説明

缶用鋼板の製造方法

【課題】微小錆が発生しないティンフリー鋼板を提供する。
【解決手段】鋼板の表面に、めっきを施した後、化成処理を施して被膜を形成する缶用鋼板の製造方法において、化成処理後の被膜表面を、非金属陰イオン及び腐食性溶解物質を含まない洗浄水で洗浄し、微小錆の発生を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小錆が発生しない被膜を有する缶用鋼板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種の缶用素材として、クロメート被膜を施した鋼板(ティンフリー鋼板)が広く使用されているが、近年、収容する飲料、食品の多様化に伴い、溶接性、耐食性、耐錆性等の他、缶の表面となる鋼板面には、所要の色調、明度、鮮麗性を備え、かつ、缶の裏面となる鋼板面には、内容物に応じた耐内容物性を備えるティンフリー鋼板が提案されている(特許文献1〜5、参照)。
【0003】
これら鋼板は、図1に示す製造ラインにて製造され、コイルで缶メーカーへ出荷されるが、出荷直前又は途中、又は、製缶過程において、鋼板表面に微小な錆(微小錆)が発見されることがある。
【0004】
微小錆の発生頻度は少ないが、缶の表面となる鋼板面に存在すれば、その部分の色調、明度、鮮麗性を阻害し、また、缶の裏面となる鋼板面に存在すれば、その部分から異物が混入又は溶出する元凶ともなるので、鋼板の缶用素材としての商品価値を損ねることになる。
【0005】
このように、微小錆は、鋼板面上における存在は極めて小さいものであるが、鋼板の特性や商品価値を損なう存在としては極めて大きいものであるので、微小錆が発生しないティンフリー鋼板の開発が求められている。
【0006】
【特許文献1】特開平05−230694号公報
【特許文献2】特開平05−287449号公報
【特許文献3】特開平05−287591号公報
【特許文献4】特開2004−43897号公報
【特許文献5】特開2005−29809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記要求を受けとめ、微小錆が発生しないティンフリー鋼板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、微小錆の発錆を防止するためには、発錆原因を解明することが必要であると考え、微小錆の組成を鋭意分析するとともに、錆発生原因を調査した。その結果、微小錆の発生原因は、めっきの微小欠陥や、被膜表面に付着した微量物質に由来する被膜表面の劣化であることを知見した。
【0009】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
【0010】
(1) 鋼板の表面に、めっきを施した後、化成処理を施して被膜を形成する缶用鋼板の製造方法において、化成処理後の被膜表面を、非金属陰イオン及び腐食性溶解物質を含まない洗浄水で洗浄し、微小錆の発生を防止することを特徴とする缶用鋼板の製造方法。
【0011】
(2) 鋼板の表面に、めっきを施した後、化成処理を施して被膜を形成する缶用鋼板の製造方法において、鋼板を、調湿雰囲気中で巻き取り、微小錆の発生を防止することを特徴とする缶用鋼板の製造方法。
【0012】
(3) 鋼板の表面に、めっきを施した後、化成処理を施して被膜を形成する缶用鋼板の製造方法において、被膜表面を、非金属陰イオンを含まない洗浄水で洗浄し、次いで、鋼板を、調湿雰囲気中で巻き取り、微小錆の発生を防止することを特徴とする缶用鋼板の製造方法。
【0013】
(4) 前記調湿雰囲気の露点が、17℃以下であることを特徴とする前記(2)又は(3)に記載の缶用鋼板の製造方法。
【0014】
(5) 前記巻き取りの際、鋼板表面に調湿気体を吹きつけることを特徴とする前記(2)〜(4)のいずれかに記載の缶用鋼板の製造方法。
【0015】
(6) 前記めっき前の鋼板の表面を、非金属陰イオン及び腐食性溶解物質を含まない洗浄水で洗浄することを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の缶用鋼板の製造方法。
【0016】
(7) 前記非金属陰イオンが、塩素イオン(Cl-)、硫酸イオン(SO42-)、水酸イオン(OH-)の1種又は2種以上であることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載の缶用鋼板の製造方法。
【0017】
(8) 前記腐食性溶解物質が、前処理設備のスラッジ、めっき設備のスラッジ、後処理設備のスラッジの1種又は2種以上であることを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれかに記載の缶用鋼板の製造方法。
【0018】
(9) 前記洗浄水が純水であることを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれかに記載の缶用鋼板の製造方法。
【0019】
(10) 前記被膜がクロメート被膜であることを特徴とする前記(1)〜(9)のいずれかに記載の缶用鋼板の製造方法。
【0020】
(11) 前記クロメート被膜のOx−Cr付着量が、10mg/m2以上であることを特徴とする前記(10)に記載の缶用鋼板の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、被膜表面に微小錆が発生せず、商品価値の高いティンフリー鋼板を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明者は、発錆原因を解明するため、微小錆を鋭意分析調査した。
【0023】
図2(a)及び(b)に、鋼板のクロメート被膜表面に発錆した微小錆を光学顕微鏡で観察した結果を示す。微小錆は、1〜数mmの針状(L方向に長い)の錆であり、主として、鋼板の幅方向中央に発生する。
【0024】
微小錆は、経験により、高温多湿期に発生することが知られているのが、微小錆の発生原因を解明するに当り、微小錆の発生と、製造ラインのある建屋内の露点との定量的な相関を調査した。図3に、その結果を示す。微小錆の発錆は、建屋内の露点が高い7〜8月に集中していることが解る。
【0025】
このことを踏まえ、本発明者は、微小錆を、オージェ電子分光法(AES:Auger electron spectroscopy)で分析した。その結果を、図4に示す。図中に、検出した成分を、元素記号で示した。
【0026】
図4において、(a1)は、微小錆1とその周囲の最表面のスペクトルを示し、(b1)及び(c1)は、それぞれ、60秒後のスペクトル及び120秒後のスペクトルを示す。また、図4において、(a2)は、微小錆2とその周囲の最表面のスペクトルを示し、(b2)及び(c2)は、それぞれ、60秒後のスペクトル及び120秒後のスペクトルを示す。
【0027】
これらの図から、次ぎのことが解る。
【0028】
(a)微小錆1及び微小錆2で、Feと酸素(O)(いずれも錆の成分)が検出されている。即ち、微小錆は、被膜表面に存在するFeが、空気中の酸素(O)で酸化されたものである。
【0029】
(b)微小錆1及び微小錆2の周囲で、塩素(Cl)が検出されている。塩素は、鋼板中にも、空気中にも存在しないから、外的要因により導入されたものと考えられる。
【0030】
(c)微小錆1の周囲では、最表面に塩素だけが検出され、スパッタ120秒後に、SとNが検出されているが、微小錆2の周囲では、最表面にて、塩素以外のS、N、及び、Cが検出され、スパッタ120秒後にも検出されている。
【0031】
このことは、微小錆1は、塩素の存在で特性が劣化して、発錆し易くなった被膜表面に発生し、微小錆2は、塩素の他、S、N、及び、Cの存在で特性が劣化し、発錆し易くなった被膜表面に発生したことを意味している。
【0032】
塩素は洗浄水に由来し、S、N、及び、Cは、鋼板に由来するものと考えられるが、本発明者は、微小錆の発生原因を探るため、さらに、微小錆が存在しない清浄な被膜面と、微小錆が存在していた鋼板面を、錆を剥離して、AESで分析した。
【0033】
図5及び図6に、微小錆が存在しない清浄面の分析結果を、それぞれ、微小錆1のスペクトル及び微小錆2のスペクトルと対比して示す。図5及び図6において、(a0)は、微小錆が存在しない清浄面のスペクトルを示し、(b0)及び(c0)は、それぞれ、60秒後のスペクトル及び120秒後のスペクトルを示す。
【0034】
図5及び図6から、清浄面の最表面には、P、C、N等が存在するが、120秒後には全く存在せず、一方、微小錆1の近傍面では、スパッタ120秒後も、S、N及びClが存在し、また、微小錆2では、スパッタ120秒後も、S、N、C、Cr及びClが存在していることが解る。
【0035】
図7に、微小錆が存在していた鋼板面の分析結果を示す。図7(c)から、微小錆は鋼板面にまで達していることが解る。また、塩素が鋼板面にも存在し、スパッタ120秒にも検出されていることが解る。
【0036】
このことは、めっき前の洗浄で用いた洗浄水中の塩素が、微量ではあるが、めっき前の鋼板表面に付着して残留し、微小なめっき欠陥が形成され、その微小欠陥域に、化成処理により被膜が形成され、その結果、被膜表面に、洗浄水から塩素が、鋼板からS、N、C等が集中して被膜特性が劣化し、錆が発生し易い微小領域(易発錆微小領域)が形成され、そこに、錆が生成したことを示している。
【0037】
即ち、微小錆の生成は、(i)化成処理後の洗浄で用いる洗浄水中の塩素が、被膜表面に微量残留して、易発錆微小領域が形成されたこと、及び/又は、(ii)鋼板表面のめっき前の洗浄で用いる洗浄水中の塩素が、めっき前の鋼板表面に微量残留して、微小なめっき欠陥を形成し、その結果、その上に形成された被膜の表面に易発錆微小領域が形成されたことが原因である。この原因解明が、本発明の基礎をなす知見の一つである。
【0038】
ここで、図8及び図9に基づいて、微小錆が生成する過程を説明する。
【0039】
処理前原鋼板Aにめっき前の処理を施し、次いで、洗浄水で洗浄し、めっき工程9に供するめっき前鋼板11を用意する。めっき工程9でめっき4を施した後、さらに、化成処理を施して被膜5を形成し、缶用鋼板12とし、巻き取って缶用鋼板コイル12’とする。
【0040】
巻き取る前に、缶用鋼板12を洗浄するが、この時、洗浄水中に存在する非金属陰イオン6、異物7が、缶用鋼板12の被膜5の表面に付着、残留し(図9、参照)、異物残留微小領域x1が形成される(図8、参照)。異物残留微小領域x1では、時間の経過とともに、被膜特性が劣化し、易発錆微小領域x2に変化し、この領域内に、微小錆z1が発生する(図8、参照)。
【0041】
洗浄水中に存在する非金属陰イオンのうち、特に、微小錆を発生させ易いのは、塩素イオン(Cl)、硫酸イオン(SO42-)、水酸イオン(OH)である。また、腐食性溶解物質のうち、特に、微小錆を発生させ易いのは、前処理設備のスラッジ、めっき設備のスラッジ、後処理設備のスラッジである。
【0042】
スラッジは、各設備中に存在する固形物であり、薬品の不純物、電極の不純物などであり、水に溶解性のある物質である。
【0043】
鋼板の巻き取り時、缶用鋼板12の周辺の湿度が高い(即ち、露点が高い)と、鋼板間に水分の多い空気が閉じ込められる。その後、温度が低下すると、結露し、非金属陰イオン6や異物7と協働して、易発錆微小領域x2への変化と微小錆z1の生成を促進する(図8、参照)。
【0044】
また、処理前原鋼板Aにめっき前の処理を施し、次いで、洗浄水で洗浄し、めっき工程9に供するめっき前鋼板21を用意する。この時、洗浄水中の非金属陰イオン6や異物7が、めっき前鋼板21の表面に、微量ではあるが残留し、異物残留微小領域y0が形成される(図9、参照)。
【0045】
めっき工程9でめっき4を施した後、化成処理を施して被膜5を形成する時、異物残留微小領域y0には、めっき4が適正になされず、めっき欠陥微小領域y1が形成される(図8、参照)。
【0046】
化成処理により被膜を形成した缶用鋼板22を洗浄し、巻き取って缶用鋼板コイル22’とするが、めっき欠陥微小領域y1に形成された被膜5は、時間の経過とともに、易発錆微小領域y2に変化し、この領域内に、微小錆z2が発生する(図8、参照)。
【0047】
巻き取り時、缶用鋼板12の周辺の露点が高い(即ち、露点が高い)と、鋼板間に水分の多い空気が閉じ込められる。その後、温度が低下すると、結露し、非金属イオン6や異物7と協働して、易発錆微小領域y2へと変化して微小錆z1の生成を促進する。
【0048】
したがって、本発明は、缶用鋼板の被膜表面を、塩素イオン(Cl)、硫酸イオン(SO42-)、水酸イオン(OH)を含まない洗浄水で洗浄し、湿度を調節した調湿雰囲気中で、缶用鋼板を巻き取ることが必要である。この点が、本発明の第2の特徴である。
【0049】
調湿雰囲気は、露点を調整して形成するが、本発明者は、露点の調整と発錆との関係を確認するため、浄水で洗浄したティンフリー鋼板と純水で洗浄したティンフリー鋼板を用いて、次の試験を行った。
【0050】
250mm×250mm×0.20mmのティンフリー鋼板を6枚、露点を調整した空気中で重ね合せて梱包し試験体とした。この試験体に、油圧ジャッキで加圧し、試験室内に保管し、錆発生の有無、及び、錆個数を定期的に観察した。図10に、試験で生成した微小錆を示す。図11に、試験結果の、露点と発錆までの日数との関係を示す。
【0051】
露点を25℃に調整した空気中で梱包した試験体の場合、9日後に、浄水で洗浄したティンフリー鋼板の被膜表面に、図10に示すような錆が発生した。一方、純水で洗浄したティンフリー鋼板の被膜表面には、9日以降も錆は発生しなかった。
【0052】
露点を15℃に調整した空気中で梱包した試験体の場合、9日後も、浄水で洗浄したティンフリー鋼板の被膜表面にも、純水で洗浄したティンフリー鋼板の被膜表面にも錆は発生しなかったし、9日以降も錆は発生しなかった。
【0053】
図11から、鋼板と鋼板の隙間に閉じ込められる空気の露点が、微小錆発生に、大きく影響することが解る。即ち、洗浄水として、塩素を含む浄水を使用した場合でも、鋼板周囲の露点を低くすれば、微小錆は発生しない。
【0054】
また、洗浄水として、塩素を含む浄水に替わり、塩素を含まない純水を使用すると、露点を低くしなくても、錆の発生を防止することができる。
【0055】
このことを踏まえ、本発明では、鋼板の巻き取り時における鋼板周辺の雰囲気の露点を、製造ラインで用いる洗浄水の種類に応じて、適宜設定する。また、微小錆の発生には、鋼板と鋼板の隙間に閉じ込められる空気の露点が大きく影響するから、巻き取り時、鋼板の表面に、調湿した空気等の調湿気体を吹付けながら巻き取ってもよい。
【0056】
微小錆の発生は、被膜の厚さとも関係するので、本発明者は、微小錆が発生しない最小限の被膜厚さを、ティンフリー鋼板を用いて調査した。
【0057】
ティンフリー鋼板の被膜を形成するOx−Cr層は、硫酸イオン(SO42-)やFの残留物質を含み、水が吸着し、透過し易い性質を有しているので、錆の発生を防止するためには、所要の厚さが必要である。
【0058】
化成処理時、Ox−Cr付着量を変えて被膜を形成し、浄水で洗浄した鋼板を、温度:30℃、相対湿度:80%、露点:26℃の湿気槽に放置し、被膜表面に発生する錆の個数を測定した。その結果を、図12に示す。
【0059】
図12から、10mg/m2以上のOx−Crがめっき層に付着して被膜を形成すれば、浄水で洗浄した鋼板でも、錆の発生を大きく抑制できることが解る。
【0060】
このことを踏まえ、本発明では、Ox−Cr付着量を、好ましくは10mg/m2以上とする。なお、化成処理を施すめっき鋼板は、特定の鋼板に限定されない。
【実施例】
【0061】
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例の条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
【0062】
(実施例)
製造ラインで本発明を実施し、錆発生の有無と露点の関係を調査し、本発明の効果を確認した。
【0063】
その結果を、図13に示す。図13(b)は、洗浄水として純水を使用し、巻取り機周囲の雰囲気の露点を調整した場合における錆発生の有無と露点の関係を示し、図13(c)は、巻取り機近傍の露点を調整した場合における錆発生の有無と露点の関係を示す。
【0064】
比較のため、図13(a)に、従来の巻き取り環境における錆発生の有無と外気露点の関係を示した。従来の巻き取り環境においては、外気露点が20℃以上の時、被膜形成後5日経過した時点で、微小錆が発生している。
【0065】
これに対し、巻取り機周囲の雰囲気の露点を調整した場合は、露点が25℃以上の時、被膜形成後8日経過した時点で、微小錆が発生している。このように、微小錆が発生する臨界露点及び錆発生までの臨界日数は、高露点側及び高日数側へ移動している(図13(b)、参照)。
【0066】
巻取り機近傍の露点を17℃以下に調整すると、被膜表面に微小錆は発生しない(図13(c)、参照)。
【産業上の利用可能性】
【0067】
前述したように、本発明によれば、被膜表面に微小錆が発生しないティンフリー鋼板を製造することができる。したがって、本発明は、鋼板製造産業の他、製缶産業においても利用可能性が大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】めっき鋼板の製造ラインを示す図である。
【図2】(a)、(b)ともに、鋼板のクロメート被膜表面に発錆した微小錆を光学顕微鏡で観察した結果を示す図である。
【図3】製造ラインのある建屋内の露点と微小錆の発生時期の関係を示す図である。
【図4】微小錆をオージェ電子分光法(AES)で分析した結果を示す図である。(a1)は、微小錆1とその周囲の最表面のスペクトルを示し、(b1)及び(c1)は、それぞれ、60秒後のスペクトル及び120秒後のスペクトルを示す。(a2)は、微小錆2とその周囲の最表面のスペクトルを示し、(b2)及び(c2)は、それぞれ、60秒後のスペクトル及び120秒後のスペクトルを示す。
【図5】微小錆が存在しない清浄面をAESで分析した結果を、微小錆1のスペクトルと対比して示す図である。(a0)は、微小錆が存在しない清浄面のスペクトルを示し、(b0)及び(c0)は、それぞれ、60秒後のスペクトル及び120秒後のスペクトルを示す。(a1)は、微小錆1の最表面のスペクトルを示し、(b1)及び(c1)は、それぞれ、60秒後のスペクトル及び120秒後のスペクトルを示す。
【図6】微小錆が存在しない清浄面をAESで分析した結果を、微小錆2のスペクトルと対比して示す図である。(a0)は、微小錆が存在しない清浄面のスペクトルを示し、(b0)及び(c0)は、それぞれ、60秒後のスペクトル及び120秒後のスペクトルを示す。(a2)は、微小錆2の最表面のスペクトルを示し、(b2)及び(c2)は、それぞれ、60秒後のスペクトル及び120秒後のスペクトルを示す。
【図7】微小錆が存在していた鋼板面をAESで分析した結果を示す図である。
【図8】微小錆が生成する過程を説明する図である。
【図9】缶用鋼板の被膜の構造を模式的に示す図である。
【図10】試験で生成した微小錆を示す図である。
【図11】露点と発錆までの日数との関係を示す図である。
【図12】Ox−Crの付着量と錆発生との関係を示す図である。
【図13】錆発生の有無と露点の関係を示す図である。(a)は、従来の巻き取り環境における錆発生の有無と外気露点の関係を示し、(b)は、洗浄水として純水を使用し、巻取り機周囲の雰囲気の露点を調整した場合における錆発生の有無と露点の関係を示し、(c)は、巻取り機近傍の露点を調整した場合における錆発生の有無と露点の関係を示す。
【符号の説明】
【0069】
1、2 処理前原鋼板
1、21 めっき前鋼板
2、22 缶用鋼板
2’、22’ 缶用鋼板コイル
3、23 巻き戻し缶用鋼板
3 被膜
4 めっき
5 被膜
6 非金属陰イオン
7 異物
8 残留物質
9 めっき工程
1、y0 異物残留微小領域
2、y2 易発錆微小領域
1 めっき欠陥微小領域
1、z2 微小錆

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板の表面に、めっきを施した後、化成処理を施して被膜を形成する缶用鋼板の製造方法において、化成処理後の被膜表面を、非金属陰イオン及び腐食性溶解物質を含まない洗浄水で洗浄し、微小錆の発生を防止することを特徴とする缶用鋼板の製造方法。
【請求項2】
鋼板の表面に、めっきを施した後、化成処理を施して被膜を形成する缶用鋼板の製造方法において、鋼板を、調湿雰囲気中で巻き取り、微小錆の発生を防止することを特徴とする缶用鋼板の製造方法。
【請求項3】
鋼板の表面に、めっきを施した後、化成処理を施して被膜を形成する缶用鋼板の製造方法において、被膜表面を、非金属陰イオンを含まない洗浄水で洗浄し、次いで、鋼板を、調湿雰囲気中で巻き取り、微小錆の発生を防止することを特徴とする缶用鋼板の製造方法。
【請求項4】
前記調湿雰囲気の露点が、17℃以下であることを特徴とする請求項2又は3に記載の缶用鋼板の製造方法。
【請求項5】
前記巻き取りの際、鋼板表面に調湿気体を吹きつけることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の缶用鋼板の製造方法。
【請求項6】
前記めっき前の鋼板の表面を、非金属陰イオン及び腐食性溶解物質を含まない洗浄水で洗浄することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の缶用鋼板の製造方法。
【請求項7】
前記非金属陰イオンが、塩素イオン(Cl-)、硫酸イオン(SO42-)、水酸イオン(OH-)の1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の缶用鋼板の製造方法。
【請求項8】
前記腐食性溶解物質が、前処理設備のスラッジ、めっき設備のスラッジ、後処理設備のスラッジの1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の缶用鋼板の製造方法。
【請求項9】
前記洗浄水が純水であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の缶用鋼板の製造方法。
【請求項10】
前記被膜がクロメート被膜であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の缶用鋼板の製造方法。
【請求項11】
前記クロメート被膜のOx−Cr付着量が、10mg/m2以上であることを特徴とする請求項10に記載の缶用鋼板の製造方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図2】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−240094(P2008−240094A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−84315(P2007−84315)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】