織物及び編物のプリーツ性試験方法とその装置
【課題】計測誤差を実用可能な範囲にまで減らすことのできる撮像手段を用いた織物及び編物のプリーツ性試験方法及びその装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 計測点を描画したプリーツ試験片(101)と既知間隔をあけて配した校正点とを並べた状態で撮像し、既知間隔と撮像した校正点間間隔とから校正係数を算出する。算出した校正係数を撮像した計測点間間隔に掛けて計測点間間隔を計測する。計測は、プリーツ試験片に対する荷重の有無それぞれに行い、その結果によりプリーツ率を算出する。
【解決手段】 計測点を描画したプリーツ試験片(101)と既知間隔をあけて配した校正点とを並べた状態で撮像し、既知間隔と撮像した校正点間間隔とから校正係数を算出する。算出した校正係数を撮像した計測点間間隔に掛けて計測点間間隔を計測する。計測は、プリーツ試験片に対する荷重の有無それぞれに行い、その結果によりプリーツ率を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織物及び編物のプリーツ性試験方法とその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な技法で作られている細かく複雑なプリーツ加工を施した製品は、布地のフラットな表情に陰影を与えることからファッション性の高い衣服として、また軽い伸縮性織物素材として女性特に中高年の間で高級品の地位を確立している。JISL1060−2006の織物及び編物のプリーツ性試験方法には、開角度法、外観判定法及び伸長法の3種類の試験方法が決められている。開角度法は平行広幅プリーツ、外観判定法はズボン折り目などの評価に用いられ、伸長法は細かく複雑な新型プリーツに用いられている。この伸長法は懸垂された試験片上の約20cmの2点間距離をたて方向に、かつ非接触で測定しなければならない。直定規を使用した目視測定では容易には測ることができず、詳細に測定するには困難を伴うため、正確で簡易な方法が望まれている。
【0003】
上掲した方法として本願発明者らは次の2つの方法を提案した。第1の方法として、プリーツの試験片に絵具で直径2mm前後の計測点を伸縮方向に2箇所描画した後、これを画像センサの撮像により検出した両計測点の座標から2点間の間隔を求める。さらに、既知間隔をあけて縦列する複数の校正点を描画したボードを試験片の背後に配置して、これを同じ画像センサ(撮像手段)で撮像して計測点間の間隔と校正点間の間隔の相関関係を求め、これに基づいて計測点間の間隔値を校正するようにした(非特許文献1)。
【0004】
しかし、上掲した第1の方法では、ボードが試験片の背後に設置してあるため、撮像装置から見た校正点までの距離と計測点までの距離とが異なり、これが計測誤差を生じさせていた。また、そもそも画像センサ(撮像手段)と計測点との距離は、試験片であるプリーツの伸長によって変化するから、これも計測誤差を生じさせる原因の一つであった。このような計測誤差を減らすには、ボード(校正用点板)の位置調整が有効であることが本願発明者らによって発表された(非特許文献2)。この位置調整に係る方法が第2の方法である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】東京都立産業技術研究センター研究報告、第2号(平成19年11月15日発行)P92〜93
【非特許文献2】東京都立産業技術研究センター研究発表会要旨集(平成20年6月5日発行)P62
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前掲した第2の方法をもってしても、試験片背面にボードを配しているために依然として実用可能な範囲まで計測誤差を減らすことができなかった。本発明は、その計測誤差を実用可能な範囲にまで減らすことのできる撮像手段を用いた織物及び編物のプリーツ性試験方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、次の構成を備えている。項を改めて説明する。なお、いずれかの請求項記載の発明を説明するに当り行う用語の定義等は、その記載順や発明のカテゴリの違いに関わらず、可能な範囲において他の請求項記載の発明にも適用があるものとする。
【0008】
(請求項1記載の発明の特徴)
請求項1記載の発明に係る織物及び編物のプリーツ性試験方法(以下、適宜「請求項1の試験方法」という)は、少なくとも以下の11工程を有することを特徴とする。すなわち、工程1では、プリーツ性試験対象となる試験片の一方の面上に、少なくとも2つの計測点を伸長方向に並べて描画する。工程2では、既知間隔をあけて縦列する複数の校正点を描画した校正部材を少なくとも2個用意する。工程3では、上端部保持により荷重懸垂した試験片の両側に前記校正部材を配するとともに、計測点と校正点とが同一の仮想平面上に位置するように前記試験片と前記両校正部材との奥行き方向相対位置を調整する。試験片と両校正部材のうちいずれかを移動させてもよいし、双方を移動させてもよい。工程4では、前記試験片の前記計測点を撮像手段で撮像して計測点間間隔画像データを得る。工程5では、前記工程4と同時若しくは前記工程5に前後して、前記校正点を前記撮像手段で撮像して校正点間間隔画像データを得る。
工程6では、前記校正点間間隔画像データから得た前記校正点間の間隔と前記既知間隔とから校正係数を算出する。工程7では、前記計測点間間隔画像データから得た前記計測点間の間隔に前記校正係数を掛けて前記計測点間の計測値を算出する。工程8では、前記荷重懸垂した試験片から当該荷重を取り除いて自重懸垂させた後、計測点と校正点とが同一の仮想平面上に位置するように前記試験片と前記両校正部材との奥行き方向相対位置を再調整する。工程9では、前記工程4乃至8の工程と同じ工程によって自重懸垂させた試験片の前記計測点間の計測値を算出する。
【0009】
請求項1の試験方法によれば、上端部保持により荷重懸垂した試験片の両側に前記校正部材を配するとともに、計測点と校正点とが同一の仮想平面上に位置するように前記試験片と前記両校正部材との奥行き方向相対位置を調整することによって、校正点の縦列方向と試験片の伸長方法(すなわち、計測点の並び方向)が一致若しくはほぼ一致する。さらに、撮像手段から見た計測点と校正点との奥行き方向のずれがほとんどなくなるので、撮像手段から見た計測点と校正点との距離の差がほとんどなくなる。ここで前記校正点間間隔画像データから得た前記校正点間の間隔と前記既知間隔とから校正係数を算出し、この校正係数を前記計測点間間隔画像データから得た前記計測点間の間隔に掛けて前記計測点間の計測値を算出する。既知間隔と画像データから得た間隔に基づいて算出した校正係数を用いて計測点間間隔の計測値を算出するから、計測誤差やプリーツ率の誤差を実用可能な範囲まで減らすことができる。
【0010】
(請求項2記載の発明の特徴)
請求項2記載の発明に係る織物及び編物のプリーツ性試験方法(以下、適宜「請求項2の試験方法」という)は、請求項1の試験方法であって、試験片を複数とし、試験片と校正部材とが横方向に交互に配置されている。
【0011】
請求項2の試験方法によれば、請求項1の試験方法の作用効果に加え、試験片を複数とし、前記試験片と前記校正部材とが横方向に交互に配置し、前記試験片各々のプリーツ率算出を個別に行う。
【0012】
(請求項3記載の発明の特徴)
請求項3記載の発明に係る織物及び編物のプリーツ性試験方法(以下、適宜「請求項3の試験方法」という)は、請求項1又は2の試験方法であって、前記縦列する校正点の数が4つであり、かつ、校正点間間隔が等間隔描画されている。
【0013】
請求項3の試験方法によれば、請求項1又は2の試験方法の作用効果に加え、校正点の数を4つとすることにより、試験片の長さにもよるが、校正点の使い勝手がほどよいものとなる。
【0014】
(請求項4記載の発明の特徴)
請求項4記載の発明に係る織物及び編物のプリーツ性試験方法(以下、適宜「請求項4の試験方法」という)は、請求項1から2いずれかの試験方法であって、前記工程8及び前記工程10における校正係数が、次式により算出される。
X=L×K・・・式1
(ただし、K=(M1+M2)/(N1+N2)であり、Xは試験片上の2点間距離、Lは座標から求めた試験片上の2点間距離、Kは校正係数、M1は試験片左隣校正部材の実測の2点間距離、M2は試験片右隣校正部材の実測の2点間距離、N1は試験片左隣校正部材の座標からの2点間距離、N2は試験片左隣校正部材の座標からの2点間距離を夫々示す)
【0015】
請求項4の試験方法によれば、請求項1から3いずれかの試験方法の作用効果が上記式によって奏させることができる。
【0016】
(請求項5記載の発明の特徴)
請求項5記載の発明に係る織物及び編物のプリーツ性試験方法(以下、適宜「請求項5の試験方法」という)は、請求項1から4いずれかの試験方法であって、前記工程11に次いで、さらに試験片の洗濯処理前後の計測時刻をそれぞれ挿入して計測値を計測する工程を有する。
【0017】
請求項5の試験方法によれば、請求項1から4いずれかの試験方法の作用効果に加え、JISL1060に準拠した選択処理前途の計測値を時系列的に把握することができる。よって、より高精度で客観性のある値を得ることができる。
【0018】
(請求項6記載の発明の特徴)
請求項6記載の発明に係る織物及び編物のプリーツ性試験方法(以下、適宜「請求項6の試験方法」という)は、請求項2から5いずれかの試験方法であって、JISL1060(織物及び編物のプリーツ性試験方法、伸長法)に準拠することを特徴とする。
【0019】
請求項6の試験方法によれば、JISL1060に準拠して請求項2から5いずれかの試験方法を実施することになり、この実施によって得た試験結果はより客観性のあるものとして評価される。
【0020】
(請求項7記載の発明の特徴)
請求項7記載の発明に係る織物及び編物のプリーツ性試験装置(以下、適宜「請求項7の試験装置」という)は、伸縮方向に並ぶ少なくとも2つの点が描画された試験片である織物及び編物のプリーツ性の試験用装置であって、次の構成要件を有している。すなわち、
(1)上端部を保持して試験片を自重懸垂させる懸垂手段;
(2)下端部を保持して懸垂させた前記試験片に荷重を解放可能に加える荷重手段;
(3)既知間隔をあけて縦列する複数の校正点が描画された少なくとも2個の校正部材;
(4)懸垂させた試験片の両側に前記校正部材を配するとともに、計測点と校正点とが同一の仮想平面上に位置するように前記試験片と前記両校正部材との奥行き方向相対位置を調整する相対位置調整手段;
(5)試験片上の計測点及び校正部材上の校正点を撮像して画像データを得る撮像手段;
(6)前記画像データを基に、計測点間の距離及び校正点間の距離夫々の実測値と、計測点及び校正点夫々の重心座標とを算出処理して、前記実測値と前記重心座標と前記既知間隔の値と前記実測値とから算出した校正係数とから、前記計測点間の計測値を計測処理するデータ処理手段;及び
(7)計測された計測値を表示する表示手段;
【0021】
請求項7の試験装置によれば、上端部保持により荷重懸垂した試験片の両側に前記校正部材を配するとともに、計測点と校正点とが同一の仮想平面上に位置するように前記試験片と前記両校正部材との奥行き方向相対位置を調整することによって、校正点の縦列方向と試験片の伸長方法(すなわち、計測点の並び方向)が一致若しくはほぼ一致する。さらに、撮像手段から見た計測点と校正点との奥行き方向のずれがほとんどなくなるので、撮像手段から見た計測点と校正点との距離の差がほとんどなくなる。このため、前記計測点間の間隔及び前記校正点間の間隔夫々の実測値並びに計測点及び校正点夫々の重心座標の値がほぼ同一条件化で計測されたことになり、これによって、正確な校正係数が取得できる。正確な校正係数に基づいて算出した計測点間距離の値も正確になる。荷重解放後の相対位置再調整によって荷重解放後も正確な計測点間距離の値を得ることができる。このようにして得た両計測点間距離の値から算出すれば、正確な試験片のプリーツ率を得ることができる。
【0022】
(請求項8記載の発明の特徴)
請求項8記載の発明に係る織物及び編物のプリーツ性試験装置(以下、適宜「請求項8の試験装置」という)は、請求項7の試験装置であって、表示手段が、画像モニタ及び印刷機の少なくともいずれかであることが好ましい。
【0023】
請求項8の試験装置によれば、請求項7の試験装置の作用効果に加え、画像モニタ及び印刷の少なくともいずれかによって試験装置の使用者が試験結果を視覚的に認識することができるようになる。
【0024】
(請求項9記載の発明の特徴)
請求項9記載の発明に係る織物及び編物のプリーツ性試験装置(以下、適宜「請求項9の試験装置」という)は、請求項7又は8の試験装置であって、前記校正係数が、次式により算出される。
X=L×K・・・式1
(ただし、K=(M1+M2)/(N1+N2)であり、Xは試験片上の2点間距離、Lは座標から求めた試験片上の2点間距離、Kは校正係数、M1は試験片左隣校正部材の実測の2点間距離、M2は試験片右隣校正部材の実測の2点間距離、N1は試験片左隣校正部材の座標からの2点間距離、N2は試験片左隣校正部材の座標からの2点間距離を夫々示す)
【0025】
(請求項10記載の発明の特徴)
請求項10記載の発明に係る織物及び編物のプリーツ性試験装置(以下、適宜「請求項10の試験装置」という)は、請求項7から9いずれかの試験装置であって、前記荷重手段が、荷重解放を自動的に行う荷重解放機構と、解放時間を予め設定するタイマーとを備え、前記荷重解放機構が、荷重を加えた後前記タイマーの指令を受けて荷重解放を行うように構成してある。
【0026】
請求項10の試験装置によれば、請求項7から9いずれかの試験装置の作用効果に加え、荷重解放とタイマーの働きにより荷重解放を自動で行うことができるので、試験装置の傍におらないで離れることができるからその分使用者の負担を軽くすることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、その計測誤差を実用可能な範囲にまで減らすことのできる撮像手段を用いた織物及び編物のプリーツ性試験方法及びその装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】プリーツ性試験装置の正面図である。
【図2】プリーツ性試験装置の部分断面図である。
【図3】プリーツ性試験装置の概略平面図である。
【図4】プリーツ性試験方法を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
各図を参照しながら、発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について説明する。
【0030】
(プリーツ率試験装置)
図1乃至3を参照しながら、プリーツ性試験用装置1(以下、適宜「試験用装置1」という)について説明する。試験用装置1を用いて試験する試験片101は、織物及び編物のプリーツである。ここでは、織物の試験片101を試験対象とする。試験片101には、伸縮方向に並ぶ少なくとも2つの校正点103a,103bを描画しておく。この点については、後述する。試験用装置1は、クリップ7、荷重機構9、校正部材3、駆動機構11、カメラ21及びコンピュータ25から概ね構成してある。クリップ7は試験片101の上端部を挟んで保持し、これによって試験片101を懸垂させる懸垂手段として機能する。クリップ7には、試験片101に荷重を加えないときの自重懸垂はもとより、荷重を加えたときに荷重懸垂にも耐え得る保持力が必要である。荷重機構9は、下端部を保持して懸垂させた試験片101に荷重を加える荷重手段として機能する。荷重機構9は、コンプレッサ10によって開閉するエアチャックと自動解放を可能にするタイマーを備えている。
【0031】
校正部材3には、既知間隔をあけて縦列する複数(本実施形態では4個
)の校正点5,・・が描画された部材であって、本実施形態では試験片101の数を3としたので、それぞれの両脇に配するために4個用意した。試験片101,101に挟まれた校正部材3(の校正点5,・・)は、両試験片101,101の共通部材として使用できるので、用意すべき校正部材3の数は、試験片101の数より1つ多い数となる。駆動機構11は、懸垂させた試験片101の両側に配した校正部材3,3を、計測点101a,101bと校正点5,・・とが同一の仮想平面P,P´)(図3参照)上に位置するように試験片101と両校正部材3,3との奥行き方向相対位置を調整する相対位置調整手段として機能する。カメラ21は、試験片101上の計測点101a,101b及び校正部材上の校正点5,・・を撮像して画像データを得る撮像手段である。たとえば、CCDカメラが好適である。なお、図3に示す符号23は、カメラ21の撮像画面を監視するためのモニタを示す。コンピュータ25は、データ処理手段として機能する。
【0032】
(プリーツ性試験方法)
図1乃至4を参照しながら、プリーツ性試験方法について説明する。まず、第1工程として、プリーツ性試験対象となる試験片101の一方の面上に、2つ(3つ以上でもよい)の計測点103a,103bを伸長方向に1列に並べて描画する(S1、計測点描画工程)。描画は、たとえば、細い棒の先端を使って絵具を塗ったりするほか、印刷したり、塗料を吹き付けたり、シール(図示しない)を貼り付けたりすることによって行うことができる。校正点103a,103bは、撮像手段の解像能力や解像手段の設置位置等にもよるが、直径2mm程度の円形が好ましい。色は、試験片101の地色や柄の有無、さらに、撮像手段の解像度等を考慮して適宜選択するとよい。第2工程では、既知間隔をあけて縦列する複数の校正点を描画した校正部材を少なくとも2個用意する(校正部材用意工程、S3)。校正部材3は、伸長させたプリーツ101とほぼ同じか僅かに長い細長板によって校正してある。工程3では、クリップ7によってプリーツ101の上端部を保持することにより荷重懸垂した試験片の両側に校正部材3,3を配するとともに、計測点103a,103bと校正点5,・・とが同一の仮想平面P(図3に実線で示す)上に位置するように試験片3と両校正部材3,3との奥行き方向(図3参照、図1の紙面厚み方向)相対位置を調整する(相対位置調整工程、S5)。相対位置の調整は、図3に示す駆動機構11,・・によって校正部材3,3,・・を、撮像手段であるカメラ21に対して近接離反する方向(奥行き方向)に移動させることによって行うようになっている。工程4では、試験片5の計測点103a,103bをカメラ21撮像して計測点間間隔画像データを得る(計測点間データ取得工程、S7)。計測点間間隔画像データは、コンピュータ25に取り込まれ、そこで処理される。工程5では、前記工程4と同時若しくは前記工程5に前後して、校正点5,・・をカメラ21で撮像して校正点間間隔画像データを得る(校正点間データ工程、S9)。校正点間間隔画像データも、コンピュータ25に取り込まれ、そこで処理される。工程6では、校正点間間隔画像データから得た前記校正点間の間隔と前記既知間隔とから校正係数を算出する(校正係数算出工程、S11)。算出は、コンピュータ25が行う。工程7では、計測点間間隔画像データから得た前記計測点間の間隔に前記校正係数を掛けて前記計測点間の計測値を算出する(計測点間計測工程、S11)。工程8では、記荷重懸垂した試験片5から当該荷重を取り除いて自重懸垂させた後、計測点103a,103bと校正点5,・・とが同一の仮想平面P´(図3に2点鎖線で示す)上に位置するように前記試験片と前記両校正部材との奥行き方向相対位置を再調整する(相対位置再調整工程、S15)。工程9では、前記工程4乃至8の工程と同じ工程によって自重懸垂させた試験片101の前記計測点間の計測値を算出する(計測点間再計測工程、S17)。最後の工程10では、前記工程7で算出した前記計測点間の計測値と前記工程9で算出した前記計測点間の計測値とから試験片のプリーツ率を算出する(プリーツ率算出工程、S19)。
【符号の説明】
【0033】
1 プリーツ性試験装置
3 校正部材
5 校正点
7 クリップ
9 荷重機構
10 コンプレッサ
11 駆動機構
21 カメラ(撮像手段)
23 モニタ
25 コンピュータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、織物及び編物のプリーツ性試験方法とその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な技法で作られている細かく複雑なプリーツ加工を施した製品は、布地のフラットな表情に陰影を与えることからファッション性の高い衣服として、また軽い伸縮性織物素材として女性特に中高年の間で高級品の地位を確立している。JISL1060−2006の織物及び編物のプリーツ性試験方法には、開角度法、外観判定法及び伸長法の3種類の試験方法が決められている。開角度法は平行広幅プリーツ、外観判定法はズボン折り目などの評価に用いられ、伸長法は細かく複雑な新型プリーツに用いられている。この伸長法は懸垂された試験片上の約20cmの2点間距離をたて方向に、かつ非接触で測定しなければならない。直定規を使用した目視測定では容易には測ることができず、詳細に測定するには困難を伴うため、正確で簡易な方法が望まれている。
【0003】
上掲した方法として本願発明者らは次の2つの方法を提案した。第1の方法として、プリーツの試験片に絵具で直径2mm前後の計測点を伸縮方向に2箇所描画した後、これを画像センサの撮像により検出した両計測点の座標から2点間の間隔を求める。さらに、既知間隔をあけて縦列する複数の校正点を描画したボードを試験片の背後に配置して、これを同じ画像センサ(撮像手段)で撮像して計測点間の間隔と校正点間の間隔の相関関係を求め、これに基づいて計測点間の間隔値を校正するようにした(非特許文献1)。
【0004】
しかし、上掲した第1の方法では、ボードが試験片の背後に設置してあるため、撮像装置から見た校正点までの距離と計測点までの距離とが異なり、これが計測誤差を生じさせていた。また、そもそも画像センサ(撮像手段)と計測点との距離は、試験片であるプリーツの伸長によって変化するから、これも計測誤差を生じさせる原因の一つであった。このような計測誤差を減らすには、ボード(校正用点板)の位置調整が有効であることが本願発明者らによって発表された(非特許文献2)。この位置調整に係る方法が第2の方法である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】東京都立産業技術研究センター研究報告、第2号(平成19年11月15日発行)P92〜93
【非特許文献2】東京都立産業技術研究センター研究発表会要旨集(平成20年6月5日発行)P62
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前掲した第2の方法をもってしても、試験片背面にボードを配しているために依然として実用可能な範囲まで計測誤差を減らすことができなかった。本発明は、その計測誤差を実用可能な範囲にまで減らすことのできる撮像手段を用いた織物及び編物のプリーツ性試験方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、次の構成を備えている。項を改めて説明する。なお、いずれかの請求項記載の発明を説明するに当り行う用語の定義等は、その記載順や発明のカテゴリの違いに関わらず、可能な範囲において他の請求項記載の発明にも適用があるものとする。
【0008】
(請求項1記載の発明の特徴)
請求項1記載の発明に係る織物及び編物のプリーツ性試験方法(以下、適宜「請求項1の試験方法」という)は、少なくとも以下の11工程を有することを特徴とする。すなわち、工程1では、プリーツ性試験対象となる試験片の一方の面上に、少なくとも2つの計測点を伸長方向に並べて描画する。工程2では、既知間隔をあけて縦列する複数の校正点を描画した校正部材を少なくとも2個用意する。工程3では、上端部保持により荷重懸垂した試験片の両側に前記校正部材を配するとともに、計測点と校正点とが同一の仮想平面上に位置するように前記試験片と前記両校正部材との奥行き方向相対位置を調整する。試験片と両校正部材のうちいずれかを移動させてもよいし、双方を移動させてもよい。工程4では、前記試験片の前記計測点を撮像手段で撮像して計測点間間隔画像データを得る。工程5では、前記工程4と同時若しくは前記工程5に前後して、前記校正点を前記撮像手段で撮像して校正点間間隔画像データを得る。
工程6では、前記校正点間間隔画像データから得た前記校正点間の間隔と前記既知間隔とから校正係数を算出する。工程7では、前記計測点間間隔画像データから得た前記計測点間の間隔に前記校正係数を掛けて前記計測点間の計測値を算出する。工程8では、前記荷重懸垂した試験片から当該荷重を取り除いて自重懸垂させた後、計測点と校正点とが同一の仮想平面上に位置するように前記試験片と前記両校正部材との奥行き方向相対位置を再調整する。工程9では、前記工程4乃至8の工程と同じ工程によって自重懸垂させた試験片の前記計測点間の計測値を算出する。
【0009】
請求項1の試験方法によれば、上端部保持により荷重懸垂した試験片の両側に前記校正部材を配するとともに、計測点と校正点とが同一の仮想平面上に位置するように前記試験片と前記両校正部材との奥行き方向相対位置を調整することによって、校正点の縦列方向と試験片の伸長方法(すなわち、計測点の並び方向)が一致若しくはほぼ一致する。さらに、撮像手段から見た計測点と校正点との奥行き方向のずれがほとんどなくなるので、撮像手段から見た計測点と校正点との距離の差がほとんどなくなる。ここで前記校正点間間隔画像データから得た前記校正点間の間隔と前記既知間隔とから校正係数を算出し、この校正係数を前記計測点間間隔画像データから得た前記計測点間の間隔に掛けて前記計測点間の計測値を算出する。既知間隔と画像データから得た間隔に基づいて算出した校正係数を用いて計測点間間隔の計測値を算出するから、計測誤差やプリーツ率の誤差を実用可能な範囲まで減らすことができる。
【0010】
(請求項2記載の発明の特徴)
請求項2記載の発明に係る織物及び編物のプリーツ性試験方法(以下、適宜「請求項2の試験方法」という)は、請求項1の試験方法であって、試験片を複数とし、試験片と校正部材とが横方向に交互に配置されている。
【0011】
請求項2の試験方法によれば、請求項1の試験方法の作用効果に加え、試験片を複数とし、前記試験片と前記校正部材とが横方向に交互に配置し、前記試験片各々のプリーツ率算出を個別に行う。
【0012】
(請求項3記載の発明の特徴)
請求項3記載の発明に係る織物及び編物のプリーツ性試験方法(以下、適宜「請求項3の試験方法」という)は、請求項1又は2の試験方法であって、前記縦列する校正点の数が4つであり、かつ、校正点間間隔が等間隔描画されている。
【0013】
請求項3の試験方法によれば、請求項1又は2の試験方法の作用効果に加え、校正点の数を4つとすることにより、試験片の長さにもよるが、校正点の使い勝手がほどよいものとなる。
【0014】
(請求項4記載の発明の特徴)
請求項4記載の発明に係る織物及び編物のプリーツ性試験方法(以下、適宜「請求項4の試験方法」という)は、請求項1から2いずれかの試験方法であって、前記工程8及び前記工程10における校正係数が、次式により算出される。
X=L×K・・・式1
(ただし、K=(M1+M2)/(N1+N2)であり、Xは試験片上の2点間距離、Lは座標から求めた試験片上の2点間距離、Kは校正係数、M1は試験片左隣校正部材の実測の2点間距離、M2は試験片右隣校正部材の実測の2点間距離、N1は試験片左隣校正部材の座標からの2点間距離、N2は試験片左隣校正部材の座標からの2点間距離を夫々示す)
【0015】
請求項4の試験方法によれば、請求項1から3いずれかの試験方法の作用効果が上記式によって奏させることができる。
【0016】
(請求項5記載の発明の特徴)
請求項5記載の発明に係る織物及び編物のプリーツ性試験方法(以下、適宜「請求項5の試験方法」という)は、請求項1から4いずれかの試験方法であって、前記工程11に次いで、さらに試験片の洗濯処理前後の計測時刻をそれぞれ挿入して計測値を計測する工程を有する。
【0017】
請求項5の試験方法によれば、請求項1から4いずれかの試験方法の作用効果に加え、JISL1060に準拠した選択処理前途の計測値を時系列的に把握することができる。よって、より高精度で客観性のある値を得ることができる。
【0018】
(請求項6記載の発明の特徴)
請求項6記載の発明に係る織物及び編物のプリーツ性試験方法(以下、適宜「請求項6の試験方法」という)は、請求項2から5いずれかの試験方法であって、JISL1060(織物及び編物のプリーツ性試験方法、伸長法)に準拠することを特徴とする。
【0019】
請求項6の試験方法によれば、JISL1060に準拠して請求項2から5いずれかの試験方法を実施することになり、この実施によって得た試験結果はより客観性のあるものとして評価される。
【0020】
(請求項7記載の発明の特徴)
請求項7記載の発明に係る織物及び編物のプリーツ性試験装置(以下、適宜「請求項7の試験装置」という)は、伸縮方向に並ぶ少なくとも2つの点が描画された試験片である織物及び編物のプリーツ性の試験用装置であって、次の構成要件を有している。すなわち、
(1)上端部を保持して試験片を自重懸垂させる懸垂手段;
(2)下端部を保持して懸垂させた前記試験片に荷重を解放可能に加える荷重手段;
(3)既知間隔をあけて縦列する複数の校正点が描画された少なくとも2個の校正部材;
(4)懸垂させた試験片の両側に前記校正部材を配するとともに、計測点と校正点とが同一の仮想平面上に位置するように前記試験片と前記両校正部材との奥行き方向相対位置を調整する相対位置調整手段;
(5)試験片上の計測点及び校正部材上の校正点を撮像して画像データを得る撮像手段;
(6)前記画像データを基に、計測点間の距離及び校正点間の距離夫々の実測値と、計測点及び校正点夫々の重心座標とを算出処理して、前記実測値と前記重心座標と前記既知間隔の値と前記実測値とから算出した校正係数とから、前記計測点間の計測値を計測処理するデータ処理手段;及び
(7)計測された計測値を表示する表示手段;
【0021】
請求項7の試験装置によれば、上端部保持により荷重懸垂した試験片の両側に前記校正部材を配するとともに、計測点と校正点とが同一の仮想平面上に位置するように前記試験片と前記両校正部材との奥行き方向相対位置を調整することによって、校正点の縦列方向と試験片の伸長方法(すなわち、計測点の並び方向)が一致若しくはほぼ一致する。さらに、撮像手段から見た計測点と校正点との奥行き方向のずれがほとんどなくなるので、撮像手段から見た計測点と校正点との距離の差がほとんどなくなる。このため、前記計測点間の間隔及び前記校正点間の間隔夫々の実測値並びに計測点及び校正点夫々の重心座標の値がほぼ同一条件化で計測されたことになり、これによって、正確な校正係数が取得できる。正確な校正係数に基づいて算出した計測点間距離の値も正確になる。荷重解放後の相対位置再調整によって荷重解放後も正確な計測点間距離の値を得ることができる。このようにして得た両計測点間距離の値から算出すれば、正確な試験片のプリーツ率を得ることができる。
【0022】
(請求項8記載の発明の特徴)
請求項8記載の発明に係る織物及び編物のプリーツ性試験装置(以下、適宜「請求項8の試験装置」という)は、請求項7の試験装置であって、表示手段が、画像モニタ及び印刷機の少なくともいずれかであることが好ましい。
【0023】
請求項8の試験装置によれば、請求項7の試験装置の作用効果に加え、画像モニタ及び印刷の少なくともいずれかによって試験装置の使用者が試験結果を視覚的に認識することができるようになる。
【0024】
(請求項9記載の発明の特徴)
請求項9記載の発明に係る織物及び編物のプリーツ性試験装置(以下、適宜「請求項9の試験装置」という)は、請求項7又は8の試験装置であって、前記校正係数が、次式により算出される。
X=L×K・・・式1
(ただし、K=(M1+M2)/(N1+N2)であり、Xは試験片上の2点間距離、Lは座標から求めた試験片上の2点間距離、Kは校正係数、M1は試験片左隣校正部材の実測の2点間距離、M2は試験片右隣校正部材の実測の2点間距離、N1は試験片左隣校正部材の座標からの2点間距離、N2は試験片左隣校正部材の座標からの2点間距離を夫々示す)
【0025】
(請求項10記載の発明の特徴)
請求項10記載の発明に係る織物及び編物のプリーツ性試験装置(以下、適宜「請求項10の試験装置」という)は、請求項7から9いずれかの試験装置であって、前記荷重手段が、荷重解放を自動的に行う荷重解放機構と、解放時間を予め設定するタイマーとを備え、前記荷重解放機構が、荷重を加えた後前記タイマーの指令を受けて荷重解放を行うように構成してある。
【0026】
請求項10の試験装置によれば、請求項7から9いずれかの試験装置の作用効果に加え、荷重解放とタイマーの働きにより荷重解放を自動で行うことができるので、試験装置の傍におらないで離れることができるからその分使用者の負担を軽くすることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、その計測誤差を実用可能な範囲にまで減らすことのできる撮像手段を用いた織物及び編物のプリーツ性試験方法及びその装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】プリーツ性試験装置の正面図である。
【図2】プリーツ性試験装置の部分断面図である。
【図3】プリーツ性試験装置の概略平面図である。
【図4】プリーツ性試験方法を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
各図を参照しながら、発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について説明する。
【0030】
(プリーツ率試験装置)
図1乃至3を参照しながら、プリーツ性試験用装置1(以下、適宜「試験用装置1」という)について説明する。試験用装置1を用いて試験する試験片101は、織物及び編物のプリーツである。ここでは、織物の試験片101を試験対象とする。試験片101には、伸縮方向に並ぶ少なくとも2つの校正点103a,103bを描画しておく。この点については、後述する。試験用装置1は、クリップ7、荷重機構9、校正部材3、駆動機構11、カメラ21及びコンピュータ25から概ね構成してある。クリップ7は試験片101の上端部を挟んで保持し、これによって試験片101を懸垂させる懸垂手段として機能する。クリップ7には、試験片101に荷重を加えないときの自重懸垂はもとより、荷重を加えたときに荷重懸垂にも耐え得る保持力が必要である。荷重機構9は、下端部を保持して懸垂させた試験片101に荷重を加える荷重手段として機能する。荷重機構9は、コンプレッサ10によって開閉するエアチャックと自動解放を可能にするタイマーを備えている。
【0031】
校正部材3には、既知間隔をあけて縦列する複数(本実施形態では4個
)の校正点5,・・が描画された部材であって、本実施形態では試験片101の数を3としたので、それぞれの両脇に配するために4個用意した。試験片101,101に挟まれた校正部材3(の校正点5,・・)は、両試験片101,101の共通部材として使用できるので、用意すべき校正部材3の数は、試験片101の数より1つ多い数となる。駆動機構11は、懸垂させた試験片101の両側に配した校正部材3,3を、計測点101a,101bと校正点5,・・とが同一の仮想平面P,P´)(図3参照)上に位置するように試験片101と両校正部材3,3との奥行き方向相対位置を調整する相対位置調整手段として機能する。カメラ21は、試験片101上の計測点101a,101b及び校正部材上の校正点5,・・を撮像して画像データを得る撮像手段である。たとえば、CCDカメラが好適である。なお、図3に示す符号23は、カメラ21の撮像画面を監視するためのモニタを示す。コンピュータ25は、データ処理手段として機能する。
【0032】
(プリーツ性試験方法)
図1乃至4を参照しながら、プリーツ性試験方法について説明する。まず、第1工程として、プリーツ性試験対象となる試験片101の一方の面上に、2つ(3つ以上でもよい)の計測点103a,103bを伸長方向に1列に並べて描画する(S1、計測点描画工程)。描画は、たとえば、細い棒の先端を使って絵具を塗ったりするほか、印刷したり、塗料を吹き付けたり、シール(図示しない)を貼り付けたりすることによって行うことができる。校正点103a,103bは、撮像手段の解像能力や解像手段の設置位置等にもよるが、直径2mm程度の円形が好ましい。色は、試験片101の地色や柄の有無、さらに、撮像手段の解像度等を考慮して適宜選択するとよい。第2工程では、既知間隔をあけて縦列する複数の校正点を描画した校正部材を少なくとも2個用意する(校正部材用意工程、S3)。校正部材3は、伸長させたプリーツ101とほぼ同じか僅かに長い細長板によって校正してある。工程3では、クリップ7によってプリーツ101の上端部を保持することにより荷重懸垂した試験片の両側に校正部材3,3を配するとともに、計測点103a,103bと校正点5,・・とが同一の仮想平面P(図3に実線で示す)上に位置するように試験片3と両校正部材3,3との奥行き方向(図3参照、図1の紙面厚み方向)相対位置を調整する(相対位置調整工程、S5)。相対位置の調整は、図3に示す駆動機構11,・・によって校正部材3,3,・・を、撮像手段であるカメラ21に対して近接離反する方向(奥行き方向)に移動させることによって行うようになっている。工程4では、試験片5の計測点103a,103bをカメラ21撮像して計測点間間隔画像データを得る(計測点間データ取得工程、S7)。計測点間間隔画像データは、コンピュータ25に取り込まれ、そこで処理される。工程5では、前記工程4と同時若しくは前記工程5に前後して、校正点5,・・をカメラ21で撮像して校正点間間隔画像データを得る(校正点間データ工程、S9)。校正点間間隔画像データも、コンピュータ25に取り込まれ、そこで処理される。工程6では、校正点間間隔画像データから得た前記校正点間の間隔と前記既知間隔とから校正係数を算出する(校正係数算出工程、S11)。算出は、コンピュータ25が行う。工程7では、計測点間間隔画像データから得た前記計測点間の間隔に前記校正係数を掛けて前記計測点間の計測値を算出する(計測点間計測工程、S11)。工程8では、記荷重懸垂した試験片5から当該荷重を取り除いて自重懸垂させた後、計測点103a,103bと校正点5,・・とが同一の仮想平面P´(図3に2点鎖線で示す)上に位置するように前記試験片と前記両校正部材との奥行き方向相対位置を再調整する(相対位置再調整工程、S15)。工程9では、前記工程4乃至8の工程と同じ工程によって自重懸垂させた試験片101の前記計測点間の計測値を算出する(計測点間再計測工程、S17)。最後の工程10では、前記工程7で算出した前記計測点間の計測値と前記工程9で算出した前記計測点間の計測値とから試験片のプリーツ率を算出する(プリーツ率算出工程、S19)。
【符号の説明】
【0033】
1 プリーツ性試験装置
3 校正部材
5 校正点
7 クリップ
9 荷重機構
10 コンプレッサ
11 駆動機構
21 カメラ(撮像手段)
23 モニタ
25 コンピュータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも以下の工程を有することを特徴とする織物及び編物のプリーツ性試験方法。
(工程1)プリーツ性試験対象となる試験片の一方の面上に、少なくとも2つの計測点を伸長方向に並べて描画する工程;
(工程2)既知間隔をあけて縦列する複数の校正点を描画した校正部材を少なくとも2個用意する工程;
(工程3)上端部保持により荷重懸垂した試験片の両側に前記校正部材を配するとともに、計測点と校正点とが同一の仮想平面上に位置するように前記試験片と前記両校正部材との奥行き方向相対位置を調整する工程;
(工程4)前記試験片の前記計測点を撮像手段で撮像して計測点間間隔画像データを得る工程;
(工程5)前記工程5と同時若しくは前記工程5に前後して、前記校正点を前記撮像手段で撮像して校正点間間隔画像データを得る工程;
(工程6)前記校正点間間隔画像データから得た前記校正点間の間隔と前記既知間隔とから校正係数を算出する工程;
(工程7)前記計測点間間隔画像データから得た前記計測点間の間隔に前記校正係数を掛けて前記計測点間の計測値を算出する工程;
(工程8)前記荷重懸垂した試験片から当該荷重を取り除いて自重懸垂させた後、計測点と校正点とが同一の仮想平面上に位置するように前記試験片と前記両校正部材との奥行き方向相対位置を再調整する工程;
(工程9)前記工程4乃至8の工程と同じ工程によって自重懸垂させた試験片の前記計測点間の計測値を算出する工程;
(工程10)前記工程7で算出した前記計測点間の計測値と前記工程9で算出した前記計測点間の計測値とから試験片のプリーツ率を算出する工程。
【請求項2】
試験片を複数とし、
前記試験片と前記校正部材とが横方向に交互に配置し、
前記試験片各々のプリーツ率算出を個別に行う
ことを特徴とする請求項1記載の織物及び編物のプリーツ性試験方法。
【請求項3】
前記縦列する校正点の数が4つであり、かつ、校正点間間隔が等間隔描画されていることを特徴とする
請求項1又は2記載の織物及び編物のプリーツ性試験方法。
【請求項4】
前記工程8及び前記工程10における校正係数が、次式により算出される
ことを特徴とする請求項1から3いずれか記載の織物及び編物のプリーツ性試験方法。
X=L×K・・・式1
(ただし、K=(M1+M2)/(N1+N2)であり、Xは試験片上の2点間距離、Lは座標から求めた試験片上の2点間距離、Kは校正係数、M1は試験片左隣校正部材の実測の2点間距離、M2は試験片右隣校正部材の実測の2点間距離、N1は試験片左隣校正部材の座標からの2点間距離、N2は試験片左隣校正部材の座標からの2点間距離を夫々示す)
【請求項5】
前記工程11に次いで、さらに試験片の洗濯処理前後の計測時刻(?)をそれぞれ挿入して計測値を計測する工程を有する
ことを特徴とする請求項1から4いずれか記載の織物及び編物のプリーツ性試験装置。
【請求項6】
JISL1060(織物及び編物のプリーツ性試験方法、伸長法)に準拠することを特徴とする請求項2から5いずれか記載の織物及び編物のプリーツ性試験方法。
【請求項7】
伸縮方向に並ぶ少なくとも2つの計測点が描画された試験片である織物及び編物のプリーツ性の試験用装置であって、
(1)上端部を保持して試験片を自重懸垂させる懸垂手段;
(2)下端部を保持して懸垂させた前記試験片に荷重を解放可能に加える荷重手段;
(3)既知間隔をあけて縦列する複数の校正点が描画された少なくとも2個の校正部材;
(4)懸垂させた試験片の両側に前記校正部材を配するとともに、計測点と校正点とが同一の仮想平面上に位置するように前記試験片と前記両校正部材との奥行き方向相対位置を調整する相対位置調整手段;
(5)試験片上の計測点及び校正部材上の校正点を撮像して画像データを得る撮像手段;
(6)前記画像データを基に、計測点間の距離及び校正点間の距離夫々の実測値と、計測点及び校正点夫々の重心座標とを算出処理して、前記実測値と前記重心座標と前記既知間隔の値と前記実測値とから算出した校正係数とから、前記計測点間の計測値を計測処理するデータ処理手段;及び
(7)計測された計測値を表示する表示手段;
を有することを特徴とする織物及び編物のプリーツ性試験装置。
【請求項8】
表示手段が、画像モニタ及び印刷機の少なくともいずれかである
ことを特徴とする請求項7記載のプリーツ性試験装置。
【請求項9】
前記校正係数が、次式により算出される
ことを特徴とする請求項7又は8記載の織物及び編物のプリーツ性試験装置。
X=L×K・・・式1
(ただし、K=(M1+M2)/(N1+N2)であり、Xは試験片上の2点間距離、Lは座標から求めた試験片上の2点間距離、Kは校正係数、M1は試験片左隣校正部材の実測の2点間距離、M2は試験片右隣校正部材の実測の2点間距離、N1は試験片左隣校正部材の座標からの2点間距離、N2は試験片左隣校正部材の座標からの2点間距離を夫々示す)
【請求項10】
前記荷重手段が、荷重解放を自動的に行う荷重解放機構と、解放時間を予め設定するタイマーとを備え、
前記荷重解放機構が、荷重を加えた後前記タイマーの指令を受けて荷重解放を行うように構成してある
ことを特徴とする請求項7から9いずれか記載の織物及び編物のプリーツ性試験装置。
【請求項1】
少なくとも以下の工程を有することを特徴とする織物及び編物のプリーツ性試験方法。
(工程1)プリーツ性試験対象となる試験片の一方の面上に、少なくとも2つの計測点を伸長方向に並べて描画する工程;
(工程2)既知間隔をあけて縦列する複数の校正点を描画した校正部材を少なくとも2個用意する工程;
(工程3)上端部保持により荷重懸垂した試験片の両側に前記校正部材を配するとともに、計測点と校正点とが同一の仮想平面上に位置するように前記試験片と前記両校正部材との奥行き方向相対位置を調整する工程;
(工程4)前記試験片の前記計測点を撮像手段で撮像して計測点間間隔画像データを得る工程;
(工程5)前記工程5と同時若しくは前記工程5に前後して、前記校正点を前記撮像手段で撮像して校正点間間隔画像データを得る工程;
(工程6)前記校正点間間隔画像データから得た前記校正点間の間隔と前記既知間隔とから校正係数を算出する工程;
(工程7)前記計測点間間隔画像データから得た前記計測点間の間隔に前記校正係数を掛けて前記計測点間の計測値を算出する工程;
(工程8)前記荷重懸垂した試験片から当該荷重を取り除いて自重懸垂させた後、計測点と校正点とが同一の仮想平面上に位置するように前記試験片と前記両校正部材との奥行き方向相対位置を再調整する工程;
(工程9)前記工程4乃至8の工程と同じ工程によって自重懸垂させた試験片の前記計測点間の計測値を算出する工程;
(工程10)前記工程7で算出した前記計測点間の計測値と前記工程9で算出した前記計測点間の計測値とから試験片のプリーツ率を算出する工程。
【請求項2】
試験片を複数とし、
前記試験片と前記校正部材とが横方向に交互に配置し、
前記試験片各々のプリーツ率算出を個別に行う
ことを特徴とする請求項1記載の織物及び編物のプリーツ性試験方法。
【請求項3】
前記縦列する校正点の数が4つであり、かつ、校正点間間隔が等間隔描画されていることを特徴とする
請求項1又は2記載の織物及び編物のプリーツ性試験方法。
【請求項4】
前記工程8及び前記工程10における校正係数が、次式により算出される
ことを特徴とする請求項1から3いずれか記載の織物及び編物のプリーツ性試験方法。
X=L×K・・・式1
(ただし、K=(M1+M2)/(N1+N2)であり、Xは試験片上の2点間距離、Lは座標から求めた試験片上の2点間距離、Kは校正係数、M1は試験片左隣校正部材の実測の2点間距離、M2は試験片右隣校正部材の実測の2点間距離、N1は試験片左隣校正部材の座標からの2点間距離、N2は試験片左隣校正部材の座標からの2点間距離を夫々示す)
【請求項5】
前記工程11に次いで、さらに試験片の洗濯処理前後の計測時刻(?)をそれぞれ挿入して計測値を計測する工程を有する
ことを特徴とする請求項1から4いずれか記載の織物及び編物のプリーツ性試験装置。
【請求項6】
JISL1060(織物及び編物のプリーツ性試験方法、伸長法)に準拠することを特徴とする請求項2から5いずれか記載の織物及び編物のプリーツ性試験方法。
【請求項7】
伸縮方向に並ぶ少なくとも2つの計測点が描画された試験片である織物及び編物のプリーツ性の試験用装置であって、
(1)上端部を保持して試験片を自重懸垂させる懸垂手段;
(2)下端部を保持して懸垂させた前記試験片に荷重を解放可能に加える荷重手段;
(3)既知間隔をあけて縦列する複数の校正点が描画された少なくとも2個の校正部材;
(4)懸垂させた試験片の両側に前記校正部材を配するとともに、計測点と校正点とが同一の仮想平面上に位置するように前記試験片と前記両校正部材との奥行き方向相対位置を調整する相対位置調整手段;
(5)試験片上の計測点及び校正部材上の校正点を撮像して画像データを得る撮像手段;
(6)前記画像データを基に、計測点間の距離及び校正点間の距離夫々の実測値と、計測点及び校正点夫々の重心座標とを算出処理して、前記実測値と前記重心座標と前記既知間隔の値と前記実測値とから算出した校正係数とから、前記計測点間の計測値を計測処理するデータ処理手段;及び
(7)計測された計測値を表示する表示手段;
を有することを特徴とする織物及び編物のプリーツ性試験装置。
【請求項8】
表示手段が、画像モニタ及び印刷機の少なくともいずれかである
ことを特徴とする請求項7記載のプリーツ性試験装置。
【請求項9】
前記校正係数が、次式により算出される
ことを特徴とする請求項7又は8記載の織物及び編物のプリーツ性試験装置。
X=L×K・・・式1
(ただし、K=(M1+M2)/(N1+N2)であり、Xは試験片上の2点間距離、Lは座標から求めた試験片上の2点間距離、Kは校正係数、M1は試験片左隣校正部材の実測の2点間距離、M2は試験片右隣校正部材の実測の2点間距離、N1は試験片左隣校正部材の座標からの2点間距離、N2は試験片左隣校正部材の座標からの2点間距離を夫々示す)
【請求項10】
前記荷重手段が、荷重解放を自動的に行う荷重解放機構と、解放時間を予め設定するタイマーとを備え、
前記荷重解放機構が、荷重を加えた後前記タイマーの指令を受けて荷重解放を行うように構成してある
ことを特徴とする請求項7から9いずれか記載の織物及び編物のプリーツ性試験装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2010−196202(P2010−196202A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42804(P2009−42804)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年8月25日 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター発行の「TIRI News 2008年9月号 通巻29号」に発表、平成20年11月14日 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター発行の「地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター 研究報告 第3号(2008)」に発表、平成21年1月10日 社団法人繊維学会発行の「FIBER 繊維学会誌 第65巻1号 通巻第754号」に発表
【出願人】(506209422)地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センター (134)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年8月25日 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター発行の「TIRI News 2008年9月号 通巻29号」に発表、平成20年11月14日 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター発行の「地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター 研究報告 第3号(2008)」に発表、平成21年1月10日 社団法人繊維学会発行の「FIBER 繊維学会誌 第65巻1号 通巻第754号」に発表
【出願人】(506209422)地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センター (134)
【Fターム(参考)】
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