説明

置換された1,4−キノンメチドの製造方法

【課題】大工業的に適用するために適切であり、ひいては経済的であり、かつ装置が保護される、置換された1,4−キノンメチドの製造方法を提供する。
【解決手段】3,5−二置換された4−ヒドロキシベンズアルデヒドと、オルトギ酸エステルおよびアルコールおよび/またはチオアルコールとを、触媒の存在下に、相応するアセタールへと反応させ、かつ引き続き相応するアセタールからアルコールまたはチオールを脱離させて置換された1,4−キノンメチドを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)により記載される置換された1,4−キノンメチドを、3,5−二置換された4−ヒドロキシベンズアルデヒドから製造する方法、ならびに3,5−二置換された4−ヒドロキシベンズアルデヒドを、相応する2,6−二置換されたフェノールから製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
7−メトキシ置換された1,4−キノンメチドおよび7−エトキシ置換された1,4−キノンメチドは、医薬作用物質を合成するための重要な、単離可能な中間生成物として文献中で公知である。さらに、いくつかの1,4−キノンメチドは、オレフィン不飽和モノマーの不所望の重合を回避するために使用することができる。
【0003】
2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシメチレンシクロヘキサン−2,5−ジエノンもしくは2,6−ジ−t−ブチル−4−エトキシメチレンシクロヘキサン−2,5−ジエノンの製造は、Inagaki等が、J.Org.Chem.2002、67、第125〜128頁ならびにEP0626377A1に記載している。ここでは、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンズアルデヒドと、過剰のオルトギ酸トリメチル、無水メタノールおよびキシレンとからなる混合物を、触媒としての塩化アンモニウムの存在下に、反応混合物を還流下に数時間加熱することによって、相応するアセタールへと反応させている。引き続き蒸留を行い、キシレンを追加の溶剤として添加し、冷却し、かつ次いで触媒である塩化アンモニウムを濾別する。アセタールからアルコールを脱離させて置換された1,4−キノンメチドを得るために、いずれの刊行物においても濾液を加熱することによってメタノールおよびキシレンを留去している。この場合、生成物は濃縮され、濾別され、引き続きヘキサン中で、もしくは石油エーテルとリグロインとからなる混合物中で再結晶化される。
【0004】
オルトギ酸エステルおよび/またはアルコールとの反応による、3,5−二置換された4−ヒドロキシベンズアルデヒドの相応するアセタールの製造は、多数の刊行物が記載している:
Orlandoは、J.Org.Chem.1970、35、第3714〜3717頁に、Inagaki等の両方の刊行物に記載されている方法とほぼ同一のアセタールの製造方法を記載している。ここでも3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンズアルデヒドと過剰のオルトギ酸トリメチルおよび無水アルコールとを、触媒としての塩化アンモニウムの存在下に還流下で加熱しているが、しかしこの方法では追加の溶剤は使用されていない。アセタールは濾過後に濃縮および再結晶化によってヘキサンから単離される。
【0005】
Roth等もまた、J.Med.Chem.1988、31、第122〜129頁に、3,5−二置換された4−ヒドロキシベンズアルデヒドからアセタールを製造する方法を記載しており、ここでもまた3,5−ジイソプロピル−4−ヒドロキシベンズアルデヒド、オルトギ酸トリメチル、塩化アンモニウムおよびメタノールからなる混合物を、還流下に数時間加熱している。引き続き反応混合物を冷却し、水酸化アンモニウム水溶液を添加し、ジクロロメタンで抽出し、有機相を洗浄および乾燥させ、該相を濃縮乾固させている。所望のアセタールは次いで、高温のヘキサン中から晶出される。
【0006】
異なった触媒の存在下での、その他の4−ヒドロキシベンズアルデヒドとオルトギ酸トリメチルおよび/またはメタノールとのアセタールの製造は、多数の刊行物に記載されている。たとえばDu等は、Synthetic Communications 2005、35、第2703〜2708頁に、触媒としてのイオン性液体の使用を記載している。触媒としてアミドスルホン酸を使用することは、Gong等が、Synthetic Communications 2004、34、第4243〜4247頁に記載している。適切な触媒としてのテトラフルオロホウ酸リチウムは、Hamada等が、Synlett 2004、6、第1074〜1076頁に記載している。Ranu等が、触媒としての塩化インジウムの使用をAdv.Synth.Catal.2004、346(4)、第446〜450頁に記載している一方で、Gopinath等は、J.Org. Chem.2002、67、第5842〜5845頁に、触媒としての塩化アンモニウムテトラブチルの存在下でのアセタールの製造方法を記載している。触媒として毒性の高いデカボランを使用することは、Lee等が、Tetrahedron Letters 2002、43、第2699〜2703頁に記載している。三塩化ガリウムを含有するコポリマーは、Ruicheng等が、J.Macromol.Sci.−Chem.1987、A24(6)、第669〜679頁に適切な触媒として記載している。
【0007】
文献中には、3,5−置換された4−ヒドロキシベンズアルデヒドを製造するための多数の異なった方法が記載されている。この場合、主要な出発材料は、相応する2,6−二置換されたフェノールであるか、または2,6−二置換された4−メチルフェノールである。これらの3,5−置換された4−ヒドロキシベンズアルデヒドを製造する一つの可能性は、2,6−二置換されたフェノールをパラ位でウロトロピンによってホルミル化することである。
【0008】
従ってBolli等は、WO2006/100633A1およびWO2006/010544A2の両方のPCT出願において、2−エチル−6−メチルフェノールもしくは2,6−ジエチルフェノールと、過剰のウロトロピンとを、酢酸の存在下で反応させることを記載している。該反応混合物は第一の溶剤画分を留去した後で、還流下に3時間加熱され、水で希釈され、引き続き相応する4−ヒドロキシベンズアルデヒドを酢酸エチルで抽出する。収率は31%もしくは40%である。
【0009】
Unangst等は、J.Med.Chem.1994、37、第322〜328頁に、酢酸の存在下での3,5−ジフェニルフェノールと、過剰のウロトロピンとの反応を記載している。この場合、水を添加し、反応混合物を還流下に加熱し、蒸留液を114℃の温度が達成されるまで留去する。収率は64%である。
【0010】
Roth等は、81%の収率が得られる方法をJ.Med.Chem.1988、31、第122〜129頁に記載している。ここでは氷酢酸および水の存在下に3,5−ジイソプロピルフェノールを、過剰のウロトロピンと反応させており、ここでもまず蒸留液を取り出し、次いで反応混合物を還流下に加熱している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】EP0626377A1
【特許文献2】WO2006/100633A1
【特許文献3】WO2006/010544A2
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】、Inagaki等、J.Org.Chem.2002、67、第125〜128頁
【非特許文献2】Orlando、J.Org.Chem.1970、35、第3714〜3717頁
【非特許文献3】Roth等、J.Med.Chem.1988、31、第122〜129頁
【非特許文献4】Du等、Synthetic Communications 2005、35、第2703〜2708頁
【非特許文献5】Gong等、Synthetic Communications 2004、34、第4243〜4247頁
【非特許文献6】Hamada等、Synlett 2004、6、第1074〜1076頁
【非特許文献7】Ranu等、Adv.Synth.Catal.2004、346(4)、第446〜450頁
【非特許文献8】Gopinath等、J.Org. Chem.2003、67、第5842〜5845頁
【非特許文献9】Lee等、Tetrahedron Letters 2002、43、第2699〜2703頁
【非特許文献10】Ruicheng等、J.Macromol.Sci.−Chem.1987、A24(6)、第669〜679頁
【非特許文献11】Unangst等、J.Med.Chem.1994、37、第322〜328頁
【非特許文献12】Roth等、J.Med.Chem.1988、31、第122〜129頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、大工業的に適用するために適切であり、ひいては経済的であり、かつ装置が保護される、式(I)の置換された1,4−キノンメチドの製造方法を提供することであった。さらに、文献に記載されている7−メトキシ置換された1,4−キノンメチドおよび7−エトキシ置換された1,4−キノンメチドを製造することができるのみでなく、式(I)により記載されるその他の置換された1,4−キノンメチドも製造することができるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
意外なことに、式(I)により記載される置換された1,4−キノンメチドを製造するために、幅広く適用することができる方法が判明した。この方法はまず、式(II)の4−ヒドロキシベンズアルデヒドから出発して(チオ)アセタールを形成し、これをその後の工程で、熱により誘導されるアルコールまたはチオールの脱離によって直接所望の置換された1,4−キノンメチドへと反応させることができることを特徴とする。本発明によるこの方法により、文献に記載されている7−メトキシ置換された1,4−キノンメチドおよび7−エトキシ置換された1,4−キノンメチドを製造することができるのみでなく、全く新規な化合物を入手することもできる。
【0015】
本発明による方法では、(チオ)アセタールを形成するために、従来技術と比較して安価で毒性のない、かつハロゲン不含の触媒、たとえば有機スルホン酸、硫酸および/またはこれらの硫酸水素塩を触媒として使用することができる。従ってハロゲンフリーの製造が可能である。大工業的な方法ではこのことはまさに、反応器中でハロゲン化物を使用する場合の応力亀裂腐食の危険に基づいて、重要な利点である。全く意外であったのは、アセタール形成を触媒する、安価で毒性のない物質も使用することができたことでもあり、従来技術はこれに対してハロゲン含有化合物以外では、高価で毒性を有するか、かつ/またはCMR活性化合物、たとえばデカボランを触媒として提案しているのみである。
【0016】
さらに、触媒の割合は、従来技術による方法と比較して低減することができ、その際、意外にも、反応率は僅かに上昇し、かつ場合によっては予測されるような低下は示さない。さらに従来技術による多数の方法と比較して、高価な原料であるオルトギ酸エステルの割合を明らかに低減することができ、その際、90%を上回る一定した反応率が達成される。本発明による方法は、第一の方法段階で追加の溶剤を使用しなくても行うことができるため、さらに空時収率を明らかに改善することができる。
【0017】
本発明による方法では、式(II)の3,5−二置換された4−ヒドロキシベンズアルデヒドを原料として使用し、この発明の範囲では、前方接続された方法工程もまた、2,6−二置換されたフェノールからの3,5−二置換された4−ヒドロキシベンズアルデヒドの製造を改善することができた。従って、添加の順序を変更することによって、ならびに還流温度を下回る反応温度を使用することによって、80%を超える収率を達成することができるということは全く意外なことである。さらに意外であったことは、使用される2,6−二置換フェノールに対するウロトロピンのモル量を1:1より低下させることができ、これによって収率の低下に甘んじる必要がないことである。
【0018】
従って本発明の対象は、式(I)
【化1】

[式中、
1、R2は、相互に無関係に水素、(C1〜C15)−アルキル、(C3〜C15)−シクロアルキルまたは(C6〜C14)−アリールを表し、これらは置換されているか、または置換されておらず、
7は、(C1〜C15)−アルキル、(C3〜C15)−シクロアルキルまたは(C6〜C14)−アリールを表し、これらは置換されているか、または置換されておらず、かつ
Xは、O、Sを表す]の置換された1,4−キノンメチドの製造方法であって、式(II)の3,5−二置換された4−ヒドロキシベンズアルデヒド
【化2】

[式中、R1およびR2は、式(I)中と同じ意味を表す]と、式(III)
【化3】

[式中、
4、R5、R6は、相互に無関係に(C1〜C15)−アルキル、(C3〜C15)−シクロアルキルまたは(C6〜C14)−アリールを表し、これらは置換されているか、または置換されていない]のオルトギ酸エステル、および式(IV)
【化4】

[式中、
3は、(C1〜C15)−アルキル、(C3〜C15)−シクロアルキルまたは(C6〜C14)−アリールを表し、これらは置換されているか、または置換されておらず、かつ
Xは、O、Sを表す]のアルコールおよび/またはチオアルコールとを、遊離の、または固相に結合された有機スルホン酸、硫酸、硫酸水素塩、有機もしくは無機リン含有酸、これらの二水素塩および水素塩、ならびに発煙硝酸および/またはホウ酸から選択される触媒の存在下に、相応するアセタールへと反応させ、かつ引き続き相応するアセタールからアルコールまたはチオールを脱離させて式(I)の置換された1,4−キノンメチドを形成することを特徴とする、置換された1,4−キノンメチドの製造方法である。
【0019】
本発明の更なる対象は、式(II)の3,5−二置換された4−ヒドロキシベンズアルデヒドの製造方法であって、式(VII)
【化5】

[式中、R1およびR2は、式(I)中と同じ意味を表す]の2,6−二置換フェノールを、氷酢酸と水とからなる溶剤混合物中、全反応時間にわたって還流温度を少なくとも2℃下回る温度で、ウロトロピンと反応させることを特徴とする、3,5−二置換4−ヒドロキシベンズアルデヒドの製造方法である。
【0020】
同様に本発明の対象は、式(V)
【化6】

[式中、
1、R2は、相互に無関係に水素、(C1〜C15)−アルキル、(C3〜C15)−シクロアルキルまたは(C6〜C14)−アリールを表し、これらは置換されているか、または置換されておらず、
8は、(C3〜C15)−アルキル、(C3〜C15)−シクロアルキルまたは(C6〜C14)−アリールを表し、ここでこれらは置換されているか、または置換されておらず、かつ
Xは、O、Sを表す]の置換された1,4−キノンメチドの製造方法であって、式(I)[式中、R7は、非置換の(C1〜C2)−アルキル基を表し、かつXは、Oを表し、R1およびR2は、式(V)中と同じ意味を表す]の置換された1,4−キノンメチドを、式(VI)
【化7】

[式中、
8は、(C3〜C15)−アルキル、(C3〜C15)−シクロアルキルまたは(C6〜C14)−アリールを表し、これらは置換されているか、または置換されておらず、かつ
Xは、O、Sを表す]のアルコールもしくはチオアルコールの存在下に反応させることを特徴とする、置換された1,4−キノンメチドの製造方法である。
【0021】
式(I)の置換された1,4−キノンメチドを製造する本発明による方法におけるアセタール形成のために、有利には置換基R1およびR2として、(C1〜C15)−アルキル基、(C3〜C15)−シクロアルキル基および/または(C6〜C14)−アリール基を有する式(II)の3,5−二置換4−ヒドロキシベンズアルデヒドを原料として使用し、好ましくは使用される3,5−二置換された4−ヒドロキシベンズアルデヒドは、(C1〜C4)−アルキル基および/または(C3〜C15)−シクロアルキル基を置換基R1およびR2として有する。特に有利には置換基R1およびR2として、(C1〜C4)−アルキル基を有する、とりわけ有利には分枝鎖状の(C3〜C4)−アルキル基、たとえばt−ブチル基またはイソ−プロピル基を有する3,5−二置換された4−ヒドロキシベンズアルデヒドを使用する。
【0022】
特に使用される3,5−二置換4−ヒドロキシベンズアルデヒドは、置換基R1およびR2として、非置換の基を有する。
【0023】
本発明の意味で、置換基とは、−COOR、−OH、−OR、−ハロゲン、−NR2、=Oおよび−CO−NR2(R=水素、(C1〜C15)−アルキル基、(C3〜C15)−シクロアルキル基および/または(C6〜C14)−アリール基)から選択される基であると理解され、これらはまた、少なくとも1のこれらの置換基により置換されていてもよい。
【0024】
別の原料として、本発明による方法におけるアセタール形成のために、式(III)のオルトギ酸エステルを使用するが、ここで、置換基R4、R5およびR6は、有利には(C1〜C15)−アルキル基または(C3〜C15)−シクロアルキル基であり、かつ有利には(C1〜C4)−アルキル基である。特に有利にはこれらの置換基R4、R5およびR6は、非置換である。本発明による方法の特に有利な実施態様では、置換基R4、R5およびR6として(C1〜C2)−アルキル基を有するオルトギ酸エステルを使用する。とりわけ有利には、置換基R4、R5およびR6が全て同一であるオルトギ酸エステルを使用する。特に本発明による方法では、オルトギ酸トリメチルを使用する。
【0025】
3,5−二置換4−ヒドロキシベンズアルデヒドおよびオルトギ酸エステル以外に、本発明による方法のアセタール形成のためには、式(IV)のアルコールおよび/またはチオアルコールを使用し、その際、置換基R3は有利には非置換である。有利には置換基R3は、(C1〜C15)−アルキル基または(C3〜C15)−シクロアルキル基であり、かつ特に有利には(C1〜C4)−アルキル基である。
【0026】
本発明による方法の特に有利な実施態様ではアルコールを使用し、特に有利にはフェニル基または(C1〜C15)−アルキル基を有するアルコールを、およびとりわけ有利には(C1〜C4)−アルキル基を置換基R3として使用する。特にメタノールまたはエタノールを本発明による方法で使用する。
【0027】
本発明による方法では有利にはオルトギ酸エステルおよびアルコールおよび/またはチオアルコールを使用し、その際、オルトギ酸エステルの置換基R4、R5およびR6は、アルコールおよび/またはチオアルコールの置換基R3と同一である。
【0028】
置換基R3およびR4、R5およびR6が異なっている場合には、種々に置換された1,4−キノンメチドからなる混合物が生じうる。チオアルコールを使用する場合には、主としてチオアルコールのX=SおよびR7=R3のキノンメチドが形成される。これに対して異なった置換基R3およびR4、R5およびR6を有するオルトギ酸エステルおよび(チオ)アルコールを使用する場合には、有利には難揮発性の(チオ)アルコールの式(I)の相応して置換された1,4−キノンメチドが形成される。
【0029】
本発明による方法では触媒として有利には遊離の、または固相に結合した有機スルホン酸、硫酸、硫酸水素塩、有機もしくは無機のリン含有酸、これらの二水素塩および水素塩、ならびに発煙硝酸および/またはホウ酸を使用し、有利には遊離の、または固相に結合した有機スルホン酸、硫酸および/または硫酸水素塩を使用し、かつ特に有利にはアルキルベンゼンスルホン酸、スルホン酸基を有するポリマー、またはアルカリ金属およびアルカリ土類金属の硫酸水素塩を使用する。とりわけ有利には触媒として、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の硫酸水素塩を使用し、特に硫酸水素カリウムまたは硫酸水素ナトリウムを使用する。
【0030】
有機スルホン酸として、アルキルベンゼンスルホン酸、たとえばp−トルエンスルホン酸またはドデシルベンゼンスルホン酸、またはスルホン酸基を有するポリマーを使用する。
【0031】
触媒として固体を使用することは、この触媒を簡単に、たとえば濾過によって反応混合物から分離することができるという利点を有する。従来技術による塩化アンモニウムを使用する方法と比較して、本発明による方法によればハロゲン化物を使用しなくても大工業的な生産が可能になり、ひいては装置部材の高価な腐食防止は不要である。さらに本発明による方法において使用される触媒は、安価でハロゲン不含の、かつ毒性のない酸である。
【0032】
式(II)の3,5−二置換されたヒドロキシベンズアルデヒド対触媒のモル比は、本発明による方法では有利には1:0.0002〜1:0.5、好ましくは1:0.0005〜1:0.2、特に有利には1:0.001〜1:0.1、および特に有利には1:0.005〜1:0.05である。
【0033】
本発明による方法は、3,5−二置換4−ヒドロキシベンズアルデヒド対オルトギ酸エステルのモル比が、有利に1:0.5〜1:10であることを特徴としており、この比率は有利には1:0.9〜1:5および特に有利には1:1〜1:2である。比較的高価なオルトギ酸エステルを低減することにより、大工業的な装置の運転コストを低減することができ、その際、これにより反応率の低下は生じない。
【0034】
アセタール形成は本発明による方法では、追加の溶剤(A)を用いても、追加の溶剤を用いなくても実施することができる。追加の溶剤(A)として、使用される原料である4−ヒドロキシベンズアルデヒド、アルコール、チオールおよびオルトギ酸エステルに対して、ならびに(チオ)アセタールに対して不活性な溶剤が適切であり、有利には芳香族溶剤、たとえばトルエン、エチルベンゼンおよび/またはキシレンを使用する。
【0035】
本発明による方法の特に有利な実施態様では、4−ヒドロキシベンズアルデヒドから(チオ)アセタールへの反応は、追加の溶剤(A)の不存在下に行う。この方法で、本発明による方法の空時収率を改善することができる。
【0036】
4−ヒドロキシベンズアルデヒドから(チオ)アセタールへの反応は、本発明による方法では、有利には還流下で数分〜数時間、有利には0.5〜10時間、および特に有利には1〜5時間加熱することにより行う。
【0037】
3,5−二置換4−ヒドロキシベンズアルデヒドから相応する(チオ)アセタールへの反応は、異なった圧力で実施することができ、有利にはこの方法段階は、大気圧で行う。いくつかのチオアルコールを使用する場合には、これらの沸点が低いことに基づいて、加圧下での作業が推奨される。
【0038】
生じる(チオ)アセタールは、本発明による方法では、慣用の単離工程、たとえば溶剤の濃縮、抽出、濾過、結晶化等により単離することができる。有利には(チオ)アセタールをアルコールの脱離前に単離せず、溶剤から直接所望の生成物、つまり式(I)により記載される置換された1,4−キノンメチドへと反応させる。
【0039】
本発明による方法では、(チオ)アルコールを(チオ)アセタールから脱離する前に、過剰のオルトギ酸エステルおよび過剰のアルコールもしくはチオアルコールを、有利には蒸留により、除去すべきである。(チオ)アセタールを単離しない場合には、オルトギ酸エステルおよびアルコールもしくはチオアルコールのこの蒸留による分離の前に、追加の溶剤(B)を添加することが推奨される。これにより(チオ)アセタールもまたオルトギ酸エステルおよびアルコールもしくはチオアルコールの蒸留による分離の後に、溶液中に残留させることができる。
【0040】
追加の溶剤(B)として、使用されるアルコールおよび/またはチオアルコールよりも沸点が高く、かつ(チオ)アセタールおよび形成すべき置換された1,4−キノンメチドに対して不活性である溶剤が適切である。使用される溶剤(B)の沸点は、少なくとも100℃、有利には110℃〜250℃であるべきである。さらにこの溶剤(B)は、形成されるアセタールを溶液中に保持することができるべきである。特に本発明による方法では、芳香族溶剤、たとえばトルエン、エチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレンまたはp−キシレン、およびこれらの、およびその他の芳香族溶剤の混合物を使用する。相応して定義された沸点範囲を有する芳香族炭化水素の混合物を追加の溶剤(B)として使用することもできる。
【0041】
過剰のオルトギ酸エステルおよび過剰のアルコールもしくはチオアルコールの蒸留によるこの分離は、有利には反応混合物が追加の溶剤(B)の沸点に達するまで実施する。この分離は、大気圧下でも減圧下でも行うことができる。
【0042】
本発明による方法では、触媒を同様に(チオ)アセタールからの(チオ)アルコールの熱による脱離の前に、たとえば機械的な分離法によって分離することができる。この方法は、特に固体として存在している触媒の場合に適切である。このために適切な機械的分離法は、濾過、沈殿または遠心分離およびその後のデカンテーションである。特に固体として存在している触媒の場合、該触媒を(チオ)アセタールからの(チオ)アルコールの熱による脱離の前に除去することが推奨されるが、これによって塔は固体の導入によって汚染されない。
【0043】
液状の触媒を使用する場合、または分離されなかった痕跡量の固体の触媒のために、これらを有利には塩基で中和する。このために特に有利には、非求核性アミンまたは立体障害アミン、ならびに無機塩、たとえば炭酸塩を使用する。中和生成物の分離は必ずしも必要ではない。
【0044】
触媒の分離または中和、溶剤(B)の添加、および過剰の(チオ)アルコールおよび過剰のオルトギ酸エステルの除去の順序は、使用される触媒、(チオ)アルコールおよびオルトギ酸エステルに依存して、反応率を損なうことなく、必要に応じて任意に変更することができる。
【0045】
(チオ)アセタールからの(チオ)アルコールの脱離を実施するために、本発明による方法のアセタールを含有する反応混合物を、有利には溶剤(B)の沸点に、有利には少なくとも100℃、特に有利には110〜250℃に加熱し、その際に遊離する(チオ)アルコールは有利には直接にその発生後に、化学的および/または物理的な方法によって反応混合物から除去される。熱による誘導によって脱離される(チオ)アルコールは、慣用の方法によって反応混合物から除去することができる。たとえば遊離するアルコールは、適切な反応試薬、たとえば無水物の添加によって化学的に結合することができる。あるいは短鎖の(チオ)アルコールの場合、物理的な方法、たとえば分子ふるいの使用もまた考えられる。
【0046】
本発明による方法では、遊離する(チオ)アルコールの分離は有利には蒸留によって行う。この場合、アセタールを含有する反応混合物を少なくとも100℃、有利には110〜250℃に加熱し、その際、追加の溶剤(C)を連続的に計量供給し、他方、同時に遊離するアルコールおよび/またはチオアルコールを、追加の溶剤(C)と一緒に、反応混合物から除去する。特に有利にはこの場合、ほぼ(チオ)アルコールおよび溶剤(A、BおよびC)からなる蒸留液が留去される量の追加の溶剤(C)を、反応混合物に計量供給する。追加の溶剤(C)はこの場合、過剰のアルコールおよび/またはチオアルコールを反応混合物からより容易に除去することができ、ひいては(チオ)アセタールから(チオ)アルコールの脱離を達成するために役立つ。アルコールの脱離を低温で、および同時に減圧下に実施することも考えられる。この方法工程は、平衡状態の推移以外に、式(I)により記載される置換された1,4−キノンメチドにとって、痕跡量の水を同様に反応混合物から除去することができ、ひいては置換された1,4−キノンメチドの、4−ヒドロキシベンズアルデヒドへの可逆反応を十分に抑制することができるという利点も有している。
【0047】
追加の溶剤(C)として、ここでは少なくとも100℃、有利には110℃〜250℃の沸点を有し、かつ(チオ)アセタールおよび式(I)により記載される置換された1,4−キノンメチドに対して不活性である溶剤もまた適切である。特に本発明による方法では芳香族溶剤、たとえばトルエン、エチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレンまたはp−キシレン、およびこれらの芳香族溶剤の混合物を使用する。相応して定義される沸点範囲を有する芳香族炭化水素の混合物を追加の溶剤(C)として使用することもできる。本発明による方法の特に有利な実施態様では、溶剤(A)、(B)および(C)は同一である。
【0048】
本発明による方法のもう1つの実施態様では、2種類の異なった溶剤を使用し、その際、溶剤(C)は有利には溶剤(B)よりも高い沸点を有する。このことは、置換された1,4−キノンメチドがその後の使用のために、過剰のオルトギ酸エステルおよび過剰のアルコールもしくはチオアルコールの蒸留のためにあまり適切ではない溶剤中に存在しているべき場合に有利である。
【0049】
式(V)
【化8】

[式中、
1、R2は、相互に無関係に水素、(C1〜C15)−アルキル、(C3〜C15)−シクロアルキルまたは(C6〜C14)−アリールを表し、これらは置換されているか、または置換されておらず、
8は、(C3〜C15)−アルキル、(C3〜C15)−シクロアルキルまたは(C6〜C14)−アリールを表し、これらは置換されているか、または置換されておらず、かつ
Xは、O、Sを表す]の置換された1,4−キノンメチドを製造するために、有利には本発明による方法によって生じた、式中でR7=非置換の(C1〜C2)−アルキル基およびX=Oであり、R1およびR2が、式(V)中で記載したものを表す、置換された1,4−キノンメチドを、式(VI)
【化9】

[式中、
8は、(C3〜C15)−アルキル、(C3〜C15)−シクロアルキルまたは(C6〜C14)−アリールを表し、これらは置換されているか、または置換されておらず、
Xは、O、Sを表す]のアルコールもしくはチオアルコールの存在下に反応させる。
【0050】
この場合、式中でR7=非置換の(C1〜C2)−アルキル基およびX=Oであり、R1およびR2は式(V)中で記載したものを表す置換された1,4−キノンメチド、および式(VI)の(チオ)アルコールからなる本発明による方法の反応混合物を、有利には相応する溶剤の沸点まで、有利には少なくとも100℃、特に有利には110℃〜250℃加熱し、その際、メタノールおよび/またはエタノールを直接、化学的および/または物理的な方法により反応混合物から除去する。熱による誘導によって脱離されたメタノールおよび/またはエタノールは、慣用の方法により反応混合物から除去することができる。従って遊離するメタノールおよび/またはエタノールは、適切な反応試薬、たとえば無水物の添加によって化学的に結合することができる。あるいはまた、物理的な方法、たとえば分子ふるいの使用も考えられる。
【0051】
本発明による方法では、遊離するメタノールおよび/またはエタノールのこの分離は有利には蒸留により行う。この場合、反応混合物を少なくとも100℃、有利には110℃〜250℃に加熱し、その際、追加の溶剤(D)を連続的に計量供給し、その一方で同時に遊離にするメタノールおよび/またはエタノールを追加の溶剤(D)と一緒に反応混合物から除去する。この場合、特に有利には、メタノールおよび/またはエタノールおよび溶剤が除去されると同じ量の追加の溶剤(D)を反応混合物に計量供給する。
【0052】
ここで追加の溶剤(D)として、少なくとも100℃、有利には110℃〜250℃の沸点を有し、かつ反応に関与する成分に対して、ならびに所望の生成物に対して不活性である溶剤もまた適切である。特に本発明による方法では芳香族溶剤、たとえばトルエン、エチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレンまたはp−キシレン、およびこれらの芳香族溶剤の混合物を使用する。相応する定義された沸点範囲を有する芳香族炭化水素の混合物もまた、追加の溶剤(D)として使用することができる。本発明による方法の特に有利な実施態様では、使用される溶剤(A)、(B)、(C)および(D)は同一である。
【0053】
この方法で、2より多くの炭素原子を有する置換基R8を有する式(V)により記載される置換された1,4−キノンメチドを容易に入手することができる。本発明による方法のこの変法は、単一の中間生成物である、R7=非置換の(C1〜C2)−アルキル基およびX=Oの式(I)の置換された1,4−キノンメチドから、多数の誘導体を製造することができ、その際、個々の製造法は、最後の方法工程において異なるのみであるという利点を有する。このことは特に医薬作用物質の研究において特に興味深い。
【0054】
その後の適用に応じて、本発明による方法により得られたキノンメチド溶液を直接にさらに使用することができる。キノンメチド溶液を直接使用することができない場合に関しては、置換された1,4−キノンメチドを生成物混合物の冷却、生成物の結晶化および分離により単離し、かつ場合によりたとえば再結晶化により精製することができる。結晶化工程のための溶剤を完全に除去し、置換された1,4−キノンメチドがその中でより低い溶解度を有する溶剤と交換することが有用な場合もある。このようにして結晶化工程を簡単にするか、もしくは促進することができる。置換された1,4−キノンメチドは、溶剤を完全に、または部分的に除去することによって取得することもできる。
【0055】
本発明による方法で使用される式(II)の3,5−二置換された4−ヒドロキシベンズアルデヒドは、従来技術による多数の方法による2,6−二置換されたフェノールから出発しても、2,6−二置換された4−メチルフェノールから出発しても製造することができる。式(VII)により記載される2,6−二置換されたフェノールを、氷酢酸と水とからなる溶剤混合物中、全ての反応時間にわたって還流温度を2℃下回る温度でウロトロピンと反応させることを特徴とする方法が特に適切であることが判明した。
【0056】
3,5−二置換4−ヒドロキシベンズアルデヒドを製造する本発明による方法のための原料として有利には2,6−二置換フェノールまたは該化合物の混合物を使用し、その際、2位および6位に存在する置換基は、式(II)の置換基R1およびR2に相応する。
【0057】
有利には、(C1〜C15)−アルキル基、(C3〜C15)−シクロアルキル基および/または(C6〜C14)−アリール基、特に有利には(C1〜C4)−アルキル基および/または(C3〜C15)−シクロアルキル基を置換基R1およびR2として有する2,6−二置換フェノールを使用する。特に有利には、(C1〜C4)−アルキル基を置換基R1およびR2として有する2,6−二置換フェノールを使用する。本発明による方法の特に有利な実施態様では、分枝鎖状の(C3〜C4)−アルキル基、たとえばt−ブチル基またはイソ−プロピル基を有する2,6−二置換フェノールを使用する。
【0058】
特に、使用される2,6−二置換フェノールは、置換基R1及びR2として、非置換の基を有する。
【0059】
本発明によるこの方法は、同様にハロゲンを含まないことによっても優れている。というのも、有利にハロゲン含有化合物を使用しないからである。
【0060】
本発明による方法は、2,6−二置換フェノール対ウロトロピンのモル比が、有利に1:1よりも小さいことを特徴とし、モル比が1:1〜1:0.8である方法が有利である。
【0061】
氷酢酸対水の量比は本発明による方法では有利には、115℃±10℃の反応温度を調整することができ、水を留去する必要がないように選択される。
【0062】
このことにより従来技術でしばしば挙げられる方法工程を省略することができ、これにより本発明による方法を、より効率的に構成することができる。有利には本発明による方法で氷酢酸対水のモル比は1:1〜20:1、特に有利には1.1:1〜10:1、および特に有利には1.2:1〜5:1に調整される。
【0063】
2,6−二置換フェノール、氷酢酸、水およびウロトロピンの添加は、任意の順序で行うことができる。有利には2,6−二置換フェノールを氷酢酸中に溶解し、ウロトロピンおよび最後に水を添加する。成分の混合は、室温で行うことも、高めた温度で行うこともできる。
【0064】
2,6−二置換フェノールから3,5−二置換4−ヒドロキシベンズアルデヒドへの反応は、本発明によるこの方法では、全ての反応時間にわたって有利には還流温度を数度下回る温度で行い、有利には反応温度は、還流温度を少なくとも2℃、有利には少なくとも3℃、および特に有利には少なくとも5℃下回る。このことは、一方では反応温度が2,6−二置換フェノールから3,5−二置換4−ヒドロキシベンズアルデヒドへのほぼ完全な反応のために十分であり、他方、この温度は、反応混合物が還流し、ひいては有利に、しばしば固体として存在する、液面に集まる生成物によって塔が汚染されるか、あるいは閉塞することがないようにするために十分な温度である。大工業的な方法では特にこれは望ましくない効果である。さらに、還流温度を下回る反応温度で作業する方法により、置換された1,4−キノンメチドの純度を改善することができることが判明した。本発明によるこの方法の特に有利な実施態様では、反応混合物を全ての反応時間にわたって115℃±10℃の温度に加熱する。反応温度は全ての反応時間にわたって有利には還流温度を10℃より下回ることはない。
【0065】
本発明の範囲では、全ての反応時間とは、2,6−二置換されたフェノールとウロトロピンとの反応のために所望される反応温度が達成され、かつ維持される時間であると理解するものとする。加熱段階および冷却段階は、これらの段階においてすでに、または依然として2,6−二置換フェノールの反応を観察することができるとしても、本発明の範囲では、全ての反応時間には入らない。
【0066】
有利には2,6−二置換フェノールとウロトロピンとの反応の際の反応混合物は本発明による方法では、1〜10時間、有利には2〜7時間、および特に有利には3〜6時間にわたって所望の反応温度に加熱される。
【0067】
1位およびR2位における異なった置換基に基づいて、3,5−二置換された4−ヒドロキシベンズアルデヒドの溶解度もしくは融点は極めて異なっていることがある。4−ヒドロキシベンズアルデヒドの置換パターンに依存して、3,5−二置換4−ヒドロキシベンズアルデヒドを単離するために種々の方法を本発明によるこの方法では使用することができる。
【0068】
(A)生じた固体の濾別。この場合、濾過の後に得られた濾液を、2,6−二置換フェノールから3,5−二置換4−ヒドロキシベンズアルデヒドへのさらなる反応に供することができる。
【0069】
(B)3,5−二置換4−ヒドロキシベンズアルデヒドを沈殿させるための水の添加。この場合、(A)に記載した更なる後処理を行う。
【0070】
(C)適切な溶剤を用いた抽出、その後、水により抽出物を洗浄し、かつ溶剤を蒸留により除去する。この場合、溶剤として、水と混和しないか、または良好に混和することがない溶剤を使用することができ、有利にはこのために芳香族溶剤、たとえばトルエン、エチルベンゼン、キシレン、または前記の溶剤の混合物を使用する。
【0071】
(D)氷酢酸および水の留去。この場合、引き続き、主として3,5−二置換4−ヒドロキシベンズアルデヒドからなる残留物を、水で洗浄して、反応の際に生じる塩を同様に除去することができる。
【0072】
以下の例は、本発明による方法を詳細に説明するためのものであるが、本発明はこれらの実施態様に限定されるべきではない。
【実施例】
【0073】
例1〜4:
3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンズアルデヒド7g(30ミリモル)を、反応フラスコ中に装入し、メタノール14.5mlとオルトギ酸トリメチル14.2gとからなる混合物を添加する。引き続き、第1表に記載の触媒5ミリモルを添加する。反応混合物を撹拌下に還流するまで加熱する。3時間後に反応混合物を室温に冷却し、ガスクロマトグラフィーによりアルデヒドの反応率を測定する。第1表は、使用した触媒に依存するアルデヒドの反応率を示している。
【0074】
【表1】

【0075】
例1〜4は、特に有機スルホン酸および硫酸ならびにその水素塩が、本発明による方法にとって適切な触媒であることを示している。アルデヒドの反応率は全ての例において90%を超えている。例4では、反応率は従来技術による触媒(VB1)と同様の範囲の反応率であり、例3では反応率はそれどころか従来技術を上回っている。
【0076】
例3〜6:
試験の実施は、既に例1〜4に記載したとおりであるが、ただしこの場合、触媒ならびに触媒の量を第2表に記載されているように変更する。
【0077】
【表2】

【0078】
例3、5および6は、本発明による方法で触媒のモル量を低減することにより、反応率をさらに向上することができることを明らかに示している。これに対して比較例1および2は、従来技術による触媒である塩化アンモニウムを使用する場合に、触媒のモル量の低減は、反応率の低下につながることを示している。
【0079】
例7〜11:
試験の実施は例5と同様であるが、ただしこの場合、メタノールおよびオルトギ酸トリメチルの量を第3表に記載されているとおりに変更する。
【0080】
【表3】

【0081】
例7〜11は、オルトギ酸エステルの含有率をアルデヒド対オルトギ酸エステル1:1.1のモル比まで低減することができ、その際にアルデヒドの反応率は損なわれないことを示している。
【0082】
例12 メトキシ置換されたキノンメチドの製造:
攪拌装置および冷却装置を備えた35lのガラス容器中に、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンズアルデヒド4.0kgを添加し、オルトギ酸トリメチル2kgおよびメタノール6kgを添加し、かつ混合する。引き続き硫酸水素ナトリウム45gを添加する。次いで反応混合物を還流下に約1〜2時間加熱する。1時間後にアルデヒドの反応率をガスクロマトグラフィーにより試験する。使用したアルデヒドは既に1時間後に完全に反応している。反応混合物を冷却し、かつシュレンクフィルターを介して濾過する。フィルター残留物をエチルベンゼン8kgで後洗浄する。濾液をふたたびガラス攪拌容器に返送し、メタノール、オルトギ酸トリメチルおよびエチルベンゼンからなる混合物をできる限り迅速に留去する。引き続き共沸蒸留を開始し、その際、エチルベンゼンを1時間あたり300〜500ml連続的に添加し、同量の蒸留液を取り出す。5時間後に70%の反応率が達成され、9時間後に反応率は90%を超える所望のキノンメチドまで上昇する。
【0083】
反応混合物を冷却する。所望のキノンメチドは冷却の際に沈殿し、かつ>98%の純度で単離することができる。
【0084】
例13 3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンズアルデヒドからのブトキシ置換されたキノンメチドの製造
3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンズアルデヒド7gに、オルトギ酸トリメチル3.5gおよびn−ブタノール21gを添加する。引き続き硫酸水素カリウム0.1gを添加し、反応混合物を還流下に2時間加熱する。使用したアルデヒドは定量的に反応している。
【0085】
次いで硫酸水素カリウムを濾別し、フィルター残留物をエチルベンゼン50gで後洗浄する。引き続き、130℃の沸点が達成されるまでメタノール、オルトギ酸トリメチルおよびエチルベンゼンからなる混合物を留去する。次いでエチルベンゼンを毎時100ml連続的に添加し、同時に同量の蒸留液を取り出す。
【0086】
6時間後に、ブトキシ置換されたキノンメチドが82%まで形成されている。副生成物として、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンズアルデヒドが7%生じている。
【0087】
例14 メトキシ置換されたキノンメチドからのブトキシ置換されたキノンメチドの製造
メトキシ置換されたキノンメチド(例12から)1gを、エチルベンゼン20g中に溶解する。次いで、n−ブタノール1gを添加する。反応混合物を還流下に2時間加熱する。ガスクロマトグラフィーによる分析によれば、メトキシ置換されたキノンメチドの73%が、ブトキシ置換されたキノンメチドに変換されている。
【0088】
例15 メトキシ置換されたキノンメチドからのアロキシ置換されたキノンメチドの製造
メトキシ置換されたキノンメチド1gを、エチルベンゼン35g中に溶解する。引き続き、4−t−ブチルカテコール0.65gを添加する。反応混合物を還流下に2時間加熱する。ガスクロマトグラフィーによる分析によれば、メトキシ置換されたキノンメチドの77%が、4−t−ブチルカテコールにより置換されたキノンメチド(アリールオキシ置換されたキノンメチド)に変換されている。
【0089】
例16〜20 3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンズアルデヒドの製造
2,6−ジ−t−ブチルフェノールを氷酢酸中に溶解する。引き続きウロトロピンおよび水を添加し、かつ反応混合物を、還流温度を最大で2℃下回る温度で4〜5時間加熱する。生じた生成物を濾別し、水およびメタノールで洗浄し、かつ回転蒸発器で乾燥させる。第4表は、使用された原料のモル比、ならびに2,6−ジ−t−ブチルフェノールに対する、確認された3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンズアルデヒドの収率を示している。
【0090】
【表4】

【0091】
例16〜19は、ウロトロピンの僅かな量に基づいて予測していなかった意想外の高い収率を示している。これらの例は、フェノールに対するウロトロピンのモル比が1より小さくても、驚くほど高い収率および反応率につながることを示している。
【0092】
例21〜25 3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンズアルデヒドの製造(反応温度の変更)
2,6−ジ−t−ブチルフェノールを氷酢酸中に溶解する。引き続きウロトロピンおよび水を添加し、反応混合物を異なった温度で5.5時間加熱する。生じた生成物を濾別し、水およびメタノールで洗浄し、かつ回転蒸発器で乾燥させる。第5表は、そのつどの反応温度、収率および純度を示している。
【0093】
【表5】

【0094】
例21〜25は、低すぎる反応温度は反応率の損失に、高すぎる反応温度はこれに対して純度の問題につながることを示している。さらに、高すぎる反応温度の場合には、還流温度から固体が塔を閉塞する危険が生じる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

[式中、
1、R2は、相互に無関係に水素、(C1〜C15)−アルキル、(C3〜C15)−シクロアルキルまたは(C6〜C14)−アリールを表し、これらは置換されているか、または置換されておらず、
7は、(C1〜C15)−アルキル、(C3〜C15)−シクロアルキルまたは(C6〜C14)−アリールを表し、これらは置換されているか、または置換されておらず、かつ
Xは、O、Sを表す]の置換された1,4−キノンメチドの製造方法において、3,5−二置換された4−ヒドロキシベンズアルデヒド
【化2】

[式中、R1およびR2は、上記のものを表す]と、式
【化3】

[式中、
4、R5、R6は、相互に無関係に(C1〜C15)−アルキル、(C3〜C15)−シクロアルキルまたは(C6〜C14)−アリールを表し、これらは置換されているか、または置換されていない]のオルトギ酸エステル、および式
【化4】

[式中、
3は、(C1〜C15)−アルキル、(C3〜C15)−シクロアルキルまたは(C6〜C14)−アリールを表し、これらは置換されているか、または置換されておらず、かつ
Xは、O、Sを表す]のアルコールおよび/またはチオアルコールとを、遊離の、または固相に結合された有機スルホン酸、硫酸、硫酸水素塩、有機もしくは無機リン含有酸、これらの二水素塩および水素塩、ならびに発煙硝酸および/またはホウ酸から選択される触媒の存在下に、相応するアセタールへと反応させ、かつ引き続き相応するアセタールからアルコールまたはチオールを脱離させて式(I)の置換された1,4−キノンメチドを形成することを特徴とする、置換された1,4−キノンメチドの製造方法。
【請求項2】
触媒として、遊離の、または固相に結合した有機スルホン酸、硫酸および/または硫酸水素塩を使用することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
3,5−二置換された4−ヒドロキシベンズアルデヒド対触媒のモル比が、1:0.001〜1:0.1であることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
3,5−二置換された4−ヒドロキシベンズアルデヒド対オルトギ酸エステルのモル比が、1:1〜1:2であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
アセタールを含有する反応混合物を、少なくとも100℃まで加熱し、その際に遊離する(チオ)アルコールをその発生後に直接、化学的および/または物理的な方法を用いて反応混合物から除去することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
アセタールを含有する反応混合物を、少なくとも100℃まで加熱し、その際に追加の溶剤(C)を連続的に計量供給し、その一方で同時に遊離するアルコールおよび/またはチオアルコールを追加の溶剤(C)と一緒に反応混合物から除去することを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】

【化5】

[式中、
1、R2は、相互に無関係に水素、(C1〜C15)−アルキル、(C3〜C15)−シクロアルキルまたは(C6〜C14)−アリールを表し、これらは置換されているか、または置換されておらず、
8は、(C3〜C15)−アルキル、(C3〜C15)−シクロアルキルまたは(C6〜C14)−アリールを表し、これらは置換されているか、または置換されておらず、かつ
Xは、O、Sを表す]の置換された1,4−キノンメチドの製造方法において、式
【化6】

[式中、
7は、非置換の(C1〜C2)−アルキル基を表し、かつ
Xは、Oを表し、
1およびR2は、上記のものを表す]の置換された1,4−キノンメチドを、式
【化7】

[式中、
Xは、O、Sを表し、
8は、上記のものを表す]のアルコールもしくはチオアルコールの存在下に反応させることを特徴とする、置換された1,4−キノンメチドの製造方法。
【請求項8】
式中でR7が、非置換の(C1〜C2)−アルキル基を表し、かつXが、Oを表す、使用される置換された1,4−キノンメチドを、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法により製造することを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】

【化8】

[式中、
1、R2は、相互に無関係に、水素、(C1〜C15)−アルキル、(C3〜C15)−シクロアルキルまたは(C6〜C14)−アリールを表し、これらは置換されているか、または置換されていない]の3,5−二置換された4−ヒドロキシベンズアルデヒドの製造方法において、式
【化9】

[式中、R1およびR2は、上記のものを表す]の2,6−二置換されたフェノールを、氷酢酸と水とからなる溶剤混合物中、全反応時間にわたって還流温度を少なくとも2℃下回る温度で、ウロトロピンと反応させることを特徴とする、3,5−二置換された4−ヒドロキシベンズアルデヒドの製造方法。
【請求項10】
2,6−二置換されたフェノール対ウロトロピンのモル比が、1:1〜1:0.8であることを特徴とする、請求項9記載の方法。

【公開番号】特開2010−254693(P2010−254693A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98023(P2010−98023)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】