説明

缶体

【課題】凹凸形状および配置を工夫することにより各種強度特性をバランスよく高めることができ、缶胴の薄肉化による軽量化を確実に実現することができる缶体を提供すること。
【解決手段】凸部5および凹部6が交互の市松状に配置されているので、缶胴2に作用する外力に対して凸部5と凹部6とが幾何学的に作用し、その立体効果によって缶胴2の剛性が高まり変形しにくくできるとともに、パネリング強度やレオメータ強度等の強度特性を向上させることができる。また、筒状の缶胴2の基準面に沿った平坦面を形成しているので、缶胴2の外表面に施される印刷面の外観性を確保しながら、缶胴2の板厚を薄肉化し、缶体1の軽量化および省資源化を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶体に関し、詳しくは、筒状の基準面に沿って形成される缶胴と、この缶胴の軸に沿った一方側および他方側の開口を塞ぐ一対の蓋部とを備えた缶体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、缶体として、例えば飲料缶や食品缶等が広く利用されており、このような缶体は、内容物を充填して殺菌した後の冷却過程による減圧、運搬や陳列時に加わる荷重に対し、パネリング強度やレオメータ強度等の強度特性を確保するように設計、製造されている。一方、近年では、軽量化や省資源化等の要求の高まりから、強度特性を確保しつつ、缶体の薄肉化を図るというニーズが高まっており、薄肉化を図る手段として、缶胴面に凹凸を設けた様々な形状の缶体が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
特許文献1〜4のうち代表例として、特許文献1に記載の缶体は、各々が三角形等の多角形からなる構成単位面と、これらの構成単位面同士が接する境界稜線および境界稜線同士が交わる交叉部とで形成される周状多面体壁を有している。このような周状多面体壁を有した缶胴は、境界稜線および交叉部が構成単位面よりも缶の外側に突出して形成されるとともに、構成単位面同士を適宜な数式に基づいて配列することで、缶体の強度特性を確保しつつ缶体の薄肉化を図ろうとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平7−5127号公報
【特許文献2】特公平6−78096号公報
【特許文献3】特開平10−328772号公報
【特許文献4】特開2007−69973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の缶体では、構成単位面が缶胴の筒状の基準面に傾いて配置されるため、缶胴の外表面に施される印刷面が外観時に見難くなるという課題がある。一方、特許文献2〜4に記載の缶体のように、構成単位面や未成形部を缶胴の筒状の基準面に沿った平坦面として設ける場合は、印字面の外観性を確保することができるが、平坦面が連続して形成されてしまうことから缶胴が変形し易くなり、パネリング強度やレオメータ強度等の各種強度特性を十分に高められず、缶体の薄肉化を十分に図ることができない。以上のように、従来の缶体では、印字面の外観性を確保しながら、各種強度特性を高めることで缶胴を薄くして軽量化を図ることができないという課題がある。
【0005】
本発明の目的は、凹凸の形状および配置を工夫することにより、印字面の外観性を確保しながら、各種強度特性を高めることで缶胴を薄くして軽量化を確実に実現することができる缶体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の缶体は、筒状の基準面に沿って形成される缶胴と、この缶胴の一方側および他方側の開口を塞ぐ一対の蓋部とを備えた缶体であって、前記缶胴は、前記基準面から外側に突出する複数の凸部と、前記基準面から内側に没入する複数の凹部とを有し、これらの凸部および凹部は、それぞれ前記基準面に沿った面内方向の形状および寸法が略同一かつ当該基準面からの突出寸法および没入寸法が略同一とされ、前記凸部は、前記基準面に沿った凸部平坦面を有し、前記凹部は、前記基準面に沿った凹部平坦面を有して形成され、前記基準面内において互いに交差する第1方向および第2方向の両方向に沿って前記凸部と凹部とが交互に隣り合って配置されるとともに、互いに隣り合う当該凸部および凹部において前記基準面と傾斜する傾斜面を介して前記凸部平坦面と凹部平坦面とが接続されていることを特徴とする。
【0007】
なお、本発明において、缶胴の断面形状を規定する筒状の基準面としては、円筒面に限らず、楕円筒面や長円筒面、角筒面などであってもよいし、適宜な閉鎖型自由曲線に沿った面であってもよい。さらに、筒状の基準面は、その軸方向に同一形状が連続するものでもよいし、その径寸法が変化するものでもよく、さらには軸方向に沿って自由曲面を描くものであってもよい。また、缶胴は所定の板厚を有した平板等を筒状に成形した後に凸部や凹部を成形してもよいし、凸部や凹部を含めて筒状に一体成形によって製造されるものでもよい。
【0008】
以上の本発明によれば、凸部と凹部とが交互に隣り合って配置されるとともに、これらの凸部平坦面と凹部平坦面とが傾斜面を介して接続されていることで、凸部や凹部の周囲には基準面に沿った平坦面が連続的に形成されることがなく、さらに凸部平坦面同士や凹部平坦面同士が隣り合うこともないことから、連続した平坦面は形成されない。このように連続するような平坦面が形成されないようにすることで、缶胴に作用する外力(外部からの力や、内部の圧力)に対して凸部と凹部とが幾何学的に作用し、その立体効果によって缶胴の剛性が高まり変形しにくくなることで、パネリング強度やレオメータ強度等の強度特性を向上させることができる。また、筒状の缶胴の基準面に沿った平坦面を形成しているので、缶胴の外表面に施される印刷面の外観性を確保しながら、缶胴の板厚を薄肉化し、缶体の軽量化および省資源化を実現することができる。そして、凸部および凹部は、基準面に沿った面内方向の形状および寸法が略同一とされ、基準面に対する突出寸法と没入寸法とが略同一とされていることで、基準面の近傍に中立軸を位置させることができ、缶体の外力に対する強度特性を効率よく高めることができる。
【0009】
この際、本発明の缶体では、前記第1方向は、前記缶胴の軸と平行に設けられ、前記第2方向は、前記缶胴の周方向と平行に設けられている構成が採用できる。
また、本発明の缶体では、前記第1方向および第2方向は、それぞれ前記缶胴の軸回りに互いに逆向きの螺旋状に設けられるとともに、前記缶胴の周方向に対し当該第1方向および第2方向が同一の交差角度で設けられていてもよい。
このような各構成によれば、缶体に作用する外力に応じて凸部と凹部とを並設する第1および第2の各方向と缶胴の軸方向との角度を適宜に設定することで、パネリング強度、レオメータ強度、軸圧縮強度等の各強度特性のバランスを調整し、要求性能に対して効率よく缶体を設計して薄肉化をさらに促進させることができる。
【0010】
また、本発明の缶体では、前記凸部平坦面および凹部平坦面は、それぞれ前記基準面に直交する正面形状が略正方形に形成されていることが好ましい。
このような構成によれば、凸部平坦面および凹部平坦面を略正方形に形成することで、缶胴の周面に沿った直交2軸に対して凸部および凹部の異方性をなくすことができ、外力によって面内方向に伝達される応力の不均等を抑制することができる。
【0011】
また、本発明の缶体では、2個の前記凸部と2個の前記凹部とが集まる交差部には、前記基準面と同一径位置にて当該基準面に沿う交差部平坦面が形成されていることが好ましい。
このような構成によれば、2個ずつの凸部および凹部が集まる交差部に交差部平坦面が形成されていれば、この交差部平坦面を介して凸部から凹部へ、あるいは凹部から凸部へ力が伝達されることで、凸部および凹部の角同士が直接接続される場合と比較して、応力集中を緩和することができ、交差部における缶胴の破損等を防止することができる。
【0012】
この際、本発明の缶体では、前記凸部平坦面および凹部平坦面は、それぞれ前記基準面に直交する正面形状が略正方形の四隅を隅切りした八角形に形成されていることが好ましい。
このような構成によれば、交差部平坦面を形成した場合に、この交差部平坦面によって隅切りして凸部平坦面および凹部平坦面を八角形に形成することで、これらの凸部平坦面および凹部平坦面と交差部平坦面や傾斜面との間での応力伝達をよりスムーズにすることができ、応力集中を抑制して強度特性をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のような本発明の缶体によれば、凸部と凹部とが交互に隣り合って配置されるとともに、これらの凸部平坦面と凹部平坦面とが傾斜面を介して接続されていることで、缶胴に作用する外力に対して凸部と凹部とが幾何学的に作用し、その立体効果によって缶胴の剛性が高まり変形を抑制してパネリング強度やレオメータ強度等の強度特性を向上させることができる。また、筒状の缶胴の基準面に沿った平坦面を形成しているので、缶胴の外表面に施される印刷面の外観性を確保しながら、缶胴の薄肉化による軽量化および省資源化を実現することができる。また、凸部と凹部とが交互に隣り合って配置された形状とすることで、缶胴の把持性が向上し、さらに、打痕に対する耐性も高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る缶体を示す斜視図である。
【図2】前記缶体における缶胴の断面図である。
【図3】第1形態の缶胴の一部を拡大して示す斜視図である。
【図4】第2形態の缶胴の一部を拡大して示す斜視図である。
【図5】第1形態および第2形態の缶胴を示す断面図である。
【図6】本発明の変形例に係る缶体を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施例の解析モデルを示す図である。
【図8】従来の円筒缶の解析モデルを示す図である。
【図9】解析結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1および図2において、本実施形態の缶体1は、飲料缶や食品缶等に利用されるものであって、円筒状の基準面F(図2参照)に沿って形成される缶胴2と、この缶胴2の一方側(図1の上側)の開口を塞ぐ蓋部としての天蓋3と、缶胴2の他方側(図1の下側)の開口を塞ぐ蓋部としての底蓋4とを備えて構成されている。この缶体1は、鋼(各種表面処理鋼板など)、ステンレス、アルミ合金等の金属製薄板からプレス加工等によって形成された缶胴2、天蓋3および底蓋4を組み合わせて構成されている。
【0016】
缶胴2は、その軸方向(図1の上下方向であり、円筒状の基準面Fの中心軸に沿った方向)の略全長に渡り、基準面Fから缶体1の外側に突出する複数の凸部5と、基準面Fから缶体1の内側に没入する複数の凹部6とを有して形成されている。なお、天蓋3と接続される缶胴2の上端部および底蓋4と接続される缶胴2の下端部においては、凸部5および凹部6が形成されず、缶胴2は基準面Fと略一致する円筒形状とされている。凸部5および凹部6は、それぞれ基準面Fに沿った面内方向の形状および寸法が略同一とされ、かつ基準面Fからの突出寸法および没入寸法が略同一とされている。また、本実施形態における凸部5および凹部6は、缶胴2の軸方向(図のX方向)に沿った第1方向と、缶胴2の周方向(図のθ方向)に沿った第2方向と、の両方向に沿って交互に隣り合って配置され、これらの隣り合う凸部5と凹部6とが基準面Fと傾斜する傾斜面7を介して接続されている。
【0017】
図3および図5(A)に示す第1形態の缶胴2Aは、基準面Fから一方側(図の上方であり缶体1の外部側)に突出する複数の凸部5Aと、基準面Fから他方側(図の下方であり缶体1の内部側)に凹む複数の凹部6Aとを有して形成されている。凸部5Aは、缶胴2の周面に沿った平面形状が略正方形の凸部平坦面51Aを有した正四角錐台状に形成され、凹部6Aは、缶胴2の周面に沿った平面形状が略正方形の凹部平坦面61Aを有した正四角錐台状に形成されている。そして、互いに隣り合う凸部5Aおよび凹部6Aにおいて、凸部平坦面51Aと凹部平坦面61Aとの互いに隣接する辺同士が傾斜面7Aで接続されている。このような缶胴2Aでは、各々の凸部5Aは、その周囲が4つの凹部6Aに囲まれ、各々の凹部6Aは、その周囲が4つの凸部5Aに囲まれて構成され、すなわち、複数の凸部5Aと複数の凹部6Aとは、基準面Fの面内直交二方向(X,θ方向)に沿って交互に並設された市松状(チェッカー状)に配置され、隣り合う凸部5A同士が互いに連続せず、隣り合う凹部6A同士が互いに連続しないようになっている。
【0018】
図4および図5(B)に示す第2形態の缶胴2Bは、基準面Fから一方側(図の上方であり缶体1の外部側)に突出する複数の凸部5Bと、基準面Fから他方側(図の下方であり缶体1の内部側)に凹む複数の凹部6Bと、2個の凸部5Bと2個の凹部6Bとが集まる交差部にて基準面Fから突出せずかつ凹まずに残った交差部平坦面8とを有して形成されている。凸部5Bは、缶胴2の周面に沿った平面形状が略正方形の四隅を隅切りした八角形の凸部平坦面51Bを有した八角錐台状に形成され、凹部6Bは、缶胴2の周面に沿った平面形状が略正方形の四隅を隅切りした八角形の凹部平坦面61Bを有した八角錐台状に形成されている。そして、互いに隣り合う凸部5Bおよび凹部6Bにおいて、凸部平坦面51Bと凹部平坦面61Bとの互いに隣接する辺同士が傾斜面7Bで接続されている。また、交差部平坦面8を挟んで対角方向に隣り合う凸部5Bおよび凹部6Bにおいて、凸部平坦面51Bの隅切りされた辺と交差部平坦面8の辺とが交差傾斜面81を介して接続され、凹部平坦面61Bの隅切りされた辺と交差部平坦面8の辺とが交差傾斜面82を介して接続されている。
【0019】
以上のような第2形態の缶胴2Bでは、各々の凸部5Bは、その周囲が4つの凹部6Bに略囲まれ、各々の凹部6Bは、その周囲が4つの凸部5Bに囲まれて構成され、すなわち、複数の凸部5Bと複数の凹部6Bとは、基準面Fの面内直交二方向(X,θ方向)に沿って交互に並設された市松状(チェッカー状)に配置され、隣り合う凸部5B同士が互いに連続せず、隣り合う凹部6B同士が互いに連続しないようになっている。また、交差部平坦面8は、その全周囲である四辺が2つの凸部5Bおよび2つの凹部6Bに囲まれ、隣り合う交差部平坦面8同士が互いに連続しないようになっている。さらに、凸部5Bと凹部6Bとを接続する傾斜面7Bは、その両端部が交差傾斜面81または交差傾斜面82に接続されており、隣り合う傾斜面7B同士が互いに連続しないようになっている。
【0020】
なお、本実施形態では、図1〜図5に示したように、凸部5および凹部6がX方向およびθ方向の両方向に沿って交互に隣り合って配置された缶体1に限らず、図6に示す缶体1Aのように、凸部5および凹部6が並設される第1方向および第2方向が、それぞれ缶胴2の軸方向(図のX方向)の回りに互いに逆向きの螺旋状に設けられるとともに、缶胴2の周方向(図のθ方向)に対して同一の交差角度(例えば、45°)で設けられていてもよい。このような缶体1Aにおいても、各々の凸部5は、その周囲が4つの凹部6に囲まれ、各々の凹部6は、その周囲が4つの凸部5に囲まれて構成され、すなわち、複数の凸部5と複数の凹部6とは、基準面Fの面内直交二方向(X方向およびθ方向にそれぞれ交差する方向)に沿って交互に並設された市松状(チェッカー状)に配置され、隣り合う凸部5同士が互いに連続せず、隣り合う凹部6同士が互いに連続しないようになっている。
【0021】
以上の本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
すなわち、凸部5および凹部6が交互の市松状に配置されているので、缶胴2に作用する外力に対して凸部5と凹部6とが幾何学的に作用し、その立体効果によって缶胴2の剛性が高まり変形を抑制してパネリング強度やレオメータ強度等の強度特性を向上させることができる。また、筒状の缶胴2の基準面Fに沿った凸部5の凸部平坦面51A(51B)と凹部6の凹部平坦面61A(61B)を形成しているので、缶胴2の外表面に施される印刷面の外観性を確保しながら、缶胴2の板厚を薄肉化して缶体1,1Aの軽量化および省資源化を実現することができる。そして、凸部5および凹部6は、基準面Fに沿った面内方向の形状および寸法が略同一とされ、基準面Fに対する突出寸法と没入寸法とが略同一とされていることで、基準面Fの近傍に中立軸を位置させることができ、缶体1,1Aの外力に対する強度特性を効率よく高めることができる。
【実施例】
【0022】
以下、本発明の缶体の強度特性(パネリング強度、レオメータ強度)を検討した結果について説明する。
図7(A)には、本発明の実施例に係る缶体のFEM解析モデルが示されており、この実施例では、直径φ52mm、缶高さ104mm(巻締部を除いた缶胴部が96mm)の缶体において、板厚t=0.150mm、材料降伏点σy=450N/mm2、ヤング係数E=205000N/mm2 の鋼板を用いた缶胴に対し、円周方向を26分割して高さ0.5mmの凸部と深さ0.5mmの凹部を設けている。パネリング強度については缶の外面から等分布の圧力を加え、また、レオメータ強度については、図7(B)に示すように、缶胴押し当て用チップバー(長さが40mm、径が10mmの丸棒)で缶胴に圧力を加える条件とした有限要素解析により検討した。また、図8には、比較例としての従来の円筒缶のFEM解析モデルが示されており、この比較例では、円筒缶の缶胴をt=0.175mmおよびt=0.150mm(その他の値は実施例の缶体と同様)とした。
図9には、解析結果のグラフが示され、図9(A)は、パネリング強度の比を示すグラフであり、図9(B)は、レオメータ強度の比を示すグラフである。実施例の缶体では、缶胴の板厚t=0.150mmと薄肉化しても、従来の円筒缶の板厚t=0.175mmと同等以上の耐力(パネリング強度、レオメータ強度)を発揮しており、缶体の軽量化を図りながら十分な強度特性を発揮できることが分かる。なお、円筒缶のまま単に薄肉化するだけでは、パネリング強度およびレオメータ強度がそれぞれ約30%程度低下してしまうことが判る。
【0023】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態では、缶体1,1Aの基準面Fが円筒面である場合を説明したが、基準面Fは円筒面に限らず、楕円筒面や長円筒面、角筒面等であってもよく、その他任意の三次元曲面状であってもよい。また、缶体1,1Aは、それぞれ別体で加工された缶胴2、天蓋3および底蓋4を組み合わせて構成される3ピース缶に限らず、これらの各部が一体成形された2ピース缶でもよい。
【0024】
また、前記実施形態では、凸部5と凹部6との並設方向として、缶胴2の軸方向(X方向)および缶胴2の周方向(θ方向)の2方向に沿う場合と、缶胴2の軸方向(X方向)および缶胴2の周方向(θ方向)の2方向にそれぞれ45°で交差する場合とを説明したが、これに限らず、凸部5と凹部6との並設方向は任意の2方向に設定することができる。
また、缶胴2の軸方向に凸部5と凹部6を設ける幅は、缶胴全長に設けてもよいし、缶胴の軸方向長さの中央近傍に集中して設けてもよく、要求される強度特性や外観性に応じて設定すればよい。
また、凹凸部を形成する際の板の折り曲げRは、缶胴を構成する素材の成形性に応じて適宜設定すればよい。
また、前記実施形態では、凸部5と凹部6とがそれぞれ平面矩形状に形成されたものを例示したが、凸部および凹部は、三角形や六角形などの多角形の平面形状を有して形成されていてもよい。
【0025】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0026】
1,1A…缶体、2,2A,2B…缶胴、3…天蓋(蓋部)、4…底蓋(蓋部)、5,5A,5B…凸部、6,6A,6B…凹部、7,7A,7B…傾斜面、8…交差部平坦面、51A,51B…凸部平坦面、61A,61B…凹部平坦面、F…基準面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の基準面に沿って形成される缶胴と、この缶胴の一方側および他方側の開口を塞ぐ一対の蓋部とを備えた缶体であって、
前記缶胴は、前記基準面から外側に突出する複数の凸部と、前記基準面から内側に没入する複数の凹部とを有し、これらの凸部および凹部は、それぞれ前記基準面に沿った面内方向の形状および寸法が略同一かつ当該基準面からの突出寸法および没入寸法が略同一とされ、前記凸部は、前記基準面に沿った凸部平坦面を有し、前記凹部は、前記基準面に沿った凹部平坦面を有して形成され、
前記基準面内において互いに交差する第1方向および第2方向の両方向に沿って前記凸部と凹部とが交互に隣り合って配置されるとともに、互いに隣り合う当該凸部および凹部において前記基準面と傾斜する傾斜面を介して前記凸部平坦面と凹部平坦面とが接続されていることを特徴とする缶体。
【請求項2】
請求項1に記載の缶体において、
前記第1方向は、前記缶胴の軸と平行に設けられ、前記第2方向は、前記缶胴の周方向と平行に設けられていることを特徴とする缶体。
【請求項3】
請求項1に記載の缶体において、
前記第1方向および第2方向は、それぞれ前記缶胴の軸回りに互いに逆向きの螺旋状に設けられるとともに、前記缶胴の周方向に対し当該第1方向および第2方向が同一の交差角度で設けられていることを特徴とする缶体。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の缶体において、
前記凸部平坦面および凹部平坦面は、それぞれ前記基準面に直交する正面形状が略正方形に形成されていることを特徴とする缶体。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の缶体において、
2個の前記凸部と2個の前記凹部とが集まる交差部には、前記基準面と同一径位置にて当該基準面に沿う交差部平坦面が形成されていることを特徴とする缶体。
【請求項6】
請求項5に記載の缶体において、
前記凸部平坦面および凹部平坦面は、それぞれ前記基準面に直交する正面形状が略正方形の四隅を隅切りした八角形に形成されていることを特徴とする缶体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−1213(P2012−1213A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134711(P2010−134711)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】