説明

缶飲料保温保冷保持具

【課題】異なる径の缶飲料についても確実に収容でき、飲用のために缶飲料を手で保持する際にも、保温性・保冷性・断熱性を保持することができる缶飲料保温保冷保持具を提供する。
【解決手段】全体が発泡性樹脂による弾性断熱材料で構成され、底壁11の外周に連続して上端になるに従って対向面との間隔が狭くなるように立ち上がり上端中央に缶飲料を挿入する開口15aを有する側壁12を備え、底壁11の大きさは収容する缶飲料の最大径より大きく、開口15aの内径は缶飲料の最小径より小さく設けられ、側壁12には開口の周囲に所定間隔に上端より上下方向に延びる割り溝13が形成され、割り溝13の間における側壁が上部が外側に変位可能で中心側に復帰するような弾性力を有する弾性片12aに分離形成されてなり、直径が異なる缶飲料が収容保持可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶コーヒー等の各種形状に設けられた缶飲料を1個だけ保温状態に収容保持する缶飲料保温保冷保持具に関する。好ましくは加熱用のヒーター、保温保冷用の蓄熱部材を備えてもよい。
【背景技術】
【0002】
従来、自動販売機やコンビニエンスストアなどで加熱状態で販売されている缶飲料を購入し、携行して飲用する際に、すぐには温度が高くて熱い場合には、素手で持つことはやけどの恐れがある。
【0003】
一方、外気温が特に低い状況においては、加熱状態で携行するか、もしくは飲用を開始しても、当初はある程度の温度を維持して良好に飲用できても、すぐに冷めてしまい短時間で飲用を終了する必要が生じている。また、冷却状態で販売されている缶飲料を購入し、携行して飲用する際にも、外気温が特に高い状況または体温の伝熱によってすぐに温まってしまうこともあり得る。
【0004】
上記のような点から、加熱された缶飲料を、断熱材による保温袋(例えば、特許文献1参照)に入れたり、可撓性の断熱性シート(例えば、特許文献2参照)を巻き付けて保温することにより、断熱状態で保持して飲用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−88990号公報
【特許文献2】特開2009−66210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の袋状のものでは、携行には適しているが、収納状態で飲用する際には、ルーズで持ち辛く、快適に使用することができない問題がある。また、特許文献2の断熱性シートを巻き付けて保持するものでは、缶飲料にシートを巻き付けて保持した際に、底部が開放しているので、保持力が弱いと缶飲料を落してしまう難点がある。
【0007】
また、自動車等においては、ドリンクホルダーとして各種形態の缶飲料保持構造が提案されているが、これらのドリンクホルダーは、据え付け構造のものであり、保持状態においては保温または保冷されているが、ホルダーから缶飲料を取り出す際、および飲用する際には、缶飲料は断熱されておらず、直接缶飲料に触れて保持しなければならない問題がある。
【0008】
さらに、缶飲料保温保冷保持具としては、サイズ・形状の異なる各種形態の缶飲料を確実に収容できることが要求される。つまり、容量が190gのショート缶と容量が250gのロング缶とでは、直径は同じ(約53mm)であるが、高さが異なり、350g缶では直径も高さも異なる。その他、直径が高さ位置に応じて変化する樽缶、ウェストウェーブ缶、飲み口形態が異なるボトル缶などがあり、これらの各種の缶形状で、特に直径の異なる各種缶飲料を、その外周面との間に隙間を生じないように保持できることが必要とされる。つまり、缶飲料を収容した状態で缶飲料の外周に隙間ができて、飲用の際に保持した缶飲料が揺れたり落下しないように保持することが要求される。
【0009】
本発明は上記事情に鑑み、缶飲料の形状が変化しても、缶飲料の径変化に対応して異なる径の缶飲料についても確実に収容でき、飲用のために缶飲料を手で保持する際にも、保温性・保冷性・断熱性を保持することができる缶飲料保温保冷保持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の缶飲料保温保冷保持具は、
全体が発泡性樹脂による弾性断熱材料で構成され、直径が異なる複数サイズの缶飲料が収容可能な缶飲料保温保冷保持具であって、
底壁の外周に連続して立ち上がり、上端中央に缶飲料を挿入する開口を有する側壁を備え、
前記底壁の大きさは、収容する缶飲料の最大径より大きく、
前記側壁は上端になるに従って、対向面との間隔が狭くなるように形成され、前記開口の内側寸法は、収容する缶飲料の最小径より小さく設けられ、
さらに、前記側壁には、前記開口の周囲に所定間隔に、上端より上下方向に延びる割り溝が形成され、
前記割り溝の間における側壁が、上部が外側に変位可能で中心側に復帰するような弾性力を有する弾性片に分割形成されてなり、
前記割り溝を広げながら前記開口を拡大して各種形状の缶飲料が保持可能であることを特徴とする。
【0011】
前記側壁は、上端より徐々に広がる傾斜面、または、上端よりしばらくは一定の大きさで中頃から徐々に広がる形状に構成することが可能である。缶飲料を挿入する場合には、上部開口より缶飲料の底部を、割り溝を広げながら開口部分を大きくして、押し込むものである。
【0012】
また、前記底壁にヒーターを備えるように構成してもよい。その際、ヒーターは、コードレスに構成してもよく、例えば、乾電池または充電式電池を電源として、発熱体の発熱により缶飲料を加熱するのが好適である。冷間状態にある飲料を所定温度にまで加熱することには適さないが、所定温度に加熱されている飲料を保温するためにヒーターを使用することは可能である。また、前記底壁に保温保冷用の蓄熱部材を備えるように構成してもよい。その際、保温保冷用の蓄熱部材は、予め湯煎等によって所定時間以上加熱しておくことで長時間高温状態を保てるものであり、且つ予め冷凍庫内等に所定時間以上保管して冷却しておくことで長時間低温状態を保てるものが好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の缶飲料保温保冷保持具によれば、加熱または冷却された缶飲料を収容した状態で、缶飲料保温保冷保持具と一緒に缶飲料を保持することができるため、素手で保持した際にも、断熱特性により温度の高い缶飲料から素手へ直接伝わる伝熱または素手から温度の低い缶飲料へ直接伝わる伝熱が防止されて、やけど防止が図れる一方、その断熱特性に基いて保温保冷効果が得られ、外気温が低い場合にも、缶飲料が冷めにくく、外気温が高い場合にも、缶飲料が温まりにくく適温を維持して、おいしく飲用することが可能となる。
【0014】
また、側壁に上端から割り溝が形成されているため、開口径が収納する缶飲料のサイズおよび形状に応じて変化し、いずれの形態の缶飲料に対しても分割弾性片が上端から外周に弾性的に接触して収容して、保温保冷機能を得ることができるとともに、手で保持する際に缶飲料外周に隙間がなく確実に保持して飲用が行える。
【0015】
ヒーターを内蔵したものでは、長時間の保温が可能となる。その際、コードレスに設けると、移動が容易となり、便利である。また、保温保冷用の蓄熱部材を備えたものは、電源を用いずに保温保冷が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る缶飲料保温保冷保持具の斜視図である。
【図2】図1の断面図である。
【図3】図1の缶飲料保温保冷保持具に一例の缶飲料を保持した状態の斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る缶飲料保温保冷保持具の斜視図である。
【図5】図3の断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の変形例に係る缶飲料保温保冷保持具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る缶飲料保温保冷保持具の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る缶飲料保温保冷保持具の斜視図であり、図2はその断面図、図3は缶飲料を収容したときの斜視図である。
【0018】
この実施形態の缶飲料保温保冷保持具10は、全体が発泡性樹脂による弾性断熱材料で構成され、平板円形状の底壁11と、底壁11の外周に連続して立ち上がった側壁12とで構成され、上端に開口15aを有する収容空間15が内部に形成されている。
【0019】
前記側壁12は、上端になるに従って対向面との間隔が狭くなるように傾斜した円錐台形状に形成されている。また、この側壁12には、上端より所定間隔に上下方向に延びる割り溝13が、図示の場合8本形成されている。この割り溝13は、収容空間15の上部開口15aの大きさが変更可能に、等間隔または不等間隔に複数本形成される。そして、この割り溝13の間における側壁12が、上部が外側に変位可能で中心側に復帰するような弾性力を有する分割弾性片12aに分離形成されている。
【0020】
前記側壁12の上端部の内側寸法、つまり収容空間15の上部開口15aの大きさ(内径d1)は、収容する缶飲料の最小径D1より小さく設けられている。例えば、現状においては、ショート缶などの細径缶飲料Aの外径D1より数ミリメートル小さな寸法の内径d1に設けられ、割り溝13を広げながら各種形状の缶飲料が収納保持可能である。
【0021】
一方、前記収容空間15の底部、つまり、前記底壁11の上面の大きさ(直径d2)は、収容する缶飲料の最大径D2より大きく設けられている。例えば、現状においては、ボトル缶(樽缶または350g缶)などの太径缶飲料Bの底部径D2より数ミリメートル大きな寸法の直径d2を有するように形成されている。
【0022】
割り溝13の形成長さは、開口15aの内径が収容する缶飲料Bの最大径D2が通過可能となる寸法にまで広がるように、必要とされる所定長さに設けられている。
【0023】
前記側壁12は、缶飲料AまたはBを収容していない図1および図2の状態では、上端より徐々に広がる直線的な傾斜面に構成されている。缶飲料を挿入する場合には、上部開口15aより缶飲料の底部を、割り溝13を広げながら弾性片12aの先端を開口15aが広がるように外側に変形させて、押し込むものである。
【0024】
そして、缶飲料AまたはBを収容した状態では、割り溝13によって分割された各弾性片12aは、その弾性によって収容した缶飲料に外周から押圧するように接触し、缶飲料の外周形状に追従して沿うように変形する。つまり、弾性片12aの上端部は缶飲料の外周面に沿って平坦もしくは湾曲し、缶飲料外周との間に隙間が生じないようになり、缶飲料の種々形状に合わせて変形するものである。
【0025】
上記缶飲料保温保冷保持具10の底壁11および側壁12の材料は、柔軟性(弾性)を有して缶飲料形状に適合するとともに、保温保冷性(断熱性)を有して、缶飲料から手への熱伝達を遮断する特性を有し、発泡体が好適に使用され、所定形状に成形される。例えば、発泡ウレタン、発泡シリコン、発泡フォームなどの発泡樹脂材料、または、発泡ゴムが使用される。このような材料によれば、上記形状に形成する際の、加工性、つまり成形性と、割り溝13の切断性が良好で、所定形状に加工可能である。発泡体としては、独立気泡のタイプと、連続気泡のタイプとがあり、断熱性の面では独立気泡タイプが好ましいが、どちらも使用可能である。
【0026】
なお、缶飲料を飲用する際には、保温保冷保持具10の収容空間15から缶飲料を取り出すことなく、側壁12の外側から缶飲料の外周を挟むように把持し、保温保冷保持具10ごと持ち上げ、そのまま一緒に持ち運ぶものである。
【0027】
図4は、本発明の第2の実施形態を示す斜視図、図5はその断面図である。この第2の実施形態における缶飲料保温保冷保持具20は、前例と同様に、全体が発泡性樹脂による弾性断熱材料で構成され、平板円形状の底壁21と、底壁21の外周に連続して立ち上がった側壁22とで構成され、上端に開口25aを有する収容空間25が内部に形成されている。
【0028】
前記側壁22は、上端よりしばらくは一定の内径となるように筒状で、中頃から徐々に外側に傾斜して内径が広がり、底壁21の外周に連接する形状に形成されている。また、この側壁22には、上端より所定間隔に上下方向に延びる割り溝23が、図示の場合8本形成されている。この割り溝23は、収容空間25の上部開口25aの大きさが変更可能に、等間隔または不等間隔に複数本形成される。そして、この割り溝23の間における側壁22が、上部が外側に変位可能で中心側に復帰するような弾性力を有する分割弾性片22aに分離形成されている。
【0029】
前記側壁22の上部の筒状部分の内側寸法、つまり収容空間25の上部開口25aの大きさ(内径d1)は、前例と同様に収容する缶飲料の最小径D1より小さく設けられている。例えば、現状においては、ショート缶などの細径缶飲料Aの外径D1より数ミリメートル小さな寸法の内径d1に設けられ、割り溝23を広げながら各種形状の缶飲料が収納保持可能である。
【0030】
一方、前記収容空間25の底部、つまり、前記底壁21の上面の大きさ(直径d2)は、前例と同様に収容する缶飲料の最大径D2より大きく設けられている。例えば、現状においては、ボトル缶(樽缶または350g缶)などの太径缶飲料Bの底部径D2より数ミリメートル大きな寸法の直径d2を有するように形成されている。
【0031】
割り溝23の形成長さは、開口25aの内径が収容する缶飲料Bの最大径D2が通過可能となる寸法にまで広がるように、必要とされる所定長さに設けられている。
【0032】
缶飲料AまたはBを収容していない図4および図5の缶飲料保温保冷保持具20に、缶飲料を挿入する場合には、上部開口25aより缶飲料の底部を押し込み、割り溝23を広げながら弾性片22aの先端を開口25aが広がるように外側に変形させて、挿入するものである。
【0033】
そして、缶飲料AまたはBを収容した状態では、割り溝23によって分割された各弾性片22aは、その弾性によって収容した缶飲料に外周から押圧するように接触し、缶飲料の外周形状に追従して沿うように変形する。つまり、弾性片22aの上部は缶飲料の外周面に沿って平坦もしくは湾曲し、缶飲料外周との間に隙間が生じないようになり、缶飲料の種々形状に合わせて変形するものである。
【0034】
上記缶飲料保温保冷保持具20の底壁21および側壁22の材料は、前例と同様であり、柔軟性(弾性)を有して缶飲料形状に適合するとともに、保温保冷性(断熱性)を有して、缶飲料から手または手から缶飲料への熱伝達を遮断する特性を有し、発泡体が好適に使用され、所定形状に成形される。例えば、発泡ウレタン、発泡シリコン、発泡フォームなどの発泡樹脂材料、または、発泡ゴムが使用される。このような材料によれば、上記形状に形成する際の、加工性、つまり成形性と、割り溝23の切断性が良好で、所定形状に加工可能である。
【0035】
なお、缶飲料を飲用する際には、保温保冷保持具20の収容空間25から缶飲料を取り出すことなく、側壁22の外側から缶飲料の外周を挟むように把持し、保温保冷保持具20ごと持ち上げ、そのまま一緒に持ち運ぶものである。
【0036】
図6は、本発明の第1の実施形態の変形例に係る缶飲料保温保冷保持具10´の断面図である。この変形例の缶飲料保温保冷保持具10´の底壁11および側壁12の構造は、基本的に前記図1〜図3に示した第1の実施形態の缶飲料保温保冷保持具10と同様であり、同一構造には同一符号を付して、その説明は省略する。
【0037】
この図6に示す缶飲料保温保冷保持具10´は、底壁11にヒーター17を備えている。具体的には、底壁11の上面に、ヒーター17の本体となる発熱体が設置され、このヒーター17(発熱体)に通電するためのコネクタ18が外部電源と接続可能に導出されている。
【0038】
上記ヒーター17は、コードレスに構成してもよい。例えば、乾電池または充電式電池を電源として、発熱体の発熱により缶飲料を加熱するように、コードレス方式とするのが好適である。なお、上記ヒーター17によって冷間状態にある缶飲料を所定温度にまで加熱することは困難であり、所定温度に加熱されている缶飲料をヒーター17の発熱によって保温することが好適である。
【0039】
また、ヒーター17の代わりに保温保冷用の蓄熱部材を底壁11に備えても良い。すなわち蓄熱部材を予め湯煎等によって所定時間以上加熱しておいて底壁11の上面に設置してもよい。また、予め冷凍庫内に所定時間以上保管して冷却しておいた蓄熱部材を底壁11の上面に設置してもよい。これにより、電源を用いずに缶飲料の保温保冷ができる。なお、蓄熱部材は特に限定されるものではなく、公知の蓄熱部材であってよい。
【符号の説明】
【0040】
10,10´,20 缶飲料保温保冷保持具
11,21 底壁
12,22 側壁
12a,22a 弾性片
13,23 割り溝
15,25 収容空間
15a,25a 開口
17 ヒーター
A,B 缶飲料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体が発泡性樹脂による弾性断熱材料で構成され、直径が異なる複数サイズの缶飲料が収容可能な缶飲料保温保冷保持具であって、
底壁の外周に連続して立ち上がり、上端中央に缶飲料を挿入する開口を有する側壁を備え、
前記底壁の大きさは、収容する缶飲料の最大径より大きく、
前記側壁は上端になるに従って、対向面との間隔が狭くなるように形成され、前記開口の内側寸法は、収容する缶飲料の最小径より小さく設けられ、
さらに、前記側壁には、前記開口の周囲に所定間隔に、上端より上下方向に延びる割り溝が形成され、
前記割り溝の間における側壁が、上部が外側に変位可能で中心側に復帰するような弾性力を有する弾性片に分離形成されてなり、
前記割り溝を広げながら前記開口を拡大して各種形状の缶飲料が保持可能であることを特徴とする缶飲料保温保冷保持具。
【請求項2】
前記側壁は、上端より徐々に広がる傾斜面に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の缶飲料保温保冷保持具。
【請求項3】
前記側壁は、上端よりしばらくは一定の大きさで中頃から徐々に広がる形状であることを特徴とする請求項1に記載の缶飲料保温保冷保持具。
【請求項4】
前記底壁にヒーターを備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の缶飲料保温保冷保持具。
【請求項5】
前記底壁に保温保冷用の蓄熱部材を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の缶飲料保温保冷保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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