセス工程を実施するための、好ましいシーケンスを概略的に示す図である。
【図7】改質工程を実施するための、別の好ましいシーケンスを概略的に示す図である。
【図8】改質工程を実施するための、更に別の好ましいシーケンスを概略的に示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
織物物品に1種以上の物質を供給するための複数のノズルと、これらノズルに沿って前記織物物品を搬送するためのコンベヤとを具備し、前記ノズルは、前記織物物品の搬送方向に対して横方向に延びている連続的な複数の列をなして配置されている改質装置を使用して、基体、特に織物物品をデジタル的に改質する方法であって、
前記織物物品を第1の列のノズルに沿ってガイドする工程と、
前記第1の列のノズルに沿って搬送された前記織物物品のペイント、プリント、コーテング、並びに仕上げの処理のうちの1つを、前記第1の列のノズルで行なう工程と、
続いて前記織物物品を第2の列のノズルに沿ってガイドする工程と、
前記第2の列のノズルに沿って搬送された前記織物物品のペイント、プリント、コーテング、並びに仕上げの処理の前記処理とは異なる処理を、前記第2の列のノズルで行なう工程とを具備する方法。
【請求項2】
前記織物物品を前記第1の列のノズルでペイントすることと、次に、前記織物物品を前記第2の列のノズルでコーテングすることと、最後に、前記織物物品を第3の列のノズルで仕上げることとを有する請求項1の方法。
【請求項3】
前記織物物品を前記第1の列のノズルでコーテングすることと、次に、前記織物物品を前記第2の列のノズルで仕上げることとを有する請求項1の方法。
【請求項4】
前記織物物品を前記第1の列のノズルでプリントすることと、次に、前記織物物品を前記第2の列のノズルでコーテングすることと、最後に、前記織物物品を前記第3の列のノズルで仕上げることとを有する請求項1の方法。
【請求項5】
連続してインクを射出し、マルチレベルで偏向可能な形式の装置に与えられている前記全ての請求項のいずれか1の方法であって、
ほぼ連続した流れで前記ノズルに物質を供給する工程と、
夫々の液滴を射出するように前記ノズル内の連続した流れを分断する工程と、
前記液滴を荷電若しくは放電する工程と、
電界を与える工程と、
前記液滴を偏向して、これら液滴が前記織物物品上の適切な位置に付着されるように、前記電界を変化させる工程とを有する前記全ての請求項のいずれか1の方法。
【請求項6】
各ノズルに少なくとも毎秒100,000の液滴を発生させることを有する請求項5の方法。
【請求項7】
プリント、ペイント、コーテング、並びに仕上げの各処理で、連続して配置された2つ以上の列のノズルから物質を与えることを有する前記全ての請求項のいずれか1の方法。
【請求項8】
ランダムシーケンスで、少なくとも4列のノズル内に、シアン色の物質、マゼンタ色の物質、黄色の物質、黒色の物質を連続的に準備することを有する請求項7の方法。
【請求項9】
少なくとも4列のノズル内に混合色の物質を準備することを有する請求項7の方法。
【請求項10】
前記ペイントの処理工程は、前記織物物品の幅全体に渡って前記物質をほぼ均一に適用することを有する前記全ての請求項のいずれか1の方法。
【請求項11】
前記織物物品の処理は、前記織物物品のプリントと、ペイント、コーテング、並びに/若しくは仕上げとを有する前記全ての請求項のいずれか1の方法。
【請求項12】
前記プリントの処理工程は、前記織物物品に前記物質の1つ以上のパターンを与えることを有する請求項11の方法。
【請求項13】
前記コーテングの処理工程は、前記織物物品の表面に、薄層の物質を与えることを有する前記全ての請求項のいずれか1の方法。
【請求項14】
前記仕上げの処理工程は、前に前記織物物品に与えられた物質の物理的特性を変化させることを有する前記全ての請求項のいずれか1の方法。
【請求項15】
赤外線で前記織物物品を照射する処理工程を有する請求項14の方法。
【請求項16】
第1の織物物品を複数の列のノズルに沿って連続的に搬送し、異なる列のノズルによって所定のランダムシーケンスで、異なる処理工程を果たすことと、第2の織物物品を複数の列のノズルに沿って搬送し、異なる列のノズルによって所定の他のシーケンスで異なる処理工程を果たすこととを有する前記全ての請求項のいずれか1の方法。
【請求項17】
前記コンベヤに前記織物物品を、相互移動を防止するように固定することを有する前記全ての請求項のいずれか1の方法。
【請求項18】
前記個々のノズルを中央制御部で方向付けることを有する前記全ての請求項のいずれか1の方法。
【請求項19】
前記織物の両面を改質するように、前記織物の両側に配置されたノズルに沿って前記織物を搬送することを有する前記全ての請求項のいずれか1の方法。
【請求項20】
1つの処理操作で前記物質をペイントすることを有する前記すべの請求項のいずれか1の方法。
【請求項21】
1つの処理操作で前記物質をコーテング並びに仕上げることを有する前記全ての請求項のいずれか1の方法。
【請求項22】
1つの処理操作で前記物質をペイント、コーテング、並びに仕上げることを有する前記全ての請求項のいずれか1の方法。
【請求項23】
前記全ての請求項のいずれか1の方法に従って織物物品を改質するための装置であって、前記織物に1種以上の物質を供給するための固定された複数のノズルと、これらノズルに沿って前記織物を搬送するためのコンベヤとを具備し、前記ノズルは、前記織物物品の搬送方向に対してに延びている連続的な複数の列をなして配置されている、装置。
【請求項24】
請求項1ないし22のいずれか1の方法に従って製造された織物物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−506004(P2007−506004A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526615(P2006−526615)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010732
【国際公開番号】WO2005/028730
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(506094529)テン・ケイト・アドバンスト・テクスタイルス・ビー.ブイ. (7)
【Fターム(参考)】