置換フェニルアルカン酸エステルの新規結晶及び製造方法
【課題】 3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸、3−[4−(インダン−2−イルオキシ)−3−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−5−ニトロフェニル]プロピオン酸メチル、または3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸メチルを医薬として使用するに際して、より好ましい態様や改善された方法を提供する。
【解決手段】 3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸、3−[4−(インダン−2−イルオキシ)−3−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−5−ニトロフェニル]プロピオン酸メチル、または3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸メチルのいずれかの化合物の結晶およびその製造方法が提供される。
【解決手段】 3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸、3−[4−(インダン−2−イルオキシ)−3−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−5−ニトロフェニル]プロピオン酸メチル、または3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸メチルのいずれかの化合物の結晶およびその製造方法が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な結晶に関する。さらに詳しくは、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸、3−[4−(インダン−2−イルオキシ)−3−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−5−ニトロフェニル]プロピオン酸メチル、または3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸メチルのいずれかの化合物の新規な結晶、又はその結晶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸は、プロスタグランジン産生抑制作用及びロイコトリエン産生抑制作用を有すると報告されており、それ故、脂質メディエーターに起因する各種の炎症性疾患、自己免疫性疾患、アレルギー性疾患や疼痛の予防及び/又は治療に有用であること、及びそれらの化合物の製造方法が開示されている。
【特許文献1】WO第03/70686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本件化合物を医薬として使用するに際して、より好ましい態様や改善された方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本件化合物1の3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸(以下、「本件化合物1」と称することがある)は、上述の公知製造方法によれば、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸メチルのメタノール溶液に2規定水酸化ナトリウム水溶液を加え60℃で16時間攪拌し、反応混合液を減圧下濃縮後、氷冷下5%塩酸水で酸性にした後、酢酸エチルにて抽出し、その有機層を飽和食塩水で洗浄し、乾燥後、溶媒を減圧下留去して得られている。この公知製造方法においては、本件化合物は無色〜褐色の油状物質として得られる。本発明者らは、本件化合物1を医薬として投与するに際しては、扱いがより簡便とする新たな改善が必要であると考え、種々検討し、本件化合物1が結晶となることを確認し本発明を完成するに至った。
【0005】
本発明によれば、本件化合物1の結晶が提供されるため、製剤化工程において扱いが容易となり、また製剤毎の本件化合物の含量を均一となすことが容易であり、極めて好ましいものである。さらに本件化合物の結晶は、溶媒等の除去の点においても、油状物である場合に比べて容易且つより完全に溶媒等の除去が行い得るものであり、また工業的規模の製造にも適しており、極めて好ましいものである。
【0006】
さらに、本発明者は、上記結晶について研究を重ねた結果、本件化合物1に後述の性質を示す新規なA形結晶とB形結晶とが存在し、それぞれが好ましい性質を有することを発見し、さらにそれらの結晶を選択的に取得する方法を確立して本発明を完成するに至った。
【0007】
また、上述の公知製造方法によれば、3−[4−(インダン−2−イルオキシ)−3−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−5−ニトロフェニル]プロピオン酸メチル(以下、「本件化合物2」と称することがある)は、3−(3−ブロモ−4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)プロピオン酸メチル、及び1−メチル−1H−インダゾール−5−ボロン酸のエタノール溶液に2M炭酸ナトリウム水溶液、トルエン及びテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)を加え80℃で16時間撹拌した後、反応混合液に酢酸エチルを加え、飽和重曹水、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し有機層を乾燥後、減圧下溶媒を留去し、更に残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製して得ている。この公知製造方法においては、本件化合物の形態について何ら言及していない。この公知製造方法においては、製造に際して取り扱いが必ずしも容易とは言えない。また本件化合物2を医薬とするに際しても、含量を均一となすことや溶媒等の除去の容易さ等において問題があることを本発明者は確認した。さらに本件化合物2が新規な結晶として取得できることを確認して本発明を完成するに至った。
【0008】
またさらに、上述の公知製造方法によれば、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸メチル(以下、「本件化合物3」と称することがあり、また「本件化合物1」、「本件化合物2」及び「本件化合物3」を合せて「本件化合物」と称することがある)は、上述の本件化合物2の酢酸エチル/メタノール混合溶液にラネー2800ニッケルを加え、水素雰囲気下室温にて6時間撹拌した後、反応混合液を濾過し、その濾液の溶媒を減圧下留去し、次いで残渣をカラムクロマトグラフィーにて精製して得ている。この公知製造方法においては、本件化合物3の形態について何ら言及していないが、製造に際して取り扱いが必ずしも容易とは言えない。また本件化合物3を医薬とするに際しても、含量を均一となすことや溶媒等の除去の容易さ等において問題があることを本発明者は確認した。新たに結晶として取得できることを確認して本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1) 3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸、3−[4−(インダン−2−イルオキシ)−3−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−5−ニトロフェニル]プロピオン酸メチル、または3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸メチルのいずれかの化合物の結晶。
(2) 3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸の結晶。
(3) 3−[4−(インダン−2−イルオキシ)−3−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−5−ニトロフェニル]プロピオン酸メチルの結晶。
(4) 3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸メチルの結晶。
(5)該結晶が、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸からなり、粉末X線回折スペクトルにおいて、2θが、少なくとも6.9±0.2°、16.4±0.2°、18.2±0.2°、25.0±0.2°または27.5±0.2°における1つ以上の特徴的なピークを有するA形結晶であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の結晶。
【0010】
なお、粉末X線回折スペクトルでの2θ角は、各種の要因により許容し得る若干の測定誤差を生じる場合があり、当該実測値は、通常±0.3°、典型的には±0.2°、より好ましい測定において±0.1°程度変動する。従って、本明細書において、特定のサンプルに対する実測値に基づく2θ角は、それらの許容し得る誤差を包含し得るものであることが理解されよう。
(5−1) 該結晶が、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸からなり、粉末X線回折スペクトルにおいて、2θが6.9±0.2°、14.4±0.2°、16.4±0.2°、18.2±0.2°、25.0±0.2°及び27.5±0.2°に特徴的なピークを有するA形結晶であることを特徴とする上記(1)、(2)または(5)に記載の結晶。
(6) 該結晶が、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸からなり、示差走査熱量分析(昇温速度10℃/分)において、約182℃の吸熱ピークを有するA形結晶であることを特徴とする上記(1)、(2)、(5)または(5−1)に記載の結晶。
【0011】
なお、示差走査熱量分析における吸熱ピークは、本件化合物の結晶が本来有する固有の物性であるが、実際の測定において、測定誤差の他、場合によっては許容し得る量の不純物の混入等の原因による融点の変動が起こる可能性も否定できない。従って、当業者は、本発明における吸熱ピーク温度の実測値がどの程度変動し得るかを十分に理解し得、例示するならば、場合により±5℃程度、典型的には±3℃程度、好ましい測定において±2℃程度の誤差が想定され得る。
(7) 該結晶が、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸からなり、赤外吸収スペクトルにおいて、波数3361、2938、1712、1204、1011及び746cm−1付近に顕著な赤外線吸収バンドを有するA形結晶であることを特徴とする上記(1)、(2)、(5)、(5−1)または(6)のいずれかに記載の結晶。
【0012】
注記すれば、赤外吸収スペクトル波数においては若干の測定誤差が許容されており、本件発明においてもこの誤差を含み得ると考えられる。当業者はその誤差の程度を十分に理解できるものであり、例えばヨーロッパ薬局方第4版を参考にすれば、赤外吸収スペクトルによる確認試験における参照スペクトルとの比較において、波数スケールの±0.5%以内で一致する程度を指摘している。本発明においては特に限定されるものではないが、通常考えられるこれらの誤差を参考にすればよく、例えば一つの尺度として、その波数スケールの実測値に対して±0.8%程度、好ましくは±0.5%程度、特に好ましくは±0.2%程度の変化が例示できる。
(7−1) 結晶純度が少なくとも90重量%以上である上記(5)〜(7)のいずれかに記載の3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸のA形結晶。
【0013】
なお、上記文章中に(5)〜(7)とあるが、配置された順に従い枝番号の発明も含む意味であって、具体的には(5)、(5−1)、(6)、(7)を意味する。以下においても同様である。
(8) 該結晶が、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸からなり、粉末X線回折スペクトルにおいて、2θが、少なくとも15.9±0.2°、17.3±0.2°、22.2±0.2°または22.9±0.2°における1つ以上の特徴的なピークを有するB形結晶であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の結晶。
(8−1) 該結晶が、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸からなり、粉末X線回折スペクトルにおいて、2θが14.4±0.2°、15.9±0.2°、17.3±0.2°、22.2±0.2°及び22.9±0.2°に特徴的なピークを有するB形結晶であることを特徴とする上記(1)、(2)または(8)に記載の結晶。
(9) 該結晶が、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸からなり、示差走査熱量分析(昇温速度10℃/分)において、約203℃の吸熱ピークを有するB形結晶であることを特徴とする上記(1)、(2)、(8)または(8−1)に記載の結晶。
(10) 該結晶が、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸からなり、赤外吸収スペクトルにおいて、波数2939、1720、1224、1016及び751cm−1付近に顕著な赤外線吸収バンドを有するB形結晶であることを特徴とする上記(1)、(2)、(8)、(8−1)または(9)のいずれかに記載の結晶。
(10−1) 結晶純度が少なくとも90重量%以上である上記(8)〜(10)のいずれかに記載の3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸のB形結晶。
(10−2) 該結晶が、3−[4−(インダン−2−イルオキシ)−3−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−5−ニトロフェニル]プロピオン酸メチルからなり、粉末X線回折スペクトルにおいて、2θが、少なくとも7.6°±0.2°、15.3°±0.2°、18.0°±0.2°、21.3°±0.2°及び26.9°±0.2°における1つ以上の特徴的なピークを有する結晶であることを特徴とする上記(1)または(3)に記載の結晶。
(10−3) 該結晶が、3−[4−(インダン−2−イルオキシ)−3−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−5−ニトロフェニル]プロピオン酸メチルからなり、粉末X線回折スペクトルにおいて、2θが7.6±0.2°、15.3±0.2°、18.0±0.2°、21.3±0.2°及び26.9±0.2°に特徴的なピークを有する結晶であることを特徴とする上記(1)、(3)または(10−2)に記載の結晶。
(10−4) 該結晶が、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸メチルからなり、粉末X線回折スペクトルにおいて、2θが、少なくとも8.6±0.2°、12.7±0.2°、17.2±0.2°、17.6±0.2°、18.9±0.2°及び21.0±0.2°における1つ以上の特徴的なピークを有する結晶であることを特徴とする上記(1)または(4)に記載の結晶。
(10−5) 該結晶が、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸メチルからなり、粉末X線回折スペクトルにおいて、2θが8.6±0.2°、12.7±0.2°、17.2±0.2°、17.6±0.2°、18.9±0.2°及び21.0±0.2°に特徴的なピークを有する結晶であることを特徴とする上記(1)、(4)または(10−4)に記載の結晶。
(11) 上記(1)〜(10−5)のいずれかに記載の3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸の結晶、またはそのA形結晶若しくはB形結晶、或いは3−[4−(インダン−2−イルオキシ)−3−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−5−ニトロフェニル]プロピオン酸メチルの結晶、または3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸メチルの結晶のいずれかを有効成分として含有し、薬学的に許容された担体とを含有することを特徴とする医薬組成物。
(12) 薬学的に許容された担体が乾燥物であり、医薬組成物が乾燥製剤であることを特徴とする上記(11)に記載の医薬組成物。
(13) 上記(5)〜(7)のいずれかに記載の3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸のA形結晶の結晶純度が少なくとも90重量%以上であるA形結晶を有効成分として含有し、薬学的に許容された担体とを含有することを特徴とする医薬組成物。
(14) 上記(8)〜(10)のいずれかに記載の3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸のB形結晶の結晶純度が少なくとも90重量%以上であるB形結晶を有効成分として含有し、薬学的に許容された担体とを含有することを特徴とする医薬組成物。
(15) 3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−フェニル]プロピオン酸の塩基性条件下の溶液に酸を加えることにより、該3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−フェニル]プロピオン酸からなる結晶を生ぜせしめ、その結晶を取得することを特徴とする上記(5)〜(7−1)のいずれかに記載の3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸のA形結晶の製造方法。
(16) 該3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−フェニル]プロピオン酸の塩基性条件下の溶液が、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸の低級アルキルエステルのアルカリ加水分解物であることを特徴とする上記(15)に記載の3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸のA形結晶の製造方法。
(16−1) 3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸の低級アルキルエステルのアルカリ加水分解反応後、反応液に酸を加えることにより該3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−フェニル]プロピオン酸からなる結晶を生ぜせしめ、その結晶を取得することを特徴とする上記(5)〜(7−1)のいずれかに記載の3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸のA形結晶の製造方法。
(17) 3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸を、アセトン、ジクロロメタン、メタノール、酢酸エチル、メタノール/酢酸混液、及びアセトニトリルから成る群より選択されるいずれか一つ又は二つ以上の溶媒に溶解させた溶液から該3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸を結晶化せしめることを特徴とする上記(8)〜(10−1)のいずれかに記載の3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸のB形結晶の製造方法。
(18) 3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−フェニル]プロピオン酸の塩基性条件下の溶液に酸を加え、該3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−フェニル]プロピオン酸からなる結晶が生ずる直前に、該化合物のB形結晶を種晶として添加することにより、該化合物のB形結晶を取得することを特徴とする上記(8)〜(10−1)のいずれかに記載の結晶の製造方法。
(18−1) 該3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−フェニル]プロピオン酸の塩基性条件下の溶液が、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸の低級アルキルエステルのアルカリ加水分解物であることを特徴とする上記(18)に記載の3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸のB形結晶の製造方法。
(18−2) 3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸の低級アルキルエステルのアルカリ加水分解反応後、反応液に酸を加え、該3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−フェニル]プロピオン酸からなる結晶が生ずる直前に、該化合物のB形結晶を種晶として反応液に添加することにより、該化合物のB形結晶を取得することを特徴とする上記(8)〜(10−1)のいずれかに記載の結晶の製造方法。
(19) トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトン、ジメトキシエタン、メタノールから成る群より選択されるいずれか一つ又は二つ以上の溶媒により溶解せしめた3−[4−(インダン−2−イルオキシ)−3−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−5−ニトロフェニル]プロピオン酸メチルの溶液に、ヘプタン、ジイソプロピルエーテル、イソプロパノール、t−ブチルメチルエーテル、水から成る群より選択されたいずれか一つ又は二つ以上の溶媒を添加し、結晶を生成せしめることを特徴とする3−[4−(インダン−2−イルオキシ)−3−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−5−ニトロフェニル]プロピオン酸メチルの結晶の製造方法。
(19−1) 該結晶が、粉末X線回折スペクトルにおいて、2θが7.6±0.2°、15.3±0.2°、18.0±0.2°、21.3±0.2°及び26.9±0.2°のうちの少なくとも1つ以上の特徴的なピーク、典型的にはそれら全てのピークを有する結晶であることを特徴とする上記(19)に記載の製造方法。
(20) トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトンから成る群より選択されるいずれか一つ又は二つ以上の溶媒により溶解せしめた3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸メチルの溶液に、ヘプタン、イソプロパノール、メタノール、水から成る群より選択されたいずれか一つ又は二つ以上の溶媒を添加し、結晶を生成せしめることを特徴とする3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸メチルの結晶の製造方法。
(20−1) 該結晶が、粉末X線回折スペクトルにおいて、2θが8.6±0.2°、12.7±0.2°、17.2±0.2°、17.6±0.2°、18.9±0.2°及び21.0±0.2°のうちの少なくとも1つ以上の特徴的なピーク、典型的にはそれら全てのピークを有する結晶であることを特徴とする上記(20)に記載の製造方法。
【0014】
本件化合物1の結晶は、製剤毎の本件化合物の含量を均一となすことが容易である等の製剤化工程におけるメリットが高く、また、その結晶は、油状物である場合に比べて溶媒等の除去が容易である点においても有利であり、工業的規模の製造にも適している。
【0015】
本発明の特定の態様において使用される本件化合物1の結晶としては、A形結晶が好ましい例として挙げられる。本件化合物1のA形結晶は、上述の発明(5)〜(7−1)の各種の特性、又は本願明細書の実施例、試験例等にて確認された各種の特性のいずれか一つ又は二つ以上の組合せにて規定される結晶である。前述本件化合物1の結晶が有するメリットの他に、このA形結晶が一定の性状を示すことより、コントロールされていない単なる結晶に比べて、製剤として、あるいは薬効を発揮する上で、さらには製造過程等において好ましい性質を示すものであることを確認した。なお、上述のA形結晶は、例えば、後述のB形結晶に比較して、水系溶媒に対してより高い溶解性が認められ、その点でも好ましい。
【0016】
A形結晶の有する好ましい効果を最も発揮させるためには、実質的にA形結晶であるA形結晶を用いることが好ましく、このようなA形結晶としては、A形結晶の結晶純度(百分率)が、通常は90重量%程度以上が挙げられ、95重量%以上が好ましい例として挙げられ、97重量%以上がより好ましく、99重量%以上がさらに好ましく、約100重量%であることが特に好ましい例として例示される。また場合によっては、93重量%以上が好ましく、98重量%以上がさらに好ましく、99.5重量%以上が特に好ましい。さらに本件の医薬として用いるに際しては通常80重量%以上であってもよい。また、A形結晶の好ましい態様としては、A形以外の結晶形を実質的に含まない結晶も例示される。「実質的に含まない」とはA形結晶以外の結晶形を好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下、特に好ましくは1重量%以下、最も好ましくは全く含まないことを意味する。
【0017】
また本発明の更なる態様において使用される結晶としては、B形結晶も好ましい例として挙げられる。本件化合物1のB形結晶については、上述の発明(8)〜(10−1)の各種の特性、又は本願明細書の実施例、試験例等にて確認された各種の特性のいずれか一つ又は二つ以上の組合せにて規定される結晶である。前述本件化合物1の結晶が有するメリットの他に、このB形結晶は、一定の性状を示すことより、コントロールされていない単なる結晶に比べて、製剤として、あるいは薬効を発揮する上で、さらには製造過程等において好ましい性質を示すものである。またこのB形結晶は、A形結晶に比較しては、ろ過性がより高いことや、これとは別に流動特性がより改善されており、B形結晶を大量製造する際には、例えば、ろ過工程および/または脱水工程等における所要時間を短縮できることが期待される。またB形結晶は、乾燥製剤、固体製剤の製造に際してもより好ましいものである。ろ過脱水後のB形結晶は、ろ過脱水後のA形結晶に比較して、含水率が低いことも確認されており、特に大量製造する際には、乾燥にかかる時間の短縮や熱エネルギーを減ずることが期待され好ましいものと考えられる。またこれらとは別に、このB形結晶はA形結晶よりも実質的に良好な形態的安定性を有すると考えられる。B形結晶の有する好ましい効果を最も発揮させるためには、実質的にB形結晶であるB形結晶を用いることが好ましく、このようなB形結晶としては、B形結晶の結晶純度(百分率)が通常は90重量%程度以上が挙げられ、95重量%以上が好ましい例として挙げられ、97重量%以上がより好ましく、99重量%以上がさらに好ましく、約100重量%であることが特に好ましい例として例示される。また場合によっては、93重量%以上が好ましく、98重量%以上がさらに好ましく、99.5重量%以上が特に好ましい。さらに本件の医薬として用いるに際しては通常80重量%以上であってもよい。また、B形結晶の好ましい態様としては、B形以外の結晶形を実質的に含まない結晶も例示される。「実質的に含まない」とはB形結晶以外の結晶形を好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下、特に好ましくは1重量%以下、最も好ましくは全く含まないことを意味する。
【0018】
なお、A形結晶の結晶純度(百分率)としては、A形結晶の結晶の存在重量を本件化合物1の存在重量で除して100倍すればよい。ここで、A形結晶の結晶の存在重量や本件化合物1の存在重量の測定方法としては、下記のいずれかの方法を適用してもよく、さらにはそれらに適宜の変更を加えた測定方法を用いることも可能である。
【0019】
加えて、測定方法によっては測定誤差が必要以上に現れることがあり得るが、その際には既知量の標準品を用いてその誤差の大きさを確認し、補正することも好ましい。例えば、本発明においては、示差走査熱量分析による測定方法(特に本願明細書に記載された具体的な測定条件が特に好ましい例として挙げられる)にて算出された結晶の測定値を、HPLCによる測定(特に本願明細書に記載された具体的な測定条件が特に好ましい例として挙げられる)にて算出された本件化合物1の測定値により除して100倍することにより算出された値として結晶純度が表示されることが特に好ましい。また、B形結晶の結晶純度(百分率)も上記の説明と同様であり、その測定方法は適宜変更することが出来るが、示差走査熱量分析による測定方法(特に本願明細書に記載された具体的な測定条件が特に好ましい例として挙げられる)にて算出された結晶の測定値を、HPLCによる測定(特に本願明細書に記載された具体的な測定条件が特に好ましい例として挙げられる)にて算出された本件化合物1の測定値により除して100倍することにより算出された値として結晶純度が表示されることが特に好ましい。
【0020】
要すれば、それぞれの結晶の存在量は、示差走査熱量分析、または粉末X線回折スペクトルや、赤外吸収スペクトル、固体13C−NMRスペクトル、ラマンスペクトル等における特徴的なピークの強度を測定することによって算出することができ、とりわけ上記のとおり、本件化合物1のA形結晶やB形結晶の存在率を測定するに際しては、示差走査熱量分析にて測定する方法が好ましい例として挙げられる。本件化合物1のA形結晶を例にとって具体的に説明すると、適当な昇温速度による示差走査熱量分析(適当な昇温速度としては、例えば50℃/分が挙げられる。)において、結晶として純粋なA形結晶を標準品として用い、その標準品の重量(mg)とA形結晶の融解に基づく約185℃付近の吸熱ピークの面積(mJ)をプロットして検量線を作成し、測定すべき試料における約185℃付近の吸熱ピークの面積(mJ)を前記検量線と対比してA形結晶の存在量を算出することができる。また本件化合物1のB形結晶についても、同様にしてその存在量を算出することができる。すなわち、結晶として純粋なB形結晶を標準品として用い、例えば、B形結晶の示差走査熱量分析の吸熱ピークとしては通常約205℃付近の吸熱ピークを測定すればよい。
【0021】
示差走査熱量分析以外の測定方法、すなわち粉末X線回折スペクトルや、赤外吸収スペクトル、固体13C−NMRスペクトル、ラマンスペクトル等の測定方法においても、示差走査熱量分析と同様に標準品を用いて検量線を作成することにより、目的とする結晶形の存在量を算出することができる。
【0022】
特に示差走査熱量分析以外の測定方法、すなわち粉末X線回折スペクトルや、赤外吸収スペクトル、固体13C−NMRスペクトル、ラマンスペクトル等の測定方法により目的とする結晶形の存在量を算出する場合、それぞれの結晶形に特徴的なピークを適宜選択して検量線を作成し、目的とする結晶形の存在量を算出することができる。
【0023】
なお粉末X線回折スペクトル測定に用いる光学系としては、一般的な集中法光学系又は平行ビーム法光学系が例示される。用いる光学系としては特に限定されることはないが、分解能や強度を確保したい場合には集中法光学系を用いて測定することが好ましい。また、結晶の形状(針状、板状等)によって一定の方向を向いてしまう現象である配向を抑えたい場合には平行ビーム法光学系を用いて測定することが好ましい。集中法光学系の測定装置としては、XRD−6000(島津製作所社製)又はMultiFlex(リガク社製)等が例示される。また、平行ビーム法光学系の測定装置としてはXRD−7700(島津製作所社製)又はRINT2200Ultima+/PC(リガク社製)等が例示される。
【0024】
また、製剤中の本件化合物1の存在量を測定する必要がある場合には、通常はHPLCを用いることが簡便であり好ましい。すなわち、例えば本件化合物1についての、化学的純度既知の本件化合物1の標準品を用いてHPLC法により測定してその検量線を作成し、この検量線に基づき試料中の本件化合物1の存在量を定量することができる。
【0025】
上述の本件化合物1に関するHPLCによる定量方法や結晶の測定方法は、後述の本件化合物2又は本件化合物3においても同様に適用し得る。例えば、HPLC条件としては前記と同一の条件にて行うことが可能であり、示差走査熱量分析による測定方法もそれぞれにおいて特徴的な吸熱ピークを用いて測定することができる。さらに、それぞれの結晶純度も上述と同様に測定し算出することができる。上述の測定において標準品として用いる純粋な本件化合物1のA形結晶やB形結晶、及び後述の結晶の製造方法において用いる種晶としての純粋な本件化合物1のA形結晶やB形結晶は、好ましくはそれぞれ本願実施例3、4又は5のそれぞれの方法に従い取得し、その中から特に形状の好ましい結晶を選択し、さらに示差走査熱量分析によりそれぞれ特徴的な単一の吸熱ピークを示す結晶を選択することによって、そのそれぞれを取得することができる。また、実施例6〜7のそれぞれの方法に従って取得したB形結晶を標準品として用いることも可能である。さらに、実施例6〜7のそれぞれの方法に従って取得したB形結晶を、純粋なB形結晶を取得するための種晶として用いることも可能である。ところで、A形結晶にB形結晶が混入する場合、示差走査熱量分析による当該A形結晶の定量値が通常の標準品A形結晶の定量値に比較して低目に計測されることがある。この程度は、A形結晶に対するB形結晶の混入率により変化するが、例えば、B形結晶の混入率10%以内であれば、A形結晶の定量値は、通常の10%程度の誤差となる可能性がある。また、B形結晶の混入率が50%近くになると、最大20%程度までの誤差となる可能性がある。また逆に、B形結晶にA形結晶が混入する場合には、その定量値が標準品B形結晶に比較して高目に計測されることがあり、B形結晶に対するA形結晶の混入率により変化するが、同様に、例えば、A形結晶の混入率10%以内であれば、B形結晶の定量値は、通常の10%程度の誤差となる可能性があるし、また、A形結晶の混入率が50%近くになると、最大20%程度までの誤差となる可能性がある。特に互いの混入率が高くない通常の状態において、A形結晶、又はB形結晶の結晶純度は、約10%程度の誤差を含むことがある。定量する際には、予想される混合率の標準品による検量線を作成して定量する方法がある。また、混入率をより明確に判断するためには、A形結晶標準品とB形結晶標準品の混合率既知の混合物を適宜調製して、問題とする結晶の混合率(百分率)と、その結晶の融解に基づく吸熱ピークの面積(mJ)の全体のピーク面積に対する百分率から検量線を作成し、この検量線により被検物中の該結晶の混合比率を知ることができる。
【0026】
また、示差走査熱量分析以外の測定方法、すなわち粉末X線回折スペクトルや、赤外吸収スペクトル、固体13C−NMRスペクトル、ラマンスペクトル等の測定方法においても、混合率既知の標準品混合物を用いた検量線により、混合比率をより明確に判断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
[本件化合物1のA形結晶の製造方法]
本件化合物1のA形結晶の製造方法として、本件化合物1の塩基性条件下の溶液に酸を加え本件化合物1からなる結晶を生ぜせしめ、その結晶を取得する方法が挙げられる。
【0028】
すなわち、本発明に用いる本件化合物1の塩基性条件下の溶液としては、該化合物が塩基性条件下にて溶解された溶液であれば特に限定されず、ここで、溶解されるべき該化合物は、油状、固体状(各種結晶形、無晶形を含む)あるいはそれらの混合物のいずれであっても良い。なお、本件化合物1は、国際公開WO第03/70686号公報の方法に従って調製することができる。
【0029】
上述の塩基性条件下の溶液を調製するために用いられる塩基としては、無機塩基が好ましい。すなわち、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシドなどのアルカリ金属塩基などが挙げられ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどは好ましく、水酸化ナトリウムは特に好ましい例として挙げられる。これらはあらかじめ水あるいはメタノール、エタノール、t−ブタノールなどのアルコール類などの溶液状にしたものを用いることもでき、あらかじめ一定の濃度の塩基を含む水溶液を調製して用いる場合、加える量を規定しやすい点などから特に好ましい。また濃厚な塩基性溶液を用いた場合、後に酸を加えた際、高い中和熱が発生することも考えられるため、0.5〜2規定の塩基の水溶液を用いる場合が非常に好ましい例として挙げられる。
【0030】
加える塩基の量は、下限としては、該化合物1当量に対して、通常は0.8当量以上、好ましくは0.9当量以上、より好ましくは1.0当量以上が例示される。上限としては、該化合物1当量に対して、通常3.0当量以下が例示され、2.0当量以下が好ましい例として挙げられる。
【0031】
化合物を塩基とともに溶解するために用いる溶媒としては、好ましくは極性溶媒が挙げられ、具体的には水、メタノール、エタノールなどのアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、アセトンなどが挙げられ、必要に応じてこれらを混合して用いることができる。これらのうち水、メタノール、エタノール、テトラヒドロフランなどは好ましく、水、メタノール、エタノールなどは特に好ましい。また水とメタノールを混合して用いる場合は非常に好ましく、塩基を含む溶液とした後の水:メタノールの混合比は1:20〜10:1が例示されるが1:10〜1:1の比率が好ましい。
【0032】
上述の塩基性条件下の溶液においては、溶媒の沸点以下の温度で加温してもよく、また不溶物が存在する場合、ろ過などの操作により不溶物を取り除くことが好ましい。
【0033】
上記溶液に加える酸としては、酸を添加することにより生ずる結晶の沈殿物に取り込まれない限り液体状、固体状及び気体状のいずれの状態のものでも良いが、好ましくは溶液状、又は気体であり、溶液状の酸が特に好ましい例として挙げられる。
【0034】
また、その種類は各種有機酸及び無機酸が挙げられるが、用いる酸は塩基を中和するためにその酸性度が本件化合物の酸性度より高い必要があり、塩酸、硫酸、燐酸などの鉱酸が好ましく塩酸は特に好ましい。これらはあらかじめ水あるいはメタノール、エタノール、t−ブタノールなどのアルコール類などの溶液状にしたものを用いることもでき、あらかじめ一定の濃度の酸を含む水溶液を調製して用いる場合、加える量を規定しやすい点などから好ましい。また濃厚な酸性溶液を用いた場合、高い中和熱が発生することも考えられるため、0.5〜2規定の酸性水溶液を用いる場合が特に好ましい例として挙げられる。
【0035】
加える酸の量としては、結晶が十分に生成する程度まで添加すれば良く特に限定されないが、通常は、塩基1当量に対して、通常0.8当量以上が例示され、好ましくは0.9当量以上添加することが好ましい。また、約1当量添加することが特に好ましい。また上限としては特に限定されないが、塩基1当量に対して、通常1.5当量以下が例示され、1.2当量以下が好ましい例として挙げられる。
【0036】
酸を加える方法としては、(1)一度に加える、(2)数回に分けて加える、(3)滴下などの方法で連続的に時間をかけて加える、などが挙げられるが、滴下などの方法で連続的に時間をかけて加える方法が好ましい。酸を加える際には攪拌を行うことが好ましい。加える速度に関しては、用いた化合物の量、塩基性条件下の溶液における塩基の濃度、用いる酸の種類、酸性溶液の濃度によっても異なるが、0.5〜2規定の塩酸を用いた場合、1時間〜6時間かけて全量を加える方法が例示される。
【0037】
酸を加える際の温度については、上限としては60℃以下が好ましく、50℃以下がより好ましく、45℃以下がさらに好ましく、下限としては0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、25℃以上がさらに好ましい。
【0038】
生じた結晶を取得するに際しては、通常は、酸の添加後24時間以内、好ましくは20時間以内、特に好ましくは10時間以内に行うことが例示される。また、酸の添加の直後に結晶を取得することもできるが、好ましくは添加後1時間以降、特に好ましくは添加後3時間以降に行うことが好ましい。
【0039】
析出した結晶の採取方法としては、濾過やデカンテーション等の公知の方法により結晶を取得することができるが、通常は、濾過することが好ましい。またろ過により結晶を採取した後、極性溶媒、例えば水、メタノール、エタノール又はそれらの混合液により結晶を洗浄することができ、これは不純物を取り除く操作として有効である。洗浄方法としては、濾過器上の結晶を極性溶媒ですすぐ方法が好ましい。また、結晶を極性溶媒、例えば水、メタノール、エタノール又はそれらの混合液に投入して懸濁液とし、これを十分攪拌した後再度結晶を濾過により取得する方法も好ましい。さらに、上記の2つの洗浄を両方行うことが特に好ましい。採取した結晶は、通常行われる乾燥方法、例えば減圧乾燥、減圧加温乾燥、常圧加温乾燥、風乾などにより乾燥することができる。
【0040】
酸を加えた後の最終的な化合物の析出濃度としては、用いる溶媒の種類、混合溶媒の場合はその比率によっても異なるが、下限としては一般的に1w/v%以上、好ましくは5w/v%以上が挙げられる。上限としては、30w/v%以下が好ましく、20w/v%以下が好ましい例として挙げられる。
【0041】
なお、結晶を生成させるに際して、少量のA結晶を種晶として添加することも好ましい態様と考えられる。
【0042】
上記の製造方法のうち好ましい例としては、以下が例示される。以下の3つの製造方法の例示において、使用する塩基の量、酸添加前の攪拌温度、加える酸の量、及び酸添加後の攪拌時間は前述した好ましい例を採用することができる。
【0043】
3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸に対して0.8〜3.0当量の水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを含む、水、メタノール、エタノール、テトラヒドロフランあるいはこれらの混合溶媒に溶解された溶液に、攪拌下10〜50℃の温度で、塩基1当量に対して0.8〜1.5当量の塩酸、硫酸、又は燐酸の水溶液を滴下などの方法で連続的に時間をかけて加え、さらに1〜24時間攪拌し結晶を得る方法。
【0044】
また上記の化合物1当量に対して0.9〜2.0当量の水酸化ナトリウムを含む、水、メタノール、エタノールあるいはこれらの混合溶媒に溶解された溶液に、攪拌下25〜45℃の温度で、塩基1当量に対して0.9〜1.2当量の0.5〜2規定塩酸水溶液を1時間〜6時間かけて加え、さらに3〜24時間攪拌し結晶を得る方法。
【0045】
また上記の化合物1当量に対して0.9〜2.0当量の0.5〜2規定水酸化ナトリウム水溶液及びメタノールを加え溶解された溶液に、攪拌下25〜45℃の温度で、塩基1当量に対して0.9〜1.2当量の0.5〜2規定塩酸水溶液を1時間〜6時間かけて加え、さらに3〜24時間攪拌し結晶を得る方法。
【0046】
また、上述の本件化合物1の塩基性条件下の溶液としては、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸の低級アルキルエステルのアルカリ加水分解物であってもよい。つまり、A形結晶の別の製造方法としては以下が挙げられる。
【0047】
3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸の低級アルキルエステルを溶媒中アルカリ加水分解した後、当該塩基性条件下の溶液に酸を加えることにより結晶を得る方法である。
【0048】
上記“低級アルキルエステル”としては、炭素数1〜4のアルキル基のカルボン酸エステルが例示され、炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、t−ブチル基の何れかを示す。このうちメチル基及びエチル基は特に好ましい例である。
【0049】
3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸の低級アルキルエステルは、国際公開WO第03/70686号公報の方法に従って調製することができる。
【0050】
上記化合物のアルカリ加水分解物を調製するに際して用いる塩基としては、前述の溶液を塩基性条件下にするために用いる塩基を用いることができる。
【0051】
塩基の使用量は化合物1当量に対し、通常は1当量以上が例示される。上限としては、該化合物1当量に対して、通常10当量以下が例示され、3当量以下が好ましく、2当量以下が特に好ましい例として挙げられる。
【0052】
溶媒としては、通常、反応を妨げない不活性媒体、好ましくは極性溶媒中で反応せしめることが好ましい。前述の条件も参考にすることができるが、極性溶媒としては水、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられ、必要に応じてこれらを混合して用いることができる。これらのうち水、メタノール、エタノール、テトラヒドロフランなどは好ましく、水、メタノール、エタノールなどは特に好ましい。また水とメタノールを混合して用いる場合は非常に好ましく、塩基を加えた後の反応溶液として水:メタノールの混合比は1:20〜10:1が例示されるが1:10〜1:1の比率が好ましい。
【0053】
なお、該アルカリ加水分解の反応温度は、例えば室温〜溶媒の還流温度までの適当な温度が選択され、特に好ましい例としては50〜70℃の条件が挙げられる。反応時間は、通常は0.5〜72時間で、好ましくは1〜24時間が例示され、より具体的には上限としては24時間以内が好ましく、20時間以内がより好ましく、10時間以内がさらに好ましく、下限としては0.5時間以降が好ましく、1時間以降がより好ましく、3時間以降がさらに好ましいが、薄層クロマトグラフィー(TLC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等により反応経過を追跡することが可能であるから、通常は3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸の収量が最大となるところで適宜反応を終了させればよい。
【0054】
アルカリ加水分解反応後、その塩基性条件下の溶液に添加する酸や結晶の生成条件や採取方法等については、前述の通りである。
【0055】
上記の製造方法のうち好ましい例としては、以下が例示される。以下の3つの製造方法の例示において、アルカリ加水分解において使用する塩基の量、加水分解反応の反応温度、加水分解反応の反応時間、酸添加前の攪拌温度、加える酸の量、及び酸添加後の攪拌時間は前述した好ましい例を採用することができる。
【0056】
3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸の低級アルキルエステルを水、メタノール、エタノール、テトラヒドロフランあるいはこれらの混合溶媒中、該低級アルキルエステル1当量に対して1〜3当量の水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウム存在下、50〜70℃で1〜24時間反応した後、攪拌下10〜50℃の温度で、塩基1当量に対して0.8〜1.5当量の塩酸、硫酸、又は燐酸の水溶液を滴下などの方法で連続的に時間をかけて加え、さらに1〜24時間攪拌し結晶を得る方法。
【0057】
また、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸のメチルあるいはエチルエステルを水、メタノール、エタノール、あるいはこれらの混合溶媒中、該メチルあるいはエチルエステル1当量に対して1〜2当量の水酸化ナトリウム存在下、50〜70℃で1〜24時間反応した後、攪拌下25〜45℃の温度で、塩基に対して0.9〜1.2当量の0.5〜2規定塩酸水溶液を1時間〜6時間かけて加え、さらに3〜24時間攪拌し結晶を得る方法。
また、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸のメチルあるいはエチルエステルに、該メチルあるいはエチルエステル1当量に対して1〜2当量の0.5〜2規定水酸化ナトリウム水溶液及びメタノールを加え50〜70℃で1〜24時間反応した後、攪拌下25〜45℃の温度で、塩基1当量に対して0.9〜1.2当量の0.5〜2規定塩酸水溶液を1時間〜6時間かけて加え、さらに3〜24時間攪拌し結晶を得る方法。
【0058】
[本件化合物1のB形結晶の製造方法]
本件化合物1のB形結晶の製造方法としては、本件化合物1を、アセトン、ジクロロメタン、メタノール、酢酸エチル、メタノール/酢酸混液、及びアセトニトリルから成る群から選択されるいずれか一つ又は二つ以上の溶媒に溶解させた溶液から結晶化せしめる方法が挙げられる。
【0059】
本件化合物1は、前述のとおり、国際公開WO第03/70686号公報の方法等に従って調製することができる。
【0060】
また上記において用いる溶媒としては、アセトン、ジクロロメタン、メタノール、酢酸エチル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ニトロベンゼン、2,2,2−トリフルオロエタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどが挙げられ、また、これらの溶媒は混合して用いることもできる。さらにテトラヒドロフラン/水、N,N−ジメチルホルムアミド/水、N,N−ジメチルアセトアミド/水、テトラヒドロフラン/メタノール、ジイソプロピルエーテル/酢酸、メタノール/酢酸などが挙げられる。これらのうちアセトン、ジクロロメタン、メタノール、酢酸エチル、アセトニトリル、メタノール/酢酸などは好ましく、アセトン、ジクロロメタンなどは特に好ましい。
【0061】
化合物を溶媒に溶解する際は、得られる結晶の収量の点などから溶媒の沸点以下の温度で加温することが好ましく、また不溶物が存在する場合、濾過などの操作により不溶物を取り除いてもよい。
【0062】
加える溶媒の量は、用いる溶媒の種類、混合溶媒の場合はその比率によっても異なるが、用いた溶媒の沸点以下の温度で化合物が溶解する量が好ましく、さらには、得られる結晶の収量の点などから溶媒の沸点付近で化合物が溶解し飽和濃度となる量を用いるのが特に好ましい。具体的には、例えば溶媒としてアセトンを用いた場合には、化合物1gに対して15〜25mlが好ましく、15ml程度がさらに好ましい例として挙げられる。また、ジクロロメタンを用いた場合には化合物1gに対して30〜50mlの量を用いるのが好ましく、30ml程度がさらに好ましい例として挙げられる。
【0063】
加温して調製した化合物の溶液を冷却する方法としては、急激に冷却する、段階的に冷却する、放冷する、などの方法が挙げられるが、段階的に冷却する方法もしくは放冷する方法が好ましい。
【0064】
冷却温度は、用いる溶媒の量、用いる溶媒の種類、混合溶媒の場合はその比率によっても異なり、化合物を溶解させたときの温度によっても異なるが、化合物が飽和濃度以上となる温度まで冷却することが好ましい。
【0065】
冷却操作は、撹拌しながら行っても、静置して行ってもよいが、結晶の析出を早め、操作時間を短縮する点からは撹拌しながら行うのが好ましい。
【0066】
なお、上記の方法により結晶を生成させるに際して、少量のB結晶を種晶として添加することも好ましい態様である。
【0067】
析出した結晶の採取は、一般的にろ過によって行うことができる。またろ過により結晶を採取した後、化合物の溶解に用いた溶媒または結晶を著しく溶解しない溶媒、またはそれらの混合液により結晶を洗浄することができ、これは不純物を取り除く操作として有効である。
【0068】
採取した結晶は、通常行われる乾燥方法、例えば減圧乾燥、減圧加温乾燥、常圧加温乾燥、風乾などにより乾燥することができる。
【0069】
上記の製造方法のうち好ましい例としては、以下が例示される。
【0070】
本件化合物1の1gに対して15〜25mlのアセトン、もしくは30〜50mlのジクロロメタンを加え、沸点付近まで加温して該化合物を溶解し、必要に応じ不溶物をろ過した後、室温で撹拌し、数時間〜数日後、生成した結晶を得る方法。
【0071】
また本件化合物1のB形結晶についての他の製造方法としては、本件化合物1の塩基性条件下の溶液に酸を加える過程で本件化合物1が結晶しはじめる直前に本件化合物1のB形結晶を種晶として加え、本件化合物1のB形結晶を生ぜせしめ、その結晶を取得する方法も挙げられる。
【0072】
本発明に用いる本件化合物1やその形状、入手方法は、前述の「本件化合物1のA形結晶の製造方法」の項における説明と同様である。さらに本件化合物1の塩基性条件下の溶液の調製方法等も前記と同様である。さらに上述の塩基性条件下の溶液は、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸の低級アルキルエステルのアルカリ加水分解物であってもよいことも前記と同様である。
【0073】
上述の塩基性条件下の溶液を調製するために用いられる塩基の種類や添加量等や、化合物を塩基とともに溶解するために用いる溶媒の種類や添加量等、さらに添加する酸の種類や添加量、加える方法、加える速度、加える際の温度等についても上記での説明が準用できる。B形結晶の種晶を加える方法としては、種晶を加える段階で混合液中に結晶が存在しない状態であることが好ましく、また加えた種晶が溶解せずに存在する状態であることが好ましい。該化合物の当量以上の塩基を加えて溶解させた後に酸を加える場合、当量以上の塩基が、加えた酸によって中和された段階で、B形結晶の種晶を加えることが種晶の溶解を回避する点で好ましい。また、この時、当量以上の塩基の中和をpH計等による機器を用いて確認することも好ましい方法である。すなわち、例えば、該化合物に対して1.5当量の塩基を用いて該化合物を溶解する場合、0.5当量相当の酸を加え、系内のpHが7〜9程度の弱塩基性を示した段階で種晶を添加することが好ましい例として挙げられる。また、種晶は酸の添加により結晶が生成する前に添加することが好ましい。2規定の塩酸を1時間〜6時間かけて加える場合、上述した該化合物の当量以上の塩基の中和が終了した後、0.1〜0.2当量の酸の添加により、系内のpHが弱酸性を示す段階で結晶が生成し始める可能性が高いため、B形の種晶添加はこれより早い段階で行うことが好ましい。
【0074】
添加するB形結晶の量としては、添加した結晶が溶解しない量であれば良く特に限定されないが、該化合物に対して通常0.01%以上が例示され、好ましくは0.05%以上、特に好ましくは約0.1%添加することが例示される。また上限としては特に限定されないが、該化合物に対して、通常2%以下が例示され、好ましくは1.5%以下、さらに好ましいくは1.0%以下、特に好ましくは0.3%以下が例示される。析出した結晶の採取方法、採取した結晶の乾燥方法、酸を加えた後の最終的な化合物の析出濃度等については、前述の「本件化合物1のA形結晶の製造方法」の項と同様の条件を用いることができる。
【0075】
上記の製造方法のうち好ましい例としては、以下が例示される。以下の3つの製造方法の例示において、使用する塩基の量、酸添加前の攪拌温度、加える酸の量、加えるB形の種晶の量、及び酸添加後の攪拌時間は前述した好ましい例を採用することができる。
【0076】
本件化合物1の1当量に対して0.8〜3.0当量の水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを含む、水、メタノール、エタノール、テトラヒドロフランあるいはこれらの混合溶媒に溶解された溶液に、攪拌下10〜50℃の温度で、塩基1当量に対して0.8〜1.5当量の塩酸、硫酸、又は燐酸の水溶液を滴下などの方法で連続的に時間をかけて加え、その途中系内のpHが7〜9の弱塩基性を示した段階でB形の種晶を該化合物に対して0.01〜2%加えた後、さらに1〜24時間攪拌し結晶を得る方法。
【0077】
また本件化合物1の1当量に対して0.9〜2.0当量の水酸化ナトリウムを含む、水、メタノール、エタノールあるいはこれらの混合溶媒に溶解された溶液に、攪拌下25〜45℃の温度で、塩基1当量に対して0.9〜1.2当量の0.5〜2規定塩酸水溶液を1時間〜6時間かけて加え、その途中系内のpHが7〜9の弱塩基性を示した段階でB形の種晶を該化合物に対して0.05〜1.5%加えた後、さらに1〜5時間攪拌し結晶を得る方法。
【0078】
また本件化合物1の1当量に対して0.9〜2.0当量の0.5〜2規定水酸化ナトリウム水溶液及びメタノールを加え溶解された溶液に、攪拌下25〜45℃の温度で、塩基1当量に対して0.9〜1.2当量の0.5〜2規定塩酸水溶液を1時間〜6時間かけて加え、その途中系内のpHが7〜9の弱塩基性を示した段階でB形の種晶を該化合物に対して0.1%加えた後、さらに1〜5時間攪拌し結晶を得る方法。
【0079】
また製造方法の好ましい例としては、以下の態様も例示される。以下の3つの製造方法の例示において、アルカリ加水分解において使用する塩基の量、加水分解反応の反応温度、加水分解反応の反応時間、酸添加前の攪拌温度、加える酸の量、加えるB形の種晶の量、及び酸添加後の攪拌時間は前述した好ましい例を採用することができる。
【0080】
3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸の低級アルキルエステルを水、メタノール、エタノール、テトラヒドロフランあるいはこれらの混合溶媒中、該低級アルキルエステル1当量に対して1〜3当量の水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウム存在下、50〜70℃で1〜24時間反応した後、攪拌下10〜50℃の温度で、塩基1当量に対して0.8〜1.5当量の塩酸、硫酸、又は燐酸の水溶液を滴下などの方法で連続的に時間をかけて加え、その途中系内のpHが7〜9の弱塩基性を示した段階でB形の種晶を該化合物に対して0.01〜2%加えた後、さらに1〜24時間攪拌し結晶を得る方法。
【0081】
また、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸のメチルあるいはエチルエステルを水、メタノール、エタノール、あるいはこれらの混合溶媒中、該メチルあるいはエチルエステル1当量に対して1〜2当量の水酸化ナトリウム存在下、50〜70℃で1〜24時間反応した後、攪拌下25〜45℃の温度で、塩基に対して0.9〜1.2当量の0.5〜2規定塩酸水溶液を1時間〜6時間かけて加え、その途中系内のpHが7〜9の弱塩基性を示した段階でB形の種晶を該化合物に対して0.05〜1.5%加えた後、さらに3〜24時間攪拌し結晶を得る方法。
また、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸のメチルあるいはエチルエステルに、該メチルあるいはエチルエステル1当量に対して1〜2当量の0.5〜2規定水酸化ナトリウム水溶液及びメタノールを加え50〜70℃で1〜24時間反応した後、攪拌下25〜45℃の温度で、塩基1当量に対して0.9〜1.2当量の0.5〜2規定塩酸水溶液を1時間〜6時間かけて加え、その途中系内のpHが7〜9の弱塩基性を示した段階でB形の種晶を該化合物に対して0.1%加えた後、さらに3〜24時間攪拌し結晶を得る方法。
【0082】
[本件化合物2の結晶の製造方法]
また、本発明の本件化合物2の結晶については、製剤毎の本件化合物の含量を均一となすことが容易である等の製剤化工程におけるメリットが高く、また、その結晶は、油状物である場合に比べて溶媒等の除去が容易である点においても有利であり、更にその結晶の製造方法を見出したことで上述の公知製造方法にあるカラムクロマトグラフィーによる精製を行うことなく純度の良い本件化合物が得られるメリットがあり、工業的規模の製造にも適しており、極めて好ましいものである。
【0083】
本件化合物2の結晶の製造方法としては、本件化合物2が溶解しやすい富溶媒に溶解して調製した溶液に、該化合物を溶解しにくい貧溶媒を加え該化合物からなる結晶を生ぜせしめ、その結晶を得る方法が挙げられる。なお、本件化合物2は、国際公開WO第03/70686号公報の方法に従って調製することができる。
【0084】
該化合物の溶解に用いる富溶媒としては、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトン、ジメトキシエタン、メタノールなどが挙げられるが、アセトン、トルエン、テトラヒドロフランなどは好ましく、アセトンは特に好ましい。また、該化合物の結晶を生成させるために加える貧溶媒としては、ヘプタン、ジイソプロピルエーテル、イソプロパノール、t−ブチルメチルエーテル、水などが挙げられるが、富溶媒としてアセトンを用いた場合には水が好ましく、富溶媒としてトルエンもしくはテトラヒドロフランを用いる場合にはヘプタンが好ましい。富溶媒としてアセトン、貧溶媒として水を用いる組み合わせは特に好ましい例として挙げられる。
【0085】
富溶媒により調製する溶液の濃度としては、上限としては20w/v%以下であることが好ましく、10w/v%以下であることがより好ましく、下限としては5w/v%以上であることが好ましい。加える貧溶媒の量としては富溶媒に対して上限としては2.0倍量以下が好ましく、1.5倍量以下がより好ましく、1.1倍量以下がさらに好ましく、下限としては0.8倍量以上が好ましく、0.9倍量以上がより好ましい。特に1.0倍量添加することが好ましい。さらに1.05倍量添加することが特に好ましい別の態様もある。貧溶媒の添加法としては、滴下などの方法で連続的に時間をかけて加える方法が好ましい。貧溶媒を加える際には撹拌を行うことが好ましい。加える速度に関しては、用いた化合物の量、溶液における化合物の濃度、用いる富溶媒、貧溶媒の種類、によっても異なるが、化合物のアセトン溶液に、貧溶媒として水を加える場合、1時間〜3時間かけて加える方法が例示される。
【0086】
貧溶媒を加える際の温度については、上限としては50℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましく、30℃以下がさらに好ましく、下限としては0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、20℃以上がさらに好ましい。
【0087】
生じた結晶を取得するに際しては、通常は、貧溶媒の添加後1時間以降、24時間以内、好ましくは1時間以降、5時間以内に行うことが例示される。
【0088】
析出した結晶の採取方法としては、濾過やデカンテーション等の公知の方法により結晶を取得することができるが、通常は、濾過することが好ましい。またろ過により結晶を採取した後、極性溶媒、例えば水、アセトン又はそれらの混合液により結晶を洗浄することができ、これは不純物を取り除く操作として有効である。
【0089】
採取した結晶は、通常行われる乾燥方法、例えば減圧乾燥、減圧加温乾燥、常圧加温乾燥、風乾などにより乾燥することができる。
【0090】
[本件化合物3の結晶の製造方法]
さらに本発明の本件化合物3の結晶については、製剤毎の本件化合物の含量を均一となすことが容易である等の製剤化工程におけるメリットが高く、また、その結晶は、油状物である場合に比べて溶媒等の除去が容易である点においても有利であり、更にその結晶の製造方法を見出したことで上述の公知製造方法にあるカラムクロマトグラフィーによる精製を行うことなく純度の良い本件化合物が得られるメリットがあり、工業的規模の製造にも適しており、極めて好ましいものである。
【0091】
本件化合物3の結晶の製造方法としては、本件化合物3が溶解しやすい富溶媒に溶解して調製した溶液に、該化合物を溶解しにくい貧溶媒を加え該化合物からなる結晶を生ぜせしめ、その結晶を得る方法が挙げられる。
【0092】
なお、本件化合物3は、国際公開WO第03/70686号公報の方法に従って調製することができる。また、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸を、例えばメタノール溶媒中、酸性条件下でメチルエステル化させる等、通常のメチルエステル化反応を用いて調製することもできる。
【0093】
該化合物の溶解に用いる富溶媒としては、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトンなどが挙げられるが、アセトン、テトラヒドロフランなどは好ましく、テトラヒドロフランは特に好ましい。また、貧溶媒としては、ヘプタン、イソプロパノール、メタノール、水などが挙げられるが、富溶媒としてアセトンを用いる場合には水もしくはヘプタンが好ましく、富溶媒としてテトラヒドロフランを用いる場合にはヘプタン、イソプロパノール、水が好ましい。富溶媒としてテトラヒドロフラン、貧溶媒として水を用いる組み合わせは特に好ましい例として挙げられる。
【0094】
富溶媒により調製する溶液の濃度としては、上限としては20w/v%以下であることが好ましく、10w/v%以下であることがより好ましく、下限としては5w/v%以上であることが好ましい。加える貧溶媒の量としては富溶媒に対して上限としては2.0倍量以下が好ましく、1.5倍量以下がより好ましく、1.1倍量以下がさらに好ましく、下限としては0.8倍量以上が好ましく、0.9倍量以上がより好ましい。特に1.0倍量添加することが好ましい。さらに1.05倍量添加することが特に好ましい別の態様もある。貧溶媒の添加法としては滴下などの方法で連続的に時間をかけて加える方法が好ましい。貧溶媒を加える際には撹拌を行うことが好ましい。加える速度に関しては、用いた化合物の量、溶液における化合物の濃度、用いる富溶媒、貧溶媒の種類、によっても異なるが、化合物のテトラヒドロフラン溶液に、貧溶媒として水を加える場合、1時間〜3時間かけて加える方法が例示される。
【0095】
貧溶媒を加える際の温度については、上限としては50℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましく、35℃以下がさらに好ましく、下限としては0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、25℃以上がさらに好ましい。
【0096】
生じた結晶を取得するに際しては、結晶の取得は、通常は、貧溶媒の添加後、氷冷下で1時間以降、24時間以内、好ましくは1時間以降、5時間以内に行うことが例示される。
【0097】
析出した結晶の採取方法としては、濾過やデカンテーション等の公知の方法により結晶を取得することができるが、通常は、濾過することが好ましい。またろ過により結晶を採取した後、極性溶媒、例えば水、アセトン又はそれらの混合液により結晶を洗浄することができ、これは不純物を取り除く操作として有効である。
【0098】
採取した結晶は、通常行われる乾燥方法、例えば減圧乾燥、減圧加温乾燥、常圧加温乾燥、風乾などにより乾燥することができる。
【0099】
本件化合物は、マウスの炎症性浮腫、アレルギー性浮腫、酢酸ライジング反応及びラットアジュバント関節炎を0.1〜500mg/kgの経口投与で抑制すること、一方マウスに500mg/kg/日を3日間経口投与しても死亡例が認められなかったことから、哺乳動物、好ましくは人、イヌやネコなどのペット又はコンパニオンアニマルあるいは家畜における医薬として安全な化合物であり、医薬品の活性成分として有用な物質である。哺乳動物、好ましくは人、イヌやネコなどのペット又はコンパニオンアニマルあるいは家畜における医薬としてはプロスタグランジン及び/又はロイコトリエンの産生を起因とする各種の急性又は慢性の炎症反応が認められる状態、各種疾患あるいは病態、すなわち炎症性疾患、アレルギー性疾患、自己免疫疾患、疼痛に対する予防及び/又は治療薬のいずれかが好ましい例として挙げられる。
【0100】
本件化合物を上記の医薬として用いるには、有効量の本件化合物をそのままで、あるいは薬学上許容される担体と混合して医薬組成物となせばよく、この担体として、たとえばカルボキシメチルセルロースなどの懸濁化剤やその他の公知の担体も用いることができる。一例を示すと、本発明化合物を0.5%カルボキシメチルセルロースを含む精製水に懸濁し用いる方法が挙げられる。
【0101】
上記医薬組成物の製剤化のための剤形としては、錠剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤、懸濁剤、カプセル剤、注射剤等が挙げられるが、本件化合物の結晶の性質を考えたときに、医薬組成物が乾燥製剤であることが特に好ましい。その製造のためには、これらの製剤に応じた各種担体が使用される。たとえば、経口剤の担体としては、賦形剤、結合剤、滑沢剤、流動性促進剤、着色剤を挙げることができる。
【0102】
本発明化合物を注射剤等の非経口剤とする場合には、希釈剤として一般に注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、注射用植物油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等を使用することができる。さらに必要に応じて、殺菌剤、防腐剤、安定剤、等張化剤、無痛化剤等を加えてもよい。
【0103】
本発明化合物を哺乳類、たとえば人に投与する際には、錠剤、散剤、顆粒剤、懸濁剤、カプセル剤の形で経口投与することができ、また、点滴を含む注射剤、さらには坐剤、ゲル剤、ローション剤、軟膏剤、クリーム又はスプレーの形で非経口投与することができる。その投与量は、適用症、投与形態、患者の年齢、体重、症状の度合いなどによって異なるが、一般的には成人1日当たり1〜1000mgを1〜3回に分けて投与することが例示される。投与期間は数日〜2カ月の連日投与が一般的であるが、患者の症状により1日投与量、投与期間共に増減することができる。
【0104】
また、本件化合物の類似化合物として下記の化合物が挙げられるが、これらの化合物も国際公開WO第03/70686号公報の方法に準じて、または本明細書に記載した製造方法により製造することができる。
3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸;
3−[3−アミノ−5−(1−エチル−1H−インダゾール−5−イル)4−(インダン−2−イルオキシ)フェニル]プロピオン酸;
3−[4−(インダン−2−イルオキシ)−3−(N−メチルアミノ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸;
3−[4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1H−インダゾール−5−イル)−3−(N−メチルアミノ)フェニル]プロピオン酸;
3−[5−(1−エチル−1H−インダゾール−5−イル)4−(インダン−2−イルオキシ)−3−(N−メチルアミノ)フェニル]プロピオン酸;
3−[3−アミノ−4−(4−フルオロインダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(5−フルオロインダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(5,6−ジフルオロインダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸;
3−[3−アミノ−4−(1−ヒドロキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(4−ヒドロキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(5−ヒドロキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(5,6−ジヒドロキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸;
3−[3−アミノ−4−(4−メトキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(5−メトキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(5,6−ジメトキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸;
3−[3−アミノ−4−(4−ベンジルオキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(4−ベンジルオキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(5,6−ジベンジルオキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸;
3−[3−アミノ−4−(4−フルオロインダン−2−イルオキシ)−5−(1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(5−フルオロインダン−2−イルオキシ)−5−(1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(5,6−ジフルオロインダン−2−イルオキシ)−5−(1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸;
3−[3−アミノ−4−(1−ヒドロキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(4−ヒドロキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(5−ヒドロキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(5,6−ジヒドロキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸;
3−[3−アミノ−5−(1H−インダゾール−5−イル)−4−(4−メトキシインダン−2−イルオキシ)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−5−(1H−インダゾール−5−イル)−4−(5−メトキシインダン−2−イルオキシ)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(5,6−ジメトキシインダン−2−イルオキシ)−5−(−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸;
3−[3−アミノ−4−(4−ベンジルオキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(4−ベンジルオキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(5,6−ジベンジルオキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸;
3−[3−アミノ−5−(1−エチル−1H−インダゾール−5−イル)−4−(4−フルオロインダン−2−イルオキシ)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−5−(1−エチル−1H−インダゾール−5−イル)−4−(5−フルオロインダン−2−イルオキシ)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(5,6−ジフルオロインダン−2−イルオキシ)−5−(1−エチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸;
3−[3−アミノ−5−(1−エチル−1H−インダゾール−5−イル)−4−(1−ヒドロキシインダン−2−イルオキシ)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−5−(1−エチル−1H−インダゾール−5−イル)−4−(4−ヒドロキシインダン−2−イルオキシ)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−5−(1−エチル−1H−インダゾール−5−イル)−4−(5−ヒドロキシインダン−2−イルオキシ)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(5,6−ジヒドロキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1−エチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸;
3−[3−アミノ−5−(1−エチル−1H−インダゾール−5−イル)−4−(4−メトキシインダン−2−イルオキシ)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−5−(1−エチル−1H−インダゾール−5−イル)−4−(5−メトキシインダン−2−イルオキシ)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(5,6−ジメトキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1−エチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸;
3−[3−アミノ−4−(4−ベンジルオキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1−エチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(4−ベンジルオキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1−エチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(5,6−ジベンジルオキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1−エチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸。
【実施例】
【0105】
以下に、実施例、試験例を掲げて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0106】
(実施例1)
3−[4−(インダン−2−イルオキシ)−3−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−5−ニトロフェニル]プロピオン酸メチル(本件化合物2)の結晶の調製例1
3−[3−ブロモ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−ニトロフェニル]プロピオン酸メチル(14.00g、国際公開WO第03/70686号公報の方法に従って調製)、1−メチル−1H−インダゾール−5−ボロン酸(7.62g、国際公開WO第03/70686号公報の方法に従って調製)、酢酸パラジウム(75mg、和光純薬社製)、トリフェニルホスフィン(0.17g、和光純薬社製)に、THF(40ml)を加え、撹拌した後、水(27ml)にリン酸三カリウム(16.97g、和光純薬社製)を溶解させた溶液を加え、系内を窒素置換した。次いでこの混合液を60℃で4時間撹拌して反応させた。反応が終了していることを確認した後、分液して上層を得た。上層を室温に冷却後、酢酸エチル(40ml)と活性炭(2.8g、日本エンバイロケミカルズ社製)を加え、室温で1時間撹拌した。懸濁液をろ過してろ液を得、さらにフィルター上の残渣を酢酸エチル(20ml)で洗浄して洗液を得、ろ液と洗液をあわせて減圧濃縮し、濃縮液(44g)を得た。次いで濃縮液にアセトン(140ml)を加えて撹拌した後、撹拌しながら室温で水(140ml)を1時間かけて加え、さらに室温で1時間撹拌した。次いで、この混合液をろ過し、さらにフィルター上の固形物を水(70ml)で洗浄し、湿固形物を得た。この湿固形物を50℃で減圧乾燥することにより、標記化合物(15.7g)の結晶を得た。
【0107】
(実施例1−A、B)
本件化合物2の結晶の調製例2
実施例1の濃縮液取得以降の操作について、アセトンに代えてトルエンを用い、水に代えてヘプタンを用いて行うことにより該化合物の結晶を得ることができる。また、実施例1のアセトンの代わりにテトラヒドロフラン、水の代わりにヘプタンを用いることにより、本件化合物2の結晶を得ることができる。
【0108】
(実施例2)
3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸メチル(本件化合物3)の調製例1
実施例1に従って調製した本件化合物2(13.0g)にTHF(138ml)、安定化ニッケル(4.42g、日揮化学社製)、水(4ml)を加え、撹拌後、系内を水素置換し、水素雰囲気下50℃で7時間撹拌し反応させた。反応が終了していることを確認した後、その反応液を窒素置換し、ろ過してろ液を得、さらにフィルター上の残渣をTHF(34ml)で洗浄して洗液を得た。ろ液と洗液を合せた溶液に活性炭(2.6g、日本エンバイロケミカルズ社製)を加え、室温で1時間撹拌した。懸濁液をろ過してろ液を得、さらにフィルター上の残渣をTHF(34ml)で洗浄して洗液を得た。ここで取得したろ液と洗液を合せた溶液に室温で水(207ml)を1時間かけて加え、さらに氷冷下1時間撹拌した。次いで、この混合液をろ過し、さらにフィルター上の固形物を水(68ml)で洗浄し、湿固形物を得た。この湿固形物を50℃で減圧乾燥することにより、標記化合物(10.3g)の結晶を得た。
【0109】
(実施例2−A、B)
本件化合物3の調製例2
実施例2でろ液と洗液の混合液に加えた水の代わりに、ヘプタンを用いることにより本件化合物3の結晶を得ることができる。
【0110】
また、さらに該溶媒としてイソプロパノールを用いることにより本件化合物3の結晶を得ることができる。
【0111】
(実施例3)
本件化合物1のA形結晶の調製例1
実施例2で得た本件化合物3(10.0g)にメタノール(45ml)を加え、撹拌した後、2規定水酸化ナトリウム水溶液(17.0ml)を加え60℃で3時間撹拌下にてアルカリ加水分解した。反応後、反応液を35℃に冷却し、2規定塩酸水溶液(17.0ml)を2時間かけて加え、さらに35℃で16時間撹拌した。次いで、この混合液をろ過し、さらにフィルター上の固形物を水(27ml)とメタノール(13ml)の混合液で洗浄し、湿固形物を得た。この湿固形物を50℃で減圧乾燥することにより、9.2gの結晶を得た。
【0112】
(実施例4)
本件化合物1のB形結晶の調製例1
実施例3に従って調製した本件化合物1のA形結晶(1.0g)にアセトン(17ml)を加え、60℃の水浴中で加熱溶解させた。次いで溶液を室温下で終夜撹拌した。生じた沈殿物をろ過し、フィルター上の固体を得た。次いで50℃で減圧乾燥することにより、0.55gの結晶を得た。
【0113】
(実施例5)
本件化合物1のB形結晶の調製例2
実施例3に従って調製した本件化合物1のA形結晶(1.0g)にジクロロメタン(31ml)を加え、40℃の水浴中で加熱溶解させた。次いで溶液を室温下で終夜撹拌した。生じた沈殿物をろ過し、フィルター上の固体を得た。次いで50℃で減圧乾燥することにより、0.81gの結晶を得た。
【0114】
当該結晶は、後述する試験例4の示差走査熱量分析により図7と実質的に同様なスペクトルを示し、本件化合物1のB形結晶であることが確認された。
【0115】
(実施例6)
本件化合物1のB形結晶の調製例3
実施例3に従って調製した本件化合物1のA形結晶(10.0g)にメタノール(45ml)を加え、撹拌した後、2規定水酸化ナトリウム水溶液(17.0ml)を加え60℃で1時間撹拌した。その混合液を35℃に冷却し、2規定塩酸水溶液(7.0ml)を30分かけて加え、混合液のpHが7〜9となったことを確認した後、すみやかに実施例4に従って調製した本件化合物1のB形結晶の種結晶(0.1g)を加え、10分撹拌した。次いでこの混合液に2規定塩酸水溶液(10.0ml)を1時間かけて加え、さらに35℃で2時間撹拌した。次いで、この混合液をろ過し、さらにフィルター上の固形物を水(27ml)とメタノール(13ml)の混合液で洗浄し、湿固形物を得た。この湿固形物を50℃で減圧乾燥することにより、9.7gの白色結晶を得た。
【0116】
当該結晶は、後述する試験例3の粉末X線回折測定により図6と実質的に同様なスペクトルを示し、本件化合物1のB形結晶であることが確認された。また、当該結晶は、後述する試験例4の示差走査熱量分析により図7と実質的に同様なスペクトルを示し、B形結晶であることが確認された。
【0117】
(実施例7)
本件化合物1のB形結晶の調製例4
実施例2に準ずる手法で得た本件化合物3(80.0g)にメタノール(360.0ml)を加え、撹拌した後、水(36.2ml)及び2規定水酸化ナトリウム水溶液(99.7ml)を加え60℃で3時間撹拌下にてアルカリ加水分解した。反応後、反応液中の粉塵などの不溶物を濾別し、水(180.2ml)を加えた後35℃に調整した。混合液に2規定塩酸水溶液(10.7ml)を8分かけて加え、混合液のpHが7.9となったことを確認した後、すみやかに実施例4に従って調製した本件化合物1のB形結晶の種結晶(0.08g)を加え、4分撹拌した。次いでこの混合液に2規定塩酸水溶液(89.0ml)を111分かけて加え、さらに35℃で14.3時間撹拌した。次いで、この混合液をろ過し、さらにフィルター上の固形物を水(213.4ml)とメタノール(106.7ml)の混合液で洗浄し、湿固形物を得た。この湿固形物に、水(213.4ml)とメタノール(106.7ml)を添加して再度混合液とし、18〜20℃で37分攪拌した。次いで、この混合液をろ過し、さらにフィルター上の固形物を水(21.3ml)とメタノール(10.7ml)の混合液で洗浄し、湿固形物を得た。この湿固形物を50℃で減圧乾燥することにより、76.28gの白色結晶を得た。
【0118】
当該結晶は、後述する試験例4の示差走査熱量分析により図7と実質的に同様なスペクトルを示し、本件化合物1のB形結晶であることが確認された。
【0119】
(実施例8)
本件化合物1の混合結晶の調製例1
実施例3に従って調製した本件化合物1のA形結晶0.9gと実施例4に従って調製したB形結晶0.1gを乳鉢と乳棒を用いて混合し、A形結晶90%とB形結晶10%の混合物を得た。
【0120】
(実施例9)
本件化合物1の混合結晶の調製例2
実施例3に従って調製した本件化合物1のA形結晶0.1gと実施例4に従って調製したB形結晶0.9gを乳鉢と乳棒を用いて混合し、A形結晶10%とB形結晶90%の混合物を得た。
【0121】
(実施例10)
本件化合物1のA形結晶の調製例2
実施例2に準ずる方法で得た本件化合物3(3.92kg)を反応装置A(機番:BD−1、30L昇降式反応装置、旭テクノグラス株式会社製)に投入し、そこにメタノール(14.08kg)を加えて攪拌した。2規定水酸化ナトリウム水溶液(6.76kg)を加えた後、27分かけて60.6℃に加温した。約60℃で4時間9分攪拌した後、19分かけて35℃まで冷却し、反応液をメンブランフィルターでろ過して反応液1を調製した。さらに、実施例2に準じて得た本件化合物3(3.92kg)を反応装置Aに投入し、そこにメタノール(14.25kg)を加えて攪拌した。2規定水酸化ナトリウム水溶液(6.70kg)を加えた後、30分かけて60.0℃に加温した。約60℃で4時間30分攪拌した後、17分かけて34.6℃まで冷却し、反応液をメンブランフィルターでろ過して、反応装置B(機番:BD−2、100L昇降式反応装置、旭テクノグラス株式会社製)で反応液1と合わせて反応液2を調製した。この反応液2を30〜35℃に保ち、攪拌しながら2規定塩酸水溶液(13.30kg)を5時間48分かけて滴下して結晶を析出させ、晶析液を調製した。さらにこの晶析液を約35℃に保ちながら、10時間5分撹拌した後、ろ過器(機番:F−9、φ600mmヌッチェフィルター、旭エンジニアリング株式会社製)に投入し、吸引によってろ過して湿結晶を取得した。このろ過器上の湿結晶に、水(20.00kg)とメタノール(7.88kg)の混合液をかけて吸引し、湿結晶を洗浄した。さらに、吸引を継続して十分に脱水し、本件化合物1のA形結晶の湿結晶(15.571kg)を取得した。この時、晶析液から湿結晶をろ過によって取得するまでに要した時間は1時間5分、ろ過器上の湿結晶の水とメタノールの混合液での洗浄に要した時間は1時間44分、脱水に要した時間は50分であった。この湿結晶をトレーに撒いて乾燥機(機番:BM−6、棚段式真空乾燥機、VAC−300PR、エスペック株式会社製)に入れ、50℃で3日間(65時間52分かけて)減圧乾燥し、本件化合物1のA形結晶(7.402kg)を得た。
【0122】
当該結晶は、後述する試験例3の粉末X線回折測定により図3と実質的に同様なスペクトルを示し、本件化合物1のA形結晶であることが確認された。また、当該結晶は、後述する試験例4の示差走査熱量分析により図4と実質的に同様なスペクトルを示し、本件化合物1のA形結晶であることが確認された。
【0123】
(実施例11)
本件化合物1のB形結晶の調製例5
実施例2に準ずる方法で得た本件化合物3(3.90kg)を反応装置A(機番:BD−1、30L昇降式反応装置、旭テクノグラス株式会社製)に投入し、そこにメタノール(13.75kg)を加えて攪拌した。2規定水酸化ナトリウム水溶液(5.20kg)と水(1.75kg)を加えた後、42分かけて60℃に加温した。約60℃で2時間29分攪拌した後、13分かけて35.0℃まで冷却し、反応液をメンブランフィルターでろ過し反応液1を調製した。さらに、実施例2に準じて得た本件化合物3(3.90kg)を反応装置Aに投入し、そこにメタノール(13.97kg)を加えて攪拌した。2規定水酸化ナトリウム水溶液(5.20kg)と水(1.75kg)を加えた後、40分かけて60℃に加温した。約60℃で2時間34分攪拌した後、19分かけて35.0℃まで冷却し、反応液をメンブランフィルターでろ過して、反応装置B(機番:BD−2、100L昇降式反応装置、旭テクノグラス株式会社製)で反応液1と合わせて反応液2を調製した。反応液2に水(17.36kg)を加えた後、この溶液を30〜35℃に保ち、攪拌しながら、2規定塩酸水溶液(0.92kg)を38分かけて滴下し、pHが7.90になった時点で滴下を中断した。次いで、本件化合物1のB形結晶(7.795g)を加えた後、2規定塩酸水溶液(9.08kg)を3時間50分かけて滴下し、結晶を析出させ、晶析液を調製した。さらにこの晶析液を約35℃に保持して8時間42分撹拌した後、ろ過器(機番:F−9、φ600mmヌッチェフィルター、旭エンジニアリング株式会社製)に投入し、実施例10と同様に吸引によってろ過して湿結晶を取得した。このろ過器上に取得した湿結晶に、水(20.78kg)とメタノール(8.10kg)の混合液をかけて吸引し、湿結晶を洗浄した。さらに、吸引を継続して十分に脱水し、本件化合物1のB形結晶の湿結晶を取得した。この時、晶析液から湿結晶をろ過によって取得するまでに要した時間は8分、ろ過器上の湿結晶を水とメタノールの混合液での洗浄に要した時間は10分、脱水に要した時間は37分であった。この湿結晶の純度をさらに高める為に、水(21.00kg)とメタノール(8.18kg)の混合液に投入して懸濁液とし、34分攪拌して結晶を洗浄した後、これをろ過器(機番:F−9、φ600mmヌッチェフィルター、旭エンジニアリング株式会社製)に投入した。次いで、水(2.10kg)とメタノール(0.80kg)の混合液をろ過器に投入し、吸引によってろ過して湿結晶を取得し、さらに吸引を継続して十分に脱水し、本件化合物1のB形結晶の湿結晶(12.211kg)を取得した。この時、懸濁液から湿結晶をろ過によって取得するまでに要した時間は4分、脱水に要した時間は16分であった。この湿結晶をトレーに撒いて乾燥機(機番:BM−6、棚段式真空乾燥機、VAC−300PR、エスペック株式会社製)に入れ、50℃で3日間(71時間3分かけて)減圧乾燥し、本件化合物1のB形結晶(7.412kg)を得た。
【0124】
当該結晶は、後述する試験例3の粉末X線回折測定により図6と実質的に同様なスペクトルを示し、本件化合物1のB形結晶であることが確認された。また、当該結晶は、後述する試験例4の示差走査熱量分析により図7と実質的に同様なスペクトルを示し、本件化合物1のB形結晶であることが確認された。
【0125】
(試験例1)
濾過速度の測定1
実施例3に従って調製した本件化合物1のA形結晶(5.0g)にメタノールと水の混合液(混合比1:2)(50ml)を加え、25℃で30分撹拌した後、桐山ロート(内径40mm、桐山ロート用ろ紙No.3)及びアスピレーターを用いてろ過した。その際、10mlのろ液を得るのに2分37秒、20mlのろ液を得るのに7分45秒、30mlのろ液を得るのに15分14秒を要し、最終的に25分24秒を要して40mlのろ液を得た。また、ロート上の湿固形物を50℃で減圧乾燥することにより、4.9gの結晶を得た。
【0126】
また、実施例4に従って調製した本件化合物1のB形結晶(5.0g)にメタノール:水(1:2)混合液(50ml)を加え、25℃で30分撹拌した後、桐山ロート(内径40mm、桐山ロート用ろ紙No.3)及びアスピレーターを用いてろ過した。10mlのろ液を得るのに8秒、20mlのろ液を得るのに17秒、30mlのろ液を得るのに28秒を要し、最終的に2分を要して42mlのろ液を得た。また、ロート上の湿固形物を50℃で減圧乾燥することにより、4.7gの結晶を得た。
【0127】
上述の例のように、B形結晶を得るのに要した時間は、ほぼ同量のA形結晶を得るのに要した時間と比較して10分の1以下となることもあり、本発明のB形結晶の優れたろ過性が確認できた。
【0128】
(試験例1−2)
濾過速度の測定2
実施例10における本件化合物1のA形結晶のろ過性と、実施例11における本件化合物1のB形結晶のろ過性を比較した。それぞれについて、(1)晶析液をろ過器に投入して吸引し、湿結晶と母液とを分離するまでの時間、(2)次いで、水とメタノールの混合液を湿結晶の入ったろ過器に投入し、吸引して湿結晶を洗浄する時間、(3)最後に吸引を継続し、洗浄後の湿結晶の含水率を十分低くするまでの時間、の3段階に要した時間を比較したところ、A形結晶では、(1)1時間5分、(2)1時間44分、(3)50分であったのに対し、B形結晶では、(1)8分、(2)10分、(3)37分であり、本発明のB形結晶の優れたろ過性が確認できた。
【0129】
(試験例1−3)
ろ過後の含水率の測定
実施例10と実施例11で取得したそれぞれの結晶の含水率を、湿結晶の重量と乾燥後の結晶の重量から計算すると、A形結晶は52.5%、B形結晶は39.3%であり、本発明のB形結晶は乾燥性においても優れていることが確認できた。結果を表1に示す。実施例10と実施例11ではいずれも3日間乾燥したが、実際に乾燥に必用とされる時間とエネルギーは、含水率の低いB形結晶の方が低いことは容易に推測できる。
【0130】
【表1】
【0131】
(試験例2)
溶解度試験
実施例3に従って調製した本件化合物1のA形結晶および実施例4に従って調製した本件化合物1のB形結晶10mgをそれぞれ10mL遠沈管に量り、日局崩壊試験液第1液(pH1.2)を各々3mL加え、37℃で24時間振とうした。振とう後、溶液をろ過し、ろ液1mLを正確に量り、アセトニトリル1mLを正確に加えて試料溶液とした。
【0132】
試料溶液について、以下のHPLC条件にて、濃度既知の標準溶液により試料溶液の濃度を測定し、溶解度を求めた。
【0133】
日局崩壊試験液第2液(pH6.8)についても同様に試験を行い、溶解度を求めた。
【0134】
その結果を表3に示す。
【0135】
【表2】
【0136】
【表3】
【0137】
表3に示すように、日局崩壊試験液第1液(pH1.2)および日局崩壊試験液第2液(pH6.8)に対するA形結晶の溶解度はB形結晶の3倍であり、本発明のA形結晶の高い溶解性が確認できた。
【0138】
(試験例3)
粉末X線回折
本願明細書の各実施例で得た結晶につき、粉末X線回折を行った。
【0139】
【表4】
【0140】
その測定の結果は以下の通りであった。
【0141】
実施例1に準じて得た本件化合物2の結晶を測定したところ、図1に示すスペクトルを得た。本件化合物2の結晶の粉末X線回折スペクトルにおいては、2θが7.6°、15.3°、18.0°、21.3°及び26.9°である特徴的なピークが認められた。また、16.3°、20.4°、23.0°又は30.5°のいずれか又は全部にもピークを認め、これらのうちのいずれかは少なくとも特徴的なピークと捉えることもできる。さらに、11.5°、19.1°、25.1°又は25.8°のいずれか又は全部にもピークを認め、これらのうちのいずれかは少なくとも特徴的なピークと捉えることもできる。この結晶は、肉眼による形状観察からも結晶と判断されたが、上記の分析データによっても確かに結晶であることが確認された。
【0142】
また実施例2に準じて得た本件化合物3の結晶を測定したところ、図2に示すスペクトルを得た。本件化合物3の結晶の粉末X線回折スペクトルにおいては、2θが8.6°、12.7°、17.2°、17.6°、18.9°及び21.0°に特徴的なピークを認めた。また、14.7°、18.4°、19.4°又は22.1°のいずれか、又は全部にもピークを認め、これらのうちのいずれかは少なくとも特徴的なピークと捉えることもできる。さらに、11.9°、14.2°、23.0°、24.7°、26.1°、26.8°又は32.6°のいずれか、又は全部にもピークを認め、これらのうちのいずれかは少なくとも特徴的なピークと捉えることもできる。この結晶は、肉眼による形状観察からも結晶と判断されたが、分析データによっても確かに結晶であることが確認された。
【0143】
また実施例3に準じて得た本件化合物1のA形結晶を測定したところ、図3に示すスペクトルを得た。本件化合物1のA形結晶の粉末X線回折スペクトルにおいては、2θが6.9°、14.4°、16.4°、18.2°、25.0°及び27.5°に特徴的なピークを認められた。また、20.0°、20.7°、22.9°又は25.4°のいずれか、又は全部にもピークを認め、これらのうちのいずれかは少なくとも特徴的なピークと捉えることもできる。さらに、10.2°、12.7°、15.0°又は23.8°のいずれか、又は全部にもピークを認め、これらのうちのいずれかは少なくとも特徴的なピークと捉えることもできる。
【0144】
また実施例6に準じて得た本件化合物1のB形結晶を測定したところ、図6に示すスペクトルを得た。本件化合物1のB形結晶の粉末X線回折スペクトルにおいては、2θが14.4°、15.9°、17.3°、22.2°及び22.9°に特徴的なピークを認めた。また、8.6°、9.8°、21.2°、23.6°又は28.4°のいずれか、又は全部にもピークを認め、これらのうちのいずれかは少なくとも特徴的なピークと捉えることもできる。さらに、12.6°、18.0°、18.3°、18.8°、19.2°、19.8°、20.4°、25.3°、26.6°又は31.8°のいずれか、又は全部にもピークを認め、これらのうちのいずれかは少なくとも特徴的なピークと捉えることもできる。
【0145】
(試験例3−2)
結晶純度の測定方法
本件化合物1の異なる結晶形が混入する場合の混入率の算出に際して、粉末X線回折スペクトル測定の回転試料台を使用した平行ビーム法光学系を用い、以下の条件で測定することが例示される。B形結晶にA形結晶が混入した場合を例にとって具体的に説明すると、結晶として純粋なA形結晶を標準品として用い、A形結晶に特徴的なピークから適当なピーク(適当なピークとしては、例えば6.9±0.2°のピークが挙げられる。)を選択して、そのピークにつき、標準品のピーク強度及び測定すべき試料のピーク強度を比較、すなわち測定すべき試料のピーク強度を標準品のピーク強度で除すことで、試料中のA形結晶の混入率を算出することができる。
【0146】
【表5】
【0147】
(試験例4)
示差走査熱量分析
本願明細書の実施例3及び4で得た結晶1〜3mgを開放アルミニウムパンに入れ、パーキンエルマー製のPYRIS Diamond DSC示差走査熱量測定装置を用い、乾燥窒素雰囲気下で50℃から220℃まで昇温速度10℃/分で測定した。または、ブルカー・エイエックスエス製のDSC3200 DSC示差走査熱量測定装置を用い、50℃から220℃まで昇温速度10℃/分で測定した。
【0148】
その結果は以下の通りである。
【0149】
実施例3に準じて得た本件化合物1のA形結晶を測定した結果、図4に示されるチャートを得た。本件化合物1のA形結晶の示差走査熱量分析においては、約182℃に吸熱ピークを認めた。なお、水和物または溶媒和物を示唆するピークは特に認められなかった。
【0150】
また実施例4に準じて得た本件化合物1のB形結晶を測定した結果、図7に示されるチャートを得た。本件化合物1のB形結晶の示差走査熱量分析においては、約203℃に吸熱ピークを認めた。なお、水和物または溶媒和物を示唆するピークは特に認められなかった。
【0151】
さらに、実施例10で調製された結晶のチャートも図4と実質的に同様であり、同じA形結晶であることがわかった。また、実施例5〜7、及び11で調製された各結晶のチャートも図7と実質的に同様であり、同じB形結晶であることが示唆された。
【0152】
本発明においては、本件化合物が水和物または溶媒和物となっていても特に問題とは言えないが、好ましくは無水和物、または無溶媒和物であることがより好ましい。
【0153】
(試験例5)
赤外吸収スペクトル分析
本願明細書の実施例3及び6に準じて得た結晶につき、臭化カリウム錠剤法で測定した。
【0154】
その結果は以下の通りである。
【0155】
実施例3に準じて得た本件化合物1のA形結晶を測定した結果、図5に示されるスペクトルを得た。その結果、本件化合物1のA形結晶の赤外吸収スペクトルにおいては、波数3361、2938、1712、1204、1011及び746cm−1に顕著な赤外線吸収バンドを認めた。また、3443、3349、1620、1515、1480又は1278cm−1のいずれか、又は全部にも赤外線吸収バンドを認め、これらのうちのいずれかは少なくとも特徴的なピークと捉えることもできる。さらに、3473、1585、1432、1343、1159、781又は615cm−1のいずれか、又は全部にも赤外線吸収バンドを認め、これらのうちのいずれかは少なくとも特徴的なピークと捉えることもできる。
【0156】
また実施例6に準じて得た本件化合物1のB形結晶を測定した結果、図8に示されるスペクトルを得た。そのB形結晶の赤外吸収スペクトルにおいては、波数2939、1720、1224、1016及び751cm−1に顕著な赤外線吸収バンドを認めた。また、3407、3358、1513、1476又は852cm−1のいずれか、又は全部にも赤外線吸収バンドを認め、これらのうちのいずれかは少なくとも特徴的なピークと捉えることもできる。さらに、3447、3325、1615、1339、1157、945、783及び617cm−1のいずれか、又は全部にも赤外線吸収バンドを認め、これらのうちのいずれかは少なくとも特徴的なピークと捉えることもできる。
【0157】
(試験例6)
結晶の定量測定
本件化合物1のA形結晶標準品0.4、0.8、1.2、1.6、2.0、2.4、2.8、3.2mgを開放アルミニウムパンに入れ、パーキンエルマー製のPYRIS Diamond DSC示差走査熱量測定装置を用い、乾燥窒素雰囲気下で50℃から220℃まで昇温速度50℃/分で測定し、約185℃付近の吸熱ピークの面積(mJ)を求め、A形結晶の定量用検量線を作成した。
【0158】
また、本件化合物1のB形結晶標準品0.4、0.8、1.2、1.6、2.0、2.4、2.8、3.2mgを開放アルミニウムパンに入れ、パーキンエルマー製のPYRIS Diamond DSC示差走査熱量測定装置を用い、乾燥窒素雰囲気下で50℃から220℃まで昇温速度50℃/分で測定し、約205℃付近の吸熱ピークの面積(mJ)を求め、B形結晶の定量用検量線を作成した。
【0159】
A形結晶の検量線を図9に示す。
【0160】
またB形結晶の検量線を図10に示す。
【0161】
A形結晶もB形結晶も共に定量が可能であることが確認できた。
【0162】
なお、A形結晶標準品としては、本願実施例3の方法に従い取得された、特に形状が好ましく、示差走査熱量分析により特徴的な単一の吸熱ピークを示す結晶を用いて行った。また、B形結晶標準品としては、本願実施例4の方法に従い取得された、特に形状が好ましく、示差走査熱量分析により特徴的な単一の吸熱ピークを示す結晶を用いて行った。
(試験例7)
本件化合物の定量
以下のHPLC条件にて、本件化合物の検出と定量を行った。
【0163】
【表6】
【0164】
【表7】
【0165】
その結果、保持時間として、本件化合物1が約15分、本件化合物2が約30分、本件化合物3が約25分に、それぞれピークを認めた。
【0166】
本件化合物のそれぞれの標準品を既知量用いて検量線を得た。検量線には直線性があった。
【0167】
本件のHPLCにより本件化合物についての定量測定が可能であることが確認された。
(試験例8)
IL−1β刺激MG−63細胞からのPGE2産生抑制作用
本件化合物について国際公開WO第03/70686号公報の方法に従って炎症性の刺激物質であるインターロイキン(IL)−1βによるPGE2産生に対する抑制作用を調べた。
【0168】
その結果、実施例1〜9に記載の方法で得られるいずれの化合物もIL−1βによるPGE2の産生を0.1μMで50%以上抑制した。またこの濃度ではいずれの被験化合物も細胞障害作用は示さなかった。従って、本件化合物は、炎症性のプロスタグランジン産生に対する抑制薬として有用である。
【0169】
(試験例9)
ラットアジュバント関節炎に対する予防および治療効果
本件化合物について国際公開WO第03/70686号公報の方法に従って自己免疫性疾患の一つでありまた慢性炎症疾患である慢性関節リウマチの病態モデルであるラットアジュバント関節炎における足浮腫に対する抑制効果を調べた。なお被検化合物は0.5%メチルセルロースを含む精製水に懸濁し、試験動物に0.1〜50mg/0.2ml/kgになるように経口投与した。
【0170】
その結果、実施例3および実施例6で得られたいずれの化合物もアジュバント関節炎における足浮腫に対し陽性対照群に比べて抑制した。
【0171】
また本試験中、試験動物に死亡例は認められなかった。従って、本件化合物は、慢性関節リウマチの、また自己免疫性疾患の予防および/または治療薬として有用である。
【0172】
(試験例10)
走査型電子顕微鏡(SEM)観察
本願明細書の実施例3および4で得た結晶につき、SEM観察を行った。
【0173】
実施例3の本件化合物1のA形結晶を測定した結果、図11に示されるSEM写真を得た。
【0174】
実施例4の本件化合物1のB形結晶を測定した結果、図12に示されるSEM写真を得た。
【0175】
しかしながら、これらは参考のみの目的で示され、本発明のいずれの結晶の特性も当該電子顕微鏡像により規定されることはなく、またこれに限定される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】本件化合物2結晶の粉末X線回折スペクトル。図中、縦軸は強度(CPS)を示し、横軸は2θ(°)を示す。
【図2】本件化合物3結晶の粉末X線回折スペクトル。図中、縦軸は強度(CPS)を示し、横軸は2θ(°)を示す。
【図3】本件化合物1のA形結晶の粉末X線回折スペクトル。図中、縦軸は強度(CPS)を示し、横軸は2θ(°)を示す。
【図4】本件化合物1のA形結晶の示差走査熱量分析。図中、縦軸はmWを示し、横軸は温度(℃)を示す。
【図5】本件化合物1のA形結晶の赤外吸収スペクトル。図中、縦軸は透過率(%)を示し、横軸はcm−1を示す。
【図6】本件化合物1のB形結晶の粉末X線回折スペクトル。図中、縦軸は強度(CPS)を示し、横軸は2θ(°)を示す。
【図7】本件化合物1のB形結晶の示差走査熱量分析。図中、縦軸はmWを示し、横軸は温度(℃)を示す。
【図8】本件化合物1のB形結晶の赤外吸収スペクトル。図中、縦軸は透過率(%)を示し、横軸はcm−1を示す。
【図9】本件化合物1のA形結晶の示差走査熱量分析における検量線を示す。図中、縦軸は面積(mJ)を示し、横軸は重量(mg)を示す。
【図10】本件化合物1のB形結晶の示差走査熱量分析における検量線を示す。図中、縦軸は面積(mJ)を示し、横軸は重量(mg)を示す。
【図11】本件化合物1のA形結晶の結晶形状を示す図面代用写真であって、走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図12】本件化合物1のB形結晶の結晶形状を示す図面代用写真であって、走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な結晶に関する。さらに詳しくは、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸、3−[4−(インダン−2−イルオキシ)−3−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−5−ニトロフェニル]プロピオン酸メチル、または3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸メチルのいずれかの化合物の新規な結晶、又はその結晶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸は、プロスタグランジン産生抑制作用及びロイコトリエン産生抑制作用を有すると報告されており、それ故、脂質メディエーターに起因する各種の炎症性疾患、自己免疫性疾患、アレルギー性疾患や疼痛の予防及び/又は治療に有用であること、及びそれらの化合物の製造方法が開示されている。
【特許文献1】WO第03/70686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本件化合物を医薬として使用するに際して、より好ましい態様や改善された方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本件化合物1の3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸(以下、「本件化合物1」と称することがある)は、上述の公知製造方法によれば、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸メチルのメタノール溶液に2規定水酸化ナトリウム水溶液を加え60℃で16時間攪拌し、反応混合液を減圧下濃縮後、氷冷下5%塩酸水で酸性にした後、酢酸エチルにて抽出し、その有機層を飽和食塩水で洗浄し、乾燥後、溶媒を減圧下留去して得られている。この公知製造方法においては、本件化合物は無色〜褐色の油状物質として得られる。本発明者らは、本件化合物1を医薬として投与するに際しては、扱いがより簡便とする新たな改善が必要であると考え、種々検討し、本件化合物1が結晶となることを確認し本発明を完成するに至った。
【0005】
本発明によれば、本件化合物1の結晶が提供されるため、製剤化工程において扱いが容易となり、また製剤毎の本件化合物の含量を均一となすことが容易であり、極めて好ましいものである。さらに本件化合物の結晶は、溶媒等の除去の点においても、油状物である場合に比べて容易且つより完全に溶媒等の除去が行い得るものであり、また工業的規模の製造にも適しており、極めて好ましいものである。
【0006】
さらに、本発明者は、上記結晶について研究を重ねた結果、本件化合物1に後述の性質を示す新規なA形結晶とB形結晶とが存在し、それぞれが好ましい性質を有することを発見し、さらにそれらの結晶を選択的に取得する方法を確立して本発明を完成するに至った。
【0007】
また、上述の公知製造方法によれば、3−[4−(インダン−2−イルオキシ)−3−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−5−ニトロフェニル]プロピオン酸メチル(以下、「本件化合物2」と称することがある)は、3−(3−ブロモ−4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)プロピオン酸メチル、及び1−メチル−1H−インダゾール−5−ボロン酸のエタノール溶液に2M炭酸ナトリウム水溶液、トルエン及びテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)を加え80℃で16時間撹拌した後、反応混合液に酢酸エチルを加え、飽和重曹水、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し有機層を乾燥後、減圧下溶媒を留去し、更に残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製して得ている。この公知製造方法においては、本件化合物の形態について何ら言及していない。この公知製造方法においては、製造に際して取り扱いが必ずしも容易とは言えない。また本件化合物2を医薬とするに際しても、含量を均一となすことや溶媒等の除去の容易さ等において問題があることを本発明者は確認した。さらに本件化合物2が新規な結晶として取得できることを確認して本発明を完成するに至った。
【0008】
またさらに、上述の公知製造方法によれば、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸メチル(以下、「本件化合物3」と称することがあり、また「本件化合物1」、「本件化合物2」及び「本件化合物3」を合せて「本件化合物」と称することがある)は、上述の本件化合物2の酢酸エチル/メタノール混合溶液にラネー2800ニッケルを加え、水素雰囲気下室温にて6時間撹拌した後、反応混合液を濾過し、その濾液の溶媒を減圧下留去し、次いで残渣をカラムクロマトグラフィーにて精製して得ている。この公知製造方法においては、本件化合物3の形態について何ら言及していないが、製造に際して取り扱いが必ずしも容易とは言えない。また本件化合物3を医薬とするに際しても、含量を均一となすことや溶媒等の除去の容易さ等において問題があることを本発明者は確認した。新たに結晶として取得できることを確認して本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1) 3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸、3−[4−(インダン−2−イルオキシ)−3−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−5−ニトロフェニル]プロピオン酸メチル、または3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸メチルのいずれかの化合物の結晶。
(2) 3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸の結晶。
(3) 3−[4−(インダン−2−イルオキシ)−3−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−5−ニトロフェニル]プロピオン酸メチルの結晶。
(4) 3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸メチルの結晶。
(5)該結晶が、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸からなり、粉末X線回折スペクトルにおいて、2θが、少なくとも6.9±0.2°、16.4±0.2°、18.2±0.2°、25.0±0.2°または27.5±0.2°における1つ以上の特徴的なピークを有するA形結晶であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の結晶。
【0010】
なお、粉末X線回折スペクトルでの2θ角は、各種の要因により許容し得る若干の測定誤差を生じる場合があり、当該実測値は、通常±0.3°、典型的には±0.2°、より好ましい測定において±0.1°程度変動する。従って、本明細書において、特定のサンプルに対する実測値に基づく2θ角は、それらの許容し得る誤差を包含し得るものであることが理解されよう。
(5−1) 該結晶が、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸からなり、粉末X線回折スペクトルにおいて、2θが6.9±0.2°、14.4±0.2°、16.4±0.2°、18.2±0.2°、25.0±0.2°及び27.5±0.2°に特徴的なピークを有するA形結晶であることを特徴とする上記(1)、(2)または(5)に記載の結晶。
(6) 該結晶が、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸からなり、示差走査熱量分析(昇温速度10℃/分)において、約182℃の吸熱ピークを有するA形結晶であることを特徴とする上記(1)、(2)、(5)または(5−1)に記載の結晶。
【0011】
なお、示差走査熱量分析における吸熱ピークは、本件化合物の結晶が本来有する固有の物性であるが、実際の測定において、測定誤差の他、場合によっては許容し得る量の不純物の混入等の原因による融点の変動が起こる可能性も否定できない。従って、当業者は、本発明における吸熱ピーク温度の実測値がどの程度変動し得るかを十分に理解し得、例示するならば、場合により±5℃程度、典型的には±3℃程度、好ましい測定において±2℃程度の誤差が想定され得る。
(7) 該結晶が、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸からなり、赤外吸収スペクトルにおいて、波数3361、2938、1712、1204、1011及び746cm−1付近に顕著な赤外線吸収バンドを有するA形結晶であることを特徴とする上記(1)、(2)、(5)、(5−1)または(6)のいずれかに記載の結晶。
【0012】
注記すれば、赤外吸収スペクトル波数においては若干の測定誤差が許容されており、本件発明においてもこの誤差を含み得ると考えられる。当業者はその誤差の程度を十分に理解できるものであり、例えばヨーロッパ薬局方第4版を参考にすれば、赤外吸収スペクトルによる確認試験における参照スペクトルとの比較において、波数スケールの±0.5%以内で一致する程度を指摘している。本発明においては特に限定されるものではないが、通常考えられるこれらの誤差を参考にすればよく、例えば一つの尺度として、その波数スケールの実測値に対して±0.8%程度、好ましくは±0.5%程度、特に好ましくは±0.2%程度の変化が例示できる。
(7−1) 結晶純度が少なくとも90重量%以上である上記(5)〜(7)のいずれかに記載の3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸のA形結晶。
【0013】
なお、上記文章中に(5)〜(7)とあるが、配置された順に従い枝番号の発明も含む意味であって、具体的には(5)、(5−1)、(6)、(7)を意味する。以下においても同様である。
(8) 該結晶が、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸からなり、粉末X線回折スペクトルにおいて、2θが、少なくとも15.9±0.2°、17.3±0.2°、22.2±0.2°または22.9±0.2°における1つ以上の特徴的なピークを有するB形結晶であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の結晶。
(8−1) 該結晶が、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸からなり、粉末X線回折スペクトルにおいて、2θが14.4±0.2°、15.9±0.2°、17.3±0.2°、22.2±0.2°及び22.9±0.2°に特徴的なピークを有するB形結晶であることを特徴とする上記(1)、(2)または(8)に記載の結晶。
(9) 該結晶が、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸からなり、示差走査熱量分析(昇温速度10℃/分)において、約203℃の吸熱ピークを有するB形結晶であることを特徴とする上記(1)、(2)、(8)または(8−1)に記載の結晶。
(10) 該結晶が、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸からなり、赤外吸収スペクトルにおいて、波数2939、1720、1224、1016及び751cm−1付近に顕著な赤外線吸収バンドを有するB形結晶であることを特徴とする上記(1)、(2)、(8)、(8−1)または(9)のいずれかに記載の結晶。
(10−1) 結晶純度が少なくとも90重量%以上である上記(8)〜(10)のいずれかに記載の3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸のB形結晶。
(10−2) 該結晶が、3−[4−(インダン−2−イルオキシ)−3−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−5−ニトロフェニル]プロピオン酸メチルからなり、粉末X線回折スペクトルにおいて、2θが、少なくとも7.6°±0.2°、15.3°±0.2°、18.0°±0.2°、21.3°±0.2°及び26.9°±0.2°における1つ以上の特徴的なピークを有する結晶であることを特徴とする上記(1)または(3)に記載の結晶。
(10−3) 該結晶が、3−[4−(インダン−2−イルオキシ)−3−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−5−ニトロフェニル]プロピオン酸メチルからなり、粉末X線回折スペクトルにおいて、2θが7.6±0.2°、15.3±0.2°、18.0±0.2°、21.3±0.2°及び26.9±0.2°に特徴的なピークを有する結晶であることを特徴とする上記(1)、(3)または(10−2)に記載の結晶。
(10−4) 該結晶が、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸メチルからなり、粉末X線回折スペクトルにおいて、2θが、少なくとも8.6±0.2°、12.7±0.2°、17.2±0.2°、17.6±0.2°、18.9±0.2°及び21.0±0.2°における1つ以上の特徴的なピークを有する結晶であることを特徴とする上記(1)または(4)に記載の結晶。
(10−5) 該結晶が、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸メチルからなり、粉末X線回折スペクトルにおいて、2θが8.6±0.2°、12.7±0.2°、17.2±0.2°、17.6±0.2°、18.9±0.2°及び21.0±0.2°に特徴的なピークを有する結晶であることを特徴とする上記(1)、(4)または(10−4)に記載の結晶。
(11) 上記(1)〜(10−5)のいずれかに記載の3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸の結晶、またはそのA形結晶若しくはB形結晶、或いは3−[4−(インダン−2−イルオキシ)−3−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−5−ニトロフェニル]プロピオン酸メチルの結晶、または3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸メチルの結晶のいずれかを有効成分として含有し、薬学的に許容された担体とを含有することを特徴とする医薬組成物。
(12) 薬学的に許容された担体が乾燥物であり、医薬組成物が乾燥製剤であることを特徴とする上記(11)に記載の医薬組成物。
(13) 上記(5)〜(7)のいずれかに記載の3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸のA形結晶の結晶純度が少なくとも90重量%以上であるA形結晶を有効成分として含有し、薬学的に許容された担体とを含有することを特徴とする医薬組成物。
(14) 上記(8)〜(10)のいずれかに記載の3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸のB形結晶の結晶純度が少なくとも90重量%以上であるB形結晶を有効成分として含有し、薬学的に許容された担体とを含有することを特徴とする医薬組成物。
(15) 3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−フェニル]プロピオン酸の塩基性条件下の溶液に酸を加えることにより、該3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−フェニル]プロピオン酸からなる結晶を生ぜせしめ、その結晶を取得することを特徴とする上記(5)〜(7−1)のいずれかに記載の3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸のA形結晶の製造方法。
(16) 該3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−フェニル]プロピオン酸の塩基性条件下の溶液が、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸の低級アルキルエステルのアルカリ加水分解物であることを特徴とする上記(15)に記載の3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸のA形結晶の製造方法。
(16−1) 3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸の低級アルキルエステルのアルカリ加水分解反応後、反応液に酸を加えることにより該3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−フェニル]プロピオン酸からなる結晶を生ぜせしめ、その結晶を取得することを特徴とする上記(5)〜(7−1)のいずれかに記載の3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸のA形結晶の製造方法。
(17) 3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸を、アセトン、ジクロロメタン、メタノール、酢酸エチル、メタノール/酢酸混液、及びアセトニトリルから成る群より選択されるいずれか一つ又は二つ以上の溶媒に溶解させた溶液から該3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸を結晶化せしめることを特徴とする上記(8)〜(10−1)のいずれかに記載の3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸のB形結晶の製造方法。
(18) 3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−フェニル]プロピオン酸の塩基性条件下の溶液に酸を加え、該3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−フェニル]プロピオン酸からなる結晶が生ずる直前に、該化合物のB形結晶を種晶として添加することにより、該化合物のB形結晶を取得することを特徴とする上記(8)〜(10−1)のいずれかに記載の結晶の製造方法。
(18−1) 該3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−フェニル]プロピオン酸の塩基性条件下の溶液が、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸の低級アルキルエステルのアルカリ加水分解物であることを特徴とする上記(18)に記載の3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸のB形結晶の製造方法。
(18−2) 3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸の低級アルキルエステルのアルカリ加水分解反応後、反応液に酸を加え、該3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−フェニル]プロピオン酸からなる結晶が生ずる直前に、該化合物のB形結晶を種晶として反応液に添加することにより、該化合物のB形結晶を取得することを特徴とする上記(8)〜(10−1)のいずれかに記載の結晶の製造方法。
(19) トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトン、ジメトキシエタン、メタノールから成る群より選択されるいずれか一つ又は二つ以上の溶媒により溶解せしめた3−[4−(インダン−2−イルオキシ)−3−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−5−ニトロフェニル]プロピオン酸メチルの溶液に、ヘプタン、ジイソプロピルエーテル、イソプロパノール、t−ブチルメチルエーテル、水から成る群より選択されたいずれか一つ又は二つ以上の溶媒を添加し、結晶を生成せしめることを特徴とする3−[4−(インダン−2−イルオキシ)−3−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−5−ニトロフェニル]プロピオン酸メチルの結晶の製造方法。
(19−1) 該結晶が、粉末X線回折スペクトルにおいて、2θが7.6±0.2°、15.3±0.2°、18.0±0.2°、21.3±0.2°及び26.9±0.2°のうちの少なくとも1つ以上の特徴的なピーク、典型的にはそれら全てのピークを有する結晶であることを特徴とする上記(19)に記載の製造方法。
(20) トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトンから成る群より選択されるいずれか一つ又は二つ以上の溶媒により溶解せしめた3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸メチルの溶液に、ヘプタン、イソプロパノール、メタノール、水から成る群より選択されたいずれか一つ又は二つ以上の溶媒を添加し、結晶を生成せしめることを特徴とする3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸メチルの結晶の製造方法。
(20−1) 該結晶が、粉末X線回折スペクトルにおいて、2θが8.6±0.2°、12.7±0.2°、17.2±0.2°、17.6±0.2°、18.9±0.2°及び21.0±0.2°のうちの少なくとも1つ以上の特徴的なピーク、典型的にはそれら全てのピークを有する結晶であることを特徴とする上記(20)に記載の製造方法。
【0014】
本件化合物1の結晶は、製剤毎の本件化合物の含量を均一となすことが容易である等の製剤化工程におけるメリットが高く、また、その結晶は、油状物である場合に比べて溶媒等の除去が容易である点においても有利であり、工業的規模の製造にも適している。
【0015】
本発明の特定の態様において使用される本件化合物1の結晶としては、A形結晶が好ましい例として挙げられる。本件化合物1のA形結晶は、上述の発明(5)〜(7−1)の各種の特性、又は本願明細書の実施例、試験例等にて確認された各種の特性のいずれか一つ又は二つ以上の組合せにて規定される結晶である。前述本件化合物1の結晶が有するメリットの他に、このA形結晶が一定の性状を示すことより、コントロールされていない単なる結晶に比べて、製剤として、あるいは薬効を発揮する上で、さらには製造過程等において好ましい性質を示すものであることを確認した。なお、上述のA形結晶は、例えば、後述のB形結晶に比較して、水系溶媒に対してより高い溶解性が認められ、その点でも好ましい。
【0016】
A形結晶の有する好ましい効果を最も発揮させるためには、実質的にA形結晶であるA形結晶を用いることが好ましく、このようなA形結晶としては、A形結晶の結晶純度(百分率)が、通常は90重量%程度以上が挙げられ、95重量%以上が好ましい例として挙げられ、97重量%以上がより好ましく、99重量%以上がさらに好ましく、約100重量%であることが特に好ましい例として例示される。また場合によっては、93重量%以上が好ましく、98重量%以上がさらに好ましく、99.5重量%以上が特に好ましい。さらに本件の医薬として用いるに際しては通常80重量%以上であってもよい。また、A形結晶の好ましい態様としては、A形以外の結晶形を実質的に含まない結晶も例示される。「実質的に含まない」とはA形結晶以外の結晶形を好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下、特に好ましくは1重量%以下、最も好ましくは全く含まないことを意味する。
【0017】
また本発明の更なる態様において使用される結晶としては、B形結晶も好ましい例として挙げられる。本件化合物1のB形結晶については、上述の発明(8)〜(10−1)の各種の特性、又は本願明細書の実施例、試験例等にて確認された各種の特性のいずれか一つ又は二つ以上の組合せにて規定される結晶である。前述本件化合物1の結晶が有するメリットの他に、このB形結晶は、一定の性状を示すことより、コントロールされていない単なる結晶に比べて、製剤として、あるいは薬効を発揮する上で、さらには製造過程等において好ましい性質を示すものである。またこのB形結晶は、A形結晶に比較しては、ろ過性がより高いことや、これとは別に流動特性がより改善されており、B形結晶を大量製造する際には、例えば、ろ過工程および/または脱水工程等における所要時間を短縮できることが期待される。またB形結晶は、乾燥製剤、固体製剤の製造に際してもより好ましいものである。ろ過脱水後のB形結晶は、ろ過脱水後のA形結晶に比較して、含水率が低いことも確認されており、特に大量製造する際には、乾燥にかかる時間の短縮や熱エネルギーを減ずることが期待され好ましいものと考えられる。またこれらとは別に、このB形結晶はA形結晶よりも実質的に良好な形態的安定性を有すると考えられる。B形結晶の有する好ましい効果を最も発揮させるためには、実質的にB形結晶であるB形結晶を用いることが好ましく、このようなB形結晶としては、B形結晶の結晶純度(百分率)が通常は90重量%程度以上が挙げられ、95重量%以上が好ましい例として挙げられ、97重量%以上がより好ましく、99重量%以上がさらに好ましく、約100重量%であることが特に好ましい例として例示される。また場合によっては、93重量%以上が好ましく、98重量%以上がさらに好ましく、99.5重量%以上が特に好ましい。さらに本件の医薬として用いるに際しては通常80重量%以上であってもよい。また、B形結晶の好ましい態様としては、B形以外の結晶形を実質的に含まない結晶も例示される。「実質的に含まない」とはB形結晶以外の結晶形を好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下、特に好ましくは1重量%以下、最も好ましくは全く含まないことを意味する。
【0018】
なお、A形結晶の結晶純度(百分率)としては、A形結晶の結晶の存在重量を本件化合物1の存在重量で除して100倍すればよい。ここで、A形結晶の結晶の存在重量や本件化合物1の存在重量の測定方法としては、下記のいずれかの方法を適用してもよく、さらにはそれらに適宜の変更を加えた測定方法を用いることも可能である。
【0019】
加えて、測定方法によっては測定誤差が必要以上に現れることがあり得るが、その際には既知量の標準品を用いてその誤差の大きさを確認し、補正することも好ましい。例えば、本発明においては、示差走査熱量分析による測定方法(特に本願明細書に記載された具体的な測定条件が特に好ましい例として挙げられる)にて算出された結晶の測定値を、HPLCによる測定(特に本願明細書に記載された具体的な測定条件が特に好ましい例として挙げられる)にて算出された本件化合物1の測定値により除して100倍することにより算出された値として結晶純度が表示されることが特に好ましい。また、B形結晶の結晶純度(百分率)も上記の説明と同様であり、その測定方法は適宜変更することが出来るが、示差走査熱量分析による測定方法(特に本願明細書に記載された具体的な測定条件が特に好ましい例として挙げられる)にて算出された結晶の測定値を、HPLCによる測定(特に本願明細書に記載された具体的な測定条件が特に好ましい例として挙げられる)にて算出された本件化合物1の測定値により除して100倍することにより算出された値として結晶純度が表示されることが特に好ましい。
【0020】
要すれば、それぞれの結晶の存在量は、示差走査熱量分析、または粉末X線回折スペクトルや、赤外吸収スペクトル、固体13C−NMRスペクトル、ラマンスペクトル等における特徴的なピークの強度を測定することによって算出することができ、とりわけ上記のとおり、本件化合物1のA形結晶やB形結晶の存在率を測定するに際しては、示差走査熱量分析にて測定する方法が好ましい例として挙げられる。本件化合物1のA形結晶を例にとって具体的に説明すると、適当な昇温速度による示差走査熱量分析(適当な昇温速度としては、例えば50℃/分が挙げられる。)において、結晶として純粋なA形結晶を標準品として用い、その標準品の重量(mg)とA形結晶の融解に基づく約185℃付近の吸熱ピークの面積(mJ)をプロットして検量線を作成し、測定すべき試料における約185℃付近の吸熱ピークの面積(mJ)を前記検量線と対比してA形結晶の存在量を算出することができる。また本件化合物1のB形結晶についても、同様にしてその存在量を算出することができる。すなわち、結晶として純粋なB形結晶を標準品として用い、例えば、B形結晶の示差走査熱量分析の吸熱ピークとしては通常約205℃付近の吸熱ピークを測定すればよい。
【0021】
示差走査熱量分析以外の測定方法、すなわち粉末X線回折スペクトルや、赤外吸収スペクトル、固体13C−NMRスペクトル、ラマンスペクトル等の測定方法においても、示差走査熱量分析と同様に標準品を用いて検量線を作成することにより、目的とする結晶形の存在量を算出することができる。
【0022】
特に示差走査熱量分析以外の測定方法、すなわち粉末X線回折スペクトルや、赤外吸収スペクトル、固体13C−NMRスペクトル、ラマンスペクトル等の測定方法により目的とする結晶形の存在量を算出する場合、それぞれの結晶形に特徴的なピークを適宜選択して検量線を作成し、目的とする結晶形の存在量を算出することができる。
【0023】
なお粉末X線回折スペクトル測定に用いる光学系としては、一般的な集中法光学系又は平行ビーム法光学系が例示される。用いる光学系としては特に限定されることはないが、分解能や強度を確保したい場合には集中法光学系を用いて測定することが好ましい。また、結晶の形状(針状、板状等)によって一定の方向を向いてしまう現象である配向を抑えたい場合には平行ビーム法光学系を用いて測定することが好ましい。集中法光学系の測定装置としては、XRD−6000(島津製作所社製)又はMultiFlex(リガク社製)等が例示される。また、平行ビーム法光学系の測定装置としてはXRD−7700(島津製作所社製)又はRINT2200Ultima+/PC(リガク社製)等が例示される。
【0024】
また、製剤中の本件化合物1の存在量を測定する必要がある場合には、通常はHPLCを用いることが簡便であり好ましい。すなわち、例えば本件化合物1についての、化学的純度既知の本件化合物1の標準品を用いてHPLC法により測定してその検量線を作成し、この検量線に基づき試料中の本件化合物1の存在量を定量することができる。
【0025】
上述の本件化合物1に関するHPLCによる定量方法や結晶の測定方法は、後述の本件化合物2又は本件化合物3においても同様に適用し得る。例えば、HPLC条件としては前記と同一の条件にて行うことが可能であり、示差走査熱量分析による測定方法もそれぞれにおいて特徴的な吸熱ピークを用いて測定することができる。さらに、それぞれの結晶純度も上述と同様に測定し算出することができる。上述の測定において標準品として用いる純粋な本件化合物1のA形結晶やB形結晶、及び後述の結晶の製造方法において用いる種晶としての純粋な本件化合物1のA形結晶やB形結晶は、好ましくはそれぞれ本願実施例3、4又は5のそれぞれの方法に従い取得し、その中から特に形状の好ましい結晶を選択し、さらに示差走査熱量分析によりそれぞれ特徴的な単一の吸熱ピークを示す結晶を選択することによって、そのそれぞれを取得することができる。また、実施例6〜7のそれぞれの方法に従って取得したB形結晶を標準品として用いることも可能である。さらに、実施例6〜7のそれぞれの方法に従って取得したB形結晶を、純粋なB形結晶を取得するための種晶として用いることも可能である。ところで、A形結晶にB形結晶が混入する場合、示差走査熱量分析による当該A形結晶の定量値が通常の標準品A形結晶の定量値に比較して低目に計測されることがある。この程度は、A形結晶に対するB形結晶の混入率により変化するが、例えば、B形結晶の混入率10%以内であれば、A形結晶の定量値は、通常の10%程度の誤差となる可能性がある。また、B形結晶の混入率が50%近くになると、最大20%程度までの誤差となる可能性がある。また逆に、B形結晶にA形結晶が混入する場合には、その定量値が標準品B形結晶に比較して高目に計測されることがあり、B形結晶に対するA形結晶の混入率により変化するが、同様に、例えば、A形結晶の混入率10%以内であれば、B形結晶の定量値は、通常の10%程度の誤差となる可能性があるし、また、A形結晶の混入率が50%近くになると、最大20%程度までの誤差となる可能性がある。特に互いの混入率が高くない通常の状態において、A形結晶、又はB形結晶の結晶純度は、約10%程度の誤差を含むことがある。定量する際には、予想される混合率の標準品による検量線を作成して定量する方法がある。また、混入率をより明確に判断するためには、A形結晶標準品とB形結晶標準品の混合率既知の混合物を適宜調製して、問題とする結晶の混合率(百分率)と、その結晶の融解に基づく吸熱ピークの面積(mJ)の全体のピーク面積に対する百分率から検量線を作成し、この検量線により被検物中の該結晶の混合比率を知ることができる。
【0026】
また、示差走査熱量分析以外の測定方法、すなわち粉末X線回折スペクトルや、赤外吸収スペクトル、固体13C−NMRスペクトル、ラマンスペクトル等の測定方法においても、混合率既知の標準品混合物を用いた検量線により、混合比率をより明確に判断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
[本件化合物1のA形結晶の製造方法]
本件化合物1のA形結晶の製造方法として、本件化合物1の塩基性条件下の溶液に酸を加え本件化合物1からなる結晶を生ぜせしめ、その結晶を取得する方法が挙げられる。
【0028】
すなわち、本発明に用いる本件化合物1の塩基性条件下の溶液としては、該化合物が塩基性条件下にて溶解された溶液であれば特に限定されず、ここで、溶解されるべき該化合物は、油状、固体状(各種結晶形、無晶形を含む)あるいはそれらの混合物のいずれであっても良い。なお、本件化合物1は、国際公開WO第03/70686号公報の方法に従って調製することができる。
【0029】
上述の塩基性条件下の溶液を調製するために用いられる塩基としては、無機塩基が好ましい。すなわち、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシドなどのアルカリ金属塩基などが挙げられ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどは好ましく、水酸化ナトリウムは特に好ましい例として挙げられる。これらはあらかじめ水あるいはメタノール、エタノール、t−ブタノールなどのアルコール類などの溶液状にしたものを用いることもでき、あらかじめ一定の濃度の塩基を含む水溶液を調製して用いる場合、加える量を規定しやすい点などから特に好ましい。また濃厚な塩基性溶液を用いた場合、後に酸を加えた際、高い中和熱が発生することも考えられるため、0.5〜2規定の塩基の水溶液を用いる場合が非常に好ましい例として挙げられる。
【0030】
加える塩基の量は、下限としては、該化合物1当量に対して、通常は0.8当量以上、好ましくは0.9当量以上、より好ましくは1.0当量以上が例示される。上限としては、該化合物1当量に対して、通常3.0当量以下が例示され、2.0当量以下が好ましい例として挙げられる。
【0031】
化合物を塩基とともに溶解するために用いる溶媒としては、好ましくは極性溶媒が挙げられ、具体的には水、メタノール、エタノールなどのアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、アセトンなどが挙げられ、必要に応じてこれらを混合して用いることができる。これらのうち水、メタノール、エタノール、テトラヒドロフランなどは好ましく、水、メタノール、エタノールなどは特に好ましい。また水とメタノールを混合して用いる場合は非常に好ましく、塩基を含む溶液とした後の水:メタノールの混合比は1:20〜10:1が例示されるが1:10〜1:1の比率が好ましい。
【0032】
上述の塩基性条件下の溶液においては、溶媒の沸点以下の温度で加温してもよく、また不溶物が存在する場合、ろ過などの操作により不溶物を取り除くことが好ましい。
【0033】
上記溶液に加える酸としては、酸を添加することにより生ずる結晶の沈殿物に取り込まれない限り液体状、固体状及び気体状のいずれの状態のものでも良いが、好ましくは溶液状、又は気体であり、溶液状の酸が特に好ましい例として挙げられる。
【0034】
また、その種類は各種有機酸及び無機酸が挙げられるが、用いる酸は塩基を中和するためにその酸性度が本件化合物の酸性度より高い必要があり、塩酸、硫酸、燐酸などの鉱酸が好ましく塩酸は特に好ましい。これらはあらかじめ水あるいはメタノール、エタノール、t−ブタノールなどのアルコール類などの溶液状にしたものを用いることもでき、あらかじめ一定の濃度の酸を含む水溶液を調製して用いる場合、加える量を規定しやすい点などから好ましい。また濃厚な酸性溶液を用いた場合、高い中和熱が発生することも考えられるため、0.5〜2規定の酸性水溶液を用いる場合が特に好ましい例として挙げられる。
【0035】
加える酸の量としては、結晶が十分に生成する程度まで添加すれば良く特に限定されないが、通常は、塩基1当量に対して、通常0.8当量以上が例示され、好ましくは0.9当量以上添加することが好ましい。また、約1当量添加することが特に好ましい。また上限としては特に限定されないが、塩基1当量に対して、通常1.5当量以下が例示され、1.2当量以下が好ましい例として挙げられる。
【0036】
酸を加える方法としては、(1)一度に加える、(2)数回に分けて加える、(3)滴下などの方法で連続的に時間をかけて加える、などが挙げられるが、滴下などの方法で連続的に時間をかけて加える方法が好ましい。酸を加える際には攪拌を行うことが好ましい。加える速度に関しては、用いた化合物の量、塩基性条件下の溶液における塩基の濃度、用いる酸の種類、酸性溶液の濃度によっても異なるが、0.5〜2規定の塩酸を用いた場合、1時間〜6時間かけて全量を加える方法が例示される。
【0037】
酸を加える際の温度については、上限としては60℃以下が好ましく、50℃以下がより好ましく、45℃以下がさらに好ましく、下限としては0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、25℃以上がさらに好ましい。
【0038】
生じた結晶を取得するに際しては、通常は、酸の添加後24時間以内、好ましくは20時間以内、特に好ましくは10時間以内に行うことが例示される。また、酸の添加の直後に結晶を取得することもできるが、好ましくは添加後1時間以降、特に好ましくは添加後3時間以降に行うことが好ましい。
【0039】
析出した結晶の採取方法としては、濾過やデカンテーション等の公知の方法により結晶を取得することができるが、通常は、濾過することが好ましい。またろ過により結晶を採取した後、極性溶媒、例えば水、メタノール、エタノール又はそれらの混合液により結晶を洗浄することができ、これは不純物を取り除く操作として有効である。洗浄方法としては、濾過器上の結晶を極性溶媒ですすぐ方法が好ましい。また、結晶を極性溶媒、例えば水、メタノール、エタノール又はそれらの混合液に投入して懸濁液とし、これを十分攪拌した後再度結晶を濾過により取得する方法も好ましい。さらに、上記の2つの洗浄を両方行うことが特に好ましい。採取した結晶は、通常行われる乾燥方法、例えば減圧乾燥、減圧加温乾燥、常圧加温乾燥、風乾などにより乾燥することができる。
【0040】
酸を加えた後の最終的な化合物の析出濃度としては、用いる溶媒の種類、混合溶媒の場合はその比率によっても異なるが、下限としては一般的に1w/v%以上、好ましくは5w/v%以上が挙げられる。上限としては、30w/v%以下が好ましく、20w/v%以下が好ましい例として挙げられる。
【0041】
なお、結晶を生成させるに際して、少量のA結晶を種晶として添加することも好ましい態様と考えられる。
【0042】
上記の製造方法のうち好ましい例としては、以下が例示される。以下の3つの製造方法の例示において、使用する塩基の量、酸添加前の攪拌温度、加える酸の量、及び酸添加後の攪拌時間は前述した好ましい例を採用することができる。
【0043】
3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸に対して0.8〜3.0当量の水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを含む、水、メタノール、エタノール、テトラヒドロフランあるいはこれらの混合溶媒に溶解された溶液に、攪拌下10〜50℃の温度で、塩基1当量に対して0.8〜1.5当量の塩酸、硫酸、又は燐酸の水溶液を滴下などの方法で連続的に時間をかけて加え、さらに1〜24時間攪拌し結晶を得る方法。
【0044】
また上記の化合物1当量に対して0.9〜2.0当量の水酸化ナトリウムを含む、水、メタノール、エタノールあるいはこれらの混合溶媒に溶解された溶液に、攪拌下25〜45℃の温度で、塩基1当量に対して0.9〜1.2当量の0.5〜2規定塩酸水溶液を1時間〜6時間かけて加え、さらに3〜24時間攪拌し結晶を得る方法。
【0045】
また上記の化合物1当量に対して0.9〜2.0当量の0.5〜2規定水酸化ナトリウム水溶液及びメタノールを加え溶解された溶液に、攪拌下25〜45℃の温度で、塩基1当量に対して0.9〜1.2当量の0.5〜2規定塩酸水溶液を1時間〜6時間かけて加え、さらに3〜24時間攪拌し結晶を得る方法。
【0046】
また、上述の本件化合物1の塩基性条件下の溶液としては、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸の低級アルキルエステルのアルカリ加水分解物であってもよい。つまり、A形結晶の別の製造方法としては以下が挙げられる。
【0047】
3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸の低級アルキルエステルを溶媒中アルカリ加水分解した後、当該塩基性条件下の溶液に酸を加えることにより結晶を得る方法である。
【0048】
上記“低級アルキルエステル”としては、炭素数1〜4のアルキル基のカルボン酸エステルが例示され、炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、t−ブチル基の何れかを示す。このうちメチル基及びエチル基は特に好ましい例である。
【0049】
3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸の低級アルキルエステルは、国際公開WO第03/70686号公報の方法に従って調製することができる。
【0050】
上記化合物のアルカリ加水分解物を調製するに際して用いる塩基としては、前述の溶液を塩基性条件下にするために用いる塩基を用いることができる。
【0051】
塩基の使用量は化合物1当量に対し、通常は1当量以上が例示される。上限としては、該化合物1当量に対して、通常10当量以下が例示され、3当量以下が好ましく、2当量以下が特に好ましい例として挙げられる。
【0052】
溶媒としては、通常、反応を妨げない不活性媒体、好ましくは極性溶媒中で反応せしめることが好ましい。前述の条件も参考にすることができるが、極性溶媒としては水、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられ、必要に応じてこれらを混合して用いることができる。これらのうち水、メタノール、エタノール、テトラヒドロフランなどは好ましく、水、メタノール、エタノールなどは特に好ましい。また水とメタノールを混合して用いる場合は非常に好ましく、塩基を加えた後の反応溶液として水:メタノールの混合比は1:20〜10:1が例示されるが1:10〜1:1の比率が好ましい。
【0053】
なお、該アルカリ加水分解の反応温度は、例えば室温〜溶媒の還流温度までの適当な温度が選択され、特に好ましい例としては50〜70℃の条件が挙げられる。反応時間は、通常は0.5〜72時間で、好ましくは1〜24時間が例示され、より具体的には上限としては24時間以内が好ましく、20時間以内がより好ましく、10時間以内がさらに好ましく、下限としては0.5時間以降が好ましく、1時間以降がより好ましく、3時間以降がさらに好ましいが、薄層クロマトグラフィー(TLC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等により反応経過を追跡することが可能であるから、通常は3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸の収量が最大となるところで適宜反応を終了させればよい。
【0054】
アルカリ加水分解反応後、その塩基性条件下の溶液に添加する酸や結晶の生成条件や採取方法等については、前述の通りである。
【0055】
上記の製造方法のうち好ましい例としては、以下が例示される。以下の3つの製造方法の例示において、アルカリ加水分解において使用する塩基の量、加水分解反応の反応温度、加水分解反応の反応時間、酸添加前の攪拌温度、加える酸の量、及び酸添加後の攪拌時間は前述した好ましい例を採用することができる。
【0056】
3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸の低級アルキルエステルを水、メタノール、エタノール、テトラヒドロフランあるいはこれらの混合溶媒中、該低級アルキルエステル1当量に対して1〜3当量の水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウム存在下、50〜70℃で1〜24時間反応した後、攪拌下10〜50℃の温度で、塩基1当量に対して0.8〜1.5当量の塩酸、硫酸、又は燐酸の水溶液を滴下などの方法で連続的に時間をかけて加え、さらに1〜24時間攪拌し結晶を得る方法。
【0057】
また、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸のメチルあるいはエチルエステルを水、メタノール、エタノール、あるいはこれらの混合溶媒中、該メチルあるいはエチルエステル1当量に対して1〜2当量の水酸化ナトリウム存在下、50〜70℃で1〜24時間反応した後、攪拌下25〜45℃の温度で、塩基に対して0.9〜1.2当量の0.5〜2規定塩酸水溶液を1時間〜6時間かけて加え、さらに3〜24時間攪拌し結晶を得る方法。
また、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸のメチルあるいはエチルエステルに、該メチルあるいはエチルエステル1当量に対して1〜2当量の0.5〜2規定水酸化ナトリウム水溶液及びメタノールを加え50〜70℃で1〜24時間反応した後、攪拌下25〜45℃の温度で、塩基1当量に対して0.9〜1.2当量の0.5〜2規定塩酸水溶液を1時間〜6時間かけて加え、さらに3〜24時間攪拌し結晶を得る方法。
【0058】
[本件化合物1のB形結晶の製造方法]
本件化合物1のB形結晶の製造方法としては、本件化合物1を、アセトン、ジクロロメタン、メタノール、酢酸エチル、メタノール/酢酸混液、及びアセトニトリルから成る群から選択されるいずれか一つ又は二つ以上の溶媒に溶解させた溶液から結晶化せしめる方法が挙げられる。
【0059】
本件化合物1は、前述のとおり、国際公開WO第03/70686号公報の方法等に従って調製することができる。
【0060】
また上記において用いる溶媒としては、アセトン、ジクロロメタン、メタノール、酢酸エチル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ニトロベンゼン、2,2,2−トリフルオロエタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどが挙げられ、また、これらの溶媒は混合して用いることもできる。さらにテトラヒドロフラン/水、N,N−ジメチルホルムアミド/水、N,N−ジメチルアセトアミド/水、テトラヒドロフラン/メタノール、ジイソプロピルエーテル/酢酸、メタノール/酢酸などが挙げられる。これらのうちアセトン、ジクロロメタン、メタノール、酢酸エチル、アセトニトリル、メタノール/酢酸などは好ましく、アセトン、ジクロロメタンなどは特に好ましい。
【0061】
化合物を溶媒に溶解する際は、得られる結晶の収量の点などから溶媒の沸点以下の温度で加温することが好ましく、また不溶物が存在する場合、濾過などの操作により不溶物を取り除いてもよい。
【0062】
加える溶媒の量は、用いる溶媒の種類、混合溶媒の場合はその比率によっても異なるが、用いた溶媒の沸点以下の温度で化合物が溶解する量が好ましく、さらには、得られる結晶の収量の点などから溶媒の沸点付近で化合物が溶解し飽和濃度となる量を用いるのが特に好ましい。具体的には、例えば溶媒としてアセトンを用いた場合には、化合物1gに対して15〜25mlが好ましく、15ml程度がさらに好ましい例として挙げられる。また、ジクロロメタンを用いた場合には化合物1gに対して30〜50mlの量を用いるのが好ましく、30ml程度がさらに好ましい例として挙げられる。
【0063】
加温して調製した化合物の溶液を冷却する方法としては、急激に冷却する、段階的に冷却する、放冷する、などの方法が挙げられるが、段階的に冷却する方法もしくは放冷する方法が好ましい。
【0064】
冷却温度は、用いる溶媒の量、用いる溶媒の種類、混合溶媒の場合はその比率によっても異なり、化合物を溶解させたときの温度によっても異なるが、化合物が飽和濃度以上となる温度まで冷却することが好ましい。
【0065】
冷却操作は、撹拌しながら行っても、静置して行ってもよいが、結晶の析出を早め、操作時間を短縮する点からは撹拌しながら行うのが好ましい。
【0066】
なお、上記の方法により結晶を生成させるに際して、少量のB結晶を種晶として添加することも好ましい態様である。
【0067】
析出した結晶の採取は、一般的にろ過によって行うことができる。またろ過により結晶を採取した後、化合物の溶解に用いた溶媒または結晶を著しく溶解しない溶媒、またはそれらの混合液により結晶を洗浄することができ、これは不純物を取り除く操作として有効である。
【0068】
採取した結晶は、通常行われる乾燥方法、例えば減圧乾燥、減圧加温乾燥、常圧加温乾燥、風乾などにより乾燥することができる。
【0069】
上記の製造方法のうち好ましい例としては、以下が例示される。
【0070】
本件化合物1の1gに対して15〜25mlのアセトン、もしくは30〜50mlのジクロロメタンを加え、沸点付近まで加温して該化合物を溶解し、必要に応じ不溶物をろ過した後、室温で撹拌し、数時間〜数日後、生成した結晶を得る方法。
【0071】
また本件化合物1のB形結晶についての他の製造方法としては、本件化合物1の塩基性条件下の溶液に酸を加える過程で本件化合物1が結晶しはじめる直前に本件化合物1のB形結晶を種晶として加え、本件化合物1のB形結晶を生ぜせしめ、その結晶を取得する方法も挙げられる。
【0072】
本発明に用いる本件化合物1やその形状、入手方法は、前述の「本件化合物1のA形結晶の製造方法」の項における説明と同様である。さらに本件化合物1の塩基性条件下の溶液の調製方法等も前記と同様である。さらに上述の塩基性条件下の溶液は、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸の低級アルキルエステルのアルカリ加水分解物であってもよいことも前記と同様である。
【0073】
上述の塩基性条件下の溶液を調製するために用いられる塩基の種類や添加量等や、化合物を塩基とともに溶解するために用いる溶媒の種類や添加量等、さらに添加する酸の種類や添加量、加える方法、加える速度、加える際の温度等についても上記での説明が準用できる。B形結晶の種晶を加える方法としては、種晶を加える段階で混合液中に結晶が存在しない状態であることが好ましく、また加えた種晶が溶解せずに存在する状態であることが好ましい。該化合物の当量以上の塩基を加えて溶解させた後に酸を加える場合、当量以上の塩基が、加えた酸によって中和された段階で、B形結晶の種晶を加えることが種晶の溶解を回避する点で好ましい。また、この時、当量以上の塩基の中和をpH計等による機器を用いて確認することも好ましい方法である。すなわち、例えば、該化合物に対して1.5当量の塩基を用いて該化合物を溶解する場合、0.5当量相当の酸を加え、系内のpHが7〜9程度の弱塩基性を示した段階で種晶を添加することが好ましい例として挙げられる。また、種晶は酸の添加により結晶が生成する前に添加することが好ましい。2規定の塩酸を1時間〜6時間かけて加える場合、上述した該化合物の当量以上の塩基の中和が終了した後、0.1〜0.2当量の酸の添加により、系内のpHが弱酸性を示す段階で結晶が生成し始める可能性が高いため、B形の種晶添加はこれより早い段階で行うことが好ましい。
【0074】
添加するB形結晶の量としては、添加した結晶が溶解しない量であれば良く特に限定されないが、該化合物に対して通常0.01%以上が例示され、好ましくは0.05%以上、特に好ましくは約0.1%添加することが例示される。また上限としては特に限定されないが、該化合物に対して、通常2%以下が例示され、好ましくは1.5%以下、さらに好ましいくは1.0%以下、特に好ましくは0.3%以下が例示される。析出した結晶の採取方法、採取した結晶の乾燥方法、酸を加えた後の最終的な化合物の析出濃度等については、前述の「本件化合物1のA形結晶の製造方法」の項と同様の条件を用いることができる。
【0075】
上記の製造方法のうち好ましい例としては、以下が例示される。以下の3つの製造方法の例示において、使用する塩基の量、酸添加前の攪拌温度、加える酸の量、加えるB形の種晶の量、及び酸添加後の攪拌時間は前述した好ましい例を採用することができる。
【0076】
本件化合物1の1当量に対して0.8〜3.0当量の水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを含む、水、メタノール、エタノール、テトラヒドロフランあるいはこれらの混合溶媒に溶解された溶液に、攪拌下10〜50℃の温度で、塩基1当量に対して0.8〜1.5当量の塩酸、硫酸、又は燐酸の水溶液を滴下などの方法で連続的に時間をかけて加え、その途中系内のpHが7〜9の弱塩基性を示した段階でB形の種晶を該化合物に対して0.01〜2%加えた後、さらに1〜24時間攪拌し結晶を得る方法。
【0077】
また本件化合物1の1当量に対して0.9〜2.0当量の水酸化ナトリウムを含む、水、メタノール、エタノールあるいはこれらの混合溶媒に溶解された溶液に、攪拌下25〜45℃の温度で、塩基1当量に対して0.9〜1.2当量の0.5〜2規定塩酸水溶液を1時間〜6時間かけて加え、その途中系内のpHが7〜9の弱塩基性を示した段階でB形の種晶を該化合物に対して0.05〜1.5%加えた後、さらに1〜5時間攪拌し結晶を得る方法。
【0078】
また本件化合物1の1当量に対して0.9〜2.0当量の0.5〜2規定水酸化ナトリウム水溶液及びメタノールを加え溶解された溶液に、攪拌下25〜45℃の温度で、塩基1当量に対して0.9〜1.2当量の0.5〜2規定塩酸水溶液を1時間〜6時間かけて加え、その途中系内のpHが7〜9の弱塩基性を示した段階でB形の種晶を該化合物に対して0.1%加えた後、さらに1〜5時間攪拌し結晶を得る方法。
【0079】
また製造方法の好ましい例としては、以下の態様も例示される。以下の3つの製造方法の例示において、アルカリ加水分解において使用する塩基の量、加水分解反応の反応温度、加水分解反応の反応時間、酸添加前の攪拌温度、加える酸の量、加えるB形の種晶の量、及び酸添加後の攪拌時間は前述した好ましい例を採用することができる。
【0080】
3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸の低級アルキルエステルを水、メタノール、エタノール、テトラヒドロフランあるいはこれらの混合溶媒中、該低級アルキルエステル1当量に対して1〜3当量の水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウム存在下、50〜70℃で1〜24時間反応した後、攪拌下10〜50℃の温度で、塩基1当量に対して0.8〜1.5当量の塩酸、硫酸、又は燐酸の水溶液を滴下などの方法で連続的に時間をかけて加え、その途中系内のpHが7〜9の弱塩基性を示した段階でB形の種晶を該化合物に対して0.01〜2%加えた後、さらに1〜24時間攪拌し結晶を得る方法。
【0081】
また、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸のメチルあるいはエチルエステルを水、メタノール、エタノール、あるいはこれらの混合溶媒中、該メチルあるいはエチルエステル1当量に対して1〜2当量の水酸化ナトリウム存在下、50〜70℃で1〜24時間反応した後、攪拌下25〜45℃の温度で、塩基に対して0.9〜1.2当量の0.5〜2規定塩酸水溶液を1時間〜6時間かけて加え、その途中系内のpHが7〜9の弱塩基性を示した段階でB形の種晶を該化合物に対して0.05〜1.5%加えた後、さらに3〜24時間攪拌し結晶を得る方法。
また、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸のメチルあるいはエチルエステルに、該メチルあるいはエチルエステル1当量に対して1〜2当量の0.5〜2規定水酸化ナトリウム水溶液及びメタノールを加え50〜70℃で1〜24時間反応した後、攪拌下25〜45℃の温度で、塩基1当量に対して0.9〜1.2当量の0.5〜2規定塩酸水溶液を1時間〜6時間かけて加え、その途中系内のpHが7〜9の弱塩基性を示した段階でB形の種晶を該化合物に対して0.1%加えた後、さらに3〜24時間攪拌し結晶を得る方法。
【0082】
[本件化合物2の結晶の製造方法]
また、本発明の本件化合物2の結晶については、製剤毎の本件化合物の含量を均一となすことが容易である等の製剤化工程におけるメリットが高く、また、その結晶は、油状物である場合に比べて溶媒等の除去が容易である点においても有利であり、更にその結晶の製造方法を見出したことで上述の公知製造方法にあるカラムクロマトグラフィーによる精製を行うことなく純度の良い本件化合物が得られるメリットがあり、工業的規模の製造にも適しており、極めて好ましいものである。
【0083】
本件化合物2の結晶の製造方法としては、本件化合物2が溶解しやすい富溶媒に溶解して調製した溶液に、該化合物を溶解しにくい貧溶媒を加え該化合物からなる結晶を生ぜせしめ、その結晶を得る方法が挙げられる。なお、本件化合物2は、国際公開WO第03/70686号公報の方法に従って調製することができる。
【0084】
該化合物の溶解に用いる富溶媒としては、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトン、ジメトキシエタン、メタノールなどが挙げられるが、アセトン、トルエン、テトラヒドロフランなどは好ましく、アセトンは特に好ましい。また、該化合物の結晶を生成させるために加える貧溶媒としては、ヘプタン、ジイソプロピルエーテル、イソプロパノール、t−ブチルメチルエーテル、水などが挙げられるが、富溶媒としてアセトンを用いた場合には水が好ましく、富溶媒としてトルエンもしくはテトラヒドロフランを用いる場合にはヘプタンが好ましい。富溶媒としてアセトン、貧溶媒として水を用いる組み合わせは特に好ましい例として挙げられる。
【0085】
富溶媒により調製する溶液の濃度としては、上限としては20w/v%以下であることが好ましく、10w/v%以下であることがより好ましく、下限としては5w/v%以上であることが好ましい。加える貧溶媒の量としては富溶媒に対して上限としては2.0倍量以下が好ましく、1.5倍量以下がより好ましく、1.1倍量以下がさらに好ましく、下限としては0.8倍量以上が好ましく、0.9倍量以上がより好ましい。特に1.0倍量添加することが好ましい。さらに1.05倍量添加することが特に好ましい別の態様もある。貧溶媒の添加法としては、滴下などの方法で連続的に時間をかけて加える方法が好ましい。貧溶媒を加える際には撹拌を行うことが好ましい。加える速度に関しては、用いた化合物の量、溶液における化合物の濃度、用いる富溶媒、貧溶媒の種類、によっても異なるが、化合物のアセトン溶液に、貧溶媒として水を加える場合、1時間〜3時間かけて加える方法が例示される。
【0086】
貧溶媒を加える際の温度については、上限としては50℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましく、30℃以下がさらに好ましく、下限としては0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、20℃以上がさらに好ましい。
【0087】
生じた結晶を取得するに際しては、通常は、貧溶媒の添加後1時間以降、24時間以内、好ましくは1時間以降、5時間以内に行うことが例示される。
【0088】
析出した結晶の採取方法としては、濾過やデカンテーション等の公知の方法により結晶を取得することができるが、通常は、濾過することが好ましい。またろ過により結晶を採取した後、極性溶媒、例えば水、アセトン又はそれらの混合液により結晶を洗浄することができ、これは不純物を取り除く操作として有効である。
【0089】
採取した結晶は、通常行われる乾燥方法、例えば減圧乾燥、減圧加温乾燥、常圧加温乾燥、風乾などにより乾燥することができる。
【0090】
[本件化合物3の結晶の製造方法]
さらに本発明の本件化合物3の結晶については、製剤毎の本件化合物の含量を均一となすことが容易である等の製剤化工程におけるメリットが高く、また、その結晶は、油状物である場合に比べて溶媒等の除去が容易である点においても有利であり、更にその結晶の製造方法を見出したことで上述の公知製造方法にあるカラムクロマトグラフィーによる精製を行うことなく純度の良い本件化合物が得られるメリットがあり、工業的規模の製造にも適しており、極めて好ましいものである。
【0091】
本件化合物3の結晶の製造方法としては、本件化合物3が溶解しやすい富溶媒に溶解して調製した溶液に、該化合物を溶解しにくい貧溶媒を加え該化合物からなる結晶を生ぜせしめ、その結晶を得る方法が挙げられる。
【0092】
なお、本件化合物3は、国際公開WO第03/70686号公報の方法に従って調製することができる。また、3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸を、例えばメタノール溶媒中、酸性条件下でメチルエステル化させる等、通常のメチルエステル化反応を用いて調製することもできる。
【0093】
該化合物の溶解に用いる富溶媒としては、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトンなどが挙げられるが、アセトン、テトラヒドロフランなどは好ましく、テトラヒドロフランは特に好ましい。また、貧溶媒としては、ヘプタン、イソプロパノール、メタノール、水などが挙げられるが、富溶媒としてアセトンを用いる場合には水もしくはヘプタンが好ましく、富溶媒としてテトラヒドロフランを用いる場合にはヘプタン、イソプロパノール、水が好ましい。富溶媒としてテトラヒドロフラン、貧溶媒として水を用いる組み合わせは特に好ましい例として挙げられる。
【0094】
富溶媒により調製する溶液の濃度としては、上限としては20w/v%以下であることが好ましく、10w/v%以下であることがより好ましく、下限としては5w/v%以上であることが好ましい。加える貧溶媒の量としては富溶媒に対して上限としては2.0倍量以下が好ましく、1.5倍量以下がより好ましく、1.1倍量以下がさらに好ましく、下限としては0.8倍量以上が好ましく、0.9倍量以上がより好ましい。特に1.0倍量添加することが好ましい。さらに1.05倍量添加することが特に好ましい別の態様もある。貧溶媒の添加法としては滴下などの方法で連続的に時間をかけて加える方法が好ましい。貧溶媒を加える際には撹拌を行うことが好ましい。加える速度に関しては、用いた化合物の量、溶液における化合物の濃度、用いる富溶媒、貧溶媒の種類、によっても異なるが、化合物のテトラヒドロフラン溶液に、貧溶媒として水を加える場合、1時間〜3時間かけて加える方法が例示される。
【0095】
貧溶媒を加える際の温度については、上限としては50℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましく、35℃以下がさらに好ましく、下限としては0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、25℃以上がさらに好ましい。
【0096】
生じた結晶を取得するに際しては、結晶の取得は、通常は、貧溶媒の添加後、氷冷下で1時間以降、24時間以内、好ましくは1時間以降、5時間以内に行うことが例示される。
【0097】
析出した結晶の採取方法としては、濾過やデカンテーション等の公知の方法により結晶を取得することができるが、通常は、濾過することが好ましい。またろ過により結晶を採取した後、極性溶媒、例えば水、アセトン又はそれらの混合液により結晶を洗浄することができ、これは不純物を取り除く操作として有効である。
【0098】
採取した結晶は、通常行われる乾燥方法、例えば減圧乾燥、減圧加温乾燥、常圧加温乾燥、風乾などにより乾燥することができる。
【0099】
本件化合物は、マウスの炎症性浮腫、アレルギー性浮腫、酢酸ライジング反応及びラットアジュバント関節炎を0.1〜500mg/kgの経口投与で抑制すること、一方マウスに500mg/kg/日を3日間経口投与しても死亡例が認められなかったことから、哺乳動物、好ましくは人、イヌやネコなどのペット又はコンパニオンアニマルあるいは家畜における医薬として安全な化合物であり、医薬品の活性成分として有用な物質である。哺乳動物、好ましくは人、イヌやネコなどのペット又はコンパニオンアニマルあるいは家畜における医薬としてはプロスタグランジン及び/又はロイコトリエンの産生を起因とする各種の急性又は慢性の炎症反応が認められる状態、各種疾患あるいは病態、すなわち炎症性疾患、アレルギー性疾患、自己免疫疾患、疼痛に対する予防及び/又は治療薬のいずれかが好ましい例として挙げられる。
【0100】
本件化合物を上記の医薬として用いるには、有効量の本件化合物をそのままで、あるいは薬学上許容される担体と混合して医薬組成物となせばよく、この担体として、たとえばカルボキシメチルセルロースなどの懸濁化剤やその他の公知の担体も用いることができる。一例を示すと、本発明化合物を0.5%カルボキシメチルセルロースを含む精製水に懸濁し用いる方法が挙げられる。
【0101】
上記医薬組成物の製剤化のための剤形としては、錠剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤、懸濁剤、カプセル剤、注射剤等が挙げられるが、本件化合物の結晶の性質を考えたときに、医薬組成物が乾燥製剤であることが特に好ましい。その製造のためには、これらの製剤に応じた各種担体が使用される。たとえば、経口剤の担体としては、賦形剤、結合剤、滑沢剤、流動性促進剤、着色剤を挙げることができる。
【0102】
本発明化合物を注射剤等の非経口剤とする場合には、希釈剤として一般に注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、注射用植物油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等を使用することができる。さらに必要に応じて、殺菌剤、防腐剤、安定剤、等張化剤、無痛化剤等を加えてもよい。
【0103】
本発明化合物を哺乳類、たとえば人に投与する際には、錠剤、散剤、顆粒剤、懸濁剤、カプセル剤の形で経口投与することができ、また、点滴を含む注射剤、さらには坐剤、ゲル剤、ローション剤、軟膏剤、クリーム又はスプレーの形で非経口投与することができる。その投与量は、適用症、投与形態、患者の年齢、体重、症状の度合いなどによって異なるが、一般的には成人1日当たり1〜1000mgを1〜3回に分けて投与することが例示される。投与期間は数日〜2カ月の連日投与が一般的であるが、患者の症状により1日投与量、投与期間共に増減することができる。
【0104】
また、本件化合物の類似化合物として下記の化合物が挙げられるが、これらの化合物も国際公開WO第03/70686号公報の方法に準じて、または本明細書に記載した製造方法により製造することができる。
3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸;
3−[3−アミノ−5−(1−エチル−1H−インダゾール−5−イル)4−(インダン−2−イルオキシ)フェニル]プロピオン酸;
3−[4−(インダン−2−イルオキシ)−3−(N−メチルアミノ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸;
3−[4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1H−インダゾール−5−イル)−3−(N−メチルアミノ)フェニル]プロピオン酸;
3−[5−(1−エチル−1H−インダゾール−5−イル)4−(インダン−2−イルオキシ)−3−(N−メチルアミノ)フェニル]プロピオン酸;
3−[3−アミノ−4−(4−フルオロインダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(5−フルオロインダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(5,6−ジフルオロインダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸;
3−[3−アミノ−4−(1−ヒドロキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(4−ヒドロキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(5−ヒドロキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(5,6−ジヒドロキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸;
3−[3−アミノ−4−(4−メトキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(5−メトキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(5,6−ジメトキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸;
3−[3−アミノ−4−(4−ベンジルオキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(4−ベンジルオキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(5,6−ジベンジルオキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸;
3−[3−アミノ−4−(4−フルオロインダン−2−イルオキシ)−5−(1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(5−フルオロインダン−2−イルオキシ)−5−(1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(5,6−ジフルオロインダン−2−イルオキシ)−5−(1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸;
3−[3−アミノ−4−(1−ヒドロキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(4−ヒドロキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(5−ヒドロキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(5,6−ジヒドロキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸;
3−[3−アミノ−5−(1H−インダゾール−5−イル)−4−(4−メトキシインダン−2−イルオキシ)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−5−(1H−インダゾール−5−イル)−4−(5−メトキシインダン−2−イルオキシ)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(5,6−ジメトキシインダン−2−イルオキシ)−5−(−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸;
3−[3−アミノ−4−(4−ベンジルオキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(4−ベンジルオキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(5,6−ジベンジルオキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸;
3−[3−アミノ−5−(1−エチル−1H−インダゾール−5−イル)−4−(4−フルオロインダン−2−イルオキシ)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−5−(1−エチル−1H−インダゾール−5−イル)−4−(5−フルオロインダン−2−イルオキシ)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(5,6−ジフルオロインダン−2−イルオキシ)−5−(1−エチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸;
3−[3−アミノ−5−(1−エチル−1H−インダゾール−5−イル)−4−(1−ヒドロキシインダン−2−イルオキシ)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−5−(1−エチル−1H−インダゾール−5−イル)−4−(4−ヒドロキシインダン−2−イルオキシ)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−5−(1−エチル−1H−インダゾール−5−イル)−4−(5−ヒドロキシインダン−2−イルオキシ)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(5,6−ジヒドロキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1−エチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸;
3−[3−アミノ−5−(1−エチル−1H−インダゾール−5−イル)−4−(4−メトキシインダン−2−イルオキシ)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−5−(1−エチル−1H−インダゾール−5−イル)−4−(5−メトキシインダン−2−イルオキシ)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(5,6−ジメトキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1−エチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸;
3−[3−アミノ−4−(4−ベンジルオキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1−エチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(4−ベンジルオキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1−エチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸およびその異性体;
3−[3−アミノ−4−(5,6−ジベンジルオキシインダン−2−イルオキシ)−5−(1−エチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸。
【実施例】
【0105】
以下に、実施例、試験例を掲げて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0106】
(実施例1)
3−[4−(インダン−2−イルオキシ)−3−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−5−ニトロフェニル]プロピオン酸メチル(本件化合物2)の結晶の調製例1
3−[3−ブロモ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−ニトロフェニル]プロピオン酸メチル(14.00g、国際公開WO第03/70686号公報の方法に従って調製)、1−メチル−1H−インダゾール−5−ボロン酸(7.62g、国際公開WO第03/70686号公報の方法に従って調製)、酢酸パラジウム(75mg、和光純薬社製)、トリフェニルホスフィン(0.17g、和光純薬社製)に、THF(40ml)を加え、撹拌した後、水(27ml)にリン酸三カリウム(16.97g、和光純薬社製)を溶解させた溶液を加え、系内を窒素置換した。次いでこの混合液を60℃で4時間撹拌して反応させた。反応が終了していることを確認した後、分液して上層を得た。上層を室温に冷却後、酢酸エチル(40ml)と活性炭(2.8g、日本エンバイロケミカルズ社製)を加え、室温で1時間撹拌した。懸濁液をろ過してろ液を得、さらにフィルター上の残渣を酢酸エチル(20ml)で洗浄して洗液を得、ろ液と洗液をあわせて減圧濃縮し、濃縮液(44g)を得た。次いで濃縮液にアセトン(140ml)を加えて撹拌した後、撹拌しながら室温で水(140ml)を1時間かけて加え、さらに室温で1時間撹拌した。次いで、この混合液をろ過し、さらにフィルター上の固形物を水(70ml)で洗浄し、湿固形物を得た。この湿固形物を50℃で減圧乾燥することにより、標記化合物(15.7g)の結晶を得た。
【0107】
(実施例1−A、B)
本件化合物2の結晶の調製例2
実施例1の濃縮液取得以降の操作について、アセトンに代えてトルエンを用い、水に代えてヘプタンを用いて行うことにより該化合物の結晶を得ることができる。また、実施例1のアセトンの代わりにテトラヒドロフラン、水の代わりにヘプタンを用いることにより、本件化合物2の結晶を得ることができる。
【0108】
(実施例2)
3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸メチル(本件化合物3)の調製例1
実施例1に従って調製した本件化合物2(13.0g)にTHF(138ml)、安定化ニッケル(4.42g、日揮化学社製)、水(4ml)を加え、撹拌後、系内を水素置換し、水素雰囲気下50℃で7時間撹拌し反応させた。反応が終了していることを確認した後、その反応液を窒素置換し、ろ過してろ液を得、さらにフィルター上の残渣をTHF(34ml)で洗浄して洗液を得た。ろ液と洗液を合せた溶液に活性炭(2.6g、日本エンバイロケミカルズ社製)を加え、室温で1時間撹拌した。懸濁液をろ過してろ液を得、さらにフィルター上の残渣をTHF(34ml)で洗浄して洗液を得た。ここで取得したろ液と洗液を合せた溶液に室温で水(207ml)を1時間かけて加え、さらに氷冷下1時間撹拌した。次いで、この混合液をろ過し、さらにフィルター上の固形物を水(68ml)で洗浄し、湿固形物を得た。この湿固形物を50℃で減圧乾燥することにより、標記化合物(10.3g)の結晶を得た。
【0109】
(実施例2−A、B)
本件化合物3の調製例2
実施例2でろ液と洗液の混合液に加えた水の代わりに、ヘプタンを用いることにより本件化合物3の結晶を得ることができる。
【0110】
また、さらに該溶媒としてイソプロパノールを用いることにより本件化合物3の結晶を得ることができる。
【0111】
(実施例3)
本件化合物1のA形結晶の調製例1
実施例2で得た本件化合物3(10.0g)にメタノール(45ml)を加え、撹拌した後、2規定水酸化ナトリウム水溶液(17.0ml)を加え60℃で3時間撹拌下にてアルカリ加水分解した。反応後、反応液を35℃に冷却し、2規定塩酸水溶液(17.0ml)を2時間かけて加え、さらに35℃で16時間撹拌した。次いで、この混合液をろ過し、さらにフィルター上の固形物を水(27ml)とメタノール(13ml)の混合液で洗浄し、湿固形物を得た。この湿固形物を50℃で減圧乾燥することにより、9.2gの結晶を得た。
【0112】
(実施例4)
本件化合物1のB形結晶の調製例1
実施例3に従って調製した本件化合物1のA形結晶(1.0g)にアセトン(17ml)を加え、60℃の水浴中で加熱溶解させた。次いで溶液を室温下で終夜撹拌した。生じた沈殿物をろ過し、フィルター上の固体を得た。次いで50℃で減圧乾燥することにより、0.55gの結晶を得た。
【0113】
(実施例5)
本件化合物1のB形結晶の調製例2
実施例3に従って調製した本件化合物1のA形結晶(1.0g)にジクロロメタン(31ml)を加え、40℃の水浴中で加熱溶解させた。次いで溶液を室温下で終夜撹拌した。生じた沈殿物をろ過し、フィルター上の固体を得た。次いで50℃で減圧乾燥することにより、0.81gの結晶を得た。
【0114】
当該結晶は、後述する試験例4の示差走査熱量分析により図7と実質的に同様なスペクトルを示し、本件化合物1のB形結晶であることが確認された。
【0115】
(実施例6)
本件化合物1のB形結晶の調製例3
実施例3に従って調製した本件化合物1のA形結晶(10.0g)にメタノール(45ml)を加え、撹拌した後、2規定水酸化ナトリウム水溶液(17.0ml)を加え60℃で1時間撹拌した。その混合液を35℃に冷却し、2規定塩酸水溶液(7.0ml)を30分かけて加え、混合液のpHが7〜9となったことを確認した後、すみやかに実施例4に従って調製した本件化合物1のB形結晶の種結晶(0.1g)を加え、10分撹拌した。次いでこの混合液に2規定塩酸水溶液(10.0ml)を1時間かけて加え、さらに35℃で2時間撹拌した。次いで、この混合液をろ過し、さらにフィルター上の固形物を水(27ml)とメタノール(13ml)の混合液で洗浄し、湿固形物を得た。この湿固形物を50℃で減圧乾燥することにより、9.7gの白色結晶を得た。
【0116】
当該結晶は、後述する試験例3の粉末X線回折測定により図6と実質的に同様なスペクトルを示し、本件化合物1のB形結晶であることが確認された。また、当該結晶は、後述する試験例4の示差走査熱量分析により図7と実質的に同様なスペクトルを示し、B形結晶であることが確認された。
【0117】
(実施例7)
本件化合物1のB形結晶の調製例4
実施例2に準ずる手法で得た本件化合物3(80.0g)にメタノール(360.0ml)を加え、撹拌した後、水(36.2ml)及び2規定水酸化ナトリウム水溶液(99.7ml)を加え60℃で3時間撹拌下にてアルカリ加水分解した。反応後、反応液中の粉塵などの不溶物を濾別し、水(180.2ml)を加えた後35℃に調整した。混合液に2規定塩酸水溶液(10.7ml)を8分かけて加え、混合液のpHが7.9となったことを確認した後、すみやかに実施例4に従って調製した本件化合物1のB形結晶の種結晶(0.08g)を加え、4分撹拌した。次いでこの混合液に2規定塩酸水溶液(89.0ml)を111分かけて加え、さらに35℃で14.3時間撹拌した。次いで、この混合液をろ過し、さらにフィルター上の固形物を水(213.4ml)とメタノール(106.7ml)の混合液で洗浄し、湿固形物を得た。この湿固形物に、水(213.4ml)とメタノール(106.7ml)を添加して再度混合液とし、18〜20℃で37分攪拌した。次いで、この混合液をろ過し、さらにフィルター上の固形物を水(21.3ml)とメタノール(10.7ml)の混合液で洗浄し、湿固形物を得た。この湿固形物を50℃で減圧乾燥することにより、76.28gの白色結晶を得た。
【0118】
当該結晶は、後述する試験例4の示差走査熱量分析により図7と実質的に同様なスペクトルを示し、本件化合物1のB形結晶であることが確認された。
【0119】
(実施例8)
本件化合物1の混合結晶の調製例1
実施例3に従って調製した本件化合物1のA形結晶0.9gと実施例4に従って調製したB形結晶0.1gを乳鉢と乳棒を用いて混合し、A形結晶90%とB形結晶10%の混合物を得た。
【0120】
(実施例9)
本件化合物1の混合結晶の調製例2
実施例3に従って調製した本件化合物1のA形結晶0.1gと実施例4に従って調製したB形結晶0.9gを乳鉢と乳棒を用いて混合し、A形結晶10%とB形結晶90%の混合物を得た。
【0121】
(実施例10)
本件化合物1のA形結晶の調製例2
実施例2に準ずる方法で得た本件化合物3(3.92kg)を反応装置A(機番:BD−1、30L昇降式反応装置、旭テクノグラス株式会社製)に投入し、そこにメタノール(14.08kg)を加えて攪拌した。2規定水酸化ナトリウム水溶液(6.76kg)を加えた後、27分かけて60.6℃に加温した。約60℃で4時間9分攪拌した後、19分かけて35℃まで冷却し、反応液をメンブランフィルターでろ過して反応液1を調製した。さらに、実施例2に準じて得た本件化合物3(3.92kg)を反応装置Aに投入し、そこにメタノール(14.25kg)を加えて攪拌した。2規定水酸化ナトリウム水溶液(6.70kg)を加えた後、30分かけて60.0℃に加温した。約60℃で4時間30分攪拌した後、17分かけて34.6℃まで冷却し、反応液をメンブランフィルターでろ過して、反応装置B(機番:BD−2、100L昇降式反応装置、旭テクノグラス株式会社製)で反応液1と合わせて反応液2を調製した。この反応液2を30〜35℃に保ち、攪拌しながら2規定塩酸水溶液(13.30kg)を5時間48分かけて滴下して結晶を析出させ、晶析液を調製した。さらにこの晶析液を約35℃に保ちながら、10時間5分撹拌した後、ろ過器(機番:F−9、φ600mmヌッチェフィルター、旭エンジニアリング株式会社製)に投入し、吸引によってろ過して湿結晶を取得した。このろ過器上の湿結晶に、水(20.00kg)とメタノール(7.88kg)の混合液をかけて吸引し、湿結晶を洗浄した。さらに、吸引を継続して十分に脱水し、本件化合物1のA形結晶の湿結晶(15.571kg)を取得した。この時、晶析液から湿結晶をろ過によって取得するまでに要した時間は1時間5分、ろ過器上の湿結晶の水とメタノールの混合液での洗浄に要した時間は1時間44分、脱水に要した時間は50分であった。この湿結晶をトレーに撒いて乾燥機(機番:BM−6、棚段式真空乾燥機、VAC−300PR、エスペック株式会社製)に入れ、50℃で3日間(65時間52分かけて)減圧乾燥し、本件化合物1のA形結晶(7.402kg)を得た。
【0122】
当該結晶は、後述する試験例3の粉末X線回折測定により図3と実質的に同様なスペクトルを示し、本件化合物1のA形結晶であることが確認された。また、当該結晶は、後述する試験例4の示差走査熱量分析により図4と実質的に同様なスペクトルを示し、本件化合物1のA形結晶であることが確認された。
【0123】
(実施例11)
本件化合物1のB形結晶の調製例5
実施例2に準ずる方法で得た本件化合物3(3.90kg)を反応装置A(機番:BD−1、30L昇降式反応装置、旭テクノグラス株式会社製)に投入し、そこにメタノール(13.75kg)を加えて攪拌した。2規定水酸化ナトリウム水溶液(5.20kg)と水(1.75kg)を加えた後、42分かけて60℃に加温した。約60℃で2時間29分攪拌した後、13分かけて35.0℃まで冷却し、反応液をメンブランフィルターでろ過し反応液1を調製した。さらに、実施例2に準じて得た本件化合物3(3.90kg)を反応装置Aに投入し、そこにメタノール(13.97kg)を加えて攪拌した。2規定水酸化ナトリウム水溶液(5.20kg)と水(1.75kg)を加えた後、40分かけて60℃に加温した。約60℃で2時間34分攪拌した後、19分かけて35.0℃まで冷却し、反応液をメンブランフィルターでろ過して、反応装置B(機番:BD−2、100L昇降式反応装置、旭テクノグラス株式会社製)で反応液1と合わせて反応液2を調製した。反応液2に水(17.36kg)を加えた後、この溶液を30〜35℃に保ち、攪拌しながら、2規定塩酸水溶液(0.92kg)を38分かけて滴下し、pHが7.90になった時点で滴下を中断した。次いで、本件化合物1のB形結晶(7.795g)を加えた後、2規定塩酸水溶液(9.08kg)を3時間50分かけて滴下し、結晶を析出させ、晶析液を調製した。さらにこの晶析液を約35℃に保持して8時間42分撹拌した後、ろ過器(機番:F−9、φ600mmヌッチェフィルター、旭エンジニアリング株式会社製)に投入し、実施例10と同様に吸引によってろ過して湿結晶を取得した。このろ過器上に取得した湿結晶に、水(20.78kg)とメタノール(8.10kg)の混合液をかけて吸引し、湿結晶を洗浄した。さらに、吸引を継続して十分に脱水し、本件化合物1のB形結晶の湿結晶を取得した。この時、晶析液から湿結晶をろ過によって取得するまでに要した時間は8分、ろ過器上の湿結晶を水とメタノールの混合液での洗浄に要した時間は10分、脱水に要した時間は37分であった。この湿結晶の純度をさらに高める為に、水(21.00kg)とメタノール(8.18kg)の混合液に投入して懸濁液とし、34分攪拌して結晶を洗浄した後、これをろ過器(機番:F−9、φ600mmヌッチェフィルター、旭エンジニアリング株式会社製)に投入した。次いで、水(2.10kg)とメタノール(0.80kg)の混合液をろ過器に投入し、吸引によってろ過して湿結晶を取得し、さらに吸引を継続して十分に脱水し、本件化合物1のB形結晶の湿結晶(12.211kg)を取得した。この時、懸濁液から湿結晶をろ過によって取得するまでに要した時間は4分、脱水に要した時間は16分であった。この湿結晶をトレーに撒いて乾燥機(機番:BM−6、棚段式真空乾燥機、VAC−300PR、エスペック株式会社製)に入れ、50℃で3日間(71時間3分かけて)減圧乾燥し、本件化合物1のB形結晶(7.412kg)を得た。
【0124】
当該結晶は、後述する試験例3の粉末X線回折測定により図6と実質的に同様なスペクトルを示し、本件化合物1のB形結晶であることが確認された。また、当該結晶は、後述する試験例4の示差走査熱量分析により図7と実質的に同様なスペクトルを示し、本件化合物1のB形結晶であることが確認された。
【0125】
(試験例1)
濾過速度の測定1
実施例3に従って調製した本件化合物1のA形結晶(5.0g)にメタノールと水の混合液(混合比1:2)(50ml)を加え、25℃で30分撹拌した後、桐山ロート(内径40mm、桐山ロート用ろ紙No.3)及びアスピレーターを用いてろ過した。その際、10mlのろ液を得るのに2分37秒、20mlのろ液を得るのに7分45秒、30mlのろ液を得るのに15分14秒を要し、最終的に25分24秒を要して40mlのろ液を得た。また、ロート上の湿固形物を50℃で減圧乾燥することにより、4.9gの結晶を得た。
【0126】
また、実施例4に従って調製した本件化合物1のB形結晶(5.0g)にメタノール:水(1:2)混合液(50ml)を加え、25℃で30分撹拌した後、桐山ロート(内径40mm、桐山ロート用ろ紙No.3)及びアスピレーターを用いてろ過した。10mlのろ液を得るのに8秒、20mlのろ液を得るのに17秒、30mlのろ液を得るのに28秒を要し、最終的に2分を要して42mlのろ液を得た。また、ロート上の湿固形物を50℃で減圧乾燥することにより、4.7gの結晶を得た。
【0127】
上述の例のように、B形結晶を得るのに要した時間は、ほぼ同量のA形結晶を得るのに要した時間と比較して10分の1以下となることもあり、本発明のB形結晶の優れたろ過性が確認できた。
【0128】
(試験例1−2)
濾過速度の測定2
実施例10における本件化合物1のA形結晶のろ過性と、実施例11における本件化合物1のB形結晶のろ過性を比較した。それぞれについて、(1)晶析液をろ過器に投入して吸引し、湿結晶と母液とを分離するまでの時間、(2)次いで、水とメタノールの混合液を湿結晶の入ったろ過器に投入し、吸引して湿結晶を洗浄する時間、(3)最後に吸引を継続し、洗浄後の湿結晶の含水率を十分低くするまでの時間、の3段階に要した時間を比較したところ、A形結晶では、(1)1時間5分、(2)1時間44分、(3)50分であったのに対し、B形結晶では、(1)8分、(2)10分、(3)37分であり、本発明のB形結晶の優れたろ過性が確認できた。
【0129】
(試験例1−3)
ろ過後の含水率の測定
実施例10と実施例11で取得したそれぞれの結晶の含水率を、湿結晶の重量と乾燥後の結晶の重量から計算すると、A形結晶は52.5%、B形結晶は39.3%であり、本発明のB形結晶は乾燥性においても優れていることが確認できた。結果を表1に示す。実施例10と実施例11ではいずれも3日間乾燥したが、実際に乾燥に必用とされる時間とエネルギーは、含水率の低いB形結晶の方が低いことは容易に推測できる。
【0130】
【表1】
【0131】
(試験例2)
溶解度試験
実施例3に従って調製した本件化合物1のA形結晶および実施例4に従って調製した本件化合物1のB形結晶10mgをそれぞれ10mL遠沈管に量り、日局崩壊試験液第1液(pH1.2)を各々3mL加え、37℃で24時間振とうした。振とう後、溶液をろ過し、ろ液1mLを正確に量り、アセトニトリル1mLを正確に加えて試料溶液とした。
【0132】
試料溶液について、以下のHPLC条件にて、濃度既知の標準溶液により試料溶液の濃度を測定し、溶解度を求めた。
【0133】
日局崩壊試験液第2液(pH6.8)についても同様に試験を行い、溶解度を求めた。
【0134】
その結果を表3に示す。
【0135】
【表2】
【0136】
【表3】
【0137】
表3に示すように、日局崩壊試験液第1液(pH1.2)および日局崩壊試験液第2液(pH6.8)に対するA形結晶の溶解度はB形結晶の3倍であり、本発明のA形結晶の高い溶解性が確認できた。
【0138】
(試験例3)
粉末X線回折
本願明細書の各実施例で得た結晶につき、粉末X線回折を行った。
【0139】
【表4】
【0140】
その測定の結果は以下の通りであった。
【0141】
実施例1に準じて得た本件化合物2の結晶を測定したところ、図1に示すスペクトルを得た。本件化合物2の結晶の粉末X線回折スペクトルにおいては、2θが7.6°、15.3°、18.0°、21.3°及び26.9°である特徴的なピークが認められた。また、16.3°、20.4°、23.0°又は30.5°のいずれか又は全部にもピークを認め、これらのうちのいずれかは少なくとも特徴的なピークと捉えることもできる。さらに、11.5°、19.1°、25.1°又は25.8°のいずれか又は全部にもピークを認め、これらのうちのいずれかは少なくとも特徴的なピークと捉えることもできる。この結晶は、肉眼による形状観察からも結晶と判断されたが、上記の分析データによっても確かに結晶であることが確認された。
【0142】
また実施例2に準じて得た本件化合物3の結晶を測定したところ、図2に示すスペクトルを得た。本件化合物3の結晶の粉末X線回折スペクトルにおいては、2θが8.6°、12.7°、17.2°、17.6°、18.9°及び21.0°に特徴的なピークを認めた。また、14.7°、18.4°、19.4°又は22.1°のいずれか、又は全部にもピークを認め、これらのうちのいずれかは少なくとも特徴的なピークと捉えることもできる。さらに、11.9°、14.2°、23.0°、24.7°、26.1°、26.8°又は32.6°のいずれか、又は全部にもピークを認め、これらのうちのいずれかは少なくとも特徴的なピークと捉えることもできる。この結晶は、肉眼による形状観察からも結晶と判断されたが、分析データによっても確かに結晶であることが確認された。
【0143】
また実施例3に準じて得た本件化合物1のA形結晶を測定したところ、図3に示すスペクトルを得た。本件化合物1のA形結晶の粉末X線回折スペクトルにおいては、2θが6.9°、14.4°、16.4°、18.2°、25.0°及び27.5°に特徴的なピークを認められた。また、20.0°、20.7°、22.9°又は25.4°のいずれか、又は全部にもピークを認め、これらのうちのいずれかは少なくとも特徴的なピークと捉えることもできる。さらに、10.2°、12.7°、15.0°又は23.8°のいずれか、又は全部にもピークを認め、これらのうちのいずれかは少なくとも特徴的なピークと捉えることもできる。
【0144】
また実施例6に準じて得た本件化合物1のB形結晶を測定したところ、図6に示すスペクトルを得た。本件化合物1のB形結晶の粉末X線回折スペクトルにおいては、2θが14.4°、15.9°、17.3°、22.2°及び22.9°に特徴的なピークを認めた。また、8.6°、9.8°、21.2°、23.6°又は28.4°のいずれか、又は全部にもピークを認め、これらのうちのいずれかは少なくとも特徴的なピークと捉えることもできる。さらに、12.6°、18.0°、18.3°、18.8°、19.2°、19.8°、20.4°、25.3°、26.6°又は31.8°のいずれか、又は全部にもピークを認め、これらのうちのいずれかは少なくとも特徴的なピークと捉えることもできる。
【0145】
(試験例3−2)
結晶純度の測定方法
本件化合物1の異なる結晶形が混入する場合の混入率の算出に際して、粉末X線回折スペクトル測定の回転試料台を使用した平行ビーム法光学系を用い、以下の条件で測定することが例示される。B形結晶にA形結晶が混入した場合を例にとって具体的に説明すると、結晶として純粋なA形結晶を標準品として用い、A形結晶に特徴的なピークから適当なピーク(適当なピークとしては、例えば6.9±0.2°のピークが挙げられる。)を選択して、そのピークにつき、標準品のピーク強度及び測定すべき試料のピーク強度を比較、すなわち測定すべき試料のピーク強度を標準品のピーク強度で除すことで、試料中のA形結晶の混入率を算出することができる。
【0146】
【表5】
【0147】
(試験例4)
示差走査熱量分析
本願明細書の実施例3及び4で得た結晶1〜3mgを開放アルミニウムパンに入れ、パーキンエルマー製のPYRIS Diamond DSC示差走査熱量測定装置を用い、乾燥窒素雰囲気下で50℃から220℃まで昇温速度10℃/分で測定した。または、ブルカー・エイエックスエス製のDSC3200 DSC示差走査熱量測定装置を用い、50℃から220℃まで昇温速度10℃/分で測定した。
【0148】
その結果は以下の通りである。
【0149】
実施例3に準じて得た本件化合物1のA形結晶を測定した結果、図4に示されるチャートを得た。本件化合物1のA形結晶の示差走査熱量分析においては、約182℃に吸熱ピークを認めた。なお、水和物または溶媒和物を示唆するピークは特に認められなかった。
【0150】
また実施例4に準じて得た本件化合物1のB形結晶を測定した結果、図7に示されるチャートを得た。本件化合物1のB形結晶の示差走査熱量分析においては、約203℃に吸熱ピークを認めた。なお、水和物または溶媒和物を示唆するピークは特に認められなかった。
【0151】
さらに、実施例10で調製された結晶のチャートも図4と実質的に同様であり、同じA形結晶であることがわかった。また、実施例5〜7、及び11で調製された各結晶のチャートも図7と実質的に同様であり、同じB形結晶であることが示唆された。
【0152】
本発明においては、本件化合物が水和物または溶媒和物となっていても特に問題とは言えないが、好ましくは無水和物、または無溶媒和物であることがより好ましい。
【0153】
(試験例5)
赤外吸収スペクトル分析
本願明細書の実施例3及び6に準じて得た結晶につき、臭化カリウム錠剤法で測定した。
【0154】
その結果は以下の通りである。
【0155】
実施例3に準じて得た本件化合物1のA形結晶を測定した結果、図5に示されるスペクトルを得た。その結果、本件化合物1のA形結晶の赤外吸収スペクトルにおいては、波数3361、2938、1712、1204、1011及び746cm−1に顕著な赤外線吸収バンドを認めた。また、3443、3349、1620、1515、1480又は1278cm−1のいずれか、又は全部にも赤外線吸収バンドを認め、これらのうちのいずれかは少なくとも特徴的なピークと捉えることもできる。さらに、3473、1585、1432、1343、1159、781又は615cm−1のいずれか、又は全部にも赤外線吸収バンドを認め、これらのうちのいずれかは少なくとも特徴的なピークと捉えることもできる。
【0156】
また実施例6に準じて得た本件化合物1のB形結晶を測定した結果、図8に示されるスペクトルを得た。そのB形結晶の赤外吸収スペクトルにおいては、波数2939、1720、1224、1016及び751cm−1に顕著な赤外線吸収バンドを認めた。また、3407、3358、1513、1476又は852cm−1のいずれか、又は全部にも赤外線吸収バンドを認め、これらのうちのいずれかは少なくとも特徴的なピークと捉えることもできる。さらに、3447、3325、1615、1339、1157、945、783及び617cm−1のいずれか、又は全部にも赤外線吸収バンドを認め、これらのうちのいずれかは少なくとも特徴的なピークと捉えることもできる。
【0157】
(試験例6)
結晶の定量測定
本件化合物1のA形結晶標準品0.4、0.8、1.2、1.6、2.0、2.4、2.8、3.2mgを開放アルミニウムパンに入れ、パーキンエルマー製のPYRIS Diamond DSC示差走査熱量測定装置を用い、乾燥窒素雰囲気下で50℃から220℃まで昇温速度50℃/分で測定し、約185℃付近の吸熱ピークの面積(mJ)を求め、A形結晶の定量用検量線を作成した。
【0158】
また、本件化合物1のB形結晶標準品0.4、0.8、1.2、1.6、2.0、2.4、2.8、3.2mgを開放アルミニウムパンに入れ、パーキンエルマー製のPYRIS Diamond DSC示差走査熱量測定装置を用い、乾燥窒素雰囲気下で50℃から220℃まで昇温速度50℃/分で測定し、約205℃付近の吸熱ピークの面積(mJ)を求め、B形結晶の定量用検量線を作成した。
【0159】
A形結晶の検量線を図9に示す。
【0160】
またB形結晶の検量線を図10に示す。
【0161】
A形結晶もB形結晶も共に定量が可能であることが確認できた。
【0162】
なお、A形結晶標準品としては、本願実施例3の方法に従い取得された、特に形状が好ましく、示差走査熱量分析により特徴的な単一の吸熱ピークを示す結晶を用いて行った。また、B形結晶標準品としては、本願実施例4の方法に従い取得された、特に形状が好ましく、示差走査熱量分析により特徴的な単一の吸熱ピークを示す結晶を用いて行った。
(試験例7)
本件化合物の定量
以下のHPLC条件にて、本件化合物の検出と定量を行った。
【0163】
【表6】
【0164】
【表7】
【0165】
その結果、保持時間として、本件化合物1が約15分、本件化合物2が約30分、本件化合物3が約25分に、それぞれピークを認めた。
【0166】
本件化合物のそれぞれの標準品を既知量用いて検量線を得た。検量線には直線性があった。
【0167】
本件のHPLCにより本件化合物についての定量測定が可能であることが確認された。
(試験例8)
IL−1β刺激MG−63細胞からのPGE2産生抑制作用
本件化合物について国際公開WO第03/70686号公報の方法に従って炎症性の刺激物質であるインターロイキン(IL)−1βによるPGE2産生に対する抑制作用を調べた。
【0168】
その結果、実施例1〜9に記載の方法で得られるいずれの化合物もIL−1βによるPGE2の産生を0.1μMで50%以上抑制した。またこの濃度ではいずれの被験化合物も細胞障害作用は示さなかった。従って、本件化合物は、炎症性のプロスタグランジン産生に対する抑制薬として有用である。
【0169】
(試験例9)
ラットアジュバント関節炎に対する予防および治療効果
本件化合物について国際公開WO第03/70686号公報の方法に従って自己免疫性疾患の一つでありまた慢性炎症疾患である慢性関節リウマチの病態モデルであるラットアジュバント関節炎における足浮腫に対する抑制効果を調べた。なお被検化合物は0.5%メチルセルロースを含む精製水に懸濁し、試験動物に0.1〜50mg/0.2ml/kgになるように経口投与した。
【0170】
その結果、実施例3および実施例6で得られたいずれの化合物もアジュバント関節炎における足浮腫に対し陽性対照群に比べて抑制した。
【0171】
また本試験中、試験動物に死亡例は認められなかった。従って、本件化合物は、慢性関節リウマチの、また自己免疫性疾患の予防および/または治療薬として有用である。
【0172】
(試験例10)
走査型電子顕微鏡(SEM)観察
本願明細書の実施例3および4で得た結晶につき、SEM観察を行った。
【0173】
実施例3の本件化合物1のA形結晶を測定した結果、図11に示されるSEM写真を得た。
【0174】
実施例4の本件化合物1のB形結晶を測定した結果、図12に示されるSEM写真を得た。
【0175】
しかしながら、これらは参考のみの目的で示され、本発明のいずれの結晶の特性も当該電子顕微鏡像により規定されることはなく、またこれに限定される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】本件化合物2結晶の粉末X線回折スペクトル。図中、縦軸は強度(CPS)を示し、横軸は2θ(°)を示す。
【図2】本件化合物3結晶の粉末X線回折スペクトル。図中、縦軸は強度(CPS)を示し、横軸は2θ(°)を示す。
【図3】本件化合物1のA形結晶の粉末X線回折スペクトル。図中、縦軸は強度(CPS)を示し、横軸は2θ(°)を示す。
【図4】本件化合物1のA形結晶の示差走査熱量分析。図中、縦軸はmWを示し、横軸は温度(℃)を示す。
【図5】本件化合物1のA形結晶の赤外吸収スペクトル。図中、縦軸は透過率(%)を示し、横軸はcm−1を示す。
【図6】本件化合物1のB形結晶の粉末X線回折スペクトル。図中、縦軸は強度(CPS)を示し、横軸は2θ(°)を示す。
【図7】本件化合物1のB形結晶の示差走査熱量分析。図中、縦軸はmWを示し、横軸は温度(℃)を示す。
【図8】本件化合物1のB形結晶の赤外吸収スペクトル。図中、縦軸は透過率(%)を示し、横軸はcm−1を示す。
【図9】本件化合物1のA形結晶の示差走査熱量分析における検量線を示す。図中、縦軸は面積(mJ)を示し、横軸は重量(mg)を示す。
【図10】本件化合物1のB形結晶の示差走査熱量分析における検量線を示す。図中、縦軸は面積(mJ)を示し、横軸は重量(mg)を示す。
【図11】本件化合物1のA形結晶の結晶形状を示す図面代用写真であって、走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図12】本件化合物1のB形結晶の結晶形状を示す図面代用写真であって、走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CuKα線を用いて測定された粉末X線回折スペクトルにおいて、2θが8.6°±0.2°、12.7°±0.2°、17.2°±0.2°、17.6°±0.2°、18.9°±0.2°及び21.0°±0.2°に特徴的なピークを有する3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸メチルの結晶。
【請求項2】
さらに、2θが14.7°±0.2°、18.4°±0.2°、19.4°±0.2°及び22.1°±0.2°に特徴的なピークを有する請求項1に記載の結晶。
【請求項3】
さらに、2θが11.9°±0.2°、14.2°±0.2°、23.0°±0.2°、24.7°±0.2°、26.1°±0.2°、26.8°±0.2°及び32.6°±0.2°に特徴的なピークを有する請求項1又は2に記載の結晶。
【請求項4】
下記図のCuKα線を用いて測定された粉末X線回折スペクトルパターンを示す請求項1〜3のいずれかに記載の結晶。
【表1】
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸メチルの結晶を有効成分として含有し、薬学的に許容された担体とを含有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項6】
薬学的に許容された担体が乾燥物であり、医薬組成物が乾燥製剤であることを特徴とする請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトンから成る群より選択されるいずれか一つ又は二つ以上の溶媒により溶解せしめた3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸メチルの溶液に、ヘプタン、イソプロパノール、メタノール、水から成る群より選択されたいずれか一つ又は二つ以上の溶媒を添加し、結晶を生成せしめることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸メチルの結晶の製造方法。
【請求項8】
CuKα線を用いて測定された粉末X線回折スペクトルにおいて、2θが7.6°±0.2°、15.3°±0.2°、18.0°±0.2°、21.3°±0.2°及び26.9°に特徴的なピークを有する3−[4−(インダン−2−イルオキシ)−3−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−5−ニトロフェニル]プロピオン酸メチルの結晶。
【請求項9】
さらに、2θが16.3°±0.2°、20.4°±0.2°、23.0°±0.2°及び230.5°±0.2°に特徴的なピークを有する請求項8に記載の結晶。
【請求項10】
さらに、2θが11.5°±0.2°、19.1°±0.2°、25.1°±0.2°及び25.8°±0.2°に特徴的なピークを有する請求項8又は9に記載の結晶。
【請求項11】
下記図のCuKα線を用いて測定された粉末X線回折スペクトルパターンを示す請求項8〜10のいずれかに記載の結晶。
【表2】
【請求項12】
請求項8〜11のいずれかに記載の3−[4−(インダン−2−イルオキシ)−3−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−5−ニトロフェニル]プロピオン酸メチルの結晶を有効成分として含有し、薬学的に許容された担体とを含有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項13】
薬学的に許容された担体が乾燥物であり、医薬組成物が乾燥製剤であることを特徴とする請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトン、ジメトキシエタン、メタノールから成る群より選択されるいずれか一つ又は二つ以上の溶媒により溶解せしめた3−[4−(インダン−2−イルオキシ)−3−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−5−ニトロフェニル]プロピオン酸メチルの溶液に、ヘプタン、ジイソプロピルエーテル、イソプロパノール、t−ブチルメチルエーテル、水から成る群より選択されたいずれか一つ又は二つ以上の溶媒を添加し、結晶を生成せしめることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の3−[4−(インダン−2−イルオキシ)−3−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−5−ニトロフェニル]プロピオン酸メチルの結晶の製造方法。
【請求項1】
CuKα線を用いて測定された粉末X線回折スペクトルにおいて、2θが8.6°±0.2°、12.7°±0.2°、17.2°±0.2°、17.6°±0.2°、18.9°±0.2°及び21.0°±0.2°に特徴的なピークを有する3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸メチルの結晶。
【請求項2】
さらに、2θが14.7°±0.2°、18.4°±0.2°、19.4°±0.2°及び22.1°±0.2°に特徴的なピークを有する請求項1に記載の結晶。
【請求項3】
さらに、2θが11.9°±0.2°、14.2°±0.2°、23.0°±0.2°、24.7°±0.2°、26.1°±0.2°、26.8°±0.2°及び32.6°±0.2°に特徴的なピークを有する請求項1又は2に記載の結晶。
【請求項4】
下記図のCuKα線を用いて測定された粉末X線回折スペクトルパターンを示す請求項1〜3のいずれかに記載の結晶。
【表1】
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸メチルの結晶を有効成分として含有し、薬学的に許容された担体とを含有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項6】
薬学的に許容された担体が乾燥物であり、医薬組成物が乾燥製剤であることを特徴とする請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトンから成る群より選択されるいずれか一つ又は二つ以上の溶媒により溶解せしめた3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸メチルの溶液に、ヘプタン、イソプロパノール、メタノール、水から成る群より選択されたいずれか一つ又は二つ以上の溶媒を添加し、結晶を生成せしめることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の3−[3−アミノ−4−(インダン−2−イルオキシ)−5−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)フェニル]プロピオン酸メチルの結晶の製造方法。
【請求項8】
CuKα線を用いて測定された粉末X線回折スペクトルにおいて、2θが7.6°±0.2°、15.3°±0.2°、18.0°±0.2°、21.3°±0.2°及び26.9°に特徴的なピークを有する3−[4−(インダン−2−イルオキシ)−3−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−5−ニトロフェニル]プロピオン酸メチルの結晶。
【請求項9】
さらに、2θが16.3°±0.2°、20.4°±0.2°、23.0°±0.2°及び230.5°±0.2°に特徴的なピークを有する請求項8に記載の結晶。
【請求項10】
さらに、2θが11.5°±0.2°、19.1°±0.2°、25.1°±0.2°及び25.8°±0.2°に特徴的なピークを有する請求項8又は9に記載の結晶。
【請求項11】
下記図のCuKα線を用いて測定された粉末X線回折スペクトルパターンを示す請求項8〜10のいずれかに記載の結晶。
【表2】
【請求項12】
請求項8〜11のいずれかに記載の3−[4−(インダン−2−イルオキシ)−3−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−5−ニトロフェニル]プロピオン酸メチルの結晶を有効成分として含有し、薬学的に許容された担体とを含有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項13】
薬学的に許容された担体が乾燥物であり、医薬組成物が乾燥製剤であることを特徴とする請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトン、ジメトキシエタン、メタノールから成る群より選択されるいずれか一つ又は二つ以上の溶媒により溶解せしめた3−[4−(インダン−2−イルオキシ)−3−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−5−ニトロフェニル]プロピオン酸メチルの溶液に、ヘプタン、ジイソプロピルエーテル、イソプロパノール、t−ブチルメチルエーテル、水から成る群より選択されたいずれか一つ又は二つ以上の溶媒を添加し、結晶を生成せしめることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の3−[4−(インダン−2−イルオキシ)−3−(1−メチル−1H−インダゾール−5−イル)−5−ニトロフェニル]プロピオン酸メチルの結晶の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−28638(P2013−28638A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−222039(P2012−222039)
【出願日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【分割の表示】特願2008−525842(P2008−525842)の分割
【原出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(303046299)旭化成ファーマ株式会社 (105)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【分割の表示】特願2008−525842(P2008−525842)の分割
【原出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(303046299)旭化成ファーマ株式会社 (105)
【Fターム(参考)】
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