説明

缶製造設備における缶転倒防止装置

【課題】 未吸着缶が次工程の搬送路の始端に衝突して前のめり状態に傾いて転倒することなく次工程入口の搬送路に乗り移ることができ、周囲の正常缶を転倒させることのない缶製造設備における缶転倒防止装置を提供する。
【解決手段】 缶製造設備における缶洗浄工程出口の搬送路1に続く次工程入口の搬送路2の搬送方向後方に、吸着搬送装置10に吸着されている複数の正常缶C1に抱持された未吸着缶C2の下端に当接する未吸着缶せり上げ部としてのローラー7が設けられている。このローラー7によって、前記未吸着缶C2の下端高さ位置が前記正常缶C1の下端高さ位置に揃えられ、未吸着缶C2が次工程入口の搬送路2上で前のめり状態に傾いて転倒することなく乗り移ることができるので、正常缶C1の転倒を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶製造設備における缶転倒防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料缶の缶製造設備において、洗浄工程を経て所期する洗浄が行われた飲料缶(以下、「正常缶」と呼ぶ)は、缶底を上にした天地逆さの起立姿勢状態で上方から吸着搬送装置の吸着搬送ベルトに吸着されて、洗浄工程出口の搬送路から次工程入口の搬送路へと搬送される。
【0003】
一方、前記洗浄工程において転倒することによって所期する洗浄が行われなかった飲料缶は不良缶(以下、「転倒不良缶」と呼ぶ。)として、洗浄工程出口の搬送路と次工程入口の搬送路との間に設けられた転倒不良缶排除口から排除されるものとなされている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−58851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記正常缶の中にも、希に前記洗浄工程出口の搬送路上で起立姿勢を保つことができずに少し傾き、そのために前記吸着搬送ベルトに吸着されることのない飲料缶が発生することがある。
【0006】
このような飲料缶は、前記転倒不良缶とは異なり所期する洗浄は行われているという意味では、正常缶の一種ではあるが、吸着搬送ベルトに吸着され得る通常の正常缶と区別するために、以下、「未吸着缶」と呼ぶことにする。
【0007】
このような未吸着缶は、吸着搬送ベルトによって直接搬送されないが、吸着搬送ベルトに吸着された複数の正常缶に抱持されるように宙づり状態となって洗浄工程出口の搬送路から次工程入口の搬送路へと搬送されるものである。
【0008】
図6(イ)及び(ロ)は、前記未吸着缶C2の搬送状態を示すもので、複数の正常缶C1に抱持された未吸着缶C2の下端が、周囲の正常缶C1の下端より下方位置に位置している。
【0009】
而して、未吸着缶C2を抱持している正常缶C1の中でも、未吸着缶C2よりも搬送方向前方にある正常缶C1は、図7に示すように適切に次工程入口の搬送路2上に乗り移ることができるのである。
【0010】
しかし、次工程入口の搬送路2が、搬送方向に直交する軸心を有する直径16mm程度の複数のローラーが並列されてなるスリップトルクコンベアからなるものである場合、未吸着缶C2は、その下端がスリップトルクコンベアからなる搬送路2の始端に衝突して、図7に示すように前のめり状態に傾いて転倒してしまい、次工程の搬送路2に適切に乗り移ることができない。
【0011】
また、未吸着缶C2がこのように前のめり状態に傾くとその周囲の正常缶C1及び後続の正常缶C1をも傾けてしまい、それらを転倒させてしまうという事態を引き起こすことになってしまう。
【0012】
本発明は、このような技術的背景に鑑みてなされたもので、未吸着缶が次工程の搬送路の始端に衝突して前のめり状態に傾いて転倒することなく次工程入口の搬送路に乗り移ることができ、周囲の正常缶を転倒させることのない缶製造設備における缶転倒防止装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明の缶製造設備における缶転倒防止装置は、下記[1]〜[7]の構成を有する。
【0014】
[1] 缶洗浄工程出口の搬送路と、該搬送路に続く次工程入口のスリップトルクコンベアからなる搬送路と、缶を前記缶洗浄工程出口の搬送路から次工程入口の搬送路へと搬送する吸着搬送装置と、前記両搬送路の間にあって転倒不良缶を排除する転倒不良缶排除口とを備え、
前記次工程入口の搬送路の搬送方向後方に、未吸着缶せり上げ部が設けられ、該未吸着缶せり上げ部によって未吸着缶の下端が次工程入口の搬送路の高さ位置までせり上げられるものとなされていることを特徴とする缶製造設備における缶転倒防止装置。
【0015】
[2] 前記未吸着缶せり上げ部が、前記次工程入口の搬送路の搬送方向に直交する軸心を有する円筒体であり、その上端高さ位置が前記次工程入口の搬送路の高さ位置と同レベルにあるものと設定されている前項1に記載の缶製造設備における未吸着缶の下端転倒防止装置。
【0016】
[3] 前記円筒体がローラーである前項2に記載の缶製造設備における缶転倒防止装置。
【0017】
[4] 前記円筒体と次工程入口の搬送路との間にデッドプレートが設けられている前項2又は前項3に記載の缶製造設備における缶転倒防止装置。
【0018】
[5] 前記未吸着缶せり上げ部が、前記搬送方向に対して後ろ下がりの傾斜板であり、その上端高さ位置が前記次工程入口の搬送路の高さ位置と同レベルにあるものと設定されている前項1に記載の缶製造設備における缶転倒防止装置。
【0019】
[6] 前記傾斜板は、裏面に補強リブが設けられている前項5に記載の缶製造設備における缶転倒防止装置。
【0020】
[7] 前記傾斜板は、表面に鏡面仕上げが施されている前項5又は前項6に記載の缶製造設備における缶転倒防止装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0022】
[1]の発明では、缶洗浄工程出口の搬送路に続く次工程入口のスリップトルクコンベアからなる搬送路の搬送方向後方に、未吸着缶せり上げ部が設けられ、該未吸着缶せり上げ部によって未吸着缶の下端が次工程入口の搬送路の高さ位置までせり上げられるものとなされているので、未吸着缶が次工程入口の搬送路の始端に衝突して前のめり状態に傾いて転倒することなく次工程入口の搬送路にスムーズに乗り移ることができ、周囲の正常缶を転倒させてしまうような事態を回避できる。
【0023】
[2]の発明では、未吸着缶せり上げ部が、次工程入口の搬送路の搬送方向に直交する軸心を有する円筒体であり、その上端高さ位置が次工程入口の搬送路の高さ位置と同レベルにあるものと設定されているので、未吸着缶の下端部を円筒体の外周面に沿わせてせり上がらせることができ、未吸着缶の次工程入口の搬送路への乗り移りがスムーズに行われる。
【0024】
[3]の発明では、円筒体がローラーであるから、円筒体外周面と未吸着缶下端との間での摩擦抵抗力が減少し、未吸着缶の次工程入口の搬送路への乗り移りがより一層スムーズに行われる。
【0025】
[4]の発明では、円筒体と次工程入口の搬送路との間にデッドプレートが設けられているので、円筒体により所期する高さ位置にまでせり上げられた未吸着缶の下端が円筒体と次工程入口の搬送路との間に傾きながら沈み込んでしまって、未吸着缶が次工程入口の搬送路の始端に衝突して前のめり状態に傾いて転倒するという事態を回避することができる。
【0026】
[5]の発明では、未吸着缶せり上げ部が、搬送方向に対して後ろ下がりの傾斜板であり、その上端高さ位置が次工程入口の搬送路の高さ位置と同レベルにあるものと設定されているので、未吸着缶の下端を傾斜板の表面に沿わせて次工程入口の搬送路の高さ位置にまでせり上がらせることができ、未吸着缶の次工程入口の搬送路への乗り移りがスムーズに行われる。
【0027】
[6]の発明では、傾斜板は、裏面に補強リブが設けられているので、傾斜板の強度が確保され、傾斜板に変形部が生じ難いので、未吸着缶の下端が変形部に引っ掛かって前記次工程入口の搬送路に適切に乗り移れなくなるという事態を回避できる。
【0028】
[7]の発明では、傾斜板は、表面に鏡面仕上げが施されているので、傾斜板と未吸着缶下端との間での摩擦抵抗力が減少し、未吸着缶の次工程入口の搬送路への乗り移りがより一層スムーズに行われる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る缶製造設備における缶転倒防止装置の第1実施形態の概略説明図である。
【図2】同実施形態において、未吸着缶が未吸着缶せり上げ部によってせり上げられる直前の概略説明図である。
【図3】同実施形態において、未吸着缶が未吸着缶せり上げ部によってせり上げられて次工程の搬送路に乗り移る直前の概略説明図である。
【図4】本発明に係る缶製造設備における缶転倒防止装置の第2実施形態において、未吸着缶が未吸着缶せり上げ部によってせり上げられる直前の概略説明図である。
【図5】同第2実施形態において、未吸着缶が未吸着缶せり上げ部によってせり上げられて次工程の搬送路に乗り移る途上の概略説明図である。
【図6】(イ)は、従来の缶製造設備における缶洗浄工程出口の搬送路から次工程入口の搬送路への搬送途上の未吸着缶の宙吊り状態を示す概略説明図、(ロ)は、(イ)のVI−VI線断面図である。
【図7】従来の缶製造設備における缶洗浄工程出口の搬送路から次工程入口の搬送路への搬送途上において未吸着缶が傾いた状態を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明に係る缶製造設備における缶転倒防止装置の実施形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0031】
図1〜図3は、缶転倒防止装置の第1実施形態を示すもので、従来の缶製造設備と同様に、缶洗浄工程出口の搬送路1と、該搬送路1に続く次工程入口の搬送路2と、正常缶C1を前記缶洗浄工程出口の搬送路1から次工程入口の搬送路2へと搬送する吸着搬送装置10と、前記両搬送路の間にあって転倒不良缶C3を排除する転倒不良缶排除口5とを備えている。
【0032】
前記缶洗浄工程出口の搬送路1は、気液共に流通可能なメッシュベルトコンベアからなり、前記吸着搬送装置10は、底部の全面に多数の小孔を有するチャンバー11と、チャンバー11の底部に沿って循環走行し全面に多数の小孔を有する吸着ベルト12と、前記チャンバー11に連通しチャンバー11を負圧にするブロア13とを備えていることは従来と同様である。
【0033】
前記吸着ベルト12は、チャンバー11下方の負圧領域を通過する間に正常缶C1を吸着し、前記負圧領域を通過して負圧状態が解除されると吸着力を失い、正常缶C1を自動的に次工程入口の搬送路2上に落下させるものである。
【0034】
従って、吸着ベルト12の吸着力は、缶洗浄工程出口の搬送路1及び次工程の搬送路2上においては、正常缶C1の下端を搬送路1に接触しない程度に搬送路1から僅かに浮上させ、缶洗浄工程出口の搬送路1と次工程入口の搬送路2との間の搬送路が存在しない領域においては、正常缶C1を宙づりすることが出来れば足りるものである。
【0035】
この実施形態において、前記次工程入口の搬送路2はスリップトルクコンベアからなり、その搬送方向後方に、未吸着缶C2の未吸着缶せり上げ部としてのローラー7が設けられている。
【0036】
スリップトルクコンベア2を構成する各ローラー2aの直径は、16mmである。
【0037】
前記未吸着缶せり上げ部としてのローラー7は、前記次工程入口の搬送路2の搬送方向に直交する軸心を有し、その上端高さ位置が前記次工程入口の搬送路2の高さ位置と同レベルにあるものと設定されている。
【0038】
このローラー7の上端高さ位置は、厳密に前記次工程入口の搬送路2の高さ位置と同レベルであることが好ましいが、未吸着缶C2が転倒することなく前記次工程入口の搬送路2に適切に乗り移ることができれば、多少の高低は許容される。
【0039】
また、ローラー7の周速度は、せり上げられた未吸着缶C2をローラー7から次工程入口の搬送路2へスムーズに搬送するために、吸着搬送ベルト12の移動速度に合わせておくことが好ましい。
【0040】
実施形態の缶転倒防止装置が採用された缶製造設備においては缶胴径53mm〜66mm、缶高さ93mm〜168mmの缶が製造されるものであるところ、未吸着缶C2の下端が正常缶C1の下端よりズレ落ちた距離(長さ)は、30mm程度に収まっていることがわかったので、前記ローラー7の半径は、30mmあれば十分であるが、この実施形態では44mmに設定され、予想外に下端が正常缶C1の下端よりズレ落ちた未吸着缶C2にも対応できるものとなされている。
【0041】
ローラー7と缶洗浄工程出口の搬送路1の前端1aとの間の距離d1は、転倒不良缶C3を確実に排除するために、缶高さ+15mmに設定されている。
【0042】
ローラー7の表面は、綾目のローレット加工が施され、未吸着缶C2の下端にダメージを与えることなくかつ正常な高さ位置へせり上げるための摩擦抵抗力が付与されている。
【0043】
また、ローラー7と次工程入口の搬送路2との間には、正常缶C1や正常なレベルに戻った未吸着缶C2の下端が挟まらないように、搬送路2及びローラー7の高さレベルと同じ高さレベルのデッドプレート8が設けられている。
【0044】
この第1実施形態の缶転倒防止装置を備えた缶製造設備における缶洗浄工程出口の搬送路1から次工程入口の搬送路2への飲料缶の搬送動作について説明すると、先ず、図1に示すように、缶洗浄工程出口の搬送路1上を矢印の方向に沿って搬送されてきた正常缶C1は、搬送路1末端部において、その上方にある吸着搬送装置10の吸着搬送ベルト12に吸着され、図面上時計回りに走行する吸着搬送ベルト12によって、次工程の搬送路2上まで搬送される。
【0045】
前記洗浄工程において転倒した転倒不良缶C3は、缶洗浄工程出口の搬送路1上方の吸着搬送ベルト12に吸着されないので、図1に示すように、転倒不良缶排除口5に落下することにより排除される。
【0046】
次工程の搬送路2上に搬送された正常缶C1は、吸着搬送ベルト12がチャンバー11の下方にある負圧領域においては、吸着搬送ベルト12に吸着されているが、吸着搬送ベルト12が前記負圧領域を通過すると前記負圧による吸着が解除され、正常缶C1は、搬送路2上に落下される。
【0047】
この搬送路2上に落下された正常缶C1は、搬送路2を形成するスリップトルクコンベアにより次工程に搬送される。
【0048】
前記洗浄工程において正常に洗浄されたものとみなされるが吸着ベルト12に吸着されることのない未吸着缶C2は、適切に吸着された周囲の複数の正常缶C1に抱持されるようにして次工程入口の搬送路2へと搬送されることになる。その途上は、図6に示す従来のものと同様であるので、図示省略する。
【0049】
図2は、前記複数の正常缶C1に抱持された未吸着缶C2が次工程入口の搬送路2に差し掛かった状態を示すもので、正常缶C1の下端高さ位置より低位にある未吸着缶C2の下端が缶の未吸着缶せり上げ部としてのローラー7に先ず当接する。
【0050】
未吸着缶2は、その下端がローラー7に当接した後、周囲の正常缶C1と共に搬送されながら、ローラー7の外周面に沿って徐々にせり上げられてローラー7の最高高さ位置に到達する。この高さ位置は、次工程入口の搬送路2の高さと同レベルでもある。
【0051】
そして、ローラー7と搬送路2との間には、ローラー7と搬送路2との隙間を閉塞し、かつ搬送路2及びローラー7と同じ高さ位置にあるデッドプレート8が設けられているので、ローラー7を通過した未吸着缶C2は、デッドプレート8上をスムーズに通過する。
【0052】
デッドプレート8上を通過すると、未吸着缶C2は正常缶C1に抱持されたまま搬送路2上に移動し、さらに正常缶C1の吸着状態が解除される位置にまで吸着搬送ベルトが走行すると、未吸着缶C2は、正常缶C2による抱持状態から解放され、正常缶として搬送路2上に起立し、他の正常缶C1と共に、次工程に搬送される。
【0053】
このように、未吸着缶C2の下端がせり上げられることによって、未吸着缶C2が次工程入口の搬送路2の始端に衝突して傾いて転倒することがない。
【0054】
そして、未吸着缶C2が転倒することがないので、その周囲の正常缶C1や後続の正常缶C1が未吸着缶C2の転倒につられて転倒するという事態が発生しない。
【0055】
図4及び図5は、本発明に係る缶製造設備における缶転倒防止装置の第2実施形態を示すもので、未吸着缶せり上げ部として、前記次工程入口のスリップトルクコンベアからなる搬送路2の搬送方向に対して後ろ下がりの傾斜板17が採用されている。
【0056】
この第2実施形態の缶転倒防止装置が採用された缶製造設備は、前記未吸着缶せり上げ部が前記傾斜板17であること及び未吸着缶せり上げ部と次工程入口の搬送路2との間にデッドプレートが存在しないことを除いては第1実施形態の缶転倒防止装置が採用された缶製造設備と同様であるので、以下の説明において、同じ部位については同符号を用いると共に詳細な説明を省略する。
【0057】
前記傾斜板17は、その上端高さ位置が前記次工程入口の搬送路2の高さ位置と同レベルに設定される一方、下端高さ位置は、前記上端高さ位置から30mm下がった位置に設定されている。
【0058】
また、傾斜板17と前記洗浄工程出口の搬送路1先端との距離d2は、転倒不良缶C3を確実に排除するために、缶高さ+15mmに設定されている。
【0059】
傾斜板17の表面は、缶との摩擦抵抗を小さくするためにバフ研磨鏡面仕上げが施される一方、傾斜板17の裏面は、傾斜板17の平坦度を保つために、リブが設けられ強度補強がなされている。
【0060】
この第2実施形態における缶洗浄工程出口の搬送路1から次工程入口の搬送路2への飲料缶の搬送動作について説明すると、第1実施形態のときと同様に、未吸着缶C2は、適切に吸着された周囲の複数の正常缶C1に抱持されるようにして次工程入口の搬送路2へ向かって搬送される。
【0061】
そして、図4に示すように、未吸着缶C2が次工程入口の搬送路2に差し掛かると、正常缶C1の下端高さ位置より低位にある未吸着缶C2の下端が缶の未吸着缶せり上げ部としての傾斜板17の表面に先ず当接する。
【0062】
未吸着缶2は、その下端が傾斜板17に当接した後、周囲の正常缶C1と共に搬送されながら、傾斜板17の表面に沿って徐々にせり上げられて、その下端が傾斜板17の上端に到達する。
【0063】
傾斜板17の表面は、バフ研磨鏡面仕上げが施されているので、前記せり上げもスムーズに行われる一方、傾斜板17の裏面は、リブによって強度補強がなされ、傾斜板17の平坦度が保たれているので、平坦度が損なわれることによる未吸着缶C2せり上げの妨げも起こらない。
【0064】
この傾斜板17上端高さ位置は、次工程入口の搬送路2の高さ位置と同レベルでもあるので、図5に示すように、未吸着缶C2は転倒することなく、次工程入口の搬送路2上に適切に乗り移ることができる。
【0065】
このように、未吸着缶C1の下端がせり上げられることによって、未吸着缶C2が次工程入口の搬送路2の始端に衝突して傾いて転倒することがない。
【0066】
そして、未吸着缶C2が転倒することがないので、その周囲の正常缶C1や後続の正常缶C1が未吸着缶C2の転倒につられて転倒するという事態が発生しない。
【符号の説明】
【0067】
C1:正常缶
C2:未吸着缶
C3:転倒不良缶
1:缶洗浄工程出口の搬送路
2:次工程入口の搬送路
5:転倒不良缶排除口
7:(未吸着缶せり上げ部としての)ローラー
8:デッドプレート
10:吸着搬送装置
17:(未吸着缶せり上げ部としての)傾斜板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶洗浄工程出口の搬送路と、該搬送路に続く次工程入口のスリップトルクコンベアからなる搬送路と、缶を前記缶洗浄工程出口の搬送路から次工程入口の搬送路へと搬送する吸着搬送装置と、前記両搬送路の間にあって転倒不良缶を排除する転倒不良缶排除口とを備え、
前記次工程入口の搬送路の搬送方向後方に、未吸着缶せり上げ部が設けられ、該未吸着缶せり上げ部によって未吸着缶の下端が次工程入口の搬送路の高さ位置までせり上げられるものとなされていることを特徴とする缶製造設備における缶転倒防止装置。
【請求項2】
前記未吸着缶せり上げ部が、前記次工程入口の搬送路の搬送方向に直交する軸心を有する円筒体であり、その上端高さ位置が前記次工程入口の搬送路の高さ位置と同レベルにあるものと設定されている請求項1に記載の缶製造設備における缶転倒防止装置。
【請求項3】
前記円筒体がローラーである請求項2に記載の缶転倒防止装置。
【請求項4】
前記円筒体と次工程入口の搬送路との間にデッドプレートが設けられている請求項2又は請求項3に記載の缶製造設備における缶転倒防止装置。
【請求項5】
前記未吸着缶せり上げ部が、前記搬送方向に対して後ろ下がりの傾斜板であり、その上端高さ位置が前記次工程入口の搬送路の高さ位置と同レベルにあるものと設定されている請求項1に記載の缶製造設備における缶転倒防止装置。
【請求項6】
前記傾斜板は、裏面に補強リブが設けられている請求項5に記載の缶製造設備における缶転倒防止装置。
【請求項7】
前記傾斜板は、表面に鏡面仕上げが施されている請求項5又は請求項6に記載の缶製造設備における缶転倒防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−1472(P2013−1472A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131758(P2011−131758)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000186854)昭和アルミニウム缶株式会社 (155)
【Fターム(参考)】