説明

缶詰め方法

【課題】残留酸素濃度を非常に低くできる固形物の缶詰め方法を提供すること。
【解決手段】缶詰め方法は、所定量の固形物を缶に詰める第1のステップ、缶の底部近傍まで差し込まれたニードルの先端から所定量の不活性ガスまたは炭酸ガスを噴出させる第2のステップ、缶の上部空間に所定量の液体窒素を滴下する第3のステップ、缶に蓋を乗せ、巻き締めによって密封する第4のステップを含む。第3のステップにおいて液体窒素を分散して滴下する点にも特徴がある。従来の方法と比べて残留酸素濃度を極めて低くすることができ、酸化による品質劣化を防止できるので長期保存可能であると共に害虫の繁殖も防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶詰め方法に関するものであり、特に残留酸素濃度を非常に低くできる穀類などの固形物の缶詰め方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生米等の精米後の穀類は、通常の保存方法で気温が高い場合は酸化が進行し、1ケ月程度でも味が低下する。そこで、従来、米などの穀物を始めとする、空気中の酸素による酸化の影響を受けやすい固形物(有形の食材)あるいは機能性素材(不飽和脂肪酸、特に3価のαリノレン酸やEPA(エイコサペンタエン酸)などを主体にした固形状栄養補助食品)等を缶やペットボトルなどの容器に密封して保存する方法が提案されている。この際、固形物の酸化を防止するため、および容器内部を陽圧(大気圧より高い圧力)に保つことによって容器の変形を防止するために、内容物が充填された容器を蓋で密封する直前に容器の上方から液体窒素を滴下し、気化する前に密封する方法が提案されている。下記の特許文献1には直接に炊飯可能なように内側に米穀の充填線と水の注入線が記された缶を使用し、無洗米にした米穀類が液体窒素注入によって密封収納された煮炊き用米穀入り金属缶が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−103771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したような従来の液体滴下方法においては、所望の陽圧となる充填済み容器を製造することは出来るが、固形物の上部から液体窒素を滴下した場合、固形物の間隙に存在する空気(酸素)の一部は置換されずに残留し、残留酸素濃度が充填直後で3〜6%程度と、十分な酸素置換効果を得ることが出来ない。そして、残留酸素濃度が充填直後で3〜6%程度では内容物が酸化してしまうことに加えて害虫が繁殖する恐れもあるという問題点があった。
【0005】
このため、酸素濃度を十分に下げるためには大量の液体窒素を滴下する必要があるが、この方法では大量の液体窒素が必要となり、効率が悪いと共に、一部の食材においては長時間液体窒素に触れることによって食材の割れ等が生じることがあるという問題点があった。
本発明は、上記した従来の問題点を解決し、残留酸素濃度を非常に低くできる固形物の缶詰め方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の缶詰め方法は、所定量の固形物を缶に詰める第1のステップ、前記缶の底部近傍まで差し込まれたニードルの先端から所定量の不活性ガスまたは炭酸ガスを噴出させる第2のステップ、前記缶の上部空間に所定量の液体窒素を滴下する第3のステップ、前記缶に蓋を乗せ、巻き締めによって密封する第4のステップを含むことを最も主要な特徴とする。
【0007】
また、前記した缶詰め方法において、前記第2のステップの後、前記缶の上方から下に向かって不活性ガスまたは炭酸ガスを噴射させながら前記第3のステップを行う液体窒素滴下装置の下部まで移動させる点にも特徴がある。また、前記した缶詰め方法において、前記第2のステップの後、搬送路に沿って、前記缶の上方から下に向かって不活性ガスまたは炭酸ガスを噴射させるためのダクトおよび少なくとも前記缶の上部近傍を覆うカバーを設けた点にも特徴がある。また、前記した缶詰め方法において、前記第3のステップの後、前記缶の上方から下に向かって不活性ガスまたは炭酸ガスを噴射させながら前記第4のステップを行う巻き締め装置まで移動させる点にも特徴がある。
【0008】
また、前記した缶詰め方法において、前記液体窒素を滴下する第3のステップにおいて液体窒素を分散して滴下する点にも特徴がある。また、前記した缶詰め方法において、前記第2のステップの後、前記缶に蓋を乗せて前記第3のステップを行う液体窒素滴下装置の下部まで移動させ、液体窒素の滴下の直前に前記蓋を取る点にも特徴がある。また、前記した缶詰め方法において、前記固形物は生米であり、前記第2のステップにおけるガスは炭酸ガス(二酸化炭素)であり、前記第3のステップにおける滴下する液体窒素の量は、前記生米によって吸収される前記炭酸ガスの量を考慮して、所定時間経過後に所望の陽圧となるように決定された量を滴下する点にも特徴がある。
【発明の効果】
【0009】
本発明の缶詰め方法によれば、以下のような効果がある。
(1)従来の方法と比べてより少ない液体窒素の量で残留酸素濃度を1%未満と極めて低くすることができ、酸化による品質劣化を防止できるので長期保存可能であると共に害虫の繁殖も防止できる。
【0010】
(2)所望の陽圧を得ることができるので薄い缶を使用可能である。
(3)液体窒素を分散滴下することにより内容物の割れ等を防止できる。
(4)搬送路の途中においてもなるべく酸素が混入し難い構成とすることにより、残留酸素濃度をより低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は本発明の缶詰め方法の各工程を示す説明図である。
【図2】図2は本発明の缶詰め方法における不活性ガスまたは炭酸ガス充填工程を示す説明図である。
【図3】図3は本発明の缶詰め方法における液体窒素滴下工程を示す説明図である。
【図4】図4は本発明の缶詰め方法において使用する液体窒素滴下装置の要部構成を示す断面図である。
【図5】図5は本発明の缶詰め方法の実施例2の各工程を示す説明図である。
【図6】図6は本発明の缶詰め方法の実施例2の不活性ガスまたは炭酸ガス充填工程を示す説明図である。
【図7】図7は本発明の缶詰め方法の実施例2における搬送路の構造を示す断面図である。
【図8】図8は本発明の缶詰め方法の実施例2における搬送路のガスフローダクトの構造を示す断面図である。
【図9】図9は本発明の缶詰め方法の実施例3の各工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に実施例として生米などの穀類をアルミ缶に充填し、炭酸ガスを充填した後に、密封直前に液体窒素を滴下する例について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明の缶詰め方法の各工程を示す説明図である。本発明の缶詰め方法は大きく分けて、所定量の固形物を缶に詰める第1のステップ、前記缶の底部近傍まで差し込まれたニードルの先端から所定量の不活性ガスまたは炭酸ガスを噴出させる第2のステップ、前記缶の上部空間に所定量の液体窒素を滴下する第3のステップ、前記缶に蓋を乗せ、巻き締めによって密封する第4のステップから成る。
【0014】
図1(a)に示す第1のステップにおいては、例えば生米などの固形物10を缶14に所定の重量だけ詰める。生米10をホッパー11に投入し、計量装置15で生米10+缶14の重量が所定の値になるまで弁12を開いて生米10を缶14に投入する。
【0015】
この時、窒素ガスなどの不活性ガスまたは炭酸ガスをホッパー11の内部に充填しておくことにより、予め生米10の間隙にある空気(酸素)と置換してもよい。また、ホッパー11から生米10を缶14に投入する時に不活性ガスまたは炭酸ガスを生米に吹き掛け、更に、缶14の内部にも米投入前および米投入時に不活性ガスまたは炭酸ガスを吹き込んでもよい。このようにすれば、生米投入時に缶内の空気が不活性ガスまたは炭酸ガスと置換されるので、残留酸素濃度をより低くすることができる。
【0016】
図1(b)、(c)に示す第2のステップにおいては、缶14の底部近傍まで差し込まれたガス充填装置17のニードルの先端から所定量の不活性ガスまたは炭酸ガスを噴出させた後、ニードルを抜いて空気が缶の内部空間に混入しないように蓋18を載せる。ガス充填装置17のニードルは缶の底部近傍まで差し込みやすいように先端が尖っており、先端近傍の側面に不活性ガスまたは炭酸ガスを噴出させるための孔が開いている。
【0017】
不活性ガスまたは炭酸ガスの吹込み後、置換ガスと空気(酸素)が混ざって酸素濃度が上昇しないように、蓋18(あるいは開口部を覆うカバー)を開口部に被せる。カバーを使用する場合にはカバー内に不活性ガスまたは炭酸ガスを注入してもよい。なお、ガスとしては窒素ガスでもよいが、空気と同比重で混ざりやすい窒素よりは空気より重い炭酸ガス(二酸化炭素)の方が好ましい。
【0018】
図1(d)、(e)に示す第3のステップにおいては、蓋18を外し、液体窒素滴下装置20を使用して缶14の上部空間に所定量の液体窒素21を滴下する。図1(f)、(g)に示す第4のステップにおいては、第3のステップにおいて滴下した液体窒素が気化してしまう前に缶14に蓋18を乗せ、直ちに巻き締め装置25によって缶14の口を密封する。巻き締め装置25の構成は周知であるので詳細な説明は省略する。液体窒素の滴下から所定の時間で密封が完了するように工程を管理することにより、密封後に所定量の液体窒素が気化して所望の陽圧となる。
【0019】
図2は本発明の缶詰め方法における不活性ガスまたは炭酸ガス充填工程を示す説明図である。第2のステップである不活性ガスまたは炭酸ガス充填工程においては、まずガス充填装置17のニードル33を降ろして缶14の底部近傍まで差し込む。図2の左側に拡大断面図が示されているように、ニードル33は金属製の中空のパイプであり、缶14の底部近傍まで差し込みやすいように先端が尖っており、先端近傍の側面に不活性ガスまたは炭酸ガスを噴出させるための孔34が複数個開いている。ニードル33の先端部側面に小さな孔34を開ける理由は、パイプを切っただけでは孔に米が詰まる恐れがあり、メッシュ等を貼り付けた場合は使用している間にメッシュが切れ、異物混入になる恐れがあるためである。なお、図2(b)に示すようにニードル33の先端部に両側面に渡る細いスリット(切り込み)を開けるようにしてもよい。図2(b)の構成の方が製造が容易である。
【0020】
ニードル33を缶の底部近傍まで差し込んだ後、作業者がスイッチ37を操作することにより、タイマー回路35が電磁弁31を所定の時間だけオン(開)となるように駆動する。すると高圧の不活性ガスまたは炭酸ガスが流量調整装置30、電磁弁31、フレキシブルホース32、ニードルバルブ36を経てニードル33の先端の孔34から噴出する。
【0021】
不活性ガスまたは炭酸ガスの流量および吹き込み時間は、実験を行って密封後の残留酸素濃度が所望の値以下になるように決定すればよいが、例えば流量5〜10リットル/分、吹き込み時間5〜10秒程度であってもよい。
【0022】
流量調整装置30は公知のニードルバルブでもよいし、より正確に流量を調整できる公知の任意の装置であってもよい。ニードルバルブ36はやはり流量を調節する公知の装置であり、2本のニードル33から出る不活性ガスまたは炭酸ガスの流量(単位時間当たりの噴出量)が均等になるように上部のつまみを調節しておく。
【0023】
不活性ガスまたは炭酸ガスの吹込み後は置換ガスと空気(酸素)が混ざって酸素濃度が上昇しないように蓋18(あるいは開口部を覆うカバー)を開口部に被せる。
ニードルの数は2本である例を開示したが、1本あるいは3本以上であってもよい。なお、缶底がドーム形状に盛り上がっている場合が多いので、複数のニードルを周辺部に配置した方が底部の空気をより効率的に置換可能である。
第2のステップは手動で作業する例を開示したが、自動化することも可能である。
【0024】
図3は本発明の缶詰め方法における液体窒素滴下工程を示す説明図である。また、図4は本発明の缶詰め方法において使用する液体窒素滴下装置の要部構成を示す断面図である。
【0025】
液体窒素の貯液タンクからなる液体窒素滴下装置本体20は、真空室を備えた二重の金属容器からなり、魔法瓶と同様の構造によって液体窒素(LN)を低温に保っている。光ファイバーを使用した液面センサーを用いて液体窒素40の液面の位置を監視しており、弁制御装置42は液面センサーからの信号に基づいて電磁弁41を開閉し、液面の位置が一定になるように液化窒素40を貯液タンクに供給する。また、貯液タンク内において気化した窒素ガスは排気管から外部に排気され、貯液タンク内は大気圧と等しくなっている。
【0026】
貯液タンク内には軸59が設置されており、軸の上端はシール、軸受を貫通して図示しない軸駆動装置と連結されている。なお、シール、軸受は軸59が上下に摺動できるように構成されている。軸は下部のノズル部分まで延びており、軸59の下端には弁座58が固着されている。なお、ノズル44を細くして下方に延ばしているのは貯液タンクと他の装置との干渉を避けるためである。
【0027】
貯液タンクと連通しており、内部が液体窒素40で満たされているノズル部の下端には円盤状のノズル板54が固着されている。ノズル板54には上下に貫通する細い孔55が複数個設けられており、軸駆動装置によって軸59を介して弁座58を上昇させると複数の孔55の上部が開放されて液体窒素40が複数の孔55を通過してノズル板54の下面から分散して滴下する。滴下を止める場合には軸を介して弁座58を下降させる。液体窒素を分散して滴下することによって米等の内容物が長時間大量の液体窒素に触れることがなくなり、割れ等を防止することができる。
【0028】
なお、ノズル44は貯液タンクと同様に真空室56を備えた金属製の二重容器となっており、ノズル板54の外側には下部に円形の開口部を備えた円筒形状のノズルカバー45が装着されている。ノズルカバー45とノズル板54の間にはノズル内空間57が形成されており、このノズル内空間57には外部から窒素ガス44が供給され、ノズルカバー45の下部の開口部から下方に吹き出している。これは、液体窒素の滴下によって空気中の水蒸気がノズル板54の孔に付着して凍結するのを防ぐためである。なお、ノズルカバー37は凍結を防ぐために、図示しない内蔵電気ヒーターによって30度程度に加熱されている。
【実施例2】
【0029】
図5は本発明の缶詰め方法の実施例2の各工程を示す説明図である。実施例1においては第2のステップの後、蓋をして液体窒素滴下装置の下部まで移動させるようにしたが、この方式では蓋を載せたり外したりするための装置が必要となり、かつ高速化に向かない。更に、蓋を載せたり外したりする時に内部に酸素が混入する恐れがある。
【0030】
そこで、実施例2においては第2のステップにおいて不活性ガスまたは炭酸ガスを注入した後、第2のステップの直後から第4のステップの直前までの搬送路に沿って、缶の上部のみ(あるいは缶全体、あるいは搬送装置も含めて)を覆うカバー70(73、74)を設け、カバーの内部において缶14の上方から下に向かって不活性ガスまたは炭酸ガスを噴射させながら第3のステップを行う液体窒素滴下装置20の下部まで移動させる。
【0031】
液体窒素滴下装置20のノズル44はカバー70(73、74)を貫通し、端部はカバーの内部に配置されている。カバーの内部は不活性ガスまたは炭酸ガスで満たされているので、ノズル44をカバー内に入れることにより外部の空気が巻込まれて缶内に入ることを防止できると共に、カバー内部に水蒸気が存在しないので、水蒸気が液体窒素滴下装置20のノズル44端部のノズル板54の孔に付着して凍結するのを防ぐことができる。第3のステップの後、缶の上方から下に向かって不活性ガスまたは炭酸ガスを噴射させながら第4のステップを行う巻き締め装置まで移動させる。
【0032】
なお、第2のステップにおいては後述する自動化したガス充填装置80を使用し、かつ充填カバー82を設けることによって酸素の混入を減少させている。また、実施例2においては蓋供給装置61を備えた巻き締め装置25を使用する例を開示しているが、このような巻き締め装置は公知であり、市販されている。
【0033】
図6は本発明の缶詰め方法の実施例2の不活性ガスまたは炭酸ガス充填工程を示す説明図である。自動化したガス充填装置80は回転するテーブル84に缶を載せて上下可能な複数個のリフタ83が装着されており、リフタ83の上方にはテーブル84と同期して回転する複数組のニードル33が配置されている。また、図示しない回転バルブによってニードルが所定の回転範囲(図6(b)において上→右→下の間)にある場合にはにニードル33から炭酸ガスが噴出されるようになっている。
【0034】
リフタ83は充填済みの缶14の出口から缶14の入り口までの間は下がっており、その後上昇してニードル33が缶内に挿入される。図6において上から右の間において充填後には不活性ガスまたは炭酸ガスが缶内に充填され、その後リフタ83が降下する。
【0035】
ニードル33の周囲には缶14の径よりも少し大きい円筒形状の充填カバー82が装着されており、充填カバー82によってニードルを抜いた(リフタを下げた)時の酸素の混入を減少させる。なお、ガス充填装置80全体をカバーで覆ってもよく、この場合には缶の入り口のみが開口しており、缶の出口は次段のガスフローカバー70、73、74と連結させて酸素の混入を防止する。
【0036】
図7は本発明の缶詰め方法の実施例2における搬送路の構造を示す断面図である。実施例2においては、第2のステップの後、搬送路に沿って、缶14の上方から下に向かって不活性ガスまたは炭酸ガスを噴射させるためのガスフローダクト71および缶14の少なくとも上部近傍を覆うカバー70、73、74を設ける。ダクト72は下面に多数の小さな孔72、73が開けられた中空の細長いダクトであり、搬送路に沿って搬送路の上部に配置される。ダクト72の下面の幅は缶の上部の開口部の径よりも大きく、ガスフローダクト71と缶の上部との隙間は缶がガスフローダクト71と接触しない範囲でなるべく狭くする。
【0037】
図7(a)はカバー70が缶14の上部のみを覆う構成の例である。図7(b)はカバー73が缶14の搬送装置(コンベア)60の側壁と連結している例であり、搬送装置60は断面方向に気密である方が好ましい。図7(c)はカバー74が缶14の搬送装置(コンベア)60全体を覆っている例であり、この場合には搬送装置60は断面方向に気密である必要はない。
【0038】
なお、カバー70、73、74の内部空間を板によって上下に区切り、上部空間をダクトとして使用することにより、ガスフローダクト71をカバー70、73、74と一体に形成してもよい。また、残留酸素濃度の要求値がそれほど低くない場合にはカバー70、73、74を省き、ガスフローダクト71のみを設けるか、あるいはカバー70、73、74のみを設けるようにしてもよい。
【0039】
図8は本発明の缶詰め方法の実施例2における搬送路のガスフローダクトの構造を示す断面図である。ガスフローダクト71の下面には搬送路に沿って、缶14の上方から下に向かって不活性ガスまたは炭酸ガスを噴射させるための多数の孔72、73が設けられている。図8(a)は缶の開口部と対向する位置に均等に孔を配置した例である。図8(b)は缶の開口部の中心と対向する位置にのみ孔を配置した例である。(b)の方がガスが缶内に噴射される割合が高くなる。缶内に噴射したガスによって缶の内部の残留酸素が外部に押し出されて置換される効果がある。
【0040】
図9は本発明の缶詰め方法の実施例3の各工程を示す説明図である。実施例2においては缶蓋供給装置61を備えた巻き締め装置を使用する例を開示したが、缶14がカバー70、73、74を出てから缶蓋供給装置61によって蓋が被せられるまでの間に酸素が混入してしまう恐れがある。そこで、実施例3においては、缶蓋供給装置61を巻き締め装置から分離、独立させ、カバー70、73、74の内部に配置して、カバー70、73、74の内部で缶に蓋を被せるようにする。
【0041】
缶蓋供給装置61はカバーを備えた気密構造とし、缶蓋供給装置61へも不活性ガスあるいは炭酸ガスを供給して缶蓋供給装置61の内部を無酸素状態に保つようにしてもよい。実施例3においては、不活性ガスあるいは炭酸ガスの供給量を調節してカバー70、73、74の内部に酸素が残留しないようにすれば、缶に蓋を被せる時に酸素が混入することを防止できる。
【0042】
以上、実施例を開示したが、以下に示すような変形例も考えられる。容器としてはアルミ製や鉄製の金属缶を使用する例を開示したが、例えばPETボトルなどの樹脂製の容器でも本発明を同様に実施可能である。また、実施例においては内部を陽圧にする例を開示したが、容器の変形を防止する必要がなければ陽圧にする必要はない。
【0043】
中に入れる米量を調整すれば、水に浮く缶を製造することも出来、洪水などで浸水した場合でも中身が保護された容器を水面上で回収出来る。
液体窒素を添加する場合、内容物が割れる恐れがない場合には缶を傾斜させて、液体窒素を缶の内側面に沿って流入させてもよい。この場合には添加量に対して内圧が上昇しやすくなると共に液体窒素が缶の下方まで達するので置換効果が向上する。
【0044】
実施例においては米を缶に充填した後にニードル33を差し込む方法を開示したが、ニードル33を差し込む時に刺さり易くするために缶あるいはニードルの一方あるいは両方に振動を加えてもよい。あるいは予めニードル33を缶に刺してから米を充填してもよい。この場合には米を充填する前から不活性ガスまたは炭酸ガスを噴出させておいてもよい。
【0045】
図7(b)あるいは(c)のようなカバー73、74を設ける場合には、カバーの入口と出口に缶が通過する時に最小限開く扉を設けて、カバー内部の不活性ガスあるいは炭酸ガスへの酸素の混入を減少させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は容器内の残留酸素濃度を低くしたい任意の密封用途に適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
10…米
11…ホッパー
12…弁
13…ロート
14…缶
15…計量装置
17…ガス充填装置
18…蓋
20…液体窒素滴下装置
21…液体窒素
25…巻き締め装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定量の固形物を缶に詰める第1のステップ、
前記缶の底部近傍まで差し込まれたニードルの先端から所定量の不活性ガスまたは炭酸ガスを噴出させる第2のステップ、
前記缶の上部空間に所定量の液体窒素を滴下する第3のステップ、
前記缶に蓋を乗せ、巻き締めによって密封する第4のステップ
を含むことを特徴とする缶詰め方法。
【請求項2】
前記第2のステップの後、前記缶の上方から下に向かって不活性ガスまたは炭酸ガスを噴射させながら前記第3のステップを行う液体窒素滴下装置の下部まで移動させることを特徴とする請求項1に記載の缶詰め方法。
【請求項3】
前記第2のステップの後、搬送路に沿って、前記缶の上方から下に向かって不活性ガスまたは炭酸ガスを噴射させるためのダクトおよび少なくとも前記缶の上部近傍を覆うカバーを設けたことを特徴とする請求項2に記載の缶詰め方法。
【請求項4】
前記第3のステップの後、前記缶の上方から下に向かって不活性ガスまたは炭酸ガスを噴射させながら前記第4のステップを行う巻き締め装置まで移動させることを特徴とする請求項2または3のいずれかに記載の缶詰め方法。
【請求項5】
前記第2のステップの後、前記缶に蓋を乗せて前記第3のステップを行う液体窒素滴下装置の下部まで移動させ、液体窒素の滴下の直前に前記蓋を取ることを特徴とする請求項1に記載の缶詰め方法。
【請求項6】
前記液体窒素を滴下する第3のステップにおいて、液体窒素を分散して滴下することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の缶詰め方法。
【請求項7】
前記固形物は生米であり、
前記第2のステップにおけるガスは炭酸ガスであり、
前記第3のステップにおける滴下する液体窒素の量は、前記生米によって吸収される前記炭酸ガスの量を考慮して、所定時間経過後に所望の陽圧となるように決定された量を滴下することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の缶詰め方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−81449(P2013−81449A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−90253(P2012−90253)
【出願日】平成24年4月11日(2012.4.11)
【出願人】(598164599)株式会社シーティーシー (3)
【Fターム(参考)】