説明

置換ピリミジン誘導体

【課題】 CCケモカインレセプター4(CCR4)が関与する炎症性疾患、アレルギー疾患、自己免疫疾患等の予防又は治療剤としてに有用な化合物を提供すること。
【解決手段】 置換ピペリジノ等の飽和6員ヘテロ環基を2位に有し、置換アミノ基を4位に有し、かつ5位又は6位の一方に環基を有するピリミジン誘導体が、CCR4の機能調節剤として良好な活性を有すること見出し、特に皮膚炎等の炎症性疾患治療剤と有用であることを知見して、本発明を完成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な置換ピリミジン誘導体、及び、それを有効成分とする医薬、特に炎症性疾患治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞遊走因子であるケモカインは構造的な特徴により大きくCXC/αケモカインとCC/βケモカインの二種に分類される。また、これらケモカインの受容体は7回膜貫通Gタンパク質共役型受容体ファミリーに属し、CXCケモカインレセプターとCCケモカインレセプターから構成されている(Pharmacological Reviews, 52, 145, 2000)。
CCケモカインレセプター4(CCR4)は、Tリンパ細胞及び胸腺からクローニングされ(Biochemical and Biophysical Research Communications, 218, 337, 1996、European Journal of Immunology, 26, 3021, 1996)、当初、Th2タイプといわれるT細胞に主に発現していると報告されていた(Journal of Experimental Medicine, 187, 875, 1998)。しかし、その後の詳細な解析によりCCR4はTh1及びTh2のエフェクター・メモリーT細胞に広く存在することが示された(Journal of Immunology, 166, 103, 2001、The Journal of Clinical Investigation, 108, 1331, 2001)。更に最近の研究では、CCR4はほとんどすべての皮膚指向性のT細胞(Nature, 400, 776, 1999)及び単球・マクロファージ、樹状細胞、NK細胞に存在することも明らかにされている(Arthritis & Rheumatism, 44, 1022, 2001)。
CCケモカインであるThymus and activation-regulated chemokine(TARC)とMacrophage-derived chemokine(MDC)はCCR4の特異的なリガンドである(Journal of Biological Chemistry, 272, 15036, 1997、Journal of Biological Chemistry, 273, 1764, 1998)。TARCはT細胞遊走因子として(Journal of Biological Chemistry, 271, 21514, 1996)、またMDCは単球・マクロファージ・NK細胞の遊走因子として発見され(Journal of Experimental Medicine, 185, 1595, 1997)、どちらのケモカインも炎症性ケモカインと恒常性ケモカインの特徴を併せ持つことが知られている(Immunology Today, 20, 254, 1999)。
CCR4とそのリガンドであるTARC及びMDCは、炎症性疾患、アレルギー疾患、自己免疫疾患等の様々な疾患に関与することが数多くの報告により示唆されている。例えば、喘息(The Journal of Clinical Investigation, 107, 1357, 2001)、アトピー性皮膚炎(Journal of Investigative Dermatology, 115, 640, 2000)、乾癬(Laboratory Investigation, 81, 335, 2001)、関節リウマチ(Arthritis & Rheumatism, 44, 2750, 2001)、炎症性腸疾患(Clinical & Experimental Immunology, 132, 332, 2003)等が挙げられる。従って、CCR4の機能調節剤はこれらの疾患等の予防又は治療剤として期待される。上記炎症性疾患、アレルギー疾患、自己免疫疾患等の予防又は治療剤としては、ステロイド剤等種々の薬剤が使用されているが、その治療効果と副作用の点から、新たな作用機序に基づく薬剤の開発が切望されている。
【0003】
下記一般式(I)で表される5-シアノピリミジン誘導体がTARC機能調節等に基づく抗炎症作用を有することが報告されている(特許文献1)。
【化2】

(上記式(I)中、R1及びR3は、同一または異なって、水素原子、−NR4R5 [R4及びR5は、同一または異なって、水素原子、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアラルキル等を表す] 等を表し、R2は上記式(II)等を表す。ここに、Qは窒素原子または−CH−を、Aは短結合、カルボニル等を、R7aは置換もしくは非置換の脂環式複素環基等を、maは0〜2の整数を、yaは0〜置換可能な整数を、naは0〜4の整数を各々表す。詳細は当該公報参照。)
【0004】
【特許文献1】国際公開第03/082855号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者等は、従来のステロイドに代わり炎症性疾患、アレルギー疾患、自己免疫疾患等の、安全かつ強力な予防・治療薬となり得る、CCR4の機能調節作用を有する医薬組成物を創製することを目的として研究を行った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、CCR4の機能調節作用を有する化合物につき鋭意検討した。その結果、置換ピペリジノ等の飽和6員ヘテロ環基を2位に有し、4位に置換アミノ基を有し、かつ、5位または6位の一方に環基を有するピリミジン誘導体がCCR4の機能調節剤として有用であることを知見し、本発明を完成した。本発明化合物はピリミジン環5位又は6位に環基を有することを特徴としており、5位にシアノ基を有する前記特許文献1記載の化合物とは基本構造が異なる。
即ち、本発明は、下記一般式(I)で示される新規な置換ピリミジン誘導体又はその製薬学的に許容される塩と製薬学的に許容される担体とからなる医薬組成物、殊に喘息、アトピー性皮膚炎及び関節リウマチ等の予防・治療薬として有効な医薬組成物に関する。
【0007】
【化3】

(式中の記号は以下の意味を示す。
A:置換されていてもよいアリール又は置換されていてもよいシクロアルキル、
B:置換されていてもよい単環若しくは2環式炭化水素環基、又は置換されていてもよい単環若しくは2環式ヘテロ環基、
R1:-R0、ハロゲン、-OH、-OR0、ハロゲノ低級アルキル、
X:CR3又はN、
Y:CR4又はN、但し、XがCR3のときYはNを、XがNのときYはCR4を示す、
Z:CR5R6、NR7又はO、
R2:同一又は互いに異なって、-R0、ハロゲン、-OH、-OR0、ハロゲノ低級アルキル、-R00-OH、-CON(R8)(R9)、-R00-O-R0、-R00-N(R8)(R9)、-R00-CN、-R00-N(R8)-CO-R0、-R00-N(R8)-SO2-R0、-R00-O-CO-R0、-R00-CO2-R0又は-R00-CON(R8)(R9)、
R3、R4、R8及びR9:同一又は互いに異なって、-H又は-R0
R5及びR6:同一又は互いに異なって、H又はR2に記載の基、或いはR5及びR6が一体となってオキソ、
R7:-H、-R0、-R00-OH、-CON(R8)(R9)、-R00-O-R0、-R00-N(R8)(R9)、-R00-CN、-R00-N(R8)-CO-R0、-R00-N(R8)-SO2-R0、-R00-O-CO-R0、-R00-CO2-R0又は-R00-CON(R8)(R9)、
R0:低級アルキル、
R00:低級アルキレン、
m:0、1、2、3又は4、
j:0、1、2又は3、
k:0、1又は2。以下同様。)
【発明の効果】
【0008】
本発明の置換ピリミジン誘導体は、CCR4或いはTARC及び/又はMDCの機能調節作用を有することから、種々の炎症性疾患、アレルギー疾患、自己免疫疾患等〔例えば、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、花粉症、皮膚炎(アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎)、乾癬、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、インスリン依存型糖尿病(IDDM)、臓器移植時の拒絶反応、癌、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)、間質性膀胱炎、敗血症、疼痛の予防・治療薬として有用である。特に、喘息、アトピー性皮膚炎又は関節リウマチの予防・治療薬として期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書中、「アルキル」及び「アルキレン」とは、直鎖状又は分枝状の炭化水素鎖を意味する。「低級アルキル」は、好ましくは炭素数1〜6個のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜4個のアルキル基、更に好ましくはメチル及びエチルである。「低級アルキレン」は、上記「低級アルキル」の任意の水素原子1個を除去してなる二価基を意味し、好ましくは炭素数1〜4個のアルキレンであり、より好ましくはメチレン、エチレン及びプロピレンである。
「ハロゲン」は、F、Cl、Br及びIを示す。「ハロゲノ低級アルキル」とは、好ましくは、1個以上のハロゲンで置換された炭素数1〜6個のアルキルを意味し、より好ましくは1個以上のFで置換されたC1-6アルキルであり、更に好ましくは、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル及びトリフルオロエチルである。
【0010】
「シクロアルキル」は、好ましくは炭素数3〜10個のシクロアルキルであり、架橋されていてもよい。より好ましくはシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びアダマンチルである。「アリール」は、炭素数6〜14個の芳香族炭化水素基を意味し、「シクロアルキル」と縮環したフェニル基を含む。好ましくはフェニル及びナフチルであり、より好ましくはフェニルである。「単環若しくは2環式炭化水素環基」は、単環若しくは2環式の「シクロアルキル」及び単環若しくは2環式の「アリール」の両方を含む。
【0011】
「単環式ヘテロ環基」とは、O、S及びNから選択されるヘテロ原子を1〜4個含有する単環3〜8員、好ましくは5〜7員環基であり、不飽和環である単環式ヘテロアリール、飽和環である単環式ヘテロシクロアルキル、及び前記単環式ヘテロアリールが部分的に水素化された環基を含む。単環式ヘテロアリールとして好ましくは、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、イミダゾリル、ピロリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チエニル、フリル、チアゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル等が挙げられる。単環式ヘテロシクロアルキル、又はヘテロアリール基が部分的に水素化された環基として好ましくは、ピペリジル、ピロリジニル、ピペラジニル、アゼパニル、ジアゼパニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、モルホリニル等が挙げられる。
「2環式ヘテロ環基」は、前記の単環式ヘテロ環同士、又はベンゼン環と単環式ヘテロ環が縮環した環基であり、好ましくは、インドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、インダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キノリル、イソキノリル、キナゾリル、キノキサリニル、ジヒドロベンゾフラニル、テトラヒドロキノリル、及びインドリニル等が挙げられる。
前記「単環式ヘテロ環基」及び「2環式ヘテロ環基」において、環原子であるS又はNが酸化されオキシドやジオキシドを形成してもよい。また、ヘテロシクロアルキル、及びヘテロアリールが部分的に水素化された環基においては、任意の炭素原子がオキソ基で置換されていてもよい。
【0012】
「置換されていてもよい」とは、「無置換」あるいは「同一又は異なる置換基を1〜5個有していること」を示す。
「置換されていてもよいアリール」及び「置換されていてもよいシクロアルキル」における置換基は、好ましくは、ハロゲン、低級アルキル、-OH、-O-低級アルキル、-CN、-S-低級アルキル、NO2であり、更に好ましくは、ハロゲン、低級アルキル、-OH、-O-低級アルキル、-CN、より更に好ましくは、ハロゲン、-CNである。
「置換されていてもよい単環若しくは2環式炭化水素環基」及び「置換されていてもよい単環若しくは2環式ヘテロ環基」における置換基は、好ましくはハロゲン、低級アルキル、ハロゲノ低級アルキル、-OH、-O-低級アルキル、-CN、NO2、NH2であり、更に好ましくは、ハロゲン、低級アルキル、ハロゲノ低級アルキルである。
【0013】
本発明の一般式(I)における好ましい化合物は以下の化合物又はその製薬学的に許容される塩である:
Aとして好ましくは、置換されていてもよいアリール;
Bとして好ましくは、置換されていてもよい単環式ヘテロアリール又は置換されていてもよいフェニル;
R2としては、ハロゲノ低級アルキル、-R00-OH又は-R00-O-R0が好ましい;
jとして好ましくは0又は1、より好ましくは0である;
kとして好ましくは0又は1、より好ましくは1である;
ZとしてはCH2又はOが好ましい。
【0014】
本発明の化合物(I)は置換基の種類によっては幾何異性体や互変異性体が存在する場合があるが、本発明にはこれらの異性体の分離したもの、あるいは混合物が包含される。
また、化合物(I)は不斉炭素原子を有する場合があり、これに基づく(R)体、(S)体の光学異性体が存在しうる。本発明はこれらの光学異性体の混合物や単離されたものを全て包含する。
更に、化合物(I)には、薬理学的に許容されるプロドラッグも含まれる。薬理学的に許容されるプロドラッグとは、加溶媒分解により又は生理学的条件下で本発明のNH2、OH、CO2H等に変換できる基を有する化合物である。プロドラッグを形成する基としては、Prog. Med., 5, 2157-2161 (1985)や「医薬品の開発」(廣川書店、1990年)第7巻 分子設計163-198に記載の基が挙げられる。
【0015】
化合物(I)は、酸付加塩又は置換基の種類によっては塩基との塩を形成する場合もある。かかる塩としては、製薬学的に許容される塩であり、具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マイレン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の有機酸との酸付加塩、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の無機塩基、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、リジン、オルニチン等の有機塩基との塩やアンモニウム塩等が挙げられる。
さらに、本発明は、化合物(I)及びその塩の各種の水和物や溶媒和物及び結晶多形の物質を含む医薬組成物をも包含する。
【0016】
(製造法)
本発明の有効成分である化合物(I)及びその製薬学的に許容される塩は、その基本骨格あるいは置換基の種類に基づく特徴を利用し、種々の公知の合成法を適用して製造することができる。その際、官能基の種類によっては、当該官能基を原料乃至中間体の段階で適当な保護基で保護、又は当該官能基に容易に転化可能な基に置き換えておくことが製造技術上効果的な場合がある。このような官能基としては例えばアミノ基、水酸基、カルボキシル基等であり、それらの保護基としては例えばグリーン(T. W. Greene)及びウッツ(P. G. M. Wuts)著、「Protective Groups in Organic Synthesis(第3版、1999年)」に記載の保護基を挙げることができ、これらを反応条件に応じて適宜選択して用いればよい。このような方法では、当該保護基を導入して反応を行った後、必要に応じて保護基を除去、あるいは所望の基に転化することにより、所望の化合物を得ることができる。
また、化合物(I)のプロドラッグは上記保護基と同様、原料乃至中間体の段階で特定の基を導入、あるいは得られた化合物(I)を用い反応を行うことで製造できる。反応は通常のエステル化、アミド化、脱水等、当業者により公知の方法を適用することにより行うことができる。
【0017】
第1製法
【化4】

(式中L1は脱離基を示す。以下同様。)
本製法は2位に脱離基を有するピリミジン誘導体(II)に環状アミン化合物(III)をイプソ置換させ、本発明化合物(I)を製造する方法である。
L1が示す脱離基としては、ハロゲン、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基等が挙げられる。反応は化合物(II)を反応に不活性な溶媒中、塩基又は酸(好ましくは塩化水素)の存在又は非存在下、当量あるいは過剰量の(III)を用いて冷却下〜加熱還流下に通常1時間〜5日間行なわれる。溶媒としては反応に不活性であれば特に限定はされないが、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン等のエーテル類、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール等のアルコール類、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)、2,6-ルチジン等の有機塩基、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、tert-ブトキシカリウム等の無機塩基が挙げられる。
【0018】
第2製法
一般式(I)における環基A又はB、或いは基R2上に種々の置換基を有する化合物は、本発明化合物(I)を原料として、当業者にとって自明である反応、又はこれらの変法を用いることにより、容易に合成することができる。例えば以下の反応が適用できる。
(1)アミド化及びエステル化
水酸基又はアミノ基を有する本発明化合物を原料とし、カルボン酸又はそれらの反応性誘導体を使用することにより、種々のアミド化合物又はエステル化合物が製造できる。反応は、例えば日本化学会編「実験化学講座(第4版)」22巻(1992年)(丸善)等に記載の方法を参考に実施できる。
(2)還元
NH2基を有する本発明化合物は、ニトロ基を有する化合物の還元反応により製造できる。例えば日本化学会編「実験科学講座(第4版)」26巻(1992年)(丸善)等に記載の方法で行なうことができる。
【0019】
原料合成
【化5】

(式中L2は-Cl又は-Brを、Wは-Br、-Cl、-I又は-O-SO2-CF3を、Qは-B(OH)2、-B(O-低級アルキル)2又は-SnBu3を示す。以下同様。)
原料化合物(II)はピリミジン誘導体(IV)をアミン化合物(V)とイプソ置換反応を行なった後、付加体(VI)と化合物(VII)とを用いてカップリング反応を行うことにより製造できる。イプソ置換反応は前記第1製法と同様の条件が適用できる。また、カップリング反応は例えば日本化学会編「実験科学講座(第4版)」25巻(1992年)(丸善)記載の方法により実施することができる。
【0020】
【化6】

(式中R10は低級アルキル基を示す。以下同様。)
式(II)中、L1がメチルスルフィニル基である化合物(IIa)は上記の反応経路により製造することができる。ここで、R10の低級アルキルとしてはメチル及びエチルが好ましい。
上記反応経路中、カップリング反応は前記の日本化学会編「実験科学講座(第4版)」25巻(1992年)(丸善)記載の方法により実施することができる。アルキル化は、ヨウ化メチル、ジメチル硫酸等のアルキル化剤を用いて、芳香族炭化水素類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、N,N-ジメチルアニリン等の溶媒、又はそれらの混合溶媒中で行う。ハロゲン化はオキシ塩化リン、五塩化リン、塩化チオニル等の塩素化剤、又はオキシ臭化リン等の臭素化剤を当量〜大過剰用い、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類等の反応に不活性な溶媒中又は無溶媒で実施する。イプソ置換反応は前記第1製法と同様の条件を適用することができる。酸化は、スルフェニル基の酸化反応の常法を用いればよく、例えば日本化学会編「実験科学講座(第4版)」23巻(1992年)(丸善)記載の方法が挙げられる。
【0021】
【化7】

(式中Pはアミノ基の保護基を示す。以下同様。)
環状アミン化合物(IIIa)及び(IIIb)は、上記式に示す方法により製造できる。保護基P及び脱保護反応は、前述の「Protective Groups in Organic Synthesis(第3版)」のアミノ基の脱保護反応等に記載の方法を適用することができる。また、アルキル化は、還元的アルキル化の常法を用いることができ、例えば日本化学会編「実験化学講座(第4版)」20巻(1992年)(丸善)等に記載の方法が挙げられる。
【0022】
【化8】

環状アミン化合物(IIIc)及び(IIId)は、上記式に示す方法により製造できる。
その他、種々の環状アミン化合物(III)は、例えば、水酸基を有する化合物より、アルキル化剤(アルキルハライドやスルホン酸アルキルエステル等)によるアルキル化又は光延反応によりアルキルエーテル基、フッ素化剤(三フッ化ジエチルアミノ硫黄や三フッ化モルホリノ硫黄等)によりフルオロ基、フタルイミドとの光延反応によりフタルイミド基を有する化合物へと、それぞれ変換できる。
【0023】
上記各製法により得られた反応生成物は、遊離化合物、その塩あるいは水和物など各種の溶媒和物として単離され、精製される。塩は通常の造塩処理に付すことにより製造できる。
単離、精製は、抽出、濃縮、留去、結晶化、濾過、再結晶、各種クロマトグラフィー等通常の化学操作を適用して行われる。
各種異性体は異性体間の物理化学的な差を利用して常法により単離できる。例えば、光学異性体は一般的な光学分割法、例えば分別結晶化又はクロマトグラフィー等により分離できる。また、光学異性体は、適当な光学活性な原料化合物より製造することもできる。
【0024】
本発明化合物の薬理活性は以下の試験により確認した。
1.CCR4を介した[35S]GTPγS結合試験に対する作用
(1) Human CCR4発現細胞株の取得
EF-1αプロモーター下流にヒトCCR4遺伝子を挿入したベクター(ネオマイシン耐性遺伝子含む)を作製し、マウスpre B細胞株B300-19細胞にエレクトロポレーション法によりトランスフェクションした。これらの細胞をG418添加培地で培養し、限界希釈法によりヒトCCR4を恒常的かつ安定に発現する単一の細胞株を取得した。
(2) Human CCR4発現細胞株膜画分の調整
ヒトCCR4発現細胞を回収しPBSで洗浄した後、Lysis Buffer(10mM Hepes pH 7.5, 2mM EDTA, protainase inhibitor)で懸濁した。懸濁液を氷上に15分間置いた後、ホモジェナイザーにより細胞を破砕し遠心した(20000 rpm, 10 min, 4℃)。さらに上清を超遠心(22K, 30 min, 4℃)した後、ペレットをPBSに懸濁したものを膜画分として以後の実験に用いた。
(3) GTPγS結合試験
試験化合物は、各濃度を20 mM Hepes pH 7.05、100 mM NaCl、5 mM MgCl2、GDP 2μM、Human MDC、[35S]GTPγS 150 pM、Wheatgerm agglutinin SPA beads 1 mg及びHuman CCR4発現細胞株膜画分1μgを含有する反応混合液中で1時間30分、室温で反応させ放射活性を測定した。
実施例1、3、6、7、11、17、20及び21の化合物は、100 nM濃度で50%以上の阻害活性を示した。
この結果より、本発明化合物の強力なCCR4機能調節作用が確認された。
【0025】
2.マウスオキサゾロン誘発接触性皮膚炎に対する作用
Balb/cマウス(6〜10週齢、雌性、日本チャールス・リバー社)の腹部に3%オキサゾロン/エタノール溶液150μl(シグマアルドリッチジャパン)を塗布により感作した。感作後6日目に1%オキサゾロン/エタノール溶液10μlを右耳の両面に塗布した。試験薬物投与はオキサゾロン溶液の塗布12時間後に実施し(試験薬物投与群)、コントロール群には試験薬物を溶解するのに用いた溶媒のみを投与した。右耳介の厚みは塗布前と20時間後にシックネスゲージ(ミツトヨ)を用いて測定し、腫れ(厚み増加分=20時間後測定値−塗布前測定値)を算出した。抑制率は感作せずにオキサゾロン溶液を塗布した群をノーマル群として下式により計算した。なお、上記試験は、一群5匹で実施した。
抑制率=(コントロール群の腫れ−試験薬物投与群の腫れ)x100/(コントロール群の腫れ−ノーマル群の腫れ)
実施例11の化合物は30 mg/kg経口投与で良好な抑制活性を示した。
この結果より、本発明化合物の優れた抗炎症作用が確認された。
3.マウスコラーゲン誘発関節炎に対する作用
マウスコラーゲン誘発関節炎に対する作用はThe Japanese Journal of Pharmacology, 88, 332 (2002)に記載の方法を用いて評価する。
上記の各試験例以外にも、例えばImmunology, 98, 345 (1999)に記載のマウス喘息モデル、Journal of Investigative Dermatorogy, 111, 86 (1998)に記載のオキサゾロン誘発慢性接触性皮膚炎モデル(アトピー性皮膚炎モデル)等、抗炎症作用を評価するために一般的に用いられる各種評価モデルにより、本発明化合物の薬理作用を確認することができる。
【0026】
化合物(I)又はその塩の1種又は2種以上を有効成分として含有する製剤は通常製剤化に用いられる担体や賦形剤、その他の添加剤を用いて調製される。
投与は錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤等による経口投与、あるいは静注、筋注等の注射剤、坐剤、経皮剤、経鼻剤あるいは吸入剤等による非経口投与のいずれの形態であってもよい。投与量は症状、投与対象の年齢、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定されるが、通常、経口投与の場合、成人1日当たり0.001 mg/kg乃至100 mg/kg程度であり、これを1回で、あるいは2〜4回に分けて投与する。また、症状によって静脈投与される場合は、通常、成人1回当たり0.0001 mg/kg乃至10 mg/kgの範囲で1日に1回乃至複数回投与される。また、吸入の場合は、通常、成人1回当たり0.0001 mg/kg乃至1 mg/kgの範囲で1日に1回乃至複数回投与される。
本発明による経口投与のための固体組成物としては、錠剤、散剤、顆粒剤等が用いられる。このような固体組成物においては、一つ又はそれ以上の活性物質が、少なくとも一つの不活性な賦形剤、例えば乳糖、マンニトール、ブドウ糖、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等と混合される。組成物は、常法に従って、不活性な添加剤、例えばステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤やカルボキシメチルスターチナトリウム等の崩壊剤、溶解補助剤を含有していてもよい。錠剤又は丸剤は必要により糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性コーティング剤で被膜してもよい。
【0027】
経口投与のための液体組成物は、薬剤的に許容される乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含み、一般的に用いられる不活性な溶剤、例えば精製水、エタノールを含む。この組成物は不活性な溶剤以外に可溶化剤、湿潤剤、懸濁化剤のような補助剤、甘味剤、矯味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
非経口投与のための注射剤としては、無菌の水性又は非水性の液剤、懸濁剤、乳剤を含む。水性の溶剤としては、例えば注射用蒸留水及び生理食塩水が含まれる。非水性の溶剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、ポリソルベート80(商品名)等がある。このような組成物は、さらに等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解補助剤を含んでもよい。これらは例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合又は照射によって無菌化される。また、これらは無菌の固体組成物を製造し、使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解、懸濁して使用することもできる。
【0028】
吸入剤や経鼻剤等の経粘膜剤は固体、液体、半固体状のものが用いられ、従来公知の方法に従って製造することができる。例えば、ラクトースや澱粉のような賦形剤や、更に、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、滑沢剤、安定剤や増粘剤等が適宜添加されていてもよい。投与は、適当な吸入又は吹送のためのデバイスを使用することができる。例えば、計量投与吸入デバイス等の公知のデバイスや噴霧器を使用して、化合物を単独で又は処方された混合物の粉末として、もしくは医薬的に許容し得る担体と組み合わせて溶液又は懸濁液として投与することができる。乾燥粉末吸入器等は、単回又は多数回の投与用のものであってもよく、乾燥粉末又は粉末含有カプセルを利用することができる。あるいは、適当な駆出剤、例えば、クロロフルオロアルカン、ヒドロフルオロアルカン又は二酸化炭素等の好適な気体を使用した加圧エアゾールスプレー等の形態であってもよい。
【実施例】
【0029】
以下、実施例に基づき本発明化合物(I)の製法を更に詳細に説明する。本発明化合物は下記実施例に記載の化合物に限定されるものではない。また原料化合物の製法を参考例に示す。
また、参考例及び後記表中以下の略号を用いる。置換基の前の数字は置換位置を示す。
Ex:実施例番号、REx:参考例番号、Dat:物理化学的データ(F:FAB-MS(M+H)+、FN:FAB-MS(M-H)-、ES:ESI-MS(M+H)+、ESN:ESI-MS(M-H)-、EI:EI-MS(M+)、AP:APCI-MS(M+H)+、APN:APCI-MS(M-H)-、NMR1:CDCl3中の1H NMRにおける特徴的なピークのδ(ppm)、NMR2:DMSO-d6中の1H NMRにおける特徴的なピークのδ(ppm)、EA:元素分析値(%)(Cal:計算値;Fnd:実測値))、Sal:塩及び含有溶媒(HCl:塩酸塩、無記載:フリー体、成分の前の数字は例えば2HClは2塩酸塩を示す)、Str:構造式、Syn:製造法(数字は同様に製造した実施例番号を示す)、Config:立体化学(* を付記した炭素の絶対配置を示す)、Me:メチル、Ph:フェニル、Ac:アセチル。
【0030】
参考例1
5-ブロモ-2,4-ジクロロピリミジンと4-クロロアニリンをDIPEA存在下、アセトニトリル中で3日間加熱還流して5-ブロモ-2-クロロ-N-(4-クロロフェニル)ピリミジン-4-アミンを得た。ES: 318, 320。
参考例2
5-ブロモ-2-クロロ-N-(4-クロロフェニル)ピリミジン-4-アミンと4-フルオロフェニルボロン酸のアセトニトリル溶液に炭酸ナトリウム水溶液、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムを順次を加え85℃で加熱して2-クロロ-N-(4-クロロフェニル)-5-(4-フルオロフェニル)ピリミジン-4-アミンを得た。ES: 334。
参考例3
4-クロロ-5-ヨード-6-メチル-2-(メチルスルフェニル)ピリミジンを用いて参考例2と同様にして、4-クロロ-5-(4-フルオロフェニル)-6-メチル-2-(メチルスルフェニル)ピリミジンを得た。F: 269。
参考例4
4-クロロ-5-(4-フルオロフェニル)-6-メチル-2-(メチルスルフェニル)ピリミジンと4-クロロアニリンの2-プロパノール溶液に1M塩酸水溶液を加え、3時間加熱還流して、N-(4-クロロフェニル)-5-(4-フルオロフェニル)-6-メチル-2-(メチルスルフェニル)ピリミジン-4-アミンを得た。ES: 360。
参考例5
N-(4-クロロフェニル)-5-(4-フルオロフェニル)-6-メチル-2-(メチルスルフェニル)ピリミジン-4-アミンをジクロロメタン中、氷冷下、m-クロロ安息香酸で処理して、N-(4-クロロフェニル)-5-(4-フルオロフェニル)-6-メチル-2-(メチルスルフィニル)ピリミジン-4-アミンを得た。ES: 376。
【0031】
参考例6
N-(4-クロロフェニル)-2-(メチルスルフェニル)-6-フェニルピリミジン-4-アミンをジクロロメタン中、室温下、m-クロロ安息香酸で処理して、N-(4-クロロフェニル)-2-(メチルスルホニル)-6-フェニルピリミジン-4-アミンを得た。F: 360。
参考例7
水素化ナトリウム、DMFの混合液に氷冷下(4-フルオロフェニル)酢酸メチルおよびギ酸メチルを滴下し、室温で17時間攪拌した後、ヨウ化メチルを加え、さらに室温で5時間攪拌して2-(4-フルオロフェニル)-3-メトキシアクリル酸メチルを得た。この化合物をエタノール中、ナトリウムメトキシド存在下、チオ尿素と反応して、5-(4-フルオロフェニル)-2-チオキソ-2,3-ジヒドロピリミジン-4(1H)-オンを得た。F: 223。
参考例8
5-(4-フルオロフェニル)-2-チオキソ-2,3-ジヒドロピリミジン-4(1H)-オンをDMF中、ヨウ化メチルと反応して、5-(4-フルオロフェニル)-2-(メチルスルフェニル)ピリミジン-4(3H)-オンを得た。ES: 237。
参考例9
5-(4-フルオロフェニル)-2-(メチルスルフェニル)ピリミジン-4(3H)-オンをオキシ塩化リンと100℃で2時間反応して、4-クロロ-5-(4-フルオロフェニル)-2-(メチルスルフェニル)ピリミジンを得た。ES: 255。
参考例10
4-クロロ-5-(4-フルオロフェニル)-2-(メチルスルフェニル)ピリミジンと(4-クロロ-2-フルオロベンジル)アミンをDBU存在下、ジエトキシエタン中で120℃で19時間反応してN-(4-クロロ-2-フルオロベンジル)-5-(4-フルオロフェニル)-2-(メチルスルフェニル)ピリミジン-4-アミンを得た。AP: 378。
【0032】
参考例11
4-オキソピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチル、3-ピペリジンメタノール、10%パラジウム炭素及びメタノール混合物を、水素雰囲気下攪拌して、3-(ヒドロキシメチル)-1,4'-ビピペリジン-1'-カルボン酸 tert-ブチルを得た。ES:299。
参考例12
3-(ヒドロキシメチル)-1,4'-ビピペリジン-1'-カルボン酸 tert-ブチルをメタノール中、4M塩酸-酢酸エチル溶液で処理して、1,4'-ビピペリジニル-3-メタノール2塩酸塩を得た。ES:199。
参考例13
4-オキソピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチルと(3S)-ニペコチン酸エチルを用いて参考例(17)と同様にして1'-tert-ブチル 3-エチル (3S)-1,4'-ビピペリジン-1',3-ジカルボキシレートを得た(ES: 341)。このTHF溶液を水酸化ホウ素リチウムのTHF懸濁液に加え、加熱還流下攪拌することにより、(3S)-3-(ヒドロキシメチル)-1,4'-ビピペリジン-1'-カルボン酸 tert-ブチルを得た。ES:299。
参考例2の方法と同様にして参考例14〜25の化合物を、参考例3の方法と同様にして参考例26〜30の化合物を、参考例4の方法と同様にして参考例31〜38の化合物を、参考例5の方法と同様にして参考例39及び40の化合物を、参考例12の方法と同様にして参考例41の化合物を、それぞれ対応する原料を使用して製造した。参考例(14〜42)の化合物の構造及び物理化学的データを表1〜4にそれぞれ示す。
【0033】
実施例1
2-クロロ-N-(4-クロロフェニル)-5-(4-クロロフェニル)ピリミジン-4-アミン 179 mg の1,4-ジオキサン 20 ml 溶液にDBU 233 mg、1,4'-ビペリジニル-3-イルメタノール 2塩酸塩139 mg を加え、13時間100℃にて加熱した。反応液を室温にし、シリカゲルを反応溶液に加え溶媒を留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム-メタノール-28%アンモニア水溶液)で精製し、{1'-[4-[(4-クロロフェニル)アミノ]-5-(4-クロロフェニル)ピリミジン-2-イル]-1,4'-ビピペリジン-3-イル}メタノール200 mgを薄黄色無定型結晶として得た。この化合物をメタノールに溶解し4M塩酸/酢酸エチル溶液 0.29 mlを加えた後、イソプロパノール-酢酸エチル-メタノールより再結晶を行って、{1'-[4-[(4-クロロフェニル)アミノ]-5-(4-クロロフェニル)ピリミジン-2-イル]-1,4'-ビピペリジン-3-イル}メタノール 2塩酸塩 92 mg を白色結晶として得た。
実施例2
2-クロロ-N-(4-クロロフェニル)-5-(4-フルオロフェニル)ピリミジン-4-アミン236 mgを用いて実施例1の方法と同様に(但し、溶媒としてDMF、塩基としてDIPEAを用いて80℃で4日間反応させた)して、{1'-[4-[(4-クロロフェニル)アミノ]-5-(4-フルオロフェニル)ピリミジン-2-イル]-1,4'-ビピペリジン-3-イル}メタノール 2塩酸塩 39 mg を白色結晶として得た。
実施例3
N-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-5-(4-フルオロフェニル)-2-(メチルスルフィニル)ピリミジン-4-アミン450 mgを用いて実施例1の方法と同様に(但し、溶媒として1,2-ジエトキシエタンを、また、1,4'-ビペリジニル-3-イルメタノール 2塩酸塩の代わりに(3S)-1,4'-ビペリジニル-3-イルメタノール 2塩酸塩を用いて130℃で21時間反応させた)して、{(3S)-1'-[4-[(4-クロロ-2-フルオロフェニル)アミノ]-5-(4-フルオロフェニル)ピリミジン-2-イル]-1,4'-ビピペリジン-3-イル}メタノール 2塩酸塩 217 mg を微茶褐色結晶として得た。
【0034】
実施例4
N-(4-クロロフェニル)-2-(メチルスルホニル)-6-フェニルピリミジン-4-アミン506 mg を用いて実施例1の方法と同様に(但し、溶媒として2-エトキシエタノールを、また、塩基としてジイソプロピルエチルアミンを用いて130℃で2.5日間反応させた)して(1'-{4-[(4-クロロフェニル)アミノ]-6-フェニルピリミジン-2-イル}-1,4'-ビピペリジン-3-イル)メタノール 2 塩酸塩 87 mg を淡黄色結晶として得た。
実施例5
N-4-クロロ-6-(3-フルオロフェニル)-2-(メチルスルフェニル)ピリミジン-4-アミン 413 mgを用いて前述の参考例(5)と同様の操作を行い、N-4-クロロ-6-(3-フルオロフェニル)-2-(メチルスルフィニル)ピリミジン-4-アミンを得た。この化合物を用いて実施例(1)と同様にして、{1'-[4-[(4-クロロフェニル)アミノ]-6-(3-フルオロフェニル)ピリミジン-2-イル]-1,4'-ビピペリジン-3-イル}メタノール2塩酸塩 170 mg を淡黄色結晶として得た。
実施例6
N-(4-クロロ-2-フルオロベンジル)-5-(4-フルオロフェニル)-2-(メチルスルフェニル)ピリミジン-4-アミン 417 mg を用いて前述の参考例5と同様の操作を行い、N-(4-クロロ-2-フルオロベンジル)-5-(4-フルオロフェニル)-2-(メチルスルフェニル)ピリミジン-4-アミン 475 mg を得た。この化合物と用いて実施例1と同様に(但し、溶媒としてジエトキシエタンを用い、110℃で1.5日間反応させた)して {1'-[4-[(4-クロロ-2-フルオロベンジル)アミノ]-5-(4-フルオロフェニル)ピリミジン-2-イル]-1,4'-ビピペリジン-3-イル}メタノール 2 塩酸塩 247 mg を無色無定形固体として得た。
【0035】
実施例7
N-(4-クロロフェニル)-2-(メチルスルフェニル)-5-フェニルピリミジン-4-アミン塩酸塩 853 mg に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去し、N-(4-クロロフェニル)-2-(メチルスルフェニル)-5-フェニルピリミジン-4-アミン 770 mg を淡黄色油状物として得た。この化合物を用いて実施例6と同様の操作を行い、(1'-{4-[(4-クロロフェニル)アミノ]-5-フェニルピリミジン-2-イル}-1,4'-ビピペリジン-3-イル)メタノール 2 塩酸塩524 mg を橙色結晶として得た。
実施例8
4-クロロ-6-(3-メトキシフェニル)-2-(メチルスルフェニル)ピリミジン277 mg を用いて前述の参考例7と同様の操作を行い、N-(4-クロロフェニル)-6-(3-メトキシフェニル)-2-(メチルスルフェニル)ピリミジン-4-アミン 251 mg を無色結晶として得た。この化合物を用いて前述の参考例5と同様の操作を行い、N-(4-クロロフェニル)-6-(3-メトキシフェニル)-2-(メチルスルフィニル)ピリミジン-4-アミンを得た。この化合物を用いて実施例1と同様にして、{1'-[4-[(4-クロロフェニル)アミノ]-6-(3-メトキシフェニル)ピリミジン-2-イル]-1,4'-ビピペリジン-3-イル}メタノール2塩酸塩 198 mg を白色結晶として得た。
実施例1〜8の方法と同様にして後記表5〜6に示す実施例化合物を、それぞれ対応する原料を使用して製造した。実施例1〜23の化合物の構造及び物理化学的データを表5〜6に示す。また、表7〜9に本発明の別の化合物の構造を示す。これらは、上記の製造法や実施例に記載の方法及び当業者にとって自明である方法、又はこれらの変法を用いることにより、容易に合成することができる。
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
【表4】

【0039】
【表5】

【0040】
【表6】

【0041】
【表7】

【0042】
【表8】

【0043】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で示される置換ピリミジン誘導体又はその塩。
【化1】

(式中の記号は以下の意味を示す。
A:置換されていてもよいアリール又は置換されていてもよいシクロアルキル、
B:置換されていてもよい単環若しくは2環式炭化水素環基、又は置換されていてもよい単環若しくは2環式ヘテロ環基、
R1:-R0、ハロゲン、-OH、-OR0、ハロゲノ低級アルキル、
X:CR3又はN、
Y:CR4又はN、但し、XがCR3のときYはNを、XがNのときYはCR4を示す、
Z:CR5R6、NR7又はO、
R2:同一又は互いに異なって、-R0、ハロゲン、-OH、-OR0、ハロゲノ低級アルキル、-R00-OH、-CON(R8)(R9)、-R00-O-R0、-R00-N(R8)(R9)、-R00-CN、-R00-N(R8)-CO-R0、-R00-N(R8)-SO2-R0、-R00-O-CO-R0、-R00-CO2-R0又は-R00-CON(R8)(R9)、
R3、R4、R8及びR9:同一又は互いに異なって、-H又は-R0
R5及びR6:同一又は互いに異なって、H又はR2に記載の基、或いはR5及びR6が一体となってオキソ、
R7:-H、-R0、-R00-OH、-CON(R8)(R9)、-R00-O-R0、-R00-N(R8)(R9)、-R00-CN、-R00-N(R8)-CO-R0、-R00-N(R8)-SO2-R0、-R00-O-CO-R0、-R00-CO2-R0又は-R00-CON(R8)(R9)、
R0:低級アルキル、
R00:低級アルキレン、
m:0、1、2、3又は4、
j:0、1、2又は3、
k:0、1又は2。)

【公開番号】特開2007−217282(P2007−217282A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−61123(P2004−61123)
【出願日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】