説明

織物用の汚れ検出体

織物は、汚れを隠す特性および汚れ易い特性を有する糸から形成され、後者の糸はいったん織物が汚れると織物表面で一方を他方から視覚的に識別可能である。汚れ易い糸は複葉繊維すなわちフィラメントから形成された糸からなり、汚損粒子は円形突出面の窪みに集まる。好ましくは、汚れを隠す糸は中空合成繊維すなわちフィラメントからなる。1本以上の汚れ易いタイプの糸を、織物、たとえばカーペットに組み込むことで、織物が汚れたとき、糸は互いに明確に目視で識別できるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は織物構造および織物の汚れの検出を可能にする織物を形成する方法に関し、さらに詳しくは、複葉(multi-lobal)繊維すなわちフィラメントと、いわゆる中空(hollowfil)繊維すなわちフィラメントとからなる糸の組合わせを有する織物に関する。
【背景技術】
【0002】
織物、とりわけカーペットは時間が経ち使用が進むにつれて汚れていく。一方、カーペットを定期クリーニングするために計画を立てることはできるが、たいていの場合、カーペットの汚れは気付かれないか、あるいはクリーニングには効果がない。特に商業ビルに敷設されるカーペットのための通常のメンテナンススケジュールは、とりわけ、満足できるカーペットの外観の維持に必要である。というのは、適当なカーペットのメンテナンスはたいていその耐用期間を引き延ばせるからである。見苦しい外観は別にして、効果のないクリーニングはカーペットの耐用期間を短縮することがある。したがって、クリーニングの必要性を示す程度まで汚れてしまった織物、たとえば敷物類を識別する必要が、あるいは効果のないクリーニングが施された織物を識別する必要がある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の好ましい実施形態によれば、組込み式の汚れ検出体を有する織物、たとえばカーペットが製造される。汚れていない織物に関しては、汚れ検出体は、視覚的に、あるいはさもなければ織物の残りの部分から認識不可能である。この結果、織物、たとえば敷物類の美観的特質は、汚れ検出体を織物に組み込むことによって全く低下しない。だが、織物が、嫌悪を感じる汚れ度合いに達してしまった後では、汚れ検出体は、外見上、織物から浮き出る。すなわち織物の地に対して目立つようになる。
【0004】
上記の事項を達成するため、汚れ検出体は、織物、たとえばカーペットに組み込まれた1本以上の糸を具備し、この糸は断面複葉状の繊維(複葉繊維)すなわちフィラメント構造からなるが、この繊維の外部円形突出部の窪みは塵埃を集める性質を持つ。好ましくはこの複葉糸は、残りの糸(これは、カーペット構造においては好ましくは中空繊維からなる)に対して、織物内に非常に低い比率で組み込まれる。中空繊維すなわちフィラメントは通常、直線で囲まれた断面を有しており、この繊維の内部には一つ以上の長尺な空隙すなわちチューブが存在し、この空隙すなわちチューブは空気で満たされている。中空繊維はまた、織物に汚損粒子が集積し保持されるのを阻止する傾向のある外面形状を有する。一方、複葉繊維からなりかつ織物に汚れ検出体すなわち表示体として組み込まれた糸は、汚損粒子が溜まることができかつそれを捕らえたままにしておくことができる複数の領域を有する。したがって、糸の組合わせを使用することにより、その一方の種類のものは汚損粒子を集めて保持する傾向のない繊維から形成され、これに対して他の種類のものは汚損粒子を集めて保持する傾向のある繊維から形成される。複葉繊維からなる糸の汚損粒子を集めて保持する機能は、織物の他の糸から外観的に目立つようになり、こうして織物をクリーニングする必要性が示される。
【0005】
複葉繊維からなる糸は好ましくは、複葉繊維からなる糸による汚損粒子の収集および保持が中空糸の背景に対して、はっきりと見えるように、中空糸に対して非常に低い比率で組み込まれる。糸の中空繊維および複葉繊維は汚損粒子の保持について異なる能力を有するが、汚れの表示はまた、光回折による中空糸の表面上の汚損粒子からなる斑点の拡大の極小化に比べ、複葉繊維からなる複葉糸の糸表面上の汚損粒子からなる斑点により明るさが強くなることによってもたらされる。この結果、二つの異なる種類の糸の汚損粒子の収集および保持に関する差は別にして、上記の付加的な汚れ表示機構は、汚れの表示体およびクリーニングを必要とする織物の汚れの程度の有用な表示体としての、糸の組合わせに関する能力をさらに向上させる、と考えられる。
【0006】
三葉繊維(Tri-lobal fiber)によって糸を形成するのが好ましく、これは、その構造に固有の三つの円形突出部がこの円形突出部間に塵埃を集める傾向のある窪みを付与するというホールマーク(hallmark)特性を有する。三葉糸は合成繊維から形成でき、この合成繊維は、ポリ乳酸基、ポリエステル、P.T.T.、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ナイロン6、ナイロン6.6、ナイロン6.12、ポリアミド、ビスコース、押出し金属繊維、および乳、大豆または海草のような自然発生的非合成原料をベースとする繊維を含んでいてもよい。中空糸は、特に敷物類のためにはナイロン6およびポリプロピレンから、そして非カーペット用途に関しては他の繊維からなっていてもよい。さらに中空糸は合成繊維から形成でき、この合成繊維は、三葉糸と同様に、ポリ乳酸基、ポリエステル、P.T.T.、ポリオレフィン、ナイロン6.6、ナイロン6.12、ポリアミド、ビスコース、押出し金属繊維、および乳、大豆または海草のような自然発生的非合成原料をベースとする繊維を含んでいてもよい。汚れ検出体は織物の美観的デザインの一部として、すなわちパターンの要素として組み込まれてもよいことも理解されたい。たとえば、三葉糸からなる汚れ検出体または表示体は、カーペットのパターン化された要素、たとえばバラの花模様の周りの明色(light-colored)輪郭線であってもよい。
【0007】
本発明による好ましい実施形態では、織物の汚れを看視するための方法であって、(a)汚れを隠す糸と、少なくとも1本の汚れ易い糸とを備えた織物を提供するステップと、(b)上記織物の汚れの程度の表示体として、この織物中の、1本の汚れ易い糸と汚れを隠す糸とを視覚的に識別するステップと、を具備する方法が提供される。
【0008】
本発明によるさらに好ましい実施形態では、カーペットの汚れを看視するための方法であって、(a)カーペットに、それが汚れていないときにはカーペットの技巧面(technical face)に視覚的に識別不能な美観特性を付与するよう、中空繊維からなる糸および複葉繊維からなる糸を用いてカーペットを形成するステップと、(b)カーペットの汚れに応じて上記糸を互いに視覚的に識別するステップと、を具備する方法が提供される。
【0009】
本発明によるさらに好ましい実施形態では、それ自身に汚れ表示体を有する織物であって、支配的に汚れを隠す糸および少なくとも1本の汚れ易い糸を具備してなり、汚れ易い糸が、織物の汚れの程度に関する表示体として、汚れを隠す糸と汚れ易い糸との間の視覚的識別を可能にする織物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1を参照すると、概して10で示す織物、たとえばカーペットが示されており、これはそれ自体に組み込まれた汚れ表示体を有する。カーペットの図示された好ましい実施形態において、糸12は基体14を経て房状となっており、糸12はカーペットの技巧面上でループを形成している。房状となったカットループパイルを、図1に示す房状になったループパイルの代わりに設けることが可能であることが分かるであろう。図1のカーペットは、このカーペット内に組み込まれた一つ以上の、汚れを表示する房状になった糸を含み、この汚れを表示する房状になった糸は他の汚れを隠す糸と視覚的には区別できず、この汚れを隠す糸がカーペットの支配的な糸をなしている。ゆえに、図1に示すカーペットは、2種類の糸の間に、すなわちカーペットの技巧面を形成する、汚れを隠す糸と汚れを表示する糸との間に視覚的識別特徴を示しておらず、したがって図1のカーペットはきれいなカーペット状態である。すなわち、カーペットの技巧面は汚れを見せないので、カーペットは汚れが嫌悪を感じさせない程度まできれいである。
【0011】
「汚れを隠す(soiling-hiding)」および「汚れ易い(soiling-prone)」という用語、あるいは「汚れを表示する(soiling-indicating)」という用語は相対的用語であり、ある種類の、すなわち「汚れを隠す」糸は、同じ程度の汚れに関して、他の種類の、すなわち「汚れ易い」あるいは「汚れを表示する」糸よりも、たいてい、汚損すなわち汚れの影響を目立たせない、ということを意味する。
【0012】
図2を参照すると、カーペット10はある程度の汚れを示しているが、これは嫌悪を感じさせるものである。図2において、汚れを表示する糸16は汚れを隠す糸18に挟まれており、認識することができ、しかも糸18から浮き出ている。この特定の実施形態では、一続きの汚れを表示する糸16は、織物の特定の部分に平行な列をなして配置されている。たとえば、この列は、壁に隣接するカーペットの縁部付近に配置可能であり、これによって汚れ表示体は、容易には公衆の目に触れないが、カーペットのメンテナンスまたはクリーニング係り、および汚れの表示を見つけるにはカーペットのどこを探せばよいかを知っている者には認識可能である。つまり、汚れ易い糸すなわち汚損粒子を保持する糸16の一つ以上の列が、好ましくは、カーペットの目立たない領域に隣接してカーペットに設けられる。これによって、汚れの表示は誰の目にも見えるが、糸のこの視覚的差異は、カーペットのメンテナンスあるいはクリーニング係りに、クリーニングの必要性を知らせる。
【0013】
図3および図4を参照すると、織物は、汚れ易い繊維22からなる糸16および汚れを隠す繊維24からなる糸18を組み合わせることにより形成されている。それは、汚れを隠す繊維24と汚れ易い繊維22からなる糸の組合わせであり、後者の繊維22は、織物における2種類の糸の間で特有の視覚的コントラストをもたらし、織物の汚れの嫌悪を感じさせる度合いの指標を提供する。中空繊維18は合成繊維からなり、かつ概して、糸の内部を通って延在する一つ以上のチューブすなわち管路28を備えた、断面が直線で囲まれた外形の側面26を有する。これらの管路は通常、空気で満たされている。
【0014】
図4および図5を参照すると、汚れを表示する糸16を形成する繊維22は、好ましくは複葉断面の外部形状を、たとえば図示する三葉形状を有する。汚れを表示する糸を形成する複葉繊維22の側面すなわち脚30の特性によって、汚損粒子、たとえば粒子32が糸の円形突出部の窪みに沿って集まろうとする。ゆえに、図3に示す中空繊維24からなる糸に汚損粒子が集められかつ保持されるよりも大量に(撚り合わされて糸16になったとき)複葉繊維の窪み内に汚損粒子が集まりかつ保持される。したがって、カーペットの技巧面を経て現れるように1本以上の汚れ易い糸を織物に組み込むことにより、汚れ易い糸は、支配的に汚れを隠す糸18の背景に対して視覚的にはっきりと認識できるようになり、織物たとえばカーペットが、クリーニングが望ましい程度まで汚れてしまったという目安を与える。
【0015】
糸16を形成する複葉繊維22は、さまざまな合成繊維から形成することができる。たとえば、糸16を形成する好ましい三葉繊維22は、ポリ乳酸基、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ナイロン、ポリアミド、押出し金属繊維、あるいは自然発生的な非合成原料をベースとする繊維から形成されてもよい。たとえば敷物類に使用するため、中空糸はナイロン6およびポリプロピレンから形成されてもよい。
【0016】
さらに、汚れの表示は、円形突出部表面上の汚損粒子の斑点により複葉糸の明るさが強くなることによって良好なものとなる。これは、光回折による中空糸の表面上の汚損粒子の斑点の実質的な拡大の欠如と対照をなす。したがって、中空糸により収集および保持される汚損粒子が比較的減少するのに比べ、汚れの表示が複葉糸による汚損粒子の収集および保持によってもたらされるだけでなく、複葉糸の窪みに集められ保持される汚損粒子により明るさが増強されることによって表示が良好なものとなる。
【0017】
本発明について、目下、最も実用的でかつ好ましい実施形態であると考えられるものに関して説明してきたが、本発明は上で開示した実施形態に限定されるべきではなく、それどころか請求項の精神および範囲内に含まれるさまざまな変更および均等構成を包含することを意図している、ということを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の好ましい実施形態による、それ自身に組み込まれた汚れ表示体を有する、汚れていない織物(たとえばカーペット)の一部の斜視図である。
【図2】汚れ表示体がカーペットの技巧面から視覚的に浮き出ている状態での図1に類似の図である。
【図3】それ自身の汚れ表示体を有する織物の糸に使用された中空繊維を示す拡大断面図である。
【図4】それ自身の汚れ表示体を有する織物の糸に使用された三葉繊維を示す拡大断面図である。
【図5】図3および図4に示す繊維からなりかつそれ自身の汚れ表示体を含んでいるカーペットにおける隣接する糸の拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0019】
10 カーペット(織物)
12 糸
14 基体
16 汚れを表示する糸
18 汚れを隠す糸
22 汚れ易い繊維
24 汚れを隠す繊維
26 側面
28 管路(チューブ)
30 脚
32 粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
織物の汚れを看視する方法であって、
(a)汚れを隠す糸と、少なくとも1本の汚れ易い糸とを備えた前記織物を提供するステップと、
(b)前記織物の汚れの程度の表示体として、前記織物中の、前記1本の汚れ易い糸と汚れを隠す糸とを視覚的に識別するステップと
を具備することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記汚れを隠す糸は、中空繊維からなる糸を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記汚れ易い糸は、複葉繊維からなる糸を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記汚れ易い糸は、三葉繊維からなる糸を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記汚れを隠す糸は中空繊維からなる糸を含み、かつ前記汚れ易い糸は複葉繊維からなる糸を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
複数本の汚れ易い糸を用いて前記織物を形成することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
複数本の汚れ易い糸またはその群を、前記織物の少なくとも選択された領域において、互いに離間させることを含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
汚れを隠す糸を支配的に用いて前記織物を形成することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記汚れ易い糸は合成繊維からなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記汚れ易い糸は、ポリ乳酸基、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ナイロン、ポリアミド、押出し金属繊維、および自然発生的な非合成原料をベースにした繊維からなる群から選ばれた一つからなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記汚れを隠す糸は合成繊維からなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記汚れ易い糸は、ポリ乳酸基、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ナイロン、ポリアミド、押出し金属繊維、および自然発生的な非合成原料をベースにした繊維からなる群から選ばれた一つからなることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記織物はカーペットを形成しており、
前記汚れ易い糸を、前記カーペットの汚れに応じて前記カーペットの技巧面において前記汚れを隠す糸から視覚的に目立たせ、これによってカーペットの掃除が必要であることを視覚的に表示することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
カーペットの汚れを看視する方法であって、
(a)カーペットに、それが汚れていないときにはカーペットの技巧面に視覚的に識別不能な美観特性を付与するよう、中空繊維からなる糸および複葉繊維からなる糸を用いてカーペットを形成するステップと、
(b)前記カーペットの汚れに応じて前記糸を互いに視覚的に識別するステップと
を具備することを特徴とする方法。
【請求項15】
それ自身に汚れ表示体を有する織物であって、
支配的に汚れを隠す糸および少なくとも1本の汚れ易い糸を具備してなり、
前記汚れ易い糸は、前記織物の汚れの程度に関する表示体として、前記汚れを隠す糸と前記汚れ易い糸との間の視覚的識別を可能にすることを特徴とする織物。
【請求項16】
前記1本の糸は合成複葉繊維からなることを特徴とする請求項15に記載の織物。
【請求項17】
前記1本の糸は三葉繊維からなることを特徴とする請求項16に記載の繊維。
【請求項18】
前記支配的に汚れを隠す糸は合成中空繊維からなることを特徴とする請求項16に記載の織物。
【請求項19】
カーペットを形成する請求項15に記載の織物であって、前記汚れを隠す糸および前記1本の汚れ易い糸は前記カーペットの技巧面に視覚的に現れることを特徴とする織物。
【請求項20】
前記汚れを隠す糸および前記1本の汚れ易い糸は、前記カーペットの一部を形成する基体を通って房状とされていることを特徴とする請求項19に記載の織物。
【請求項21】
前記汚れを隠す糸を備えた面を有すると共に、前記1本の汚れ易い糸が視認可能に前記面に露出しており、織物が汚れていないときには互いに区別不可能であることを特徴とする請求項15に記載の織物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−521413(P2007−521413A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517737(P2006−517737)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/020735
【国際公開番号】WO2005/007954
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(504014613)モホーク・ブランズ・インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】