説明

置換ヒドロキシピリジン化合物の抱合体

【課題】IV型ホスホジエステラーゼ阻害作用を有する新規な置換ヒドロキシピリジン化合物の抱合体又はその生理的に許容される塩を提供する。
【解決手段】下記式(I)で表される化合物の抱合体又はその生理的に許容される塩。
【化1】


本発明の抱合体はそれ自体で薬理活性を有する特殊な抱合体である。薬効の標的組織に相当量存在し、かつ副作用に関与する組織には極めて少量しか分布しない、標的組織において脱抱合されて未変化体を持続的に供給する、溶解度が高いという特徴を有している。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、IV型ホスホジエステラーゼ(以下、PDEIVと記載することもある。)阻害作用を有する新規な置換ヒドロキシピリジン化合物の抱合体又はその生理的に許容される塩に関する。
【0002】
【従来の技術】
PDEIVは気管支平滑筋、好酸球をはじめとする炎症性細胞に広く分布し、サイクリックAMP(以下、cAMPと記載することもある。)の分解を触媒する酵素である。PDEIVを阻害することは、気管支平滑筋の収縮を抑制し、炎症性細胞の活性化を抑制することにつながることが広く認められている[Current Medicinal Chemistry; 2巻, 561-572頁(1995年)]。
【0003】
PDEIV阻害作用を有する代表的化合物としては例えば、下記式で示されるロリプラム(US4193926号公報)、RP-73401(WO9212961号公報)、SB-207499(WO9319749号公報)が挙げられる。
【0004】
【化3】

【0005】
また、WO00/20391号公報には下記式(A)で示される2,3−ジ置換ピリジン誘導体がPDEIV阻害作用を有することが記載されている。
【0006】
【化4】

【0007】
(式中、Aは酸素原子,硫黄原子,CHR1又はNR2を意味し、R1及びR2は水素原子又は低級アルキル基を意味し、
1及びX2は同一又は異なって、水素原子,ハロゲン原子,ニトロ基,シアノ基,ヒドロキシ基,低級アルキル基,ヒドロキシ置換低級アルキル基,ハロゲノ低級アルキル基,低級アルコキシ基,シクロ低級アルコキシ基,ヒドロキシ置換低級アルコキシ基,ハロゲノ低級アルコキシ基,低級アルコキシ置換低級アルコキシ基,カルボキシル置換低級アルコキシ基,低級アルコキシカルボニル置換低級アルコキシ基,カルボキシル基,低級アルコキシカルボニル基,モノ若しくはジ低級アルキルアミノカルボニル基,低級アシル基,低級アシルオキシ基,アミノ基,低級アシルアミノ基,カルバモイル基,5−テトラゾリル基又は生体内でヒドロキシ基に変換しうる基を意味し、
1は水素原子又は低級アルキル基を意味し、
1及びZ2は同一又は異なって、水素原子,ハロゲン原子,シアノ基,ヒドロキシ基,低級アルキル基,ヒドロキシ置換低級アルキル基,ハロゲノ低級アルキル基,低級アルコキシ基,シクロ低級アルコキシ基,ヒドロキシ置換低級アルコキシ基,ハロゲノ低級アルコキシ基,低級アルコキシ置換低級アルコキシ基,カルボキシル置換低級アルコキシ基,低級アルコキシカルボニル置換低級アルコキシ基,カルボキシル基,低級アルコキシカルボニル基,モノ若しくはジ低級アルキルアミノカルボニル基,低級アシルオキシ基,アミノ基,モノ若しくはジ低級アルキルアミノ基,低級アシルアミノ基,カルバモイル基,低級アルコキシカルボニルアミノ基,低級アルキルスルホニルアミノ,カルバモイル基,5−テトラゾリル基又は生体内でヒドロキシ基に変換しうる基を意味し、
nは2〜4の整数を意味する)
【0008】
一方、一般的に、投与された薬物は消化管で吸収され、主として肝臓で薬物代謝酵素により抱合等の化学変化を受けて、尿中及び胆汁中に排泄される[Mulder, G.J. (1990年) Conjugation Reactions in Drug metabolism, London:Taylor and Francis.]。即ち、投与された薬物の抱合体は、薬効に寄与することなく排泄されると考えられている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題及びその解決手段】
本発明者は、抱合体は一般に、薬効に寄与することなく排泄されると考えられているにもかかわらず、ある種の抱合体がそれ自体で薬理活性を有する特殊な抱合体化合物であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、下記式(I)で表される化合物の抱合体又はその生理的に許容される塩に関する。
【化5】

【0011】
本明細書において、「式(I)で表される化合物の抱合体」とは式(I)で表される化合物にグルクロン酸残基又は硫酸残基が結合した化合物を意味し、具体的には式(I)で表される化合物の、ヒドロキシピリジン環におけるヒドロキシ基の水素原子がグルクロン酸残基で置換された化合物又は硫酸残基で置換された化合物、ヒドロキシピリジン環における窒素原子にグルクロン酸残基が結合した化合物を意味し、式(I)で表される化合物又は他の化合物を原料として、化学的に変換を行うことにより製造して得た化合物のみならず、式(I)で表される化合物が生体内で薬物代謝酵素により抱合されて生成した化合物も含む。
【0012】
また、本明細書において「グルクロン酸残基」とはグルクロン酸の1位炭素で結合した基を意味し、「硫酸残基」とは硫酸の硫黄原子で結合した基を意味する。
【0013】
生理的に許容される塩とは生理的に許容される酸付加塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又は有機塩基との塩を意味する。好ましくは、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又は有機塩基との塩である。具体的には、酸付加塩としては、例えば塩酸塩,臭化水素酸塩,ヨウ化水素酸塩,硫酸塩,リン酸塩等の無機酸塩及びシュウ酸塩,マレイン酸塩,フマル酸塩,マロン酸塩,乳酸塩,リンゴ酸塩,クエン酸塩,酒石酸塩,安息香酸塩,メタンスルホン酸塩,p−トルエンスルホン酸塩,グルコン酸塩等の有機酸塩が挙げられる。アルカリ金属塩としては、例えば、ナトリウム塩,カリウム塩等の無機アルカリ塩が挙げられ、アルカリ土類金属塩としては、例えば、カルシウム塩,マグネシウム塩が挙げられ、また、有機塩基との塩としては、例えば、アンモニア,メチルアミン,トリエチルアミン,トリブチルアミン,ジイソプロピルエチルアミン,N−メチルモルホリン,ジシクロヘキシルアミンとの塩が挙げられる。
【0014】
本明細書においては、式(I)で表される化合物の抱合体を、本発明の抱合体と記載することもある。また、下記式(I)で表される化合物の抱合体又はその生理的に許容される塩を、本発明の化合物と記載することもある。
【0015】
式(I)で表される化合物の抱合体又はその生理的に許容される塩は、水和物及び/又は溶媒和物の形で存在することもあるので、これらの水和物、溶媒和物もまた本発明の化合物に包含される。
【0016】
また、式(I)で表される化合物の抱合体の中には不斉炭素原子を有するものがあるが、これらの立体異性体及びそれらの混合物もまた本発明の化合物に包含される。
【0017】
好適な化合物は下記式(II)で表される化合物又はその生理的に許容される塩である。
【化6】

(式中、Zはグルクロン酸残基又は硫酸残基を意味する)
【0018】
本発明の化合物の具体例としては、次の化合物又はその生理的に許容される塩が挙げられる。
硫酸水素4−[3−[2−(3−クロロフェノキシ)−3−ピリジルオキシ]プロピル]−3−ピリジル、
1−O−[4−[3−[2−(3−クロロフェノキシ)−3−ピリジルオキシ]プロピル]−3−ピリジル]−β−D−グルコピランウロン酸、
1−[4−[3−[2−(3−クロロフェノキシ)−3−ピリジルオキシ]プロピル]−3−オキシド−1−ピリジニオ]−1−デオキシ−β−D−グルコピラン酸
【0019】
本発明の化合物は、式(I)で表される化合物又は他の化合物を原料として、化学的に変換をすることにより製造することができる。また、式(I)で表される化合物を生体内に投与した後、式(I)で表される化合物が生体内で薬物代謝酵素により抱合されることによっても生成される。
【0020】
式(I)で表される化合物は例えば、WO00/20391号公報の実施例31に記載の方法により、製造することができる。
【0021】
一般的に抱合体は、薬効に寄与することなく排泄されると考えられているので、式(I)で表される化合物の抱合体が、薬理活性を有していることは、予見し得ないことであったが、本発明者は式(I)で表される化合物の抱合体について薬理試験を行ったところ、それ自体で薬理活性を有する特殊な抱合体であることを見出した。
【0022】
さらに、式(I)で表される化合物を標識し、これを用いて薬物動態試験を実施して、式(I)で表される化合物とその抱合体の各種組織への分布を検討したところ、意外にも、PDEIV阻害薬の標的組織の一つである肺に、抱合体が持続的に相当量存在していることを究明した。一般に、排泄されやすい性質を有する抱合体が、標的組織に大量に分布し、しかも持続的に存在することは、本発明の化合物の特徴であり、この点においても本発明の化合物は特殊な抱合体である。
【0023】
また、本発明の化合物は脳への分布が極めて少量であることも究明した。従って、本発明の化合物は、PDEIV阻害剤に一般に広く認められている副作用である嘔吐誘発作用が極めて弱いという特徴も有している。この特徴はまた、式(I)で表される化合物を生体内に投与した場合に、式(I)で表される化合物が抱合体に速やかに変換されることにより、脳への分布が著しく抑制され、結果として、式(I)で表される化合物が、PDEIV阻害剤に一般に広く認められている副作用である、嘔吐誘発作用が極めて弱いという特徴を有することにつながると考える。
【0024】
本発明の化合物は薬効の標的組織に相当量存在し、かつ副作用に関与する組織には極めて少量しか分布しないという特徴を有しているので、本発明の化合物はターゲッティング医薬として利用できる。本発明の化合物からなる医薬は、標的組織に特徴的に分布して効率的に薬効を発現することができ、かつ副作用を回避することができる、優れたターゲッティング医薬である。
【0025】
さらに本発明の抱合体、例えば硫酸水素4−[3−[2−(3−クロロフェノキシ)−3−ピリジルオキシ]プロピル]−3−ピリジル(以下、硫酸抱合体と記載することもある。)は、標的組織においてそれ自身で薬効に寄与しているが、1−O−[4−[3−[2−(3−クロロフェノキシ)−3−ピリジルオキシ]プロピル]−3−ピリジル]−β−D−グルコピランウロン酸(以下、グルクロン酸抱合体と記載することもある。)は、標的組織の一つである肺において、式(I)で表される化合物へ脱抱合されて、式(I)で表される化合物(以下、未変化体と記載することもある。)の供給源となっていることを究明した。一般に、排泄されやすい性質を有する抱合体が、標的組織において脱抱合されて未変化体の供給源となることは、本発明の化合物の特徴であり、この点においても本発明の化合物は特殊な抱合体である。
【0026】
本発明の化合物は標的組織に分布し、標的組織において脱抱合されて未変化体を持続的に供給するという特徴を有しているので、本発明の化合物は薬理活性の持続時間が延長されるという効果があり、持続性医薬として利用できる。本発明の化合物からなる医薬は、優れた持続性医薬である。
【0027】
さらに本発明の化合物は、式(I)で表される化合物と比較して溶解度が高いという特徴を有しているので、例えば注射剤,デポ剤等の液体製剤、吸入剤等の経肺投与製剤、点鼻剤等の経鼻投与製剤の製造が容易であるという利点を有している。
【0028】
【薬理試験】
本発明の代表的化合物についての薬理試験結果および薬理作用について説明する。
【0029】
試験例1:PDEIVの阻害活性試験
モルモットPDEIV阻害活性の試験はモルモット腹腔より分離した好酸球を用いる方法(Souness, J.E.ら、Biochem. Pharmacol.42巻, 937頁(1991年))に基づいて実施した。すなわち、5x107個の細胞に10mLのホモゲナイジング・バッファー(組成:20mMトリス−塩酸バッファー(pH7.5),2mM塩化マグネシウム,1mMジチオスレイロール,5mMエチレンジアミン四酢酸・ジナトリウム,250mMシュクロース,20μMp−トシル−l−リジン−クロロメチルケトン,10μg/mLロイペプチン)を加え、遠心する。残渣に10mLのソルビライジング・バッファー(上記のホモゲナイジング・バッファーにデオキシコール酸ナトリウム(終濃度0.5%),塩化ナトリウム(終濃度100mM)を添加)を加え、再遠心する。上清をモルカットII(日本ミリポアリミテッド社製)を用いて限外濾過し、膜上の画分を10mLのホモゲナイジング・バッファーの添加により回収し、酵素標本とする。酵素に対する阻害活性は、基質であるcAMP(ナカライテスク社製)の上述酵素画分による加水分解率に対して、被験化合物を添加した際の抑制率を溶媒添加群と比較して算出することにより求めた。また被験化合物の濃度・作用曲線より、50%抑制濃度IC50を求めた。
【0030】
ヒトPDEIV阻害活性の試験は、健常者末梢血から、比重勾配遠心法とCD16マイクロビーズを用いたMACS(magnetic cell separation system) negative deletion 法により分離した好酸球を用いて、モルモット好酸球を用いる方法に準じて実施した。その結果を表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
表1から明らかなように、本発明の化合物は、モルモット好酸球およびヒト好酸球より分離精製したPDEIVに対し、強い阻害活性が認められた。
【0033】
試験例2:in vitro抗原誘発気管支収縮抑制作用
ハートレイ(Hartley)系雄性モルモットを卵白アルブミン(シグマ社製)を腹腔内及び皮下投与することにより能動的に感作した。数週間後、気管を摘出し、常法に従い、ジグザグ標本を作製した。標本は37℃に保温したマグヌス管に1gの張力を負荷して懸垂し、FDピックアップおよびひずみ圧力アンプを介し、ペンレコーダーに接続した。標本は0.5-1時間の安定化の後、被験化合物を添加して、15分処置した。さらに抗原1x10-5g/Lを添加して収縮を惹起し、レコーダーに記録された収縮曲線より、初期値に対する収縮高をノギスで計測し、溶媒添加群に対する被験化合物添加群の抑制率を算定し、収縮抑制作用とした。その結果を表2に示す。
【0034】
【表2】

【0035】
表2から明らかなように、本発明の化合物は、in vitroモルモット抗原誘発気道収縮に対し、強い抑制作用を示した。
【0036】
試験例3:炎症細胞内cAMP上昇作用
健常者末梢血より好酸球を分離し、106個の細胞浮遊液に被検化合物を添加し、2時間培養した。そこへ、イソプロテレノールを添加し(終濃度1μM)さらに5分培養した。トリクロロ酢酸(終濃度6%)により反応を終了させた後、エーテルによりトリクロロ酢酸を除去後、反応液中のcAMP量をEIA 法により測定した。被検化合物添加群のcAMP量を、溶媒添加群における細胞内cAMP量からの増加量として、上昇作用を表した。
【0037】
【表3】

【0038】
表3から明らかなように、本発明の化合物は、ヒト好酸球においてcAMP量上昇作用を示した。
【0039】
試験例4:マウス抗原誘発気道炎症抑制作用
マウスに卵白アルブミンを2回腹腔内投与し感作した。最終感作一週間後に卵白アルブミンを点鼻する事により気道炎症を誘発した。抗原誘発3日後に気管支肺胞洗浄(BAL)を行い、洗浄液中の炎症細胞数を計測した。被検化合物は抗原誘発30分後、1日後、2日後の3回点鼻投与した。
【0040】
被験化合物の抑制率(%)は溶媒のみ投与の対照群のBAL中細胞数と比較して算出することにより求めた。その結果を表4に示す。
【0041】
【表4】

【0042】
表4から明らかなように、本発明の化合物は、マウス抗原誘発気道炎症作用に対し、強い抑制作用を示した。
【0043】
以上の薬理試験から明らかなように、本発明の化合物は、強いPDEIV阻害活性を有し、かつ優れた気管支拡張作用、炎症細胞内cAMP上昇作用を示した。
【0044】
【薬物動態試験】
本発明の代表的化合物についての薬物動態試験結果およびその特徴について説明する。
【0045】
試験例5:モルモットにおける14C標識化合物経口投与後の血漿、肺、気管中濃度
【0046】
(1)動物実験
被験動物としては、卵白アルブミンで感作後、4〜5週間経過したハートレイ(Hartley)系雄性モルモット(SLC-Std、7〜8週齢)を用いた。式(I)で表される化合物の3−クロロフェノキシ基が結合している炭素原子を14Cで標識した化合物(以下、標識化合物と記載することもある。)の0.5%トラガント懸濁液を調製し、10 mg/7.69 MBq/kgの用量で、モルモットに経口投与した。投与後、0.5、2、4時間にエーテル麻酔下、心臓より全採血を行った後、肺、気管、脳を採取した。例数は各時点とも3匹とした。
【0047】
(2)生体試料の処理
血液は、遠心分離後、一定量の血漿を液シンバイアルに採取し、シンチレーションカクテル:クリアゾル−I(ナカライテスク社製)を加え、放射能測定に供した。組織は、湿重量を測定後、その約4〜5倍量の精製水を加えてグラスホモジナイザーを用いてホモジナイズした。その一定量を液シンバイアルに採取し、組織可溶化剤ソルエン-350(Packard Instrument社製)約1mLを添加した。可溶化後、シンチレーションカクテル:ハイオニックフロー(Packard Instrument社製)を加え、放射能測定に供した。残りの血漿及び肺、気管ホモジネートは凍結保存し、代謝物の分析に供した。
【0048】
(3)高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCと記載することもある。)による代謝物の分析
【0049】
(3−1)血漿の前処理
一定量の血漿(1〜4mL)に対し4倍容のメタノール・アセトニトリル(1:1)混液を加え、振とう機で5分間撹拌した後、4℃、3000 rpmで10分間遠心分離した。上清を回収後、沈殿に再度同量のメタノール・アセトニトリル(1:1)混液を加え、同様に振とう撹拌後、遠心分離した。この2回分の除蛋白上清を合わせて、減圧下で乾固した。これを少量の0.1%ギ酸に再溶解して、HPLC分析の試料とした。
【0050】
(3−2)組織の前処理
一定量の肺または気管ホモジネート(肺:2〜8mL、気管:1.5 mL)に対し4倍容のメタノールを加え、振とう機で5分間撹拌した後、4℃、3000rpmで10分間遠心分離した。上清を回収後、沈殿に再度同量のメタノールを加え、同様に振とう撹拌後、遠心分離した。この2回分の上清を合わせて、減圧下で濃縮した。この濃縮液に対し4倍容のメタノール・アセトニトリル(1:1)混液を加え、振とう後に遠心分離し、この上清を減圧下で濃縮した。さらにこの濃縮液に対し4倍容のアセトニトリルを加え、振とう後に遠心分離し、この上清を減圧下で乾固した。これを少量の0.1%ギ酸に再溶解して、HPLC分析の試料とした。
【0051】
(3−3)HPLC分析
HPLCポンプは600E(Waters社製)を、カラムはCAPCELLPAK C18 UG-120 5μm(資生堂製、内径4.6×250 mm)を40℃で使用した。移動相はA液に5mMヘプタフルオロ酪酸水溶液を、B液にアセトニトリルを用い、流速1mL/minで、A液/B液の割合を注入後0−20−25分で73/27−63/37−0/100とするグラジエントを用いた。
【0052】
検出にはUV検出器およびフロー型放射能検出器FLO-ONE βA-515 (Packard Instrument社製)を用いた。放射能検出器において液体シンチレーターとしてウルチマフローMを2mL/minで使用した。また、放射能検出器からの溶出液を、フラクションコレクター222XL(Gilson社製)を用いて注入時から0.5分毎に分画し、必要に応じて各画分の放射能を測定した。試料中放射能に占める各放射能成分の割合は、検出された各放射能成分のピーク面積(または放射能)の総和に対する当該成分のピーク面積(または放射能)の比より算出した。
【0053】
(4)放射能の測定
生体試料及びHPLC溶出液は液体シンチレーションカウンター Tri-Carb 2700TRまたは2200CA (Packard Instrument社製)で測定した。
【0054】
(5)データ処理
血漿、組織中放射能濃度は、放射能測定値を投与薬物の比放射能で除することにより、式(I)で表される化合物の当量濃度に換算した。血漿、組織中の未変化体及び抱合体の濃度は、それぞれの試料中放射能濃度にHPLC分析により得られた当該成分の試料中放射能に占める割合を乗じて算出し、式(I)で表される化合物の当量濃度で表示した。数値は原則として、3例の平均値±標準誤差で示した。その結果を表5に示す。
【0055】
(6)結果
【0056】
【表5】

【0057】
表5から明らかなように、式(I)で表される化合物をモルモットに経口投与後、血漿、肺及び気管中では、硫酸抱合体及びグルクロン酸抱合体が未変化体より高い濃度で、投与後4時間においても持続して存在することが判明した。また、未変化体の肺中濃度は、血漿中濃度を大きく上回り、標的組織において抱合体から生成した未変化体が寄与しているものと考えられた。さらに、脳中放射能濃度は、血漿中放射能濃度の1/10〜1/20以下であり、脳へ移行しにくいことが明らかになった。
【0058】
試験例6:グルクロン酸抱合体の肺における脱抱合反応試験
【0059】
(1)in vitro反応
モルモット肺を3倍量のホモジナイズバッファー(組成:50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)、154mM 塩化カリウム、2mM エチレンジアミン四酢酸・二カリウム)でホモジナイズ後、800gで10分間遠心し上清を肺ホモジネートとした。実施例2で得られる化合物の3−クロロフェノキシ基が結合している炭素原子を14Cで標識した化合物(終濃度1.25、2.5、5、10、20および30μM)を肺ホモジネート(終濃度1mg/mL)と50mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH5)中で37℃、10分間反応させた。反応液にアセトニトリル1.5mLを添加し反応停止後、3000rpmで10分間遠心分離した。上清を減圧下で乾固後、HPLCの移動相に溶解してHPLC分析の試料とした。
【0060】
(2)HPLC分析
HPLCポンプはHP1090(Agilent Technologies社製)を、カラムはCAPCELLPAK C18 UG-120 5μm(資生堂製、内径4.6×250 mm)を40℃で使用した。移動相はA液に10mMギ酸アンモニウムを、B液にアセトニトリルを用い、流速1mL/minで、A液/B液の割合を注入後0−25−25.5−26−30分で70/30−45/55−0/100−70/30−70/30とするグラジエントを用いた。検出にはフロー型放射能検出器FLO-ONE β A-515 (Packard Instrument社製)を用いた。検出された各放射能成分のピーク面積の総和に対する未変化体のピーク面積の比より、未変化体生成量を算出した。
【0061】
(3)データ処理
未変化体生成量より脱抱合速度を算出し、基質として用いた14C標識グルクロン酸抱合体濃度に対してプロットした。非線形最小二乗法によりMichaelis-Menten式にフィッティングを行ない脱抱合クリアランスを算出した。
【0062】
(4)結果
モルモット肺ホモジネートにおいてグルクロン酸抱合体は脱抱合され未変化体へ変換された。そのときの脱抱合クリアランスは0.0332 mL/min/mg proteinであった。
【0063】
以上の薬物動態試験から明らかなように、本発明の化合物は、薬効の標的組織に相当量存在し、かつ副作用に関与する組織には極めて少量しか分布しないという特徴を有し、さらに標的組織において脱抱合されて未変化体を持続的に供給するという特徴を有している。
【0064】
本発明の化合物はPDEIV阻害薬として使用する場合、経口投与、非経口投与あるいは直腸内投与のいずれでもよい。経肺投与、経口腔粘膜投与、経鼻腔粘膜投与でもよい。投与量としては、投与方法、患者の症状、患者の年齢、処置形式(予防又は治療)等により異なるが、通常0.01〜100mg/日、好ましくは0.1〜50mg/日である。経肺投与の場合は通常30μg〜3000μg/回、好ましくは100μg〜1000μg/回を1日に1〜2回である。
【0065】
本発明の化合物は通常、製剤用担体と混合して調整した製剤の形で投与される。製剤用担体としては、製剤分野において常用され、かつ本発明の化合物と反応しない物質が用いられる。具体的には、例えば乳糖,ブドウ糖,マンニット,デキストリン,デンプン,白糖,メタケイ酸アルミン酸マグネシウム,合成ケイ酸アルミニウム,結晶セルロース,カルボキシメチルセルロースナトリウム,ヒドロキシプロピルデンプン,カルボキシメチルセルロースカルシウム,イオン交換樹脂,メチルセルロース,ゼラチン,アラビアゴム,ヒドロキシプロピルセルロース,低置換度ヒドロキシプロピルセルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロース,ポリビニルピロリドン,ポリビニルアルコール,軽質無水ケイ酸,ステアリン酸マグネシウム,タルク,カルボキシビニルポリマー,酸化チタン,ソルビタン脂肪酸エステル,ラウリル硫酸ナトリウム,グリセリン,脂肪酸グリセリンエステル,精製ラノリン,グリセロゼラチン,ポリソルベート,マクロゴール,植物油,ロウ,非イオン界面活性剤,プロピレングリコール,水等が挙げられる。
【0066】
剤型としては、錠剤,カプセル剤,顆粒剤,散剤,シロップ剤,懸濁剤,坐剤,ゲル剤,注射剤,デポ剤,吸入剤、点鼻剤等が挙げられる。これらの製剤は常法に従って調製される。なお、液体製剤にあっては、用時、水又は他の適当な媒体に溶解又は懸濁する形であってもよい。また錠剤,顆粒剤は周知の方法でコーティングしてもよい。注射剤の場合には、本発明の化合物を水に溶解させて調製されるが、必要に応じて等張化剤に溶解させてもよく、またpH調節剤,緩衝剤や保存剤を添加してもよい。
【0067】
また、これらの製剤は、必要に応じて抗アレルギー剤,ステロイド剤,β2刺激薬,抗コリン薬等と併用することも可能である。
【0068】
【実施例】
以下に実施例,参考例および製剤例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明の化合物は生体内で薬物代謝酵素により抱合されることによっても生成される。化合物は元素分析、水素核磁気共鳴吸収スペクトル(1H−NMR)等により同定された。
【0069】
1H−NMRの記載においては、簡略化のために下記の略号を使用した。
J :結合定数、
s :一重線、
d :二重線、
dd :二重の二重線、
ddd:二重の二重の二重線、
t :三重線、
dt :二重の三重線、
m :多重線。
【0070】
実施例1: 硫酸4−[3−[2−(3−クロロフェノキシ)−3−ピリジルオキシ]プロピル]−3−ピリジルナトリウムの製造
【0071】
【化7】

【0072】
WO00/20391号公報(実施例31)に記載の方法で得た4−[3−[2−(3−クロロフェノキシ)−3−ピリジルオキシ]プロピル]−3−ピリジノール(10.0g、28.0mmol)と水酸化ナトリウム(2.24g、56.0mmol)を水(50mL)に溶解した後、三酸化硫黄トリメチルアミン錯体(7.79g、56.0mmol)を加えて50℃で3時間加熱撹拌した。氷冷下でエタノール(50mL)を加えた後、濃塩酸(4.7mL、56mmol)をゆっくり加え、析出した結晶を濾取し、水(20mL)、エタノール(20mL)で洗浄した後、減圧乾燥し、硫酸水素4−[3−[2−(3−クロロフェノキシ)−3−ピリジルオキシ]プロピル]−3−ピリジル(11.8g、27.0mmol)を無色結晶として得た。
【0073】
これを水(300mL)とメタノール(100mL)に懸濁させ、炭酸水素ナトリウム(4.5g、54mmol)を加えて室温で20時間撹拌した後、減圧濃縮した。残渣を水(150mL)に溶解し、アセトニトリル(300mL)を加え、不溶物を濾過した後、減圧濃縮した。更にアセトニトリル(200mL)を加えて減圧濃縮した後、アセトン(300mL)を加え、不溶物を濾過した後、減圧濃縮した。残渣をエタノール(10mL)及びジイソプロピルエーテル(10mL)に溶解して濾過した後、エタノール(10mL)及びジイソプロピルエーテル(30mL)を加え、析出した結晶を濾取した。これをエタノール(17mL)に溶解し、ジイソプロピルエーテル(17mL)を加えて再結晶し、標記化合物(8.10g)を無色結晶として得た。融点185−191℃
【0074】
参考例1:2,3,4−トリ−O−アセチル−D−グルコピラン酸メチルの製造
【0075】
【化8】

【0076】
1−ブロモ−2,3,4−トリ−O−アセチル−α−D−グルコピランウロン酸メチル(20.0g、50.4mmol)をアセトン(125mL)に溶解し、炭酸銀(15.3g、55.4mmol)及び水(0.9mL、50mmol)を加え、室温で16時間撹拌し、セライト濾過した後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、クロロホルム/酢酸エチルで溶出、精製した後、ジイソプロピルエーテルより再結晶して標記化合物(13.8g)を無色結晶として得た。融点94−98℃
【0077】
実施例2:1−O−[4−[3−[2−(3−クロロフェノキシ)−3−ピリジルオキシ]プロピル]−3−ピリジル]−β−D−グルコピランウロン酸ナトリウムの製造
【0078】
【化9】

【0079】
WO00/20391号公報(実施例31)に記載の方法で得た4−[3−[2−(3−クロロフェノキシ)−3−ピリジルオキシ]プロピル]−3−ピリジノール(12.2g、34.2mmol)と参考例1で得た2,3,4−トリ−O−アセチル−D−グルコピラン酸メチル(11.4g、34.1mmol)とトリフェニルホスフィン(17.9g、68.2mmol)をテトラヒドロフラン(120mL)に溶解し、氷冷下でジイソプロピルアゾジカルボキシラート(6.9g、34.2mmol)を滴下した後、室温で24時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーに付し、クロロホルム/酢酸エチルで溶出、精製し、2,3,4−トリ−O−アセチル−1−O−[4−[3−[2−(3−クロロフェノキシ)−3−ピリジルオキシ]プロピル]−3−ピリジル]−β−D−グルコピランウロン酸メチル(10.3g、15.3mmol)を油状物として得た。
【0080】
これをアセトン(255mL)に溶解し、1規定水酸化ナトリウム水溶液(99.5mL)を加え、室温で2時間撹拌した。析出した結晶を濾取し、アセトン(100mL)で洗浄した後、水/エタノールより再結晶し、標記化合物の1水和物(3.17g)を無色結晶として得た。融点234−238℃
【0081】
参考例2:1−O−ジエトキシホスフィノ−α−D−グルコピランウロン酸メチルの製造
【0082】
【化10】

【0083】
参考例1で得た2,3,4−トリ−O−アセチル−D−グルコピランウロン酸メチル(2.00g、5.98mmol)を塩化メチレン(10mL)に溶解し、アルゴンガス気流下、-78℃で、ジイソプロピルエチルアミン(0.93g、7.20mmol)、続いてクロロ亜りん酸ジエチル(1.03g、6.58mmol)の塩化メチレン溶液(3mL)を10分間で滴下し、更に30分間撹拌した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10mL)を加えて反応を終了した。反応溶液を減圧濃縮し、水(10mL)を加えた後、酢酸エチル(35mLx2)で抽出し、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、酢酸エチル/n−ヘキサンで溶出、精製して標記化合物(1.83g)を無色油状物として得た。
【0084】
1H-NMR(200MHz, CDCl3, δppm) : 1.27(dt, 3H, J=1Hz, 7Hz), 1.28(dt, 3H, J=1Hz, 7Hz), 2.03(s, 3H), 2.04(s, 3H), 2.05(s, 3H), 3.74(s, 3H), 3.83-4.03(m, 4H), 4.53(dd, 1H, J=10Hz, 1Hz), 4.95(dd, 1H, J=10Hz, 4Hz), 5.20(dd, 1H, J=10Hz, 10Hz), 5.56(t, 1H, J=10Hz), 5.75(dd, 1H, J=8Hz, 4Hz)
【0085】
参考例3:1−O−(ジエトキシ−N−フェニル−ホスフォルイミドイル)−α−D−グルコピランウロン酸メチルの製造
【0086】
【化11】

参考例2で得た1−O−ジエトキシホスフィノ−α−D−グルコピランウロン酸メチル(500mg、1.10mmol)をトルエン(1.2mL)に溶解し、Org. Synth., Coll. Vol. 3, p.710-711記載の方法に準じて合成したフェニルアジド(144mg、1.21mmol)のトルエン溶液(1.2mL)を加え、45〜50℃で2時間撹拌した。反応液を減圧濃縮して標記化合物(680mg)を微黄色油状物として得た。
【0087】
1H-NMR(200MHz, CDCl3, δppm) : 1.26-1.42(m, 6H), 1.97(s, 3H), 2.03(s, 6H), 3.74(s, 3H), 4.05-4.29(m, 4H), 4.51(d, 1H, J=10Hz), 4.96-5.06(m, 1H), 5.23(t, 1H, J=10Hz), 5.56(t, 1H, J=10Hz), 6.04-6.12(m, 1H), 6.72-6.87(m, 3H), 7.06-7.17(m, 2H)
【0088】
実施例3:1−[4−[3−[2−(3−クロロフェノキシ)−3−ピリジルオキシ]プロピル]−3−オキシド−1−ピリジニオ]−1−デオキシ−β−D−グルコピラン酸ナトリウムの製造
【0089】
【化12】

【0090】
WO00/20391号公報(実施例31)に記載の方法で得た4−[3−[2−(3−クロロフェノキシ)−3−ピリジルオキシ]プロピル]−3−ピリジノール(100mg、0.28mmol)と参考例3で得た1−O−(ジエトキシ−N−フェニル−ホスフォルイミドイル)−α−D−グルコピランウロン酸メチル(306mg、0.56mmol)とモレキュラーシーブス4A(400mg)にプロピオニトリル(5mL)を加え、氷冷下でトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(249mg、1.1mmol)を加えた後、室温で3日間撹拌した。反応液を濾過し、減圧濃縮した後、残渣を酢酸エチル(20mL)に溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、クロロホルム/メタノールで溶出、精製して、2,3,4−トリ−O−アセチル−1−[4−[3−[2−(3−クロロフェノキシ)−3−ピリジルオキシ]プロピル]−3−オキシド−1−ピリジニオ]−1−デオキシ−β−D−グルコピラン酸メチル(26.3mg、0.039mmol)を淡褐色油状物として得た。
これをアセトン(0.66mL)に溶解し、氷冷下、1規定水酸化ナトリウム水溶液(0.25mL)を加えて2時間撹拌後、アセトン(1.34mL)を加えて3時間撹拌した。析出した油状物を分離し、アセトンを加えて粉末化させた後、濾取した。これをSep-Pak Vac 35cc C18-10g(Waters社製)に付し、メタノールで溶出、精製して、標記化合物(18.5mg)を無色粉末として得た。
【0091】
1H-NMR(400MHz, CDCl3, δppm) : 1.96-2.04(m, 2H), 2.56-2.62(m, 2H), 3.20-3.44(m, 5H), 4.04-4.10(m, 2H), 5.09(d, 1H, J=9Hz), 5.20(s, 1H), 5.52(s, 1H), 7.06(ddd, 1H, J=8Hz, 2Hz, 1Hz), 7.13-7.16(m, 2H), 7.21(t, 1H, J=2Hz), 7.22-7.25(m, 2H), 7.33(dd, 1H, J=6Hz, 2Hz), 7.412(t, 1H, J=8Hz), 7.54(dd, 1H, J=8Hz, 2Hz), 7.69(dd, 1H, J=5Hz, 2Hz)
【0092】
製剤例1:(吸入剤の製法)
常法に従って、薬物を溶媒に溶解して噴射剤とともに充填してMDI(定量噴霧式吸入剤)を調製した。
【0093】
硫酸4−[3−[2−(3−クロロフェノキシ)−3−ピリジルオキシ]プロピル]−3−ピリジルナトリウム(実施例1の化合物)(100mg)、
ソルビタントリオレエート(界面活性剤)(20mg)、
1,1,1,2−テトラフルオロエタン(噴射剤)(8.58g)、
合計(8.70g)
【0094】
製剤例2:(注射剤の製法)
常法に従って、下記成分を溶解し、0.22μmのメンブランフィルターでろ過後、アンプルに充填して注射剤を調製した。
【0095】
硫酸4−[3−[2−(3−クロロフェノキシ)−3−ピリジルオキシ]プロピル]−3−ピリジルナトリウム(実施例1の化合物)(1mg)、
ブドウ糖(等張化剤)(100mg)、
注射用蒸留水(適量)、
全量(2ml)
【0096】
製剤例3:(注射剤の製法)
常法に従って、下記成分を溶解し、0.22μmのメンブランフィルターでろ過後、アンプルに充填して注射剤を調製した。
【0097】
硫酸4−[3−[2−(3−クロロフェノキシ)−3−ピリジルオキシ]プロピル]−3−ピリジルナトリウム(実施例1の化合物)(10mg)、
塩化ナトリウム(等張化剤)(250mg)、
注射用蒸留水(適量)、
全量(5mL)
【0098】
製剤例4:(凍結乾燥注射剤の製法)
常法に従って、下記成分を溶解し、0.22μmのメンブランフィルターでろ過後、バイアルに充填して凍結乾燥して凍結乾燥注射剤を調製した。
【0099】
硫酸4−[3−[2−(3−クロロフェノキシ)−3−ピリジルオキシ]プロピル]−3−ピリジルナトリウム(実施例1の化合物)(10mg)、
マンニトール(250mg)、
注射用蒸留水(適量)、
全量(5mL)
【0100】
製剤例5:(デポ剤の製法)
常法に従って、下記処方で、マイクロスフェア調製時に薬物含量が2〜20%となるようにポリ乳酸に取り込ませて、1ヶ月投与型デポ剤を調製した。
【0101】
硫酸4−[3−[2−(3−クロロフェノキシ)−3−ピリジルオキシ]プロピル]−3−ピリジルナトリウム(実施例1の化合物)(100mg)、
ポリ乳酸(500mg)
【0102】
【発明の効果】
本発明の化合物は、強いPDEIV阻害作用を有し、かつ優れた気管支拡張作用を示すので、PDEIV阻害薬として広くアレルギー性炎症疾患や組織炎症疾患等に対する治療薬および予防薬として有用である。特に喘息をはじめとする気道閉塞性の肺疾患の治療薬および予防薬として有用である。本発明の化合物は薬効の標的組織に相当量存在し、かつ副作用に関与する組織には極めて少量しか分布しないという特徴を有しているので、ターゲッティング医薬として利用できる。本発明の化合物は標的組織に分布し、標的組織において脱抱合されて未変化体を持続的に供給するという特徴を有しているので、本発明の化合物は薬理活性の持続時間が延長されるという効果があり、持続性医薬として利用できる。さらに本発明の化合物は、溶解度が高いという特徴を有しているので、例えば注射剤,デポ剤等の液体製剤、吸入剤等の経肺投与製剤、点鼻剤等の経鼻投与製剤の製造が容易であるという利点を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される化合物の抱合体又はその生理的に許容される塩。
【化1】

【請求項2】
下記式(II)で表される化合物又はその生理的に許容される塩。
【化2】

(式中、Zはグルクロン酸残基又は硫酸残基を意味する)
【請求項3】
硫酸水素4−[3−[2−(3−クロロフェノキシ)−3−ピリジルオキシ]プロピル]−3−ピリジル、
1−O−[4−[3−[2−(3−クロロフェノキシ)−3−ピリジルオキシ]プロピル]−3−ピリジル]−β−D−グルコピランウロン酸及び
1−[4−[3−[2−(3−クロロフェノキシ)−3−ピリジルオキシ]プロピル]−3−オキシド−1−ピリジニオ]−1−デオキシ−β−D−グルコピラン酸の群から選ばれるいずれか1つの化合物又はその生理的に許容される塩。
【請求項4】
硫酸水素4−[3−[2−(3−クロロフェノキシ)−3−ピリジルオキシ]プロピル]−3−ピリジル又はその生理的に許容される塩。
【請求項5】
1−O−[4−[3−[2−(3−クロロフェノキシ)−3−ピリジルオキシ]プロピル]−3−ピリジル]−β−D−グルコピランウロン酸又はその生理的に許容される塩。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物又はその生理的に許容される塩を有効成分とするIV型ホスホジエステラーゼ阻害薬である医薬。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物又はその生理的に許容される塩を含有する医薬組成物。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物又はその生理的に許容される塩からなるターゲッティング医薬。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物又はその生理的に許容される塩からなる持続性医薬。

【公開番号】特開2006−21996(P2006−21996A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−195341(P2002−195341)
【出願日】平成14年7月4日(2002.7.4)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】