説明

置換されたベンジルニトリル、その製造方法、付香成分としてのその使用、付香組成物および付香された物品

【課題】置換されたベンジルニトリル、その製造方法、付香成分としてのその使用、付香組成物および付香された物品を提供する。
【解決手段】低級の線状アルキルまたはアルキレン基により置換されたベンジルニトリルを付香成分として使用する。
【効果】該化合物は強力な付香成分であり、かつ香りにフローラル・グリーンなタイプのノートを付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は香料の分野に関する。より具体的には、本発明は付香成分として有用な、特にフローラル・グリーンタイプのノートを香りに付与するための、置換されたベンジルニトリル(benzylic nitriles)に関する。
【0002】
本発明はまた、香料産業における該化合物の使用および該化合物と関連する組成物または物品にも関する。
【背景技術】
【0003】
以下に定義する式(I)の化合物の中で公知のものは数少ない。特に点線が二重結合を表す全ての化合物は種々の目的のために、たとえば化学的な中間体(たとえばα−ブチリデン−ベンゼンアセトニトリルはS.I.Murahashi等によりSynlett、2000、1016に報告されている)としてすでに記載されている。しかし式(I)の化合物を開示している従来技術の文献はいずれも、本発明の化合物の官能的性質あるいは香料の分野における該化合物の使用を報告または示唆していない。
【0004】
EP682010またはUS6069125に記載されている化合物は、本発明の化合物に最も近い構造を有する公知の付香成分である。しかし本発明の化合物はその化学的な構造において従来技術の化合物と異なるのみではなく、官能的特性においても異なっており、これは従来技術の場合、マリーンまたはバラのようなフルーティーな(甘い)タイプのものである。前記の2つの特許のいずれにも、香料の分野における本発明による化合物の有用性は示唆されておらず、ましてや本発明の化合物の官能的特性についても示唆されていない。
【特許文献1】EP682010
【特許文献2】US6069125
【非特許文献1】S.I.Murahashi等、Synlett、2000、1016
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って本発明の課題は、新規の置換されたベンジルニトリル、その製造方法、付香成分としてのその使用、付香組成物および付香された物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
意外なことに本発明により、式
【0007】
【化1】

[式中、RはCの線状アルキル基であり、かつ
a)点線はEもしくはZもしくはこれらが混合した配置を有する二重結合を表し、かつRは水素原子であるか、または
b)点線は単結合を表し、かつRはCの線状アルキル基である]の化合物を付香成分として、たとえばフローラルタイプの香りのノートを付与するために使用することができることが判明した。
【0008】
本発明の特別な実施態様によれば、RはC〜Cの線状アルキル基を表し、かつ特にn−プロピル基を表す。
【0009】
上記の実施態様によれば、式中で点線が二重結合を表す化合物が有利であり、特にほぼZの配置の二重結合を有する、つまりZ異性体が混合物の質量に対して少なくとも90%であるものが有利である。
【0010】
式(I)の前記の化合物の中で、式中の点線が単結合を表し、かつ
i)RはCの線状アルキル基であり、かつRはメチル基であるか、または
ii)RはCの線状アルキル基であり、かつRはC〜Cの線状アルキル基である
化合物が新規であり、かつ本発明の対象である。
【0011】
式(I)の化合物の中で、特に、および非限定的な例として(2Z)−2−フェニル−2−ヘキセンニトリルを挙げることができる。この化合物は本質的で強力なフローラル、グリーン・フローラルの、ジャスミン・ミュゲ、ライラック、ハーバル・ラベンダー・ローズマリーのノートを有する香りを有する。この化合物の全体的な香りは強力なヘキシルシンナムアルデヒドのコノテーションを有し(つまりハーバル・フローラル)、かつわずかにグリーン・ゼラニウムである(たとえばジフェニルオキシドタイプのもの)。本発明の化合物の香りはサリチル酸アミルおよびチョコレートのアスペクトを示すボトムノートも有する。
【0012】
さらに興味深いことにこの化合物は、実施例においてさらに詳細に説明するように、該化合物を配合する媒体に依存してシトラスもしくはシトロネラのノートを示す場合がある。
【0013】
従来技術の化合物である2−フェニル−2−ヘキサンニトリル(EP682010を参照のこと)と比較すると、本発明による化合物は、従来技術の化合物にとって特徴的な、顕著なアネトール/カルボン様のアンダーノートを欠いていることにより、または有していないことにより、ならびに顕著なフルーティー(パイナップル)およびバラのようなノートを欠いていることにより、または有していないことにより特徴付けられる。前記の相違により、(2Z)−2−フェニル−2−ヘキセンニトリルおよび2−フェニル−2−ヘキサンニトリルは、それぞれが異なった使用のために適切なものとなる、つまり異なった官能的印象を付与する。
【0014】
本発明の化合物のもう1つの例は、フローラル・ジャスミンおよびゼラニウムのノートならびにニトリル様の、およびフルーティーなノートを有する香りを有する2−(4−メチルフェニル)ヘキサンニトリルである。全体的な芳香はヘキシルシンナムアルデヒドの香気に似ている。
【0015】
本発明の化合物のもう1つの例は、クマリンのアスペクトも有する快いフローラル・ジャスミンおよびヒアシンスのノートにより特徴付けられる2−(4−エチルフェニル)ペンタンニトリルである。この化合物のボトムノートはヘキシルシンナムアルデヒドの香りを思わせる。
【0016】
これらの最後に挙げた2つの化合物は、2−フェニル−2−ヘキサンニトリル(EP682010を参照のこと)と反対に、特にフルーティーな、またはバラのようなコノテーションを有していないか、またはほぼ欠いている。
【0017】
式(I)の化合物の中で(2Z)−2−フェニル−2−ヘキセンニトリルおよび2−(4−メチルフェニル)ヘキサンニトリルが有利な化合物である。
【0018】
上記のとおり、本発明は付香成分としての式(I)の化合物の使用に関する。換言すれば、本発明は、付香組成物または付香される物品の香りの特性を付与、強化、改善または変性するための方法に関し、この方法は、前記の組成物または物品に式(I)の化合物少なくとも1種の有効量を添加することからなる。式(I)の化合物の使用とはここでは化合物(I)を含有する組成物の使用であるとも理解すべきであり、これは香料産業において活性成分として有利に使用することができる。
【0019】
実際に付香成分として有利に使用することができる付香組成物である前記の組成物もまた本発明の対象である。
【0020】
従って本発明のもう1つの対象は、
i)付香成分として上記の本発明の化合物を少なくとも1種、
ii)香料キャリアおよび香料ベースからなる群から選択される成分を少なくとも1種および
iii)場合により香料助剤を少なくとも1種
を含有する付香組成物である。
【0021】
「香料キャリア」とはここでは香料の観点から実質的に中立的である、つまり付香成分の官能的特性を著しく変えることのない材料を意味する。前記のキャリアは液体であっても固体であってもよい。
【0022】
液状のキャリアとして、非限定的な例として、香料において一般的に使用される乳化系、つまり溶剤および界面活性剤系、または溶剤を挙げることができる。香料において一般的に使用される溶剤の性質および種類の詳細な記載は網羅することはできない。しかし非限定的な例としてたとえば最も一般的に使用されているジプロピレングリコール、ジエチルフタレート、イソプロピルミリステート、ベンジルベンゾエート、2−(2−エトキシエトキシ)−1−エタノールまたはエチルシトレートのような溶剤を挙げることができる。
【0023】
固体のキャリアとして非限定的な例として、吸収性ゴムまたはポリマーあるいはまた封入材料を挙げることができる。このような材料の例はたとえば壁を形成する可塑性の材料、たとえば単糖類、二糖類または三糖類、天然もしくは変性されたデンプン、ヒドロコロイド、セルロース誘導体、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、蛋白質またはペクチン、あるいはまたたとえばH.Scherz、Hydrokolloids:Stabilisatoren、Dickungs− und Gehermittel in Lebensmittel、Lebensmittelchemie、Lebensmittelqualitaet出版シリーズ、第2巻、Behr’s Verlag GmbH & Co.Hamburg、1996年のような参考文献に挙げられている材料を含む。封入は当業者に周知の方法であり、かつたとえば噴霧乾燥、凝集あるいはまた押出の技術を使用して実施することができるか、またはコアセルベーションおよび錯体のコアセルベーション技術を含むコーティング封入からなる。
【0024】
概して、「香料ベース」とは、付香補助成分を少なくとも1種含有する組成物を意味する。
【0025】
前記の付香補助成分は式(I)の成分ではない。さらに、「付香補助成分」とはここでは、快適な効果を付与する付香調製物または組成物中で使用される化合物を意味する。換言すればこのような補助成分は、付香成分としてみなされ、当業者により、組成物の香りに肯定的な、または快適な香りを付与するか、または変性することができるものと認められなくてはならず、香りを有するだけではならない。
【0026】
ベース中に存在する付香補助成分の性質および種類はここではより詳細な記載を保証するものではなく、これはいずれにしても包括的ではなく、当業者は自身の一般的な知識に基づいて、かつ意図される使用もしくは適用および所望の官能的効果に応じて選択することができる。一般的にはこれらの付香補助成分は種々のアルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、ニトリル、テルペン炭化水素、窒素もしくは硫黄複素環式化合物および精油の化学クラスに属し、かつ該付香補助成分は天然由来でも合成されたものでもよい。これらの補助成分の多くはいずれもたとえばS.Arctanderによる著書、Perfume and Flavor Chemicals、1969、Montclair、New Jersey、USAまたはその最近の版のような参考文献、またはその他の類似の著作、ならびに香料の分野における多数の特許文献に記載されている。前記の補助成分とは種々の付香化合物を制御放出することで公知の化合物であってよいと理解される。
【0027】
概して「香料補助剤」とはここでは付加的な利益、たとえば色、特に耐光性、化学的安定性などを付与することができる成分を意味する。香料ベース中で一般的に使用される補助剤の性質および種類の詳細な記載は網羅することはできないが、しかしこのような成分は当業者に周知であることを言及しておくべきである。
【0028】
式(I)の化合物を少なくとも1種および香料キャリアを少なくとも1種含有する本発明による組成物は、式(I)の化合物を少なくとも1種、香料キャリアを少なくとも1種、香料ベースを少なくとも1種および場合により香料補助剤を少なくとも1種含有する付香組成物と同様に、本発明の特別な1実施態様である。
【0029】
ここで、上記の組成物中に式(I)の化合物が2種類以上含有される可能性は重要であることを言及しておくことは有用である。というのも、このことにより調香師は、本発明の種々の化合物の香りの調性(tonality)を有するアコード、香水を製造することができ、このことによって彼らの仕事のための新たなツールを創造することができるからである。
【0030】
ここではまた、その他の指示または記載がない限り、本発明の化合物が出発材料、中間体または最終生成物として関わる化学的な合成から、たとえば適切な精製を行わずに直接得られる混合物は、本発明による付香組成物と見なすことはできないと理解される。
【0031】
さらに本発明の化合物は、前記の化合物(I)が添加される消費製品に有利に香りを付与するか、または香りを変性するために、現代の香料の全ての分野で有利に使用することができる。従って
i)付香成分として上記の式(I)の化合物を少なくとも1種および
ii)消費製品ベース
を含有する、付香された物品もまた本発明の対象である。
【0032】
明瞭性のために、「消費製品ベース」とはここでは、付香成分と相容性の消費製品を意味することを言及しておかなくてはならない。換言すれば本発明による付香される製品は機能性調製物、ならびに消費製品、たとえば洗剤またはエアーフレッシュナーに応じて場合により付加的な有利な添加剤、および嗅覚的に有効量の少なくとも1種の本発明の化合物を含有する。
【0033】
消費製品の構成成分の性質および種類はここではより詳細な記載を保証するものではなく、これはいずれにしても包括的ではなく、当業者は自身の一般的な知識に基づいて、および該製品の性質および所望の効果に応じて選択することができる。
【0034】
適切な消費製品の例は、固形もしくは液体の洗剤および繊維柔軟剤、ならびに香料分野で通例のその他の物品、つまり香水、コロンまたはアフターシェイブローション、香水石鹸、シャワーもしくはバスソルト、ムース、オイルまたはゲル、衛生用品、ヘアケア製品、たとえばシャンプー、ボディケア製品、消臭剤または制汗剤、エアーフレッシュナーおよび化粧品である。洗剤として、たとえばテキスタイル、食器または硬質表面の処理を意図した(家庭用または工業用の使用を意図した)種々の表面を洗浄するため、またはクリーニングするための洗剤組成物またはクリーニング製品のような適用が意図される。その他の付香される物品は、繊維回復剤(fabric refresher)、アイロン水、紙、ふき取りクロス(wipe)または漂白剤である。
【0035】
本発明の化合物は、該化合物を多くの攻撃的な媒体に対して相当に安定性にするその化学的な構造に基づいて、特に機能性香料のための付香組成物を製造するために適切であることを言及しておかなくてはならない。
【0036】
本発明による化合物を種々の前記の物品または組成物に配合することができる比率は広い範囲の値で変化する。これらの値は付香すべき物品の性質および所望の嗅覚的効果ならびに本発明による化合物を従来技術で通常使用される付香補助成分、溶剤または添加剤と混合する場合には、与えられるベース中の補助成分の性質に依存する。
【0037】
たとえば付香組成物の場合、一般的な濃度は本発明による化合物を配合する組成物の質量に対して本発明による化合物0.001質量%〜15質量%の範囲、またはそれ以上である。これより低い濃度、たとえば0.01〜10質量%の範囲は、これらの化合物を付香された物品に配合する場合に使用することができる。
【0038】
式(I)の化合物は新規の、独特の方法により合成することができ、その方法もまた本発明の対象である。
【0039】
本発明の方法は特に式
【0040】
【化2】

[式中、RおよびRは相互に無関係に、水素原子を表すか、またはCの線状アルキル基またはアルコキシ基を表し、かつRはCの線状もしくは分枝鎖状のアルキル基を表す]の化合物を、式
【0041】
【化3】

[式中、RおよびRは上記のものを表す]のニトリルを、触媒系の存在下に式R5′CHOH[式中、R5′はCの線状もしくは分枝鎖状のアルキルまたはアルク−2−エニルを表す]のアルコールと反応させることにより製造するために有用であり、この方法は、反応温度が100℃以上であり、かつ触媒系が13より大きいpKaを有する塩基と、[RuCl(p−cym)]および[RuCl(p−cym)(PPh)](p−cymはp−シメンを表す)からなる群から選択される錯体とを含有する混合物であることを特徴とする。
【0042】
式RCHOH中のRがアルキル基を表す場合、式中で点線が単結合を表す式(II)の化合物が得られる。式RCHOH中のRがアルク−2−エニル基を表す場合、式中で点線が二重結合を表す式(II)の化合物が得られる。
【0043】
錯体は一般に式(III)の化合物の量に相応して0.001〜0.01モル当量の範囲の量で使用する。
【0044】
本発明の方法のために有用な塩基の一般的な例はKOH、NaOHまたはDBUである。さらに、有利には、塩基は錯体の量に対して約5〜15モル当量の量で存在している。
【0045】
さらに前記の方法で、アルコールRCHOHは有利には溶剤として、つまり式(III)の化合物の量と比較して大過剰で使用することができる。
【0046】
有利には式(II)の化合物は式(I)の化合物である。
【0047】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、その際、略号は従来技術において通常の意味を表し、温度は摂氏(℃)であり、NMRスペクトルデータはCDCl(その他の記載がなければ)中、400または100MHz装置によりHまたはそれぞれ13Cに関して記録し、ケミカルシフトδは標準液としてTMSに関してppmで記載され、カップリング定数JはHzで記載した。
【実施例】
【0048】
例1
本発明の方法による式(I)の化合物の合成
a)(2Z)−2−フェニル−2−ヘキセンニトリルの製造
電磁撹拌棒およびアルゴンの入口−出口を備えた500mlの三口フラスコに、ベンジルニトリル(17.6g、150ミリモル)、クロチルアルコール(86.54g、1.2モル、トランス/シス混合物23/1)、水酸化カリウム(420.9mg、7.5ミリモル)および[RuCl(p−cym)](229.8mg、0.38ミリモル)を装入した。次いで該フラスコを真空処理し、アルゴンを逆充てん(back fill)し、かつ100℃で1.5時間加熱した。反応が停止したら反応混合物を冷却し、かつ水(500ml)に注ぎ、AcOEtで抽出した(3×100ml)。有機相を無水MgSO上で乾燥させ、濾過し、かつ溶剤を真空中で除去した。減圧下での蒸留により所望のニトリルが45%の収率で得られた。
【0049】
この混合物のH−NMR分析は、ニトリルが2つのジアステレオマーの混合物として存在していることを示した(Z/E=95/5)。
沸点:121〜123℃/5.4ミリバール、
13C−NMR:146.9(d)、133.3(s)、128.9(d)、128.8(d)、125.6(d)、116.7(s、CN)、116.1(s)、34.1(t)、22.0(t)、13.7(q)。
H−NMR:7.54〜7.50(m、2H)、7.40〜7.30(m、3H)、6.82(t、J=7.7、1H)、2.56(dt、J=7.7、7.2、2H)、1.59(sext、J=7.2、2H)、1.01(t、J=7.2、3H)。
【0050】
b)2−(4−メチルフェニル)ヘキサンニトリルの製造
電磁撹拌棒およびアルゴンの入口−出口を備えた500mlの三口フラスコに、4−メチルベンジルシアニド(19.73g、150ミリモル)、1−プロパノール(89.1g、1.2モル)、水酸化カリウム(423.5mg、7.5ミリモル)および[RuCl(p−cym)](232.6mg、0.375ミリモル)を装入した。次いで該フラスコを真空処理し、アルゴンを逆充てんし、かつ100℃で1時間加熱した。反応が停止したら反応混合物を室温に冷却し、かつ真空中で濃縮した。残留物をEtO(500ml)中にとり、かつ水で洗浄した(3×50ml)。有機相を無水MgSO上で乾燥させ、濾過し、かつ溶剤を真空中で除去した。減圧下での蒸留により所望のニトリルが70%の収率で得られた。
沸点:105〜106℃/1.3ミリバール、
13C−NMR:137.7(s)、133.1(s)、129.7(d)、127.1(d)、121.1(s、CN)、36.9(d)、35.6(t)、29.1(t)、22.1(t)、21.0(q)、13.8(q)。
H−NMR:7.19(ABsyst.JAB=8.2、4H)、3.72(dd、J=8.4、6.4、1H)、2.34(s、3H)、1.95〜1.78(m、2H)、1.52〜1.29(m、4H)、0.89(t、J=7.2、3H)。
【0051】
c)2−(4−エチルフェニル)ペンタンニトリルの製造
b)に記載の手順と同様に、4−エチルベンジルシアニド(5.08g、35ミリモル)、1−プロパノール(21ml、280ミリモル)を水酸化カリウム(99.1mg、1.75ミリモル)および[RuCl(p−cym)](55.1mg、0.09ミリモル)と100℃で1時間反応させた。溶剤の除去および減圧下での蒸留により、所望のニトリルが51%の収率で得られた。
沸点:74〜75℃/0.2ミリバール。
13C−NMR:144.1(s)、133.3(s)、128.5(d)、127.2(d)、121.1(s、CN)、37.9(t)、36.8(d)、28.5(t)、20.3(t)、15.5(q)、13.4(q)。
H−NMR:7.21(ABsyst.JAB=8.4、4H)、3.74(dd、J=8.4、6.4、1H)、2.64(q、J=7.7、2H)、1.95〜1.76(m、2H)、1.58〜1.42(m、2H)、1.23(t、J=7.7、3H)、0.95(t、J=7.2Hz、3H)。
【0052】
例2
付香組成物の製造
以下の成分を混合することによって「マルセル石鹸」のための付香組成物を製造した:
成分 質量部
ベルジル アセテート(Verdyl acetate) 100
酢酸ヘキシル 20
3−メチル−2−ヘキセニルアセテート1) 10
アルデヒド C12(Aldehyde C12) 25
アルデヒド ヘキシルシンナミク(Aldehyde Hexylcinnamique) 100
アルデヒド MNA(Aldehyde MNA) 20
アルデヒド スプラ(Aldehyde Supra) 10
アリル アミル グリコレート(Allyl amyl glycolate) 20
エチル2−メチル−ペンタノエート1) 15
セタロックス(Cetalox) (R) 2) 10
シトラール ジエチルアセタール(Citral diethylacetal) 25
シクロペントール(Cyclopentol) 30
ダマスコン アルファ(Damascone Alpha) 5
ダマセノン トータル(Damascenone Total) 1)
ジヒドロ オイゲノール(Dihydro Eugenol) 10
ジヒドロミルセノール(Dihydromyrcenol) 200
エチル−2−メチルブチテート 5
ユーカリ精油 15
オイゲノール(Eugenol) 40
ガラクソリド(Galaxolide) (R) 50%MIP 3) 100
ゲラニル ニトリル(Geranyl Nitrile) 50
ヘジオン(Hedione) (R) 60
イオノン ベータ(Ionone beta) 40
イラリア(R)トータル(Iralia (R) Total) 5) 150
イソ E スーパー(Iso E Super) (R) 6) 400
リリアール(Lilial) (R) 7) 200
リナロール(Linalol) 150
10%2,6−ジメチル−5−ヘプタナール 5
メチルナフチルセトン(Methylnaphtylcetone) 40
メチルパラクレゾール(Methylparacresol) 5
ムセノン(Muscenone) (R) 8) 50
ミロキシド(Myroxyde) (R) 9) 10
10%ネオブテノン(Neobutenone) (R) 10) 20
ニルバノール(Nirvanol) (R) 11) 30
トランス−1−(2,2,6−トリメチル−1−シクロヘキシル)−3−ヘキサノール 1) 10
パラシメン(Paracymene) 30
フェネチロール(Phenethylol) 150
10%ロマスコン(Romascone) (R) 12) 30
スクラレオレート(Sclareolate) (R) 13) 100
テルペン オレンジ(Terpene Orange) 100
2,4−ジメチル−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド 10
ウンデカラクトン(Undecalactone) 50
ベルドックス(Verdox) (R) 14) 100
(E)−1−(2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセン−1−イル)−1−ペンテン−3−オン 60
2615
*ジプロピレングリコール中
1)製造元:Firmenich SA(スイス国Geneva在)、
2)ドデカヒドロ−3a,6,6,9a−テトラメチル−ナフト[2,1−b]フラン;製造元:Firmenich SA(スイス国Geneva在)、
3)1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−4,6,6,7,8,8−ヘキサメチル−シクロペンタ−g−ベンゾピラン;製造元:International Flavors & Fragrances(USA)、
4)メチルジヒドロジャスモネート;製造元:Firmenich SA(スイス国Geneva在)、
5)メチルイオノン異性体の混合物;製造元:Firmenich SA(スイス国Geneva在)、
6)1−(オクタヒドロ−2,3,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)−1−エタノン;International Flavors & Fragrances(USA)、
7)3−(4−t−ブチルフェニル)−2−メチルプロパナール;International Flavors & Fragrances(USA)
8)3−メチル−4/5−シクロペンタデセン−1−オン;製造元:Firmenich SA(スイス国Geneva在)、
9)6,7−エポキシ−3,7−ジメチル−1,3−オクタジエン;製造元:Firmenich SA(スイス国Geneva在)、
10)1−(5,5−ジメチル−1−シクロヘキセン−1−イル)−4−ペンテン−1−オン;製造元:Firmenich SA(スイス国Geneva在)、
11)3,3−ジメチル−5−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−4−ペンテン−2−オール;製造元:Firmenich SA(スイス国Geneva在)、
12)メチル2,2−ジメチル−6−メチレン−1−シクロヘキサンカルボキシレート;製造元:Firmenich SA(スイス国Geneva在)、
13)プロピル(S)−2−(1,1−ジメチルプロポキシ)プロパノエート;製造元:Firmenich SA(スイス国Geneva在)、
14)2−t−ブチル−1−シクロヘキシルアセテート;International Flavors & Fragrances(USA)。
【0053】
上記の付香組成物に(2Z)−2−フェニル−2−ヘキセンニトリルを300質量部添加することにより、より機能的で、洗剤のような芳香を有する新規の組成物が得られた。さらに新規の組成物は強化されたグリーン・シトロネラのコノテーションを有していた。
【0054】
さらに、新規の組成物を含有する洗剤を用いてリネン製品を洗濯すると、該リネン製品は乾燥後に、フローラル・ハーバルなタイプの強力なサリチレートのノートを有しており、これは本発明の化合物を含有していない組成物を含有する洗剤を用いて洗濯したリネン製品にはまったく存在していなかった。
【0055】
このコノテーション/ノートはパイナップルおよびバラのような特性を有していなかった。
【0056】
例3
付香組成物の製造
以下の成分を混合することによって石鹸のための付香ベースを製造した:
成分 質量部
ベルジル アセテート 200
アニス アルデヒド(Anisic aldehyde) 270
アルデヒド C10(Aldehyde C10) 20
10−ウンデセナール(10-Undecenal) 30
アルデヒド C12 60
アルデヒド MNA 50
安息香酸メチル 60
ベンジルアセトン(Benzylacetone) 250
セタロックス(R) 1) 50
シトロネレ ジャワ(Citronnelle Java) 1000
ドデカンニトリル(Dodecanenitrile) 40
クマリン 130
シクロピデン(Cyclopidene) 2) 60
(1′R,E)−2−エチル−4−(2′,2′,3′−トリメチル−3′−シクロペンテン−1′−イル)−2−ブテン−1−オール 90
ジヒドロミルセノール 350
ジフェニルオキシド(Diphenyloxyde) 1000
エチルバニリン(Ethylvanilline) 30
ユーカリプトール 100
オイゲノール 90
ガラクソリド(R) 50%MIP 3) 250
3−(3−イソプロピル−1−フェニル)ブタナール 50
ゲラニル ニトリル 90
ハバノリド(Habanolide) (R) 4) 300
イオノン ベータ 180
イラリア(R)トータル5) 400
イソ E スーパー(R) 6) 600
リリアール7) 650
リナロール 350
ロリシア(Lorysia) (R) 8) 300
メチルナフチルセトン 180
メチルパラクレゾール 90
ニルバノール(R) 9) 30
トランス−1−(2,2,6−トリメチル−1−シクロヘキシル)−3−ヘキサノール 2) 30
フェネチロール 450
フェニルヘキサノール 450
ベルジル プロピオネート(Verdyl propionate) 200
テルピノレン(Terpinolene) 450
ウンデカラクトン ガンマ(Undecalactone gamma) 150
ポリウッド(Polywood) (R) 10) 70
10%メチルオクチンカーボネート 30
リミナール(Liminal) (R) 11) 100
9280
*ジプロピレングリコール中
1)ドデカヒドロ−3a,6,6,9a−テトラメチル−ナフト[2,1−b]フラン;製造元:Firmenich SA(スイス国Geneva在)、
2)製造元:Firmenich SA(スイス国Geneva在)、
3)1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−4,6,6,7,8,8−ヘキサメチル−シクロペンタ−g−2−ベンゾピラン;製造元:International Flavors & Fragrances(USA)、
4)ペンタデセノリド;製造元:Firmenich SA(スイス国Geneva在)、
5)メチルイオノン異性体の混合物;製造元:Firmenich SA(スイス国Geneva在)、
6)1−(オクタヒドロ−2,3,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)−1−エタノン;International Flavors & Fragrances(USA)、
7)3−(4−t−ブチルフェニル)−2−メチルプロパナール;International Flavors & Fragrances(USA)
8)4−(1,1−ジメチルエチル)−1−シクロヘキシルアセテート;製造元:Firmenich SA(スイス国Geneva在)、
9)3,3−ジメチル−5−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−4−ペンテン−2−オール;製造元:Firmenich SA(スイス国Geneva在)、
10)ペルヒドロ−5,5,8aa−トリメチル−2a−トランス−ナフタレニルアセテート;製造元:Firmenich SA(スイス国Geneva在)、
11)3−(4−t−ブチルフェニル)−2−メチルプロパナール;製造元:Firmenich SA(スイス国Geneva在)。
【0057】
上記の付香ベースに(2Z)−2−フェニル−2−ヘキセンニトリルを150質量部添加することにより、該ベースの香りにクリアなフローラル・ジャスミンおよびサリチレートの、わずかにグリーンで化粧品のようなコノテーションが付与された。このコノテーションはパイナップルおよびローズのような特性を有していなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

[式中、RはCの線状アルキル基であり、かつ
a)点線はEもしくはZもしくはこれらが混合した配置を有する二重結合を表し、かつRは水素原子であるか、または
b)点線は単結合を表し、かつRはCの線状アルキル基である]の化合物の付香成分としての使用。
【請求項2】
前記の式(I)中でRがC〜Cの線状アルキル基を表す、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記の式(I)中で点線が配置Zを有する二重結合を表す、請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
前記の化合物が、(2Z)−2−フェニル−2−ヘキセンニトリルおよび2−(4−メチルフェニル)ヘキサンニトリルからなる群から選択される、請求項3記載の使用。
【請求項5】
i)請求項1から4までのいずれか1項において定義された式(I)の化合物を少なくとも1種、
ii)香料キャリアおよび香料ベースからなる群から選択される成分を少なくとも1種および
iii)場合により香料助剤を少なくとも1種
含有する付香組成物。
【請求項6】
i)請求項1から4までのいずれか1項において定義された式(I)の化合物を少なくとも1種および
ii)消費製品ベース
を含有する付香された物品。
【請求項7】
消費製品ベースが固形もしくは液体の洗剤、繊維柔軟剤、香水、コロンまたはアフターシェイブローション、香水石鹸、シャワーもしくはバスソルト、ムース、オイルまたはゲル、衛生用品、ヘアケア製品、シャンプー、ボディケア製品、消臭剤または制汗剤、エアーフレッシュナー、化粧品、繊維回復剤、アイロン水、紙、ふき取りクロスまたは漂白剤である、請求項6記載の付香された製品。
【請求項8】

【化2】

[式中、点線は単結合を表し、かつ
i)RはCの線状アルキル基であり、かつRはメチル基であるか、または
ii)RはCの線状アルキル基であり、かつRはC〜Cの線状アルキル基である]の化合物。
【請求項9】
請求項8記載の化合物としての2−(4−メチルフェニル)ヘキサンニトリルまたは2−(4−エチルフェニル)ペンタンニトリル。
【請求項10】

【化3】

[式中、RおよびRは相互に無関係に、水素原子を表すか、またはCの線状アルキル基またはアルコキシ基を表し、かつRはCの線状もしくは分枝鎖状のアルキル基を表す]の化合物を製造するために、式
【化4】

[式中、RおよびRは上記のものを表す]のニトリルを、触媒系の存在下に式R5′CHOH[式中、R5′はCの線状もしくは分枝鎖状のアルキルまたはアルク−2−エニルを表す]のアルコールと反応させることによる方法において、反応温度が100℃以上であり、かつ触媒系が13より高いpKaを有する塩基と、[RuCl(p−cym)]および[RuCl(p−cym)(PPh)](p−cymはp−シメンを表す)からなる群から選択される錯体とを含有する混合物であることを特徴とする、式(II)の化合物の製造方法。

【公開番号】特開2006−83174(P2006−83174A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−267921(P2005−267921)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(390009287)フイルメニツヒ ソシエテ アノニム (146)
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
【Fターム(参考)】