説明

置換された2−(フェノキシメチル)安息香酸の製造法

本発明は置換された2−(フェノキシメチル)安息香酸の製造法を提供することを目的とする。
本発明は、a)化合物(II)を塩基B1の存在下で化合物(III)
【化1】


と反応させ、そして
b)工程a)で中間体生成物として生成した化合物(IV)
【化2】


を塩基B2の存在下で化合物(V)
R−Y (V)
と反応させて一般式(I)の化合物を生成することからなる一般式(I)の化合物の製造法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般式(I)の置換された2−(フェノキシメチル)安息香酸の製造法に関する。本発明はさらに一般式(I)
【化1】

の化合物を製造するための本発明の方法で生成する新規中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般式(I)の化合物はペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)のアゴニストまたはアンタゴニストとして 大きな薬理学的効果を持つため、例えば血中の脂質を低下させるための、また糖尿病を治療するための薬剤として適している。
【0003】
一般式(I)の化合物を含む多数のPPARアゴニストおよびアンタゴニストがWO00/64876に開示されている。
【0004】
しかしながら、WO00/64876に記載されている一般式(I)の化合物を製造するための方法は、これらの薬理学的に重要な化合物の工業規模の製造に関しても幾つかの欠点を有している。この製造法では、レゾルシノールを2−ブロモメチル安息香酸エステルと反応させ、その後遊離OH基を含有する中間体を炭酸カリウム塩基の存在下でアルキル化試薬と反応させ、最後にエステルを加水分解することにより式Iの化合物が得られる。この方法の特定の問題は前駆体の2−ブロモメチル安息香酸エステルであり、なぜならこの物質は熱的に不安定であり、室温でさえ分解して環化し、臭化メチルを除去して相当するフタリドを与え、また非常に催涙性で潜在的に発ガン性であり、さらにクロマトグラフィーでしか純粋に製造することができないためである。他の欠点はWO00/64876に記載されている前駆体(2−ブロモメチル安息香酸エステル)を製造するための方法ではN−ブロモスクシンイミドおよび爆発しやすい過酸化ジベンゾイルが使用されるということである。前駆体を製造するための別法はJ. Org. Chem., 50, 3355〜3359(1985年)に記載のような光化学的臭素化によるものである。このような前駆体製造のための臭素化反応は適当な安息香酸エステルが2−位の他にアルキル基を有する場合にこれらもまた臭素化されうるためいつも問題がある。例えば、薬理学的に重要な幾つかの式(I)の化合物は6−メチル安息香酸フラグメントを有するため、上記の方法によるこのような化合物の工業規模の製造もまた非選択的臭素化による追加の精製工程の結果として非常に高いコストがかかる。
【0005】
2−カルボキシベンジルアリールエーテルを製造するためのWO 00/64876に記載の方法の別法が開示されている。このように、すべての別法はJ. Chem. Soc., 4074〜4075(1964年)に記載の方法に基づいており、フェノールを170℃より高い温度において水酸化ナトリウム塩基の存在下で適当なフタリドと反応させる。例えば、米国特許第5,221,762号は2−カルボキシベンジルアリールエーテルが中間体として生成するフェニルグリオキシル酸エステルのE−オキシムエーテルの製造法を開示している。この場合のアリールフラグメントはC1−C4−アルコキシによりメタ置換されるフェニルである。中間体は50℃〜250℃の温度で塩基の存在下、溶融状態で製造される。同様に、DE−A 2 208 893では、三環式α−オキシカルボン酸誘導体の製造は前駆体のグアヤコールから出発し、メトキシド溶液を加え、最初に蒸留によりメタノール溶媒を除去し、フタリドを加えてから反応混合物を180〜190℃に加熱する。
【0006】
絶対に2−カルボキシベンジルアリールエーテルを溶融状態で製造する必要があるわけではない;それどころか適当ならば高沸点の溶媒を使用することもできる。DE−A2749957は塩基として水素化ナトリウム、また溶媒としてジメチルホルムアミドを使用して4−メチルフェノールをフタリドと還流下で反応させるキサンテン、チオキサンテンおよびジベンゾキセピンのキノリジジリデン誘導体の製造法を開示している。同様に、JP−A07002733は塩基としてアルコラートおよび高沸点の溶媒を使用する2−カルボキシベンジルアリールエーテルの製造を開示している。とりわけ、アリールフラグメントはメタ位が低級アルコキシにより置換されるフェニルであってもよい。
【0007】
アルコールとフタリドとの反応が、高温(少なくとも100℃)で行なわれる必要があるということは、2−カルボキシベンジルアリールエーテルを製造するための上記全ての方法に共通する。なぜなら、そうでなければ少ししかまたは全く反応が起こらないからである。2個の遊離ヒドロキシル基を有するレゾルシノールまたはその誘導体が使用されることは全くないこともまたわかっている。使用されるフェノールが追加のアルコキシ置換基(メタ位だけでない)を持つ場合、これらは未置換の低級アルコキシ置換基である。しかしながら、WO00/64876に記載の一般式(I)のPPARアゴニストおよびアンタゴニストはR基として好ましくはアリールアルキルまたはヘテロアリールアルキル置換基を有し、この置換も1回またはそれ以上置換されてもよい化合物である。したがって、R基は主に中程度から大きい分子量を有する。しかしながら、例えばJP−A 07002733に似た方法は、アルコールおよびフタリドの反応には高温が必要であるためRとアルコールのフェニルフラグメントとの間のエーテル結合が不安定になることから、式Iの化合物を製造するために使用することができない。温度がより高く、相当する置換基Rの分子量がより高いことは一般式(I)の化合物の収率がより小さいことを意味する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は従来技術で見られるような欠点を持たない、一般式(I)のPPARアゴニストおよびアンタゴニストの製造法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本目的は、
a)化合物(II)
【化2】

を塩基B1の存在下で化合物(III)
【化3】

と反応させ、そして
【0010】
b)工程a)で中間体として生成した化合物(IV)
【化4】

を塩基B2の存在下で化合物(V)
R−Y (V)
と反応させて、一般式(I)
【化5】

[式中、
Rは未置換の、または少なくとも一置換されたC1−C10−アルキル、ヘテロシクリル、アリール−(C1−C10−アルキル)−、ヘテロアリール−(C1−C10−アルキル)−およびヘテロシクリル−(C1−C10−アルキル)−からなる群より選択され、
これらの置換基はハロゲン、C1−C6−アルキル、−O−アリール、オキソ、C1−C6−ア
ルコキシ、−C(O)O−(C1−C6−アルキル)、C2−C6−アルケニル、C2−C6−アルキニル、−C(O)(C1−C6−アルキル)、−C(O)NH2、−C(O)NH(C1−C6−アルキル)、−C(O)N(C1−C6−アルキル)2、−S−(C1−C6−アルキル)、−SO2NH2、−SO2−(C1−C6−アルキル)、−NH2、−N(C1−C6−アルキル)2、−NH(C1−C6−アルキル)、−NO2、−CN、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アリール、ヘテロシクリルおよびヘテロアリールから選択され、
ここでアリール、ヘテロシクリルおよびヘテロアリールもC1−C3−アルキル、C1−C3−アルコキシ、ハロゲンまたはトリフルオロメチルにより少なくとも一置換されてよく;
X1はハロゲン、C1−C6−アルキル、C1−C6−アルコキシ、トリフルオロメチル、アリール、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールであり、
ここでアリール、ヘテロシクリルおよびヘテロアリールもC1−C3−アルキル、C1−C3−アルコキシ、ハロゲンまたはトリフルオロメチルにより少なくとも一置換されてよく;
X2はハロゲン、C1−C6−アルキル、C1−C6−アルコキシ、トリフルオロメチル、アリール、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールであり、
ここでアリール、ヘテロシクリルおよびヘテロアリールもC1−C3−アルキル、C1−C3−アルコキシ、ハロゲンまたはトリフルオロメチルにより少なくとも一置換されてよく;
ヘテロアリールはN、OおよびSから選択される1個またはそれ以上のヘテロ原子を含有する5−〜14−員の単環式、二環式または三環式芳香族複素環であり;
アリールは6−〜14−員の単環式、二環式または三環式芳香族系であり;
ヘテロシクリルはN、OおよびSから選択される1個またはそれ以上のヘテロ原子を含有する5−〜14−員の単環式、二環式または三環式非芳香族複素環であり;
mは0、1、2、3または4であり;
nは0、1、2、3または4であり;
Yは脱離基であり;そして
B2はアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属アルコラート、アルカリ土類金属アルコラート、アルカリ金属水素化物、アルカリ土類金属水素化物、シラジド、アルカリ金属アミドまたはアルカリ土類金属アミドである]
の化合物を得る、一般式(I)の化合物の製造法により達成される。
【0011】
本発明の方法は一般式(I)の化合物の均一な生成物を高収率で、そして/または少ない中間体段階で製造することができ、特に産業上の利用に関して経済的に価値のある最先端の方法と比較して利点を有する。一方では、WO00/64876に記載の方法と比べて発ガン性で不安定な中間体化合物の使用が省かれ、さらに適当な塩基を選択して遊離安息香酸を工程b)のアルキル化反応で使用することができる。これにより、WO00/64876に記載の方法ではまず遊離安息香酸を適当なエステルの形態で保護し、最終の反応段階で再び脱保護する必要があるため、2つの合成工程を省くことができる。例えばJP−A07002733に記載のような方法(メタ−低級アルコキシフェノールとフタリドの結合)と比較して、反応工程a)およびb)の本質的な逆転の利点は、本発明の方法の工程b)で行なわれるアルキル化反応を工程a)で行なわれるエーテルの結合よりも非常に低い温度で行なうことができるため、このように式(I)の化合物を非常に速い時間で、または経済的に価値のある収率で製造できるということである。
【0012】
本発明の方法を使用して、一般式(I)
【化6】

[式中、
Rは未置換の、または少なくとも一置換されたC1−C10−アルキル、ヘテロシクリル、アリール−(C1−C10−アルキル)−、ヘテロアリール−(C1−C10−アルキル)−およびヘテロシクリル−(C1−C10−アルキル)−からなる群より選択され、
これらの置換基はハロゲン、C1−C6−アルキル、−O−アリール、オキソ、C1−C6−アルコキシ、C2−C6−アルケニル、C2−C6−アルキニル、−C(O)−(C1−C6−アルキル)、−C(O)NH2、−C(O)NH(C1−C6−アルキル)、−C(O)N(C1−C6−アルキル)2、−S−(C1−C6−アルキル)、−SO2NH2、−SO2−(C1−C6−アルキル)、−C(O)O(C1−C6−アルキル)、−NH2、−N(C1−C6−アルキル)2、−NH(C1−C6−アルキル)、−NO2、−CN、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アリール、ヘテロシクリルおよびヘテロアリールから選択され、
ここでアリール、ヘテロシクリルおよびヘテロアリールもC1−C3−アルキル、C1−C3−アルコキシ、ハロゲンまたはトリフルオロメチルにより少なくとも一置換されてよく;
X1はハロゲン、C1−C6−アルキル、C1−C6−アルコキシ、トリフルオロメチル、アリール、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールであり、
ここでアリール、ヘテロシクリルおよびヘテロアリールもC1−C3−アルキル、C1−C3−アルコキシ、ハロゲンまたはトリフルオロメチルにより少なくとも一置換されてよく;
X2はハロゲン、C1−C6−アルキル、C1−C6−アルコキシ、トリフルオロメチル、アリール、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールであり、
ここでアリール、ヘテロシクリルおよびヘテロアリールもC1−C3−アルキル、C1−C3−アルコキシ、ハロゲンまたはトリフルオロメチルにより少なくとも一置換されてよく;
ヘテロアリールはN、OおよびSから選択される1個またはそれ以上のヘテロ原子を含有する5−〜14−員の単環式、二環式または三環式芳香族複素環であり;
アリールは6−〜14−員の単環式、二環式または三環式芳香族系であり;
ヘテロシクリルはN、OおよびSから選択される1個またはそれ以上のヘテロ原子を含有する5−〜14−員の単環式、二環式または三環式非芳香族複素環であり;
mは0、1、2、3または4であり;
nは0、1、2、3または4である]
の化合物を製造することができる。
【0013】
式(I)の化合物に例えばアリール、ヘテロアリール、アルキル、アルコキシなどのような基、フラグメント、ラジカルまたは置換基が2個以上存在する場合、それらはすべて互いに独立して上記の意味を有し、したがって各(個々の)場合において同一のまたは互いに独立した意味を有する。下記の説明はそれがアリール基、置換基、フラグメントまたはラジカルと呼ばれるかどうかに関わらず、(例えば)アリールおよび他のすべての基にもあてはまる。例えば、ジ(C1−C6−アルキル)アミノ基において、2個のアルキル置換基は同一であるか、または異なっている(例えば2×エチルまたは1×プロピルおよび1×ヘキシル)。
【0014】
式(I)の化合物の上記定義において、置換基、例えばアリールが未置換であるか、または他の置換基群、例えばC1−C6−アルキル、C1−C6−アルコキシ、ハロゲンなどにより少なくとも一置換される場合、アリールが多置換される場合の一連の他の置換基群からの選択は互いに独立して行なわれる。このように、例えばアリールが二置換される場合、他の置換基のすべての組合せが包含される。したがって、アリールは例えばエチルにより二置換されてもよく、アリールはそれぞれメチルおよびエトキシにより一置換されてもよく、アリールはそれぞれエチルおよびフッ素により一置換されてもよく、アリールはメトキシなどにより二置換されてもよい。
【0015】
アルキル基は直鎖状、分枝鎖状、非環状または環状であってよい。このことはそれらが例えばアルコキシ基(C1−C10−アルキル−O−)、アルコキシカルボニル基またはアミノ基のような他の基の一部である場合、あるいは置換されている場合にもあてはまる。
【0016】
アルキル基の例はメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルまたはデシルである。その中にはこれらの基のn−異性体およびイソプロピル、イソブチル、イソペンチル、sec−ブチル、t−ブチル、ネオペンチル、3,3−ジメチルブチルなどが包含される。特に断りがなければ、「アルキル」なる用語はさらに未置換の、あるいは場合により1個またはそれ以上の他の基、例えば1、2、3または4個の同一または異なる基、例えばアリール、ヘテロアリール、アルコキシまたはハロゲンにより置換されるアルキル基を包含する。さらに、アルキル基の何れかの位置に追加の置換基が存在することもできる。「アルキル」なる用語はまたシクロアルキルおよびシクロアルキルアルキル(シクロアルキルにより置換されたアルキル)を包含し、ここでシクロアルキルは少なくとも3個の炭素原子を有する。シクロアルキル基の例はシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニルおよびシクロデシルである。デカリニル、ノルボルナニル、ボルナニルまたはアダマンタニルのような多環式環系もまた場合により可能である。シクロアルキル基は未置換であるか、場合により上記アルキル基の例で挙げたような1個またはそれ以上の他の基により置換される。
【0017】
アルケニルおよびアルキニル基の例は:ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル(アリル)、2−ブテニル、2−メチル−2−プロペニル、3−メチル−2−ブテニル、エチニル、2−プロピニル(プロパルギル)、2−ブチニルまたは3−ブチニルである。「アルケニル」なる用語には少なくとも3個の炭素原子を含有するシクロアルケニル基およびシクロアルケニルアルキル基(シクロアルケニルにより置換されたアルキル)が含まれる。シクロアルケニルの例は:シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニルおよびシクロオクテニルである。
【0018】
アルケニル基は直鎖または分枝鎖に1〜3個の共役または非共役二重結合を有してよく(すなわちアルキ−ジエニルおよびアルキ−トリエニル基もまた含む)、好ましくは1個の二重結合を有し、同じことはアルキニル基の三重結合にもあてはまる。アルケニルおよびアルキニル基は未置換であるか、場合により上記アルキル基の例で挙げたような1個またはそれ以上の他の基により置換される。
【0019】
特に断りがなければ、上記のアリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリル基は共に未置換であってよく、そして何れかの位置に1個またはそれ以上、例えば1、2、3または4個またはそれ以上の上記置換基を有してもよい。例えば、一置換されたフェニル基の置換基は2、3または4位に存在してよく、また二置換されたフェニル基の置換基は2,3位、2,4位、2,5位、2,6位、3,4位または3,5位に存在してよい。三置換されたフェニル基の置換基は2,3,4位、2,3,5位、2,3,6位、2,4,5位、2,4,6位または3,4,5位に存在し得る。四置換されたフェニル基の置換基は2,3,4,5位、2,3,4,6位または2,3,5,6位に存在し得る。
【0020】
一価の基に関する上記及び以後の定義は、フェニレン、ナフチレンまたはヘテロアリーレンのような二価の基にも同様にあてはまる。これらの二価の基(フラグメント)は何れかの環炭素原子を通して隣接する基と結合することができる。フェニレン基の場合、これは1,2位(オルト−フェニレン)、1,3位(メタ−フェニレン)または1,4位(パラ−フェニレン)に存在し得る。ヘテロ原子を含有する5−員の芳香族系、例えばチオフェンまたはフランの場合、2個の遊離結合は2,3位、2,4位、2,5位または3,4位に存在し得る。例えばピリジンのような1個のヘテロ原子を含有する6−員の芳香族系から誘導される二価の基は2,3、2,4、2,5、2,6、3,4または3,5−ピリジンジイル基であってよい。不斉な二価の基の場合、本発明はすべての位置異性体も包含し、すなわち例えば2,3−ピリジンジイル基の場合、一方の隣接する基が2位に存在し、他方の隣接する基が3位に存在する化合物は、一方の隣接する基が3位に存在し、他方の隣接する基が2位に存在する化合物と全く同様に包含される。
【0021】
特に断りがなければ、ヘテロアリール基、ヘテロアリーレン基、ヘテロシクリル基およびヘテロシクリレン基、並びに窒素と結合した2個の基により形成される環は、好ましくは同一または異なる1、2、3または4個のヘテロ原子を含有する完全に飽和の、部分的にまたは完全に不飽和の複素環(すなわちヘテロシクロアルカン、ヘテロシクロアルケン、ヘテロ芳香族化合物)から誘導される。これらは好ましくは同一または異なる1、2または3個、特に好ましくは1または2個のヘテロ原子を含有する複素環から誘導される。特に断りがなければ、複素環は単環式または多環式、例えば単環式、二環式または三環式である。これらは好ましくは単環式または二環式である。好ましくは5−員、6−員および7−員の環、特に好ましくは5−員および6−員の環である。2個またはそれ以上のヘテロ原子を有する多環式複素環の場合、これらはすべて同一の環または複数の環にわたって分布してよい。
【0022】
本発明においてヘテロアリールと呼ばれる基は、単環式、二環式または三環式の芳香族複素環から誘導されるものである。ヘテロアリールの例は:ピロリル、フラニル(フリル)、チオフェニル(チエニル)、イミダゾリル、ピラゾリル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、1,3−オキサゾリル(オキサゾリル)、1,2−オキサゾリル(イソキサゾリル)、オキサジアゾリル、1,3−チアゾリル(チアゾリル)、1,2−チアゾリル(イソチアゾリル)、テトラゾリル、ピリジニル(ピリジル)、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、1,2,3−トリアジニル、1,2,4−トリアジニル、1,3,5−トリアジニル、1,2,4,5−テトラジニル、インダゾリル、インドリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾフラニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾジオキソリル、アクリジニル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フタラジニル、チエノチオフェニル、1,8−ナフチリジニル、他のナフチリジニル、プテリジニルまたはフェノチアジニルである。環系が単環式ではない場合、それぞれの追加の環についてそれぞれの上記ヘテロアリールには、飽和形態(ペルヒドロ形態)または部分的に不飽和の形態(例えばジヒドロ形態またはテトラヒドロ形態)または最大限に不飽和の(非芳香族)の形態もまた包含され、それぞれの形態は知られており、安定している。したがって、本発明において「ヘテロアリール」なる用語は、例えば2個の環が共に芳香族である二環式基および1個の環だけが芳香族である二環式基を包含する。このようなヘテロアリールの例は:3H−インドリニル、2(1H)−キノリノニル、4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリニル、2H−l−オキソイソキノリル、1,2−ジヒドロキノリニル、(2H)キノリニルN−オキシド、3,4−ジヒドロキノリニル、1,2−ジヒドロイソキノリニル、3,4−ジヒドロイソキノリニル、クロモニル、3,4−ジヒドロイソキノキサリニル、4−(3H)キナゾリノニル、4H−クロメニル、4−クロマノニル、オキシインドリル、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリニル、1,2,3,4−テトラヒドロキノリニル、1H−2,3−ジヒドロイソインドリル、2,3−ジヒドロベンゾ[f]イソインドリル、1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[g]イソキノリニル、クロマニル、イソクロマノニル、2,3−ジヒドロクロモニル、1,4−ベンゾジオキサニル、1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリニル、5,6−ジヒドロキノリル、5,6−ジヒドロイソキノリル、5,6−ジヒドロキノキサリニル、5,6−ジヒドロキナゾリニル、4,5−ジヒドロ−1H−ベンゾイミダゾリル、4,5−ジヒドロベンゾオキサゾリル、1,4−ナフトキノリル、5,6,7,8−テトラヒドロキノリニル、5,6,7,8−テトラヒドロイソキノリル、5,6,7,8−テトラヒドロキノキサリニル、5,6,7,8−テトラヒドロキナゾリル、4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−ベンズイミダゾリル、4,5,6,7−テトラヒドロベンゾオキサゾリル、1H−4−オキサ−1,5−ジアザナフタレン−2−オニル、1,3−ジヒドロイミジゾロ−[4,5]−ピリジン−2−オニル、2,3−ジヒドロ−l,4−ジナフトキノニル、2,3−ジヒドロ−1H−ピロール[3,4−b]キノリニル、1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b][1,7]ナフチリジニル、1,2,3,4−テトラヒドロベンゾ[b][1,6]ナフチリジニル、1,2,3,4−テトラヒドロ−9H−ピリド[3,4−b]インドリル、1,2,3,4−テトラヒドロ−9H−ピリド[4,3−b]インドリル、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,4−b]インドリル、1H−2,3,4,5−テトラヒドロアゼピノ[3,4−b]インドリル、1H−2,3,4,5−テトラヒドロアゼピノ[4,3−b]インドリル、1H−2,3,4,5−テトラヒドロアゼピノ[4,5−b]インドリル、5,6,7,8−テトラヒドロ[1,7]ナフチリジニル、1,2,3,4−テトラヒドロ[2,7]ナフチリジル、2,3−ジヒドロ[1,4]ジオキシノ[2,3−b]ピリジル、2,3−ジヒドロ[1,4]ジオキシノ[2,3−b]ピリジル、3,4−ジヒドロ−2H−1−オキサ[4,6]ジアザナフタレニル、4,5,6,7−テトラヒドロ−3H−イミダゾ[4,5−c]ピリジル、6,7−ジヒドロ[5,8]ジアザナフタレニル、1,2,3,4−テトラヒドロ[1,5]ナフチリジニル、1,2,3,4−テトラヒドロ[1,6]ナフチリジニル、1,2,3,4−テトラヒドロ[1,7]ナフチリジニル、1,2,3,4−テトラヒドロ[1,8]ナフチリジニルまたは1,2,3,4−テトラヒドロ[2,6]ナフチリジニルである。
【0023】
本発明においてヘテロシクリルと呼ばれる基は単環式、二環式または三環式の非芳香族複素環から誘導されるものである。以後、非芳香族複素環は特にヘテロシクロアルカン(完全に飽和の複素環)およびヘテロシクロアルケン(部分的に不飽和の複素環)を意味する。ヘテロシクロアルケンの場合、適当ならば互いに共役していてもよい2個またはそれ以上の二重結合を有する化合物もまた包含される。ヘテロシクリルの例は:ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、イソチアゾリジニル、チアゾリジニル、イソキサゾリジニル、オキサゾリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル1,3−ジオキソラニル、1,4−ジオキシニル、ピラニル、チオピラニル、1,4−ジオキシニル、1,2−オキサジニル、1,3−オキサジニル、1,4−オキサジニル、1,2−チアジニル、1,3−チアジニル、1,4−チアジニル、アゼピニル、1,2−ジアゼピニル、1,3−ジアゼピニル、1,4−ジアゼピニル、1,3−オキサゼピニル、1,3−チアゼピニル、2−オキソ−アゼパニル、モルホリニル、チオモルホリニル、1,2,3,4−テトラヒドロピリジニル、1,2−ジヒドロピリジニル、1,4−ジヒドロピリジニル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジニル、4(3H)−ピリミドニル、1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニル、2−ピロリニル、3−ピロリニル、2−イミダゾリニル、2−ピラゾリニル、3,4−ジヒドロ−2H−ピラニル、ジヒドロフラニル、7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプテニル、ジヒドロチオフェニルおよびジヒドロチオピラニルである。複素環基の飽和度はそれぞれの定義において示される。
【0024】
これらの複素環から誘導される置換基は何れかの適当な炭素原子を介して結合することができ、さらに置換基を与えることができる。窒素を含有する複素環から誘導される基は適当な窒素原子上に水素原子または他の置換基を有し得る。その例として、ピロール、イミダゾール、ピロリジン、モルホリン、ピペラジン残基などが挙げられる。これらの窒素を含有する複素環基はまた、特に関連する複素環基が炭素原子に結合する場合、環の窒素原子を通して結合することもできる。例えば、チエニル基は2−チエニルまたは3−チエニルの形態であり、そしてピペリジニル基は1−ピペリジニル(ピペリジノ)、2−ピペリジニル、3−ピペリジニルまたは4−ピペリジニルの形態である。適当な窒素を含有する複素環はN−オキシドまたは生理学的に許容しうる酸から誘導されるカウンターイオンを有する
四級塩の形態であってもよい。例えば、ピリジル基はピリジンN−オキシドの形態であってよい。適当な硫黄を含有する複素環はS−オキシドまたはS,S−ジオキシドの形態であってもよい。
【0025】
本発明においてアリールと呼ばれる基は環ヘテロ原子を含まない単環式、二環式または三環式の芳香族系から誘導されるものである。芳香族系が単環式ではない場合、「アリール」なる用語はそれぞれの追加の環について飽和形態(ペルヒドロ形態)または部分的に不飽和の形態(例えばジヒドロ形態またはテトラヒドロ形態)または最大限に不飽和の(非芳香族)の形態を包含し、それぞれの形態は知られており、安定している。本発明において「アリール」なる用語は例えば2個の環が共に芳香族である二環式基および1個の環だけが芳香族である二環式基もまた包含する。アリールの例はフェニル、ナフチル、アントラシル、インダニル、1,2−ジヒドロナフチル、1,4−ジヒドロナフチル、インデニル、1,4−ナフトキノニルまたは1,2,3,4−テトラヒドロナフチルである。
【0026】
アリールアルキルはアルキル基がアリール基により置換されることを意味する。ヘテロアリールアルキルはアルキル基がヘテロアリール基により置換されることを意味する。ヘテロシクリルアルキルはアルキル基がヘテロシクリル基により置換されることを意味する。アルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルおよびアリールの定義と可能な置換基に関しては上記の定義を参照。
【0027】
ハロゲンはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素であり、好ましくはフッ素、塩素または臭素であり、特に好ましくはフッ素または塩素である。
【0028】
本発明の方法により製造することができる一般式(I)の好ましい化合物は次のように定義される:
Rは未置換の、または少なくとも一置換されたC1−C10−アルキル、ヘテロシクリル、アリール−(C1−C10−アルキル)−、ヘテロアリール−(C1−C10−アルキル)−およびヘテロシクリル−(C1−C10−アルキル)−からなる群より選択され、
これらの置換基はハロゲン、C1−C6−アルキル、−O−アリール、オキソ、C1−C6−アルコキシ、−C(O)O−(C1−C6−アルキル)、C2−C6−アルケニル、C2−C6−アルキニル、−C(O)−(C1−C6−アルキル)、−C(O)NH2、−C(O)NH(C1−C6−アルキル)、−C(O)N(C1−C6−アルキル)2、−S−(C1−C6−アルキル)、−SO2NH2、−SO2−(C1−C6−アルキル)、−NH2、−N(C1−C6−アルキル)2、−NH(C1−C6−アルキル)、−NO2、−CN、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アリール、ヘテロシクリルおよびヘテロアリールから選択され、
ここでアリール、ヘテロシクリルおよびヘテロアリールもC1−C3−アルキル、C1−C3−アルコキシ、ハロゲンまたはトリフルオロメチルにより少なくとも一置換されてよく;
X1はハロゲン、C1−C6−アルキル、C1−C6−アルコキシまたはトリフルオロメトキシであり;
X2はハロゲン、C1−C6−アルキル、C1−C6−アルコキシまたはトリフルオロメトキシであり;
ヘテロアリールはN、OおよびSから選択される1個またはそれ以上のヘテロ原子を含有する5−〜14−員の単環式、二環式または三環式芳香族複素環であり;
アリールは6−〜14−員の単環式、二環式または三環式芳香族系であり;
ヘテロシクリルはN、OおよびSから選択される1個またはそれ以上のヘテロ原子を含有する5−〜14−員の単環式、二環式または三環式非芳香族複素環であり;
mは0、1または2であり;
nは0、1または2である。
【0029】
より好ましい一般式(I)の化合物は次のように定義される:
Rは未置換の、または少なくとも一置換されたアリール−(C1−C6−アルキル)−およびヘテロアリール−(C1−C6−アルキル)−からなる群より選択され、
これらの置換基はハロゲン、C1−C4−アルキル、−O−アリール、オキソ、C1−C4−アルコキシ、アリール、ヘテロシクリルおよびヘテロアリールから選択され、
ここでアリール、ヘテロシクリルおよびヘテロアリールもC1−C3−アルキル、C1−C3−アルコキシ、ハロゲンまたはトリフルオロメチルにより少なくとも一置換されてよく;
X1はハロゲン、C1−C6−アルキル、C1−C6−アルコキシまたはトリフルオロメトキシであり;
X2はハロゲン、C1−C6−アルキル、C1−C6−アルコキシまたはトリフルオロメトキシであり;
ヘテロアリールはN、OおよびSから選択される1個またはそれ以上のヘテロ原子を含有する5−〜14−員の単環式、二環式または三環式芳香族複素環であり;
アリールは6−〜14−員の単環式、二環式または三環式芳香族系であり;
ヘテロシクリルはN、OおよびSから選択される1個またはそれ以上のヘテロ原子を含有する5−〜14−員の単環式、二環式または三環式非芳香族複素環であり;
mは0、1または2であり;
nは0、1または2である。
【0030】
さらにより好ましい一般式(I)の化合物は次のように定義される:
Rは未置換の、または少なくとも一置換されたアリール−(C1−C6−アルキル)−およびヘテロアリール−(C1−C6−アルキル)−からなる群より選択され、
これらの置換基はハロゲン、C1−C4−アルキル、−O−アリール、オキソ、C1−C4−ア
ルコキシ、アリール、ヘテロシクリルおよびヘテロアリールから選択され、
ここでアリール、ヘテロシクリルおよびヘテロアリールもC1−C3−アルキル、C1−C3−アルコキシ、ハロゲンまたはトリフルオロメチルにより少なくとも一置換されてよく;
X1はハロゲン、C1−C6−アルキル、C1−C6−アルコキシまたはトリフルオロメトキシであり;
X2はハロゲン、C1−C6−アルキル、C1−C6−アルコキシまたはトリフルオロメトキシであり;
ヘテロアリールはN、OおよびSから選択される1個またはそれ以上のヘテロ原子を含有する5−〜10−員の単環式、二環式または三環式芳香族複素環であり;
アリールはフェニル、ナフチル、インダニル、ジヒドロナフチル、テトラヒドロナフチルまたはインデニルであり;
ヘテロシクリルはピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロフラニルまたはモルホリニルであり;
mは0、1または2であり;
nは0、1または2である。
【0031】
特に好ましい一般式(I)の化合物は次のように定義される:
Rは未置換の、または少なくとも一置換されたベンジルまたはヘテロアリールメチルであり、これらの置換基はフッ素、塩素、C1−C4−アルキル、−O−フェニル、C1−C4−アルコキシ、フェニルおよびヘテロアリールから選択され、
ここでフェニルおよびヘテロアリールもC1−C3−アルキル、C1−C3−アルコキシ、塩素またはフッ素により少なくとも一置換されてよく;
X1はC1−C3−アルキルまたは臭素であり;
X2はC1−C3−アルキル、フッ素または塩素であり;
ヘテロアリールはオキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、インドリル、ベンゾイミダゾリル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニルまたはキノキサリニルであり;
mは0または1であり;
nは0、1または2である。
【0032】
とりわけ好ましい一般式(I)の化合物は次のように定義される:
Rは未置換の、または少なくとも一置換されたベンジルまたはヘテロアリールメチルであり、これらの置換基はフッ素、塩素、C1−C4−アルキル、フェニルおよびヘテロアリールから選択され、
ここでフェニルおよびヘテロアリールはC1−C3−アルキル、塩素またはフッ素により少なくとも一置換されてよく;
X2はC1−C3−アルキルであり
ヘテロアリールはオキサゾリルまたはイソキサゾリルであり;
mは0であり;
nは0または1である。
【0033】
本発明の方法の工程a):
本発明の方法の工程a)において、化合物(II)
【化7】

を塩基B1の存在下で化合物(III)
【化8】

と反応させて化合物(IV)
【化9】

を生成する。
【0034】
式(II)および(III)の化合物は一般式(I)の相当する定義を有する。以後レゾルシノー
ル誘導体と呼ばれる化合物(II)として適した化合物は互いにメタ位にある2個のヒドロキシル基を有する化合物だけである。しかしながら、相当するヒドロキノンおよびカテコール誘導体は、以後フタリドと呼ばれる式(III)の化合物とほんの少ししかまたは全く反応しないため本発明の方法で使用することができない。
【0035】
塩基B1として適した塩基は基本的にすべて当業者に知られているものである。好ましくは、アルカリ金属およびアルカリ土類金属アルコラート、例えばナトリウムメトキシド、カリウムメトキシドおよびカリウムt−ブトキシドが適している。同様に、カリウムヘキサメチルジシラジドおよびリチウムヘキサメチルジシラジドのようなシラジドもまた適している。さらに、式(IV)の化合物は水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物を使用して製造することができるが、脱プロトン化から得られる水は使用されるフタリドと反応し、その反応条件下では不可逆的な開環が起こるため前駆体を所望の反応から奪って収率の低下をもたらす。アルカリ金属アルコラートは塩基B1として特に好ましく、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシドおよびカリウムt−ブトキシドがとりわけ好ましい。
【0036】
適当な溶媒は>100℃の沸点を有する溶媒またはその混合物、例えばトルエン、o−、m−、p−キシレン、グリム、ジメチルホルムアミド、N−メチル−1−ピロリドンおよびN,N−ジメチルアセトアミドである。N−メチル−1−ピロリドンおよびN,N−ジメチルアセトアミドは特に好ましい。
【0037】
使用される塩基B1の量は使用されるレゾルシノール誘導体(II)の量と等モルであり、好ましくは厳密に等モル量である。塩基B1の過剰は化合物(II)の両方の遊離ヒドロキシル基がアルキル化されるために避ける必要がある。
【0038】
同様に、等モル量に満たない塩基B1もまた、変換の減少をもたらし、収率に悪影響を及ぼすために避ける必要がある。使用される塩基B1およびレゾルシノール誘導体(II)の量は使用されるフタリド(III)と少なくとも等モルでなければならない。反応速度はより多い量のレゾルシノール誘導体(II)および塩基B1を同時に使用することにより増加させることができる。使用されるフタリド(III)の量に基づいて1〜6モル過剰の塩基B1およびレゾルシノール誘導体(II)が好ましく使用される。
【0039】
フタリド(III)、レゾルシノール誘導体(II)、塩基B1および溶媒が室温で混合され、その添加順序は重要でなく、反応における変換および単離生成物の収率に全く影響を与えない。したがって、先行する文献の幾つかに記載されているように、使用される塩基B1でレゾルシノール誘導体(II)を脱プロトン化し、あるいは使用される塩基B1の相当する酸を除去し、続いてフタリド(III)を加えて加熱する必要はない。
【0040】
一般に、反応は反応物および溶媒を80〜200℃、好ましくは110〜150℃の温度で混合した後、行なわれる。反応時間は使用されるフタリド(III)およびその立体障害(steric demand)に依存する。
【0041】
圧力に関して特別の条件は必要ではなく、大気圧下で行なうのが好都合である。
【0042】
反応の終了後、反応混合物は水で希釈される。その濃度に応じて反応混合物の固化が避けられないために、水は好ましくは>60℃の温度で加えられる。化合物(IV)を遊離させるために、得られる溶液は好ましくは塩酸または硫酸のような無機酸で酸性にされる。さらに後処理するために、当業者に知られている方法が使用される。
【0043】
以前に文献で開示されていない式(IV)の中間体は本発明の方法により高い収率および優れた純度で得ることができる。N−メチル−1−ピロリドンおよびN,N−ジメチルアセトアミドの使用に関して、前記溶媒の含有量を変えることにより式(IV)の化合物の溶媒和物が最初に得られる。適当な方法を使用して、例えば再結晶または水で加熱することにより単離生成物中に含まれる前記溶媒を減少または完全に除去することができる。中間体(IV)をさらに本発明の方法の工程b)で使用するための溶媒和物の除去は不必要である。
【0044】
本発明の方法の工程a)および/または工程b)はバッチ式で、および連続的に行なうことができる。連続的な手順では、反応相手を例えばパイプ反応器または一連の攪拌容器に通過させる。
【0045】
本発明の方法の工程b):
工程b)において、本発明の方法の工程a)で中間体として生成した化合物(IV)を塩基B2の存在下で化合物R−Y(V)と反応させて一般式(I)の化合物を得る。
【0046】
工程a)で中間体として生成した化合物(IV)、および化合物(V)は一般式(I)の相当する定義を有する。化合物(V)の適当な脱離基Yは当業者に知られている何れかの脱離基である。好ましくは、Yは塩素、臭素、ヨウ素、メシレートまたはトシレート、特に好ましくは塩素、臭素またはヨウ素である。
【0047】
適当な塩基B2はアルカリ金属およびアルカリ土類金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウムおよびカリウム、アルカリ金属およびアルカリ土類金属アルコラート、例えばナトリウムメトキシド、カリウムメトキシドおよびカリウムt−ブトキシド、アルカリ金属およびアルカリ土類金属水素化物、例えば水素化ナトリウムおよびカルシウムである。同様に、カリウムヘキサメチルジシラジドおよびリチウムヘキサメチルジシラジドのようなシラジドもまた適している。一般に、アルカリ金属およびアルカリ土類金属アミド;アルカリ金属アルコラートが好ましく、またナトリウムアルコラートが特に好ましい。上記塩基B2の使用に関して、本発明の方法の工程b)において工程a)で中間体として生成した化合物(IV)のヒドロキシル基の選択的アルキル化を行なうことができる。化合物(IV)の非保護カルボキシル基の追加のアルキル化はほんの少ししかまたは全く起こらない。
【0048】
不適当であることがわかっている塩基は例えば炭酸カリウムのような炭酸塩塩基である。不十分な塩基性のため、たとえ大過剰でもカルボキシル基だけが脱プロトン化され、式Iの化合物の酸官能基の選択的であるが望ましくないアルキル化をもたらす。この酸官能基の選択的アルキル化はより低い温度、特に50℃未満または50℃の温度で観察される;恐らくヒドロキシル基およびカルボキシル基が同時に存在するため、炭酸塩塩基の塩基性は低温で不十分である。また、炭酸カリウムのような炭酸塩塩基は、本発明の方法の工程b)が行なわれる前に遊離カルボキシル基が適当な保護基、例えばWO00/64876に記載のようなエステルで保護され、工程b)の後に再び脱保護される場合に使用することができる。このような遊離カルボキシル基の追加の保護/脱保護もまた本発明の方法に包含される。
【0049】
適当な溶媒は使用される塩基と反応できないすべての溶媒またはその混合物である:
i) 非プロトン性の極性溶媒、例えばアセトンおよびカルボキサ ミド、好ましくはN−メチル−1−ピロリジノン、N,N−ジメチ ルアセトアミドおよびジメチルホルムアミド;
ii) プロトン性の極性溶媒、例えばメタノール、エタノールおよびt−ブタノールのようなアルコール。
アルコールおよびカルボキサミドが好ましい。カルボキサミドが特に好ましい。
【0050】
使用される式(V)のアルキル化試薬R−Yは使用される化合物(IV)に基づいて1.0〜1.5
モル当量、好ましくは1.0〜1.25モル当量の範囲である。適当ならば、1.5モル当量より多いR−Yを使用することもできる。使用される塩基B2の量は使用される化合物(IV)のモル量の少なくとも2倍であり、好ましくは化合物(IV)の厳密に2倍のモル量の塩基B2である。
【0051】
反応は使用される溶媒に応じて20〜60℃、好ましくは20〜50℃、特に好ましくは20〜25℃の範囲の温度で行なわれる。カルボキサミド溶媒に必要な温度は一般にアルコール溶媒よりも低い。適当ならば、工程b)は60℃より高い温度で行なうこともできる。
【0052】
化合物(IV)が溶媒に導入され、次に塩基B1が加えられる。混合物は両方のヒドロキシル基が完全に脱プロトン化されるまで少なくとも5分間攪拌される。次に、式(V)のアルキル化試薬R−Yが加えられる。
【0053】
圧力に関して特別の条件は必要ではなく、大気圧下で行なうのが好都合である。
【0054】
反応の終了後、反応混合物は例えば塩化ナトリウム、塩化カリウムまたは重炭酸ナトリウムの溶液で希釈される。得られる溶液は例えば酢酸エチルで抽出され、その後反応溶液中の有機成分は有機相に移される。次に、酢酸エチル相は水で抽出される。一般式(I)の化合物は水相を例えば好ましくは塩酸または硫酸のような無機酸で酸性にすることにより遊離される。さらに後処理するために、当業者に知られている方法が使用される。本発明の式(I)の化合物は高い収率および良好な純度で得られる。
【0055】
適当ならば、一般式(I)の単離化合物の純度はその後の結晶化により高めることができる。
【0056】
本発明の他の態様において、当業者に知られている方法で、X1、X2またはRが定義されるところ、工程b)の後に、アルキルの脱離により(−C(O)O−(C1−C6−アルキル))、(−S−(C1−C6−アルキル))および/または(C1−C6−アルコキシ)置換基を有する化合物からカルボキシル、−SHおよび/または−OHにより置換される相当する一般式(I)の化合物を製造することができる。これらの追加の置換基は互いに独立して1回または数回存在することができる。遊離カルボキシル、(−SH)および/または(−OH)置換基は好ましくは酸を加えることにより得られる。適当ならば、これらの追加の置換基はエステル、チオアルコキシまたはアルコキシ置換基以外の置換基から得ることもできる。
【0057】
本発明の方法で使用される出発物質、溶媒、塩基などはすべて購入することができ、または当業者に知られている方法により製造することができる。
【0058】
本発明の他の態様は本発明の方法の工程a)で中間体として得ることができる式(IV)
【化10】

[式中、
X1はハロゲン、C1−C6−アルキル、C1−C6−アルコキシ、トリフルオロメチル、アリール、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールであり、
ここでアリール、ヘテロシクリルおよびヘテロアリールもC1−C3−アルキル、C1−C3−アルコキシ、ハロゲンまたはトリフルオロメチルにより少なくとも一置換されてよく;
X2はハロゲン、C1−C6−アルキル、C1−C6−アルコキシ、トリフルオロメチル、アリール、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールであり、
ここでアリール、ヘテロシクリルおよびヘテロアリールもC1−C3−アルキル、C1−C3−アルコキシ、ハロゲンまたはトリフルオロメチルにより少なくとも一置換されてよく;
ヘテロアリールはN、OおよびSから選択される1個またはそれ以上のヘテロ原子を含有する5−〜14−員の単環式、二環式または三環式芳香族複素環であり;
アリールは6−〜14−員の単環式、二環式または三環式芳香族系であり;
ヘテロシクリルはN、OおよびSから選択される1個またはそれ以上のヘテロ原子を含有する5−〜14−員の単環式、二環式または三環式非芳香族複素環であり;
mは0、1、2、3または4であり;
nは0、1、2、3または4である]
の化合物であるが、2−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェノキシメチル)安息香酸は除外される。
【0059】
一般式(IV)の化合物と同様の化合物はすでに知られている。US 2003/0072842 AおよびA. BassoliらのQuant. Struct.−Act. Relat., 20, 第3〜20頁(2001年)は単一化合物の2−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェノキシメチル)安息香酸を開示している。この化合物は甘味料として使用され、PPAR−アゴニストまたは−アンタゴニストとの関連は開示されていない。US 2003/0072842 AまたはA. Bassoliらにより明確に開示されている化合物自体は本発明の対象ではない。
【0060】
好ましい式(IV)の化合物は次の定義を有する:
X1はハロゲン、C1−C6−アルキル、C1−C6−アルコキシまたはトリフルオロメチルであり;
X2はハロゲン、C1−C6−アルキル、C1−C6−アルコキシまたはトリフルオロメチルであり;
mは0、1、2、3または4であり;
nは0、1、2、3または4であるが、
但しX1=C1−C6−アルコキシはエーテル−フラグメントに対してパラ−位に存在しない。
【0061】
より好ましい式(IV)の化合物は次の定義を有する:
X1はハロゲン、C1−C6−アルキル、C1−C6−アルコキシまたはトリフルオロメチルであり;
X2はハロゲン、C1−C6−アルキル、C1−C6−アルコキシまたはトリフルオロメチルであり;
mは0または1であり;
nは0、1または2であるが、
但しX1=C1−C6−アルコキシはエーテル−フラグメントに対してパラ−位に存在しない。
【0062】
さらに好ましい式(IV)の化合物は次の定義を有する:
X1はハロゲン、C1−C3−アルキルまたはトリフルオロメチルであり;
X2はハロゲン、C1−C3−アルキル、C1−C3−アルコキシまたはトリフルオロメチルであり;
mは0または1であり;
nは0、1または2である。
【0063】
特に好ましい式(IV)の化合物は次の定義を有する:
X1はC1−C3−アルキルまたは臭素であり;
X2はC1−C3−アルキル、フッ素または塩素であり;
mは0または1であり;
nは0、1または2である。
【0064】
とりわけ好ましい式(IV)の化合物は次の定義を有する:
X2はC1−C3−アルキルであり;
mは0であり;
nは0または1である。
【0065】
上記のように、式(IV)の化合物は本発明の方法の工程a)により製造することができる。これらは本発明の方法の工程b)により一般式(I)のPPARアゴニストおよびアンタゴニストを合成するための出発化合物として適している。
【0066】
次の実施例は本法を例示するためのものであるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0067】
〔実施例1〕
式(IV)の化合物の製造
実施例1.1: 2−(3−ヒドロキシフェノキシメチル)−6−メチル安息香酸およびそのN−メチルピロリドンとの溶媒和物
2−(3−ヒドロキシフェノキシメチル)−6−メチル安息香酸(N−メチルピロリドンとの一溶媒和物)
7−メチルフタリド(30.1g、203ミリモル)、レゾルシノール(45.3g、407ミリモル)およびカリウムt−ブトキシド(47.6g、424ミリモル)を300mlのN−メチルピロリドン(NMP)中で懸濁し、140℃で21時間攪拌した。その後、第2量(2.4g、21.4ミリモル)のカリウムt−ブトキシドを加え、攪拌を140℃で2.5時間続けた。反応混合物を冷却し、800mlの水を加え、混合物を20℃で濃塩酸により酸性にしてpH=2にした。3〜5℃で2時間攪拌した後、薄いベージュ色の固体を吸引ろ過し、水で洗浄し、乾燥した。単離した生成物は2−(3−ヒドロキシフェノキシメチル)−6−メチル安息香酸および溶媒和分子としてのN−メチルピロリドンを1:1の比で含有する。収率77.7%、融点98〜99℃。
1H NMR(400MHz, DMSO−d6)δ
a) 2−(3−ヒドロキシフェノキシメチル)−6−メチル安息香酸
13.3 (br s, 1H, COOH), 9.4 (br s 1H, OH), 7.34 (d, 1H) 7.33 (s, 1H), 7.25 (m, 1H), 7.04 (t, 1H), 6.40〜6.37 (2H), 5.04 (s, 2H, CH2), 2.69 (s, 3H, CH3)。
b) N−メチルピロリドン
3.30 (t, 2H), 2.233 (s, 3H), 2.18 (t, 2H), 1.90 (m, 2H)。
【0068】
2−(3−ヒドロキシフェノキシメチル)−6−メチル安息香酸(N−メチルピロリドンとの半溶媒和物)
53.5g(150ミリモル)の2−(3−ヒドロキシフェノキシメチル)−6−メチル安息香酸*NMPを加熱しながら250mlのトルエン中に溶解し、10K/時で室温まで冷却した。次に、3〜5℃で1時間攪拌した。結晶を吸引ろ過し、トルエンで洗浄した。2−(3−ヒドロキシフェノキシメチル)−6−メチル安息香酸*0.5NMPの半溶媒和物を82%の収率で得た;融点112〜113℃。
【0069】
2−(3−ヒドロキシフェノキシメチル)−6−メチル安息香酸(非溶媒和物)
5.0g(14ミリモル)の2−(3−ヒドロキシフェノキシメチル)−6−メチル安息香酸*NMPを50mlの水中で2時間加熱還流した。冷却後、得られた固体を吸引ろ過し、水で洗浄した。2−(3−ヒドロキシフェノキシメチル)−6−メチル安息香酸を86.4%の収率で得た;融点154〜155℃。
【0070】
実施例1.2: 2−(3−ヒドロキシフェノキシメチル)安息香酸
フタリド(15.0g、112ミリモル)、レゾルシノール(23.6g、214ミリモル)およびカリウムt−ブトキシド(47.6g、220ミリモル)を150mlのN−メチルピロリドン(NMP)中で懸濁し、140℃で5時間攪拌した。反応混合物を冷却し、400mlの水を加え、混合物を20℃で濃塩酸により酸性にしてpH=4にした。溶液を200mlの酢酸エチルで1回、100mlの酢酸エチルで4回抽出した。合一した酢酸エチル相を硫酸マグネシウム上で乾燥し、蒸発乾固した。薄い褐色の油状物を得、0℃で結晶させた。結晶は2−(3−ヒドロキシフェノキシメチル)安息香酸およびジアルキル化レゾルシノールの混合物からなる。この混合物を10倍量の酢酸エチルと一緒に加熱して2−(3−ヒドロキシフェノキシメチル)安息香酸を溶解し、ジアルキル化生成物が固体として残った。酢酸エチル相を蒸発乾固すると2−(3−ヒドロキシフェノキシメチル)安息香酸が薄いベージュ色の結晶として得られた。
1H NMR(400 MHz, DMSO−d6)δ
13.1 (br s, 1H, COOH), 9.4 (br s 1H, OH), 7.92 (q, 1H), 7.64〜7.57 (2H), 7.43 (dt, 1H), 7.06 (m, 1H), 6.41〜6.34 (3H), 5.34 (s, 2H, CH2)。
b) 相応して過剰にアルキル化された式(IV)の生成物
13.1 (br s 2H, COOH), 7.94 (d, 2H), 7.66〜7.58 (4H), 7.45 (d, 2H), 7.21 (t, 1H),
6.62〜6.58 (2H), 5.44 (s, 4H, CH2)。
【0071】
実施例1.3: 2−(3−ヒドロキシフェノキシメチル)−6−メチル安息香酸およびそのN,N−ジメチルアセトアミドとの溶媒和物
2−(3−ヒドロキシフェノキシメチル)−6−メチル安息香酸(5:2の比でのN,N−ジメチルアセトアミドとの溶媒和物)
N−メチルピロリドン(NMP)の代わりにN,N−ジメチルアセトアミド(DMAA)を使用することを除けば実施例1.1と同様にして手順を行った。生成物をトルエンから再結晶して精製した。粗生成物および再結晶した生成物は共に2−(3−ヒドロキシフェノキシメチル)−6−メチル安息香酸を含んだ;5:2のDMAA比。収率60.0%、融点112〜114℃。
【0072】
〔実施例2〕
一般式(I)の化合物の製造
実施例2.1: 2−{3−[2−(4−フルオロフェニル)オキサゾール−4−イルメトキシ]フェノキシメチル}−6−メチル安息香酸
a) 溶媒としてN−メチルピロリドン
メタノール中における18.6g(104ミリモル)の30%濃度ナトリウムメトキシド溶液を室温で攪拌しながら70mlのN−メチルピロリドン中の15.9g(51.6ミリモル)の2−(3−ヒドロキシフェノキシメチル)−6−メチル安息香酸(N−メチルピロリドンとの半溶媒和物)に加えた。5分後、10.0g(47.3ミリモル)の4−クロロメチル−2−(4−フルオロフェニル)オキサゾールを加え、混合物を室温で23時間攪拌し、最後に50℃で1時間加熱した。500mlの19%濃度塩化ナトリウム溶液を反応溶液に加え、得られた混合物を225mlの酢酸エチルで2回抽出した。合一した酢酸エチル相を225mlの水で3回抽出し、合一した水相を2M塩酸により酸性にしてpH=3にした。得られた結晶を吸引ろ過し、水で洗浄した。生成物をイソプロパノールから結晶させることによりさらに精製した。2−{3−[2−(4−フルオロフェニル)オキサゾール−4−イルメトキシ]フェノキシメチル}−6−メチル安息香酸を無色の結晶として58.3%の収率で得た。融点168〜173℃。
1H NMR (400MHz, DMSO−d6)δ
13.2 (br s, 1H, COOH), 8.29 (s, 1H, オキサゾールH), 8.04 (m, 2H, フルオロフェニルH), 7.39 (m, 2H, フルオロフェニルH), 7.35〜7.31 (m, 2H), 7.25 (m, 1H), 7.20 (m, 1H), 6.67〜6.65 (m, 2H), 6.58 (dd, 1H), 5.11 (s, 2H,
CH2), 5.03 (s, 2H, CH2), 2.33 (s, 3H, CH3)。
b) 溶媒としてメタノール
反応を上記a)のようにして行なった。反応温度は24時間ずっと50℃であった。2−{3−[2−フェニルオキサゾール−4−イルメトキシ]フェノキシメチル}−6−メチル安息香酸を無色の結晶として53.0%の収率で得た。
【0073】
実施例2.2: 6−メチル−2−[3−(2−フェニルオキサゾール−4−イルメトキシ)フェノキシメチル]安息香酸
4−クロロメチル−2−(4−フルオロフェニル)オキサゾールの代わりに4−クロロメチル−2−フェニルオキサゾールを使用することを除けば実施例2.1と同様にして手順を行った。2−{3−[2−(4−フルオロフェニル)オキサゾール−4−イルメトキシ]フェノキシメチル}−6−メチル安息香酸を無色の結晶として45.0%の収率で得た。
1H NMR(400 MHz, DMSO−d6)δ
13.2 (br s, 1H, COOH), 8.29 (s, 1H, オキサゾールH), 8.02〜8.00 (m, 2H), 7.56〜7.52 (m, 3H), 7.37〜7.19 (4H), 6.69〜6.59 (3H), 5.13 (s, 2H, CH2), 5.05 (s, 2H, CH2), 2.35 (s, 3H, CH3)。
【0074】
実施例2.3: 2−(3−ベンジルオキシフェノキシメチル)−6−メチル安息香酸
4−クロロメチル−2−(4−フルオロフェニル)オキサゾールの代わりに臭化ベンジルを使用することを除けば実施例2.1と同様にして手順を行った。2−(3−ベンジルオキシフェノキシメチル)−6−メチル安息香酸を無色の結晶として47.3%の収率で得た。
1H NMR(400 MHz, DMSO−d6)δ
13.2 (br s, 1H, COOH), 7.45〜7.30 (7H), 7.25 (m, 1H), 7.18 (t, 1H), 6.63〜6.55 (3H), 5.10 (s, 2H, CH2), 5.07 (s, 2H, CH2), 5.34 (s, 3H, CH3)。
【0075】
比較例2.4:(2−{3−[2−(4−フルオロフェニル)オキサゾール−4−イルメトキシ]フェノキシメチル}−6−メチル安息香酸
1g(6.8ミリモル)の7−メチルフタリドおよび2g(7.0ミリモル)の3−[2−(4−フルオロフェニル)オキサゾール−4−イルメトキシ]フェノールをNMPに溶解した。3.9mlのメタノール性ナトリウムメトキシド(30%濃度)を加え、メタノールを留去し、混合物を130℃まで加熱した。2−{3−[2−(4−フルオロフェニル)オキサゾール−4−イルメトキシ]フェノキシメチル}−6−メチル安息香酸の生成は観察されなかった。3−[2−(4−フルオロフェニル)オキサゾール−4−イルメトキシ]フェノールは分解した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)化合物(II)
【化1】

を塩基B1の存在下で化合物(III)
【化2】

と反応させ、そして
b)工程a)で中間体として生成した化合物(IV)
【化3】

を塩基B2の存在下で化合物(V)
R−Y (V)
と反応させて、一般式(I)
【化4】

[式中、
Rは、未置換の、または少なくとも一置換されたC1−C10−アルキル、ヘテロシクリル、アリール−(C1−C10−アルキル)−、ヘテロアリール−(C1−C10−アルキル)−およびヘテロシクリル−(C1−C10−アルキル)−からなる群より選択され、
ここで、これらの置換基はハロゲン、C1−C6−アルキル、−O−アリール、オキソ、C1−C6−アルコキシ、−C(O)O−(C1−C6−アルキル)、C2−C6−アルケニル、C2−C6−アルキニル、−C(O)(C1−C6−アルキル)、−C(O)NH2、−C(O)NH(C1−C6−アルキル)、−C(O)N(C1−C6−アルキル)2、−S−(C1−C6−アルキル)、−SO2NH2、−SO2−(C1−C6−アルキル)、−NH2、−N(C1−C6−アルキル)2、−NH(C1−C6−アルキル)、−NO2、−CN、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アリール、ヘテロシクリルおよびヘテロアリールから選択され、
そして、アリール、ヘテロシクリルおよびヘテロアリールもC1−C3−アルキル、C1−C3−アルコキシ、ハロゲンまたはトリフルオロメチルにより少なくとも一置換されてよく;
X1はハロゲン、C1−C6−アルキル、C1−C6−アルコキシ、トリフルオロメチル、アリール、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールであり、
ここで、アリール、ヘテロシクリルおよびヘテロアリールもC1−C3−アルキル、C1−C3−アルコキシ、ハロゲンまたはトリフルオロメチルにより少なくとも一置換されてよく;
X2はハロゲン、C1−C6−アルキル、C1−C6−アルコキシ、トリフルオロメチル、アリール、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールであり、
ここでアリール、ヘテロシクリルおよびヘテロアリールもC1−C3−アルキル、C1−C3−アルコキシ、ハロゲンまたはトリフルオロメチルにより少なくとも一置換されてよく;
ヘテロアリールはN、OおよびSから選択される1個またはそれ以上のヘテロ原子を含有する5−〜14−員の単環式、二環式または三環式芳香族複素環であり;
アリールは6−〜14−員の単環式、二環式または三環式芳香族系であり;
ヘテロシクリルはN、OおよびSから選択される1個またはそれ以上のヘテロ原子を含有する5−〜14−員の単環式、二環式または三環式非芳香族複素環であり;
mは0、1、2、3または4であり;
nは0、1、2、3または4であり;
Yは脱離基であり;そして
B2はアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属アルコラート、アルカリ土類金属アルコラート、アルカリ金属水素化物、アルカリ土類金属水素化物、シラジド、アルカリ金属アミドまたはアルカリ土類金属アミドである]
の化合物を得る、一般式(I)の化合物の製造法。
【請求項2】
ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシドまたはカリウムt−ブトキシドが塩基B1として使用される請求項1記載の方法。
【請求項3】
ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシド、カリウムヘキサメチルジシラジド、リチウムヘキサメチルジシラジド、水素化ナトリウム、水素化カルシウム、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムが塩基B2として使用される請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
N−メチル−1−ピロリドンまたはN,N−ジメチルアセトアミドが工程a)の溶媒として使用される請求項1〜3の何れか一項記載の方法。
【請求項5】
アルコールまたはカルボキサミドが工程b)の溶媒として使用される請求項1〜4の何れか一項記載の方法。
【請求項6】
工程a)は110〜150℃の温度で行なわれ、そして/または工程b)は20〜50℃の範囲の温度で行なわれる請求項1〜5の何れか一項記載の方法。
【請求項7】
工程a)で化合物(II)は塩基B1と厳密に等モル量、および化合物(III)と少なくとも等モル量で使用され、そして/または工程b)で塩基B2は化合物(IV)の厳密に2倍のモル量で使用され、そして化合物(III)は化合物(IV)の1〜1.25倍のモル量で使用される請求項1〜6の何れか一項記載の方法。
【請求項8】
工程b)の後にアルキルの脱離により少なくとも1個の(−C(O)O−(C1−C6−アルキル))、(−S−(C1−C6−アルキル))または(C1−C6−アルコキシ)置換基を有する式(I)の化合物から少なくとも1個のカルボキシル、(−SH)または(−OH)置換基を有する化合物が製造される請求項1〜7の何れか一項記載の方法。
【請求項9】
Rは、未置換の、または少なくとも一置換されたアリール−(C1−C6−アルキル)−およびヘテロアリール−(C1−C6−アルキル)−からなる群より選択され、
ここで、これらの置換基はハロゲン、C1−C4−アルキル、−O−アリール、オキソ、C1−C4−アルコキシ、アリール、ヘテロシクリルおよびヘテロアリールから選択され、
そして、アリール、ヘテロシクリルおよびヘテロアリールもC1−C3−アルキル、C1−C3−アルコキシ、ハロゲンまたはトリフルオロメチルにより少なくとも一置換されてよく;
X1はハロゲン、C1−C6−アルキル、C1−C6−アルコキシまたはトリフルオロメトキシであり;
X2はハロゲン、C1−C6−アルキル、C1−C6−アルコキシまたはトリフルオロメトキシであり;
ヘテロアリールはN、OおよびSから選択される1個またはそれ以上のヘテロ原子を含有する5−〜14−員の単環式、二環式または三環式芳香族複素環であり;
アリールは6−〜14−員の単環式、二環式または三環式芳香族系であり;
ヘテロシクリルはN、OおよびSから選択される1個またはそれ以上のヘテロ原子を含有する5−〜14−員の単環式、二環式または三環式非芳香族複素環であり;
mは0、1または2であり;
nは0、1または2であり;そして
Yは脱離基である、
請求項1〜7の何れか一項記載の方法。
【請求項10】
Rは未置換の、または少なくとも一置換されたベンジルまたはヘテロアリールメチルであり、ここでこれらの置換基はフッ素、塩素、C1−C4−アルキル、−O−フェニル、C1−C4−アルコキシ、フェニルおよびヘテロアリールから選択され、
そして、フェニルおよびヘテロアリールもC1−C3−アルキル、C1−C3−アルコキシ、塩素またはフッ素により少なくとも一置換されてよく;
X1はC1−C3−アルキルまたは臭素であり;
X2はC1−C3−アルキル、フッ素または塩素であり;
ヘテロアリールはオキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、インドリル、ベンゾイミダゾリル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニルまたはキノキサリニルであり;
mは0または1であり;
nは0、1または2であり;そして
Yは塩素、臭素またはヨウ素である、
請求項9記載の方法。
【請求項11】
式(IV)
【化5】

[式中、
X1はハロゲン、C1−C6−アルキル、C1−C6−アルコキシ、トリフルオロメチル、アリール、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールであり、
ここでアリール、ヘテロシクリルおよびヘテロアリールもC1−C3−アルキル、C1−C3−アルコキシ、ハロゲンまたはトリフルオロメチルにより少なくとも一置換されてよく;
X2はハロゲン、C1−C6−アルキル、C1−C6−アルコキシ、トリフルオロメチル、アリール、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールであり、
ここでアリール、ヘテロシクリルおよびヘテロアリールもC1−C3−アルキル、C1−C3−アルコキシ、ハロゲンまたはトリフルオロメチルにより少なくとも一置換されてよく;
ヘテロアリールはN、OおよびSから選択される1個またはそれ以上のヘテロ原子を含有する5−〜14−員の単環式、二環式または三環式芳香族複素環であり;
アリールは6−〜14−員の単環式、二環式または三環式芳香族系であり;
ヘテロシクリルはN、OおよびSから選択される1個またはそれ以上のヘテロ原子を含有する5−〜14−員の単環式、二環式または三環式非芳香族複素環であり;
mは0、1、2、3または4であり;
nは0、1、2、3または4である]
の化合物であるが、2−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェノキシメチル)安息香酸は除外される、上記化合物。
【請求項12】
式(IV)の定義が:
X1はC1−C3−アルキルまたは臭素であり;
X2はC1−C3−アルキル、フッ素または塩素であり;
mは0または1であり;そして
nは0、1または2である、
請求項11記載の化合物。
【請求項13】
化合物(II)
【化6】

を塩基B1の存在下で化合物(III)
【化7】

と反応させて化合物(IV)
【化8】

を得る、請求項11または12記載の式(IV)の化合物の製造法。

【公表番号】特表2007−516995(P2007−516995A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546055(P2006−546055)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014602
【国際公開番号】WO2005/061427
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(397056695)サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (456)
【Fターム(参考)】