説明

置換された2−フルオロアクリル酸誘導体の製造法

本発明は、置換された2−フルオロアクリル酸誘導体を製造するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置換された2−フルオロアクリル酸誘導体を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
置換された2−フルオロアクリル酸誘導体は、ポリマー合成における出発物質である。これらは、たとえば、光導波路中のプラスチックとして、および医薬におけるポリマー添加物として使用することができる。
【0003】
置換された2−フルオロアクリル酸誘導体を製造するための各種の方法が文献から公知である。
【0004】
(非特許文献1)には、α−ヒドロキシメチル−α−フルオロマロン酸エステルを加水分解し、次いで脱炭酸反応をさせ、再度エステル化をさせることによる、置換された2−フルオロアクリル酸誘導体、特に2−フルオロアクリル酸エステルを製造するための方法が記載されている。その方法では、低い収率しか得られないという欠点が明らかとなっている。
【0005】
さらなる方法が(特許文献1)から公知であり、そこには、置換された2−フルオロアクリル酸誘導体を2,2−ブロモフルオロプロピオン酸エステルから製造することができるとの記載がある。この方法は、その出発原料の入手が容易ではなく、そのためにその方法を経済的に使用することが不可能であり、また低い収率しか得られないという欠点を有している。
【0006】
(特許文献2)には、2,3−ジクロロ−1−プロペンから出発して、置換された2−フルオロアクリル酸誘導体、すなわち2−フルオロアクリル酸エステルを製造するための四段階の方法の記述がある。3−ヒドロキシ−2−フルオロプロピオネートから出発して、塩化トルエンスルホニルと反応させ、フタルイミドカリウムの存在下に生成したトシレートを除去することにより、置換された2−フルオロアクリル酸誘導体を製造するさらなる方法が、(非特許文献2)、および(非特許文献3)から公知である。これらの方法は共に、経済性および安全性の理由から、工業的な方法では使用できないという事実を有している。
【0007】
3−ヒドロキシ−2−フルオロプロピオネートを脱水剤と反応させることによる、置換された2−フルオロアクリル酸誘導体を製造するためのさらなる方法が、(非特許文献4)から公知である。この方法も同様に、反応収率が低いという欠点を有している。
【0008】
すべての方法で共通していることは、それらが安全性および経済性の理由から使用することができないか、またはそれらの収率が極端に低いということである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−172223号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開第0415214A1号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Journal of Fluorine Chemistry,55,1991,p.149〜162
【非特許文献2】Journal of Fluorine Chemistry,1993,60,p.149〜162
【非特許文献3】Coll. Czech. Chem. Commun.,1983,48,p.319〜326
【非特許文献4】Bull. Soc. Chem. Fr.,1975,p.1633〜1638
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、現行技術の欠点を克服し、置換された2−フルオロアクリル酸誘導体を工業的プロセスで効率的に製造することが可能な、置換された2−フルオロアクリル酸誘導体を製造するための方法に対する必要性が、依然として存在し続けている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
驚くべきことには、置換された3−ハロ−2−フルオロプロピオン酸誘導体を塩基の存在下に転化させて、良好な収率で高純度の置換された2−フルオロアクリル酸誘導体とする、置換された2−フルオロアクリル酸誘導体を製造するための方法が見出された。
【0013】
したがって、本発明の主題は、式(I)の化合物を製造するための方法であって:
【化1】

[式中、RおよびRは、同一であるかまたは異なっており、互いに独立して、水素、C〜C15−アルキル、C〜C24−アリール、C〜C15−アルコキシ、C〜C10−アルケニル、C〜C24−アリールオキシ、C〜C15−アリールアルキル、C〜C15−アルキルチオ、C〜C15−モノ−およびジ−アルキルアミノ、C〜C24−モノ−およびジ−アリールアミノ、または5員〜8員の飽和もしくは不飽和のヘテロシクリルであって、それらが場合によってはさらに、C〜C15−アルキル、C〜C10−アルケニル、C〜C15−アルコキシ、C〜C24−アリール、C〜C15−アリールアルキル、C〜C15−アルキルチオ、ハロ、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル、C〜C15−ハロアルキル、C〜C10−ハロアルケニル、C〜C15−ハロアルコキシ、C〜C15−ハロアルキルチオ、および5員〜8員の飽和もしくは不飽和のヘテロシクリルからなる群より選択される基によって置換され得るか、あるいは
とRとが合体して、炭素環式もしくは複素環式で、飽和もしくは不飽和の4員〜8員の環を形成し、それらが場合によってはさらに、C〜C15−アルキル、C〜C10−アルケニル、C〜C15−アルコキシ、C〜C24−アリール、C〜C15−アリールアルキル、C〜C15−アルキルチオ、ハロ、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル、C〜C15−ハロアルキル、C〜C10−ハロアルケニル、C〜C15−ハロアルコキシ、C〜C15−ハロアルキルチオ、および5員〜8員の飽和もしくは不飽和のヘテロシクリルからなる群より選択される基によって置換され得、そして
は、C〜C15−アルコキシ、C〜C15−モノ−およびジ−アルキルアミノ、C〜C15−アルキルチオ、C〜C24−アリールオキシ、C〜C24−モノ−およびジ−アリールアミノ、および5員〜8員の飽和もしくは不飽和の、ヘテロ原子を介して結合されているヘテロシクリルであって、それらが場合によってはさらに、C〜C15−アルキル、C〜C10−アルケニル、C〜C15−アルコキシ、C〜C15−アルキルチオ、C〜C24−アリール、C〜C15−アリールアルキル、ハロ、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル、C〜C15−ハロアルキル、C〜C10−ハロアルケニル、C〜C15−ハロアルコキシ、C〜C15−ハロアルキルチオ、および5員〜8員の飽和もしくは不飽和のヘテロシクリルからなる群より選択される基によって置換され得る]
ここで、式(II)の化合物を、
【化2】

[式中、R、R、およびRは、上述の意味を有し、
そしてXは、Cl、Br、Iまたは擬ハロゲンである]
少なくとも一種の塩基の存在下、
および少なくとも一種の重合禁止剤の存在下に、
反応させて、
式(I)の化合物を得る。
【0014】
一つの好ましい実施態様においては、RとRとが、互いに独立して、同一であるかまたは異なっており、好ましくは水素、C〜C−アルキル、C〜C24−アリール、C〜C−アルコキシ、C〜C−アルケニル、C〜C24−アリールオキシ、C〜C10−アリールアルキル、C〜C−アルキルチオ、C〜C−モノ−およびジ−アルキルアミノ、C〜C24−モノ−およびジ−アリールアミノ、または5員〜8員の飽和もしくは不飽和のヘテロシクリルであって、それらが場合によってはさらに、C〜C−アルキル、C〜C−アルケニル、C〜C−アルコキシ、C〜C24−アリール、C〜C15−アリールアルキル、C〜C−アルキルチオ、アミノ、ハロ、シアノ、カルボキシル、ヒドロキシル、ニトロ、C〜C−ハロアルキル、C〜C−ハロアルケニル、C〜C−ハロアルコキシ、C〜C−ハロアルキルチオ、および5員〜8員の飽和および不飽和のヘテロシクリルからなる群より選択される基によって置換され得るか、あるいはRとRとが合体して、炭素環式もしくは複素環式で、飽和もしくは不飽和の4員〜8員の環を形成し、それらが場合によってはさらに、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル、C〜C−アルキル、またはC〜C24−アリールからなる群より選択される基によって置換され得る。Rおよび/またはRが、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、C〜C24−アリール、または水素であれば特に好ましい。Rおよび/またはRが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、フェニル、または水素であれば極めて特に好ましい。
【0015】
が、C〜C−アルコキシ、C〜C−モノ−およびジ−アルキルアミノ、C〜C−アルキルチオ、C〜C24−アリールオキシ、C〜C24−モノ−およびジ−アリールアミノ、または5員〜8員の飽和もしくは不飽和の、窒素原子を介して結合されているヘテロシクリルであるのが好ましく、それらは場合によってはさらに、C〜C−アルキル、C〜C−アルケニル、C〜C−アルコキシ、C〜C24−アリール、C〜C15−アリールアルキル、C〜C−アルキルチオ、アミノ、ハロ、シアノ、カルボキシル、ヒドロキシル、ニトロ、C〜C−ハロアルキル、C〜C−ハロアルケニル、C〜C−ハロアルコキシ、およびC〜C−ハロアルキルチオからなる群より選択される基によって置換され得る。Rが、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキソキシ、シクロプロポキシ、シクロブトキシ、シクロペントキシ、シクロヘキソキシ、シクロヘプトキシ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ブチルアミノ、ジブチルアミノ、プロピルアミノ、ジプロピルアミノ、ベンジルアミノ、フェノキシ、ピロリジニル、ピペラジニル、またはピリダジニルであれば特に好ましい。メトキシ、エトキシ、プロポキシ、メチルアミノ、エチルアミノ、ピロリジニル、ピペラジニル、またはピリダジニルが極めて特に好ましい。
【0016】
XがClまたはBrであれば好ましい。Xが塩素であれば特に好ましい。
【0017】
本発明の文脈には、一般的な項目としてまたは好ましい範囲として、それら相互の各種組合せ、すなわち、それぞれの範囲と好ましい範囲の間も含めて記述した、これ以前および以後において引用する、基、パラメーター、および説明のすべての定義が包含される。
【0018】
アルキルまたはアルコキシまたはアルキルチオは、本発明の文脈においては、1〜15個(C〜C15)、好ましくは1〜12個(C〜C12)、特に好ましくは1〜6個(C〜C)を有する、直鎖状、環状または分枝状のアルキルまたはアルコキシまたはアルキルチオ基である。例を挙げれば、アルキルは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−デシル、およびn−ドデシルである。好ましくは、アルキルは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、およびシクロヘキシルである。特に好ましくは、アルキルは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、およびn−ヘキシルである。例を挙げかつ好ましくは、アルコキシは、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキソキシ、シクロプロポキシ、シクロブトキシ、シクロペントキシ、シクロヘキソキシ、またはシクロヘプトキシである。例を挙げかつ好ましくは、アルキルチオは、メタンチオ、エタンチオ、n−プロパンチオ、イソプロパンチオ、n−ブタンチオ、イソブタンチオ、s−ブタンチオ、t−ブタンチオ、n−ペンタンチオ、1−メチルブタンチオ、2−メチルブタンチオ、3−メチルブタンチオ、ネオペンタンチオ、1−エチルプロパンチオ、およびn−ヘキサンチオである。
【0019】
アルケニルは、本発明の文脈においては、2〜10個の炭素原子(C〜C10)、好ましくは2〜6個の炭素原子(C〜C)を有する、直鎖状、環状または分枝状のアルケニル基である。例を挙げかつ好ましくは、アルケニルは、ビニル、アリル、イソプロペニル、およびn−ブテ−2−エン−1−イルである。
【0020】
アリールは、本発明の文脈においては、6〜24個の骨格炭素原子を有する芳香族基であり、そこでは、一つの環あたりゼロ個、1個、2個または3個の骨格炭素原子、しかしながら全分子中では少なくとも1個の骨格炭素原子が、窒素、硫黄または酸素からなる群より選択されるヘテロ原子によって置換され得るが、アリールが、6〜24個の骨格炭素原子を有する芳香族炭素環基であるのが好ましい。アリールアルキル基の芳香族部分についても、同じことがあてはまる。さらに、芳香族炭素環またはヘテロ芳香族基は、一つの環あたり5個までの、C〜C−アルキル、C〜C−アルケニル、C〜C−アルコキシ、アミノ、C〜C15−アリールアルキル、カルボキシル、C〜C−モノ−およびジ−アルキルアミノ、ハロ、ニトロ、シアノ、カルボキシル、C〜C−ハロアルキル、C〜C−ハロアルケニル、C〜C−ハロアルコキシ、C〜C−ハロアルキルチオ、およびヒドロキシルからなる群より選択される同一または異なった置換基を用いて置換され得る。
【0021】
好ましいC〜C24−アリールの例は、フェニル、o−、p−もしくはm−トリル、ナフチル、フェナントレニル、アントラセニル、またはフルオレニルである。一つの環あたり1個、2個もしくは3個の骨格炭素原子、しかしながら、全分子中で少なくとも1個の骨格炭素原子が、窒素、硫黄および酸素からなる群より選択されるヘテロ原子によって置換されることが可能な、ヘテロ芳香族C〜C24−アリールの例は、ピリジル、ピリミジル、ピリダジニル、ピラジニル、チエニル、フリル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリルもしくはイソオキサゾリル、インドリジニル、インドリル、ベンゾ[b]チエニル、ベンゾ[b]フリル、インダゾリル、キノリル、イソキノリル、ナフチリジニル、キナゾリニル、ベンゾフラニル、またはジベンゾフラニルである。
【0022】
アリールアルキルは、それぞれの場合において互いに独立して、上述の定義によるアリール基によって、1個、数個または完全に置換され得る、上述の定義による直鎖状、環状または分枝状のアルキル基である。アリールアルキルの一例がベンジルである。7〜15個の炭素原子(C〜C15)を有するアリールアルキルが好ましく、7〜10個の炭素原子(C〜C10)を有するアリールアルキルが特に好ましい。
【0023】
アリールオキシは、本発明の文脈においては、酸素原子を介して結合された先に定義されたC〜C24−アリール基である。例を挙げれば、そのアリール基は、C〜C−アルキル、C〜C−アルケニル、C〜C−アルコキシ、アミノ、C〜C15−アリールアルキル、カルボキシル、C〜C−モノ−およびジ−アルキルアミノ、ハロ、ニトロ、シアノ、カルボキシル、C〜C−ハロアルキル、C〜C−ハロアルケニル、C〜C−ハロアルコキシ、C〜C−ハロアルキルチオ、ヒドロキシルからなる群より選択された基によってさらに置換することもできる。例を挙げかつ好ましくは、アリールオキシはフェノキシである。
【0024】
モノ−およびジ−アリールアミノは、本発明の文脈においては、1個または2個の同一または異なった先に定義されたC〜C24−アリール基に結合され、窒素原子を介して結合されているアミノ基である。例を挙げれば、そのアリール基は、C〜C−アルキル、C〜C−アルケニル、C〜C−アルコキシ、アミノ、C〜C15−アリールアルキル、カルボキシル、C〜C−モノ−およびジ−アルキルアミノ、ハロ、ニトロ、シアノ、カルボキシル、C〜C−ハロアルキル、C〜C−ハロアルケニル、C〜C−ハロアルコキシ、C〜C−ハロアルキルチオ、ヒドロキシルからなる群より選択された基によってさらに置換することもできる。
【0025】
本発明の文脈においては、5員〜8員の飽和もしくは不飽和のヘテロシクリルは好ましくは、環の炭素原子、環の窒素原子、環の酸素原子または環の硫黄原子を介して結合された、S、Nおよび/またはOの系列からの3個までの同一または異なったヘテロ原子を有する、飽和もしくは不飽和の複素環基である。例を挙げれば、その5員〜8員の飽和もしくは不飽和のヘテロシクリルは、C〜C−アルキル、C〜C−アルケニル、C〜C−アルコキシ、アミノ、C〜C15−アリールアルキル、カルボキシル、C〜C−モノ−およびジ−アルキルアミノ、ハロ、ニトロ、シアノ、カルボキシル、C〜C−ハロアルキル、C〜C−ハロアルケニル、C〜C−ハロアルコキシ、C〜C−ハロアルキルチオ、ヒドロキシルからなる群より選択された基によってさらに置換することもできる。S、Nおよび/またはOの系列からの2個までの同一または異なったヘテロ原子を有する、5員〜8員の飽和ヘテロシクリルが好ましい。例を挙げかつ好ましくは、アゼパニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、またはテトラヒドロフリルが挙げられる。
【0026】
モノアルキルアミノまたはジアルキルアミノは、本発明の文脈においては、好ましくはそれぞれの場合において1〜15個の炭素原子で表される、1個または2個の同一または異なった環状、非環状、直鎖状または分枝状のアルキル置換基に結合されたアミノ基である。そのアミノ基が、好ましくは1〜12個の炭素原子で表される、極めて特に好ましくは1〜8個の炭素原子で表される、1個または2個の同一または異なった環状、非環状、直鎖状または分枝状のアルキル置換基に結合されているのが特に好ましい。例を挙げれば、そのアルキル基は、C〜C−アルキル、C〜C−アルケニル、C〜C−アルコキシ、アミノ、C〜C15−アリールアルキル、カルボキシル、C〜C−モノ−およびジ−アルキルアミノ、ハロ、ニトロ、シアノ、カルボキシル、C〜C−ハロアルキル、C〜C−ハロアルケニル、C〜C−ハロアルコキシ、C〜C−ハロアルキルチオ、ヒドロキシルからなる群より選択された基によってさらに置換することもできる。
【0027】
例を挙げかつ好ましくは、モノアルキルアミノは、メチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、t−ブチルアミノ、n−ペンチルアミノ、およびn−ヘキシルアミノである。
【0028】
例を挙げかつ好ましくは、ジアルキルアミノは、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチル−N−メチルアミノ、N−メチル−N−n−プロピルアミノ、N−イソプロピル−N−n−プロピルアミノ、N−t−ブチル−N−メチルアミノ、N−エチル−N−n−ペンチルアミノ、およびN−n−ヘキシル−N−メチルアミノである。
【0029】
ハロアルキルまたはハロアルケニルまたはハロアルコキシは、本発明の文脈においては、ハロゲン原子によって一度、数度、または完全に置換されている、直鎖状、環状または分枝状の上述の定義によるアルキルまたはアルケニルまたはアルコキシ基である。
【0030】
例を挙げかつ好ましくは、C〜C15−ハロアルキルは、ジクロロメチル、ジフルオロメチル、フルオロメチル、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ノナフルオロシクロペンチル、ノナクロロシクロペンチル、ヘプタフルオロイソプロピル、およびノナフルオロブチルである。
【0031】
例を挙げかつ好ましくは、C〜C−ハロアルケニルは、クロロエチレン、ジクロロエチレン、またはトリフルオロエチレンである。
【0032】
例を挙げかつ好ましくは、C〜C−ハロアルコキシは、ジフルオロメトキシ、フルオロエトキシ、フルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、トリクロロメトキシ、および2,2,2−トリフルオロエトキシである。
【0033】
ハロアルキルチオは、本発明の文脈においては、ハロゲン原子によって一度、数度、または完全に置換されている、1〜15個の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子(C〜C)を有する、直鎖状、環状または分枝状の基である。例を挙げかつ好ましくは、C〜C15−ハロアルキルチオは、クロロエチルチオ、クロロブチルチオ、クロロヘキシルチオ、クロロペンチルチオ、クロロドデシルチオ、ジクロロエチルチオ、フルオロエチルチオ、トリフルオロメチルチオ、および2,2,2−トリフルオロエチルチオである。
【0034】
ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素である。擬ハロゲンは、例を挙げかつ好ましくは、シアニド、シアネート、またはチオシアネートとすることができる。
【0035】
本発明の意味における塩基は、たとえば、以下のものである:アルカリ土類もしくはアルカリ金属の水酸化物、アミド、アルコキシド、炭酸塩、リン酸水素塩もしくはリン酸塩、たとえば、ナトリウムアミド、リチウムジエチルアミド、ナトリウムメトキシド、カリウムtert−ブトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素ナトリウムもしくはリン酸水素カリウム、およびさらには三級アミンたとえば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ピペリジン、N−メチルピペリジン、N,N−ジメチルアミノピリジン、およびさらにはイミダゾール、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネ−5−エン(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン(DBU)、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(TMG)、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デセ−5−エン(MTBD)および2,8,9−トリイソプロピル−2,5,8,9−テトラアザ−1−ホスファビシクロ[3.3.3]ウンデカン(TTPU)、またはこれらの塩基の混合物。二環式もしくは三環式塩基、トリアルキルアミンもしくは無機炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物、リン酸水素塩、またはリン酸塩を使用するのが好ましい。特に好ましいのは、以下のものの使用である:1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネ−5−エン(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン(DBU)、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(TMG)、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デセ−5−エン(MTBD)、2,8,9−トリイソプロピル−2,5,8,9−テトラアザ−1−ホスファビシクロ[3.3.3]ウンデカン(TTPU)、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、イミダゾール、リン酸水素二カリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、またはこれらの塩基の混合物。極めて特に好ましいのは、塩基として以下のものを使用することである:1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネ−5−エン(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン(DBU)、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、またはリン酸カリウム。
【0036】
本発明による方法は、たとえば溶媒の存在下、または不在下に実施することができる。本発明による方法は、溶媒の存在下に実施するのが好ましい。
【0037】
本発明による方法において溶媒として使用可能なものの例を挙げかつ好ましくは、以下のものである:極性で非プロトン性の溶媒、たとえばスルホキシドたとえば、ジメチルスルホキシド、たとえばエーテルたとえばポリエチレングリコール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランもしくは1,2−ジメトキシエタン、たとえばスルホンたとえばスルホラン(テトラメチルスルホン)、たとえばアミド溶媒たとえば、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N−メチルカプロラクタム、もしくはジメチルアセトアミド、たとえばケトンたとえばジプロピルケトンもしくはメチルtert−ブチルケトン、またはニトリルたとえばベンゾニトリルもしくはベンジルニトリル、または、ハロゲン化芳香族化合物たとえばクロロベンゼンもしくはオルト−ジクロロベンゼン、またはそのような溶媒の混合物。極性で非プロトン性の溶媒として、以下のものを使用するのが好ましい:ポリエチレングリコール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、オルト−ジクロロベンゼン、もしくはN−メチルピロリドン、またはそのような溶媒の混合物。本発明による方法は、高沸点溶媒の存在下に実施するのが特に好ましい。本発明の文脈においては、次いで、溶媒の沸点が1barで140℃以上であれば、その溶媒を高沸点溶媒とみなす。高沸点の極性で非プロトン性の溶媒として以下のものを使用するのが特に好ましい:エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、オルト−ジクロロベンゼン、もしくはN−メチルピロリドン、またはそのような溶媒の混合物。
【0038】
重合禁止剤としては、例を挙げかつ好ましくは、遊離のニトロキシル基の重合禁止剤、たとえば2,2,6,6−テトラメチルピペリジンN−オキシル、硫黄、p−ベンゾキノン、4−tert−ブチルカテコール、フェノチアジン、ジ−tert−ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、もしくは立体障害フェノール、またはこれらの重合禁止剤の混合物が使用可能である。ジ−tert−ブチルヒドロキシルトルエン(BHT)を使用するのが好ましい。
【0039】
本発明による方法は、50℃〜200℃、特に好ましくは70〜180℃、極めて特に好ましくは130℃〜170℃の温度で実施するのが好ましい。
【0040】
使用する、重合禁止剤の、式(II)の化合物に対するモル比は、たとえば、1×10−6から1×10−1までの間、好ましくは5×10−6から5×10−3までの間、特に好ましくは1×10−5から1×10−3までの間である。
【0041】
使用する式(II)の化合物の、使用する塩基に対するモル比は、たとえば0.1〜10の間、好ましくは0.3〜2の間、特に好ましくは0.5〜1.5の間である。
【0042】
本発明による方法においては、重合禁止剤、溶媒、および塩基を、たとえば最初に導入する。例を挙げれば、次いでその混合物を、加熱して反応温度にすることが可能であり、また真空をかけることも可能である。例を挙げれば、次いで、式(II)の化合物の添加を開始することができる。同様にして、さらに例を挙げれば、塩基および溶媒のみを最初に添加してもよく、重合禁止剤は式(II)の化合物と混合してもよく、そしてたとえば、それから遂に添加してもよい。反応成分と混合物の添加は、たとえば、計量仕込みの方法で実施する。式(I)の化合物は、たとえば、本発明による方法においては、たとえば蒸留によって連続的に分離することもできる。
【0043】
本発明による方法は、重合禁止剤、溶媒および塩基を最初に導入し、その混合物を加熱して反応温度になるように実施するのが好ましい。好ましくは、次いで真空をかけ、式(II)の化合物を添加する。好ましくは、生成する式(I)の化合物を反応途中で分離する。これを、蒸留法によって実施するのが好ましい。
【0044】
本発明による方法における化合物の多くのものは、市場で入手可能であるか、または当業者には公知である現行技術から公知の類似の方法によって製造することができる。
【0045】
式(III)の化合物から式(II)の化合物を製造するのが確かに好ましいが、ここで式(III)の化合物を、
【化3】

[式中、R、RおよびRは、式(I)の化合物について述べた意味を示す]
場合によっては、少なくとも一種の溶媒の存在下、および
場合によっては、少なくとも一種の塩基の存在下に、
ハロゲン化剤と反応させて、式(II)の化合物を得る。
【0046】
式(II)の化合物を製造するためのハロゲン化剤としては、例を挙げかつ好ましくは、塩化チオニル、臭化チオニル、三塩化リン、三臭化リン、塩化スルフリル、臭化スルフリル、もしくはHX(ここで、X=Cl、Br、またはF)、またはこれらの化合物の混合物の使用が可能である。塩化チオニルを使用するのが特に好ましい。
【0047】
式(II)の化合物を製造するための方法は、少なくとも1種の不活性溶媒の存在下に実施するのが好ましい。式(II)の化合物を製造するための方法において好ましい溶媒は、不活性な非極性脂肪族もしくは芳香族溶媒、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン、各種の石油エーテル、ヘキサン、シクロヘキサン、場合によってはハロゲン化炭化水素たとえば四塩化炭素、またはそのような有機溶媒の混合物である。ベンゼン、ヘキサン、石油エーテル、トルエン、p−キシレン、およびキシレン異性体の混合物、またはそのような溶媒の混合物が特に好ましい。
【0048】
さらに、式(III)の化合物からの式(II)の化合物の製造は、塩基の存在下に実施するのが好ましい。この場合、塩基としては以下のものを使用するのが好ましい:アルカリ土類もしくはアルカリ金属の水酸化物、アルコキシド、炭酸塩、リン酸水素塩もしくはリン酸塩、たとえばカリウムtert−ブトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素ナトリウムもしくはリン酸水素カリウム、およびさらには三級アミンたとえば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ピペリジン、ピリジン、N−メチルピペリジン、N,N−ジメチルアミノピリジン、およびさらには、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネ−5−エン(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン(DBU)、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(TMG)、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デセ−5−エン(MTBD)および2,8,9−トリイソプロピル−2,5,8,9−テトラアザ−1−ホスファビシクロ[3.3.3]ウンデカン(TTPU)、またはこれらの塩基の混合物。二環式もしくは三環式塩基、ピリジン、N−メチルピペリジン、N,N−ジメチルアミノピリジンもしくはピペリジン、またはこれらの塩基の混合物を使用するのが特に好ましい。
【0049】
式(III)の化合物から式(II)の化合物を製造するための方法は、0℃〜25℃、特に好ましくは0℃〜5℃の温度で実施するのが好ましい。
【0050】
ハロゲン化剤の、式(III)の化合物に対するモル比は、たとえば0.8〜1.5の間、好ましくは1.0〜1.5の間である。
【0051】
式(III)の化合物からの式(II)の化合物の製造は、実質的に無水の条件下で実施するのが好ましい。「実質的に無水の条件下」という用語は、水含量が、使用する反応混合物の量を基準にして、0.0001重量%〜1.0重量%の間であるのが好ましいということを意味している。
【0052】
式(III)の化合物から式(II)の化合物を製造するための方法は、たとえば、最初に塩基および溶媒を導入するようにして実施する。この混合物をまず、たとえば、30〜100℃に加熱することができる。この混合物を60〜90℃に加熱するのが好ましい。30℃〜100℃の温度で添加することによって、望ましくない二級化合物の生成を顕著に抑制することができる。例を挙げれば、ハロゲン化剤と式(III)の化合物とを、別の容器の中で混合する。そのハロゲン化剤と式(III)の化合物との混合物を、次いで、塩基と溶媒との混合物に添加することができる。しかしながら、例を挙げれば、ハロゲン化剤と式(III)の化合物とを、同様に最初に混合して導入することも可能である。例を挙げれば、塩基と溶媒との混合物を最初に加熱しておき、次いで、例を挙げれば、30℃〜100℃の温度で添加することができる。例を挙げれば、反応成分および混合物の添加を、計量仕込みで実施する。
【0053】
式(III)の化合物から式(II)の化合物を製造するための方法を、最初に塩基および溶媒を導入するようにして実施するのが好ましい。次いでこの混合物を、60℃〜90℃に加熱するのが好ましい。ハロゲン化剤を他の容器に導入しておき、式(III)の化合物を添加するのが好ましい。この混合物を、塩基と溶媒との混合物に計量仕込みするのが好ましい。
【0054】
式(III)の化合物は、市場で入手可能であるか、または当業者には公知である現行技術から公知の類似の方法によって製造することができる。
【0055】
式(III)の化合物から式(II)の化合物を製造するためのその方法を使用することで、望ましくない二次生成物の形成を抑制することができる。さらに、その方法を用いることで、少量のハロゲン化剤の使用および低い温度でも、良好な収率で式(III)の化合物が製造される。
【0056】
式(II)の化合物の精製、さらには式(I)の化合物の精製は、当業者には公知の方法に従って、たとえば溶媒を用いた抽出、蒸留、または結晶化によって実施することができる。
【0057】
本発明による方法によって、式(I)の化合物を、工業的に簡単な方法で高収率および高純度で製造することができる。本発明のための方法は、潜在的に危険性を有しているために専門家に対する出費が必要なような、化学物質の取扱いを必要とせず、また、比較的大きいスケールでも問題なく実施することが可能である。本発明による方法では、式(I)の化合物を高収率かつ高純度で得られるということは、特に驚くべきことである。
【0058】
本発明により製造された式(I)の化合物は、プラスチックおよび医薬におけるポリマー添加物の製造には特に適している。
【0059】
以下の実施例は、本発明を明らかにするのに役立つが、これに関して、それらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0060】
1: 3−クロロ−2−フルオロプロピオン酸メチルの製造
743g(6.3mol)の量の塩化チオニルを、スルホン化用のパンの中に導入し、冷却して5℃とする。748g(98%、6.00mol)の量の3−ヒドロキシ−2−フルオロプロピオン酸メチルを、5±5℃で計量仕込みすると、ガスが発生する。添加が完了した後に、次いでその混合物を0℃〜30℃で撹拌する。24g(0.30mol)の量のピリジンおよび332gのトルエンを、第二のスルホン化用のパンの中に導入し、その混合物を加熱して80℃とし、そしてスルホン化用のパン1からの塩化反応混合物を、その中に計量仕込みすると、ガスが発生する。添加が完了した後に、次いでその混合物を80℃で撹拌する。次いで、まず減圧下(200〜500mbar)に充填カラムを用いてトルエンを蒸留除去し、次いで、20mbarでその反応生成物(沸点:70℃)を分留する。742g(5.28mol、収率88%)の量の反応生成物が、無色の液体として得られる。
【0061】
2: 2−フルオロアクリル酸メチルの製造
4g(0.02mol)の量のジ−tert−ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、500gのN−メチルピロリジン(NMP)、および360g(2.2mol)の三塩基性リン酸ナトリウムをスルホン化用のパンの中に導入し、その混合物を加熱して150℃とする。51mg(2.2×10−4mol)の量のジ−tert−ブチルヒドロキシトルエン(BHT)を、垂直回収ベンド(vertical recovery bend)の蒸留受器の中に導入する。300mbarの真空度として、合計して287g(98%、2.0mol)の3−クロロ−2−フルオロプロピオン酸メチルの計量仕込みを開始する。2−フルオロアクリル酸メチルが蒸留で出てくる(distilled over)ような程度で、その計量仕込みを継続する。留出流れが出てこなくなったら、真空度を下げて150mbarとする。それでも反応生成物が出てこなくなったら、窒素を加えることによって圧力を上げる。蒸留ボトムを冷却し、底バルブを介して排出させる。蒸留後の反応生成物が無色の液体として得られる(205g、95%、1.87mol、収率93.5%)。
【0062】
3: 3−クロロ−2−フルオロプロピオン酸エチルの製造
8.99g(0.08mol)の量の塩化チオニルを、窒素雰囲気下20〜25℃で、乾燥させた50mLの丸底フラスコの中に導入した。次いで、3−ヒドロキシ−2−フルオロプロピオネート(10.0g、0.07mol)を1時間かけて計量仕込みし、次いでその混合物を、周囲温度でさらに2時間撹拌した。3.98g(0.04mol)の量のトルエンを、0.286gのピリジン(5mol%)と共に、Anschutzヘッドをとりつけた第二の丸底フラスコの中に導入し、その混合物を加熱して80℃とした。第一の丸底フラスコからの混合物を、その予備加熱した溶液に、75〜85℃で1時間かけて滴下により添加した。溶媒を減圧下に蒸留除去し、次いで残渣を120℃、10mbarで精密蒸留した。4.1gの留出物が無色の液体として得られた。
H NMR(400MHz、CDCl):5.67(dd;J=44Hz,3Hz;CHH);5.31(dd;J=13Hz,3Hz;CHH);4.30(q,J=7Hz,CH)、1.35(t,J=7Hz,CH)ppm。
【0063】
4: 2−フルオロアクリル酸エチルの製造
10mL(0.1mol)の量のN−メチルピロリジン(NMP)を、3口丸底フラスコの中に導入し、6.19gのKPOと混合した。その懸濁液を加熱して150℃とし、300mbarの真空にかけた。3−クロロ−2−フルオロプロピオン酸エチル(4.1g、27mmol)を計量仕込みすると同時に、反応生成物を蒸留除去した。2.7gの量の2−フルオロアクリル酸エチルが無色の液体として得られたが、それには約15%のNMPが混入していた。水を用いた抽出によって過剰のNMPを除去することができた。1.3gの量の反応生成物が、無色の液体として得られた。(収率42%)。
H NMR(400MHz、CDCl):5.14(ddd;J=48Hz,5Hz,4Hz;CHF);4.32(qd,J=7Hz,1Hz;CH)、3.95(dd,J=4Hz,1Hz,CHCl);3.90(dd,J=5Hz,3Hz,CHCl);1.34(t,J=7Hz,CH)ppm。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物を製造するための方法であって、
【化1】

[式中、RおよびRは、同一であるかまたは異なっており、互いに独立して、水素、C〜C15−アルキル、C〜C24−アリール、C〜C15−アルコキシ、C〜C10−アルケニル、C〜C24−アリールオキシ、C〜C15−アリールアルキル、C〜C15−アルキルチオ、C〜C15−モノ−およびジ−アルキルアミノ、C〜C24−モノ−およびジ−アリールアミノ、または5員〜8員の飽和もしくは不飽和のヘテロシクリルであって、それらがさらに、C〜C15−アルキル、C〜C10−アルケニル、C〜C15−アルコキシ、C〜C24−アリール、C〜C15−アリールアルキル、C〜C15−アルキルチオ、ハロ、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル、C〜C15−ハロアルキル、C〜C10−ハロアルケニル、C〜C15−ハロアルコキシ、C〜C15−ハロアルキルチオ、および5員〜8員の飽和もしくは不飽和のヘテロシクリルからなる群より選択される基によって置換され得るか、あるいは
とRとが合体して、炭素環式もしくは複素環式で、飽和もしくは不飽和の4員〜8員の環を形成し、それらがさらに、C〜C15−アルキル、C〜C10−アルケニル、C〜C15−アルコキシ、C〜C24−アリール、C〜C15−アリールアルキル、C〜C15−アルキルチオ、ハロ、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル、C〜C15−ハロアルキル、C〜C10−ハロアルケニル、C〜C15−ハロアルコキシ、C〜C15−ハロアルキルチオ、および5員〜8員の飽和もしくは不飽和のヘテロシクリルからなる群より選択される基によって置換され得、そして
は、C〜C15−アルコキシ、C〜C15−モノ−およびジ−アルキルアミノ、C〜C15−アルキルチオ、C〜C24−アリールオキシ、C〜C24−モノ−およびジ−アリールアミノ、および、5員〜8員の飽和もしくは不飽和の、ヘテロ原子を介して結合されたヘテロシクリルであって、それらがさらに、C〜C15−アルキル、C〜C10−アルケニル、C〜C15−アルコキシ、C〜C15−アルキルチオ、C〜C24−アリール、C〜C15−アリールアルキル、ハロ、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシル、C〜C15−ハロアルキル、C〜C10−ハロアルケニル、C〜C15−ハロアルコキシ、C〜C15−ハロアルキルチオ、および5員〜8員の飽和もしくは不飽和のヘテロシクリルからなる群より選択される基によって置換され得る]
ここで、式(II)の化合物を、
【化2】

[式中、R、R、およびRは、上述の意味を有し、
そしてXは、Cl、Br、Iまたは擬ハロゲンである]
少なくとも一種の塩基の存在下、
および少なくとも一種の重合禁止剤の存在下に、
反応させて、
式(I)の化合物を得る、方法。
【請求項2】
および/またはRが、水素、C〜C−アルキル、C〜C24−アリール、C〜C−アルコキシ、C〜C−アルケニル、C〜C24−アリールオキシ、C〜C10−アリールアルキル、C〜C−アルキルチオ、C〜C−モノ−およびジ−アルキルアミノ、C〜C24−モノ−およびジ−アリールアミノ、または5員〜8員の飽和もしくは不飽和のヘテロシクリルであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
が、C〜C−アルコキシ、C〜C−モノ−およびジ−アルキルアミノ、C〜C−アルキルチオ、C〜C24−アリールオキシ、C〜C24−モノ−およびジ−アリールアミノ、または5員〜8員の飽和もしくは不飽和の、窒素原子を介して結合されたヘテロシクリルであることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記塩基が、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネ−5−エン(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン(DBU)、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、もしくはリン酸カリウム、またはそれら塩基の混合物であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
高沸点の極性で非プロトン性の溶媒として、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、オルト−ジクロロベンゼン、もしくはN−メチルピロリドン、またはそのような溶媒の混合物が使用されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
重合禁止剤として、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンN−オキシル、硫黄、p−ベンゾキノン、4−tert−ブチルカテコール、フェノチアジン、ジ−tert−ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、またはこれらの重合禁止剤の混合物が使用されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記反応が、130℃〜170℃の温度で実施されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記式(II)の化合物の、使用される前記塩基に対するモル比が、0.5〜1.5の間であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記式(I)の化合物が、前記反応混合物から、その製造中に分離されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記式(II)の化合物を、
【化3】

[式中、R、RおよびRは、請求項1に列記された意味を有し、
そしてXは、Cl、Br、Iまたは擬ハロゲンである]
前記式(III)の化合物と
【化4】

ハロゲン化剤との反応によって製造することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ハロゲン化剤として、塩化チオニル、臭化チオニル、三塩化リン、三臭化リン、塩化スルフリル、臭化スルフリル、もしくは、X=Cl、BrまたはFであるHX、またはこれらの化合物の混合物を使用することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、ベンゼン、ヘキサン、石油エーテル、トルエン、p−キシレン、およびキシレン異性体混合物、またはそのような溶媒の混合物からなる群より選択される少なくとも一種の溶媒の存在下に実施されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、二環式もしくは三環式塩基、ピリジン、N−メチルピペリジン、N,N−ジメチルアミノピリジンもしくはピペリジン、またはこれらの塩基の混合物からなる群より選択される塩基の存在下に実施されることを特徴とする、請求項10〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記式(III)の化合物の、前記ハロゲン化剤に対するモル比が、1.0〜1.5の間であることを特徴とする、請求項10〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記式(III)の化合物および/または前記ハロゲン化剤の添加の前または添加中に、塩基と溶媒との前記混合物を加熱して60℃〜90℃とすることを特徴とする、請求項10〜14のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−530756(P2012−530756A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516705(P2012−516705)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/058870
【国際公開番号】WO2010/149683
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(506207853)サルティゴ・ゲーエムベーハー (35)
【Fターム(参考)】