説明

置換された脂肪酸又はそれの誘導体を含む食品生成物、食品栄養補完物、およびそれらの使用

【課題】 多くの有用な健康上の効果を示す脂肪酸を含む食品生成物を提供する。
【解決手段】 本発明は、有効量の健康成分を含む食品生成物であって、当該健康成分がコンボナット油抽出物中に存在するヒドロキノン置換された多不飽和脂肪酸、又は該不飽和脂肪酸と1乃至32個の炭素原子を有するアルコールとのエステル、又は食品として許容可能なそれらの塩に、サルガヒドロキノン酸(=SHQA)又はその誘導体、である食品生成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の属する技術分野】
【0001】
本発明は、コンボナット油中に存在するヒドロキノン置換された多不飽和脂肪酸又はそれらの誘導体を含む食品生成物、食品栄養補完物、及びそれらの使用に関する。
【従来の技術】
【0002】
コンボナット(kombo nut)種子脂肪は、ピクナンサス・アンゴレンシス(Pycnanthus angolensis)の種子から得ることができる公知の生成物である(例えば、特許文献1参照。この脂肪中に存在する成分は異なる複数のグループによって分析され、そしてかなりの数のテルペノイド酸型の成分が確認された。これらの成分の1つは、コンビン酸(kombic acid)と命名された新規なポリプレニル化ヒドロキノン置換されたカルボン酸として識別され、これは、非特許文献1中に記載されている構造を有するとして識別された。(即ち、16−(2,5−ジヒドロキシ−3 メチルフェニル)−2,6,10,14 テトラメチル−2,6,10,14 ヘキサデカテトラエン酸)(非特許文献1参照)。そのテルペノイド酸型成分を含むコンボナット油は有用なものとして開示され、そして、低血糖活性、真菌皮膚感染症に対する活性;帯状疱疹の治療に対する活性;又は癩菌に対する活性;頭痛、体の痛み対する活性;胸痛に対する活性;又は女性用の抗不妊剤として;又は駆虫剤として;又は解毒剤として;又は抗歯痛剤として;又は抗出血剤として;その他のとしてのような多数の健康上の利益を有するものとして開示されているが(例えば、特許文献1参照)、特定の成分の存在と特定の健康上の効果の発生との間の関係は与えられていない。
【0003】
トリミリスチンに富んだ油及びその他の油から製造されたブレンドが開示されている(例えば、特許文献2参照)。使用されるトリミリスチンはコンボナット油から得ることができる。
【0004】
【特許文献1】国際公開第96/39130号パンフレット
【特許文献2】米国特許第3615588号明細書
【非特許文献1】ロック・シー・エス(Lok c.s.)著,「フィトケミストリー(Phytochemistry)」,22巻,1983年,p.1973
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、多くの有用な健康上の効果を示す脂肪酸を含む食品生成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らはコンボナット脂肪をさらに分析し、そしてこの脂肪が、質量分光分析及び13C−NMRによって、サルガヒドロキノン酸(sargahydroquinoic acid)(=SHQA)[CA名称:12−(2,5−ジヒドロキシ−3−メチルフェニル)−6,10−ジメチル−2−(4−メチル−3−ペンテニル)−2E,6E,10E ドデカトリエン(dodecatrienoic)酸])として識別された成分を含むこと、及びこの化合物及びかなりの数のその誘導体が有用な健康上の利益を示すことを発見した。この化合物SHQAは通常グリセリドと組み合わせて適用される。これらのグリセリドはコンボナット油中に存在するトリグリセリドでよいが、その他のグリセリドもSHQAと組み合わせて使用できる。
【発明の実施の形態】
【0007】
有効量の健康成分を含む食品生成物であって、当該健康成分がコンボナット油抽出物中に存在するヒドロキノン置換された多不飽和脂肪酸、又は該不飽和脂肪酸と1乃至32個の炭素原子を有するアルコールとのエステル、又は食品として許容可能なそれらの塩に、サルガヒドロキノン酸(=SHQA)又はその誘導体、である食品生成物に関する。置換された酸は好ましくはコンボナット油から得られる酸である。
【0008】
原則的には、食品生成物は、置換された酸又はそれらの誘導体と組合すことができる任意の食品生成物でよい。しかしながら、本発明者らは、マーガリン;脂肪連続又は水連続又は双連続(bicontinuous)スプレッド、低脂肪スプレッド;チョコレート又はチョコレートコーティング又はチョコレートフィリング又はベーカリーフィリング(bakery fillings)のような菓子生成物、アイスクリーム、アイスクリームコーティング、アイスクリーム封入物(inclusions)、ドレッシング、マヨネーズ、チーズ、クリーム代替物、乾燥スープ、ドリンク、シリアルバー(cereal bars)、ソース、ベーカリー製品及びスナックバーから成る群から選択される食品生成物中においてこの成分を使用することを好む。
【0009】
置換された酸を食品生成物中において使用する代わりに、本発明者らは、それらを食品栄養補完物中において使用することもできる。従って、本発明の一部は、封入材料中の又は顆粒中の又は粉末形態の、有効量の、コンボナット油又は抽出物中に存在するヒドロキノン置換された多不飽和脂肪酸又はそれの誘導体、特に、サルガヒドロキノン酸(=SHQA)又はそれの誘導体、を含む食品栄養補完物である。栄養補完物用の封入材料は、好ましくは、ゼラチン;澱粉、改質澱粉、穀粉、改質穀粉、糖、特にスクロース、ラクトース、グルコース、及びフルクトース、から成る群から選択される。
【0010】
本発明者らは、本発明の新たに識別された酸成分が多数の有用な健康上の利益を有することを発見した。従って、本発明は、また、コンボナット油又はそれの抽出物中に存在するヒドロキノン置換された多不飽和脂肪酸又はそれの誘導体を含む組成物の、健康上の効果を有する食品組成物又は食品栄養補完物の調製のための有効成分としての使用であって、当該健康上の効果が、リパーゼ阻害剤としての作用、特に膵臓リパーゼ又は胃リパーゼに対する阻害剤としての作用及び/又はペルオキシソーム増殖剤活性化レセプター亜類型アルファ又はガンマに対する配位子としての作用及び/又は老化、特に皮膚の老化の軽減及び/又は予防及び/又は光で損傷を受けた皮膚上での作用;及び/又は皮膚の真皮中のデコリン(decorin)の形成の促進及び/又はにきびの治療及び/又は予防及び/又はセリュライト(cellulite)の治療及び/又は予防及び/又は体又は口の爽快さの増強を含む、使用に関する。あるいは、組成物は、また、化粧品用の局所塗布組成物中においても使用することができる。
【0011】
本発明者らが発見したその他の健康上の効果は以下の通りである:
ヒドロキノン置換された多不飽和脂肪酸は、トコフェロールのようなその他の公知の抗酸化剤よりもさらに高い予期されなかった良好な酸化防止活性を有する。この酸化防止活性は、油脂の酸化の遅延をもたらし、そしてさらにラジカルの存在に関連する疾病の発生を防ぐか又は遅らせるために使用することができた。
【0012】
従って、本発明は、また、コンボナット油中に存在するヒドロキノン置換された多不飽和脂肪酸、特にサルガヒドロキノン酸(=SHQA)又は、1乃至32個の炭素原子を有する脂肪酸のエステル、又は食品として許容可能なその塩のような、その誘導体の使用であって、当該ヒドロキノン置換された多不飽和脂肪酸又はその誘導体が、ラジカルの形成を防ぐか及び/又は油脂の酸化を遅らせるか及び/又はラジカルの存在に関連する哺乳類の病気の発生の予防するか又は遅らせるのを助けるために使用される、使用に関する。特に、SHQA又はその誘導体は、ガン及び/又はアルツハイマー病及び/又は関節炎及び/又は心循環器疾患の発生を予防するか又は遅らせるために使用される。
【0013】
このために使用される好ましい誘導体は、ヒドロキノン置換された多不飽和脂肪酸と6乃至20個の炭素原子、好ましくは14乃至18個の炭素原子、を有する直鎖の飽和及び/又は不飽和アルコールとのエステルである。その他の好ましい誘導体は、Na又はK又はCaのヒドロキノン置換された多不飽和脂肪酸塩である。なぜならば、これらの誘導体はより良好に溶解し、そしてさらに使用時にミネラルも提供するからである。
【0014】
適用することができるその他の好ましい誘導体は、SHQAのようなヒドロキノン置換された多不飽和脂肪酸のエステルであって、ヒドロキノン置換された多不飽和脂肪酸の1つ又は複数のヒドロキシル基が6乃至20個の炭素原子を有する直鎖の飽和及び/又は不飽和脂肪酸でエステル化されているものである。
【0015】
これらの新規な成分は酸化防止剤として非常に有効であるが、本発明者らは、その他の公知の酸化防止剤とそれらの混合物を使用することによって相乗効果を達成できることも発見した。従って、本発明のSHQA誘導体と有効量の1種以上のその他の酸化防止剤、好ましくは、天然又は合成のトコフェロール、トコトリエノール、BHT、TBHQ,BHA、没食子酸プロピル、ラジカル掃去剤、酸化防止特性を有する酵素、及び脂肪酸のアスコルビルエステルから成る群から選択されるもの、との混合物を使用するのが好ましい。
【0016】
本発明者らは、さらに、これらの置換された酸が有益なアセチルコリンエステラーゼ活性も有することを発見した。従って、これらの化合物は、また、認識機能、重症筋無力症、緑内障を改善するため、そして学習及び記憶を強化するためにアルツハイマー病においても使用することができる。ゼニカル(Xenical)(Orlistat)のような膵臓リパーゼ阻害剤は、胃腸管内における脂肪の加水分解及び脂肪の吸収を減少させて生体の体重を減少させることが知られている。従って、本発明の組成物は、体脂肪の蓄積を予防するか及び/又は減少させる能力を有し、そして肥満を防止するか及び/又は治療するのを助ける。さらに、これらの置換された酸は、痩身の促進に対する効果を有し、そして穏やかに便通をよくする効果を有する。
【0017】
その他の健康上の効果は、亜類型アルファ又はガンマのようなペルオキシソーム増殖剤活性化レセプター用の配位子として作用する本発明の置換された酸の作用を含む。これらの転写調節因子は、脂質とグルコースの両方の代謝の重要な調節剤であり、そして本発明の置換された酸はこれらの最適化を助ける。PPARアルファに帰するものとすることができた本発明の置換された酸の効果は、脂質の代謝の改善、高脂血症の抑制、及びガンの予防と治療の両方における補助を含む。
【0018】
インシュリンは、血液のグルコース濃度を正常で健康な限度内に維持するのに必須のホルモンである。インシュリンの作用が損なわれると、インシュリン抵抗性の人の状態において見られるように、これは多くの健康上の問題をもたらす可能性がある。短期間では、インシュリン抵抗性に関連する問題のタイプは、認識障害(劣った記憶力)、慢性疲労(活力の欠乏)及び気分変動を含む。より長い期間では、心循環器疾患、成人病タイプの糖尿病、及び多のう胞性卵巣症候群のような疾病の発生が一般的である。
【0019】
ペルオキシソーム増殖剤活性化レセプターガンマ(PPARガンマ)は、転写調節因子のPPARグループの一部を形成する核ホルモンレセプターである。これらは、ヘテロ二量体錯体(heterodimeric complex)中のDNAを第2の核ホルモンレセプターRXRと結合する、配位子活性化された転写調節因子である。PPARガンマは、炎症、ガン、認識及び細胞分化を含むその他の生物学的効果と共に、インシュリン感受性、血糖濃度の調節において役割を果たしていると考えられる。PPARガンマは、また、脂質の代謝の重要な調節剤であることも知られている。PPARガンマとのその相互作用のために、本発明の置換された脂肪酸は、インシュリン抵抗性及び、多のう胞性卵巣症候群、成人病タイプの糖尿病、妊娠性糖尿病、シンドロームX、高血圧症、脳卒中、グルコース代謝のような、関連する疾患に対して有益な効果を示す。効果は、血液のグルコース濃度の低減及び認識能力を含む。これらの置換された酸は、また、抗炎症性活性及び心循環器疾患、関節疾患、関節炎、ペクチン潰瘍疾患(pectic ulcer diseases)、炎症性腸疾患、炎症性皮膚疾患、神経変性疾患、及びアレルギーの予防又は治療に対する活性も有する。
【0020】
皮膚の老化防止特性は、皮膚のしわ、たるみ、線(lining)を減少させることにおいて利益を有する真皮の蛋白質のコラーゲン又はデコリンの水準を増やすのに非常に有用である。加齢斑点の減少、組織修復の増強、炎症を起こした、赤い又は敏感な皮膚の鎮静、及びきめの改善における利益に加えて、皮膚の滑らかさと堅さが本発明の組成物の使用によって得られる。さらに、本発明の新規な組成物は、例えば、苦味のある飲料又はほろ苦いチョコレート中において、苦味を達成するための風味剤として使用することもできる。
【実施例】
【0021】
実施例1
サルガヒドロキノン酸の膵臓リパーゼに対する効果
リパーゼ阻害アッセイ方法論
このアッセイは、550nmにおける血清中の膵臓リパーゼ活性の定量的動的決定のための比色シグマ(Sigma)アッセイ(Lipase−PSTM)から作成される。
【0022】
反応:血清膵臓リパーゼは、モノグリセリドと脂肪酸を形成する天然の1,2−ジグリセリドの加水分解を触媒する。このモノグリセリドはモノグリセリドリパーゼ(MGLP)によって加水分解されてグリセロールと脂肪酸を形成する。グリセロールは、その後、ATPの存在下にグリセロールキナーゼ(GK)によってホスホリル化されてグリセロール−3−ホスフェートを形成し、これはグリセロール−3−ホスフェートオキシダーゼ(GPO)によって酸化されてジヒドキシアセトンホスフェート(DAP)と過酸化水素(H)を形成する。その後、Hは、ペルオキシダーゼ(POD)の存在下に、4−アミノアンチピリン(4−AAP)及びナトリウムN−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−m−トルイド(TOOS)と反応してキノンジイミン色素を形成する。この色素は550nmで光を吸収する。550nmにおける吸収の増加の率は、サンプル中の膵臓リパーゼ活性に正比例する。
【0023】
反応体
シグマ診断用リパーゼ−PS反応体は、指示書に従ってもどされる。5μlの水(ブランクウェル)又はリパーゼ−PS標準サンプル、及び20μlのブランク溶媒(エタノール/THF/アセトン;60:20:20)又は溶媒中のサンプル(サルガヒドロキノン酸)と共に、基質溶液反応体(145μl)を3つずつ各々のウェルに添加する。プレートを攪拌しながら8分間室温でインキュベートする。リパーゼ−PS活性剤(50μl)を全てのウェルに添加し、550nmにおける吸収をマイクロタイター読み取り機上で、60秒ごとに読み取りながらそして各々の読み取りの前に振盪を行って、動的に0〜30分間測定する。6〜24分の直線範囲における読みの傾きを計算し、ブランクの平均の傾きを引く。結果は、+ve対照例より小さいか又は大きい、mOD/分として表される。対照サンプルの阻害%として表される最終結果が図1中に示されている。
【0024】
実施例2 − 老化防止効果
ヒトの真皮の繊維芽細胞中におけるプロコラーゲン−I及びデコリン合成の測定のための手順
真皮の繊維芽細胞の状態調節された媒体の調製
パッセージ(passage)2(P2)における一次(primary)ヒト包皮繊維芽細胞を12のウェルを有するプレートに10000細胞/cmの割合で播種し、そして10%の胎児の状態の子牛の血清で栄養補給されたダルベッコス改質イーグルス媒体(Dulbeccos Modified Eagles Medium)(DMEM)中において5%の二酸化炭素と4%の酸素の雰囲気中において24時間維持した。この時間の後、細胞を、血清を含まないDMEMで洗浄し、そしてその後新しい血清を含まないDMEM中でさらに60時間インキュベートした。繊維芽細胞の単層をその後再び血清を含まないDMEMで洗浄した。試験反応体(レチノイン酸又はサルガヒドロキノン酸)及びビヒクル対照例(DMSO中)を、0.4ml/ウェルの新しい血清を含まないDMEMの最終体積中の3つずつの細胞サンプルに添加し、そしてさらに24時間インキュベートした。この繊維芽細胞の状態調節された媒体を直ちに分析するか又は将来の分析のために液体窒素中でスナップ冷凍(snap frozen)し、−70℃で貯蔵した。細胞の数をその後数え、ドット−ブロット分析からのデータがその後細胞の数を標準化した。
【0025】
真皮の繊維芽細胞の状態調節された媒体中のプロコラーゲン−I及びデコリン蛋白質に対するドットプロットアッセイ
(対照例としての)ビヒクル又は試験反応体で処理された真皮の繊維芽細胞からの状態調節された媒体のサンプルを20mMのジチオスレイトール(200mM原料の溶液の1:10の希釈物)及び0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(10%原料溶液の1:100の希釈物)で補完し、十分に混合し、そしてその後75℃で2分間インキュベートした。このアッセイのための標準サンプルを、175cmのフラスコ中10000細胞/cmの割合で播種された繊維芽細胞からの生の繊維芽細胞の状態調節された媒体の連続的な希釈によって生成し、上述した血清を含まないDMEM中で維持した。
【0026】
アッセイサンプルを、その後、製造業者のガイドラインに記載されているようにバイオ−ラド(Bio−Rad)からの96のウェルのバイオ−ドット(Bio−Dot)装置を使用してインモビロン(Immobilon)−P移動膜(transfer membrane)の予め濡らされたシートの上に3つずつ塗布した。約200μlの媒体がウェル1個当たりに適用された。媒体を重力下に膜を通して濾過し(30分間)、その後膜をPBS(200μl)で2回洗浄した。これらのPBS洗浄液を重力下に膜を通して濾過した(2×15分間)。バイオ−ドット装置をその後真空マニホールドに取り付け、そして3回目と最後のPBS洗浄を吸引下に行った。装置を分解し、膜を取り出し、そして必要に応じて速やかに切断し、その後遮断緩衝液中に4℃で一晩入れた。
【0027】
デコリン分析用に調製された膜は、PBS中3%(w/v)BSA/0.1%(v/v)トゥイーン(Tween)20で遮断された。次の日に、膜を、ヒトのデコリンに対する一次抗体(primary antibodies)(ウサギのポリクローナル生物発生)の1:10000希釈物を使用して室温で2時間精査した。これらの膜をその後TBS/0.05%トゥイーン20で洗浄し(3×5分間)、そしてその後室温で1時間の間必要に応じて125I−結合された抗ネズミ又は抗ウサギF(ab’)2断片(Amersham)の1:1000希釈物を使用してインキュベートした。
【0028】
これに続いて、インモビロンの細長い片をTBS/トゥイーン20で再び洗浄し(3×5分間)、その後室温の空気中で乾燥させた。乾燥した膜をセロファンで包み、そしてモレキュラーダイナミクス貯蔵燐光スクリーン(Molecular Dynamics storage phosphor screen)に16〜18時間さらした。この時間の終わりに、さらされたスクリーンを、ImageQuantTMソフトウェアを使用する燐光造影機(phosphorimager)(モレキュラー・ダイナミクス・ホスファーイメージャー・SF(Molecular Dynamics Phosphorimager SF))によってスキャンした。ImageQuantTM中の定量化ツールを使用するコンピューターによる像の分析によってドット強度を評価し、細胞の数に対して標準化し、そしてSHQAのような活性成分のデコリンの合成に対する効果を、任意の単位の100のビヒクルで処理された対照例の値に比較して、決定した。レチノイン酸対サルガヒドロキノン酸の効果の比較を図2に示す。
【0029】
皮膚中のデコリンの水準は皮膚の改善された状態と外観に関係する。皮膚中のデコリンの水準の増加は、皮膚中のコラーゲンの制御された正しい付着にとって重要であり、これはしわの消失及び光で損傷を受けた皮膚の真皮の修復のような多くの皮膚の利益に関係する。サルガヒドロキノン酸はデコリンの生産を増強し、この効果はレチノイン酸について観察されたものと同様である。
【0030】
実施例3 − サルガヒドロキノン酸のPPARαに対する効果(レポーター遺伝子アッセイ)
細胞培養液及びレポーター遺伝子アッセイ
Cos−7細胞(ECACC No. 87021302)を10%FCS(胎児の状態の子牛の血清)を有するDMEM中において37℃、5%COで80%の融合(confluency)まで通常通りに成長させた。一時的トランスフェクション(transfections)は製造業者(GibcoBRL)によって記載されたように行った。簡単に述べると、細胞を24のウェルのプレート中にウェル1個当たり50,000細胞の割合でプレートアウトし、そして10%FCSを有するDMEM中において37℃、5%COで一晩インキュベートした。細胞をその後リポフェクト(Lipofect)AMINE反応体を使用してトランスフェクトした。各々のウェルに対して、25μlのDMEM中の0.5μgのDNAミックス(「対照例」細胞に対してはpPPRETK−luc 0.40μg;pRL−TK 0.04μg;pcDNA3.1(−) 0.03μg;pRSV 0.03μg;「プラスRXR」細胞に対してはpPPRETK−luc 0.40μg;pRL−TK 0.04αg;pcDNA3.1(−) 0.03μg;pRSV/RXRα 0.03μg;「プラスPPARα」細胞に対してはpPPRETK−luc 0.40μg;pRL−TK 0.04μg;pcDNA3.1(−)/PPARα 0.03μg;pRSV 0.03μg)を1μlのリポフェクトAMINEを使用して、そしてまた25μlのDMEM中において45分間インキュベートした。混合物をその後ウェル1個当たり250μlまで補い、そして細胞に添加したが、細胞は1mlのDMEMで洗浄されていたものであった。細胞をその後37℃、5%COで5時間インキュベートし、そして20%のSBCS(チャコールでストリッピングされた子牛の血清;Sigma)を含む250μlのDMEMを添加した。細胞を37℃、5%COで18時間回復させ、その後処理した。トランスフェクションミックスを細胞から取り除き、そして処理ミックス(DMSO又は10μMのサルガヒドロキノン酸)で置換し、そして37℃、5%COで24時間インキュベートした。サルガヒドロキノン酸はDMSO中の10mMの原料として作製し、そして10%のSBCSを含むDMEM中に1000倍まで希釈し(ウェル1個当たり500μl)、その後直ちに細胞に添加した。各々の処理は3つずつ行われた。細胞をその後1mlのPBS(カルシウムもマグネシウムも含まない)で洗浄し、そしてウェル1個当たり100μlの1xパッシブリシス緩衝液(Passive Lysis Buffer)(プロメガ・デュアル・ルシフェラーゼ(Promega Dual Luciferase)アッセイキットと共に供給されたもの)で溶解させた。溶解を15分間継続させ、そしてその後溶解物をプロメガ・デュアル・ルシフェラーゼアッセイキットを使用してホタル(Firefly)とレニラ(Renilla)のルシフェラーゼ活性に関して検査した。この検査のために、20μlの溶解物を採取し、そしてMLXマイクロタイタープレート照度計(Dynex)を使用してキットの指示書に記載されているように検査した。
【0031】
図3に示されているように、SHQAはRXR配位子であるよりもむしろPPARアルファである。PPARアルファ活性化に関連する健康上の効果は、脂質代謝の最適化、ガンの予防と治療、抗炎症効果を含む。
【0032】
実施例4 − サルガヒドロキノン酸のPPARγに対する効果(レポーター遺伝子アッセイ)
レポーター遺伝子アッセイ
このアッセイはKliewerらによって記載されたものに基づく(Nature 358 771−774 1992)。簡単に述べると、cos−7細胞(ECACC No. 87021302)を24のウェルのプレート中に0.325×10細胞/ウェルの密度で播種した。細胞を、10%のFCS、2mMのL−グルタミン、100iu/mlのペニシリン及び100g/mlのストレプトマイシンを含むDMEM中において37℃/5%COで一晩成長させた。細胞をトランスフェクション媒体(2mMのL−グルタミンを含むDMEM)で洗浄し、その後以下の4つのプラスミドで一時的にトランスフェクトした:PPAR−応答性のホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子(pPPRE3TK−luc);ヒトのPPARγ1及びRXRα cDNAsをそれぞれ含む哺乳類の発現プラスミド(pcDNA3/hPPARγ1及びpRSV/hRXRα)及びレニラルシフェラーゼ遺伝子を構造的に発現する対照例プラスミド(pRLTK、プロメガ)。トランスフェクションは、製造業者によって指示されたように、リポフェクトアミン(Gibco Brl)を使用して行った。トランスフェクトされた細胞を37℃/5%COで6時間インキュベートし、そしてその後配位子の存在下又は不存在下にさらに46時間インキュベートした。46時間後、細胞の溶解物を調製し、そしてホタル及びレニラルシフェラーゼの水準をデュアル・ルシフェラーゼアッセイ系(プロメガ)及びMLXマイクロタイタープレート照度計(Dynex)を使用して決定した。ホタルルシフェラーゼの水準(レニラルシフェラーゼ対照例に対して規格化されたもの)は、レポーター遺伝子活性の目安を提供する。これは次にPPARγ活性化の水準を反映する。
【0033】
図4は、サルガヒドロキノン酸がPPARγの良好な活性化を与えることを示す。SHQAは、短期間においては、慢性疲労、認識障害(記憶)及び気分変動を含む、状態の範囲内において利益を有する。長期的な利益は、心循環器疾患(脂質の低下)、成人病タイプ糖尿病(高齢者に一般的)及び多のう胞性卵巣症候群に焦点が合わされるだろう。
【0034】
実施例5 − サルガヒドロキノン酸の微生物数及び生体内変化に対する効果
体上又は口中の微生物相の減少及び脂肪酸の揮発性脂肪酸への生体内変化の抑制は、体又は口中の悪臭の低減において有益である。
【0035】
防臭剤活性成分としてのサルガヒドロキノン酸の生体外評価
セオリネバクテリア(ceorynebacteria)Aによる脂肪酸異化を再現する生体外モデル系は、250mlの邪魔板付振盪フラスコから成り、これに脂肪酸基質(2.0mg/mlのペンタデカン酸)及び非脂肪酸基質(0.5mg/mlのグルコース)で栄養補完された30mlの半合成媒体(以下を参照のこと)を添加した。この系を潜在的防臭剤活性成分としてのサルガヒドロキノン酸を評価するために使用した;(対照例以外の)各々フラスコに、(1分の間に24000rpmのウルトラ均質化によって形成された)5.0mg/mlのアラビアガムで栄養補完された半合成媒体中の25g/lの原料エマルジョンから、サルガヒドロキノン酸の特定投与量を添加した。フラスコを新しいバクテリアのバイオマス(コリネバクテリアA NCIMB 40928)で接種し、TSBT(以下を参照のこと)中で24時間予め成長させて、約1.0の開始光学濃度(A590)を与えた。接種に続いて、フラスコを攪拌しながら(130rpm)35℃で好気的にインキュベートし、そして24時間後に分析した。培養液の生存可能性は、4分の1濃度のリンガー液中への連続的希釈に続くTSATプレート(以下を参照のこと)上での全生存可能カウント(total viable count)(TVC)分析によって決定した。脂肪酸濃度はキャピラリーガスクロマトグラフィー(GC)(以下を参照のこと)によって決定したが、一方、残留グルコース濃度は、レフロフラックス(Refloflux)Sグルコースメーター(Boehringer Mannheim)と組み合わせて使用される血液グルコース試験ストリップ(blood glucose test strips)(BM−試験 1−44;Boehringer Mannheim)で測定された。「亜致死(sub−lethal)」効果は、付随するコリネバクテリアAの生存可能性の減少(≦1 log10 CFU/mlの減少)又はグルコースの利用の減少(≦10%の減少)を伴わない、脂肪酸異化の有意の抑制、典型的にはペンタデカン酸利用の50%より大きい抑制、として定義される。これらの定義された境界の一方又は両方の外側においては、効果は「抗菌」として定義することができ、ここで、「抗菌」は静菌効果と殺菌効果の両方を含む。
【0036】
腋窩のバクテリアの成長及び維持に使用されたトゥイーンで栄養補完されたトリプトン大豆ブイヨン及び寒天(TSBT及びTSAT)の組成(g/l):トリプトン大豆ブイヨン(30.0);イーストエキス(Beta Lab)(10.0);トゥイーン(Tween)80TM(1.0);±寒天(20.0)。コリネバクテリアAによる脂肪酸の異化をシミュレートする生体外系において使用された半合成媒体の組成(g/l):KHPO(1.6);(NHHPO(5.0);NaSO(0.38);イースト窒素ベース(Yeast Nitrogen Base)(Difco)(3.35);イーストエキス(Beta Lab)(0.5);トゥイーン(Tween)80TM(0.2);トリトン(Triton)X−100TM(0.2);MgCl・6HO(0.5)。
【0037】
フラスコ中の脂肪酸濃度をキャピラリーGC分析によって決定した。初めに、各々のフラスコからの5.0mlのアリコートをユニバーサルチューブに移し;内部標準(ラウリン酸、1.0mg/mlの最終濃度)を各々のチューブに添加し、そして培養媒体を塩酸の添加によって酸性化した(pH約2)。その後、2体積(10ml)の酢酸エチルを使用して液−液抽出を行い;有機相と水性相を遠心分離(2000rpm、3分間)によって分離させた。15m×0.32mm(内径)のFFAP(ニトロテレファリン酸(nitroterephalic acid)改質PEG/シロキサンコポリマー)石英ガラスキャピラリーカラム(フィルム厚 0.25mm)(Quadrex)を備えたパーキン・エルマー(Perkin Elmer)8000(シリーズ2)上での分析の前に、各々の有機(上)相の約0.75mlをその後サンプリングバイアルに移した。このカラムをGCの分割−非分割(split−splitless)インジェクター及び水素炎イオン化検出器(FID)に接続したが、インジェクターと検出器の温度は各々300℃であった。カラム用のキャリヤーガスはヘリウム(6 psi(41.37kPa))であり、一方、水素(17psi(117.215kPa))及び空気(23psi(158.585kPa))がFIDに供給された。脂肪酸分析のための温度プログラムは、80℃(2分);80〜250℃(20℃/分);250℃(5分)であった。注入用のサンプルの量は0.5〜1.0μlであった。フラスコ中の脂肪酸濃度は、内部(ラウリン酸)標準及び外部で試験された(ペンタデカン酸)標準の両方の既知濃度とのピーク面積の比較によって定量化された。
【0038】
結果
【表1】

【0039】
ペンタデカン酸の利用の明確に示される亜致死的抑制における効果:その他の効果は抗菌(静菌又は殺菌)的抑制によるものであるか、又は、括弧内にある場合、有意ではない。
【0040】
実施例6
コンボナットからのサルガヒドロキノン酸(SHQA)含有抽出物の酸化防止活性
分析の方法:ランシマット(Rancimat)
全ての油脂は、飽和の程度、天然又は添加された酸化防止剤及び酸化促進剤によって異なる酸化に対する抵抗を有する。酸化はこの抵抗が克服されるまではゆっくりであるが、その克服された時点で酸化は加速し、非常に速くなる。酸化のこの急速な加速の前までの時間の長さは酸化に対する抵抗の目安であり、そして一般的に「誘導期間」と呼ばれる。
【0041】
動物性及び植物性の油脂の酸化安定性の決定方法。
【0042】
この方法は、スウィフト(Swift)誘導期間試験による油脂の酸化安定性の決定を説明する。きれいな空気の流れを、90℃と140℃の間に加熱されているサンプルに通す。酸化によって形成した放出ガスは、空気の流れによって水を含む測定容器中に通される。水の導電性がメトローム・ランシマット(Metrohm rancimat)によって測定され、登録される。分解成分による導電性の増加は、誘導期間の終わりを意味する。スウィフト誘導期間は時間単位で測定される。
【0043】
反応体及び装置
アセトン
モレキュラーシーブ
ガソリン(petrol)エーテル
メトローム・ランシマット(Metrohm rancimat)743
法律的にスタンプされた(legally stamped)温度計。
【0044】
サンプルの調製
ヒマワリ油に、異なる濃度のトコミックス(tocomix)及びSHQA含有抽出物を添加した(表を参照のこと)。サンプルの量:約3g。
【0045】
サンプルの貯蔵
調製とランシマットの測定の間、サンプルはガラス又はコルク製の栓を使用して直ちに密封され、そして冷蔵庫中に貯蔵されなければならない。ランシマットはできるだけ速やかに測定される。
【0046】
【表2】

【0047】
結論
SHQA抽出物を含むヒマワリ油についての全ての場合において、トコミックスを含むヒマワリ油と比較して、より長いスウィフト誘導期間が測定された。従って、SHQA含有抽出物については、トコミックスよりも高い酸化防止剤活性が示された。
【0048】
実施例7: コレステロールエステラーゼ阻害剤としてのサルガヒドロキノン酸(SHQA)
方法論
全てのアッセイ材料は、バイオザイム・ラボラトリーズ・リミテッド(Biozyme Laboratories Ltd.)から得られたコレステロールエステラーゼを除いて、シグマ(Sigma)から得た。サルガヒドロキノン酸(SAQA、約90%の純度)はコンボナットのヘキサン抽出とそれに続くシリカクロマトグラフィーによって得た。
【0049】
脂肪相の調製
コレステロール、オレイン酸、及びSHQAを、この混合物を溶解するのに十分なジエチルエーテルと共に、秤量して8mlのバイアルに入れた(6mlのジエチルエーテル中0.018gのコレステロール、0.009gと0.036gの間のSHQA、及び0.09gのオレイン酸)。乾燥窒素の流れを使用して、エーテルを乾燥するまで蒸発させた。
【0050】
アッセイ緩衝液の調製
タウロコール酸ナトリウム、ウシ血清アルブミン、及び塩化アンモニウムをpH6.2の0.154mM燐酸塩緩衝液中に溶解した(典型的には0.52gのタウロコール酸ナトリウム、0.23gのウシ血清アルブミン、及び0.18gの塩化アンモニウムを50mlの緩衝液中に溶解した)。
【0051】
エステラーゼ溶液の調製
コレステロールエステラーゼ(バイオザイム製、源ブタの膵臓)をpH6.2の0.154M燐酸塩緩衝液中に溶解した。
【0052】
検定方法
アッセイ緩衝液(6ml)を、回転混合機を使用して混合された乾燥脂質混合物に添加し、その後超音波浴中に60℃で30分間入れた。バイアルを密封し、そして37℃の振盪水浴(200振盪/分)に15分間移した。6mlのエステラーゼ溶液を添加し、そしてバイアルを再び密封して37℃で振盪した。エステラーゼの添加の直後と1時間の振盪後に、1mlのサンプルを採取し、これらを3mlのイソプロパノールに添加し、80℃で30分間加熱して、エステラーゼ活性を破壊し、そして蛋白質物質を沈殿させた。これらのサンプルを濃塩酸で酸性化し、4mlの水を添加し、そして暖かいジエチルエーテルの2つのアリコートで抽出された脂質を、その後硫酸ナトリウムで脱水した。ジエチルエーテルを除去し、そして抽出された脂質を200μlのビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(BSFTA)及び100μlのピリジンと共に30分間加熱することによってシリル化し、その後炭素数GCによって分析した。
【0053】
図5中に示されているように、SHQAの存在はコレステロールのオレイン酸コレステロールへの転化を阻害した。これはコレステロールエステラーゼの阻害を反映する。
【0054】
SHQAの添加のアセチルコリンエステラーゼの活性に対する効果
アセチルコリンエステラーゼ活性をエルマンの方法(Ellmans method)(G.I Ellman, D. Courtney, V. Andres Jr., R.M. Featherstone Biochem. Pharmacol. 7 (1961) 88.)に基づいて96のウェルのマイクロプレートリーダーを使用して測定した。
【0055】
SHQA(シリカクロマトグラフによって精製されたもの)をエタノール/テトラヒドロフラン/アセトンの60/20/20の混合物に100mg/mlの濃度で溶解した。連続的な希釈をその後必要に応じて行った。これらの溶液をpH8の50mMトリス−HCL緩衝液を使用してさらに10分の1に希釈した。
【0056】
SHQA溶液(20μl)、沃化アセチルチオコリン(ACTI;25μl 水中15mM)、ジチオビスニトロ安息香酸(DNTB;125μl 0.1MのNaCl及び0.02MのMgCl・6HOを含むpH8の50mMトリス−HCL緩衝液中3mM)、トリス−HCL緩衝液(50μl;0.1%のウシ血清アルブミンを含む50mM pH8)を電気ウナギからのアセチルコリンエステラーゼ(シグマVI−s型 凍結乾燥粉末)(20μl 0.1%のウシ血清アルブミンを含むpH8の50mMトリス−HCL中1.5μg/ml)と共にウェルに入れた。
【0057】
吸収を410nmにおいて13秒ごとに8回測定した。試験材料のODの変化の割合をブランク溶液と比較した。
【0058】
図6に示されているように、SHQAがアセチルコリンエステラーゼ活性を阻害することが示された。
【0059】
実施例8
コンボナット油の抗炎症効果
ヒトの皮膚の繊維芽細胞によって製造されるプロスタグランジンE2(=PGE2)の生産が炎症モジュラス(inflammatory modulus)ホルボールミリステートアセテート(PMA)によって誘引された後測定される生体外試験によって、抗炎症効果が決定された。PGE2の水準の低下は抗炎症効果を示す。
【0060】
パッセージ2(P2)の一次(primary)ヒト包皮繊維芽細胞を96のウェルのプレート中に10000細胞/ウェルの割合で播種し、そして10%の胎児状態の子牛の血清で栄養補完されたダルベッコス改質イーグルス媒体(Dulbeccos Modified Eagles Medium)(DMEM)中において5%の二酸化炭素の雰囲気中において24時間維持した。(SHQAを含む)コンボナット油鹸化可能物を3つのエタノール中の新しい細胞媒体(最終濃度1%)に添加し、そしてさらに24時間インキュベートした。エタノール/細胞媒体中のPMAをこの媒体に添加し、そして細胞をさらに24時間インキュベートした。PMAは、細胞中において酸化的ストレスと炎症反応を引き起こす外部ストレッサーとして作用する。繊維芽細胞/媒体をその後直ちに以下に記載したように分析するか、又は将来の分析のために液体窒素中でスナップ冷凍し−70℃で貯蔵した。
【0061】
プロスタグランジンE2(PGE2)アッセイ 培養プレートを穏やかに振盪した後、50μlの体積の培養媒体をPGE2アッセイのために採取した。媒体中のPGE2濃度はバイオトラク(Biotrak)PGE2免疫学的検定キット(アマーシャム(Amersham)、UK)を使用して決定した。この検定は、限定された量の固定されたPGE2特異性抗体に対するサンプル中の標識付けされていないPGE2と西洋ワサビペルオキシダーゼで標識付けされたPGE2の固定された量との間の競合に基づく。標識付けされていないサンプルPGE2の濃度は、同時に得られた標準曲線に従って決定される。
【0062】
PGE2濃度に対するコンボナット油鹸化可能物の効果を図7に示す。
【0063】
グラフ(図7)は、PMAのような炎症刺激による繊維芽細胞への挑戦がPGE2の生産によって測定される炎症反応の増加を生じさせることを示す。サルガヒドロキノン酸を含むコンボナット油鹸化可能物(saps)は、0.1ng/mlの水準においてさえ、PGE2の生産によって測定される炎症反応を劇的に減少させる。−良好な抗炎症活性。
【0064】
実施例9 食品用途について
材料及び方法
SHQAの製造
SHQAの製造を以下のように行った:
− コンボナットの殻剥き
− 油を抽出するための殻剥きされたコンボナットの圧搾、
− 油の濾過、
− SHQA塩を得るための濾過された油の中和、
− 酸性化によるSHQAの回収。
【0065】
SHQAの純度は約75%であった。残りの25%は、グリセリド、遊離脂肪酸(ffa)、及び水から主に成った。
【0066】
パネリング
SHQAの富化された食品生成物を、SHQAが存在しない参照例で製造されたものと比較した。
【0067】
A:ミューズリバー(Muesli bars)
結合混合物の調製
【表3】

【0068】
脂肪の約89%を、スキムミルク粉末、氷砂糖、クリームバニリン、及びレシチンとボールミル中において40分間混合した。残りの脂肪との攪拌によってSHQAを均一に混合し、そしてその後結合混合物に添加した。SHQAを含まない結合混合物を参照例として使用した。
【0069】
ミューズリバーの調製
55%の結合混合物を25%のミューズリ混合物(スーパーマーケットタイプ)、10%のビスケット再生物(rework)、及び10%のライス・クリスプ(rice crisps)と混合することによってバーを製造した。混合物をその後型中でプレスして成型し、冷却し、型から外し、コーティングし、そして冷却した。
【0070】
以下の属性が評価された:
● ミューズリバーのバリバリ感(crunchiness)
● 全体的外観
● 全体的きめ。
【0071】
結論
パネリングの結果から以下の結論を引き出すことができた:
◆ バーの全体的きめ、バリバリ感、及び全体的外観は、SHQAの富化された結合混合物を含むバー及び参照例のバーにおいて同等であった;
◆ 結合混合物へのSHQAの添加は混合物をわずかに粘着性にし、そして従ってそれは型外し工程に対して小さい負の影響を有した。しかしながら、より大きい粘着性はバーの品質に悪影響しなかった。
【0072】
B: パンの調製
【表4】

【0073】
予め85%の水中に分散させられたイーストを小麦粉及び塩と混合した。SHQAエキス及び残りの水を添加し、そしてドウが形成されるまで混合を続けた。
【0074】
40分間の発酵と再加工(3回行われた)の後、パンを270℃で35分間焼いた。SHQAを含まないパンを参照例として使用した。
【0075】
パネリング
以下の属性をパンにおいて評価した:
◆ ドウのコンシステンシー
◆ 構造
◆ 全体的外観
◆ 風味
◆ 柔らかさ及び体積
◆ 噛み心地(chewiness)。
【0076】
結論
試験の結果から、以下の結論を引き出すことができた:
◆ ドウのコンシステンシー、構造、柔らかさ、体積及び噛み心地は、SHQAの富化されたパン及び参照例のパンにおいて同等であった。
◆ SHQAの富化されたパンの色の小さい相違が検知されたが、パンの品質に影響することはなかった。
◆ SHQAのパンでの添加は、製造中及び焼成中のドウの特性に影響しなかった。
【0077】
C:ミューズリバー用のコーティング
◆ コーティングの調製
【表5】

【0078】
脂肪、SHQA及びレシチンを除く全ての成分をホバート(Hobart)ミキサー中で混合した。できるだけ少ない脂肪を混合物に非常にゆっくりと、ドウが形成されるまで、添加した。ドウをその後レファイニングしそしてコンチングし、全脂肪の6%を除いて残りの脂肪をコンチに添加した。コンチングプロセスの終わりの15分前にレシチンを最後に添加した。残された脂肪と攪拌することによってSHQAを均一に混合し、そしてその後コーティング混合物に添加した。SHQAを含まないコーティングを参照例として使用した。
【0079】
ミューズリバーの調製
ミューズリバーをコーティングし、そして冷却トンネル中で冷却した。
【0080】
パネリング
SHQAの富化されたコーティングでコーティングされたバーを標準的コーティングでコーティングされたバーと比較した。
【0081】
以下の属性をコーティング中において評価した:
● 全体的外観
● 全体的きめ。
【0082】
結論
パネリングの結果から、以下の結論を引き出すことができた:
◆ SHQAのコーティング混合物への添加は製造及びコーティング工程中のコーティング混合物の特性に影響しなかった。
◆ SHQAの富化されたバーの全体的なきめは参照例のバーのものと同等であった。
◆ SHQAの富化されたバーのコーティングの色は、参照例のバーのものよりもわずかに暗かった。しかしながら、色の相違は否定的に見られなかった。
【0083】
D:アイスクリーム
アイスクリームの調製
【表6】

【0084】
砂糖、ミルク粉末、及びデキストロースを混合し、そして水に添加した。混合物を70℃まで加熱し、シロップを添加した。脂肪/SHQAブレンド及び乳化剤をその後添加した。エマルジョンをウルトラ−ターラックス(ultra−turrax)で攪拌し、20℃まで冷却し、そしてウルトラ−ターラックスで再び攪拌した。エマルジョンを7℃の冷蔵庫中で一晩放置した。エマルジョンをその後、予め−20℃で24時間冷却されたアイスクリーム機械中で40分間攪拌した。SHQAを含まないアイスクリームを参照例として使用した。
【0085】
パネリング
SHQAの富化されたアイスクリームを参照例のアイスクリームと比較した。
【0086】
以下の属性がアイスクリームにおいて評価された:
● 全体的外観
● 融解
● 全体的きめ。
【0087】
結論
試験の結果から、以下の結論を引き出すことができた:
◆ SHQAの富化されたアイスクリームの融解は、参照例のアイスクリームのものと同等であった。
◆ 参照例のアイスクリームと比較した場合、SHQAの富化されたアイスクリームの色ときめにおいて小さい相違が検知された。しかしながら、そのような相違は、アイスクリームの全体的品質を損なわなかった。
◆ SHQAのアイスクリームへの添加は、加工中のアイスクリーム混合物の特性に影響しなかった。
【0088】
E:脂肪に基づくスプレッド
脂肪に基づくミントスプレッドの調製
【表7】

【0089】
脂肪の約93%を全クリームミルク粉末、スキムミルク粉末、氷砂糖、クリームバニリン、及びレシチンとボールミル中において40分間混合した。SHQAを攪拌によって残りの脂肪に均一に混合し、そしてその後スプレッド混合物に添加した。SHQAを含まないスプレッドを参照例として使用した。
【0090】
パネリング
SHQAを含むスプレッドを参照例のスプレッドと比較した。
【0091】
以下の属性をスプレッドにおいて評価した:
● 全体的きめ
● 全体的外観
● 延展性(spreadability)。
【0092】
結論
パネリングの結果から、以下の結論を引き出すことができた:
◆ SHQAで富化された脂肪に基づくミントスプレッドの全体的きめ、延展性、及び全体的外観は、参照例のものと同等であった。
◆ 小さい色の相違が参照例と富化されたスプレッドの間で検知されたが、スプレッドの品質に悪影響することはなかった。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】サルガヒドロキノン酸の膵臓リパーゼに対する効果を示すグラフである(実施例1)。
【図2】サルガヒドロキノン酸のデコリンの生産に対する効果を示すグラフである(実施例2)。
【図3】サルガヒドロキノン酸のPPARα及びRXRに対する効果を示すグラフである(実施例3)。
【図4】サルガヒドロキノン酸がPPARγの良好な活性化を与えることを示すグラフである(実施例4)。
【図5】サルガヒドロキノン酸のコレステロールエステラーゼに対する効果を示すグラフである(実施例7)。
【図6】サルガヒドロキノン酸のアセチルコリンエステラーゼの活性に対する効果を示すグラフである(実施例7)。
【図7】コンボナット油鹸化可能物のPGE2濃度に対する効果を示すグラフである(実施例8)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量の健康成分を含む食品生成物であって、当該健康成分がコンボナット油抽出物中に存在するヒドロキノン置換された多不飽和脂肪酸、又は該不飽和脂肪酸と1乃至32個の炭素原子を有するアルコールとのエステル、又は食品として許容可能なそれらの塩である食品生成物。
【請求項2】
ヒドロキノン置換された多不飽和脂肪酸がサルガヒドロキノン酸(=SHQA)である、請求項1の食品生成物。
【請求項3】
食品組成物が脂肪に基づく組成物である、請求項1又は2の食品生成物。
【請求項4】
食品組成物が、マーガリン、脂肪連続又は水連続又は双連続スプレッド、低脂肪スプレッド、及び菓子生成物から成る群から選択される、請求項1乃至3のいずれか1請求項の食品組成物。
【請求項5】
菓子生成物が、チョコレート又はチョコレートコーティング又はチョコレートフィリング又はベーカリーフィリング、アイスクリーム、アイスクリームコーティング、アイスクリーム封入物、ドレッシング、マヨネーズ、チーズ、クリーム代替物、乾燥スープ、ドリンク、シリアルバー、ソース、及びスナックバーから成る群から選択される、請求項1乃至4のいずれか1請求項の食品組成物。
【請求項6】
封入材料中の又は顆粒中の又は粉末形態の、有効量の、コンボナット油抽出物中に存在するヒドロキノン置換された多不飽和脂肪酸、又は該不飽和脂肪酸と1乃至32個の炭素原子を有するアルコールとのエステル、又は食品として許容可能なそれらの塩を含む食品栄養補完物。
【請求項7】
ヒドロキノン置換された多不飽和脂肪酸がサルガヒドロキノン酸(=SHQA)である、請求項6の食品栄養補完物。
【請求項8】
封入材料が、ゼラチン、澱粉、改質澱粉、穀粉、改質穀粉、及び糖から成る群から選択される、請求項6又は7の食品栄養補完物。
【請求項9】
糖がスクロース、ラクトース、グルコース、及びフルクトース、から成る群から選択される、請求項8の食品栄養補完物。
【請求項10】
健康上の効果を有する食品組成物又は食品栄養補完物の調製のための有効成分としてのヒドロキノン置換された多不飽和脂肪酸、又は該不飽和脂肪酸と1乃至32個の炭素原子を有するアルコールとのエステル、又は食品として許容可能なそれらの塩を含む組成物の使用であって、コンボナット油又はそれの抽出物中に存在するヒドロキノン置換された多不飽和脂肪酸又はそのエステル又は塩が、以下の効果:
(i)リパーゼ阻害剤としての作用、
(ii)ペルオキシソーム増殖剤活性化レセプター亜類型アルファ又はガンマに対する配位子としての作用、
(iii)油脂の酸化を遅らせること、
の少なくとも1つを有する食品組成物又は食品栄養補完物の調製のために使用される、使用。
【請求項11】
組成物又は食品栄養補完物が膵臓リパーゼに対する阻害剤としての作用を有する、請求項10の使用。
【請求項12】
ヒドロキノン置換された多不飽和脂肪酸がサルガヒドロキノン酸(=SHQA)である、請求項10又は11の使用。
【請求項13】
組成物又は食品栄養補完物が、グルコース代謝及び/又は血液グルコースレベルの調節を最適化し、又はインスリン抵抗性に有益な効果を有するためのものである、請求項10乃至12のいずれか1請求項の使用。
【請求項14】
組成物又は食品栄養補完物が、2型糖尿病に有益な効果を有する、請求項10乃至12のいずれか1請求項の使用。
【請求項15】
組成物又は食品栄養補完物が、シンドロームXに有益な効果を有する、請求項10乃至12のいずれか1請求項の使用。
【請求項16】
組成物又は食品栄養補完物が、卒中に有益な効果を有する、請求項10乃至12のいずれか1請求項の使用。
【請求項17】
組成物又は食品栄養補完物が、高血圧に有益な効果を有する、請求項10乃至12のいずれか1請求項の使用。
【請求項18】
前記エステルが、ヒドロキノン置換された多不飽和脂肪酸と6乃至20個の炭素原子を有する直鎖の飽和及び/又は不飽和アルコールとのエステルである、請求項10乃至17のいずれか1請求項の使用。
【請求項19】
直鎖の飽和及び/又は不飽和アルコールが14乃至18個の炭素原子を有する、請求項18の使用。
【請求項20】
前記エステルが、ヒドロキノン置換された多不飽和脂肪酸の1つ又は複数のヒドロキシル基と6乃至20個の炭素原子を有する直鎖の飽和及び/又は不飽和脂肪酸とのエステルである、請求項10乃至18のいずれか1請求項の使用。
【請求項21】
ヒドロキノン置換された多不飽和脂肪酸の食品として許容可能な塩が、Na又はK又はCa塩である、請求項10乃至20のいずれか1請求項の使用。
【請求項22】
前記そのエステル又は塩が、有効量の1種以上のその他の酸化防止剤の混合物として使用される、請求項12乃至17のいずれか1請求項の使用。
【請求項23】
前記1種以上のその他の酸化防止剤が、天然又は合成のトコフェロール、BHT、TBHQ,BHA、没食子酸プロピル、フリーラジカル掃去剤、酸化防止特性を有する酵素、及び脂肪酸のアスコルビルエステルから成る群から選択される、請求項22の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−44046(P2007−44046A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−249367(P2006−249367)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【分割の表示】特願2002−259376(P2002−259376)の分割
【原出願日】平成14年9月4日(2002.9.4)
【出願人】(599063882)ロダース・クロックラーン・ビー・ブイ (5)
【Fターム(参考)】