缶体及び缶体の成形工具
【課題】機械的強度を向上させて使用する金属材の薄肉化を可能とし、缶胴の内面の被覆欠陥が防止され、商品価値を向上させた缶体及び缶体の成形工具を提供する。
【解決手段】缶体1は、缶胴11に配設され傾斜面211、221を有するフレーム部2と、フレーム部2で囲まれ平坦面を有するパネル部3とを有し、フレーム部2が、パネル部3を延長した仮想延長平面30より突出しており、仮想延長平面30からのフレーム部2の突出量が大きくなると、該突出量に応じて、傾斜面221が長くなる構成としてある。
【解決手段】缶体1は、缶胴11に配設され傾斜面211、221を有するフレーム部2と、フレーム部2で囲まれ平坦面を有するパネル部3とを有し、フレーム部2が、パネル部3を延長した仮想延長平面30より突出しており、仮想延長平面30からのフレーム部2の突出量が大きくなると、該突出量に応じて、傾斜面221が長くなる構成としてある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶体及び缶体の成形工具に関し、特に、機械的強度を向上させることにより、使用する金属材の薄肉化を可能とする缶体及び缶体の成形工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料などに用いられる缶体として、スリーピース缶やシームレス缶などが使用されている。
スリーピース缶は、金属板を筒状に成形し、対向する端部を溶接、接着等により接合して側面継目付缶胴を成形し、この缶胴の両端に天蓋及び底蓋を巻き締めした構成としてある。また、シームレス缶は、金属板を円盤状のブランクに打ち抜き、絞り−しごき成形、あるいは、ストレッチドロー成形(薄肉化絞り成形)等を施して有底円筒状の缶胴を形成し、この缶胴の上端に蓋を巻き締めした構成としてある。
【0003】
前記のような缶体においては、輸送時などの衝撃や内容物充填に続いて行われる殺菌後の缶内の減圧などによる変形がなく、かつ、金属板の厚さを薄くすることを可能とする技術の確立が要望されており、様々な技術が研究開発されている。
【0004】
たとえば、特許文献1には、缶胴の少なくとも一部に、絞り成形部乃至張り出し成形部と未加工部とを、一方をパネル及び他方をフレームの関係に周状に形成した耐変形性に優れた缶詰用缶(缶体)の技術が開示されている。この技術は、パネル及びフレームの各々が、互いに径の異なる円筒面上に位置しており、かつ、パネル及びフレームは、缶胴の軸方向及び周方向を横切る任意の断面上にパネルとフレームとが必ず交互に存在する位相に配置されていることを特徴とする。
また、この特許文献1には、パネルを六角形とした例も開示されており、この技術において、パネル及びフレームは、缶胴に対応した湾曲面である。
【0005】
また、特許文献2には、缶胴の少なくとも一部に周状多面体壁が形成され、該多面体壁は構成単位面と、構成単位面同士が接する境界稜線及び境界稜線同士が交わる交叉部を有し、該境界稜線及び交叉部は構成単位面に比べて相対的に容器外側に凸となっており、構成単位面は対向する交叉部間で滑らかに窪んだ部分を有し、構成単位面の周方向に隣合った容器軸方向配列が位相差をなしている薄肉金属容器(缶体)が開示されている。
また、この特許文献2には、構成単位面を六角形とした例も開示されており、この技術において、構成単位面は滑らかに湾曲している。
【0006】
また、特許文献3には、缶胴の周方向及び軸方向に複数の同一の矩形状の平坦面が形成されており、周方向に隣合う平坦面は、境界稜線を介して互いに連なって配置されることにより、缶胴を横断面視したときに多角形状を形成し、缶軸方向に隣合う平坦面は、互いに所定間隔を存して周方向に位置をずらして配置された缶体が開示されている。この缶体は、缶軸方向に隣合う平坦面間の位置には、上方の境界稜線の下端と、該境界稜線の直下に位置する下方の平坦面の両側の一対の境界稜線の上端とを結ぶ一対の連結稜線が形成され、互いに隣合う一対の連結稜線から上方の平坦面の下縁に向かって傾斜する三角形状の傾斜面と、互いに隣合う一対の連結稜線から下方の平坦面の上縁に向かって傾斜する三角形状の傾斜面とが周方向に交互に形成されていることを特徴とする。
また、この特許文献3の缶体は、境界稜線及び連結稜線が六角形を形成し、該六角形内に、矩形状の平坦面と一対の三角形状の傾斜面が形成されている。
【0007】
また、特許文献4には、缶体の成形装置に関連する技術として、凹凸状の多面体を外周に有するインナローラと、このインナローラと凹凸が逆の多面体を外周に有するアウタローラを同期回転させて、インナローラとアウタローラの間に挟み込んだ缶胴の側壁に多面体形状を成形する周状多面体壁缶の製造装置(缶体の成形装置)及びその成形工具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平6−78096号公報
【特許文献2】特公平7−5128号公報
【特許文献3】特開平10−328772号公報
【特許文献4】特開平9−192763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記の特許文献1〜3の缶体は、機械的強度(変形強度とも呼ばれる。)が向上しているものの、さらなる機械的強度の向上が要望されていた。すなわち、輸送時などの衝撃や内容物充填に続いて行われる殺菌後の缶内の減圧などによる変形がなく、また、飲料、食品等の内容物の保存性の観点から前記缶胴の内面の被覆欠陥が防止され、かつ、金属板の厚さをより一層薄くすることを可能とする技術の確立が要望されていた。
また、缶コーヒーなどの飲料缶においては、商品価値(たとえば、外観上の美観)などを向上させることも要望されていた。
さらに、缶体の缶胴を凹凸状に成形する成形装置や成形工具(金型)においては、缶胴へのダメージを防止すること、成形精度を向上させることが要望されていた。
【0010】
本発明は、以上のような要望に応えるために提案されたものであり、機械的強度を向上させて使用する金属材の薄肉化を可能とし、缶胴の内面の被覆欠陥が防止され、商品価値を向上させた缶体及びその缶体の成形装置に用いる成形工具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明の缶体は、缶胴に配設され傾斜面を有するフレーム部と、このフレーム部で囲まれ平坦面を有するパネル部とを有し、前記フレーム部が、前記パネル部を延長した仮想延長平面より突出しており、前記仮想延長平面からの前記フレーム部の突出量が大きくなると、該突出量に応じて、前記傾斜面が長くなる部分を有する構成としてある。
【0012】
また、本発明の缶体の成形工具は、前記の缶体の成形工具であって、外周面にフレーム部形成用凸部及びパネル部形成用凹部を有し、前記パネル部形成用凹部の中央に稜線を有する多角形状のインナローラと、前記インナローラのフレーム部形成用凸部及びパネル部形成用凹部にそれぞれ対応する周方向に湾曲したフレーム部形成用凸部及びパネル部形成用凹部が外周面に形成されたアウタローラとを備える構成としてある。
【発明の効果】
【0013】
本発明の缶体によれば、機械的強度を向上させることにより、缶内の減圧などによる変形、および缶胴内面の被覆欠陥を防止すると共に、使用する金属材の薄肉化を可能とし、製造原価のコストダウン、省資源化、軽量化などを図ることができる。
また、種々の形状のフレーム部及びパネル部が缶胴に成形されることにより、それら形状を基調とした特異な立体感と美観を提供することができ、商品価値などを向上させることができる。
さらに、本発明の缶体の成形工具によれば、インナローラとアウタローラによるパネル部を成形する際の押し込み量が、インナローラのパネル部形成用凹部に設けられる稜線によって規制され、缶胴へのダメージが低減されるため、パネル部における破胴を防止すると共に安定した成形が可能となり、成形精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施形態にかかる缶体の概略正面図を示している。
【図2】図2は、図1のA−Aの概略断面図を示している。
【図3】図3は、図2のC部の概略拡大図を示している。
【図4】図4は、図1のB部の概略拡大図を示している。
【図5】図5は、(a)が図4のD−Dの概略拡大断面図を示しており、(b)が図4のE−Eの概略拡大断面図を示している。
【図6】図6は、本発明の応用例1の概略拡大図を示している。
【図7】図7は、本発明の応用例2の概略拡大図を示している。
【図8】図8は、本発明の応用例3の概略拡大図を示している。
【図9】図9は、本発明の実施形態にかかる缶体の成形工具のインナローラの概略斜視図を示している。
【図10】図10は、本発明の実施形態にかかる缶体の成形工具のアウタローラの概略斜視図を示している。
【図11】図11は、本発明の実施形態にかかる成形工具による加工概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[缶体の実施形態]
図1は、本発明の実施形態にかかる缶体の概略正面図を示している。
図1において、本実施形態の缶体1は、有底筒状の缶胴11、及び、蓋12を備えている。この缶体1は、缶胴11の高さ方向中央部の全周に配設された複数のフレーム部2と、フレーム部2で囲まれ平坦面を有する複数のパネル部3とを有しており、缶胴11の上部及び下部は、円筒状としてある。また、本実施形態では、各パネル部3の表面は平坦面、あるいはほぼ全てが平坦面である。
【0016】
なお、本実施形態の缶体1は、シームレス缶としてあるが、特に限定されるものではなく、たとえば、スリーピース缶などであってもよい。
また、缶体1は、缶胴11の高さ方向中央部の全周に複数のフレーム部2が配設されているが、これに限定されるものではなく、たとえば、缶胴11の高さ方向の少なくとも一部にフレーム部2が配設されていればよい。
さらに、缶胴11の素材は、ティンフリースチール(錫なし鋼板)、ブリキ板、アルミニウム板等の金属板が使用される。
【0017】
(フレーム部)
フレーム部2は、上述したように、缶胴11の高さ方向中央部の全周に配設されている。すなわち、フレーム部2は、缶胴11の軸心と平行となる二つの軸方向部分21と、缶胴11の周方向にほぼ沿って配設される四つの周方向部分22とを有し、缶胴11の側面方向から見ると、六角形状である。また、複数の(本実施形態では、11個(周方向)×4段(上下方向)=44個の)フレーム部2は、缶胴11の全周に隙間なく(隣接するフレーム部2が、軸方向部分21や周方向部分22を共有する状態で)並べられている。
なお、フレーム部2の形状とは、軸方向部分21や周方向部分22による外観形状(缶胴11の側面方向から見た外観形状)といった意味である。
【0018】
図2は、図1のA−Aの概略断面図を示している。
また、図3は、図2のC部の概略拡大図を示している。
また、図4は、図1のB部の概略拡大図を示している。
さらに、図5は、(a)が図4のD−Dの概略拡大断面図を示しており、(b)が図4のE−Eの概略拡大断面図を示している。
図2〜5において、フレーム部2(軸方向部分21及び周方向部分22)は、後述するパネル部3の平坦面を延長した仮想延長平面30より外側に突出している。
【0019】
すなわち、フレーム部2の軸方向部分21は、図3に示すように、パネル部3を延長した仮想延長平面30より外側に突き出ている(突出量は、h0である。)。また、各軸方向部分21は、平坦あるいはほぼ平坦な一対の傾斜面211を有しており、軸方向部分21の断面形状は、山形状(二等辺三角形の二辺からなる形状)である。なお、傾斜面211どうしが交差する部分や、傾斜面211とパネル部3の平坦面とが交差する部分は、通常、缶胴11へのダメージを抑制するための曲率半径を有する曲面としてある。また、傾斜面211の傾斜方向の長さ(すなわち、軸方向部分21の稜線から、傾斜面211とパネル部3の平坦面とが交差する交線までの長さ)は、L0である。
【0020】
また、フレーム部2の周方向部分22は、図5に示すように、二つの傾斜面221を有しており、また、パネル部3を延長した仮想延長平面30より外側に突き出ている。
ここで、周方向部分22の稜線の中間(適宜、D−D断面部と略称する。)の突出量は、h1であり(図5(a)参照)、周方向部分22の稜線どうしが交わる交点(適宜、E−E断面部と略称する。)の突出量は、h2である(図5(b)参照)。
周方向部分22のD−D断面部の断面形状は、山形状(三角形の二辺からなる形状)である。また、傾斜面221のD−D断面部の傾斜方向の長さ(すなわち、周方向部分22の稜線から、傾斜面221とパネル部3の平坦面とが交差する交線までの、缶胴11の軸心方向の長さ)は、L1である。さらに、仮想延長平面30に対する傾斜面221の傾斜角度は、α1である。
これに対し、周方向部分22のE−E断面部の断面形状は、パネル部3の平坦面と周方向部分22の稜線を直線的、あるいはほぼ直線的につなげる形状である。また、傾斜面221のE−E断面部の傾斜方向の長さ(すなわち、周方向部分22の稜線から、傾斜面221とパネル部3の平坦面とが交差する交線までの、缶胴11の軸心方向の長さ)は、L2である。さらに、仮想延長平面30に対する傾斜面221の傾斜角度は、α2である。
【0021】
前記の各寸法の関係は、h0<h1<h2、L0<L1<L2、α2<α1である。すなわち、h1<h2、L1<L2、α2<α1であることにより、各周方向部分22は、ねじれた傾斜面221を有しており、仮想延長平面30からのフレーム部2(本実施形態では、周方向部分22)の突出量が大きくなると、該突出量に応じて、傾斜面221が長くなる。これにより、周方向部分22の交点部(E−E断面部)およびその近傍において、成形時の応力集中を回避し、缶胴11の内面に被覆欠陥等のダメージを与えるといった不具合を回避することができる。
また、交差する二つの周方向部分22は、パネル部3の側の二つの傾斜面221がブーメラン形状、あるいはほぼブーメラン形状となる。
【0022】
また、図4の破線で示すようにフレーム部2の各稜線は直線状、あるいはほぼ直線状としてある。このようにすると、フレーム部2が強固な梁として作用し、輸送時などの衝撃、内容物の充填・殺菌後の減圧、あるいは、前記殺菌時の缶内圧上昇などによって缶体1に軸方向あるいは径方向の変形力が作用しても、耐座屈性あるいは径方向の内外に対する耐変形性等の機械的強度を向上させることができる。
また、フレーム部2の各稜線の交点の径方向位置は、通常、缶胴11の外径と同じであるが、これに限定されるものではない。たとえば、缶胴11の外径より内側に位置してもよく、あるいは、外側に位置してもよい。
【0023】
(パネル部)
パネル部3は上述したように、フレーム部2の軸方向部分21及び周方向部分22で囲まれており、平坦面を有する構成としてある。なお、本実施形態では、各パネル部3の表面を平坦面、あるいは、そのほぼ全てを平坦面としてある。これにより、パネル部3及びフレーム部2の形状を正確に精度良く形成することができ、フレーム部2のリブ機能を強化することができる。
また、パネル部3が、前記の傾斜面221からなる周方向部分22につながっているので、パネル部3への減圧時の応力集中が緩和されると共に、レトルト殺菌時の缶内圧の上昇時の過剰な膨出、あるいは、部分的な変形が防止され、缶体1の機械的強度を向上させることができる。
【0024】
ここで、パネル部3の平坦面の形状は、フレーム部2の稜線形状に対して非相似形としてある。すなわち、本実施形態では、パネル部3の平坦面の形状は、上述したフレーム部2の形状に対応して図4に示すように、パネル部3の対向する各一対の辺は、同じ長さを有しており、かつ、長さW1と長さW0とが、1.2≦W1/W0≦1.8の関係にあり、上述したフレーム部2の周方向部分22に形成した傾斜面221により、前記フレーム部2の稜線形状と非相似形の六角形状である。このように、フレーム部2とパネル部3の二重のハニカム構造状の六角形状が相まって、特により一層、前記の缶体1の機械的強度を向上させることができる。
【0025】
また、本実施形態では、上述したように、缶胴11の周方向に11個のパネル部3を並設してあるが、この数量は11個に限定されるものではなく、缶体1の胴径、高さ、デザイン、使用する金属材料等を考慮してその数量を適宜決定すれば良い。
さらに、缶体1は、パネル部3が並設されることにより、缶胴11の断面形状が、図2に示すように、多角形状(本実施形態では、正11角形状)となり、これにより、缶体1の機械的強度を向上させることができる。
【0026】
[実験例]
ティンフリースチール(錫なし鋼板)を用いて絞り−薄肉化絞り成形(ストレッチドロー成形)を行い、缶胴径:53mm、缶体の高さ105mm、内容量:190ml、及び缶胴板厚:0.15mmの有底シームレス缶を作成した。
次に、前記シームレス缶に後述する装置を用いて、図1に示す六角形状のフレーム部と、このフレーム部で囲まれた平坦面を有し、前記フレーム部の稜線形状と非相似形の六角形状のパネル部を成形した。この際、缶胴と前記フレーム部の周方向の稜線の交点から前記パネル部の平坦面までの深さを変えて、複数のシームレス缶を製作した。続いて、アルミ製蓋を巻き締め、前記パネル部の深さを変え、それぞれの缶体のパネリング強度を測定した。この測定結果を表1に示す。フレーム部2の各稜線の交点の径方向位置
【0027】
【表1】
【0028】
尚、表1中のパネリング強度は、前記フレーム部で囲まれた平坦面を有するパネル部を形成しない缶体と、前記パネル部を形成し、その深さを変えたそれぞれの缶体の測定を5缶ずつ行った平均値である。
また、パネリング強度の測定は、密閉ケース内に前記缶体を収納して外部からエアーで圧力を加え、変形が開始した時点のゲージ圧を読み取ってパネリング強度とした。
【0029】
前記実験例から、六角形状のフレーム部と、このフレーム部で囲まれた平坦面を有し、前記フレーム部の稜線形状と非相似形の六角形状パネル部を形成した缶体は、そのパネリング強度が飛躍的に向上することが判った。
【0030】
以上説明したように、本実施形態の缶体1によれば機械的強度が向上し、使用する金属材の薄肉化を可能とすることができる。これにより、製造原価のコストダウン、省資源化、軽量化などを図ることができる。
また、缶体1は、直線状の六角形状のフレーム部2及び平坦面的な六角形状のパネル部3が缶胴11に成形されることにより、二重の六角形を基調とした特異な立体感と美観を提供することができ、商品価値などを向上させることができる。
【0031】
<缶体の応用例1>
図6は、本発明の缶体の応用例1の概略拡大図を示している。
図6において、本応用例の缶体は、前記の缶体1と比べると、フレーム部2を90°回転させたフレーム部2aを配設した点などが相違する。
なお、他の構成は、缶体1とほぼ同様であり、図1の缶体と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0032】
(フレーム部)
本応用例の缶体のフレーム部2aは、缶胴11aの高さ方向中央部の全周に配設されている。すなわち、フレーム部2aは、缶胴11aの軸心方向にほぼ沿って配設される四つの軸方向部分21aと、缶胴11aの周方向に沿って配設される二つの周方向部分22aとを有し、缶胴11aの側面方向から見ると六角形状である。
【0033】
図示してないが、フレーム部2a(軸方向部分21a及び周方向部分22a)は、後述するパネル部3aの平坦面を延長した仮想延長平面30より外側に突出している。
ここで、軸方向部分21aの稜線の中間(適宜、F−F断面部と略称する。)の突出量は、h1aであり、軸方向部分21aの稜線と周方向部分22aの稜線どうしが交わる交点(適宜、G−G断面部と略称する。)の突出量は、h2aである。なお、h1aやh2aなどは、図示してないが、前記のh1やh2などと同様に対応している。
軸方向部分21aは、二つの傾斜面211aを有しており、F−F断面部の傾斜面211aの傾斜方向の長さ(すなわち、軸方向部分21aの稜線から、傾斜面211aとパネル部3aの平坦面とが交差する交線までの、缶胴11aの軸心方向の長さ)は、L1aである。さらに、仮想延長平面30に対する傾斜面211aの傾斜角度は、α1aである。
これに対し、軸方向部分21aのG−G断面部の傾斜方向の長さ(すなわち、軸方向部分21aの稜線から、傾斜面211aとパネル部3aの平坦面とが交差する交線までの、缶胴11aの軸心に沿った長さ)は、L2aである。さらに、仮想延長平面30に対する傾斜面211aの傾斜角度は、α2aである。
【0034】
前記の各寸法の関係は、h1a<h2a、L1a<L2a、α2a<α1aであり、これにより、各軸方向部分21aは、ねじれたような一対の傾斜面211aを有しており、仮想延長平面30からのフレーム部2a(本応用例では、軸方向部分21a)の突出量が大きくなると、該突出量に応じて、傾斜面211aが長くなる。これにより、軸方向部分21aと周方向部分22aの交点部(G−G断面部)およびその近傍において、成形時の応力集中を回避し、缶胴11aにダメージを与えるといった不具合を回避することができる。
【0035】
また、フレーム部2aの周方向部分22aは、パネル部3aを延長した仮想延長平面30より外側に突き出ている。また、各周方向部分22aは平坦、あるいはほぼ平坦な一対の傾斜面221aを有しており、周方向部分22aの断面形状は、山形状(二等辺三角形の二辺からなる形状)である。
【0036】
また、図6の破線で示すようにフレーム部2aの各稜線は直線状、あるいはほぼ直線状としてある。このようにすると、フレーム部2aが強固な梁として作用し、輸送時などの衝撃、内容物の充填・殺菌後の減圧、あるいは、前記殺菌時の缶内圧上昇などによって缶体に軸方向あるいは径方向の変形力が作用しても、耐座屈性あるいは径方向の内外に対する耐変形性等の機械的強度を向上させることができる。
また、フレーム部2aの各稜線の交点の径方向位置は、通常、缶胴11aの外径と同じであるが、これに限定されるものではない。たとえば、缶胴11aの外径より内側に位置してもよく、あるいは、外側に位置してもよい。
【0037】
(パネル部)
パネル部3aは、フレーム部2aの軸方向部分21a及び周方向部分22aで囲まれており、平坦面を有する構成としてある。なお、本応用例では、各パネル部3aの表面を平坦面、あるいは、そのほぼ全てを平坦面としてある。これにより、パネル部3a及びフレーム部2aの形状を正確に精度良く形成することができ、フレーム部2aのリブ機能を強化することができる。
また、パネル部3aが、前記の傾斜面211aからなる軸方向部分21aにつながっているので、パネル部3aへの減圧時の応力集中が緩和されると共に、レトルト殺菌時の缶内圧の上昇時の過剰な膨出、あるいは、部分的な変形が防止され、缶体の機械的強度を向上させることができる。
【0038】
ここで、パネル部3aの平坦面の形状は、フレーム部2aの稜線形状に対して非相似形としてある。すなわち、本応用例では、パネル部3aの平坦面の形状は、上述したフレーム部2aの形状に対応して図6に示すように、パネル部3aの対向する各一対の辺は、同じ長さを有しており、かつ、長さW0aと長さW1aとが、0.5≦W1a/W0a≦0.8の関係にあり、上述したフレーム部2aの軸方向部分21aに形成した傾斜面211aにより、前記フレーム部2aの稜線形状と非相似形の六角形状である。このようにしても、フレーム部2aとパネル部3aの二重のハニカム構造状の六角形状が相まって、特により一層、前記の缶体の機械的強度を向上させることができる。
【0039】
このように、応用例1の缶体は、前記の実施形態と同様の効果を奏することができ、さらに、特異な立体感と美観を提供することができ、商品価値などを向上させることができる。
【0040】
<缶体の応用例2>
図7は、本発明の応用例2の缶体の概略拡大図を示している。
図7において、本応用例の缶体は、前記の缶体1と比べると、フレーム部2の代わりに、三角形状のフレーム部2bを配設した点などが相違する。
なお、他の構成は、缶体1とほぼ同様であり、図1の缶体と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0041】
(フレーム部)
本応用例の缶体のフレーム部2bは、缶胴11bの全周に配設されている。すなわち、フレーム部2bは、缶胴11bの軸心方向に傾斜して配設される二つの軸方向傾斜部分21b(三角形の斜辺に対応する部分)と、缶胴11bの周方向に沿って設けられる一つの周方向部分22b(三角形の底辺に対応する部分)とを有し、缶胴11bの側面方向から見ると、二等辺三角形状の前記フレーム部2bの周方向部分22b(底辺)に対する頂角部分の内面が湾曲する形状である。なお、本実施形態では、フレーム部2bの稜線形状を二等辺三角形としている。
【0042】
また、複数のフレーム部2bは、缶胴11bの全周に隙間なく(隣接するフレーム部2bが、軸方向傾斜部分21bや周方向部分22bを共有する状態で)並べられている。これにより、フレーム部2bがリブとして機能し、缶体の機械的強度を向上させることができる。
【0043】
図示してないが、フレーム部2b(軸方向傾斜部分21b及び周方向部分22b)は、後述するパネル部3bの平坦面を延長した仮想延長平面30より外側に突出している。
ここで、軸方向傾斜部分21bの稜線のポイントP2b(適宜、H−H断面部と略称する。)の突出量は、h1bであり、二つの軸方向傾斜部分21bの稜線が交わる交点となるポイントP1b(適宜、I−I断面部と略称する。)の突出量は、h2bである。
軸方向傾斜部分21bは、二つの傾斜面211bを有しており、H−H断面部の傾斜面211bの傾斜方向の長さ(すなわち、軸方向傾斜部分21bの稜線のポイントP2bから、傾斜面211bとパネル部3bの平坦面とが交差する交線までの、缶胴11bの軸心方向の長さ)は、L1bである。さらに、仮想延長平面30に対する傾斜面211bの傾斜角度は、α1bである。
これに対し、軸方向傾斜部分21bのI−I断面部の傾斜方向の長さ(すなわち、二つの軸方向傾斜部分21bの稜線が交わるポイントP1bから、傾斜面211bとパネル部3bの平坦面とが交差する交線までの、缶胴11bの軸心方向の長さ)は、L2bである。さらに、仮想延長平面30に対する傾斜面211bの傾斜角度は、α2bである。
【0044】
前記の各寸法の関係は、h1b<h2b、L1b<L2b、α2b<α1bであり、これにより、各軸方向傾斜部分21bは、ねじれたような一対の傾斜面211bを有しており、仮想延長平面30からのフレーム部2b(本応用例では、軸方向傾斜部分21b)の突出量が大きくなると、該突出量に応じて、傾斜面211bが長くなる。これにより、二つの軸方向傾斜部分21bの交点部(I−I断面部)およびその近傍において、成形時の応力集中を回避し、缶胴11bにダメージを与えるといった不具合を回避することができる。
【0045】
また、フレーム部2bの周方向部分22bは、パネル部3bを延長した仮想延長平面30より外側に突き出ている。また、各周方向部分22bは平坦、あるいはほぼ平坦な一対の傾斜面221bを有しており、周方向部分22bの断面形状は、山形状(二等辺三角形の二辺からなる形状)である。
【0046】
また、図7の破線で示すようにフレーム部2bの各稜線は直線状、あるいはほぼ直線状としてある。このようにすると、フレーム部2bが強固な梁として作用し、輸送時などの衝撃、内容物の充填・殺菌後の減圧、あるいは、前記殺菌時の缶内圧上昇などによって缶体に軸方向あるいは径方向の変形力が作用しても、耐座屈性あるいは径方向の内外に対する耐変形性等の機械的強度を向上させることができる。
また、フレーム部2bの各稜線の交点の径方向位置は、通常、缶胴11bの外径と同じであるが、これに限定されるものではない。たとえば、缶胴11bの外径より内側に位置してもよく、あるいは、外側に位置してもよい。なお、各ポイントP1b、P5bの径方向位置は、通常、缶胴11bの外径と同じであり、各ポイントP2b、P3b、P4bの径方向位置は、缶胴11cの外径より内側に位置している。
【0047】
(パネル部)
パネル部3bは、フレーム部2bの軸方向傾斜部分21b及び周方向部分22bで囲まれており、平坦面を有する構成としてある。なお、本応用例では、各パネル部3bの表面を平坦面、あるいは、そのほぼ全てを平坦面としてある。これにより、パネル部3b及びフレーム部2bの形状を正確に精度良く形成することができ、フレーム部2bのリブ機能を強化することができる。
また、パネル部3bが、前記の傾斜面211bからなる軸方向傾斜部分21bにつながっているので、パネル部3bへの減圧時の応力集中が緩和されると共に、レトルト殺菌時の缶内圧の上昇時の過剰な膨出、あるいは、部分的な変形が防止され、缶体の機械的強度を向上させることができる。
【0048】
ここで、パネル部3bの平坦面の形状は、フレーム部2bの稜線形状に対して非相似形としてある。すなわち、本応用例では、パネル部3bの平坦面の形状は、上述したフレーム部2bの形状に対応して図7に示すように、二等辺三角形状の底辺に対する頂角部分が円弧状に丸められている。そして、パネル部3bは、前記パネル部3bを二等辺三角形状と仮想した時の高さ方向の長さW0bとパネル部3bの高さ方向の長さW1bとが、0.5≦W1b/W0b≦0.8の関係にあり、上述したフレーム部2bの軸方向傾斜部分21bに形成した傾斜面211bにより、前記フレーム部2bの稜線形状と非相似形である。このようにしても、フレーム部2bとパネル部3bの二重の三角形状が相まって、前記の缶体の機械的強度を向上させることができる。
尚、本応用例では、パネル部3bの平坦面は、斜辺どうしの角部が円弧状に丸められた形状としてあるが、この円弧の曲率半径などは、特に限定されるものではない。たとえば、パネル部3bの平坦面は、三角形状や半円形状であってもよい。
【0049】
このように、応用例2の缶体は、前記の実施形態と同様の効果を奏することができ、さらに、特異な立体感と美観を提供することができ、商品価値などを向上させることができる。
【0050】
<缶体の応用例3>
図8は、本発明の応用例3の缶体の概略拡大図を示している。
図8において、本応用例の缶体は、前記の缶体1と比べると、フレーム部2の代わりに、正方形状のフレーム部2cを配設した点などが相違する。
なお、他の構成は、缶体1とほぼ同様であり、図1の缶体と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0051】
(フレーム部)
本応用例の缶体のフレーム部2cは、缶胴11cの全周に配設されている。すなわち、フレーム部2cは、缶胴11cの軸心方向に沿って配設される二つの軸方向部分21cと、缶胴11cの周方向に沿って配設される二つの周方向部分22cとを有し、缶胴11cの側面方向から見ると、前記フレーム部2cの二つの周方向部分22cは、対称的に内方向(正方形の中央方向)に湾曲する形状である。尚、本実施形態では、フレーム部2cの稜線形状を正方形状としている。
また、複数のフレーム部2cは、缶胴11cの全周に隙間なく(隣接するフレーム部2cが、軸方向部分21cや周方向部分22cを共有する状態で)並べられている。また、周方向部分22cの中央(ポイントP3c)に、上下方向に隣接するフレーム部2cの軸方向部分21cが位置する。これにより、フレーム部2cがリブとして機能し、缶体の機械的強度を向上させることができる。
【0052】
図示してないが、フレーム部2c(軸方向部分21c及び周方向部分22c)は、後述するパネル部3cの平坦面を延長した仮想延長平面30より外側に突出している。
また、フレーム部2cの軸方向部分21cは、パネル部3cを延長した仮想延長平面30より外側に突き出ている。また、各軸方向部分21cは平坦、あるいはほぼ平坦な一対の傾斜面211cを有しており、軸方向部分21cの断面形状は、山形状(二等辺三角形の二辺からなる形状)である。
【0053】
また、周方向部分22cの稜線のポイントP2cとポイントP3cのほぼ中間(適宜、J−J断面部と略称する。)の突出量は、h1cであり、周方向部分22cの稜線と軸方向部分21cの稜線が交わる交点(適宜、K−K断面部と略称する。)の突出量は、h2cである。
周方向部分22cは、傾斜面221cを有しており、J−J断面部の傾斜面221cの傾斜方向の長さ(すなわち、周方向部分22cの稜線から、傾斜面221cとパネル部3cの平坦面とが交差する交線までの、缶胴11cの軸心方向の長さ)は、L1cである。さらに、仮想延長平面30に対する傾斜面221cの傾斜角度は、α1cである。
これに対し、周方向部分221cのK−K断面部の傾斜方向の長さ(すなわち、周方向部分22cの稜線から、傾斜面221cとパネル部3cの平坦面とが交差する交線までの、缶胴11cの軸心方向の長さ)は、L2cである。さらに、仮想延長平面30に対する傾斜面221cの傾斜角度は、α2cである。
【0054】
ここで、前記の各寸法の関係は、h1c<h2c、L1c<L2c、α2c<α1cであり、これにより、各周方向部分22cは、ねじれたような傾斜面221cを有しており、仮想延長平面30からのフレーム部2c(本応用例では、周方向部分22c)の突出量が大きくなると、該突出量に応じて、傾斜面221cが長くなる。これにより、軸方向部分21cと周方向部分22cの交点部(ポイントP3c)およびその近傍において、成形時の応力集中を回避し、缶胴11cにダメージを与えるといった不具合を回避することができる。
【0055】
また、図8の破線で示すようにフレーム部2cの各稜線は直線状、あるいはほぼ直線状としてある。ただし、軸方向部分21cの稜線は、一本の直線となるが、周方向部分22cの稜線は、軸心方向から見ると、各ポイントP1c、P3c、P5cで折れ曲がっており、2本の直線からなっている。このようにすると、フレーム部2cが強固な梁として作用し、輸送時などの衝撃、内容物の充填・殺菌後の減圧、あるいは、前記殺菌時の缶内圧上昇などによって缶体に軸方向あるいは径方向の変形力が作用しても、耐座屈性あるいは径方向の内外に対する耐変形性等の機械的強度を向上させることができる。
また、フレーム部2cの各稜線の交点の径方向位置は、通常、缶胴11cの外径と同じであるが、これに限定されるものではない。たとえば、缶胴11cの外径より内側に位置してもよく、あるいは、外側に位置してもよい。なお、各ポイントP1c、P3c、P5cの径方向位置は、通常、缶胴11cの外径と同じであり、各ポイントP2c、P4cの径方向位置は、缶胴11cの外径より内側に位置している。
【0056】
(パネル部)
パネル部3cは、フレーム部2cの軸方向部分21c及び周方向部分22cで囲まれており、平坦面を有する構成としてある。なお、本応用例では、各パネル部3cの表面を平坦面、あるいは、そのほぼ全てを平坦面としてある。これにより、パネル部3c及びフレーム部2cの形状を正確に精度良く形成することができ、フレーム部2cのリブ機能を強化することができる。
また、パネル部3cが、前記の傾斜面221cからなる周方向部分22cにつながっているので、パネル部3cへの減圧時の応力集中が緩和されると共に、レトルト殺菌時の缶内圧の上昇時の過剰な膨出、あるいは、部分的な変形が防止され、缶体の機械的強度を向上させることができる。
【0057】
ここで、パネル部3cの平坦面の形状は、フレーム部2cの稜線形状に対して非相似形としてある。すなわち、本応用例では、フレーム部2cの稜線形状が正方形状であるのに対し、パネル部3cの平坦面の形状は、上述したフレーム部2cの形状に対応して図8に示すように、上辺及び下辺が対称的に内方向に湾曲しており、パネル部3cの側辺の高さ方向長さW0cと中央部の高さ方向の長さW1cとが、0.5≦W1c/W0c≦0.8の関係にあり、平坦面の中央を通る軸心方向の長さを短くし、上述したフレーム部2cの周方向部分22cに形成した傾斜面221cにより、前記フレーム部2cの稜線形状と非相似形である。
このように、フレーム部2cとパネル部3cの二重の四角形状の構造が相まって、より一層、前記の缶体の機械的強度を向上し、応用例3の缶体は、前記実施形態と同様の効果を奏することができ、さらに、特異な立体感と美観を提供することができ、商品価値などを向上させることができる。
【0058】
[缶体の成形工具の実施形態]
図9は、本発明の実施形態にかかる缶体の成形工具のインナローラの概略斜視図を示している。
また、図10は、本発明の実施形態にかかる缶体の成形工具のアウタローラの概略斜視図を示している。
また、図11は、本発明の実施形態にかかる成形工具による加工概略図を示している。
図9及び10において、本実施形態の缶体の成形工具は、インナローラ4とアウタローラ5とを備えており、たとえば、前記の特許文献4の周状多面体壁缶の製造装置に取り付けられ、前記の缶体1を成形することができる。
すなわち、本実施形態の成形工具は、インナローラ4とアウタローラ5を同期回転させて、インナローラ4とアウタローラ5の間に挟み込んだ缶胴11の側壁にフレーム部2及びパネル部3を成形する。
なお、本発明の成形工具は、上述した図1、図6乃至8に示す缶体に適用することができるが、本実施形態では、図1に示す缶体1に適用する成形工具について説明する。
【0059】
(インナローラ)
本実施形態において、インナローラ4は、回転軸(図示せず)が装入される筒状体であり、外周面が、缶体1のフレーム部2の軸方向の部分21と周方向の部分22、及びパネル部3(図1参照)に対応する多角形状であり、外周面にフレーム部形成用凸部41及びパネル部形成用凹部42を有する。
フレーム部形成用凸部41は、六角形状であり、缶体1のフレーム部2を成形するためのものである。また、パネル部形成用凹部42も同様に六角形状であり、缶体1のパネル部3を成形するためのものである。
【0060】
また、パネル部形成用凹部42は、中央に軸方向(回転軸の方向)に沿って稜線421が形成されており、この稜線421を中心線として、フレーム部形成用凸部41を介して形成される2つのパネル部形成用凹部42の深さは、それぞれ同じ深さに形成される。
この稜線421によって、インナローラ4と後述するアウタローラ5が缶体1のパネル部3を成形する際、パネル部3の押し込み量が規制される。これにより、フレー部2の突出成形、及びパネル部3の深さを均一にした成形が行われ、パネル部3における破胴を防止すると共に安定した成形が可能となり、成形精度を向上させることができる(図11参照)。
尚、フレーム部形成用凸部41やパネル部形成用凹部42の角部は、缶胴11の内面の被覆膜にダメージを与えないように緩やかな曲面となるように加工が施されている。
【0061】
(アウタローラ)
アウタローラ5は、径方向断面形状をインナローラ4と噛み合う大径部と、インナローラ4と噛み合わない小径部とからなるカム形状としてあり、大径部の外周面の全体に、パネル部形成用凸部51及びフレーム部形成用凹部52を有する。
フレーム部形成用凹部52及びパネル部形成用凸部51は、インナローラ4のフレーム部形成用凸部41及びパネル部形成用凹部42にそれぞれ対応する周方向に湾曲した六角形状であり、缶体1のフレーム部2及びパネル部3を成形するためのものである。
尚、パネル部形成用凸部51及びフレーム部形成用凹部52の角部は、缶胴11の外面の印刷膜にダメージを与えないように緩やかな曲面となるように加工が施されている。
【0062】
以上説明したように、本実施形態の缶体の成形工具によれば、インナローラ4のパネル部形成用凹部42に設けられた稜線421によって、アウタローラ5の過剰な押し込みが防止され、缶体1の成形時のパネル部3における破胴、内面被覆の損傷が防止されると共に安定した成形が可能となり、成形精度を向上させることができる。
【0063】
以上、本発明の缶体及び缶体の成形工具について、好ましい実施形態などを示して説明したが、本発明に係る缶体及び缶体の成形工具は、前記の実施形態などに限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
たとえば、缶体のフレーム部の形状は、前記形状に限定されるものではなく、他の多角形状や円形状であってもよい。このようにしても、缶体1と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 缶体
2、2a、2b、2c フレーム部
3、3a、3b、3c パネル部
4 インナローラ
5 アウタローラ
11、11a、11b、11c 缶胴
12 蓋
21、21a、21c 軸方向部分
21b 軸方向傾斜部分
22、22a、22b、22c 周方向部分
30 仮想延長平面
41 フレーム部形成用凸部
42 パネル部形成用凹部
51 パネル部形成用凸部
52 フレーム部成形用凹部
211、211a、211b、211c 傾斜面
221、221a、221b、221c 傾斜面
421 稜線
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶体及び缶体の成形工具に関し、特に、機械的強度を向上させることにより、使用する金属材の薄肉化を可能とする缶体及び缶体の成形工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料などに用いられる缶体として、スリーピース缶やシームレス缶などが使用されている。
スリーピース缶は、金属板を筒状に成形し、対向する端部を溶接、接着等により接合して側面継目付缶胴を成形し、この缶胴の両端に天蓋及び底蓋を巻き締めした構成としてある。また、シームレス缶は、金属板を円盤状のブランクに打ち抜き、絞り−しごき成形、あるいは、ストレッチドロー成形(薄肉化絞り成形)等を施して有底円筒状の缶胴を形成し、この缶胴の上端に蓋を巻き締めした構成としてある。
【0003】
前記のような缶体においては、輸送時などの衝撃や内容物充填に続いて行われる殺菌後の缶内の減圧などによる変形がなく、かつ、金属板の厚さを薄くすることを可能とする技術の確立が要望されており、様々な技術が研究開発されている。
【0004】
たとえば、特許文献1には、缶胴の少なくとも一部に、絞り成形部乃至張り出し成形部と未加工部とを、一方をパネル及び他方をフレームの関係に周状に形成した耐変形性に優れた缶詰用缶(缶体)の技術が開示されている。この技術は、パネル及びフレームの各々が、互いに径の異なる円筒面上に位置しており、かつ、パネル及びフレームは、缶胴の軸方向及び周方向を横切る任意の断面上にパネルとフレームとが必ず交互に存在する位相に配置されていることを特徴とする。
また、この特許文献1には、パネルを六角形とした例も開示されており、この技術において、パネル及びフレームは、缶胴に対応した湾曲面である。
【0005】
また、特許文献2には、缶胴の少なくとも一部に周状多面体壁が形成され、該多面体壁は構成単位面と、構成単位面同士が接する境界稜線及び境界稜線同士が交わる交叉部を有し、該境界稜線及び交叉部は構成単位面に比べて相対的に容器外側に凸となっており、構成単位面は対向する交叉部間で滑らかに窪んだ部分を有し、構成単位面の周方向に隣合った容器軸方向配列が位相差をなしている薄肉金属容器(缶体)が開示されている。
また、この特許文献2には、構成単位面を六角形とした例も開示されており、この技術において、構成単位面は滑らかに湾曲している。
【0006】
また、特許文献3には、缶胴の周方向及び軸方向に複数の同一の矩形状の平坦面が形成されており、周方向に隣合う平坦面は、境界稜線を介して互いに連なって配置されることにより、缶胴を横断面視したときに多角形状を形成し、缶軸方向に隣合う平坦面は、互いに所定間隔を存して周方向に位置をずらして配置された缶体が開示されている。この缶体は、缶軸方向に隣合う平坦面間の位置には、上方の境界稜線の下端と、該境界稜線の直下に位置する下方の平坦面の両側の一対の境界稜線の上端とを結ぶ一対の連結稜線が形成され、互いに隣合う一対の連結稜線から上方の平坦面の下縁に向かって傾斜する三角形状の傾斜面と、互いに隣合う一対の連結稜線から下方の平坦面の上縁に向かって傾斜する三角形状の傾斜面とが周方向に交互に形成されていることを特徴とする。
また、この特許文献3の缶体は、境界稜線及び連結稜線が六角形を形成し、該六角形内に、矩形状の平坦面と一対の三角形状の傾斜面が形成されている。
【0007】
また、特許文献4には、缶体の成形装置に関連する技術として、凹凸状の多面体を外周に有するインナローラと、このインナローラと凹凸が逆の多面体を外周に有するアウタローラを同期回転させて、インナローラとアウタローラの間に挟み込んだ缶胴の側壁に多面体形状を成形する周状多面体壁缶の製造装置(缶体の成形装置)及びその成形工具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平6−78096号公報
【特許文献2】特公平7−5128号公報
【特許文献3】特開平10−328772号公報
【特許文献4】特開平9−192763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記の特許文献1〜3の缶体は、機械的強度(変形強度とも呼ばれる。)が向上しているものの、さらなる機械的強度の向上が要望されていた。すなわち、輸送時などの衝撃や内容物充填に続いて行われる殺菌後の缶内の減圧などによる変形がなく、また、飲料、食品等の内容物の保存性の観点から前記缶胴の内面の被覆欠陥が防止され、かつ、金属板の厚さをより一層薄くすることを可能とする技術の確立が要望されていた。
また、缶コーヒーなどの飲料缶においては、商品価値(たとえば、外観上の美観)などを向上させることも要望されていた。
さらに、缶体の缶胴を凹凸状に成形する成形装置や成形工具(金型)においては、缶胴へのダメージを防止すること、成形精度を向上させることが要望されていた。
【0010】
本発明は、以上のような要望に応えるために提案されたものであり、機械的強度を向上させて使用する金属材の薄肉化を可能とし、缶胴の内面の被覆欠陥が防止され、商品価値を向上させた缶体及びその缶体の成形装置に用いる成形工具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明の缶体は、缶胴に配設され傾斜面を有するフレーム部と、このフレーム部で囲まれ平坦面を有するパネル部とを有し、前記フレーム部が、前記パネル部を延長した仮想延長平面より突出しており、前記仮想延長平面からの前記フレーム部の突出量が大きくなると、該突出量に応じて、前記傾斜面が長くなる部分を有する構成としてある。
【0012】
また、本発明の缶体の成形工具は、前記の缶体の成形工具であって、外周面にフレーム部形成用凸部及びパネル部形成用凹部を有し、前記パネル部形成用凹部の中央に稜線を有する多角形状のインナローラと、前記インナローラのフレーム部形成用凸部及びパネル部形成用凹部にそれぞれ対応する周方向に湾曲したフレーム部形成用凸部及びパネル部形成用凹部が外周面に形成されたアウタローラとを備える構成としてある。
【発明の効果】
【0013】
本発明の缶体によれば、機械的強度を向上させることにより、缶内の減圧などによる変形、および缶胴内面の被覆欠陥を防止すると共に、使用する金属材の薄肉化を可能とし、製造原価のコストダウン、省資源化、軽量化などを図ることができる。
また、種々の形状のフレーム部及びパネル部が缶胴に成形されることにより、それら形状を基調とした特異な立体感と美観を提供することができ、商品価値などを向上させることができる。
さらに、本発明の缶体の成形工具によれば、インナローラとアウタローラによるパネル部を成形する際の押し込み量が、インナローラのパネル部形成用凹部に設けられる稜線によって規制され、缶胴へのダメージが低減されるため、パネル部における破胴を防止すると共に安定した成形が可能となり、成形精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施形態にかかる缶体の概略正面図を示している。
【図2】図2は、図1のA−Aの概略断面図を示している。
【図3】図3は、図2のC部の概略拡大図を示している。
【図4】図4は、図1のB部の概略拡大図を示している。
【図5】図5は、(a)が図4のD−Dの概略拡大断面図を示しており、(b)が図4のE−Eの概略拡大断面図を示している。
【図6】図6は、本発明の応用例1の概略拡大図を示している。
【図7】図7は、本発明の応用例2の概略拡大図を示している。
【図8】図8は、本発明の応用例3の概略拡大図を示している。
【図9】図9は、本発明の実施形態にかかる缶体の成形工具のインナローラの概略斜視図を示している。
【図10】図10は、本発明の実施形態にかかる缶体の成形工具のアウタローラの概略斜視図を示している。
【図11】図11は、本発明の実施形態にかかる成形工具による加工概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[缶体の実施形態]
図1は、本発明の実施形態にかかる缶体の概略正面図を示している。
図1において、本実施形態の缶体1は、有底筒状の缶胴11、及び、蓋12を備えている。この缶体1は、缶胴11の高さ方向中央部の全周に配設された複数のフレーム部2と、フレーム部2で囲まれ平坦面を有する複数のパネル部3とを有しており、缶胴11の上部及び下部は、円筒状としてある。また、本実施形態では、各パネル部3の表面は平坦面、あるいはほぼ全てが平坦面である。
【0016】
なお、本実施形態の缶体1は、シームレス缶としてあるが、特に限定されるものではなく、たとえば、スリーピース缶などであってもよい。
また、缶体1は、缶胴11の高さ方向中央部の全周に複数のフレーム部2が配設されているが、これに限定されるものではなく、たとえば、缶胴11の高さ方向の少なくとも一部にフレーム部2が配設されていればよい。
さらに、缶胴11の素材は、ティンフリースチール(錫なし鋼板)、ブリキ板、アルミニウム板等の金属板が使用される。
【0017】
(フレーム部)
フレーム部2は、上述したように、缶胴11の高さ方向中央部の全周に配設されている。すなわち、フレーム部2は、缶胴11の軸心と平行となる二つの軸方向部分21と、缶胴11の周方向にほぼ沿って配設される四つの周方向部分22とを有し、缶胴11の側面方向から見ると、六角形状である。また、複数の(本実施形態では、11個(周方向)×4段(上下方向)=44個の)フレーム部2は、缶胴11の全周に隙間なく(隣接するフレーム部2が、軸方向部分21や周方向部分22を共有する状態で)並べられている。
なお、フレーム部2の形状とは、軸方向部分21や周方向部分22による外観形状(缶胴11の側面方向から見た外観形状)といった意味である。
【0018】
図2は、図1のA−Aの概略断面図を示している。
また、図3は、図2のC部の概略拡大図を示している。
また、図4は、図1のB部の概略拡大図を示している。
さらに、図5は、(a)が図4のD−Dの概略拡大断面図を示しており、(b)が図4のE−Eの概略拡大断面図を示している。
図2〜5において、フレーム部2(軸方向部分21及び周方向部分22)は、後述するパネル部3の平坦面を延長した仮想延長平面30より外側に突出している。
【0019】
すなわち、フレーム部2の軸方向部分21は、図3に示すように、パネル部3を延長した仮想延長平面30より外側に突き出ている(突出量は、h0である。)。また、各軸方向部分21は、平坦あるいはほぼ平坦な一対の傾斜面211を有しており、軸方向部分21の断面形状は、山形状(二等辺三角形の二辺からなる形状)である。なお、傾斜面211どうしが交差する部分や、傾斜面211とパネル部3の平坦面とが交差する部分は、通常、缶胴11へのダメージを抑制するための曲率半径を有する曲面としてある。また、傾斜面211の傾斜方向の長さ(すなわち、軸方向部分21の稜線から、傾斜面211とパネル部3の平坦面とが交差する交線までの長さ)は、L0である。
【0020】
また、フレーム部2の周方向部分22は、図5に示すように、二つの傾斜面221を有しており、また、パネル部3を延長した仮想延長平面30より外側に突き出ている。
ここで、周方向部分22の稜線の中間(適宜、D−D断面部と略称する。)の突出量は、h1であり(図5(a)参照)、周方向部分22の稜線どうしが交わる交点(適宜、E−E断面部と略称する。)の突出量は、h2である(図5(b)参照)。
周方向部分22のD−D断面部の断面形状は、山形状(三角形の二辺からなる形状)である。また、傾斜面221のD−D断面部の傾斜方向の長さ(すなわち、周方向部分22の稜線から、傾斜面221とパネル部3の平坦面とが交差する交線までの、缶胴11の軸心方向の長さ)は、L1である。さらに、仮想延長平面30に対する傾斜面221の傾斜角度は、α1である。
これに対し、周方向部分22のE−E断面部の断面形状は、パネル部3の平坦面と周方向部分22の稜線を直線的、あるいはほぼ直線的につなげる形状である。また、傾斜面221のE−E断面部の傾斜方向の長さ(すなわち、周方向部分22の稜線から、傾斜面221とパネル部3の平坦面とが交差する交線までの、缶胴11の軸心方向の長さ)は、L2である。さらに、仮想延長平面30に対する傾斜面221の傾斜角度は、α2である。
【0021】
前記の各寸法の関係は、h0<h1<h2、L0<L1<L2、α2<α1である。すなわち、h1<h2、L1<L2、α2<α1であることにより、各周方向部分22は、ねじれた傾斜面221を有しており、仮想延長平面30からのフレーム部2(本実施形態では、周方向部分22)の突出量が大きくなると、該突出量に応じて、傾斜面221が長くなる。これにより、周方向部分22の交点部(E−E断面部)およびその近傍において、成形時の応力集中を回避し、缶胴11の内面に被覆欠陥等のダメージを与えるといった不具合を回避することができる。
また、交差する二つの周方向部分22は、パネル部3の側の二つの傾斜面221がブーメラン形状、あるいはほぼブーメラン形状となる。
【0022】
また、図4の破線で示すようにフレーム部2の各稜線は直線状、あるいはほぼ直線状としてある。このようにすると、フレーム部2が強固な梁として作用し、輸送時などの衝撃、内容物の充填・殺菌後の減圧、あるいは、前記殺菌時の缶内圧上昇などによって缶体1に軸方向あるいは径方向の変形力が作用しても、耐座屈性あるいは径方向の内外に対する耐変形性等の機械的強度を向上させることができる。
また、フレーム部2の各稜線の交点の径方向位置は、通常、缶胴11の外径と同じであるが、これに限定されるものではない。たとえば、缶胴11の外径より内側に位置してもよく、あるいは、外側に位置してもよい。
【0023】
(パネル部)
パネル部3は上述したように、フレーム部2の軸方向部分21及び周方向部分22で囲まれており、平坦面を有する構成としてある。なお、本実施形態では、各パネル部3の表面を平坦面、あるいは、そのほぼ全てを平坦面としてある。これにより、パネル部3及びフレーム部2の形状を正確に精度良く形成することができ、フレーム部2のリブ機能を強化することができる。
また、パネル部3が、前記の傾斜面221からなる周方向部分22につながっているので、パネル部3への減圧時の応力集中が緩和されると共に、レトルト殺菌時の缶内圧の上昇時の過剰な膨出、あるいは、部分的な変形が防止され、缶体1の機械的強度を向上させることができる。
【0024】
ここで、パネル部3の平坦面の形状は、フレーム部2の稜線形状に対して非相似形としてある。すなわち、本実施形態では、パネル部3の平坦面の形状は、上述したフレーム部2の形状に対応して図4に示すように、パネル部3の対向する各一対の辺は、同じ長さを有しており、かつ、長さW1と長さW0とが、1.2≦W1/W0≦1.8の関係にあり、上述したフレーム部2の周方向部分22に形成した傾斜面221により、前記フレーム部2の稜線形状と非相似形の六角形状である。このように、フレーム部2とパネル部3の二重のハニカム構造状の六角形状が相まって、特により一層、前記の缶体1の機械的強度を向上させることができる。
【0025】
また、本実施形態では、上述したように、缶胴11の周方向に11個のパネル部3を並設してあるが、この数量は11個に限定されるものではなく、缶体1の胴径、高さ、デザイン、使用する金属材料等を考慮してその数量を適宜決定すれば良い。
さらに、缶体1は、パネル部3が並設されることにより、缶胴11の断面形状が、図2に示すように、多角形状(本実施形態では、正11角形状)となり、これにより、缶体1の機械的強度を向上させることができる。
【0026】
[実験例]
ティンフリースチール(錫なし鋼板)を用いて絞り−薄肉化絞り成形(ストレッチドロー成形)を行い、缶胴径:53mm、缶体の高さ105mm、内容量:190ml、及び缶胴板厚:0.15mmの有底シームレス缶を作成した。
次に、前記シームレス缶に後述する装置を用いて、図1に示す六角形状のフレーム部と、このフレーム部で囲まれた平坦面を有し、前記フレーム部の稜線形状と非相似形の六角形状のパネル部を成形した。この際、缶胴と前記フレーム部の周方向の稜線の交点から前記パネル部の平坦面までの深さを変えて、複数のシームレス缶を製作した。続いて、アルミ製蓋を巻き締め、前記パネル部の深さを変え、それぞれの缶体のパネリング強度を測定した。この測定結果を表1に示す。フレーム部2の各稜線の交点の径方向位置
【0027】
【表1】
【0028】
尚、表1中のパネリング強度は、前記フレーム部で囲まれた平坦面を有するパネル部を形成しない缶体と、前記パネル部を形成し、その深さを変えたそれぞれの缶体の測定を5缶ずつ行った平均値である。
また、パネリング強度の測定は、密閉ケース内に前記缶体を収納して外部からエアーで圧力を加え、変形が開始した時点のゲージ圧を読み取ってパネリング強度とした。
【0029】
前記実験例から、六角形状のフレーム部と、このフレーム部で囲まれた平坦面を有し、前記フレーム部の稜線形状と非相似形の六角形状パネル部を形成した缶体は、そのパネリング強度が飛躍的に向上することが判った。
【0030】
以上説明したように、本実施形態の缶体1によれば機械的強度が向上し、使用する金属材の薄肉化を可能とすることができる。これにより、製造原価のコストダウン、省資源化、軽量化などを図ることができる。
また、缶体1は、直線状の六角形状のフレーム部2及び平坦面的な六角形状のパネル部3が缶胴11に成形されることにより、二重の六角形を基調とした特異な立体感と美観を提供することができ、商品価値などを向上させることができる。
【0031】
<缶体の応用例1>
図6は、本発明の缶体の応用例1の概略拡大図を示している。
図6において、本応用例の缶体は、前記の缶体1と比べると、フレーム部2を90°回転させたフレーム部2aを配設した点などが相違する。
なお、他の構成は、缶体1とほぼ同様であり、図1の缶体と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0032】
(フレーム部)
本応用例の缶体のフレーム部2aは、缶胴11aの高さ方向中央部の全周に配設されている。すなわち、フレーム部2aは、缶胴11aの軸心方向にほぼ沿って配設される四つの軸方向部分21aと、缶胴11aの周方向に沿って配設される二つの周方向部分22aとを有し、缶胴11aの側面方向から見ると六角形状である。
【0033】
図示してないが、フレーム部2a(軸方向部分21a及び周方向部分22a)は、後述するパネル部3aの平坦面を延長した仮想延長平面30より外側に突出している。
ここで、軸方向部分21aの稜線の中間(適宜、F−F断面部と略称する。)の突出量は、h1aであり、軸方向部分21aの稜線と周方向部分22aの稜線どうしが交わる交点(適宜、G−G断面部と略称する。)の突出量は、h2aである。なお、h1aやh2aなどは、図示してないが、前記のh1やh2などと同様に対応している。
軸方向部分21aは、二つの傾斜面211aを有しており、F−F断面部の傾斜面211aの傾斜方向の長さ(すなわち、軸方向部分21aの稜線から、傾斜面211aとパネル部3aの平坦面とが交差する交線までの、缶胴11aの軸心方向の長さ)は、L1aである。さらに、仮想延長平面30に対する傾斜面211aの傾斜角度は、α1aである。
これに対し、軸方向部分21aのG−G断面部の傾斜方向の長さ(すなわち、軸方向部分21aの稜線から、傾斜面211aとパネル部3aの平坦面とが交差する交線までの、缶胴11aの軸心に沿った長さ)は、L2aである。さらに、仮想延長平面30に対する傾斜面211aの傾斜角度は、α2aである。
【0034】
前記の各寸法の関係は、h1a<h2a、L1a<L2a、α2a<α1aであり、これにより、各軸方向部分21aは、ねじれたような一対の傾斜面211aを有しており、仮想延長平面30からのフレーム部2a(本応用例では、軸方向部分21a)の突出量が大きくなると、該突出量に応じて、傾斜面211aが長くなる。これにより、軸方向部分21aと周方向部分22aの交点部(G−G断面部)およびその近傍において、成形時の応力集中を回避し、缶胴11aにダメージを与えるといった不具合を回避することができる。
【0035】
また、フレーム部2aの周方向部分22aは、パネル部3aを延長した仮想延長平面30より外側に突き出ている。また、各周方向部分22aは平坦、あるいはほぼ平坦な一対の傾斜面221aを有しており、周方向部分22aの断面形状は、山形状(二等辺三角形の二辺からなる形状)である。
【0036】
また、図6の破線で示すようにフレーム部2aの各稜線は直線状、あるいはほぼ直線状としてある。このようにすると、フレーム部2aが強固な梁として作用し、輸送時などの衝撃、内容物の充填・殺菌後の減圧、あるいは、前記殺菌時の缶内圧上昇などによって缶体に軸方向あるいは径方向の変形力が作用しても、耐座屈性あるいは径方向の内外に対する耐変形性等の機械的強度を向上させることができる。
また、フレーム部2aの各稜線の交点の径方向位置は、通常、缶胴11aの外径と同じであるが、これに限定されるものではない。たとえば、缶胴11aの外径より内側に位置してもよく、あるいは、外側に位置してもよい。
【0037】
(パネル部)
パネル部3aは、フレーム部2aの軸方向部分21a及び周方向部分22aで囲まれており、平坦面を有する構成としてある。なお、本応用例では、各パネル部3aの表面を平坦面、あるいは、そのほぼ全てを平坦面としてある。これにより、パネル部3a及びフレーム部2aの形状を正確に精度良く形成することができ、フレーム部2aのリブ機能を強化することができる。
また、パネル部3aが、前記の傾斜面211aからなる軸方向部分21aにつながっているので、パネル部3aへの減圧時の応力集中が緩和されると共に、レトルト殺菌時の缶内圧の上昇時の過剰な膨出、あるいは、部分的な変形が防止され、缶体の機械的強度を向上させることができる。
【0038】
ここで、パネル部3aの平坦面の形状は、フレーム部2aの稜線形状に対して非相似形としてある。すなわち、本応用例では、パネル部3aの平坦面の形状は、上述したフレーム部2aの形状に対応して図6に示すように、パネル部3aの対向する各一対の辺は、同じ長さを有しており、かつ、長さW0aと長さW1aとが、0.5≦W1a/W0a≦0.8の関係にあり、上述したフレーム部2aの軸方向部分21aに形成した傾斜面211aにより、前記フレーム部2aの稜線形状と非相似形の六角形状である。このようにしても、フレーム部2aとパネル部3aの二重のハニカム構造状の六角形状が相まって、特により一層、前記の缶体の機械的強度を向上させることができる。
【0039】
このように、応用例1の缶体は、前記の実施形態と同様の効果を奏することができ、さらに、特異な立体感と美観を提供することができ、商品価値などを向上させることができる。
【0040】
<缶体の応用例2>
図7は、本発明の応用例2の缶体の概略拡大図を示している。
図7において、本応用例の缶体は、前記の缶体1と比べると、フレーム部2の代わりに、三角形状のフレーム部2bを配設した点などが相違する。
なお、他の構成は、缶体1とほぼ同様であり、図1の缶体と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0041】
(フレーム部)
本応用例の缶体のフレーム部2bは、缶胴11bの全周に配設されている。すなわち、フレーム部2bは、缶胴11bの軸心方向に傾斜して配設される二つの軸方向傾斜部分21b(三角形の斜辺に対応する部分)と、缶胴11bの周方向に沿って設けられる一つの周方向部分22b(三角形の底辺に対応する部分)とを有し、缶胴11bの側面方向から見ると、二等辺三角形状の前記フレーム部2bの周方向部分22b(底辺)に対する頂角部分の内面が湾曲する形状である。なお、本実施形態では、フレーム部2bの稜線形状を二等辺三角形としている。
【0042】
また、複数のフレーム部2bは、缶胴11bの全周に隙間なく(隣接するフレーム部2bが、軸方向傾斜部分21bや周方向部分22bを共有する状態で)並べられている。これにより、フレーム部2bがリブとして機能し、缶体の機械的強度を向上させることができる。
【0043】
図示してないが、フレーム部2b(軸方向傾斜部分21b及び周方向部分22b)は、後述するパネル部3bの平坦面を延長した仮想延長平面30より外側に突出している。
ここで、軸方向傾斜部分21bの稜線のポイントP2b(適宜、H−H断面部と略称する。)の突出量は、h1bであり、二つの軸方向傾斜部分21bの稜線が交わる交点となるポイントP1b(適宜、I−I断面部と略称する。)の突出量は、h2bである。
軸方向傾斜部分21bは、二つの傾斜面211bを有しており、H−H断面部の傾斜面211bの傾斜方向の長さ(すなわち、軸方向傾斜部分21bの稜線のポイントP2bから、傾斜面211bとパネル部3bの平坦面とが交差する交線までの、缶胴11bの軸心方向の長さ)は、L1bである。さらに、仮想延長平面30に対する傾斜面211bの傾斜角度は、α1bである。
これに対し、軸方向傾斜部分21bのI−I断面部の傾斜方向の長さ(すなわち、二つの軸方向傾斜部分21bの稜線が交わるポイントP1bから、傾斜面211bとパネル部3bの平坦面とが交差する交線までの、缶胴11bの軸心方向の長さ)は、L2bである。さらに、仮想延長平面30に対する傾斜面211bの傾斜角度は、α2bである。
【0044】
前記の各寸法の関係は、h1b<h2b、L1b<L2b、α2b<α1bであり、これにより、各軸方向傾斜部分21bは、ねじれたような一対の傾斜面211bを有しており、仮想延長平面30からのフレーム部2b(本応用例では、軸方向傾斜部分21b)の突出量が大きくなると、該突出量に応じて、傾斜面211bが長くなる。これにより、二つの軸方向傾斜部分21bの交点部(I−I断面部)およびその近傍において、成形時の応力集中を回避し、缶胴11bにダメージを与えるといった不具合を回避することができる。
【0045】
また、フレーム部2bの周方向部分22bは、パネル部3bを延長した仮想延長平面30より外側に突き出ている。また、各周方向部分22bは平坦、あるいはほぼ平坦な一対の傾斜面221bを有しており、周方向部分22bの断面形状は、山形状(二等辺三角形の二辺からなる形状)である。
【0046】
また、図7の破線で示すようにフレーム部2bの各稜線は直線状、あるいはほぼ直線状としてある。このようにすると、フレーム部2bが強固な梁として作用し、輸送時などの衝撃、内容物の充填・殺菌後の減圧、あるいは、前記殺菌時の缶内圧上昇などによって缶体に軸方向あるいは径方向の変形力が作用しても、耐座屈性あるいは径方向の内外に対する耐変形性等の機械的強度を向上させることができる。
また、フレーム部2bの各稜線の交点の径方向位置は、通常、缶胴11bの外径と同じであるが、これに限定されるものではない。たとえば、缶胴11bの外径より内側に位置してもよく、あるいは、外側に位置してもよい。なお、各ポイントP1b、P5bの径方向位置は、通常、缶胴11bの外径と同じであり、各ポイントP2b、P3b、P4bの径方向位置は、缶胴11cの外径より内側に位置している。
【0047】
(パネル部)
パネル部3bは、フレーム部2bの軸方向傾斜部分21b及び周方向部分22bで囲まれており、平坦面を有する構成としてある。なお、本応用例では、各パネル部3bの表面を平坦面、あるいは、そのほぼ全てを平坦面としてある。これにより、パネル部3b及びフレーム部2bの形状を正確に精度良く形成することができ、フレーム部2bのリブ機能を強化することができる。
また、パネル部3bが、前記の傾斜面211bからなる軸方向傾斜部分21bにつながっているので、パネル部3bへの減圧時の応力集中が緩和されると共に、レトルト殺菌時の缶内圧の上昇時の過剰な膨出、あるいは、部分的な変形が防止され、缶体の機械的強度を向上させることができる。
【0048】
ここで、パネル部3bの平坦面の形状は、フレーム部2bの稜線形状に対して非相似形としてある。すなわち、本応用例では、パネル部3bの平坦面の形状は、上述したフレーム部2bの形状に対応して図7に示すように、二等辺三角形状の底辺に対する頂角部分が円弧状に丸められている。そして、パネル部3bは、前記パネル部3bを二等辺三角形状と仮想した時の高さ方向の長さW0bとパネル部3bの高さ方向の長さW1bとが、0.5≦W1b/W0b≦0.8の関係にあり、上述したフレーム部2bの軸方向傾斜部分21bに形成した傾斜面211bにより、前記フレーム部2bの稜線形状と非相似形である。このようにしても、フレーム部2bとパネル部3bの二重の三角形状が相まって、前記の缶体の機械的強度を向上させることができる。
尚、本応用例では、パネル部3bの平坦面は、斜辺どうしの角部が円弧状に丸められた形状としてあるが、この円弧の曲率半径などは、特に限定されるものではない。たとえば、パネル部3bの平坦面は、三角形状や半円形状であってもよい。
【0049】
このように、応用例2の缶体は、前記の実施形態と同様の効果を奏することができ、さらに、特異な立体感と美観を提供することができ、商品価値などを向上させることができる。
【0050】
<缶体の応用例3>
図8は、本発明の応用例3の缶体の概略拡大図を示している。
図8において、本応用例の缶体は、前記の缶体1と比べると、フレーム部2の代わりに、正方形状のフレーム部2cを配設した点などが相違する。
なお、他の構成は、缶体1とほぼ同様であり、図1の缶体と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0051】
(フレーム部)
本応用例の缶体のフレーム部2cは、缶胴11cの全周に配設されている。すなわち、フレーム部2cは、缶胴11cの軸心方向に沿って配設される二つの軸方向部分21cと、缶胴11cの周方向に沿って配設される二つの周方向部分22cとを有し、缶胴11cの側面方向から見ると、前記フレーム部2cの二つの周方向部分22cは、対称的に内方向(正方形の中央方向)に湾曲する形状である。尚、本実施形態では、フレーム部2cの稜線形状を正方形状としている。
また、複数のフレーム部2cは、缶胴11cの全周に隙間なく(隣接するフレーム部2cが、軸方向部分21cや周方向部分22cを共有する状態で)並べられている。また、周方向部分22cの中央(ポイントP3c)に、上下方向に隣接するフレーム部2cの軸方向部分21cが位置する。これにより、フレーム部2cがリブとして機能し、缶体の機械的強度を向上させることができる。
【0052】
図示してないが、フレーム部2c(軸方向部分21c及び周方向部分22c)は、後述するパネル部3cの平坦面を延長した仮想延長平面30より外側に突出している。
また、フレーム部2cの軸方向部分21cは、パネル部3cを延長した仮想延長平面30より外側に突き出ている。また、各軸方向部分21cは平坦、あるいはほぼ平坦な一対の傾斜面211cを有しており、軸方向部分21cの断面形状は、山形状(二等辺三角形の二辺からなる形状)である。
【0053】
また、周方向部分22cの稜線のポイントP2cとポイントP3cのほぼ中間(適宜、J−J断面部と略称する。)の突出量は、h1cであり、周方向部分22cの稜線と軸方向部分21cの稜線が交わる交点(適宜、K−K断面部と略称する。)の突出量は、h2cである。
周方向部分22cは、傾斜面221cを有しており、J−J断面部の傾斜面221cの傾斜方向の長さ(すなわち、周方向部分22cの稜線から、傾斜面221cとパネル部3cの平坦面とが交差する交線までの、缶胴11cの軸心方向の長さ)は、L1cである。さらに、仮想延長平面30に対する傾斜面221cの傾斜角度は、α1cである。
これに対し、周方向部分221cのK−K断面部の傾斜方向の長さ(すなわち、周方向部分22cの稜線から、傾斜面221cとパネル部3cの平坦面とが交差する交線までの、缶胴11cの軸心方向の長さ)は、L2cである。さらに、仮想延長平面30に対する傾斜面221cの傾斜角度は、α2cである。
【0054】
ここで、前記の各寸法の関係は、h1c<h2c、L1c<L2c、α2c<α1cであり、これにより、各周方向部分22cは、ねじれたような傾斜面221cを有しており、仮想延長平面30からのフレーム部2c(本応用例では、周方向部分22c)の突出量が大きくなると、該突出量に応じて、傾斜面221cが長くなる。これにより、軸方向部分21cと周方向部分22cの交点部(ポイントP3c)およびその近傍において、成形時の応力集中を回避し、缶胴11cにダメージを与えるといった不具合を回避することができる。
【0055】
また、図8の破線で示すようにフレーム部2cの各稜線は直線状、あるいはほぼ直線状としてある。ただし、軸方向部分21cの稜線は、一本の直線となるが、周方向部分22cの稜線は、軸心方向から見ると、各ポイントP1c、P3c、P5cで折れ曲がっており、2本の直線からなっている。このようにすると、フレーム部2cが強固な梁として作用し、輸送時などの衝撃、内容物の充填・殺菌後の減圧、あるいは、前記殺菌時の缶内圧上昇などによって缶体に軸方向あるいは径方向の変形力が作用しても、耐座屈性あるいは径方向の内外に対する耐変形性等の機械的強度を向上させることができる。
また、フレーム部2cの各稜線の交点の径方向位置は、通常、缶胴11cの外径と同じであるが、これに限定されるものではない。たとえば、缶胴11cの外径より内側に位置してもよく、あるいは、外側に位置してもよい。なお、各ポイントP1c、P3c、P5cの径方向位置は、通常、缶胴11cの外径と同じであり、各ポイントP2c、P4cの径方向位置は、缶胴11cの外径より内側に位置している。
【0056】
(パネル部)
パネル部3cは、フレーム部2cの軸方向部分21c及び周方向部分22cで囲まれており、平坦面を有する構成としてある。なお、本応用例では、各パネル部3cの表面を平坦面、あるいは、そのほぼ全てを平坦面としてある。これにより、パネル部3c及びフレーム部2cの形状を正確に精度良く形成することができ、フレーム部2cのリブ機能を強化することができる。
また、パネル部3cが、前記の傾斜面221cからなる周方向部分22cにつながっているので、パネル部3cへの減圧時の応力集中が緩和されると共に、レトルト殺菌時の缶内圧の上昇時の過剰な膨出、あるいは、部分的な変形が防止され、缶体の機械的強度を向上させることができる。
【0057】
ここで、パネル部3cの平坦面の形状は、フレーム部2cの稜線形状に対して非相似形としてある。すなわち、本応用例では、フレーム部2cの稜線形状が正方形状であるのに対し、パネル部3cの平坦面の形状は、上述したフレーム部2cの形状に対応して図8に示すように、上辺及び下辺が対称的に内方向に湾曲しており、パネル部3cの側辺の高さ方向長さW0cと中央部の高さ方向の長さW1cとが、0.5≦W1c/W0c≦0.8の関係にあり、平坦面の中央を通る軸心方向の長さを短くし、上述したフレーム部2cの周方向部分22cに形成した傾斜面221cにより、前記フレーム部2cの稜線形状と非相似形である。
このように、フレーム部2cとパネル部3cの二重の四角形状の構造が相まって、より一層、前記の缶体の機械的強度を向上し、応用例3の缶体は、前記実施形態と同様の効果を奏することができ、さらに、特異な立体感と美観を提供することができ、商品価値などを向上させることができる。
【0058】
[缶体の成形工具の実施形態]
図9は、本発明の実施形態にかかる缶体の成形工具のインナローラの概略斜視図を示している。
また、図10は、本発明の実施形態にかかる缶体の成形工具のアウタローラの概略斜視図を示している。
また、図11は、本発明の実施形態にかかる成形工具による加工概略図を示している。
図9及び10において、本実施形態の缶体の成形工具は、インナローラ4とアウタローラ5とを備えており、たとえば、前記の特許文献4の周状多面体壁缶の製造装置に取り付けられ、前記の缶体1を成形することができる。
すなわち、本実施形態の成形工具は、インナローラ4とアウタローラ5を同期回転させて、インナローラ4とアウタローラ5の間に挟み込んだ缶胴11の側壁にフレーム部2及びパネル部3を成形する。
なお、本発明の成形工具は、上述した図1、図6乃至8に示す缶体に適用することができるが、本実施形態では、図1に示す缶体1に適用する成形工具について説明する。
【0059】
(インナローラ)
本実施形態において、インナローラ4は、回転軸(図示せず)が装入される筒状体であり、外周面が、缶体1のフレーム部2の軸方向の部分21と周方向の部分22、及びパネル部3(図1参照)に対応する多角形状であり、外周面にフレーム部形成用凸部41及びパネル部形成用凹部42を有する。
フレーム部形成用凸部41は、六角形状であり、缶体1のフレーム部2を成形するためのものである。また、パネル部形成用凹部42も同様に六角形状であり、缶体1のパネル部3を成形するためのものである。
【0060】
また、パネル部形成用凹部42は、中央に軸方向(回転軸の方向)に沿って稜線421が形成されており、この稜線421を中心線として、フレーム部形成用凸部41を介して形成される2つのパネル部形成用凹部42の深さは、それぞれ同じ深さに形成される。
この稜線421によって、インナローラ4と後述するアウタローラ5が缶体1のパネル部3を成形する際、パネル部3の押し込み量が規制される。これにより、フレー部2の突出成形、及びパネル部3の深さを均一にした成形が行われ、パネル部3における破胴を防止すると共に安定した成形が可能となり、成形精度を向上させることができる(図11参照)。
尚、フレーム部形成用凸部41やパネル部形成用凹部42の角部は、缶胴11の内面の被覆膜にダメージを与えないように緩やかな曲面となるように加工が施されている。
【0061】
(アウタローラ)
アウタローラ5は、径方向断面形状をインナローラ4と噛み合う大径部と、インナローラ4と噛み合わない小径部とからなるカム形状としてあり、大径部の外周面の全体に、パネル部形成用凸部51及びフレーム部形成用凹部52を有する。
フレーム部形成用凹部52及びパネル部形成用凸部51は、インナローラ4のフレーム部形成用凸部41及びパネル部形成用凹部42にそれぞれ対応する周方向に湾曲した六角形状であり、缶体1のフレーム部2及びパネル部3を成形するためのものである。
尚、パネル部形成用凸部51及びフレーム部形成用凹部52の角部は、缶胴11の外面の印刷膜にダメージを与えないように緩やかな曲面となるように加工が施されている。
【0062】
以上説明したように、本実施形態の缶体の成形工具によれば、インナローラ4のパネル部形成用凹部42に設けられた稜線421によって、アウタローラ5の過剰な押し込みが防止され、缶体1の成形時のパネル部3における破胴、内面被覆の損傷が防止されると共に安定した成形が可能となり、成形精度を向上させることができる。
【0063】
以上、本発明の缶体及び缶体の成形工具について、好ましい実施形態などを示して説明したが、本発明に係る缶体及び缶体の成形工具は、前記の実施形態などに限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
たとえば、缶体のフレーム部の形状は、前記形状に限定されるものではなく、他の多角形状や円形状であってもよい。このようにしても、缶体1と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 缶体
2、2a、2b、2c フレーム部
3、3a、3b、3c パネル部
4 インナローラ
5 アウタローラ
11、11a、11b、11c 缶胴
12 蓋
21、21a、21c 軸方向部分
21b 軸方向傾斜部分
22、22a、22b、22c 周方向部分
30 仮想延長平面
41 フレーム部形成用凸部
42 パネル部形成用凹部
51 パネル部形成用凸部
52 フレーム部成形用凹部
211、211a、211b、211c 傾斜面
221、221a、221b、221c 傾斜面
421 稜線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶胴に配設され傾斜面を有するフレーム部と、
このフレーム部で囲まれ平坦面を有するパネル部と
を有し、
前記フレーム部が、前記パネル部を延長した仮想延長平面より突出しており、前記仮想延長平面からの前記フレーム部の突出量が大きくなると、該突出量に応じて、前記傾斜面が長くなる部分を有することを特徴とする缶体。
【請求項2】
前記フレーム部の稜線が多角形状であることを特徴とする請求項1に記載の缶体。
【請求項3】
前記多角形状が六角形状であることを特徴とする請求項2に記載の缶体。
【請求項4】
前記長くなる部分を有する傾斜面がねじれていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の缶体。
【請求項5】
前記パネル部の平坦面の形状が、前記フレーム部の稜線形状に対して非相似形であることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の缶体。
【請求項6】
前記請求項1乃至5の何れかに記載の缶体の成形工具であって、
外周面にフレーム部形成用凸部及びパネル部形成用凹部を有し、前記パネル部形成用凹部の中央に稜線を有する多角形状のインナローラと、
前記インナローラのフレーム部形成用凸部及びパネル部形成用凹部にそれぞれ対応する周方向に湾曲したフレーム部形成用凸部及びパネル部形成用凹部が外周面に形成されたアウタローラと
を備えることを特徴とする缶体の成形工具。
【請求項7】
前記パネル部形成用凹部に、稜線を軸方向に沿って形成したことを特徴とする請求項6に記載の缶体の成形工具。
【請求項1】
缶胴に配設され傾斜面を有するフレーム部と、
このフレーム部で囲まれ平坦面を有するパネル部と
を有し、
前記フレーム部が、前記パネル部を延長した仮想延長平面より突出しており、前記仮想延長平面からの前記フレーム部の突出量が大きくなると、該突出量に応じて、前記傾斜面が長くなる部分を有することを特徴とする缶体。
【請求項2】
前記フレーム部の稜線が多角形状であることを特徴とする請求項1に記載の缶体。
【請求項3】
前記多角形状が六角形状であることを特徴とする請求項2に記載の缶体。
【請求項4】
前記長くなる部分を有する傾斜面がねじれていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の缶体。
【請求項5】
前記パネル部の平坦面の形状が、前記フレーム部の稜線形状に対して非相似形であることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の缶体。
【請求項6】
前記請求項1乃至5の何れかに記載の缶体の成形工具であって、
外周面にフレーム部形成用凸部及びパネル部形成用凹部を有し、前記パネル部形成用凹部の中央に稜線を有する多角形状のインナローラと、
前記インナローラのフレーム部形成用凸部及びパネル部形成用凹部にそれぞれ対応する周方向に湾曲したフレーム部形成用凸部及びパネル部形成用凹部が外周面に形成されたアウタローラと
を備えることを特徴とする缶体の成形工具。
【請求項7】
前記パネル部形成用凹部に、稜線を軸方向に沿って形成したことを特徴とする請求項6に記載の缶体の成形工具。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図1】
【図9】
【図10】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図1】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−86873(P2012−86873A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235085(P2010−235085)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】
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