説明

置換アルカ−1−インを経由するα−アミノボロン酸誘導体の調製のための新規な合成経路

本発明は一般に有機化学の分野に関連し、特にα−アミノボロン酸誘導体の調製に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に有機化学の分野に関連し、特にα−アミノボロン酸エステルの調製に関する。これらの化合物は、N−末端ペプチジルボロン酸誘導体、たとえばN−(ピラジン−2−イル)カルボニル−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸、即ちボルテゾミブ等のボロン酸およびエステル化合物の合成における中間体として用いることができる。
【背景技術】
【0002】
アミノボロン酸(末端カルボキシル基がボロン酸B(OH)基で置き換えられたアミノ酸)は、主として癌の処置のための治療用として有望な種々の分子におけるアミノ酸の重要な薬学アイソスターである。たとえば、タラボスタットはプロリンボロン酸を含み、ボルテゾミブはロイシンボロン酸を含む。ボルテゾミブ、化学的にはN−(ピラジン−2−イル)カルボニル−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸は重要なプロテアゾーム阻害剤であり、マントル細胞リンパ腫および多発性骨髄腫の治療用途に臨床承認されている。最近、WO2009/006473 A2に記載されているように、アミノボロン酸、特にロイシンボロン酸を含む多くの新規な分子が調製され、生物学的に試験されてきた。
【0003】
ボルテゾミブならびに他のアミノボロン酸およびエステル化合物の合成は、EP0788360 B1、WO2005/097809 A2、WO2009/004350 A1およびWO2009/036281 A2に開示されている。EP0788360 B1には(1S,2S,3R,5S)−ピナンジオールロイシンボロネートおよびアミノ酸またはその誘導体を出発原料として用いるアミノボロン酸およびエステル化合物の調製のための一般的な方法が記載されている。カップリング剤として1−エチル−3−(3−ジメチルアミノ−プロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)、ベンゾトリアゾル−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP試薬)またはO−(1H−ベンゾトリアゾル−1−イル)N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)が用いられた。アミノボロン酸およびエステル化合物の大スケール製造に適した合成方法はWO2005/097809 A2に記載されている。合成にはボロネート錯体が関与し、これはボロン酸エステル化合物が得られる条件下でルイス酸と接触させる。WO2009/004350 A1にはボルテゾミブおよびその合成のための中間体の高収率合成が開示されている。この手順には出発化合物である(S)−ピナンジオール2−メチルプロパン−1−ボロネートのハロゲン化における極めて高い割合のテトラヒドロフランの使用が含まれている。WO2009/036281 A2には実質的に純粋なボルテゾミブおよびその中間体の調製のための方法が記載されている。前記特許出願にはボルテゾミブの結晶形の調製のための方法ならびにボルテゾミブの保存システムも開示されている。
【0004】
WO2005/097809 A2、J.Biol.Chem.1984、259巻、15106−15114頁およびJ.Am.Chem.Soc.1981、103巻、5241−5242頁には、当業者にはMattesonの合成経路として公知のα−アミノボロン酸エステルの調製のための経路が記載されている。ボロン酸エステルを(ジクロロメチル)リチウムで同族体化してα−クロロボロン酸エステルを形成することは、キラル指向性基としてピナンジオールを用いれば効率的であり、良好なキラル選択性をもたらすことが示されている。触媒としてのルイス酸(ZnCl)およびボレート中間体の転位のための塩化物イオンスカベンジャーを用いることによって、α−クロロボロン酸エステル生成物のジアステレオマー比が改善された。α−クロロボロン酸エステルはリチウムヘキサメチルジシラザン(LiHMDS)によってシリル化α−アミノボロン酸エステルに変換され、これはインサイチュで脱シリル化され、プロトン化されてα−アミノボロン酸エステルとなった。
【0005】
N−tert−ブタンスルフィニルアルジミンへのビス(ピナコラト)ジボロンのジアステレオ高選択性銅触媒付加による多様なα−アミノボロン酸エステルの合成のための手法は、J.Am.Chem.Soc.2008、130巻、6910−6911頁に開示されている。
【0006】
1,1−ジハロゲノアルケンの対応するアルキンへの変換および引き続く1−アルキニルボランの合成は、Tetrahedron Letters 1972、13巻、3769−3772頁およびTetrahedron Letters 1988、29巻、2631−2634頁に開示されている。
【0007】
J.Am.Chem.Soc.1994、116巻、10302−10303頁には、1−アルキニルジオキサボロランから出発し、ヒドロジルコノ化およびそれに続くハロゲン化またはカルボニル化等の置換によってα置換1−アルケニルジオキサボロランを調製するための方法が記載されている。この参考文献には、以下のα置換1−アルケニルジオキサボロランが開示されている。(E)−2−(1−クロロ−3,3−ジメチルブタ−1−エニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン、(E)−2−(1−ブロモ−3,3−ジメチルブタ−1−エニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン、(E)−2−(1−ヨード−3,3−ジメチルブタ−1−エニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン、(E)−2,2,6,6−テトラメチル−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ヘプタ−4−エン−3−オン、(E)−4,4−ジメチル−1−フェニル−2−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ペンタ−2−エン−1−オン、(E)−2−(4,4−ジメチルペンタ−2−エン−2−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランジルコノ−センおよび(E)−2−(ヘプタ−2−エン−2−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランジルコノセン。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第09/006473号
【特許文献2】欧州特許第0788360号明細書
【特許文献3】国際公開第05/097809号
【特許文献4】国際公開第09/004350号
【特許文献5】国際公開第09/036281号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】J.Biol.Chem.1984、259巻、15106−15114頁
【非特許文献2】J.Am.Chem.Soc.1981、103巻、5241−5242頁
【非特許文献3】J.Am.Chem.Soc.2008、130巻、6910−6911頁
【非特許文献4】Tetrahedron Letters 1972、13巻、3769−3772頁
【非特許文献5】Tetrahedron Letters 1988、29巻、2631−2634頁
【非特許文献6】J.Am.Chem.Soc.1994、116巻、10302−10303頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
当技術分野において、α置換ボロン酸エステルの調製のための新規な中間化合物および効率的な方法に対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は主な態様および好ましい実施形態を含む以下の項目を提供する。これらはそれぞれ単独および組合せで、特に上記の課題を解決することに寄与し、ひいては追加的な利点を提供する。
(1)式VIの化合物
【0012】
【化1】

[式中、Rは水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルであり、
およびRは互いに独立に置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、またはRおよびRは共同して5員から10員の縮合または非縮合環、場合によってキラルの5員から10員の縮合または非縮合環の一部を形成し、および
XはCl、Br、I、OCOR’およびOSOR’からなる群から選択され、R’は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、
はキラル中心を示す。]
を調製するための方法であって、
(i)式Vの化合物
【0013】
【化2】

[式中、R、R、RおよびXは上記で定義した通りである。]
を提供する段階および
(ii)水素添加によって前記式Vの化合物を式VIの化合物に変換する段階
を含む方法。
【0014】
本明細書において用いる用語「アルキル」には、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、t−ブチル、i−ブチル、ペンチル、ヘキシル、i−ヘキシル、ヘプチル、4,4−ジメチルペンチル、オクチル、2,2,4−トリメチルペンチル、ノニル、デシル、ウンデシルおよびドデシル等の12炭素まで、好ましくは1−8炭素の直鎖および分枝の両方の炭化水素鎖またはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロデシルおよびシクロドデシル等の3から12炭素、好ましくは3から8炭素を含む飽和環状炭化水素基等の環状炭化水素が含まれる。
【0015】
本明細書において用いる用語「アリール」は、それ自体または別の基の一部として、フェニルまたはナフチル等の環部分に6から12炭素、好ましくは環部分に6−10炭素を含む単環または二環芳香族基を指す。
【0016】
本明細書において用いる用語「アリールアルキル」は、前記アリール部分がアルキル鎖の近位端部もしくは末端部または前記アルキル鎖の間のいずれか1つにおいて前記直鎖または分枝アルキル部分に組み込まれていることを意味する。たとえば、近位端部はRについてはたとえば式Vの化合物の二重結合に隣接すること、RおよびRについては式VおよびVIの化合物の酸素に隣接することを意味し、一方末端部はアリールアルキル部分の末端を意味する。
【0017】
本明細書において用いる用語「置換」には、1個、2個または3個のハロゲン置換基を有する上記で定義したアルキル、アリールもしくはアラルキル基または1つのC1−6アルキル(C6−10)アリール、ハロ(C6−10)アリール、C3−8シクロアルキル、C1−6アルキル(C3−8)シクロアルキル、C2−8アルケニル、C2−8アルキニル、ヒドロキシおよび/またはカルボキシが含まれる。
【0018】
本明細書において用いる用語「縮合」は、少なくとも1つの共通の結合によって1つが他に連結された少なくとも2つの環を意味する。
【0019】
式Vの化合物の構造式に示されるC−R結合についての斜線は、幾何学的配置は定義されていないが、式Vの化合物は(E)および(Z)の両方の異性体の混合物の形態またはそれぞれ純粋な(E)および(Z)異性体の形態であり得ることを意味する。
【0020】
式Vの化合物の式VIの化合物への変換を含む本発明のこの態様による手段の概念は、工業的に応用でき、競合可能な方法を提供する。それは、先行技術においてα置換ボロン酸エステルを得るために用いられるMattesonの方法とは対照的に、再配置段階を制御する困難がないためである。さらに、出発原料として式Vの化合物を選択することによって、そのような化合物を得るために安価で入手しやすい前記の出発原料を使用することが可能になる一方、有毒および/または有害な試薬の使用を避けることができる。
【0021】
およびRは引き続く手順の段階の観点から選択され得る。たとえば、RおよびRが保護基としてのみ用いられる場合には、入手しやすいおよび/または安価な試薬によって導入できるアキラルなRおよびRが用いられ得る。一方、RおよびRが生成すべき化合物の不可欠な部分を表す場合、またはRおよびRが指向する基として作用する場合には、RおよびRに適切なキラル基が選択され得る。
【0022】
(2)Rが水素、置換もしくは非置換直鎖C−Cアルキル、置換もしくは非置換分枝C−Cアルキルおよび置換もしくは非置換C−Cシクロアルキルからなる群から選択され、RおよびRが直鎖置換もしくは非置換C−Cアルキル、置換もしくは非置換分枝C−Cアルキルからなる群から選択され、またはRおよびRが5員から10員の縮合もしくは非縮合環、場合によってキラルな5員から10員の縮合もしくは非縮合環の一部を形成し、好ましくはRが非置換直鎖もしくは分枝C−Cアルキルであり、および/またはRおよびRが5員環の一部を形成し、より好ましくはRがイソプロピルであり、および/またはRおよびRが共同して4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロランを表す5員環の一部を形成する、項目(1)による方法。
【0023】
(3)XがCl、BrおよびIからなる群から選択されるハロゲンである、項目(1)または(2)による方法。
【0024】
(4)前記水素添加が触媒の存在下で行なわれ、好ましくは前記触媒が均一系触媒反応のための触媒である、上記項目のいずれか一項による方法。
【0025】
(5)触媒が遷移金属を含む錯体から選択される、項目(4)による方法。
【0026】
遷移金属を含む錯体、即ち触媒において、遷移金属は好ましくは二重結合を有する種々の化合物および/または非共有電子対を含むO、N、SもしくはP化学種等の電子豊富な化学種を含む少なくとも1つのリガンドと錯体を形成している。より好ましくは、遷移金属触媒はリガンドおよび/または遷移金属原子にキラリティーを有し、またはキラリティーを有する遷移金属錯体がキラルリガンド等のキラリティーを有する共触媒とともに遷移金属を含むアキラルな前駆触媒を用いることによってインサイチュで形成される。さらにより好ましくは、キラリティーを有する前記成分は鏡像異性的またはジアステレオマー的に純粋形である。特に、前記リガンドの少なくとも1つはキラリティーを有し、前記リガンドは鏡像異性的またはジアステレオマー的に純粋形である。そのようなリガンドには、これだけに限らないが、たとえば(S)−2−(1−(ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−2−メチルプロパン−2−イル)−4−tert−ブチル−4,5−ジヒドロオキサゾール;(S)−4−tert−ブチル−2−(2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル)−4,5−ジヒドロオキサゾール;(4S,5S)−4−(2−(ジシクロヘキシルホスフィノオキシ)−1,3−ジフェニルプロパン−2−イル)−5−メチル−2−フェニル−4,5−ジヒドロオキサゾール;(R,R)−P,N−フェロセンオキサゾリン;(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリン;ベンゾイル−(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリン;(R)−(+)−2,2’,6,6’−テトラメトキシ4,4’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,3’−ビピリジン(即ち(R)−P−ホス);(S)−2,2’,6,6’−テトラメトキシ−ビス[ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−3,3’−ビピリジン(即ち(S)−キシル−P−ホス);(R)−4,12−ビス(ジフェニルホスフィノ)−[2.2]−パラシクロファン(即ち(R)−ファン−ホス);1−(S)−N−メチル−N−(ジフェニル−ホスフィノ)−1−[(R)−(ジフェニルホスフィノ)−フェロセニル]エチルアミン(即ち(S)−メボホス);(R)−2−(1−ナフチル)−8−ジフェニルホスフィノ−1−(S)−3,5−ジオキサ−4−ホスファシクロヘプタ[2,1−1;3,4−a’]ジ−ナフタレン−4−イル)−1,2−ジヒドロキノリントルエンアダクト(即ち(Sa,Rc)−(1−Nph)−キナホス);(S)−(+)−4,12−ビス[ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−[2.2]パラシクロファン(即ち(S)−キシルファネホス);(R)−2,2’−ビス(ジフェニル−ホスフィノアミノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル(即ち(R)−H8−ビナム−P)が含まれ得る。好ましいキラルリガンドは(S)−2−(1−(ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−2−メチルプロパン−2−イル)−4−tert−ブチル−4,5−ジヒドロ−オキサゾール;(S)−4−tert−ブチル−2−(2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル)−4,5−ジヒドロオキサゾール;(4S,5S)−4−(2−(ジシクロヘキシル−ホスフィノオキシ)−1,3−ジフェニルプロパン−2−イル)−5−メチル−2−フェニル−4,5−ジヒドロオキサゾール、(R,R)−P,N−フェロセンオキサゾリン、(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリンおよびベンゾイル−(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリンである。好ましくは、遷移金属を含む錯体は基質と触媒のモル比5:1から100:1の範囲、より好ましくは基質と触媒のモル比5:1から50:1の範囲で用いられる。
【0027】
(6)錯体中に含まれる遷移金属がCu、Co、Ni、Rh、Ru、PdおよびIrからなる群から選択され、好ましくはRh、Ru、PdおよびIrであり、より好ましくはRuおよびIr、特にIrである、項目(5)による方法。
【0028】
(7)触媒が(1,5−シクロオクタジエン)(ピリジン)(トリシクロヘキシルホスフィン)イリジウム(I)ヘキサフルオロホスフェート、(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(S)−2−(1−(ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−2−メチルプロパン−2−イル)−4−tert−ブチル−4,5−ジヒドロオキサゾール、(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(S)−4−tert−ブチル−2−(2−ジフェニルホスフィノ)フェニル)−4,5−ジヒドロオキサゾール、(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロ−メチル)フェニル]ボレート(4S,5S)−4−(2−(ジシクロヘキシルホスフィノオキシ)−1,3−ジフェニルプロパン−2−イル)−5−メチル−2−フェニル−4,5−ジヒドロオキサゾール、(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(R,R)−P,N−フェロセンオキサゾリン、(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリン、および(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(ベンゾイル−(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリン、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ジイリジウム(I)ジクロリド(R)−(+)−2,2’,6,6’−テトラメトキシ−4,4’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,3’−ビピリジン;ビス(1,5−シクロオクタジエン)ジイリジウム(I)ジクロリド(S)−2,2’,6,6’−テトラメトキシ−ビス[ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−3,3’−ビピリジン;ビス(1,5−シクロオクタジエン)ジロジウム(I)ジクロリド(S)−2,2’,6,6’−テトラメトキシ−ビス[ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−3,3’−ビピリジン;ビス(シクロオクタ−1,5−ジエン)ロジウム(I)テトラフルオロボレート(R)−4,12−ビス(ジフェニルホスフィノ)−[2.2]−パラシクロファン;ベンゼンルテニウム(II)ジクロリドダイマー1−(S)−N−メチル−N−(ジフェニルホスフィノ)−1−[(R)−(ジフェニルホスフィノ)−フェロセニル]エチルアミンおよびビス(2−メチルアリル)(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II) (S)−(+)−4,12−ビス[ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−[2.2]パラシクロファンからなる群から選択される、項目(5)または(6)による方法。
【0029】
(8)水素添加が約10℃から80℃、好ましくは約45℃から55℃、より好ましくは約50℃の温度で行なわれる、上記項目のいずれか一項による方法。
【0030】
本明細書において用いる用語「約」は大略、領域、およそまたはほぼを意味する。用語「約」が数値範囲とともに用いられる場合には、それにより説明した数値の上および下の境界を拡張することによってその範囲が変更される。一般に本明細書において、用語「約」は記述した値の上下に10%の変動で数値を変更するために用いられる。
【0031】
(9)水素添加が約5から20barの水素圧で行なわれ、および/または反応時間が約1から20日、好ましくは約1から10日である、上記項目のいずれか一項による方法。
【0032】
(10)水素添加の間、脱ハロゲン化が本質的に避けられ、好ましくは脱ハロゲン化が式VIの化合物のモル量に対して10モル%未満、より好ましくは5モル%未満、最も好ましくは3モル%未満、特に1モル%未満で起こる、項目(3)から(9)のいずれか一項による方法。
【0033】
本明細書において用いる用語「脱ハロゲン化」は、化合物からハロゲンが除去されて水素によって置き換えられる反応を意味する。
【0034】
水素添加プロセスの間、アルケンの二重結合に結合したハロゲンは通常、脱ハロゲン化される。本発明のこの有益な実施形態によって、驚くべきことに式Vの置換α−ハロゲノビニルボロン酸エステルは脱ハロゲン化の実質的な危険なしに水素添加されて式VIのα−ハロゲノボロン酸エステルに到達し得ることが見出された。穏和な反応条件をもたらす適切な触媒をさらに選択することによって、式Vの化合物の脱ハロゲン化を実質的に避けることができる。
【0035】
(11)式VIの鏡像異性的に純粋な化合物が段階(ii)に続いて適用される鏡像異性分割によって得られる、上記項目のいずれか一項による方法。
【0036】
本明細書において用いられる「鏡像異性分割」は、キラルカラムクロマトグラフィーまたはジアステレオマー塩の結晶化等の、当技術分野で公知の手段によって鏡像異性体を分割する段階を意味する。
【0037】
(12)式VIの化合物
【0038】
【化3】

[式中、R、RおよびRは上記で定義した通りであり、XはCl、Br、I、OCOR’およびOSOR’からなる群から選択され、R’は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表す。]
が、式VI’の化合物
【0039】
【化4】

[式中、R、RおよびRは上記で定義した通りであり、
X’はCl、Br、I、OCOR’およびOSOR’からなる群から選択され、R’は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、X’はXと同じではなく、
キラル中心**はキラル中心の反対の立体化学的配置を有する。]
に、S2型の求核置換反応を適用することによってさらに変換される、項目(1)から(11)のいずれか一項による方法。
【0040】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、式VIの化合物のキラル中心の立体化学的配置は反対の立体化学的配置を有するキラル中心に変換することができる。これにより「望ましくない」立体異性体の「望ましい」立体異性体への変換がもたらされる。したがって、完全には立体選択的でない水素添加反応の生成物を、立体異性体のキラルクロマトグラフィー分割に供することができる。VIの望ましい立体異性体を集め、望ましくない立体異性体を追加的なS2反応に供して、望ましい立体異性体の追加量を得ることができる。この方法により、Vの可能な最大量を望ましい立体異性体に変換することができる。本明細書において用いられる用語「望ましい立体異性体」は、式XのN−末端ペプチジルボロン酸誘導体またはボルテゾミブ誘導体の製造等のさらなる合成のための望ましい立体化学的配置をα−炭素原子に有する式VIの化合物を意味する。本明細書において用いられる用語「望ましくない」立体異性体は、望ましい立体異性体の配置と反対の立体化学的配置をα−炭素原子に有する式VIの化合物を意味する。たとえば、(S)−鏡像異性体は望ましくない立体異性体を表すことがあり、したがってそれぞれ望ましい(R)−鏡像異性体に変換され得る。「望ましくない」立体異性体は、たとえば鏡像異性分割によって得られる。
【0041】
さらに、この実施形態によって多数の異なった引き続く合成において式VIの「望ましい」化合物の柔軟な応用がもたらされる。それは、合成経路、または合成経路の目標生成物さえもが変更された場合に、キラル中心における立体化学的配置を引き続いて適切に選択できるからである。
【0042】
(13)式Vの化合物
【0043】
【化5】

[式中、Rは水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルであり、
およびRは互いに独立に置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、またはRおよびRは共同して5員から10員の縮合または非縮合環、場合によってキラルの5員から10員の縮合または非縮合環の一部を形成し、
XはCl、Br、I、OCOR’およびOSOR’からなる群から選択され、R’は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表す。]
が、式IIIの化合物
【0044】
【化6】

[式中、R、RおよびRは上記で定義した通りである。]
から、式IIIの化合物を式IVの化合物
【0045】
【化7】

[式中、式IVの化合物のZrCpCl部分は上記で定義したXによって置換される。]
に変換するヒドロジルコノ化によって調製される、上記項目のいずれか一項による方法。
【0046】
式IVの化合物の構造式に示されるC−R結合についての斜線は、幾何学的配置は定義されていないが、式IVの化合物は(E)および(Z)の両方の異性体の混合物の形態またはそれぞれ純粋な(E)および(Z)異性体の形態であり得ることを意味する。
【0047】
本明細書において用いられる用語「ヒドロジルコノ化」は、Schwartz試薬としても知られているジルコニウム含有試薬、CpZrHClを用いて有機金属化合物を得るアルケンおよびアルキンの水素金属付加を意味する。
【0048】
用語「アルキル」、「アリール」、「アラルキル」および「置換」については、項目(1)の対応する定義が参照される。
【0049】
(14)式IVの化合物のZrCpCl部分がハロゲン化によって、好ましくはインサイチュのハロゲン化によって、Cl、Br、Iから選択されるハロゲン、好ましくはClによって置換される、項目(13)による方法。
【0050】
本明細書において用いられる用語「ハロゲン化」は、Schwartzの中間体を含む有機金属化合物がハロゲンと反応してアルケニルまたはアリールハライドを生成する置換反応を意味する。
【0051】
(15)ハロゲン化がCl、Br、I、N−クロロスクシンイミド、N−ブロモスクシンイミドおよびN−ヨードスクシンイミドからなる群から選択される反応物、好ましくはN−クロロスクシンイミド、N−ブロモスクシンイミドおよびN−ヨードスクシンイミド、より好ましくはN−クロロスクシンイミドによって行なわれ、および/または
溶媒がTHF、CHCl、1,2−ジクロロエタン(DCE)、EtO、MTBE、i−PrO、MeTHFおよびトルエン、好ましくはCHCl、DCEおよびTHF、より好ましくはCHClおよびTHFからなる群から選択される、項目(14)による方法。
【0052】
(16)ハロゲンが場合によってOCOR’およびOSOR’からなる群から選択される部分にさらに変換され、R’が置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表す、項目(13)から(15)による方法。
【0053】
(17)式IIIの化合物
【0054】
【化8】

[式中、Rは水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルであり、
およびRは互いに独立に置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、またはRおよびRは共同して5員から10員の縮合または非縮合環、場合によってキラルの5員から10員の縮合または非縮合環の一部を形成する。]
を調製するための、
(i)式Iの化合物
【0055】
【化9】

[式中、Rは水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルであり、
ZはCl、BrおよびIからなる群から選択され、好ましくはClである。]
を準備する段階、
(ii)式Iの化合物の溶液に有機金属強塩基を加えて式Iの化合物を式IIの化合物
【0056】
【化10】

[式中、Rは上記で定義した通りである。]
に変換する段階、
(iii)式IIの化合物を式IXの化合物
【0057】
【化11】

[式中、RおよびRは上記で定義した通りであり、
は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、RはRおよび/またはRと同一でありまたは異なる基である。]
と、溶媒の存在下で反応させ、続いて酸を加える段階
を含む方法であって、
段階(i)、(ii)および(iii)が式IIの化合物またはそれぞれの対応するアセチレン誘導体RC≡CHを単離することなくワンポット反応として実施される方法。
【0058】
用語「アルキル」、「アリール」、「アラルキル」および「置換」については、項目(1)の対応する定義が参照される。
【0059】
本発明のこの態様によれば、ジハロゲノアルケンから1−アルキニルボロネートを調製するための方法が提供され、ここで式Iの化合物に有機金属強塩基を加えることによって式IIのアセチリドカルバニオンが形成される。本明細書において用いられる用語「有機金属強塩基」は、少なくとも35のpKa値を有する有機金属塩基を意味する。式IIのアセチリドカルバニオンはそれぞれのアセチレン誘導体RC≡CHを単離することなく式IXの化合物と反応させる。式Iの化合物から誘導されるアセチレン誘導体RC≡CHは通常は非常に揮発性が高く、即ちその沸点は周囲温度の付近かその範囲内にある。したがってこの手順の概念によって安全で改善された方法の操作性がもたらされる。それは、前記比較的揮発性の高いアセチレン誘導体の単離が必要ないからである。さらに、式Iの化合物の式IIの化合物への直接変換と前記式IIの化合物と式IXの化合物とのインサイチュの反応の組合せによって、収率低下の原因となる中間生成物の面倒な単離がないので、収率が改善された有利なワンポット反応がもたらされる。
【0060】
さらに、本発明のこの態様により、項目(1)から(12)による方法によって式VIの化合物の調製のための価値ある出発原料がもたらされ、項目(13)から(16)による方法によって式Vの化合物が好ましく得られる。
【0061】
好ましくは、R、RおよびRは同じであるか、R、Rは共同して5員から10員の縮合または非縮合環の一部を形成する一方、RはR、Rとは異なる基を表し、より好ましくはR、RおよびRは同じで置換もしくは非置換アルキル基を表し、またはR、Rは共同して5員から8員の縮合または非縮合環の一部を形成する一方、Rは置換もしくは非置換アルキル基を表し、特にR、RおよびRは同じで非置換アルキル基を表し、またはR、Rは共同で5員から6員の環の一部を形成する一方、Rは非置換アルキル基を表す。
【0062】
(18)式IIIの化合物
【0063】
【化12】

[式中、Rは水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルであり、
およびRは互いに独立に置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、またはRおよびRは共同して5員から10員の縮合または非縮合環、場合によってキラルの5員から10員の縮合または非縮合環の一部を形成する。]
が、式IIの化合物
【0064】
【化13】

[式中、Rは上で定義した通りである。]
から、式IIの化合物を式IXの化合物
【0065】
【化14】

[式中、RおよびRは上で定義した通りであり、
は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、RはRおよび/またはRと同一でありまたは異なる基である。]
と、溶媒の存在下で反応させ、続いて酸を加えることによって調製される、項目(13)から(16)のいずれか一項による方法。
【0066】
用語「アルキル」、「アリール」、「アラルキル」および「置換」については、項目(1)の対応する定義が参照される。R、RおよびRによって表される好ましい基については、項目(17)の対応する定義が参照される。
【0067】
(19)溶媒がジエチルエーテル、i−PrO、MTBE、MeTHFおよびTHFからなる群から選択される溶媒、好ましくはTHFが用いられる、項目(17)または(18)による方法。
【0068】
(20)式IIの化合物を式IXの化合物と反応させることに続いて酸、好ましくは無機酸、特にHClが加えられる、項目(17)から(19)のいずれか一項による方法。
【0069】
(21)式IIの化合物が式Iの化合物
【0070】
【化15】

[式中、Rは水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルであり、
ZはCl、BrおよびIからなる群から選択され、好ましくはClである。]
から、有機金属強塩基を式Iの化合物の溶液に加えることによって調製される、項目(17)から(20)のいずれか一項による方法。
【0071】
このようにして、式Iを有する入手しやすく安価な出発原料を、式VIのα−置換ボロン酸エステルの合成に用いることができる。先行技術において用いられたMattesonの合成経路によって調製されるα−置換ボロン酸エステルは、その中の僅かしか市販されていないアルキルまたはアリールボロン酸から調製されており、ボロン酸をそれぞれのアルコールによってエステル化する反応には追加的な反応段階が必要である。これと対照的に、本方法は式Iの化合物から出発しており、これはたとえばTetrahedron Letters 2000、41巻、4007−4009頁に記載されているように、安価で市販されている式RCHOのアルデヒドから得られる。
【0072】
(22)有機金属強塩基が金属アミドおよびアルキルリチウム、好ましくはナトリウムアミド、カリウムアミド、リチウムアミド、リチウムジイソプロピルアミド、メチルリチウム、ブチルリチウム、ヘキシルリチウムおよびフェニルリチウムからなる群から選択され、より好ましくはブチルリチウム(n−BuLi)またはメチルリチウム、さらにより好ましくはn−BuLi、特にn−BuLiである、項目(17)または(21)による方法。
【0073】
(23)式IXの化合物のRおよび/またはRがキラルであり、好ましくは式IXの化合物のRおよびRによって形成されるボロラン環がキラルであり、より好ましくは前記式IXのキラル化合物が鏡像異性的またはジアステレオマー的に純粋である、項目(17)から(22)のいずれか一項による方法。
【0074】
この好ましい実施形態によれば、RおよびRは引き続く反応段階の観点から、たとえばRおよびRが生成すべき最終化合物の不可欠な部分を表す場合、またはたとえばRおよびRが引き続く反応段階において指向する基として作用する場合に、適切に選択される。
【0075】
(24)式VIの化合物
【0076】
【化16】

[式中、R、RおよびRは上記で定義した通りであり、XはCl、Br、I、OCOR’およびOSOR’からなる群から選択され、R’は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、はキラル中心を示す。]
が、式VIIIの化合物
【0077】
【化17】

[式中、R、RおよびRは上記で定義した通りであり、および
AはCl、Br、HSO、CHCOO、CFCOOおよびR’SOからなるアニオンの群から選択されるアニオンであり、R’は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、および
はキラル中心を示す。]またはその遊離アミン
に、
(i)式VIの化合物を式VIIの化合物
【0078】
【化18】

[式中、R、RおよびRは上で定義した通りであり、
PMはアミノ基保護部分であり、tert−ブタンスルフィニル(SO−t−Bu)、トシル(Ts)、p−ニトロベンゼンスルホニル(Ns)、カルボベンジルオキシ(Cbz)、t−ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンジル(Bn)、p−メトキシベンジル(MPM)、ジメトキシベンジル(Dmb)、p−ヒドロキシベンジル(HBn)、9−フェニルフルオレン−9−イル(Pf)、フルオレニル(Flu)、ジフェニルメチル(DPM)、フェロセニルメチル(Fcm)および4−メチルトリチル(Mtt)からなる群から選択され、x=1およびy=1であるか、またはPMはSiR’’であり、R’’はアルキルを表し、x=0およびy=2であり、および
はキラル中心を示す。]
に、式VIの化合物のXを保護されたアミノ基で置換することによって変換する段階および
(ii)式VIIの化合物を保護基の開裂に供して式VIIIの化合物を得る段階および
(iii)場合によって鏡像異性的に純粋な式VIIIの化合物を得るために鏡像異性分割を適用する段階
を含む方法によってさらに変換される項目(1)から(12)のいずれか一項による方法。
【0079】
本発明のこの有益な実施形態によれば、式VIのα−置換ボロン酸エステルは、保護されたアミノ基を有するα−アミノボロン酸エステルの合成における中間体として用いられる。本明細書において用いられる用語「保護基の開裂」は、アミノ基保護部分が開裂する反応、たとえば水素添加または加水分解を意味する。
【0080】
(25)アミノ基保護部分PMが、SO−t−Bu、Si(CHおよびSi(CHCHからなる群から選択される、項目(24)による方法。
【0081】
(26)アミノ基保護部分PMが、反応物としてシリルアミドの塩、好ましくは((CHSi)NNa(NaHMDS)および((CSi)NLi(LiHMDS)を用いることによって導入される、項目(24)または(25)による方法。
【0082】
(27)AがClおよびCFCOOからなる群から選択され、好ましくはAがClであり、および/または
XがClであり、および/またはアミノ基保護部分PMがSi(CHである、項目(24)または(25)による方法。
【0083】
(28)ラセミ混合物中の式VIIIの化合物が、キラルな酸との結晶化またはキラルクロマトグラフィーによる鏡像異性分割によって光学的に純粋な(R)−鏡像異性体または(S)−鏡像異性体にさらに分割することができる、項目(24)から(27)による方法。
【0084】
(29)式IVの化合物
【0085】
【化19】

[式中、Rは水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルであり、
およびRは互いに独立に置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、またはRおよびRは共同して5員から10員の縮合または非縮合環、場合によってキラルの5員から10員の縮合または非縮合環の一部を形成し、
但し、Rはt−Buまたはn−Buを意味しない。]。
用語「アルキル」、「アリール」、「アラルキル」および「置換」については、項目(1)の対応する定義が参照される。
【0086】
(30)式Vの化合物
【0087】
【化20】

[式中、Rは水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルであり、
およびRは互いに独立に置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、またはRおよびRは共同して5員から10員の縮合または非縮合環、場合によってキラルの5員から10員の縮合または非縮合環の一部を形成し、
XはCl、Br、I、OCOR’およびOSOR’からなる群から選択され、R’は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、
但し、XがCl、Br、Iの場合、Rはt−Buを意味しない。]。
用語「アルキル」、「アリール」、「アラルキル」および「置換」については、項目(1)の対応する定義が参照される。
【0088】
(31)Rが水素、置換もしくは非置換直鎖C−Cアルキル、置換もしくは非置換分枝C−Cアルキルおよび置換もしくは非置換C−Cシクロアルキルからなる群から選択され、RおよびRが直鎖置換もしくは非置換C−Cアルキル、置換もしくは非置換分枝C−Cアルキルからなる群から選択され、またはRおよびRは5員から10員の縮合または非縮合環、場合によってキラルの5員から10員の縮合または非縮合環の一部を形成し、好ましくはRが非置換直鎖もしくは分枝C−Cアルキルであり、および/またはRおよびRが5員環の一部を形成し、より好ましくはRがイソプロピル、t−Bu、n−プロピル、フェニル、4−フルオロフェニルであり、および/またはRおよびRが共同して4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロランを表す5員環の一部を形成する、項目(29)または(30)による化合物。
【0089】
(32)式XのN−末端ペプチジルボロン酸誘導体
【0090】
【化21】

[式中、Rは水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルであり、
およびRは互いに独立に置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、またはRおよびRは共同して5員から10員の縮合または非縮合環、場合によってキラルの5員から10員の縮合または非縮合環の一部を形成し、
ペプチドは場合によってアシル化された末端アミノ基を有するペプチド結合によって互いに連結された1−6個のアミノ酸を含み、
キラル中心はその(R)または(S)配置にある。]
またはその遊離酸もしくはエステルもしくは酸無水物もしくは塩を製造するための方法であって、
(i)項目(1)から(12)のいずれか一項による方法によって調製される式VIの化合物を準備する段階、
(ii)項目(24)から(28)のいずれか一項による方法によって前記式VIの化合物を式VIIIの化合物に変換する段階および
(iii)前記式VIIIの化合物を式XのN−末端ペプチジルボロン酸誘導体、好ましくはその遊離酸もしくはエステルもしくは酸無水物もしくは塩に変換する段階
を含む方法。
【0091】
本明細書において用いられる用語「その遊離酸もしくはエステルもしくは酸無水物もしくは塩」は、式XのN−末端ペプチジルボロン酸誘導体のボロン酸部分が遊離酸もしくはエステルもしくは酸無水物もしくは塩の形態であることを意味する。
【0092】
(33)ボルテゾミブ(N−(ピラジン−2−イル)カルボニル−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸)またはそのエステルもしくは酸無水物もしくは塩を製造するための方法であって、
(i)項目(1)から(12)のいずれか一項による方法によって調製される式VIの化合物を準備する段階、
(ii)項目(24)から(28)のいずれか一項による方法によって前記式VIの化合物を式VIIIの化合物に変換する段階および
(iii)前記式VIIIの化合物をボルテゾミブまたはそのエステルもしくは酸無水物もしくは塩に変換する段階
を含む方法。
【0093】
本明細書において用いられる用語「そのエステルもしくは酸無水物もしくは塩」は、ボルテゾミブ(N−(ピラジン−2−イル)カルボニル−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸)のボロン酸部分がエステルもしくは酸無水物もしくは塩の形態であることを意味する。
【0094】
この好ましい実施形態によれば、式XのN−末端ペプチジルボロン酸誘導体、たとえばボルテゾミブを製造するための有利な方法が提供され、出発原料としての式VIの化合物によって、安価で入手しやすい出発原料の使用が可能になる一方、有毒および/または有害な試薬の使用を避けることができる。
【0095】
(34)医薬組成物を製造するための方法であって、
(i)項目(32)に従って式XのN−末端ペプチジルボロン酸誘導体またはその遊離酸もしくはエステルもしくは酸無水物もしくは塩を調製する段階および
(ii)前記式Xの化合物を少なくとも1つの賦形剤と混合する段階
を含む方法。
【0096】
(35)医薬組成物を製造するための方法であって、
(i)項目(33)に従ってボルテゾミブ(N−(ピラジン−2−イル)カルボニル−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸)またはその酸無水物もしくは塩を調製する段階および
(ii)前記ボルテゾミブを少なくとも1つの賦形剤と混合する段階
を含む方法。
【0097】
(36)式Vの化合物
【0098】
【化22】

[式中、Rは水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルであり、
およびRは互いに独立に置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、またはRおよびRは共同して5員から10員の縮合または非縮合環、場合によってキラルの5員から10員の縮合または非縮合環の一部を形成し、XはCl、Br、I、OCOR’およびOSOR’からなる群から選択され、R’は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、
但し、XがCl、Br、Iの場合、Rはt−Buを意味しない。]
の、式VIIIの化合物
【0099】
【化23】

[式中、R、RおよびRは上記で定義した通りであり、
AはCl、Br、HSO、CHCOO、CFCOOおよびR’SOからなるアニオンの群から選択されるアニオンであり、R’は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、
はキラル中心を示す。]またはその遊離アミン
の調製のための方法
および/または式XのN−末端ペプチジルボロン酸誘導体またはその遊離酸もしくはエステルもしくは酸無水物もしくは薬学的に許容される塩、好ましくはボルテゾミブまたはそのエステルもしくは酸無水物もしくは薬学的に許容される塩の調製のための方法
における使用。
【0100】
用語「アルキル」、「アリール」、「アラルキル」および「置換」については、項目(1)の対応する定義が参照される。
【0101】
(37)式IVの化合物
【0102】
【化24】

[式中、Rは水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルであり、
およびRは互いに独立に置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、またはRおよびRは共同して5員から10員の縮合または非縮合環、場合によってキラルの5員から10員の縮合または非縮合環の一部を形成し、
但し、Rはt−Buまたはn−Buを意味しない。]
の、式VIIIの化合物
【0103】
【化25】

[式中、R、RおよびRは上記で定義した通りであり、AはCl、Br、HSO、CHCOO、CFCOOおよびR’SOからなるアニオンの群から選択されるアニオンであり、R’は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、
はキラル中心を示す。]またはその遊離アミン
の調製のための方法
および/または式XのN−末端ペプチジルボロン酸誘導体またはその遊離酸もしくはエステルもしくは酸無水物もしくは薬学的に許容される塩、好ましくはボルテゾミブまたはそのエステルもしくは酸無水物もしくは薬学的に許容される塩の調製のための方法
における使用。
【0104】
用語「アルキル」、「アリール」、「アラルキル」および「置換」については、項目(1)の対応する定義が参照される。
(38)Rが水素、置換もしくは非置換直鎖C−Cアルキル、置換もしくは非置換分枝C−Cアルキルおよび置換もしくは非置換C−Cシクロアルキルからなる群から選択され、RおよびRが直鎖置換もしくは非置換C−Cアルキル、置換もしくは非置換分枝C−Cアルキルからなる群から選択され、またはRおよびRが5員から10員の縮合または非縮合環、場合によってキラルの5員から10員の縮合または非縮合環の一部を形成し、好ましくはRが非置換直鎖もしくは分枝C−Cアルキルであり、および/またはRおよびRが5員環の一部を形成し、より好ましくはRがイソプロピル、t−Bu、n−プロピル、フェニル、4−フルオロフェニルであり、および/またはRおよびRが共同して4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロランを表す5員環の一部を形成する、項目(36)または(37)による使用。
(39)式VIの化合物
【0105】
【化26】

[式中、Rは水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルであり、
XはCl、Br、I、OCOR’およびOSOR’からなる群から選択され、R’は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、
YはLi、Na、Cs、Kおよびテトラアルキルアンモニウムカチオン、好ましくはKおよび(n−Bu)からなる群から選択されるカチオンであり、および
はキラル中心を示す。]
を調製するための、
(i)式Vの化合物
【0106】
【化27】

[式中、RおよびXは上記で定義した通りであり、
およびRは互いに独立に置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、またはRおよびRは共同して5員から10員の縮合または非縮合環、場合によってキラルの5員から10員の縮合または非縮合環の一部を形成し、および
はキラル中心を示す。]
を準備する段階、
(ii)前記式Vの化合物を式Vの化合物
【0107】
【化28】

[式中、RおよびXは上記で定義した通りであり、YはLi、Na、Cs、Kおよびテトラアルキルアンモニウムカチオン、好ましくはKおよび(n−Bu)からなる群から選択されるカチオンである。]
に、
式Vの化合物をアルカリ金属フッ化水素、好ましくはフッ化水素カリウムの水溶液と接触させ、場合によってこのようにして得られたアルカリ金属塩を(アルキル)NOH、好ましくは(n−Bu)NOHの溶液と接触させることによってそれぞれのテトラアルキルアンモニウム誘導体に変換することによって変換する段階、および
(iii)前記式Vの化合物を水素添加によって式VIの化合物に変換する段階
を含む方法。
【0108】
用語「アルキル」、「アリール」、「アラルキル」および「置換」については、項目(1)の対応する定義が参照される。
【0109】
本明細書において用いられる用語「テトラアルキルアンモニウムカチオン」には、アルキル成分が互いに独立に10炭素まで、好ましくはメチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、t−ブチル、i−ブチル、ペンチル等の1−5炭素の直鎖および分枝の両方の炭化水素鎖から選択されるアンモニウムカチオンが含まれる。
【0110】
ここで、上記で定義した、特に項目(1)から(28)のいずれか一項の詳細および条件を適用することができる。
【0111】
(40)式VIの化合物
【0112】
【化29】

[式中、R、RおよびRは上記で定義した通りであり、XはCl、Br、I、OCOR’およびOSOR’からなる群から選択され、R’は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、および
はキラル中心を示す。]
が、式VIの化合物
【0113】
【化30】

[式中、RおよびXは上記で定義した通りであり、YはLi、Na、Cs、Kおよびテトラアルキルアンモニウムカチオン、好ましくはKおよび(n−Bu)からなる群から選択されるカチオンである。]
に、
化合物VIをアルカリ金属フッ化水素、好ましくはフッ化水素カリウムの水溶液と接触させ、場合によってこのようにして得られたアルカリ金属塩を(アルキル)NOH、好ましくは(n−Bu)NOHの溶液と接触させることによってそれぞれのテトラアルキルアンモニウム誘導体に変換することによって、さらに変換される、項目(1)から(12)のいずれか一項による方法。
【0114】
(41)式VIの化合物
【0115】
【化31】

[式中、R、RおよびRは上記で定義した通りであり、XはCl、Br、I、OCOR’およびOSOR’からなる群から選択され、YはLi、Na、Cs、Kおよびテトラアルキルアンモニウムカチオン、好ましくはKおよび(n−Bu)からなる群から選択されるカチオンであり、
はキラル中心を示す。]
が、式VIIIの化合物
【0116】
【化32】

[式中、RおよびYは上記で定義した通りであり、
AはCl、Br、HSO、CHCOO、CFCOOおよびR’SOからなるアニオンの群から選択されるアニオンであり、R’は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、および
はキラル中心を示す。]またはその遊離アミン
に、
(i)式VIの化合物を式VIIの化合物
【0117】
【化33】

[式中、RおよびYは上記で定義した通りであり、
PMはアミノ基保護部分であり、tert−ブタンスルフィニル(SO−t−Bu)、トシル(Ts)、p−ニトロベンゼンスルホニル(Ns)、カルボベンジルオキシ(Cbz)、t−ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンジル(Bn)、p−メトキシベンジル(MPM)、ジメトキシベンジル(Dmb)、p−ヒドロキシベンジル(HBn)、9−フェニルフルオレン−9−イル(Pf)、フルオレニル(Flu)、ジフェニルメチル(DPM)、フェロセニルメチル(Fcm)および4−メチルトリチル(Mtt)からなる群から選択され、x=1およびy=1であるか、またはPMはSiR’’であり、R’’はアルキルを表し、x=0およびy=2であり、および
はキラル中心を示す。]
に、式VIの化合物のXを保護されたアミノ基で置換することによって変換する段階および
(ii)式VIIの化合物を保護基の開裂に供して式VIIIの化合物を得る段階および
(iii)場合によって鏡像異性的に純粋な式VIIIの化合物を得るために鏡像異性分割を適用する段階
を含む方法によってさらに変換される、項目(39)または(40)による方法。
【0118】
用語「保護基の開裂」については、項目(24)の対応する定義が参照される。
【0119】
(42)アミノ基保護部分PMがSO−t−Bu、Si(CHおよびSi(CHCHからなる群から選択される、項目(41)による方法。
【0120】
(43)アミノ基保護部分PMが、反応物としてシリルアミドの塩、好ましくは((CHSi)NNa(NaHMDS)および((CSi)NLi(LiHMDS)を用いることによって導入される、項目(41)または(42)による方法。
【0121】
(44)AがClおよびCFCOOからなる群から選択され、好ましくはAがClであり、および/またはXがClであり、および/またはアミノ基保護部分PMがSi(CHである、項目(41)または(42)による方法。
【0122】
(45)ラセミ混合物中の式VIIIの化合物が、キラルな酸との結晶化またはキラルクロマトグラフィーによる鏡像異性分割によって光学的に純粋な(R)−鏡像異性体または(S)−鏡像異性体にさらに分割することができる、項目(41)から(44)による方法。
【0123】
(46)式Vの化合物
【0124】
【化34】

[式中、Rは水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルであり、
XはCl、Br、I、OCOR’およびOSOR’からなる群から選択され、R’は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、
YはLi、Na、Cs、Kおよびテトラアルキルアンモニウムカチオン、好ましくはKおよび(n−Bu)からなる群から選択されるカチオンであり、および
はキラル中心を示す。]。
【0125】
(47)式Vの化合物
【0126】
【化35】

[式中、Rは水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルであり、
XはCl、Br、I、OCOR’およびOSOR’からなる群から選択され、R’は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、
YはLi、Na、Cs、Kおよびテトラアルキルアンモニウムカチオン、好ましくはKおよび(n−Bu)からなる群から選択されるカチオンであり、および
はキラル中心を示す。]
の、
式VIIIの化合物
【0127】
【化36】

[式中、RおよびYは上記で定義した通りであり、
AはCl、Br、HSO、CHCOO、CFCOOおよびR’SOからなるアニオンの群から選択されるアニオンであり、R’は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、および
はキラル中心を示す。]またはその遊離アミン
の調製のための方法
および/または薬学的に活性な化合物の調製のための方法
における使用。
【0128】
用語「アルキル」、「アリール」、「アラルキル」および「置換」については、項目(1)の対応する定義が参照される。
【0129】
(47)式XVIIの化合物
【0130】
【化37】

[式中、Rは水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルであり、
は水素またはアルキルであり、
は水素、−R’または−CO−R’であり、R’は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、
Arは置換もしくは非置換アリールであり、および
はキラル中心を示す。]
を製造するための、
(i)項目(1)から(12)のいずれか一項による方法によって調製される式VIの化合物または項目(39)もしくは(40)による方法によって調製される式VIの化合物を準備する段階、
(ii)項目(24)から(28)のいずれか一項による方法によって前記式VIの化合物を式VIIIの化合物またはその遊離塩基に変換する段階または項目(41)から(45)のいずれか一項による方法によって前記式VIの化合物を式VIIIの化合物またはその遊離塩基に変換する段階および
(iii)前記式VIIIもしくはVIIIの化合物またはその遊離塩基を、式XVIIIの化合物
【0131】
【化38】

[式中、Arは上記で定義した通りであり、X’’はCl、Br、Iである。]
とのSuzuki−Miyauraクロスカップリング反応によって式XVIIの化合物に変換する段階
を含む方法。
【0132】
用語「置換もしくは非置換」、「アルキル」、「アリール」および「アラルキル」については、上の項目(1)が参照される。
【0133】
本発明のこの有益な実施形態によれば、式VIIIのα−置換ボロン酸エステルまたは式VIIIのそれらのトリフルオロボレート誘導体は、Suzuki−Miyauraカップリング反応による窒素含有有機分子の合成における中間体として用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0134】
以下、好ましい実施形態および実施例によって本発明をより詳細に説明するが、これらの実施形態、実施例は説明のためのみに提示するものであり、本発明を何ら限定するものではないことを注意しておく。
【0135】
反応スキーム1はα−置換ボロン酸エステル(VI)を調製するための本発明による方法の好ましい実施形態を説明するものである。
【0136】
【化39】

スキーム1(式中、R、R、R、ZおよびXは上の項目で定義した通りである。)の好ましい実施形態によれば、式IIIの化合物は、式Iの化合物を有機金属強塩基、たとえばn−ヘキサン中n−BuLi等の有機リチウム試薬と接触させて、アセチリド(この場合には有機リチウム試薬を用いるのでリチウムアセチリド)である式IIの化合物を得ることによって調製される。次に、式IIの化合物とそのそれぞれのアセチレン誘導体RC≡CHを単離せずに、同じ反応容器内で式IXの化合物を加えることによって反応を進行させて、式IIIの化合物を得る。この反応の最後の段階は、無水HCl等の酸の添加によって行なわれる。反応の両方の段階、即ち化合物IIIへの脱離および付加は有機溶媒中、好ましくはTHF中で実施される。
【0137】
スキーム1に提示する合成の出発原料である式Iの化合物は入手可能であり、たとえば、たとえばTetrahedron Letters 2000、41巻、4007−4009頁に記載されているような、当業者には既知の合成経路によって調製することができる。
【0138】
さらにスキーム1に示す好ましい実施形態によれば、式Vの化合物は式IIIの化合物をヒドロジルコノ化に供して式IVの化合物を得て、続いてこれをハロゲン化、好ましくはインサイチュでハロゲン化することによって調製される。本明細書において用いられるヒドロジルコノ化は、当業者には周知の方法であるCpZr(H)Cl(Schwartz試薬としても知られている。)を用いて有機ジルコノセンを形成することを意味する。ハロゲン化はたとえばハロゲン上に正電荷を発現する種々のハロゲン試薬、好ましくはN−ハロゲノスクシンイミド(たとえばスキーム1に示したN−クロロスクシンイミド、NCS)をインサイチュで式IVの化合物に加えて式Vの化合物を得ることによって達成できる。反応はTHF、CHClまたはDCE等の有機溶媒中で行なわれ、これは後に減圧で除去される。反応混合物はn−ヘキサンで抽出され、残留物はクロマトグラフィーによって精製される。
【0139】
あるいは、上述のヒドロジルコノ化に引き続いて導入されるハロゲンは、場合によってさらにOCOR’およびOSOR’(式中、R’は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表す。)からなる群から選択される部分に、当業界で周知の方法によって変換することができる。たとえばUS4924026のプロトコルに従って、ハロゲン原子、たとえばCl(スキーム1においてX=Clの式Vの化合物)は、部分OCOMe(スキーム1においてX=OCOMeの式Vの化合物)に変換することができる。
【0140】
Schwartz中間体を経由するアルキンボロネートのヒドロハロゲン化によればデノボ生成アルケンが得られ、これは理論的には2つの幾何異性体で存在する。文献データ(J.Am.Chem.Soc.1994,116巻、10302−10303頁)によれば、(E)配置が主として生成すると思われる。本発明の観点では配置の決定は不要である。それは本発明の方法の観点ではβ炭素原子はプロキラルではないからである。
【0141】
さらにスキーム1に示す好ましい実施形態によれば、式VIの化合物は式Vの化合物の水素添加/還元によって調製される。式Vの化合物中のXがハロゲンであれば、還元は脱ハロゲン化なしの均一な還元を意味する。この反応は有機溶媒、好ましくはTHF、CHCl、DCEまたはトルエン中で触媒の存在下で実施され、オートクレーブ中、不活性雰囲気で行なわれる。
【0142】
別の好ましい実施形態によれば、式IVおよびVの化合物において、Rは水素、置換もしくは非置換直鎖C−Cアルキル、置換もしくは非置換分枝C−Cアルキルおよび置換もしくは非置換C−Cシクロアルキルからなる群から選択され、RおよびRは直鎖置換もしくは非置換C−Cアルキル、置換もしくは非置換分枝C−Cアルキルからなる群から選択され、またはRおよびRは5員から10員の縮合または非縮合環、場合によってキラルの5員から10員の縮合または非縮合環の一部を形成し、好ましくはRは非置換直鎖もしくは分枝C−Cアルキルであり、および/またはRおよびRは5員環の一部を形成し、より好ましくはRはイソプロピル、t−Bu、n−プロピル、フェニル、4−フルオロフェニルであり、および/またはRおよびRは共同して4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロランを表す5員環の一部を形成する。Rがイソプロピル、t−Bu、n−プロピル、フェニルまたは4−フルオロフェニルであり、RおよびRが共同して4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロランを表す5員環の一部を形成する式IVおよびVの最も好ましい化合物は、以下のスキーム2に示されている。式中、式VaからVeの化合物におけるXはCl、Br、I、OCOR’およびOSOR’からなる群から選択され、R’は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表す。
【0143】
【化40】

触媒が実質的に脱ハロゲン化の傾向を低減させることに寄与するように、触媒は遷移金属、好ましくはCu、Co、Ni、Rh、Ru、Pd、Irから選択される。好ましくは触媒は金属−(ホスフィン)−錯体であり、金属は好ましくはCu、Rh、Ru、Pd、Ir、より好ましくはIrである。好ましくは、遷移金属はリガンドとして二重結合を有する種々の化合物および/または非共有電子対を含むO、N、SもしくはP化学種等の電子豊富な化学種を含む少なくとも1つの有機化合物と錯体を形成する。より好ましくは、遷移金属触媒はリガンドおよび/または遷移金属原子にキラリティーを有し、またはキラリティーを有する遷移金属錯体がキラルリガンド等のキラリティーを有する共触媒とともに遷移金属を含むアキラルな前駆触媒を用いることによってインサイチュで形成される。さらにより好ましくは、キラリティーを有する上述の成分は、鏡像異性的またはジアステレオマー的に純粋な形態である。特に、前記リガンドの少なくとも1つはキラリティーを有し、前記リガンドは鏡像異性的またはジアステレオマー的に純粋な形態である。そのようなリガンドには、たとえばこれだけに限らないが、(S)−2−(1−(ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−2−メチルプロパン−2−イル)−4−tert−ブチル−4,5−ジヒドロオキサゾール;(S)−4−tert−ブチル−2−(2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル)−4,5−ジヒドロオキサゾール;(4S,5S)−4−(2−(ジシクロヘキシルホスフィノオキシ)−1,3−ジフェニルプロパン−2−イル)−5−メチル−2−フェニル−4,5−ジヒドロオキサゾール;(R,R)−P,N−フェロセンオキサゾリン;(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリン;ベンゾイル−(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリン;(R)−(+)−2,2’,6,6’−テトラメトキシ−4,4’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,3’−ビピリジン(即ち(R)−P−ホス);(S)−2,2’,6,6’−テトラメトキシ−ビス[ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−3,3’−ビピリジン(即ち(S)−Xyl−P−ホス);(R)−4,12−ビス(ジフェニルホスフィノ)−[2.2]−パラシクロファン(即ち(R)−ファン−ホス);1−(S)−N−メチル−N−(ジフェニルホスフィノ)−1−[(R)−(ジフェニルホスフィノ)−フェロセニル]エチルアミン(即ち(S)−メボホース);(R)−2−(1−ナフチル)−8−ジフェニル−ホスフィノ−1−(S)−3,5−ジオキサ−4−ホスファシクロヘプタ[2,1−1;3,4−a’]ジ−ナフタレン−4−イル)−1,2−ジヒドロキノリントルエン生成物(即ち(Sa,Rc)−(1−Nph)−キナホース);(S)−(+)−4,12−ビス[ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−[2.2]パラシクロファン(即ち(S)−キシルファネホス);(R)−2,2’−ビス(ジフェニル−ホスフィノアミノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチル(即ち(R)−H8−ビナム−P)が含まれる。好ましいキラルリガンドは、(S)−2−(1−(ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−2−メチルプロパン−2−イル)−4−tert−ブチル−4,5−ジヒドロ−オキサゾール;(S)−4−tert−ブチル−2−(2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル)−4,5−ジヒドロオキサゾール;(4S,5S)−4−(2−(ジシクロヘキシル−ホスフィノオキシ)−1,3−ジフェニルプロパン−2−イル)−5−メチル−2−フェニル−4,5−ジヒドロオキサゾール;(R,R)−P,N−フェロセンオキサゾリン;(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリンおよびベンゾイル−(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリンである。
【0144】
【化41】

キラルリガンドを有する遷移金属触媒の非限定的なリストには、(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(S)−2−(1−(ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−2−メチルプロパン−2−イル)−4−tert−ブチル−4,5−ジヒドロオキサゾール;(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(S)−4−tert−ブチル−2−(2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル)−4,5−ジヒドロオキサゾール;(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(4S,5S)−4−(2−(ジシクロヘキシルホスフィノオキシ)−1,3−ジフェニルプロパン−2−イル)−5−メチル−2−フェニル−4,5−ジヒドロ−オキサゾール;(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(R,R)−P,N−フェロセンオキサゾリン;(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリン;(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(ベンゾイル−(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリン;ビス(1,5−シクロオクタジエン)ジイリジウム(I)ジクロリド(R)−(+)−2,2’,6,6’−テトラメトキシ−4,4’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,3’−ビピリジン;ビス(1,5−シクロオクタジエン)ジイリジウム(I)ジクロリド(S)−2,2’,6,6’−テトラメトキシ−ビス[ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−3,3’−ビピリジン;ビス(1,5−シクロオクタジエン)ジロジウム(I)ジクロリド(S)−2,2’,6,6’−テトラメトキシ−ビス[ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−3,3’−ビピリジン;ビス(シクロオクタ−1,5−ジエン)ロジウム(I)テトラフルオロボレート(R)−4,12−ビス(ジフェニルホスフィノ)−[2.2]−パラシクロファン;ベンゼンルテニウム(II)ジクロリドダイマー1−(S)−N−メチル−N−(ジフェニルホスフィノ)−1−[(R)−(ジフェニルホスフィノ)−フェロセニル]エチルアミン;ビス(2−メチルアリル)(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)(S)−(+)−4,12−ビス[ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−[2.2]パラシクロファンが含まれる。
【0145】
さらに、遷移金属を含む錯体は、好ましくは5:1から100:1の範囲の基質対触媒モル比、より好ましくは5:1から50:1の範囲の基質対触媒モル比で用いられる。特に好ましい触媒は、(1,5−シクロオクタジエン)(ピリジン)(トリシクロヘキシルホスフィン)イリジウム(I)ヘキサフルオロホスフェート、(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(S)−2−(1−(ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−2−メチルプロパン−2−イル)−4−tert−ブチル−4,5−ジヒドロオキサゾール、(1,5−シクロ−オクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(S)−4−tert−ブチル−2−(2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル)−4,5−ジヒドロオキサゾール、(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(4S,5S)−4−(2−(ジシクロヘキシルホスフィノオキシ)−1,3−ジフェニルプロパン−2−イル)−5−メチル−2−フェニル−4,5−ジヒドロオキサゾール、(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(R,R)−P,N−フェロセンオキサゾリン、(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリンおよび(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(ベンゾイル−(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリンである。
【0146】
式Vの化合物、Ir触媒および適切な有機溶媒、好ましくはTHF、CHCl、DCEまたはトルエンを窒素雰囲気下でオートクレーブに入れる。オートクレーブをシールし、窒素で数回、好ましくは約6barの窒素で3回、次いで水素で数回、好ましくは約6barの水素で3回、加圧/減圧を行なう。次いで混合物を適切な時間、たとえば1から20日、好ましくは約1から10日、10℃から80℃の温度で、より好ましくは約45℃から55℃で、約5から20barの水素の下で撹拌する。この時間の後、オートクレーブを約20℃から25℃等の室温に冷却する。次いでオートクレーブを注意深く減圧し、得られた溶液を適切な容器、好ましくは丸底フラスコに注ぐ。溶媒を減圧で除去し、残留物を適切な溶離液、好ましくはn−ヘキサンとともにシリカゲルの短いカラムに通して触媒を除去する。イリジウム触媒を用いるそのような好ましい手順によって脱ハロゲン化が実質的に低減され、好ましくは脱ハロゲン化は式VIの化合物のモル量に対して10モル%未満、より好ましくは5モル%未満、最も好ましくは3モル%未満、特に1モル%未満で起こる。
【0147】
本発明の別の実施形態によれば、化合物Vの水素添加反応で得られる化合物VIのα−(R)およびα−(S)異性体のラセミ混合物は、光学的に純粋なα−(R)またはα−(S)−鏡像異性体を得るために、鏡像異性分割によってさらに分割することができる。鏡像異性体はそのスカラー的特徴においては異ならないので、鏡像異性分割にはキラルな環境が必要である。分割のためのキラルな環境は、たとえばクロマトグラフィーカラムにおけるキラルな支持体によって、または結晶化によって分割できるジアステレオマー塩を形成するための鏡像純粋な酸/塩基付加塩の添加によって提供され得る。式VIの化合物のボロラン部分がキラルである特別な場合には、式VIの化合物はジアステレオマーを表す。ジアステレオマーはそのスカラー的特徴が異なるので、式VIのジアステレオマー化合物はキラルな環境を提供することなく、たとえば結晶化またはアキラルな支持体上のクロマトグラフィー法によって分割することができる。
【0148】
さらに、別の実施形態においては、式VIの化合物の脱離基Xは、式VIの化合物
【0149】
【化42】

[式中、R、RおよびRは上記で定義した通りであり、XはCl、Br、I、OCOR’およびOSOR’からなる群から選択される。]
が式VI’の化合物
【0150】
【化43】

[式中R、RおよびRは上で定義した通りであり、
X’はCl、Br、I、OCOR’およびOSOR’からなる群から選択され、X’はXと同じではなく、
キラル中心**はキラル中心の反対の立体化学的配置を有する。]
に、S2型の求核置換反応を適用することによってさらに変換される方法によって化合物VIのα−炭素原子における立体化学的配置を適切に反転させるために、X’によって交換することができる。
【0151】
上記で提示したS2反応を完全には立体選択的でない水素添加反応に起因する生成物のキラルクロマトグラフィー分割の後に得られる望ましくない立体異性体に適用すれば、追加的な量の望ましい立体異性体を回収することができる。
【0152】
前記S2型の求核置換は当技術分野において「Walden反転」としても知られており、脱離基Xが二次炭素原子に位置し、そのため二分子S反応(S2)および次には化合物VIのα−炭素原子における立体化学的配置の反転が可能になる。たとえば、X=Clである化合物VIはEP0315574に記載された方法によって化合物VI’(X=I)に変換することができ、またはX=Clである化合物VIはJ.Org.Chem.1987、52巻、5121−5124頁に記載された方法によってX=OSOMeである化合物VI’に変換することができる。X’はXと同じではないが、X’はXについて定義した同じ群から選択される。
【0153】
本発明の別の好ましい態様は、
(i)反応スキーム1に従って式VIの化合物を準備する段階および
(ii)式VIの化合物をスキーム3で示したように式VIIIの化合物に変換する段階
を含む、α−アミノボロン酸エステル(VIII)を調製するための方法である。
【0154】
【化44】

スキーム4の好ましい実施形態によれば(R、R、R、XおよびAは上の項目で定義した通りである)、たとえば約3.8mmolの(R)−もしくは(S)−鏡像異性体の形態または鏡像異性体の混合物の形態の式VIIIの化合物は、有機溶媒、好ましくはTHFに溶解した式VIの化合物を、Xを保護されたアミノ部分に置換するための試薬、たとえばナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(NaHMDS)もしくはリチウムビス(トリメチルシリル)アミド(LiHMDS)を含む溶液と、−60℃から−10℃等、より好ましくは−40℃から−30℃の適切な低温で、不活性な、好ましくはアルゴンの雰囲気で接触させることによって調製することができる。溶液を約20℃から25℃等の室温に加温し、適切な時間、たとえば1から15時間、好ましくは約5時間、撹拌する。次に反応混合物を乾燥するまで蒸発させ、次いで残留物を適切な体積、たとえば約10mLのn−ヘプタンに溶解し、適切な体積、たとえば約8mLの水で洗浄し、適切な体積、たとえば約4mLのNaClの飽和水溶液で洗浄する。次に有機相を適切な乾燥剤、最も好ましくはMgSOで脱水し、濾過して乾燥するまで蒸発させる。次いで、このようにして得られる式VIIaの化合物を、既に得られた残留物を適切な体積、たとえば20mLのn−ヘプタンに溶解し、適切な量の無水酸溶液、たとえばEtO中の無水HCl溶液を−100℃から−10℃等、より好ましくは−70℃から−50℃の適切な低温で、不活性な、好ましくはアルゴンの雰囲気で加えることによって、式VIIIの化合物にさらに変換する。反応混合物を約20℃から25℃等の室温に加温し、沈殿する固体を最後に濾過によって反応混合物から単離し、EtOで洗浄してα−アミノボロン酸エステル(VIII)を得る。
【0155】
本発明の別の実施形態によれば、上記で得られるα−アミノボロン酸エステル(VIII)のラセミ混合物を、キラルな酸、たとえばリンゴ酸、酒石酸、マンデル酸との結晶化またはキラルクロマトグラフィーによる鏡像異性分割等の当技術分野で既知の方法によってさらに分割して光学的に純粋な(R)−または(S)−鏡像異性体を得ることができる。式VIIIの化合物のボロラン部分がキラルである特別な場合には、式VIIIの化合物はジアステレオマーを表す。ジアステレオマーはそのスカラー的特徴が異なるので、式VIIIのジアステレオマー化合物はキラルな環境を提供することなく、たとえば結晶化またはアキラルな支持体上のクロマトグラフィー法によって分割することができる。
【0156】
このようにして得られる鏡像異性体を次いでさらなる合成段階に供して、一般式Xの化合物
【0157】
【化45】

[式中、Rは水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルであり、
およびRは互いに独立に置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、またはRおよびRは共同して5員から10員の縮合または非縮合環、場合によってキラルの5員から10員の縮合または非縮合環の一部を形成し、
ペプチドは場合によってアシル化された末端アミノ基を有するペプチド結合によって互いに連結された1−6個のアミノ酸を含み、および
キラル中心はその(R)または(S)配置にある。]
またはその遊離酸もしくはエステルもしくは酸無水物もしくは塩を得ることができる。
【0158】
たとえば、式VIIIの中間化合物、たとえば3−メチル−1−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ブタン−1−アミン塩酸塩のラセミ混合物を当技術分野で既知の鏡像異性体分割法によって最初に分割して(R)−3−メチル−1−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ブタン−1−アミン塩酸塩を得て、次いでこれをさらなる合成段階に供して、当業者に既知または容易に考案できる合成経路によってボルテゾミブを得ることができる。たとえば以下の合成経路を適用し得る。
【0159】
【化46】


本発明の別の態様は式VまたはVIの化合物の、それぞれ式VおよびVIのトリフルオロボレート誘導体化合物への変換であり、これらは下のスキーム6に示すように化合物VIIIにさらに変換することができる。
【0160】
【化47】

スキーム6の好ましい実施形態によれば、(R)−もしくは(S)−鏡像異性体の形態または鏡像異性体の混合物の形態の式VIII’’の化合物は、有機溶媒、好ましくはMeOHに溶解した式Vの化合物を最初にKHF(フッ化水素カリウム)の水溶液に接触させることによって調製することができる。得られるカリウム塩は、得られる塩を(n−Bu)NOHの溶液と反応させることによって、他の塩、たとえばテトラn−ブチルアンモニウム誘導体に変換することができる。このようにして得られるV’’は、水素添加によってVI’’にさらに変換される。あるいは、化合物VI’’を、化合物VIから出発して同様に調製することができる。この場合には、上述してスキーム1に示すように得られる化合物VIを出発点とみなす。得られる化合物VI’’を、次いでXを保護されたアミノ部分に置換するための試薬、たとえばナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(NaHMDS)もしくはリチウムビス(トリメチルシリル)アミド(LiHMDS)を含む溶液と、−60℃から−10℃等、より好ましくは−40℃から−30℃の適切な低温で、不活性な、好ましくはアルゴンの雰囲気で接触させる。溶液を約20℃から25℃等の室温に加温し、適切な時間、たとえば1から15時間、好ましくは約5時間、撹拌する。次いで式VII’’の化合物を、純粋な形態もしくは上記の調製方法から誘導される粗生成物の形態で式VII’’の化合物を適切な体積のTHFに溶解し、適切な量の無水酸溶液、たとえばEtO中の無水HCl溶液を−100℃から−10℃等、より好ましくは−70℃から−50℃の適切な低温で不活性な、好ましくはアルゴンの雰囲気で加えることによって、式VIII’’の化合物にさらに変換することができる。
【0161】
本発明の別の実施形態によれば、式XVIIの化合物
【0162】
【化48】

[式中、Rは水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルであり、
は水素またはアルキルであり、
は水素、−R’または−CO−R’であり、R’は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、
Arは置換もしくは非置換アリールであり、および
はキラル中心を示す。]
を製造するための、
(i)上述のようにして調製される式VIまたはVIの化合物を準備する段階、
(ii)上述のようにして前記式VIの化合物を式VIIIの化合物もしくはその遊離塩基に変換する段階または前記式VIの化合物を式VIIIの化合物もしくはその遊離塩基に変換する段階および
(iii)前記式VIIIもしくはVIIIの化合物またはその遊離塩基を、式XVIIIの化合物
【0163】
【化49】

[式中、Arは上で定義した通りであり、X’’はCl、Br、Iである。]
とのSuzuki−Miyauraクロスカップリング反応によって式XVIIの化合物に変換する段階
を含む方法が提供される。
【0164】
Suzuki−Miyauraカップリング反応に関するさらなる情報は、たとえばChem.Letters 2009、38巻、664−665頁に記載されている。
【実施例】
【0165】
実施例1a
4,4,5,5−テトラメチル−2−(3−メチルブタ−1−イニル)−1,3,2−ジオキサボロラン(IIIa)の合成
【0166】
【化50】

Ia(7.0g、50mmol)の脱水THF(25mL)溶液に−78℃で撹拌しながらn−BuLi(n−ヘキサン62.5mL中1.6M、100mmol)を加えた。−78℃で1時間撹拌後、反応混合物を室温に加温し、その温度で1時間撹拌した。別のフラスコにアルゴン雰囲気で2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(7.8mL、38mmol)の脱水THF(50mL)溶液を入れ、反応混合物を−78℃に冷却した。−78℃に冷却した第1のフラスコからのリチウムアセチリドを両頭針によってゆっくりと第2のフラスコに加えた。混合物を−78℃で2時間撹拌し、その後無水HCl(100mmol)を加えた。次いで反応混合物を室温に加温した。沈殿したLiClを濾過によって除去し、溶媒を減圧で除去した後、残留物を蒸留(113−115℃/7mbar)によって精製して、IIIa(5.9g、80%)を油として得た。
H NMR(CDCl):δ(ppm)=1.15(d,6H)、1.25(s,12H)、2.45−2.6(m,1H)。
13C NMR(CDCl):δ(ppm)=21.0,22.2,24.5,83.9。
【0167】
出発原料IaはTetrahedron Letters 2000,41巻、4007−4009頁に記載されているようにして調製した。
【0168】
実施例1b
2−(3,3−ジメチルブタ−1−イニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(IIIb)の合成
【0169】
【化51】

IIb’(5mL、40mmol)の脱水THF(25mL)溶液に−78℃で撹拌しながらn−BuLi(n−ヘキサン18mL中2.5M、44mmol)を加えた。別のフラスコにアルゴン雰囲気で2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(8.2mL、40mmol)の脱水THF(50mL)溶液を入れ、反応混合物を−78℃に冷却した。−78℃に冷却した第1のフラスコからのリチウムアセチリドを両頭針によってゆっくりと第2のフラスコに加えた。混合物を−78℃で2時間撹拌し、その後無水HCl(44mmol)を加えた。次いで反応混合物を室温に加温した。沈殿したLiClを濾過によって除去し、溶媒を減圧で除去した後、残留物を蒸留(115−125℃/15mbar)によって精製して、IIIb(4.3g、52%)を無色のグリース状固体として得た。
H NMR(CDCl):δ(ppm)=1.20(s,9H)、1.25(s,12H)。
13C NMR(CDCl):δ(ppm)=24.6,27.9,30.4,84.0。
【0170】
実施例1c
4,4,5,5−テトラメチル−2−(ペンタ−1−イニル)−1,3,2−ジオキサボロラン(IIIc)の合成
【0171】
【化52】

IIc’(5mL、51mmol)の脱水THF(25mL)溶液に−78℃で撹拌しながらn−BuLi(n−ヘキサン22.4mL中2.5M、56mmol)を加えた。別のフラスコにアルゴン雰囲気で2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(10.4mL、51mmol)の脱水THF(50mL)溶液を入れ、反応混合物を−78℃に冷却した。−78℃に冷却した第1のフラスコからのリチウムアセチリドを両頭針によってゆっくりと第2のフラスコに加えた。混合物を−78℃で2時間撹拌し、その後無水HCl(56mmol)を加えた。次いで反応混合物を室温に加温した。沈殿したLiClを濾過によって除去し、溶媒を減圧で除去した後、残留物を蒸留(115−125℃/15mbar)によって精製して、IIIc(6.3g、64%)を油として得た。
H NMR(CDCl):δ(ppm)=0.95(t,3H)、1.25(s,12H)、1.50−1.60(m,2H)、2.20(t,2H)。
13C NMR(CDCl):δ(ppm)=13.4,21.3,21.4,24.45,24.5,83.9。
【0172】
実施例1d
4,4,5,5−テトラメチル−2−(フェニルエチニル)−1,3,2−ジオキサボロラン(IIId)の合成
【0173】
【化53】

IId’(10mL、91mmol)の脱水THF(50mL)溶液に−78℃で撹拌しながらn−BuLi(n−ヘキサン40mL中2.5M、100mmol)を加えた。別のフラスコにアルゴン雰囲気で2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(18.7mL、91mmol)の脱水THF(100mL)溶液を入れ、反応混合物を−78℃に冷却した。−78℃に冷却した第1のフラスコからのリチウムアセチリドを両頭針によってゆっくりと第2のフラスコに加えた。混合物を−78℃で2時間撹拌し、その後無水HCl(105mmol)を加えた。次いで反応混合物を室温に加温した。沈殿したLiClを濾過によって除去し、溶媒を減圧で除去した後、残留物を蒸留(185−200℃/15mbar)によって精製して、IIId(16.05g、76%)を無色の油として得た。
H NMR(CDCl):δ(ppm)=1.32(s,12H)、7.26−7.36(m,3H)、7.52(d,2H)。
13C NMR(CDCl):δ(ppm)=24.6,84.4,121.8,128.2,129.3,132.5。
【0174】
実施例1e
2−((4−フルオロフェニル)エチル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(IIIe)の合成
【0175】
【化54】

IIe’(4.3mL、37mmol)の脱水THF(20mL)溶液に−78℃で撹拌しながらn−BuLi(n−ヘキサン16.3mL中2.5M、41mmol)を加えた。別のフラスコにアルゴン雰囲気で2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(7.5mL、37mmol)の脱水THF(50mL)溶液を入れ、反応混合物を−78℃に冷却した。−78℃に冷却した第1のフラスコからのリチウムアセチリドを両頭針によってゆっくりと第2のフラスコに加えた。混合物を−78℃で2時間撹拌し、その後無水HCl(43mmol)を加えた。次いで反応混合物を室温に加温した。沈殿したLiClを濾過によって除去し、溶媒を減圧で除去した後、残留物を蒸留(175−185℃/15mbar)によって精製して、IIIe(7.2g、79%)を無色のグリース状固体として得た。
H NMR(CDCl):δ(ppm)=1.32(s,12H)、7.0(t,2H)、7.52(t,2H)。
13C NMR(CDCl):δ(ppm)=24.6,84.4,115.5,115.8,117.9,134.5,134.6,161.8,164.3。
【0176】
実施例2
2−(1−クロロ−3−メチルブタ−1−エニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(Va)の合成
【0177】
【化55】

【0178】
a)溶媒としてTHFを使用
CpZr(H)Cl(7.3g、27mmol)の脱水THF(55mL)懸濁液をアルゴン雰囲気下、室温で撹拌した。次いでIIIa(24mmol)の脱水THF中0.5M溶液48mLを加えた。反応混合物を1時間撹拌し、透明なオレンジ色の溶液を得た。N−クロロスクシンイミド(3.6g、27mmol)をインサイチュで加えると溶液の着色が消失した。溶媒を減圧で除去し、n−ヘキサン(5×20mL)を加えて反応混合物を抽出した。溶媒を減圧で除去した後、残留物をクロマトグラフィー(移動相:n−ヘキサン/MTBE=9.5:0.5)によって精製して、Va(2.5g、45%)を油として得た。
b)溶媒としてCHClを使用
CpZr(H)Cl(7.3g、27mmol)の脱水CHCl(55mL)懸濁液をアルゴン雰囲気下、室温で撹拌した。次いでIIIa(24mmol)のCHCl中0.5M溶液48mLを加えた。反応混合物を1時間撹拌し、透明なオレンジ色の溶液を得た。N−クロロスクシンイミド(3.6g、27mmol)をインサイチュで加えると溶液の着色が消失した。溶媒を減圧で除去し、n−ヘキサン(5×20mL)を加えて反応混合物を抽出した。溶媒を減圧で除去した後、残留物をクロマトグラフィー(移動相:n−ヘキサン/MTBE=9.5:0.5)によって精製して、Va(3.3g、60%)を油として得た。
H NMR(CDCl):δ(ppm)=0.95(d,6H)、1.25(s,12H)、2.95−3.05(m,1H)、6.35(d,1H)。
13C NMR(CDCl):δ(ppm)=22.8,24.6,29.5,84.2,156.2。
【0179】
実施例2c
2−(1−クロロ−3,3−ジメチル−1−エニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(Vb)の合成
【0180】
【化56】

CpZr(H)Cl(6.8g、25mmol)の脱水CHCl(50mL)懸濁液をアルゴン雰囲気下、室温で撹拌した。次いでIIIb(23mmol)のCHCl0.5M溶液43mLを加えた。反応混合物を1時間撹拌し、透明なオレンジ色の溶液を得た。N−クロロスクシンイミド(3.3g、25mmol)をインサイチュで加えると溶液の着色が消失した。溶媒を減圧で除去し、n−ヘキサン(5×20mL)を加えて反応混合物を抽出した。溶媒を減圧で除去した後、残留物をクロマトグラフィー(移動相:n−ヘキサン/MTBE=9.5:0.5)によって精製して、Vb(1.7g、30%)を油として得た。
H NMR(CDCl):δ(ppm)=1.1(s,9H)、1.3(s,12H)、6.3(s,1H)。
13C NMR(CDCl):δ(ppm)=24.4,29.7,34.8,84.4,152.1。
【0181】
実施例2d
2−(1−クロロ−ペンタ−1−エニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(Vc)の合成
【0182】
【化57】

CpZr(H)Cl(7.3g、27mmol)の脱水CHCl(54mL)懸濁液をアルゴン雰囲気下、室温で撹拌した。次いでIIIc(24.5mmol)のCHCl0.5M溶液47mLを加えた。反応混合物を1時間撹拌し、透明なオレンジ色の溶液を得た。N−クロロスクシンイミド(3.6g、27mmol)をインサイチュで加えると溶液の着色が消失した。溶媒を減圧で除去し、n−ヘキサン(5×20mL)を加えて反応混合物を抽出した。溶媒を減圧で除去した後、残留物をクロマトグラフィー(移動相:n−ヘキサン/MTBE=9.5:0.5)によって精製して、Vc(2.95g、48%)を油として得た。
H NMR(CDCl):δ(ppm)=0.9(t,3H)、1.25(d,12H)、1.35−1.50(m,2H)、2.3(q,2H)、6.5(t,1H)。
13C NMR(CDCl):δ(ppm)=13.4,22.4,24.6,31.9,84.2,149.4。
【0183】
実施例2e
2−(1−クロロ−2−フェニルビニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(Vd)の合成
【0184】
【化58】

CpZr(H)Cl(6.94g、26mmol)の脱水CHCl(51mL)懸濁液をアルゴン雰囲気下、室温で撹拌した。次いでIIId(21.3mmol)のCHCl0.5M溶液42mLを加えた。反応混合物を1時間撹拌し、透明なオレンジ色の溶液を得た。N−クロロスクシンイミド(3.5g、26mmol)をインサイチュで加えると溶液の着色が消失した。溶媒を減圧で除去し、n−ヘキサン(5×30mL)を加えて反応混合物を抽出した。溶媒を減圧で除去した後、残留物をクロマトグラフィー(移動相:n−ヘキサン/MTBE=9.5:0.5)によって精製して、Vd(2.5g、45%)を油として得た。
H NMR(CDCl):δ(ppm)=1.33(s,12H)、7.24−7.39(m,6H)。
13C NMR(CDCl):δ(ppm)=24.5,84.7,128.1,128.17,128.2,135.5,143.2。
【0185】
実施例2f
2−(1−クロロ−2−(4−フルオロフェニル)ビニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(Ve)の合成
【0186】
【化59】

CpZr(H)Cl(4.0g、14.8mmol)の脱水CHCl(35mL)懸濁液をアルゴン雰囲気下、室温で撹拌した。次いでIIIe(13.5mmol)のCHCl0.5M溶液27mLを加えた。反応混合物を1時間撹拌し、透明なオレンジ色の溶液を得た。N−クロロスクシンイミド(1.97g、14.8mmol)をインサイチュで加えると溶液の着色が消失した。溶媒を減圧で除去し、n−ヘキサン(5×20mL)を加えて反応混合物を抽出した。溶媒を減圧で除去した後、残留物をクロマトグラフィー(移動相:n−ヘキサン/MTBE=9.5:0.5)によって精製して、Ve(1.1g、30%)を油として得た。
H NMR(CDCl):δ(ppm)=1.32(s,12H)、7.0(t,2H)、7.32−7.39(m,3H)。
13C NMR(CDCl):δ(ppm)=24.5,84.8,115.0,115.2,130.2,131.6,131.7,142.6,161.5,163.9。
【0187】
実施例3a
2−(1−クロロ−3−メチルブチル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(VIa)の合成
【0188】
【化60】

75mLのステンレススチール製オートクレーブに窒素を流入した。基質Va(1.15g、5.0mmol)、(1,5−シクロオクタジエン)(ピリジン)(トリシクロヘキシルホスフィン)イリジウム(I)ヘキサフルオロホスフェート(80.5mg、0.1mmol)および脱水THF(30mL)を窒素雰囲気下でオートクレーブに素早く入れた。オートクレーブをシールし、最初に6barの窒素で3回、次いで6barの水素で3回、加圧/減圧した。混合物を10日間、50℃で10barの水素下に撹拌した。オートクレーブが室温まで冷却すれば、オートクレーブを注意深く減圧し、溶液を丸底フラスコに注いだ。溶媒を減圧で除去し、残留物をシリカゲルの短いカラム(溶離液=n−ヘキサン)に通して触媒を除去した。生成物VIa(0.84g、80%)をさらに精製せずに次の段階に繰り越した。
H NMR(CDCl):δ(ppm)=0.9(m,6H)、1.3(s,1H)、1.45−1.5(m,1H)、1.75−1.85(m,1H)、1.87−1.95(m,1H)、3.5−3.6(m,1H)。
13C NMR(CDCl):δ(ppm)=22.8,24.5,25.5,31.6,42.5,84.3。
【0189】
実施例3b−d
(R)−または(S)−2−(1−クロロ−3−メチルブチル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(R−またはS−VIa)の合成
【0190】
【化61】

75mLのステンレススチール製オートクレーブに窒素を流入した。基質Va(1.15g、5.0mmol)、適切な触媒(Catb−d;80.5mg、0.1mmol)および脱水THF(30mL)を窒素雰囲気下でオートクレーブに素早く入れた。オートクレーブをシールし、最初に6barの窒素で3回、次いで6barの水素で3回、加圧/減圧した。混合物を10日間、50℃で10barの水素下に撹拌した。オートクレーブが室温まで冷却すれば、オートクレーブを注意深く減圧し、溶液を丸底フラスコに注いだ。溶媒を減圧で除去し、残留物をシリカゲルの短いカラム(溶離液=n−ヘキサン)に通して触媒を除去した。生成物R−またはS−VIaをさらに精製せずに次の段階に繰り越した。触媒が充分な鏡像異性的過剰をもたらさない場合、たとえば鏡像異性的過剰が約99%未満の場合には、次の反応段階を行なう前に鏡像異性分割を適用することができる。
【0191】
実施例3e−h
(R)−または(S)−2−(1−クロロ−3−メチルブチル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(R−またはS−VIa)の合成
【0192】
【化62】

15mLのステンレススチール製オートクレーブに窒素を流入した。基質Va(0.5mmol)、適切な触媒(Cate−f:0.01mmol、Catg:0.02mmol)およびDCE(3mL)を窒素雰囲気下でオートクレーブに素早く入れた。オートクレーブをシールし、最初に6barの窒素で3回、次いで6barの水素で3回、加圧/減圧した。混合物を20時間、50℃で20barの水素下に撹拌した。オートクレーブが室温まで冷却すれば、オートクレーブを注意深く減圧し、溶液を丸底フラスコに注いだ。溶媒を減圧で除去し、残留物をシリカゲルの短いカラム(溶離液=n−ヘキサン)に通して触媒を除去した。生成物R−またはS−VIaをさらに精製せずに次の段階に繰り越した。
【0193】
触媒Cate−hを用いたVaの鏡像異性選択的水素添加のパラメーターを以下に提示する。
【0194】
【表1】

【0195】
鏡像異性的過剰は炎イオン化検出器を有するGC装置を用いるガスクロマトグラフィー法によって決定した。用いたカラムは寸法30m×0.25mm×0.12μmのSupelco Astec A−TAであった。用いた注入器はスプリット/スプリットレスで、スプリット比30:1、T=250℃であった。GC条件:注入体積=1.0μL、キャリアガス=ヘリウム、定流量1.5mL/分、FID温度=250℃、分析段階の温度勾配=70℃(66分)から130℃(8分)、15℃/分、冷却段階の温度勾配=130℃(0分)から70℃(0.1分)、−15℃/分、全運転時間=78分(冷却に82分)。R−VIaおよびS−VIaの保持時間はそれぞれ約61分および64分であった。
【0196】
実施例3i
(S)−2−(1−クロロ−3−メチルブチル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(S−VIa)の合成
【0197】
【化63】

75mLのステンレススチール製オートクレーブに窒素を流入した。触媒Catj(169mg、0.17mmol)を窒素雰囲気下でオートクレーブに入れた。オートクレーブをシールし、5barの窒素で3回加圧/減圧した後、Va(1.0g、4.34mmol)を加えた。系を窒素で5回パージし、次いで脱水CHCl(25mL)を加えた。系を窒素でさらに5回、水素で10回パージした。混合物を2日間、50℃で5barの水素下に撹拌した。オートクレーブが室温まで冷却すれば、オートクレーブを注意深く減圧し、溶液を丸底フラスコに注いだ。溶媒を減圧で除去し、残留物をシリカゲルの短いカラム(溶離液=n−ヘキサン/EtOAc=9:1)に通して触媒を除去した。生成物S−VIa(0.66g、66%、93%ee)をさらに精製せずに次の段階に繰り越した。
【0198】
eeはキラルGCを用いて以下の条件で決定した。カラム:Chrompack Capillary Column CP−Chirasil−Dex CB、25m×0.25mm×0.25μm、注入器:スプリット比30、T=250℃、キャリアガス:ヘリウム、定流量1.5ml/分、検出器、T=250℃、温度勾配:60℃40分、0.5℃/分で90℃まで昇温、2分保持、15℃/分で60℃まで降温、1分保持、全運転時間:105分、保持時間:Va:83.4分、R−VIa:93.7分、S−VIa:94.8分。
【0199】
実施例3j
2−(1−クロロ−3,3−ジメチルブチル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(VIb)の合成
【0200】
【化64】

75mLのステンレススチール製オートクレーブに窒素を流入した。触媒Catj(567mg、0.57mmol)を窒素雰囲気下でオートクレーブに入れた。オートクレーブをシールし、5barの窒素で3回加圧/減圧した後、Vb(1.0g、4.1mmol)を加えた。系を窒素で5回パージし、次いで脱水CHCl(25mL)を加えた。系を窒素でさらに5回、水素で10回パージした。混合物を2日間、50℃で10barの水素下に撹拌した。オートクレーブが室温まで冷却すれば、オートクレーブを注意深く減圧し、溶液を丸底フラスコに注いだ。溶媒を減圧で除去し、残留物をシリカゲルの短いカラム(溶離液=n−ヘキサン/EtOAc=9:1)に通して触媒を除去した。生成物R−またはS−VIb(0.7g、67%、93%ee(e2))をさらに精製せずに次の段階に繰り越した。
【0201】
eeはキラルGCを用いて以下の条件で決定した。カラム:Chrompack Capillary Column CP−Chirasil−Dex CB、25m×0.25mm×0.25μm、注入器:スプリット比30、T=250℃、キャリアガス:ヘリウム、定流量1.0ml/分、検出器、T=90℃、全運転時間:60分、保持時間:e1−VIb:52.9分、e2−VIb:53.9分、Vb:54.7分。
H−NMR(CDCl):δ(ppm)=0.95(s,9H)、1.30(s,12H)、1.77(dd,1H)、1.98(dd,1H)、3.47(dd,1H)。
13C−NMR(CDCl):δ(ppm)=24.5,29.6,31.3,48.0,84.2。
【0202】
実施例3k
2−(1−クロロ−ペンチル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(VIc)の合成
【0203】
【化65】

75mLのステンレススチール製オートクレーブに窒素を流入した。触媒Cati(183mg、0.2mmol)を窒素雰囲気下でオートクレーブに入れた。オートクレーブをシールし、5barの窒素で3回加圧/減圧した後、Vc(1.2g、5mmol)を加えた。系を窒素で5回パージし、次いで脱水トルエン(30mL)を加えた。系を窒素でさらに5回、水素で10回パージした。混合物を2日間、80℃で10barの水素下に撹拌した。オートクレーブが室温まで冷却すれば、オートクレーブを注意深く減圧し、溶液を丸底フラスコに注いだ。溶媒を減圧で除去し、残留物をシリカゲルの短いカラム(溶離液=n−ヘキサン/EtOAc=9:1)に通して触媒を除去した。生成物S−VIc(0.48g、40%、85%ee(e2))をさらに精製せずに次の段階に繰り越した。
【0204】
eeはキラルGCを用いて以下の条件で決定した。カラム:Chrompack Capillary Column CP−Chirasil−Dex CB、25m×0.25mm×0.25μm、注入器:スプリット比30、T=250℃、キャリアガス:ヘリウム、定流量1.5ml/分、検出器、T=250℃、温度:100℃30分、全運転時間:30分、保持時間:Vc:20.0分、e1−VIc:21.5分、e2−VIc:22.4分。
H−NMR(CDCl):δ(ppm)=0.92(t,3H)、1.30(s,12H)、1.36(m,3H)、1.48(m,1H)、1.83(m,2H)、3.42(dd,1H)。
13C−NMR(CDCl):δ(ppm)=14.0,22.2,24.6,29.5,33.8,84.3。
【0205】
実施例3l
2−(1−クロロ−2−フェニルエチル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(VId)の合成
【0206】
【化66】

75mLのステンレススチール製オートクレーブに窒素を流入した。触媒Catj(490mg、0.49mmol)を窒素雰囲気下でオートクレーブに入れた。オートクレーブをシールし、5barの窒素で3回加圧/減圧した後、Vd(1.3g、4.9mmol)を加えた。系を窒素で5回パージし、次いで脱水CHCl(30mL)を加えた。系を窒素でさらに5回、水素で10回パージした。混合物を2日間、50℃で10barの水素下に撹拌した。オートクレーブが室温まで冷却すれば、オートクレーブを注意深く減圧し、溶液を丸底フラスコに注いだ。溶媒を減圧で除去し、残留物をシリカゲルの短いカラム(溶離液=n−ヘキサン/EtOAc=9:1)に通して触媒を除去した。生成物R−またはS−VId(0.65g、50%、90%ee(e2))をさらに精製せずに次の段階に繰り越した。
【0207】
eeはキラルGCを用いて以下の条件で決定した。カラム:Chrompack Capillary Column CP−Chirasil−Dex CB、25m×0.25mm×0.25μm、注入器:スプリット比30、T=250℃、キャリアガス:ヘリウム、定流量1.5ml/分、検出器、T=250℃、温度:110℃、全運転時間:120分、保持時間:e1−VId:103.9分、e2−VId:106.7分、Vd:113.5分。
H−NMR(CDCl):δ(ppm)=1.25(s,6H)、1.27(s,6H)、3.12(dd,1H)、3.21(dd,1H)、3.63(t,1H)、7.29(m,5H)。
13C−NMR(CDCl):δ(ppm)=24.5,24.6,40.3,84.5,126.8,128.4,129.2,138.4ppm。
【0208】
実施例3m
2−(1−クロロ−2−(4−フルオロフェニル)エチル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(VIe)の合成
【0209】
【化67】

75mLのステンレススチール製オートクレーブに窒素を流入した。触媒Catj(350mg、0.35mmol)を窒素雰囲気下でオートクレーブに入れた。オートクレーブをシールし、5barの窒素で3回加圧/減圧した後、Ve(1.0g、3.5mmol)を加えた。系を窒素で5回パージし、次いで脱水CHCl(21mL)を加えた。系を窒素でさらに5回、水素で10回パージした。混合物を2日間、50℃で5barの水素下に撹拌した。オートクレーブが室温まで冷却すれば、オートクレーブを注意深く減圧し、溶液を丸底フラスコに注いだ。溶媒を減圧で除去し、残留物をシリカゲルの短いカラム(溶離液=n−ヘキサン/EtOAc=9:1)に通して触媒を除去した。生成物R−またはS−VIe(0.6g、60%、89%ee(e2))をさらに精製せずに次の段階に繰り越した。
【0210】
eeはキラルGCを用いて以下の条件で決定した。カラム:Chrompack Capillary Column CP−Chirasil−Dex CB、25m×0.25mm×0.25μm、注入器:スプリット比30、T=250℃、キャリアガス:ヘリウム、定流量1.5ml/分、検出器、T=250℃、温度:110℃、全運転時間:120分、保持時間:Ve+e1−VIe:109.2分、e2−VIe:112.0分。
H−NMR(CDCl):δ(ppm)=1.25(s,6H)、1.26(s,6H)、3.08(dd,1H)、3.16(dd,1H)、3.58(t,1H)、7.00(t,2H)、7.24(dd,2H)。
13C−NMR(CDCl):δ(ppm)=24.5,24.6,39.4,84.6,115.1 130.7,134.0,161.9。
【0211】
実施例4a
3−メチル−1−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ブタン−1−アミン塩酸塩(ロイシンボロネート塩酸塩、VIIIa)の合成
【0212】
【化68】

NaHMDS(THF中1M、3.8mL、3.8mmol)の脱水THF(8mL)溶液に、−35℃でアルゴン雰囲気下に8mLの脱水THFに溶解したVIa(0.88g、3.8mmol)を加えた。溶液を室温に加温し、5時間撹拌した。反応混合物を乾燥するまで蒸発させた。残留物を10mLのn−ヘプタンに溶解し、8mLのHOおよび4mLのNaCl飽和水溶液で洗浄した。有機相をMgSOで脱水し、濾過して乾燥するまで蒸発させた。得られた残留物をn−ヘプタン(20mL)中に取り出した溶液に無水HCl(4eq、EtO中溶液)を−60℃でアルゴン雰囲気下に加えた。次いで反応混合物を室温に加温した。沈殿する固体を反応混合物から濾過によって単離し、EtOで洗浄して、VIIIa(0.63g、70%)を白色固体として得た。
H NMR(CDCl):δ(ppm)=0.9(d,6H)、1.25(s,12H)、1.55−1.65(m,1H)、1.7−1.8(m,1H)、1.82−1.9(m,1H)、2.85−2.95(m,1H)、8.2(s,3H)。
13C NMR(CDCl):δ(ppm)=22.4,22.4,24.6,24.9,25.0,38.5,84.9。
【0213】
実施例4b
(R)−3−メチル−1−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ブタン−1−アミン塩酸塩(R−VIIIa)の合成
【0214】
【化69】

アルゴン雰囲気下でLiHMDS(THF中1M、2.5mL、2.5mmol)の溶液をフラスコに入れ、−20℃に冷却した。S−VIa(0.58g、2.5mmol、実施例3e)を5mLの脱水THFに溶解し、−20℃でLiHMDSの溶液に加えた。混合物を−20℃で1時間撹拌した。反応混合物を室温に加温し、乾燥するまで蒸発させた。残留物を5mLのn−ヘプタンに溶解し、5mLのHOおよび2mLのNaCl飽和水溶液で洗浄した。有機相をMgSOで脱水し、濾過して乾燥するまで蒸発させた。得られた残留物をn−ヘプタン(7mL)中に取り出した溶液に無水HCl(4eq、EtO中溶液)を−60℃でアルゴン雰囲気下に加えた。次いで反応混合物を室温に加温した。沈殿する固体を反応混合物から濾過によって単離し、EtOで洗浄して、R−VIIIa(0.33g、56%、92.5%ee)を白色固体として得た。
【0215】
実施例4c
3,3−ジメチル−1−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ブタン−1−アミン塩酸塩(VIIIb)の合成
【0216】
【化70】

アルゴン雰囲気下でLiHMDS(THF中1M、1.9mL、1.9mmol)の溶液をフラスコに入れ、−20℃に冷却した。R−またはS−VIb(0.47g、1.9mmol)を4mLの脱水THFに溶解し、−20℃でLiHMDSの溶液に加えた。混合物を−20℃で1時間撹拌した。反応混合物を室温に加温し、乾燥するまで蒸発させた。残留物を5mLのn−ヘプタンに溶解し、5mLのHOおよび2mLのNaCl飽和水溶液で洗浄した。有機相をMgSOで脱水し、濾過して乾燥するまで蒸発させた。得られた残留物をn−ヘプタン(5mL)中に取り出した溶液に無水HCl(4eq、EtO中溶液)を−60℃でアルゴン雰囲気下に加えた。次いで反応混合物を室温に加温した。沈殿する固体を反応混合物から濾過によって単離し、EtOで洗浄して、S−またはR−VIIIb(0.25g、50%)を白色固体として得た。
H NMR(CDCl):δ(ppm)=0.98(s,9H)、1.32(s,12H)、1.73−1.88(m,2H)、2.88(m,1H)、8.18(s,3H)。
13C NMR(CDCl):δ(ppm)=24.8,25.0,29.7,30.5,43.8,85.0。
【0217】
実施例4d
1−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ペンタン−1−アミン塩酸塩(VIIIc)の合成
【0218】
【化71】

アルゴン雰囲気下でLiHMDS(THF中1M、1.9mL、1.9mmol)の溶液をフラスコに入れ、−20℃に冷却した。R−またはS−VIc(0.47g、1.9mmol)を4mLの脱水THFに溶解し、−20℃でLiHMDSの溶液に加えた。混合物を−20℃で1時間撹拌した。反応混合物を室温に加温し、乾燥するまで蒸発させた。残留物を5mLのn−ヘプタンに溶解し、5mLのHOおよび2mLのNaCl飽和水溶液で洗浄した。有機相をMgSOで脱水し、濾過して乾燥するまで蒸発させた。得られた残留物をn−ヘプタン(5mL)中に取り出した溶液に無水HCl(4eq、EtO中溶液)を−60℃でアルゴン雰囲気下に加えた。次いで反応混合物を室温に加温した。沈殿する固体を反応混合物から濾過によって単離し、EtOで洗浄して、S−またはR−VIIIc(0.25g、50%)を白色固体として得た。
H NMR(CDCl):δ(ppm)=0.88(t,3H)、1.29(s,12H)、1.31−1.55(m,4H)、1.77−1.90(m,2H)、2.84−2.94(m,1H)、8.16(s,3H)。
13C NMR(CDCl):δ(ppm)=13.8,22.3,24.6,24.9,28.5,29.2,37.5,85.0。
【0219】
実施例4e
2−フェニル−1−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)エタンアミン塩酸塩(VIIId)の合成
【0220】
【化72】

アルゴン雰囲気下でLiHMDS(THF中1M、2.36mL、2.36mmol)の溶液をフラスコに入れ、−20℃に冷却した。R−またはS−VId(0.6g、2.36mmol)を5mLの脱水THFに溶解し、−20℃でLiHMDSの溶液に加えた。混合物を−20℃で1時間撹拌した。反応混合物を室温に加温し、乾燥するまで蒸発させた。残留物を5mLのn−ヘプタンに溶解し、5mLのHOおよび2mLのNaCl飽和水溶液で洗浄した。有機相をMgSOで脱水し、濾過して乾燥するまで蒸発させた。得られた残留物をn−ヘプタン(5mL)中に取り出した溶液に無水HCl(4eq、EtO中溶液)を−60℃でアルゴン雰囲気下に加えた。次いで反応混合物を室温に加温した。沈殿する固体を反応混合物から濾過によって単離し、EtOで洗浄して、S−またはR−VIIId(0.33g、50%)を白色固体として得た。
H NMR(CDCl):δ(ppm)=1.24(s,12H)、3.24(s,3H)、7.21−7.41(m,5H)、8.22(s,3H)。
13C NMR(CDCl):δ(ppm)=24.7,24.9,35.4,85.2,105.0,127.2,128.7,129.6,136.4。
【0221】
実施例4f
2−(4−フルオロフェニル)−1−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)エタンアミン塩酸塩(VIIIe)の合成
【0222】
【化73】

アルゴン雰囲気下でLiHMDS(THF中1M、2.36mL、2.36mmol)の溶液をフラスコに入れ、−20℃に冷却した。R−またはS−VIe(0.6g、2.36mmol)を5mLの脱水THFに溶解し、−20℃でLiHMDSの溶液に加えた。混合物を−20℃で1時間撹拌した。反応混合物を室温に加温し、乾燥するまで蒸発させた。残留物を5mLのn−ヘプタンに溶解し、5mLのHOおよび2mLのNaCl飽和水溶液で洗浄した。有機相をMgSOで脱水し、濾過して乾燥するまで蒸発させた。得られた残留物をn−ヘプタン(5mL)中に取り出した溶液に無水HCl(4eq、EtO中溶液)を−60℃でアルゴン雰囲気下に加えた。次いで反応混合物を室温に加温した。沈殿する固体を反応混合物から濾過によって単離し、EtOで洗浄して、S−またはR−VIIIe(0.33g、50%)を白色固体として得た。
H NMR(CDCl):δ(ppm)=1.29(s,12H)、3.15−3.28(m,3H)、7.0(t,2H)、7.37(t,2H)、8.19(s,3H)。
13C NMR(CDCl):δ(ppm)=24.7,24.9,85.33,115.4,115.7,131.2,131.3,132.2,160.9,163.3。
【0223】
実施例5a
触媒Catb−dの調製:適切なホスフィンリガンド(1.1eq)および金属前駆体(1.0eq)を脱水THF中、窒素雰囲気下に室温で30分撹拌する。溶媒を蒸発によって除去し、ヘキサン/CHCl(1/1)を用いるフラッシュカラムクロマトグラフィーによって固体を精製して、Catb−dを得る。
【0224】
実施例5b
触媒Cate−gは、Adv.Synth.Catal.2001、343巻、450−454頁に記載されたようにして調製することができる。凝縮器を取り付けた2口フラスコにキラルP,N−リガンド(Lig−1−Lig−3;2eq)、[Ir(cod)Cl](1eq)およびCHClを加える。混合物を窒素雰囲気下に1時間還流加熱する。混合物が室温に冷却された後、Na[BAr](3eq)、続いてHOを加え、得られる2相混合物を10分間激しく撹拌する。層を単離し、水層をCHClのさらなる部分(2×)で抽出する。有機抽出物を合わせてHOで洗浄し、蒸発させる。残留物をEtOH中に取り出し、HOをゆっくり加えることによって結晶化させて適切な触媒を得る。
【0225】
実施例5c
構造式
【0226】
【化74】

を有する触媒Catiを、スキーム11aに詳細を記載した合成シーケンスに従って調製した。市販のフェロセニルカルボン酸から出発し、Tetrahedron Asymmetry 1996、7巻、1419−1430頁およびJ.Org.Chem.1996、61巻、4937−4943頁に記載されたプロトコルに従って2つの段階(a、b)でオキサゾリン環を導入した。ジフェニルホスフィンの付加(段階c)も、上述の手順に従って行なった。対応するオキサゾリン(PL−4)からイミダゾリン環を構築するため、特許出願US2007/0244319 A1に記載された手順に従った。次いでIr錯体を、PfaltzによってP,N−Ir触媒の合成について記載された一般的プロトコル、Adv.Synth.Catal.2001、343巻、450−454頁に従って調製した。
【0227】
【化75】

a)(COCl)、CHCl、室温、2時間;その後(L)−(+)−バリノール、EtN、CHCl、室温、16時間、収率77%;b)TsCl、EtN、DMAP、CHCl、0℃で1.5時間その後室温で16時間、収率98%;c)TMEDA、BuLi、ヘキサン、−78℃、2時間;その後PhPCl、室温、15分、収率70%;d)(R,R)−DPEN、CHSOH、IPA、85℃、40時間、収率94%;e)[Ir(COD)Cl]、CHCl、50℃、1時間;その後NaBAr、HO、rt、15分、収率87%。
【0228】
Lig−5:前もって乾燥したシュレンク管で、窒素下にPL−4(1.0g、2.08mmol)および(R,R)−DPEN(2.2g、10.24mmol、5.0eq)を脱水IPA(25mL)に溶解した。メタンスルホン酸(202μL、3.12mmol、1.5eq)を加えて真空および窒素パージを7サイクル実施した。得られた溶液を85℃で40時間撹拌した。室温に冷却後、溶媒を真空で除去した。得られた粗生成物をEtOAc/ヘキサン(1/1)の混合物を用いたカラムクロマトグラフィーで精製した。Lig−5をオレンジ色固体として単離した(1.15g、1.96mmol、収率94%)。
H−NMR(CDCl,400MHz)δ=3.83(s,1H)、4.28(s,5H)、4.56(m,1H)、4.78(s,2H)、5.38(s,1H)、7.36(m,18H)、7.59(m,2H)ppm。
13C−NMR(CDCl,100MHz)δ=60.42,70.79,71.57,72.69,73.92,76.46(d,JC,P=10.1Hz)、127.14,128.39(d,JC,P=3.0Hz)、128.49(d,JC,P=6.0Hz)、128.62,129.61,132.51(d,Jc,p=18.1Hz)、135.09(d,JC,P=20.1Hz)、136.07(d,JC,P=8.0Hz)、138.18(d,JC,P=8.0Hz)、164.46ppm。
31P−NMR(CDCl,162MHz)δ=−20.17ppm。
【0229】
Cati:前もって乾燥したシュレンク管で、窒素下にLig−5(250mg、0.427mmol)および[Ir(COD)Cl](149mg、0.222mmol、0.52eq)を脱水CHCl(6mL)に溶解し、得られた溶液を50℃で1時間撹拌した。室温に冷却後、ナトリウムテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(567mg、0.640mmol、1.5eq)、続いて6mLの水を加え、得られた2相混合物を15分間激しく撹拌した。層を単離し、水相をCHClで抽出し、有機抽出物を合わせて真空で蒸発させた。得られた粗生成物をヘキサン/CHCl(1/1)を用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製して、Cati(650mg、0.371、収率87%)をオレンジ色固体として得た。
H−NMR(CDCl,400MHz)δ=1.28(m,2H)、1.55(m,1H)、2.02(m,3H)、2.29(m,1H)、2.41(m,1H)、2.73(m,1H)、3.14(m,1H)、4.43(d,J=4.0Hz,1H)、4.60(s,1H)、4.63(s,5H)、4.70(m,2H)、4.81(d,J=5.2Hz,1H)、4.86(t,J=2.4Hz,1H)、4.98(s,1H)、5.95(s,1H)、6.54(d,J=7.2Hz,2H)、7.07(t,J=7.2Hz,2H)、7.20(m,4H)、7.39(m,15H)、7.51(m,1H)、7.63(s,9H)ppm。
31P−NMR(CDCl,162MHz)δ=9.42ppm。
HRMS(+ESI)C4543FeIrNPの計算値:891.2107,実測値:891.2137。
【0230】
実施例5d
構造式
【0231】
【化76】

を有する触媒Catjを、触媒Cati(実施例5cに記載した通り)の合成に用いた共通の前駆体Lig−5から、最初にイミダゾリン環のNH基をベンゾイル基で保護し、次に対応するIr錯体を形成することによって調製した(スキーム11b)。
【0232】
【化77】

f)PhCOCl、EtN、CHCl、0℃、1時間、収率96%;e)[Ir(COD)Cl]、CHCl、50℃、1時間;その後NaBAr、HO、rt、15分、収率84%。
【0233】
Lig−6:前もって乾燥したシュレンク管で、窒素下にLig−5(350mg、0.597mmol)を脱水CHCl(7mL)に溶解し、次いで0℃に冷却した。トリエチルアミン(125μL、0.896mmol、1.5eq)および塩化ベンゾイル(76μL、0.657mmol、1.1eq)を加え、反応混合物を0℃で1時間撹拌した。溶媒を真空で除去することによって反応を完了させた。得られた粗生成物をEtOAc/ヘキサン(1/4)混合物を用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した。保護されたリガンドLig−6をオレンジ色固体として単離した(400mg、0.576、収率96%)。
H−NMR(CDCl,400MHz)δ=3.80(s,1H)、4.26(s,5H)、4.29(s,1H)、4.78(s,1H)、4.85(s,1H)、5.22(s,1H)、6.66(d,J=8.4Hz,2H)、6.96(t,J=7.6Hz,2H)、7.09(t,J=7.6Hz,1H)、7.20(t,J=7.2Hz,2H)、7.30(t,J=7.6Hz,2H)、7.41(m,7H)、7.54(m,9H)ppm。
31P−NMR(CDCl,162MHz)δ=−19.90ppm。
【0234】
Catj:前もって乾燥したシュレンク管で、窒素下にLig−6(400mg、0.576mmol)および[Ir(COD)Cl](201mg、0.299mmol、0.52eq)を脱水CHCl(7mL)に溶解し、得られた溶液を50℃で1時間撹拌した。室温に冷却後、ナトリウムテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(766mg、0.864mmol、1.5eq)、続いて7mLの水を加え、得られた2相混合物を15分間激しく撹拌した。層を単離し、水相をCHClで抽出し、有機抽出物を合わせて真空で蒸発させた。得られた粗生成物をヘキサン/CHCl(1/1)を用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製して、Catj(896mg、0.482、収率84%)を暗赤色固体として得た。
H−NMR(CDCl,400MHz)δ=1.40(m,2H)、1.76(m,1H)、2.07(m,1H)、2.31(m,4H)、3.08(m,1H)、3.43(m,1H)、4.38(m,1H)、4.67(s,5H)、4.70(m,1H)、4.85(m,2H)、4.89(s,1H)、4.92(t,J=3.2Hz,1H)、5.10(s,1H)、6.64(d,J=6.8Hz,2H)、7.14(m,4H)、7.27(m,2H)、7.32(m,1H)、7.43(m,1H)、7.53(m,15H)、7.67(m,2H)、7.75(s,10H)ppm。
31P−NMR(CDCl,162MHz)δ=9.71ppm。
HRMS(+ESI)C5247FeIrNPOの計算値:995.2438,実測値:995.2399。
【0235】
実施例6
カリウム2−(1−クロロ−3−メチルブタ−1−エニル)トリフルオロボレート(Va’)の合成
【0236】
【化78】

Va(2.3g、10mmol)のMeOH(50mL)溶液にKHF(20mL、2.8M)の水溶液を加えた。溶液を1.5時間撹拌し、真空で濃縮して残留物を残し、これを熱アセトン(70mL)に溶解した。得られた混合物を濾過し、濾液を真空で濃縮して粗生成物を得て、これをEtOで分解してVa’(1.2g、57%)を白色粉末として得た。
H NMR(CDOD):δ(ppm)=0.82(d,6H)、2.83−2.95(m,1H)、4.37(d,1H)。
13C NMR(CDOD):δ(ppm)=23.6,27.6,139.9。
【0237】
実施例7
カリウム2−(1−クロロ−3−メチルブチル)トリフルオロボレート(VIa’)の合成
【0238】
【化79】

VIa(1.5g、6.5mmol)のMeOH(35mL)溶液にKHF(13mL、2.8M)の水溶液を加えた。溶液を1.5時間撹拌し、真空で濃縮して残留物を残し、これを熱アセトン(50mL)に溶解した。得られた混合物を濾過し、濾液を真空で濃縮して粗生成物を得て、これをEtOで分解してVIa’(0.8g、60%)を白色粉末として得た。
H NMR(CDOD):δ(ppm)=1.0(dd,6H)、1.47(dt,1H)、1.76(dt,1H)、1.93−2.08(m,1H)、3.29(d,1H)。
13C NMR(CDOD):δ(ppm)=21.1,24.2,26.3,44.1。
【0239】
実施例8
テトラ−n−ブチルアンモニウム2−(1−クロロ−3−メチルブタ−1−エニル)トリフルオロボレート(Va’’)の合成
【0240】
【化80】

Va’(0.63g、3mmol)のMeOH(9mL)および水(9mL)溶液を0℃に冷却し、(n−Bu)NOHの溶液(2.2mL、3.3mmol)を5分でゆっくりと加えた。反応物を室温に加温して30分撹拌した。反応混合物をCHCl(20mL)で希釈し、層を単離した。水相をCHCl(3×20mL)で洗浄した。有機相を合わせてMgSOで脱水し、濾過して真空で濃縮してVa’’(1.2g)を得た。
H NMR(CDCl):δ(ppm)=0.88(d,6H)、0.96(t,12H)、1.30−1.40(m,8H)、1.47−1.58(m,8H)、2.95−3.05(m,1H)、3.10−3.20(m,8H)、5.52(d,1H)。
13C NMR(CDCl):δ(ppm)=13.5,19.5,23.67,23.7,28.14,28.16,58.2,58.3,141.3。
【0241】
実施例9
テトラ−n−ブチルアンモニウム2−(1−クロロ−3−メチルブチル)トリフルオロボレート(VIa’’)の合成
【0242】
【化81】

VIa’(0.73g、3.4mmol)のMeOH(10mL)および水(10mL)溶液を0℃に冷却し、(n−Bu)NOHの溶液(2.9mL、3.74mmol)を5分でゆっくりと加えた。反応物を室温に加温して30分撹拌した。反応混合物をCHCl(20mL)で希釈し、層を単離した。水相をCHCl(3×20mL)で洗浄した。有機相を合わせてMgSOで脱水し、濾過して真空で濃縮してVIa’’(1.2g)を得た。
H NMR(CDCl):δ(ppm)=0.85(dd,6H)、0.96(t,12H)、1.37−1.49(m,9H)、1.55−1.64(m,8H)、1.70(dt,1H)、2.95−3.05(m,1H)、3.10−3.20(m,9H)。
13C NMR(CDCl):δ(ppm)=13.5,19.5,20.6,23.7,25.2,43.2,58.4。
【0243】
実施例10
カリウム2−(1−クロロ−3−メチルブチル)トリフルオロボレート(VIa’)の合成
【0244】
【化82】

75mLのステンレススチール製オートクレーブに窒素を流入した。生成物Va’(5.0mmol)、(1,5−シクロオクタジエン)(ピリジン)(トリシクロヘキシルホスフィン)イリジウム(I)ヘキサフルオロホスフェート(0.1mmol)および脱水MeOH(30mL)を窒素雰囲気下でオートクレーブに素早く入れた。オートクレーブをシールし、最初に6barの窒素で3回、次いで6barの水素で3回、加圧/減圧した。混合物を10日間、50℃で10barの水素下に撹拌した。オートクレーブが室温まで冷却すれば、オートクレーブを注意深く減圧し、溶液を丸底フラスコに注いだ。溶媒を減圧で除去した。生成物VIa’をさらに精製せずに次の段階に繰り越した。
【0245】
実施例11
テトラ−n−アンモニウム3−メチル−1−(トリフルオロボレート)ブタン−1−アミン塩酸塩(VIIIa’’)の合成
【0246】
【化83】

アルゴン雰囲気下、−35℃でLiHMDS(THF中1M、3.8mmol)の脱水THF(8mL)溶液に、8mLの脱水THFに溶解したVIa**(3.8mmol)を加える。溶液を室温に加温して5時間撹拌する。反応混合物を乾燥するまで蒸発させる。残留物を10mLのTHFに溶解し、8mLのHOおよび4mLのNaCl飽和水溶液で洗浄する。有機相をMgSOで脱水し、濾過して乾燥するまで蒸発させる。得られる残留物をTHF(20mL)中に取り出した溶液に無水HCl(4eq、EtO中溶液)を−60℃でアルゴン雰囲気下に加える。次いで反応混合物を室温に加温する。沈殿する固体を反応混合物から濾過によって単離し、EtOで洗浄して、VIIIa’’を得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式VIの化合物
【化1】

[式中、Rは水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルであり、
およびRは互いに独立に置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、またはRおよびRは共同して5員から10員の縮合または非縮合環、場合によってキラルの5員から10員の縮合または非縮合環の一部を形成し、
XはCl、Br、I、OCOR’およびOSOR’からなる群から選択され、R’は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、および
はキラル中心を示す。]
を調製するための方法であって、
(i)式Vの化合物
【化2】

[式中、R、R、RおよびXは上で定義した通りである。]
を提供する段階および
(ii)水素添加によって前記式Vの化合物を式VIの化合物に変換する段階および
(iii)場合によって鏡像異性的に純粋な式VIの化合物を得るために鏡像異性分割を適用する段階
を含む方法。
【請求項2】
が水素でありまたは置換もしくは非置換直鎖C−Cアルキル、置換もしくは非置換分枝C−Cアルキルおよび置換もしくは非置換C−Cシクロアルキルからなる群から選択され、RおよびRが直鎖置換もしくは非置換C−Cアルキル、置換もしくは非置換分枝C−Cアルキルからなる群から選択され、またはRおよびRが5員から10員の縮合もしくは非縮合環、場合によってキラルな5員から10員の縮合もしくは非縮合環の一部を形成し、好ましくはRが非置換直鎖もしくは分枝C−Cアルキルであり、および/またはRおよびRが5員環の一部を形成し、より好ましくはRがイソプロピルであり、および/またはRおよびRが共同して4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロランを表す5員環の一部を形成し、および/または
XがCl、BrおよびIからなる群から選択されるハロゲンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水素添加が触媒の存在下で行なわれ、好ましくは前記触媒が均一系触媒反応のための触媒であり、および/または触媒が少なくとも1つの遷移金属を含む錯体から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
好ましくは前記錯体のリガンドが二重結合を有する種々の化合物および/または非共有電子対を含むO、N、SもしくはP化学種等の電子豊富な化学種を含む少なくとも1つのリガンドから選択され、より好ましくは、遷移金属触媒がリガンドおよび/または遷移金属原子にキラリティーを有し、またはキラリティーを有する遷移金属錯体がキラリティーを有する共触媒とともに遷移金属を含むアキラルな前駆触媒を用いることによってインサイチュで形成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
触媒が(S)−2−(1−(ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−2−メチルプロパン−2−イル)−4−tert−ブチル−4,5−ジヒドロオキサゾール;(S)−4−tert−ブチル−2−(2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル)−4,5−ジヒドロオキサゾール;(4S,5S)−4−(2−(ジシクロヘキシルホスフィノオキシ)−1,3−ジフェニルプロパン−2−イル)−5−メチル−2−フェニル−4,5−ジヒドロオキサゾール;(R,R)−P,N−フェロセンオキサゾリン;(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリン;ベンゾイル−(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリン;(R)−(+)−2,2’,6,6’−テトラメトキシ4,4’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,3’−ビピリジン;(S)−2,2’,6,6’−テトラメトキシ−ビス[ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−3,3’−ビピリジン;(R)−4,12−ビス(ジフェニルホスフィノ)−[2.2]−パラシクロファン;1−(S)−N−メチル−N−(ジフェニル−ホスフィノ)−1−[(R)−(ジフェニルホスフィノ)−フェロセニル]エチルアミン;(R)−2−(1−ナフチル)−8−ジフェニルホスフィノ−1−(S)−3,5−ジオキサ−4−ホスファシクロヘプタ[2,1−1;3,4−a’]ジ−ナフタレン−4−イル)−1,2−ジヒドロキノリントルエン生成物;(S)−(+)−4,12−ビス[ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−[2.2]パラシクロファン;(R)−2,2’−ビス(ジフェニル−ホスフィノアミノ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフチルから選択されるリガンドを含み、好ましくはリガンドは(S)−2−(1−(ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−2−メチルプロパン−2−イル)−4−tert−ブチル−4,5−ジヒドロ−オキサゾール;(S)−4−tert−ブチル−2−(2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル)−4,5−ジヒドロオキサゾール;(4S,5S)−4−(2−(ジシクロヘキシル−ホスフィノオキシ)−1,3−ジフェニルプロパン−2−イル)−5−メチル−2−フェニル−4,5−ジヒドロオキサゾール、(R,R)−P,N−フェロセンオキサゾリン、(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリンおよびベンゾイル−(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリンから選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
錯体中に含まれる遷移金属がCu、Co、Ni、Rh、Ru、PdおよびIrからなる群から選択され、好ましくはRh、Ru、PdおよびIrであり、より好ましくはRuおよびIrであり、特にIrである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
触媒が(1,5−シクロオクタジエン)(ピリジン)(トリシクロヘキシル−ホスフィン)イリジウム(I)ヘキサフルオロホスフェート、(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(S)−2−(1−(ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィノ)−2−メチルプロパン−2−イル)−4−tert−ブチル−4,5−ジヒドロオキサゾール;(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(S)−4−tert−ブチル−2−(2−(ジフェニルホスフィノ)フェニル)−4,5−ジヒドロ−オキサゾール;(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(4S, 5S)−4−(2−(ジシクロヘキシルホスフィノオキシ)−1,3−ジフェニルプロパン−2−イル)−5−メチル−2−フェニル−4,5−ジヒドロオキサゾール;(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロエチル)フェニル]ボレート(R,R)−P,N−フェロセンオキサゾリン;(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリンおよび(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラキス[3,5−ビス−(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートベンゾイル−(R,R)−P,N−フェロセンイミダゾリン、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ジイリジウム(I)ジクロリド(R)−(+)−2,2’,6,6’−テトラメトキシ−4,4’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−3,3’−ビピリジン;ビス(1,5−シクロオクタジエン)ジイリジウム(I)ジクロリド(S)−2,2’,6,6’−テトラメトキシ−ビス[ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−3,3’−ビピリジン;ビス(1,5−シクロオクタジエン)ジロジウム(I)ジクロリド(S)−2,2’,6,6’−テトラメトキシ−ビス[ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−3,3’−ビピリジン;ビス(シクロオクタ−1,5−ジエン)ロジウム(I)テトラフルオロボレート(R)−4,12−ビス(ジフェニルホスフィノ)−[2.2]−パラシクロファン;ベンゼンルテニウム(II)ジクロリドダイマー1−(S)−N−メチル−N−(ジフェニルホスフィノ)−1−[(R)−(ジフェニルホスフィノ)−フェロセニル]エチルアミンおよびビス(2−メチルアリル)(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II) (S)−(+)−4,12−ビス[ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−[2.2]パラシクロファンからなる群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
脱ハロゲン化が、水素添加の間本質的に避けられ、好ましくは脱ハロゲン化が式VIの化合物のモル量に対して10モル%未満、より好ましくは5モル%未満、最も好ましくは3モル%未満、特に1モル%未満で起こる、請求項3から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
式VIの化合物
【化3】

[式中、R、RおよびRは上で定義した通りであり、XはCl、Br、I、OCOR’およびOSOR’からなる群から選択され、R’は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表す。]
が、式VI’の化合物
【化4】

[式中、R、R、RおよびR’は上で定義した通りであり、X’はCl、Br、I、OCOR’およびOSOR’からなる群から選択され、
X’はXと同じではなく、
キラル中心**はキラル中心の反対の立体化学的配置を有する。]
に、S2型の求核置換を適用することによってさらに変換される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
式Vの化合物
【化5】

[式中、Rは水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルであり、
およびRは互いに独立に置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、またはRおよびRは共同して5員から10員の縮合または非縮合環、場合によってキラルの5員から10員の縮合または非縮合環の一部を形成し、および
XはCl、Br、I、OCOR’およびOSOR’からなる群から選択され、R’は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表す。]
が、式IIIの化合物
【化6】

[式中、R、RおよびRは上で定義した通りである。]
から、式IIIの化合物を式IVの化合物
【化7】

[式中、式IVの化合物のZrCpCl部分はハロゲン化反応によって、Cl、BrおよびIを含むXによって置換され、
上記で定義されるハロゲンは場合によって式Vの化合物にさらに変換される(XはOCOR’およびOSOR’からなる群から選択され、R’は上で定義されるものである。)。]
に変換するヒドロジルコノ化によって調製される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
式IIIの化合物
【化8】

[式中、Rは水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルであり、
およびRは互いに独立に置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、またはRおよびRは共同して5員から10員の縮合または非縮合環、場合によってキラルの5員から10員の縮合または非縮合環の一部を形成する。]
が、式IIの化合物
【化9】

[式中、Rは上で定義した通りである。]
から、式IIの化合物を式IXの化合物
【化10】

[式中、RおよびRは上で定義した通りであり、
は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、RはRおよび/またはRと同一でありまたは異なる基である。]
と溶媒の存在下で反応させ、続いて酸を加えることによって調製される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
式IIの化合物が式Iの化合物
【化11】

[式中、Rは水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルであり、
ZはCl、BrおよびIからなる群から選択され、好ましくはClである。]
から、有機金属強塩基を式Iの化合物の溶液に加えることによって調製され、
好ましくは前記有機金属強塩基が金属アミドおよびアルキルリチウム、好ましくはナトリウムアミド、カリウムアミド、リチウムアミド、リチウムジイソプロピルアミド、メチルリチウム、ブチルリチウム、ヘキシルリチウムおよびフェニルリチウムからなる群から選択され、より好ましくはブチルリチウム(BuLi)またはメチルリチウム、さらにより好ましくはBuLi、特にn−BuLiである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
式IXの化合物のRおよび/またはRがキラルであり、好ましくは式IXの化合物のRおよびRによって形成されるボロラン環がキラルであり、より好ましくは前記式IXのキラル化合物が鏡像異性的またはジアステレオマー的に純粋である、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
式VIの化合物
【化12】

[式中、R、RおよびRは上記で定義した通りであり、XはCl、Br、I、OCOR’およびOSOR’からなる群から選択され、R’は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、および
はキラル中心を示す。]
が、式VIIIの化合物
【化13】

[式中、R、R、RおよびR’は上記で定義した通りであり、
AはCl、Br、HSO、CHCOO、CFCOOおよびR’SOからなるアニオンの群から選択されるアニオンであり、R’はアルキルまたはアリールを表し、および
はキラル中心を示す。]またはその遊離アミン
に、
(i)式VIの化合物を式VIIの化合物
【化14】

[式中、R、RおよびRは上記で定義した通りであり、
PMはアミノ基保護部分であり、tert−ブタンスルフィニル(SO−t−Bu)、トシル(Ts)、p−ニトロベンゼンスルホニル(Ns)、カルボベンジルオキシ(Cbz)、t−ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンジル(Bn)、p−メトキシベンジル(MPM)、ジメトキシベンジル(Dmb)、p−ヒドロキシベンジル(HBn)、9−フェニルフルオレン−9−イル(Pf)、フルオレニル(Flu)、ジフェニルメチル(DPM)、フェロセニルメチル(Fcm)および4−メチルトリチル(Mtt)からなる群から選択され、x=1およびy=1であるか、またはPMはSiR’’であり、R’’はアルキルを表し、および、x=0およびy=2であり、および
はキラル中心を示す。]
に、式VIの化合物のXを保護されたアミノ基で置換することによって変換する段階および
(ii)式VIIの化合物を保護基の開裂に供して式VIIIの化合物を得る段階ならびに
(iii)場合によって鏡像異性的に純粋な式VIIIの化合物を得るために鏡像異性分割を適用する段階
を含む方法によってさらに変換される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
式IVの化合物
【化15】

または式Vの化合物
【化16】

[式中、Rは水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルであり、
およびRは互いに独立に置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、またはRおよびRは共同して5員から10員の縮合または非縮合環、場合によってキラルの5員から10員の縮合または非縮合環の一部を形成し、および
式V’の化合物のXはCl、Br、I、OCOR’およびOSOR’からなる群から選択され、R’は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、
但し、式IVの化合物においてRはt−Buまたはn−Buを意味せず、および
式Vの化合物においてXがCl、Br、Iの場合、Rはt−Buを意味しない。]。
【請求項16】
が水素、置換もしくは非置換直鎖C−Cアルキル、置換もしくは非置換分枝C−Cアルキルおよび置換もしくは非置換C−Cシクロアルキルからなる群から選択され、RおよびRが直鎖置換もしくは非置換C−Cアルキル、置換もしくは非置換分枝C−Cアルキルからなる群から選択され、またはRおよびRが5員から10員の縮合または非縮合環、場合によってキラルの5員から10員の縮合または非縮合環の一部を形成し、好ましくはRは非置換直鎖もしくは分枝C−Cアルキルであり、および/またはRおよびRは5員環の一部を形成し、より好ましくはRはイソプロピル、t−Bu、n−プロピル、フェニル、4−フルオロフェニルであり、および/またはRおよびRは共同して4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロランを表す5員環の一部を形成する、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
式XのN−末端ペプチジルボロン酸誘導体
【化17】

[式中、Rは水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルであり、
およびRは互いに独立に置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、またはRおよびRは共同して5員から10員の縮合または非縮合環、場合によってキラルの5員から10員の縮合または非縮合環の一部を形成し、および
ペプチドは場合によってアシル化された末端アミノ基を有するペプチド結合によって互いに連結された1−6個のアミノ酸を含み、および
キラル中心はその(R)または(S)配置にある。]
またはその遊離酸もしくはエステルもしくは酸無水物もしくは塩を製造するための方法であって、
(i)請求項1から10のいずれか一項に記載の方法によって調製される式VIの化合物を準備する段階、
(ii)請求項14に記載の方法によって前記式VIの化合物を式VIIIの化合物に変換する段階、
(iii)場合によって鏡像異性分割によって鏡像異性的に純粋な式VIIIの化合物を得る段階および
(iv)前記式VIIIの化合物を式XのN−末端ペプチジルボロン酸誘導体またはその遊離酸もしくはエステルもしくは酸無水物もしくは塩に変換する段階
を含む方法。
【請求項18】
(i)請求項1から10のいずれか一項に記載の方法によって調製される式VIの化合物を準備する段階、
(ii)請求項14に記載の方法によって前記式VIの化合物を式VIIIの化合物に変換する段階、
(iii)場合によって鏡像異性分割によって鏡像異性的に純粋な式VIIIの化合物を得る段階および
(iv)前記式VIIIの化合物をボルテゾミブまたはそのエステルもしくは酸無水物もしくは塩に変換する段階
を含む、ボルテゾミブ(N−(ピラジン−2−イル)カルボニル−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸)またはそのエステルもしくは酸無水物もしくは塩を製造するための方法。
【請求項19】
(i)請求項17に従って式XのN−末端ペプチジルボロン酸誘導体またはその遊離酸もしくはエステルもしくは酸無水物もしくは塩を調製する段階および
(ii)前記式XのN−末端ペプチジルボロン酸誘導体またはその遊離酸もしくはエステルもしくは酸無水物もしくは塩を少なくとも1つの賦形剤と混合する段階
を含む、医薬組成物を製造するための方法。
【請求項20】
(i)請求項18に従ってボルテゾミブ(N−(ピラジン−2−イル)カルボニル−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸)またはそのエステルもしくは酸無水物もしくは塩を調製する段階および
(ii)前記ボルテゾミブを少なくとも1つの添加剤と混合する段階
を含む、医薬組成物を製造するための方法。
【請求項21】
式IVの化合物
【化18】

または式Vの化合物
【化19】

[式中、Rは水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルであり、
およびRは互いに独立に置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、またはRおよびRは共同して5員から10員の縮合または非縮合環、場合によってキラルの5員から10員の縮合または非縮合環の一部を形成し、および
式V’の化合物のXはCl、Br、I、OCOR’およびOSOR’からなる群から選択され、R’は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、
但し、式IVの化合物においてRはt−Buまたはn−Buを意味せず、および
式Vの化合物においてXがCl、Br、Iの場合、Rはt−Buを意味しない。]
の、式VIIIの化合物
【化20】

[式中、R、RおよびRは上記で定義した通りであり、AはCl、Br、HSO、CHCOO、CFCOOおよびR’SOからなるアニオンの群から選択されるアニオンであり、R’は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、はキラル中心を示す。]またはその遊離アミン
の調製のための方法
および/または式XのN−末端ペプチジルボロン酸誘導体またはその遊離酸もしくはエステルもしくは酸無水物もしくは薬学的に許容される塩、好ましくはボルテゾミブまたはそのエステルもしくは酸無水物もしくは薬学的に許容される塩の調製のための方法
における使用。
【請求項22】
が水素、置換もしくは非置換直鎖C−Cアルキル、置換もしくは非置換分枝C−Cアルキルおよび置換もしくは非置換C−Cシクロアルキルからなる群から選択され、RおよびRが直鎖置換もしくは非置換C−Cアルキル、置換もしくは非置換分枝C−Cアルキルからなる群から選択され、またはRおよびRが5員から10員の縮合または非縮合環、場合によってキラルの5員から10員の縮合または非縮合環の一部を形成し、好ましくはRが非置換直鎖もしくは分枝C−Cアルキルであり、および/またはRおよびRが5員環の一部を形成し、より好ましくはRがイソプロピル、t−Bu、n−プロピル、フェニル、4−フルオロフェニルであり、および/またはRおよびRが共同して4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロランを表す5員環の一部を形成する、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
式VIの化合物
【化21】

[式中、Rは水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルであり、および
XはCl、Br、I、OCOR’およびOSOR’からなる群から選択され、R’は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、
YはLi、Na、Cs、Kおよびテトラアルキルアンモニウムカチオン、好ましくはKおよび(n−Bu)からなる群から選択されるカチオンであり、および
はキラル中心を示す。]
を調製するための、
(i)式Vの化合物
【化22】

[式中、RおよびXは上記で定義した通りであり、
およびRは互いに独立に置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、またはRおよびRは共同して5員から10員の縮合または非縮合環、場合によってキラルの5員から10員の縮合または非縮合環の一部を形成し、および
はキラル中心を示す。]
を準備する段階、
(ii)前記式Vの化合物を式Vの化合物
【化23】

[式中、RおよびXは上記で定義した通りであり、YはLi、Na、Cs、Kおよびテトラアルキルアンモニウムカチオン、好ましくはKおよび(n−Bu)からなる群から選択されるカチオンである。]
に、
化合物Vをアルカリ金属フッ化水素、好ましくはフッ化水素カリウムの水溶液と接触させ、場合によってこのようにして得られたアルカリ金属塩を(アルキル)NOH、好ましくは(n−Bu)NOHの溶液と接触させることによってそれぞれのテトラアルキルアンモニウム誘導体に変換することによって変換する段階、および
(iii)前記式Vの化合物を水素添加によって式VIの化合物に変換する段階
を含む方法。
【請求項24】
式VIの化合物
【化24】

[式中、R、RおよびRは上記で定義した通りであり、XはCl、Br、I、OCOR’およびOSOR’からなる群から選択され、R’は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、および
はキラル中心を示す。]
が、式VIの化合物
【化25】

[式中、RおよびXは上記で定義した通りであり、YはLi、Na、Cs、Kおよびテトラアルキルアンモニウムカチオン、好ましくはKおよび(n−Bu)からなる群から選択されるカチオンである。]
に、
化合物VIをアルカリ金属フッ化水素、好ましくはフッ化水素カリウムの水溶液と接触させ、場合によってこのようにして得られたアルカリ金属塩を(アルキル)NOH、好ましくは(n−Bu)NOHの溶液と接触させることによってそれぞれのテトラアルキルアンモニウム誘導体に変換することによって、さらに変換される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
式VIの化合物
【化26】

[式中、R、R、RおよびR’は上記で定義した通りであり、およびXはCl、Br、I、OCOR’およびOSOR’からなる群から選択され、YはLi、Na、Cs、Kおよびテトラアルキルアンモニウムカチオン、好ましくはKおよび(n−Bu)からなる群から選択されるカチオンであり、およびはキラル中心を示す。]
が、式VIIIの化合物
【化27】

[式中、RおよびYは上記で定義した通りであり、および
AはCl、Br、HSO、CHCOO、CFCOOおよびR’SOからなるアニオンの群から選択されるアニオンであり、R’はアルキルまたはアリールを表し、および
はキラル中心を示す。]
に、
(i)式VIの化合物を式VIIの化合物
【化28】

[式中、RおよびYは上記で定義した通りであり、および
PMはアミノ基保護部分であり、tert−ブタンスルフィニル(SO−t−Bu)、トシル(Ts)、p−ニトロベンゼンスルホニル(Ns)、カルボベンジルオキシ(Cbz)、t−ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンジル(Bn)、p−メトキシベンジル(MPM)、ジメトキシベンジル(Dmb)、p−ヒドロキシベンジル(HBn)、9−フェニルフルオレン−9−イル(Pf)、フルオレニル(Flu)、ジフェニルメチル(DPM)、フェロセニルメチル(Fcm)および4−メチルトリチル(Mtt)からなる群から選択され、およびx=1およびy=1であるか、またはPMはSiR’’であり、R’’はアルキルを表し、およびx=0およびy=2であり、および
はキラル中心を示す。]
に、式VIの化合物のXを保護されたアミノ基で置換することによって変換する段階および
(ii)式VIIの化合物を保護基の開裂に供して式VIIIの化合物を得る段階および
(iii)場合によって鏡像異性的に純粋な式VIIIの化合物を得るために鏡像異性分割を適用する段階
を含む方法によってさらに変換される、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
式Vの化合物
【化29】

[式中、Rは水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルであり、
XはCl、Br、I、OCOR’およびOSOR’からなる群から選択され、R’は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、
YはLi、Na、Cs、Kおよびテトラアルキルアンモニウムカチオン、好ましくはKおよび(n−Bu)からなる群から選択されるカチオンであり、および
はキラル中心を示す。]。
【請求項27】
式Vの化合物
【化30】

[式中、Rは水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルであり、
XはCl、Br、I、OCOR’およびOSOR’からなる群から選択され、R’は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、
YはLi、Na、Cs、Kおよびテトラアルキルアンモニウムカチオン、好ましくはKおよび(n−Bu)からなる群から選択されるカチオンであり、および
はキラル中心を示す。]
の、
式VIIIの化合物
【化31】

[式中、RおよびYは上記で定義した通りであり、
AはCl、Br、HSO、CHCOO、CFCOOおよびR’SOからなるアニオンの群から選択されるアニオンであり、R’は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、
はキラル中心を示す。]またはその遊離アミン
の調製のための方法
および/または薬学的に活性な化合物の調製のための方法
における使用。
【請求項28】
式XVIIの化合物
【化32】

[式中、Rは水素、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルであり、
は水素またはアルキルであり、
は水素、−R’または−CO−R’であり、R’は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換アリールまたは置換もしくは非置換アラルキルを表し、
Arは置換もしくは非置換アリールであり、および
はキラル中心を示す。]
を製造するための、
(i)請求項1から10のいずれか一項に記載の方法によって調製される式VIの化合物または請求項23もしくは24に記載の方法によって調製される式VIの化合物を準備する段階、
(ii)請求項14に記載の方法によって前記式VIの化合物を式VIIIの化合物またはその遊離塩基に変換する段階または請求項25に記載の方法によって前記式VIの化合物を式VIIIの化合物またはその遊離塩基に変換する段階および
(iii)前記式VIIIもしくはVIIIの化合物またはその遊離塩基を、式XVIIIの化合物
【化33】

[式中、Arは上記で定義した通りであり、X’’はCl、Br、Iである。]
とのSuzuki−Miyauraクロスカップリング反応によって式XVIIの化合物に変換する段階
を含む方法。

【公表番号】特表2012−530115(P2012−530115A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515515(P2012−515515)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/058666
【国際公開番号】WO2010/146172
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(504359293)レツク・フアーマシユーテイカルズ・デー・デー (60)
【Fターム(参考)】