説明

織物

【課題】 経糸がセルロース系短繊維の紡績糸で構成された織物の風合を損なうことがなく、着用快適性に優れた織物を提供するものである。
【解決手段】 経糸が、ポリトリメチレンテレフタレート系短繊維(A)とセルロース系短繊維(B)との混紡糸、緯糸がポリトリメチレンテレフタレート系繊維マルチフィラメント糸の捲縮糸で構成された織物であって、混紡糸の混紡比率(質量%)が(A)/(B)=5〜35/95〜65であることを特徴とする織物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】

本発明は、経糸がセルロース系短繊維の紡績糸で構成された織物に関し、さらに詳しくは、経糸が該織物の風合を損なうことがなく、着用快適性に優れた織物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、経糸及び緯糸に、綿に代表される植物系繊維と、その一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維フィラメント糸を混用した織物は、経糸及び緯糸方向共に優れたストレッチ性を有する織物となり、ジーンズ等に有用であることが開示されている。
しかし、経糸に植物系繊維と潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維フィラメント糸を混用すると経糸植物系繊維使いの織物風合が損なわれるという欠点があった。
【特許文献1】特開2002−155449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、経糸がセルロース系短繊維の紡績糸で構成された織物の風合を損なうことがなく、着用快適性に優れた織物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、経糸に特定の混紡糸を用いると、織物の風合を損なうことがなく、着用快適性に優れた織物が得られることを究明し、本発明に到達したものである。
【0005】
すなわち、本願で特許請求される発明は下記の通りである。
(1)経糸が、ポリトリメチレンテレフタレート系短繊維(A)とセルロース系短繊維(B)との混紡糸、緯糸が、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維マルチフィラメント糸の捲縮糸で構成された織物であって、該混紡糸の混紡比率(質量%)が(A)/(B)=5〜35/95〜65であることを特徴とする織物。
(2)緯糸が捲縮糸を芯糸とした鞘芯構造紡績糸であることを特徴とする(1)記載の織物。
(3)捲縮糸が、二種以上のポリエステル成分からなり、その一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維であることを特徴とする(1)または(2)記載の織物。
(4)捲縮糸が、二種以上のポリエステル成分からなり、その一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維の仮撚加工糸であることを特徴とする(1)ないし(3)のいずれかに記載の織物。
【発明の効果】
【0006】
本発明は経糸がセルロース系短繊維の紡績糸で構成された織物の風合を損なわずに着用快適性に優れた織物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明において、緯糸に用いるポリトリメチレンテレフタレート系繊維マルチフィラメント糸の捲縮糸とは、捲縮伸長率が100%以上、400%以下が好ましく、特に120%〜400%、さらには150%〜400%がより好ましい。また、捲縮弾性率は70%以上が好ましく特に80〜100%さらに90〜100%である。このような捲縮糸としては、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維の仮撚加工糸、ニットデニット糸、押し込み加工糸等があるが仮撚加工糸が好ましく、特に好ましくは、少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維であり、さらに好ましくは、この潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維の仮撚加工糸である。
【0008】
本発明の捲縮糸の好適例である仮撚加工糸は、一般に用いられているピンタイプ、フリクションタイプ、ニップベルトタイプ、エアー加撚タイプ等いかなる形式の仮撚り機を用いて製造されたものでもよいが、1ヒーター仮撚(ノンセットタイプ)の方が、2ヒーター仮撚(セットタイプ)より好ましい。
【0009】
仮撚ヒーター温度は、第1ヒーターの出口直後の糸条温度が好ましくは100〜200℃、特に120〜180℃、さらには130〜170℃が好ましく、この範囲になるようにヒーター温度が設定される。また、第2ヒーター温度は好ましくは100〜210℃、特に第一ヒーターの出口直後の糸条温度に対して−30〜+50℃の範囲とするのが好ましい。第2ヒーター内のオーバーフィード率は+3%〜+30%とするのが好ましい。
【0010】
仮撚数T1は、ポリエチレンテレフタレート系繊維の仮撚加工において通常に用いられる範囲でよく、次式で計算される。この場合、仮撚数の係数(K1)の値が18500〜37000の範囲であることが好ましく、仮撚糸の太さによって好ましい仮撚数(T1)が決定される。
T1(T/m)=K1/(原糸の繊度(dtex))0.5
仮撚加工糸は、無撚で用いても良いが、仮撚方向と逆方向に追撚を施した追撚仮撚加工糸、または予め追撚した方向と異方向に仮撚加工した異方向先撚仮撚加工糸が、さらに高い伸縮性が得られるので好ましい。
【0011】
追撚仮撚加工糸の追撚数(T2)は次式で計算される撚係数(K2)が2700〜13000であることが好ましく、より好ましくは3000〜10000の範囲である。
T2(T/m)=K2/(仮撚加工糸の繊度:dtex)0.5
追撚後はスチームセット等の方法により60〜80℃の温度で30〜60分の撚止めセットを施すことが好ましい。
【0012】
異方向先撚仮撚加工糸の仮撚数(T3)は、次式で計算される仮撚数の係数(K3)の値が21000〜33000であることが好ましく、より好ましくは25000〜32000の範囲である。
T3(T/m)=K3/(先撚糸の繊度:dtex)0.5+T4
【0013】
先撚数(T4)は次式で計算される撚係数(K4)が2700〜13000であることが好ましく、より好ましくは4500〜12000の範囲である。
T4(T/m)=K4/(原糸の繊度:dtex)0.5
仮撚加工に先立って、予め先撚を加えた先撚糸は、スチームセット等の方法により60〜80℃の温度で30〜60分の撚止めを施すことが好ましい。
【0014】
本発明の捲縮糸の好適例である潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維とは、少なくとも二種のポリエステル成分で構成(具体的にはサイドバイサイド型または偏芯芯鞘型に接合されたものが多い)されているものであり、熱処理によって捲縮を発現するものである。二種のポリエステル成分の複合比(一般的に質量%で70/30〜30/70の範囲内のものが多い)、接合面形状(直線または曲線形状のものがある)は特に限定されない。
本発明に用いる潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維は、少なくともその一成分がポリトリメチレンテレフタレートであることに特徴がある。具体的には、特開2001−40537号公報に開示されているようなポリトリメチレンテレフタレートを一成分とするものがある。
【0015】
即ち、二種のポリエステルポリマーをサイドバイサイド型または偏芯芯鞘型に接合された複合繊維であり、サイドバイサイド型の場合、二種のポリエステルポリマーの溶融粘度比が、1.00〜2.00が好ましく、偏芯芯鞘型の場合は、鞘ポリマーと芯ポリマーのアルカリ減量速度比は、3倍以上鞘ポリマーが速いことが好ましい。
具体的なポリマーの組み合わせとしては、ポリトリメチレンテレフタレート(テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、1.3−プロパンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、エチレングリコール、ブタンジオール等のグリコール類やイソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。また、他ポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい。)とポリエチレンテレフタレート(テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、ブタンジオール等のグリコール類やイソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。また、他ポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい。)並びにポリトリメチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレート(テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、1.4−ブタンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、エチレングリコール等のグリコール類やイソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。また、他ポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい。)が好ましく、特に捲縮の内側にポリトリメチレンテレフタレートが配置されると好ましい。
【0016】
このように本発明に用いる潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維は構成するポリエステル成分の少なくとも一方がポリトリメチレンテレフタレートであるものであり、上記特開2001−40537号公報以外にも、特公昭43−19108号公報、特開平11−189923号公報、特開2000−239927号公報、特開2000−256918号公報、特開2000−328382号公報、特開2001−81640号公報等には、第一成分がポリトリメチレンテレフタレートであり、第二成分がポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルを並列的あるいは偏芯的に配置したサイドバイサイド型または偏芯鞘芯型に複合紡糸したものが開示されている。特にポリトリメチレンテレフタレートと共重合ポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせや、極限粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせが好ましい。
【0017】
さらに本発明の目的達成上、好適な潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維としては、初期引張抵抗度が10〜30cN/dtexであることが好ましく、特に20〜30cN/dtex、さらには20〜27cN/dtexがより好ましい。30cN/dtex超では、ソフト風合いが得られにくく、10cN/dtex未満のものは製造困難である。また、顕在捲縮の伸縮伸長率は10〜100%であると好ましく、特に10〜80%より好ましくは10〜60%である。10%未満では本発明の目的達成が不十分となりやすく、100%超は製造困難である。更に、顕在捲縮の伸縮弾性率は80〜100%であることが好ましく、特に85〜100%より好ましくは85〜97%である。80%未満では本発明の目的達成が不十分となりやすく、100%超は製造困難である。さらに、100℃における熱収縮応力が0.1〜0.5cN/dtexであることが好ましく、特に0.1〜0.4cN/dtex、さらに0.1〜0.3cN/dtexであることが好ましい。0.1cN/dtex未満では本発明の目的達成が不十分となりやすく、0.5cN/dtex超は製造困難である。熱水処理後の伸縮伸長率は100〜250%であることが好ましく、より好ましくは150〜250%、特に180〜250%である。100%未満では本発明の目的達成が不十分となりやすく、250%超は製造困難である。熱水処理後の伸縮弾性率は90〜100%であることが好ましく、より好ましくは95〜100%である。90%未満では本発明の目的達成が不十分となりやすい。
【0018】
このような特性を有する潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維としては、固有粘度の異なる2種類のポリトリメチレンテレフタレートが互いにサイドバイサイド型に複合された単糸から構成された複合繊維があげられる。
2種類のポリトリメチレンテレフタレートの固有粘度差は0.05〜0.5(dl/g)であることが好ましく、特に0.1〜0.45(dl/g)、さらに0.15〜0.40(dl/g)がより好ましい。例えば高粘度側の固有粘度を0.7〜1.3(dl/g)から選択した場合には、低粘度側の固有粘度は0.5〜1.1(dl/g)から選択されるのが好ましい。また、この複合繊維自体の固有粘度、即ち平均固有粘度は、0.7〜1.2(dl/g)が好ましく、0.8〜1.2(dl/g)がより好ましい。特に0.85〜1.15(dl/g)が好ましく、さらに0.9〜1.1(dl/g)がより好ましい。
【0019】
なお、本発明でいう固有粘度の値は、使用するポリマーではなく、紡糸した糸の粘度を指す。この理由は、ポリトリメチレンテレフタレート特有の欠点としてポリエチレンテレフタレート等と比較して熱分解が生じ易く、高い固有粘度のポリマーを使用しても熱分解によって固有粘度が著しく低下し、複合マルチフィラメントにおいては両者の固有粘度差を大きく維持することが困難であるためである。
【0020】
ここで、ポリトリメチレンテレフタレートは、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステルであり、トリメチレンテレフタレート単位を約50モル%以上、好ましくは70モル%以上、さらには80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上のものをいう。従って、第三成分として他の酸成分及び/またはグリコール成分の合計量が、約50モル%以下、好ましくは30モル%以下、さらには20モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下の範囲で含有されたポリトリメチレンテレフタレートを包含する。
【0021】
ポリトリメチレンテレフタレートは、テレフタル酸またはその機能的誘導体と、トリメチレングリコールまたはその機能的誘導体とを、触媒の存在下で、適当な反応条件下に結合せしめることにより合成される。この合成過程において、適当な一種または二種以上の第三成分を添加して共重合ポリエステルとしてもよいし、また、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリトリメチレンテレフタレート以外のポリエステル、ナイロンとポリトリメチレンテレフタレートを別個に合成した後、ブレンドしたりしてもよい。ブレンドする際のポリトリメチレンテレフタレートの含有率は、質量%で50%以上が好ましい。
【0022】
添加する第三成分としては、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、アジピン酸等)、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、ソジウムスルホイソフタル酸等)、脂肪族グリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等)、脂環族グリコール(シクロヘキサンジメタノール等)、芳香族を含む脂肪族グリコール(1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等)、ポリエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、脂肪族オキシカルボン酸(ω−オキシカプロン酸等)、芳香族オキシカルボン酸(P−オキシ安息香酸等)等がある。また、1個または3個以上のエステル形成性官能基を有する化合物(安息香酸等またはグリセリン等)も重合体が実質的に線状である範囲内で使用できる。
【0023】
さらに二酸化チタン等の艶消剤、リン酸等の安定剤、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体等の紫外線吸収剤、タルク等の結晶化核剤、アエロジル等の易滑剤、ヒンダードフェノール誘導体等の抗酸化剤、難燃剤、制電剤、顔料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤、消泡剤等が含有されていてもよい。
【0024】
本発明において潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維の紡糸については、上記の各特許文献に開示されており、例えば、3000m/分以下の巻取り速度で未延伸糸を得た後、2〜3.5倍程度で延撚する方法が好ましいが、紡糸−延伸工程を直結した直延法(スピンドロー法)、巻取り速度5000m/分以上の高速紡糸法(スピンテイクアップ法)を採用してもよい。また、繊維の形態は、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよく、断面においても丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平(扁平度1.3〜4程度のもので、W型、I型、ブ−メラン型、波型、串団子型、まゆ型、直方体型等がある)、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。
【0025】
さらに本発明の捲縮糸の最適例である、潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維の仮撚加工糸について詳述する。この仮撚加工糸の顕在捲縮伸長率は好ましくは70〜300%、特に100〜300%、さらに120〜300%がより好ましい。70%未満では、本発明の目的達成が不十分となりやすい。また、顕在捲縮弾性率は好ましくは80〜100%、特に82〜100%、さらに85〜100%がより好ましい。80%未満では本発明の目的達成が不十分となりやすい。また、この仮撚加工糸の捲縮伸長率は100〜400%であることが好ましく、より好ましくは120〜400%である。捲縮弾性率は80〜100%であることが好ましく、より好ましくは90〜100%である。捲縮伸長率や捲縮弾性率がこの値未満では本発明の目的達成が不十分となりやすい。
【0026】
仮撚加工糸を得るための仮撚方法としては、ピンタイプ、フリクションタイプ、ニップベルトタイプ、エアー加撚タイプ等、いかなる方法によるものでもよいが、好ましくはピンタイプ、ニップベルトタイプである。また、仮撚加工糸は、いわゆる2ヒーターの仮撚加工糸(セットタイプ)よりも、いわゆる1ヒーターの仮撚加工糸(ノンセットタイプ)を用いる方が、本発明の目的達成上好ましい。
【0027】
仮撚加工時の熱固定温度は150℃〜200℃の範囲とすることが好ましく、仮撚数(T5)は次式で計算される仮撚数の係数K5の値が21000〜33000であることが好ましく、更に好ましくは25000〜32000の範囲である。
T5(T/m)=K5/(原糸の繊度:dtex)0.5
仮撚加工糸は、無撚でもよいが、必要に応じて仮撚方向と同方向もしくは異方向に追撚したり、仮撚加工糸を双糸または三子以上で合撚して用いてもよく、追撚や合撚における撚数(T6)は、次式で計算される撚係数(K6)が例えば20000以下の範囲内で選定すればよい。尚、仮撚加工糸の合計繊度とは、追撚または合撚する仮撚加工糸の合計の繊度をいう。
【0028】
T6(T/m)=K6/(仮撚加工糸の合計繊度:dtex)0.5
本発明において、捲縮糸を単独または双糸や三子以上で合撚して用いてもよく、さらには、捲縮糸の含有率が、質量%で10%以上、好ましくは15%以上の範囲内で複合して用いてもよく、特に複合形態としては捲縮糸を芯糸とした鞘芯構造紡績糸が好ましく(その際の鞘成分は経糸に用いる紡績糸の繊維素材と同じものが好ましい)、また、この捲縮糸以外の、例えばポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維の仮撚加工糸と合糸、合撚することも好ましい。必要に応じてこれ以外の公知の長繊維、短繊維でもよく、繊維形態もマルチフィラメント原糸でも仮撚加工糸、流体噴射加工糸に代表される嵩高加工糸でもよく、従来公知の各種形態の糸条を用いることができる。例えば、羊毛、絹、綿、麻等の天然繊維、キュプラ、ビスコース、ポリノジック、精製セルロース繊維、竹繊維等のセルロース系繊維、アセテート繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維やポリブチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維等のポリエステル系繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維等の各種人造繊維、さらにはこれらの共重合タイプの繊維や、同種または異種ポリマー使いの複合繊維(サイドバイサイド型、偏芯鞘芯型等)を公知の複合手段により例えば長短混紡(サイロフィル、ホロースピンドル等)、カバリング(シングル、ダブル)、沸水収縮率3〜10%程度の低収縮糸や沸水収縮率15〜30%程度の高収縮糸との混繊や交撚等により複合してもよい。
【0029】
本発明において、経糸に用いる紡績糸は、ポリトリメチレンテレフタレート系短繊維(A)とセルロース系短繊維(B)との混紡糸であって、混紡糸の混紡比率(質量%)が(A)/(B)=5〜35/95〜65好ましくは(A)/(B)=10〜35/90〜65、さらに好ましくは(A)/(B)=10〜30/90〜70であるものである。(A)が5%未満では着用快適性に劣り、また35%超では織物風合が損なわれたものとなる。
【0030】
ポリトリメチレンテレフタレート系短繊維(A)としては、ポリトリメチレンテレフタレート一成分の短繊維、および少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維の短繊維を含むものである。なお、ポリトリメチレンテレフタレート、および少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維の定義並びに詳細は上記で詳述したものであるが、ポリトリメチレンテレフタレート系短繊維(A)の単糸dtexは、綿の種類や綿番手に応じて例えば0.5〜6dtex程度の範囲から適宜選定すればよい。
【0031】
セルロース系短繊維(B)としては、綿、麻等の植物系繊維、キュプラ、ビスコース、ポリノジック、モダール、精製セルロース、竹繊維等のセルロース系繊維、アセテート、トリアセテート等の半合成繊維までも含むが、特に綿、麻等の植物系繊維、キュプラ、ビスコース、ポリノジック、モダール、精製セルロース、竹繊維等のセルロース系繊維が好ましく、特に綿が最も効果的である。
【0032】
本発明においては、かかる混紡糸が先染め糸であると、先染め糸の風合を損なうことが殆ど無いため、特に効果的である。なお、緯糸に用いる捲縮糸は先染め糸を用いてもよいが、染色しないままで最終製品としてもよい。先染め糸の製法としては、従来公知の方法を適宜選定すればよく、例えば、カセ染め、チーズ染め、マフ染め、ニットデニット染め(ニットして染色してからデニット)等がある。
【0033】
本発明の織物は、経糸が上記の特定の混紡糸、緯糸が上記の捲縮糸の交織織物であり、両者の混率は、質量%で好ましくは30:70〜70:30、より好ましくは35:65〜65:35、最も好ましくは40:60〜60:40である。なお、本発明の織物における捲縮糸の含有率は、質量%で好ましくは5〜50%、特に10〜50%、さらに15〜45%がより好ましい。
【0034】
また、本発明の目的を損なわない範囲内で通常30質量%以下の範囲内で、捲縮糸以外の他の繊維を緯糸において1〜3本交互で交織してもよく、その混用相手は前述の捲縮糸に複合する繊維として例示したものがあるが、例えば、緯糸が、上記の仮撚加工糸とポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系仮撚加工糸を1〜3本交互で構成したものがあげられる。
【0035】
織物の種類は、特に限定されるものではなく、平組織、綾組織、朱子組織、経パイル織物さらにはこれらの組織を組み合わせた組織であってもよいが、平組織や綾組織、経パイル織物がより好ましい。
織物の経糸及び緯糸の密度としては、経糸繊度40〜920dtexの場合、経糸密度は40〜220本/2.54cm、緯糸繊度40〜920dtexの場合、緯糸密度は40〜220本/2.54cmの範囲で、織物組織、用途に応じて設定すればよい。
次に、織物製織用の織機は特に限定されるものではなく、エアージェットルーム、ウォータージェットルーム、レピアルーム、グリッパールーム、有杼織機などを用いて生産することができる。
【0036】
本発明の織物の仕上げ加工方法としては、先ず最初に生機を熱水浴中(界面活性剤や精練剤などが含まれていてもよい)で精練・リラックスを行うことが有効である。精練・リラックス加工を行うための設備としては、U型ソフサー、オープンソーパー、ボイルドオフ機、ジッガー染色機、ビーム染色機等の拡布タイプや液流タイプのものが使用できる。熱水浴の温度は例えば、綿混紡糸の場合には75℃〜100℃の範囲が好ましく、より好ましくは80℃〜100℃、最も好ましくは90℃〜100℃、更に好ましくは95℃〜100℃である。
この後、ピンテンターを用いて乾熱プレセットを行う。その際の温度は、加工反の風合い及びセット効果の点から、140℃〜170℃が好ましく、より好ましくは145℃〜170℃、最も好ましくは150℃〜170℃である。
【0037】
ファイナルセットは、ピンテンターを用いて乾熱セットを行うが、その際の温度は加工反の風合い及びセット効果(残留収縮)の点から、好ましくは150℃〜170℃、より好ましくは150℃〜165℃、最も好ましくは150℃〜160℃で行う。さらに、必要に応じて撥水加工や熱カレンダー加工などを付与してもよい。ジーンズ用途では、いわゆる製品洗いの工程が採用される。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
本発明の用いる評価法は以下通りである。
【0039】
(1)固有粘度
固有粘度[η](dl/g)は、次式の定義に基づいて求められる値である。
[η]=lim(ηr−1)/C
C→0
式中のηrは、純度98%以上のo−クロロフェノール溶媒に溶解したポリトリメチレンテレフタレート糸またはポリエチレンテレフタレート糸の稀釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶媒の粘度で除した値であり、相対粘度と定義されているものである。Cはg/100mlで表されるポリマー濃度である。
なお、固有粘度の異なるポリマーを用いた複合マルチフィラメントは、マルチフィラメントを構成するそれぞれの固有粘度を測定することは困難であるので、複合マルチフィラメントの紡糸条件と同じ条件で2種類のポリマーをそれぞれ単独で紡糸し、得られた糸を用いて測定した固有粘度を、複合マルチフィラメントを構成する固有粘度とした。
(2)初期引張抵抗度:JIS L 1013 化学繊維フィラメント糸試験方法 初期引張抵抗度の試験方法に準じ、試料の単位繊度当たり0.0882cN/dtexの初荷重を掛けて引張試験を行い、得られた荷重−伸長曲線から初期引張抵抗度(cN/dtex)を算出し、10回の平均値を求めた。
【0040】
(3)伸縮伸長率、伸縮弾性率:JIS L 1090 合成繊維フィラメントかさ高加工糸試験方法 伸縮性試験方法 A法に準じて測定を行い、伸縮伸長率(%)、伸縮弾性率(%)を算出し、10回の平均値を求めた。顕在捲縮の伸縮伸長率および伸縮弾性率は、巻取りパッケージから解舒した試料を、温度20±2℃、湿度65±2%の環境下で24時間放置後に測定を行った。熱水処理後の伸縮伸長率および伸縮弾性率は、無荷重で98℃の熱水中に30分間浸漬した後、無荷重で24時間自然乾燥乾燥した試料を用いた。
(4)熱収縮応力:熱応力測定装置(カネボウエンジニアリング社製 商品名KE−2)を用い、試料を20cmの長さに切り取り、両端を結んで輪を作り測定装置に装填し、初荷重0.044cN/dtex、昇温速度100℃/分の条件で収縮応力を測定し、得られた温度に対する熱収縮応力の変化曲線から100℃における熱収縮応力を読み取る。
(5)仮撚加工糸の顕在捲縮伸長率及び顕在捲縮弾性率
島津製作所(株)製の引張試験機を用いて、つかみ間隔10cmにて仮撚加工糸を初荷重0.0009CN/dtexで取り付けたのち、引張速度10cm/minで伸長し、0.0882CN/dtexの応力に達したときの伸び(%)を顕在捲縮伸長率とした。その後再び同じ速度でつかみ間隔10cmまで収縮させたのち、再度応力−歪み曲線を描き、初荷重の応力が発現するまでの伸度を残留伸度(B)とする。顕在捲縮弾性率は以下の式によって求めた。
顕在捲縮弾性率=〔(10−B)/10〕×100(%)
【0041】
(6)仮撚加工糸の捲縮伸長率、捲縮弾性率
巻き取りパッケージから解じょした仮撚加工糸を無荷重下で98℃の熱水中に20分浸漬した後、無荷重下で24時間乾燥した試料を用いた以外は、顕在捲縮伸度及び顕在捲縮弾性率の測定と同様の方法にて測定し、それぞれを捲縮伸長率、捲縮弾性率とした。
(7)織物のストレッチ性、ストレッチバック性
JIS L−1096一般織物試験法 伸長率A法(定速伸長法)、伸長回復率(繰り返し定速伸長法)に準拠した。但し、伸長回復率は、伸長率A法で求めた伸びの100%まで試料を伸長した。
ORIENTEC(株)製の引張試験機(型式:RTC−1210A)を用いて、試料(幅5cm×長さ1m)にかかる重力に相当する荷重を初荷重としてかけ、把持間隔20cm(L0)、引張速度20cm/分で試料を所望の方向に伸長させ、24.5N(2.5kgf、500gf/cm)の荷重がかかるまで伸長し、長さ(L1)を読みとる。その後、1分間放置後、同速度で元の位置に戻し、3分間放置する。再び同速度で伸長し、初荷重と同じ荷重がかかった時点の長さ(L2)を読みとる。
ストレッチ率及びストレッチバック率は以下の式によって求める。
ストレッチ率(%)=(L1−L0)/L0×100
ストレッチバック率(%)=(L1−L2)/(L1−L0)×100
【0042】
(8)風合い評価;
比較例1の織物(比較品)との比較で官能評価により5段階で判定した。
5級;極めて比較品に似た外観、膨らみ感のある風合いである。
4級;比較品に似た外観、風合いである。
3級;どちらともいえない。
2級;比較品に似ていない外観、風合いである。
1級;全く比較品に似ていない外観、風合いである。
(9)着用快適性の評価;
ジーンズを作製して着用試験を行い官能評価により5段階で判定した。
5級; 身体の動きへの追随性に極めて優れており快適である。
4級;身体の動きへの追随性に優れている。
3級;身体の動きへの追随性は普通である。
2級;身体の動きへの追随性に劣っている。
1級;身体の動きへの追随性が大きく劣っている。
(参考例)
潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維の製造
固有粘度の異なるサイドバイサイド型複合マルチフィラメントを以下の製造例1〜3により製造した。
【0043】
(製造例1)
サイドバイサイド型複合紡糸用紡口を用いて、固有粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートを、質量比率1:1でサイドバイサイド型に押出し、紡糸温度265℃、紡糸速度1500m/分で未延伸糸を得た。次いで、ホットロール温度55℃、ホットプレート温度140℃、延伸速度400m/分、延伸倍率は延伸後の繊度が165dtexとなるように設定して延撚し、165dtex/35fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメントを得た。
得られた複合マルチフィラメントの固有粘度は、高粘度側が0.90、低粘度側が0.70であった。初期引張抵抗度、顕在捲縮の伸縮伸長率/伸縮弾性率、熱水処理後の伸縮伸長率/伸縮弾性率、及び100℃における熱収縮応力を表1に示す。
【0044】
(製造例2)
製造例1において、固有粘度の異なるポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートを用いた以外は製造例1と同様の方法で165dtex/35fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメントを得た。得られた複合マルチフィラメントの固有粘度は、ポリトリメチレンテレフタレート側が0.98、ポリエチレンテレフタレート側が0.60であった。初期引張抵抗度、顕在捲縮の伸縮伸長率/伸縮弾性率、熱水処理後の伸縮伸長率/伸縮弾性率、及び100℃における熱収縮応力を表1に示す。
【0045】
[実施例1〜4、比較例1〜2]
ポリトリメチレンテレフタレート系短繊維(A)と綿(B)の混紡率を表2のように変化させた混紡糸(綿番手で16/−)を作製し、先染糸となして経糸に用いた。
一方、製造例1で得られた複合フィラメントを用いて、石川製作所製IVF−338にて第1ヒーター温度170℃、撚方向はZ撚、仮撚数3200T/mで仮撚加工を行った。得られた仮撚加工糸は、顕在捲縮伸長率190%、顕在捲縮弾性率87%、捲縮伸長率220%、捲縮弾性率90%であった。
ここで得られた仮撚加工糸を2本合糸して、合撚糸となし(Z撚仮撚加工糸はS方向に300T/m合撚し、S撚仮撚加工糸はZ方向に300T/m合撚して、2種の合撚糸を作製した。)この合撚糸を一本交互で緯糸に用いてエアージェットルームにて製織を行い、経糸密度97本/2.54cm、緯糸密度50本/2.54cmの3/1綾組織の生機を得た。
本生機を90℃でサンフォライズ加工した後、ジーンズ製品に縫製して、常法に基づき製品洗い(65℃での湯洗い)を実施し、仕上げた。製品の生地密度は、経糸密度130本/2.54cm、緯糸密度53本/2.54cmであった。
得られた織物の評価結果を表2に示すが、実施例1〜4の製品は、風合い並びに着用快適性に優れていたが、比較例1の製品は着用快適性に劣り、比較例2の製品は風合いに劣ったものであった。
【0046】
[実施例5]
[η]=0.92の一成分のポリトリメチレンテレフタレート系繊維84dtex/24fを用い、実施例1と同様の仮撚条件で仮撚を行い、顕在捲縮伸長率65%、顕在捲縮弾性率55%、捲縮伸長率180%、捲縮弾性率80%の仮撚加工糸を得た。
この仮撚加工糸を4本合糸して合撚し、Z合撚糸とS合撚糸を作製した以外は、実施例1同様に製織、仕上げて、経糸密度114本/2.54cm、緯糸密度54本/2.54cmの製品を得た。この製品は、実施例1と同様に風合いおよび着用快適性に優れていた。
【0047】
[実施例6]
製造例2の複合フィラメントを仮撚加工せずに原糸のままで用いた以外は、実施例1と同様に製織、仕上げて、経糸密度125本/2.54cm、緯糸密度52本/2.54cmの製品を得た。この製品は実施例と1同様に風合いおよび着用快適性に優れていた。
【0048】
[比較例3]
実施例5のポリトリメチレンテレフタレート系繊維84dtex/24fを仮撚加工せずに原糸のままで用いた以外は、実施例1と同様に製織、仕上げて、経糸密度110本/2.54cm、緯糸密度55本/2.54cmの製品を得た。この製品は実施例1と比較して特に着用快適性に劣っていた。
【0049】
[比較例4]
実施例において、ポリトリメチレンテレフタレート系短繊維(A)の代わりにポリエチレンテレフタレート系短繊維(C)を用いた以外は、実施例1と同様に製織、仕上げて、製品を得た。この製品は実施例1と比較して風合及び着用快適性にも劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の織物は、経糸がセルロース系短繊維の紡績糸で構成された織物の風合を損なうことがなく、着用快適性に優れたものであり、またこの織物は、ジーンズやコーデュロイに代表される先染め織物に適しており、チノパンツ、パンツ、スカート等のボトムやシャツとして好適に用いられる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸が、ポリトリメチレンテレフタレート系短繊維(A)とセルロース系短繊維(B)との混紡糸、緯糸が、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維マルチフィラメント糸の捲縮糸で構成された織物であって、該混紡糸の混紡比率(質量%)が(A)/(B)=5〜35/95〜65であることを特徴とする織物。
【請求項2】
緯糸が捲縮糸を芯糸とした鞘芯構造紡績糸であることを特徴とする請求項1記載の織物。
【請求項3】
捲縮糸が、二種以上のポリエステル成分からなり、その一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維であることを特徴とする請求項1または2記載の織物。
【請求項4】
捲縮糸が、二種以上のポリエステル成分からなり、その一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維の仮撚加工糸であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の織物。

【公開番号】特開2006−219796(P2006−219796A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−36019(P2005−36019)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(302071162)ソロテックス株式会社 (45)
【Fターム(参考)】