説明

置換ピラジノンアミド

本発明は、グルコキナーゼ活性化薬として作用する式(I)の化合物、それらの医薬組成物、およびグルコキナーゼにより仲介される疾患、障害、または状態を治療する方法を提供する。変数R、R、RおよびRは、本明細書に記載されている通りである。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置換ピラジノンアミド化合物、化合物を含む医薬組成物およびグルコキナーゼ活性化薬としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、その有病率の増加と付随する健康上のリスクのため、大きな公衆衛生上の懸念である。この疾患は、炭水化物の産生および利用の代謝欠陥を特徴とし、適切な血糖値を維持することができなくなる。2つの主要な形態の糖尿病が認識されている。I型糖尿病、すなわちインスリン依存性糖尿病(IDDM)は、インスリンの絶対的な欠乏の結果である。II型糖尿病、すなわちインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)は、インスリンが正常なレベルで、またはさらには高いレベルで起こることが多く、インスリンに対して組織および細胞が適切に応答することができない結果もたらされるようである。投薬によるNIDDMの積極的管理は不可欠であり、管理しなければ、NIDDMはIDDMに進行することがある。
【0003】
血中グルコースが増加するにつれて、グルコースは、グルコース輸送体を介して膵臓β細胞内に輸送される。細胞内の哺乳動物グルコキナーゼ(GK)は、グルコースの増加を感知し、細胞の解糖、すなわち、グルコースのグルコース−6−リン酸への変換、およびそれに続くインスリン放出を活性化する。グルコキナーゼは、膵臓β細胞および肝実質細胞で主に見いだされる。血液から筋肉および脂肪組織内へのグルコースの移行がインスリン依存性であるため、糖尿病は、グルコースを十分に利用する能力を欠き、血中グルコースの望ましくない蓄積(高血糖症)につながる。慢性高血糖症は、インスリン分泌の減少につながり、インスリン抵抗性増加の一因となる。グルコキナーゼは、グリコーゲン合成を誘導する肝実質細胞においてセンサーとしての機能も果たすため、血液中へのグルコースの放出を妨げる。すなわち、GKプロセスは、全身グルコース恒常性の維持にとって重要である。
【0004】
細胞GKを活性化する薬剤は、膵臓β細胞からのグルコース依存性分泌を促進し、食後高血糖症を是正し、肝グルコース利用を高め、肝グルコース放出を潜在的に阻害することが予想される。結果として、GK活性化薬は、NIDDMおよび付随する合併症、とりわけ、高血糖症、脂質異常症、インスリン抵抗性症候群、高インスリン血症、高血圧症、および肥満症のための治療上の処置を提供することができる。
【0005】
各々が異なる機構により作用するいくつかの薬物が、高血糖症と、それに続いて、NIDDMを治療するために使用可能である(Moller,D.E.、「New drug targets for Type 2 diabetes and the metabolic syndrome」Nature 414;821〜827、(2001))。スルホニル尿素(例えば、グリピジド、グリメピリド、グリブリド)およびメグリチニド(例えば、ナテグリジン(nateglidine)およびレパグリニド)を包含するインスリン分泌促進薬は、膵臓β細胞に作用することによりインスリンの分泌を亢進する。この療法は、血糖値を下げることができるものの、有効性および耐容性は限定されており、体重増加を引き起こし、低血糖症を誘発することが多い。ビグアナイド(例えば、メトホルミン)は、肝グルコース産生を減らすことにより主に作用すると考えられている。ビグアナイドは、胃腸障害および乳酸アシドーシスを引き起こすことが多く、それらの使用をさらに限定している。α−グルコシダーゼの阻害薬(例えば、アカルボース)は、腸グルコース吸収を減らす。これらの薬剤は、胃腸障害を引き起こすことが多い。チアゾリジンジオン(例えば、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン)は、肝臓、筋肉および脂肪組織において特異的受容体(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体−γ)に作用する。それらは、脂質代謝を調節し、それに続いて、インスリンの作用に対するこれらの組織の応答を亢進する。これらの薬物の頻繁な使用は、体重増加につながることがあり、浮腫および貧血を誘発することがある。最後に、インスリンは、単独でまたは上記の薬剤と組み合わせて、より重症な例で使用される。
【0006】
理想的には、NIDDMにとっての有効な新たな治療は、下記の基準を満たすであろう:(a)低血糖症の誘発を包含する著しい副作用を有していないこと;(b)体重増加を引き起こさないこと;(c)インスリンの作用から独立している1つまたは複数の機構を介して作用することにより少なくとも部分的にインスリンに取って代わること;(d)望ましくは、代謝的に安定であり、低頻度の用法が可能であること;および(e)耐容量の本明細書に列挙されている薬物のカテゴリーのうちのいずれかと組み合わせて使用可能であること。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
置換されたヘテロアリール、特に、ピリドンは、GKを仲介することに関係があるとされており、NIDDMの治療において重要な役割を果たす可能性がある。例えば、米国特許公開第2006/0058353号およびPCT公開第WO2007/043638号、第WO2007/043638号、および第WO2007/117995号は、糖尿病の治療に有効なある種のヘテロ環式誘導体を挙げている。検討は継続中であるが、糖尿病、特に、NIDDMのためのより有効かつ安全な治療上の処置の必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、グルコキナーゼメディエーター、特に、グルコキナーゼ活性化薬である式(I)の化合物を提供する。したがって、これらの化合物は、そのような活性化により仲介される疾患(例えば、2型糖尿病に関連している疾患、ならびに糖尿病関連および肥満症関連の共存症)の治療で使用することができる。
【0009】
本発明の化合物は、式(I)
【0010】
【化1】

のもの、または薬学的に許容できるそれらの塩である
(式中、Rは、H、(C〜C)アルキル、またはハロ置換(C〜C)アルキルであり、Rは、Hまたは(C〜C)アルキルであり、Rは、1または2個のNヘテロ原子を含有する5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは、R3aで置換されていてもよく、R3aは、(C〜C)アルキル、−CF、シアノ、(C〜C)アルコキシ、ハロ、アミノ、(C〜C)アルキルアミノ−、ジ−(C〜C)アルキルアミノ−、−C(O)OR3b、−(C〜C)アルキルC(O)OR3b、−C(O)NR3b3c、またはアリール(C〜C)アルキル−であり、R3bおよびR3cは、各々独立して、Hまたは(C〜C)アルキルであり、前記アリール(C〜C)アルキルのアリールは、(C〜C)アルキル、−CF、シアノ、(C〜C)アルコキシ、またはハロで置換されていてもよく、
は、(C〜C)アルキルまたは
【0011】
【化2】

であり、Wは、−CHまたはOであり、mは、0、1または2である)。
【0012】
本発明のある実施形態は、Rが、H、メチル、エチル、−CHF、−CHF、または−CFである式(I)の化合物である。本発明の別の実施形態は、Rが、メチル、−CHF、または−CFである式(I)の化合物である。本発明のさらに別の実施形態は、Rが、−CFである式(I)の化合物である。
【0013】
本発明のある実施形態は、Rが、H、メチル、またはエチルである式(I)の化合物である。本発明の別の実施形態は、Rが、Hまたはメチルである式(I)の化合物である。本発明のさらに別の実施形態は、Rが、Hである式(I)の化合物である。
【0014】
本発明の別の実施形態は、Rが、R3aで各々が置換されていてもよいピラゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニルもしくはピラジニルであり、R3aが、(C〜C)アルキル、−CF、シアノ、(C〜C)アルコキシ、ハロ、アミノ、(C〜C)アルキルアミノ−、ジ−(C〜C)アルキルアミノ−、−C(O)OR3b、−C(O)NR3b3c、またはアリール(C〜C)アルキル−であり、R3bおよびR3cが、各々独立して、Hまたは(C〜C)アルキルであり、前記アリールアルキルのアリールが、(C〜C)アルキル、−CF、シアノ、(C〜C)アルコキシ、またはハロで置換されていてもよい式(I)の化合物である。本発明のさらに別の実施形態は、Rが、R3aで各々が置換されていてもよいピラゾリル、ピリジニル、またはピラジニルであり、R3aが、メチル、エチル、シアノ、メトキシ、エトキシ、F、Cl、アミノ、−NHCH、−NHCHCH、−N(CH、−COH、−C(O)NHCH、−C(O)N(CH、またはベンジルであり、前記ベンジルが、メチル、エチル、メトキシ、またはエトキシで置換されていてもよい式(I)の化合物である。本発明のさらなる実施形態は、Rが、ピリジニルまたはピラジニル、すなわち式(a)の基または式(b)の基
【0015】
【化3】

(式中、R3aは、メチル、−CHCOHまたは−COHであり、
【0016】
【化4】

は、接続点である)である場合である。本発明のさらなる実施形態は、Wが、−CHであり、mが、1である、およびWが、Oであり、mが、2である式(I)の化合物である。
【0017】
本発明の別の実施形態は、式(1A)
【0018】
【化5】

(式中、R、R、W、およびmは、上に記載されている通りである)の化合物である。
【0019】
本発明の別の実施形態は、式(1B)
【0020】
【化6】

(式中、R、R、W、およびmは、上に記載されている通りである)の化合物である。
【0021】
本発明の別の実施形態は、式(1C)
【0022】
【化7】

(式中、RおよびRは、上に記載されている通りである)の化合物である。
【0023】
式(1C)の化合物の具体的実施形態は、(S)−6−(3−シクロペンチル−2−(2−オキソ−5−(トリフルオロメチル)ピラジン−1(2H)−イル)プロパンアミド)ニコチン酸、(S)−3−シクロペンチル−2−(2−オキソ−5−(トリフルオロメチル)ピラジン−1(2H)−イル)−N−(ピラジン−2−イル)プロパンアミド、および(S)−3−シクロペンチル−N−(5−メチルピリジン−2−イル)−2−(2−オキソ−5−(トリフルオロメチル)ピラジン−1(2H)−イル)プロパンアミドである。
【0024】
本発明の別の実施形態は、式(1D)
【0025】
【化8】

(式中、RおよびRは、上に記載されている通りである)の化合物である。式(1D)の化合物の具体的実施形態は、(S)−N−(5−メチルピリジン−2−イル)−2−(2−オキソ−5−(トリフルオロメチル)ピラジン−1(2H)−イル)−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)プロパンアミドである。
【0026】
本発明の別の実施形態は、式(1E)
【0027】
【化9】

(式中、R、RおよびRは、上に記載されている通りである)の化合物である。別の実施形態は、Rが、トリフルオロメチルである式(1E)の化合物である。さらに別の実施形態は、Rが、メチル、COHまたは−CHCOHで各々が置換されていてもよいピリジニルもしくはピラジニルである、式(1E)の化合物である。さらなる実施形態は、Rが、イソプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはテトラヒドロピラニルである式(1E)の化合物である。さらに別の実施形態は、Rが、トリフルオロメチルであり、Rが、メチル、−COHまたは−CHCOHで各々が置換されていてもよいピリジニルもしくはピラジニルであり、Rが、イソプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはテトラヒドロピラニルである式(1E)の化合物である。
【0028】
本発明の別の態様は、(a)本発明の化合物、または薬学的に許容できるその塩、および(b)薬学的に許容できる賦形剤、希釈剤、または担体を含む医薬組成物である。組成物は、治療有効量の本発明の化合物、または薬学的に許容できるその塩、および薬学的に許容できる賦形剤、希釈剤、または担体を含むことが好ましい。
【0029】
組成物は、少なくとも1つの追加の医薬剤を含むことができる。追加の医薬剤は、例えば、本明細書に記載されているように、抗糖尿病薬、抗肥満薬、抗高血圧薬、抗高血糖薬、および脂質低下薬を包含する。本明細書に記載されているように、抗糖尿病薬および抗肥満薬がより好ましい。
【0030】
本発明のさらに別の態様は、哺乳動物においてグルコキナーゼ、特に、前記酵素の活性化により仲介される疾患、状態、または障害を治療するための方法であって、そのような治療を必要としている哺乳動物、特に、ヒトに、治療有効量の本発明の化合物、またはその医薬組成物を投与するステップを包含する方法である。
【0031】
グルコキナーゼ活性化薬により仲介される疾患、障害、または状態は、II型糖尿病、高血糖症、代謝症候群、グルコース耐性障害、糖尿、白内障、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、肥満症、脂質異常症、高血圧症、高インスリン血症、およびインスリン抵抗性症候群を包含する。好ましい疾患、障害、または状態は、II型糖尿病、高血糖症、グルコース耐性障害、肥満症、およびインスリン抵抗性症候群を包含する。II型糖尿病、高血糖症および肥満症がより好ましい。II型糖尿病が最も好ましい。
【0032】
本発明のさらに別の態様は、哺乳動物、特に、ヒトにおいて血糖値を下げる方法であって、そのような治療を必要としている哺乳動物に、治療有効量の本発明の化合物、またはその医薬組成物を投与するステップを包含する方法である。
【0033】
本発明の化合物は、他の医薬剤(特に、本明細書に記載されている抗肥満薬および抗糖尿病薬)と組み合わせて投与することができる。組合せ療法は、(a)本発明の化合物、本明細書に記載されている少なくとも1つの追加の医薬剤、および薬学的に許容できる賦形剤、希釈剤、もしくは担体を含む単一の医薬組成物、または(b)(i)本発明の化合物および薬学的に許容できる賦形剤、希釈剤、もしくは担体を含む第一の組成物、および(ii)本明細書に記載されている少なくとも1つの追加の医薬剤および薬学的に許容できる賦形剤、希釈剤、もしくは担体を含む第二の組成物を含む2つの別々の医薬組成物として投与することができる。医薬組成物は、同時または順次に、任意の順序で投与することができる。
【0034】
定義
本明細書に記載され、特許請求されているように、本発明の目的のために、下記の用語および語句は、下記の通り定義される。
【0035】
「活性化する」または「活性化薬」、または「活性化」とは、本明細書で使用されているように、他に指示がない限り、リガンドとして哺乳動物においてグルコキナーゼ酵素と間接的または直接的に結合し、それによって、前記酵素を部分的または全体的に活性化する本発明の化合物の能力を指す。
【0036】
「アルコキシ」とは、本明細書で使用されているように、他に指示がない限り、さらなるアルキル置換基を有する酸素部分を指す。アルコキシ基のアルキル部分(portion)(すなわち、アルキル部分(moiety))は、下記と同じ定義を有する。アルコキシの非排他的な例は、メトキシ、エトキシなどを包含する。
【0037】
「アルキル」とは、本明細書で使用されているように、他に指示がない限り、一般式C2n+1の飽和一価炭化水素アルカンラジカルを包含する。アルカンラジカルは、直線または分岐であってよく、置換されていないか置換されていてよい。例えば、「(C〜C)アルキル」という用語は、1〜6個の炭素原子を含有する一価の直線または分岐の脂肪族基を指す。(C〜C)アルキル基の非排他的な例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、sec−ブチル、t−ブチル、n−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、3,3−ジメチルプロピル、2−メチルペンチル、ヘキシルなどを包含するが、それらに限定されるものではない。上と同じ意味を有する、別の用語と一緒に示されるアルキル(例えば、アルキルアミノ−(例えば、CHHN−)、アミノアルキル−(例えば、NHCH−)、ジ−アルキルアミノ−(例えば、(CHN−)、アリールアルキル−(例えば、ベンジル)など)は、脂肪族鎖の炭素原子のうちのいずれか1つにより化学的部分に接続することができる。
【0038】
「アリール」とは、本明細書で使用されているように、他に指示がない限り、単環式芳香族環を指す。典型的なアリール基(例えば、フェニル、ナフチル)は、6〜10員の炭素環式の環または環系である。アリール基は、環系内の炭素原子のうちのいずれか1つにより化学的部分に接続することができる。アリール環は、典型的には、1〜3個の置換基、好ましくは、1個の置換基で置換されていてもよい。
【0039】
「本発明の1つまたは複数の化合物」とは、本明細書で使用されているように、他に指示がない限り、すべての立体異性体(例えば、鏡像異性体)、互変異性体および同位体標識化合物を包含する、式(I)、(1A)、(1B)、(1C)、(1D)および(1E)の化合物、それらの、化合物の薬学的に許容できる塩を指し、したがって、本発明の化合物の等価体と見なされる。本発明の化合物の溶媒和物および水和物は、組成物と見なされる。
【0040】
「糖尿病」とは、本明細書で使用されているように、他に指示がない限り、グルコース恒常性の破綻をもたらす、炭水化物、特に、グルコースの産生および利用の代謝欠陥を指す。好ましい形態の糖尿病は、インスリンの絶対的欠乏に起因するI型糖尿病、すなわちインスリン依存性糖尿病(IDDM)およびインスリンの正常なレベルで、またはさらには高いレベルで起こることが多く、インスリンに対して哺乳動物の細胞および組織が適切に応答することができないことの結果であるように見えるII型糖尿病、すなわちインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)を包含する。NIDDMが最も好ましい。
【0041】
「糖尿病関連障害」とは、本明細書で使用されているように、他に指示がない限り、代謝症候群(X症候群とも呼ばれる)、高血糖症、高インスリン血症、グルコース耐性障害、空腹時グルコース障害、インスリン抵抗性、肥満症、アテローム硬化性疾患、心臓血管疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患、狼蒼、多嚢胞性卵巣症候群、発癌、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、および過形成を指す。
【0042】
「ハロ置換アルキル」とは、他に指示がない限り、1個または複数個のハロゲン原子で置換されているアルキル基(例えば、クロロメチル、ジクロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ペルフルオロエチルなど)を指す。置換されている場合、アルカンラジカルは、1〜3個のフルオロ置換基で置換されていることが好ましい。「ヘテロアリール」とは、本明細書で使用されているように、他に指示がない限り、1または2個の窒素ヘテロ原子を含有する芳香族単環式環を指す。単環式環の非排他的な例は、ピラゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニルなどを包含する。ヘテロアリール基は、環内の炭素原子のうちのいずれか1つにより化学的部分に接続することができる。ヘテロアリールは、典型的には、1〜3個の置換基、好ましくは、1個の置換基で置換されていてもよい。
【0043】
「哺乳動物」、または本明細書で使用されている「哺乳動物の」とは、他に指示がない限り、分類クラス哺乳綱のメンバーである個別の動物を指す。哺乳動物の非排他的な例は、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、およびウシ、好ましくは、ヒトである。
【0044】
「仲介する」または「仲介される」とは、本明細書で使用されているように、他に指示がない限り、グルコース結合を亢進することによるグルコキナーゼ酵素の活性化、肝臓におけるグルコキナーゼ活性の重要な調節因子であるグルコキナーゼ調節タンパク質の阻害を軽減すること、および/またはグルコキナーゼ酵素の触媒速度を高めること(例えば、Vmaxを変えること)を指す。
【0045】
本明細書で使用されている「薬学的に許容できる」とは、他に指示がない限り、物質または組成物が、製剤、組成物、および/またはそれらで治療されている哺乳動物を含む他の成分と化学的にかつ/または毒性学的に適合していなければならないことを示す。
【0046】
本明細書で使用されている「血糖値を下げること」、または「血中グルコースを低くする」とは、他に指示がない限り、哺乳動物において血糖値を下げる望ましい効果を達成するのに十分高い化合物の循環濃度を提供するために十分な量の本発明の化合物を指す。
【0047】
「治療有効量」とは、本明細書で使用されているように、他に指示がない限り、(i)特定の疾患、状態、もしくは障害を治療もしくは予防する、(ii)特定の疾患、状態、もしくは障害の1つまたは複数の症状を減弱、軽減、もしくは除去する、または(iii)本明細書に記載されている特定の疾患、状態、もしくは障害の1つまたは複数の症状の発現を予防もしくは遅らせる本発明の化合物の量を指す。
【0048】
「治療」、「治療すること」などとは、本明細書で使用されている場合、他に指示がない限り、そのような用語が当てはまる障害もしくは状態、またはそのような障害もしくは状態の1つもしくは複数の症状の進行を後退、軽減、もしくは阻害することを指す。本明細書で使用されているように、これらの用語は、哺乳動物、好ましくは、ヒトの状態に応じて、障害もしくは状態、または障害もしくは状態に伴う症状の発現を予防することも包含し、前記障害もしくは状態に罹患する前に障害もしくは状態またはそれらに伴う症状の重症度を軽減することを包含する。すなわち、治療は、投与時に障害または状態に罹患していない哺乳動物への本発明の化合物の投与を指すことがある。治療することは、障害もしくは状態またはそれに伴う症状の再発を予防することも包含する。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明は、式(I)の化合物、または薬学的に許容できるその塩、およびグルコキナーゼ活性化により仲介される疾患、障害、または状態の治療に有用であるこれらの化合物を含む医薬組成物を提供する。特に、本発明の化合物および組成物は、哺乳動物、好ましくは、ヒトにおいてグルコキナーゼを活性化するために有用である。
【0050】
本発明の化合物は、特に、本明細書に含有されている説明を踏まえて、化学技術分野においてよく知られているものに類似したプロセスを包含する合成経路により合成することができる。出発材料は、Aldrich Chemicals(Milwaukee、Wis.)などの商業ソースから一般的に入手可能であるか、当業者によく知られている方法を使用して容易に調製される。例えば、Louis F.FieserおよびMary Fieser、Reagents for Organic Synthesis、1;19、Wiley、New York(1967、1999編);または補遺(Beilsteinオンラインデータベースを介しても入手可能)を包含するBeilsteins Handbuch der organischen Chemie、第4版、Springer−Verlag、Berlinを参照されたい。
【0051】
例示を目的として、以下に記述されている反応スキームは、本発明の重要中間体および化合物を合成するための可能な経路を示している。個別の反応ステップについてのより詳細な説明については、下記の実施例の項を参照されたい。当業者は、他の適当な出発材料、試薬、および合成経路を使用して本発明の中間体および化合物ならびにそれらの様々な誘導体を合成することができることを理解しているはずである。さらに、以下に記載されている方法により調製される化合物の多くは、当業者によく知られている従来の化学反応を使用する本開示を踏まえてさらに修飾することができる。
【0052】
本明細書に記載されている本発明の化合物は、少なくとも1つの不斉中心またはキラル中心を含有し、したがって、異なる立体異性形態で存在する。RおよびSの立体配置は、知られているキラル反転および保持の化学反応の知識に基づいている。例えば、中間体のキラリティーは、求核試薬が、脱離基の反対側から攻撃する場合に反転を受け、生成物は、立体中心に接続している基の優先順位に応じてRまたはSと表すことができるであろう。例えば、Ernest L.Eliel、Samuel H.WilenによるStereochemistry of Organic Compounds、John Wiley and Sons,Inc.(1994)を参照されたい。一方、求核試薬が、脱離基と同じ側から攻撃する場合、中間体のキラリティーは保持される。実施例の大部分において、R立体配置の化合物が、S立体配置の化合物に変換される立体配置の反転があるのは、立体中心における4個すべての置換基の優先順位が保持されるためである。さらに、中間体はラセミであってもよく(SとRの50:50混合物)、それによって、ラセミ生成物を生じることがさらに留意される。キラル分離方法を使用し、これらの鏡像異性体を分離して特定の異性体を提供することができる。さらに、中間体はラセミであってもよく、それによって、ラセミ生成物を生じることがさらに留意される。それらのラセミ混合物から化合物の立体異性体を分割するのに使用することができる技法のより詳細な説明については、例えば、A Jean Jacques Andre Collet、Samuel H.Wilen、Enantiomers,Racemates and Resolutions、John Wiley and Sons,Inc.(1981)を参照されたい。さらに、本発明は、すべての幾何異性体および位置異性体を包含する。例えば、本発明の化合物が、二重結合を組み入れる場合、シス形態とトランス形態の両方、ならびに混合物は、本発明の範囲内に包含される。
【0053】
本発明の化合物の調製において、望ましくない反応からの中間体の遠く離れた官能基(例えば、一級または二級アミン)の保護は、保護基を使用して調製することができる。「保護基」(Pg)という用語は、化合物上の他の官能基を反応させながら特定の官能基を保護するのに一般に用いられる置換基を指す。例えば、アミン保護基「Pg」またはカルボキシル保護基「Pg」は、化合物の、それぞれアミンまたはカルボキシル官能基を保護するアミンまたはカルボキシル基に接続している置換基である。適当なアミン保護基は、1−tert−ブチルオキシカルボニル(Boc)、ホルミル、アセチル、クロロアセチル、トリクロロ−アセチル、o−ニトロフェニルアセチル、o−ニトロフェノキシアセチル、トリフルオロアセチル、アセトアセチル、4−クロロブチリル、イソブチリル、o−ニトロシンナモイル、ピコリノイル、アシルイソチオシアネート、アミノカプロイル、ベンゾイルなどを包含するアシル基;およびメトキシカルボニル、9−フルオレニル−メトキシカルボニル、2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル、2−トリメチルシリルエトキシカルボニル、ビニルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、1,1−ジメチル−プロピニルオキシカルボニル、ベンジルオキシ−カルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、2,4−ジクロロベンジルオキシカルボニルなどを包含するアシルオキシ基を包含する。適当なカルボキシル保護基は、アルキル−、ベンジル−、置換ベンジル−、およびシリル−エステルを包含する。代表的なカルボキシル保護基は、メチル−、エチル−、およびt−ブチル−エステル、トリメチルシリル−、t−ブチルジメチルシリル−、ジフェニルメチル−、ベンズヒドリル−、シアノエチル−、2−(トリメチルシリル)エチル−、ニトロエチル−、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル−エステルなどを包含する。適当な保護基およびそれらのそれぞれの使用は、当業者により容易に決定される。保護基およびそれらの使用の一般的説明については、例えば、T.W.Greene、Protective Groups in Organic Synthesis、John Wiley & Sons、New York、(1991)を参照されたい。
【0054】
「脱離基」または「L」という用語は、本明細書で使用されているように、合成有機化学においてその用語と従来から関係している意味を持つ基、すなわち、反応(例えば、アルキル化)条件下で置換可能な原子または基を指す。化学的部分への脱離基の付加は、前記部分の活性化も指す。求核置換を受ける脱離基の例は、ハロ(例えば、Cl、F、Br、I)、アルキル(例えば、メチルおよびエチル)、チオメチル、トリフレート、トシレート、メシレートなどを包含する。「カップリング剤」という用語は、2つ以上の具体的化合物をカップリングさせるか結び付け、単一の組み合わせた化合物を作るための試剤として一般に用いられる化学試薬を指す。適当なカップリング剤は、[ヘキサフルオロリン酸O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム]、1,1’−チオカルボニルジイミダゾールなどを包含する。
【0055】
反応スキームA−1は、式(I)の置換ピラジノンアミドの調製を描いている。式(I)の化合物は、式(III)の適切に置換された1−H−ピラジン−2−オンと式(IV)の活性化されたエステルのカップリングと、それに続く酸触媒アミド基転移(式(II)から式(I))か、あるいは、式(IIA)の対応するカルボン酸への式(II)のエステル加水分解およびカルボン酸(IIA)の適切なアミン、HNRとのカップリングを介して調製され、式(I)の置換ピラジノンアミドが得られる。
【0056】
【化10】

【0057】
反応スキーム−1は、本発明の化合物を調製するのに使用することができる一般手順の概略をさらに示している。より詳細には、反応スキーム−1は、Rが、変数Wを含有する環である式(I)の化合物である式(1A)の化合物の調製の描写を提供する。Rが、(C〜C)アルキルである式(I)の化合物は、類似した中間体から類似した方法で調製することができることが理解されるべきである。
【0058】
【化11】

【0059】
より詳細には、反応スキーム−1は、置換ピラジノンアミド(1A)を得るための、1−H−ピラジン−2−オン(2.2)と活性化されたエステル(1.7)のカップリングと、それに続く酸触媒アミド基転移(3.1から式1A)か、あるいは、対応するカルボン酸(3.2)への(3.1)のエステル加水分解およびカルボン酸の適切なアミンとのカップリングを介する置換ピラジノンアミド(1A)の調製について記載している。
【0060】
アミノエステル(1.2)は、金属(例えば、パラジウム)媒介カップリングにより、脱離基(L、例えば、ヨード基)を持つ適切に官能基化されたアミノ保護(N−Pg)およびカルボキシル保護(O−Pg)誘導体(1.1)から合成することができる。例えば、Jackson,R.F.W.、ら、Org.Syn.、81、77、(2005)を参照されたい。例えば、3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−4−イルトリフルオロメタンスルホネート(J and W PharmLab、Levittown、PAから入手可能)を、ジメチルホルムアミドなどの不活性溶媒中、亜鉛で前者を処理した後にPdCl(PPhの存在下で(R)−メチル2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−ヨードプロパノエート(Amatek Chemical、Kowloon、Hong Kongから入手可能)とカップリングさせることができる。次いで、(1.2)中のオレフィン官能基を、水素化条件下で対応する飽和化合物(1.3)に還元することができる。典型的水素化反応は、触媒量のPd/Cの存在下、水素によりメタノール中で行うことができる。(1.3)のアミノ保護基、Pg、およびカルボキシル−保護基、Pgを除去すると、対応する非保護キラルα−アミノ酸(1.4)が得られる。例えば、保護基は、酸性条件下、例えば、水中のHClで切断することができる。キラルα−アミノ酸の調製は、この方法のみに限定されない。α−アミノ酸は、当業者に知られている他の方法により調製することができるか、商業ベンダー(例えば、Sigma−Aldrich(St.Louis、MO);Acros Organics(Geel、Belgium);Fulcrum Scientific Limited(West Yorkshire、UK);およびAmatek Chemical(Kowloon、Hong Kong))から購入することもできる。ヒドロキシ−エステル(1.5)は、酸(例えば、硫酸)の存在下、水中の亜硝酸ナトリウムによるジアゾ化により対応するα−アミノ酸(1.4)から調製することができる。例えば、McCubbin,J.A.、ら、Org.Letters、8、2993〜2996、(2006)を参照されたい。α−ヒドロキシ−エステル(1.6)は、例えば、HClの存在下、酸触媒エステル化を介して対応するヒドロキシ−エステル(1.5)から調製することができる。活性化されたエステル(1.7)は、無水トリフルオロメタンスルホン酸などの脱離基によるα−ヒドロキシ−エステル(1.6)の処理を介して合成することができる。例えば、Degerbeck,F.、ら、J.Chem.Soc.、Perkin Trans.1、11〜14、(1993)を参照されたい。典型的な手順において、この反応は、α−ヒドロキシ−エステル(1.6)への無水トリフルオロ−メタンスルホン酸の滴加により2,6−ルチジンなどの弱い塩基の存在下、無水塩化メチレンなどの不活性溶媒中で行うことができる。
【0061】
置換ピラジノン(2.2)は、対応するアミノピラジン(2.1)(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO;またはAnichem LLC(Northbrunswick、NJ)から入手可能)から調製することができるか、当業者に知られている共通の方法(例えば、酸性水の存在下での亜硝酸ナトリウムによる対応するアミノピラジンのジアゾ化)により調製することができる。例えば、5−(トリフルオロメチル)ピラジン−2−アミンを、水中で亜硝酸ナトリウムおよび硫酸で処理し、5−(トリフルオロメチル)−ピラジン−2(1H)−オンを生成させることができる。次いで、中間体(3.1)は、対応する置換ピラジノン(2.2)のリチウムヘキサメチルジシラジドによる処理およびそれに続く活性化された(例えば、トリフレート)エステル(1.7)の添加による求核置換反応により調製し、それによって、対応するピラジノンエステル(3.1)を生成させることができる。適切なpKbを持つ他の適当な塩基および他の脱離基試剤(例えば、アルキルスルホネート)を使用することができる。例えば、Effenberger、Franzら Liebigs Annalen der Chemie、(2)、314〜33(1986);およびTerasaka,Tadashiら Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、13(6)、1115〜1118(2003)を参照されたい。
【0062】
本発明の化合物の最終変換は、ピラジノンエステル(3.1)の酸触媒アミド基転移を介して達成することができる。例えば、ピラジノンエステル(3.1)のピラジンノンアミド(1A)への変換は、適切なアミン、RNH(例えば、3−アミノピラゾール、アミノピラジン、または2−アミノ−5−メチルピリジン(Sigma−Aldrich、St.Louis、MOから入手可能))の存在下、ルイス酸(例えば、AlMe、AlMeCl、Al、TiO、ZnCl、SnCl、TiCl、FeCl、AlMe、AlMeClなど)による処理により達成することができる。例えば、Yadav,J.S.、ら、Tet.Letters、48、Issue
24、4169〜4172、(1977)を参照されたい。
【0063】
あるいは、この変換を、酸性または塩基性条件下での対応するカルボン酸(3.2)へのピラジノンエステル(3.1)のエステル加水分解および適切なアミンとのカップリングを介して達成し、本発明の化合物であるピラジノンアミドを調製することができる。エステルの加水分解は、塩基性条件か酸性条件のどちらかの下で行うことができる。塩基触媒加水分解については、THFまたはジオキサンなどの不活性有機溶媒の存在下でNaOH、KOH、またはLiOHを使用することができる。酸触媒加水分解については、有機溶媒の有無に関わらず水の存在下でHClを使用することができる。例えば、Puschl,A.、ら、J.Chem.Soc.、Perkin Transactions、1、(21)、2757〜2763、(2001)を参照されたい。当業者に知られている他の適当な方法を使用して加水分解を触媒することができる。ピラジノンエステル(3.1)は、アミド変換についての同様の酸触媒アミド転移反応またはエステル加水分解を受けることがあることが留意される。さらに、酸(3.2)の酸塩化物への活性化と、続く、適当なアミンの処理も、本発明の化合物を与えるはずである。
【0064】
本発明の化合物は、単離してそれ自体を使用するか、場合により、その薬学的に許容できる塩、水和物、および/または溶媒和物の形態で投与することができる。例えば、当技術分野においてよく知られている手順に従って、本発明の化合物を、それらの薬学的に許容できる、様々な有機および無機の酸および塩基、アミノ酸の酸から誘導される塩、有機および無機の酸から誘導される塩ならびにアルカリ金属およびアルカリ土類金属をベースとする陽イオン塩に変換し、それらをそれらの形態で使用することは本発明の十分範囲内にある。
【0065】
本発明の化合物が、遊離塩基形態を持つ場合、化合物を、薬学的に許容できる無機または有機の酸と化合物の遊離塩基形態を反応させることにより薬学的に許容できる酸付加塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、フッ化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩などのヒドロハライド(hydrohalides);他の鉱酸および硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩などのそれらの対応する塩;ならびにエタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、およびベンゼンスルホン酸塩などのアルキルおよびモノアリールスルホネート;ならびに脂肪族モノ−およびジカルボン酸、フェニル−置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、アルカン二酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン酸などの他の有機酸およびそれらの対応する塩として調製することができる。そのような塩は、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、カプリル酸塩、イソ酪酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、フタル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩などを包含する。アルギネート(arginate)などのアミノ酸の塩、グルコン酸塩、ガラクツロン酸塩も企図されている。例えば、Berge S.M.、ら、Pharmaceutical Salts、J.Pharm.Sci.、66:1(1977)を参照されたい。
【0066】
塩基性の窒素含有基を含む本発明の化合物は、(C〜C)アルキルハロゲン化物、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、およびtert−ブチル塩化物、臭化物、およびヨウ化物;ジ−(C〜C)アルキルサルフェート、例えば、ジメチル−、ジエチル−、およびジアミル−サルフェート;(C10〜C18)アルキルハロゲン化物、例えば、デシル、ドデシル、ラウリル、ミリスチル、およびステアリル塩化物、臭化物、およびヨウ化物;ならびにアリール(C〜C)アルキルハロゲン化物、例えば、塩化ベンジルおよび臭化フェネチルなどの試剤で四級化することができる。そのような塩は、本発明の水溶性と油溶性の両方の化合物の調製を可能にする。
【0067】
本発明の化合物が、遊離酸形態を有する場合、薬学的に許容できる塩基付加塩を、薬学的に許容できる有機または無機の塩基と本発明の化合物の遊離酸形態を反応させることにより調製することができる。塩基付加塩の非排他的な例は、カリウム、ナトリウム、およびリチウム水酸化物を包含するアルカリ金属水酸化物;バリウムおよびカルシウム水酸化物などのアルカリ土類金属水酸化物;アルカリ金属アルコキシド、例えば、カリウムエタノレートおよびナトリウムプロパノレート;ならびに水酸化アンモニウム、ピペリジン、ジエタノールアミンおよびN−メチル−グルタミンなどの様々な有機塩基を包含するが、それらに限定されるものではない。本発明の化合物のアルミニウム塩も包含される。本発明のさらなる塩基塩は、銅、第二鉄の、第一鉄の、リチウム、マグネシウム、マンガンの(manganic)、マンガンの(manganous)、カリウム、ナトリウム、および亜鉛塩を包含するが、それらに限定されるものではない。有機塩基塩は、一級、二級、および三級アミン、天然に存在する置換アミンを包含する置換アミン、環状アミン、例えば、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、およびエチルアミン;ならびに塩基性イオン交換樹脂、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、クロロプロカイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジエタノールアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、およびグルコサミンの塩を包含するが、それらに限定されるものではない。例えば、Berge,S.M.、ら、Pharmaceutical Salts、J.Pharm.Sci.、66:1、(1977)を参照されたい。遊離酸形態は、典型的には、極性溶媒における溶解度などの物理的特性がそれらのそれぞれの塩形態といくぶんか異なるはずであるが、そのほかの点で、塩は、本発明の目的にとってそれらのそれぞれの遊離酸形態と同等であることが理解されるべきである。
【0068】
すべての塩形態は、本発明の化合物の範囲内にある。当業者により知られている従来の濃縮または結晶化技法を用い、塩を単離することができる。
【0069】
本発明の化合物(および、それらの塩)は、薬学的に許容できる溶媒と、水和形態を包含する溶媒和物を本質的に形成することができる。溶媒和物とは、本発明の化合物の1つまたは複数の溶媒分子との分子複合体を指す。レシピエントに対して無害であることが知られている医薬技術分野において一般に使用される溶媒は、水、エタノール、メタノール、イソプロパノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、酢酸、またはエタノールアミンなどを包含する。薬学的に許容できる溶媒が好ましいが、他の溶媒を使用し、次いで、薬学的に許容できる溶媒で置き換えてある種の多形体を取得することができる。水和物とは、溶媒分子が水である複合体を指す。水和物を包含する溶媒和物は、本発明の化合物の組成物と見なされる。
【0070】
本発明の中間体および化合物は、異なる互変異性形態で存在することも可能である。互変異性体とは、相互変換可能である、すなわち、化学反応が、単結合および隣接二重結合の切り換えを伴うプロトンの形式的移動(例えば、エノール/ケト、アミド/イミド酸、およびアミン/イミン形態)をもたらす、または以下に図示されるような有機化合物を指す
【0071】
【化12】

(例えば、Katritzky,A.R.、ら、The Tautomerism of Heterocycles、Academic Press、New York、(1976))。すべてのそのような互変異性形態は、本発明の範囲内に包含される。
【0072】
本発明は、1個または複数の原子が、天然において通常見いだされる原子質量または質量数と異なる原子質量または質量数を有する原子により置き換えられているという事実を除いて、本発明の化合物について列挙されているものと同一である同位体標識化合物も包含する。本発明の化合物に組み入れることができる同位体の例は、それぞれH、H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、31P、32P、35S、18F、123I、125Iおよび36Clなどの水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、ヨウ素、および塩素の同位体を包含する。上述の同位体および/または他の原子の他の同位体を含有する本発明の化合物は、本発明の範囲内にある。
【0073】
本発明のある種の同位体標識化合物、例えば、Hおよび14Cなどの放射性同位体が組み入れられているものは、薬物および/または基質の組織分布アッセイにおいて有用である。トリチウム化した、すなわち、H、および炭素−14、すなわち、14C、同位体は、それらを調製する容易さおよび検出能のために特に好ましい。さらに、重水素、すなわち、Hなどのより重い同位体による置換は、より大きい代謝安定性に由来するある種の治療上の利点、例えば、インビボ半減期の増加または用量要件の軽減を提供することがあるため、一部の環境において好ましいことがある。15O、13N、11C、および18Fなどのポジトロン放出同位体は、基質占有を調べるためのポジトロン放出断層撮影(PET)研究に有用である。それらの本発明の同位体標識化合物は、一般的に、非同位体標識試薬の代わりに容易に入手可能な同位体標識試薬を用いることにより、本明細書に開示されている手順を行うことにより調製することができる。
【0074】
本発明の化合物は、グルコキナーゼの活性化により仲介される疾患、状態および/または障害を治療するのに有用である。本発明の別の実施形態は、治療有効量の本発明の化合物、または薬学的に許容できるその塩、および薬学的に許容できる賦形剤、希釈剤、または担体を含む医薬組成物である。本発明の化合物(そこで使用される組成物およびプロセスを包含する)は、医学における使用のための本明細書に記載されている治療上の応用のために医薬品の製造においても使用することができる。
【0075】
典型的な製剤は、本発明の化合物と担体、希釈剤または賦形剤を混ぜることにより調製される。適当な担体、希釈剤および賦形剤は、当業者によく知られており、炭水化物、ワックス、水溶性かつ/または膨潤性のポリマー、親水性または疎水性の材料、ゼラチン、油、溶媒、水などを包含する。使用される特定の担体、希釈剤または賦形剤は、本発明の化合物が適用されている手段および目的によって決まるはずである。溶媒は、一般的に、哺乳動物へ投与することが安全であると当業者に認識されている溶媒を基準として選択される。一般に、安全な溶媒は、水などの無毒性の水性溶媒および水に可溶か混和可能である他の無毒性溶媒である。適当な水性溶媒は、水、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(例えば、PEG400、PEG300)など、ならびにそれらの混合物を包含する。製剤は、1つまたは複数の緩衝液、安定化剤、界面活性剤、湿潤剤、滑沢剤、乳化剤、懸濁化剤、保存剤、抗酸化剤、不透明化剤(opaquing agents)、流動促進剤、加工助剤、着色剤、甘味料、芳香剤、矯味剤および洗練された体裁の薬物(すなわち、本発明の化合物またはその医薬組成物)を提供するか医薬製品(すなわち、医薬品)の製造を助けるための他の知られている添加物を包含することもできる。
【0076】
製剤は、従来の溶解および混合手順を使用して調製することができる。例えば、バルク薬物物質(すなわち、本発明の化合物または化合物の安定化された形態(例えば、シクロデキストリン誘導体または他の知られている複合体形成剤との複合体))を、上に記載されている賦形剤の1つまたは複数の存在下で適当な溶媒に溶かす。本発明の化合物は、典型的には、容易に制御可能な用量の薬物を提供し、洗練された容易に取り扱える製品を患者に与えるための医薬剤形に製剤化される。
【0077】
医薬組成物(または、製剤)は、薬物を投与するために使用される方法に応じて様々なやり方で包装することができる。一般的に、流通のための物品は、適切な形態で医薬製剤をその中に入れた容器を包含する。適当な容器は、当業者によく知られており、瓶(プラスチックおよびガラス)、サシェ、アンプル、プラスチック袋、金属円筒などの材料を包含する。容器は、包装の内容物への不注意による接触を防ぐための不正開封防止アセンブリッジを包含することもできる。さらに、容器は、容器の内容物について記載しているラベルをその上に配置している。ラベルは、適切な警告を包含することもできる。
【0078】
本発明は、哺乳動物においてグルコキナーゼの活性化により仲介される疾患、状態および/または障害を治療する方法であって、そのような治療を必要としている哺乳動物に、治療有効量の本発明の化合物または有効量の本発明の化合物および薬学的に許容できる賦形剤、希釈剤、または担体を含む医薬組成物を投与することを包含する方法をさらに提供する。方法は、摂食障害(例えば、過食障害、拒食症、過食症、体重の減少または管理および肥満症)、トランスジェニックマウスの骨格筋におけるグルコキナーゼ発現による肥満症およびインスリン抵抗性の予防(Otaegui,P.J.、ら、The FASEB Journal、17;2097〜2099、(2003));ならびにII型糖尿病、インスリン抵抗性症候群、インスリン抵抗性、および高血糖症(Poitout,V.、ら、「An integrated view of β−cell dysfunction in type−II diabetes」、Annul.Rev.Medicine、47;69〜83,(1996))を包含するグルコキナーゼの活性化から恩恵を受ける疾患、状態および/または障害を治療ために特に有用である。
【0079】
本発明の一態様は、II型糖尿病、II型糖尿病における疾患の進行、代謝症候群(X症候群)、肥満症、高血糖症、グルコース耐性障害(インスリン抵抗性に伴う血糖異常症(dysglycemia)の前糖尿病状態)、糖尿(腎臓によるグルコースの分泌に起因する浸透圧利尿の異常状態)、白内障、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、および肥満症により悪化する状態(例えば、高血圧症;脂質異常症;高インスリン血症)の治療である。治療されるべき好ましい疾患、障害、または状態は、II型糖尿病、高血糖症、および肥満症である。II型糖尿病および高血糖症が最も好ましい。
【0080】
糖尿病は、一般的に、補償するインスリン分泌の不十分なレベルを伴った、ホルモンインスリンの低いレベルまたはインスリンの効果に対する異常な抵抗性のいずれかに起因する、代謝障害および不適切に高い血中グルコース(高血糖症)を特徴とする症候群と定義される。糖尿病は、一般的に、3つの主な形態:(1)I型糖尿病、(2)II型糖尿病、および(3)妊娠性糖尿病と特徴付けられる。I型糖尿病は、通常、膵臓β細胞の自己免疫破壊に起因する。II型糖尿病は、標的組織におけるインスリン抵抗性を特徴とする。このことは、異常に高い量のインスリンの必要性を引き起こし、糖尿病は、β細胞がこの要求を満たすことができない場合に発症する。妊娠性糖尿病は、インスリン抵抗性が関わるという点でII型糖尿病に似ており、妊娠のホルモンは、この状態を遺伝的に発症しやすい婦人においてインスリン抵抗性を引き起こすことがあり、典型的には、子供の娩出により軽快する。しかしながら、IおよびII型は、慢性的状態である。インスリンが膵臓により分泌されない1型糖尿病は、インスリンで直接治療可能であるが、食事および他の生活様式の調整は、疾患管理の一部である。II型糖尿病は、食事と医薬製品(例えば、医薬品)の組合せ、および、しばしば、インスリン補充で管理することができる。糖尿病は、多くの合併症を引き起こすことがある。急性合併症は、低血糖症、高血糖症、ケトアシドーシスまたは非ケトン性高浸透圧昏睡を包含する。重症の長期合併症は、心臓血管疾患、腎不全、網膜損傷、血液循環低下、神経損傷、および高血圧症を包含するが、それらに限定されるものではない。
【0081】
本発明のさらに別の態様は、代謝症候群などの糖尿病関連障害の治療である。代謝症候群は、脂質異常症、高血圧症、インスリン抵抗性、冠状動脈疾患、肥満症、および心不全などの疾患、状態または障害の組合せを包含する。代謝症候群に関するより詳細な情報については、例えば、Zimmet,P.Z.、ら、「The Metabolic Syndrome;Perhaps an Etiologic Mystery but Far From a Myth−Where Does the International Diabetes Federation Stand?」、Diabetes & Endocrinology、7(2)、(2005);およびAlbert,K.G.、ら、「The Metabolic Syndrome−A New Worldwide Definition」、Lancet、366、1059〜62(2005)を参照されたい。本発明の化合物の投与は、薬物を含有しないビヒクル対照と比較して、血漿レプチン、C反応性タンパク質(CRP)および/またはコレステロールの低下など、少なくとも1つの心臓血管疾患危険因子の統計的に有意な(p<0.05)低下を提供することが好ましい。本発明の化合物の投与は、グルコース血清レベルの統計的に有意な(p<0.05)低下を提供することもできる。
【0082】
約100kgの体重を有する正常な成人ヒトについて、体重1kg当たり約0.001mgから約10mgまでの範囲の用量が典型的には十分であり、好ましくは、約0.01mg/kgから約5.0mg/kgまで、より好ましくは、約0.01mg/kgから約1mg/kgまでである。しかしながら、一般的用量範囲における一部の変動が、治療されている対象の年齢、体重、および一般的健康、意図された投与経路、投与されている特定の化合物などに応じて必要とされることがある。特定の患者についての用量範囲および最適な用量の決定は、本開示の利益を有する当業者の能力の十分範囲内にある。本発明の化合物は、それらの形態も当業者によく知られている持続放出製剤、制御放出製剤、および遅延放出製剤で使用することができることも留意される。
【0083】
本発明の化合物は、本明細書に記載されているような疾患、状態および/または障害を治療するための他の医薬剤と併せて使用することもできる。したがって、他の医薬剤と組み合わせて本発明の化合物を投与することを包含する治療の方法も提供される。本発明の化合物と組み合わせて使用することができる適当な医薬剤は、抗肥満薬(食欲抑制薬を包含する)、抗糖尿病薬、抗高血糖薬、脂質低下薬、および抗高血圧薬を包含する。
【0084】
適当な抗肥満薬は、11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ−1(11β−HSD1型)阻害薬、ステアロイル−CoAデサチュラーゼ−1(SCD−1)阻害薬、MCR−4作動薬、コレシストキニン−A(CCK−A)作動薬、モノアミン再取込み阻害薬(シブトラミンなど)、交感神経興奮作用薬、βアドレナリン作動薬、ドーパミン作動薬(ブロモクリプチンなど)、メラノサイト刺激ホルモン類似体、5HT2c作動薬、メラニン凝集ホルモン拮抗薬、レプチン(OBタンパク質)、レプチン類似体、レプチン作動薬、ガラニン拮抗薬、リパーゼ阻害薬(テトラヒドロリプスタチン、すなわちオルリスタットなど)、食欲抑制薬(ボンベシン作動薬など)、ニューロペプチド−Y拮抗薬(例えば、NPY Y5拮抗薬)、PYY3−36(その類似体を包含する)、甲状腺ホルモン様薬、デヒドロエピアンドロステロンまたはその類似体、グルココルチコイドの作動薬または拮抗薬、オレキシン拮抗薬、グルカゴン様ペプチド−1作動薬、毛様体神経栄養因子(Regeneron Pharmaceuticals,Inc.、Tarrytown、NYおよびProcter & Gamble Company、Cincinnati、OHから入手可能なAxokine(商標)など)、ヒトアグーチ関連タンパク(AGRP)阻害薬、グレリン拮抗薬、ヒスタミン3の拮抗薬または逆作動薬、ニューロメディンU作動薬、MTP/ApoB阻害薬(例えば、ジルロタピドなどの腸選択的MTP阻害薬)、オピオイド拮抗薬、オレキシン拮抗薬などを包含する。
【0085】
本発明の組合せ態様において使用するのに好ましい抗肥満薬は、腸選択的MTP阻害薬(例えば、ジルロタピド、ミトラタピドおよびインプリタピド、R56918(CAS No.403987)およびCAS No.913541−47−6)、CCKa作動薬(例えば、PCT公開第WO 2005/116034号または米国公開第2005−0267100 A1号に記載されているN−ベンジル−2−[4−(1H−インドール−3−イルメチル)−5−オキソ−1−フェニル−4,5−ジヒドロ−2,3,6,10b−テトラアザ−ベンゾ[e]アズレン−6−イル]−N−イソプロピル−アセトアミド)、5HT2c作動薬(例えば、ロルカセリン)、MCR4作動薬(例えば、米国特許第6,818,658号に記載されている化合物)、リパーゼ阻害薬(例えば、セチリスタット)、PYY3−36(本明細書で使用されているように「PYY3−36」は、ペグ化されたPYY3−36などの類似体、例えば、米国公開2006/0178501に記載されているものを包含する)、オピオイド拮抗薬(例えば、ナルトレキソン)、オレオイル−エストロン(CAS No.180003−17−2)、オビネピチド(obinepitide)(TM30338)、プラムリンチド(Symlin(登録商標))、テソフェンシン(NS2330)、レプチン、リラグルチド、ブロモクリプチン、オルリスタット、エクセナチド(Byetta(登録商標))、AOD−9604(CAS No.221231−10−3)およびシブトラミンを包含する。本発明の化合物および組合せ療法は、運動および理にかなった食事と併せて投与されることが好ましい。
【0086】
適当な抗糖尿病薬は、アセチル−CoAカルボキシラーゼ−2(ACC−2)阻害薬、ホスホジエステラーゼ(PDE)−10阻害薬、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)1または2の阻害薬、スルホニル尿素(例えば、アセトヘキサミド、クロルプロパミド、ダイアビニーズ(diabinese)、グリベンクラミド、グリピジド、グリブリド、グリメピリド、グリクラジド、グリペンチド、グリキドン、グリソラミド、トラザミド、およびトルブタミド)、メグリチニド、α−アミラーゼ阻害薬(例えば、テンダミスタット、トレスタチンおよびAL−3688)、α−グルコシドヒドロラーゼ阻害薬(例えば、アカルボース)、α−グルコシダーゼ阻害薬(例えば、アジポシン(adiposine)、カミグリボース、エミグリテート、ミグリトール、ボグリボース、プラジミシン−Q、およびサルボスタチン)、PPARγ作動薬(例えば、バラグリタゾン、シグリタゾン、ダルグリタゾン、エングリタゾン、イサグリタゾン(isaglitazone)、ピオグリタゾン、ロシグリタゾンおよびトログリタゾン)、PPARα/γ作動薬(例えば、CLX−0940、GW−1536、GW−1929、GW−2433、KRP−297、L−796449、LR−90、MK−0767およびSB−219994)、ビグアナイド(例えば、メトホルミン)、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)作動薬(例えば、エキセンジン−3およびエキセンジン−4)、タンパク質チロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)阻害薬(例えば、トロデュスケミン、ヒルチオサール(hyrtiosal)抽出物、およびZhang,S.、ら、Drug Discovery Today、12(9/10)、373〜381(2007)により記載されている化合物)、SIRT−1阻害薬(例えば、レセルバトロール(reservattrol))、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)阻害薬(例えば、シタグリプチン、ビルダグリプチン、アログリプチンおよびサクサグリプチン)、インスリン分泌促進薬、脂肪酸酸化阻害薬、A2拮抗薬、c−junアミノ末端キナーゼ(JNK)阻害薬、インスリン、インスリン模倣薬、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害薬、VPAC2受容体作動薬およびグルコキナーゼ活性化薬を包含する。好ましい抗糖尿病薬は、メトホルミンおよびDPP−IV阻害薬(例えば、シタグリプチン、ビルダグリプチン、アログリプチンおよびサクサグリプチン)である。
【0087】
適当な抗高血糖薬は、α−グルコシダーゼ阻害薬(すなわち、アカルボース)、ビグアナイド、インスリン、インスリン分泌促進薬(すなわち、スルホニル尿素(すなわち、グリクラジド、グリメピリド、グリブリド)および非スルホニル尿素(すなわち、ナテグリニドおよびレパグリニド))、チアゾリジンジオン(すなわち、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン)などを包含するが、それらに限定されるものではない。
【0088】
適当な脂質低下薬は、HMGCoA還元酵素阻害薬、フィブラート、ミクロソームトリグリセリド転送タンパク質阻害薬、コレステロール転送タンパク質阻害薬、アシル転送タンパク質阻害薬、低密度脂質抗酸化剤などを包含するが、それらに限定されるものではない。
【0089】
適当な抗高血圧薬は、利尿薬、アドレナリン作動性β拮抗薬、アドレナリン作動性α拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、カルシウムチャネル遮断薬、神経節遮断薬、血管拡張薬などを包含するが、それらに限定されるものではない。
【0090】
本発明の方法によれば、本発明の化合物および少なくとも1つの他の医薬剤が一緒に投与される場合、そのような投与は、時間内に連続して、または同時であってよく、同時の方法が一般的に好ましい。連続投与の場合、本発明の化合物および追加の医薬剤は、任意の順序で投与することができる。そのような投与は、経口であることが一般的に好ましい。そのような投与は、経口でかつ同時であることが特に好ましい。本発明の化合物および追加の医薬剤が連続して投与される場合、各々の投与は、同じまたは異なる方法により、例えば、錠剤およびシロップまたはカプセルおよび非経口の注射または注入であってよい。投与および投薬は、処方する開業医により決定されるはずである。
【0091】
これらの化合物を調製する際に使用される出発材料および試薬は、商業供給業者、例えば、Sigma−Aldrich(St.Louis、MO)、Acros Organics(Geel、Belgium)、J and W PharmLab(Levittown、PA)、Amatek Chemical(Kowloon、Hong Kong)、Fulcrum Scientific Limited(West Yorkshire、UK)、およびAnichem LLC(Northbrunswick、NJ)から入手可能であるか、Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis、1〜17巻、John Wiley and Sons、New York、NY、(1991);Rodd’s Chemistry of Carbon compounds、1〜5巻および補遺、Elsevier Science Publishers、(1989);Organic Reactions、1〜40巻、John Wiley and Sons、New York、NY、(1991);March J.、Advanced Organic Chemistry、第4版、John Wiley and Sons、New York、NY;およびLarock、Comprehensive Organic Transformations、VCH Publishers、New York、(1989)などの標準的参考文献に記載されている手順に従って、当業者によく知られている方法により調製することができる。無水テトラヒドロフラン(THF)、塩化メチレン(CHCl)、およびN,N−ジメチルホルムアミドは、Sure−Seal瓶でAldrichから購入し、受領したまま使用することができる。溶媒は、他に指示がない限り、当業者に知られている標準的方法を使用して精製することができる。さらに、出発材料は、商業供給業者から入手し、他の指示がない限り、さらに精製することなく使用した。
【0092】
以下に記載される反応は、一般的に、無水溶媒中、周囲温度にて(他に指示がない限り)、アルゴンまたは窒素の陽圧下か乾燥管を使って行い、反応フラスコに、シリンジを介して基質および試薬を導入するためのゴムセプタムを取り付けた。ガラス器具は、オーブン乾燥および/または熱乾燥した。分析用薄層クロマトグラフィー(TLC)は、ガラスバックシリカゲル60 F254プレコーティッドプレート(Merck Art5719)を使用して行い、適切な溶媒比(v/v)で溶出した。反応は、TLCまたはLCMSによりアッセイし、出発材料の消費により判断して終了させた。TLCプレートの可視化は、UV光(254nM波長)か適切なTLC可視化溶媒で行い、熱で活性化した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(Stillら、J.Org.Chem.43、2923、(1978))は、シリカゲル60(Merck Art9385)またはBiotageもしくはISCO精製システムなどの様々なMPLCシステムを使用して行った。
【0093】
当業者に知られている分離および精製の従来の方法および/または技法を使用し、本発明の化合物、ならびにそれらに関連する様々な中間体を単離することができる。そのような技法は、当業者によく知られているはずであり、例えば、すべてのタイプのクロマトグラフィー(高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、シリカゲルなどの共通の吸着剤を使用するカラムクロマトグラフィー、および薄層クロマトグラフィー(TLC))、再結晶、および差次的(すなわち、液体−液体)抽出技法を包含することができる。Biotage材料は、Biotage AB(Charlottesville、VA)から購入した。
【0094】
下記の実施例における化合物構造は、下記の方法:プロトン磁気共鳴分光法、質量分析法、および微量元素分析のうちの1つまたは複数により確認した。プロトン磁気共鳴(H NMR)スペクトルは、300または400メガヘルツ(MHz)の磁界強度で動作するBrukerまたはVarianの分光計を使用して決定した。化学シフトは、内部テトラメチルシラン標準から低磁場に百万分率(PPM、δ)で報告する。あるいは、H NMRスペクトルは、下記のような重水素化溶媒中の残留プロトン由来のシグナル:CDCl=7.25ppm;DMSO−d=2.49ppm;C=7.16ppm;CDOD=3.30ppmを基準とした。質量スペクトル(MS)データは、大気圧化学イオン化またはエレクトロンスプレーイオン化でAgilent質量分光計またはWaters Micromass分光計を使用して得た。方法:60℃にてWaters BEH C18カラム(2.1×30mm、1.75μm)上で行われるクロマトグラフィーによるAcquity UPLC。移動相は、アセトニトリル(0.05%トリフルオロ酢酸を含有する)および水(5〜95%)のバイナリーグラジエントとした。微量元素分析は、Atlantic Microlab Inc.により行われ、理論値の±0.4%内で述べられている元素についての結果が得られた。
【0095】
本発明の実施形態を、下記の実施例により例示する。しかしながら、本発明の実施形態は、それらの他の変形形態が本開示を踏まえて当業者に理解されるか、明らかであるように、これらの実施例の具体的な詳細に限定されないことが理解されるべきである。
【0096】
技術告示、参考文献、文書、外国特許および出願ならびに書籍を包含する列挙されている米国特許および公開のすべては、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0097】
重要中間体および出発材料の調製
下記の反応剤は、プロセス条件のより詳細な説明を提供する。しかしながら、本発明は、本明細書にすべて記載され特許請求の範囲に挙げられているように、調製の下記のスキームまたは様式の詳細により限定されることは意図されていないことが理解されるべきである。下記の中間体において、Bocは、1−tert−ブチルオキシカルボニルを指し、Tfは、トリフレートを指す。
【0098】
中間体(1a):3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−4−イルトリフルオロメタンスルホネート
【0099】
【化13】

アルゴン下で、ジイソプロピルアミン(66.8g(92.5mL)、0.66mol)をTHF(1L)に溶かし、氷/メタノール浴中で−5℃まで冷却した。30分かけて、1℃未満に温度を維持しながらn−ブチルリチウム(2.34M、290mL、0.66mol)を加えた。混合物を、15分にわたって約0℃〜約−5℃にて撹拌し、アセトンおよびドライアイス浴で−72℃まで冷却した。ジヒドロ−2H−ピラン−4(3H)−オンを、1時間にわたって−78℃に温度を維持しながら15分かけてゆっくりと加えた。N−フェニル−ビス−(トリフルオロメチルスルホンアミド)をTHF(500mL)に懸濁し、−60℃未満に温度を維持しながら混合物にゆっくりと加えた。混合物を冷却浴中で撹拌し、一夜にわたって室温まで温めた。混合物を減圧下で濃縮した。残渣を、50℃にてヘキサン中でスラリー化し(1Lおよび250mL)、液体を減圧下で濃縮すると、中間体(1a)が得られた。1H NMR (CDCl3, 300 MHz) δ 5.74 (1H), 4.19 (2H), 3.80 (2H), 2.39 (2H).
【0100】
中間体(1b):(R)−メチル 2−(tert−ブトキシカルボニル)−3−(3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−4−イル)プロパノエート
【0101】
【化14】

厳密に嫌気性の条件下で、亜鉛末(72.7g、1.11mol)を無水N,N−ジメチルホルムアミド(100mL)に懸濁し、撹拌した溶液に、塩化トリメチルシリル(23mL 0.18mol)を加えた(55℃まで発熱)。混合物を20分にわたって撹拌すると、その間に、上清は褐色になった。混合物を静置し、上清を、真空を使用してデカントした。活性化された亜鉛粉を、上清溶媒が無色になるまでN,N−ジメチルホルムアミド(4×50mL)で洗浄した。
【0102】
(R)−メチル 2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−ヨードプロパノエート(85g、0.26mol)(Sigma−Aldrich、Milwaukee、WI)をアルゴン下でN,N−ジメチルホルムアミドに溶かし、活性化された亜鉛粉へ一度に加え、激しく撹拌した。おおよそ5分後、混合物そのものを素早く加熱した(約15秒かけて21〜30℃)。撹拌を停止し、冷却浴を直ちに施し、発熱反応を50℃にて終わらせた。温度が落ちたら、冷却浴を取り去り、混合物を20分にわたって周囲温度にて撹拌し、静置した。上清を、中間体(1a)(60g、0.26mol)およびPdCl(PPh(5.44g、7.75mmol)の調製溶液中に注入した。金属の固体をN,N−ジメチルホルムアミド(30mL)で洗浄し、洗浄液をトリフレート/触媒混合物に加え、一夜にわたって50℃にて撹拌した。溶液を減圧下で濃縮し、粗生成物を水(500mL)およびヘキサン中20%酢酸エチル(500mL)の中でスラリー化した。混合物を濾過して分配し、水層をヘキサン中20%酢酸エチル(500mL)で再抽出した。合わせた有機相を塩水(500mL)で洗浄し、MgSOで乾燥し、減圧下で濃縮した。半粗生成物が自由流動性の赤褐色の油(81g)として得られ、ドライ−フラッシュクロマトグラフィー(SiO、酢酸エチルおよびヘキサン、0〜100%)と、続いて、10%酢酸エチル/ヘキサン中での炭素処理により2回精製すると、中間体(1b)が得られた:1H NMR (CDCl3, 300 MHz): δ 5.50 (1H), 4.95 (1H), 4.40 (1H), 4.10 (2H), 3.77 (2H), 3.73 ( 3H),
2.50 (1H), 2.31 (1H), 2.07 (2H), 1.43 (9H).
【0103】
中間体(1c):(R)−メチル 2−(tert−ブトキシカルボニル)−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)プロパノエート
【0104】
【化15】

ステンレススチールオートクレーブ中で、中間体(1b)22.83g(80.0mmol)をメタノール(150mL)に溶かし、それに、トルエン(10mL)中の5%Pd/C(2.3g)のスラリーを加えた。オートクレーブに、水素を20バールまで充填し、反応混合物を室温にて2時間にわたって撹拌した。混合物をセライトに通して濾過し、濾液を減圧下で濃縮すると、中間体(1c)が得られた。生成物は、さらに精製することなく次のステップで使用した。1H NMR (CDCl3, 300 MHz): δ 4.92 (1H), 4.38 (1H), 3.92 (2H), 3.73 (3H), 3.35 (2H), 1.5-1.8
(4H), 1.43 (9H), 1.2-1.4 (2H).
【0105】
中間体(1d):(R)−2−アミノ−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)プロパン酸
【0106】
【化16】

中間体(1c)(22.9g、80.0mmol)を6N水性HCl(200mL)に懸濁し、一夜にわたって100℃にて加熱した。混合物を室温まで冷却し、20%酢酸エチル/ヘキサン(100mL)で抽出してあらゆる望ましくない有機物を除去した。水相を減圧下で濃縮し、トルエン(2×200mL)と共蒸留すると、(1d)のHCl塩が得られ、17.9gの収量が得られた;108%(灰色がかった白色の粉末、水またはトルエンで湿っていると推定された)。1H NMR (d6-DMSO, 300 MHz) δ 8.49 (3H), 3.79 (3H), 3.19 (2H), 2.44 (1H), 1.4-1.9 (5H), 1.12
(2H).
【0107】
次に、(1d)のHCl塩(11.6g、55.3mmol)およびイソブチレンオキシド(5.33mL)を4つのAnton Paar 30mLマイクロ波バイアル中のN,N−ジメチルホルムアミド(120mL)に懸濁した。混合物を1時間にわたって100℃にて反応させ、冷却した。混合物を酢酸エチル(各50mL)でバイアルから洗い落とし、混ぜ合わせ、10分にわたってさらに多くの酢酸エチル(総体積500mL)中で激しく撹拌すると、その間に、濃厚なクリーム色の懸濁液が形成した。固体を濾去し、スパチュラで砕き、一夜にわたって50℃にて真空オーブン下で乾燥すると、中間体(1d)が得られた。
【0108】
中間体(1e):(R)−2−ヒドロキシ−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)プロパン酸
【0109】
【化17】

中間体(1d)(7.68g、44.3mmol)を1N HSO(140mL)に溶かし、アルゴン下で0℃まで冷却した。水(25mL)中の溶液としてのNaNO(4.6g、66.45mmol)を混合物の表面下に1滴ずつ導入し、全体を一夜にわたって撹拌した。混合物を酢酸エチル(100mL)で抽出した。水相をさらに多くの酢酸エチル(5×100mL)で抽出した。水相をアルゴン下で0℃まで冷却し、濃HSO(3.5mL)および水(25mL)中の溶液としてのNaNO(4.6g、66.45mmol)で再処理し、一夜にわたって撹拌した。混合物を酢酸エチル(6×100mL)で抽出し、上のように再処理し、一夜にわたって撹拌し、最後に、酢酸エチル(6×100mL)で3回目の抽出をした。有機物全1800mLを合わせ、揮散させると、オレンジ色の油として7.0g(91%)の収量で中間体(1e)が得られた。1H NMR (MeOD, 300 MHz): δ 4.20 (1H), 3.92 (2H), 3.39 (2H), 1.7 (2H), 1.6 (2H), 1.27 (2H).
【0110】
中間体(1f):(R)−メチル 2−ヒドロキシ−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)プロパノエート
【0111】
【化18】

中間体(1e)(9.0g、51mmol)をメタノール(100mL)に溶かし、撹拌した。HClを15分にわたって混合物中にパージし(20から65℃まで発熱)、全体を7時間にわたって還流し、冷却した。混合物をおおよそ1/3の体積まで揮散させ、水(100mL)で希釈し、酢酸エチル(2×100mL)で抽出した。有機物を揮散させ、粗生成物をドライ−フラッシュクロマトグラフィー(SiO、酢酸エチルおよびヘキサン、0〜100%)により精製すると、中間体(1f)3.8gが得られた。水相を酢酸エチル(2×200mL)で再抽出し、揮散させ、再精製してさらに1.2gの中間体(1f)とした:1H NMR (CDCl3, 300 MHz): δ 4.24 (1H), 3.95 (2H), 3.78 (3H), 3.39 (2H), 2.73 (1H), 1.83 (1H),
1.52-1.75 (4H), 1.22-1.42 (1H).
【0112】
中間体(1g):(R)−メチル 3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)−プロパノエート
【0113】
【化19】

中間体(1f)(1.21g、6.43mmol)を窒素下で無水ジクロロメタン(60mL)に溶かした。混合物を氷浴中で撹拌し、ルチジン(1.6mL)を加えた。無水トリフル酸(1.95mL、11.6mmol)を滴加し、反応物を60分にわたって撹拌した。混合物をメチルtert−ブチルエーテルで希釈し、3:1塩水/1N HClで3回洗浄した。有機層をMgSOで乾燥し、濾過し、蒸発させ、高真空下で乾燥すると、中間体(1g)が得られ、さらに精製することなく下記の反応で利用した。
【0114】
中間体(1h):5−(トリフルオロメチル)ピラジン−2(1H)−オン
【0115】
【化20】

濃硫酸(2.38mL)を氷浴中で撹拌した。亜硝酸ナトリウム(199mg)を一度に加え、混合物を5分にわたって撹拌し、5分かけて室温まで温めた。次いで、それを10分にわたって40℃まで加熱し、次いで、0℃まで冷却した。濃硫酸3.4mL中の5−(トリフルオロメチル)−ピラジン−2−アミン(313mg)の溶液を5分かけて滴加した。反応物を10分にわたって氷浴中で、次いで、10分にわたって室温にて、次いで、20分にわたって40℃にて撹拌した。次いで、反応物を、撹拌している氷水中にピペットで入れた。水層を酢酸エチルで2回抽出し、次いで、水および塩水で洗浄し、MgSOで乾燥した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(40g、ヘプタン中0〜100%酢酸エチル)により精製すると、白色の固体として中間体(1h)0.239gが得られた。MS 163.1 (M-1, APCI-)。
【0116】
中間体(1i):(S)−メチル 2−(2−オキソ−5−(トリフルオロメチル)ピラジン−1(2H)−イル)−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)プロパノエート
【0117】
【化21】

中間体(1h)(150mg)を、窒素下で室温にて無水THF3mL中で撹拌した。リチウムビス(トリメチルシリル)アミド溶液(0.823mL、THF中1.0M)を加えた。45分後、無水THF2mL中の中間体(1g)(293mg)の溶液を加えた。反応物を3時間にわたって撹拌した。反応物を飽和塩化アンモニウムでクエンチし、酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機層をMgSOで乾燥し、減圧下で濃縮した。得られた残渣を精製すると(Combi−flash、Redi−sep40g、0%酢酸エチル/ヘプタン〜100%酢酸エチル/ヘプタングラジエント)、澄明な油として中間体(1i)28.8mgが得られた。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.19 (1 H), 7.65 (1 H), 5.64-5.68 (1 H), 3.92-3.96 (2 H), 3.79 (3
H), 3.23-3.38 (2 H), 2.06-2.18 (1 H), 1.79-1.90 (1 H), 1.22-1.75 (3 H); m/z
335.3 (M+H)+, 333.2 (M-H)-.
【0118】
中間体(1j):(S)−ベンジル 6−(2−(2−オキソ−5−(トリフルオロメチル)ピラジン−1(2H)−イル)−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)プロパンアミド)ニコチネート
【0119】
【化22】

ジクロロメタン(13.3mL)中の(1i)(444mg)の溶液に(2e)(1.53g)を加えた。混合物を窒素でパージし、次いで、トリメチルアルミニウム(3.32mL、トルエン中2.0M)を滴加した。反応物を8時間にわたって還流状態まで加熱した。次いで、反応物を、トリエタノールアミン(2.20mL)のゆっくりした添加によりクエンチした。この溶液を15分にわたって室温にて撹拌した。混合物をジクロロメタン25mLおよび水20mLで希釈した。層を分離し、水層をジクロロメタンで再び抽出した。合わせた有機物を水および塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、濃縮した。ヘプタン中10〜50%酢酸エチルのグラジエントで溶出するカラムクロマトグラフィーにより、黄白色の固体として(1j)(229mg、32.5%収率)が得られた。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 1.32 - 1.50 (4 H), 1.59 - 1.76 (2 H), 1.84 - 1.97 (1 H), 2.23
(1 H), 3.24 - 3.40 (2 H), 3.93 (2 H), 5.35 (2 H), 5.85 (1 H), 7.28 - 7.47 (5
H), 8.13 (1 H), 8.30 (1 H), 8.36 (1 H), 8.91 (1 H), 9.38 (1 H). m/z 531.5 (M+H)+.
【0120】
中間体(2a):(R)−メチル 3−シクロペンチル−2−ヒドロキシプロパノエート
【0121】
【化23】

(R)−2−アミノ−3−シクロペンチルプロパン酸(5.0g)(Amatek Chemical Company,Ltd.、Hong Kong)および1M HSO(45.1mL)の撹拌した溶液に、0℃にて、10分かけて水(15.6mL)中のNaNO(3.12g)の溶液を滴加した。反応混合物を0℃にて3時間にわたって、次いで、室温にて2時間にわたって撹拌した。次いで、溶液をエーテルで3回抽出した。合わせた有機抽出物をMgSOで乾燥し、濾過し、濾液を濃縮すると、中間体(2a)2.36gが得られた。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 4.26-4.28 (1 H), 1.99-2.07 (1H), 1.76-1.81 (4 H), 1.60-1.62 (4 H),
1.12-1.16 (2H); m/z 157.1 (M-H)-.
【0122】
中間体(2b):(R)−メチル 3−シクロペンチル−2−ヒドロキシプロパノエート
【0123】
【化24】

無水メタノール(15mL)中の中間体(2a)2.36gの撹拌した溶液に、室温にて、SOCl(1.64mL)を加えた。得られた混合物を2時間にわたって還流状態にて加熱した。次いで、それを冷却し、減圧下で濃縮した。残渣を、酢酸エチルと飽和NaHCO水溶液の間で分配した。二相混合物を分離し、水性部分を酢酸エチルで抽出した。合わせた抽出物をMgSOで乾燥し、濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。得られた残渣を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘプタン/酢酸エチル)により精製すると、澄明な油として中間体(2b)1.5gが得られた。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 4.15-4.20 (1 H), 3.77 (3H), 2.62-2.63 (1 H), 1.97-2.05 (1 H),
1.49-1.86 (8 H), 1.06-1.17 (2 H); m/z 171.6 (M)+.
【0124】
中間体(2c):(R)−メチル 3−シクロペンチル−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)プロパノエート
【0125】
【化25】

無水塩化メチレン(3mL)中の中間体(2b)50mgの撹拌した溶液に、窒素下で0℃にて、2,6−ルチジン(0.064mL)と、続いて、無水トリフルオロ−メタンスルホン酸(0.083mL)を滴加した。同じ温度にて45分にわたって撹拌した後、メチルtert−ブチルエーテルを加え、混合物を塩水と水性1N HClの混合物(3:1)で3回、徹底的に洗浄した。有機抽出物をMgSOで乾燥し、濾過し、濾液を濃縮すると、黄褐色の油として中間体(2c)が得られた。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.09-5.12 (1 H), 3.81 (3 H) 1.97-2.09 (1 H), 1.70-1.96 (4 H),
1.47-1.66 (4 H), 1.03-1.19 (2 H).
【0126】
中間体(2d):(S)−メチル 2−(2−オキソ−5−(トリフルオロメチル)ピラジン−1(2H)−イル)−3−シクロペンチルプロパノエート
【0127】
【化26】

中間体(1h)(489mg)を、窒素下で室温にて無水THF15mL中で撹拌した。リチウムビス(トリメチルシリル)アミド溶液(2.7mL、THF中1.0M)を加えた。50分後、無水THF5mL中の中間体(1l)(907mg)の溶液を加えた。反応物を2時間にわたって撹拌した。反応物を飽和塩化アンモニウムでクエンチし、酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機層を塩水で洗浄し、次いで、MgSOで乾燥し、減圧下で濃縮した。得られた残渣を精製すると(Combi−flash、Redi−sep40g、1:1酢酸エチル/ヘプタンまでの100%ヘプタングラジエント)、中間体(2d)948mgが得られた。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 8.17 (1 H), 7.66 (1 H), 5.51 (1
H), 3.77 (3 H) 2.11 - 2.18 (1 H), 1.98 (1 H), 1.77 (2 H), 1.47 - 1.67 (6 H),
1.06 - 1.23 (2 H).
【0128】
中間体(2e):6−アミノニコチン酸ベンジル
【0129】
【化27】

6−アミノニコチン酸(3.0g、22mmol)および4−トルエンスルホン酸一水和物(9.09g、47.8mmol)を、窒素下で20時間にわたってベンジルアルコール(100ml)中で120℃まで加熱した。得られた黄色の溶液を室温まで冷却し、撹拌しているジエチルエーテル(500ml)および水(300ml)に注ぎ入れた。1N HClを加えて強酸性を保証した。エーテル層を分離し、水層をエーテルで洗浄した。固体炭酸カリウムを撹拌しながら少しずつ加えて水層をpH10とし、沈殿を生成させた。酢酸エチルを加えて固体を溶かした。水層を分離し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機物を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、蒸発させた。粗残渣を精製すると(Combi−flash、Redi−sep80g、75%酢酸エチル/ヘプタン)、中間体(2e)(1.81g、7.93mmol、37%)が得られた。1H NMR (400 MHz, d6DMSO) δ 8.51 (d, 1H), 7.82 (d, 1 H), 7.28-7.42 (5 H), 6.83 (2 H),
6.43 (1 H), 5.24 (2 H); m/z 229.2 (M+H)+.
【0130】
中間体(2f):(S)−ベンジル 6−(3−シクロペンチル−2−(2−オキソ−5−(トリフルオロメチル)ピラジン−1(2H)−イル)プロパンアミド)ニコチネート
【0131】
【化28】

中間体(2e)(277mg)を無水1,2−ジメトキシエタン5mL中で撹拌した。塩化ジメチルアルミニウム溶液(1.65mL、ヘキサン中1.0M)を加え、反応物を30分にわたって室温にて撹拌した。無水1,2−ジメトキシエタン3mL中の中間体(2d)、(75mg)の溶液を加え、反応物を24時間にわたって80℃にて撹拌した。反応物を冷却し、飽和水性ロッシェル塩を加え、5分にわたって撹拌した。得られた水性スラリーをジクロロメタンで2回抽出した。合わせた有機層をMgSOで乾燥し、減圧下で濃縮した。得られた残渣を精製すると(Combi−flash、Redi−sep40g、0%酢酸エチル/ヘプタン〜100%酢酸エチル/ヘプタングラジエント)、白色の固体として中間体(2f)(35mg)が得られた。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ
9.73 (1H), 8.92 (1H), 8.41 (1H), 8.31 (1H), 8.17 (1H), 8.03
(1H), 7.34-7.41 (5H), 5.86-5.99 (1H), 5.35 (2H), 2.25-2.28 (1 H), 2.00-2.01 (1
H), 1.47-1.87 (7 H), 1.16-1.27 (2 H). m/z 514 (M-H)- .
【0132】
中間体(3a):(R)−メチル 3−シクロヘキシル−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)プロパノエート
【0133】
【化29】

(R)−メチル 3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシプロパノエート(Organic Process Research & Development 7(4)559〜570;2003)(250mg)をジクロロメタン(5mL)に溶かし、0℃まで冷却した。ジクロロメタン0.5mL中の2,6−ルチジン(300mg)の溶液を加え、続いて、ビス(トリフルオロメタンスルホン酸)無水物(0.41mL)をゆっくりと加えた。反応物を1時間にわたって撹拌し、25℃まで徐々に温めた。次いで、反応物をメチルtert−ブチルエーテル35mLで希釈し、塩水と1N HClの3:1溶液(3×15mL)で洗浄した。有機物をNaSOで乾燥し、濾過し、濃縮すると、黄色の油として中間体(3a)(427mg、100%収率)が得られた。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.84 - 1.05 (2H), 1.09 - 1.34 (4H), 1.59 - 1.75 (4H), 1.75 - 1.85
(2H), 1.85 - 1.98 (1H), 3.83 (3H) 5.18 (1H).
【0134】
中間体(3b):(S)−メチル 3−シクロヘキシル−2−(2−オキソ−5−(トリフルオロメチル)ピラジン−1(2H)−イル)プロパノエート
【0135】
【化30】

表題化合物は、出発材料として中間体(3a)を使用し、中間体(1i)について記載されているものと同様の方法により調製した。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.87 - 1.02 (2 H), 1.04 - 1.21 (4 H), 1.68 (4 H), 1.79 (2 H), 1.99
- 2.10 (1 H), 3.73 (3 H). 5.61 (1 H), 7.64 (1 H), 8.17 (1 H). m/z 333.4 (M+H)+.
【0136】
中間体(3c):(S)−ベンジル 6−(3−シクロヘキシル−2−(2−オキソ−5−(トリフルオロメチル)ピラジン−1(2H)−イル)プロパンアミド)ニコチネート
【0137】
【化31】

表題化合物は、出発材料として中間体(3b)を使用し、中間体(1j)について記載されているものと同様の方法により調製した。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.16 (2 H), 1.20 - 1.33 (4 H), 1.60 - 1.72 (3 H), 1.76 (2 H), 1.84
(1 H), 2.15 (1 H), 5.35 (2 H), 5.80 (1H), 7.31 - 7.46 (5 H), 7.92 (1 H), 8.14
(1 H), 8.28 - 8.32 (1 H), 8.33 (1 H), 8.93 (1 H), 9.27 (1 H). m/z 529.5 (M+H)+.
【0138】
中間体(4a):(R)−メチル 4−メチル−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ペンタノエート
【0139】
【化32】

表題化合物は、出発材料として(R)−メチル 2−ヒドロキシ−4−メチルペンタノエート(JACS 112(10)、3949〜54;1990)を使用し、中間体(3a)について記載されているものと同様の方法により調製した。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.85 - 1.07 (6 H), 1.69 - 1.87 (2 H), 1.87 - 2.03 (1 H), 3.83 (3
H), 5.15 (1 H).
【0140】
中間体(4b):(S)−メチル 4−メチル−2−(2−オキソ−5−(トリフルオロメチル)ピラジン−1(2H)−イル)ペンタノエート
【0141】
【化33】

表題化合物は、出発材料として(4a)を使用し、中間体(1i)について記載されているものと同様の方法により調製した。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.96 (6 H), 1.36 - 1.50 (1 H), 1.74 - 1.93 (1 H), 1.93 - 2.11 (1
H), 3.78 (3 H), 5.59 (1 H), 7.64 (1 H), 8.17 (1 H). m/z 293.4 (M+H)+.
【0142】
中間体(4c):(S)−ベンジル 6−(4−メチル−2−(2−オキソ−5−(トリフルオロメチル)ピラジン−1(2H)−イル)ペンタンアミド)ニコチネート
【0143】
【化34】

表題化合物は、出発材料として中間体(4b)および溶媒としてジクロロエタンを使用し、中間体(1j)について記載されているものと同様の方法により調製した。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.00 (6 H), 1.50 - 1.60 (1 H), 1.81 - 1.93 (1 H), 2.11 (1 H), 5.36
(2 H), 5.76 (1 H), 7.33 - 7.39 (5 H), 7.92 (1 H), 8.14 (1 H), 8.27 - 8.36 (2
H), 8.93 (1 H), 9.21 (1 H). m/z 489.5 (M+H)+.
【0144】
中間体(5a):(S)−3−シクロペンチル−2−(2−オキソ−5−(トリフルオロメチル)ピラジン−1(2H)−イル)プロパン酸
【0145】
【化35】

6N HCl(4.0mL)中の中間体(2d)(230mg)の混合物を20時間にわたって95℃まで加熱した。反応物を室温まで冷却し、pHを5N NaOHの添加により4に調整した。溶液を10%2−プロパノール/ジクロロメタンを使用して3回抽出した。合わせた有機物をNaSOで乾燥し、濾過し、濃縮すると、黄色の油として望ましい生成物中間体(5a)(220mg、100%収率)が得られた。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.06 - 1.16 (1 H), 1.46 - 1.56 (2 H), 1.57 - 1.70 (3 H), 1.70 -
1.86 (2 H), 2.01 (1 H), 2.14 - 2.27 (1 H), 4.23 (2 H), 5.51 (1 H), 7.62 (1 H),
8.19 (1 H). m/z 303.4 (M+H)+.
【0146】
中間体(5b):2−(6−アミノピリジン−3−イル)酢酸ベンジル
【0147】
【化36】

2−(6−アミノピリジン−3−イル)酢酸エチル(WO2009/091014に記載されている)(1.5g)をベンジルアルコール(10mL)に溶かした。チタン(IV)エトキシド(1.74mL)を加え、反応物を16時間にわたって110℃まで加熱した。反応物を室温まで冷却し、1N HClでクエンチした。混合物を飽和重炭酸ナトリウムで塩基性化し、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機物をMgSOで乾燥し、濾過し、濃縮した。ヘプタン中30〜100%酢酸エチルのグラジエントで溶出するカラムクロマトグラフィーにより精製すると、白色の固体として表題化合物中間体(5b)(1.04g、51%収率)が得られた。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 3.51 (2 H), 4.37 (2 H), 5.11 (2 H), 6.46 (1 H), 7.27 - 7.41 (6 H),
7.95 (1 H). m/z 243.4 (M+H)+.
【0148】
中間体(5c):(S)−ベンジル 2−(6−(3−シクロペンチル−2−(2−オキソ−5−(トリフルオロメチル)ピラジン−1(2H)−イル)プロパンアミド)ピリジン−3−イル)アセテート
【0149】
【化37】

中間体(5a)(100mg)をジクロロメタン(3.29mL)に溶かし、N,N−ジメチルホルムアミド(1滴)と、続いて、塩化オキサリル(93uL)を加えた。次いで、反応混合物を1時間にわたって25℃にて撹拌した。続いて、混合物を濃縮し、ジクロロエタンを加え、2回蒸発させた。得られた残渣をジクロロメタン(3.0mL)に溶かした。中間体(5b)(87.7mg)およびピリジン(56uL)を加え、反応物を3時間にわたって25℃にて撹拌した。次いで、ジイソプロピルエチルアミン(0.20mL)を触媒量の4−ジメチルアミノピリジンと一緒に加え、反応物を16時間にわたって25℃にて撹拌した。続いて、追加のジクロロエタン(2.0mL)を加え、反応物をさらに16時間にわたって60℃まで加熱した。次いで、反応物を室温まで冷却し、酢酸エチルで希釈した。溶液を水で洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、濃縮した。ヘプタン中0〜50%酢酸エチルのグラジエントで溶出するカラムクロマトグラフィーにより精製すると、黄色の固体として表題化合物中間体(5c)(83mg、48%収率)が得られた。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.11 - 1.22 (2 H), 1.25 (1 H), 1.46 - 1.57 (2 H), 1.63 (2 H), 1.72
(1 H), 1.81 (1 H), 1.89 - 2.01 (1 H), 2.26 (1 H), 3.63 (2 H), 5.12 (2 H), 5.57
(1 H), 7.27 - 7.39 (5 H), 7.64 (1 H), 7.92 (1 H), 8.05 (1 H), 8.20 (1 H),
8.24 (1 H) 8.67 (1 H). m/z 529.6 (M+H)+.
【0150】
中間体(6a):(R)−2−アミノ−3−シクロブチルプロパン酸
【0151】
【化38】

(R)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−シクロブチルプロパノエートジイソプロピルアミン塩(5.00g)(Chem−Impex International、Wood Dale、ILから入手可能)をジクロロメタン(50mL)に溶かし、0.25M硫酸で2回洗浄した。有機層をNaSOで乾燥し、濾過し、濃縮すると、澄明な無色の油3.98gが得られた。この残渣をジクロロメタン(12.0mL)に溶かし、トリフルオロ酢酸(10.0mL)で処理した。反応物を3時間にわたって室温にて撹拌し、次いで、濃縮した。澄明な無色の油をジエチルエーテルとトリチュレートすると、白色の結晶性固体として望ましい生成物(6a)のTFA塩(3.73g、100%収率)が得られた。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 1.50 - 1.67 (2 H), 1.68 - 1.93 (4 H), 2.01 (2 H), 2.33 - 2.44 (1
H), 3.70 (1 H).
【0152】
中間体(6b):(R)−メチル 3−シクロブチル−2−ヒドロキシプロパノエート
【0153】
【化39】

2N HSO(22mL)中の中間体(6a)(3.79g)の溶液を0℃まで冷却した。水(8mL)中の亜硝酸ナトリウム(1.52g)の溶液を30分かけて滴加した。反応物を3時間にわたって0℃にて撹拌し、次いで、25℃まで徐々に温め、一夜にわたって撹拌した。反応物をメチルtert−ブチルエーテルで2回抽出した。合わせた有機物をMgSOで乾燥し、濾過し、濃縮して油とした。
【0154】
この残渣を無水メタノール(8.0mL)に溶かした。塩化チオニル(1.10mL)を加え、反応物を30分にわたって還流した。次いで、反応物を室温まで冷却し、濃縮した。残渣を酢酸エチルと飽和重炭酸ナトリウムの間で分配した。層を分離し、水性を酢酸エチルで再び抽出した。合わせた有機物をMgSOで乾燥し、濾過し、濃縮して油とした。ヘプタン中0〜40%酢酸エチルのグラジエントを使用するカラムクロマトグラフィーにより、澄明な油として表題化合物(6b)(656mg、40%収率)が得られた。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 1.54 - 1.93 (6 H), 1.97 - 2.12 (2 H), 2.43 - 2.57 (1 H), 3.76
(3 H), 4.11 (1 H).
【0155】
中間体(6c):(S)−メチル 3−シクロブチル−2−(2−オキソ−5−(トリフルオロメチル)ピラジン−1(2H)−イル)プロパノエート
【0156】
【化40】

中間体(6b)(656mg)をジクロロメタン(8.0mL)に溶かし、0℃まで冷却した。2,6−ルチジン(0.912mL)を加え、続いて、20分かけて無水トリフルオロメタンスルホン酸(1.18mL)を滴加した。溶液を40分にわたって0℃にて撹拌した。反応物を濃縮し、得られた残渣をメチルtert−ブチルエーテル(30mL)で希釈し、0.25M HSOで3回洗浄した。有機物をMgSOで乾燥し、濾過し、濃縮すると、赤みがかった油が得られた。この材料を次のステップで直接使用した。
【0157】
リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(0.914mL、THF中1.0M)を、無水テトラヒドロフラン(4.5mL)中の中間体(1h)(165mg)の撹拌した溶液に加えた。この溶液を−5℃まで冷却し、35分にわたって撹拌した。次いで、テトラヒドロフラン(4.5mL)中の上で調製したトリフレート(292mg)の溶液を加えた。反応物を室温まで温め、2.5時間にわたって撹拌した。次いで、反応物を飽和塩化アンモニウムでクエンチし、塩水で希釈し、酢酸エチルで2回抽出した。有機物をMgSOで乾燥し、濾過し、濃縮すると、油が得られた。ヘプタン中0〜60%酢酸エチルのグラジエントで溶出するカラムクロマトグラフィーにより精製すると、澄明な油として望ましい生成物(6c)(222mg、73%収率)が得られた。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.58 - 1.75 (2 H), 1.76 - 1.91 (2 H), 1.92 - 2.02 (2 H), 2.04 (1
H), 2.12 - 2.23 (1 H), 2.23 - 2.31 (1 H), 3.77 (3 H), 5.37 (1 H), 7.63 (1 H),
8.15 (1 H). m/z 305.4 (M+H)+.
【0158】
中間体(6d):(S)−ベンジル 6−(3−シクロブチル−2−(2−オキソ−5−(トリフルオロメチル)ピラジン−1(2H)−イル)プロパンアミド)ニコチネート
【0159】
【化41】

中間体(6c)(222mg)をジクロロエタン(7.2mL)に溶かした。中間体(2e)(832mg)を加え、溶液を窒素でパージした。トリメチルアルミニウム(1.81mL、ヘキサン中2.0M)を滴加し、得られた反応混合物を5時間にわたって60℃まで加熱した。反応物を室温まで冷却し、16時間にわたって撹拌した。反応をクエンチするために、飽和ロッシェル塩6mLを加え、得られた混合物を30分にわたって撹拌した。溶液を酢酸エチルで希釈し、水で洗浄した。水性を酢酸エチルで再び抽出した。合わせた有機物を塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、濃縮して固体とした。ヘプタン中0〜50%酢酸エチルのグラジエントで溶出するカラムクロマトグラフィーにより、黄色の油として表題化合物(6d)(204mg、56%収率)が得られた。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.64 - 1.76 (3 H), 1.77 - 1.92 (2 H), 2.04 - 2.12 (2 H), 2.21 -
2.40 (2 H), 5.35 (1 H), 5.60 (1 H), 7.32 - 7.45 (5 H), 7.95 (1 H), 8.15 (1 H),
8.28 - 8.34 (2 H), 8.93 (1 H). m/z 501.5 (M+H)+.

【0160】
(実施例1)
(S)−N−(5−メチルピリジン−2−イル)−2−(2−オキソ−5−(トリフルオロメチル)ピラジン−1(2H)−イル)−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)プロパンアミド、(1)
【0161】
【化42】

2−アミノ−5−ピコリン(Sigma−Aldrich、St.Louis、MOから入手可能)(27.9mg)を無水トルエン3mL中で撹拌した。トリメチルアルミニウム溶液(0.129mL、トルエン中2.0M)を加え、反応物を35分にわたって室温にて撹拌した。無水1,2−ジクロロエタン2mL中の(1i−1)の溶液を加え、反応物を24時間にわたって80℃にて撹拌した。反応物を冷却し、飽和水性ロッシェル塩を加え、5分にわたって撹拌した。これをジクロロメタンで2回抽出した。合わせた有機層をMgSOで乾燥し、減圧下で濃縮した。得られた残渣を精製すると(Combi−flash、Redi−sep40g、0%酢酸エチル/ヘプタン〜100%酢酸エチル/ヘプタングラジエント)、白色の固体として実施例1(19.4mg)が得られた。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.66 (1 H), 8.12 (1 H), 8.07 (1 H), 7.91 (1 H), 7.48-7.53 (2 H),
5.63-5.70 (1 H), 3.92-3.95 (2 H), 3.28-3.33 (2 H), 2.03-2.27 (4 H), 1.85-1.90
(1 H), 1.62-1.68 (2 H), 1.25-1.55 (3 H); LCMS: C19H21F3N4O3
m/z 411.2 (M+H)+, 409.2 (M-H)-.
【0162】
(実施例2)
(S)−6−(3−シクロペンチル−2−(2−オキソ−5−(トリフルオロメチル)ピラジン−1(2H)−イル)プロパンアミド)ニコチン酸、(2)
【0163】
【化43】

中間体(2f)(30mg)をメタノール30mL中に取り、H−Cube自動水素化システム(ThalesNano Nanotechnology Inc.、Budapest、Hungaryから入手可能)上に注入した。水素化を、毎分1mLの流速で10%Pd/Cカートリッジ上で水素の連続流の下で行った。濾液を集めて濃縮した。得られた粗白色固体をジクロロメタンに溶かし、水で洗浄した。合わせた有機層をMgSOで乾燥し、減圧下で濃縮すると、白色の固体として実施例2 5mgが得られた。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.96 (1H), 8.48-8.52 (2H), 8.24 (1H), 7.87 (1H), 5.85 (1H),
2.21-2.01 (2 H), 1.46-1.84 (7 H), 1.16-1.27 (2 H). m/z 423 (M-H)-.
【0164】
(実施例3)
(S)−3−シクロペンチル−2−(2−オキソ−5−(トリフルオロメチル)ピラジン−1(2H)−イル)−N−(ピラジン−2−イル)プロパンアミド、(3)
【0165】
【化44】

アミノピラジン(89.6mg)を無水トルエン1.5mL中で撹拌した。トリメチルアルミニウム溶液(0.515mL、トルエン中2.0M)を加え、反応物を45分にわたって室温にて撹拌した。無水1,2−ジクロロエタン3mL中の(2d)150mgの溶液を加え、反応物を24時間にわたって80℃にて撹拌した。反応物を冷却し、飽和水性ロッシェル塩を加え、45分にわたって撹拌した。これをジクロロメタンで2回抽出した。合わせた有機層をMgSOで乾燥し、減圧下で濃縮した。得られた残渣を、調整剤としての水酸化アンモニウム0.03%を使う調整用HPLC(Waters XTerra MS C18 5μカラムを使用して、6分かけて5%HO/20%アセトニトリル〜HO/95%アセトニトリルの直線勾配、次いで、7.5分まで5%HO/95%アセトニトリル)により精製すると、白色の固体として実施例3(69.5mg)が得られた。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 9.89 (1 H), 9.42 (1 H), 8.45 (1 H), 8.36 (1 H), 8.24 (1 H), 8.10 (1
H), 5.95-5.99 (1 H), 2.26-2.34 (1 H), 1.96-2.03 (1 H), 1.47-1.87 (7 H),
1.16-1.27 (2 H); m/z 382.19 (M+H)+.
【0166】
(実施例4)
(S)−3−シクロペンチル−N−(5−メチルピリジン−2−イル)−2−(2−オキソ−5−(トリフルオロメチル)ピラジン−1(2H)−イル)プロパンアミド、(4)
【0167】
【化45】

2−アミノ−5−ピコリン(102mg)を無水トルエン1.5mL中で撹拌した。トリメチルアルミニウム溶液(0.527mL、トルエン中2.0M)を加え、反応物を45分にわたって室温にて撹拌した。無水1,2−ジクロロエタン3mL中の中間体(2d)150mgの溶液を加え、反応物を24時間にわたって80℃にて撹拌した。反応物を冷却し、飽和水性ロッシェル塩を加え、45分にわたって撹拌した。これをジクロロメタンで2回抽出した。合わせた有機層をMgSOで乾燥し、減圧下で濃縮した。得られた残渣を調製用HPLC(ギ酸0.1%調整剤を使って、1.0分まで95%水/5%アセトニトリル(初期条件)直線グラジエントを保持し、10.0分に5%水/95%アセトニトリルまで高め、12.5分まで5%水/95%アセトニトリルを保持する。調製用カラム:Phenomenex Luna(2)C−18 150×4.6mm、5μ)(Combi−flash、Redi−sep40g、0%酢酸エチル/ヘプタン〜100%酢酸エチル/ヘプタングラジエント)により精製すると、白色の固体として実施例3(91.8mg)が得られた。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 9.75 (1 H), 8.38 (1 H), 8.15 (1 H), 8.09 (1 H), 7.97-7.99 (1 H),
7.49-7.51 (1 H), 5.80-5.84 (1 H), 2.28 (3 H), 2.18-2.25 (1 H), 1.91-1.99 (1 H),
1.44-1.83 (7 H), 1.09-1.19 (2 H); m/z 395.1 (M+H)+.
【0168】
(実施例5)
(S)−6−(3−シクロヘキシル−2−(2−オキソ−5−(トリフルオロメチル)ピラジン−1(2H)−イル)プロパンアミド)ニコチン酸、(5)
【0169】
【化46】

中間体(3c)(30mg)をエタノール(1.0mL)および酢酸(30μL)に溶かし、炭素上10%パラジウム(3mg)を加えた。反応容器を水素ガス(15psi)で加圧し、2時間にわたって25℃にてかき混ぜた。次いで、反応物を濾過し、濃縮すると、白色の固体として(5)(21mg、84%収率)が得られた。1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ 1.03 (2 H), 1.18 (4 H), 1.58 - 1.77
(4 H), 1.77 - 1.86 (1 H), 1.99 - 2.16 (2 H), 5.83 - 5.93 (1 H), 8.09 - 8.18 (2
H), 8.20 (1 H), 8.29 (1 H) 8.89, (1 H). m/z 439.5 (M+H)+.
【0170】
(実施例6)
(S)−6−(2−(2−オキソ−5−(トリフルオロメチル)ピラジン−1(2H)−イル)−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)プロパンアミド)ニコチン酸、(6)
【0171】
【化47】

表題化合物は、出発材料として中間体(1j)を使用し、実施例5について記載されているものと同様の方法により調製した。1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ 1.23 - 1.48 (4 H), 1.62 (1
H), 1.65 - 1.74 (1 H), 2.01 - 2.13 (1 H), 2.13 - 2.24 (1 H), 3.31 - 3.38 (1 H),
3.81 - 3.92 (2 H), 5.90 (1 H), 8.06 (1 H), 8.09 - 8.13 (1 H), 8.24 (1 H), 8.26
(1 H), 8.85 (1 H). m/z 441.1 (M+H)+.
【0172】
(実施例7)
(S)−6−(4−メチル−2−(2−オキソ−5−(トリフルオロメチル)ピラジン−1(2H)−イル)ペンタンアミド)ニコチン酸、(7)
【0173】
【化48】

表題化合物は、出発材料として中間体(4c)を使用し、実施例(5)について記載されているものと同様の方法により調製した。1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ 0.92 - 1.04 (6 H), 1.99 (1
H), 2.10 - 2.21 (1 H), 5.80 - 5.92 (1 H), 8.08 - 8.15 (2 H), 8.20 (1 H), 8.27
(1 H), 8.29 (1 H), 8.88 (1 H). m/z 399.5 (M+H)+.
【0174】
(実施例8)
(S)−2−(6−(3−シクロペンチル−2−(2−オキソ−5−(トリフルオロメチル)ピラジン−1(2H)−イル)プロパンアミド)ピリジン−3−イル)酢酸、(8)
【0175】
【化49】

表題化合物は、出発材料として中間体(5c)を使用し、実施例(5)について記載されているものと同様の方法により調製した。1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ 1.11 - 1.23 (1 H), 1.24 -
1.37 (2 H), 1.46 - 1.58 (2 H), 1.58 - 1.72 (3 H), 1.78 (2 H), 2.09 - 2.27 (2
H), 3.60 (2 H), 5.77 (1 H), 7.70 (1 H), 7.98 (1 H), 8.11 (1 H), 8.19 - 8.26 (2
H). m/z 439.5 (M+H)+.
【0176】
(実施例9)
(S)−6−(3−シクロブチル−2−(2−オキソ−5−(トリフルオロメチル)ピラジン−1(2H)−イル)プロパンアミド)ニコチン酸、(9)
【化50】

表題化合物は、出発材料として中間体(6d)を使用し、実施例(5)について記載されているものと同様の方法により調製した。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 1.55 (1 H), 1.65 - 1.89 (5 H), 2.07 - 2.26 (2 H), 2.28 - 2.40 (1
H), 5.57 - 5.65 (1 H), 8.07 (1 H), 8.13 (1 H), 8.23 (1 H), 8.32 (1 H), 8.83 (1
H), 11.50 (1 H), 13.14 (1 H). m/z 411.5 (M+H)+.
【0177】
生物学的アッセイ
本発明の代表的化合物を生化学的アッセイ(アッセイ1またはアッセイ2)で評価し、それらのグルコキナーゼ活性化特性を特徴付けた。両アッセイにおいて利用される組み換えヒトグルコキナーゼタンパク質は、以下に記載されているように調製および精製した。
【0178】
β細胞グルコキナーゼHis−Tag増殖および誘導条件:pBCGK(CまたはN His)ベクターを含有するBL21(DE3)細胞(Invitrogen Corporation、Carlsbad、CA)を、OD600が0.6〜1.0の間になるまで37℃にて増殖させた(2XYT中)。発現は、細胞に0.1〜0.2mMの最終濃度までイソプロピルチオガラクトシドを添加することにより誘導し、次いで、23℃にて一夜にわたってインキュベートした。翌日、細胞を、4℃にて15分にわたる5000rpmでの遠心分離によって回収した。細胞ペレットは、今後の精製のために−80℃にて保存した。
【0179】
β細胞グルコキナーゼHis−Tag精製条件:Ni−NTA(Quigan、Germantown、MD)カラム(15〜50mL)を分離に使用した。2つの緩衝液、1)溶解/ニッケル平衡および洗浄緩衝液ならびに2)ニッケル溶出緩衝液を調製した。溶解/平衡/洗浄緩衝液は、最終濃度として、pH7.5の25mM HEPES緩衝液、250mM NaCl、20mMイミダゾール、および14mM β−メルカプトエタノールとして調製した。溶出緩衝液は、最終濃度として、pH7.5の25mM HEPES緩衝液、250mM NaCl、400mMイミダゾール、および14mM β−メルカプトエタノールとして調製した。緩衝液は、使用前に各々を0.22μmフィルターで濾過した。細胞ペレット(1L培養液)を、溶解/平衡緩衝液300mLに再懸濁した。次いで、細胞をMicrofluidics Model 110Yミクロフルイダイザー(Microfluidics Corporation、Newton、MA)で溶解した(3回)。スラリーを、4℃にて45分にわたり40,000rpmでBeckman Coulter Model LE−80K超遠心分離機(Beckman Coulter、Fullerton、CA)で遠心分離した。上清を、冷やしたフラスコに移した。20μlの体積をゲル分析のために確保した。Pharmacia AKTA(GMI,Inc.、Ramsey、MN)精製システムを分離のために使用した。プライムライン(prime line)を溶解/平衡緩衝液でパージした。Ni−NTAカラムを、5mL/分の流速にて溶解/平衡緩衝液200mLで平衡化した。上清を4mL/分にてカラムにロードし、フロースルーをフラスコに集めた。非結合タンパク質を、紫外線がベースラインに達するまで5mL/分の流速にて溶解/平衡緩衝液で洗浄した。次いで、タンパク質を、320mLかけてイミダゾールグラジエント20mM〜400mMを介してイミダゾール溶出緩衝液でカラムから溶出した。次いで、カラムを、溶出緩衝液80mLであらゆる追加タンパク質を取り除いた。溶出画分は、合計50サンプルを得るために各8mLとした。画分を、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミド(SDS−PAGE)により分析し、関心のあるタンパク質を含有する画分をプールし、窒素ガス(60psi)下で10,000分子量カットオフ(MWCO)Milipore膜(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)付きの限外濾過セルを使用して10mLまで濃縮した。タンパク質を、Sedex 75蒸発光散乱検出器(320mL)(Amersham Pharmacia、Uppsala、Sweden)を使用するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によりさらに精製した。SECは、25mM HEPES pH7.0、50mM NaCl、および5mMジチオスレイトールを含有するサイジング緩衝液(sizing buffer)450mLで平衡化した。次いで、濃縮されたタンパク質をSECにロードし、サイジング緩衝液400mLによる溶出を0.5mL/分にて一夜にわたって行った。溶出分画は各5mLとした。画分をSDS−PAGEにより分析し、タンパク質含有画分をプールした。濃度を、Bradford Assay/BSA Standardを使用して測定した。精製したタンパク質は、−80℃にて少量ずつに分けて保存した。
【0180】
アッセイ1:5mMグルコースにおける活性化薬効力および最大活性化の評価
完全長グルコキナーゼ(β細胞アイソフォーム)をN末端にてHisタグ化し、上記のNiカラムと、続く、サイズ排除クロマトグラフィーにより精製した。グルコースはCalbiochem(San Diego、CA)から入手し、他の試薬はSigma−Aldrich(St.Louis、MO)から購入した。
【0181】
すべてのアッセイは、室温にてSpectramax PLUS分光光度計(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)を使用してCorning384ウェルプレート中で行った。最終アッセイ体積は40μLとした。このアッセイにおいて使用される緩衝液条件は、下記の通りである:50mM HEPES、5mMグルコース、2.5mM ATP、3.5mM MgCl、0.7mM NADH、2mMジチオスレイトール、1単位/mLピルビン酸キナーゼ/乳酸脱水素酵素(PK/LDH)、0.2mMホスホエノールピルビン酸、および25mM KCl。緩衝液pHは7.1とした。ジメチルスルホキシド溶液中の試験化合物を緩衝液に加え、7.5分にわたってプレートシェーカーにより混ぜた。アッセイに導入されるジメチルスルホキシドの最終濃度は0.25%であった。
【0182】
グルコキナーゼを緩衝液混合物に加え、化合物の存在および非存在下で反応を開始した。反応は、NADHの枯渇に起因する340nmにおける吸光度によりモニターした。初期反応速度は、0〜300秒の直線時間経過の勾配により測定した。最大活性化のパーセンテージは、下記式により計算した:
%最大活性化=(Va/Vo−1)×100;
式中、VaおよびVoの各々は、それぞれ試験化合物の存在および非存在下での初期反応速度と定義される。
【0183】
EC50(最大半減有効濃度)および%最大活性化を決定するため、化合物を3倍ずつジメチルスルホキシド中で段階希釈した。グルコキナーゼ活性は、化合物濃度の関数として測定した。データを下記の式にフィットさせ、EC50および%最大活性化値を得た:
Va/Vo=1+(%最大活性化/100)/(1+EC50/化合物濃度)。
【0184】
上に定義されているような生物学的アッセイ1から得られる実施例1〜4についてのEC50(μM)およびパーセント最大活性化データを表1に示す。
【0185】
【表1】

【0186】
アッセイ2:複数のグルコース濃度におけるマトリックスアッセイでの活性化薬効力の評価
Bebernitzおよび共同研究者(Bebernitz,G.R.ら、J.Med.Chem.2009、52、6142〜6152)により記載されているように、グルコキナーゼ活性化薬の効力ならびにグルコキナーゼ酵素のKm(グルコースについて)およびVmaxのその調節作用は、活性化薬とグルコース濃度の複数の組合せを同時に評価するマトリックスアッセイを使用して特徴付けることができる。この方法の適応を利用し、本発明の代表的な化合物を、β−NADHの枯渇を介してグルコキナーゼ活性を検出する共役酵素アッセイ系で22の異なる濃度および16の異なるグルコース濃度において評価した。読出しは340nmにおける吸光度であり、ΔA340/Δ時間として記録される。
【0187】
初めに、1.0L体積のアッセイ緩衝液(5倍(5×)最終濃度にて)を下記の試薬を利用して調製した(使用される試薬、試薬の式量、試薬の5×濃度([5X])、希釈後の試薬の最終濃度([Final])、および試薬の質量):
HEPES、FW=238.3g/mol、[5X]=250mM、[Final]=50mM、59.58g;MgCl、FW=203.3g/mol、[5X]=17.5mM、[Final]=3.5mM、3.56g;KCl、FW=74.55g/mol、[5X]=125mM、[Final]=25mM、9.32g;およびBSA、n/a、[5X]=0.5%、[Final]=0.1%。
【0188】
化合物を、グルコースの16の濃度に対して試験する。グルコース滴定は、最終濃度の2倍(2×)で行う。使用される最終グルコース濃度は、0mM、0.05mM、0.1mM、0.3mM、0.625mM、1.25mM、2.5mM、5mM、7.5mm、10mM、15mM、20mM、40mM、60mM、80mMおよび100mmである。プレートは4℃にて保存した。本発明の式(I)のグルコキナーゼ活性化薬化合物は、22の異なる化合物濃度にて評価する。用いられる最終化合物濃度は、0.001M、0.0005M、0.00025M、0.000125M、0.0000625M、0.00003125M、0.000015625M、7.81×10−6M、3.91×10−6M、1.95×10−6M、9.77×10−7M、4.88×10−7M、2.44×10−7M、1.22×10−7M、6.10×10−8M、3.05×10−8M、1.53×10−8M、7.63×10−9M、3.81×10−9M、1.91×10−9M、9.54×10−10Mおよび4.77×10−10Mである。
【0189】
アッセイ試薬および試薬の最終濃度は、下記の通りである(試薬、最終濃度):GK、10nM;緩衝液、1×;ddHO;DTT、2mM;PEP、0.8mM;NADH、0.7mM;ATP、2.5mM;およびPK/LDH、8U/mL。DTTは、冷凍した1Mストックとして保存する。PEP、NADH、およびATPは、粉末として秤量する。アッセイ試薬は、毎日新たに作製し、2つの別々の構成成分とする。
【0190】
酵素ミックスおよび基質ミックスを下記の通り概説する。酵素ミックスは、GK、緩衝液(5×)、水およびDTTからなる。基質ミックスは、緩衝液(5×)、水、DTT、PEP、NADH、ATPおよびPK/LDHからなる。各ミックスは、使用される最終濃度の4倍濃度で作製する。
【0191】
アッセイプロトコル:アッセイ体積は、1ウェル当たり40μL:グルコースから20μL、酵素から10μL、および基質から10μLである。最終アッセイプレートは、DMSO中の化合物溶液または対照1μLを有する。複数のリーダー上で同時に複数のプレートを実行する場合、変動を減らすために同じリーダー上で三つ組みを読み取る。
【0192】
アッセイを行うための手順は、下記の通りである:各ウェルにグルコース20μLを加え、遠心分離する(1000rpm、10秒)。酵素ミックス10μLを加える。7分にわたって室温(22℃)にてプレートシェーカー(毎分900回転)上でプレートを振盪させ、化合物に混ぜる。基質ミックス10μLを加える。室温にて短時間、約10秒振盪させて混ぜ、遠心分離して泡を除去する。残留する泡についてプレートを調べ、それらをエタノール蒸気で除去する。アッセイプレートを、SoftMaxPro4.8ソフトウェアを使用してSpectraMaxリーダー(Molecular Devices)で読み取る。リーダーは、波長340nmにて吸光度を読み取り、動力学モードで、10分にわたって30秒ごとに読み取るように設定されるべきである。オートミックスおよびブランキングはオフとし、自動較正は、1回に設定する。
【0193】
これらのデータを、基質と活性化薬の各組合せについて観察される速度に曲線をフィットさせることにより分析した。これにより、活性化薬の各濃度におけるグルコキナーゼのKm(グルコースについて)およびVmaxを決定することができた。活性化薬の各濃度について得られたKm値をプロットし、曲線をフィットさせると、酵素のKmの50%減少が得られる化合物の濃度として決定される所与の活性化薬についての固有の効力を決定することができた。これらの固有EC50値を、表2に代表的な化合物について報告する。
【0194】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

の化合物、または薬学的に許容できるその塩
(式中、
は、H、(C〜C)アルキル、またはハロ置換(C〜C)アルキルであり、
は、Hまたは(C〜C)アルキルであり、
は、1または2個のNヘテロ原子を含有する5または6員ヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールは、R3aで置換されていてもよく、R3aは、(C〜C)アルキル、−CF、シアノ、(C〜C)アルコキシ、ハロ、アミノ、(C〜C)アルキルアミノ−、ジ−(C〜C)アルキルアミノ−、−C(O)OR3b、−(C〜C)アルキルC(O)OR3b、−C(O)NR3b3c、またはアリール(C〜C)アルキル−であり、R3bおよびR3cは、各々独立して、Hまたは(C〜C)アルキルであり、前記アリール(C〜C)アルキルのアリールは、(C〜C)アルキル、−CF、シアノ、(C〜C)アルコキシ、またはハロで置換されていてもよく、
は、(C〜C)アルキルまたは
【化2】

であり、
Wは、−CHまたはOであり、
mは、0、1または2である)。
【請求項2】
が、H、メチル、エチル、−CHF、−CHF、または−CFであり、Rが、H、メチル、またはエチルである、請求項1に記載の化合物、または薬学的に許容できるその塩。
【請求項3】
が、H、メチル、エチル、−CHF、または−CFであり、Rが、Hまたはメチルであり、Rが、R3aで各々が置換されていてもよいピラゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニルもしくはピラジニルであり、R3aが、(C〜C)アルキル、−CF、シアノ、(C〜C)アルコキシ、ハロ、アミノ、(C〜C)アルキルアミノ−、ジ−(C〜C)アルキルアミノ−、−C(O)OR3b、−(C〜C)アルキルC(O)OR3b、−C(O)NR3b3c、またはアリール(C〜C)アルキル−であり、R3bおよびR3cが、各々独立して、Hまたは(C〜C)アルキルであり、前記アリールアルキルのアリールが、(C〜C)アルキル、−CF、シアノ、(C〜C)アルコキシ、またはハロで置換されていてもよい、請求項2に記載の化合物、または薬学的に許容できるその塩。
【請求項4】
が、−CHFまたは−CFであり、Rが、式(a)の基、式(b)の基、または式(c)の基
【化3】

であり、
3aが、メチル、エチル、シアノ、メトキシ、エトキシ、F、Cl、アミノ、−NHCH、−NHCHCH、−N(CH、−COH、−CHCOH、−C(O)NHCH、−C(O)N(CH、またはベンジルであり、前記ベンジルが、メチル、エチル、メトキシ、またはエトキシで置換されていてもよい、請求項3に記載の化合物、または薬学的に許容できるその塩。
【請求項5】
式(1E)
【化4】

の請求項1に記載の化合物、または薬学的に許容できるその塩。
【請求項6】
が、トリフルオロメチルである、請求項5に記載の化合物、または薬学的に許容できるその塩。
【請求項7】
が、メチル、−COHまたは−CHCOHで各々が置換されていてもよいピリジニルもしくはピラジニルである、請求項5に記載の化合物、または薬学的に許容できるその塩。
【請求項8】
が、イソプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはテトラヒドロピラニルである、請求項5に記載の化合物、または薬学的に許容できるその塩。
【請求項9】
が、トリフルオロメチルであり、Rが、メチル、−COHまたは−CHCOHで各々が置換されていてもよいピリジニルもしくはピラジニルであり、Rが、イソプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはテトラヒドロピラニルである、請求項5に記載の化合物、または薬学的に許容できるその塩。
【請求項10】
が、ピラジン−2−イル、4−メチルピリジン−2−イル、4−カルボキシルピリジン−2−イルまたは4−(カルボキシルメチル)ピリジン−2−イルである、請求項9に記載の化合物、または薬学的に許容できるその塩。
【請求項11】
(S)−N−(5−メチルピリジン−2−イル)−2−(2−オキソ−5−(トリフルオロメチル)ピラジン−1(2H)−イル)−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)プロパンアミド、
(S)−6−(3−シクロペンチル−2−(2−オキソ−5−(トリフルオロメチル)ピラジン−1(2H)−イル)プロパンアミド)ニコチン酸、
(S)−3−シクロペンチル−2−(2−オキソ−5−(トリフルオロメチル)ピラジン−1(2H)−イル)−N−(ピラジン−2−イル)プロパンアミド、
(S)−3−シクロペンチル−N−(5−メチルピリジン−2−イル)−2−(2−オキソ−5−(トリフルオロメチル)ピラジン−1(2H)−イル)プロパンアミド、
(S)−6−(3−シクロヘキシル−2−(2−オキソ−5−(トリフルオロメチル)ピラジン−1(2H)−イル)プロパンアミド)ニコチン酸、
(S)−6−(2−(2−オキソ−5−(トリフルオロメチル)ピラジン−1(2H)−イル)−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)プロパンアミド)ニコチン酸、
(S)−6−(4−メチル−2−(2−オキソ−5−(トリフルオロメチル)ピラジン−1(2H)−イル)ペンタンアミド)ニコチン酸
(S)−2−(6−(3−シクロペンチル−2−(2−オキソ−5−(トリフルオロメチル)ピラジン−1(2H)−イル)プロパンアミド)ピリジン−3−イル)酢酸、および
(S)−6−(3−シクロブチル−2−(2−オキソ−5−(トリフルオロメチル)ピラジン−1(2H)−イル)プロパンアミド)ニコチン酸
からなる群から選択される請求項10に記載の化合物、または薬学的に許容できるその塩。
【請求項12】
治療有効量の請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物、または薬学的に許容できるその塩、および薬学的に許容できる賦形剤、希釈剤、または担体を含む医薬組成物。
【請求項13】
抗糖尿病薬および抗肥満薬からなる群から選択される少なくとも1つの他の追加の医薬剤をさらに含む、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
哺乳動物において2型糖尿病および糖尿病関連障害の進行または発現を治療するか遅らせるための方法であって、そのような治療を必要としている哺乳動物に、治療有効量の請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物、または薬学的に許容できるその塩を投与するステップを含む方法。
【請求項15】
哺乳動物において2型糖尿病および糖尿病関連障害の進行または発現を治療するか遅らせるための方法であって、そのような治療を必要としている哺乳動物に、請求項12から13のいずれか一項に記載の医薬組成物を投与するステップを含む方法。

【公表番号】特表2012−515760(P2012−515760A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−547003(P2011−547003)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【国際出願番号】PCT/IB2010/050035
【国際公開番号】WO2010/084428
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】