説明

置換イミダゾール誘導体を含む改良された製剤

一般式(1)の置換イミダゾール誘導体、[式中、Yは-CH2-または-CO-であり、R1はH、ハロゲンまたはヒドロキシであり、R2はHまたはハロゲンであり、R3はHまたは低級アルキル(たとえばC1〜C4アルキル、好ましくはC1またはC2アルキル)である]、または一般式(I)の化合物の薬剤として許容される塩、たとえば塩酸塩などの酸付加塩を含む、改良された製剤は胃前吸収に適した固形の急速分散性剤形の形である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置換イミダゾール誘導体を含む改良された製剤に関し、さらに詳細には、置換イミダゾール誘導体が、次の一般式(I)のもの、
【0002】
【化1】

【0003】
[式中、Yは-CH2-または-CO-であり、R1は、H、ハロゲンまたはヒドロキシであり、R2はHまたはハロゲンであり、R3はHまたは低級アルキル(たとえばC1〜C4アルキル、好ましくはC1またはC2アルキル)である]、または一般式(I)の化合物の薬剤として許容可能な塩、たとえば塩酸塩などの塩酸付加塩である、改良された製剤に関する。
【背景技術】
【0004】
上に述べた式(I)の化合物類およびそれらの塩は、選択性が高くかつ長時間作用するα2-アドレノセプター拮抗薬であり、認知障害の治療において特に価値がある。式(I)の化合物およびその調製法は、欧州特許EP-A-0618906号に記載されている。そうした化合物の具体例は、4-(2-エチル-5-フルオロ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-2-イル)-1H-イミダゾール、および4-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロ-1-インデン-2-イル)-1H-イミダゾールである。
【0005】
式(I)の化合物類およびそれらの塩は、それなりに良い性質をもっているが、従来の経口投与すなわち前記化合物を胃の中へ投与する通常の経路用に製剤された場合には欠点がある。これらの化合物は胃腸領域内でかなり急速に分解し、そのため問題の化合物の効果が大幅に低下することが分っている。
【0006】
アチパメゾール(Atipamezole)(4-[1-(2,3-ジメチルフェニル)エチル]-1H-イミダゾールモノ塩酸塩)は、α2-アドレノセプター拮抗薬であり、本発明の化合物(I)の一例であるが、口腔内へのスプレーで投与すると経口投与に較べて生物学的利用能が高まることが示されている(R. Huupponenら、Clin. Pharmacol. Ther.、1995年、58巻506〜511頁)。吸収は、投与量に比例しないことが見出され(投与量を増加するにつれて相対的な吸収量は減少する)、また塗布部位に白斑や痺れなどの一時的な有害反応が観察された。
【特許文献1】欧州特許EP-A-0618906号明細書
【特許文献2】米国特許第4855326号明細書
【特許文献3】米国特許第5120549号明細書
【特許文献4】米国特許第5079018号明細書
【特許文献5】国際出願公開WO 93/12769号パンフレット
【特許文献6】米国特許第5298261号明細書
【特許文献7】国際出願公開WO 91/04757号パンフレット
【特許文献8】国際出願公開WO 00/67694号パンフレット
【特許文献9】欧州特許第0974365号明細書
【特許文献10】米国特許第6375982号明細書
【特許文献11】国際特許公開WO 01/19336号パンフレット
【特許文献12】欧州特許出願第0914818号明細書
【特許文献13】米国特許第6284270号明細書
【特許文献14】米国特許第6316026号明細書
【特許文献15】国際出願公開WO 03/030881号パンフレット
【特許文献16】米国特許第6552024号明細書
【特許文献17】米国特許第5948430号明細書
【特許文献18】英国特許第1548022号明細書
【非特許文献1】R. Huupponen ら、Clin. Pharmacol. Ther.、1995年、58巻506〜511頁
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
上に述べた問題は、式(I)の化合物を、口内粘膜を通じて、あるいはそうでなければ胃前吸収されるように、急速に分散する固形剤形に製剤することによって避けられることが発見された。
【0008】
本発明によれば、有効成分として次の一般式(I):
【0009】
【化2】

【0010】
[上式で、Yは-CH2-または-CO-であり、R1はH、ハロゲンまたはヒドロキシであり、R2はHまたはハロゲンであり、R3はHまたは低級アルキル(たとえばC1〜C4アルキル、好ましくはC1またはC2アルキル)である] の置換イミダゾール誘導体、または一般式(I)の化合物の薬剤として許容可能な塩、たとえば塩酸塩などの塩酸付加塩、を含み、有効成分の胃前吸収を促進するための急速分散性の固形剤形が提供される。
【0011】
「胃前吸収」という用語は、胃より前の消化管の部分での有効成分の吸収を指すために用いられ、頬、舌下、咽頭、および食道での吸収を含む。
【0012】
そうした胃前吸収は、主として口腔粘膜、咽頭、および食道の粘膜中で起こるものと認識されている。したがって、本発明の組成物は、有効成分が頬、舌下、咽頭および/または食道の粘膜と接触した状態を持続させる形態であることが好ましい。
【0013】
急速分散性剤形の一例が米国特許第4855326号に記載されている。この例では糖などの溶融紡糸可能な担体を有効成分と混合し、得られた混合物を紡糸して「綿菓子」状の調製品とする。次いで、紡糸された「綿菓子」状の生成物を圧縮して、急速分散性で高度に多孔性の固形剤形にする。
【0014】
米国特許第5120549号は、まず第1の溶媒中に分散させたマトリックスを形成する系を固化させ、続いて固化したマトリックスを、第1の溶媒と基本的に混和性がある第2の溶媒と、第1の溶媒の固化点より低い温度で接触させることによって調製される、急速分散マトリックス系を開示している。マトリックスを形成する成分および有効成分は第2の溶媒にはほとんど不溶であり、第1の溶媒がほぼ除去されて急速分散性のマトリックスが生ずる。
【0015】
米国特許第5079018号は、水溶性で水和可能なゲルまたは発泡性材料を水で水和させ、水和した状態で硬化剤を用いて硬化させ、液体の有機溶媒を用いて約0℃以下の温度で脱水して、水和液体の場所に空間を残した多孔質の骨格構造を含む、急速分散性剤形を開示している。
【0016】
国際出願公開WO 93/12769号(PCT/JP93/01631)は、マトリックス形成成分および有効成分を含む水系を寒天を用いてゲル化させ、次いで強制空気乾燥または真空乾燥によって水を除去することによって形成した非常に低密度の急速分散性剤形を記載している。
【0017】
米国特許第5298261号は、マトリックスの崩壊温度より高い温度で真空乾燥した、部分的に崩壊したマトリックス網目構造を含む急速分散性剤形を開示している。ただし、このマトリックスは、好ましくはマトリックスの平衡凍結温度より低い温度で少なくとも部分的に乾燥される。
【0018】
国際出願公開WO 91/04757号(PCT/US90/05206)は、唾液と接触すると発泡して、剤形の急速な崩壊および有効成分の口腔内での分散をもたらすように設計された発泡性崩壊剤を含む、急速分散性剤形を開示している。
【0019】
国際特許出願公開WO 00/67694号は、生体溶解性(biodissolvable)担体を含む液体を出口に供給し、出口と支持体表面の間に電場を確立して出口から出る液体に生体吸収性担体の少なくとも1本の繊維または複数の微小繊維を形成させ、この繊維または小繊維を前記表面に沈着させて繊維の網またはマットを形成し、この網またはマットを複数の個別の小片に分割し、少なくとも1種の有効成分を小片の内部および/または周囲に組み込むことによって作成される、急速分散性剤形を開示している。有効成分は、生体溶解性担体を含む液体中に組み込んでもよく、あるいは繊維もしくは小繊維、マットもしくは網および/または個々の小片の表面に(たとえばスプレーによって)塗布してもよい。
【0020】
先に記述した急速分散性剤形の例は、決して網羅的なものではなくて、急速な分散または崩壊が可能なかなりの数の剤形も、こうした投与システム開発の当業者には公知だろう。上述のようなかかるシステムは、直接圧縮、錠剤化、または凍結乾燥技術に基づいており、他に「薄膜」またはウエハ技術に基づくものもある。
【0021】
直接圧縮、錠剤化、または凍結乾燥に基づく急速分散性または急速溶解性剤形の他の例には次のようなものがあるが、それだけには限定されない。Antares Pharma社のEasy Tec(商標)錠剤は、欧州特許第0974365号に記載され、この特許ではアクリル系ポリマーが錠剤の急速崩壊剤として用いられており、Capricon Pharma社の急速溶融成型錠剤は、新規な半固体の成型組成物を記述した米国特許第6375982号に記載されており、CLL Pharma社のFastOral(商標)錠剤は、緩やかに圧縮可能な希釈剤に基づく急速崩壊性錠剤を詳述した国際特許出願WO 01/19336号に記載されており、Eurand社のAdva Tab(商標)急速崩壊性錠剤は、平均粒径30μm以下の糖アルコールまたは糖、および崩壊剤に基づく錠剤を詳述した欧州特許出願第0914818号に記載され、KV Pharmaceutical CompanyのOraquick(商標)急速溶解性送達システムは、水なしで用いる急速崩壊性錠剤を詳述した米国特許第6284270号に記載されており、Sato Pharmaceutical社のSATAB技術は、口中で急速崩壊する錠剤をもたらすことのできる処方および製法を詳述した米国特許第6316026号に記載されている。
【0022】
さらに他の急速分散性または急速溶解性の薬物送達システムの例は、「薄膜」技術に基づくものである。それには次のようなものがあるが、それだけには限定されない。Kosmos Pharma 社のFDTAB(商標)膜は、グルカンおよび水溶性ポリマーを含む膜状組成物の形の摂取可能な水溶性送達システムを記述した国際特許出願WO 03/030881号に記載されており、Lavipharm LaboratoriesのQuickDis(商標)薬物送達システムは、水溶性のハイドロコロイド、有効投与量の有効成分、および粘膜接着向上剤を含む粘膜表面被覆膜投与単位を詳述した米国特許第6552024号に記載されており、LTS Lohmann社のBuccal wafersは、経口投与用で瞬時湿潤性を有する水溶性ポリマーを含む水溶性膜を記述した米国特許第5948430号に記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
したがって、「急速分散性剤形」という用語は、先行する諸段で記述したすべてのタイプの剤形を包含する。しかし、英国特許第1548022号に記載されているタイプの急速分散性剤形であり、すなわち有効成分および有効成分に対して不活性な水溶性または水分散性担体の固形急速分散性網目構造が特に好ましく、この網目構造は、固体状態の組成物から溶媒を昇華させることによって得られ、この組成物は有効成分と担体の溶媒中溶液とを含む。
【0024】
本発明の組成物は、口腔内に置かれて10秒以内、特に8秒未満で崩壊することが好ましい。
【0025】
上述の好ましいタイプの急速分散性剤形の場合、組成物は好ましくは有効成分に加えてマトリックス形成剤および副次成分を含む。本発明で使用するのに適するマトリックス形成剤には、ゼラチン、デキストリン、および大豆、小麦、アメリカオオバコ種子のタンパクなどの動物性または植物性タンパクから得られる材料;アカシアゴム、グアー、寒天、キサンタンなどのガム類;多糖類;アルギン酸塩;カルボキシメチルセルロース;カラギーナン;デキストラン;ペクチン;ポリビニルピロリドンなどの合成ポリマー;ならびにゼラチン-アカシアゴム複合体などのポリペプチド/タンパクまたは多糖類複合体が含まれる。ゼラチン、特に魚ゼラチンの使用が好ましい。
【0026】
本発明で使用するのに適するその他のマトリックス形成剤には、マンニトール、デキストロース、乳糖、ガラクトース、トレハロースなどの糖類;シクロデキストリンなどの環状糖(ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンなどの環状糖誘導体を含む);リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ケイ酸アルミニウムなどの無機塩;およびL-グリシン、L-アラニン、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、L-ヒドロキシプロリン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-フェニルアラニンなど炭素原子2〜12個のアミノ酸が含まれる。グリシンを、特にマンニトールと組み合わせて使用することが好ましい。
【0027】
固化させる前の溶液あるいは懸濁液に1種または2種以上のマトリックス形成剤を組み込むことができる。マトリックス形成剤は界面活性剤に加えて存在してもよく、あるいは界面活性剤なしでもよい。マトリックス形成剤は、マトリックスを形成するだけではなく、溶液または懸濁液中における有効成分の分散を維持する助けになることもある。これは、特に有効成分が十分に水溶性でなく、したがって溶解ではなく懸濁させなければならない場合に役に立つ。
【0028】
保存料、酸化防止剤、界面活性剤、増粘剤、着色料、香料、甘味料、味マスキング剤などの副次成分もこの組成物に組み込むことができる。適切な着色料には赤、黒、および黄色の鉄酸化物、ならびにFD & C青2号、FD & C赤40号などのFD & C(米国食品医薬品局認可)色素が含まれ、Ellis & Everard社から入手できる。適切な香料には、ミント、ラズベリー、リコリス、オレンジ、レモン、グレープフルーツ、カラメル、バニラ、チェリーおよびグレープ香料ならびにこれらの組合せが含まれる。適切な甘味料には、アスパルテーム、アセスルファムKおよびタウマチンが含まれる。適切な味マスキング剤には重炭酸ナトリウム、イオン交換樹脂、シクロデキストリン包接化合物、吸着質またはマイクロカプセル化した有効成分が含まれる。
【0029】
水酸化ナトリウムなどのpH調節剤は、固形剤形を調製する間に望ましくない有効成分の沈殿や凝集の原因となり得るので、含まないことが好ましい。固形剤形に組み込むためには式(I)の化合物の酸付加塩、特に塩酸塩が好ましい。
【0030】
前記の一般式(I)において、
R1は、好ましくはハロゲン、より好ましくはフルオロ、最も好ましくは5-フルオロであり、
R2は、好ましくはHであり、
R3は、好ましくはエチルであり、
Yは、好ましくは-CH2-である。
【0031】
次に以下の実施例において本発明をさらに詳細に説明する。
【0032】
下記の表1に示す組成の液体製剤(量はすべて重量%)は、精製水に魚ゼラチンを徐々に加え十分な時間をかけて溶解させることによって作成した。その間、以下に述べる投与段階までおよび投与段階中も含めて工程中ずっと撹拌を続けた。魚ゼラチンが完全に溶解した後、マンニトールを加え溶解させた。続いて、グリシンを加え(該当する場合)溶解させた。次に、ミント香味料および甘味料を加えた。これらが十分に分散した後、本発明の化合物の一例である有効成分フィパメゾール(Fipamezole)を加えて最終溶液を得た。
【0033】
【表1】

【0034】
上記で調製した溶液を、前もって成型した必要な投与量(20mgおよび40mgなど様々、製剤実施例6および7の場合は10mgおよび30mg)の多層ブリスターパックに注入した。上記の組成を用いて80mgの剤形も作成した(データは示さず)。注入後、満たされたブリスターパックを液体窒素の凍結トンネルに通して凍結品を得た。凍結品は直ちに-25℃(±5℃)の一時貯蔵庫に入れて凍結乾燥するまでのあいだ置いた。続いて注入溶液を温度+20℃、チャンバ圧力0.5ミリバールで凍結乾燥した。凍結乾燥後、紙-フォイル複合材の蓋を用いて最終乾燥品をブリスターパック内に封入した。
【0035】
実施例4を他の実施例、特に実施例2と比較すると、グリシンの存在が固形急速分散性剤形の外観および構築された特性に対して有益な効果を持つことが注目された。実施例1、3、5、6、および7では主たる構造賦形剤(ゼラチンおよびマンニトール)の量を増したが、実施例2および4に比べて僅かな改善しか示さず、剤形をブリスターパックのポケットから取り出すときに残渣の薄い層が残った。
【0036】
崩壊試験によれば、この急速分散性錠剤の口腔内での崩壊時間は2〜3秒未満であり、パッケージされた錠剤は4週間貯蔵後も適度に安定であった。
【0037】
薬物動力学的研究
1. ヒトにおける口腔内投与と経口投与の比較
胃前経路によって吸収が改善されることが、フィパメゾールを溶液として経口投与した場合と口腔内スプレーとして投与した場合との比較によって実証された。
【0038】
プロトコールA(比較例)
健康な志願者(白人男性、年齢18〜35歳、体重60〜90kg)にフィパメゾールを投与量を増加させながら(0.5、1、3、9、18、30、60mg)溶液で経口投与した。各投与後に、薬物動力学的評価のために、間隔を置いて最長で24時間、血液サンプルを採取した。血漿中のフィパメゾールの濃度をHPLC-MS/MSで測定した。標準の安全性臨床検査、ECG(心電図)記録、血圧および心拍数測定ならびに有害事象の問診によって安全性と忍容性を評価した。
【0039】
薬物動力学は、Topfit 2.0薬物動力学プログラムによって評価した。Cmaxおよびtmaxは、濃度-時間曲線から読み取り、見かけの排出相半減期は曲線の半対数終端部から読み取った。AUC値は無限大に対する値と最終の測定可能データポイントまでの値の両方を計算した。この試験は平行群二重盲検プラセボ対照法で行った。
【0040】
フィパメゾールは安全であり忍容性も高いことが分った。その薬物動力学データを下記の表2に示す。表から、血漿のフィパメゾール濃度の到達ピークは、最大の60mg経口投与の後でも小さい(約2ng/ml)ことが分る。吸収の程度は投与量に比例せず、経口経路による代謝されないフィパメゾールの生物学的利用能は不満足なものであることを示唆している。
【0041】
【表2】

【0042】
プロトコールB(口腔内スプレー)
使用したプロトコールは、投与方法が口腔内スプレー(0.75、1.5、3、7.5、15、30、60、および90mg、一回投与)である点以外はほぼプロトコールAと同じであった。
【0043】
すべての投与量がよく忍容され、投与の後にしばしば見られた口腔の紅斑および白化以外に、他の有害な作用はなかった。薬物動力学データを表3に示す。
【0044】
【表3】

【0045】
表を見ると分るようにフィパメゾールは、投与量に従って口腔粘膜から全身の循環系内へ急速に吸収された。見かけの排出相半減期は、約1.2〜3.5時間の範囲であり、投与量が多くなるのに対応して時間が長くなった。フィパメゾールの投与量とCmax値およびAUC0-∞値との間には直線関係があった。
【0046】
2. イヌにおける急速分散性剤形の薬物動力学
この試験では、純粋種のビーグル犬(オス1匹およびメス1匹)にフィパメゾールを急速分散性錠剤(前記実施例3と同じ処方)(20mg/kg)として口腔経由で経口投与した。試験中(8日間、および試験前4日間)を通じて対象の生存能力、行動の変化、処置に対する反応および不健康状態について監視した。加えて、体重および食餌摂取量を記録した。血漿濃度分析(LC/MS/MS法)のために、投与の10、20、30、45分後および1、1.25、1.5、2、2.5、3、4、8時間後に血液を採取した。
【0047】
有害な臨床上の兆候はメスでは観察されなかった(オスは脈拍の上昇を示した)。おそらく頻繁な採血のために投与日の食餌摂取量は低かったが、体重に有害な影響はなかった。
【0048】
血漿濃度を時間に対してプロットしたグラフである図を参照すると、フィパメゾールは急速に吸収され、10分以内に血漿濃度のピークに達したことが分る。
【0049】
3. 口腔内スプレーと急速溶解性錠剤の比較
2組のヒトの被験者に30mgのフィパメゾールを一回投与することによって、口腔内スプレーと急速溶解性剤形を直接比較した。上記の口腔内スプレーに関する所見とは対照的に、急速溶解性剤形では口腔の紅斑や白化は観察されず、したがって後者は患者の服薬遵守の点で有利である。これらの結果を表4に示す。表4を見れば分るように、急速溶解性錠剤の方が平均最大血漿濃度(Cmax)はより低かったが、標準偏差(SD)および変動係数(CV%)もより低かった。この効果は追試(被験者12人)においても確認され、CmaxのSDは口腔内スプレーおよび急速溶解性剤形でそれぞれ26.2および13.5であった。このより低いSDおよびCV%は、急速溶解性錠剤によって投与すれば目標とするCmaxの制御がより易しいものであり、したがって急速溶解性錠剤が患者の安全性の点で有利であることを示唆している。
【0050】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として、一般式(I):
【化1】

[式中、Yは-CH2-または-CO-であり、R1はH、ハロゲンまたはヒドロキシであり、R2はHまたはハロゲンであり、R3はHまたは低級アルキル(たとえばC1〜C4アルキル、好ましくはC1またはC2アルキル)である]
の置換イミダゾール誘導体、または一般式(I)の化合物の薬剤として許容可能な塩、たとえば塩酸塩などの酸付加塩を含み、前記有効成分の胃前吸収を促進する、急速分散性の固形剤形。
【請求項2】
口腔内に置かれて10秒以内に崩壊するように製剤された、請求項1に記載の急速分散性固形剤形。
【請求項3】
前記有効成分および前記有効成分に対して不活性な水溶性または水分散性担体の網目構造を含み、前記網目構造は固体状態の組成物から溶媒を昇華させることによって得たものであり、前記組成物は前記有効成分と前記担体の溶媒中溶液とを含む、請求項1または2に記載の急速分散性固形剤形。
【請求項4】
1種以上のマトリックス形成剤を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の急速分散性固形剤形。
【請求項5】
前記マトリックス形成剤がゼラチンおよび糖のうち1種以上を含む、請求項4に記載の急速分散性固形剤形。
【請求項6】
前記マトリックス形成剤がゼラチンおよび少なくとも1種の糖を含む、請求項5に記載の急速分散性固形剤形。
【請求項7】
前記ゼラチンが魚ゼラチンである、請求項5または6に記載の急速分散性固形剤形。
【請求項8】
前記糖がマンニトールである、請求項4から7のいずれか一項に記載の急速分散性固形剤形。
【請求項9】
前記糖が環状糖である、請求項4から7のいずれか一項に記載の急速分散性固形剤形。
【請求項10】
前記マトリックス形成剤がアミノ酸を含む、請求項4から9のいずれか一項に記載の急速分散性固形剤形。
【請求項11】
前記アミノ酸がグリシンである、請求項10に記載の急速分散性固形剤形。
【請求項12】
Yが-CH2-である、請求項1から11のいずれか一項に記載の急速分散性固形剤形。
【請求項13】
R1がハロゲンまたはヒドロキシである、請求項1から12のいずれか一項に記載の急速分散性固形剤形。
【請求項14】
R1がハロゲンである、請求項1から13のいずれか一項に記載の急速分散性固形剤形。
【請求項15】
R1が5-ハロゲンである、請求項1から14のいずれか一項に記載の急速分散性固形剤形。
【請求項16】
R1がフルオロである、請求項1から15のいずれか一項に記載の急速分散性固形剤形。
【請求項17】
R2が水素である、請求項1から16のいずれかに記載の急速分散性固形剤形。
【請求項18】
R3がエチルである、請求項1から17のいずれかに記載の急速分散性固形剤形。
【請求項19】
実質的に上記請求項1から18のいずれか一項に記載した通りである急速分散性固形剤形。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として、一般式(I):
【化1】

[式中、Yは-CH2-または-CO-であり、R1はH、ハロゲンまたはヒドロキシであり、R2はHまたはハロゲンであり、R3はHまたは低級アルキル(たとえばC1〜C4アルキル、好ましくはC1またはC2アルキル)である]
の置換イミダゾール誘導体、または一般式(I)の化合物の薬剤として許容可能な塩、たとえば塩酸塩などの酸付加塩を含み、前記有効成分の胃前吸収を促進する、急速分散性の固形剤形。
【請求項2】
口腔内に置かれて10秒以内に崩壊するように製剤された、請求項1に記載の急速分散性固形剤形。
【請求項3】
前記有効成分および前記有効成分に対して不活性な水溶性または水分散性担体の網目構造を含み、前記網目構造は固体状態の組成物から溶媒を昇華させることによって得たものであり、前記組成物は前記有効成分と前記担体の溶媒中溶液とを含む、請求項2に記載の急速分散性固形剤形。
【請求項4】
1種以上のマトリックス形成剤を追加して含む、請求項1に記載の急速分散性固形剤形。
【請求項5】
前記マトリックス形成剤がゼラチンおよび環状糖のうち1種以上を含む、請求項4に記載の急速分散性固形剤形。
【請求項6】
前記マトリックス形成剤がゼラチンおよび少なくとも1種の環状糖を含む、請求項5に記載の急速分散性固形剤形。
【請求項7】
前記ゼラチンが魚ゼラチンである、請求項6に記載の急速分散性固形剤形。
【請求項8】
前記環状糖がマンニトールである、請求項6に記載の急速分散性固形剤形。
【請求項9】
前記マトリックス形成剤がアミノ酸を含む、請求項6に記載の急速分散性固形剤形。
【請求項10】
前記マトリックス形成剤がアミノ酸を含む、請求項4に記載の急速分散性固形剤形。
【請求項11】
前記アミノ酸がグリシンである、請求項10に記載の急速分散性固形剤形。
【請求項12】
Yが-CH2-である、請求項1に記載の急速分散性固形剤形。
【請求項13】
R1がハロゲンまたはヒドロキシである、請求項1に記載の急速分散性固形剤形。
【請求項14】
R1がハロゲンである、請求項1に記載の急速分散性固形剤形。
【請求項15】
R1が5-ハロゲンである、請求項1に記載の急速分散性固形剤形。
【請求項16】
R1がフルオロである、請求項1に記載の急速分散性固形剤形。
【請求項17】
R2が水素である、請求項1に記載の急速分散性固形剤形。
【請求項18】
R3がエチルである、請求項1に記載の急速分散性固形剤形。

【公表番号】特表2006−517516(P2006−517516A)
【公表日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−551671(P2004−551671)
【出願日】平成15年11月3日(2003.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2003/034934
【国際公開番号】WO2004/043439
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(501477831)アール.ピー. シェーラー テクノロジーズ インコーポレイテッド (23)
【Fターム(参考)】