説明

置換コラム用填充材

【課題】 汎用のポンプでも効率的に填充材の送液を可能にするとともに、水・セメント比の設定領域内で填充材打設後のブリーディングを効果的に低減または防止可能にする。
【解決手段】 コラム用填充材を、水硬性固化材とブリーディング防止材としての炭酸マグネシウムの重量比が0.4〜5%、水・セメント比が60〜120%の配合割合とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸建て住宅や低層建築物、土間スラブ等の比較的軽微な構造物の基礎としての置換コラムを築造するために用いられる置換コラム用填充材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、土木・建築物の基礎の築造に施工現場の土を使用しない工法として、モルタルまたはセメントミルク等の填充材を、施工現場の土と置換する置換コラム工法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭59−18487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の置換コラム工法では、置換コラム填充材としてモルタルを利用した場合に、モルタルが含水した細骨材を含むために、硬化後の品質が安定せず、また混練後の流動性を一定値にするように、細骨材の水分管理を現場で行う必要がある。しかも。モルタル全体の水分量を調整するためには、細骨材の含水量によって添加する水分量を調整する必要がある。従って、細骨材を原料の一部として現場に設置された簡易ミキシングプラントでモルタルを調整するには、手間が掛かり過ぎるため、現実的ではない。一方、セメントミルクを使用する場合は、モルタルのような水分管理の問題はないが、水・セメント比(W/C)が60%未満の場合には、セメントミルクの流動性が悪くなり、戸建住宅用のコラム施工機であるグラウトミキサーや汎用グラウトポンプで混練、送液することは実工事では現実的に難しい。
【0005】
また、水・セメント比が60%以上では、汎用ポンプでセメントミルクの送液は可能であるものの、セメントミルクが固化するとき、すなわち置換コラムとしての打設後、セメントミルクのブリーディング量が大きくなり、出来形が不足するので、ブリーディング量に応じて注ぎ足しをしなければならない。また、この場合には、セメントミルクの注ぎ足し量も極めて大きく、しかも注ぎ足し作業もブリーディングが終了するまで待機しなければならず、結果的に施工効率が大幅に低下するという問題があった。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、汎用のグラウトミキサーやグラウトポンプで混練や送液を可能にするとともに、置換コラムの打設後のブリーディングを低減または防止することができる比較的軽微な構造物の基礎としてコラム長さが数mから10m程度のブリーディング防止型の置換コラム用填充材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係る置換コラム用填充材は、水と水硬性固化材を主材料とし、地盤土の一部を置換するように地盤中に填充されて構造物の基礎としての置換コラムを築造する置換コラム用填充材であって、水硬性固化材とブリーディング防止材としての炭酸マグネシウムの重量比が0.4〜5%、水・セメント比が60〜120%の配合割合であることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、市場で容易に入手可能で、品種によっては比較的安価で、混和量を比較的多く必要とするベントナイトに比べて、比較的少ない炭酸マグネシウム混和量で同等のブリーディング防止効果が得られる。また、ブリーディング量を低減した水硬性固化材液を作製するための作業性が向上し、炭酸マグネシウム(塩基性炭酸マグネシウム)を混和した水硬性固化材液のブリーディング安定時間はベントナイトの場合よりも短いので作業性が良い。なお、塩基性炭酸マグネシウムは、マグネシウム塩水溶液に炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムを加えて沈殿させたもので、これを炭酸マグネシウムと一般的に呼んでいる。
【0009】
また、水・セメント比が60%以上であるため、置換コラムの単位体積当りのセメント使用量が少なくなり、経済的となるとともに、施工時には小型施工機で使用する小型のミキシングプラントで混練する場合に、粘性および攪拌抵抗が抑えられ、プラントに作用する負荷も小さくなる。一方、水・セメント比が120%以下であれば塩基性炭酸マグネシウムを適量混和することにより経済的であり、かつ置換コラムの打設終了後から生じる水硬性固化材液のブリーディング量をゼロにするか又は極めて小さくすることができ、水硬性固化材液の注ぎ足し作業を無くするか、その量を極めて少なくすることができる。また、この水硬性固化材液の注ぎ足し作業は、ブリーディングが終了するまでの期間が短いために、施工効率を大きく改善することができる。この結果、置換コラム築造の工期が短くなり、従って施工コストを低く抑えることができる。
【0010】
また、本発明の置換コラム用填充材において、水硬性固化材は、ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、セメント系固化材のいずれかを主成分とするものとしている。これにより水を加えて水・セメント比が60〜120%の水硬性硬化材液を容易かつ安価に得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の置換コラム用填充材による水硬性固化材液によれば、戸建住宅の工事に使用される小型のグラウトミキサーや小型の汎用のポンプでも効率的に混練や送液を可能にするとともに、水・セメント比の設定領域内で前記置換コラムの打設後におけるブリーディングを効果的に低減または防止することができる。
【0012】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための最良の形態を、添付の図面を参照して更に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態による置換コラムの施工装置を示す正面図である。
【図2】図1に示す施工装置による置換コラムの施工手順を説明する説明図である。
【図3】本発明の置換コラム用填充材における炭酸マグネシウム・セメント比に対するフロー値を、各水・セメント比ごとに測定した値をグラフで示した特性図である。
【図4】炭酸マグネシウム・セメント比に対するブリーディング率を各水・セメント比ごとに測定した値をグラフで示した特性図である。
【図5】炭酸マグネシウム・セメント比に対するブリーディング安定時間を各水・セメント比ごとに測定した値をグラフで示した特性図である。
【図6】炭酸マグネシウム・セメント比に対する置換コラムの圧縮強度を各水・セメント比ごとに測定した値をグラフで示した特性図である。
【図7】ベントナイト・セメント比に対するブリーディング安定時間を各水・セメント比ごとに測定した値をグラフで示した特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。先ず、本発明の置換コラム用填充材を配合した水硬性固化材液を用いて置換コラムを施工築造するための施工装置および施工手順を説明し、続いてその置換コラムの施工に使用される本発明の置換コラム用填充材の詳細を説明する。
【0015】
図1は、置換コラム用填充材を用いて置換コラムを施工築造するための施工装置を示す。この施工装置6は、起伏自在のリーダ7を備え、このリーダ7には、スライド板10がリーダ7に沿って摺動自在に設けられている。このスライド板10にはオーガモータ8が固設され、このオーガモータ8に接続された掘削オーガ1の上端にはスイベル9が連結されて構成されている。スライド板10には給進装置(図示省略)が連結され、リーダ7に沿って進退移動できるようになっている。掘削オーガ1は、オーガモータ8に接続されて取り付けられる。従って、掘削オーガ1には、オーガモータ8の駆動で回転を与えることができ、また、スライド板10にはオーガモータ8が固設されているので、給進装置(図示省略)でスライド板10をリーダ7に沿って進退させることで、掘削オーガ1はオーガモータ8と共に進退させることができる。なお、符号2は、掘削オーガ1の先端に設けた掘削爪を示している。
【0016】
給進装置としては、リーダ7の上端乃至下端に設けられたスプロケットに懸回されて駆動するチェーンまたはシリンダを例示できる。このチェーンやシリンダのロッドをスライド板10に連結することでスライド板10の進退が可能になる。一回の給進作業で所定深度に到達しない場合は、掘削オーガのチャック部を掴み替えたり、掘削オーガあるいはロッドを継ぎ足したりすることで対応する。施行装置が3点式杭打機のように大型の場合は、給進装置はワイヤーロープを使用するウインチを用いるのが一般的である。
【0017】
これにより掘削オーガ1は、スライド板10をリーダ7に沿って下方移動させることで、地盤中に回転させながら掘進することができる。所定深度まで掘進した後は、スライド板10をリーダ7に沿って上方移動させることで、掘削オーガ1を回転させながら、または回転させないで引き上げることができる。また、スイベル9を介し掘削オーガ1の供給通路に、水硬性固化材液を供給することができる。掘削オーガ1の先端には、供給通路と連通して吐出口(図示省略)が設けられ、スイベル9を介し掘削オーガ1の供給通路に供給された水硬性固化材液は、吐出口(図示省略)より吐出できるようになっている。掘削オーガ1は、中空軸で構成され、その中空内が水硬性固化材液の供給通路となっているのが一般的である。また、掘削オーガ1のロッド形状としては、円形状やスパイラル状のものが使用される。円柱状のものは排土を極めて少なくすることが出来る。スパイラル状のものは掘削土を排出することが出来る。
なお、掘削オーガ1は、オーガモータ8を駆動させたり、停止させることで、回転させたり回転を停止させたりすることができるので、掘削オーガ1を回転させながら掘進または引き上げたり、回転させずに掘進または引き上げたりすることを適宜選択して施工することができる。
【0018】
しかして、前記施工装置6によれば、掘削オーガ1をオーガモータ8に取り付け、回転させながら掘進し、所定深度に達したら、水硬性固化材液の供給通路より水硬性固化材液を供給し、吐出口より吐出しつつ、回転させながら、または回転させないで引き上げ、掘削部の所定区間を該水硬性固化材液で充填する置換コラムの築造方法を実施することが可能となる。
【0019】
次に、本発明の水硬性固化材液置換コラム築造方法の施工手順を、図2について説明する。
まず、図2(a)に示すように施工装置6のオーガモータ8に掘削オーガ1を取り付け、掘削オーガ1をリーダ7に沿って鉛直に据え、掘削オーガ1の掘削爪2中心と削孔位置(コラム心)が一致するように合わせてセットする。
次に、図2(b)に示すように掘削オーガ1を回転(正回転または逆回転)させながら掘進する。これはオーガモータ8の駆動で回転させ、スライド板10(図1参照)をリーダ7に沿って下方向に移動させることで実施される。
【0020】
図2(b)に示すように掘進が所定深度に達したら、もしくは所定深度近傍から、水硬性固化材液の吐出口よりの吐出を開始する。掘削オーガ1が所定の深度に達した時点で、吐出口から水硬性固化材液が吐出されるのを確認するための間、掘削オーガ1の上下移動を停止して、回転のみ続けて孔壁の強化と先端部の置換を確実にさせることは好ましいが、これは掘削オーガ1の形状によって施工方法が異なるので、全ての施工に採用されるものではない。
【0021】
次に、前記吐出を開始した後、図2(c)に示すように掘削オーガ1を回転(正回転または逆回転)させ、または回転させないで、水硬性固化材液12を吐出しながら掘削オーガ1を引き上げ、所定区間の水硬性固化材液12の充填が終了すると、水硬性固化材液12の吐出を停止し、さらに掘削オーガ1を引上げ、水硬性固化材液置換コラムの築造を完了する。ここでいう所定区間とは、築造する置換コラム長であるが、水硬性固化材液12のブリーディング量を考慮した水硬性固化材液12の充填区間としてもよい。掘削オーガ1の引上げは、スライド板10をリーダ7に沿って上方に移動させることでオーガモータ8が一緒に引き上げられることで行われる。
【0022】
このとき、単位時間当りに掘削オーガ1の引上げによる掘削爪2の下に生ずる孔容積に対し、水硬性固化材液12の吐出量(体積)が1.0〜1.5倍になるように引上げ速度を調整する。これは掘削オーガ1の引上げにより掘削爪2の下に空隙が生じないように、常に水硬性固化材液12で充満するようにするためである。水硬性固化材液12の吐出量が少ないと、サクションを誘発し、サクションが生じるとサクションを解消するために孔壁崩壊を誘発し、置換コラム中に土塊が混入するのみならず、場合によっては、所要のコラム形状を確保できなくなることもあり、置換コラムの品質が低下し好ましくない。
【0023】
掘削オーガ1を引上げ、水硬性固化材液12を吐出して所定区間の水硬性固化材液12の填充が終了したら、この水硬性固化材液の吐出を停止し、さらに掘削オーガ1を地上まで引き上げる。図2(d)は、施工が完了した状態を示している。こうして充填された水硬性固化材液12が固化することによって置換コラムが形成される。
【0024】
更に、置換コラムに鉄筋等の芯材を配置する場合には、手作業または機械で施工することができる。芯材を配置する場合には、前記図2(a)〜(d)に示す施工方法によって掘削部の所定区間を水硬性固化材液12で充填した後に、該水硬性固化材液12の置換コラムが未硬化の内に、手作業または施工装置6を使用して該置換コラム(未硬化の水硬性固化材液12)に芯材を挿入して施工する。これにより芯材を配置した置換コラムが築造できる。
【0025】
施工後に、水硬性固化材液12が逸水し、もしくはブリーディングして置換コラム頭部の位置が所定深度(位置)よりも低くなる場合、あるいは低くなった場合は、該掘削孔に水硬性固化材液12を追加填充する。水硬性固化材液を追加填充する場合は、施工機によって実施しても良いが、別途図示しないミキシングプラトンのグラウトポンプに接続したホースから填充したりバケツなどを使用して人力で填充してもよい。
【0026】
水硬性固化材液12がブリーディングや逸水を生じると、後で填充補修する必要があり、手間がかかる。また、ブリーディングが終了するまでの時間が長いと、補修作業を翌日以降に繰り延べなければならない場合もあるので、工期遅延となり、コストアップとなるのみならず、基礎スラブ打設等の後工程に影響することになる。このような事態を避けるために、水硬性固化材液12にブリーディング防止材を混和する。ブリーディング防止材としては、ベントナイトおよび炭酸マグネシウム(塩基性炭酸マグネシウム)を例示できる。
【0027】
ベントナイトは市場で容易に入手可能であり、品種によっては比較的安価であるが、炭酸マグネシウムと比較して同量のブリーディング率を得ようとすれば、混和量を比較的多く必要とし、混和量が増えると硬化後の圧縮強度が低下する。また、ベントナイトはミキサーへの投入順序によりブリーディング低減効果が低下するという特徴がある。一方、炭酸マグネシウム(塩基性炭酸マグネシウム)はベントナイトと比較すると、水硬性固化材に対し比較的少ない混和量で同等のブリーディング防止効果を発揮するため、ブリーディング量を低減した水硬性固化材液を作製するための作業性が向上する。図5は炭酸マグネシウム・セメント比〔M/C〕に対するブリーディング安定時間を各水・セメント比〔W/C〕ごとに測定した値をグラフで示した特性図であり、図7は、ベントナイト・セメント比〔B/C〕に対するブリーディング安定時間を各水・セメント比〔W/C〕ごとに測定した値をグラフで示した特性図である。図5に示す通り炭酸マグネシウムでは、略30分程度で安定するのに対し、ベントナイトでは図7に示す通り略3時間である。従って、炭酸マグネシウム(塩基性炭酸マグネシウム)を混和した水硬性固化材液のブリーディング安定時間は図5と図7を比較すれば理解できるとおり、ベントナイトの場合よりも短いので作業性が良い。
【0028】
次に、置換コラムの築造に使用される本発明の置換コラム用填充材の詳細を、説明する。本発明の置換コラム用填充材は、水と水硬性固化材を主材料とし、地盤土の一部を置換するように地盤中に填充されて構造物の基礎としての置換コラムを築造する置換コラム用填充材であり、水硬性固化材とブリーディング防止材としての炭酸マグネシウムの重量比が0.4〜5%、水・セメント比〔W/C〕が60〜120%の配合割合である。
【0029】
これらのうち水硬性固化材液は、ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、セメント系固化材のいずれかを主成分とし、その水・セメント比〔W/C〕が60〜120%である。本発明に使用する水硬性固化材液は、我が国の建設工事で一般的に使用されているセメントを主成分とすればよく、その水・セメント比〔W/C〕は60〜120%、圧縮強度(材料強度)の目安は例えば2.5〜10N/mmとなる。水・セメント比〔W/C〕が60%より小さいと、置換コラムの単位体積当りのセメント使用量が大きくなり不経済となるばかりか、施工時には小型施工機で使用する小型のミキシングプラントで混練し送液するには、粘性が高くミキシング攪拌抵抗やポンプ圧送力の増大となって、プラントに作用する負荷が大きくなり、好ましくない。
【0030】
一方、水・セメント比〔W/C〕が120%を超えると、置換コラムの打設終了後から生じる水硬性固化材液のブリーディング量が大きくなるので、水硬性固化材液の注ぎ足し量も極めて大きくなる。しかも、注ぎ足し作業はブリーディングが終了するまで待たねばならず、そのため施工効率が大きく低下する。従って、水・セメント比〔W/C〕が120%を超える場合においては、注ぎ足し作業を不要とするブリーディング率1〜2%にするためには塩基性炭酸マグネシウムの添加量をセメントに対して多く(例えば、5%以上)する必要がある。しかし、塩基性炭酸マグネシウムは、セメントに比較して数十倍と高価であるため、経済的にも成立せず現実的ではない。
【0031】
この水・セメント比〔W/C〕のP漏斗方法によるフロー値(秒)、ブリーディング率(%)、ブリーディング安定時間、圧縮強度(N/mm)に与える影響は、実測結果から、図3〜図6に示す通りとなった。先ず、水・セメント比〔W/C〕について炭酸マグネシウム/セメント比〔M/C〕に対するフロー値(秒)見ると、図3に示すように、炭酸マグネシウム/セメント比〔M/C〕が例えば5.0%である場合にはフロー値が11秒となるのに対し、W/Cが80%、100%、120%、150%ではフロー値がそれぞれ汎用ポンプで送液可能な略10.0秒、9.5秒、8.9秒、9.0秒となる。従って、W/Cが60〜120%においては置換コラム用填充材の流動性が適切に維持され、填充の作業効率が良好となる。
【0032】
なお、本発明で使用する各用語を定義すると次の通りである。
フロー値とは、2007年制定の「コンクリート標準示方書」([基準編]土木学会基準および関連基準、土木学会、2007年)に準拠する「プレパックドコンクリートの注入モルタルの流動性試験方法(P漏斗による方法)(JSCE−F 521−1999)」により測定して得られる値であって、粘度を表す時間である。
ブリーディング率は、セメントミルクのブリーディング程度を表す値である。まず、混練直後のセメントミルクを容器に入れ、体積V0を測定する。放置後、ブリーディング水を除くセメントミルク体積Vを測定し、ブリーディング率を(V0−V)/Vとして算出する。
ブリーディング安定時間とは、ブリーディングの収束速さを表す時間である。まずブリーディング経時変化を計測し、最終ブリーディング率(混練後20時間以上経過したもののブリーディング率)の90%に達するのに要した時間を、ブリーディング安定時間とする。
【0033】
また、W/Cが60%〜150%についてM/Cに対するブリーディング率(%)を見ると、図4に示すように、例えばM/Cが例えば5.0%である場合には、W/Cが150%ではブリーディング率が12%であるのに対し、W/Cが120%〜60%ではそれぞれが略ゼロ(零)近くになり落ち着くことになる。なお、ここで図4の縦軸の「ブリーディング率」は、最終ブリーディング率(混連から20時間以上経過したもののブリーディング率)である。
【0034】
また、W/Cが60%〜150%についてM/Cに対するブリーディング安定時間を見ると、図5に示すように、M/Cが0.0%〜2.5%において急速に安定に向い、2.5〜10.0%の範囲において略30分以内に落ち着く(安定する)ことが分かる。
【0035】
さらに、W/Cが60%〜150%について。M/Cに対する圧縮強度(N/mm)を見ると、図6に示すようになる。まず、M/Cが0.0%ではその圧縮強度が35、25、20、18、10で最大強度になるのに対し、M/Cが増加するにつれて強度が低下し、M/Cが2.5〜10.0の範囲内でほぼ一定の強度になる。そして、このようなフロー値、ブリーディング率、ブリーディング安定時間および圧縮強度の各計測値から、コラムを築造するための最適の測定値である、セメントと炭酸マグネシウムの重量比が0.4〜5%およびW/Cが60〜120%を以って、所期の置換コラム用填充材が達成される。
【0036】
水硬性固化材液は置換コラムの打設終了後から必ずブリーディングを生じる。水硬性固化材液の注ぎ足し作業が必要となるような大きなブリーディングを生じると前記したように種々の問題が発生する。水硬性固化材液にブリーディング低減材として炭酸マグネシウムを混和することで、ブリーディング量を注ぎ足し作業が不要になるほど小さな量に低減させることができる。なお、ベントナイトは、その吸水・膨潤効果により水硬性固化材液のブリーディングを低減するものの、添加量を比較的多くしなければならないこと、およびミキシングプラントへの投入順序によりその吸水・膨潤効果が低下する。
【0037】
一方、炭酸マグネシウムはベントナイトよりも単価が高いが、比較的少量をセメントスラリーに混和してその粘性を高め、かつブリーディング率を低減するのみならず、ベントナイトを使用する場合よりもブリーディングの安定時間を短縮することができる。このため、一日の作業時間内で、実働時間を大きくとることができるので一日あたりの施工出来高が増え生産性が高くなる。本実施形態では、ブリーディング防止材として炭酸マグネシウムを用いる。
【0038】
このように、本実施形態の置換コラム用填充材は、水と水硬性固化材からなり、地盤土の一部を置換するように地盤中に填充されて構造物の基礎としての置換コラムを築造する置換コラム用填充材であり、前記水硬性固化材とブリーディング防止材としての炭酸マグネシウムの重量比が0.4〜5%、水・セメント比を60〜120%の配合割合としている。これにより、市場で容易に入手可能で、品種によっては比較的安価ではあるが、混和量を比較的多く必要とするベントナイトに比べて、比較的少ない炭酸マグネシウム混和量で同等以上のブリーディング防止効果が得られる。また、ブリーディング量を低減した水硬性固化材液を作製するための作業性が向上し、炭酸マグネシウム(塩基性炭酸マグネシウム)を混和した水硬性固化材液のブリーディング安定時間をベントナイトの場合よりも短くでき、従ってコラム築造のための施工効率を高めることができる。
【0039】
また、本実施形態では、水・セメント比を前述のように60〜120%としている。水・セメント比を60%以上とすることにより、置換コラムの単位体積当りのセメント使用量が少なくなり、経済的になるとともに、粘性および攪拌抵抗が抑えられるため、小型施工機で使用する小型のミキシングプラントでの混練が可能になり、また小型の汎用ポンプで混練や送液が可能となり、プラントに作用する負荷も小さくなる。一方、水・セメント比を120%以下とすることにより、置換コラムの打設終了後から生じる水硬性固化材液のブリーディング量を小さく抑えることができ、水硬性固化材液の注ぎ足し量も極めて少なくすることができる。また、この水硬性固化材液の注ぎ足し作業では、ブリーディングが終了するまでの期間を短くできるために、施工効率を大きく改善できる。この結果、置換コラム築造の工期が短くなり、結果的に施工コストを低く抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、汎用のポンプで送液可能にするとともに、置換コラムの打設後のブリーディングを低減または防止することができるという効果を有し、戸建て住宅や低層建築物、土間スラブ等の比較的軽微な構造物の基礎としての置換コラムを築造するために用いられる置換コラム用填充材等に有用である。
【符号の説明】
【0041】
1 掘削オーガ
2 掘削爪
6 施工装置
7 リーダ
8 オーガモータ
10 スイベル
12 填充材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と水硬性固化材を主材料とし、地盤土の一部を置換するように地盤中に填充されて構造物の基礎としての置換コラムを築造する置換コラム用填充材であって、
水硬性固化材とブリーディング防止材としての炭酸マグネシウムの重量比が0.4〜5%、水・セメント比が60〜120%の配合割合であることを特徴とする置換コラム用填充材。
【請求項2】
前記水硬性固化材は、ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、セメント系固化材のいずれかを主成分とすることを特徴とする請求項1に記載の置換コラム用填充材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−219502(P2012−219502A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86086(P2011−86086)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000133881)株式会社テノックス (62)
【出願人】(301033053)株式会社日本住宅保証検査機構 (9)
【Fターム(参考)】