説明

置換フェニルアラニンを調製するプロセス

置換フェニルアラニンベースの化合物を調製するための中間体及び合成プロセスが開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1. 発明の分野
本発明は、置換フェニルアラニンベースの化合物を製造するために使用される合成プロセスに関する。
【0002】
本願は、2010年11月19日付けで出願された米国仮特許出願第61/262,834号(その全体が参照により本明細書中に援用される)に基づく優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
2. 背景
酵素トリプトファンヒドロキシラーゼ(TPH)は、セロトニンの生合成の律速段階を触媒する。該酵素の阻害剤が、過敏性腸症候群及びカルチノイド症候群を含む様々な疾患及び障害の治療に可能性があるとして提案されている。例えば特許文献1、特許文献2を参照されたい。これらの化合物を調製する大規模方法が開示されている(例えば特許文献3を参照されたい)が、更なる方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007−0191370号
【特許文献2】米国特許第7,553,840号
【特許文献3】米国特許出願公開第2009−0048280号
【発明の概要】
【0005】
3. 発明の概要
本発明は、式1:
【化1】

(式中、Rは水素、又は必要に応じて置換されたアルキル、アルキル−アリール若しくはアリールであり、Rは水素又は保護基であり、Rは保護基である)の化合物を調製する方法を包含する。式1の化合物を使用して、式2:
【化2】

(式中、Rはハロ、又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール若しくはアルコキシである)の化合物及びその薬学的に許容される塩を調製することができる。式2の化合物の調製に有用な他の方法も本発明に包含される。
【発明を実施するための形態】
【0006】
4. 詳細な説明
本発明は、一部、TPH阻害剤(S)−2−アミノ−3−(4−(2−アミノ−6−((R)−2,2,2−トリフルオロ−1−(3’−メトキシビフェニル−4−イル)エトキシ)ピリミジン−4−イル)フェニル)プロパン酸及びその合成に有用な中間体を合成する改善された方法に関する。特許文献3(その全体が参照により本明細書中に援用される)を参照されたい。
【0007】
4.1. 定義
特に明示のない限り、「アルケニル」という用語は、2個〜20個(例えば2個〜10個又は2個〜6個)の炭素原子を有し、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む直鎖、分岐鎖及び/又は環式の炭化水素を意味する。代表的なアルケニル部分としては、ビニル、アリル、1−ブテニル、2−ブテニル、イソブチレニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−メチル−1−ブテニル、2−メチル−2−ブテニル、2,3−ジメチル−2−ブテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、1−ヘプテニル、2−ヘプテニル、3−ヘプテニル、1−オクテニル、2−オクテニル、3−オクテニル、1−ノネニル、2−ノネニル、3−ノネニル、1−デセニル、2−デセニル及び3−デセニルが挙げられる。
【0008】
特に明示のない限り、「アルキル」という用語は、1個〜20個(例えば1個〜10個又は1個〜4個)の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖及び/又は環式(「シクロアルキル」)の炭化水素を意味する。1個〜4個の炭素を有するアルキル部分は「低級アルキル」と称される。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、4,4−ジメチルペンチル、オクチル、2,2,4−トリメチルペンチル、ノニル、デシル、ウンデシル及びドデシルが挙げられるが、これらに限定されない。シクロアルキル部分は単環式又は多環式であってもよく、例としてはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びアダマンチルが挙げられる。アルキル部分の更なる例は直鎖部分、分岐鎖部分及び/又は環式部分(例えば1−エチル−4−メチル−シクロヘキシル)を有する。「アルキル」という用語は飽和炭化水素、並びにアルケニル部分及びアルキニル部分を含む。
【0009】
特に明示のない限り、「アルキルアリール」又は「アルキル−アリール」という用語は、アリール部分に結合したアルキル部分を意味する。
【0010】
特に明示のない限り、「アルキルヘテロアリール」又は「アルキル−ヘテロアリール」という用語は、ヘテロアリール部分に結合したアルキル部分を意味する。
【0011】
特に明示のない限り、「アルキル複素環」又は「アルキル−複素環」という用語は、複素環部分に結合したアルキル部分を意味する。
【0012】
特に明示のない限り、「アルキニル」という用語は、2個〜20個(例えば2個〜20個又は2個〜6個)の炭素原子を有し、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含む直鎖、分岐鎖又は環式の炭化水素を意味する。代表的なアルキニル部分としては、アセチレニル、プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−メチル−1−ブチニル、4−ペンチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、5−ヘキシニル、1−ヘプチニル、2−ヘプチニル、6−ヘプチニル、1−オクチニル、2−オクチニル、7−オクチニル、1−ノニニル、2−ノニニル、8−ノニニル、1−デシニル、2−デシニル及び9−デシニルが挙げられる。
【0013】
特に明示のない限り、「アルコキシ」という用語は、−O−アルキル基を意味する。アルコキシ基の例としては、−OCH、−OCHCH、−O(CHCH、−O(CHCH、−O(CHCH及び−O(CHCHが挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
特に明示のない限り、「アリール」という用語は、炭素原子及び水素原子から構成される、芳香環、又は芳香環若しくは部分芳香環の系を意味する。アリール部分は共に結合又は融合した複数の環を含んでいてもよい。アリール部分の例としては、アントラセニル、アズレニル、ビフェニル、フルオレニル、インダン、インデニル、ナフチル、フェナントレニル、フェニル、1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン及びトリルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
特に明示のない限り、「アリールアルキル」又は「アリール−アルキル」という用語は、アルキル部分に結合したアリール部分を意味する。
【0016】
特に明示のない限り、「ハロゲン」及び「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を包含する。
【0017】
特に明示のない限り、「ヘテロアルキル」という用語は、炭素原子の少なくとも1つがヘテロ原子(例えばN、O又はS)に置き換えられているアルキル部分を表す。
【0018】
特に明示のない限り、「ヘテロアリール」という用語は、炭素原子の少なくとも1つがヘテロ原子(例えばN、O又はS)に置き換えられているアリール部分を意味する。例としては、アクリジニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイソキサゾリル、ベンゾキナゾリニル、ベンゾチアゾリル、ベンズオキサゾリル、フリル、イミダゾリル、インドリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、フタラジニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピリミジル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、テトラゾリル、チアゾリル及びトリアジニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
特に明示のない限り、「ヘテロアリールアルキル」又は「ヘテロアリール−アルキル」という用語は、アルキル部分に結合したヘテロアリール部分を意味する。
【0020】
特に明示のない限り、「複素環」という用語は、炭素、水素、及び少なくとも1つのヘテロ原子(例えばN、O又はS)から構成される、芳香族、部分芳香族又は非芳香族の単環式又は多環式の環又は環系を表す。複素環は、共に融合又は結合した複数(すなわち2つ以上)の環を含んでいてもよい。複素環はヘテロアリールを含む。例としては、ベンゾ[1,3]ジオキソリル、2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]ジオキシニル、シンノリニル、フラニル、ヒダントイニル、モルホリニル、オキセタニル、オキシラニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピロリジノニル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピリジニル、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニル及びバレロラクタミルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
特に明示のない限り、「複素環アルキル」又は「複素環−アルキル」という用語は、アルキル部分に結合した複素環部分を表す。
【0022】
特に明示のない限り、「ヘテロシクロアルキル」という用語は、非芳香族の複素環を表す。
【0023】
特に明示のない限り、「ヘテロシクロアルキルアルキル」又は「ヘテロシクロアルキル−アルキル」という用語は、アルキル部分に結合したヘテロシクロアルキル部分を表す。
【0024】
特に明示のない限り、「薬学的に許容される塩」という用語は、薬学的に許容される非毒性の酸又は塩基(無機酸及び無機塩基並びに有機酸及び有機塩基を含む)から調製される塩を表す。好適な薬学的に許容される塩基付加塩としては、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム及び亜鉛から生成される金属塩、又はリジン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N−メチルグルカミン)及びプロカインから生成される有機塩が挙げられるが、これらに限定されない。好適な非毒性の酸としては、酢酸、アルギン酸、アントラニル酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エテンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、フロ酸、ガラクツロン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グリコール酸、臭化水素酸、塩化水素酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモン酸、パントテン酸、フェニル酢酸、リン酸、プロピオン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、スルファニル酸、硫酸、酒石酸及びp−トルエンスルホン酸等の無機酸及び有機酸が挙げられるが、これらに限定されない。特定の非毒性酸としては、塩化水素酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸及びメタンスルホン酸が挙げられる。したがって、特定の塩の例としては、塩酸塩及びメシル酸塩が挙げられる。他のものが当該技術分野において既知である。例えばRemington's Pharmaceutical Sciences、第18版(Mack Publishing, Easton PA: 1990)及びRemington: The Science and Practice of Pharmacy、第19版(Mack Publishing, Easton PA: 1995)を参照されたい。
【0025】
特に明示のない限り、化学反応の対象となる分子の一部分を表すのに使用される場合、「保護基(protecting group)」又は「保護性基(protective group)」という用語は、この化学反応の条件下で反応性を有さず、これらの条件下で反応性を有する部分をもたらすために取り除くことができる化学的部分を意味する。保護基は当該技術分野で既知である。例えば、Greene, T. W. and Wuts, P.G.M., Protective Groups in Organic Synthesis(第3版、John Wiley & Sons: 1999)、Larock, R. C., Comprehensive Organic Transformations(第2版、John Wiley & Sons: 1999)を参照されたい。
【0026】
特に明示のない限り、「置換された」という用語は、化学的な構造又は部分を説明するために使用する場合は、その構造又は部分の誘導体であって、その水素原子の1つ又は複数が、アルコール、アルデヒド、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルコキシカルボニル、アルケニル、アルキル(例えばメチル、エチル、プロピル、t−ブチル)、アルキニル、アルキルカルボニルオキシ(−OC(O)アルキル)、アミド(−C(O)NH−アルキル−又は−アルキルNHC(O)アルキル)、アミジニル(−C(NH)NH−アルキル又は−C(NR)NH)、アミン(アルキルアミノ、アリールアミノ、アリールアルキルアミノ等の第1級、第2級及び第3級のアミン)、アロイル、アリール、アリールオキシ、アゾ、カルバモイル(−NHC(O)O−アルキル−又は−OC(O)NH−アルキル)、カルバミル(例えば、CONH、並びにCONH−アルキル、CONH−アリール、及びCONH−アリールアルキル)、カルボニル、カルボキシル、カルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸塩化物、シアノ、エステル、エポキシド、エーテル(例えばメトキシ、エトキシ)、グアニジノ、ハロ、ハロアルキル(例えば−CCl、−CF、−C(CF)、ヘテロアルキル、ヘミアセタール、イミン(第1級及び第2級)、イソシアネート、イソチオシアネート、ケトン、ニトリル、ニトロ、オキソ、ホスホジエステル、スルフィド、スルホンアミド(例えばSONH)、スルホン、スルホニル(アルキルスルホニル、アリールスルホニル及びアリールアルキルスルホニルを含む)、スルホキシド、チオール(例えばスルフヒドリル、チオエーテル)並びに尿素(−NHCONH−アルキル−)等(しかし、これらに限定されない)の化学的部分又は官能基で置換されている、その構造又は部分の誘導体を表す。
【0027】
特に明示のない限り、「挙げられる(含む)(include)」という用語は、「挙げられるが(含むが)、これらに限定されない」と同じ意味を有し、「挙げられる(含む)(includes)」という用語は、「挙げられるが(含むが)、これらに限定されない」と同じ意味を有する。同様に、「等(such as)」という用語は、「等(しかし、これらに限定されない)」という用語と同じ意味を有する。
【0028】
特に明示のない限り、一連の名詞の直前にくる1つ又は複数の形容詞は、名詞の各々を修飾するものとして解釈される。例えば、「必要に応じて置換されたアルキル(alky)、アリール又はヘテロアリール」という語句は、「必要に応じて置換されたアルキル、必要に応じて置換されたアリール、又は必要に応じて置換されたヘテロアリール」と同じ意味を有する。
【0029】
より大きな化合物部を形成する化学的部分は、該部分が単一分子として存在する場合に該部分に一般的に与えられる名称、又はそのラジカルに一般的に与えられる名称を使用して本明細書中で説明することができることに留意すべきである。例えば、「ピリジン」及び「ピリジル」という用語には、他の化学的部分と結合している部分を説明するのに使用する場合に、同じ意味が与えられる。したがって、「XOH(式中、Xはピリジルである)」及び「XOH(式中、Xはピリジンである)」という2つの語句には同じ意味が与えられ、化合物ピリジン−2−オール、ピリジン−3−オール及びピリジン−4−オールが包含される。
【0030】
構造又は構造の一部分の立体化学が例えば太線又は破線で示されない場合、その構造又はその構造の一部分はその全ての立体異性体を包含すると解釈されることにも留意すべきである。同様に、その中心の立体化学が特定されていない1つ又は複数のキラル中心を有する化合物の名称は、その純粋な立体異性体及びそれらの混合物を包含する。さらに、図で示された原子価が満たされていない任意の原子は、この原子価を満たすのに十分な水素原子と結合していると推測される。さらに、一本の破線に平行な一本の実線で示された化学結合は、原子価が許容する場合、単結合及び二重(例えば芳香族)結合の両方を包含する。本発明は、本明細書中で開示される化合物の互変異性体及び溶媒和物(例えば水和物)を包含する。
【0031】
4.2. 合成方法
本発明の方法は、(S)−2−アミノ−3−(4−(2−アミノ−6−((R)−2,2,2−トリフルオロ−1−(3’−メトキシビフェニル−4−イル)エトキシ)ピリミジン−4−イル)フェニル)プロパン酸、並びにその誘導体(例えば保護された前駆体)及び塩の調製に適用可能である。この特定の化合物を調製する方法の1つを下記スキーム1に示す:
【化3】

【0032】
本発明の特定の実施形態は、式1:
【化4】

(式中、Rは水素、又は必要に応じて置換されたアルキル、アルキル−アリール若しくはアリールであり、Rは水素又は保護基であり、Rは保護基である)の化合物の調製であって、式:
【化5】

の化合物をピナコールボランと接触させることを含む、式1の化合物の調製を包含する。具体的な実施形態では、Rは低級アルキル(例えばメチル)である。アミン部分に対する保護基は当該技術分野で既知であり、t−ブトキシカルボニル(BOC)、カルボベンジルオキシ(CBZ)、アセチル、ベンゾイル、ピバロイル、ベンジル及びアルキルが挙げられる。特定の実施形態では、Rは水素であり、RはBOCである。この反応は、好適な溶媒中、第3級アミン(例えばトリエチルアミン、N−メチルモルホリン(NMM)又はジイソプロピルエチルアミン)の存在下で、パラジウム触媒(例えば、PdCl(dppf)・CHCl、PdCl(dppf)及びPd(OAc)/dppf)によって触媒することができる。好適な溶媒としては、ジオキサン、アセトニトリル、トルエン、2−メチルテトラヒドロフラン及びそれらの混合物等のような極性非プロトン性溶媒及び非極性溶媒が挙げられる。一実施形態では、ピナコールボランをin situでボラン複合体(例えばボラン−THF、ボラン−ジメチルスルフィド、又はボラン−ジエチルアニリン等のボラン−アミン)とピナコールとから生成する。
【0033】
特定の実施形態では、式1の化合物を、式3:
【化6】

の化合物と、式2:
【化7】

の化合物を得るのに十分な条件下で接触させる(式中、Rはハロ、又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール若しくはアルコキシである)。特定の実施形態では、Rはメトキシである。化合物1と化合物3との反応は、塩基の存在下でパラジウム触媒(例えばPd(PPhCl/PPh、Pd(PPhCl又はPd(dppf)Cl)によって触媒することができる。好適な塩基としては、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウム等のようなアルカリ金属及びアルカリ土類金属の炭酸塩、重炭酸塩及びリン酸塩が挙げられる。
【0034】
式3の化合物は、式:
【化8】

の化合物を、4,6−ジクロロピリミジン−2−アミンと、好適な塩基(例えば炭酸セシウム、炭酸カリウム又はリン酸カリウム)の存在下で接触させることによって調製することができる。好適な溶媒としては、ジオキサン、t−ブタノール、t−アミルアルコール、DMF、DMAc、DMSO、NMP及びそれらの混合物が挙げられる。
【実施例】
【0035】
5. 実施例
本発明の態様は以下の実施例から理解することができるが、これらの実施例は本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0036】
5.1. (S)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)プロパン酸の調製
【化9】

温度調節器、メカニカルスターラー及びN入口を備えた1L容三つ口丸底フラスコに、ピナコール(55.5g、470mmol、2.0当量)及びジオキサン(600mL、6×)を室温で投入し、15分間撹拌して均一な溶液を得た。溶液を5℃〜10℃まで冷却し、BH−PhNEt(83.5mL、469mmol、2.0当量)を5℃〜10℃で15分かけて添加した。10℃で15分間撹拌した後、室温まで加温し、同じ温度で4時間撹拌して、ピナコールボラン溶液を調製した。
【0037】
温度調節器、メカニカルスターラー及びN下で保護された冷却器を備えた3L容三つ口フラスコに、2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−(4−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フェニル)プロパン酸(S)−メチル(149g、67.1wt%:100g、234mmol)、ジオキサン(300mL、3×)及びN−メチルモルホリン(NMM、38.6mL、351mmol、1.5当量)の濃溶液を室温で投入した。3回の真空/窒素パージサイクルを行うことによって混合物を脱気した後、PdCl(dppf)・CHCl(955mg、1.17mmol、0.5mol%)を添加した。次いで、上記のピナコールボラン溶液を、3回の真空/窒素パージサイクルを行うことによって脱気し、この反応混合物に室温で添加した。混合物を75℃で加熱し、同じ温度で18時間撹拌した。次いで、混合物を室温まで冷却し(アッセイ値(assay):91.8gの2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)プロパン酸(S)−メチル、収率96.8%)、減圧下、45℃未満でおよそ3×に濃縮して油を得た。この濃溶液をMTBE(500mL、5×)で希釈し、水(200mL、2×)で洗浄した。次いで、有機層を0℃〜5℃まで冷却し、水(800mL、8×)中のLiOH・HO(29.5g、703mmol、3.0当量)の水溶液を0℃〜10℃で15分かけて添加し、0℃〜10℃で20分間撹拌した。層を分離した後、有機層を水(200mL、2×)で抽出した。合わせた水層にMTBE(500mL、5×)を添加し、0℃〜5℃まで冷却した。0℃〜10℃で6N HCl(約120mLを使用した)を滴加して、溶液のpHを3に調整した。層を分離し、有機層をブライン(200mL、2.0×)で洗浄した。得られた有機層(部分的にエマルションである)をNaSO(50g、0.5×)で乾燥させ、ピナコール(1.38g、11.7mmol、0.05当量)を添加した後、減圧下、45℃未満で2×に濃縮した。次いで、得られた濃溶液を45℃で加熱し、ヘプタン(1L、10×)をこの溶液にゆっくりと添加した。得られたスラリーを45℃で2時間撹拌した後、ゆっくりと室温まで冷却し、同じ温度で16時間撹拌した。固体を濾過し、湿潤ケーキをヘプタン(100mL、1×、2回)で洗浄した。真空下、45℃で乾燥させると、(S)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)プロパン酸が白色の固体として得られた(75.4g、98wt%、2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−(4−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フェニル)プロパン酸(S)−メチルからの収率81%、HPLC純度:98.5%、キラル純度:99.5%超、KF:0.31、Pd:64ppm)。
【0038】
5.2. (S)−3−(4−(2−アミノ−6−((R)−2,2,2−トリフルオロ−1−(3’−メトキシビフェニル−4−イル)エトキシ)ピリミジン−4−イル)フェニル)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)プロパン酸の調製
【化10】

1,4−ジオキサン(300ml、10×)中のアルコール((R)−2,2,2−トリフルオロ−1−(3’−メトキシビフェニル−4−イル)エタノール、30g、0.106mol)、ピリミジン(4,6−ジクロロピリミジン−2−アミン、34.8g、0.212mol)及び炭酸セシウム(34.6g、0.106mol)の懸濁液をよく撹拌しながら100℃に加熱した。100℃で4時間撹拌した後、炭酸セシウム(17.3g、0.053mol)を添加し、更に100℃で14時間撹拌した。50℃まで冷却し、水(90mL、3×)を添加し、室温で30分間撹拌した。有機層を5×溶液に濃縮し、固体を清澄濾過によって除去した。トルエン(300mL、10×)で希釈し、5×溶液に濃縮した後、ヘプタン(150mL、5×)を添加した。室温で2時間撹拌した後、固体を濾過によって除去した。1,4−ジオキサンを添加し、濃縮して、1,4−ジオキサン中の一塩化物((R)−4−クロロ−6−(2,2,2−トリフルオロ−1−(3’−メトキシビフェニル−4−イル)エトキシ)ピリミジン−2−アミン)の溶液を調製した。
【0039】
1,4−ジオキサン中の一塩化物((R)−4−クロロ−6−(2,2,2−トリフルオロ−1−(3’−メトキシビフェニル−4−イル)エトキシ)ピリミジン−2−アミン、0.106molと推定)の15×溶液に、ボロン酸エステル((S)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)プロパン酸、62.25g、0.159mol)、重炭酸カリウム(37.2g、0.372mol)及び水(90mL、3×)を室温で添加した。よく脱気した後(3回の真空及び窒素充填)、PdCl(PPh(372mg、0.529mmol)及びトリフェニルホスフィン(72mg、0.275mmol)を添加した。次いで、反応混合物を90℃で8時間撹拌した。室温まで冷却し、2N HClをゆっくりと添加してpHを3〜4に調整した。室温で30分間撹拌した後、有機層を50℃で2時間、活性炭で処理した。セライトのパッドを通して濾過した後、溶液を真空下(50mbar、40℃)で3×に濃縮した。CHCN(20×)を添加し、100mbar、40℃の条件下でおよそ10×の懸濁液に濃縮した。スラリーを濾過し、CHCN(10×)で洗浄し、真空下、40℃で乾燥させて、所望のBoc酸を白色固体として得た((S)−3−(4−(2−アミノ−6−((R)−2,2,2−トリフルオロ−1−(3’−メトキシビフェニル−4−イル)エトキシ)ピリミジン−4−イル)フェニル)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)プロパン酸、20.1g、98wt%、2工程にわたる収率90%、HPLC純度:97%、Pd:69ppm)。
【0040】
上で開示された全ての刊行物(例えば特許及び特許出願)はその全体が参照により本明細書中に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1:
【化1】

の化合物を調製する方法であって、式:
【化2】

の化合物を、ピナコールボランと、式1の化合物を得るのに十分な条件下で接触させることを含む、式1の化合物を調製する方法
(式中、
は水素、又は必要に応じて置換されたアルキル、アルキル−アリール若しくはアリールであり、
は水素又は保護基であり、
は保護基である)。
【請求項2】
がメチルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
が水素である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
がt−ブトキシカルボニル(BOC)、カルボベンジルオキシ(CBZ)、アセチル、ベンゾイル、ピバロイル、ベンジル又はアルキルである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記式1の化合物を得るのに十分な条件が、パラジウム触媒の存在を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記パラジウム触媒がPdCl(dppf)・CHCl、PdCl(dppf)又はPd(OAc)/dppfである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記式1の化合物を得るのに十分な条件が、第3級アミン(例えばトリエチルアミン、N−メチルモルホリン(NMM)又はジイソプロピルエチルアミン)の存在を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記式1の化合物を得るのに十分な条件が、極性非プロトン性溶媒又は非極性溶媒の存在を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記溶媒がジオキサン、アセトニトリル、トルエン又は2−メチルテトラヒドロフランである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ピナコールボランをin situでボラン複合体から調製する、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
式2:
【化3】

の化合物を調製する方法であって、式3:
【化4】

の化合物を、式:
【化5】

の化合物と、式2の化合物を得るのに十分な条件下で接触させることを含む、式2の化合物を調製する方法
(式中、
は水素、又は必要に応じて置換されたアルキル、アルキル−アリール若しくはアリールであり、
は水素又は保護基であり、
は保護基であり、
はハロ、又は必要に応じて置換されたアルキル、アリール若しくはアルコキシである)。
【請求項12】
がメチルである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
が水素である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
がt−ブトキシカルボニル(BOC)、カルボベンジルオキシ(CBZ)、アセチル、ベンゾイル、ピバロイル、ベンジル又はアルキルである保護基である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
がメトキシである、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記式2の化合物を得るのに十分な条件が、パラジウム触媒の存在を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記パラジウム触媒がPdCl/PPh、Pd(OAc)/PPh、Pd(PPhCl又はPd(dppf)Clである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記式2の化合物を得るのに十分な条件が、塩基の存在を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記塩基がアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、重炭酸塩又はリン酸塩である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記塩基が炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウムである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記式2の化合物を得るのに十分な条件が、極性溶媒の存在を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項22】
前記極性溶媒が水、ジオキサン、イソブタノール、t−アミルアルコール、DMF、DMAc、NMP、DMSO又はMIBKである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記極性溶媒が水を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
式:
【化6】

の化合物を、4,6−ジクロロピリミジン−2−アミンと、式3の化合物を得るのに十分な条件下で接触させることによって前記式3の化合物を調製する、請求項11に記載の方法。
【請求項25】
前記式3の化合物を得るのに十分な条件が、溶媒の存在を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記溶媒がジオキサン、t−ブタノール、t−アミルアルコール、DMF、DMAc、DMSO又はNMPである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記式3の化合物を得るのに十分な条件が、塩基の存在を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記塩基が炭酸セシウム、炭酸カリウム又はリン酸カリウムである、請求項27に記載の方法。

【公表番号】特表2013−511531(P2013−511531A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540038(P2012−540038)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/057149
【国際公開番号】WO2011/063072
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(508192566)レクシコン ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (38)
【Fターム(参考)】