説明

織編物の薬液含浸方法及び当該方法に使用する織編物の薬液含浸装置

【課題】長尺方向に走行する織編物に対して、できるだけ少ない量の薬液を付与し、この薬液でもって織編物内部への薬液の十分な含浸を得ると共に、続く乾燥工程における省エネルギーに寄与できる薬液の少量付与を可能とする。
【解決手段】第1薬液が塗布された第1グラビア塗工ロールの周面上に織編物の一方面側が接すると同時に、当該織編物を第1グラビア塗工ロールに対して、第1押圧ロールにより、0.05MPa〜0.5MPaの押圧力で押圧して、第1薬液を織編物に対して一方面側から含浸する第1含浸工程と、第2薬液が塗布された第2グラビア塗工ロールの周面上に織編物の他方面側が接すると同時に、当該織編物を第2グラビア塗工ロールに対して、第2押圧ロールにより、0.05MPa〜0.5MPaの押圧力で押圧して、第2薬液を織編物に対して他方面側から含浸する第2含浸工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織編物の染色加工工程において、長尺方向に走行する織編物に連続して薬液を含浸する織編物の薬液含浸方法及び当該方法に使用する織編物の薬液含浸装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、織編物の染色加工工程においては、染料や仕上剤などを含有する薬液を織編物の内部に均一に含浸する薬液含浸工程が行われる。しかし、織編物を構成する糸は、その繊維密度が高く内部にある繊維にまで薬液を均一に含浸することが難しい。そこで、薬液含浸工程においては、図3に示すような含浸用マングル装置(A)を使用したパッド・ニップ方式が採用されている。このパッド・ニップ方式は、まず、長尺方向に走行する織編物(B)をガイドロール(C)などで誘導して薬液槽(D)内に蓄えられた薬液(E)に浸漬(パッド)する。このことにより、織編物には、その内部を含浸するより余剰量の薬液が付与されるようになる。続いて、この薬液を余剰に付与された織編物を2本の絞りロール(F)からなるマングル(G)で絞る(ニップ)ことにより余剰の薬液を搾液する。このニップによって、薬液が織編物内部にまで均一に含浸されることになる。
【0003】
この2本の絞りロールの少なくとも1本は、金属ロールの表面にゴムを巻き付けたゴムロールが用いられ、この2本の絞りロール間の絞り圧の調整は、押圧側ロールのロール軸の両端を加圧シリンダーで押圧することにより行われる。従って、絞り圧をあまり高く設定すると、絞りロールの中央に大きな曲げモーメントが作用して絞りロールが撓み、2本の絞りロールの両端部に押圧が集中し、織編物の幅方向に均一な含浸ができなくなる。
【0004】
従って、この含浸用マングル装置を使用したパッド・ニップ方式においては、織編物内部への薬液の含浸は十分に得られるが、一方、均一な含浸を得ようとすると、搾液効率を下げて薬液の付与量を多くしなければならない。このことは、その後の乾燥工程において多量の熱エネルギーを必要とし、染色加工工程における省エネルギーの要求に反することとなる。
【0005】
一方、省エネルギーの観点から、染色加工工程における薬液の少量付与方法が検討されている。これらの少量付与方法としては、例えば、泡加工法、キスロール法、リバースロール法、スプレー法などが採用されているが、これらの方法は、少量付与には効果的であるが、反面、均一な付与効果に乏しく、また、織編物内部への十分な含浸が得られない。
【0006】
このように、織編物内部への薬液の十分な含浸と少量付与は、相反するものである。この問題に対して、下記特許文献1においては、改良した脱水用マングル装置が提案されている。この脱水用マングル装置は、絞りロールの軸方向の全長にわたって複数の補助ロールを列設して、この補助ロールで絞りロールの全長にわたって均一な押圧を形成して絞りロールの撓みを防止する。このことにより、この脱水用マングル装置においては、ある程度高い絞り圧においても、均一で効率的な薬液の含浸が可能であるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−131088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記特許文献1に記載の脱水用マングル装置においては、装置の構造が複雑であり、また、各補助ロールの押圧を個々に調整しなければならず、操作及び制御が煩雑となる。更に、補助ロールの押圧にも限度があり、織編物内部への十分な含浸が得られたとしても、一旦、織編物に余剰量に付与された薬液を完全に搾液するには限界があり、省エネルギーの要求に寄与できるほどの薬液の少量付与はできないという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記の諸問題に対処して、長尺方向に走行する織編物に対して、できるだけ少ない量の薬液を付与し、この薬液でもって織編物内部への薬液の十分な含浸を得ると共に、続く乾燥工程における省エネルギーの要求に寄与できる薬液の少量付与を可能とする織編物の薬液含浸方法及び当該方法に使用する織編物の薬液含浸装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題の解決にあたり、本発明者らは、鋭意研究の結果、所定量の薬液を付与できるグラビア塗工ロールを利用して、織編物の両面からそれぞれ薬液を含浸させる方法を検討することにより、織編物内部への十分な含浸と少量付与という、相反する目的を達成できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0011】
即ち、本発明に係る織編物の薬液含浸方法は、請求項1の記載によると、
長尺方向に走行する織編物(60)の一方面側から当該織編物に第1薬液(23a)を含浸する第1含浸工程と、
この第1含浸工程後に上記織編物の走行方向を反転する反転工程と、
この反転工程後に上記織編物の他方面側から上記織編物に第1薬液と同一又は異なる第2薬液(33a)を含浸する第2含浸工程とを有して、
第1含浸工程は、第1グラビア塗工ロール(21)とこの第1グラビア塗工ロールの上部に上記織編物を介して配設される第1押圧ロール(22)とを用いて、第1薬液が塗布された第1グラビア塗工ロールの上部周面上に上記織編物の一方面側が接すると同時に、当該織編物を第1グラビア塗工ロールに対して、第1押圧ロールにより、0.05(MPa)〜0.5(MPa)の押圧力で押圧して、第1薬液を上記織編物に対して上記一方面側から含浸し、
第2含浸工程は、第2グラビア塗工ロール(31)とこの第2グラビア塗工ロールの上部に上記織編物を介して配設される第2押圧ロール(32)とを用いて、第2薬液が塗布された第2グラビア塗工ロールの上部周面上に上記織編物の他方面側が接すると同時に、当該織編物を第2グラビア塗工ロールに対して、第2押圧ロールにより、0.05(MPa)〜0.5(MPa)の押圧力で押圧して、第2薬液を上記織編物に対して上記他方面側から含浸するものである。
【0012】
上記構成によれば、第1含浸工程、反転工程、第2含浸工程の順で織編物への薬液の含浸が行われる。このとき、第1グラビア塗工ロール及び第2グラビア塗工ロールは、いずれも、回転しながらその上部周面上で走行する織編物の下面側に接するようになる。但し、第1含浸工程後の織編物は、反転工程において走行方向が反転しており、第1グラビア塗工ロールの上部周面上に接する織編物の下面側と第2グラビア塗工ロールの上部周面上に接する織編物の下面側とは異なる面となる。すなわち、第1グラビア塗工ロールは、織編物の一方面側と接することとなり、一方、第2グラビア塗工ロールは、織編物の他一方面側と接することとなる。
【0013】
まず、第1含浸工程においては、走行する織編物の一方面側が回転する第1グラビア塗工ロールの上部周面上に接すると同時に、第1グラビア塗工ロールの上部に位置する第1押圧ロールが回転しながら織編物を他方面側から第1グラビア塗工ロールに押圧する。このことにより、第1グラビア塗工ロールに均一に塗布された第1薬液が走行する織編物の一方面側から織編物に含浸する。このとき、第1グラビア塗工ロールに塗布された第1薬液は、当該グラビア塗工ロール上に均一に且つ一定量付与されている。この一定量の第1薬液は、織編物全体を含浸する量より少なく、また、含浸が織編物の一方面側から行われるので、織編物の厚み方向に対して一方面側からほぼ中間の位置まで含浸するようになる。
【0014】
次に、反転工程において織編物の走行方向が反転する。この状態で、続く第2含浸工程においては、走行する織編物の他方面側が回転する第2グラビア塗工ロールの上部周面上に接すると同時に、第2グラビア塗工ロールの上部に位置する第2押圧ロールが回転しながら織編物を一方面側から第2グラビア塗工ロールに押圧する。このことにより、第2グラビア塗工ロールに均一に塗布された第2薬液が走行する織編物の他方面側から織編物に含浸する。このとき、第2グラビア塗工ロールに塗布された第2薬液は、当該グラビア塗工ロール上に均一に且つ一定量付与されている。この一定量の第2薬液は、織編物全体を含浸する量より少なく、また、含浸が織編物の他方面側から行われるので、織編物の厚み方向に対して他方面側からほぼ中間の位置まで含浸するようになる。
【0015】
このように、織編物の厚み方向に対して、第1薬液は一方面側から含浸し、一方、第2薬液は他方面側から含浸するので、織編物全体としては、薬液が均一に付与され、また、必要以上に多くの薬液が含浸されることもない。
【0016】
よって、請求項1に記載の発明においては、長尺方向に走行する織編物に対して、できるだけ少ない量の薬液を付与し、この薬液でもって織編物内部への薬液の十分な含浸を得ると共に、続く乾燥工程における省エネルギーの要求に寄与できる薬液の少量付与を可能とする織編物の薬液含浸方法を提供することができる。
【0017】
ここで、第1薬液と第2薬液とは、同一の薬液であってもよく或いは異なる薬液、例えば、薬液中の薬品の濃度が異なる薬液或いは全く性質の異なる薬品を含有した薬液であってもよい。第1薬液と第2薬液とが同一の薬液である場合には、上述のように織編物全体に均一な性質を発現することができる。一方、第1薬液と第2薬液とが異なる薬液である場合には、織編物の表裏で異なった性質を発現することができる。例えば、表側が撥水加工で、裏側が吸水加工であることも可能である。
【0018】
また、本発明に係る織編物の薬液含浸方法は、請求項2の記載によると、
長尺方向に走行する織編物(60)の一方面側から当該織編物に第1薬液(23a)を含浸する第1含浸工程と、
この第1含浸工程後に上記織編物の他方面側から上記織編物に第1薬液と同一又は異なる第2薬液(33a)を含浸する第2含浸工程とを有して、
第1含浸工程は、第1グラビア塗工ロール(21)と第1押圧ロール(22)とを用いて、第1薬液が塗布された第1グラビア塗工ロールの周面上に上記織編物の一方面側が接すると同時に、当該織編物を第1グラビア塗工ロールに対して、第1押圧ロールにより、0.05(MPa)〜0.5(MPa)の押圧力で押圧して、第1薬液を上記織編物に対して上記一方面側から含浸し、
第2含浸工程は、第2グラビア塗工ロール(31)と第2押圧ロール(32)とを用いて、第2薬液が塗布された第2グラビア塗工ロールの周面上に上記織編物の他方面側が接すると同時に、当該織編物を第2グラビア塗工ロールに対して、第2押圧ロールにより、0.05(MPa)〜0.5(MPa)の押圧力で押圧して、第2薬液を上記織編物に対して上記他方面側から含浸するものである。
【0019】
上記構成によれば、第1押圧ロール及び第1押圧ロールの位置に制限がなく、第1グラビア塗工ロールは、その周面上のいずれの位置でも走行する織編物の一方面側に接するようにすることができ、一方、第2グラビア塗工ロールは、その周面上のいずれの位置でも走行する織編物の他方面側に接するようにすることができる。つまり、請求項1に比べて、各グラビア塗工ロールは、走行する織編物とどのような角度で接するようにすることもできるので、例えば、上下方向に走行する織編物と各グラビア塗工ロールの側面が接するようにすれば、走行方向の反転機構を備えることなく、表裏両面からの含浸が可能である。
【0020】
よって、請求項2に記載の発明においても、請求項1に記載の発明と同様の作用効果を達成することができる。更に、請求項2に記載の発明においては、装置設計上の自由度が向上する。
【0021】
また、本発明は、請求項3の記載によると、請求項1又は2に記載の織編物の薬液含浸方法であって、
上記織編物(60)は、50(g/m2)〜400(g/m2)の目付を有する織物、又は、150(g/m2)〜500(g/m2)の目付を有する編物であることを特徴とする。
【0022】
ここで、目付とは、織編物の単位面積当たりの生地重量をいうものであって、織編物の厚みに比例する値である。本発明は、本来、織編物の表裏から単位面積当り一定量の薬液を含浸するものであるが、織編物の目付によって、含浸する薬液の量が変化する。また、織物と編物では、その生地中の糸密度或いは繊維密度が異なるので、織物と編物では、上記のように本発明により好ましい目付の範囲が異なることとなる。
【0023】
上記構成によれば、これらの範囲の目付を有する織編物に対しては、請求項1又は2に記載の発明と同様の作用効果をより一層を達成することができる
また、本発明は、請求項4の記載によると、請求項1〜3のいずれか1つに記載の織編物の薬液含浸方法であって、
第1グラビア塗工ロール(21)及び第2グラビア塗工ロール(31)は、同一又は異なるグラビア線数、及び、同一又は異なる凹溝深度を有しており、
上記グラビア線数は、それぞれ、20(本/インチ)〜60(本/インチ)の範囲内であって、
上記凹溝深度は、それぞれ、50(μm)〜500(μm)の範囲内であることを特徴とする。
【0024】
ここで、グラビア線数とは、グラビア塗工ロールの周面に一定間隔で彫刻された細かい凹溝の数のことであり、また、凹溝深度とは、当該凹溝の彫刻の深さのことをいう。よって、これらの値は、グラビア塗工ロールに塗布される薬液の量を規定する値である。本発明は、織編物の表裏それぞれの面から薬液を含浸するものであり、グラビア線数と凹溝深度とは、グラビア塗工ロールから織編物に含浸される薬液の量を規定する一つの要素である。
【0025】
上記構成によれば、これらの範囲のグラビア線数と凹溝深度とを有するグラビア塗工ロールを用いることにより、請求項1〜3のいずれか1つに記載の発明と同様の作用効果をより一層を達成することができる。
【0026】
また、本発明に係る織編物の薬液含浸装置は、請求項5の記載によると、
長尺方向に走行する織編物(60)に薬液(23a、33a)を含浸する織編物の薬液含浸装置(100)であって、
第1グラビア塗工ロール(21)とこの第1グラビア塗工ロールの上部の織編物を介する位置に配設される第1押圧ロール(22)とを備えた第1含浸装置(20)と、
この第1含浸装置を通過した後の織編物の走行方向に配設されて、走行する織編物の走行方向を反転する反転機構(50)と、
この反転機構を通過した後の織編物の走行方向に配設されて、第2グラビア塗工ロール(31)とこの第2グラビア塗工ロールの上部の織編物を介する位置に配設される第2押圧ロール(32)とを備えた第2含浸装置(30)とを有しており、
上記第1グラビア塗工ロールと上記第2グラビア塗工ロールとは、それぞれ、各グラビア塗工ロールの下方に設けられて当該グラビア塗工ロールの下部が薬液に浸漬する薬液槽(23、33)と、各グラビア塗工ロールの上方に設けられて当該グラビア塗工ロールに先端が接触するドクターブレード(24、34)とを備え、
上記第1押圧ロールと上記第2押圧ロールとは、それぞれ、走行する織編物を上記第1グラビア塗工ロール或いは上記第2グラビア塗工ロールに対して押圧する押圧機構(25、35)を備えている。
【0027】
上記構成によれば、長尺方向に走行する織編物に対して、織編物内部への薬液の十分な含浸を得ると共に、続く乾燥工程における省エネルギーに寄与できる薬液の少量付与を可能とする織編物の薬液含浸装置を提供することができる。
【0028】
また、本発明は、請求項6の記載によると、請求項5に記載の織編物(60)の薬液含浸装置(100)であって、
上記反転機構(50)とは別に他の反転機構(40)を有して、この他の反転機構は、上記第1含浸装置(20)を通過する前の織編物の走行方向或いは上記第2含浸装置(30)を通過した後の織編物の走行方向に配設されて、上記第1含浸装置を通過する前或いは上記第2含浸装置を通過した後の織編物の走行方向を反転させることを特徴とする。
【0029】
上記構成によれば、反転機構と他の反転機構という2つの反転機構を備えることにより、本発明に係る織編物の薬液含浸装置に導入される前の織編物の走行方向と導入された後の織編物の走行方向とは、同一の方向を向くこととなる。上記反転機構は、第1含浸装置を通過した後の織編物の走行方向を反転させて第2含浸装置に導入するものであるが、上記他の反転機構は、第1含浸装置を通過する前に設けられてもよく、また、第2含浸装置を通過した後に設けられてもよい。いずれにしても、上記他の反転機構を設けることにより、上記薬液含浸装置と連動する他の加工装置との織編物の移動がスムーズとなり、装置の設計上、装置の構造を簡単に或いはコンパクトに設計することができる。よって、請求項6に記載の発明においては、請求項5に記載の発明と同様の作用効果を達成することができる。
【0030】
また、本発明は、請求項7の記載によると、請求項5又は6に記載の織編物(60)の薬液含浸装置(100)であって、
上記第1グラビア塗工ロール(21)及び上記第2グラビア塗工ロール(31)は、同一又は異なるグラビア線数、及び、同一又は異なる凹溝深度を有しており、
上記グラビア線数は、それぞれ、20(本/インチ)〜60(本/インチ)の範囲内であって、
上記凹溝深度は、それぞれ、50(μm)〜500(μm)の範囲内であることを特徴とする。
【0031】
上記構成によれば、これらの範囲のグラビア線数と凹溝深度とを有するグラビア塗工ロールを用いることにより、請求項5又は6に記載の発明と同様の作用効果をより一層を達成することができる。
【0032】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る織編物の薬液含浸装置を側面から見た断面図である。
【図2】図1の要部である第1含浸装置の拡大図である。
【図3】従来の含浸用マングル装置の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本実施形態は、長尺方向に走行する織編物に走行した状態のまま薬液を付与する織編物の薬液含浸装置を説明するものである。当該薬液含浸装置の働幅は、どのようなものであってもよく、薬液を含浸しようとする織編物の幅に対応するものであればよい。
【0035】
本発明において、織編物とは、各種繊維からなる糸を織り上げた織物或いは当該糸を編み上げた編物をいうものであって、繊維の種類、糸の種類、織組織或いは編組織はどのようなものであってもよい。
【0036】
また、本発明において、織編物の目付は、どのようなものであってもよいが、織編物が織物である場合には、その目付は、50g/m2〜400g/m2、好ましくは、100g/m2〜300g/m2であることが望ましい。また、織編物が編物である場合には、その目付は、150g/m2〜500g/m2、好ましくは、250g/m2〜500g/m2であることが望ましい。この範囲の目付を有する織編物の場合には、本発明にかかる薬液含浸装置による両面からの2回の含浸によって、織編物内部への十分な含浸と少量付与を達成することが容易となる。
【0037】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1において、薬液含浸装置100は、架台10の枠組みに固定された第1含浸装置20、第2含浸装置30、第1反転機構40及び第2反転機構50を有している。
【0038】
図1において、第1含浸装置20は、架台10の左下方位置に配設されており、一方、第2含浸装置30は、架台10の右上方位置に配設されている。第1反転機構40は、ガイドロール41、42、43を備えて第1含浸装置20の右側位置に設けられ、第2反転機構50は、ダンサーロール51とガイドロール52とを備えて第1含浸装置20の左側位置に設けられている。
【0039】
ここで、第1含浸装置20について詳述する。図2において、第1含浸装置20は、第1グラビア塗工ロール21と第1押圧ロール22とを有している。第1グラビア塗工ロール21は、その周面に亘ってグラビア彫刻が施された働幅2200mmの金属ロールであって、その支軸21aを駆動軸としてモータ(図示せず)の駆動によって回転する。
【0040】
この第1グラビア塗工ロール21は、薬液槽23とドクターブレード24とを備えている。薬液槽23は、その内部に薬液23aを蓄えて第1グラビア塗工ロール21の周面に薬液23aを供給する。ドクターブレード24は、第1グラビア塗工ロール21の全働幅に亘って設けられ、第1グラビア塗工ロール21の周面に付与される薬液23aの余剰分を掻き落として第1グラビア塗工ロール21に塗布される薬液23aを一定量とする。
【0041】
なお、第1グラビア塗工ロール21の周面には、ロール軸方向に対して一定の角度でもって一定間隔の細かい凹溝が多数彫刻されている。上述のように、凹溝の本数(グラビア線数)と凹溝深度でグラビア塗工ロールに塗布される薬液の量を一定量に保つことができる。これらのグラビア彫刻の角度、グラビア線数及び凹溝深度は特に限定するものではないが、本実施形態においては、グラビア彫刻の角度は、ロール軸方向に対して45度〜60度の角度で彫刻することが望ましい。また、グラビア線数は、1インチ当たり20本〜60本、好ましくは、30本〜40本であることが望ましい。更に、凹溝深度は、50μm〜500μm、好ましくは、120μm〜200μmであることが望ましい。
【0042】
第1押圧ロール22は、金属ロールの表面にゴムを巻き付けたゴムロールであって、その働幅は、第1グラビア塗工ロール21と同じく2200mmであった。なお、本実施形態においては、第1押圧ロール22は、第1グラビア塗工ロール21の駆動によって連動する。この第1押圧ロール22は、第1グラビア塗工ロール21と軸平行に配置され、押圧機構25とサブドクターブレード26とを備えている。
【0043】
押圧機構25は、第1押圧ロール22の支軸22aの両端に配設され、この押圧機構25は、押圧アーム25aと架台10にその本体が固定されてなる加圧シリンダー25bとを有している。この押圧アーム25aは、その一方端25cが架台10に回動自在に固定され、その他方端25dが加圧シリンダー25bの加圧軸25eに固定されている。このことにより、加圧シリンダー25bの加圧軸25eが上下動すると、押圧アーム25aが上下して第1押圧ロール22を第1グラビア塗工ロール21に押圧する。
【0044】
サブドクターブレード26は、第1押圧ロール22の全働幅に亘って設けられ、第1押圧ロール22が織編物60に接した後に、その周面に付着した薬液23a或いは毛羽等の付着物を掻き取って、当該周面を常に良好な状態に保つために設けられる。また、サブドクターブレード26で掻き取られた薬液23aは、サブドクターブレード26の両サイドから排除される。このことにより、第1押圧ロール22に薬液23aが付着した場合であっても、第1押圧ロール22の下部に位置する織編物60を汚染することがない。
【0045】
なお、第1押圧ロール22の押圧力は、任意に調整可能であって、本実施形態においては、第1押圧ロールの押圧力は、0.05MPa〜0.5MPa、好ましくは、0.2MPa〜0.4MPaの範囲内に調整することが望ましい。
【0046】
一方、第2含浸装置30は、第1含浸装置20と同様の構成にて、その向きが第1含浸装置20異なるように架台10の枠組みに固定されている。
【0047】
ここで、薬液含浸装置100における織編物の走行状態について説明する。図1において、薬液含浸装置100の左側に位置する原反台車(図示せず)から導出された織編物60は、薬液含浸装置100に向かって右向き水平方向に走行し、架台10の左下部に設けられたガイドロール71を介して第1反転機構40のガイドロール41により上向きに走行方向を変換し、続くガイドロール42を介してガイドロール43により左向きに走行方向を変換する。このことにより、右向き水平方向に走行してきた織編物60は、左向き水平方向に走行することとなり、第1反転機構40によって走行方向が反転されたこととなる。
【0048】
次に、左向き水平方向に走行する織編物60は、第1含浸装置20に導入される。この第1含浸装置20においては、第1グラビア塗工ロール21は、織編物60の走行方向と同方向(図1において反時計回り)に回転する。このとき、第1押圧ロール22は、第1グラビア塗工ロール21と逆方向(図1において時計回り)に回転する。ここで、第1グラビア塗工ロール21の下部は、薬液槽23に蓄えられた薬液23aに浸漬して、その外周面に薬液23aが付与される。この外周面に付与された薬液23aの余剰分は、第1グラビア塗工ロール21の回転に伴ってドクターブレード24によって掻き取られ、第1グラビア塗工ロール21の外周面には、グラビア彫刻で規定された一定量の薬液23aが塗布される。
【0049】
この状態において、第1含浸装置20においては、左向き水平方向に走行する織編物60は、第1グラビア塗工ロール21とその上部に位置する第1押圧ロール22の間に導入される。このとき、織編物60の一方面側(図1においては下面側)が第1グラビア塗工ロール21の上部周面上に接すると同時に、この織編物60は、押圧機構25の押圧力を介して第1押圧ロール22によって、その他方面側(図1においては上面側)から第1グラビア塗工ロール21に押圧される。
【0050】
このことにより、第1グラビア塗工ロール21の外周面に均一に塗布された薬液23aは、走行する織編物60の一方面側(図1においては下面側)から織編物60に含浸する。このとき、第1グラビア塗工ロール21に塗布された薬液23aは、グラビア彫刻で規定された一定量であって、織編物60全体を含浸する量より少ない。また、含浸が織編物60の一方面側(図1においては下面側)から行われるので、織編物60の厚み方向に対して一方面側からほぼ中間の位置まで含浸するようになる。
【0051】
次に、第1含浸装置20から導出された織編物60は、左向き水平方向に走行して、第1含浸装置20の左側位置に設けられた第2反転機構50のダンサーロール51により上向きに走行方向を変換し、続いて、ガイドロール52により右向きに走行方向を変換する。このことにより、左向き水平方向に走行してきた織編物60は、右向き水平方向に走行することとなり、第2反転機構50によって走行方向が再度反転されたこととなる。
【0052】
この状態において、上記のように第1含浸装置20において薬液23aが含浸された織編物60の一方面側は、図1において上面側に反転している。
【0053】
次に、右向き水平方向に走行する織編物60は、架台10の中央上部に設けられたガイドロール72を介して第2含浸装置30に導入される。この第2含浸装置30は、上述のように、第1含浸装置20と同様の構成からなり配置される方向が逆転している。第2含浸装置30においては、第2グラビア塗工ロール31は、織編物60の走行方向と同方向(図1において時計回り)に回転する。このとき、第2押圧ロール32は、第2グラビア塗工ロール31と逆方向(図1において反時計回り)に回転する。ここで、第2グラビア塗工ロール31の下部は、薬液槽33に蓄えられた薬液33aに浸漬して、その外周面に薬液33aが付与される。この外周面に付与された薬液33aの余剰分は、第2グラビア塗工ロール31の回転に伴ってドクターブレード34によって掻き取られ、第2グラビア塗工ロール31の外周面には、グラビア彫刻で規定された一定量の薬液33aが塗布される。
【0054】
なお、第1含浸装置20の薬液槽23に蓄えられた薬液23aと第2含浸装置30の薬液槽33に蓄えられた薬液33aとは、上述のように、同一の薬液であってもよく或いは異なる薬液であってもよい。本実施形態においては、同一の薬品及び濃度を有する同一の薬液を使用した。
【0055】
また、第1含浸装置20の第1グラビア塗工ロール21と第2含浸装置30の第2グラビア塗工ロール31とは、同一のグラビア彫刻であってもよく或いは異なるグラビア彫刻であってもよい。本実施形態においては、いずれも、同一のグラビア彫刻を有するグラビア塗工ロールを使用した。
【0056】
このように、第2グラビア塗工ロール31の外周面に、グラビア彫刻で規定された一定量の薬液33aが塗布された状態において、第2含浸装置30においては、右向き水平方向に走行する織編物60は、第2グラビア塗工ロール31とその上部に位置する第2押圧ロール32の間に導入される。このとき、織編物60の他方面側(図1においては下面側)が第2グラビア塗工ロール31の上部周面上に接すると同時に、この織編物60は、押圧機構35の押圧力を介して第2押圧ロール32によって、その一方面側(図1においては上面側)から第2グラビア塗工ロール31に押圧される。
【0057】
このことにより、第2グラビア塗工ロール31の外周面に均一に塗布された薬液33aは、走行する織編物60の他方面側(図1においては新たな下面側であって、上記の第1含浸装置20で薬液23aが含浸されていない側)から織編物60に含浸する。このとき、第2グラビア塗工ロール31に塗布された薬液33aは、上記第1グラビア塗工ロール21と同様にグラビア彫刻で規定された一定量であって、織編物60全体を含浸する量より少ない。また、含浸が織編物60の他方面側(図1においては新たな下面側)から行われるので、織編物60の厚み方向に対して他方面側からほぼ中間の位置まで含浸するようになる。
【0058】
次に、第2含浸装置30から導出された織編物60は、右向き水平方向に走行して、乾燥装置(図示せず)に導入され乾燥され、薬液含浸装置100によって含浸された薬液が織編物60において機能することとなる。
【0059】
上述のように、第1含浸装置20において、織編物60の厚み方向に対して一方面側からほぼ中間の位置まで薬液23aが含浸され、続いて、第2含浸装置30において、織編物60の厚み方向に対して他方面側からほぼ中間の位置まで薬液33aが含浸されるので、長尺方向に走行する織編物60に対して、できるだけ少ない量の薬液を付与し、この薬液でもって内部の繊維にまで薬液の十分な含浸を得ると共に、続く乾燥工程における省エネルギーの要求に寄与できる薬液の少量付与を可能とする織編物の薬液含浸方法及び当該方法に使用する織編物の薬液含浸装置を提供することができる。
【実施例】
【0060】
次に、上記構成の織編物の薬液含浸装置を使用して織編物への薬液含浸の結果を各実施例によって説明する。
(実施例1)
上記実施形態に係る薬液含浸装置を用いて、編物Xの柔軟仕上加工を行った。編物Xは、目付け450g/m2の綿100%フライス編素材であった。柔軟仕上加工の薬液は、シリコーン系柔軟剤(日華化学株式会社製、ニッカシリコンTN2)の2%水溶液を使用し、第1含浸装置及び第2含浸装置の両方に同一の薬液を使用した。
【0061】
薬液含浸装置の第1グラビア塗工ロール及び第2グラビア塗工ロールは、いずれも、凹溝深度200μm、1インチ当たり37本のグラビア線をロール軸方向に対して60度の角度で彫刻した同一のグラビア塗工ロールを使用した。また、第1グラビア塗工ロールに対する第1押圧ロールの押圧力及び第2グラビア塗工ロールに対する第2押圧ロールの押圧力は、いずれも、0.35MPaであった。
【0062】
薬液含浸装置の後部に設置した乾燥装置の乾燥能力に対して、本実施例1においては、編物Xの走行速度は、60m/minとすることが可能であった。このとき、第1含浸装置及び第2含浸装置の両方を通過した後の編物Xに対する薬液の付与量は、編物Xの重量に対して55重量%であった。
(比較例1)
上記実施例1に対する比較例1として、下記の柔軟仕上加工を行った。比較例1は、実施例1と同じ編物Xに対して、実施例1と同じシリコーン系柔軟剤(日華化学株式会社製、ニッカシリコンTN2)の2%水溶液を使用した。また、比較例1は、実施例1の薬液含浸装置に変えて従来の含浸用マングル装置を使用したパッド・ニップ方式で行った。このとき、マングルの絞圧は、0.35MPaであり、使用した含浸用マングル装置における均一絞りの限界であった。その他、乾燥装置は、実施例1と同様のものを同じ条件で使用した。
【0063】
含浸用マングル装置の後部に設置した乾燥装置(実施例1と同様の装置)の乾燥能力に対して、本比較例1においては、編物Xの走行速度は、最高35m/minが限界であった。このとき、含浸用マングル装置を通過した後の編物Xに対する薬液の付与量は、編物Xの重量に対して80重量%であった。
【0064】
実施例1及び比較例1で柔軟仕上加工された編物Xの風合いを比較したところ同等であった。このことにより、実施例1においては、長尺方向に走行する編物Xに対して、できるだけ少ない量の薬液を付与し、この薬液でもって編物内部への薬液の十分な含浸を得ると共に、続く乾燥工程における省エネルギーに寄与できる薬液の少量付与を可能とすることができた。
(実施例2)
上記実施例1と同様の薬液含浸装置及び乾燥装置を用いて、編物Yの柔軟仕上加工を行った。編物Yは、目付け500g/m2の綿50%/ポリエステル50%スムース編素材であった。柔軟仕上加工の薬液は、アニオン界面活性剤系柔軟剤(日華化学株式会社製、サンソフターA700)の1%水溶液を使用し、第1含浸装置及び第2含浸装置の両方に同一の薬液を使用した。
【0065】
薬液含浸装置の第1グラビア塗工ロール及び第2グラビア塗工ロールは、いずれも、上記実施例1と同様のものを使用した。また、第1グラビア塗工ロールに対する第1押圧ロールの押圧力及び第2グラビア塗工ロールに対する第2押圧ロールの押圧力は、いずれも、上記実施例1と同様に0.35MPaであった。
【0066】
薬液含浸装置の後部に設置した乾燥装置の乾燥能力に対して、本実施例2においては、編物Yの走行速度は、45m/minとすることが可能であった。このとき、第1含浸装置及び第2含浸装置の両方を通過した後の編物Yに対する薬液の付与量は、編物Yの重量に対して60重量%であった。
(比較例2)
上記実施例2に対する比較例2として、下記の柔軟仕上加工を行った。比較例2は、実施例2と同じ編物Yに対して、実施例2と同じアニオン界面活性剤系柔軟剤(日華化学株式会社製、サンソフターA700)の1%水溶液を使用した。また、比較例2は、上記比較例1で使用した含浸用マングル装置及び乾燥装置と同様のものを同じ条件で使用した。
【0067】
比較例2の含浸用マングル装置の後部に設置した乾燥装置(実施例2と同様の装置)の乾燥能力に対して、本比較例2においては、編物Yの走行速度は、最高25m/minが限界であった。このとき、含浸用マングル装置を通過した後の編物Yに対する薬液の付与量は、編物Yの重量に対して85重量%であった。
【0068】
実施例2及び比較例2で柔軟仕上加工された編物Yの風合いを比較したところ同等であった。このことにより、実施例2においては、長尺方向に走行する編物Yに対して、できるだけ少ない量の薬液を付与し、この薬液でもって編物内部への薬液の十分な含浸を得ると共に、続く乾燥工程における省エネルギーに寄与できる薬液の少量付与を可能とすることができた。
【0069】
なお、本発明の実施にあたり、上記実施形態に限らず次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)上記実施形態においては、第1反転機構として3本のガイドロールからなる反転機構を採用し、一方、第2反転機構として1本のダンサーロールと1本のガイドロールからなる反転機構を採用した。これらの反転機構の構成については、上記実施形態に限定されることなく、走行する織編物を良好な状態を保って反転させる機構であれば、どのような構成の反転機構を採用してもよい。上記のガイドロール或いはダンサーロールの代わりに、例えば、エキスパンダーロールやベンドバー或いはスパイラルロールなどを備えた反転機構を採用するようにしてもよい。
(2)上記実施形態においては、織編物の走行方向をほぼ180度変換する2つの反転機構を採用して、薬液含浸装置に入る織編物の走行方向と薬液含浸装置から出る織編物の走行方向とを逆方向に反転するものである。しかし、反転機構の数と各反転機構の変換角度を調整するようにして、薬液含浸装置に入る織編物の走行方向と薬液含浸装置から出る織編物の走行方向とを自由に組み立てるようにしてもよい。
(3)上記実施形態においては、第1及び第2押圧ロールに薬液が付着した場合であっても、押圧ロールに付着した薬液で織編物を汚染しないように、それぞれにサブドクターブレードを採用するものであるが、第1或いは第2押圧ロールの片方にのみ、例えば、第2押圧ロールにのみサブドクターブレードを採用するようにしてもよい。第2押圧ロールは、第1含浸装置で薬液が含浸された織編物と直接接するものであり、第1押圧ロールに比べて薬液が付着しやすいからである。また、これらのサブドクターブレードを採用せず、他の方法で第1及び第2押圧ロールの周面を拭くようにしてもよい。
(4)上記実施形態においては、第1及び第2押圧ロールに備えられた押圧機構は、共に、この加圧軸の上下動により押圧アームが上下して第1或いは第2押圧ロールを第1或いは第2グラビア塗工ロールに押圧するものであるが、これらに限ることなく、どのような押圧機構を採用するようにしてもよい。例えば、加圧シリンダーの加圧軸が第1或いは第2押圧ロールのロール軸に直接作用して、第1或いは第2押圧ロールを第1或いは第2グラビア塗工ロールに押圧するものであってもよい。
(5)上記実施形態に係る薬液含浸装置は、織編物に使用されるものであるが、不織布や紙などにも使用することもできる。一般に、これらの不織布や紙などは、糸からなる織編物に比べて繊維密度が低く、容易に内部にある繊維にまで薬液を均一に含浸することができるが、中でも、比較的繊維密度の高いフェルトなどの重不織布に関しては、本薬液含浸装置が有効に働くものである。
【符号の説明】
【0070】
10…架台、20…第1含浸装置、30…第2含浸装置、21…第1グラビア塗工ロール、31…第2グラビア塗工ロール、22…第1押圧ロール、32…第2押圧ロール、23、33…薬液槽、24、34…ドクターブレード、25、35…押圧機構、40…第1反転機構、50…第2反転機構、51…ダンサーロール、60…織編物、100…薬液含浸装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺方向に走行する織編物の一方面側から当該織編物に第1薬液を含浸する第1含浸工程と、
この第1含浸工程後に前記織編物の走行方向を反転する反転工程と、
この反転工程後に前記織編物の他方面側から前記織編物に前記第1薬液と同一又は異なる第2薬液を含浸する第2含浸工程とを有して、
前記第1含浸工程は、第1グラビア塗工ロールとこの第1グラビア塗工ロールの上部に前記織編物を介して配設される第1押圧ロールとを用いて、前記第1薬液が塗布された前記第1グラビア塗工ロールの上部周面上に前記織編物の前記一方面側が接すると同時に、当該織編物を前記第1グラビア塗工ロールに対して、前記第1押圧ロールにより、0.05(MPa)〜0.5(MPa)の押圧力で押圧して、前記第1薬液を前記織編物に対して前記一方面側から含浸し、
前記第2含浸工程は、第2グラビア塗工ロールとこの第2グラビア塗工ロールの上部に前記織編物を介して配設される第2押圧ロールとを用いて、前記第2薬液が塗布された前記第2グラビア塗工ロールの上部周面上に前記織編物の前記他方面側が接すると同時に、当該織編物を前記第2グラビア塗工ロールに対して、前記第2押圧ロールにより、0.05(MPa)〜0.5(MPa)の押圧力で押圧して、前記第2薬液を前記織編物に対して前記他方面側から含浸する織編物の薬液含浸方法。
【請求項2】
長尺方向に走行する織編物の一方面側から当該織編物に第1薬液を含浸する第1含浸工程と、
この第1含浸工程後に前記織編物の他方面側から前記織編物に前記第1薬液と同一又は異なる第2薬液を含浸する第2含浸工程とを有して、
前記第1含浸工程は、第1グラビア塗工ロールと第1押圧ロールとを用いて、前記第1薬液が塗布された前記第1グラビア塗工ロールの周面上に前記織編物の前記一方面側が接すると同時に、当該織編物を前記第1グラビア塗工ロールに対して、前記第1押圧ロールにより、0.05(MPa)〜0.5(MPa)の押圧力で押圧して、前記第1薬液を前記織編物に対して前記一方面側から含浸し、
前記第2含浸工程は、第2グラビア塗工ロールと第2押圧ロールとを用いて、前記第2薬液が塗布された前記第2グラビア塗工ロールの周面上に前記織編物の前記他方面側が接すると同時に、当該織編物を前記第2グラビア塗工ロールに対して、前記第2押圧ロールにより、0.05(MPa)〜0.5(MPa)の押圧力で押圧して、前記第2薬液を前記織編物に対して前記他方面側から含浸する織編物の薬液含浸方法。
【請求項3】
前記織編物は、50(g/m2)〜400(g/m2)の目付を有する織物、又は、150(g/m2)〜500(g/m2)の目付を有する編物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の織編物の薬液含浸方法。
【請求項4】
前記第1グラビア塗工ロール及び前記第2グラビア塗工ロールは、同一又は異なるグラビア線数、及び、同一又は異なる凹溝深度を有しており、
前記グラビア線数は、それぞれ、20(本/インチ)〜60(本/インチ)の範囲内であって、
前記凹溝深度は、それぞれ、50(μm)〜500(μm)の範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の織編物の薬液含浸方法。
【請求項5】
長尺方向に走行する織編物に薬液を含浸する織編物の薬液含浸装置であって、
第1グラビア塗工ロールとこの第1グラビア塗工ロールの上部の織編物を介する位置に配設される第1押圧ロールとを備えた第1含浸装置と、
この第1含浸装置を通過した後の織編物の走行方向に配設されて、走行する織編物の走行方向を反転する反転機構と、
この反転機構を通過した後の織編物の走行方向に配設されて、第2グラビア塗工ロールとこの第2グラビア塗工ロールの上部の織編物を介する位置に配設される第2押圧ロールとを備えた第2含浸装置とを有しており、
前記第1グラビア塗工ロールと前記第2グラビア塗工ロールとは、それぞれ、各グラビア塗工ロールの下方に設けられて当該グラビア塗工ロールの下部が薬液に浸漬する薬液槽と、各グラビア塗工ロールの上方に設けられて当該グラビア塗工ロールに先端が接触するドクターブレードとを備え、
前記第1押圧ロールと前記第2押圧ロールとは、それぞれ、走行する織編物を前記第1グラビア塗工ロール或いは前記第2グラビア塗工ロールに対して押圧する押圧機構を備えている織編物の薬液含浸装置。
【請求項6】
前記反転機構とは別に他の反転機構を有して、この他の反転機構は、前記第1含浸装置を通過する前の織編物の走行方向或いは前記第2含浸装置を通過した後の織編物の走行方向に配設されて、前記第1含浸装置を通過する前或いは前記第2含浸装置を通過した後の織編物の走行方向を反転させることを特徴とする請求項5に記載の織編物の薬液含浸装置。
【請求項7】
前記第1グラビア塗工ロール及び前記第2グラビア塗工ロールは、同一又は異なるグラビア線数、及び、同一又は異なる凹溝深度を有しており、
前記グラビア線数は、それぞれ、20(本/インチ)〜60(本/インチ)の範囲内であって、
前記凹溝深度は、それぞれ、50(μm)〜500(μm)の範囲内であることを特徴とする請求項5又は6に記載の織編物の薬液含浸装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−144485(P2011−144485A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7735(P2010−7735)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000219794)東海染工株式会社 (24)
【Fターム(参考)】