説明

置換シクロペンタノンの製造方法

【課題】シス−2,3−ジ置換シクロペンタノンの製造方法の提供。
【解決手段】下記の9工程より成る置換シクロペンタノンの製造方法。(第一工程)3−シクロペンタンジオンをエーテル化する工程。(第二工程)該化合物を転位させる工程。(第三工程)該化合物をエーテル化する工程。(第四工程)該化合物にマロン酸エステルを付加させるとともに脱炭酸させ置換シクロペンテノンを製造する工程。(第五工程)該置換シクロペンテノンの側鎖の二重結合を選択的に酸化する工程。(第六工程)該化合物のオキシラン環を加水分解し、ジオールを製造する工程。(第七工程)該化合物の5員環内二重結合に水素添加する工程。(第八工程)該化合物のジオールをジオキソラン化する工程。(第九工程)該化合物をカルボン酸無水物の存在下に分解し、下式(29)


で表される置換シクロペンタノンを製造する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャスミン系香料やその中間体等として有用なシス−2,3−ジ置換シクロペンタノンの製造方法、ならびに、当該置換シクロペンタノン製造に有用な中間体及び当該中間体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2、3−ジ置換シクロペンタノンは、ジャスミン系香料やプロスタグランジン類などの有用化学物質の合成にとって重要な化合物である。なかでも、3−位にアルコキシカルボニルメチル基を有するものは、ジャスミン系香料の合成にとって重要であり、これまでに多数の製造方法が開示されている。
【0003】
例えば、シクロペンタノンを原料とする方法(非特許文献1)やアジピン酸を原料とする方法(非特許文献2)がある。これらの方法では、熱力学的に安定な立体異性体、すなわち2,3−位の置換基が5員環に関して互いにトランスの関係にあるトランス−2,3−ジ置換シクロペンタノンが得られる。シス体の割合は通常10%以下に過ぎない。ところで、近年の研究の結果、ジャスミン系香料のなかで重要な位置を占めるジャスモン酸エステルにおいては、シス−2,3−ジ置換シクロペンタノンの方が、トランス−2,3−ジ置換シクロペンタノンに比べはるかに香りが強いことが判明し(非特許文献3)、シス−2,3−ジ置換シクロペンタノンの工業的製造方法の開発が強く望まれている。しかしながら前述のとおり、従来技術の多くはトランス−2,3−ジ置換シクロペンタノンを主成分として得るものである。
【0004】
そうした難点を補う技術として、得られたトランス−2,3−ジ置換シクロペンタノンを触媒を用いて異性化させ、シス−2,3−ジ置換シクロペンタノンを製造する方法(特許文献1)が開示されている。しかしながら、この技術の場合、異性化のための特別な装置と工程が必要となるばかりでなく、異性化のために160〜190℃といった高温が必要なため熱劣化が避けられない。それに起因して生成する高沸点不純物を除去するために特別な装置と工程が更に必要となるという問題がある。しかも、得られるシス体(エピ体)濃度は40%程度に過ぎない。
【0005】
一方、シス−2−置換−3−アルコキシカルボニルメチルシクロペンタノンを選択的に合成する方法として、2−置換−3−アルコキシカルボニルメチルシクロペンテノンの二重結合に水素添加を施す方法が知られている。
【0006】
特許文献2には、アルミニウムアルコラートの存在下に触媒的に水素添加する方法が開示されている。この方法によると、望むシス−2−置換−3−アルコキシカルボニルメチルシクロペンタノンが90%以上の選択率で得られる。しかしながら、3乃至10kg/cm2の加圧が必要であるという反応操作上及び設備上の制約があることに加え、第三成分としてアルミニウムアルコキシドを当量用いる必要がある。その上、加えられたアルミニウムアルコラートは反応後に酢酸水溶液等で分解されるため、多量のアルミニウム系廃棄物が発生し、後処理を困難にする。また、当該廃棄物によって触媒が汚染され、触媒の再利用を困難にするという難点も有する。
【0007】
特許文献3には、特定の配位子を有するルテニウム錯体の存在下に水素添加する方法が開示されている。当該公報には、望むシス−2−置換−3−アルコキシカルボニルメチルシクロペンタノンが99%といった高い選択率で得られると記載されている。しかしながら、ルテニウムという極めて高価な触媒を用いる必要があることに加え、配位子にも特殊かつ高価な化合物を用いる必要がある。しかも触媒には予め煩雑な前処理が必要である。また、この方法は、10〜90kg/cm2という極めて高い水素圧力を要し、反応操作上及び設備上の制約がたいへん大きい。さらに、当該技術では、均一系触媒(溶媒に溶解する)を用いるため、反応後の触媒と生成物の分離に特殊な操作を要するという、工業的実施における重大な難点も有する。また、当該技術では、第三成分として特定の配位子を添加するが、当該配位子は解離平衡に基きルテニウム錯体から解離しているので、生成物側に当該配位子が一部移行してしまう。その結果、反応後の触媒分離操作において、触媒組成物の組成が変化してしまい、触媒性能の再現性が得られないという重大な欠点があった。
【0008】
特許文献4には、リン酸塩等の共存下、ロジウム−カーボン触媒の存在下に水素添加する方法が開示されている。当該公報には、常圧で望むシス−2−置換−3−アルコキシカルボニルメチルシクロペンタノンが90%以上の高い選択率で得られると記載されているが、本発明者らの実験では、シス−2−置換−3−アルコキシカルボニルメチルシクロペンタノンの選択率は、30%以下という極めて低いものであった。また、当該技術では、第三成分としてリン酸塩等の塩を添加する必要がある。しかしながら、当該塩は、メタノール等の有機溶媒に一定の溶解度を有しているので、反応後の触媒分離操作(触媒のろ別)において、生成物側に当該塩が一部移行する。その結果、触媒組成物の組成が変化してしまい、触媒性能の再現性が得られないという重大な欠点があった。以上のように、シス−2−置換−3−アルコキシカルボニルメチルシクロペンタノンを選択的に合成でき、且つ工業的実施の見地から満足できる技術は未だ報告されていない。
【0009】
一方、1、3−シクロペンタンジオン類は、有機合成上極めて有用な化合物であり、本発明の置換シクロペンタノン製造の前駆体としても有用な化合物である。しかし、その一見単純な分子構造から予想されるよりはるかに合成が困難な物質である(非特許文献4)。
【0010】
中でも、基本構造であると同時に有用性の高い1、3−シクロペンタンジオンは、合成が特に困難である。以下にこれまでに報告されている1、3−シクロペンタンジオン類の代表的な合成法を例示する。その第1は、コハク酸と塩化アシルを塩化アルミニウム存在下に反応させる方法である(非特許文献5)。当該方法によれば、1、3−シクロペンタンジオン類が一段階で合成可能であるが、収率が50%と極めて低い。しかも、当該方法では、原料であるコハク酸に対し、塩化アルミニウム及び塩化アシルをそれぞれ2.4倍モル及び4倍モルと大過剰用いる必要があり、多量の副生物が生成する。加えて、溶媒としてニトロメタン等の爆発性の溶媒を用いる必要があり、工業的実施の見地からは満足できる方法とは言いがたい。さらに当該方法では、基本構造であると同時に有用性の高い1、3−シクロペンタンジオンは合成できないことが知られており(非特許文献4)、1、3−シクロペンタンジオン類の普遍的合成法とはなり得ない。第2の方法は、4−オキソアルカノエートを塩基により環化する方法である。当該方法も1、3−シクロペンタンジオン類を一段階で合成できる方法であるが、基本構造であると同時に有用性の高い1、3−シクロペンタンジオンの収率は低く、一般的な塩基では全く生成せず(非特許文献6)、特殊な塩基(カリウムトリフェニルメトキシド)を用いた場合にのみ、ようやく60%の収率で1、3−シクロペンタンジオンが得られる(非特許文献7)。また、比較的環化が容易であると言われている長鎖の4−オキソアルカノエートであっても、収率は35〜80%程度と低く(非特許文献4)、工業的実施に耐え得る技術とは言いがたい。以上のように、1、3−シクロペンタンジオン類は、その合成の困難さのため、工業的実施の見地から満足できる製造技術は未だ報告されていない。
【0011】
一方、γ−ケトエステルは、有機合成上有用な化合物であり、本発明の置換シクロペンタノン製造の前駆体としても有用である。しかしながら、同一分子内にケトンとエステルという反応性の高い2種の官能基を有するため、短工程で合成することは困難な化合物である。数少ない効率的合成法の一例として、フルフリルアルコールを、アルコール中、塩化水素で処理すれば、一挙に合成できることが既に知られている。例えば、非特許文献8には、フルフリルアルコールをメタノール又はエタノール中で反応させる例が開示されている。しかし、当該技術では、γ−ケトエステルは、29乃至36%という極めて低い収率でしか得られない。すなわち、従来技術では、γ−ケトエステルを高効率で合成することは未だ達成されていない。
【0012】
また、下記式(15)で表される置換シクロペンテノンは、本発明の置換シクロペンタノンを製造するための前駆体として有用な化合物である。当該化合物の製造法として、非特許文献5が知られている。
【化1】

【0013】
当該製造方法では、塩化アルミニウムを触媒とし、コハク酸と酸塩化物をニトロメタンを溶媒として反応させる工程を有する。しかしながら当該工程には工業的実施上重大な問題が存在する。まず、収率が50%と低い。加えて、原料であるコハク酸に対し、発煙性や腐食性のため取扱い困難な塩化アルミニウムと酸塩化物をそれぞれ2.4倍モルと4倍モルと多量に必要とする。このことは、投入時の操作の困難性や反応器材質の腐食など、製造上の問題はもとより、反応後にアルミニウム系および塩素系の廃棄物が多量に排出されるという環境保全上の問題もある。しかも、溶媒として用いるニトロメタンは爆発性の物質であり、工業的規模で用いるに際しては格別の安全対策を要するという問題もある。このように、従来技術では、上記式(15)で表される置換シクロペンテノンを工業的規模で安全且つ効率的に製造する方法はない。
【0014】
下記式(17)で表される、トランス二重結合を側鎖に有する構造の1,3−シクロペンタンジオン類は、本発明の置換シクロペンタノン製造の中間体として有用な化合物である。
【0015】
【化2】

従来技術によって当該化合物を合成するには、例えば、二重結合がトランス配置のアリル基を有する下記式(40)
【0016】
【化3】

(式中、R25は前記の意味を表し、Xはハロゲン原子を表す。)
で表されるハロゲン化物と1,3−シクロペンタンジオンを塩基存在下に反応させる方法があげられる。しかしながら、この方法では、予め前記式(40)で表されるハロゲン化物を立体選択的に合成する必要があり、それには、例えば、下記式(41)
【0017】
【化4】

(式中、R25は前記の意味を表す。)
で表される化合物の三重結合を液体アンモニア中ナトリウムで水素化した後、アルコールをハロゲンに変換するというような煩雑なプロセスを要するという問題があった。すなわち、従来技術では、上記式(17)で表される、トランス二重結合を側鎖に有する構造の1,3−シクロペンタンジオン類を簡便に製造することは未だ達成されていない。
【0018】
前記式(18)で表される化合物の側鎖のトランス型二重結合を選択的にオキシラン化(エポキシ化)し、前記式(19)で表される化合物を合成できれば、側鎖の二重結合の保護になると同時に、オキシラン環をアンチ型に開裂してジオールに変換すれば、シス二重結合導入の足がかりともなり、ジャスミン系香料等の置換シクロペンタノンの合成にとって極めて有用である。しかしながら、そのような技術は未だ開示されていない。
【0019】
【化5】

【0020】
【化6】

シス−ジャスモンやジヒドロジャスモンなどのメチルシクロペンテノン類は、ジャスミン系香料として重要な位置を占め、製造方法が数多く報告されているが、その多くは、1,4−ジケトンの分子内アルドール反応によるものである。例えば、特許文献5、6や非特許文献9など数多くの例が知られている。当該方法によれば、特定のメチルシクロペンテノン類を製造することは可能であるが、専ら当該特定のメチルシクロペンテノン類を製造することに特化しているため、それ以外の有用香料を製造することは困難である。香料業界においては、多品種の香料を機動的に製造できることが不可欠であり、当該方法のように単一香料素材に特化した製法は極めて非効率的である。例えば、当該方法では、ジャスミン系香料の中でとりわけ有用で需要の大きいジャスモン酸エステル類を派生的に得ることは事実上不可能であり、当該エステルを製造するには、全く別の製造方法を採用せねばならない。したがって、製造設備や原材料の調達などにおいて不合理や不利益が生じるという難点があった。すなわち、従来技術では、ともにジャスミン系香料において重要な位置を占めるジャスモン酸エステルとメチルシクロペンテノン類を、同一合成ルートで派生的に製造することは、未だ達成されていない。
【0021】
γ−ラクトン類の製造方法は多数報告されているが、その多くは、アルコールとアクリル酸誘導体とから、有機過酸化物等によるラジカル付加で製造するものである。例えば、ジ−t−ブチルペルオキシドとハロゲン化亜鉛の存在下にアクリル酸誘導体とアルコールを反応させる方法が知られている(特許文献7)。しかしながら、当該方法で製造されたγ−ラクトン類は、一般にプラスチック様の香味や酸味を有しており、本来のフルーティーもしくはフローラルの良好な香気が損なわれるという重大な欠点があった。そうした欠点を改善するための精製方法が種々開示されているが、いずれも完全なものではなかった。また、ジ−t−ブチルペルオキシドなどの有機過酸化物は爆発性を有する危険な物質であり、その取扱いには特別の対策を要するという難点もあった。そのため、根本的に異なるγ−ラクトン類の製造方法の開発が強く望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2002−69477号公報
【特許文献2】特開昭54−90155号公報
【特許文献3】特表平10−513402号公報
【特許文献4】特開昭62−87555号公報
【特許文献5】特公昭45−24771号公報
【特許文献6】特開昭49−75555号公報
【特許文献7】特開平4−54177号公報
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】印藤元一著「合成香料」化学工業日報社出版、2005年3月22日、増補改訂版、p.677
【非特許文献2】印藤元一著「合成香料」化学工業日報社出版、2005年3月22日、増補改訂版、p.676
【非特許文献3】日本化学会編「味とにおいの分子認識」学会出版センター出版、2000年4月10日、p168
【非特許文献4】Synthesis、479(1989)
【非特許文献5】Zhou Jingyao、Lin Guomei Sun Wei Sun Jing「Youji Huaxue」1985年、No.6、p491
【非特許文献6】Chem.Pharm.Bull.13、1359(1965)
【非特許文献7】Collect.Czech.Chem.Commun.42、998(1977)
【非特許文献8】Studia Universitatis Babes−Bolyai、Chemia、19(2)、26(1974)
【非特許文献9】J.Org.Chem.,31,977(1966)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明は、ジャスミン系香料やその中間体等として有用なシス2,3−ジ置換シクロペンタノンを、高立体選択的に且つ工業的に有利に製造する方法、ならびに、当該置換シクロペンタノン製造のための有用中間体、及び当該中間体を工業的に有利な方法で製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意研究した結果、本発明を完成した。すなわち、本発明は以下のとおりである。
<1> 式(1)
【化7】

(式中、R1、R2は、炭素数1〜8の置換基を表す。R1とR2は同じでもよい。)で表される化合物の5員環内二重結合を、遷移金属触媒存在下、カルボン酸を溶媒として水素添加することを特徴とする、式(2)
【化8】

(式中、R3、R4は、炭素数1〜8の置換基を表し、R1、R2と同じでもよく、R3とR4は同じでもよい。)
で表される置換シクロペンタノンの製造方法。
【0026】
<2>カルボン酸が乳酸であることを特徴とする、上記1又は2記載の置換シクロペンタノンの製造方法。
<3>溶媒に可溶でかつ触媒活性に影響を与える第三成分を加えないことを特徴とする上記1又は2の置換シクロペンタノンの製造方法。
<4>水素添加開始時の反応溶液中のカルボン酸の濃度が、前記式(1)で表される化合物1重量部に対し、0.05重量部以上1000重量部であることを特徴とする上記1又は2記載の置換シクロペンタノンの製造方法。
<5>遷移金属が、パラジウムであることを特徴とする、上記1又は2記載の置換シクロペンタノンの製造方法。
<6>遷移金属触媒が、バラジウム−炭素であることを特徴とする、上記1又は2記載の置換シクロペンタノンの製造方法。
【0027】
<7>式(1)
【化9】

(式中、R1、R2は、炭素数1〜8の置換基を表す。R1とR2は同じでもよい。)で表される化合物の5員環内二重結合を、遷移金属触媒存在下、カルボン酸エステルを溶媒として水素添加する際、水素添加開始時の反応溶液中の該カルボン酸エステル濃度を、前記式(1)で表される化合物1重量部に対し0.05重量部以上1000重量部とすることを特徴とする、式(2)
【化10】

(式中、R3、R4は、炭素数1〜8の置換基を表し、R1、R2と同じでもよく、R3とR4は同じでもよい。)
で表される置換シクロペンタノンの製造方法。
【0028】
<8>溶媒に可溶でかつ触媒活性に影響を与える第三成分を加えないことを特徴とする上記7に記載の置換シクロペンタノンの製造方法。
<9>遷移金属が、パラジウムであることを特徴とする、上記7又は8記載の置換シクロペンタノンの製造方法。
<10>遷移金属触媒が、バラジウム−炭素であることを特徴とする、上記7又は8記載の置換シクロペンタノンの製造方法。
【0029】
<11>下記式(3)
【化11】

(式中、R5は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R6は、炭素数1乃至8の置換基を表し、R5とR6は同じでもよい。)
で表される化合物に塩基を加え、非プロトン性極性溶媒を10wt%以上100wt%以下含有する溶媒中で加熱して、環化させることを特徴とする、下記式(4)
【化12】

(式中、R7は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R5と同じでもよい。)で表される1、3−シクロペンタンジオン類の製造方法。
【0030】
<12>非プロトン性極性溶媒がジメチルスルホキシドであることを特徴とする上記11記載の1、3−シクロペンタンジオン類の製造方法。
<13>減圧下に溶媒を留去しつつ環化させることを特徴とする上記11又は12記載の1、3−シクロペンタンジオン類の製造方法。
【0031】
<14>下記式(5)
【化13】

(式中、R8は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表す。)で表されるフルフリルアルコールを、下記式(6)
【0032】
【化14】

(式中、R9は、炭素数3以上の炭化水素基を表す。)で表されるアルコールの存在下、塩化水素により開裂することを特徴とする、下記式(7)
【0033】
【化15】

(式中、R10は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R11は、炭素数1乃至8の置換基を表し、R10はR8と同じでもよく、R11はR9と同じでもよく、R10とR11は同じでもよい。)で表されるγ−ケトエステルの製造方法。
【0034】
<15>下記の6工程より成ることを特徴とする置換シクロペンテノンの製造法。
(第一工程)下記式(8)
【化16】

(式中、R12は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表す。)で表されるフルフリルアルコールを、下記式(9)
【0035】
【化17】

(式中、R13は、炭素数1以上の炭化水素基を表す。)で表されるアルコールの存在下、塩化水素により開裂し、下記式(10)
【0036】
【化18】

(式中、R14は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R15は、炭素数1乃至8の置換基を表し、R14はR12と同じでもよく、R15はR13と同じでもよく、R14とR15は同じでもよい。)で表されるγ−ケトエステルを製造する工程。
【0037】
(第二工程)前記式(10)で表されるγ−ケトエステルのエステルを加水分解し、下記式(11)
【化19】

(式中、R16は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R14と同じでもよい。)で表されるγ−ケトカルボン酸を製造するとともに、副生物を除去する工程。
【0038】
(第三工程)前記式(11)で表されるカルボン酸をエステル化し、下記式(12)
【化20】

(式中、R17は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R16と同じでもよく、R18は、炭素数1乃至8の置換基を表し、R15と同じでもよく、R17とR18は同じでもよい。)で表されるγ−ケトエステルを製造する工程。
【0039】
(第四工程)前記式(12)で表されるγ−ケトエステルを環化させ、下記式(13)
【化21】

(式中、R19は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R17と同じでもよい。)で表される化合物を製造する工程。
【0040】
(第五工程)前記式(13)で表される化合物をエーテル化し、下記式(14)
【化22】

(式中、R20は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R19と同じでもよく、R21は、炭素数1乃至8の置換基を表し、R20とR21は同じでもよい。)で表される化合物を製造する工程。
【0041】
(第六工程)前記式(14)で表される化合物にマロン酸エステルを付加させるとともに脱炭酸させ、下記式(15)
【化23】

(式中、R22は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R20と同じでもよく、R23は、炭素数1乃至8の置換基を表し、R22とR23は同じでもよい。)で表される置換シクロペンテノンを製造する工程。
【0042】
<16>下記式(16)
【化24】

(式中、R24は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表す。)で表される化合物を転位させることを特徴とする、下記式(17)
【0043】
【化25】

(式中、R25は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R24と同じでもよい。)で表される1,3−シクロペンタンジオン類の製造方法。
【0044】
<17>下記式(18)
【化26】

(式中、R26は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R25と同じでもよく、R27は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R26とR27は同じでもよい。)で表される置換シクロペンテノンの側鎖の二重結合を選択的に酸化することを特徴とする、下記式(19)
【0045】
【化27】

(式中、R28は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R26と同じでもよく、R29は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R27と同じでもよく、R28とR29は同じでもよい。)で表される置換シクロペンテノンの製造方法。
【0046】
<18>前記式(19)で表される置換シクロペンテノンのオキシラン環を加水分解することを特徴とする、下記式(20)
【化28】

(式中、R30は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R28と同じでもよく、R31は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R29と同じでもよく、R30とR31は同じでもよい。)で表されるジオールの製造方法。
【0047】
<19>下記の9工程より成ることを特徴とする置換シクロペンタノンの製造方法。
(第一工程)1,3−シクロペンタンジオンをエーテル化し、下記式(21)
【化29】

(式中、R32は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表す。)で表される化合物を製造する工程。
【0048】
(第二工程)前記式(21)で表される化合物を転位させ、下記式(22)
【化30】

(式中、R33は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R32と同じでもよい。)で表される化合物を製造する工程。
【0049】
(第三工程)前記式(22)で表される化合物をエーテル化し、下記式(23)
【化31】

(式中、R34は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R33と同じでもよく、R35は、炭素数1乃至8の置換基を表し、R34とR35は同じでもよい。)で表わされる化合物を製造する工程。
【0050】
(第四工程)前記式(23)で表される化合物にマロン酸エステルを付加させるとともに脱炭酸させ、下記式(24)
【化32】

(式中、R36は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R34と同じでもよく、R37は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R36とR37は同じでもよい。)で表される置換シクロペンテノンを製造する工程。
【0051】
(第五工程)
前記式(24)で表される置換シクロペンテノンの側鎖の二重結合を選択的に酸化し、下記式(25)
【化33】

(式中、R38は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R36と同じでもよく、R39は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R37と同じでもよく、R38とR39は同じでもよい。)で表される化合物を製造する工程。
【0052】
(第六工程)
前記式(25)で表される化合物のオキシラン環を加水分解し、下記式(26)
【化34】

(式中、R40は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R38と同じでもよく、R41は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R39と同じでもよく、R40とR41は同じでもよい。)で表されるジオールを製造する工程。
【0053】
(第七工程)
前記式(26)の5員環内二重結合に水素添加し、下記式(27)
【化35】

(式中、R42は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R40と同じでもよく、R43は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R41と同じでもよく、R42とR43は同じでもよい。)で表される化合物を製造する工程。
【0054】
(第八工程)
前記式(27)で表される化合物のジオールをジオキソラン化し、下記式(28)
【化36】

(式中、R44は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R42と同じでもよく、R45は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R43と同じでもよく、R44とR45は同じでもよい。Zは炭素数1乃至6のアルコキシ基もしくはアミノ基を表す。)で表される化合物を製造する工程。
【0055】
(第九工程)
前記式(28)で表される化合物をカルボン酸無水物の存在下に分解し、下記式(29)
【化37】

(式中、R46は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R44と同じでもよく、R47は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R45と同じでもよく、R46とR47は同じでもよい。)で表される置換シクロペンタノンを製造する工程。
<20>前記式(17)で表される1,3−シクロペンタンジオン類。
<21>前記式(18)で表される置換シクロペンテノン。
<22>前記式(19)で表される置換シクロペンテノン。
<23>前記式(20)で表されるジオール。
<24>前記式(23)で表される化合物。
【0056】
<25>下記の3工程より成ることを特徴とする置換シクロペンテノンの製造法。
(第一工程)1,3−シクロペンタンジオンと、下記式(30)
【化38】

(式中、R48は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、Xは脱離基を表し、点線は、結合があってもなくてもよいことを表す。)で表される化合物を塩基存在下に反応させ、下記式(31)
【0057】
【化39】

(式中、R49は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R48と同じでもよく、点線は前記の意味を表す。)
で表される化合物を製造する工程。
【0058】
(第二工程)前記式(31)で表される化合物をエーテル化し、下記式(32)
【化40】

(式中、R50は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R49と同じでもよく、R51は、炭素数1乃至8の置換基を表し、R50とR51は同じでもよい。点線は前記の意味を表す。)で表される化合物を製造する工程。
【0059】
(第三工程)前記式(32)で表される化合物にマロン酸エステルを付加させるとともに脱炭酸させ、下記式(33)
【化41】

(式中、R52は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R50と同じでもよく、R53は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R52とR53は同じでもよい。点線は前記の意味を表す。)で表される化合物を製造する工程。
【0060】
<26>下記式(34)
【化42】

(式中、R54、R55は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R54とR55は同じでもよい。)
で表される化合物を脱炭酸することを特徴とする、下記式(35)
【0061】
【化43】

(式中、R56は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R54と同じでもよい。)で表されるメチルシクロペンテノン類の製造方法。
【0062】
<27>下記の2工程より成ることを特徴とするγ−ラクトン類の製造方法。
(第一工程)下記式(36)
【化44】

(式中、R57は、水素原子又は炭素数1乃至12の置換基を表す。)
で表されるフルフリルアルコールを、下記式(37)
【0063】
【化45】

(式中、R58は、炭素数1以上の炭化水素基を表す。)
で表されるアルコールの存在下、塩化水素により開裂し、下記式(38)
【0064】
【化46】

(式中、R59は、水素原子又は炭素数1乃至12の置換基を表し、R57と同じでもよく、R60は、炭素数1乃至8の置換基を表し、R58と同じでもよく、R59とR60は同じでもよい。)で表されるγ−ケトエステルを製造する工程。
【0065】
(第二工程)前記式(38)で表されるγ−ケトエステルを還元し、下記式(39)
【化47】

(式中、R61は、水素原子又は炭素数1乃至12の置換基を表し、R59と同じでもよい。)で表されるγ−ラクトン類を製造する工程。
【発明の効果】
【0066】
本発明により、ジャスミン系香料やその中間体等として有用なシス−2,3−ジ置換シクロペンタノンを、高立体選択的に且つ工業的に有利に製造する方法を提供することが可能となる。また、当該置換シクロペンタノン製造のための有用中間体を工業的に有利に提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】当業者が予想する、酸性条件下での2,3−ジ置換シクロペンタノンのエノール化の進行図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
本発明につき、以下に具体的に説明する。
<第1発明>
本発明の第1は、上記式(1)で表される置換シクロペンテノンの5員環内二重結合を、遷移金属触媒存在下、カルボン酸又は特定濃度のカルボン酸エステルを溶媒として水素添加して式(2)で表される置換シクロペンタノンを製造方法である。
【0069】
前記式(1)で表される化合物の水素添加においては、カルボン酸及び/又はカルボン酸エステルを溶媒として水素添加することが必須要件である。この要件を満足することにより、望むシス−2−置換−3−アルコキシカルボニルメチルシクロペンタノンを高い選択率で得ることができる。
【0070】
ケトン類は、酸性条件下でエノール化することが知られている(例えば、モリソン・ボイド「有機化学」(中)第5版、p.1139)。2,3−ジ置換シクロペンタノンに関しても、酸性条件下においてエノール化が進行すると予想され、せっかくシス体が生成しても、カルボニル基に隣接する炭素上の立体配置が反転し、熱力学的に安定なシス体に異性化してしまうものと予想された(図1)。ところが、本発明者らの実験の結果、カルボン酸を溶媒とした水素添加の方が、メタノール等の中性の物質を溶媒とした場合よりもシス体の選択率が高いという驚くべき事実が判明した。この事実は、有機化学の常識に反しており、当業者が容易に予測できるものではない。
【0071】
前記式(1)において、R1、R2は、炭素数1〜8の鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、それらの基は、塩素、臭素、窒素、酸素、硫黄、鉄、コバルトなどのヘテロ原子を含んでも良い。R1、R2の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられる。ジャスミン系香料への応用を考慮した場合には、ペンチル基の他、cis−2−ペンテニル基、2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが好適である。RとRは同じでもよい。
【0072】
前記式(2)において、R3、R4は、炭素数1〜8の鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、それらの基は、塩素、臭素、窒素、酸素、硫黄、鉄、コバルトなどのヘテロ原子を含んでも良い。R3、R4の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられる。ジャスミン系香料への応用を考慮した場合には、ペンチル基の他、cis−2−ペンテニル基、2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが好適である。R3、R4は、それぞれR1、R2と同じでもよい。R3とR4は同じでもよい。
前記のカルボン酸には汎用のものを用いればよい。例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、マロン酸などの常温で液体のカルボン酸の他、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸など、常温で固体のカルボン酸に水などの液体を混合し液体としたものなどがあげられる。中でも、式(2)化合物の収率が高く、シス体をより多く製造できる点から、乳酸が好ましい。
【0073】
前記のカルボン酸エステルには、汎用のものを用いればよい。例えば、上記カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステルなどがあげられる。中でも、式(2)化合物の収率が高く、シス体をより多く製造できる点から、酢酸エステルが好ましい。また、カルボン酸とカルボン酸エステルとを比較すると、カルボン酸の方が式(2)化合物の収率が高くなることから好ましい。
【0074】
前記の式(1)化合物の水素添加の溶媒には、カルボン酸及び/又はカルボン酸エステルのみを用いてもよいし、それらとその他の溶媒(アルコール類、エーテル類、炭化水素類など)との混合溶媒を用いてもよい。
【0075】
前記式(1)化合物の水素添加の溶媒として用いるカルボン酸及び/又はカルボン酸エステルの使用量は、水素添加開始時の反応溶液において、前記式(1)で表される化合物1重量部に対し、0.05重量部以上1000重量部未満とすると、反応速度とシス体比を維持できる点で好ましい。より好ましくは、0.1重量部以上500重量部未満、もっとも好ましくは、1重量部以上200重量部未満である。
【0076】
上記遷移金属触媒としては、汎用のものを用いることができる。不均一系触媒の例としては、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、ラネー、白金、ニッケルなどがあり、その中には炭素担持系触媒として、Pd−炭素、Rh−炭素、Ru−炭素、無機物担持系触媒としてPd−Al23、Rh−Al23、Ru−Al23、酸化物系触媒としては、PtO2、金属系触媒としてPt、合金系触媒としてラネーNi、たんぱく質担持系触媒としては絹−Pdなどがあげられる。また、均一系触媒の例としては、Wilkinson錯体(RhCl(PPh)などがあげられる。反応後の分離の容易さにおいて不均一系触媒が好ましく、そのうちパラジウムが効果的である。そのなかでも炭素担持系触媒が好ましく、最も好ましくはPd−炭素である。なお、炭素担持系触媒の炭素には活性炭も包含される。触媒の使用量は、例えば、式(1)化合物1重量部に対し、0.01〜100重量部が好ましい。不均一系触媒の炭素担持系触媒や無機物担持系触媒において、遷移金属の担持量に制限はないが、好ましくは0.1〜50wt%であり、もっとも好ましくは1〜20wt%である。
【0077】
前記の水素添加は、常圧下で反応容器に水素導入することにより容易に進行するが、反応速度の更なる向上などを目的として、例えば1〜10kg/cm2程度の加圧下で行うことも可能である。
【0078】
前記の水素添加の際の反応温度に制限はないが、実用的観点より、−30℃〜100℃が好ましく、より好ましくは−10〜50℃である。
【0079】
前記水素添加を行うにあたって、基質である式(1)化合物以外の必須成分は、実質的に触媒と溶媒及び水素のみであり、触媒活性に影響を与える、すなわち、式(2)体の収率を上げたり式(2)化合物中のシス体比を高めるために通常必要とされる第三成分は不要である。特に、溶媒に可溶な第三成分を添加する必要がない。このような第三成分には、アルミニウムアルコラートやリン酸塩、酢酸塩、ニ座ジホスフィン配位子などの助触媒などが挙げられる。したがって、反応終了後は触媒をろ別するのみで式(2)と触媒が簡単に分離でき、触媒もそのまま再利用が可能である。このことは、工業的に式(2)化合物を製造する場合には極めて大きなメリットであり、従来技術に対する大きな進歩である。別の目的でこのような第三成分を加える場合は、0.01乃至0.5倍モルといったごく少量であれば、反応系に影響を与えることなく添加することができる。なお前記の第三成分には、式(2)化合物とのろ別が容易な物質や、溶媒および式(1)化合物、式(2)化合物の異性体比や収率に実質的に影響を与えないような物質は含まれない。このような物質は目的に応じ、例えば触媒に対し0.01乃至2倍モルの範囲で添加することができる。
【0080】
水素添加反応終了後は、触媒をろ別し、公知の方法で精製して、目的の式(2)を得ることができる。
【0081】
<第2発明>
本発明の第2は、上記式(3)化合物と塩基を、非プロトン性極性溶媒中で加熱することにより環化させて1、3−シクロペンタンジオン類を製造する方法である。前記の製造方法においては、非プロトン性極性溶媒を10wt%以上100wt%以下含有する溶媒中で式(3)化合物と塩基性物質を反応をさせることが必須要件である。この要件を満足することにより、1、3−シクロペンタンジオン類を高収率で得ることができる。
本発明で得られる式(4)で表される1、3−シクロペンタンジオン類は、上記式(2)化合物を製造する際の前駆体としても用いることのできるものである。本発明の要件を満足することにより、1,3−シクロペンタンジオン類を高収率で得ることができる。
【0082】
前記式(3)において、R5は、水素原子又は炭素数1乃至8の鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表す。R5の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられる。ジャスミン系香料への応用を考慮した場合には、ペンチル基の他、cis−2−ペンテニル基、2−ペンチニル基などが好適である。
【0083】
前記式(3)において、R6は、炭素数1乃至8の鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表す。R6の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられるが、アルキル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。R5とR6は同じでもよい。
【0084】
前記式(4)において、R7は、水素原子又は炭素数1乃至8の鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表す。R7の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられる。ジャスミン系香料への応用を考慮した場合には、ペンチル基の他、cis−2−ペンテニル基、2−ペンチニル基などが好適である。R7はR5と同じでもよい。
非プロトン性極性溶媒の含有量は、更に好ましくは20wt%以上100wt%以下であり、もっとも好ましくは50wt%以上100wt%以下である。
【0085】
前記の非プロトン性極性溶媒とは、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ヘキサメチルホスホロトリアミド(HMPT)、N−メチルピロリドン(NMP)などであり、これらを単独で、もしくは混合して用いることができる。これらの非プロトン性極性溶媒中最も好ましいのは、塩基の溶解度が高く且つ塩基により変質しにくいジメチルスルホキシド(DMSO)である。
【0086】
前記の製造に用いる溶媒には、非プロトン性極性溶媒以外の成分を含んでも構わない。例えば、炭化水素系溶媒としては、トルエン、キシレン、アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノールなどがあげられる。当該溶媒中の非プロトン性極性溶媒以外の成分の含有量の範囲は、0wt%以上90wt%未満であり、更に好ましくは、0wt%以上80%未満であり、もっとも好ましくは、0wt%以上50wt%未満である。
【0087】
前記式(3)で表される化合物の反応溶液中の濃度は、例えば、0.01乃至10mol/Lの範囲でよいが、0.01乃至5mol/Lの比較的希薄な系で反応させると、より好ましい結果が得られることが多い。さらに好ましくは、0.01乃至1mol/Lである。
【0088】
前記の製造方法で用いる塩基には、汎用のものを用いればよい。例えば、金属アルコキシドとしては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド、金属アミドとしては、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラザンなどがあげられるが、好ましくは金属アルコキシドであり、最も好ましくはナトリウムメトキシドである。この塩基は、式(3)化合物に対して1.0モル以上10モル以下用いることが好ましい。さらに好ましくは、1.5モル以上10モル以下である。
【0089】
なお、加熱温度に制限はないが、実用的な反応速度が得られること、及びジメチルスルホキシドの熱安定性を考慮すると、好ましくは、50乃至150℃であり、もっとも好ましくは、60乃至120℃である。
【0090】
本発明の1、3−シクロペンタンジオンの製造方法は、以下の2つの要件を満足することで、より好ましい結果が得られることが多い。
【0091】
1.非プロトン性極性溶媒と塩基性物質の混合物に対し、前記式(3)で表される化合物を滴下する。このとき、前記式(3)で表される化合物を上述の溶媒やその他の溶媒で予め希釈したものを滴下してもよい。希釈する濃度は、例えば0.01mol/l〜10mol/lである。また滴下時間に制限はないが、好ましくは、10分乃至5時間であり、もっとも好ましくは30分乃至3時間である。
【0092】
2.減圧下に溶媒を留去しつつ環化させる。減圧度は、発泡が問題にならない範囲で適宜設定すればよいが、300mmHg以下0.1mmHg以上が好ましく、更に好ましくは200mmHg以下0.1mmHg以上である。また、減圧した際に発泡が激しいときには、消泡剤を適宜添加してもよい。
【0093】
上記の反応終了後は、公知の方法で精製し、目的の式(3)化合物を得ることができる。
【0094】
<第3発明>
本発明の第3は、上記式(5)で表されるフルフリルアルコールを、上記式(6)で表されるアルコールの存在下、塩化水素により開裂させることを特徴とする上記式(7)のγ−ケトエステルの製造方法である。具体的には、式(5)のフルフリルアルコールと式(6)のアルコ―ル、および塩化水素を含む反応液を加熱することにより製造することができる。式(7)の化合物は、上記の式(2)で表される置換シクロペンタノンや上記式(4)で表される1、3−シクロペンタンジオンを製造する際の前駆体としても有用である。本発明の要件を満足することにより、1,3−ペンタンジオン類を高収率で得ることができる。
【0095】
なお、前記式(5)において、R8は、水素原子又は炭素数1乃至8の鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表す。R8の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられる。ジャスミン系香料への応用を考慮した場合には、ペンチル基の他、cis−2−ペンテニル基、2−ペンチニル基などが好適である。
【0096】
前記式(6)において、R9は炭素数3以上の炭化水素基を表す。R9の具体例としては、アルキル基としては、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、アルケニル基としては、アリル基、メタリル基、などがあげられるが、反応後処理における留去の容易性、安全性や価格等を考慮すると、アルキル基が好ましく、中でもn−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基が好ましく、もっとも好ましくは、n−ブチル基、イソブチル基である。
【0097】
前記式(7)において、R10は、水素原子又は炭素数1乃至8の鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表す。R10の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられる。ジャスミン系香料への応用を考慮した場合には、ペンチル基の他、cis−2−ペンテニル基、2−ペンチニル基などが好適である。R10はR8と同じでもよい。
【0098】
前記式(7)において、R11は、炭素数1乃至8の鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表す。R11の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられるが、アルキル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。R11はR9と同じでもよく、R10とR11は同じでもよい。
【0099】
前記式(6)で表されるアルコールは、前記式(5)で表されるフルフリルアルコールに対して等モル以上100倍モル以下用いることが好ましい。さらに好ましくは、1.5倍モル以上80倍モル以下である。
【0100】
前記の製造方法に用いる反応液には、式(6)のアルコール以外に、メタノール、エタノール、エーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレンといったその他の成分が存在していても構わないが、その割合は反応液の0.01wt%〜50wt%程度がよい。
【0101】
塩化水素を反応液中へ供給する方法には、塩化水素ガスを吹き込む方法、塩酸(塩化水素の水溶液)を添加する方法、塩化アセチルなどの塩化アシル化合物を添加し、前記式(6)のアルコール等と反応させ、反応系中で塩化水素を発生させる方法等があげられる。中でも塩化水素ガスを吹き込む方法をとった場合により好ましい結果が得られる場合が多い。
【0102】
塩化水素は、前記式(5)のフルフリルアルコール1.0モルに対し、0.01モル乃至5モル用いるのが好ましい。更に好ましくは、0.01モル乃至2モルである。
【0103】
前記の加熱温度は、実用的な反応速度が得られることを考慮すると、30乃至150℃である。更に好ましくは、40乃至120℃であり、もっとも好ましくは、50乃至100℃である。
【0104】
さらに、前記式(5)のフルフリルアルコールを前記式(6)のアルコールと塩化水素の混合物に加える際、滴下することにより加えると、高い収率でγ−ケトエステルを得られることが多い。その場合、前記式(5)の化合物を予め前記式(6)のアルコールやその他の溶媒等で希釈したものを滴下してもよい。希釈する濃度は、例えば0.01mol/l〜10mol/lである。滴下時間に制限はないが、好ましくは、10分乃至5時間であり、もっとも好ましくは30分乃至3時間である。
【0105】
上記の反応終了後は、公知の方法で精製し、目的の式(7)のγ−ケトエステルを得ることができる。
【0106】
<第4発明>
本発明の第4は、次の6工程からなる置換シクロペンテノンの製造法である。
[1]第一工程:前記式(8)で表されるフルフリルアルコールを、下記式(9)で表されるアルコールの存在下、塩化水素により開裂し、下記式(10)で表されるγ−ケトエステルを製造する工程。
[2]第二工程:前記式(10)で表されるγ−ケトエステルのエステルを加水分解し、下記式(11)で表されるγ−ケトカルボン酸を製造するとともに、副生物を除去する工程。
[3]第三工程:前記式(11)で表されるカルボン酸をエステル化し、下記式(12)で表されるγ−ケトエステルを製造する工程。
[4]第四工程:前記式(12)で表されるγ−ケトエステルを環化させ、下記式(13)で表される1,3−シクロペンタンジオンを製造する工程。
[5]第五工程:前記式(13)で表される1,3−シクロペンタンジオンをエーテル化し、下記式(14)で表されるエノンを製造する工程。
[6]第六工程:前記式(14)で表されるエノンにマロン酸エステルを付加させるとともに脱炭酸させ、下記式(15)で表される置換シクロペンテノンを得る工程。
【0107】
これらの要件を満足することにより、前記式(15)で表される置換シクロペンテノンを、汎用の装置を用い短工程で且つ有害な廃棄物も排出せず工業的に製造することができる。式(15)で表される置換シクロペンテノンは、上記の式(2)で表される置換シクロペンタノンを製造する際の前駆体としても有用である。
【0108】
以下各工程について説明する。
【0109】
[第一工程]
まず、上記式(8)で表されるフルフリルアルコールを、下記式(9)で表されるアルコールの存在下、塩化水素により開裂し、下記式(10)で表されるγ−ケトエステルを製造する。具体的には、塩化水素及び前記式(9)で表されるアルコールの存在下、前記式(8)で表される化合物を加熱することにより達成できる。この工程は、上述の第3発明と同様の方法により行えばよい。
【0110】
前記式(8)において、R12は水素原子又は炭素数1乃至8の鎖状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、それらの基はヘテロ原子を含んでも良い。R12の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられる。ジャスミン系香料への応用を考慮した場合には、ペンチル基の他、cis−2−ペンテニル基、2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが好適である。
【0111】
前記式(9)において、R13は、炭素数1以上の炭化水素基を表す。R13の具体例としては、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、アルケニル基としては、アリル基、メタリル基、などがあげられるが、反応後処理における留去の容易性、安全性や価格等を考慮すると、アルキル基が好ましく、中でもn−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基が好ましく、もっとも好ましくは、n−ブチル基、イソブチル基である。
【0112】
前記式(10)において、R14は水素原子又は炭素数1乃至8の鎖状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、それらの基はヘテロ原子を含んでも良い。R12の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられる。ジャスミン系香料への応用を考慮した場合には、ペンチル基の他、cis−2−ペンテニル基、2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが好適である。R14はR12と同じでもよい。
【0113】
前記式(10)において、R15は、炭素数1乃至8の鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表す。R15の具体例としては、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、アルケニル基としては、アリル基、メタリル基、などがあげられるが、アルキル基が好ましく、中でもn−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基が好ましく、もっとも好ましくは、n−ブチル基、イソブチル基である。R15はR13と同じでもよく、R14とR15は同じでもよい。
【0114】
前記式(8)で表される化合物は、公知の方法で合成することができる。例えば、フランの2−位の水素をアルキルリチウムなどの強塩基で引き抜いて生成するアニオンを、下記式(40)
12−CHO (40)
(式中、R12は前記の意味を表す。)
で表されるアルデヒドに付加する方法や、フルフラールに対し下記式(41)
12MgX (41)
(式中、R12は前記の意味を表し、XはClもしくはBrを表す。)
で表される有機マグネシウム化合物もしくは下記式(42)
12Li (42)
(式中、R1は前記の意味を表す。)
で表される有機リチウム化合物などを付加させる方法等、さまざまな方法があげられるが、簡便さにおいては有機マグネシウム化合物を用いる方法が好適である。
【0115】
前記式(9)で表されるアルコールの存在量は、前記式(8)で表されるフルフリルアルコールに対して等モル以上100倍モル以下用いることが好ましい。さらに好ましくは、1.5倍モル以上80倍モル以下である。
【0116】
塩化水素を反応液中へ供給する方法は、上記の第3発明と同様、塩化水素ガスを吹き込む方法、塩酸(塩化水素の水溶液)を添加する方法、塩化アセチルなどの塩化アシル化合物を添加し、前記式(9)のアルコール等と反応させ、反応系中で塩化水素を発生させる方法等があげられる。中でも塩化水素ガスを吹き込む方法をとった場合により好ましい結果が得られる場合が多い。
【0117】
塩化水素は、前記式(8)のフルフリルアルコール1.0モルに対し、0.01モル乃至5モル用いるのが好ましい。更に好ましくは、0.01モル乃至2モルである。
【0118】
反応温度は、実用的な反応速度が得られることを考慮すると、30乃至150℃が好ましい。更に好ましくは、40乃至120℃であり、もっとも好ましくは、50乃至100℃である。
【0119】
さらに、前記式(8)のフルフリルアルコールを前記式(9)のアルコールと塩化水素の混合物に加える際、滴下することにより加えると、高い収率でγ−ケトエステルを得られることが多い。その場合、前記式(8)の化合物を予め前記式(9)のアルコールやその他の溶媒等で希釈したものを滴下してもよい。希釈する濃度は、例えば0.01mol/l〜10mol/lである。滴下時間に制限はないが、好ましくは、10分乃至5時間であり、もっとも好ましくは30分乃至3時間である。
【0120】
[第二工程]
次に、前記式(10)で表されるγ−ケトエステルを加水分解し、前記式(11)で表されるγ−ケトカルボン酸を製造するとともに副生物を除去する。本工程により、第一工程の開裂反応で生じた副生物を簡便且つ効率的に除去することができ、蒸留などの通常の精製手段に比べ、操作性と製品歩留まりの両面において格段にすぐれている。
【0121】
前記式(11)において、R16は水素原子又は炭素数1乃至8の鎖状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、それらの基はヘテロ原子を含んでも良い。R12の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられる。ジャスミン系香料への応用を考慮した場合には、ペンチル基の他、cis−2−ペンテニル基、2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが好適である。R16はR14と同じでもよい。
【0122】
本工程は以下の3段階よりなる。いずれの段階も混合もしくは相分離という簡単な操作のみからなり、すべての段階を同一の容器内で実施することができる。
【0123】
1. 前記式(10)で表されるγ−ケトエステルを当該ケトエステルに対し1乃至10倍モル、好ましくは1乃至5倍モルのアルカリ金属水酸化物を含む水溶液で加水分解し、対応するγ−ケトカルボン酸のアルカリ金属塩とする段階。
【0124】
2. 当該加水分解物を非水溶性有機溶媒と混合し、有機溶媒相に副生物を抽出した後、相分離により当該有機溶媒層を除去する段階。
【0125】
3. γ−ケトカルボン酸のアルカリ金属塩を酸で中和し、式(11)のγ−ケトカルボン酸とする段階。
【0126】
上記1.で用いるアルカリ金属水酸化物には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど汎用のものを用いることができる。加水分解条件も公知の方法を採用すればよく、例えば、アルカリ金属水酸化物の水溶液と10〜40℃で混合するのみでよい。上記1.のアルカリ金属水酸化物の水溶液には、反応物の相溶性を向上させることなどを目的として、メタノールやエタノールなどの水溶性溶媒を含有させてもよい。この場合、当該アルカリ金属水酸化物の水溶液におけるアルカリ金属水酸化物の濃度は0.1〜40wt%とするとよい。当該アルカリ金属の水酸化物の水溶液における水溶性溶媒の含有量は、10〜95wt%とするとよい。
【0127】
上記2.で用いる非水溶性有機溶媒としては、例えば、炭化水素系溶媒であるペンタン、ヘキサン、トルエン、キシレン;エーテル系溶媒であるジエチルエーテルなどがあげられる。前記非水溶性有機溶媒は、例えば、γ−ケトカルボン酸のアルカリ金属塩1重量部に対し1〜10重量部加えればよい。
【0128】
上記3.で用いる酸には、塩酸や硫酸など汎用のものを用いることができる。
【0129】
[第三工程]
次に、前記式(11)で表されるγ−ケトカルボン酸を公知の方法を用いてエステル化して前記式(12)で表されるγ−ケトエステルを製造する。
【0130】
前記式(12)において、R17は水素原子又は炭素数1乃至8の鎖状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、それらの基はヘテロ原子を含んでも良い。R17の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられる。ジャスミン系香料への応用を考慮した場合には、ペンチル基の他、cis−2−ペンテニル基、2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが好適である。R17はR16と同じでもよい。
【0131】
前記式(12)において、R18は、炭素数1乃至8の鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表す。R18の具体例としては、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、アルケニル基としては、アリル基、メタリル基、などがあげられるが、アルキル基が好ましく、中でもn−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基が好ましく、もっとも好ましくは、n−ブチル基、イソブチル基である。R18はR15と同じでもよく、R17とR18は同じでもよい。
【0132】
前記のエステル化の方法としては、例えば、
1)当該カルボン酸と、当該カルボン酸に対し0.01乃至10倍モルの酸触媒、および当該カルボン酸に対し1乃至100倍モルのアルコールとの混合物を50乃至120℃に加熱する方法、
2)当該カルボン酸と、当該カルボン酸に対し1乃至10倍モルのアルコールを、当該カルボン酸に対し0.01乃至10倍モルの酸触媒存在下にベンゼンやトルエン中で加熱し、副生する水を共沸的に除去する方法などがあげられる。
【0133】
ここで用いる酸触媒としては、塩化水素、硫酸、リン酸などの鉱酸;p−トルエンスルホン酸などの有機酸、四塩化チタンなどの金属系触媒などがあげられるが、収率と価格の観点より、塩化水素もしくは硫酸が好ましい。
【0134】
[第四工程]
次に、前記式(12)で表されるγ−ケトエステルを環化させ、下記式(13)で表される1,3−シクロペンタンジオンを製造する。具体的には、塩基の存在下、前記式(12)で表されるγ−ケトエステルを加熱することにより達成できる。
【0135】
前記式(13)において、R19は、水素原子又は炭素数1乃至8の鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表す。R19の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられる。ジャスミン系香料への応用を考慮した場合には、ペンチル基の他、cis−2−ペンテニル基、2−ペンチニル基などが好適である。R19はR17と同じでもよい。
【0136】
前記の塩基には、例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシドなどの金属アルコキシド;リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラザンなどの金属アミドなどがあげられるが、好ましくは金属アルコキシドであり、最も好ましくはナトリウムメトキシドである。塩基の使用量に特に制限はないが、式(12)のケトエステルに対し、等モル以上10倍モル以下用いることが好ましい。さらに好ましくは、1.5倍モル以上10倍モル以下である。
【0137】
前記の溶媒としては、例えば、炭化水素系溶媒としては、トルエン、キシレン;アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール;非プロトン性極性溶媒としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ヘキサメチルホスホロトリアミド(HMPT)、N−メチルピロリドン(NMP)などが例示できる。中でも非プロトン性極性溶媒が好ましく、より好ましくはジメチルスルホキシド(DMSO)である。これらの溶媒は単独で、もしくは混合して用いることができる。溶媒の量は、当該ケトエステル1重量部に対し、0.1重量部以上1000重量部未満が好ましく、もっとも好ましくは1重量部以上500重量部未満である。
【0138】
当該溶媒中の非プロトン性極性溶媒以外の成分の含有量の範囲は、0wt%以上90wt%未満が好ましく、更に好ましくは、0wt%以上80%未満であり、もっとも好ましくは、0wt%以上50wt%未満である。
【0139】
前記式(12)で表される化合物の反応溶液中の濃度は、例えば、0.01乃至10mol/Lの範囲でよいが、0.01乃至5mol/Lの比較的希薄な系で反応させると、より好ましい結果が得られることが多い。さらに好ましくは、0.01乃至1mol/Lである。
【0140】
反応温度は、実用的な反応速度が得られることを考慮すると、50乃至150℃が好ましい。さらに好ましくは、60乃至120℃である。
【0141】
この第四工程は、以下の2つの要件を満足することで、より好ましい結果が得られることが多い。
【0142】
1.溶媒と塩基の混合物に対し、前記式(12)で表される化合物を滴下する。このとき、前記式(12)で表される化合物を上述の溶媒やその他の溶媒で予め希釈したものを滴下してもよい。希釈する濃度は、例えば0.01mol/l〜10mol/lである。また滴下時間に制限はないが、好ましくは、10分乃至5時間であり、もっとも好ましくは30分乃至3時間である。
【0143】
2.減圧下に溶媒を留去しつつ環化させる。このとき、減圧度に特に制限はなく、発泡が問題にならない範囲で適宜設定すればよいが、300mmHg以下0.1mmHg以上が好ましく、更に好ましくは200mmHg以下0.1mmHg以上である。また、発泡が激しいときには、消泡剤を適宜添加してもよい。
【0144】
[第五工程]
続いて、前記式(13)で表される1,3−シクロペンタンジオンをエーテル化し、下記式(14)で表されるエノンを製造する。
【0145】
前記式(14)において、R20は、水素原子又は炭素数1乃至8の鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表す。R20の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられる。ジャスミン系香料への応用を考慮した場合には、ペンチル基の他、cis−2−ペンテニル基、2−ペンチニル基などが好適である。R20はR19と同じでもよい。
【0146】
前記式(14)において、R21は、炭素数1乃至8の鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表す。R21の具体例としては、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、アルケニル基としては、アリル基、メタリル基、などがあげられるが、アルキル基が好ましく、もっとも好ましくは、メチル基もしくはエチル基である。R20とR21は同じでもよい。
【0147】
前記式(13)で表される化合物のエーテル化の方法に制限はないが、安全性や簡便性の点からは、酸触媒存在下に、式(13)化合物に対応する置換基を有するアルコールを加えて加熱する方法が好ましい。酸触媒には、鉱酸として塩化水素、硫酸、リン酸;有機酸として、p−トルエンスルホン酸;金属系触媒としては四塩化チタンなどがあげられるが、収率と価格の観点より、塩化水素もしくは硫酸が好ましい。酸触媒の量は、式(13)化合物に対し0.01乃至10倍モルが好ましい。
【0148】
対応する置換基を有するアルコール(R21−OH)の量は、式(13)化合物に対し1乃至100倍モルが好ましい。
反応温度は、工業的実施の容易性の観点より、50℃乃至120℃の範囲が好ましく、より好ましくは50乃至100℃、更に好ましくは、60℃乃至90℃である。
【0149】
[第六工程]
さらに、前記式(14)で表されるエノンにマロン酸エステルを付加させるとともに脱炭酸させて、下記式(15)で表される置換シクロペンテノンを得る。
【0150】
前記式(15)において、R22は、水素原子又は炭素数1乃至8の鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表す。R22の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられる。ジャスミン系香料への応用を考慮した場合には、ペンチル基の他、cis−2−ペンテニル基、2−ペンチニル基などが好適である。R22はR20と同じでもよい。
【0151】
前記式(15)において、R23は、炭素数1乃至8の鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表す。R23の具体例としては、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、アルケニル基としては、アリル基、メタリル基、などがあげられるが、アルキル基が好ましく、もっとも好ましくは、メチル基もしくはエチル基である。R23はR21と同じでもよく、R22とR23は同じでもよい。
【0152】
この工程は、前記式(14)のエノンに対するマロン酸エステルの共役付加反応を発端とし、それに引き続きアルコキシ基の脱離と脱炭酸が起こる反応である。この反応操作は公知の方法に準じればよい。例えば、アルカリ金属のアルコキシドをマロン酸エステルに予め作用させて、マロン酸エステルの活性水素を引き抜いてアニオンを生成させ、そこに前記式(14)の化合物を加えて加熱する方法が簡便である。
【0153】
マロン酸エステルの量は、前記式(14)のエノンに対し、1乃至10倍モルが好ましく、もっとも好ましくは、1乃至5倍モルである。アルカリ金属アルコキシドの量は、マロン酸エステルに対し、1乃至5倍モルが好ましく、もっとも好ましくは、1乃至2倍モルである。
【0154】
アルカリ金属のアルコキシドの例としては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド等が挙げられ、好ましくはナトリウムメトキシドである。
【0155】
反応温度は、工業的に実施する際容易であることから、50℃乃至100℃の範囲が好ましい。より好ましくは、60℃乃至90℃である。
【0156】
上記の反応終了後は、公知の方法で精製し、目的の式(15)化合物を得ることができる。
【0157】
<第5発明>
本発明の第5は、下記式(16)で表される化合物を転位させることにより、下記式(17)で表される1,3−シクロペンタンジオン類を製造する方法である。この要件を満足することにより、側鎖二重結合の位置及び立体配置を制御しつつ且つ簡便に前記式(17)化合物を製造することができる。式(17)の1、3−シクロペンタンジオン類は、側鎖にトランス型二重結合を有することをひとつの特徴としており、ジャスミン系香料などの有用な上記式(2)の置換シクロペンタノン合成における中間体等として極めて有用な化合物であり、本発明が初めて提供を可能とするものである。式(17)化合物は、その他プロスタグランジンやステロイドの合成のための前駆体として用いることもできる。
【0158】
前記式(16)において、R24は、水素原子又は炭素数1〜8の鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、それらの基は、塩素、臭素、窒素、酸素、硫黄、鉄、コバルトなどのヘテロ原子を含んでも良い。R24の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられるが、アルキル基が好ましく、もっとも好ましくは、メチル基もしくはエチル基である。
【0159】
前記式(17)において、R25は、水素原子又は炭素数1〜8の鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、それらの基は、塩素、臭素、窒素、酸素、硫黄、鉄、コバルトなどのヘテロ原子を含んでも良い。R25の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられるが、アルキル基が好ましく、もっとも好ましくは、メチル基もしくはエチル基である。R25はR24と同じでもよい。
【0160】
前記式(16)で表される化合物を転位させる方法に制限はないが、例えば、単に前記式(16)化合物を加熱するのみで達成できる。加熱は、溶媒中もしくは無溶媒で、50乃至250℃に加熱すればよい。好ましくは80乃至200℃であり、もっとも好ましくは120乃至160℃である。溶媒の具体例としては、炭化水素系溶媒として、トルエン、キシレン、アミン系溶媒としては、コリジンなどがあげられるが、キシレンが好ましい。溶媒の使用量は、前記式(16)で表される化合物1重量部に対し0.1乃至500重量部が好ましく、もっとも好ましくは、1乃至200重量部である。
【0161】
上記の反応終了後は、公知の方法で精製し、目的の式(17)化合物を得ることができる。
【0162】
<第6発明>
本発明の第6は、下記式(18)で表される置換シクロペンテノンの側鎖の二重結合を選択的に酸化して、下記式(19)で表される置換シクロペンテノンを製造する方法である。この要件を満足することにより、側鎖二重結合の立体配置を保持しつつ、且つ簡便に前記式(19)で表される置換シクロペンテノンを製造することが可能となる。
【0163】
式(18)の置換シクロペンテノンは、側鎖にトランス型二重結合を有することをひとつの特徴としており、また、前記式(19)で表される置換シクロペンテノンは、側鎖にオキシラン環を有することをひとつの特徴としている。いずれも、ジャスミン系香料などに有用な置換シクロペンタノンを合成する際の中間体等として極めて有用な化合物である。これらは、本発明が初めて提供を可能とするものである。また、これらの化合物は、例えばプロスタグランジンやステロイドを合成するための前駆体としても有用である。
【0164】
前記式(18)において、R26は、水素原子又は炭素数1〜8の鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、それらの基は、塩素、臭素、窒素、酸素、硫黄、鉄、コバルトなどのヘテロ原子を含んでも良い。R26の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられるが、アルキル基が好ましく、もっとも好ましくは、メチル基もしくはエチル基である。R26はR25とでもよい。
【0165】
前記式(18)において、R27は、水素原子又は炭素数1乃至8の鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表す。R27の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられるが、アルキル基が好ましく、もっとも好ましくは、メチル基もしくはエチル基である。R26とR27は同じでもよい。
【0166】
前記式(19)において、R28は、炭素数1〜8の鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、それらの基は、塩素、臭素、窒素、酸素、硫黄、鉄、コバルトなどのヘテロ原子を含んでも良い。R28の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられるが、アルキル基が好ましく、もっとも好ましくは、メチル基もしくはエチル基である。R28はR26と同じでもよい。
【0167】
前記式(19)において、R29は、水素原子又は炭素数1乃至8の鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表す。R29の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられるが、アルキル基が好ましく、もっとも好ましくは、メチル基もしくはエチル基である。R29とR27は同じでもよく、R28とR29は同じでもよい。
【0168】
前記式(18)化合物の側鎖のトランス型二重結合のみを選択的に酸化するには、過酸化物を用いることで簡便に達成できる。過酸化物の具体例としては、過酸としては、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、m−クロロ過安息香酸(m−CPBA)、ヒドロペルオキシドとしては、過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどがあげられる。好ましくは、過酸であり、もっとも好ましくは、m−クロロ過安息香酸(m−CPBA)である。過酸化物の使用量は、前記式(18)で表される置換シクロペンテノンに対し、1乃至10倍モルが好ましく、もっとも好ましくは、1乃至2倍モルである。
【0169】
必要に応じ、バナジウム系、モリブデン系、マンガン系などの触媒を用いてもよい。触媒の使用量は、過酸化物に対し0.01乃至10倍モルが好ましく、もっとも好ましくは0.1乃至5倍モルである。
【0170】
さらに、当該酸化においては必要に応じ溶媒を用いることができる。例えば、炭化水素系溶媒としては、ヘキサン、トルエン、キシレン、塩素化炭化水素系溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタンなどがあげられる。好ましくは塩素化炭化水素系溶媒であり、もっとも好ましくはジクロロメタンである。溶媒の使用量に制限はないが、前記式(18)で表される置換シクロペンテノン1重量部に対し、0.1乃至500重量部が好ましく、もっとも好ましくは、1乃至200重量部である。
【0171】
当該酸化反応の温度は、0乃至50℃が好ましく、もっとも好ましくは、0乃至30℃である。
【0172】
上記の反応終了後は、公知の方法で精製し、目的の式(19)化合物を得ることができる。
【0173】
<第7発明>
本発明の第7は、前記式(19)で表される置換シクロペンテノンのオキシラン環を加水分解することを特徴とする前記式(20)のジオールの製造方法である。この要件を満足することにより、ジャスミン系香料の合成において特に重要な、シス型二重結合を側鎖に導入する足がかりとなるジオールを立体選択的に導入することが可能となる。
【0174】
前記式(20)で表されるジオールは、側鎖にジオールを有することをひとつの特徴としており、ジャスミン系香料などに有用な置換シクロペンタノンを合成する際の中間体としてもちいることができる。式(20)化合物は、本発明が初めて提供を可能とするものである。
【0175】
前記式(20)において、R30は、炭素数1〜8の鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、それらの基は、塩素、臭素、窒素、酸素、硫黄、鉄、コバルトなどのヘテロ原子を含んでも良い。R30の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられるが、アルキル基が好ましく、もっとも好ましくは、メチル基もしくはエチル基である。R30はR28と同じでもよい。
【0176】
前記式(20)において、R31は、水素原子又は炭素数1乃至8の鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表す。R31の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられるが、アルキル基が好ましく、もっとも好ましくは、メチル基もしくはエチル基である。R31とR29は同じでもよく、R30とR31は同じでもよい。
【0177】
加水分解には、酸触媒もしくは塩基触媒を用いる公知の方法を採用すればよい。酸触媒の具体例としては、塩酸、硫酸、過塩素酸が、塩基触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどがあげられるが、酸触媒が好ましく、もっとも好ましくは、過塩素酸である。触媒の使用量は、前記式(19)で表される置換シクロペンテノンに対し0.01乃至20倍モルが好ましく、もっとも好ましくは、0.05乃至10倍モルである。
【0178】
前記の加水分解を行う際、反応物の相溶性を向上させることなどを目的として、親水性溶媒を含有させてもよい。親水性溶媒には例えば、アルコール系溶媒として、メタノール、エタノール、n−ブタノール、t−ブタノール、エーテル系溶媒としてはジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどがあげられる。中でも、アルコール系溶媒ではt−ブタノールが好ましく、エーテル系溶媒ではテトラヒドロフランが好ましく、もっとも好ましくは、テトラヒドロフランである。親水性溶媒は、水1重量部に対し0.01乃至20重量部が好ましく、もっとも好ましくは0.1乃至10重量部である。また、式(19)で表される置換シクロペンテノン1重量部に対して0.1乃至500重量部が好ましく、さらに好ましくは1〜200重量部である。
【0179】
加水分解の温度は、通常0℃乃至50℃程度が好ましく、もっとも好ましくは、10乃至40℃である。
【0180】
上記の反応終了後は、公知の方法で精製し、目的の式(20)化合物を得ることができる。
【0181】
<第8発明>
本発明は、下記の9工程より成ることを特徴とする前記式(29)で表される置換シクロペンタノンの製造方法である。この要件を満足することにより、前記式(29)で表される置換シクロペンタノンを、汎用の装置を用い、且つ高立体選択的に製造することが可能となる。前記式(29)の置換シクロペンタノンは、上記の式(2)で表される置換シクロペンタノンの一形態であり、ジャスミン系香料として特に有用な構造である。
[1]第一工程:1,3−シクロペンタンジオンをエーテル化し、前記式(21)で表される化合物を製造する工程。
[2]第二工程:前記式(21)で表される化合物を転位させ、前記式(22)で表される化合物を製造する工程。
[3]第三工程:前記式(22)で表される化合物をエーテル化し、前記式(23)で表わされるエノンを製造する工程。
[4]第四工程:前記式(23)で表されるエノンにマロン酸エステルを付加させるとともに脱炭酸させ、前記式(24)で表される置換シクロペンテノンを製造する工程。
[5]第五工程:前記式(24)で表される置換シクロペンテノンの側鎖の二重結合を選択的に酸化し、前記式(25)で表される化合物を製造する工程。
[6]第六工程:前記式(25)で表される化合物のオキシラン環を加水分解し、前記式(26)で表されるジオールを製造する工程。
[7]第七工程:前記式(26)の5員環内二重結合に水素添加し、前記式(27)で表される化合物を製造する工程。
[8]第八工程:前記式(27)で表される化合物のジオールをジオキソラン化し、前記式(28)で表される化合物を製造する工程。
[9]第九工程:前記式(28)で表される化合物をカルボン酸無水物の存在下に分解し、前記式(29)で表される置換シクロペンタノンを製造する工程。
【0182】
以下各工程について説明する。
【0183】
[第一工程]
まず、1,3−シクロペンタンジオンをエーテル化し、前記式(21)で表される化合物を製造する。
【0184】
前記式(21)において、R32は、水素原子又は炭素数1乃至8の鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、それらの基は、塩素、臭素、窒素、酸素、硫黄、鉄、コバルトなどのヘテロ原子を含んでも良い。R32の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられるが、アルキル基が好ましく、もっとも好ましくは、メチル基もしくはエチル基である。
【0185】
エーテル化の方法は、一般的な方法に準じればよい。例えば下記式(43)
【0186】
【化48】

(式中、R32は、前記の意味を表す。)
で表されるアルコールと1,3−シクロペンタンジオンを酸触媒存在下にベンゼンやトルエン中で加熱還流し、副生する水を共沸的に除去する方法や、下記式(44)
【0187】
【化49】

(式中、R32は、前記の意味を表し、Xはハロゲン原子を表す。)
で表されるハロゲン化アリルとシクロペンタンジオンを塩基存在下に50〜120℃で反応させる方法などがあげられるが、前者の方法が好ましい。
【0188】
前者の方法を採用する場合、前記式(43)で表されるアルコールの量は、1,3−シクロペンタンジオンに対し1乃至10倍モルが好ましく、もっとも好ましくは、1.1乃至5倍モルである。酸触媒の使用量としては、1,3−シクロペンタンジオンに対し0.01乃至20倍モルが好ましく、もっとも好ましくは、0.1乃至10倍モルである。ベンゼン、あるいはトルエンの使用量は、1,3−シクロペンタンジオンに1重量部対し0.05重量部以上1000重量部未満が好ましい。より好ましくは、0.1重量部以上500重量部未満、もっとも好ましくは、1重量部以上200重量部未満である。加熱還流、および副生する水を共沸的に除去する方法は、公知の方法に従えばよい。
【0189】
一方、後者の方法を採用する場合、前記式(44)で表されるハロゲン化アリルの量は、1,3−シクロペンタンジオンに対し1乃至20倍モルが好ましく、もっとも好ましくは、1.1乃至5倍モルである。塩基の量は1,3−シクロペンタンジオンに対し1乃至20倍モルが好ましく、もっとも好ましくは、1.1乃至10倍モルである。
【0190】
[第二工程]
次に、前記式(21)で表される化合物を転位させ、前記式(22)で表される化合物を製造する。
【0191】
前記式(22)において、R33は、水素原子又は炭素数1乃至8の鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、それらの基は、塩素、臭素、窒素、酸素、硫黄、鉄、コバルトなどのヘテロ原子を含んでも良い。R33の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられるが、アルキル基が好ましく、もっとも好ましくは、メチル基もしくはエチル基である。R33はR32と同じでもよい。
【0192】
転位は、通常単に加熱するのみで達成できる。例えば、溶媒中もしくは無溶媒で、50乃至250℃に加熱すればよい。好ましくは80乃至200℃であり、もっとも好ましくは120乃至160℃である。
【0193】
溶媒の具体例としては、炭化水素系溶媒としては、トルエン、キシレン、アミン溶媒としては、コリジンなどがあげられるが、炭化水素系溶媒が好ましく、中でもキシレンが好ましい。溶媒の使用量は、前記式(21)で表される化合物1重量部に対し、0.1乃至500重量部が好ましく、もっとも好ましくは、1乃至200重量部である。
【0194】
[第三工程]
次に、前記式(22)で表される化合物をエーテル化して前記式(23)で表わされるエノンを製造する。ここで得られる前記式(23)の化合物は、側鎖にトランス型二重結合を有することをひとつの特徴としており、ジャスミン系香料などの有用な置換シクロペンタノン合成における中間体等として極めて有用な化合物であり、本発明が初めて提供を可能とするものである。
【0195】
前記式(23)において、R34は、水素原子又は炭素数1乃至8の鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、それらの基は、塩素、臭素、窒素、酸素、硫黄、鉄、コバルトなどのヘテロ原子を含んでも良い。R33の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられるが、アルキル基が好ましく、もっとも好ましくは、メチル基もしくはエチル基である。R34はR33と同じでもよい。
【0196】
前記式(23)において、R35は、炭素数1乃至8の鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表す。R35の具体例としては、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、アルケニル基としては、アリル基、メタリル基、などがあげられるが、アルキル基が好ましく、もっとも好ましくは、メチル基もしくはエチル基である。R34とR35は同じでもよい。
【0197】
エーテル化の方法に制限はないが、安全性や簡便性の観点からは、酸触媒存在下に、式(22)化合物に対応する置換基を有するアルコールを加えて加熱する方法が好ましい。
【0198】
酸触媒の例には、鉱酸として、塩化水素、硫酸、リン酸、有機酸として、p−トルエンスルホン酸、金属系触媒として四塩化チタンなどがあげられる。収率と価格の観点より、塩化水素もしくは硫酸が好ましい。酸触媒の量は、式(22)化合物に対し0.01乃至10倍モルが好ましい。
【0199】
対応する置換基を有するアルコール(R35−OH)の量は、式(22)化合物に対し1乃至100倍モルが好ましい。また加熱温度は、50乃至120℃が好ましい。より好ましくは50乃至100℃、更に好ましくは、60℃乃至90℃である。
【0200】
[第四工程]
次に、前記式(23)のエノンに対してマロン酸エステルを付加させるとともに脱炭酸反応を行うことにより前記式(24)の置換シクロペンテノンを製造する。この反応は、前記式(23)のエノンに対するマロン酸エステルの共役付加反応を発端とし、それに引き続きアルコキシ基の脱離反応と脱炭酸反応が起こる反応である。
【0201】
前記式(24)において、R36は、水素原子又は炭素数1乃至8の鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、それらの基は、塩素、臭素、窒素、酸素、硫黄、鉄、コバルトなどのヘテロ原子を含んでも良い。R36の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられるが、アルキル基が好ましく、もっとも好ましくは、メチル基もしくはエチル基である。R36はR34と同じでもよい。
【0202】
前記式(24)において、R37は、水素原子又は炭素数1乃至8の鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表す。R37の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられるが、アルキル基が好ましく、もっとも好ましくは、メチル基もしくはエチル基である。R36とR37は同じでもよい。
【0203】
この工程の操作は公知の方法に準じればよい。例えば、アルカリ金属のアルコキシドをマロン酸エステルに予め作用させて、マロン酸エステルの活性水素を引き抜いてアニオンを生成させ、そこに前記式(23)のエノンを加えて加熱する方法が簡便である。
【0204】
マロン酸エステルの量は、当該エノンに対し、1乃至10倍モルが好ましく、もっとも好ましくは、1乃至5倍モルである。アルカリ金属アルコキシドの量は、マロン酸エステルに対し、1乃至5倍モルが好ましく、もっとも好ましくは、1乃至2倍モルである。アルカリ金属のアルコキシドの例としては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド等が挙げられ、好ましくはナトリウムメトキシドである。
【0205】
反応温度は、工業的に実施する際容易であることから、50℃乃至100℃の範囲が好ましい。より好ましくは、60℃乃至90℃である。
【0206】
[第五工程]
次に、前記式(24)で表される置換シクロペンテノンの側鎖のトランス型二重結合を選択的に酸化し、側鎖二重結合の立体配置を保持しつつ、オキシラン環を導入することにより前記式(25)の化合物を製造する。
【0207】
前記式(25)において、R38は、水素原子又は炭素数1乃至8の鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、それらの基は、塩素、臭素、窒素、酸素、硫黄、鉄、コバルトなどのヘテロ原子を含んでも良い。R38の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられるが、アルキル基が好ましく、もっとも好ましくは、メチル基もしくはエチル基である。R38はR36と同じでもよい。
【0208】
前記式(25)において、R39は、水素原子又は炭素数1乃至8の鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表す。R39の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられるが、アルキル基が好ましく、もっとも好ましくは、メチル基もしくはエチル基である。R39はR37と同じでもよく、R38とR39は同じでもよい。
【0209】
前記式(24)の置換シクロペンテノンの側鎖のトランス型二重結合のみを選択的に酸化するには、例えば、過酸化物を用いることで簡便に達成できる。過酸化物の具体例としては、過酸として、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、m−クロロ過安息香酸(m−CPBA)が、ヒドロペルオキシドとしては、過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどがあげられる。好ましくは過酸であり、もっとも好ましくは、m−クロロ過安息香酸(m−CPBA)である。過酸化物の使用量は、前記式(24)の置換シクロペンテノンに対し、1乃至10倍モルが好ましく、もっとも好ましくは、1乃至2倍モルである。
【0210】
必要に応じ、バナジウム系、モリブデン系、マンガン系などの触媒を用いてもよい。触媒の使用量に制限はないが、過酸化物に対し、0.01乃至10倍モルが好ましく、もっとも好ましくは、0.1乃至5倍モルである。
【0211】
当該酸化においては、必要に応じ溶媒を用いることができる。例えば、炭化水素系溶媒としては、ヘキサン、トルエン、キシレンが、塩素化炭化水素系溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタンなどがあげられる。好ましくは塩素化炭化水素系溶媒であり、もっとも好ましくはジクロロメタンである。溶媒の使用量に制限はないが、前記式(24)で表される置換シクロペンテノン1重量部に対し、0.1乃至500重量部が好ましく、もっとも好ましくは、1乃至200重量部である。当該酸化反応の温度に制限はないが、0乃至50℃が好ましく、もっとも好ましくは、0乃至30℃である。
【0212】
[第六工程]
次に、前記式(25)で表される置換シクロペンテノンのオキシラン環を加水分解することにより前記式(26)で表されるジオールを製造する。
【0213】
前記式(26)において、R40は、水素原子又は炭素数1乃至8の鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、それらの基は、塩素、臭素、窒素、酸素、硫黄、鉄、コバルトなどのヘテロ原子を含んでも良い。R40の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられるが、アルキル基が好ましく、もっとも好ましくは、メチル基もしくはエチル基である。R40はR38と同じでもよい。
【0214】
前記式(26)において、R41は、水素原子又は炭素数1乃至8の鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表す。R41の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられるが、アルキル基が好ましく、もっとも好ましくは、メチル基もしくはエチル基である。R41はR39と同じでもよく、R40とR41は同じでもよい。
【0215】
加水分解としては、酸触媒もしくは塩基触媒を用いる公知の方法を採用すればよい。酸触媒の具体例としては、塩酸、硫酸、過塩素酸が挙げられ、塩基触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどがあげられる。中でも酸触媒が好ましく、もっとも好ましくは、過塩素酸である。触媒の使用量に制限はないが、前記式(25)の置換シクロペンテノンに対し0.01乃至20倍モルが好ましく、もっとも好ましくは、0.05乃至10倍モルである。
【0216】
加水分解においては、反応物の相溶性を向上させることなどを目的として、親水性溶媒を含有させてもよい。親水性溶媒としては、アルコール系溶媒として、メタノール、エタノール、n−ブタノール、t−ブタノールが、エーテル系溶媒としてはジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどがあげられる。中でも、アルコール系溶媒ではt−ブタノールが好ましく、エーテル系溶媒ではテトラヒドロフランが好ましい。もっとも好ましくは、テトラヒドロフランである。親水性溶媒の使用量は、水1重量部に対し、0.01乃至20重量部が好ましく、もっとも好ましくは、0.1乃至10重量部である。
【0217】
加水分解の温度は、0乃至50℃程度が好ましく、もっとも好ましくは、10乃至40℃である。
【0218】
[第七工程]
さらに、前記式(26)で表されるジオールの5員環内二重結合に水素添加することにより、前記式(27)の化合物を製造する。
【0219】
前記式(27)において、R42は、水素原子又は炭素数1乃至8の鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、それらの基は、塩素、臭素、窒素、酸素、硫黄、鉄、コバルトなどのヘテロ原子を含んでも良い。R42の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられるが、アルキル基が好ましく、もっとも好ましくは、メチル基もしくはエチル基である。R42はR40と同じでもよい。
【0220】
前記式(27)において、R43は、水素原子又は炭素数1乃至8の鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表す。R43の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられるが、アルキル基が好ましく、もっとも好ましくは、メチル基もしくはエチル基である。R43はR41と同じでもよく、R42とR43は同じでもよい。
【0221】
水素添加の方法としては、例えば、触媒を用いた方法が容易な例として挙げられる。触媒を用いた水素添加では、一般に二重結合の形成する面に対し同一方向から水素が結合するので、本発明が目的とするシス−2、3−ジ置換シクロペンタノンを選択的に合成することが可能である。
【0222】
触媒としては汎用のものを用いることができるが、活性の高さにおいて遷移金属触媒が好ましい。不均一系触媒の例としては、炭素担持系触媒として、Pd−炭素、Rh−炭素、Ru−炭素;無機物担持系触媒としてはPd−Al23、Rh−Al23、Ru−Al23;、酸化物系触媒としては、PtO;金属系触媒としてはPt;合金系触媒としてはラネーNi;たんぱく質担持系触媒としては絹−Pdなどがあげられる。均一系触媒の例としては、Wilkinson錯体(RhCl(PPh33)などがあげられるが、反応後の分離の容易さにおいて不均一系触媒が好ましく、なかでも炭素担持系が好ましく、最も好ましくはPd−炭素である。触媒の使用量は、例えば、式(26)化合物1重量部に対し、0.01〜100重量部モルが好ましい。なお、炭素担持系触媒の炭素には活性炭も包含される。不均一系触媒である炭素担持系溶媒や無機物担持系溶媒において、遷移金属の担持量に制限はないが、好ましくは0.1乃至50wt%であり、もっとも好ましくは1乃至20wt%である。
【0223】
前記式(26)で表される化合物の水素添加は、常圧下でも容易に進行するが、反応速度の更なる向上などを目的として、例えば1乃至10kg/cm2程度の加圧下で行うことも可能である。
【0224】
溶媒の種類も制限はなく、アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール;エーテル系溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン;炭化水素系溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン;カルボン酸系溶媒としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、マロン酸、乳酸;エステル系溶媒としては、前記カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル;ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン;無機系溶媒としては水、超臨界CO2などが例示でき、これらを単独で、もしくは混合して用いることができる。好ましくは、カルボン酸系溶媒もしくはエステル系溶媒であり、もっとも好ましくは酢酸もしくは酢酸エチルである。溶媒の使用量に制限はないが、前記式(26)で表されるジオール1重量部に対し、0.1重量部以上1000重量部未満が好ましく、もっとも好ましくは1重量部以上500重量部未満である。
【0225】
反応温度に特に制限はないが、実用的観点より、−30℃乃至100℃が好ましく、−20℃乃至50℃が更に好ましい。もっとも好ましくは、−10乃至50℃である。
【0226】
[第八工程]
続いて、前記式(27)で表される化合物のジオールをジオキソラン化することにより前記式(28)の化合物を製造する。
【0227】
前記式(28)において、R44は、水素原子又は炭素数1乃至8の鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、それらの基は、塩素、臭素、窒素、酸素、硫黄、鉄、コバルトなどのヘテロ原子を含んでも良い。R44の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられるが、アルキル基が好ましく、もっとも好ましくは、メチル基もしくはエチル基である。R44はR42と同じでもよい。
【0228】
前記式(28)において、R45は、水素原子又は炭素数1乃至8の鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表す。R45の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられるが、アルキル基が好ましく、もっとも好ましくは、メチル基もしくはエチル基である。R45はR43と同じでもよく、R44とR45は同じでもよい。
【0229】
前記式(28)において、Zは、炭素数1乃至6のアルコキシ基もしくはアミノ基を表す。Zの具体例としては、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、アミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基などがあげられるが、好ましくはアルコキシ基であり、もっとも好ましくはメトキシ基である。
【0230】
ジオキソラン化する方法は、公知の方法に準じればよい。例えば、酸触媒存在下にオルトギ酸メチルなどのオルトギ酸アルキルと反応させる方法や、p−トルエンスルホン酸などの酸触媒存在下にN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタールなどのN,N−ジアルキルホルムアミドジアルキルアセタールを反応させる方法があげられる。好ましくは、オルトギ酸アルキルと反応させる方法であり、もっとも好ましくは、オルトギ酸メチルを用いる方法である。オルトギ酸アルキルの量は、前記(27)で表される化合物1重量部に対し、0.05重量部以上1000重量部未満が好ましい。より好ましくは、0.1重量部以上500重量部未満、もっとも好ましくは、1重量部以上200重量部未満である。
酸触媒の例としては、鉱酸として、塩化水素、硫酸、リン酸;有機酸としては、p−トルエンスルホン酸;金属系触媒としては四塩化チタンなどがあげられるが、収率と価格の観点より、p−トルエンスルホン酸が好ましい。酸触媒の量は、前記式(27)で表される化合物に対し0.01乃至20倍モルが好ましく、もっとも好ましくは、0.1乃至10倍モルである。
【0231】
反応温度は、例えば20℃乃至150℃が好ましく、もっとも好ましくは、50乃至120℃である。
【0232】
[第九工程]
最後に、前記式(28)で表される化合物をカルボン酸無水物の存在下に分解することにより前記式(29)の置換シクロペンタノンを製造する。
【0233】
前記式(29)において、R46は、水素原子又は炭素数1乃至8の鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、それらの基は、塩素、臭素、窒素、酸素、硫黄、鉄、コバルトなどのヘテロ原子を含んでも良い。R46の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられるが、アルキル基が好ましく、もっとも好ましくは、メチル基もしくはエチル基である。R46はR44と同じでもよい。
【0234】
前記式(29)において、R47は、水素原子又は炭素数1乃至8の鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表す。R47の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられるが、アルキル基が好ましく、もっとも好ましくは、メチル基もしくはエチル基である。R47はR45と同じでもよく、R46とR47は同じでもよい。
【0235】
カルボン酸無水物の種類としては、低級カルボン酸無水物が好ましく、もっとも好ましくは無水酢酸である。カルボン酸無水物の使用量に制限はないが、前記式(28)で表される化合物1重量部に対し、0.1重量部以上1000重量部未満が好ましく、もっとも好ましくは1重量部以上500重量部未満である。
【0236】
分解温度条件は公知の方法に準じればよいが、50乃至200℃が好ましく、もっとも好ましくは、80乃至180℃である。
【0237】
上記の反応終了後は、公知の方法で精製し、目的の式(29)の置換シクロペンタノンを得ることができる。
【0238】
<第9発明>
本発明の第9は、下記3工程からなる前記式(33)で表される化合物の製造方法である。この要件を満足することにより、前記式(33)で表される化合物を、汎用の装置を用い、且つ効率的に製造することが可能となる。前記式(33)で表される化合物は、上記の式(2)で表される置換シクロペンタノンを製造する際の前駆体としても有用である。
[1]第一工程:1,3−シクロペンタンジオンと、下記式(30)で表される化合物を塩基存在下に反応させ、下記式(31)で表される化合物を製造する工程。
[2]第二工程:前記式(31)で表される化合物をエーテル化し、下記式(32)で表されるエノンを製造する工程。
[3]第三工程:前記式(32)で表されるエノンにマロン酸エステルを付加させるとともに脱炭酸させ、下記式(33)で表される化合物を製造する工程。
【0239】
以下各工程について説明する。
【0240】
[第一工程]
まず、1,3−シクロペンタンジオンと前記式(30)で表される化合物を塩基存在下に反応させる。
【0241】
前記式(30)において、R48は、水素原子又は炭素数1乃至8の鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、それらの基は、塩素、臭素、窒素、酸素、硫黄、鉄、コバルトなどのヘテロ原子を含んでも良い。R48の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられるが、アルキル基が好ましく、もっとも好ましくは、メチル基もしくはエチル基である。前記式(30)において、Xは脱離基を表す。脱離基の種類に制限はなく、例えば、ハロゲン原子としては、塩素、臭素、ヨウ素があげられ、スルホネート基としては、p−トルエンスルホネート基やメタンスルホネート基があげられる。前記式(30)において、点線は、結合があってもなくてもよいことを表す。すなわち、三重結合もしくは二重結合であることを表す。
【0242】
前記式(31)において、R49は、水素原子又は炭素数1乃至8の鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、それらの基は、塩素、臭素、窒素、酸素、硫黄、鉄、コバルトなどのヘテロ原子を含んでも良い。R49の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられるが、アルキル基が好ましく、もっとも好ましくは、メチル基もしくはエチル基である。R49はR48と同じでもよい。前記式(31)において、点線は、結合があってもなくてもよいことを表す。すなわち、三重結合もしくは二重結合であることを表す。
【0243】
塩基は、汎用のものを用いればよい。例えば、金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム;炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム;金属アルコキシドとしては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド;金属アミドとしては、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラザンなどがあげられる。好ましくは金属水酸化物もしくは炭酸塩であり、もっとも好ましくは水酸化カリウム又は炭酸カリウムである。
【0244】
塩基の使用量は、1,3−シクロペンタンジオンに対し、1乃至20倍モルが好ましく、もっとも好ましくは、1乃至5倍モルである。
【0245】
前記式(30)で表される化合物の量は、1,3−シクロペンタンジオンに対し、1乃至20倍モルが好ましく、もっとも好ましくは、1乃至5倍モルである。
【0246】
溶媒としては、アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール;エーテル系溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン;炭化水素系溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン;無機系溶媒としては水、超臨界CO2などが例示でき、これらを単独で、もしくは混合して用いることができる。好ましくは、アルコール系溶媒もしくは無機系溶媒であり、もっとも好ましくは、水である。溶媒の使用量に制限はないが、1,3−シクロペンタンジオン1重量部に対し、0.1重量部以上1000重量部未満が好ましく、もっとも好ましくは1重量部以上500重量部未満である。反応温度は、好ましくは25℃乃至150℃であり、もっとも好ましくは40乃至120℃である。
【0247】
[第二工程]
次に、前記式(31)で表される化合物をエーテル化して、前記式(32)のエノンを製造する。
【0248】
前記式(32)において、R50は、水素原子又は炭素数1乃至8の鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、それらの基は、塩素、臭素、窒素、酸素、硫黄、鉄、コバルトなどのヘテロ原子を含んでも良い。R50の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられるが、アルキル基が好ましく、もっとも好ましくは、メチル基もしくはエチル基である。R50はR49と同じでもよい。前記式(32)において、点線は、結合があってもなくてもよいことを表す。すなわち、三重結合もしくは二重結合であることを表す。
【0249】
前記式(32)において、R51は、炭素数1乃至8の鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表す。R51の具体例としては、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、アルケニル基としては、アリル基、メタリル基、などがあげられるが、アルキル基が好ましく、もっとも好ましくは、メチル基もしくはエチル基である。R50とR51は同じでもよい。
【0250】
前記式(31)で表される化合物のエーテル化の方法に制限はないが、安全性や簡便性の点からは、酸触媒存在下に、式(31)化合物に対応する置換基を有するアルコールを加えて加熱する方法が好ましい。
【0251】
酸触媒には、鉱酸として塩化水素、硫酸、リン酸;有機酸として、p−トルエンスルホン酸;金属系触媒としては四塩化チタンなどがあげられるが、収率と価格の観点より、塩化水素もしくは硫酸が好ましい。酸触媒の量は、式(13)化合物に対し0.01乃至10倍モルが好ましい。
【0252】
対応する置換基を有するアルコール(R51−OH)の量は、式(31)化合物に対し、1乃至100倍モルが好ましい。
【0253】
反応温度は、工業的実施の容易性の観点より、50℃乃至120℃の範囲が好ましく、より好ましくは50乃至100℃、更に好ましくは、60℃乃至90℃である。
【0254】
[第三工程]
さらに、前記式(32)のエノンにマロン酸エステルを付加させるとともに脱炭酸反応を行うことにより前記式(33)で表される化合物を製造する。
【0255】
前記式(33)において、R52は、水素原子又は炭素数1乃至8の鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、それらの基は、塩素、臭素、窒素、酸素、硫黄、鉄、コバルトなどのヘテロ原子を含んでも良い。R52の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられるが、アルキル基が好ましく、もっとも好ましくは、メチル基もしくはエチル基である。R52はR50と同じでもよい。前記式(33)において、点線は、結合があってもなくてもよいことを表す。すなわち、三重結合もしくは二重結合であることを表す。
【0256】
前記式(33)において、R53は、炭素数1乃至8の鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表す。R53の具体例としては、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、アルケニル基としては、アリル基、メタリル基、などがあげられるが、アルキル基が好ましく、もっとも好ましくは、メチル基もしくはエチル基である。R52とR53は同じでもよい。
【0257】
この反応は、前記式(32)のエノンに対するマロン酸エステルの共役付加反応を発端とし、それに引き続きアルコキシ基の脱離反応と脱炭酸反応が起こる反応である。この反応操作は公知の方法に準じればよい。例えば、アルカリ金属のアルコキシドをマロン酸エステルに予め作用させてマロン酸エステルの活性水素を引き抜いてアニオンを生成させ、そこに前記式(32)の化合物を加えて加熱する方法が簡便である。
【0258】
マロン酸エステルの使用量は、当該エノンに対し、1乃至10倍モルが好ましく、もっとも好ましくは、1乃至5倍モルである。アルカリ金属アルコキシドの使用量に制限はないが、マロン酸エステルに対し、1乃至5倍モルが好ましく、もっとも好ましくは、1乃至2倍モルである。アルカリ金属のアルコキシドの例としては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド等が挙げられ、好ましくはナトリウムメトキシドである。
【0259】
反応温度は、工業的に実施する際容易であることから、50℃乃至100℃の範囲が好ましい。より好ましくは、60℃乃至90℃である。
【0260】
上記の反応終了後は、公知の方法で精製し、目的の式(33)化合物を得ることができる。
【0261】
<第10発明>
本発明の第10は、前記式(34)で表される化合物を脱炭酸することを特徴とする、前記式(35)で表されるメチルシクロペンテノン類の製造方法である。
【0262】
前記式(34)で表される化合物は、ジャスモン酸エステル類の原料として広く知られている物質であり、5員環内の二重結合に水素添加を施すのみでジャスモン酸エステル類を簡便に得ることができる有用な物質である。すなわち、当該化合物を出発物質とすることで、本発明によりジャスミン系香料等として有用なメチルシクロペンテノン類が得られるのみならず、やはりジャスミン系香料等として極めて有用で需要の大きいジャスモン酸エステル類を派生的に製造することができる。香料業界においては、多品種の香料を機動的に製造できることが不可欠であり、このように同一の出発物質から複数の有用香料が派生的に製造できることは、原材料や設備の調達等に関して大きなメリットである。また前記式(35)のメチルシクロペンテノン類は、それ自身有用なジャスミン系香料の骨格であるだけでなく、同じくジャスミン系香料等として有用な上記式(2)化合物を得るための前駆体としても有用である。前記式(35)の化合物は、その他プロスタグランジンやステロイドの合成のための前駆体として用いることもできる。
【0263】
前記式(34)において、R54は、水素原子又は炭素数1〜8の鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、それらの基は、塩素、臭素、窒素、酸素、硫黄、鉄、コバルトなどのヘテロ原子を含んでも良い。R54の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられる。ジャスミン系香料への応用を考慮した場合には、ペンチル基の他、cis−2−ペンテニル基、2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが好適である。
【0264】
前記式(34)において、R55は、水素原子又は炭素数1乃至8の鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表す。R55の具体例としては、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、アルケニル基としては、アリル基、メタリル基、などがあげられるが、アルキル基が好ましく、もっとも好ましくは、メチル基もしくはエチル基である。R54とR55は同じでもよい。
【0265】
前記式(35)において、R56は、水素原子又は炭素数1〜8の鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、それらの基は、塩素、臭素、窒素、酸素、硫黄、鉄、コバルトなどのヘテロ原子を含んでも良い。R56の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられる。ジャスミン系香料への応用を考慮した場合には、ペンチル基の他、cis−2−ペンテニル基、2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが好適である。R56はR54と同じでもよい。
【0266】
前記の脱炭酸には、公知の方法を用いればよい。例えば、R55が水素原子の場合には、メタノール、エタノールやテトラヒドロフランなど汎用の溶媒を用い、酸または塩基の存在下に加熱することで達成できる。また、R55がアルキル基の場合には、ジメチルスルホキシドを溶媒とし、塩化ナトリウムの存在下に加熱することで達成できる。
【0267】
酸または塩基の量は、前記式(34)で表される化合物に対し0.01乃至20倍モルが好ましく、もっとも好ましくは、0.1乃至10倍モルである。
【0268】
溶媒の量は、前記式(34)で表される化合物1重量部に対し、0.1重量部以上1000重量部未満が好ましく、もっとも好ましくは1重量部以上500重量部未満である。また、加熱温度は、通常40℃乃至200℃である。より好ましくは、50℃乃至180℃である。
【0269】
上記の反応終了後は、公知の方法で精製し、目的の式(35)の置換シクロペンタノンを得ることができる。
【0270】
<第11発明>
本発明の第11は、下記二工程からなる前記式(39)で表されるγ−ラクトン類の製造方法である。この要件を満足することにより、目的とするγ−ラクトン類を安全かつ簡便に製造することができる。
[1]第一工程:前記式(36)で表されるフルフリルアルコールを、前記式(37)で表されるアルコールの存在下、塩化水素により開裂し、前記式(38)のγ−ケトエステルを製造する工程。
[2]第二工程:前記式(38)のγ−ケトエステルを還元し、下記式(39)で表されるγ−ラクトン類を製造する方法。
【0271】
以下各工程について説明する。
【0272】
[第一工程]
まず、前記式(36)で表されるフルフリルアルコールを、前記式(37)で表されるアルコールの存在下、塩化水素により開裂して、前記式(38)のγ−ケトエステルを製造する。具体的には、前記式(36)で表されるフルフリルアルコールと式(37)のアルコール、および塩化水素を含む反応液を加熱することにより製造する。
【0273】
前記式(36)において、R57は、水素原子又は炭素数1〜12の鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、それらの基は、塩素、臭素、窒素、酸素、硫黄、鉄、コバルトなどのヘテロ原子を含んでも良い。R57の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられる。ジャスミン系香料への応用を考慮した場合には、ペンチル基の他、cis−2−ペンテニル基、2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが好適である。
【0274】
前記式(37)において、R58は、炭素数1以上の炭化水素基を表す。R58の具体例としては、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、アルケニル基としては、アリル基、メタリル基、などがあげられるが、反応後処理における留去の容易性、安全性や価格等を考慮すると、アルキル基が好ましく、中でもn−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基が好ましく、もっとも好ましくは、n−ブチル基、イソブチル基である。
【0275】
前記式(38)において、R59は、水素原子又は炭素数1〜12の鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、それらの基は、塩素、臭素、窒素、酸素、硫黄、鉄、コバルトなどのヘテロ原子を含んでも良い。R59の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられる。ジャスミン系香料への応用を考慮した場合には、ペンチル基の他、cis−2−ペンテニル基、2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが好適である。R59はR57と同じでもよい。
【0276】
前記式(38)において、R60は、炭素数1乃至8の鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表す。R60の具体例としては、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、アルケニル基としては、アリル基、メタリル基、などがあげられるが、アルキル基が好ましく、もっとも好ましくは、メチル基もしくはエチル基である。R60はR58と同じでもよく、R59とR60は同じでもよい。
前記式(36)の化合物は、公知の方法で合成することができる。
【0277】
前記式(37)で表されるアルコールは、前記式(36)で表されるフルフリルアルコールに対して等モル以上100倍モル以下用いることが好ましい。さらに好ましくは、1.5倍モル以上80倍モル以下である。
【0278】
前記の製造方法に用いる反応液には、式(37)のアルコール以外に、メタノール、エタノール、エーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレンといったその他の成分が存在していても構わないが、その割合は反応液の0.01wt%〜50wt%程度がよい。
【0279】
塩化水素を反応液中へ供給する方法には、塩化水素ガスを吹き込む方法、塩酸(塩化水素の水溶液)を添加する方法、塩化アセチルなどの塩化アシル化合物を添加し、前記式(37)のアルコール等と反応させ、反応系中で塩化水素を発生させる方法等があげられる。中でも塩化水素ガスを吹き込む方法をとった場合により好ましい結果が得られる場合が多い。
【0280】
塩化水素は、前記式(36)のフルフリルアルコール1.0モルに対し、0.01モル乃至5モル用いるのが好ましい。更に好ましくは、0.01モル乃至2モルである。
【0281】
前記の加熱温度は、実用的な反応速度が得られることを考慮すると、30乃至150℃である。更に好ましくは、40乃至120℃であり、もっとも好ましくは、50乃至100℃である。
【0282】
さらに、前記式(36)のフルフリルアルコールを前記式(37)のアルコールと塩化水素の混合物に加える際、滴下することにより加えると、高い収率でγ−ケトエステルを得られることが多い。その場合、前記式(36)の化合物を予め前記式(37)のアルコールやその他の溶媒等で希釈したものを滴下してもよい。希釈する濃度は、例えば0.01mol/l〜10mol/lである。滴下時間に制限はないが、好ましくは、10分乃至5時間であり、もっとも好ましくは30分乃至3時間である。
【0283】
上記の反応終了後は、公知の方法で精製し、目的の式(38)のγ−ケトエステルを得ることができる。
【0284】
[第二工程]
次に、前記式(38)で表されるγ−ケトエステルを還元して前記式(39)のγ−ラクトンを製造する。具体的には、γ−ケトエステルのケトンを水酸基に還元することにより達成できる。
【0285】
前記式(39)において、R61は、水素原子又は炭素数1〜12の鎖状もしくは分岐状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、それらの基は、塩素、臭素、窒素、酸素、硫黄、鉄、コバルトなどのヘテロ原子を含んでも良い。R61の具体例としては、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、アルケニル基としてはペンテニル基、アルキニル基としてはペンチニル基などがあげられる。ペンテニル基としてはcis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基が、ペンチニル基としては2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが挙げられる。ジャスミン系香料への応用を考慮した場合には、ペンチル基の他、cis−2−ペンテニル基、2−ペンチニル基、5−ヒドロキシ−cis−2−ペンテニル基、5−ヒドロキシ−2−ペンチニル基などが好適である。R61はR59と同じでもよい。
【0286】
前記式(38)で表されるγ−ケトエステルのケトンを還元する方法は、公知の方法に準じればよい。例えば、水素化ホウ素ナトリウムなどの水素化物を用いる方法や遷移金属触媒を用いた水素添加などがあげられる。中でも、操作の簡便性において、前者が好ましい。水素化ホウ素ナトリウムの量は、当該ケトエステルに対し、0.25乃至10倍モルが好ましく、もっとも好ましくは0.5乃至5倍モルである。
【0287】
γ−ケトエステルのケトンを還元すると4−ヒドロキシエステルが生成するが、多くの場合それと同時に5員環形成が起こり、γ−ラクトンが生成する。5員環形成が不完全な場合には、酸触媒等を用いた公知の環化処理を施せばよい。
【0288】
例えば、当該ヒドロキシエステルに対し0.01乃至10倍モルの酸触媒を加え、50乃至100℃に加熱すればよい。酸触媒の例としては、鉱酸としては、塩化水素、硫酸、リン酸;有機酸としては、p−トルエンスルホン酸;金属系としては四塩化チタンなどがあげられるが、収率と価格の観点より、p−トルエンスルホン酸が好ましい。
【0289】
ところで、光学活性γ−ラクトンは、香り強度や香気特性において大きなメリットを有することが知られている。当該工程において不斉水素化が達成できれば、製品に大きな付加価値が付与できる。不斉水素化のためには、不斉配位子を有する遷移金属触媒や、パン酵母や酵素などの生体触媒を用いることが有効である。このように、光学活性体を製造し得ることも本発明の大きな特徴のひとつである。
【0290】
上記の反応終了後は、公知の方法で精製し、目的の式(39)のγ−ラクトンを得ることができる。
【実施例】
【0291】
本発明を実施例に基いて説明する。
なお、実施例における条件は下記のとおりである。
・反応容器:特に記載のない場合、マグネチックスターラーを装備したものを使用
・触媒のろ別:ポリテトラポリテトラフルオロエチレン製の膜を用い加圧濾過でろ別
・ガスクロマトグラフ
カラム:J&Wサイエンティフィック社製 DB−1(0.25mm×30m、液相膜厚0.25μm)
カラム温度:100℃×2分→250℃(10℃/分)
注入部温度:250℃
検出部温度:300℃
・液体クロマトグラフ
カラム:ジーエルサイエンス(株)製 Inertsil C4
展開溶媒:10mM−KHPO、1mM−EDTA・2Na/CHCN=60/40
流速:1.0ml/min
参考実施例1〜7、比較例1〜6]
メチル(2−ペンチル−3−ケト−1−シクロペンテニル−)アセテート(前記式(1)においてR1がn−ペンチル基に、R2がメチル基に相当する化合物)1g(4.5mmol)と表1に記載の各触媒0.2gを各々反応器(容積50ml)に入れた。これに表1に記載の溶媒10mlを各々加えた後、表1に記載の温度に保持した。これを攪拌しつつ、減圧と水素導入を繰り返し、反応器内の空気を常圧の水素で置換した。その状態で4時間攪拌しつづけた。その後、濾過により反応液から触媒を除いた後、水30mlとトルエン30mlを加えて攪拌することにより、生成物をトルエン相に抽出させた。このトルエン相からトルエンを留去して、ジヒドロジャスモン酸メチル(前記式(2)においてR3がn−ペンチル基に、R4がメチル基に相当する化合物)を得た。得られたジヒドロジャスモン酸メチルの収率と異性体比(シス体/トランス体)をガスクロマトグラフ分析により求めた。結果を表1に示す。
【0292】
【表1】

【0293】
参考実施例8]
3枚翼の攪拌機を装備した反応器内(容積5L)の空気を常圧の窒素ガスで置換し、ナトリウムメトキシド22.7g(0.42mol)とジメチルスルホキシド3Lを入れた。当該溶液を約90℃に加熱し、攪拌しながら反応器内を約25mmHgに減圧した。この状態でジメチルスルホキシドを12mL/minの速度で反応器内から留出させつつ、予めジメチルスルホキシド1.5Lに溶解させたメチル4−オキソデカノエート(前記式(3)でR5がn−ペンチル基に、R6がメチル基に相当する化合物)42.0g(0.21mol)を、2時間かけて滴下した。
滴下終了後、反応器内の圧力を約15mmHgに上げ、続いてジメチルスルホキシドを留去したのち、約40℃に冷却した。これに水1L、濃塩酸46gとイソブチルアルコール0.8Lを加え、攪拌したのち静置し、得られた有機相を分取した。この有機相を液体クロマトグラフにより分析した結果、2−n−ペンチル−1、3−シクロペンタンジオン(前記式(4)でR7がn−ペンチル基に相当する化合物)が生成しており、その収率は92%であった。
【0294】
参考実施例9]
反応器(容積5L)内の空気を常圧の窒素ガスで置換し、ナトリウムメトキシド3.8g(0.07mol)とジメチルスルホキシド0.5Lを入れた。当該溶液を100℃に加熱し、攪拌しながら、予めジメチルスルホキシド0.5Lに溶解させたメチル4−オキソデカノエート(前記式(3)でR5がn−ペンチル基に、R6がメチル基に相当する化合物)7.0g(0.035mol)を、8ml/minの速度で滴下した。滴下終了後、さらに20分間、同温度で加熱しながら攪拌した。これを25℃に冷却し、水100gと濃塩酸8.0gを加え攪拌した。反応液を液体クロマトグラフで分析した結果、2−n−ペンチル−1、3−シクロペンタンジオン(前記式(4)でR7がn−ペンチル基に相当する化合物)が生成しており、その収率は86%であった。
【0295】
[比較例7]
反応器(容積2L)内の空気を常圧の窒素ガスで置換し、ナトリウムメトキシド3.8g(0.07mol)とキシレン0.5Lを入れた。当該溶液を140℃に加熱し、キシレンを8mL/minの速度で反応器内から留出させつつ、予めキシレン0.5Lに溶解させたメチル4−オキソデカノエート(前記式(3)でR5がn−ペンチル基に、R6がメチル基に相当する化合物)7.0g(0.035mol)を、8ml/minの速度で滴下した。滴下終了後、キシレンをさらに留出させつつ、さらに10分間、加熱・攪拌した。これを25℃に冷却し、水100gを加えて攪拌したのち静置し、水相を分取した。分取した水相に濃塩酸8.0gとイソブチルアルコール100mlを加え、攪拌したのち静置し、有機相を分取した。この有機相を液体クロマトグラフにより分析した結果、2−n−ペンチル−1、3−シクロペンタンジオン(前記式(4)でR7がn−ペンチル基に相当する化合物)が得られており、その収率は29%であった。
【0296】
参考実施例10]
反応器(容積2L)内の空気を常圧の窒素ガスで置換し、ナトリウムメトキシド3.8g(0.07mol)とジメチルスルホキシド0.8Lを入れた。当該溶液を約107℃に加熱し攪拌しながら反応器内を約50mmHgに減圧した。この状態で、ジメチルスルホキシドを14mL/minの速度で反応器内から留出させつつ、予めジメチルスルホキシド0.5Lに溶解させたレブリン酸メチル(前記式(3)でR5が水素原子に、R6がメチル基に相当する化合物)4.6g(0.035mol)を、8ml/minの速度で滴下した。
滴下終了後、ジメチルスルホキシドを留去しつつ、さらに10分間加熱・攪拌したのち、25℃に冷却した。これに水200gと濃塩酸8.0gを加え攪拌した。得られた反応液を液体クロマトグラフにより分析した結果、1、3−シクロペンタンジオン(前記式(4)でR7が水素原子に相当する化合物)が生成しており、その収率は65%であった。
【0297】
[比較例8]
反応器(容積2L)内の空気を常圧の窒素ガスで置換し、ナトリウムメトキシド3.8g(0.07mol)とトルエン0.8Lを入れた。当該溶液を110℃に加熱し、攪拌しながらトルエンを13mL/minの速度で反応器から留出させつつ、予めトルエン0.5Lに溶解させたレブリン酸メチル(前記式(3)でR5が水素原子に、R6がメチル基に相当する化合物)4.6g(0.035mol)を、7ml/minの速度で滴下した。滴下終了後、トルエンを留出しつつ、さらに10分間、加熱・攪拌した。トルエンを減圧留去したのち、これを25℃に冷却し、水200gと濃塩酸8.0gを加え攪拌した。反応液を液体クロマトグラフにより分析した結果、1、3−シクロペンタンジオン(前記式(4)でR7が水素原子に相当する化合物)が生成しており、その収率は7%であった。
【0298】
参考実施例11]
反応器(容積2L)内の空気を常圧の窒素ガスで置換し、塩化水素0.7wt%含有イソブタノール(予め塩化水素ガスを吹き込んで調製したもの)1.1Lを入れた。当該塩化水素溶液を80℃に加熱し攪拌した後、n−ペンチル−フリルカルビノール(前記式(5)でR8がn−ペンチル基に相当する化合物)264g(1.57mol)を3時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度でさらに10分間攪拌した。イソブタノールを減圧留去し、25℃に冷却した。反応器内の液をガスクロマトグラフで分析した結果、イソブチル4−デカノエート(前記式(7)で、R10がn−ペンチル基に、R11がイソブチル基に相当する化合物)が生成しており、その収率は85%であった。
【0299】
参考実施例12]
イソブタノールの代わりにn−ペンタノールを用いた以外は実施例11と同様の条件で反応させたところ、n−ペンチル4−デカノエート(前記式(7)で、R10、R11がともにn−ペンチル基に相当する化合物)を82%の収率で得た。
[比較例9]
イソブタノールの代わりにメタノールを用い、反応温度を64℃にした以外は実施例1と同様の条件で反応させた。その結果、メチル4−デカノエート(前記式(7)で、R10がn−ペンチル基に、R11がメチル基に相当する化合物)が生成しており、その収率は26%であった。
【0300】
[比較例10]
イソブタノールの代わりにエタノールを用い、反応温度を78℃にした以外は実施例1と同様の条件で反応させた。その結果、エチル4−デカノエート(前記式(7)で、R10がn−ペンチル基に、R11がエチル基に相当する化合物)が生成しており、その収率は31%であった。
参考実施例13]
反応器(容積2L)内の空気を常圧の窒素ガスで置換し、塩化水素0.7wt%含有イソブタノール(予め塩化水素ガスを吹き込んで調製したもの)1.1Lを入れた。当該塩化水素溶液を80℃に加熱し、攪拌した後n−ペンチル−フリルカルビノール(前記式(8)でR12がn−ペンチル基に相当する化合物)264g(1.57mol)を3時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度でさらに10分間攪拌した。イソブタノールを減圧留去し、イソブチル4−オキソデカノエート(前記式(10)で、R14がn−ペンチル基に、R15がイソブチル基に相当する化合物)を得た。ガスクロマトグラフ分析の結果、イソブチル4−オキソデカノエートの収率は86%であった。
【0301】
得られたイソブチル4−オキソデカノエートにメタノール1Lと25%水酸化ナトリリウム250gを加え、25℃で1時間攪拌した。メタノールを減圧留去した後、水2Lとトルエン1Lを加え、室温で1時間攪拌した後静置し、水相を分取した。該水相に氷冷下濃塩酸175gとトルエン1.8Lを加え、10分間攪拌した後静置し、有機相を分取した。該有機相のトルエンを減圧留去し、メタノール1Lと濃硫酸47.5mLを加え、1時間加熱還流させた。これを25℃に冷却後、炭酸水素ナトリウム155gを徐々に加え、25℃で10分間攪拌した。メタノールを減圧留去した後、水3Lとトルエン1.8Lを加え、室温で10分間攪拌した後静置し、有機相を分取した。該有機相のトルエンを留去し、メチル4−オキソデカノエート(前記式(12)で、R17がn−ペンチル基に、R18がメチル基に相当する化合物)を得た。ガスクロマトグラフ分析の結果、メチル4−オキソデカノエートのイソブチル4−オキソデカノエートに対する収率は95%であった。
【0302】
反応器内(容積5L)の空気を常圧の窒素ガスで置換し、ナトリウムメトキシド22.7g(0.42mol)とジメチルスルホキシド3Lを入れた。当該溶液を約90℃に加熱し、攪拌しながら反応器内を約25mmHgに減圧した。この状態でジメチルスルホキシドを12mL/minの速度で反応器内から留出させつつ、予めジメチルスルホキシド1.5Lに溶解させたメチル4−オキソデカノエート42.0g(0.21mol)を、12ml/minの速度で滴下した。
【0303】
滴下終了後、減圧度を約15mmHgに上げ、81℃でジメチルスルホキシドを留去したのち、約40℃に冷却した。水1L、濃塩酸46gとイソブタノール0.8Lを加え、攪拌したのち静置し、有機相を分取した。該有機相のイソブタノールを減圧留去し、2−n−ペンチル−1、3−シクロペンタンジオン(前記式(13)でR19がn−ペンチル基に相当する化合物)を得た。液体クロマトグラフにより分析した結果、2−n−ペンチル−1、3−シクロペンタンジオンのメチル4−オキソデカノエートに対する収率は93%であった。
【0304】
2−n−ペンチル−1、3−シクロペンタンジオン32.5g(0.19mol)に塩化水素1wt%含有メタノール(予め塩化水素ガスを吹き込んで調製したもの)650mlを加え、5時間加熱還流した。25℃に冷却後、炭酸水素ナトリウム15.4gを徐々に加え、25℃で30分間攪拌した。メタノールを減圧留去した後、水200mLとイソブタノール200mLを加え、25℃で10分間攪拌した後静置し、有機相を分取した。該有機相のイソブタノールを留去し、2−ペンチル−3−メトキシ−2−シクロペンテノン(前記式(14)でR20がn−ペンチル基に、R21がメチル基に相当する化合物)を得た。ガスクロマトグラフ分析の結果、2−ペンチル−3−メトキシ−2−シクロペンテノンの2−n−ペンチル−1、3−シクロペンタンジオンに対する収率は80%であった。
【0305】
予め常圧の窒素置換した反応器(容積0.3L)にナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液13.5g(70mmol)と無水メタノール140mlを入れた。マロン酸ジメチル6.6g(50mmol)を添加し25℃で30分間攪拌した。2−ペンチル−3−メトキシ−2−シクロペンテノン6.6g(36mmol)を添加し、窒素雰囲気下に24時間加熱還流した。これを氷冷後、濃塩酸6.1mlを徐々に加えて中和し、メタノールを留去した。水50mlとトルエン100mlを加えて十分攪拌した後静置し、有機相を分取した。該有機相のトルエンを減圧下に留去した後、減圧蒸留を行い、メチル(2−ペンチル−3−ケト−1−シクロペンテニル−)アセテート(前記式(15)においてR22がn−ペンチル基に、R23がメチル基に相当する化合物)を得た。ガスクロマトグラフ分析の結果、メチル(2−ペンチル−3−ケト−1−シクロペンテニル−)アセテートの2−ペンチル−3−メトキシ−2−シクロペンテノンに対する収率は90%であった。
【0306】
[比較例11]
容積0.1Lの容器に、無水AlCl332g(0.24mol)の無水ニトロメタン(30ml)溶液に対し25℃コハク酸12g(0.1mol)を少量ずつ加えて25℃で攪拌した。強腐食性のHClガスが激しく発生し、その除害に苦労した。なお、AlCl3は発煙性(HClガス)であるため、秤量時には周辺環境の腐食対策に苦労した。また溶媒であるニトロメタンは爆発性なため、防爆設備内で細心の注意を払いつつ取り扱った。
【0307】
コハク酸投入後、HClガスの発生が終了するのを待ち、ヘプタノイルクロライド60g(0.4mol)を加え、80℃で8時間加熱した。ヘプタノイルクロライドも発煙性(HClガス)であるため、秤量時には周辺環境の腐食対策に苦労した。冷却後、氷60gに注ぎ、−10℃で10時間保つと生成物が固体として析出した。吸引ろ過後、10%NaCl水とトルエン(20ml×3回)で洗浄した後乾燥させ、2−ペンチル−1,3−シクロペンタンジオン(前記式(3)においてR1がn−ペンチル基に相当する化合物)8.4g(0.05mol)を得た。収率は、AlCl3、コハク酸、ヘプタノイルクロライドに対し、それぞれ20.8%、50.0%、12.5%であった。同時に、アルミニウム系および塩素系化合物を多量に含有する廃水が副生した。
【0308】
[実施例14]
容積1.0Lの反応器で、1,3−シクロペンタンジオン10.0g(0.10mol)、1−ペンテン−3−オール17.6g(0.20mol)及びp−トルエンスルホン酸1.0gをトルエン500mlと混合し、4時間加熱還流した。その間、副生する水を共沸的に系外に除去した。続いて炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液と混合した後静置し、得られた有機相を分取した。該有機相のトルエンを減圧留去し、前記式(21)でR32がエチル基に相当する化合物を得た(収率80%)。
【0309】
当該化合物10.0gをキシレン500mlに溶解し、4時間加熱還流した。キシレンを減圧留去し、前記式(22)でR33がエチル基に相当する化合物を得た(収率85%)。
当該化合物5.0gを、塩化水素を1%含有する無水メタノール100mlに溶解し、4時間加熱還流した。炭酸水素ナトリウムを加えて塩化水素を中和した後、メタノールを減圧留去した。その後、水50mlとイソブタノール250mlを加えて攪拌した後静置し、有機相を分取した。当該有機相のイソブタノールを減圧留去し、前記式(23)でR34がエチル基、R35がメチル基に相当する化合物を得た(収率86%)。
【0310】
当該化合物1.0gを無水メタノール5mlに溶解した(式(23)の無水メタノール溶液)。次にマロン酸ジメチル1.29g、ナトリウムメトキシド0.59g及び無水メタノール5mlを25℃で15分間混合した。この溶液に式(23)の無水メタノール溶液に加え、22時間加熱還流した。1N塩酸とジエチルエーテルを加え混合した後分相し、有機相を分取した。当該有機相の溶媒を減圧留去し、前記式(24)でR36がエチル基、R37がメチル基に相当する化合物を得た(収率91%)。
【0311】
当該化合物1.0gをジクロロメタン100mlに溶解し、氷冷下にm−クロロ過安息香酸1.08gを加えた後、25℃で4時間攪拌した。1Nチオ硫酸ナトリウム8mlと炭酸水素ナトリウム飽和水溶液2mlと混合した後静置し、得られた有機相を分取した。当該有機相の溶媒を減圧留去し、前記式(25)でR38がエチル基、R39がメチル基に相当する化合物を得た(収率88%)。
【0312】
当該化合物0.7gをテトラヒドロフラン40ml、水10mlの混合溶媒に溶解し、70%過塩素酸水溶液1.1gを加え、25℃で1時間攪拌した。炭酸水素ナトリウムで中和した後、テトラヒドロフランを減圧留去した。酢酸エチルを加えて攪拌した後静置し、得られた有機相を分取した。当該有機相の酢酸エチルを減圧留去し、前記式(26)でR40がエチル、R41がメチルに相当する化合物を得た(収率82%)。
【0313】
当該化合物0.5gとパラジウム−活性炭素(パラジウム含有量10%)0.1gを反応器に入れた。酢酸エチル5mlを加えた後、攪拌しつつ、減圧と水素導入を繰り返し、反応器内を常圧の水素で置換した。その状態で6時間攪拌した。触媒を濾過により反応液から除いた後、酢酸エチルを減圧留去し、前記式(27)でR42がエチルR43がメチルに相当する化合物を得た(収率90%)。
【0314】
当該化合物0.3gにオルトギ酸メチル10mlと触媒量のp−トルエンスルホン酸を加え、1時間加熱還流した。炭酸水素ナトリウムで中和したのち、オルトギ酸メチルを減圧留去した。続いて水とジエチルエーテルを加えて攪拌したのち静置し、得られた有機相を分取した。当該有機相の溶媒を減圧留去し、前記式(28)でR44がエチルR45がメチルに相当する化合物を得た(収率95%)。
【0315】
当該化合物0.2gを無水酢酸5mlに溶解し、予め加熱還流しておいた無水酢酸5mlに1時間かけて滴下した。これを20分間加熱還流した後、無水酢酸を減圧留去し、炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液とジエチルエーテルを加えて攪拌した後静置し、得られた有機相を分取した。当該有機相の溶媒を留去し、前記式(29)でR46がエチルR47がメチルに相当する2,3−ジ置換シクロペンタノンを得た(収率88%)。当該化合物の2,3−位の置換基の立体配置の比率は、シス体:トランス体=55:45であった。
【0316】
参考実施例15]
容積0.1Lの反応器で、1,3−シクロペンタンジオン4.0g、炭酸カリウム6.0g、1−ブロモ−2−ペンチン6.6gを水40mlに加え、60℃で6時間加熱した。5N水酸化ナトリウム2gとトルエン30mlを加えて25℃で攪拌した後分相し、水相を分取した。当該水相に塩酸を加えてpH=1とした。当該水相を50℃のトルエンで2回抽出し、トルエンを減圧留去し、前記式(31)でR49がエチル基に相当し、点線部に結合がある化合物を得た(収率40%)。当該化合物2.0gを、塩化水素を1%含有する無水メタノール20mlに溶解し、5時間加熱還流した。炭酸水素ナトリウムで塩化水素を中和した後、メタノールを減圧留去し、水20mlとトルエン20mlを加えて攪拌した後分相し、有機相を分取した。当該有機相のトルエンを減圧留去し、前記式(32)でR50がエチル基、R51がメチル基に相当する化合物を得た(収率83%)。当該化合物1.0gを無水メタノール5mlに溶解したものを、マロン酸ジメチル1.33g、ナトリウムメトキシド0.61g及び無水メタノール5mlを予め25℃で15分間混合した溶液に加え、20時間加熱還流した。1N塩酸とジエチルエーテルを加え混合した後分相し、有機相を分取した。当該有機相の溶媒を減圧留去して、前記式(33)でR52がエチル基、R53がメチル基に相当し、点線部に結合がある化合物を得た(収率89%)。
【0317】
参考実施例16]
容積10mlの反応器で、メチル(2−ペンチル−3−ケト−1−シクロペンテニル−)アセテート(前記式(34)においてR54がn−ペンチル基に、R55がメチル基に相当する化合物)1g(4.5mmol)、塩化ナトリウム0.5g(8.5mmol)、水0.2g、およびジメチルスルホキシド3mlの混合物を、窒素雰囲気下、160℃で3時間加熱した。25℃に冷却後、水10mlと酢酸エチルを20ml加えて攪拌することにより、生成物を酢酸エチル相に抽出させた。ガスクロマトグラフ分析の結果、2−n−ペンチル−3−メチル−2−シクロペンテノンの収率は82%であった。
【0318】
[比較例12]
容積0.1Lの反応器で、ウンデカン−7,10−ジオン[CH3COCH2CH2COCH2(CH24CH3]1g、エタノール7ml、および0.5N水酸化ナトリウム25mlを混合し、窒素雰囲気下で5時間加熱還流した。当該混合物を25℃に冷却後、ジエチルエーテル20mlを加えて攪拌することにより、生成物をジエチルエーテル相に抽出させた。ガスクロマトグラフ分析の結果、2−n−ペンチル−3−メチル−2−シクロペンテノンの収率は52%であった。
【0319】
参考実施例17]
常圧の窒素ガスで置換した反応器(容積2L)に、塩化水素0.7wt%含有イソブタノール(予め塩化水素ガスを吹き込んで調製したもの)1.1Lを入れた。当該塩化水素溶液を80℃に加熱し、攪拌したところに、n−ペンチル−フリルカルビノール(前記式(36)でR57がn−ペンチル基に相当する化合物)264g(1.57mol)を3時間かけて滴下した。
滴下終了後、同温度でさらに10分間攪拌した。イソブタノールを減圧留去し、イソブチル4−オキソデカノエート(前記式(38)で、R59がn−ペンチル基に、R60がイソブチル基に相当する化合物)を得た。ガスクロマトグラフ分析の結果、イソブチル4−オキソデカノエートの収率は88%であった。
【0320】
イソブチル4−オキソデカノエート24.2g(0.10mol)を99.5%エタノール200mlに溶解した。水素化ホウ素ナトリウム4.2g(0.11mol)を少量ずつ加えた後、25℃で10分間攪拌した。該溶液を水1L中へ注ぎ、さらに酢酸エチル1Lを加えて攪拌することにより、生成物を酢酸エチル相に抽出させた。酢酸エチルを留去した後減圧蒸留し、γ−デカラクトン(前記式(39)でR61がn−ペンチル基に相当する化合物)を得た。ガスクロマトグラフ分析の結果、γ−デカラクトンのイソブチル4−オキソデカノエートに対する収率は93%であった。得られたγ−デカラクトンには、プラスチック様の香味や酸味は全く認められず、良好なピーチ様香気を有していた。
【0321】
[比較例13]
オートクレーブ(容積1L)にn−ヘプタノール349g(3.0mol)と臭化亜鉛0.06g(0.27mmol)を入れた。該混合物を165℃に加熱攪拌した状態で、該混合物中へアクリル酸メチル57g(0.66mol)とジ−t−ブチルペルオキシド9.9g(0.068mol)の混合液を6時間かけて圧入した。同温度で更に1時間攪拌した。ついで未反応のn−ヘプタノールを留去した後減圧蒸留し、γ−デカラクトンを得た。ガスクロマトグラフ分析の結果、γ−デカラクトンの収率は69%であった。得られたγ−デカラクトンは、プラスチック様の香気や酸味を伴っており、香気の品位が劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0322】
本発明により、ジャスミン系香料やその中間体等として有用なシス−2,3−ジ置換シクロペンタノンの立体選択的製造方法の提供、ならびに、当該置換シクロペンタノン製造のための有用中間体及び当該中間体の製造方法の提供が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の9工程より成ることを特徴とする置換シクロペンタノンの製造方法。
(第一工程)
3−シクロペンタンジオンをエーテル化し、下記式(21)
【化1】

(式中、R32は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表す。)で表される化合物を製造する工程。
(第二工程)
前記式(21)で表される化合物を転位させ、下記式(22)
【化2】

(式中、R33は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R32と同じでもよい。)
で表される化合物を製造する工程。
(第三工程)
前記式(22)で表される化合物をエーテル化し、下記式(23)
【化3】

(式中、R34は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R33と同じでもよく、R35は、炭素数1乃至8の置換基を表し、R34とR35は同じでもよい。)で表わされる化合物を製造する工程。
(第四工程)
前記式(23)で表される化合物にマロン酸エステルを付加させるとともに脱炭酸させ、下記式(24)
【化4】

(式中、R36は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R34と同じでもよく、R37は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R36とR37は同じでもよい。)で表される置換シクロペンテノンを製造する工程。
(第五工程)
前記式(24)で表される置換シクロペンテノンの側鎖の二重結合を選択的に酸化し、下記式(25)
【化5】

(式中、R38は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R36と同じでもよく、R39は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R37と同じでもよく、R38とR39は同じでもよい。)で表される化合物を製造する工程。
(第六工程)
前記式(25)で表される化合物のオキシラン環を加水分解し、下記式(26)
【化6】

(式中、R40は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R38と同じでもよく、R41は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R39と同じでもよく、R40とR41は同じでもよい。)で表されるジオールを製造する工程。
(第七工程)
前記式(26)の5員環内二重結合に水素添加し、下記式(27)
【化7】

(式中、R42は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R40と同じでもよく、R43は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R41と同じでもよく、R42とR43は同じでもよい。)で表される化合物を製造する工程。
(第八工程)
前記式(27)で表される化合物のジオールをジオキソラン化し、下記式(28)
【化8】

(式中、R44は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R42と同じでもよく、R45は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R43と同じでもよく、R44とR45は同じでもよい。Zは炭素数1乃至6のアルコキシ基もしくはアミノ基を表す。)で表される化合物を製造する工程。
(第九工程)
前記式(28)で表される化合物をカルボン酸無水物の存在下に分解し、下記式(29)
【化9】

(式中、R46は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R44と同じでもよく、R47は、水素原子又は炭素数1乃至8の置換基を表し、R45と同じでもよく、R46とR47は同じでもよい。)で表される置換シクロペンタノンを製造する工程。
【請求項2】
前記式(23)で表される化合物。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−137033(P2011−137033A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47306(P2011−47306)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【分割の表示】特願2007−523433(P2007−523433)の分割
【原出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】