説明

置き去り又は持ち去り検知システム

【課題】置き去り又は持ち去り検知システムにおいて、置き去り又は持ち去り者の検索のための対象画像を短い映像として提供する。
【解決手段】監視領域の画像を撮影する監視カメラ20と、撮影した画像を保存するレコーダー32と、置き去り又は持ち去り判断部103と、レコーダー32に保存された画像から出力画像を切りだす出力画像作成部106と、出力画像を表示するモニター30とを有し、前記判断部103が置き去り又は持ち去りがあったと判断したとき、切り出し範囲作成部105は、前記異物の位置を含む所定の範囲内の位置と、前記置き去り又は持ち去り発生時刻を含む所定の期間に基づき切り出し範囲を作成し、前記出力画像作成部106は作成した範囲に基づき前記レコーダー32に保存された画像から画像を切り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は置き去り又は持ち去り検知システムに関し、とくに出力データ自動生成機能を備えた置き去り又は持ち去り検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば不特定多数の人物が出入りするエリアにおいて、放置物が放置された時刻におけるエリア撮影情報から、物体を置いていった人物の監視領域侵入時の挙動を録画するようにした監視カメラシステムが知られている(特許文献1参照)。
このシステムでは、監視カメラは、侵入者を検知した場合に侵入時刻を記録し、さらに検知した侵入者を追跡する。侵入者が監視領域を通過した後、置き去りにした物体があって、その物体の静止が一定時間継続した場合には、映像記録装置にアラーム情報と侵入時刻を送信する。映像記録装置は、監視カメラから送信された映像情報をメモリに一定の情報量毎に上書き記録し、アラーム情報及び人物の侵入時刻を受信したときは、侵入時刻からアラーム情報に対応する時刻までの映像情報をメモリからハードディスクへ転送してハードディスクに録画する。
【0003】
また、物体の置き去り又は持ち去りがあった場合に、それを自動的に検知すると共に、物体を置き去った又は持ち去った人物の顔を撮影して、その人物を自動的に特定する監視画像記憶システムも知られている(特許文献2参照)。
このシステムにおいては、物体検知画像が撮影された時刻を物体検知時刻として特定し、この物体検知時刻よりも過去のディレイタイム時間の間に撮影された顔撮影画像情報から置き去り・持ち去り等に係る人物を特定しようとするものである。
【0004】
これらのシステムは、いずれも置き去り又は持ち去りされた検知物以外に置き去り又は持ち去りが発生した瞬間の状況や人物を見たいというニーズに応えたものであって、置き去り又は持ち去り監視領域に設置した監視カメラの映像(又は画像)を入力し、置き去り又は持ち去り検知後に、設定した置き去り又は持ち去りであると判断するに要する検知時間より以前のカメラ映像を切り出して、表示や保存を行っている。
【0005】
これらのシステムでは、タイマーのタイマー値が所定の時間に達したとき(置き去り又は持ち去りの状態が所定時間継続したとき)、置き去り又は持ち去りがあったと判断し、その判断に基づき置き去りが発生した発生時刻から所定の時間前における映像を切り出して再生や保存などを行う。
【0006】
しかし、タイマーが所定の時間に達したとしても、発生時刻に必ず置き去り又は持ち去りが発生したという保証はない。つまり、実際に置き去り又は持ち去りが発生した発生時刻が実際の発生時の前後になる場合があり、置き去り又は持ち去り発生時刻の精度が悪くなる場合がある。
【0007】
置き去り又は持ち去り発生時刻の精度が悪いと、例えば置き去り又は持ち去りが発生する以前の時間間隔における動画を切り出して置き去り又は持ち去り発生時の画像(出力画像)を取得する場合、その時間間隔をより長く設定して長時間の画像を切り出す必要がある。その場合、レコーダー(又はストレージ)には、不要なデータが常に存在することになるため、保存データ量が大きくなるだけではなく、実際に置き去った又は持ち去った人物を特定するために、人間が映像(画像)をみて確認する場合、画像データには無関係な画像が多くあるため、その作業は労力を要するものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−187124号公報
【特許文献2】特開2010−88072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、置き去り又は持ち去り検知システム(以下、単に検知システムという)における前記の従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、監視領域内において置き去り物を置いた人物を映像から確認する場合に、短時間内に撮影された動画又は静止画(ここではそれらを総称して画像という)で確認できるようにして、確認用画像を格納する格納手段の容量を従来のものよりも少なくて済むようにすると共に、目視で確認する人の労力も低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、監視領域の画像を撮影する撮影手段と、撮影した画像を保存する保存手段と、置き去り又は持ち去り判断部と、前記保存手段に保存された画像の切り出し範囲を作成する切り出し範囲作成部と、出力画像作成部と、出力画像を表示する表示部と、を有する置き去り又は持ち去り検知システムであって、前記置き去り又は持ち去り判断部が置き去り又は持ち去りがあったと判断したとき、前記切り出し範囲作成部は、異物の位置を含む所定の範囲内の位置と、前記置き去り又は持ち去り発生時刻を含むと予測される所定の期間に基づき切り出し範囲を作成し、前記出力画像作成部は作成した範囲に基づき前記保存手段に保存された画像から画像を切り出すことを特徴とする置き去り又は持ち去り検知システムである。
請求項2の発明は、請求項1に記載された置き去り又は持ち去り検知システムにおいて、監視領域内における人の移動軌跡を形成するトラッキング部を備え、前記切り出し範囲作成部は、さらに前記トラッキング部で作成された移動体の移動軌跡に基づき切り出し範囲を作成することを特徴とする置き去り又は持ち去り検知システムである。
請求項3の発明は、請求項2に記載された置き去り又は持ち去り検知システムにおいて、前記切り出し範囲作成部は、前記切り出し範囲内において、前記移動軌跡が存在する部分のみを切り出し、かつ前記切り出した部分を貼り合わせて切り出し範囲を作成し、前記切り出し範囲において撮影された画像を前記保存手段に保存された画像から切り出して出力画像を作成することを特徴とする置き去り又は持ち去り検知システムである。
請求項4の発明は、請求項3に記載された置き去り又は持ち去り検知システムにおいて、前記画像は動画であることを特徴とする置き去り又は持ち去り検知システムである。
請求項5の発明は、請求項3に記載された置き去り又は持ち去り検知システムにおいて、前記画像は静止画であることを特徴とする置き去り又は持ち去り検知システムである。
請求項6の発明は、請求項5に記載された置き去り又は持ち去り検知システムにおいて、前記異物の位置と前記移動体の移動軌跡に基づき、置き去り又は持ち去りに係わる移動体を特定する移動体特定手段を有することを特徴とする置き去り又は持ち去り検知システムである。
請求項7の発明は、請求項6に記載された置き去り又は持ち去り検知システムにおいて、ベストショットを選択するベストショット選択部を有し、前記ベストショット選択部は、前記移動体特定手段で特定された移動体のベストショット画像を選択することを特徴とする置き去り又は持ち去り検知システムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、動画を切り出すときに、決められた時間(Δt)を切り出すだけではなく、人が置き去り現場の近くを通ったときだけ切り出すようにしたことで、検索対象画像を短い映像として提供することができ、映像の保存手段の保存容量を小さく済ませるだけではなく、動画を確認する人間の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本検知システムを概略的に示すブロック図である。
【図2】縦軸に検知タイマーT1のタイマー値を、また、横軸に時間Tをとって示した、時間と共に変化する検知タイマーT1の累積タイマー値を示したタイムチャートである。
【図3】縦軸に縦方向の距離Yを横軸に時間Tをとって、トラッキング部で作成した監視領域における移動体A、B、Cの軌跡を表した図である。
【図4】図3と同様の図であるが、異物の位置y1を中心に距離Δyの範囲と時間軸上の時間Δtの範囲で囲まれる領域S1を設定している。
【図5】距離Δx、距離Δy、時間Δtで切り取った3次元の軌跡データを立体的に示す図である。
【図6】実際の撮影画像に異物の位置、移動体の軌跡及びX軸、Y軸方向における監視領域S2を重ねて作成した画像である。
【図7】図7Aは置き去りが発生した時間帯における移動体A、Bの軌跡を示す図であって、図7Bは移動体A、Bの保存すべき動画の範囲を示す図である。
【図8】動画を切り出す場合の処理手順を示すフロー図である。
【図9】静止画を切り出す場合の処理手順を示すフロー図である。
【図10】ベストショット評価付きトラッキングの処理手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本検知システムを概略的に示すブロック図である。
本検知システムは、制御部100と、制御部100の入力部16に接続された外部装置として、撮影装置である監視カメラ20と、設定変更などを行うためのキーボード21と、マウス22と、制御部100の出力部18に接続された外部装置としての、静止画や動画を表示する表示装置(モニター)30と、置き去り又は持ち去りと判断したときにその旨を音声などで報知するためのスピーカー31と、制御部100の入力部16を介して取り込んだ監視カメラ20で撮影した画像を、その撮影時間と共に保存する例えばハードディスク(HDD)などの保存手段を備えたレコーダー32と、を備えている。
【0014】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)10とROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)14からなるコンピュータと、入力側インターフェース(I/F)である入力部16と、出力側インターフェース(I/F)である出力部18とから構成されている。この制御部100は、本検知システム全体を制御すると共に、プログラムによって実現する機能実現手段として、初期設定部101と、異物検知部102と、置き去り又は持ち去り判断部103と、トラッキング部104と、切り出し範囲作成部105と、出力画像作成部106と、移動体特定部107と、移動体のベストショットを選択するベストショット選択部108と、を備えている。
【0015】
異物検知部102は、監視領域におけるレコーダー(又はストレージ)32に格納されている背景画像(画像データ)と、監視カメラ20の撮影画像をA/D変換した入力画像(画像データ)を、例えば各画素毎の輝度値を閾値で2値化して形成した輝度画像の差分値を求めて異物を検知する。
置き去り又は持ち去り判断部103は、異物検知部102で検知した異物を監視して、その時間を後述する検知タイマーで計測し、検知タイマーの累積タイマー値が閾値となる時間を表す値になると、置き去り又は持ち去りと判断する(なお、タイマー値は例えばカウンターのカウント値或いは時間そのものを表す値であってもよい)。
【0016】
トラッキング部104は、移動体の、例えば位置座標の時間的変化を求め、監視カメラ20で撮影した画像中における移動体の動きを追跡し、その軌跡を作成する(なお、トラッキング処理で移動体の移動軌跡を作成すること自体は、例えば、特開2005-69977号公報に記載されているように公知である)。
トラッキング部104は、本実施形態においては、監視領域に移動体が進入してきたときに追跡を開始して、その移動軌跡を作成する。
【0017】
切り出し範囲作成部105は、例えばユーザがキーボード21又はマウス22で入力して初期設定部101に設定した設定値(後述の、例えば、t、Δt、Δx、Δy)に基づき、レコーダー32に保存された画像(画像データ)から切り出すべき画像(画像データ)の範囲を作成する。
出力画像作成部106は、切り出し範囲作成部105が作成した切り出し範囲に従って、期間Δtに撮影した画像内の縦横長さΔy、Δxで囲まれた領域S2内の画像(画像データ)(図6)を、レコーダー32に保存された画像から切り出して出力表示用画像を作成する。
移動体特定部107は、移動体の移動軌跡などに基づき、置き去り又は持ち去りを行った移動体(人物)を特定する。
ベストショット選択部108は、移動体特定部107で特定した移動体のベストショット画像を選択する。
【0018】
図2は、縦軸に検知タイマーT1のタイマー値を、また、横軸に時間Tをとって示した、時間と共に変化する検知タイマーT1の累積タイマー値を示したタイムチャートである。
図示のように、異物検知部102が時刻t0に異物を検知(例えば置き去りを検知)すると、その時点t0からタイマーT1のタイマー値の計測を開始し、計測した累積タイマー値が閾値tに達したときに、置き去り又は持ち去り判断部103は、置き去りがあったと判断する。なお、時間軸T上の置き去り検知(又は認識)時間t1は置き去りと判断した時間(時刻)を示しており、置き去り検知時間t2は検知タイマーT1のタイマー値が閾値tに達するまでの実時間を示す。つまり、置き去り又は持ち去りに係る異物の検知は、置き去り又は持ち去りと判断された時点からt2時間前と算出される。但し、このt2時間前に確実に異物が検知された保証はないので、ここでは、真の置き去り又は持ち去り発生時刻を含むと思われる期間Δtを予め設定しておく。このΔtは、タイマーの閾値t等と共に、例えばキーボード21からユーザが初期設定部101に設定しておく。
【0019】
本検知システムでは、初期設定部101に設定値を設定した後、監視カメラ20を始動すると、監視カメラ20で撮影した画像をレコーダー32に一定量上書き保存しながら、異物検知部102は、既に述べたように入力された画像と保存された画像(背景画像)の輝度画像を作成してその差分から異物とその位置を検知する。異物検知部102がある時刻t0で異物つまり置き去りの発生を検知すると、検知タイマーT1が計測を開始する。計測中に、例えば、置き去りの場合、監視領域において置き去り物である異物が検知できなくなったときは、検知タイマーT1(のタイマー値)の増進を止め、或いは逆進させるなどの制御を行い、図2に示す折れ線グラフが示すように累積タイマー値が閾値tに達すると、置き去り又は持ち去り判断部103は置き去り又は持ち去りがあったと判断する。
【0020】
図3は、縦軸に縦方向の距離Yを、また横軸に時間Tをとって、トラッキング部104で作成した監視領域における移動体A、B、Cの軌跡を表した図である。
移動体A、B、Cは、監視領域であるX、Y平面内において時間Tの経過と共に移動して行くため、本来は実際の軌跡データは3次元(X、Y、T)になるが、ここでは2次元、つまり、監視領域内におけるX軸(横方向の移動)は無視して、Y軸(画像の上下方向の位置)と時間軸T(経過時間)のみで画面を構成して簡略表記している。
なお、図中、y1はY軸上における異物(置き去り又は持ち去り物)の位置(Y軸上の点として示す)を示す。
【0021】
図3中、移動体Aは最初に画面の上端から進入して一度も停止せずに時間の経過と共に下端に抜けたことを示している。
次に、移動体Bは、画面下端から進入し位置y1で一旦停止(時刻ta〜tbまで)し、その後上端に抜け、移動体Cは、最後に画面上端から進入して一旦停止し、位置y1を通らずそのまま引き返し、移動体Bよりも先に画面上端に抜けたことを示している。
【0022】
図4は、図3と同様の図である。図中、位置y1を中心にY軸上の距離範囲Δyと、時間軸上の期間Δtの範囲で囲まれる矩形の領域S1は、切り出し範囲作成部105が作成した切り出し範囲である。
即ち、この領域S1は、移動体の軌跡と置き去り又は持ち去りに係る異物位置(情報)を含み、後述する置き去り又は持ち去りに係わる移動体(人物)を特定するのに用いるだけではなく、特定した移動体を同定するための画像を切り出すための切り出し範囲である。
この領域S1を作成することにより、領域S1を通過していない移動体Cを置き去り候補から除外して、候補を移動体A、Bのみに絞ることができる。
【0023】
次に、移動体特定部107は、このようにして絞った候補を比較してその中から最適な候補を特定する。即ち、移動体特定部107は、移動体Bは、置き去り位置である位置y1近辺に止まった時間(ta〜tb)が移動体A(ゼロ)よりも長く、領域S1に常に居た、つまり時間Δtの間、常に異物の近傍である距離範囲Δy内に居たなどの理由から、AよりもBのほうが置き去り者としての可能性が高いと判断して特定する。
【0024】
因みに、前記2次元座標ではなく3次元座標で軌跡データをΔx、Δy、Δtで切り取った場合は、図5A、図5Bで示される。なお図6は、実際の撮影画像に異物の位置、移動体の軌跡及びX軸、Y軸方向における監視領域S2を重ねて表示した画像である。
【0025】
ところで、仮に移動体特定部107が移動体Aを特定しても、その移動体(ここでは人物)Aを同定するためにはモニター30に画像を表示する必要がある。
そこで、まず、画像が動画である場合において、動画を用いて移動体Aを同定するときの動画の切り出しについて図7を参照して説明する。
図7は図4と同様の図であり、移動体AとBの軌跡が示されている。ここで、移動体がΔyの範囲外である場合は置き去り又は持ち去り物である異物との関係は薄く、これらの画像データを出力画像データとして保存しておく必要はない。また、その移動軌跡から、移動体Aが置き去り又は持ち去りが発生したと思われる期間Δt外において、Δyの範囲内にいたことが分かるが、これも置き去り又は持ち去り物とは関係がない。
したがって、保存を要するのは、移動体A及びBが置き去り又は持ち去りがあったと思われる期間(時間帯)Δtにおいて、異物の近傍の距離Δyの範囲内に存在したときのみである。
【0026】
そこで、出力画像作成部106は、前記領域S1で規定される範囲における画像、つまり、Y軸方向の距離範囲がΔyで撮影時間間隔がΔtの動画を切り出して保存用の画像を作成する。
その際に、本実施形態では、保存画像のデータ量を削減するため、切り出し範囲作成部105は、移動体AとBが領域S1内に存在したときのそれぞれの時間領域(斜線部分)を切り貼りした切り出し範囲を作成し、出力画像作成部106は、前記切り出し範囲に基づき、それに対応する時間帯に撮影された動画(図7B)を編集して出力画像を作成し、この部分だけを保存対象としている。
【0027】
次に、以上で説明した本検知システムにおいて、画像から必要な動画を切り出す処理手順を図8のフロー図にしたがって説明する。
まず、監視カメラ20で撮影した映像をA/D変換して制御部100に入力する処理を行う(S101)。続いて、異物検知部102は、入力画像と既にレコーダー32に保存してある過去画像(背景画像)を読み出して、既に述べたようにそれぞれの輝度画像を作成してその差分をとり、異物を検知(したがって置き去り又は持ち去りが発生したことを検知)する(S102)。トラッキング部104は、異物を検知すると同時にトラッキングを開始する(S103)。続いて、異物検知時刻(前記置き去り又は持ち去りが発生した時刻)t0から所定の検知時間t1が経過したとき、持ち去り又は置き去り判断部104は持ち去り又は置き去りがあったと判断し(S104)、切り出し範囲作成部105で切り出し範囲(S1)を作成し(S105)。出力画像作成部106は、異物検知時刻t0前後の前記期間Δt内において撮影された動画を切り出す。この場合、出力画像作成部106は、図7を参照して既に説明したように、例えば、トラッキングデータを基に算出した移動体AとBが領域S1に存在したときのそれぞれの時間領域(斜線部分)を切り貼りし、切り貼りした時間領域内で撮影された動画(図7B)の領域S2の映像を切り出して編集して出力用の映像を作成する(S106)。その動画をモニター30に出力し(S107)、監視者がその動画から持ち去り又は置き去りを行った人物を同定する。
【0028】
次に、画像が静止画である場合において、静止画を用いて移動体を同定する場合を説明する。
静止画の場合においても、動画と同様に図7の領域S1で切り出し範囲を形成しかつ同様の出力画像を作成して保存する。それによって、出力画面の保存容量を節減することができる。
なお、この場合は、移動体を特定した後、移動体Aである人物の顔を認識すると共に、トラッキング部104の移動体の追跡時にベストショット画像を選択しておき、そのベストショット画像のみを保存することもできる。この場合は保存容量を大幅に節減することができる。
【0029】
ここで、特定した移動体の画像から顔を認識するためには、制御部100に、入力された画像(画像データ)を画像処理して、撮像画像内に含まれる人物の顔を認識する公知の顔認識部を設けておけばよい。撮像画像内に含まれる人物の顔を認識する顔認識処理については、一例として特開2004-326281号公報に開示されている方法を使用することができる。
【0030】
また、ベストショット画像とは、置き去り又は置き去りに係わる人物を明りょうに表示する画像で例えば以下の画像(映像)を云う。即ち、
(i)顔がよく見えている、大きく写っている画像(映像)、
(ii)他の人や物と重なっていない(隠れていない)画像(静止画像または動画)を云う。なお、このベストショット画像の選択自体は、既によく知られたものであるのでこれらを例示することで、ここでの説明は省略する(例えば、特開2005-227957号公報、特開2006-92026号公報、特開2007-190076号公報、特開2009-55156号公報、特開2009-89077号公報参照)。
【0031】
動画からベストショット画像を切り出す場合は、前記出力画像作成部106が置き去り又は持ち去り位置の近く(図6の切り出し領域S2)に移動体(人)が存在している動画部分のみを選択して出力画像を作成して保存しておき、これを提供することで、後で動画を確認する人の負担を少なくすることができる。
【0032】
次に、本検知システムにより保存した画像から必要な静止画を切り出す処理手順を図9のフロー図を参照して説明する。
図8について説明したと同様に、まず監視カメラ20で撮影した画像(画像データ)をA/D変換して制御部100に入力する処理を行う(S201)。続いて、異物検知部102は入力画像と既にレコーダー32に保存してある背景画像(過去画像)を読み出して、それぞれの前記輝度画像を作成してその差分をとることで異物を検知(したがって置き去り又は持ち去りが発生したことを検知)する(S202)。異物が検知されたときは、トラッキング部104は、トラッキングを開始し、それと共に、前記期間Δt内に撮影された静止画について、移動体特定部107が置き去り又は持ち去りに関わった移動体(人物)を特定し、ベストショット選択部108は、特定した人物のベストショットの評価と選択(ここでは、これらを総称してベストショット評価付きトラッキングと云う)を行う(S203)。
【0033】
続いて、異物検知から所定の検知時間t1が経過したとき、持ち去り又は置き去り判断部103は、実際に持ち去り又は置き去りがあったと判断し(S204)、移動体特定部107は、切り出し範囲作成部105で切り出した、前記置き去り又は持ち去りが発生した時刻前後の期間Δtと、置き去り又は持ち去りがあった位置yの前後のΔyの範囲で囲まれた矩形領域S1内における移動体の軌跡から、既に述べた判断基準にしたがって置き去り又は持ち去りを行った移動体(人物)を特定し、その移動体(人物)の顔が特定できるベストショット画像(静止画像)を取得して、そのベストショット静止画をモニター30に出力し(S205)、監視者がその移動体(人物)を同定する。
【0034】
図10は、図9におけるベストショット評価付きトラッキングの処理手順を説明するフロー図である。
即ち、トラッキング部104は、異物が検知されたとき(つまり置き去り又は持ち去りが発生したとき)、前記置き去り又は持ち去りが発生した時刻t0前後の期間Δt内に追跡候補があるか否か判断し(S301)、なければ(S301、なし)そこで処理を終了する。
追跡候補があるときは(S301、あり)、当該候補者の過去画像の軌跡データとのマッチング処理(例えば、同一性を複数のパラメータで数値化して指数(同一性指数)として作成してそれぞれの合致度から同一性を判断する)を行い(S302)、当該候補者の軌跡データを更新する(S303)。続いて、出力画像作成部106は、切り出し範囲作成部105が作成した領域S1に基づき画像の切り出しを行い(S304)、既に説明したように、ベストショット選択部108により撮影画像のベストショットの評価と比較を行い(S305)、ベストショット静止画を更新する(S306)。なお、このベストショット評価付きトラッキング処理は、毎フレームごとに行っても良い。
【0035】
本実施形態によれば、動画を切り出すときに、決められた期間(時間帯)(Δt)を切り出すだけではなく、人が置き去り現場の近く(領域S1)を通ったときだけ切り出してくることで、動画を短くして提供することができ、映像の保存手段の保存容量を小さく済ませるだけではなく、動画を確認する人間の負担を軽くすることができる。
また、切り出し範囲(Δx、ΔyとΔtで囲まれた範囲)内を通過した軌跡によって優先度を求めることができるため、人が置き去り現場の近くを通ったとき全てを切り出すのではなく、優先度の高い人物が存在した範囲のみを切り出すこともできる。
また、動画ではなく、切り出し範囲を通った人物の静止画のみを提供することもできるため、更にスリムでスピーディな運用も可能である。
【符号の説明】
【0036】
10・・・CPU、12・・・ROM、14・・・RAM、16・・・入力部、18・・・出力部、20・・・監視カメラ、21・・・キーボード、22・・・マウス、30・・・モニター、31・・・スピーカー、32・・・レコーダー、100・・・制御部、101・・・初期設定部、102・・・異物検知部、103・・・置き去り又は持ち去り判断部、104・・・トラッキング部、105・・・切り出し範囲作成部、106・・・出力画像作成部、107・・・移動体特定部、108・・・ベストショット選択部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視領域の画像を撮影する撮影手段と、撮影した画像を保存する保存手段と、置き去り又は持ち去り判断部と、前記保存手段に保存された画像の切り出し範囲を作成する切り出し範囲作成部と、出力画像作成部と、出力画像を表示する表示部と、を有する置き去り又は持ち去り検知システムであって、
前記置き去り又は持ち去り判断部が置き去り又は持ち去りがあったと判断したとき、前記切り出し範囲作成部は、異物の位置を含む所定の範囲内の位置と、前記置き去り又は持ち去り発生時刻を含むと予測される所定の期間に基づき切り出し範囲を作成し、前記出力画像作成部は作成した範囲に基づき前記保存手段に保存された画像から画像を切り出すことを特徴とする置き去り又は持ち去り検知システム。
【請求項2】
請求項1に記載された置き去り又は持ち去り検知システムにおいて、
監視領域内における人の移動軌跡を形成するトラッキング部を備え、
前記切り出し範囲作成部は、さらに前記トラッキング部で作成された移動体の移動軌跡に基づき切り出し範囲を作成することを特徴とする置き去り又は持ち去り検知システム。
【請求項3】
請求項2に記載された置き去り又は持ち去り検知システムにおいて、
前記切り出し範囲作成部は、前記切り出し範囲内において、前記移動軌跡が存在する部分のみを切り出し、かつ前記切り出した部分を貼り合わせて切り出し範囲を作成し、前記切り出し範囲において撮影された画像を前記保存手段に保存された画像から切り出して出力画像を作成することを特徴とする置き去り又は持ち去り検知システム。
【請求項4】
請求項3に記載された置き去り又は持ち去り検知システムにおいて、
前記画像は動画であることを特徴とする置き去り又は持ち去り検知システム。
【請求項5】
請求項3に記載された置き去り又は持ち去り検知システムにおいて、
前記画像は静止画であることを特徴とする置き去り又は持ち去り検知システム。
【請求項6】
請求項5に記載された置き去り又は持ち去り検知システムにおいて、
前記異物の位置と前記移動体の移動軌跡に基づき、置き去り又は持ち去りに係わる移動体を特定する移動体特定手段を有することを特徴とする置き去り又は持ち去り検知システム。
【請求項7】
請求項6に記載された置き去り又は持ち去り検知システムにおいて、
ベストショットを選択するベストショット選択部を有し、
前記ベストショット選択部は、前記移動体特定手段で特定された移動体のベストショット画像を選択することを特徴とする置き去り又は持ち去り検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−222685(P2012−222685A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88091(P2011−88091)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【Fターム(参考)】