説明

置換ビフェニルアミンの製造方法

【課題】医薬・農薬等の中間体として有用な置換ビフェニルアミンの工業的に有利な製造方法を提供すること。
【解決手段】クロロアニリン誘導体と、フェニルホウ酸若しくはその誘導体、又はフェニルホウ酸無水物とを、含窒素ヘテロ環カルベン−パラジウム錯体、塩基及び非プロトン性極性溶媒−水混合溶媒中で反応することによる置換ビフェニルアミンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬・農薬等の中間体として、特に農園芸用殺菌剤の製造中間体として有用な置換ビフェニルアミン又はその塩(以下単に置換ビフェニルアミンということがある)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
置換ビフェニルアミンは、医薬・農薬等の中間体として、特に農園芸用殺菌剤(例えば、特許文献1を参照。)の中間体として有用である。その製造方法として、ブロモまたはヨードアニリンとフェニルホウ酸誘導体とをパラジウム触媒の存在下に反応させる、いわゆる鈴木カップリングと呼ばれる反応が有用であるが、経済的な観点からは高価な臭素原子やヨウ素原子を安価な塩素原子に変えたクロロアニリン誘導体を原料として鈴木カップリングを行うことが好ましい。これまで、クロロアニリン誘導体を原料として目的の置換ビフェニルアミンを効率的に製造するため様々な条件が試行されており、例えば、ブフバルト(Buchwald)を中心に開発された嵩高いホスフィンリガンドと塩基の存在下、有機溶媒中で反応させる方法(例えば、非特許文献1の表6のエントリー4を参照。)、ホスフィンリガンドを使用せずに4級アンモニウム塩と塩基の存在下、水中で反応させる方法(例えば、非特許文献2の表2のエントリー2jを参照。)が知られている。また、含窒素ヘテロ環カルベン−パラジウム錯体を用いた鈴木カップリングも開発されており、ビフェニル化合物を効率良く製造できることが知られている(例えば、非特許文献3を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009−520680号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ジャーナル オブ ジ アメリカン ケミカル ソサイエティー(J.Am.Chem.Soc.),2005,Vol.127,pp.4685−4696.
【非特許文献2】ジャーナル オブ シンセティック レター(J.Synlett.),2005,No.11,pp.1671−1674.
【非特許文献3】ジャーナル オブ ジ アメリカン ケミカル ソサイエティー(J.Am.Chem.Soc.),2006,Vol.128,pp.4101−4111.
【非特許文献4】有機合成化学協会誌,2009,Vol.67(No.6),pp.73−75.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記非特許文献1の製造方法は、高価なリガンドとパラジウムをそれぞれ2モル%および1モル%用い、高価なフェニルホウ酸誘導体を1.5倍モル用いることから工業的な製造においては経済的でなく、触媒量の低減やフェニルホウ酸誘導体量の低減が求められていた。また、リガンドを使用しない特許文献2の製造方法も、触媒量とフェニルホウ酸誘導体量が多いにもかかわらず、目的のビフェニルアミンの収率が低く、工業的な製造方法として採用できるものではない。更に、含窒素ヘテロ環カルベン−パラジウム錯体を用いる非特許文献3及び4の製造方法には、本願の目的物であるビフェニルアミンの製造については一切開示がなく、非特許文献3中の表10に示されるように、アニリン類と反応してしまうことからビフェニルアミンの製造には適さない可能性が示唆されている。このように、先行文献に開示された方法では達成できない、医薬・農薬等の中間体として有用な一般式(I)で表される置換ビフェニルアミンの工業的に有利な製造方法を提供することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決すべく本発明者等は鋭意研究を行った結果、一般式(II)で表されるクロロアニリン誘導体又はその塩(以下単にクロロアニリン誘導体と略称することがある)と一般式(III) 又は(III’)で表されるフェニルホウ酸誘導体又はその塩(以下単にフェニルホウ酸誘導体と略称することがある)とを、含窒素ヘテロ環カルベン−パラジウム錯体、塩基及び非プロトン性極性溶媒−水混合溶媒中で反応させることにより、一般式(I)で表される置換ビフェニルアミン又はその塩を効率よく製造できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
即ち、本発明は、
項1.下記一般式(II)
【化1】

(式中、R及びRは同一または異なっても良く、水素原子、(C−C)アルキル基、ハロ(C−C)アルキル基、(C−C)アルキルスルホニル基、ハロ(C−C)アルキルスルホニル基、(C−C)アルキルカルボニル基、ハロ(C−C)アルキルカルボニル基、(C−C)アルコキシカルボニル基及びハロ(C−C)アルコキシカルボニル基からなる群から選択される基を表し、Xは同一または異なっても良く、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基、水酸基、(C−C)アルキル基、ハロ(C−C)アルキル基、(C−C)アルコキシ基、ハロ(C−C)アルコキシ基、(C−C)アルキルチオ基、ハロ(C−C)アルキルチオ基、(C−C)アルキルスルフィニル基、ハロ(C−C)アルキルスルフィニル基、(C−C)アルキルスルホニル基、ハロ(C−C)アルキルスルホニル基、(C−C)アルキルカルボニル基、ハロ(C−C)アルキルカルボニル基、カルボキシル基、(C−C)アルコキシカルボニル基、ハロ(C−C)アルコキシカルボニル基、アミノ基、モノ(C−C)アルキルアミノ基及びジ(C−C)アルキルアミノ基からなる群から選択される基を表し、nは0〜4の整数を表す。)
で表されるクロロアニリン誘導体又はその塩と、下記一般式(III)
【化2】

(式中、Yは同一又は異なっても良く、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基、水酸基、(C−C)アルキル基、ハロ(C−C)アルキル基、(C−C)アルコキシ基、ハロ(C−C)アルコキシ基、(C−C)アルキルチオ基、ハロ(C−C)アルキルチオ基、(C−C)アルキルスルフィニル基、ハロ(C−C)アルキルスルフィニル基、(C−C)アルキルスルホニル基、ハロ(C−C)アルキルスルホニル基、(C−C)アルキルカルボニル基、ハロ(C−C)アルキルカルボニル基、カルボキシル基、(C−C)アルコキシカルボニル基、ハロ(C−C)アルコキシカルボニル基、アミノ基、モノ(C−C)アルキルアミノ基及びジ(C−C)アルキルアミノ基からなる群から選択される基を表し、mは0〜4の整数を表し、Zは同一又は異なっても良く、水酸基、(C−C)アルコキシ基、フェノキシ基及びシクロヘキシルオキシ基からなる群から選択される基を表す。また、2つのZで下記一般式a、b又はc
【化3】

(式中、qは1〜4の整数を表し、r及びtはそれぞれ2〜5の整数を表す。)で表される基を示すこともできる。)
で表されるフェニルホウ酸若しくはその誘導体、又は下記一般式(III’)
【化4】

(式中、Y及びmは前記に同じ)
で表されるフェニルホウ酸無水物又はその塩とを、含窒素ヘテロ環カルベン−パラジウム錯体、塩基及び非プロトン性極性溶媒−水混合溶媒中で反応させることを特徴とする下記一般式(I)
【化5】

(式中、R、R、X、Y、n及びmは前記に同じ。)
で表される置換ビフェニルアミン又はその塩の製造方法、
項2.項1に記載の一般式(II)で表されるクロロアニリン誘導体が、2−クロロアニリン誘導体であることを特徴とする項1に記載の置換ビフェニルアミン又はその塩の製造方法、
項3.前記含窒素ヘテロ環カルベン−パラジウム錯体が、アリルクロロ[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン]パラジウム(II)(Allylchloro[1,3−bis(2,6−diisopropylphenyl)imidazol−2−ylidene]palladium(II))(商品名Umicore CX21)、アリルクロロ[1,3−ビス(メシチル)イミダゾール−2−イリデン]パラジウム(II)(Allylchloro[1,3−bis(mesityl)imidazol−2−ylidene]palladium(II))(商品名Umicore CX22)、アリルクロロ[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]パラジウム(II)(Allylchloro[1,3−bis(2,6−diisopropylphenyl)−2−imidazolidinylidene]palladium(II))(商品名Umicore CX23)又はフェニルアリルクロロ[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン]パラジウム(II)(Phenylallylchloro[1,3−bis(2,6−diisopropylphenyl)imidazol−2−ylidene]palladium(II))(商品名Umicore CX31)であることを特徴とする項1又は2に記載の置換ビフェニルアミン又はその塩の製造方法、
項4.前記含窒素ヘテロ環カルベン−パラジウム錯体が、アリルクロロ[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン]パラジウム(II)(Allylchloro[1,3−bis(2,6−diisopropylphenyl)imidazol−2−ylidene]palladium(II))(商品名Umicore CX21)であることを特徴とする項1又は2に記載の置換ビフェニルアミン又はその塩の製造方法、
項5.前記塩基が、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム又は炭酸カリウムであることを特徴とする項1乃至4いずれか1項に記載の置換ビフェニルアミン又はその塩の製造方法、
項6.前記塩基が、炭酸カリウムであることを特徴とする項5に記載の置換ビフェニルアミン又はその塩の製造方法、
項7.前記非プロトン性極性溶媒が、ジメチルアセトアミド(DMA)又はN−メチルピロリドン(NMP)であることを特徴とする項1乃至6のいずれか一項に記載の置換ビフェニルアミン又はその塩の製造方法、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高価なホスフィンリガンドを使用しなくても還元体やホモカップリング体等の副生物を生成することなく、短時間で、目的化合物を効率的且つ経済的に工業的規模で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、例えば以下のように図示される。
【化6】

(式中、R、R、X、Y、Z、m及びnは前記に同じ。)
即ち、本願発明は、一般式(II)で表されるクロロアニリン誘導体と一般式(III)又は(III’)で表されるフェニルホウ酸誘導体とを、含窒素ヘテロ環カルベン−パラジウム錯体及び塩基の存在下、非プロトン性極性溶媒−水混合溶媒中で反応させることにより一般式(I)で表される置換ビフェニルアミンを製造するものである。
【0010】
本発明の一般式(I)〜(III)及び(III’)で表される化合物の置換基において、R、R、X、Y及びZは本反応を阻害しないものであれば特に限定されないが、R及びRとしては、同一または異なっても良く、水素原子、(C−C)アルキル基、ハロ(C−C)アルキル基、(C−C)アルキルスルホニル基、ハロ(C−C)アルキルスルホニル基、(C−C)アルキルカルボニル基、ハロ(C−C)アルキルカルボニル基、(C−C)アルコキシカルボニル基及びハロ(C−C)アルコキシカルボニル基等が好ましく挙げられ、反応性及び目的化合物の有用性の点から水素原子又は(C−C)アルキル基が特に好ましく挙げられる。
【0011】
Xとしては、例えば、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基、水酸基、(C−C)アルキル基、ハロ(C−C)アルキル基、(C−C)アルコキシ基、ハロ(C−C)アルコキシ基、(C−C)アルキルチオ基、ハロ(C−C)アルキルチオ基、(C−C)アルキルスルフィニル基、ハロ(C−C)アルキルスルフィニル基、(C−C)アルキルスルホニル基、ハロ(C−C)アルキルスルホニル基、(C−C)アルキルカルボニル基、ハロ(C−C)アルキルカルボニル基、カルボキシル基、(C−C)アルコキシカルボニル基、ハロ(C−C)アルコキシカルボニル基、アミノ基、モノ(C−C)アルキルアミノ基及びジ(C−C)アルキルアミノ基等が好ましく挙げられ、安定性及び得られる目的化合物の有用性の点から、フッ素原子、(C−C)アルキル基、ハロ(C−C)アルキル基、(C−C)アルコキシ基及びハロ(C−C)アルコキシ基等が特に好ましく挙げられる。また、前記一般式(I)、(II)において、nは0〜4の整数であれば特に限定されないが、反応性の点から0〜2の整数が好ましい。
【0012】
Yとしては、例えば、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基、水酸基、(C−C)アルキル基、ハロ(C−C)アルキル基、(C−C)アルコキシ基、ハロ(C−C)アルコキシ基、(C−C)アルキルチオ基、ハロ(C−C)アルキルチオ基、(C−C)アルキルスルフィニル基、ハロ(C−C)アルキルスルフィニル基、(C−C)アルキルスルホニル基、ハロ(C−C)アルキルスルホニル基、(C−C)アルキルカルボニル基、ハロ(C−C)アルキルカルボニル基、カルボキシル基、(C−C)アルコキシカルボニル基、ハロ(C−C)アルコキシカルボニル基、アミノ基、モノ(C−C)アルキルアミノ基及びジ(C−C)アルキルアミノ基等が好ましく挙げられ、安定性及び得られる目的化合物の有用性の点から、フッ素原子、塩素原子、(C−C)アルキル基、ハロ(C−C)アルキル基、(C−C)アルコキシ基及びハロ(C−C)アルコキシ基等が特に好ましく挙げられる。また、前記一般式(I)、(III)及び(III’)において、mは0〜4の整数であれば特に限定されないが、反応性及び得られる目的化合物の有用性の点から0〜2の整数が好ましい。
【0013】
Zとしては、例えば、水酸基、(C−C)アルコキシ基、フェノキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が好ましく挙げられ、安定性及び反応の容易性の点から、水酸基が特に好ましく挙げられる。また、2つのYが環を形成していてもよく、該環としては、例えば、下記一般式a、b又はcで表されるものが好ましく挙げられる。
【化7】

(式中、qは1〜4の整数を表し、r及びtはそれぞれ2〜5の整数を表す。)
【0014】
一般式(II)における塩素原子の位置としては特に限定されないが、反応性及び目的化合物の有用性の点から2位(2−クロロアニリン誘導体)が特に好ましい。
【0015】
本発明において(C−C)アルキル基とは、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基を意味し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基等が挙げられる。
【0016】
本発明においてハロ(C−C)アルキル基とは、置換可能な任意の位置が1又は2以上の同一又は異なるハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)で置換された前記(C−C)アルキル基を意味し、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2−フルオロエチル基、1,2−ジフルオロエチル基、クロロメチル基、2−クロロエチル基、1,2−ジクロロエチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基等が挙げられる。
【0017】
本発明において(C−C)アルコキシ基とは、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基を意味し、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0018】
本発明においてハロ(C−C)アルコキシ基とは、置換可能な任意の位置が1又は2以上の同一又は異なる前記ハロゲン原子で置換された前記(C−C)アルコキシ基を意味し、例えば、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、2−フルオロエトキシ基、1,2−ジフルオロエトキシ基、クロロメトキシ基、2−クロロエトキシ基、1,2−ジクロロエトキシ基、ブロモメトキシ基、ヨードメトキシ基等が挙げられる。
【0019】
本発明において(C−C)アルキルチオ基とは、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキルチオ基を意味し、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、イソペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、イソヘキシルチオ基等が挙げられる。
【0020】
本発明においてハロ(C−C)アルキルチオ基とは、置換可能な任意の位置が1又は2以上の同一又は異なる前記ハロゲン原子で置換された前記(C−C)アルキルチオ基を意味し、例えば、ジフルオロメチルチオ基、トリフルオロメチルチオ基、ブロモジフルオロメチルチオ基、2−フルオロエチルチオ基、2,2,2−トリフルオロエチルチオ基、3,3,3−トリフルオロプロピルチオ基等が挙げられる。
【0021】
本発明において(C−C)アルキルスルフィニル基とは、前記(C−C)アルキル基を有するスルフィニル基を意味し、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、n−プロピルスルフィニル基、イソプロピルスルフィニル基等が挙げられる。
【0022】
本発明においてハロ(C−C)アルキルスルフィニル基とは、前記ハロ(C−C)アルキル基を有するスルフィニル基を意味し、例えば、トリフルオロメチルスルフィニル基、2,2,2−トリフルオロエチルスルフィニル基、パーフルオロエチルスルフィニル基等が挙げられる。
【0023】
本発明において(C−C)アルキルスルホニル基とは、前記(C−C)アルキル基を有するスルホニル基を意味し、例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基等が挙げられる。
【0024】
本発明においてハロ(C−C)アルキルスルホニル基とは、前記ハロ(C−C)アルキル基を有するスルホニル基を意味し、例えば、トリフルオロメチルスルホニル基、2,2,2−トリフルオロエチルスルホニル基、パーフルオロエチルスルホニル基等が挙げられる。
【0025】
本発明において(C−C)アルキルカルボニル基とは、前記(C−C)アルキル基を有するアルキルカルボニル基、すなわち、炭素数2〜7のアルキルカルボニル基を意味し、例えば、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、2−メチルプロパノイル基、ペンタノイル基、2−メチルブタノイル基、3−メチルブタノイル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、シクロプロピルカルボニル基等が挙げられる。
【0026】
本発明においてハロ(C−C)アルキルカルボニル基とは、前記ハロ(C−C)アルキル基を有するハロアルキルカルボニル基、すなわち、炭素数2〜7のハロアルキルカルボニル基を意味し、例えば、クロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、ペンタフルオロプロピオニル基等が挙げられる。
【0027】
本発明において(C−C)アルコキシカルボニル基とは、前記(C−C)アルコキシ基を有するアルコキシカルボニル基、すなわち、炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基を意味し、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0028】
本発明においてハロ(C−C)アルコキシカルボニル基とは、前記ハロ(C−C)アルコキシ基を有するハロアルコキシカルボニル基、すなわち、炭素数2〜7のハロアルコキシカルボニル基を意味し、例えば、クロロメトキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0029】
本発明においてモノ(C−C)アルキルアミノ基とは、前記(C−C)アルキル基でモノ置換されたアミノ基を意味し、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基等が挙げられる。
【0030】
本発明においてジ(C−C)アルキルアミノ基とは、同一又は異なる前記(C−C)アルキル基でジ置換されたアミノ基を意味し、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基等が挙げられる。
前記一般式(I)、(II)、(III)および(III’)で表される化合物のそれぞれは、遊離の状態で表記してあるが、塩を形成していてもよく、塩としては、無機酸(例えば塩酸、硫酸、リン酸等)もしくは有機酸(例えば蓚酸、酢酸、ベンゼンスルホン酸等)との塩又は無機塩基(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなど)もしくは有機塩基(例えばモノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等)との塩が例示される。
【0031】
本発明において触媒として使用する含窒素ヘテロ環カルベン−パラジウム錯体としては、クロロ(1,3−ジメシチルイミダゾール−2−イリデン)(N,N−ジメチルベンジルアミン)パラジウム(II)(Chloro(1,3−dimesitylimidazol−2−ylidene)(N,N−dimethylbenzylamine)palladium(II))(東京化成工業社製 商品名:SingaCycle−E1); [1,3−(2,6−ジエチルフェニル)イミダゾール−2−イリデン](3−クロロピリジル)パラジウム(II) ジクロライド([1,3−(2,6−Diethylphenyl)imidazol−2−ylidene](3−chloropyridyl)palladium(II) dichloride)(シグマ−アルドリッチ社製 商品名:PEPPSI−IEt);[1,3−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン](3−クロロピリジル)パラジウム(II) ジクロライド([1,3−(2,6−Diisopropylphenyl)imidazol−2−ylidene](3−chloropyridyl)palladium(II) dichloride)(シグマ−アルドリッチ社製 商品名:PEPPSI−IPr);[1,3−(2,6−ジイソペンチルフェニル)イミダゾール−2−イリデン](3−クロロピリジル)パラジウム(II) ジクロライド([1,3−(2,6−Diisopentylphenyl)imidazol−2−ylidene](3−chloropyridyl)palladium(II) dichloride)(シグマ−アルドリッチ社製 商品名:PEPPSI−IPent);(1,3−ジメシチルイミダゾール−2−イリデン)(3−クロロピリジル)パラジウム(II) ジクロライド((1,3−dimesitylimidazol−2−ylidene)(3−chloropyridyl)palladium(II) dichloride)(シグマ−アルドリッチ社製 商品名:PEPPSI−IMes);
【0032】
ナフトキノン[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン]パラジウム(0)(Naphthoquinone[1,3−bis(2,6−diisopropylphenyl)imidazol−2−ylidene]palladium(0))(キャス番号649736−75−4(CasNo.649736−75−4)、ユミコア社製 商品名:Umicore CX11);ナフトキノン[1,3−ビス(メシチル)イミダゾール−2−イリデン]パラジウム(0)(Naphthoquinone[1,3−bis(mesityl)imidazol−2−ylidene]palladium(0))(キャス番号467220−49−1(CasNo.467220−49−1)、ユミコア社製 商品名:Umicore CX12);アリルクロロ[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン]パラジウム(II)(Allylchloro[1,3−bis(2,6−diisopropylphenyl)imidazol−2−ylidene]palladium(II))(キャス番号478980−03−9(CasNo.478980−03−9)、ユミコア社製 商品名:Umicore CX21);アリルクロロ[1,3−ビス(メシチル)イミダゾール−2−イリデン]パラジウム(II)(Allylchloro[1,3−bis(mesityl)imidazol−2−ylidene]palladium(II))(キャス番号478980−04−0(CasNo.478980−04−0)、ユミコア社製 商品名:Umicore CX22);アリルクロロ[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]パラジウム(II)(Allylchloro[1,3−bis(2,6−diisopropylphenyl)−2−imidazolidinylidene]palladium(II))(キャス番号478980−01−7(CasNo.478980−01−7)、ユミコア社製 商品名:Umicore CX23);フェニルアリルクロロ[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン]パラジウム(II)(Phenylallylchloro[1,3−bis(2,6−diisopropylphenyl)imidazol−2−ylidene]palladium(II))(キャス番号884879−23−6(CasNo.884879−23−6)、ユミコア社製 商品名:Umicore CX31);フェニルアリルクロロ[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]パラジウム(II)(Phenylallylchloro[1,3−bis(2,6−diisopropylphenyl)−2−imidazolidinylidene]palladium(II))(キャス番号884879−24−7(CasNo.884879−24−7)、ユミコア社製 商品名:Umicore CX32)及びジクロロ[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン]パラジウム(II) ダイマー(Dichloro[1,3−bis(2,6−diisopropylphenyl)imidazol−2−ylidene]palladium(II) dimer)(キャス番号444910−17−2(CasNo.444910−17−2)、ユミコア社製 商品名:Umicore CX41)等が挙げられ、反応性及び副生成物抑制の点から好ましくはUmicore CX21、Umicore CX22、Umicore CX23及びUmicore CX32であり、特に好ましくはUmicore CX21である。
【0033】
本発明で使用する含窒素ヘテロ環カルベン−パラジウム錯体は、非特許文献3に開示された方法又はこれに準じて製造することができるが、販売会社、商品名を示しているように市販品を購入することもでき、その使用量は、一般式(II)で表されるクロロアニリン誘導体に対して通常約0.00001倍モル〜0.1倍モルの範囲で適宜選択すればよいが、反応効率と経済性の点から、好ましくは0.0001倍モル〜0.01倍モルの範囲である。
【0034】
本発明で使用できる塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩;酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の酢酸塩;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、ナトリウムターシャリーブトキシド、カリウムターシャリーブトキシド等のアルコキシド;ピリジン、ピコリン、ルチジン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基等が挙げられ、好ましくは水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の水酸化物又は炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩であり、特に好ましくは水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム又は炭酸カリウムであり、更に好ましくは、目的化合物である置換ビフェニルアミンの収率が良い点から、炭酸カリウムである。塩基の使用量としては、一般式(II)で表されるクロロアニリン誘導体に対して0.5倍モル〜5.0倍モルの範囲から適宜選択するのが好ましく、特に好ましくは目的化合物である置換ビフェニルアミンの収率が良い点から、1.0倍モル〜3.0倍モルの範囲である。
【0035】
本発明で使用できる非プロトン性極性溶媒としては、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N−メチルピロリドン(NMP)、N−エチルピロリドン(NEP)、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPT)等のアミド系溶媒;テトラメチルウレア(TMU)、1,3−ジメチル2−イミダゾリジノン(DMI)、N,N'-ジメチルプロピレン尿素(DMPU)等のウレア系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒;ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の含硫黄系溶媒等が挙げられ、目的化合物である置換ビフェニルアミンの収率が良い点から、好ましくはジメチルアセトアミド(DMA)又はN−メチルピロリドン(NMP)であり、特に好ましくはジメチルアセトアミド(DMA)である。
【0036】
本発明の製造方法における反応は、非プロトン性極性溶媒と水との混合溶媒を使用することが特徴であり、使用する水は本発明の効果を阻害しない限り特に限定されないが、通常の蒸留水、水道水、工業用水等が使用でき、硬水、軟水どちらでも使用することができる。非プロトン性極性溶媒と水との混合比率は反応基質、反応温度、反応スケールによって適宜調整できるが、非プロトン性極性溶媒1容量部に対して水0.5〜1.5容量部の範囲が好ましく、目的化合物である置換ビフェニルアミンの収率が良い点から、1容量部前後が特に好ましい。全体の溶媒量としては、反応系が均等に分散できれば特に制限されないが、通常は一般式(II)で表されるクロロアニリン誘導体1gあたり2ml〜20mlの範囲から適宜選択するのが好ましく、特に好ましくは3ml〜10mlの範囲である。
【0037】
本発明の製造方法は等モル反応であるため、一般式(II)で表されるクロロアニリン誘導体と一般式(III)又は(III’)で表されるフェニルホウ酸誘導体とを略等モル使用すればよいが、どちらかを過剰に用いることもできる。経済的な点からは等モル使用して反応が完結することが好ましく、本発明の製造方法は好ましくは略等モル使用して反応が完結することが特徴である。
【0038】
反応温度は、10℃〜150℃の範囲内で適宜選択することができるが、反応時間及び収率等の点から、好ましくは50℃〜120℃の範囲である。溶媒の沸点を超える反応温度で反応させる場合はオートクレーブ等の耐圧性反応容器を使用すればよい。反応時間は反応スケール等により一定ではないが、数分〜100時間の範囲で適宜選択すればよい。本反応は、空気中の酸素などの存在下でも進行するが、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気で反応させてもよい。
【0039】
反応終了後、目的物は該目的物を含む反応系から常法により単離すれば良く、必要に応じて再結晶、カラムクロマトグラフィー、蒸留等で精製することにより目的物を製造することができる。本願発明の製造方法により得られる一般式(I)で表される置換ビフェニルアミンは、特許文献1に示した殺菌剤の中間体として利用することができる。
【0040】
本発明の製造方法は、一般的なカップリング反応で観察される副生成物(一般式(II)で表されるクロロアニリン誘導体のクロル原子が水素原子に還元された還元体、一般式(III)又は(III’)で表されるフェニルホウ酸自身がカップリングしたビフェニル体等)が極めて少ないこと、一般式(II)で表されるクロロアニリン誘導体と一般式(III)又は(III’)で表されるフェニルホウ酸を略等モル使用して反応が完結すること、高価なホスフィンリガンドを使用しなくても少ない触媒量で反応が完結することが特徴として挙げられ、従来の製造方法に比べて、効率的、経済的且つ工業的規模で置換ビフェニルアミンを製造できる優れた方法である。
【実施例】
【0041】
以下に本発明の代表的な実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
実施例1) 2−(3,4−ジフルオロフェニル)アニリンの製造
2−クロロアニリン 7.65g (60mmol)、3,4−ジフルオロフェニルホウ酸 9.47g (60mmol)、炭酸カリウム 9.12g (66mmol) を50%(v/v)ジメチルアセトアミド−水混合溶媒(60ml)に溶解し、アルゴン気流下、アリルクロロ(1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン)パラジウム(II)(Allylchloro(1,3−bis(2,6−diisopropylphenyl)imidazol−2−ylidene)palladium(II)) (ユミコア社製、商品名Umicore CX−21) 17.6mg (0.05mol%)を加え、140℃の油浴中で4時間撹拌した。冷却後、不溶物をろ過操作により除き、酢酸エチル120mlと水60mlで洗浄後、酢酸エチル層を下記の条件でGCMSにて分析した。 その結果、目的物である2−(3,4−ジフルオロフェニル)アニリンの面積百分率は99%であり、副生成物はほとんど認められなかった。
物性:保持時間 9.61min、M+=205
[GCMS条件]
カラム; HP−1MS 30m×0.25mm, 0.25μm
カラム温度; 60℃(2min)→20℃/min→300℃(10min)
気化室温度; 250℃
インターフェース温度; 230℃
イオン化方式; EI
【0043】
実施例2) 2−(4−メトキシフェニル)アニリンの製造
2−クロロアニリン 1.28g (10mmol)、4−メトキシフェニルホウ酸 1.52g (10mmol)、炭酸カリウム 1.52g (11mmol) の50%(v/v)ジメチルアセトアミド(10ml)溶液に、アルゴン気流下、アリルクロロ(1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン)パラジウム(II)(Allylchloro(1,3−bis(2,6−diisopropylphenyl)imidazol−2−ylidene)palladium(II))(ユミコア社製、商品名Umicore CX−21) 2.9mg (0.05mol%)を加え、140℃の油浴中で4時間撹拌した。冷却後、不溶物をろ過操作により除き、酢酸エチル120mlと水60mlで洗浄後、酢酸エチル層を実施例1)と同じ条件でGCMSにて分析した。 その結果、目的物である2−(4−メトキシフェニル)アニリンの面積百分率は95%であり、副生成物はほとんど認められなかった。
物性:保持時間 11.27min、M+=199
【0044】
実施例1及び2と反応温度(油浴温度140℃)、反応時間(4時間)、反応スケール(10mmol)、溶媒量(1L/mol)を同じにして、反応基質、溶媒、塩基、触媒を変えて反応させた結果を表1にまとめた。なお、表中、「Me」はメチル基を、「Pr」はプロピル基を、「Bu」はブチル基を、「i」はイソを、「t」はターシャリーを、「SM」は原料である一般式(II)で表されるクロロアニリン誘導体を、「TM」は目的化合物である一般式(I)で表される置換ビフェニルアミンを、「DH」は一般式(II)で表されるクロロアニリン誘導体の塩素原子が還元された下記一般式(II’)で表される還元体を、「BP」は一般式(III) で表されるフェニルホウ酸が二量化した下記一般式(III’’)で表されるホモカップリング体を示す。「DH」及び「BP」が副生成物であり、これらが少なく、原料である「SM」が少ない条件が目的物である置換ビフェニルアミンを効率的、経済的且つ工業的規模で製造できる条件である。また、本発明と同じく含窒素ヘテロ環カルベン−パラジウム錯体を触媒として用いる引用文献3の条件(塩基:ターシャリーブトキシカリウム、溶媒:イソプロピルアルコール)を比較例1として採用した。
【0045】
【化8】

【0046】
【表1】

【0047】
表1の結果から、本発明の製造方法は触媒量を0.05mol%まで低減しても副生成物である還元体DHや二量体BPをほとんど生成することなく効率的に目的物を製造することができる。これに対して先行文献に開示された比較試験1の方法では還元体DHや二量体BP以外にも副生成物を生成し、明らかに本発明の製造方法が優れていることがわかる。また、CX−21に代えて、CX−22、CX−23及びCX−32を使用した場合にはやや反応速度が遅くなる傾向にあり、原料であるSMが残るが、副生成物はほとんど生成せず、反応時間を延長することで、CX−21と同程度の優れた結果が得られると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(II)
【化1】

(式中、R及びRは同一または異なっても良く、水素原子、(C−C)アルキル基、ハロ(C−C)アルキル基、(C−C)アルキルスルホニル基、ハロ(C−C)アルキルスルホニル基、(C−C)アルキルカルボニル基、ハロ(C−C)アルキルカルボニル基、(C−C)アルコキシカルボニル基及びハロ(C−C)アルコキシカルボニル基からなる群から選択される基を表し、Xは同一または異なっても良く、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基、水酸基、(C−C)アルキル基、ハロ(C−C)アルキル基、(C−C)アルコキシ基、ハロ(C−C)アルコキシ基、(C−C)アルキルチオ基、ハロ(C−C)アルキルチオ基、(C−C)アルキルスルフィニル基、ハロ(C−C)アルキルスルフィニル基、(C−C)アルキルスルホニル基、ハロ(C−C)アルキルスルホニル基、(C−C)アルキルカルボニル基、ハロ(C−C)アルキルカルボニル基、カルボキシル基、(C−C)アルコキシカルボニル基、ハロ(C−C)アルコキシカルボニル基、アミノ基、モノ(C−C)アルキルアミノ基及びジ(C−C)アルキルアミノ基からなる群から選択される基を表し、nは0〜4の整数を表す。)
で表されるクロロアニリン誘導体又はその塩と、下記一般式(III)
【化2】

(式中、Yは同一又は異なっても良く、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基、水酸基、(C−C)アルキル基、ハロ(C−C)アルキル基、(C−C)アルコキシ基、ハロ(C−C)アルコキシ基、(C−C)アルキルチオ基、ハロ(C−C)アルキルチオ基、(C−C)アルキルスルフィニル基、ハロ(C−C)アルキルスルフィニル基、(C−C)アルキルスルホニル基、ハロ(C−C)アルキルスルホニル基、(C−C)アルキルカルボニル基、ハロ(C−C)アルキルカルボニル基、カルボキシル基、(C−C)アルコキシカルボニル基、ハロ(C−C)アルコキシカルボニル基、アミノ基、モノ(C−C)アルキルアミノ基及びジ(C−C)アルキルアミノ基からなる群から選択される基を表し、mは0〜4の整数を表し、Zは同一又は異なっても良く、水酸基、(C−C)アルコキシ基、フェノキシ基及びシクロヘキシルオキシ基からなる群から選択される基を表す。また、2つのZで下記一般式a、b又はc
【化3】

(式中、qは1〜4の整数を表し、r及びtはそれぞれ2〜5の整数を表す。)で表される基を示すこともできる。)
で表されるフェニルホウ酸若しくはその誘導体、又は下記一般式(III’)
【化4】

(式中、Y及びmは前記に同じ)
で表されるフェニルホウ酸無水物又はその塩とを、含窒素ヘテロ環カルベン−パラジウム錯体、塩基及び非プロトン性極性溶媒−水混合溶媒中で反応させることを特徴とする下記一般式(I)
【化5】

(式中、R、R、X、Y、n及びmは前記に同じ。)
で表される置換ビフェニルアミン又はその塩の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の一般式(II)で表されるクロロアニリン誘導体が、2−クロロアニリン誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の置換ビフェニルアミン又はその塩の製造方法。
【請求項3】
前記含窒素ヘテロ環カルベン−パラジウム錯体が、アリルクロロ[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン]パラジウム(II)(Allylchloro[1,3−bis(2,6−diisopropylphenyl)imidazol−2−ylidene]palladium(II))(商品名Umicore CX21)、アリルクロロ[1,3−ビス(メシチル)イミダゾール−2−イリデン]パラジウム(II)(Allylchloro[1,3−bis(mesityl)imidazol−2−ylidene]palladium(II))(商品名Umicore CX22)、アリルクロロ[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]パラジウム(II)(Allylchloro[1,3−bis(2,6−diisopropylphenyl)−2−imidazolidinylidene]palladium(II))(商品名Umicore CX23)又はフェニルアリルクロロ[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン]パラジウム(II)(Phenylallylchloro[1,3−bis(2,6−diisopropylphenyl)imidazol−2−ylidene]palladium(II))(商品名Umicore CX31)であることを特徴とする請求項1又は2に記載の置換ビフェニルアミン又はその塩の製造方法。
【請求項4】
前記含窒素ヘテロ環カルベン−パラジウム錯体が、アリルクロロ[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン]パラジウム(II)(Allylchloro[1,3−bis(2,6−diisopropylphenyl)imidazol−2−ylidene]palladium(II))(商品名Umicore CX21)であることを特徴とする請求項1又は2に記載の置換ビフェニルアミン又はその塩の製造方法。
【請求項5】
前記塩基が、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム又は炭酸カリウムであることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項に記載の置換ビフェニルアミン又はその塩の製造方法。
【請求項6】
前記塩基が、炭酸カリウムであることを特徴とする請求項5に記載の置換ビフェニルアミン又はその塩の製造方法。
【請求項7】
前記非プロトン性極性溶媒が、ジメチルアセトアミド(DMA)又はN−メチルピロリドン(NMP)であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の置換ビフェニルアミン又はその塩の製造方法。

【公開番号】特開2013−23466(P2013−23466A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159297(P2011−159297)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000232623)日本農薬株式会社 (97)
【Fターム(参考)】