説明

缶内面用塗料樹脂組成物およびこれを塗布した缶内面用塗装金属板

【課題】 缶内面塗料用樹脂組成物およびこれを塗布した、加工性、耐経時劣化性を有する塗装金属板の提供。
【解決手段】 アルミニウム化合物を含有する重合触媒で重合し、酸成分が芳香族ジカルボン酸75〜100モル%、ポリアルコール成分が(式1)に示すポリアルコールの少なくとも1種以上および/または1,4−シクロヘキサンジメタノールを30〜100モル%である共重合ポリエステル樹脂(A)および架橋剤(B)かなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム化合物を含有する重合触媒を用いて得た共重合ポリエステル樹脂を有効成分とする缶内面用塗料樹脂組成物およびこれを塗布した缶内面用塗装金属板に関する。
【背景技術】
【0002】
缶内面用塗料は、缶の内容物の風味やフレイバーを損なわないことおよび多種多様な缶に使用されることを想定して供給するものであり、近年、その要求特性として、(1)重金属(触媒など)、環境ホルモンなどの毒性および環境汚染の懸念が持たれないこと、(2)加熱殺菌(レトルト)処理に耐えること、(3)接着性、加工性に優れること、(4)食塩や酸性を示す内容物を加熱殺菌したときの耐ブリスター性および耐白化性(耐内容物性)に優れること、(5)製缶時の過度の焼き付けによる加工性の劣化がないこと(耐経時劣化性)などが挙げられる。
【0003】
従来、缶内面塗料用樹脂としては、塩化ビニル系樹脂や、エポキシ−フェノール系樹脂が多く使用されているが、両者ともに上記環境ホルモンの問題が指摘されている。とくに塩化ビニル系樹脂の場合は、樹脂中に残存する塩化ビニルモノマーが発ガン性などの重大な衛生性上問題のある物質であることが指摘されている。また、エポキシ−フェノール系樹脂では焼き付け温度が高く、前記したように環境ホルモンの発生が問題となる。一方、これらの解決法として、塩化ビニル系樹脂やビスフェノール型エポキシ樹脂を用いないで、チタン系重合触媒による共重合ポリエステル系樹脂を用いる提案がなされている(特許文献1および特許文献2)。また、ポリエチレンテレフタレートの重合触媒に関する特許文献は多数みられる。その例の1つとしてアルミニウム化合物およびリン化合物が提案されている(特許文献3)が、共重合ポリエステル樹脂の使用については未だ知られていない。
【0004】
【特許文献1】特開2001−106969号公報
【特許文献2】特許第2526631号公報
【特許文献3】特開2004−256633号公報
【0005】
共重合ポリエステルの重合触媒としては、アンチモン系、チタン系、ゲルマニウム系、スズ系などが知られている。しかしながら、このような金属板の缶内面塗料用共重合ポリエステル樹脂の製造に関しては、これらの重合触媒種には、次のような問題点が残されていた。
(1)スズ化合物やアンチモン化合物等の重合触媒は重金属を含み、これらを含まないポ リエステルが望まれていること。
(2)アンチモン化合物は、得られた共重合ポリエステル樹脂を溶剤に溶かしワニスにす るとき、還元アンチモンやアンチモンを含有する凝集物が沈降し塗料として不具合 があること、また、得られた樹脂にくすみが見られること。
(3)チタン化合物を重合触媒として使用した場合、共重合ポリエステル樹脂の着色があ り、アジピン酸あるいはセバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸などを共重合成分に 用いた場合は、耐熱性が劣るため樹脂の着色が著しく、白色塗料では、本来の白色 が得られないこと。
(4)ゲルマニウム化合物は上記重合触媒として有効に使用可能であるが、価格が著しく 高いこと。
などがある。
【0006】
かかる技術背景から、主としてアルミニウム化合物を重合触媒として用い、重合活性が十分であり、得られた共重合ポリエステル樹脂の熱安定性不良に起因する着色が抑制され、アルミニウム由来の異物の少ない缶内面塗料用共重合ポリエステル樹脂が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の問題点に鑑み、環境問題が考慮され、重合活性に優れ、樹脂の着色が抑制され、また、アルミニウム由来の異物が低減された缶内面塗料用樹脂組成物およびこれを塗布した、加工性、耐経時劣化性を有する塗装金属板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の缶内面用塗料樹脂組成物はアルミニウム化合物を含有する重合触媒の存在下に重合してなり、酸成分が芳香族ジカルボン酸75〜100モル%、脂肪族および/または脂環族ジカルボン酸0〜25モル%であり、ポリアルコール成分が(式1)に示す側鎖を有するポリアルコールの少なくとも1種以上および/または1,4−シクロヘキサンジメタノールを30〜100モル%、その他のポリアルコール0〜70モル%である共重合ポリエステル樹脂(A)および架橋剤(B)からなることを特徴とする。
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、n=0または1、R1:H、メチル基またはエチル基、R2:H、または炭素数1以上のアルキル基、R3:Hまたは炭素数1以上のアルキル基を示す。また、R1、R2およびR3の少なくとも1つはアルキル基である。)
【0011】
この場合において、(式1)に示すポリアルコール成分が、少なくとも1,2−プロパンジオールまたは2−メチル−1,3−プロパンジオールの一種類を含むことが好ましい。
【0012】
また、アルミニウム化合物を含有する重合触媒が、アルミニウム化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種とリン化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種とからなることが好ましい。
【0013】
また、アルミニウム化合物を含有する重合触媒が、アルミニウム化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種と、アルカリ金属、アルカリ土類金属並びにそれらの化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種とからなることが好ましい。
【0014】
また、アルミニウム化合物がカルボン酸含有化合物であることが好ましい。
【0015】
また、リン化合物が芳香族ホスホン酸およびそれらの誘導体であることが好ましい。
【0016】
また、アルカリ金属がLi,Naであり、アルカリ土類金属がMgであり、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物がLi、Na、Mgの化合物であることが好ましい。
【0017】
また、前記の缶内面用塗料樹脂組成物に、硬化触媒(C)として有機スルホン酸を[(A)+(B)]/(C)=100/0.01〜1.0(重量比)の範囲で配合したものとすることが好ましい。
【0018】
また、缶内面用塗料樹脂組成物を構成する共重合ポリエステル樹脂(A)中の、共重合ポリエステル樹脂に不溶なアルミニウム系異物のろ過時間は5時間以下であることが好ましい。
【0019】
ここで、共重合ポリエステル樹脂に不溶なアルミニウム系異物ろ過時間とは、混合溶液に溶解した共重合ポリエステル樹脂を、後記の方法で、孔径1.0μmのポリテトラフルオロエチレン製のメンブレンフィルターを用い、0.15MPaの加圧下ろ別したときの、ろ過が終了するまでのろ過時間である。
【0020】
さらにまた、上記缶内面用塗料樹脂組成物を金属板に塗布して塗装金属板とすることができる。
【0021】
また、硬化触媒を配合した缶内面用塗料樹脂組成物を金属板に塗布して缶内面用塗装金属板とすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の缶内面塗料用樹脂組成物およびび缶内面用塗装金属板によれば、重合活性に優れ、樹脂の着色が抑制され、さらには、アルミニウム由来の異物の問題が解決された缶内面塗料用樹脂組成物およびこれを塗布した、加工性、耐経時劣化性に優れた缶内面用塗装金属板を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の缶内面塗料用樹脂組成物およびこれを塗布した缶内面用塗装金属板の実施の形態を詳細に説明する。
【0024】
本発明缶内面塗料用樹脂組成物は、アルミニウム化合物を含有する重合触媒の存在下に共重合してなり、酸成分が芳香族ジカルボン酸75〜100モル%、脂肪族および/または脂環族ジカルボン酸0〜25モル%であり、ポリアルコール成分が前記(式1)に示す側鎖を有するポリアルコールの少なくとも1種以上および/または1,4−シクロヘキサンジメタノールを30〜100モル%、その他のポリアルコール0〜70モル%である共重合ポリエステル樹脂(A)および架橋剤(B)からなるものである。
【0025】
本発明を構成する共重合ポリエステル樹脂の重合触媒として用いるアルミニウム化合物としては、金属アルミニウムのほか、公知のアルミニウム化合物は限定なく使用できる。
【0026】
アルミニウム化合物としては、具体的には、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム、アクリル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、トリクロロ酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウムなどのカルボン酸塩、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、炭酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ホスホン酸アルミニウムなどの無機酸塩、アルミニウムメトキサイド、アルミニウムエトキサイド、アルミニウムn-プロポキサイド、アルミニウム-iso-プロポキサイド、アルミニウム-n-ブトキサイド、アルミニウムt−ブトキサイドなどアルミニウムアルコキサイド、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテートジ-iso-プロポキサイドなどのアルミニウムキレート化合物、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物およびこれらの部分加水分解物、酸化アルミニウムなどが挙げられる。これらのうちカルボン酸塩、無機酸塩およびキレート化合物が好ましく、これらの中でもさらに酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウムおよびアルミニウムアセチルアセトネートがとくに好ましい。
【0027】
本発明で用いるアルミニウム化合物の使用量としては、得られるポリエステルのジカルボン酸や多価カルボン酸などのカルボン酸成分の全構成ユニットのモル数に対して0.001〜1.0モル%が好ましく、さらに好ましくは、0.005〜0.5モル%である。このようにアルミニウム成分の添加量は、使用する多価カルボン酸およびジオールの種類やその組合せ、さらには重合方法によって大きく触媒活性が変動するため広い範囲が求められる。このことは他の重合触媒でも同様の傾向を示す。とくに、減圧下で重合を実施しない場合は重合触媒量を大幅に増加する必要がある。本発明で用いる重合触媒は十分な触媒活性を示すため、その結果、得られるポリエステルの熱安定性や熱酸化安定性、耐加水分解性が優れ、アルミニウムに起因する異物の発生や着色が抑制される。
【0028】
以下に、アルミニウム化合物のとして、塩基性酢酸アルミニウムを用いた同溶液の調製方法の具体例を示す。塩基性酢酸アルミニウムの水溶液の調製例としては、下記の通りである。すなわち、塩基性酢酸アルミニウムに水を加え室温で十分拡散させた後、室温〜100℃で溶解させることで水溶液を調製する。この場合の温度は低い方が好ましく、加熱は短い方が好ましい。水溶液の濃度は、10〜30g/lが好ましく、とくに15〜20g/lが好ましい。
【0029】
さらに、触媒添加時のヒートショックを抑制するために、塩基性酢酸アルミニウム水溶液を同エチレングリコール溶液にすることが好ましいや態様である。すなわち、上記の水溶液に対してエチレングリコールを加える。エチレングリコールの添加量は水溶液に対して容量比で0.5〜5.0倍量が好ましい。より好ましくは0.8〜2.0倍量である。該溶液を攪拌することで均一な水/エチレングリコール混合溶液を得た後、該溶液を加熱し、水を留去することでエチレングリコール溶液を得ることができる。温度は70℃以上が好ましく、130℃以下が好ましい。より好ましくは80〜120℃で加熱・攪拌して水を留去することが好ましい。さらに好ましくは、減圧下および/または窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で加熱し、水を留去し触媒溶液を調製することである。
上記エチレングリコールは一例であって、他のアルキレングリコールも同様にして使用できる。
【0030】
上記の塩基性酢酸アルミニウムは水やグリコールなどの溶媒に可溶化したもの、とくに水および/またはエチレングリコールに可溶化したものを用いることが触媒活性や得られる共重合ポリエステルの異物低減の観点からも好ましい。
【0031】
本発明においては、スズ化合物、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物およびチタン化合物などのような金属重合触媒を実質的には用いないものである。
【0032】
本発明で用いる重合触媒を構成するリン化合物としては、とくに限定はされないが、リン酸並びにトリメチルリン酸、トリエチルリン酸、フェニルリン酸、トリフェニルリン酸等のリン酸エステル、亜リン酸並びにトリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)4,4'-ビフェニレンジホスファイト等の亜リン酸エステルなどが挙げられる。
【0033】
本発明で用いる、より好ましいリン化合物は、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種のリン化合物である。これらのリン化合物を用いることで触媒活性の向上効果が見られるとともに、ポリエステルの熱安定性等の物性が改善する効果が見られる。これらの中でも、ホスホン酸系化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。上記したリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0034】
本発明で言うホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物とは、それぞれ下記式(化3)〜(化8)で表される構造を有する化合物のことを言う。
【0035】
【化3】

【0036】
【化4】

【0037】
【化5】

【0038】
【化6】

【0039】
【化7】

【0040】
【化8】

【0041】
本発明で用いるホスホン酸系化合物としては、例えば、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジフェニル、ベンジルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチルなどが挙げられる。本発明で用いるホスフィン酸系化合物としては、例えば、ジフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸メチル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、フェニルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸メチル、フェニルホスフィン酸フェニルなどが挙げられる。本発明で用いるホスフィンオキサイド系化合物としては、例えば、ジフェニルホスフィンオキサイド、メチルジフェニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0042】
ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物の中では、本発明のリン化合物としては、下記式(化9)〜(化14)で表される化合物が好ましい。
【0043】
【化9】

【0044】
【化10】

【0045】
【化11】

【0046】
【化12】

【0047】
【化13】

【0048】
【化14】

【0049】
上記したリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0050】
また、本発明で用いるリン化合物としては、下記一般式(化15)〜(化17)で表される化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果がとくに大きく好ましい。
【0051】
【化15】

【0052】
【化16】

【0053】
【化17】

【0054】
(式(化15)〜(化17)中、R1、R4、R5、R6はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2、R3はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。ただし、炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0055】
本発明のリン化合物としては、上記式(化15)〜(化17)中、R1、R4、R5、R6が芳香環構造を有する基である化合物がとくに好ましい。
【0056】
本発明で用いるリン化合物としては、例えば、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジフェニル、ベンジルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチル、ジフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸メチル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、フェニルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸メチル、フェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィンオキサイド、メチルジフェニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらのうちで、フェニルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチルがとくに好ましい。
【0057】
上記したリン化合物の中でも、本発明では、リン化合物としてリンの金属塩化合物がとくに好ましい。リンの金属塩化合物とは、リン化合物の金属塩であればとくに限定はされないが、ホスホン酸系化合物の金属塩を用いると本発明の課題であるポリエステルの物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。リン化合物の金属塩としては、モノ金属塩、ジ金属塩、トリ金属塩などが含まれる。
【0058】
また、上記したリン化合物の中でも、金属塩の金属部分が、Li、Na、K、Be、Mg、Sr、Ba、Mn、Ni、Cu、Znから選択されたものを用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらのうち、Li、Na、Mgがとくに好ましい。
【0059】
本発明で用いるリンの金属塩化合物としては、下記一般式(化18)で表される化合物から選ばれた少なくとも1種を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0060】
【化18】

【0061】
(式(化18)中、R1は水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。lは1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、l+mは4以下である。Mは(l+m)価の金属カチオンを表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0062】
上記のR1としては、例えば、フェニル、1―ナフチル、2―ナフチル、9−アンスリル、4−ビフェニル、2−ビフェニルなどが挙げられる。上記のR2としては例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基、−CH2CH2OHで表される基などが挙げられる。R3-としては例えば、水酸化物イオン、アルコラートイオン、アセテートイオンやアセチルアセトンイオンなどが挙げられる。
【0063】
上記一般式(化18)で表される化合物の中でも、下記一般式(化19)で表される化合物から選ばれた少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0064】
【化19】

【0065】
(式(化19)中、R1は水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。lは1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、l+mは4以下である。Mは(l+m)価の金属カチオンを表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0066】
上記のR1としては、例えば、フェニル、1―ナフチル、2―ナフチル、9−アンスリル、4−ビフェニル、2−ビフェニルなどが挙げられる。R3-としては例えば、水酸化物イオン、アルコラートイオン、アセテートイオンやアセチルアセトンイオンなどが挙げられる。
【0067】
上記したリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0068】
上記式(化19)の中でも、Mが、Li、Na、K、Be、Mg、Sr、Ba、Mn、Ni、Cu、Znから選択されたものを用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらのうち、Li、Na、Mgがとくに好ましい。
【0069】
本発明のリンの金属塩化合物としては、リチウム[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、ナトリウム[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、カリウム[(2−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[(2−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、リチウム[ベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[ベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[ベンジルホスホン酸エチル]、ベリリウムビス[ベンジルホスホン酸エチル]、ストロンチウムビス[ベンジルホスホン酸エチル]、マンガンビス[ベンジルホスホン酸エチル]、ベンジルホスホン酸ナトリウム、マグネシウムビス[ベンジルホスホン酸]、ナトリウム[(9−アンスリル)メチルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[(9−アンスリル)メチルホスホン酸エチル]、ナトリウム[4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[4−クロロベンジルホスホン酸フェニル]、マグネシウムビス[4−クロロベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[4−アミノベンジルホスホン酸メチル]、マグネシウムビス[4−アミノベンジルホスホン酸メチル]、フェニルホスホン酸ナトリウム、マグネシウムビス[フェニルホスホン酸エチル]、亜鉛ビス[フェニルホスホン酸エチル]などが挙げられる。これらの中で、リチウム[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、ナトリウム[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、リチウム[ベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[ベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[ベンジルホスホン酸エチル]、ベンジルホスホン酸ナトリウム、マグネシウムビス[ベンジルホスホン酸]がとくに好ましい。
【0070】
上記したリン化合物の中でも、本発明では、リン化合物としてP−OH結合を少なくとも一つ有するリン化合物がとくに好ましい。これらのリン化合物を含有することでポリエステルの物性改善効果がとくに高まることに加えて、ポリエステルの重合時に、これらのリン化合物を本発明で用いるアルミニウム化合物と共存して用いることで触媒活性の向上効果が大きく見られる。
P−OH結合を少なくとも一つ有するリン化合物とは、分子内にP−OHを少なくとも一つ有するリン化合物であればとくに限定はされない。これらのリン化合物の中でも、P−OH結合を少なくとも一つ有するホスホン酸系化合物を用いるとアルミニウム化合物との錯体形成が容易になり、ポリエステルの物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0071】
上記したリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0072】
本発明のP−OH結合を少なくとも一つ有するリン化合物としては、下記一般式(化20)で表される化合物から選ばれた少なくとも1種を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0073】
【化20】

【0074】
(式(化20)中、R1は水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0075】
上記のR1としては、例えば、フェニル、1―ナフチル、2―ナフチル、9−アンスリル、4−ビフェニル、2−ビフェニルなどが挙げられる。上記のR2としては例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基、−CH2CH2OHで表される基などが挙げられる。
【0076】
上記したリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0077】
本発明で用いるP−OH結合を少なくとも一つ有するリン化合物としては、(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル、(1−ナフチル)メチルホスホン酸、(2−ナフチル)メチルホスホン酸エチル、ベンジルホスホン酸エチル、ベンジルホスホン酸、(9−アンスリル)メチルホスホン酸エチル、4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル、2−メチルベンジルホスホン酸エチル、4−クロロベンジルホスホン酸フェニル、4−アミノベンジルホスホン酸メチル、4−メトキシベンジルホスホン酸エチルなどが挙げられる。これらの中で、(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル、ベンジルホスホン酸エチルがとくに好ましい。
【0078】
本発明の好ましいリン化合物としては、化学式(化21)であらわされるリン化合物が挙げられる。
【0079】
【化21】

【0080】
(式(化21)中、R1は炭素数1〜49の炭化水素基、または水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜49の炭化水素基を表し、R2,R3はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。炭化水素基は脂環構造や分岐構造や芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0081】
また、さらに好ましくは、化学式(化21)中のR1,R2,R3の少なくとも一つが芳香環構造を含む化合物である。
【0082】
これらのリン化合物の具体例を以下に示す。
【0083】
【化22】

【0084】
【化23】

【0085】
【化24】

【0086】
【化25】

【0087】
【化26】

【0088】
【化27】

【0089】
また、本発明で用いるリン化合物は、分子量が大きいものの方が重合時に留去されにくいため効果が大きく好ましい。
【0090】
本発明のリン化合物は、フェノール部を同一分子内に有するリン化合物であることが好ましい。フェノール部を同一分子内に有するリン化合物を含有することでポリエステルの物性改善効果が高まることに加えて、ポリエステルの重合時にフェノール部を同一分子内に有するリン化合物を用いることで触媒活性を高める効果がより大きく、従ってポリエステルの生産性に優れる。
【0091】
フェノール部を同一分子内に有するリン化合物としては、フェノール構造を有するリン化合物であればとくに限定はされないが、フェノール部を同一分子内に有する、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物からなる群より選ばれた1種または2種以上の化合物を用いるとポリエステルの物性改善効果や触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらの中でも、1種または2種以上のフェノール部を同一分子内に有するホスホン酸系化合物を用いるとポリエステルの物性改善効果や触媒活性の向上効果がとくに大きく好ましい。
【0092】
本発明で用いるフェノール部を同一分子内に有するリン化合物としては、下記一般式(化28)〜(化30)で表される化合物が好ましい。
【0093】
【化28】

【0094】
【化29】

【0095】
【化30】

【0096】
(式(化28)〜(化30)中、R1はフェノール部を含む炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基などの置換基およびフェノール部を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R4,R5,R6はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基などの置換基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2,R3はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基などの置換基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。ただし、炭化水素基は分岐構造やシクロヘキシル等の脂環構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。R2とR4の末端どうしは結合していてもよい。)
【0097】
本発明のフェノール部を同一分子内に有するリン化合物としては、例えば、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジメチル、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジエチル、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸メチル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸フェニル、p−ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸、p−ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸メチル、p−ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸フェニル、p−ヒドロキシフェニルホスフィン酸、p−ヒドロキシフェニルホスフィン酸メチル、p−ヒドロキシフェニルホスフィン酸フェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキサイド、トリス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキサイド、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メチルホスフィンオキサイド、および下記式(化31)〜(化34)で表される化合物などが挙げられる。これらのうちで、下記式(化31)で表される化合物およびp−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジメチルがとくに好ましい。
【0098】
【化31】

【0099】
【化32】

【0100】
【化33】

【0101】
【化34】

【0102】
上記の式(化33)にて示される化合物としては、SANKO-220(三光株式会社製)があり、使用可能である。
【0103】
本発明で用いるフェノール部を同一分子内に有するリン化合物の中でも、下記一般式(化35)で表される特定のリンの金属塩化合物から選ばれた少なくとも1種がとくに好ましい。
【0104】
【化35】

【0105】
((式(化35)中、R1、R2はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R4は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R4-としては例えば、水酸化物イオン、アルコラートイオン、アセテートイオンやアセチルアセトンイオンなどが挙げられる。lは1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、l+mは4以下である。Mは(l+m)価の金属カチオンを表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0106】
これらの中でも、下記一般式(化36)で表される化合物から選ばれた少なくとも1種が好ましい。
【0107】
【化36】

【0108】
(式(化36)中、Mn+はn価の金属カチオンを表す。nは1,2,3または4を表す。)
【0109】
上記式(化35)または(化36)の中でも、Mが、Li,Na、K、Be、Mg、Sr、Ba、Mn、Ni、Cu、Znから選択されたものを用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらのうち、Li、Na、Mgがとくに好ましい。
【0110】
本発明の特定のリンの金属塩化合物としては、リチウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸]、カリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸]、ベリリウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸メチル]、ストロンチウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、バリウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸フェニル]、マンガンビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ニッケルビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、銅ビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、亜鉛ビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]などが挙げられる。これらの中で、リチウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]がとくに好ましい。
【0111】
本発明で用いるフェノール部を同一分子内に有するリン化合物の中でも、下記一般式(化37)で表されるP-OH結合を少なくとも一つ有する特定のリン化合物から選ばれた少なくとも1種がとくに好ましい。
【0112】
【化37】

【0113】
((式(化37)中、R1、R2はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0114】
これらの中でも、下記一般式(化38)で表される化合物から選ばれた少なくとも1種が好ましい。
【0115】
【化38】

【0116】
(式(化38)中、R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0117】
上記のR3としては例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基、−CH2CH2OHで表される基などが挙げられる。
【0118】
本発明のP−OH結合を少なくとも一つ有する特定のリン化合物としては、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸メチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸イソプロピル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸フェニル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸オクタデシル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸などが挙げられる。これらの中で、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸メチルがとくに好ましい。
【0119】
本発明で用いるフェノール部を同一分子内に有するリン化合物の中でも、下記一般式(化39)で表される特定のリン化合物から選ばれた少なくとも1種のリン化合物が好ましい。
【0120】
【化39】

【0121】
(上記式(化39)中、R1、R2はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。R3、R4はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0122】
上記一般式(化39)の中でも、下記一般式(化40)で表される化合物から選ばれた少なくとも1種を用いるとポリエステルの物性改善効果や触媒活性の向上効果が高く好ましい。
【0123】
【化40】

【0124】
(上記式(化40)中、R3、R4はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0125】
上記のR3、R4としては例えば、水素、メチル基、ブチル基等の短鎖の脂肪族基、オクタデシル等の長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基等の芳香族基、−CH2CH2OHで表される基などが挙げられる。
【0126】
本発明で用いる特定のリン化合物としては、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジイソプロピル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジ−n−ブチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジオクタデシル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジフェニルなどが挙げられる。これらの中で、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジオクタデシル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジフェニルがとくに好ましい。
【0127】
本発明で用いるフェノール部を同一分子内に有するリン化合物の中でも、本発明でとくに望ましい化合物は、化学式(化41)、(化42)で表される化合物から選ばれた少なくとも1種のリン化合物である。
【0128】
【化41】

【0129】
【化42】

【0130】
上記の化学式(化41)にて示される化合物としては、Irganox1222(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)が市販されており、また化学式(化42)にて示される化合物としてはIrganox1425(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)が市販されており、使用可能である。
【0131】
本発明で使用することが好ましいその他のリン化合物としては、下記する(化43)、(化44)で表される連結基(X)を有するホスホン酸系化合物あるいは(化45)で表される連結基(X)を有さないホスホン酸系化合物などが挙げられる。
【0132】
【化43】

【0133】
[式(化43)中、R1は炭素数6〜50の芳香環構造あるいは炭素数4〜50の複素環構造を表し、該芳香環構造あるいは複素環構造は置換基を有していてもよい。Xは連結基であり、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素(直鎖状あるいは分岐構造あるいは脂環構造であってもかまわない)、あるいは置換基を含有する炭素数1〜10の脂肪族炭化水素(直鎖状あるいは分岐構造あるいは脂環構造であってもかまわない)、−O−、−OCH2−、−SO2−、−CO−、−COCH2−、−CH2OCO−、−NHCO−、−NH−、−NHCONH−、−NHSO2−、−NHC36OCH2CH2O−から選ばれる。また、R2およびR3はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜20の炭化水素基を表す。炭化水素基は脂環構造や分岐構造や芳香環構造を有していてもよい。]
【0134】
式(化43)で表されるリン化合物の芳香環構造および複素環構造の置換基が、炭素数1〜50の炭化水素基(直鎖状であっても脂環構造、分岐構造、芳香環構造であってもよく、これらがハロゲン置換されたものであってもよい)または水酸基またはハロゲン基または炭素数1〜10のアルコキシル基またはアミノ基(炭素数1〜10のアルキルあるいはアルカノール置換されていてもかまわない)あるいはニトロ基あるいはカルボキシル基あるいは炭素数1〜10の脂肪族カルボン酸エステル基あるいはホルミル基あるいはアシル基あるいはスルホン酸基、スルホン酸アミド基(炭素数1〜10のアルキルあるいはアルカノール置換されていてもかまわない)、ホスホリル含有基、ニトリル基、シアノアルキル基、から選ばれた1種もしくは2種以上である。
【0135】
式(化43)で表されるリン化合物には次のようなものが挙げられる。具体的には、ベンジルホスホン酸、ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、1−ナフチルメチルホスホン酸、1−ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、2−ナフチルメチルホスホン酸、2−ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、4−フェニル,ベンジルホスホン酸、4−フェニル,ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2−フェニル,ベンジルホスホン酸、2−フェニル,ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4-クロル,ベンジルホスホン酸、4-クロル,ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4-クロル,ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−メトキシ,ベンジルホスホン酸、4−メトキシ,ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−メトキシ,ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−メチル,ベンジルホスホン酸、4−メチル,ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−メチル,ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−ニトロ,ベンジルホスホン酸、4−ニトロ,ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−ニトロ,ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−アミノ,ベンジルホスホン酸、4−アミノ,ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−アミノ,ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2−メチル, ベンジルホスホン酸、2−メチル, ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2−メチル, ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、10−アンスラニルメチルホスホン酸、10−アンスラニルメチルホスホン酸モノエチルエステル、10−アンスラニルメチルホスホン酸ジエチルエステル、(4−メトキシフェニル-,エトキシ-)メチルホスホン酸、(4−メトキシフェニル-,エトキシ-)メチルホスホン酸モノメチルエステル、(4−メトキシフェニル-,エトキシ-)メチルホスホン酸ジメチルエステル、(フェニル-,ヒドロキシ-)メチルホスホン酸、(フェニル-,ヒドロキシ-)メチルホスホン酸モノエチルエステル、(フェニル-,ヒドロキシ-)メチルホスホン酸ジエチルエステル、(フェニル-,クロル-)メチルホスホン酸、(フェニル-,クロル-)メチルホスホン酸モノエチルエステル、(フェニル-,クロル-)メチルホスホン酸ジエチルエステル、(4−クロルフェニル)-イミノホスホン酸、(4−クロルフェニル)-イミノホスホン酸モノエチルエステル、(4−クロルフェニル)-イミノホスホン酸ジエチルエステル、(4−ヒドロキシフェニル-,ジフェニル-)メチルホスホン酸、(4−ヒドロキシフェニル-,ジフェニル-)メチルホスホン酸モノエチルエステル、(4−ヒドロキシフェニル-,ジフェニル-)メチルホスホン酸ジエチルエステル、(4−クロルフェニル-,ヒドロキシ-)メチルホスホン酸、(4−クロルフェニル-,ヒドロキシ-)メチルホスホン酸モノメチルエステル、(4−クロルフェニル-,ヒドロキシ-)メチルホスホン酸ジメチルエステル、その他、複素環を含有するリン化合物としては、2−ベンゾフラニルメチルホスホン酸ジエチルエステル、2−ベンゾフラニルメチルホスホン酸モノエチルエステル、2−ベンゾフラニルメチルホスホン酸、2−(5−メチル)ベンゾフラニルメチルホスホン酸ジエチルエステル、2−(5−メチル)ベンゾフラニルメチルホスホン酸モノエチルエステル、2−(5−メチル)ベンゾフラニルメチルホスホン酸などが挙げられる。上記の連結基を有するリン化合物は、重合活性の点で好ましい態様である。
【0136】
本発明で使用することが好ましい連結基(X)を有するその他の化合物としては式(化44)で表されるリン化合物が挙げられる。
【0137】
【化44】

【0138】
[式(化44)中、R0は、水酸基、C1〜C10のアルキル基、−COOH基あるいは−COOR4(R4は、C1〜C4のアルキル基を表す)、アルキレングリコール基あるいはモノアルコキシアルキレングリコール基を表す(モノアルコキシはC1〜C4を、アルキレングリコールはC1〜C4のグリコールを表す)。R1はベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル、ジフェニルスルホン、ジフェニルメタン、ジフェニルジメチルメタン、ジフェニルケトン、アントラセン、フェナントレンおよびピレンなどの芳香環構造を表す。R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、C1〜C4の炭化水素基、水酸基またはアルコシキル基を有するC1〜C4の炭化水素基を表す。mは1〜5の整数を表し、R0が複数個の場合、同一置換基あるいは異なる置換基の組合せであってもかまわない。nは0あるいは1〜5の整数を表す。]
【0139】
本発明で用いる式(化44)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がベンゼンであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、2−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2−ヒドロキシベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2−ヒドロキシベンジルホスホン酸、4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−ヒドロキシベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−ヒドロキシベンジルホスホン酸、6−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチルエステル、6−ヒドロキシベンジルホスホン酸モノエチルエステル、6−ヒドロキシベンジルホスホン酸などのベンゼン環に水酸基を導入したベンジルホスホン酸類が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0140】
また、2−n-ブチルベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2−n-ブチルベンジルホスホン酸モノメチルエステル、2−n-ブチルベンジルホスホン酸、3−n-ブチルベンジルホスホン酸ジエチルエステル、3−n-ブチルベンジルホスホン酸モノエチルエステル、3−n-ブチルベンジルホスホン酸、4−n-ブチルベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−n-ブチルベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−n-ブチルベンジルホスホン酸、2,5−n-ジブチルベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2,5−n-ジブチルベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2,5−n-ジブチルベンジルホスホン酸、3,5−n-ジブチルベンジルホスホン酸ジエチルエステル、3,5−n-ジブチルベンジルホスホン酸モノエチルエステル、3,5−n-ジブチルベンジルホスホン酸などのベンゼン環にアルキルを導入したベンジルホスホン酸類が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0141】
さらに、2−カルボキシベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2−カルボキシベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2−カルボキシベンジルホスホン酸、3−カルボキシベンジルホスホン酸ジエチルエステル、3−カルボキシベンジルホスホン酸モノエチルエステル、3−カルボキシベンジルホスホン酸、4−カルボキシベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−カルボキシベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−カルボキシベンジルホスホン酸、2,5−ジカルボキシベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2,5−ジカルボキシベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2,5−ジカルボキシベンジルホスホン酸、3,5−ジカルボキシベンジルホスホン酸ジエチルエステル、3,5−ジカルボキシベンジルホスホン酸モノエチルエステル、3,5−ジカルボキシベンジルホスホン酸、2−メトキシカルボニルベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2−メトキシカルボニルベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2−メトキシカルボニルベンジルホスホン酸、3−メトキシカルボニルベンジルホスホン酸ジエチルエステル、3−メトキシカルボニルベンジルホスホン酸モノエチルエステル、3−メトキシカルボニルベンジルホスホン酸、4−メトキシカルボニルベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−メトキシカルボニルベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−メトキシカルボニルベンジルホスホン酸、2,5−ジメトキシカルボニルベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2,5−ジメトキシカルボニルベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2,5−ジメトキシカルボニルベンジルホスホン酸、3,5−ジメトキシカルボニルベンジルホスホン酸ジエチルエステル、3,5−ジメトキシカルボニルベンジルホスホン酸モノエチルエステル、3,5−ジメトキシカルボニルベンジルホスホン酸などのベンゼン環にカルボキル基あるいはカルボン酸エステル基を導入したベンジルホスホン酸類が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0142】
さらに、2−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸、3−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、3−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、3−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸、4−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸、2,5−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2,5−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2,5−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸、3,5−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、3,5−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、3,5−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンジルホスホン酸、2−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、1−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸、3−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸モノメチルエステル、3−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、3−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、3−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸、4−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸、2,5−ジ(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、2,5−ジ(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、2,5−ジ(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸、3,5−ジ(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、3,5−ジ(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、3,5−ジ(2−メトキシエトキシ)ベンジルホスホン酸などのベンゼン環にアルキレングリコール基あるいはモノアルコキシ化アルキレングリコール基を導入したベンジルホスホン酸類が挙げられる。
【0143】
(化44)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がベンゼンであるリン化合物としては、上記した単一置換基種に限定されるものではなく、上記した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
【0144】
本発明で用いる式(化44)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がナフタレンであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、1−(5−ヒドロキシ)ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(5−ヒドロキシ)ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(5−ヒドロキシ)ナフチルメチルホスホン酸、1−(5−ヒドロキシ)ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(5−ヒドロキシ)ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(5−ヒドロキシ)ナフチルメチルホスホン酸、1−(5−n−ブチル)ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(5−n−ブチル)ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(5−n−ブチル)ナフチルメチルホスホン酸、1−(4−カルボキシ)ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(4−カルボキシ)ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(4−カルボキシ)ナフチルメチルホスホン酸、1−(4−メトキシカルボニル)ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(4−メトキシカルボニル)ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(4−メトキシカルボニル)ナフチルメチルホスホン酸、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)]ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)]ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)]ナフチルメチルホスホン酸、1−(4−メトキシエトキシ)ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(4−メトキシエトキシ)ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(4−メトキシエトキシ)ナフチルメチルホスホン酸、1−(5−ヒドロキシ)ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、2−(6−ヒドロキシ)ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、2−(6−ヒドロキシ)ナフチルモノエチルホスホン酸、2−(6−ヒドロキシ)ナフチルメチルホスホン酸、2−(6−n−ブチル)ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、2−(6−n−ブチル)ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、2−(6−n−ブチル)ナフチルメチルホスホン酸、2−(6−カルボキシ)ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、2−(6−カルボキシ)ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、2−(6−カルボキシ)ナフチルメチルホスホン酸、2−(6−メトキシカルボニル)ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、2−(6−メトキシカルボニル)ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、2−(6−メトキシカルボニル)ナフチルメチルホスホン酸、2−[6−(2−ヒドロキシエトキシ)]ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、2−[6−(2−ヒドロキシエトキシ)]ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、2−[6−(2−ヒドロキシエトキシ)]ナフチルメチルホスホン酸、2−(6−メトキシエトキシ)ナフチルメチルホスホン酸ジエチルエステル、2−(6−メトキシエトキシ)ナフチルメチルホスホン酸モノエチルエステル、2−(6−メトキシエトキシ)ナフチルメチルホスホン酸などのナフタレン環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノアルコキシアルキレングリコール基などが導入されたホスホン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0145】
式(化44)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がナフタレンであるリン化合物は、上記した単一置換基種に限定されるものではなく、上記した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
【0146】
本発明で用いる式(化44)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がビフェニルであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、4−(4−ヒドロキシフェニル)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニル)ベンジルホスホン酸、4−(4−n−ブチルフェニル)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(4−n−ブチルフェニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−n−ブチルフェニル)ベンジルホスホン酸、4−(4−カルボキシフェニル)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニル)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシカルボニルフェニル)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニル)ベンジルホスホン酸、4−(4−ヒドロキシエトキシフェニル)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(4−ヒドロキシエトキシフェニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシエトキシフェニル)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシエトキシフェニル)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニル)ベンジルホスホン酸などのビフェニル環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスホン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0147】
式(化44)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がビフェニルであるリン化合物は、上記した単一置換基種に限定されるものではなく、上記した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
【0148】
本発明で用いる式(化44)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がジフェニルエーテルであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、4−(4−ヒドロキシフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸、4−(4−n−ブチルフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−n−ブチルフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ブチルフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸、4−(4−カルボキシフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシカルボニルフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸、4−(4−ヒドロキシエトキシフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシエトキシフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニルオキシ)ベンジルホスホン酸などのジフェニルエーテル環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスホン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0149】
式(化44)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がジフェニルエーテルであるリン化合物は、上記した単一置換基種に限定されるものではなく、上記した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
【0150】
本発明で用いる式(化44)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がジフェニチオエーテルであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、4−(4−ヒドロキシフェニルチオ)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニルチオ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニルチオ)ベンジルホスホン酸、4−(4−n−ブチルフェニルチオ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−n−ブチルフェニルチオ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ブチルフェニルチオ)ベンジルホスホン酸、4−(4−カルボキシフェニルチオ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニルチオ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニルチオ)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシカルボニルフェニルチオ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニルチオ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニルチオ)ベンジルホスホン酸、4−(4−ヒドロキシエトキシフェニルチオ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシフェニルチオ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシフェニルチオ)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシエトキシフェニルチオ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニルチオ)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニルチオ)ベンジルホスホン酸などのジフェニルチオエーテル環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスホン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0151】
式(化44)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がジフェニルチオエーテルであるリン化合物は、上記した単一置換基種に限定されるものではなく、上記した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
【0152】
本発明で用いる式(化44)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がジフェニルスルホンであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。4−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸、4−(4−n−ブチルフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−n−ブチルフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ブチルフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸、4−(4−カルボキシフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシカルボニルフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸、4−(4−ヒドロキシエトキシフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシエトキシフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニルスルホニル)ベンジルホスホン酸などのジフェニルスルホン環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスホン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0153】
式(化44)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がジフェニルスルホンであるリン化合物は、上記した単一置換基種に限定されるものではなく、上記した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
【0154】
本発明で用いる式(化44)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がジフェニルメタンであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、4−(4−ヒドロキシベンジル)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(4−ヒドロキシベンジル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシベンジル)ベンジルホスホン酸、4−(4−n−ブチルベンジル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−n−ブチルベンジル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ブチルベンジル)ベンジルホスホン酸、4−(4−カルボキシベンジル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシベンジル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシベンジル)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシカルボニルベンジル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルベンジル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルベンジル)ベンジルホスホン酸、4−(4−ヒドロキシエトキシベンジル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシベンジル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシベンジル)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシエトキシベンジル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシベンジル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシベンジル)ベンジルホスホン酸などのジフェニルメタン環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスホン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0155】
式(化44)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がジフェニルメタンであるリン化合物は、上記した単一置換基種に限定されるものではなく、上記した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
【0156】
本発明で用いる式(化44)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がジフェニルジメチルメタンであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、4−(4−ヒドロキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸、4−(4−n−ブチルフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−n−ブチルフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ブチルフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸、4−(4−カルボキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシカルボニルフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸、4−(4−ヒドロキシエトキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシエトキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシフェニルジメチルメチル)ベンジルホスホン酸などのジフェニルメタン環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスホン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0157】
式(化44)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がジフェニルジメチルメタンであるリン化合物は、上記した単一置換基種に限定されるものではなく、上記した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
【0158】
本発明で用いる式(化44)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がジフェニルケトンであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、4−(4−ヒドロキシベンゾイル)ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、4−(4−ヒドロキシベンゾイル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシベンゾイル)ベンジルホスホン酸、4−(4−n−ブチルベンゾイル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−n−ブチルベンゾイル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ブチルベンゾイル)ベンジルホスホン酸、4−(4−カルボキシベンゾイル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシベンゾイル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−カルボキシベンゾイル)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシカルボニルベンゾイル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルベンゾイル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシカルボニルベンゾイル)ベンジルホスホン酸、4−(4−ヒドロキシエトキシベンゾイル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシベンゾイル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−ヒドロキシメトキシベンゾイル)ベンジルホスホン酸、4−(4−メトキシエトキシベンゾイル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシベンゾイル)ベンジルホスホン酸モノエチルエステル、4−(4−メトキシエトキシベンゾイル)ベンジルホスホン酸などのジフェニルケトン環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスホン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0159】
式(化44)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がジフェニルケトンであるリン化合物は、上記した単一置換基種に限定されるものではなく、上記した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
【0160】
本発明で用いる式(化44)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がアンスラセンであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、9−(10−ヒドロキシ)アンスリルメチルホスホン酸ジエチルエステル、9−(10−ヒドロキシ)アンスリルメチルホスホン酸モノエチルエステル、9−(10−ヒドロキシ)アンスリルメチルホスホン酸、9−(10−n−ブチル)アンスリルメチルホスホン酸ジエチルエステル、9−(10−n−ブチル)アンスリルメチルホスホン酸モノエチルエステル、9−(10−n−ブチル)アンスリルイルメチルホスホン酸、9−(10−カルボキシ)アンスリルメチルホスホン酸ジエチルエステル、9−(10−カルボキシ)アンスリルメチルホスホン酸モノエチルエステル、9−(10−カルボキシ)アンスリルメチルホスホン酸、9−(10−カルボキシ)9−(2−ヒドロキシエトキシ)アンスリルメチルホスホン酸ジエチルエステル、9−(2−ヒドロキシエトキシ)アンスリルメチルホスホン酸モノエチルエステル、9−(2−ヒドロキシエトキシ)アンスリルメチルホスホン酸、9−(2−メトキシエトキシ)アンスリルメチルホスホン酸ジエチルエステル、9−(2−メトキシエトキシ)アンスリルメチルホスホン酸モノエチルエステル、9−(2−メトキシエトキシ)アンスリルメチルホスホン酸、9−(2−メトキシカルボニル)アンスリルメチルホスホン酸ジエチルエステル、9−(2−メトキシカルボニル)アンスリルメチルホスホン酸モノエチルエステル、9−(2−メトキシカルボニル)アンスリルメチルホスホン酸などのアンスラセン環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスホン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0161】
式(化44)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がアンスラセンであるリン化合物は、上記した単一置換基種に限定されるものではなく、上記した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
【0162】
本発明で用いる式(化44)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がフェナントレンであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、1−(7−n−ブチル)フェナントリルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(7−n−ブチル)フェナントリルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(7−n−ブチル)フェナントリルメチルホスホン酸、1−(7−カルボキシ)フェナントリルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(7−カルボキシ)フェナントリルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(7−カルボキシ)フェナントリルメチルホスホン酸、1−(7−ヒドロキシエトキシ)フェナントリルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(7−ヒドロキシエトキシ)フェナントリルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(7−ヒドロキシエトキシ)フェナントリルメチルホスホン酸、1−(7−メトキシエトキシ)フェナントリルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(7−メトキシエトキシ)フェナントリルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(7−メトキシエトキシ)フェナントリルメチルホスホン酸、1−(7−メトキシカルボニル)フェナントリルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(7−メトキシカルボニル)フェナントリルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(7−メトキシカルボニル)フェナントリルメチルホスホン酸などのフェナントレン環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスホン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0163】
式(化44)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がフェナントレンであるリン化合物は、上記した単一置換基種に限定されるものではなく、上記した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
【0164】
本発明で用いる式(化44)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がピレンであるリン化合物としては次のようなものが挙げられる。すなわち、1−(5−ヒドロキシ)ピレニルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(5−ヒドロキシ)ピレニルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(5−ヒドロキシ)ピレニルメチルホスホン酸、1−(5−n-ブチル)ピレニリルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(5−n-ブチル)ピレニルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(5−n-ブチル)ピレニルメチルホスホン酸、1−(5−カルボキシ)ピレニルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(5−カルボキシ)ピレニルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(5−カルボキシ)ピレニルメチルホスホン酸、1−(5−ヒドロキシエトキシ)ピレニルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(5−ヒドロキシエトキシ)ピレニルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(5−ヒドロキシエトキシ)ピレニルメチルホスホン酸、1−(5−メトキシエトキシ)ピレニルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(5−メトキシエトキシ)ピレニルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(5−メトキシエトキシ)ピレニルメチルホスホン酸、1−(5−メトキシカルボニル)ピレニルルメチルホスホン酸ジエチルエステル、1−(5−メトキシカルボニル)ピレニルメチルホスホン酸モノエチルエステル、1−(5−メトキシカルボニル)ピレニルメチルホスホン酸などのピレン環にアルキル基、カルボキキシル基、カルボン酸エステル基、アルキレングリコール基、モノメトキシアルキレングリコール基などが導入されたホスホン酸類などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0165】
式(化44)で表されるリン化合物の内、置換基を有する芳香環構造がピレンであるリン化合物は、上記した単一置換基種に限定されるものではなく、上記した置換基、ヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基の混成されたものも使用できる。
【0166】
上記一連の芳香環に導入されるヒドロキシル基、アルキル基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−メトキシエトキシ基などの置換基は、ポリエステルの重合時のアルミニウム原子との錯体形成に深く関わるものと推定される。また、ポリエステル形成時の官能基であるカルボキシル基あるいは水酸基と類似のものも含まれており、ポリエステルマトリックス中に溶解または取り込まれやすいため、重合活性、異物低減などにとくに有効であると考えられる。
【0167】
芳香環構造(R1)に結合したR0が水素原子である未置換基に比べ、本発明で用いるC1〜C10のアルキル基、−COOH基あるいは−COOR4(R4は、C1〜C4のアルキル基を表す)、アルキレングリコール基あるいはモノアルコキシアルキレングリコール基(モノアルコキシはC1〜C4を、アルキレングリコールはC1〜C4のグリコールを表す)で置換されたリン化合物は、触媒活性を改善するだけでなく、異物低減効果の点で好ましい。
【0168】
芳香環構造に結合した置換基は、C1〜C10のアルキル基、カルボキシルおよびカルボキシルエステル基、アルキレングリコールおよびモノアルコキシアルキレングリコールなどが挙げられる。異物低減効果の点でより好ましくは、カルボキシルおよびカルボキシルエステル基、アルキレングリコールおよびモノアルコキシアルキレングリコールである。その理由は不明であるが、ポリエステルおよび触媒の媒体であるアルキレングリコールとの相溶性が改善されることによると推測している。
【0169】
本発明で使用することが好ましい連結基(X)を持たないリン化合物(化45)は次のようなものである。
【0170】
【化45】

【0171】
(式(化45)中、R1は炭素数6〜50の芳香環構造あるいは炭素数4〜50の複素環構造を表し、該芳香環構造あるいは複素環構造は置換基を有していてもよい。R2およびR3はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜20の炭化水素基を表す。炭化水素基は脂環構造や分岐構造や芳香環構造を有していてもよい。)
【0172】
式(化45)で表されるリン化合物の芳香環構造および複素環構造の置換基が、炭素数1〜50の炭化水素基(直鎖状であっても脂環構造、分岐構造、芳香環構造であってもよく、これらがハロゲン置換されたものであってもよい)または水酸基またはハロゲン基または炭素数1〜10のアルコキシル基またはアミノ基(炭素数1〜10のアルキルあるいはアルカノール置換されていてもかまわない)あるいはニトロ基あるいはカルボキシル基あるいは炭素数1〜10の脂肪族カルボン酸エステル基あるいはホルミル基あるいはアシル基あるいはスルホン酸基、スルホン酸アミド基(炭素数1〜10のアルキルあるいはアルカノール置換されていてもかまわない)、ホスホリル含有基、ニトリル基、シアノアルキル基から選ばれた1種もしくは2種以上である。また、前記(化45)の芳香環構造がベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル、ジフェニルスルホン、ジフェニルメタン、ジフェニルジメチルメタン、アントラセン、フェナントレンおよびピレンから選ばれる。および前記複素環構造がフラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、ナフタランおよびフタリドから選ばれる。また、上記式(化45)中のR2およびR3の少なくとも一方が水素原子であることが好ましい。
【0173】
本発明で使用できる式(化45)で表されるリン化合物としては、下記のリン化合物などが挙げられる。すなわち、(3−ニトロ,5−メチル)-フェニルホスホン酸ジエチルエステル、(3−ニトロ,5−メチル)-フェニルホスホン酸モノエチルエステル、(3−ニトロ,5−メチル)-フェニルホスホン酸、(3−ニトロ,5−メトキシ)-フェニルホスホン酸ジエチルエステル、(3−ニトロ,5−メトキシ)-フェニルホスホン酸モノエチルエステル、(3−ニトロ,5−メトキシ)-フェニルホスホン酸、(4−クロル)-フェニルホスホン酸ジエチルエステル、(4−クロル,)-フェニルホスホン酸モノエチルエステル、(4−クロル)- フェニルホスホン酸、(5−クロル,)-フェニルホスホン酸ジエチルエステル、(5−クロル,)-フェニルホスホン酸モノエチルエステル、(5−クロル,)-フェニルホスホン酸、(3−ニトロ,5−メチル)-フェニルホスホン酸ジエチルエステル、(3−ニトロ,5−メチル)-フェニルホスホン酸モノエチルエステル、(3−ニトロ,5−メチル)-フェニルホスホン酸、(4−ニトロ)-フェニルホスホン酸ジエチルエステル、(4−ニトロ)-フェニルホスホン酸モノエチルエステル、(4−ニトロ)-フェニルホスホン酸、(5−ニトロ)-フェニルホスホン酸ジエチルエステル、(5−ニトロ)- フェニルホスホン酸モノエチルエステル、(5−ニトロ)-フェニルホスホン酸、(6−ニトロ)-フェニルホスホン酸ジエチルエステル、(6−ニトロ)-フェニルホスホン酸モノエチルエステル、(6−ニトロ)-フェニルホスホン酸、(4−ニトロ,6−メチル)-フェニルホスホン酸ジエチルエステル、(4−ニトロ,6−メチル)- フェニルホスホン酸モノエチルエステル、(4−ニトロ,6−メチル)-フェニルホスホン酸、その他、式(化44)で表されるリン化合物において、上記のベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル、ジフェニルスルホン、ジフェニルメタン、ジフェニルジメチルメタン、ジフェニルケトン、アントラセン、フェナントレンおよびピレンなどの芳香環構造を有するそれぞれの構造式から連結基であるメチレン鎖すなわち、−CH2−を取り除いたリン化合物群、さらに複素環含有リン化合物として、5−ベンゾフラニルホスホン酸ジエチルエステル、5−ベンゾフラニルホスホン酸モノエチルエステル、5−ベンゾフラニルホスホン酸、5−(2−メチル)ベンゾフラニルホスホン酸ジエチルエステル、5−(2−メチル)ベンゾフラニルホスホン酸モノエチルエステル、5−(2−メチル)ベンゾフラニルホスホン酸などが挙げられる。上記の連結基を有しないリン化合物は、前述の連結基を有するリン化合物に比べ重合活性は若干劣る場合もあるが、本発明で用いる触媒調製法を使用した場合、共重合ポリエステル重合触媒として使用することは可能である。
【0174】
リン化合物は、ポリエステルの熱安定剤としては知られていたが、これらの化合物を従来の金属含有ポリエステル重合触媒と組み合わせて使用しても、溶融重合を大きく促進することはこれまで知られていなかった。実際に、ポリエステル重合の代表的な触媒であるアンチモン化合物、チタン化合物、スズ化合物あるいはゲルマニウム化合物を重合触媒としてポリエステルを溶融重合する際に、本発明で用いるリン化合物を添加しても、実質的に有用なレベルまで重合が促進されることは認められない。
【0175】
本発明で用いるリン化合物の使用量としては、得られる共重合ポリエステルのポリカルボン酸成分の全構成ユニットのモル数に対して0.001〜2.0モル%が好ましく、0.005〜1.0モル%であることがさらに好ましい。リン化合物の添加量が0.001モル%未満の場合には添加効果が発揮されない場合があり、2.0モル%を超えて添加すると逆に共重合ポリエステル重合触媒としての触媒活性が低下する場合があり、その低下の傾向は、アルミニウムの使用量等により変化する。
【0176】
また一方で、本発明においてアルミニウムもしくはその化合物に加えて少量のアルカリ金属、アルカリ土類金属並びにその化合物から選ばれた少なくとも1種を第2金属含有成分として共存させることが好ましい態様である。かかる第2金属含有成分を触媒系に共存させることは、触媒活性を高め、従って反応速度をより高めた触媒成分が得られ、生産性向上に有効である。
【0177】
アルカリ金属、アルカリ土類金属並びにその化合物を添加する場合、その使用量M(モル%)は、ポリエステルを構成する全ポリカルボン酸ユニットのモル数に対して、1×10-6以上1.0モル%未満であることが好ましく、より好ましくは5×10-6〜0.5モル%であり、さらに好ましくは1×10-5〜0.3モル%であり、とくに好ましくは、1×10-5〜0.1モル%である。アルカリ金属、アルカリ土類金属の添加量が少量であるため、熱安定性低下、異物の発生、着色、耐加水分解性の低下等の問題を発生させることなく、反応速度を高めることが可能である。アルカリ金属、アルカリ土類金属並びにその化合物の使用量Mが1.0モル%以上になると熱安定性の低下、異物発生や着色の増加、並びに耐加水分解性の低下が製品加工上問題となる場合が発生する。Mが1×10-6未満では、添加してもその効果が明確ではない。
【0178】
本発明においてアルミニウムもしくはその化合物に加えて使用することが好ましい第2金属含有成分を構成するアルカリ金属、アルカリ土類金属としては、Li,Na,K,Rb,Cs,Be,Mg,Ca,Sr,Baから選ばれた少なくとも1種であることが好ましく、このうちLi,Na,Mgないしその化合物から選ばれた少なくとも1種の使用がより好ましい。アルカリ金属やアルカリ土類金属の化合物としては、例えば、これら金属のギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、蓚酸などの飽和脂肪族カルボン酸塩、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和脂肪族カルボン酸塩、安息香酸などの芳香族カルボン酸塩、トリクロロ酢酸などのハロゲン含有カルボン酸塩、乳酸、クエン酸、サリチル酸などのヒドロキシカルボン酸塩、炭酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、炭酸水素、リン酸水素、硫化水素、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、臭化水素酸、塩素酸、臭素酸などの無機酸塩、1−プロパンスルホン酸、1−ペンタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などの有機スルホン酸塩、ラウリル硫酸などの有機硫酸塩、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシなどのアルコキサイド、アセチルアセトネートなどとのキレート化合物、水素化物、酸化物、水酸化物などが挙げられる。
【0179】
これらのアルカリ金属、アルカリ土類金属またはそれらの化合物のうち、水酸化物等のアルカリ性の強いものを用いる場合、これらはエチレングリコール等のジオールもしくはアルコール等の有機溶媒に溶解しにくい傾向があるため、水溶液で重合系に添加しなければならず重合工程上問題となる場合がある。さらに、水酸化物等のアルカリ性の強いものを用いた場合、重合時にポリエステルが加水分解等の副反応を受け易くなるとともに、重合したポリエステルは着色し易くなる傾向があり、耐加水分解性も低下する傾向がある。従って、本発明で用いるアルカリ金属またはそれらの化合物あるいはアルカリ土類金属またはそれらの化合物として好適なものは、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の飽和脂肪族カルボン酸塩、不飽和脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン塩、ハロゲン含有カルボン酸塩、ヒドロキシカルボン酸塩、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、リン酸水素、硫化水素、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、臭化水素酸、塩素酸、臭素酸から選ばれた無機酸塩、有機スルホン酸塩、有機硫酸塩、キレート化合物、および酸化物である。これらの中でもさらに、取り扱い易さや入手のし易さ等の観点から、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の飽和脂肪族カルボン酸塩、とくに酢酸塩の使用が好ましい。
【0180】
本発明で用いる重合触媒は、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、スズ化合物などのほかの重合触媒を、これらの成分の添加が前述のようなポリエステルの特性、加工性、色調等製品に問題を生じない添加量の範囲内において共存させて用いることは、重合時間の短縮による生産性を向上させる際に有効であり、好ましい。
【0181】
本発明で用いるリン化合物を併用することにより、ポリエステル重合触媒中のアルミニウムとしての添加量が少量でも十分な触媒効果を発揮する触媒が得られる。
【0182】
以下に、アルミニウム化合物のとして、塩基性酢酸アルミニウムを用いた場合の、同溶液の調製方法の具体例を示す。
【0183】
(重合触媒調製例)
(1)アルミニウム化合物の1,2−プロパンジオール溶液の調製例
塩基性酢酸アルミ二ウム(ヒドロキシアルミニウムジアセテート;アルドリッチ社製)を20g/lの濃度で蒸留水に分散させ、攪拌下95℃で2時間加熱処理をして溶解させた。該水溶液に対して等量(容量比)の1,2−プロパンジオールをともにフラスコへ仕込み、減圧(133Pa)下、70〜90℃で攪拌しながら系から水を留去し、20g/lのアルミニウム化合物の1,2−プロパンジオール溶液を調製した。
【0184】
(2)リン化合物の1,2−プロパンジオール溶液の調製例
リン化合物としてIrganox 1222(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を1,2−プロパンジオールと共にフラスコへ仕込み、窒素置換下攪拌しながら液温160℃で12時間加熱し、30g/lのリン化合物の1,2−プロパンジオール溶液を調製した。
【0185】
(3)アルミニウム化合物の1,2−プロパンジオール溶液/リン化合物の1,2−プロパンジオール溶液の混合物の調製例
上記アルミニウム化合物の調製例1および上記リン化合物の調製例1で得られたそれぞれの1,2−プロパンジオール溶液をフラスコに仕込み、アルミニウム原子とリン原子がモル比で1:2となるように室温で混合し、5時間攪拌して触媒溶液を調製した。
【0186】
(4)アルカリ金属化合物の1,2−プロパンジオール溶液の調製例
アルカリ金属化合物として酢酸リチウム(ナカライ社製、試薬特級)を1,2−プロパンジオールと共にフラスコへ仕込み、窒素置換下攪拌しながら室温で30g/lのアルカリ金属化合物の1,2−プロパンジオール溶液を調製した。
【0187】
(5)上記アルミニウム化合物の調製例(1)および上記アルカリ金属化合物の調製例
(4)で得られたそれぞれの1,2−プロパンジオール溶液をフラスコに仕込み、アルミニウム原子とリチウム原子がモル比で1:1となるように室温で混合し、5時間攪拌して触媒溶液を調製した。
【0188】
本発明で用いる重合触媒の別の態様として、上記アルミニウム化合物の1,2−プロパンジオール溶液/リン化合物の1,2−プロパンジオール溶液にアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属の1,2−プロパンジオール溶液を併用して使用することも可能であることはいうまでもない。
【0189】
本発明で用いる共重合ポリエステル樹脂(A)は、ポリカルボン酸成分のうち、芳香族ジカルボン酸が75〜100モル%、好ましくは80〜100モル%であり、より好ましくは85〜100モル%である。全ポリカルボン酸成分の内、芳香族ジカルボン酸を75モル%以上にすることで塗膜の強度、屈曲性が向上し、加工性、耐オーバーベーク性、耐経時劣化性が優れ、金属素地のバリアーが向上することから耐レトルト性、耐缶内容物性も優れる。また、芳香族ジカルボン酸が75モル%未満だと塗膜の強度、屈曲性が低下し、加工性、耐オーバーベーク性、耐経時劣化性が満足できない場合があり、さらにに加工時の塗膜の損傷が生じた場合は耐レトルト性、耐内容物性が著しく劣る。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が上げられ、この内、テレフタル酸を全酸性分中に25モル%以上含むことが好ましい。
【0190】
ポリカルボン酸成分のうちのその他のジカルボン酸は0〜25モル%を占める。とくにに、脂肪族および/または脂環族ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、1,2−シクロヘキセンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、テルペン−マレイン酸付加体などの不飽和ジカルボン酸などを挙げることができ、これらの中から1種またはそれ以上を塗膜性能をおとさない範囲で使用できる。衛生面で好ましいのはイソフタル酸、オルソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸である。
【0191】
本発明で使用される共重合ポリエステル樹脂(A)はポリアルコール成分のうち、(式1)に示されるような側鎖を有するポリアルコールを少なくとも1種以上および/または1,4−シクロヘキサンジメタノールを30〜100モル%、好ましくは40〜90モル%、その他のポリアルコール成分が0〜70モル%、好ましくは10〜60モル%の範囲にある。
(式1)のポリアルコールとしては、例えば、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−1,3−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−ブタンジオールなどがあり、これらの中から1種、または2種以上併用し使用できる。
【0192】
その他のポリアルコール成分としては、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1−メチル−1,8−オクタンジオール、3−プロピル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,6−ヘキサンジオール、4−メチル−1,7−ヘプタンジオール、4−メチル−1,8−オクタンジオール、4−プロピル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオールなどの脂肪族グリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルグリコール類、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカングリコール類、水添加ビスフェノール類などの脂環族ポリアルコールが挙げることができ、これらの中から1種、または2種以上を選び使用できる。このうち、衛生上好ましいものはエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、を挙げることができ、これらの中から1種、またはそれ以上を選び使用できる。
【0193】
また、グリコール成分として1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび/または1,2−プロパンジオールを適量使用した本発明で用いる共重合ポリエステル樹脂(A)あるいは、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび/または2−メチル−1,3−プロパンジオールを適量使用した本発明で用いる共重合ポリエステル樹脂(K)〜(M)は、塗膜の強度を増しつつ、可とう性を維持するため、加工性、耐オーバーベーク性、耐レトルト性、耐内容物性が改善される。1,4−シクロヘキサンジメタノールはポリアルコール成分のうち、10〜30モル%の範囲で使用することが好ましい。また、1,4−ブタンジオールはレゾール型フェノール樹脂との相溶性が良好で好ましいグリコールである。
【0194】
本発明で使用される共重合ポリエステル樹脂(A)は、ポリカルボン酸成分、ポリアルコール成分に3官能以上のポリカルボン酸または/およびポリアルコールを加工性の低下しない範囲で使用しても良い。3官能以上のポリカルボン酸成分としては、例えばトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸などが挙げられ、3官能以上のポリアルコール成分としてはグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、マンニトール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、α−メチルグルコシドなどが挙げられる。衛生上好ましくはトリメリット酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリンなどである。好ましくは0.1〜3モル%の範囲で使用し、これらの3官能成分が3モル%を超えると共重合ポリエステル樹脂(A)の可とう性が失われ、加工性が低下したりする。
【0195】
本発明で使用される共重合ポリエステル樹脂(A)の特性のうち、数平均分子量は5,000〜100,000が好ましく、より好ましくは8,000〜30,000である。好ましいガラス転移温度(Tg)は15〜120℃、より好ましくは3050〜100℃である。数平均分子量が5,000未満であると塗膜が脆くなり、加工性や耐熱水性に劣ったりし、100,000を超えると塗装作業性が低下する場合がある。また、ガラス転移温度が15℃未満であると耐レトルト性が劣り、とくにフレイバー性を必要とする内容物には30℃以上のTgが望ましい。Tgが120℃を超えると加工性や塗装作業性が低下したりする場合がある。なお、ここで言う数平均分子量はゲル浸透クロマトグラフイー(GPC)によって標準ポリスチレンの検量線を用いて測定したものであり、ガラス転移温度(Tg)とは示差熱分析(DSC)によって測定したものである。
【0196】
本発明で使用される共重合ポリエステル樹脂(A)は任意の方法で酸価を与えてもよい。酸価を与える目的としては架橋剤の硬化促進、缶用金属材料との密着性改良などが挙げられる。これらの目的とする場合、好ましい酸価の範囲は40〜200eq./106gである。
200eq./106gを超えると耐レトルト性の低下あるいは酸付加成分が内容物への溶出の可能性がある。酸価を付与する方法としては重合後期に多価カルボン酸無水物を付加する解重合方法、プレポリマー(オリゴマー)の段階でこれを高酸価とし、次いでこれを重合し、酸価を有する共重合ポリエステル樹脂を得る方法等があるが、操作の容易さ、目標とする酸価を得やすいことから前者の解重合方法が好ましい。
【0197】
このような解重合方法での酸付加に用いられる多価カルボン酸無水物としては無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水コハク酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、エチレングリコールビストリメリテート2無水物などが挙げられる。好ましくは無水トリメリット酸、エチレングリコールビストリメリテート2無水物である。
【0198】
本発明の缶内面用塗料樹脂組成物に使用される架橋剤(B)は、アミノ樹脂、フェノール樹脂、イソシアネート化合物、エポキシ樹脂などが挙げられるが、衛生面よりアミノ樹脂、フェノール樹脂が好ましい。とくに、ポリエステル樹脂との架橋性、加工性、耐内容物性などについてはアミノ樹脂が好ましい。
【0199】
上記のアミノ樹脂としては、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシンジアミドなどのアミノ成分と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒドなどのアルデヒド成分との反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂が挙げられる。このメチロール化アミノ樹脂のメチロール基を炭素原子数1〜6のアルコールによってエーテル化したものも上記アミノ樹脂に含まれる。これらのうち、単独あるいは併用して使用できる。衛生上、メラミン、ベンゾグアナミンを使用したアミノ樹脂が好ましく、さらに好ましくは耐レトルト性、抽出性に優れるベンゾグアナミンを使用したアミノ樹脂である。
【0200】
ベンゾグアナミンを使用したアミノ樹脂としては、メチロール化ベンゾグアナミン樹脂のメチロール基を一部または全部をメチルアルコールによってエーテル化したメチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂、ブチルアルコールによってブチルエーテル化したブチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂、あるいはメチルアルコールとブチルアルコールとの両者によってエーテル化したメチルエーテル、ブチルエーテルとの混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂が好ましい。上記、ブチルアルコールとしてはイソブチルアルコール、n−ブチルアルコールが好ましい。
【0201】
メラミンを使用したアミノ樹脂としては、メチロール化メラミン樹脂のメチロール基を一部または全部を、メチルアルコールによってエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂、ブチルアルコールによってブチルエーテル化したブチルエーテル化メラミン樹脂、あるいはメチルアルコールとブチルアルコールとの両者によってエーテル化したメチルエーテル、ブチルエーテルとの混合エーテル化メラミン樹脂が好ましい。
【0202】
また、上記フェノール樹脂としてはとくには限定しないが、フェノール樹脂にアルカリ触媒の存在下でアルデヒドを反応させたレゾール型樹脂、フェノールに酸性触媒の存在下でアルデヒドを反応させたノボラック型などが挙げられ、とくに架橋剤として好適なのはレゾール樹脂である。これらのフェノール樹脂に用いるフェノール類は、フェノール、o−クレゾール、p−クレゾール、m−クレゾール、m−メトキシフェノール、2,3−キシレノール、2,5−キシレノール、p−tert−ブチルフェノール、p−エチルフェノールなどのアルキルフェノール類、ビスフェノール−A、ビスフェノール−Fなどが挙げられ、ポリエステルの相容性の面に優れ、かつ環境ホルモンとして指摘されていないアルキルフェノール類が好ましい。これらのフェノール類のモノ〜トリメチロール化物やその縮合物、あるいはそれらのアルキルエーテル化物、好ましくはブチルエーテル化物、あるいはこれらのエポキシ変性、油変性、メラミン変性、アミド変性、アクリル変性など各種変性をしたものなどが使用できる。
【0203】
また、さらに硬化性を向上させる目的でエポキシ樹脂、イソシアネート化合物などのほかの架橋剤を衛生性などの特性を低下させない範囲で併用しても良い。
【0204】
本発明の缶内面用塗料樹脂組成物は共重合ポリエステル(A)と架橋剤(B)からなるが、好ましくは重量比で(A)/(B)=60/40〜95/5、さらに好ましくは70/30〜85/15である。架橋剤(B)が上記成分量未満であると、十分な硬化塗膜が得られず、加工性、耐レトルト性、耐内容物性が得られず、上記成分量を超えると加工性の低下や衛生性が低下したりする。また、硬化剤(C)を使用することで塗膜の硬化反応を少ない熱エネルギーで進めることができ、良好な塗膜性能となる。硬化剤(C)は、下式の範囲内で使用することが望ましい。
【0205】
[(A)+(B)]/(C)=100/0.01〜1.0(重量比)
【0206】
上記成分量未満であると硬化触媒を添加する効果が十分に得られず、加工性、耐レトルト性、耐内容物性、抽出性が得られない場合がある。上記成分量を超えると、架橋反応が逆反応を起こしたり、共重合ポリエステル樹脂の分解を招きやすく、とくにオーバーベーク時に顕著に硬化性が低下する現象を引き起こし、加工性、耐レトルト性、耐内容物性が低下する。本発明に用いる前記した硬化触媒(C)としては、例えば硫酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、樟脳スルホン酸、ナフタレンスルホン酸、およびこれらのアミンブロック(アミンを添加し一部中和している)したものなどが挙げられ、これらの中から1種、または2種以上を併用することができるが、樹脂との相容性、衛生性の面からドデシルベンゼンスルホン酸が好ましい。とくにアミノ樹脂とスルホン酸系触媒との組合せの場合で150〜250℃×30秒〜15分程度の焼き付けの場合、触媒量は好ましくは0.01〜0.5であり、より好ましくは0.05〜0.2である。
【0207】
本発明の缶用塗料用樹脂組成物には用途に合わせた酸化チタン、シリカなどの公知の無機顔料、リン酸およびそのエステル化物、有機スズ化合物などの硬化触媒、表面平滑剤、消泡剤、分散剤などの公知の添加剤を配合することができる。
【0208】
本発明の缶用塗料用樹脂組成物は公知の有機溶剤に溶解された状態で塗料化される。塗料化に使用する有機溶剤としては、例えばトルエン、キシレン、芳香族系炭化水素化合物、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、イソホロン、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノアセテートなどから溶解性、蒸発速度などを考慮して選択される。
【0209】
本発明の缶内面用塗料樹脂組成物は飲料缶、缶詰用缶、その蓋、キャップなどに用いることができる金属板であればいずれへも塗装し使用でき、例えばブリキ板、ティンフリースチール、アルミなどを挙げることができる。
【0210】
本発明の缶内面用塗料樹脂組成物はロールコーター塗装、スプレー塗装などの公知の塗装方法によって塗装し、本発明の塗装金属板を得ることができる。塗装膜厚はとくに限定されるものではないが、乾燥膜厚で3〜18μm、さらには3〜10μmの範囲であることが好ましい。塗膜の焼き付け条件は通常、約100〜300℃の範囲で約5秒〜約30秒の程度であり、さらには約150〜250℃の範囲で、約1〜約15分の程度であることが好ましい。
【実施例】
【0211】
以下実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。実施例において単に部とあるものは重量部を示す。各測定項目は以下の方法に従った。
【0212】
1.樹脂組成の測定
核磁気共鳴スペクトル法、およびアルコリシス後のガスクロマトグラフによる分析により、酸成分、アルコール成分のモル比を求めた。
【0213】
2.数平均分子量の測定
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって標準ポリスチレンの検量線を用いて測定した。
【0214】
3.還元粘度の測定
ポリエステル樹脂0.10gをフェノール/テトラクロロエタン(重量比6/4)の混合溶媒25ccに溶かし、30℃で測定した。
【0215】
4.ガラス転移温度の測定
示差走査熱量計(DSC)を用いて20℃/分の昇温速度で測定した。
【0216】
5.酸価の測定
ポリエステル0.2gを20mlのクロロホルムに溶解し、0.1NのKOHエタノール溶液で滴定し、樹脂106g当りの当量(eq/106g)を求めた。
【0217】
6.共重合ポリエステルに不溶なアルミニウム系異物の評価法
溶融重合上がりの共重合ポリエステルペレット30gおよびパラクロロフェノール/テトラクロロエタン(3/1:重量比)混合溶液300mlを攪拌機付き丸底フラスコに投入し、該ペレットを混合溶液に100〜105℃、2時間で攪拌・溶解した。該溶液を室温になるまで放冷し、直径47mm/孔径1.0μmのポリテトラフルオロエチレン製のメンブレンフィルター(Advantec社製PTFEメンブレンフィルター、品名:T100A047A)を用い、全量を0.15MPaの加圧下、有効ろ過直径37.5mmで異物をろ別した。
異物評価は、以下のようにろ過時間で行った。
〇:ろ過時間5時間以下
△:ろ過時間5時間〜24時間
×:ろ過時間1日以上
【0218】
上記ろ過時間が1日を超えた場合は、ポリエステルに不溶性の微細な異物含有量が多くなり、例えば、重合工程や成型工程でのポリエステルのろ過時のフィルター詰まりが多くなるという課題に繋がり好ましくない。
【0219】
7.共重合ポリエステル樹脂の透明性(1)透明性、(2)着色の程度
(1)および(2)は共重合ポリエステル樹脂をほぼ同一厚みの板状のまま目視判定した。
【0220】
(1)樹脂の透明性
○:ほとんど透明
△:やや濁りあり
×:著しく濁りあり
【0221】
(2)樹脂の着色の程度
○:ほとんど着色なし
△:やや着色あり
×:著しく着色あり
【0222】
8.テストピースの作成
缶内面用塗料樹脂組成物をブリキ板(70mm×150mm×0.3mm)にバーコーターで膜厚が4〜8μmになるように塗装し、硬化焼き付けを行い、これを試験片とした。焼き付け条件としては雰囲気温度を210℃とした乾燥機中に塗装後のブリキ板を10分間置き塗膜を形成した。
【0223】
9.加工性
試験片と同じ厚さのブリキ板を1枚挟み180度方向に曲げる。この加工部を1%NaCl水溶液に浸漬したスポンジに接触させ5.5Vの電圧をかけたときの通電値により評価した。通電値が小さい方が良好である。
【0224】
10.耐経時劣化性
試験片を1ヶ月間、室温下で放置し、これを上記9項と同じ方法で加工性を評価した。
【0225】
11.オーバーベーク性
試験片を再度210℃×10分の熱処理を行い、これを上記9項と同じ方法で加工性を評価した。
【0226】
12.耐レトルト性
試験片を立ててステンレスカップに入れし、これにイオン交換水を試験片の半分の高さまで注ぐ。これを圧力釜の中に設置し、125℃×30分のレトルト処理を行う。処理後の評価は水中部分と蒸気部分とで行い、それぞれ白化の度合いを目視で以下のように判定する。
◎:良好
○:わずかに白化はあるがブリスターは無し
△:若干白化、または若干のブリスターあり
×:著しい白化、または著しいブリスターあり
【0227】
13.耐内容物性
試験片を食塩3wt%、および乳酸3wt%を含む水溶液に浸し、125℃×30分処理した後、塗膜の白化、ブリスターの状態を目視で判定した。
◎:良好
○:わずかに白化はあるがブリスターは無し
△:若干白化、または若干のブリスターあり
×:著しい白化、または著しいブリスターあり
【0228】
14.抽出性
上記12項に示したレトルト試験後の抽出液を過マンガンカリウムによる滴定により、塗膜からの有機物の抽出量を定量した。数値の少ない方が良好である。
【0229】
本発明樹脂の合成例:(A)
攪拌機、コンデンサー、温度計を装備したステンレス製反応釜に表1に記載の各成分モル%になるように酸成分としてテレフタル酸、無水トリメリト酸、ポリアルコール成分として1,2−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび前記アルミニウム化合物の1,2−プロパンジオール溶液/リン化合物の1,3−プロパンジオール溶液の混合物の調製例からなる重合触媒溶液を10Lオートクレーブに仕込み、3.5Kg/cm・Gの窒素加圧下で3時間かけて235℃まで徐々に昇温し、エステル化を行った。次いで、1時間かけて1333Paまで減圧重合を行うとともに温度を250℃まで昇温し、さらにこのまま133.3Pa以下で120分間後期重合を行い本発明で用いるポリエステル樹脂(A)を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂(A)の組成と特性値を表1に示す。また、得られた樹脂はシクロヘキサノン/ソルベッソ−150=1/1溶剤で固形分40%の樹脂ワニス(a)とし、これを用いて本発明の缶内面用塗料樹脂組成物を調製した。
【0230】
本発明樹脂の合成例:(B),(C)および比較樹脂の合成例:(D)〜(F)
上記本発明で用いる共重合ポリエステル樹脂(A)の合成に準じた方法で、各重合触媒種を用いた共重合ポリエステル樹脂(B)、(C)および(D),(E),(F)を得た。得られた各共重合ポリエステル樹脂の組成と特性値を表1に示す。
アルミニウム化合物単独系触媒の場合(C)は、複合系(A)、(B)に比べて重合活性がやや低く、異物が若干多い以外は、透明性、着色の程度ともに同様の良好な外観を示した。アンチモン系重合触媒(D)は着色に加えて濁っていた。チタン系触媒(E)は得られた樹脂の着色が著しく、また、スズ系重合触媒(F)は比較的透明で着色も少ないものであったがアンチモン系重合触媒同様にこれらを含まないポリエステルが望まれている。
【0231】
本発明樹脂の合成例:(G)〜(M)
上記本発明で用いる共重合ポリエステル樹脂(A)の合成に準じた方法で、各共重合ポリエステル樹脂(G)〜(M)を得た。得られた各共重合ポリエステル樹脂の組成と特性値を表2に示す。また、得られた樹脂はシクロヘキサノン/ソルベッソ−150=1/1溶剤で固形分40%の樹脂ワニス(g)〜(m)とし、これを用いて本発明の缶内面用塗料樹脂組成物を調整した。
【0232】
比較樹脂の合成例:(O)〜(Q)
上記本発明で用いる共重合ポリエステル樹脂(A)の合成に準じた方法で、比較共重合ポリエステル樹脂を得た。得られた各比較共重合ポリエステル樹脂(O)〜(Q)の組成と特性値を表3に示す。また、得られた樹脂はシクロヘキサノン/ソルベッソ−150=1/1溶剤で固形分40%の樹脂ワニス(o)〜(q)とし、これを用いて本発明の缶内面用塗料樹脂組成物を調製した。
【0233】
(実施例1)樹脂ワニス(a)20部、マイコート−106(三井サイテック社製)2.6部、ドデシルベンゼンスルホン酸0.01部を配合した後、シクロヘキサノン/ソルベッソ−150=1/1で塗装に適した粘度になるまで希釈し、本発明の缶内面用塗料樹脂組成物を得た。これを前述した方法により塗布、焼き付けを行い本発明の塗装金属板のテストピースを得た。配合組成、並びにテストピースを評価した結果を表4に示す。
【0234】
(実施例2〜7)
実施例1と同様にして実施例2〜7に示す本発明の缶内面用塗料樹脂組成物を得た後、同じく前述した方法により塗布、焼き付けを行い本発明の塗装金属板のテストピースを得た。配合組成、並びにテストピースを評価した結果を表4に示す。
【0235】
(比較例 1〜4)
実施例1と同様にして、比較例1〜3に示す缶内面用塗料樹脂組成物を得た後、同じく前述した方法により塗布、焼き付けを行い比較例のテストピースを得た。配合組成、並びにテストピースを評価した結果を表5に示す。ちなみに、比較例4はエポキシ−フェノール樹脂塗料を再現したものである。
【0236】
表4〜5で明らかなように、本発明の缶塗料用樹脂組成物を塗布した金属板は、その加工性、耐レトルト性、耐内容物性、耐オーバーベーク性、耐経時劣化性、抽出性の点で優れている。
【0237】
【表1】

【0238】
【表2】

【0239】
【表3】

【0240】
【表4】

【0241】
【表5】

【0242】
以上、本発明の缶内面用塗料樹脂組成物およびこれを塗布した塗装金属板について、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、各実施例に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0243】
本発明は、主としてアルミニウム化合物を含有する重合触媒を用い、スズ化合物、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物およびチタン化合物などのような金属重合触媒を用いないで得た共重合ポリエステル樹脂を有効成分とする缶内面用塗料樹脂組成物およびこれを塗布した缶内面用塗装金属板であり、食品および飲料用金属缶などに広く用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム化合物を含有する重合触媒の存在下に重合してなり、酸成分が芳香族ジカルボン酸75〜100モル%、脂肪族および/または脂環族ジカルボン酸0〜25モル%であり、ポリアルコール成分が(式1)に示す側鎖を有するポリアルコールの少なくとも1種以上および/または1,4−シクロヘキサンジメタノールを30〜100モル%、その他のポリアルコール0〜70モル%である共重合ポリエステル樹脂(A)および架橋剤(B)からなることを特徴とする缶内面用塗料樹脂組成物。
【化1】

(式中、n=0または1、R1:H、メチル基またはエチル基、R2:H、または炭素数1以上のアルキル基、R3:Hまたは炭素数1以上のアルキル基を示す。また、R1、R2およびR3の少なくとも1つはアルキル基である。)
【請求項2】
(式1)に示すポリアルコール成分が、少なくとも1,2−プロパンジオールまたは2−メチル−1,3−プロパンジオールであることを特徴とする請求項1に記載の缶内面用塗料樹脂組成物。
【請求項3】
アルミニウム化合物を含有する重合触媒が、アルミニウム化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種とリン化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種とからなることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の缶内面用塗料樹脂組成物。
【請求項4】
アルミニウム化合物を含有する重合触媒が、アルミニウム化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種と、アルカリ金属、アルカリ土類金属並びにそれらの化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種とからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の缶内面用塗料樹脂組成物。
【請求項5】
アルミニウム化合物がカルボン酸含有化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の缶内面用塗料樹脂組成物。
【請求項6】
リン化合物が芳香族ホスホン酸およびそれらの誘導体であることを特徴とする請求項3に記載の缶内面用塗料樹脂組成物。
【請求項7】
アルカリ金属がLi,Naであり、アルカリ土類金属がMgであることを特徴とする請求項4に記載の缶内面用塗料樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の缶内面用塗料樹脂組成物に、硬化触媒(C)として有機スルホン酸を[(A)+(B)]/(C)=100/0.01〜1.0(重量比)の範囲で配合したことを特徴とする缶内面用塗料樹脂組成物。
【請求項9】
共重合ポリエステル樹脂(A)中の、共重合ポリエステル樹脂に不溶なアルミニウム系異物のろ過時間が5時間以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の缶内面用塗料樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の缶内面用塗料樹脂組成物を金属板に塗布してなることを特徴とする缶内面用塗装金属板。

【公開番号】特開2007−77268(P2007−77268A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−266790(P2005−266790)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】