説明

置換ヒドロキシフェニル化合物、電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置

【課題】従来の電子輸送物質に比べ有機溶剤に対する溶解性や成膜性に優れ、かつ、電子輸送能が優れた新規な電子輸送物質、この新規な電子輸送物質を用いることにより、繰り返し使用時での電位変動の少ない優れた電子写真感光体を提供すること。
【解決手段】酸化還元電位の還元側の値がSCE参照電極(飽和カロメル電極)に対して−0.20V〜−0.90Vである、式(1)で示される置換ヒドロキシフェニル化合物、該化合物を含有する電子写真感光体。


(式中、R及びRの少なくとも一方はヒドロキシメチル基で、R〜Rのヒドロキシメチル基以外の基の少なくとも一つは電子受容性部位を有する基)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置換ヒドロキシフェニル化合物、及び該置換ヒドロキシフェニル化合物を含有する電子写真感光体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電荷輸送物質としては従来、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリアニリン等の共役二重結合を有する高分子化合物やピラゾリン化合物、ヒドラゾン化合物、トリフェニルアミン化合物、あるいはアミノ基を有するスチルベン化合物等が数多く提案されており、電子写真感光体、有機薄膜電界発光素子やフォトセル等の利用が検討されている。しかし、これらの殆どがいわゆる正孔を輸送する物質(正孔輸送物質)である。
【0003】
一方、電子を輸送する物質(電子輸送物質)の例はあまり多くない。代表的なものとして2,4,7−トリニトロフルオレノン、フルオレニデンメタン化合物(例えば、特許文献1参照)、アントキノジメタン及びアントロン化合物(例えば、特許文献2参照)、ジフェノキノン化合物(例えば、特許文献3参照)、ナフトキノン化合物(例えば、特許文献4参照)、ナフタレンジカルボン酸イミド化合物(例えば、特許文献5参照)、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド化合物(例えば、特許文献6〜11参照)等が開示されている。
【0004】
また、ヒドロキシフェニル基にヒドロキシメチル基を有する化合物は、種々の用途に用いられることが知られている。例えば、塗料への応用や、平版印刷版、フォトレジスト、接着剤、成形材料、積層材料及び結合剤等の多くの分野に使用されており、優れた製膜性を有していることが知られている。しかしながら、分子内に電子受容性部位を有するものはなく、電子に対する機能性に着目されることは今まで無かった。
【0005】
優れた特性を有する電子輸送物質を電子写真感光体に使用できれば、電子写真感光体が抱える種々の問題が改善される。
【0006】
例えば、導電性支持体上に正孔輸送物質及び電子輸送物質を含有する感光層を設けた負帯電用電子写真感光体において、導電性支持体と感光層との間に下引き層を形成し、該下引き層に電子輸送物質を含有させることで、感光層から注入される電子が、感光層/下引き層界面や下引き層中に滞留することによる、繰り返し使用時での電位変動等の電気的特性を改善できることが知られている(例えば、特許文献12参照)。しかしながら、電荷発生物質とのエネルギー的マッチングや、感光層を形成する際の成膜性や他の構成成分との相溶性等の特性を全て高いレベルで満足する電子輸送物質がほとんどないため、更なる電子輸送物質の改良が求められている。
【0007】
また、積層型電子写真感光体の電荷発生層は、基本的に電荷発生物質とバインダー樹脂により構成されているが、一般的に電荷発生物質は電荷輸送能に劣るため、光照射により電荷発生物質で生じた正孔及び電子のうち層界面近傍に存在する電荷のみが電荷輸送層や下引き層へ輸送され、残った正孔及び電子は再結合やフリー電荷として電荷発生層中に残留してしまう。これは電子写真感光体の特性悪化を引き起こす原因となっている。このため電荷発生層は通常0.1〜1μm程の極薄膜で使用されるが、それでも上記問題は十分改善されていないのが現状である。これに対して電荷発生層中の生成した電荷の抜けを良くするために電荷発生層中に正孔輸送物質や電子輸送物質を添加する方法(例えば、特許文献13参照)が従来から提案されているが、同様の理由により十分問題点を改善するに至っておらず、先に述べた様に、更なる電子輸送物質の改良が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭60−69657号公報
【特許文献2】特開昭61−233750号公報
【特許文献3】特開平4−285670号公報
【特許文献4】特開平9−151157号公報
【特許文献5】特開平5−25136号公報
【特許文献6】特開平1−39098号公報
【特許文献7】特開平5−25174号公報
【特許文献8】米国特許第4442193号公報
【特許文献9】米国特許第5468583号公報
【特許文献10】特公平1−39098号公報
【特許文献11】特開平11−343290号公報
【特許文献12】特開平11−119458号公報
【特許文献13】特開平7−199486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、従来の電子輸送物質に比べ有機溶剤に対する溶解性や成膜性に優れ、かつ、電子輸送能が優れた新規な電子輸送物質を提供することを目的とする。
【0010】
本発明の別の目的は、電子写真感光体中に新規な電子輸送物質を用いることにより、繰り返し使用時での電位変動の少ない優れた電子写真感光体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に従って、酸化還元電位の還元側の値がSCE参照電極(飽和カロメル電極)に対して−0.20V〜−0.90Vである、下記式(1)で示されることを特徴とする置換ヒドロキシフェニル化合物が提供される。
【0012】
【化1】

【0013】
上記式(1)中、R及びRは水素原子又はヒドロキシメチル基を示し、R〜Rは水素原子、ヒドロキシメチル基又は電子受容性部位を有する基を示し、R及びRの少なくとも一方はヒドロキシメチル基であり、R〜Rのヒドロキシメチル基以外の基のうち、少なくとも一つは電子受容性部位を有する基である。
【0014】
また、本発明に従って、置換ヒドロキシフェニル化合物又は該化合物の硬化物を含有する電子写真感光体が提供される。
【0015】
更に、本発明に従って、上記電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、優れた新規な化合物及び、この化合物を含有する繰り返し特性や画像特性が優れた、電子写真感光体を提供することができる。
【0017】
また、上記電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まずは本発明の置換ヒドロキシフェニル化合物について説明する。
【0020】
本発明の置換ヒドロキシフェニル化合物とは、電子受容性部位を有する構造と、置換ヒドロキシフェニル基とを、同一分子内に有する化合物を意味する。そして酸化還元電位の還元側の値がSCE参照電極に対して−0.20V〜−0.90Vを示す。また、置換ヒドロキシフェニル基の置換基の少なくとも一つがヒドロキシメチル基である。
【0021】
酸化還元電位の還元側の値がSCE参照電極に対して−0.20V〜−0.60Vを示すものがより好ましい。
【0022】
ヒドロキシメチル基含有ヒドロキシフェニル基の中でも、該ヒドロキシメチル基の少なくとも1つの結合位置が、該ヒドロキシメチル基含有ヒドロキシフェニル基の中のヒドロキシ基に対してオルト位、つまり前記式(1)でのR、Rがヒドロキシメチル基であるヒドロキシメチル基含有ヒドロキシフェニル基が好ましい。
【0023】
また、電子受容性部位の少なくとも1つの結合位置が、置換ヒドロキシフェニル基の中のヒドロキシ基に対してパラ位、つまり前記式(1)でのRの位置であるものが好ましい。
【0024】
また、一つの化合物の中に、置換ヒドロキシフェニル基は1〜3個含まれていることが好ましい。
【0025】
例えば、下記式(2)〜(4)のいずれかである置換ヒドロキシフェニル化合物が挙げられる。
【0026】
【化2】

【0027】
上記式(2)〜(4)中、
〜Aは式(1)のR〜Rのいずれかを除いた一価のヒドロキシメチル基である。R及びRの少なくとも一方はヒドロキシメチル基であり、該ヒドロキシメチル基でない時は水素原子、R〜Rはヒドロキシメチル基、水素原子又は置換若しくは無置換のアルキル基から選ばれる何れかの置換基を示す。
【0028】
結合基X〜Xは炭素数1〜8の置換基を有していてもよく枝分かれしてもよい脂肪族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。
【0029】
l、m、nは0又は1を示す。Zは電子受容性部位を有する基を示す。
【0030】
前記式(2)〜(4)に示される電子受容性部位を有する基Zは、
下記式(5)の構造から置換基Y〜Yを、
下記式(6)の構造から置換基Y〜Y16を、
下記式(7)の構造から置換基Y17〜Y24を、
下記式(8)の構造から置換基Y25〜Y32を、
それぞれ置換ヒドロキシフェニル基数分除いた1〜3価基である。
【0031】
【化3】

【0032】
上記式(5)中、Y及びYは、置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換アルキル基を示し、Y〜Yは置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換アルキル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子又は水素原子を示す。
【0033】
【化4】

【0034】
上記式(6)中、Y及びYは、酸素原子、C(CN)、NR、C(CN)R、CR(Rは置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換アルキル基)から選ばれる官能基である。Y〜Y16は置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換アルキル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子又は水素原子を示す。
【0035】
【化5】

【0036】
上記式(7)中、Y17及びY18は、酸素原子、C(CN)、NR、C(CN)R、CR(Rは置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換アルキル基)から選ばれる官能基である。Y19〜Y24は置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換アルキル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子又は水素原子を示す。
【0037】
【化6】

【0038】
上記式(8)中、Y25及びY26は、酸素原子、C(CN)COR、C(CN)COOR、C(CN)R、C(COOR)(Rは置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換アルキル基)から選ばれる官能基である。Y27〜Y32は置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換アルキル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子又は水素原子を示す。
【0039】
以下、表1に置換ヒドロキシフェニル化合物例を示すがこれらに限定される訳ではない。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

【0044】
本発明の上記式(1)〜(4)によって構成される電子輸送物質は、電子受容性部位を有するフェノール体をホルマリンで処理することにより得られる。
【0045】
酸化還元電位の測定は、以下のように3電極式のサイクリックボルターメトリーにて行った。本発明ではビー・エー・エス(株)製ボルタンメトリックアナライザーBAS100Bを使用した;
電極:作用電極(グラッシーカーボン電極)
対極(白金電極)
参照電極 飽和カロメル電極(0.1mol/l KCl−水溶液)
測定溶液(以下を調合して測定溶液を調整した)
・電解質:過塩素酸t−ブチルアンモニウム 0.1モル
・測定物質:置換ヒドロキシフェニル化合物 0.001モル
・溶剤:アセトニトリル 1リットル
【0046】
次に、本発明の電子写真感光体の構成について説明する。
【0047】
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に感光層を形成する。本発明の感光層の構成は、電荷発生物質と電荷輸送物質の両方を同一の層に含有する単層型、及び電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を有する積層型に大別される。積層型の構成としては、基体上に電荷発生層及び電荷輸送層をこの順に積層したもの(順層型)と、逆に電荷輸送層及び電荷発生層の順に積層したもの(逆層型)がある。
【0048】
積層型の場合、帯電極性により輸送する電荷が異なるため、用いられる材料が異なる。負帯電で用いる順層型及び正帯電で用いる逆層型の電荷輸送層中には正孔輸送性物質を含有し、正帯電で用いる順層型及び負帯電で用いる逆層型の電荷輸送層中には電子輸送性物質を含有する。
【0049】
有機電子写真感光体を用いる電子写真プロセスにおいては一般的に負帯電で用いられることが多く、また耐久性の点から順層型が一般的である。
【0050】
以下、負帯電で使用する積層型(順層)の感光層を有する電子写真感光体について説明する。
【0051】
本発明に用いられる導電性支持体としては、アルミニウム、ニッケル、銅、金、鉄等の金属又は合金、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ガラス等の絶縁性支持体上にアルミニウム、銀及び金等の金属あるいは酸化インジウムや酸化スズ等の導電材料の薄膜を形成したもの、カーボンや導電性フィラーを樹脂中に分散し導電性を付与したもの等が例示できる。これらの支持体表面は、電気的特性改善あるいは密着性改善のために、陽極酸化等の電気化学的な処理を行った支持体や、導電性支持体表面をアルカリリン酸塩あるいはリン酸やタンニン酸を主成分とする酸性水溶液に金属塩の化合物又はフッ素化合物の金属塩を溶解してなる溶液で化学処理を施したものを用いることもできる。
【0052】
また、単一波長のレーザー光等を用いたプリンターに本電子写真感光体を用いる場合には、干渉縞を抑制するために導電性支持体はその表面を適度に粗しておくことが必要である。具体的には上記支持体表面をホーニング、ブラスト、切削、電界研磨等の処理をした支持体もしくはアルミニウム及びアルミニウム合金上に導電性金属酸化物及びバインダー樹脂からなる導電性皮膜を有する支持体を用いることが必要である。
【0053】
ホーニング処理としては、乾式及び湿式での処理方法があるがいずれを用いてもよい。湿式ホーニング処理は、水等の液体に粉末状の研磨剤を懸濁させ、高速度で支持体表面に吹き付けて粗面化する方法であり、表面粗さは吹き付け圧力、速度、研磨剤の量、種類、形状、大きさ、硬度、比重又は懸濁温度等により制御することができる。同様に、乾式ホーニング処理は、研磨剤をエアーにより、高速度で導電性支持体表面に吹き付けて粗面化する方法であり、湿式ホーニング処理と同じように表面粗さを制御することができる。これら湿式又は乾式ホーニング処理に用いる研磨剤としては、炭化ケイ素、アルミナ、鉄及びガラスビーズ等の粒子が挙げられる。
【0054】
導電性金属酸化物及びバインダー樹脂からなる導電性皮膜をアルミニウムやアルミニウム合金の支持体に塗布し導電性支持体とする方法では、導電性皮膜中にはフィラーとして、導電性微粒子からなる粉体を含有する。この方法では、微粒子を皮膜中に分散させることでレーザー光を乱反射させ干渉縞を防ぐと共に、塗布前の支持体の傷や突起等を隠蔽する効果もある。微粒子には酸化チタンや硫酸バリウム等が用いられ、必要によってはこの微粒子に酸化錫等で導電性被覆層を設けることにより、フィラーとして適切な比抵抗としている。導電性微粒子粉体の比抵抗は0.1〜1000Ω・cmが好ましく、更には1〜1000Ω・cmが好ましい。フィラーの含有量は、導電性皮膜層に対して1.0〜90質量%が好ましく、更には5.0〜80質量%が好ましい。被覆層には、必要に応じてフッ素あるいはアンチモンを含有してもよい。
【0055】
導電性皮膜に用いられるバインダー樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド酸、ポリビニルアセタール、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂あるいはポリエステル等が好ましい。これらの樹脂は単独でも、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの樹脂は、支持体に対する接着性が良好であると共に、フィラーの分散性を向上させ、かつ成膜後の耐溶剤性が良好である。上記樹脂の中でも特にフェノール樹脂、ポリウレタン及びポリアミド酸が好ましい。
【0056】
導電性皮膜は、例えば浸漬あるいはマイヤーバー等による溶剤塗布で形成することができる。導電性皮膜の厚みは0.1〜30μmが好ましく、更には0.5〜20μmが好ましい。また、導電性皮膜の体積抵抗率は1013Ω・cm以下が好ましく、更には1012Ω・cm以下10Ω・cm以上が好ましい。導電性皮膜には、被覆層を有する硫酸バリウム微粒子からなる粉体以外に、酸化亜鉛や酸化チタン等の粉体からなるフィラーを含有してもよい。更に、表面性を高めるためにレベリング剤を添加してもよい。
【0057】
本発明において用いられる電荷発生物質の例としては、(1)モノアゾ、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料、(2)金属フタロシアニン、非金属フタロシアニン等のフタロシアニン顔料、(3)インジゴ、チオインジゴ等のインジゴ顔料、(4)ペリレン酸無水物、ペリレン酸イミド等のペリレン顔料、(5)アンスラキノン、ピレンキノン等の多環キノン顔料、(6)スクワリリウム色素、(7)ピリリウム塩、チアピリリウム塩類、(8)トリフェニルメタン色素等の有機物質、(9)セレン、非晶質のシリコーン等の無機物質が挙げられる。その中でも、アゾ顔料及びフタロシアニン顔料が好ましい。これらの電荷発生物質は単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
電荷発生層は導電性支持体の上に、電荷発生物質を適当なバインダー樹脂に分散した電荷発生層用塗布液を浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ローラーコーティング法、マイヤーバーコーティング法及びブレードコーティング法等のコーティング法、あるいは、蒸着、スパッタ及びCVD等の乾式法を用いて形成することができる。
【0059】
電荷発生層中に含有するバインダー樹脂は好ましくは80質量%以下、より好ましくは50質量%以下とする。また、電荷発生層の膜厚は5μm以下が好ましく、特には0.01〜2μmの範囲の薄膜層とすることが好ましい。
【0060】
また、電荷発生層には、種々の増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、前述した正孔輸送物質、本発明の電子輸送物質又は他の電荷発生物質を必要に応じて添加することもできる。
【0061】
導電性支持体と感光層との間に中間層を有してもよい。中間層を形成する材料としては、前記バインダー樹脂の他に、例えば、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、カゼイン及びN−アルコキシアルキルナイロン等のバインダー樹脂を用いてもよく、更に酸化スズ、酸化インジウム又は酸化チタン等の導電性物質、及び、電子輸送物質(その場合、電子輸送物質とバインダー樹脂の比率は100/0〜10/90)をバインダー樹脂に含有してもよい。中間層は上述の塗布方法を用いて、導電性支持体又は導電層上に塗布することで形成する。中間層の膜厚は、好ましくは0.3〜15μm、より好ましくは0.5〜10μmである。
【0062】
次いで、電荷発生層上に、電荷輸送物質を適当な溶媒に単独もしくは適当なバインダー樹脂と共に溶解もしくは分散せしめた電荷輸送層用塗布液を浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ローラーコーティング法、マイヤーバーコーティング法及びブレードコーティング法等のコーティング法を用いて形成することができる。
【0063】
電荷輸送層の膜厚は、5〜40μmが好ましく、特には7〜30μmの範囲が好ましい。また、バインダー樹脂と電荷輸送物質との配合割合は、バインダー樹脂100質量部当たり電荷輸送物質を10〜500質量部とすることが好ましく、特にバインダー樹脂100質量部当たり電荷輸送物質を30〜150質量部とすることが好ましい。
【0064】
また本発明において用いられる正孔輸送物質の例としては、各種ブタジエン化合物、各種トリアリールアミン化合物、各種ヒドラゾン化合物、各種スチルベン化合物、各種ピラゾリン化合物、各種オキサゾール化合物、各種チアゾール化合物、各種トリアリールメタン化合物等の低分子化合物等の他に、ポリシラン化合物や特開平9−272735号公報や特開平9−62019号公報等に開示されている電荷輸送性樹脂等である。これらの正孔輸送物質は単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
更に、電荷輸送層中に酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤又は他の公知の電荷輸送物質を必要に応じて添加することもできる。
【0066】
上記電荷発生層及び電荷輸送層に使用されるバインダー樹脂としては、広範囲なバインダー樹脂から選択でき、例えばポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの樹脂は、単独又はコポリマーとして1種又は2種以上混合して用いてもよい。
【0067】
また、電荷発生層及び電荷輸送層作製時に使用される各塗布液に用いられる溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、キシレン、モノクロロベンゼン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル及びジメチルメタン等を挙げることができる。
【0068】
また、感光層上には保護層を設けてもよく、保護層の材料としては、バインダー樹脂を用いることができ、更に酸化スズや酸化インジウム等の導電性物質や電荷輸送物質をバインダー樹脂に含有してもよい。この際のバインダー樹脂としては上述のバインダー樹脂や硬化性樹脂等が挙げられる。
【0069】
本発明の電子輸送物質は、どの構成の電子写真感光体のどの層に含有していてもよい。
【0070】
図1に本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成を示す。
【0071】
図1において、1はドラム状の本発明の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度(プロセススピード)をもって回転駆動される。電子写真感光体1は、回転過程において、一次帯電手段3によりその周面に正又は負の所定電位の均一帯電を受け、次いで、原稿からの反射光であるスリット露光やレーザービーム走査露光等の露光手段(不図示)から出力される目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して強度変調された露光光4を受ける。こうして電子写真感光体1の周面に対し、目的の画像情報に対応した静電潜像が順次形成されていく。
【0072】
形成された静電潜像は、次いで現像手段5内の荷電粒子(トナー)で正規現像又は反転現像により可転写粒子像(トナー像)として顕画化され、不図示の給紙部から電子写真感光体1と転写手段6との間に電子写真感光体1の回転と同期して取り出されて給送された転写材7に、電子写真感光体1の表面に形成担持されているトナー像が転写手段6により順次転写されていく。この時、転写手段にはバイアス電源(不図示)からトナーの保有電荷とは逆極性のバイアス電圧が印加される。
【0073】
トナー画像の転写を受けた転写材7(最終転写材(紙やフィルム等)の場合)は、電子写真感光体面から分離されて像定着手段8へ搬送されてトナー像の定着処理を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。転写材7が一次転写材(中間転写材等)の場合は、複数次の転写工程の後に定着処理を受けてプリントアウトされる。
【0074】
トナー像転写後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段9によって転写残りトナー等の付着物の除去を受けて清浄面化される。近年、クリーナレスシステムも研究され、転写残りトナーを直接、現像器等で回収することもできる。更に、前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、一次帯電手段3が帯電ローラー等を用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
【0075】
本発明においては、上述の電子写真感光体1、一次帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段9等の構成要素のうち、複数のものを容器に納めてプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンター等の電子写真装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。例えば、一次帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段9の少なくとも1つを電子写真感光体1と共に一体に支持してカートリッジ化して、装置本体のレール等の案内手段12を用いて装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ11とすることができる。
【0076】
また、露光光4は、電子写真装置が複写機やプリンターである場合には、原稿からの反射光や透過光、あるいは、センサーで原稿を読取り、信号化し、この信号に従って行われるレーザービームの走査、LEDアレイの駆動又は液晶シャッターアレイの駆動等により照射される光である。
【0077】
本発明の電子写真感光体は、電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、LEDプリンター、FAX、液晶シャッター式プリンター等の電子写真装置一般に適応し得るが、更に、電子写真技術を応用したディスプレー、記録、軽印刷、製版及びファクシミリ等の装置にも幅広く適用し得るものである。
【実施例】
【0078】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。ただし、本発明の実施の形態は、これらに限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。
【0079】
(置換ヒドロキシフェニル化合物の合成例)
(化合物例E3の合成)
2,7−ビス−[2−(4−ヒドロキシ−フェニル)−エチル]−ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン−1,3,6,8−テトラオン(2,7−bis−[2−(4−hydroxy−phenyl)−ethyl]−benzo[lmn][3,8]phenanthroline−1,3,6,8−tetraone)を水酸化カリウム水溶液10質量部(5質量%)とジメチルホルムアミド150質量部に混合し、この反応液を50℃に加熱し、ホルマリン(37質量%)5質量部を1時間かけて滴下した。
【0080】
滴下終了後50℃で50時間反応を行い、反応終了後に硫酸水溶液中に投入して中和し生成物を晶析させた。得られた沈殿を水洗後、メタノール/ジメチルホルムアミドを用いて再結晶を行い、目的物を濃褐色粉末として得た。収率は35質量%であった。下記に反応経路を示す。
【0081】
【化7】

【0082】
粉末を、逆相HPLC(カラム:ShodexC18−5B、昭和電工(株)製、溶媒:メタノール/水=80/20)及びGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)(カラム:TOSOHTSKガードカラムHXL、TSKgelG2000HXL×2、TSKgelG3000HXL×1連結(東ソー(株)製、溶媒:THF)によって純度を測定した。テトラヒドロキシメチル体の含有率は86%であった。
【0083】
また、質量分析を行って(MALDI−TOF MS:ブルカー・ダルトニクス(株)製 ultraflex)(加速電圧:20kV、モード:Reflector、分子量標準品:フラーレンC60)、分子量を測定した所、ピークトップ値として626が得られ、上記構造と同一であることを確認した。
【0084】
(化合物例E32の合成)
2−[6−(4−ヒドロキシ−フェニル)−2−オキソ−2H−アセナフチレン−1−イリデン]−マロノニトリル(2−[6−(4−hydroxy−phenyl)−2−oxo−2H−acenaphthylene−1−ylidene]−malononitrile)を水酸化カリウム水溶液(5質量%)2質量部とジメチルホルムアミド30質量部に混合し、この反応液を50℃に加熱し、ホルマリン1質量部(37質量%)を0.5時間かけて滴下した。
【0085】
滴下終了後50℃で50時間反応を行い、反応終了後に硫酸水溶液中に投入して中和し生成物を晶析させた。得られた沈殿を水洗後、メタノール/ジメチルホルムアミドを用いて再結晶を行い目的物を褐色粉末として得た。収率は42質量%であった。下記に反応経路を示す。
【0086】
【化8】

【0087】
粉末を、逆相HPLC(カラム:ShodexC18−5B、昭和電工(株)製、溶媒:メタノール/水=80/20)及びGPC(カラム:TOSOHTSKガードカラムHXL、TSKgelG2000HXL×2、TSKgelG3000HXL×1連結(東ソー(株)製、溶媒:THF)によって純度を測定した。テトラヒドロキシメチル体の含有率は79%であった。
【0088】
また、質量分析を行って(MALDI−TOF MS:ブルカー・ダルトニクス(株)製 ultraflex)(加速電圧:20kV、モード:Reflector、分子量標準品:フラーレンC60)、分子量を測定した所、ピークトップ値として382が得られ、上記構造と同一であることを確認した。
【0089】
(化合物例E26の合成)
3,8−ビス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−[1,10]フェナントロリン−5,6−ジオン(3,8−bis−(4−hydroxy−phenyl)−[1,10]phenanthroline−5,6−dione)を水酸化カリウム水溶液(5質量%)2質量部とジメチルホルムアミド30質量部に混合し、この反応液を50℃に加熱し、ホルマリン1質量部(37質量%)を0.5時間かけて滴下した。
【0090】
滴下終了後50℃で50時間反応を行い、反応終了後に硫酸水溶液中に投入して中和し生成物を晶析させた。得られた沈殿を水洗後、トルエン/THFを用いて再結晶を行い目的物を褐色粉末として得た。収率は42質量%であった。下記に反応経路を示す。
【0091】
【化9】

【0092】
粉末を、逆相HPLC(カラム:ShodexC18−5B、昭和電工(株)製、溶媒:メタノール/水=80/20)及びGPC(カラム:TOSOHTSKガードカラムHXL、TSKgelG2000HXL×2、TSKgelG3000HXL×1連結(東ソー(株)製、溶媒:THF)によって純度を測定した。テトラヒドロキシメチル体の含有率は88%であった。
【0093】
また、質量分析を行って(MALDI−TOF MS:ブルカー・ダルトニクス(株)製 ultraflex)(加速電圧:20kV、モード:Reflector、分子量標準品:フラーレンC60)、分子量を測定した所、ピークトップ値として514が得られ、上記構造と同一であることを確認した。
【0094】
(化合物例E16の合成)
2−[3,6−ビス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−10−オキソ−10H−フェナトレン−9−イリデン]−マロノニトリル(2−[3,6−bis−(4−hydroxy−phenyl)−10−oxo−10H−phenanthrene−9−ylidene]−malononitrile)を水酸化カリウム水溶液(5質量%)2質量部とジメチルホルムアミド30質量部に混合し、この反応液を50℃に加熱し、ホルマリン1質量部(37質量%)を0.5時間かけて滴下した。
【0095】
滴下終了後50℃で50時間反応を行い、反応終了後に硫酸水溶液中に投入して中和し生成物を晶析させた。得られた沈殿を水洗後、メタノール/酢酸エチルを用いて再結晶を行い目的物を褐色粉末として得た。収率は32質量%であった。下記に反応経路を示す。
【0096】
【化10】

【0097】
粉末を、逆相HPLC(カラム:ShodexC18−5B、昭和電工(株)製、溶媒:メタノール/水=80/20)及びGPC(カラム:TOSOHTSKガードカラムHXL、TSKgelG2000HXL×2、TSKgelG3000HXL×1連結(東ソー(株)製、溶媒:THF)によって純度を測定した。テトラヒドロキシメチル体の含有率は80%であった。
【0098】
また、質量分析を行って(MALDI−TOF MS:ブルカー・ダルトニクス(株)製 ultraflex)(加速電圧:20kV、モード:Reflector、分子量標準品:フラーレンC60)、分子量を測定した所、ピークトップ値として560が得られ、上記構造と同一であることを確認した。
【0099】
(化合物例E38の合成)
4−[2−(2,4,7−トリニトロ−フルオレン−9−イリデンアミノ)−エチル]−フェノール(4−[2−(2,4,7−trintro−fluorene−9−ylideneamino)−ethyl]−phenol)を水酸化カリウム水溶液(5質量%)2質量部とジメチルホルムアミド30質量部に混合し、この反応液を50℃に加熱し、ホルマリン1質量部(37質量%)を0.5時間かけて滴下した。
【0100】
滴下終了後50℃で50時間反応を行い、反応終了後に硫酸水溶液中に投入して中和し生成物を晶析させた。得られた沈殿を水洗後、メタノール/ジメチルホルムアミドを用いて再結晶を行い目的物を褐色粉末として得た。収率は50質量%であった。下記に反応経路を示す。
【0101】
【化11】

【0102】
粉末を、逆相HPLC(カラム:ShodexC18−5B、昭和電工(株)製、溶媒:メタノール/水=80/20)及びGPC(カラム:TOSOHTSKガードカラムHXL、TSKgelG2000HXL×2、TSKgelG3000HXL×1連結(東ソー(株)製、溶媒:THF)によって純度を測定した。テトラヒドロキシメチル体の含有率は78%であった。
【0103】
また、質量分析を行って(MALDI−TOF MS:ブルカー・ダルトニクス(株)製 ultraflex)(加速電圧:20kV、モード:Reflector、分子量標準品:フラーレンC60)、分子量を測定した所、ピークトップ値として494が得られ、上記構造と同一であることを確認した。
【0104】
(実施例1)
〔膜性評価用膜の作製及び膜性評価〕
まず、膜性評価について説明する。例示化合物E3とフェノール樹脂(商品名:PL−4804、群栄化学(株)製)が固形分比3/1になるように調整した液に、固形分7質量%になるようジメチルアセトアミドを加えた。得られた液を、φ30mm×長さ260mmのアルミニウムシリンダー上に浸漬塗布方法で塗布し、150℃で30分間乾燥し、1μmの膜を得た。膜には析出やひび割れ等は認められず、優れた成膜性を有していることが分かった。また、メチルエチルケトン(MEK)及びトルエンに1分間浸漬しても、何れも膜の溶解等は認められなかった。室温で30分間の減圧乾燥で形成された膜では膜の溶解が確認できたことから、E3が硬化物として存在していることが確認出来る。
【0105】
〔電子写真感光体の作製〕
まず導電層用の塗料を以下の手順で調製した。10%の酸化アンチモンを含有する酸化スズで被覆した導電性酸化チタン粉体50部(質量部、以下同様)、フェノール樹脂(商品名:プライオーフェンJ−325、大日本インキ化学工業製)25部、メチルセロソルブ20部、メタノール5部及びシリコーン化合物(ポリジメチルシロキサンポリオキシアルキレン共重合体)0.002部、φ1mmガラスビーズを用いたサンドミル装置で2.5時間分散して調製した。この塗料を、φ30mm×長さ260mmのアルミニウムシリンダー上に浸漬塗布方法で塗布し、150℃で30分間乾燥して、膜厚が16μmの導電層を形成した。
【0106】
次に、フェノール樹脂(商品名:PL−4804、群栄化学(株)製)5部、表1に記載の例示化合物E3を10部、ジメチルホルムアミド200部、ベンジルアルコール150部に溶解し、この液を前記の導電層の上に浸漬塗布方法で塗布して160℃で30分間乾燥し、膜厚が0.85μmの中間層を形成した。
【0107】
次に、CuKαのX線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)において7.3°、24.9°及び28.1°に強いピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料5部、ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBX−1、積水化学(株)製)2.5部、テトラヒドロフラン20部及びシクロヘキサノン15部、φ1mmガラスビーズを用いたサンドミル装置で2.5時間分散して、その後に酢酸エチル200部とシクロヘキサノン100部とを加えて、平均粒径0.17μmの電荷発生層用塗料を調製した((株)堀場製作所製CAPA700で遠心沈降法で測定)。この塗料を前記中間層上に浸漬塗布方法で塗布して95℃で10分間乾燥し、膜厚が0.18μmの電荷発生層を形成した。
【0108】
次に、正孔輸送性物質として下記式(9)で示されるアリルアミン化合物50部及び下記式(10)で示される構成単位を有するポリアリレート樹脂60部(平均分子量Mw=100,000、東ソー(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー「HLC−8120」で測定し、ポリスチレン換算で計算)をモノクロロベンゼン250部、テトラヒドロフラン200部に溶解し、この液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布方法で塗布して120℃で60分間乾燥し、膜厚が20μmの正孔輸送層を形成し、電子写真感光体を得た。
【0109】
【化12】

【0110】
[電子写真感光体の評価]
評価は、上記作製した電子写真感光体をキヤノン(株)製カラーレーザープリンターLBP 2510(一次帯電:ローラー接触DC帯電、帯電条件可変に改造、トレック・ジャパン(株)製高圧電源Model610使用。帯電条件:感光体表面電位が−600VになるようDC印加。レーザー露光量可変に改造)のシアン用プロセスカートリッジに装着し行い、表面電位の測定は、カートリッジを改造し、現像位置に電位プローブ(model6000B−8:トレック・ジャパン(株)製)を装着し、表面電位計(model344:トレック・ジャパン(株)製)を使用して行った。
【0111】
12℃/10%RHの環境下において、露光後電位が−150Vになるよう、光量を設定した後、画像濃度10%画像で7000枚耐久後、再び電位を測定し、耐久による暗部電位Vd、明部電位Vlの電位変化ΔVd、ΔVlを測定した。
【0112】
(実施例2〜15)
表2に記載の処方を用いた以外は、実施例1と同様にして膜性評価用膜及び電子写真感光体を作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0113】
(比較例1)
置換ヒドロキシフェニル化合物として、下記式(11)で示される化合物を加え、表2に記載の処法を用いた以外は、実施例1と同様にして膜性評価用膜及び電子写真感光体を作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0114】
【化13】

【0115】
式(11)で示される化合物の還元電位測定を行った所、−0.92V付近に不可逆なピークが見られた。
【0116】
(比較例2)
置換ヒドロキシフェニル化合物の代わりに下記式(12)で示される化合物を加え、表2に記載の処法を用いた以外は、実施例1と同様にして膜性評価用膜及び電子写真感光体を作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0117】
【化14】

【0118】
(実施例16)
正孔輸送性物質として下記式(13)で示されるアリルアミン化合物を用い、表2に記載の処法を用いた以外は、実施例1と同様にして膜性評価用膜及び電子写真感光体を作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0119】
【化15】

【0120】
(実施例17)
電荷発生物質をCuKαのX線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)において9.0°、14.2°、23.9°及び、27.1°に強いピークを有するオキシチタニウムフタロシアニン顔料に変え、表2に記載の処法を用いた以外は、実施例1と同様にして膜性評価用膜及び電子写真感光体を作製し、同様な評価を行った。結果を表2に示す。
【0121】
(実施例18)
例示化合物E16とE22とを1:1の比率で、表2に記載の処法で用いた以外は、実施例1と同様にして膜性評価用膜及び電子写真感光体を作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0122】
(実施例19〜20)
表2に記載の処法を用い、中間層と電荷発生層に置換ヒドロキシフェニル化合物を用いた以外は、実施例1と同様にして膜性評価用膜及び電子写真感光体を作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0123】
(比較例3)
置換ヒドロキシフェニル化合物を加えなかった以外は、実施例1と同様にして膜性評価用膜及び電子写真感光体を作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0124】
【表5】

【符号の説明】
【0125】
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電手段
4 露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 転写材
8 定着手段
9 クリーニング手段
10 前露光光
11 プロセスカートリッジ
12 案内手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化還元電位の還元側の値がSCE参照電極(飽和カロメル電極)に対して−0.20V〜−0.90Vである、下記式(1)で示されることを特徴とする置換ヒドロキシフェニル化合物;
【化1】

(上記式(1)中、R及びRは水素原子又はヒドロキシメチル基を示し、R〜Rは水素原子、ヒドロキシメチル基又は電子受容性部位を有する基を示し、R及びRの少なくとも一方はヒドロキシメチル基であり、R〜Rのヒドロキシメチル基以外の基のうち、少なくとも一つは電子受容性部位を有する基である。)。
【請求項2】
酸化還元電位の還元側の値がSCE参照電極(飽和カロメル電極)に対して−0.20V〜−0.60Vである上記式(1)で示される請求項1に記載の置換ヒドロキシフェニル化合物。
【請求項3】
前記置換ヒドロキシフェニル化合物が下記式(2)〜(4)のいずれかである請求項1又は2に記載の置換ヒドロキシフェニル化合物。
【化2】

(上記式(2)〜(4)中、
〜Aは式(1)のR〜Rのいずれかを除いた一価のヒドロキシメチル基である。R及びRの少なくとも一方はヒドロキシメチル基であり、該ヒドロキシメチル基でない時は水素原子、R〜Rはヒドロキシメチル基、水素原子又は置換若しくは無置換のアルキル基から選ばれる何れかの置換基を示す。
結合基X〜Xは炭素数1〜8の置換基を有していてもよく枝分かれしてもよい脂肪族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。
l、m、nは0又は1を示す。Zは電子受容性部位を有する基を示す。)。
【請求項4】
前記式(2)〜(4)に示される電子受容性部位を有する基Zが下記式(5)の構造から置換基Y〜Yを置換ヒドロキシフェニル基数分除いた1〜3価基である請求項3に記載の置換ヒドロキシフェニル化合物。
【化3】

(上記式(5)中、Y及びYは、置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換アルキル基を示し、Y〜Yは置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換アルキル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子又は水素原子を示す。)。
【請求項5】
前記式(2)〜(4)に示される電子受容性部位を有する基Zが下記式(6)の構造から置換基Y〜Y16を置換ヒドロキシフェニル基数分除いた1〜3価基である請求項3に記載の置換ヒドロキシフェニル化合物。
【化4】

{上記式(6)中、Y及びYは、酸素原子、C(CN)、NR、C(CN)R、CR(Rは置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換アルキル基)から選ばれる官能基である。Y〜Y16は置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換アルキル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子又は水素原子を示す。}。
【請求項6】
前記式(2)〜(4)に示される電子受容性部位を有する基Zが下記式(7)の構造から置換基Y17〜Y24を置換ヒドロキシフェニル基数分除いた1〜3価基である請求項3に記載の置換ヒドロキシフェニル化合物。
【化5】

{上記式(7)中、Y17及びY18は、酸素原子、C(CN)、NR、C(CN)R、CR(Rは置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換アルキル基)から選ばれる官能基である。Y19〜Y24は置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換アルキル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子又は水素原子を示す。}。
【請求項7】
前記式(2)〜(4)に示される電子受容性部位を有する基Zが下記式(8)の構造から置換基Y25〜Y32を置換ヒドロキシフェニル基数分除いた1〜3価基である請求項3に記載の置換ヒドロキシフェニル化合物。
【化6】

{上記式(8)中、Y25及びY26は、酸素原子、C(CN)COR、C(CN)COOR、C(CN)R、C(COOR)(Rは置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換アルキル基)から選ばれる官能基である。Y27〜Y32は置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換アルキル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子又は水素原子を示す。}。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の置換ヒドロキシフェニル化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の置換ヒドロキシフェニル化合物から成る硬化物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段、静電潜像の形成された電子写真感光体をトナーで現像する現像手段及び転写工程後の電子写真感光体上に残余するトナーを回収するクリーニング手段からなる群より選ばれる少なくとも1つの手段とを共に一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項11】
請求項8又は9に記載の電子写真感光体、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段、帯電した電子写真感光体に対し露光を行い静電潜像を形成する露光手段、静電潜像の形成された電子写真感光体にトナーで現像する現像手段及び電子写真感光体上のトナー像を転写材上に転写する転写手段を備えることを特徴とする電子写真装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−32274(P2011−32274A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197510(P2010−197510)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【分割の表示】特願2005−346207(P2005−346207)の分割
【原出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】