説明

缶の回転防止具

【課題】
開缶された缶内の収納物を攪拌、混合する際に、開缶部で作業者が怪我をしないように缶の共廻りを防止し、かつ、攪拌、混合作業の向上を図る缶の回転防止具を提供する。
【解決手段】
缶を載置する載置板4と、該載置板4の表面に設けられ、載置された缶の外面に係合して缶の水平面内での回転を防止する係止部材6と、前記載置板4に設けられて作業者の足で踏むことができる踏み部4aとを有することを特徴とする缶の回転防止具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶の回転防止具に関するもので、詳しくは、塗料等の缶を開缶して、その収納物をハンドミキサー等で攪拌する際に、その缶が供廻りしないように固定する缶の回転防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築現場で使用される塗料等は、通常、一斗缶、ペール缶等に入れられた密封状態で建築現場に納入され、これを建築現場で開缶し、その缶内で塗料等の攪拌、混合を行っている。
【0003】
この攪拌、混合は、一般にハンドミキサー等の攪拌機の攪拌部を缶の塗料等内に入れ、この攪拌機を作業者が手に持って攪拌作業を行うのが現状である。
また、攪拌時においては、内容物の粘性、量により、缶を固定しないと、缶が供廻りするため、その缶を、作業者の両脚内側で挟み固定した状態で攪拌作業を行っているのが一般的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般に前記の缶は金属や硬質樹脂で形成されているため、開缶された部分は、鋭利な状態となっており、前記のように、作業者が両脚内側で缶を挟み込み固定すると、その挟み込みが不十分又は必要以上の回転力が掛ると缶が供廻り回転して作業者が怪我をするおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、作業者の人体が缶に接触することなく、その作業者の体重を、缶の回転を防止する力として缶に伝達して、缶内の塗料等の攪拌、混合を行うことができる缶の回転防止具を提供し、前記従来の問題を解消することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、缶を載置する載置板と、該載置板の表面に設けられ、載置された缶の外面に係合して缶の水平面内での回転を防止する係止部材と、前記載置板に設けられて作業者の足で踏むことができる踏み部とを有することを特徴とするものである。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記載置板を折り畳み可能に設けたことを特徴とするものである。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記係止部材が、缶の外周の角部に係合する等辺山形鋼で形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記係止部材が、缶の側壁面に係合する平板で形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発明において、中央に方形の主板を設け、該主板の少なくとも3辺に夫々載置板を外側へ突出して設け、少なくとも一直線上に位置する2枚の載置板に前記係止部材を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、開缶された缶を載置板上に載置し、その缶の外面に係止部材を係合させることにより載置板に対する缶の水平面内での回転を防止し、また、載置板の踏み部を作業者が足で踏むことにより、その体重によって載置板の回転を防止できる。
【0012】
したがって、作業者が缶に接触することなく、攪拌機の回転による缶の供廻りを防止でき、作業者の怪我のおそれをなくし、かつ、作業性の向上を図ることができる。
【0013】
また、載置板を折り畳み可能に設けることにより、運搬時のコンパクト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1を示す斜視図。
【図2】図1の平面図。
【図3】図1の側面図。
【図4】図1において缶を載置した状態の斜視図。
【図5】本発明の実施例2を示す斜視図。
【図6】本発明の実施例3を示す斜視図。
【図7】本発明の実施例4を示す平面図。
【図8】本発明の実施例5を示す平面図。
【図9】本発明の実施例6を示す斜視図。
【図10】本発明の実施例7を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を図に示す実施例に基づいて説明する。
[実施例1]
図1乃至図4は実施例1を示すもので、その図2は回転防止具1を実線で示し、缶2を鎖線で示し、また、図4は回転防止具1と缶2を実線で示している。
【0016】
また、本実施例は、横断面が方形の缶、例えば、建築現場で使用する塗料等を収納するいわゆる一斗缶と称される缶に使用する例であり、その缶は、横断面形状が正方形の角筒状のものである。
【0017】
尚、以下において、回転防止具1の使用姿勢において、その表面側をAとし、裏面側をBとする。
【0018】
回転防止具1は、その中央に位置して主板3が配置されており、該主板3は正方形の板材、例えば、金属板、樹脂板等で形成されている。更に、前記主板3は、使用する缶2の外径より小径に形成されている。実施例では、この主板3の直径を約100mmに設定した。
【0019】
前記、主板3の各側端部3aには、夫々長方形状の載置板4が、側端部3aの端辺方向と直交する外側方向へ突出するように備えられており、本実施例1では4個備えられている。前記載置板4は、主板3に対して、回転手段、例えば、水平方向に回転軸を有する板丁番等の丁番5により表裏方向に回転可能に連結して備えられている。
【0020】
該各載置板4は、金属板、樹脂板等で形成されている。更に、前記各載置板4の外側方向への突出長は、各載置板4の図に示すような使用時の水平姿勢において、前記の缶2を、その中心部が前記主板3の中心部に略合致し、かつ、缶2の角部2aが各載置板4上に位置するように配置した場合に、各載置板4の外先端部が缶2の角部2aの位置より外側に位置し、かつ、後述する係止部材6の外側に所定長の踏み部4aが形成されるように設定されている。実施例では、この載置板4の長手方向の長さを約200mmに設定した。
【0021】
前記各載置板4には、これを水平姿勢にした図の状態において、その載置板4の表面A側に位置して、係止部材6が固設されている。
【0022】
該係止部材6は、内角が90度の等辺山形鋼を、その軸方向において適宜長さに切断した部材で形成され、これを、その内角側が、係止部材6の中心側、すなわち、主板3側に向くように配置して各載置板4の使用状態における表面側に溶接等で固定して立設されている。該各係止部材6は、各係止部材6の内面(内角面)が、缶2における外周の角部2aの外面(外角面)に近接するように配置されている。すなわち、係止部材6は、缶2の外面に係止して缶2の水平面内での回転を防止するように配置されている。
【0023】
なお、前記各係止部材6の長さ、高さ、対向する両係止部材6,6の対向間隔は、缶2を各係止部材6間内に嵌合配置した場合に、回転防止具1に対して缶2の水平面内での回転を阻止できればよく、その長さ、高さ、対向間隔は任意に設定される。
【0024】
次に、前記の回転防止具1の使用方法について説明する。
先ず、使用時には、各載置板4を図に示すように水平方向に開き、主板3と各載置板4を地表等において、表面側Aを上向きにして水平姿勢に置く。
【0025】
次に、塗料等が収納され、開缶した缶2を、図2,4に示すように、その各角部2aが各係止部材6の内側に近接して位置するようにして主板3と各載置板4上に載置する。
【0026】
次に、作業者が、片方の足で1個の載置板4の踏み部4aを踏むか、或いは、双方の足で、隣接する2個の載置板4,4の踏み部4a,4aを踏んで、その作業者の体重によって回転防止具1に回転防止力を伝達させる。
【0027】
次に、その作業者が、ハンドミキサー等の攪拌機を手に持ち、その攪拌部を缶の塗料等内に入れ、攪拌機を回転作動して、その塗料等の攪拌、混合を行う。
【0028】
このとき、攪拌部の回転により、内容物の粘性や量によって、缶2に回転力が作用するが、その缶2は、回転防止具1の係止部材6に係合してその回転が防止され、缶の供廻りが防止される。
【0029】
これにより、作業者が缶2に接触することなく、缶2の供廻りを阻止できるため、前記従来の作業のように、作業者が怪我をするおそれもない。また、作業は、その足で載置板4を踏むのみでよく、作業性が向上する。
【0030】
次に、作業終了後、缶2を取り外し、回転防止具1の各載置板4を、回転手段5によって、図3の鎖線に示すように裏面B側へ倒して折り畳む。
【0031】
これにより、回転防止具1を不使用時にはコンパクトにでき、その運搬や蔵置が容易になる。
[実施例2]
図5は実施例2を示す。
【0032】
本実施例2は、前記実施例1における4個の載置板4のうち、1個の載置板4を設けない、すなわち、載置板4を3個にしたものである。
【0033】
その他の構造は、前記実施例1と同様であるため、前記と同一部分には前記と同一符号を付してその説明を省略する。
【0034】
本実施例2においては、3個の載置板4と、これに設けた3個の係止部材6によって、缶2の回転を防止でき、前記実施例1と同様の作用、効果を発揮できる。
[実施例3]
図6は実施例3を示す。
【0035】
本実施例3は、前記実施例2における3個の載置板4のうち、一直線上に位置して相互に対向する2個の載置板4に前記の係止部材6を設け、他の1個の載置板4には前記の係止部材6を設けない構造にしたものである。
【0036】
その他の構造は、前記実施例2と同様であるため、前記と同一部分には、前記と同一符号を付してその説明を省略する。
【0037】
本実施例3は、2個の係止部材6が、缶2における対角線上に位置する角部2aに係合して缶2の回転を防止でき、前記実施例1と同様の作用、効果を発揮できる。
[実施例4]
図7は実施例4を示す。
【0038】
本実施例4は、前記実施例1の係止部材6を、平板の係止部材6Aとしたものである。この係止部材6Aは、例えば、平板状の金属板、樹脂板などを用いる。
【0039】
前記平板状の係止部材6Aは、その対向する係止部材6A,6A相互の内のり寸法が、使用する缶2の対向する側壁2bの外面間隔と略同一となるように設けられている。
【0040】
すなわち、各係止部材6Aの内側が缶2の側壁2bの外面に近接し、缶2を4個の係止部材6A内に嵌入でき、かつ、この係止部材6Aによって缶2の水平面内での回転を防止できるように設けられている。
【0041】
その他の構造は、前記実施例1と同様であるため、前記実施例1と同一部分には前記と同一符号を付してその説明を省略する。
【0042】
本実施例4においても、前記実施例1と同様の作用、効果を発揮できる。
[実施例5]
図8は、実施例5を示す。
【0043】
本実施例5は、前記実施例1における主板3をなくし、2個の前記の載置板4を一直線上に配置し、該両載置板4,4を、前記と同様な回転手段、例えば丁番5で、表裏方向に回転可能に連結し、両載置板4,4上に係止部材6を前記のように立設し、両載置板4,4の外側部の先部に踏み板からなる踏み部8を、載置板4の軸方向と直交する方向に回転手段5を介して備え、該踏み部8を、表裏方向に回転可能に備えたものである。
【0044】
また、前記両係止部材6,6は、前記実施例1と同様の等辺山形鋼で形成され、これらの間に、缶2の対角線上の角部2aが嵌合し、その缶2の回転を防止するように配置して、載置板4上に固着されている。
【0045】
本実施例5においては、その両踏み板からなる踏み部8,8を作業者が足で踏むことにより、缶2の回転を防止でき、また、不使用時は、両載置板4,4相互及び踏み部8を、回転手段5で折り畳むことができ、前記実施例1と同様の作用、効果を発揮できる。
[実施例6]
図9は実施例6を示す。
【0046】
本実施例6は、前記実施例5における等辺山形鋼からなる係止部材6を、前記図7に示す係止部材6Aと同様の平板状の金属板等からなる係止部材6Aとしたものである。更に、該対向する両係止部材6A間の内のり寸法は、前記実施例4と同様に設定され、該両係止部材6A,6A間に缶2の両側壁が嵌合して、缶2の回転を防止するようになっている。
【0047】
その他の構造は、前記実施例5と同様であるため、前記と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0048】
本実施例においても、前記実施例と同様の作用、効果を発揮できる。
[実施例7]
図10は実施例7を示す。
【0049】
本実施例7は、前記実施例6における平板からなる係止部材6を、丸棒の係止部材6Bとしたものである。また、該両係止部材6B,6Bは、両載置板4,4の軸芯X−Xに対して、一方の係止部材6Bが前側に位置し、他方の係止部材6Bが後側に位置するように、ずれて配置されており、缶2が回転しないようにしている。
【0050】
その他の構造は、前記実施例6と同様であるため、前記と同一部分には前記と同一符号を付してその説明を省略する。
【0051】
本実施例7においても、前記実施例6と同様の作用、効果を発揮できる。
[実施例8]
前記実施例においは、載置板4、踏み部である踏み板8を、回転手段5で折り畳み可能に設けたが、これら載置板4、踏み板8は、回転手段5で連結することなく折り畳み出来ないように構成してもよい。
[実施例9]
前記主板3、載置板4、踏み部8の大きさ、形状は、前記の缶を載置できる大きさ、形状であればよく、任意に設定する。
【符号の説明】
【0052】
1 回転防止具
2 缶
3 主板
4 載置板
4a,8 踏み部
5 回転手段
6,6A,6B 係止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶を載置する載置板と、該載置板の表面に設けられ、載置された缶の外面に係合して缶の水平面内での回転を防止する係止部材と、前記載置板に設けられて作業者の足で踏むことができる踏み部とを有することを特徴とする缶の回転防止具。
【請求項2】
前記載置板を折り畳み可能に設けたことを特徴とする請求項1記載の缶の回転防止具。
【請求項3】
前記係止部材が、缶の外周の角部に係合する等辺山形鋼で形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の缶の回転防止具。
【請求項4】
前記係止部材が、缶の側壁面に係合する平板で形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の缶の回転防止具。
【請求項5】
中央に方形の主板を設け、該主板の少なくとも3辺に夫々載置板を外側へ突出して設け、少なくとも一直線上に位置する2枚の載置板に前記係止部材を設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の缶の回転防止具。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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