説明

缶潰し装置

【課題】 潰せない缶が検知された場合は、潰さない状態のまま、あるいは途中まで潰した状態のままで通過させることができ、しかも、潰すべき缶は、完全に潰したものだけが通過できるようにした缶潰し装置を提供する。
【解決手段】 一端を軸301で回動自在に支持された押圧板300と、押圧板の圧接面との間で缶を押しつぶす固定板203と、押圧板に設けられた穿孔部材312と、押圧板の軸301を支持するスライド支持部400と、該スライド支持部を前記固定板から離反する方向に付勢する弾性部材403と、該スライド支持部を、該スライド支持部と固定板との距離が変更可能に保持するカム部材420とを有し、該カム部材を前記固定板の圧接面と平行な方向に進退させて前記押圧板の回動自在に支持された一端と前記固定板との距離を変更する駆動手段431とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄されたエアゾール缶やスプレー缶などのガス缶を潰して処理する技術に関し、特に、缶潰し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
缶の内容物を噴射するために液化石油ガスなどの可燃性ガスを噴射用ガスとして用いるエアゾール缶や、スプレー缶が、多様な用途に使用されている。これらのガス缶は、使用済みになると廃棄されるが、内部に若干のガスや液状物が残ったままで廃棄されるものもあり、そのまま焼却したり、圧縮処理すると、爆発や破裂等を起こすことがある。
【0003】
そこで従来は、廃棄物処理センターでは、回収されたガス缶を処理装置に入れ、処理装置内に配置されている回転ローラのスパイクピンでガス缶の壁面に穿孔して内部のガスと液状物を放出したり、シュレッダのような回転刃でガス缶を切断することによって、内部のガスや液状物を放出し、残滓を圧縮処理するようにしていた。
【0004】
しかし、この場合、処理装置内にガス缶を投入するとき、空気も流入する。また、ガス缶内のガスはプロパンやブタンが多く、これらは非常に良く燃える。そのため、回転ローラのスパイクピンで缶に孔を開けたり、シュレッダのような回転刃で缶を切断したときに出る火花によって、着火して爆発するおそれがあった。
【0005】
そこで、出願人は、特許文献1(特開2005−81386号)で、容器内で缶を潰し、爆発を防止して安全に処理できる缶処理方法を提案している。
【0006】
図5は、この特許文献1に記載されたガス缶の処理装置の構成を示す図である。同図に示すガス缶の処理装置100は、ガス缶を投入する容器110と、この容器110内を減圧する真空ポンプ120と、真空ポンプ120の下流側に設けられたサブタンク121と、真空ポンプ120とは別の管路131で容器110に接続されたファン130と、サブタンク121下流側の管路129に弁127を介して接続されたサージタンク140と、さらに、この下流側に接続された燃焼室150と、を主体として構成される。
【0007】
容器110内には、缶潰し機200が嵌装され、上にはガス缶を投入するための蓋111があり、下方には潰したガス缶を取り出すハッチ112がある。容器110の底部にはドレーン用の管路113が接続され、この管路113にはドレーン弁114が設けられている。容器110の上方の側部には、予め決められた種類のガス(フロンガスや各種の可燃ガス)を検知する1又は複数のガスセンサ115と、容器110内の圧力を測定する圧力計116が接続されている。
【0008】
容器110からファン130に至る管路131には、弁132が接続され、容器110から真空ポンプ120に至る管路122の中間とサブタンク121とを接続するバイパス管路123には弁124が設けられている。また、サブタンク121とファン130を分岐管路125で接続し、中間に弁126を設けている。さらに、サブタンク121からサージタンク140に至る管路129には、弁127がある。
【0009】
次にガス缶の処理方法について説明する。初期状態として、弁132,弁124、弁126、弁127、弁161及びドレーン弁114の全てを閉じておく。蓋111を開いて容器110内に廃棄されたガス缶10を投入する。ガス缶10は、缶潰し機200の上方に設けられたガイド板201上に載る。缶潰し機200が開いていればガス缶10が入るが、ガイド板201上のガス缶10は、缶潰し機200を通過できない状態となっている。ガイド板201の上の空間がガス缶10で満たされると、蓋111を閉じる。同時にハッチ112も閉じる。これで容器110は外部から遮断された状態となる。ガス缶10は、図では、全て同じ径として描かれているが、実際は、多様な径と長さを持ったものが投入される。
【0010】
弁126を開き、真空ポンプ120を運転する。容器110内の空気は真空ポンプ120により排出され、容器110内は減圧される。減圧の程度は、大凡−0.06〜−0.08MPAである。減圧の状態は圧力計116で逐一検知される。
【0011】
容器110内が所定の圧力まで減圧されたら、真空ポンプ120を停止し、缶潰し機200を作動させる。缶潰し機200はガス缶10を1個ずつ或いは数個づつ穿孔して押しつぶし、開口202から容器110の下に落下させる。このときガス缶10から残留していたガスが噴出し、液状物が流れ出る。液状物は容器110の下部に滴下して溜まる。ガス缶10が潰されるとき、火花が発生することがあるが、容器110内は低酸素状態になっているので、爆発することはない。
【0012】
ガスの噴射によって容器110内の圧力が上昇したら、弁127だけ開いて他の弁は閉じ、真空ポンプ120の運転を継続する。容器110内の可燃ガスは、真空ポンプ120、サブタンク121、サージタンク140を経てサージタンク140に一旦溜まり、燃焼室150へ送り込まれ、燃焼される。
【0013】
容器110内の缶の全てを潰し、ガスが真空ポンプ120で排出され終わると、容器110内の圧力が下がるので、真空ポンプ120を停止し、容器110内に不活性ガスなどを入れて大気圧にし、ハッチ112を開いて潰された缶を取り出すことができる。
【0014】
図6は、缶潰し機200の構成を示す図で、図7は図6のVII−VII断面図である。缶潰し機200は、上方にガイド板201があり、その下には、固定板203と圧接板204と穿孔板205とがある。
【0015】
ガイド板201は、中央に向かって下る緩い勾配を有し、ガイド板201の中央の開口202が、ガス缶10よりやや大きくなっている。固定板203はガス缶10を押し潰す力に耐える十分な強度を有するもので、容器110内に適当な方法で固定されている。圧接板204と穿孔板205とは、下端の共通する回動軸206を中心に回動自在である。
【0016】
穿孔板205には、数本の穿孔ピン207が植設され、圧接板204には穿孔ピン207が通過する孔204aが穿設されている。また、穿孔板205は油圧シリンダ210のロッド210aと係合し、油圧シリンダ210の基端は容器110に固定されている。
【0017】
回動軸206は、別の油圧シリンダ215のロッド215aに結合し、圧接板204と穿孔板205の下端が油圧シリンダ215のロッド215aの進退によって移動可能な構成となっている。これらの油圧シリンダ210,215も、前記の制御装置によって制御される。
【0018】
油圧シリンダ210のロッド210aが引っ込み、圧接板204と穿孔板205が図6の状態になると、ガイド板201の間の隙間から1つのガス缶10が落下して固定板203と圧接板204の隙間に入る。この隙間は下に行くほど狭くなっているので、ガス缶10は、隙間の上方に止まる。次に、油圧シリンダ210が作動してロッド210aが伸び、まず、穿孔板205が時計方向に回転して圧接板204に重なる。このとき各穿孔ピン207は圧接板204の孔204aを貫通して反対側に突出する。この状態のままさらに時計方向に回転すると、図8に示すように、穿孔ピン207がガス缶10に突き刺さり、ガス缶10内に残留していたガスや残留液が噴出する。ガス缶10は、10aに示すように潰されるが、完全に潰された状態ではなく、半分程度潰れた状態である。
【0019】
この状態から油圧シリンダ210のロッド210aが引っ込む。すると、圧接板204と穿孔板205とは重なったままの状態で反時計方向に回転する。そして、図6に示すストッパ218に圧接板204が当接すると圧接板204の回転は止められる。穿孔板205はさらに反時計方向に回転し、穿孔ピン207がガス缶10aから抜け、圧接板204からも抜けた状態で停止する。
【0020】
すると半分ほど潰されたガス缶10aは圧接板204と固定板203との隙間の中間位置に降下する。新しいガス缶10が隙間の上方に落下する。油圧シリンダ210が作動して図8の状態になると、新しいガス缶10が10aのように潰され、前のガス缶10aは10bに示すようにもう一段潰される。つぎに図6に戻り、新しいガス缶10が隙間に入り、図8のように潰されると、最初のガス缶10は10cのように平らに潰され、缶潰し機200を通過して容器110の下方に落下する。2番目のガス缶10は10bのようになり、3番目のガス缶10は10aのようになる。以上を繰り返すことで、ガス缶10を平らな状態に押しつぶすことができる。
【0021】
ガス缶10は、薄い鋼鉄板製のものが多いが、ガスボンベを小型化したものもある。このタイプは、穿孔ピン207で穿孔することもできず、押しつぶすこともできない。そのまま放置しておくと装置を破損する可能性がある。そこで、本発明の実施例では、図示しないが、穿孔板205の位置を検知するセンサとタイマーとを設けている。そして、油圧シリンダ210に定格の圧力を加えたとき、所定時間内に穿孔板205が所定の位置まで回動しない場合、ガス缶10が押しつぶせないタイプのガス缶であると判断し、油圧シリンダ215を作動させてロッド215aを引っ込め、回動軸206を図9に示すように移動する。これによって、ガス缶10は隙間を通過して容器110の下方に落下することができ、装置を破損することを防止できる。
【特許文献1】特開2005−81386号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかしながら、前記の缶潰し機200は、押し潰せない缶を挟んだ場合、油圧シリンダ215を作動させてロッド215aを引っ込めることで押し潰していない缶を通過させるので、油圧シリンダ215に常時十分な圧力の流体を充填していなければならないという無駄があった。油圧シリンダ215を逆向きに取り付けることも可能なので、その場合は、油圧シリンダ215の流体圧を0にすることになる。しかしその場合は、ロッド215が簡単に動くことになり、通常の潰すべき缶が潰れないまま落下するという問題が生じる。
【0023】
さらに、油圧シリンダ215で隙間の間隔を変更するので、隙間の間隔が一定のものにならず、変動し易い。そのため、缶の潰しが中途半端になってしまうという問題もある。
【0024】
本発明は、このような問題を解決するために考えられたもので、缶潰し装置において、潰せない缶が検知された場合は、潰さない状態のまま、あるいは途中まで潰した状態のままで通過させることができ、しかも、潰すべき缶は、完全に潰したものだけが通過できるようにした缶潰し装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記の目的を達成するために本発明の缶潰し装置は、一端を回動自在に支持された押圧板と、該押圧板が回転することで押圧板の圧接面との間で缶を押しつぶす固定板と、前記押圧板に設けられ、該押圧板が缶に押圧されたとき缶に孔を穿設する穿孔部材と、前記押圧板の回動自在な一端を前記固定板からの距離が変更可能に支持するスライド支持部と、該スライド支持部を前記固定板から離反する方向に付勢する弾性部材と、該スライド支持部を、該スライド支持部と固定板との距離が変更可能に保持するカム部材とを有することを特徴としている。
【0026】
また、前記カム部材を前記固定板の圧接面と平行な方向に進退させて前記押圧板の回動自在に支持された一端と前記固定板との距離を変更する駆動手段を設けた構成としたり、前記押圧板が、前記固定板に面した圧接板と、該圧接板の固定板と反対側にある穿孔板とを有し、前記穿孔部材が前記圧接板に進退自在に設けられ、前記穿孔板が圧接板に押圧したとき前記穿孔部材が圧接板から突出する構成とすることができる。
【0027】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
使用済みのガス缶を缶潰し装置に供給すると、固定板と押圧板との間に挟んで缶を押圧する。このとき穿孔部材が缶に突き刺さって孔を開ける。缶の中に残留しているガスと液体とが孔から缶の外に出る。
【0028】
ガスボンベのように固い缶で、缶潰し装置では潰せない場合には、カム部材を移動して押圧板と固定板との間の距離を拡げ、途中までしか潰されていない缶や全く潰されていない缶を、その状態のままで押圧板と固定板との間を通過させる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の缶潰し装置によれば、押圧板と固定板との間の距離をカム部材で決めるので、通常は、完全に潰された缶だけが通過できるようにすることができる。また、潰せない缶の場合には、カム部材により押圧板と固定板との間の距離を拡げるので、缶潰し装置の破損を防止することができる。
【0030】
また、押圧板を圧接板と穿孔板とで構成し、穿孔部材が前記圧接板に進退自在に設けられ、前記穿孔板が圧接板に押圧したとき前記穿孔部材が圧接板から突出するようにすることで、穿孔部材に無理な力が加わるのを防止し、穿孔部材の寿命を長くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の缶潰し装置の要部構成を示す図で、(a)は通常の状態を示し、(b)は非常時の状態を示す図である。図2は、押圧板と固定板との作用を説明する図で(a)は押圧板と固定板とが開いた状態を示す図、(b)は押圧板と固定板とが閉じ始めて缶を潰し始める状態を示す図、(c)は押圧板と固定板とが閉じた状態を示す図ある。図3は押圧板を構成する圧接板の図、図4は同じく押圧板を構成する穿孔板の図である。
【0032】
押圧板300は、固定板203に対向して配置される圧接板310と、この圧接板310の固定板と反対側に設けられた穿孔板320の2枚の板から構成されている。圧接板310と穿孔板320とは、下端を共通する軸301に回動自在に支持され、穿孔板320の上方に設けられたピン321にリンク331が接続される。リンク332は一端が缶潰し装置のフレームなどに回動自在に固定されている。リンク331,332の先端同士は回動自在に接続され、この接続部にシリンダ333のロッド334が回動自在に接続されている。シリンダ333の下端は、図示しないがフレーム等にやはり回動自在に固定されている。そして、シリンダ333のロッド334が伸縮することによって、リンク331,332が回動し、押圧板300は、軸301を中心に図2の(a)から(c)に示すように回動する。このとき、シリンダ333もリンク331,332の回動に伴って揺動する。
【0033】
図3は圧接板310の図で、(a)は固定板203と反対側の方向から見た図、(b)は(a)の右側面図である。圧接板310の固定板203に対向する側に圧接面310aがある。この圧接面310aは平面ではなく段差のある面となっている。すなわち、固定板203との距離が図1や図2の上方では広く、下方では狭くなっている。圧接板310の図3の下端には、複数の軸受311があり、ここに軸301が貫通することで、回動自在に支持される。圧接板310の上方には、7本の穿孔部材312が上下2列に並んでいる。穿孔部材312は、六角形の支持部312aと先端が尖ったピン312bとから構成され、このピン312bは、圧接板310の厚さ方向に進退自在になるように支持部312aに取り付けられ、図示しない弾性部材によって、後方(固定板203から離れる方向)に常時付勢されている。圧接面310aのピン312bに対応する部分には孔が開けられており、弾性部材の付勢力に抗してピン312bを後端から押すと、ピン312bの先端が圧接面310aから突出する。
【0034】
図4は、穿孔板320の図で、(a)は固定板203側から見た図で、(b)は(a)の左側面図である。穿孔板320の図の下端には、複数の軸受322がある。これらの軸受322と、圧接板310の軸受311とは、互い違いに配置されていて、軸受311と322とを一直線上に並べ、ここに軸301が貫通することで、圧接板310と穿孔板320の2枚の板が回動自在に支持されることになる。穿孔板320は、その上方に2本の丸棒からなる押圧部材323を有する。この押圧部材323がピン312bを後端から押して先端を圧接面310aから突出させ、缶に孔を穿けるのである。
【0035】
図2に示すように、圧接板310には、間隔保持部材314と弾性部材315とが設けられている。間隔保持部材314はボルトで、中間にある1つのナットで圧接板310に固定されている。間隔保持部材314の先端は、穿孔板320を貫通し、貫通したところにダブルナットを締付て固定している。この構成によって、圧接板310と穿孔板320とは図2(c)に示す相互に密着した状態から、図2(a)に示す最も離れた状態の間で接近・離反ができるようになっている。そして、弾性部材315が圧接板310と穿孔板320とが相互に離反する方向に常時付勢している。
【0036】
図1に示すように、押圧板300は、その下端の軸301の両端をスライド支持部400で支持されている。そして、このスライド支持部400は、フレームに設けられたガイド溝401内を図の左右方向にスライド自在で、弾性部材403によって、図の左方向、すなわち、固定板203から離れる方向に付勢されている。
【0037】
軸301の先端には環状のカムフォロアー405があり、このカムフォロアー405は、板カムからなるカム部材420のカム面421上に弾性部材403によって圧接されている。カム部材420は缶潰し装置のフレームに設けられたスライド面425上を図の上下方向にスライド自在で、カム部材420の上端は流体シリンダからなる駆動手段431のロッド432に固定されている。駆動手段431の上端は缶潰し装置のフレームに固定されている。駆動手段431のロッド432が上方に向かって縮むと、カム部材420は図の上方に移動する。すると、カムフォロアー405がカム面421に沿って移動し、押圧板300が全体としてカム面421に沿って図の左右方向に移動することになる。
【0038】
次に、上記の缶潰し装置で缶を潰す方法を説明する。
初期状態は、押圧板300が、図2(a)に示す開いた状態である。そして、図5に示すように容器110内のガイド板201上に多数の缶10を載せる。ガイド板201の中央の開口202から缶潰し装置に進入した缶10は、図2(a)に示すように圧接面301aの段部に引っかかり停止する。
【0039】
図2(b)に示すようにロッド334が矢印方向に伸び、押圧板300は軸301を中心に時計方向に回転する。すると、まず、圧接板310の圧接面310aが缶10に圧接し、さらに穿孔板320がわずかに回転し、押圧部材323がピン312bの後端に接触する。缶10は若干潰れた缶10aになる。この後、穿孔板320がさらに回転することでピン312bの先端が圧接面310aから突出し、缶10に孔を穿け、内部のガスが噴出し、残留液が流出する。缶は、図2(c)に示すように中間まで潰れた缶10bとなる。
【0040】
ロッド334が縮むことで、押圧板300は反時計方向に回転し、図2(a)の状態に戻る。すると中間まで潰された缶10bは、下方に落下し、圧接面310aと固定板203とで形成するくさび形空間の下部に達する。再度ロッド334が伸びて、図2(c)の状態になると、缶10は完全に潰された缶10cとなり、次に押圧板300が図2(a)の状態に開くとき、圧接面310aと固定板203との間の隙間から下方に落下する。以上を繰り返すことで、缶10は次々と潰され、処理される。缶10から出たガスと残留液は、従来例で説明したのと同様にして処理される。
【0041】
缶10がピン207で穿孔することもできず、押しつぶすこともできない場合は、従来例と同様に押圧板300の回動位置を検知するセンサと、タイマー等によって検知する。押圧板300が所定時間経過しても図2(c)に示す位置に来ない場合や、シリンダ333に所定の圧力の流体を導入しても押圧板300が図2(c)に示す位置に来ない場合には、ガス缶10が押しつぶせないタイプであると判断する。この場合、駆動手段431を駆動し、ロッド432を上方に縮む方向に動作させる。ロッド432の先端に取り付けられたカム部材420はこれによって上昇し、弾性部材403の付勢力で押されているカムフォロアー405がカム面421に沿って移動し、押圧板300全体を図の左方向に移動させる。これによって、圧接面310aと固定板203との間の距離がdからDへと拡大され、潰せなかった缶10を潰さないままで落下させ、装置の破損を防止することができる。
【0042】
本発明は、このように押圧板300と固定板203との距離をカム部材420で規制しているので、圧接面310aと固定板203との間の距離dを正確に保持することができ、缶潰しが不十分になることを効果的に防止することができる。
【0043】
尚、本発明では、カム部材420として板カムを使用したが、他の形状のカム部材たとえば、回転式のカムを使用してもよい。また、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の缶潰し装置の要部構成を示す図で、(a)は通常の状態を示し、(b)は非常時の状態を示す図である。
【図2】押圧板と固定板との作用を説明する図で(a)は押圧板と固定板とが開いた状態を示す図、(b)は押圧板と固定板とが閉じ始めて缶を潰し始める状態を示す図、(c)は押圧板と固定板とが閉じた状態を示す図ある。
【図3】圧接板の図で、(a)は固定板と反対側の方向から見た図、(b)は(a)の右側面図である。
【図4】穿孔板の図で、(a)は固定板側から見た図で、(b)は(a)の左側面図である。
【図5】従来のガス缶の処理装置の構成を示す図である。
【図6】缶潰し機の構成を示す図である。
【図7】図6のVII−VII断面図である。
【図8】従来の缶を潰す状態を説明する図である。
【図9】缶が潰せない場合の処理の仕方を説明する図である。
【符号の説明】
【0045】
10 ガス缶
100 処理装置
110 容器
203 固定板
300 押圧板
310 圧接板
312 穿孔部材
320 穿孔板
400 スライド支持部
403 弾性部材
420 板カム(カム部材)
431 駆動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端を回動自在に支持された押圧板と、該押圧板が回転することで押圧板の圧接面との間で缶を押しつぶす固定板と、前記押圧板に設けられ、該押圧板が缶に押圧されたとき缶に孔を穿設する穿孔部材と、前記押圧板の回動自在な一端を前記固定板からの距離が変更可能に支持するスライド支持部と、該スライド支持部を前記固定板から離反する方向に付勢する弾性部材と、該スライド支持部を、該スライド支持部と固定板との距離が変更可能に保持するカム部材とを有することを特徴とする缶潰し装置。
【請求項2】
前記カム部材を前記固定板の圧接面と平行な方向に進退させて前記押圧板の回動自在に支持された一端と前記固定板との距離を変更する駆動手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の缶潰し装置。
【請求項3】
前記押圧板が、前記固定板に面した圧接板と、該圧接板の固定板と反対側にある穿孔板とを有し、前記穿孔部材が前記圧接板に進退自在に設けられ、前記穿孔板が圧接板に押圧したとき前記穿孔部材が圧接板から突出することを特徴とする請求項1又は2記載の缶潰し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−61831(P2007−61831A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−247715(P2005−247715)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(592152510)株式会社中島自動車電装 (12)