説明

置換フラーレン組成物及び酸化防止剤としてのその使用

【課題】置換フラーレン、それらを含む組成物、及び酸化防止剤としてのそれらの利用方法の提供。
【解決手段】置換フラーレンはフラーレンコア(Cn)(nは60以上の偶数)と以下の(i)及び(ii)とを含む:(i)フラーレンコアに結合したt個の−X基、ここで:(i−a)tは1から12の整数で;(i−b)各−Xは独立に、


(ここで、各R10は独立に、>O、>C(R)(R)、>CHN(R)(R)(R)であり、R、Rは独立に、−H又は−(CH−CHであり、Rは独立にR、Rと同じか、−(CH−SO、−(CH−PO、又は−(CH−COOである)から選択される;(ii)フラーレンコアに結合したu個のO基、ここでuは0から12の整数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、同時係属の先行米国特許出願第10/960449号(2004年10月7日に出願された)の一部継続出願であり、この先行出願は、同時係属の先行米国特許仮出願第510455、510598号、及び510283号(全て2003年10月10日に出願された)、並びに606779号(2004年9月2日に出願された)による優先権を主張した。
【0002】
本発明は一般に置換フラーレンの分野に関する。より詳細には、本発明は、置換フラーレンと、酸化ストレス疾患を改善する、或いは、他の抗酸化活性を有する組成物におけるそれらの利用とに関する。
【背景技術】
【0003】
活性酸素種(Reactive oxygen species、ROS)は、一般には「フリーラジカル」と呼ばれ、様々な疾患に関連付けられている。ROSは、少なくとも特定の細胞、細胞型、組織、若しくは組織型において、他の徴候の中でも特に、細胞死(アポトーシス)、細胞機能の損傷、及び、細胞外マトリックス成分(例えば、エラスチン若しくはコラーゲン)の割合の変更又は変化を促進すると考えられている。
【0004】
バックミンスターフラーレンは、フラーレン或いはより口語調では「バッキーボール」としても知られており、本質的にはsp−混成炭素からなるかご状分子である。フラーレンは、最初、Kroto et al.、Nature(1985)318:162により報告された。フラーレンは、ダイヤモンド及びグラファイトに次いで、単体炭素の第3の形態である。通常、フラーレンは、6角形、5角形、或いは両方で配向構成されている。ほとんどの既知のフラーレンは、12個の5角形と、分子の大きさに応じて個数が変わる6角形を持つ。普通のフラーレンにはC60及びC70が含まれるが、約400個までの炭素原子を含むフラーレンもまた知られている。
【0005】
60は30個の炭素−炭素2重結合を持ち、酸素ラジカルと容易に反応すると報告されている(Krusic et al.、Science(1991)254:1183−1185)。他のフラーレンは、ほぼ同数の炭素−炭素2重結合を持ち、酸素ラジカルとの反応性がほぼ同じようにあると期待されるであろう。しかし、そのままのフラーレンは、通常、トルエン又はベンゼンのような極性のない有機溶剤にだけ可溶である。フラーレンを水溶性にし、他の性質を付与してフラーレンに基づく分子とするために、多数のフラーレン置換体が開発されている。
【0006】
様々な置換基によりフラーレンを置換する方法が当技術分野において知られている。方法には、特に、以下が含まれる:1,3−双極子付加(Sijbesma et al.、J.Am.Chem.Soc.(1993)115:6510−6512;Suzuki、J.Am.Chem.Soc.(1992)114:7301−7302;Suzuki et al.、Science(1991)254:1186−1188;Prato et al.、J.Org.Chem.(1993)58:5578−5580;Vasella et al.、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.(1992)31:1388−1390;Prato et al.、J.Am.Chem.Soc.(1993)115:1148−1150;Maggini et al.、Tetrahedron Lett.(1994)35:2985−2988;Maggini et al.、J.Am.Chem.Soc.(1993)115:9798−9799;及び、Meier et al.、J.Am.Chem.Soc.(1994)116:7044−7048)、ディールス−アルダー反応(Iyoda et al.、J.Chem.Soc.Chem.Commun.(1994)1929−1930;Belik et al.、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.(1993)32:78−80;Bidell et al.、J.Chem.Soc.Chem.Commun.(1994)1641−1642;及び、Meidine et al.、J.Chem.Soc.Chem.Commun.(1993)1342−1344)、他の付加環化方法(Saunders et al.、Tetrahedron Lett.(1994)35:3869−3872;Tadeshita et al.、J.Chem.Soc.Perkin.Trans.(1994)1433−1437;Beer et al.、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.(1994)33:1087−1088;Kusukawa et al.、Organometallics(1994)13:4186−4188;Averdung et al.、Chem.Ber.(1994)127:787−789;Akasaka et al.、J.Am.Chem.Soc.(1994)116:2627−2628;Wu et al.、Tetrahedron Lett.(1994)35:919−922;及び、Wilson、J.Org.Chem.(1993)58:6548−6549)、付加/脱離によるシクロプロパン化(Hirsch et al.、Agnew.Chem.Int.Ed.Engl.(1994)33:437−438、及び、Bestmann et al.、C.Tetra.Lett.(1994)35:9017−9020)、並びに、カルボアニオン/アルキルリチウム/グリニャール試薬の付加(Nagashima et al.、J.Org.Chem.(1994)59:1246−1248;Fagan et al.、J.Am.Chem.Soc.(1994)114:9697−9699;Hirsch et al.、Agnew.Chem.Int.Ed Engl.(1992)31:766−768;、及び、Komatsu et al.、J.Org.Chem.(1994)59:6101−6102)。置換フラーレンの合成はMurphy他の米国特許第6162926号により再検討されている。
【0007】
Bingelの米国特許第5739376号と関連公開出願が、下でC3及びD3と呼ばれるトリス−マロネートフラーレン化合物を最初に報告したと思われる。ワシントン大学(セントルイス)のDugan等は、C3及びD3が酸化ストレス傷害により引き起こされる筋萎縮性側索硬化症(ALS、通称、ルーゲーリック病)及び関連する神経変性疾患に対する神経細胞保護薬として有用であることを報告した(Choi他の米国特許第6265443号;Dugan et al.、Parkinsonism Rel.Disorders 7:243−246(2001);Dugan et al.、Proc.Nat.Acad.Sci.USA、93:9434−9439(1997);及び、Lotharius et al.、J.Neurosci.19:1284−1293(1999))。C3及び(より低い度合いで)D3はまた、in vitro又はin vivoで、他の酸化ストレス傷害に対して保護する(Fumelli et al.、J.Invest.Dermatol.115:835−841(2000);Straface et al.、FEBS Lett.454:335−340(1999);Monti et al.、Biochem.Biophys.Res.Commun.277:711−717(2000);Lin et al.、Neurosci.Res.43:317−321(2002);Huang et al.、Eur.J.Biochem.254:38−43(1998);及び、LeonhardtのPCT公開出願 WO 00/44357)、グラム陽性バクテリアを抑制する(Tsao et al.、J.Antimicrob.Chemother.49:641−649(2002))という利点をもたらすことも示された。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
C3及びD3は、酸化ストレス疾患に関与する活性酸素種の少なくともいくらかを消去(scavenging)できるが、酸化ストレス疾患を改善するフラーレン誘導体、特に、C3及びD3より優れたフラーレン誘導体が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の概要)
一実施形態において、本発明は、フラーレンコア(Cn(nは60以上の偶数である))、及び、i〜iv:
(i)フラーレンコアに結合した、m個の(>CX)基、ここで:
(i−a)mは1から6の整数(両端の数を含む)である;
(i−b)X及びXの各々は、−H;−COOH;−CONH;−CONHR’;−CONR’;−COOR’;−CHO;−(CHOH;ペプチジル部分;−R;−RCOOH;−RCONH;−RCONHR’;−RCONR’;−RCOOR’;−RCHO;−R(CHOH;複素環式部分;−OH、−NH、トリアゾール、テトラゾール、若しくは糖基の1個又は複数を末端に含む分岐した部分;或いはこれらの塩から独立に選択され、各Rは、1から約6個の炭素原子を持つ炭化水素部分であり、各R’は、独立に、1から約6個の炭素原子を持つ炭化水素部分、6から約18個の炭素原子を持つアリール含有部分、1から約6個の炭素原子と末端カルボン酸若しくはアルコールを持つ炭化水素部分、又は、6から約18個の炭素原子と末端カルボン酸若しくはアルコールを持つアリール含有部分であり、dは、0から約20の整数である;
(i−c)mが3である場合、X又はXの少なくとも1つは−COOHではない;
(ii)フラーレンコアに結合した、p個の−X基、ここで:
(ii−a)pは、1から18の整数(両端の数を含む)である;
(ii−b)各−Xは以下から独立に選択される:−N(R)(R)(R)(式中、R、R、及びRは、独立に、−H若しくは(CH−CHであって、dは0から約20の整数である);−N(R)(R)(R)(式中、R及びRは、独立に、−H若しくは(CH−CHであって、dは0から約20の整数であり、各Rは、独立に、−(CH−SO、−(CH−PO、若しくは、−(CH−COOであって、fは1から約20の整数である);−C(R)(R)(R)(式中、R、R、及びRは、独立に、−COOH、−H、−CH(=O)、−CHOH、若しくはペプチジル基である);−C(R)(R)(R)(式中、R及びRは、独立に、−H若しくは−(CH−CHであって、dは0から約20の整数であり、各Rは、独立に、−(CH−SO、−(CH−PO、若しくは、−(CH−COOであって、fは1から約20の整数である);−(CH−COOH、−(CH−CONH、−(CH−COOR’(式中、eは1から約6の整数であり、各R’は、独立に、1から約6個の炭素原子を持つ炭化水素部分、6から約18個の炭素原子を持つアリール含有部分、1から約6個の炭素原子と末端カルボン酸若しくはアルコールを持つ炭化水素部分、又は、6から約18個の炭素原子と末端カルボン酸若しくはアルコールを持つアリール含有部分である);ペプチジル部分;或いは、陽イオン性窒素を含む芳香族複素環式部分;
(iii)フラーレンコアに結合した、q個の−X−基、ここで:
(iii−a)qは、1から6の整数(両端の数を含む)である;
(iii−b)各−X−基は、独立に、以下である:
【化1】


(式中、Rは、独立に、−H若しくは−(CH−CHであって、dは0から約20の整数であり、Rは、独立に、−(CH−SO、−(CH−PO、若しくは、−(CH−COOであって、fは1から約20の整数である);
【化2】


(式中、各R及びRは、独立に、−H若しくは−(CH−CHであって、dは0から約20の整数である);或いは、
【化3】


(式中、各Rは、独立に、−H若しくは−(CH−CHであって、dは0から約20の整数であり、各Rは、独立に、−H、−OH、−OR’、NH、−NHR’、−NHR’、若しくは、−(CHOHであり、各R’は、独立に、1から約6個の炭素原子を持つ炭化水素部分、6から約18個の炭素原子を持つアリール含有部分、1から約6個の炭素原子と末端カルボン酸若しくはアルコールを持つ炭化水素部分、又は、6から約18個の炭素原子と末端カルボン酸若しくはアルコールを持つアリール含有部分である);
(iv)フラーレンコアに結合したr個のデンドロンと、フラーレンコアに結合したs個のノンデンドロン、ここで:
(iv−a)rは、1から6の整数(両端の数を含む)である;
(iv−b)sは、0から18の整数(両端の数を含む)である;
(iv−b)各デンドロンは、水溶性を付与するプロトン性の基(protic group)を少なくとも1つ持つ;
(iv−d)各ノンデンドロンは、独立に、薬剤、アミノ酸、ペプチド、ヌクレオチド、ビタミン、若しくは有機部分の少なくとも1種を含む;
(iv−e)rが1であり、デンドロンが18個の−COOH基を含む場合、sは1から18の整数(両端の数を含む)である
の少なくとも1つを含む置換フラーレンに関する。
【0010】
別の実施形態において、本発明は、フラーレンコア(Cn)(nは60以上の偶数である)と以下の(i)及び(ii):
(i)フラーレンコアに結合したt個の−X基、ここで:
(i−a)tは1から12の整数(両端の数を含む)であり;
(i−b)各−Xは独立に、
【化4】


(ここで、各R10は独立に、>O、>C(R)(R)、>CHN(R)(R)(R)、又は>CHN(R)(R)(R)であり、R、R及びRは独立に、−H又は−(CH−CH(dは0から約20の整数である)であり、各Rは独立に、−(CH−SO、−(CH−PO、又は−(CH−COOである(fは1から約20の整数である))から選択される;
(ii)フラーレンコアに結合したu個の>O基、ここでuは0から12の整数である(両端の数を含む);
を含む置換フレーレンに関する。
【0011】
本明細書では、「或いは(又は、若しくは)」という語は、それが使われる場合、包括的な意味を持っている。
【0012】
別の実施形態において、本発明は、上で参照された置換フラーレンと担体を含む組成物に関する。
【0013】
さらに別の実施形態において、本発明は、担体と前記の置換フラーレンとを含む組成物の有効量を哺乳動物に投与することを含む、酸化ストレス疾患の改善方法に関する。
【0014】
さらに別の実施形態において、本発明は、移植組織、食品、マイクローブ(microbe)、若しくはタバコを、前記の置換フラーレンと担体とを含む組成物の有効量に接触させることを含む、移植組織に対する損傷を改善する、食品の腐敗を改善する、マイクローブを抑制する、若しくは、タバコのフリーラジカルレベルを低減させる方法に関する。
【0015】
添付図は本明細書の一部をなし、本発明の特定の態様をさらに例示するために含まれる。本発明は、本明細書に記載されている具体的実施形態の詳細な説明と組み合わせて、これらの図の1つ又は複数を参照することにより、一層よく理解されるであろう。
【0016】
(実施例の形態の説明)
一実施形態において、本発明は、フラーレンコア(Cn(nは60以上の偶数である))、及び、i〜iv:
(i)フラーレンコアに結合した、m個の(>CX)基、ここで:
(i−a)mは1から6の整数(両端の数を含む)である;
(i−b)X及びXの各々は、−H;−COOH;−CONH;−CONHR’;−CONR’;−COOR’;−CHO;−(CHOH;ペプチジル部分;−R;−RCOOH;−RCONH;−RCONHR’;−RCONR’;−RCOOR’;−RCHO;−R(CHOH;複素環式部分;−OH、−NH、トリアゾール、テトラゾール、若しくは糖基の1個又は複数を末端に含む分岐した部分;或いはこれらの塩から独立に選択され、各Rは、1から約6個の炭素原子を持つ炭化水素部分であり、各R’は、独立に、1から約6個の炭素原子を持つ炭化水素部分、6から約18個の炭素原子を持つアリール含有部分、1から約6個の炭素原子と末端カルボン酸若しくはアルコールを持つ炭化水素部分、又は、6から約18個の炭素原子と末端カルボン酸若しくはアルコールを持つアリール含有部分であり、dは、0から約20の整数である;
(i−c)mが3である場合、X又はXの少なくとも1つは−COOHではない;
(ii)フラーレンコアに結合した、p個の−X基、ここで:
(ii−a)pは、1から18の整数(両端の数を含む)である;
(ii−b)各−Xは以下から独立に選択される:−N(R)(R)(R)(式中、R、R、及びRは、独立に、−H若しくは(CH−CHであって、dは0から約20の整数である);−N(R)(R)(R)(式中、R及びRは、独立に、−H若しくは(CH−CHであって、dは0から約20の整数であり、各Rは、独立に、−(CH−SO、−(CH−PO、若しくは、−(CH−COOであって、fは1から約20の整数である);−C(R)(R)(R)(式中、R、R、及びRは、独立に、−COOH、−H、−CH(=O)、−CHOH、若しくはペプチジル基である);−C(R)(R)(R)(式中、R及びRは、独立に、−H若しくは−(CH−CHであって、dは0から約20の整数であり、各Rは、独立に、−(CH−SO、−(CH−PO、若しくは、−(CH−COOであって、fは1から約20の整数である);−(CH−COOH、−(CH−CONH、−(CH−COOR’(式中、eは1から約6の整数であり、各R’は、独立に、1から約6個の炭素原子を持つ炭化水素部分、6から約18個の炭素原子を持つアリール含有部分、1から約6個の炭素原子と末端カルボン酸若しくはアルコールを持つ炭化水素部分、又は、6から約18個の炭素原子と末端カルボン酸若しくはアルコールを持つアリール含有部分である);ペプチジル部分;或いは、陽イオン性窒素を含む芳香族複素環式部分;
(iii)フラーレンコアに結合した、q個の−X−基、ここで:
(iii−a)qは、1から6の整数(両端の数を含む)である;
(iii−b)各−X−基は、独立に、以下である:
【化5】


(式中、Rは、独立に、−H若しくは−(CH−CHであって、dは0から約20の整数であり、Rは、独立に、−(CH−SO、−(CH−PO、若しくは、−(CH−COOであって、fは1から約20の整数である);
【化6】


(式中、各R及びRは、独立に、−H若しくは−(CH−CHであって、dは0から約20の整数である);或いは、
【化7】


【化8】


(式中、各Rは、独立に、−H若しくは−(CH−CHであって、dは0から約20の整数であり、各Rは、独立に、−H、−OH、−OR’、NH、−NHR’、−NHR’、若しくは、−(CHOHであり、各R’は、独立に、1から約6個の炭素原子を持つ炭化水素部分、6から約18個の炭素原子を持つアリール含有部分、1から約6個の炭素原子と末端カルボン酸若しくはアルコールを持つ炭化水素部分、又は、6から約18個の炭素原子と末端カルボン酸若しくはアルコールを持つアリール含有部分である);
(iv)フラーレンコアに結合したr個のデンドロンと、フラーレンコアに結合したs個のノンデンドロン、ここで:
(iv−a)rは、1から6の整数(両端の数を含む)である;
(iv−b)sは、0から18の整数(両端の数を含む)である;
(iv−b)各デンドロンは、水溶性を付与するプロトン性の基を少なくとも1つ持つ;
(iv−d)各ノンデンドロンは、独立に、薬剤、アミノ酸、ペプチド、ヌクレオチド、ビタミン、若しくは有機部分の少なくとも1種を含む;
(iv−e)rが1であり、デンドロンが18個の−COOH基を含む場合、sは1から18の整数(両端の数を含む)である
の少なくとも1つを含む置換フラーレンに関する。
【0017】
別の実施形態において、置換フラーレンは、フラーレンコア(Cn)(nは60以上の偶数である)と以下の(i)及び(ii):
(i)フラーレンコアに結合したt個の−X基、ここで:
(i−a)tは1から12の整数(両端の数を含む)であり;
(i−b)各−Xは独立に、
【化9】


(ここで、各R10は独立に、>O、>C(R)(R)、>CHN(R)(R)(R)、又は>CHN(R)(R)(R)であり、R、R及びRは独立に、−H又は−(CH−CH(dは0から約20の整数である)であり、各Rは独立に、−(CH−SO、−(CH−PO、又は−(CH−COOである(fは1から約20の整数である))から選択される;
(ii)フラーレンコアに結合したu個の>O基、ここでuは0から12の整数である(両端の数を含む);
を含む。
【0018】
本明細書において記載されているすべての範囲は、そうではないと明確に記載されていない限り、それらの範囲の両端の値を含んでいる。
【0019】
バックミンスターフラーレンは、フラーレン或いは、より口語調で「バッキーボール」としても知られており、本質的にはsp−混成炭素からなるかご状分子であり、一般式(C20+2m)(mは自然数である)を持つ。フラーレンは、ダイヤモンド及びグラファイトに次いで、単体炭素の第3の形態である。通常、フラーレンは、6角形、5角形、或いは両方で配向構成されている。ほとんどの既知のフラーレンは、12個の5角形と、分子の大きさに応じて個数が変わる6角形を持つ。「C」は、n個の炭素原子を含むフラーレン基を表す。
【0020】
普通のフラーレンにはC60及びC70が含まれるが、約400個までの炭素原子を含むフラーレンもまた知られている。
【0021】
フラーレンは、グラファイトの高温気化(これに限定されないが)を含めて、知られている方法により製造され得る。フラーレンは、供給元の中でも特に、MER Corporation(Tucson、アリゾナ州)及び、Frontier Carbon Corporationから入手可能である。
【0022】
置換フラーレンは、フラーレンコアの少なくとも1個の炭素原子に結合した少なくとも1つの置換基を持つフラーレンである。例示的な置換フラーレンには、特に、カルボキシフラーレン及びヒドロキシル化フラーレンが含まれる。
【0023】
本明細書では、カルボキシフラーレンは、Cコアと、1つ又は複数の置換基(少なくとも1つの置換基はカルボン酸基若しくはエステル基を含む)を含むフラーレン誘導体である。カルボキシフラーレンは一般に水溶性であるが、特定のカルボキシフラーレンが水溶性であるかどうかは、技術者の日常の経験によって判断される。
【0024】
別の実施形態において、フラーレンはヒドロキシル化フラーレンであり得る。本明細書では、「ヒドロキシル化フラーレン」は、Cコアと、1つ又は複数の置換基(少なくとも1つの置換基はヒドロキシル基を含む)を含むフラーレン誘導体である。
【0025】
すべての実施形態において、置換フラーレンは、60以上の偶数である炭素原子数nを持ち得るフラーレンコア(C)を含む。一実施形態において、Cは60個の炭素原子を持つ(本明細書ではC60と表される)。一実施形態において、Cは70個の炭素原子を持つ(本明細書ではC70と表される)。
【0026】
この説明全体を通して、本明細書において記載される特定の実施形態は、特定の酸、アミド、エステル、若しくは塩の形により説明されるかもしれないが、当業者は、pH及び他の製造、保管、及び使用の条件に応じて、ある実施形態は、これら、及び他の形の間で変わり得ることを理解するであろう。このような形のすべては、請求範囲内にある。形の変化(例えば酸と塩との間)は、型どおり変化であり、一方、構造の変化(例えば、酸基の−Hへの脱炭酸反応)は、ありきたりの変化ではない。
【0027】
一実施形態において、置換フラーレンは、フラーレンコア(C)と、フラーレンコアに結合したm個の(>CX)基を含む。「>C」の記法は、その基が、この炭素原子「C」とCとの間の2つの単結合によってフラーレンコアに結合していることを示している。mの値は1から6の整数(両端の数を含む)であることができる。
【0028】
は、−H;−COOH;−CONH;−CONHR’;−CONR’;−COOR’;−CHO;−(CHOH;ペプチジル基;複素環式基;−OH、−NH、トリアゾール、テトラゾール、若しくは糖基の1個又は複数を末端に含む分岐した基;或いはこれらの塩から選択され、各R’は、独立に、(i)1から約6個の炭素原子を持つ炭化水素基、(ii)6から約18個の炭素原子を持つアリール含有基、(iii)1から約6個の炭素原子と末端カルボン酸若しくはアルコールを持つ炭化水素基、又は、(iv)6から約18個の炭素原子と末端カルボン酸若しくはアルコールを持つアリール含有基であり、dは0から約20の整数である。一実施形態において、Xは、−R;−RCOOH;−RCONH;−RCONHR’;−RCONR’;−RCOOR’;−RCHO;−R(CHOH;ペプチジル基;或いはこれらの塩から選択され得る(Rは、1から約6個の炭素原子を持つ炭化水素基である)。一実施形態において、Xは、−H;−COOH;−CONH;−CONHR’;−CONR’;−COOR’;−CHO;−(CHOH;ペプチジル基;−R;−RCOOH;−RCONH;−RCONHR’;−RCONR’;−RCOOR’;−RCHO;−R(CHOH;複素環式基;−OH、−NH、トリアゾール、テトラゾール、若しくは糖基の1個又は複数を末端に含む分岐した基;或いはこれらの塩から選択され得る。
【0029】
複素環式基は1つの環を含む基であり、その環をなす原子は2種以上の元素の原子である。通常の複素環式基には、特に、炭素と窒素を含むものが含まれる。
【0030】
分岐した基は、3若しくは4個の炭素原子に結合した炭素原子を少なくとも1個含む基であり、この基は環を含まない。一実施形態において、−OH、−NH、トリアゾール、テトラゾール、若しくは糖基の1つ又は複数を末端に含む分岐した基は、−R(CHC(COH)(CHg−3、−R(CHC(CNH(CHg−3、−R(CHC(C[テトラゾール])(CHg−3、−R(CHC(C[トリアゾール])(CHg−3、−R(CHC(C[ヘキソース])(CH3)g−3、若しくは、−R(CHC(C[ペントース])(CHg−3から選択され得る(gは1から3の整数(両端の数を含む)である)。さらなる実施形態において、gは2から3の整数(両端の数を含む)である。
【0031】
ペプチジル基は、一方のアミノ酸のカルボニル炭素と他方のアミノ酸のアミン窒素との間のアミド(ペプチジル)結合により連結した2つ以上のアミノ酸残基を含む。アミノ酸は、(a)カルボニル炭素(これは「C末端」と呼ばれ得る)、(b)アミン窒素(これは「N末端」と呼ばれ得る)、(c)水素、及び(d)水素若しくは有機基、のすべてに結合した炭素原子を持つ分子である。有機基は、「側鎖」と呼ばれることがある。有機基が、さらに、アミン窒素に(天然に産するアミノ酸であるプロリンにおけるように)、或いは他の原子(例えば、特に、フラーレンの原子)に結合していてもよいが、如何なる原子にもさらに結合している必要はない。カルボキシル炭素、アミン窒素、若しくは両方は、天然に産するペプチドにおいてそれらが結合している原子以外の原子に結合していてもよく、アミノ酸は上の定義に合えばアミノ酸である。
【0032】
天然に産するアミノ酸の構造、名称、及び名称の縮約形はよく知られている。大学レベルの生化学の教科書、例えば、特に、Rawnの「生化学(Biochemistry)」(Neil Patterson Publishers、Burlington、ノースカロライナ州(1989))を参照。知られているように、天然に産するアミノ酸の大部分はキラルである(互いに鏡像である2つの形で存在し得る)。アミノ酸の3文字縮約形の前の接頭字「D−」は、そのアミノ酸残基が、「D−」のキラリティを持ち、アミノ酸の3文字縮約形の前の接頭字「L−」は、そのアミノ酸残基が、「L−」のキラリティを持つことを示している。
【0033】
アミノ酸残基は、アミノ酸のアミン窒素とカルボニル炭素のどちらか或いは両方でのアミド化により生成するペプチドの単位である。ペプチド配列が、単にアミノ酸の名称又は縮約形によって規定されている場合、このペプチド配列は、左から右に読んだ場合、ペプチドのN末端が左にあり、ペプチドのC末端が右にあるような構造になっているであろう。例えば、「Glu−Met−Ser」というペプチド配列において、このペプチド配列のN末端は、Gluにあり、C末端はSerにあるであろう。N末端は、遊離アミン若しくは、プロトンが付加したアミン基であるか、或いは、他の1個又は複数の原子との結合に関与しているかであり、C末端は、遊離のカルボン酸若しくは、カルボキシレート基であるか、或いは、他の1個又は複数の原子との結合に関与しているかであり得る。
【0034】
アミノ酸の例には、これらに限定されないが、特に、遺伝暗号によりコード化されているか、或いは、別の仕方で自然界に見出されるものが含まれる。一実施形態において、アミノ酸の有機基は、フラーレンを(任意選択で、アミノ酸の炭素とフラーレンとの間のリンカーと共に)含み得る。
【0035】
ペプチドの例には、これらに限定されないが、特に、天然に産するシグナルペプチド(特定の器官、組織、細胞、若しくは細胞内局在箇所に、利用者(user)による関与なしに誘導されるペプチド)、天然に産するタンパク質(少なくとも20個のアミノ酸残基を含むペプチド)、並びに、天然に産する酵素(化学反応を触媒し得るタンパク質)が含まれる。
【0036】
アミノ酸以外に、ペプチジル基は他の原子を含み得る。他の原子としては、これらに限定されないが、特に、炭素、窒素、酸素、硫黄、ケイ素、若しくはこれらの2つ以上が含まれ得る。一実施形態において、少なくともいくつかの他の原子が、ペプチジル基のアミノ酸残基とフラーレンコアとの間のリンカーとなる。このリンカーは、1から20個の原子(例えば1から約10個の炭素原子)を含み得る。一実施形態において、少なくともいくつかの他の原子が、1つ又は複数のアミノ酸残基ブロックと、他の1つ又は複数のアミノ酸残基ブロックとの間のリンカーとなる。一実施形態において、少なくともいくつかの他の原子が、フラーレンコアに対して遠位のアミノ酸残基ブロックのキャップ(cap)となる。一実施形態において、少なくともいくつかの他の原子が、1つ又は複数のアミノ酸残基の側鎖に結合する。前記実施形態のいずれか、或いはすべてが、特に、ペプチジル基に存在し得る。
【0037】
一実施形態において、各ペプチジル基は、−C(=O)O−(CH−C(=O)−アラニン、−C(=O)O−(CH−C(=O)−アラニン−フェニルアラニン、若しくは、−C=O)O−(CH−C(=O)−アラニン−アラニンから独立に選択され得る。
【0038】
一実施形態において、各ペプチジル基は、Z−D−Phe−L−Phe−Gly、Z−L−Phe、Z−Gly−L−Phe−L−Phe、Z−Gly−L−Phe、Z−L−Phe−L−Phe、Z−L−Phe−L−Tyr、Z−L−Phe−Gly、Z−L−Phe−L−Met、Z−L−Phe−L−Ser、Z−Gly−L−Phe−L−Phe−Gly(Zはカルボベンゾキシ基である)から独立に選択され得る。
【0039】
同様に、しかし独立に、一実施形態において、Xは、−H;−COOH;−CONH;−CONHR’;−CONR’;−COOR’;−CHO;−(CHOH;ペプチジル基;複素環式基;−OH、−NH、トリアゾール、テトラゾール、若しくは糖基の1個又は複数を末端に含む分岐した基;或いはこれらの塩から選択され得る。一実施形態において、Xは、−R、−RCOOH、−RCONH、−RCONHR’、−RCONR’、−RCOOR’、−RCHO、−R(CHOH、ペプチジル基、或いはこれらの塩から選択され得る。一実施形態において、Xは、−H;−COOH;−CONH;−CONHR’;−CONR’;−COOR’;−CHO;−(CHOH;ペプチジル基;−R;−RCOOH;−RCONH;−RCONHR’;−RCONR’;−RCOOR’;−RCHO;−R(CHOH;複素環式基;−OH、−NH、トリアゾール、テトラゾール、若しくは糖基の1個又は複数を末端に含む分岐した基;或いはこれらの塩から選択され得る。
【0040】
この実施形態において、mが3である場合、X若しくはXの少なくとも1つは、−COOHでない。
【0041】
置換フラーレンは、1つ又は複数の異性体として存在し得る。本明細書において示されているすべての構造式は、特定の異性体に構造を限定するものと解釈されるべきでない。
【0042】
本明細書において開示されている置換フラーレンの可能なすべての異性体は、本開示の範囲内にある。例えば、>CXにおいて、各置換基の1つの基(X又はX)は、フラーレンコアから離れる方向に向いており、他の基はフラーレンコアの方に向いている。さらに例を挙げると、各置換基の中心の炭素原子(フラーレンコアへの2つの結合、Xへの1つの結合、及びXへの1つの結合を持つ炭素原子を意味する)は、XとXが異なる場合、キラルである。
【0043】
2つ以上の置換基を持つ置換フラーレンは、フラーレンコアへの置換基の可能な様々な結合部位により生じる異性体を持つということもまた明らかであろう。
【0044】
一実施形態において、置換フラーレンは、(C60(>C(COOH))(C3)の脱炭酸反応生成物である。「C3の脱炭酸反応生成物」により、C3の3つのマロネート基(>C(COOH))の各々から0若しくは1個のカルボキシ基(−COOH)が除去されて、−Hに置き換えられた(但し、マロネート基の少なくとも1つは、−Hに置き換えられた1つのカルボキシ基を持つとする)反応生成物を意味する。これは、マロネート基がCOを失うことであると考えられる。脱炭酸は、様々な方法の中でも特に、酸の中でC3を加熱することにより実施され得る。
【0045】
C3の脱炭酸の間、C3から1つのCOだけが失われることが観察されている。即ち、各マロネート基は少なくとも1つのカルボキシルを持ち続ける。また、脱炭酸反応は、3つのCO基(C3の各マロネート基から1つ)が失われて止まる。本開示を利用する当業者は、1、2、4、5、若しくは6つのマロネート基を持つ置換フラーレンもまた脱炭酸反応を受けるであろうということを認めるであろう。
【0046】
C3において、各マロネート基は、外側(フラーレンから離れる方向)に向いたカルボキシル基(これを我々は、本明細書では、エキソ(exo)と呼ぶ)と、内側(フラーレンの方向)に向いたカルボキシル基(これを我々は、本明細書では、エンド(endo)と呼ぶ)を持つ。図1AはC3の構造式を表す。
【0047】
図2は、C3(枠30内)と、脱炭酸反応により1つ又は2つのCO基を次々と失うことによる生成物(C3−ペンタ酸(枠32内)及びC3−テトラ酸(枠34内)を生じる)を示している。脱炭酸反応は、白矢印(open arrow)31及び33により表されている。C3、C3−ペンタ酸、及びC3−テトラ酸の異性体は、枠30、枠32、及び枠34内にそれぞれ示されている。
【0048】
厳密な命名法のために、我々は、常に時計回りにそれらの基を挙げることによりエキソ若しくはエンドの順序を定める。
【0049】
図3は、枠34内に示されているC3−テトラ酸から、脱炭酸反応により第3のCOが次に失われることによる生成物(C3−トリス酸(枠42)が生じる)を示している。脱炭酸反応は白矢印41により表されている。C3−テトラ酸及びC3−ペンタ酸の異性体は、枠34及び枠42にそれぞれ示されている。回転位置だけによって異なる異性体は、破線43、44、及び45により結ばれている。
【0050】
図4は、C3のキラリティを、構造式(鏡像50a及び50b)と略式表示(鏡像52a及び52b)の両方で示している。図5は、C3−ペンタ酸(鏡像60a及び60b;鏡像62a及び62b)のキラリティを示している。
【0051】
別の実施形態において、置換フラーレンは、図6に示されている構造、72、74、76、77、又は78の1つを含む。
【0052】
一実施形態において、置換フラーレンは、C3配向(例えば、図4の構造式50aに示される置換基の配向)、或いは、D3配向(例えば、図4の構造式50bに示される置換基の配向)にある、C60と3個の(>CX)基を含む。このD3配向は、C3配向の鏡映変換(mirror translation)である(例えば、図4の構造式50b)。C3−ペンタ酸、C3−テトラ酸、及びC3−トリス酸についての上の説明はまた、ペンタ酸、テトラ酸、及びトリス酸のD3配向にも当てはまる。
【0053】
一実施形態において、図10に示されているように、置換フラーレンは、C60と、トランス−2配向(1206)、トランス−3配向(1207)、e配向(1208)、或いは、シス−2配向(1209)にある2個の(>CX)基を含んでいる。
【0054】
別の実施形態において、やはり図10に示されているように、置換フラーレンは、C70と、ビス配向(1210又は1211)にある2個の(>CX)基を含んでいる。
【0055】
別の実施形態において、置換フラーレンは、図7Bに示されている構造を持つ。
【0056】
一実施形態において、置換フラーレンは、フラーレンコア(Cn)と、このフラーレンコアに結合した1から18個の−X基を含む。「−X」という表記は、X基の1つの原子とフラーレンコアの1つの炭素原子との間の単結合によって、その基がフラーレンコアに結合していることを示している。下で参照される具体的なX基において、充足されていない原子価(valence)は、その基とフラーレンコアとの間の単結合を表す。
【0057】
一実施形態において、置換フラーレンは、1から6個の−X基を含み、各−X基は、独立に以下から選択される:
−N(R)(R)(R)(式中、R、R、及びRは、独立に、−H若しくは(CH−CHであって、dは0から約20の整数である);
−N+(R)(R)(R)(式中、R及びRは、独立に、−H若しくは(CH−CHであって、dは0から約20の整数であり、各Rは、独立に、−(CH−SO、−(CH−PO、若しくは、−(CH−COOであって、fは1から約20の整数である);
−C(R)(R)(R)(式中、R、R、及びRは、独立に、−COOH、−H、−CH(=O)、−CHOH、若しくはペプチジル基である);
−C(R)(R)(R)(式中、R及びRは、独立に、−H若しくは(CH−CHであって、dは0から約20の整数であり、各Rは、独立に、−(CH−SO、−(CH−PO、若しくは、−(CH−COOであって、fは1から約20の整数である);
−(CH−COOH、−(CH−CONH、−(CH−COOR’(式中、eは1から約6の整数であり、各R’は、独立に、(i)1から約6個の炭素原子を持つ炭化水素基、(ii)6から約18個の炭素原子を持つアリール含有基、(iii)1から約6個の炭素原子と末端カルボン酸若しくはアルコールを持つ炭化水素基、又は、(iv)6から約18個の炭素原子と末端カルボン酸若しくはアルコールを持つアリール含有基である);
ペプチジル基;或いは、
陽イオン性窒素を含む芳香族複素環式基。
【0058】
前記により明らかであるように、この実施形態による置換フラーレンは、前記の種類の1つ又は複数から選択される1つ又は複数の基を含み得る。
【0059】
別の実施形態において、置換フラーレンは、フラーレンコア(Cn)と、フラーレンコアに結合した1から6個の−X−基を含む。「−X−」という表記は、その基が2つの単結合によってフラーレンコアに結合していることを表し、一方は、その基の第1の原子とフラーレンコアの第1の炭素原子との間の単結合であり、他方は、その基の第2の原子とフラーレンコアの第2の炭素原子との間の単結合である。(形容詞の「第1の」及び「第2の」は、それらが本明細書において現れるときはいつも、これらの形容詞により修飾される名詞の、時間、空間又は時空における特有の順序を意味していない。)
【0060】
一実施形態において、各−X−基は、独立に、以下である:
【化10】


式中、Rは、独立に、−H若しくは(CH−CHであって、dは0から約20の整数であり、Rは、独立に、−(CH−SO、−(CH−PO、若しくは、−(CH−COOであって、fは1から約20の整数である。
【0061】
別の実施形態において、各−X−基は、独立に、以下である:
【化11】


式中、R及びRは、独立に、−H若しくは(CH−CHであって、dは0から約20の整数である。
【0062】
別の実施形態において、各−X−基は、独立に、以下から選択される:
【化12】


【化13】


式中、各Rは、独立に、−H若しくは(CH−CHであって、dは0から約20の整数であり、各Rは、独立に、−H、−OH、−OR’、NH、−NHR’、−NHR’、若しくは、−(CHOHであり、各R’は、独立に、(i)1から約6個の炭素原子を持つ炭化水素基、(ii)6から約18個の炭素原子を持つアリール含有基、(iii)1から約6個の炭素原子と末端カルボン酸若しくはアルコールを持つ炭化水素基、又は、(iv)6から約18個の炭素原子と末端カルボン酸若しくはアルコールを持つアリール含有基である。
【0063】
本発明の一実施形態において、置換フラーレンは、フラーレンコア(Cn)と、フラーレンコアに結合した1から6個のデンドロンを含む。
【0064】
本発明の意味でのデンドロンは、構造単位として末端に分岐を持つフラーレン付加物である。デンドロンは、2つ以上の反応部位を含むコアから誘導されると見なされ得る。コアの各反応部位は、第1世代のデンドロンの形を定めるために、1つの活性部位(ここでは、コアの活性部位と反応する部位)と2つ以上の活性部位とを含む分子と反応していると見なされ得る。第1世代のデンドロンは、本明細書では、「デンドロン」という用語の範囲内にある。より高次の世代のデンドロンは、第1世代のデンドロンの各活性部位が1つの活性部位と2つ以上の活性部位とを含む同じ若しくは別種の分子と反応して第2世代の形を定めることによって生成したと見なされ、続く世代は、その前の世代に同様に付加することにより生成したと見なされ得る。デンドロンは前記の方法により生成され得るが、本明細書では、他の方法により生成したデンドロンは「デンドロン」の範囲内にある。
【0065】
デンドロンのコアは、(a)フラーレンの1つ又は複数の炭素と、(b)コアの1つ又は複数の原子との間の1つ又は複数の結合によりフラーレンに結合している。一実施形態において、デンドロンのコアは、シクロプロパニル環を形成するような仕方でフラーレンに結合している。
【0066】
一実施形態において、デンドロンのコアは、フラーレンへの結合部位とコアの反応性部位との間に、1から約100個の原子の鎖(例えば、約2から約10個の炭素原子)であり得るスペーサーを含む。
【0067】
デンドロンの世代は、3価若しくは多価の元素(例えば、N、C、P、Si)、或いは、多価分子セグメント(例えば、アリール若しくはヘテロアリール)を含み得る。各世代の反応部位の数は約2又は約3であり得る。世代数は1と約10の間(両端の数を含む)であり得る。
【0068】
フラーレンに付加させるのに適するデンドロンに関してのさらなる情報を、Hirschの米国特許第6506928号に見出すことができ、その開示は、ここに参照を通じて組み込まれる。
【0069】
さらなる実施形態において、置換フラーレンは、図8A〜8Gから選択される構造を持つ。図8Dにおいて、「糖」の各々は、独立に、炭化水素基を表し、「リンカー」の各々は、独立に、有機若しくは無機の基を表す。さらなる実施形態において、それぞれの糖は、独立に、リボース若しくはデオキシリボースであり、それぞれのリンカーは、独立に、式、−(CH−(dは0から約20の整数である)を持つ。
【0070】
この実施形態の置換フラーレンは、ノンデンドロン基(フラーレンへの付加物であり、この付加物は上で定義されたデンドロンにおいて見出されるようなコア及び世代構造を持っていない)をさらに含んでいてもよい。例示的なノンデンドロンには、これらに限定されないが、−H;−COOH;−CONH;−CONHR’;−CONR’;−COOR’;−CHO;−(CHOH;ペプチジル基;複素環式基;−OH、−NH、トリアゾール、テトラゾール、若しくは糖基の1個又は複数を末端に含む分岐した基;或いはこれらの塩;が含まれる。18個の−COOH基を含む1つのデンドロンを置換フラーレンが含む場合、置換フラーレンは、1つ又は複数のノンデンドロンを含む。
【0071】
別の実施形態において、本発明の置換フラーレンは、上で定義された構造と100μM以下のIC50(下で実施例1において記載されるアッセイによる)を持つ。
【0072】
本発明の置換フラーレンは、「含む」の普通の意味に違わず、前記の実施形態の1つ、2つ、或いは3つ以上に合致する。
【0073】
前記実施形態のいずれかの置換フラーレンは、内包(endohedral)金属をさらに含み得る。「金属」は、金属元素の少なくとも1つの原子を意味し、「内包」は、金属がフラーレンコアによって閉じ込められていることを意味する。金属は元素単体であっても、或いは、他の元素を含む分子内の1個又は複数の原子であってもよい。内包金属を含む置換フラーレンを、「金属フラーレン(metallofullerene)」と呼ぶことができる。さらなる実施形態において、金属フラーレンは、次の構造により表され得る:
Mm@C
式中、それぞれのMは、独立に、金属を含む分子であり;
mは、1から約5の整数であり;
は、n(60以上の整数である)個の炭素原子を含むフラーレンコアである。
【0074】
一実施形態において、Mは遷移金属原子である。一実施形態において、Mは、約55を超える原子番号を持つ金属原子である。例示的な金属には、金属カーバイドを生成しない金属が含まれる。一実施形態において、その金属は、Ho、Gd、若しくはLuである。
【0075】
一実施形態において、Mは、有機金属分子又は無機金属分子である。一実施形態において、Mは、式、M’N(それぞれのM’は、独立に、1つの金属原子である)を持つ分子である。それぞれの金属原子M’は、特に、遷移金属、約55を超える原子番号を持つ金属、或いは、上に挙げられた例示的な金属の1つのような金属であり得る。
【0076】
一実施形態において、Mは、活性酸素種と反応し得る金属である。
【0077】
一実施形態において、金属フラーレンは、Mが、Ho、HoN、Gd、GdN、Lu、又はLuNであり、mは1であり、nは60であることに特徴がある。
【0078】
一実施形態において、置換フラーレンは重合している(これは、複数のフラーレンコアが1個の分子内に存在することを意味する)。この分子は、第1のフラーレンコアと第2のフラーレンコアとの間の炭素−炭素結合、第1フラーレン上の第1の置換基と第2フラーレン上の第2の置換基との間の共有結合、或いはこれらの両方を含み得る。
【0079】
本発明の置換フラーレンは、1種又は複数の他の成分を含む組成物の1つの成分であり得る。一実施形態において、この組成物は、式、(B)−C−(A)を持つ両親媒性フラーレンをさらに含み、式中、Cは炭素原子を含むフラーレン基であって、nは、60≦n≦240の整数であり;Bは、1から約40個の極性部分(polar headgroup moiety)を含む有機の基であり;bは、1≦b≦5の整数であり;それぞれのBは、炭素−炭素、炭素−酸素、若しくは、炭素−窒素の結合の1個又は2個を通じてCに共有結合しており;Aは、Cに近い側の1つの末端とCから遠い側の1つ又は複数の末端とを含む有機基であり、Cから遠い側の末端は、それぞれ、−Cを含み、xは、8≦x≦24の整数であり、yは、1≦y≦2x+1の整数であり;aは、1≦a≦5で、2≦b+a≦6の整数であり;それぞれのAは、炭素−炭素、炭素−酸素、若しくは、炭素−窒素の結合の1個又は2個を通じてCに共有結合している。
【0080】
Bは、1から約40個の極性部分を含む有機基から選択され得る。「極性部分」は、極性がある基であり、これにより、その基内にある各結合の結合双極子ベクトルの和がゼロでないことを意味する。極性部分は正に荷電していても、負に荷電していても、或いは中性であってもよい。極性部分は、その基の少なくとも一部が分子の周囲に露出され得るような位置にあり得る。例示的な極性部分には、これらに限定されないが、当技術分野において知られているものの中でも特に、カルボン酸、アルコール、アミド、及びアミンの基が含まれる。好ましくは、Bは、約6から約24個の極性部分を持つ。一実施形態において、Bは、大多数の極性部分がカルボン酸基(これは水性溶剤に両親媒性フラーレンが溶かされた場合に水に露出される)であるような構造を持つ。デンドリマー又は他の規則的な多分岐構造はBの構造として適切である。
【0081】
bの値は、1から5の整数であり得る。一実施形態において、2つ以上のB基が存在する場合(即ち、b>1)、このようなB基のすべては互いに隣接している。「隣接している」により、この場合には、どのB基のすべての最も近い付加位置にも、A基(下で定義される)だけがある、また/或いは、まったく置換基がないということがないことを意味する。b>1で、8面体付加様式の場合には、「隣接している」は、B基に最も近い4つの8面体頂点のすべてにA基がある、或いは、そこに何もないということはないことを意味する。
【0082】
一実施形態において、Bは18個の極性部分を含み、b=1である。
【0083】
Bの極性部分は、1つ又は複数のB基を親水性にする傾向がある。
【0084】
それぞれのBは、1つ又は複数の共有結合を通じてCに結合している。フラーレンの炭素が生成でき、フラーレン構造を壊さない共有結合が想定されている。例には、炭素−炭素、炭素−酸素、或いは、炭素−窒素の結合が含まれる。B基の1個又は複数の原子(例えば、1個又は2個の原子)がCへの結合に加わる。一実施形態において、B基の1個の炭素原子が、Cの2個の炭素原子(このCの2個の炭素原子は互いに結合している)に結合する。
【0085】
一実施形態において、Bはアミドデンドロン構造である、
>C(C(=O)OCC(=O)NHC(CC(=O)NHC(CC(=O)OH)を持つ。
【0086】
両親媒性フラーレンにおいて、Aは、Cに近い側の1つの末端と、Cから遠い側の1つ又は複数の末端とを含む有機の基である。一実施形態において、この有機基は、Cから遠い側の2つの末端を含む。「Cに近い側の末端」により、Cへの1つ又は複数の結合を生成する、A基の1個又は複数の原子(例えば、1個又は2個の原子)を含むA基の部分を意味する。「Cから遠い側の末端」により、Cへの1つ又は複数の結合を生成するいずれの原子も含まないが、Cに近い側のA基末端への1つ又は複数の結合を生成する1個又は複数の原子は含むA基の部分を意味する。
【0087】
から遠い側の各末端は、−Cを含み、式中、xは、8≦x≦24の整数であり、yは、1≦y≦2x+1の整数である。−Cは、線状、分岐状、環状、芳香族、或いはこれらの組合せであり得る。好ましくは、Aは、Cから遠い側の2つの末端を含み、各−Cは線状であり、12≦x≦18であり、y=2x+1である。より好ましくは、この2つの末端の各々において、x=12であり、y=25である。
【0088】
から遠い側の末端は、A基を疎水性又は親油性にする傾向がある。
【0089】
aの値は、1から5の整数である。好ましくは、aは5である。一実施形態において、2つ以上のA基が存在する場合(即ち、a>1)、このようなA基のすべては互いに隣接している。「隣接している」により、この場合には、どのA基のすべての最も近い付加位置にも、B基(下で定義される)だけがある、また/或いは、まったく置換基がないということがないことを意味する。a>1で、8面体付加様式の場合には、「隣接している」は、A基に最も近い4つの8面体頂点のすべてにB基がある、或いは、そこに何もないということはないことを意味する。
【0090】
それぞれのAは、1つ又は複数の共有結合を通じてCに結合している。フラーレンの炭素が生成でき、フラーレン構造を壊さない共有結合が想定されている。例には、炭素−炭素、炭素−酸素、或いは、炭素−窒素の結合が含まれる。A基の1個又は複数の原子(例えば、1個又は2個の原子)がCへの結合に加わる。一実施形態において、A基の1個の炭素原子が、Cの2個の炭素原子(このCの2個の炭素原子は互いに結合している)に結合する。
【0091】
一実施形態において、Aは、構造、>C(C(=O)O(CH11CHを持つ。
【0092】
B及びAの基の個数は、2から6まで(即ち、2≦b+a≦6)であるように選ばれる。一実施形態において、b+a=6である。親水性の(複数の)B基と疎水性の(複数の)A基との組合せにより、フラーレンが両親媒性になる。B基及びA基の個数と種類を、特定の意図する用途にとって望ましいと思われる特定の両親媒性を持つフラーレンを生成するように選択することができる。
【0093】
両親媒性フラーレンはベシクルを形成することができ、ここで、ベシクルの壁体が両親媒性フラーレンを含む。本明細書で「ベシクル」という用語が使用される場合、それは両親媒性分子の集合体であり、この両親媒性分子により、(a)通常、荷電している、若しくは、極性の基(例えば、当業者に知られているものの中でも特に、極性部分を含む基)である親水性(水を好む)部分、並びに(b)通常、非極性の基(例えば、当業者に知られているものの中でも特に、炭化水素鎖)である疎水性(水を嫌う)部分、の両方を含む分子を意味する。水溶液において、ベシクルは、両親媒性分子が壁体(即ち、閉じた3次元の表面)を形成する時に生成される。壁体は、ベシクルの内部とベシクルの外部を画定する。通常、壁体の外側表面は、それらの親水性部分が水(水溶液の溶剤)と接触しているように配向した両親媒性分子によって形成される。壁体の内側表面は、それらの親水性部分がベシクル内部に存在する水と接触しているように配向した両親媒性分子によって形成されるか、或いは、壁体の内側表面は、それらの疎水性部分がベシクル内部に存在する疎水性物質と接触しているように配向した両親媒性分子によって形成され得る。
【0094】
壁体の両親媒性分子は層を形成する傾向があるので、壁体は両親媒性分子の1つ又は複数の層を含み得る。壁体が1つの層からなる場合、それは、「単層膜」又は「1層膜」と呼ばれ得る。壁体が2つの層からなる場合、それは、「2層膜」と呼ばれ得る。3つ以上の層を持つ壁体もまた、本発明の範囲内にある。
【0095】
本明細書においては、ベシクルは「バッキーソーム(buckysome)」と呼ばれることがある。
【0096】
一実施形態において、ベシクルの壁体は2層膜である。2層膜は、2つの層、即ち、両親媒性フラーレンと他の1種又は複数の両親媒性化合物(存在する場合)により形成される内側層(両親媒性フラーレン及び他の両親媒性分子の実質的にすべては、それらの疎水性部分を外側層の方に向けて配向している)、並びに、両親媒性フラーレンと他の1種又は複数の両親媒性化合物(存在する場合)により形成される外側層(両親媒性フラーレン及び他の両親媒性分子の実質的にすべては、それらの疎水性部分を内側層の方に向けて配向している)を含む。結果的に、内側及び外側の各層の実質的にすべての分子の親水性部分は、ベシクル内部若しくはベシクルの外部の水性溶剤に向かって配向している。
【0097】
両親媒性フラーレンと、それらから生成するベシクルに関するさらなる詳細については、「ドラッグデリバリへのバッキーソーム又はカーボンナノチューブの利用(Use of Buckysome or Carbon Nanotube for Drug Delivery)」という名称の、Hirsch他の米国特出願第10/367646号(2003年2月14日出願)を参照。
【0098】
一実施形態において、本発明は、
置換フラーレン、及び
薬学的に許容される、或いは、食用に許容される担体
を含む組成物に関する。
【0099】
置換フラーレンは前記の通りであり得る。
【0100】
担体は、置換フラーレンと組成物を生成し得る1種又は複数の物質であり得る。具体的な担体は、本発明の開示に照らして明らかなパラメータの中でも特に、組成物の意図する使用法と置換フラーレンの性質に注目して、当業者により選択され得る。
【0101】
具体的な担体と具体的な組成物の非限定的な例は以下の通りである。
【0102】
一実施形態において、担体は水であり、組成物は、水と置換フラーレンとを含む水溶液である。この組成物は、特に、塩、酸、塩基、又はこれらの混合物のような溶質をさらに含み得る。組成物はまた、界面活性剤、乳化剤、又は、置換フラーレンの水への溶解性を高めることができる他の化合物も含み得る。
【0103】
一実施形態において、担体は極性有機溶剤であり、組成物は極性有機溶剤と置換フラーレンとを含む極性有機溶液である。「極性」は、永久電気双極子を持つ分子を記述している化学文献における、その標準的な意味を持つ。極性分子は、正、負、或いは両方の電荷の1つ又は複数を持っていてもよいが、持っている必要はない。極性有機溶剤の例には、これらに限定されないが、特に、メタノール、エタノール、ホルメート、アクリレート、或いはこれらの混合物が含まれる。この組成物は、特に、塩のような溶質をさらに含み得る。組成物はまた、界面活性剤、乳化剤、又は、極性有機溶剤への置換フラーレンの溶解性を高めることができる他の化合物も含み得る。
【0104】
一実施形態において、担体は無極性有機溶剤であり、組成物は無極性有機溶剤と置換フラーレンとを含む無極性有機溶液である。「無極性」は、永久電気双極子をもたない分子を記述している化学文献における、その標準的な意味を持つ。無極性有機溶剤の例には、これらに限定されないが、特に、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、トルエン、ベンゼン、或いはこれらの混合物が含まれる。この組成物は、特に、無極性分子のような溶質をさらに含み得る。組成物はまた、界面活性剤、乳化剤、又は、無極性有機溶剤への置換フラーレンの溶解性を高めることができる他の化合物も含み得る。一実施形態において、前記組成物は油中水エマルジョンであり、この場合、置換フラーレンは、水に溶けており、水が1種又は複数の無極性有機溶剤を含む連続相に乳化されている。
【0105】
一実施形態において、担体は水と他の溶剤との混合物である。一実施形態において、担体は、特に、以下の1種又は複数を含み得る:ジメチコン、水、尿素、ミネラルオイル、乳酸ナトリウム、ジイソステアリン酸ポリグリセリル−3、セレシン、グリセリン、オクチルドデカノール、ジポリヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル−2、ステアリン酸イソプロピル、パンテノール、硫酸マグネシウム、ビサボロール、乳酸、ラノリンアルコール、若しくはベンジルアルコール。
【0106】
一実施形態において、本発明の組成物は、絞り出し可能なプラスチック容器へのパッケージングに適するクリーム状のコンシステンシを持つ。一実施形態において、本発明の組成物は、絞り出し可能なプラスチック容器へのパッケージングに適するローションのコンシステンシを持つ。一実施形態において、本発明の組成物は、絞り出し可能なプラスチック容器へのパッケージングに適する軟膏のようなコンシステンシを持つ。一実施形態において、本発明の組成物は、絞り出しできない容器へのパッケージングに適する液体のコンシステンシを持つ。絞り出しできない容器は、プラスチック、ガラス、金属、セラミック、若しくは他の複合物の1種又は複数から製造され得る。絞り出しできない容器は、流し出すタイプの蓋、或いは、ポンプタイプのディスペンサを付けて製造され得る。
【0107】
一実施形態において、担体は、固体若しくは半固体の担体であり、組成物は、置換フラーレンがその中に或いは、その上に分散している固体若しくは半固体のマトリックスである。固体担体の成分の例には、これらに限定されないが、特に、スクロース、ゼラチン、アラビアゴム、ラクトース、メチルセルロース、セルロース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、石油ゼリー、或いはこれらの混合物が含まれる。置換フラーレンの分散は、均一(即ち、置換フラーレンの分布が組成物のすべての部分に渡って不変である)、或いは、不均一(即ち、置換フラーレンの分布が組成物の異なる部分で変わっていてもよい)であり得る。本発明の組成物は、特に、芳香剤、保存剤、或いは安定剤のような他の物質をさらに含み得る。
【0108】
一実施形態において、担体は気体であり、組成物は、大気圧又は大気圧でない気体中の置換フラーレンの気体状サスペンションであり得る。気体の例には、これらに限定されないが、特に、空気、酸素、窒素、或いはこれらの混合物が含まれる。
【0109】
他の担体は、本開示を利用する当業者には明らかであろう。
【0110】
一実施形態において、担体は、薬学的に許容される担体である。「薬学的に許容される」により、哺乳動物に投与するつもりの治療薬における使用に、その担体が適することを意味する。担体の薬学的許容度を決めるのに考慮され得るパラメータには、これらに限定されないが、特に、担体の毒性、置換フラーレンと担体との間の相互作用、治療薬における使用に対する規制当局による担体の承認、或いは、前記の2つ以上が含まれる。薬学的に許容される担体の例は、塩水溶液である。一実施形態において、組成物のさらなる成分は、薬学的に許容されるものである。
【0111】
一実施形態において、担体は食用に許容される担体である。「食用に許容される」により、その食品を哺乳動物に与えるつもりである場合に、食品或いは食品包装材の中に使用するのに、その担体が適することを意味する。担体の食用としての許容度を決めるのに考慮され得るパラメータには、これらに限定されないが、特に、担体の毒性、置換フラーレンと担体との間の相互作用、食品又は食品包装材における使用に対する規制当局による担体の承認、或いは、前記の2つ以上が含まれる。食用に許容される担体の例はデンプンである。一実施形態において、組成物のさらなる成分は、食用に許容されるものである。
【0112】
置換フラーレン及び担体と前記のさらなる成分以外に、本発明の組成物はまた、他の成分、特に、例えば、保存剤、アジュバント、添加剤、バインダ、1つ又は複数の病気を改善し得る他の薬剤、或いはこれらの混合物をさらに含み得る。一実施形態において、これらの他の成分は、薬学的に許容される、或いは、食用に許容されるものである。
【0113】
組成物中の置換フラーレンの濃度は、担体と、本開示を利用する当業者には明らかである他のパラメータとに応じて変わり得る。組成物の他の成分の濃度もまた、同じように変わり得る。
【0114】
一実施形態において、本発明は、
置換フラーレンと薬学的に許容される担体を含む組成物の有効量を哺乳動物に投与すること
を含む、酸化ストレスを改善する方法に関する。置換フラーレンの「有効量」は、疾患を改善するのに十分な量である。
【0115】
疾患を「改善する」により、疾患に罹患しているか、或いは罹患する危険のある患者の状態をより良くすることを意味する。改善することには、本開示を利用する当業者にとって明らかなものの中でも特に、以下の1つ又は複数が含まれ得る:疾患の症状の重さの低減、疾患の症状の度合いの低減、疾患の症状の数の減少、疾患の病原体(desease agent)の数の減少、疾患の症状の蔓延の抑制、疾患の症状の発症の遅れ、疾患の発症の遅れ、或いは、疾患の発症と疾患の寛解との間の時間の減少。疾患を改善することの前記の例は相対的な関係で定められるので、適切な比較は、組成物が疾患を改善するためにまったく投与されず、疾患を改善するために如何なる方法も実施されない場合の、その疾患又はその症状に対して行われる。本明細書では、「防ぐ」(本明細書では、「疾患の発症を止めること」を意味する)、及び、「治療する」(本明細書では、「疾患に罹患した哺乳動物の病状を改善すること」を意味する)という用語は、いずれも「改善する」の範囲内にある。
【0116】
本発明において、疾患は酸化ストレス疾患である。「酸化ストレス疾患」は、細胞器官、細胞器官でない細胞内構造体、細胞、細胞型、組織、組織型、器官、又は器官系の1つ又は複数の健全な機能が、フリーラジカル、特に、酸素ラジカル種(ROS)のような酸化剤の作用により損なわれている疾患である。ある疾患が酸化ストレス疾患であるためには、酸化剤の作用が、疾患の進行において健全な機能の損傷がそれにより起こる、唯一の経路である必要はない。酸化ストレス疾患において、酸化剤の多くの源が知られている。例示的な源には、これらに限定されないが、特に、代謝の付随過程(by−process)、環境化学物質による刺激(例えば、タバコの煙)、或いは、体内で起こる攻撃(例えば、虚血)が含まれる。
【0117】
一実施形態において、本発明の方法は、分化した細胞、前駆細胞、又は幹細胞を保護するために使用され得る。本明細書では、「幹細胞」は細胞分裂により自己再生する能力と、成熟した個別細胞に分化する能力との両方を有する細胞を表す。本明細書では、「前駆細胞」は成熟した個別細胞に分化する能力を有する細胞を表す。一実施形態において、前記細胞は哺乳動物の多能性(multipotent)幹細胞である。一実施形態において、細胞は哺乳動物の全能性(omnipotent)幹細胞である。
【0118】
多数の酸化ストレス疾患の1つ又は複数が、本発明の方法の実施により改善され得る。
【0119】
一実施形態において、酸化ストレス疾患は、中枢神経系(CNS)神経変性疾患である。CNS神経変性疾患の例には、これらに限定されないが、パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、或いは、ハンチントン病が含まれる。
【0120】
様々な実施形態において、酸化ストレス疾患は、卒中、アテローム性動脈硬化症、虚血性心疾患、心筋再灌流障害(myocardial reperfusion)、或いは糖尿病である。
【0121】
一実施形態において、酸化ストレス疾患は糖尿病の合併症である。糖尿病の合併症の例には、これらに限定されないが、特に、心臓発作、卒中、循環障害、網膜症、失明、腎臓疾患、膵臓疾患、神経障害、歯周病、及び皮膚病が含まれる。
【0122】
様々な実施形態において、酸化ストレス疾患は、循環障害、網膜症、失明、腎臓疾患、膵臓疾患、神経障害、歯周病、白内障、又は皮膚病である。
【0123】
一実施形態において、酸化ストレス疾患は皮膚障害である。皮膚障害の例示的な原因には、これらに限定されないが、特に、炎、熱、及び放射、例えば紫外線(UV)が含まれる。
【0124】
一実施形態において、酸化ストレス疾患は放射線障害であり、これは、特に、アルファ粒子、ベータ粒子、或いは電磁放射(例えば、UV若しくはガンマ線)に曝されることにより引き起こされる障害を意味する。
【0125】
様々な実施形態において、酸化ストレス疾患は、喫煙、過剰な血管新生、或いは、不十分な血管新生により引き起こされる障害である。
【0126】
一実施形態において、酸化ストレス疾患は老化である。本明細書では、「老化」は、哺乳動物の全般的な健康の低下、哺乳動物の全般的な体力の低下、或いは、哺乳動物の全般的な生活の質の低下の1つ又は複数を表し、このような疾患は、一般に、加齢に起因する。一実施形態において、老化を改善することは、哺乳動物の生涯の晩年に、一定レベルの全身的な健康状態を維持することに繋がり得る。一実施形態において、老化を改善することは、哺乳動物の予想寿命を少なくともある程度延ばすことに繋がり得る。
【0127】
ヒト及びその仲間の全般的な健康と寿命を増す方法は、研究の非常に活発な分野である。後生動物全体に渡る細胞プロセス又は発生過程の一定の性質を仮定して、線虫のカエノラブディティスエレガンス(Caenorhabditis elegans)、及び、果実蝿(キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster))を含めて、多数のモデル生物が老化を研究するために用いられている。
【0128】
例えば、C.エレガンスの遺伝子分析は、寿命の決定に関与するいくつかの遺伝子を明らかにした。Daf−2(インスリン受容体)及びClk−1(「クロック1」、発生上及び行動上のタイミングの多くの局面に影響を与える遺伝子)の突然変異は、C.エレガンスの成虫の寿命を延ばすことが示された。しかし、Clk−1の突然変異体では若いうちに死亡する率が高い。Clk−1による寿命の表現型は、スーパーオキシド/フリーラジカルの代謝に関与するカタラーゼをコードする遺伝子における突然変異により消失する。さらに、C.エレガンスの食料の中の補酵素Qの除去により寿命が延びることが示された。これらの観察は、活性酸素種がC.エレガンスの老化に関与していることを示唆している。
【0129】
ショウジョウバエにおいて、スーパーオキシドジスムターゼ(SDS)及びカタラーゼの過剰発現は、寿命を35%延ばした。メトセラ(Methuselah)遺伝子(「Mth」)における突然変異は、寿命を20%延ばすことが示された。Mth(Gタンパク質共役受容体の1つ)の機能は知られていないが、突然変異体ではパラコート(スーパーオキシドラジカルによる損傷を起こす作用剤)に対する耐性が増すことが示された。これらの観察は、活性酸素種がショウジョウバエの老化に関連していることを示唆する。
【0130】
Dugan他の米国特許出願公開第2003/0162387号は、マウスへのC3の経口投与(約0.5mg/kg/日)により、コントロールに対して平均寿命が約20%増加することを報告した(23.5±5.5に対して、28.7±3.3カ月、p=0.033)。
【0131】
難聴は、哺乳動物に対する特定の振動数の音の最小可聴レベル(dB)が、初期の状態に対して大きくなった状態を表す。
【0132】
化学療法に付随する障害は、哺乳動物の健康な組織が細胞障害性(cytotoxic)薬剤に曝されて起こる損傷を表す。一般に、化学療法は特定の癌の治療に用いられるが、これは、本発明の限定ではない。
【0133】
粘膜炎は、粘膜の真菌性感染症を表す。粘膜の真菌性感染症は、免疫反応などを充分に発揮し得ない個人(特に、例えば、HIV感染又は特定の癌を患う人々、或いは、移植臓器の拒絶反応と戦うための免疫抑制療法を受けている人々)の間で最も一般的である。しかし、どの哺乳動物の粘膜の真菌性感染症も、本明細書において「粘膜炎」という用語が使用される場合には、その範囲内にある。
【0134】
一実施形態において、前記疾患はショックである。「ショック」は細胞の酸素要求量が供給を超える任意の状態に対する一般的用語である。このような状態では、細胞及び生体の両方がショック状態にあると考えることができる。理論には束縛されないが、酸素の供給不足は活性酸素種(ROS)の生成を増進すると考えられる。ROSは細胞、組織、又は器官にさらなる酸化損傷をもたらし得る。
【0135】
一実施形態において、前記ショックは出血性ショック(血液量の低下により引き起こされるショックとして定義される)である。出血性ショックの一般的な原因には、穿通性外傷及び鈍的外傷、消化管出血、並びに出産時出血が含まれる。ヒトは、様々な神経及びホルモンによる適応補償機構により、かなりの出血に対して補償することが可能であるが、これらの機構には凌駕されるようになる限界がある。詳細には、神経機構は大動脈弓及び心房の圧受容器による心拍出量の減少及び脈圧の低下を感知することに関わる。反射作用が心臓及び他の生命を維持する器官への交感神経活動を高め、その結果、心拍数の増加、血管収縮、及び、生命の維持に必要でない器官(例えば、皮膚、消化管、及び腎臓)からの血流の再配分が生じる。ホルモンによる機構には、コルチコトロピン放出ホルモン(グルココルチコイド及びベータ−エンドルフィンの放出につながる)、バソプレッシン(腎臓での水の保持をもたらす)、レニン(ナトリウム及び水の再吸収につながる)、グルカゴン及び成長ホルモン(糖新生及びグリコーゲン分解の増加につながる)、並びに、循環しているカテコールアミン(血漿グルコースの増加及び高血糖につながる)の放出が含まれる。
【0136】
これらの全体的な変化以外に、出血性ショックにおいては、多くの器官特異的反応が起こる。脳は、広い範囲の全身的平均動脈血圧に渡って脳血流を一定に保つ素晴らしい自動調節能を有する。腎臓は全血流における90%の減少に短期間耐えることができる。循環量の相当な減少により、内臓の血管収縮によって腸の血流は劇的に減少する。しかし、これらの器官特異的反応では、限られた時間範囲内でのみ、器官の機能の完全な蘇生が可能である。
【0137】
一実施形態において、前記ショックは血液分布異常性ショックである。血液分布異常性ショックは、ほとんどの事例で心拍出量は正常であるか又は大きくなっていて、体血管抵抗(SVR)のひどい低下による低血圧(収縮期血圧<90mmHg)により特徴付けられる。敗血症性ショックは血液分布異常性ショックの一形態であるが、それは下で別個に検討される。血液分布異常性ショックの他の原因には、非感染性炎症疾患による全身性炎症反応症候群(SIRS);毒素性ショック症候群(TSS);アナフィラキシー;薬物又は毒素反応(虫さされ、輸血副作用、及び重金属中毒が含まれる);アジソン病発作(addisonian crisis);肝不全;及び脳又は脊髄の損傷による神経原性ショック;が含まれる。
【0138】
血液分布異常性ショックにおける組織の酸素レベルの低下は、主として、SVRの低下により引き起こされる動脈の低血圧から生じる。さらに、静脈の正常な緊張状態の低下とこれに続く静脈容量血管における血液の貯留、並びに毛細血管透過性の増加に起因する間質への血管内血液量の喪失のために、有効循環血漿量の減少が起こり得る。最後に、初期心筋機能障害は、心室拡張(ventricular dilatation)、駆出率の低下(正常な一回拍出量及び心拍出量にもかかわらず)及び低下した心室機能曲線によって発現されるものとして存在し得る。
【0139】
SIRSにおいて認められる血行力学的乱れは、炎症又は組織の損傷に反応して放出された炎症性メディエーターの複雑なカスケードに起因する。腫瘍壊死因子−アルファ(TNF−アルファ)、インターロイキン(IL)−1b、及びIL−6が他のサイトカイン及びリン脂質由来メディエーターと共に作用して、血流の不均等分布を生じる。
【0140】
アナフィラキシーでは、SVRの低下は、主として、抗原に結合した免疫グロブリンE(IgE)による活性化の後のマスト細胞からの大量のヒスタミン放出、並びにプロスタグランジンの合成及び放出の増加に起因する。
【0141】
一実施形態において、前記ショックは敗血症性ショックである。敗血症性ショックは感染性疾患の下でのSIRSと見なすことができる。敗血症性ショックは一般に細菌の感染に関連付けられているが、他の感染病原体、中でも特に菌類又はウイルスが敗血症性ショックを引き起こすこともある。
【0142】
敗血症性ショックでは、病原菌産生物が宿主細胞及び血清タンパク質と相互作用して細胞損傷及び細胞死に至り得る一連の反応を開始する時に、循環不全が起こる。これらの病原菌産生物自体が有害であり、これらの物質に対する広い範囲に及ぶ制御されていない宿主の反応の結果、ケミカルメディエーターの広範な系列の物質生成が起こり、これらの結果(ROSの生成が含まれる)、さらなる細胞の損傷に至り得る。敗血症性ショックの典型的なケミカルメディエーターには、これらに限らないが、特に、アラキドン酸代謝物(例えば、ロイコトリエン、プロスタグランジン、及びトロンボキサン)、補体系、凝固カスケード、線溶系、カテコールアミン、グルココルチコイド、プレカリクレイン、ブラジキニン、ヒスタミン、ベータ−エンドルフィン、エンケファリン、アドレノコルチコイドホルモン、循環している(複数の)心筋抑制因子、カケクチン(別称は、腫瘍壊死因子)及びインターロイキン−1が含まれる。
【0143】
別の実施形態において、前記ショックは熱射病である。熱疲労及び熱射病と一般的に呼ばれる病状は、これらが、脱水、電解質の喪失、及び身体の体温調節機構の機能不全により引き起こされる一連の症状の重さに沿って存在するので、区別するのがいくらか困難である。本明細書では、「熱疲労」を高体温による熱中症(heat injury)を表すために、「熱射病」を体温調節機能不全(即ち、患者の体温調節能力が損傷されたか又は無くなっている)による極度の高体温として使用する。熱射病は、中枢神経系(CNS)全体に影響を与え、末端器官の重大な損傷を特徴とし得る。
【0144】
熱を放散できるより速く、身体が熱を生成又は獲得する時に、熱病は起こる。身体は最初に熱ストレスの増加に対して補償しようと試みるが、ストレスが余りに大きくなると、体温調節機構は機能不全を起こす。これが起こると、高体温の進展が加速し、末端器官の損傷が起こり、患者は熱射病を経験する。
【0145】
身体の基礎代謝率(BMR)は、50〜60kcal/h/m(体重70kgの人で、約100kcal/h)である。適切な体温調節機構が存在しないか又は熱射病により損傷されると、BMRは、約1.1℃/hの体温上昇を起こすと推測される。この上昇速度は、激しい運動の間又は高温環境では、かなり大きくなり得る。
【0146】
身体への又は身体からの熱移動は、伝導(身体の熱損失の約2%)、対流(身体の熱損失の約10%であるが、気温が体温を超えると効果がない)、放射(身体の熱損失の約65%)、及び蒸発(身体の熱損失の約30%)を通じて起こる。
【0147】
身体の熱損失の最も有力な形態は、放射(身体からの赤外放射としての熱移動)及び蒸発(液体から蒸気への蒸発による熱移動)である。気温が95°Fを超える場合、身体からの熱の放射は止まり、蒸発(発汗)が熱損失の唯一の手段になる。非常に湿度の高い環境において、又は汗の極めて激しい直近の蒸発によって局所的に、湿度が100%に達すると、蒸発はもはや可能でなく、湿度又は温度が低下するまで、身体は一時的に熱を放散させる能力を失う。このような条件下で、熱疲労及び熱射病は起こり得るようになる。
【0148】
身体が最初に熱を放散させる能力を失う時に、身体は腎臓及び内臓の血管収縮と末梢血管拡張により末梢へ血液を向けることによって、中心部の温度を下げようと試みる。しかし、末梢に血液を保つのに必要とされる血管収縮は最終的になくなり、中心部から取り去られる熱は少なくなり、結果的に高体温になる。平均動脈圧もまた血管収縮機構の機能不全と共に低下する。この高体温により、脳浮腫及び頭蓋内圧亢進(ICP)が引き起こされる。この頭蓋内圧亢進は、平均動脈圧の低下と組み合わさって、脳血流の減少を引き起こし、これはCNS機能障害として現れる。
【0149】
熱射病の間の組織の損傷は酸化的リン酸化の間の脱共役により生じると考えられており、これは温度が42℃を超えると起こる。脱共役のためにエネルギーの蓄えが使い果たされ、細胞膜がより透過性になり、細胞へのナトリウムの流入が増加する。ナトリウム−カリウムアデノシントリホスファターゼ(ATPアーゼ)の促進された活性が、ナトリウムを細胞からくみ出すために必要とされ、アデノシン三リン酸(ATP)の使用の増加、より多くのエネルギーの消耗、熱生成の増加、そして温度のさらなる上昇というサイクルを生じる。
【0150】
エネルギーの蓄えの減少は体温調節機構を損ない、身体は熱を放散させる能力を失い、熱射病の臨床症状が現れる。高温でタンパク質が変性し始め、結果的に広い範囲に渡る組織の壊死、器官の機能障害、及び器官の機能不全が起こる。
【0151】
別の実施形態において、前記ショックは重度の熱傷ショックである。一般に、重度の熱傷は、哺乳動物の皮膚全体に広がりのあるもの、1箇所又は複数個所に集中したもの(第3度)、或いはこれらの両方である。重度の熱傷ショックはROSストレスによる肝臓の損傷を伴い得る。
【0152】
別の実施形態において、前記ショックは非出血性外傷に関連する。「非出血性外傷」は、1つ又は複数の組織における細胞が破裂して細胞内タンパク質を循環血液に放出し、これらの細胞内タンパク質が、直接か又は腎機能を損なうことによるかによって、SVRを低下させることにより、或いは炎症性メディエーターの作用を促進することによりショックを増進させる病状を表す。非出血性外傷性ショックは内出血又は外出血又はこれらの両方を伴っていてもよいが、このような出血は出血ショックを増進するのに十分なだけの血液の損失を生じない。
【0153】
ショックの特定の原因に関わらず、ショックにより生成するROSにより、急性腎障害に至り得る。本発明の方法は、ショックにより生成するROSにより引き起こされる腎障害を改善するのに使用され得る。
【0154】
前記のいずれにおいても、酸化ストレス疾患は、哺乳動物に、以下の1種又は複数を負わせる:細胞死、細胞損傷、損なわれた細胞機能、細胞の損傷を反映する細胞生成物の産出、組織に通常は存在しないか若しくはそれほどの高レベルでは組織に通常存在しない細胞型の増殖、細胞外マトリックスの劣化又は変質、或いは、酸化ストレス疾患を示すものとして当業者により通常認識され得る他の兆候。
【0155】
本発明の組成物と、それに含まれる置換フラーレン及び薬学的に許容される担体は、上に記載されたものであり得る。
【0156】
本発明の組成物は、医薬製造の技術分野において知られている通常の形態として製造され得る。例示的な形態には、これらに限定されないが、経口投与のための固体の形態、例えば、錠剤、カプセル、ピル、粉末、顆粒などが含まれる。一実施形態において、経口投薬では、本発明の組成物は、ハード若しくはソフトゼラチン、メチルセルロース、若しくは消化管において容易に溶ける適切な他の物質の、錠剤又はカプセルの形態をとる。
【0157】
静脈内投与での典型的な製剤は、水/緩衝液を含む滅菌された水溶液であろう。静脈内ビヒクルには、流体、栄養若しくは電解質の補充剤(replenisher)が含まれる。保存剤及び他の添加剤もまた存在し得る。
【0158】
投与段階において、本発明の組成物は適切な方法により哺乳動物に導入され得る。適切な方法は、本開示を利用する当業者に明らかなパラメータの中でも特に、哺乳動物、酸化ストレス疾患、及び組成物の成分に基づいて変わり得る。投与は、全身投与であり得る(即ち、組成物は、組織、組織型、器官、若しくは酸化ストレス疾患によりその機能が損なわれている器官系に、直接受け取られるのではない)、或いは、それは、局所的であり得る(即ち、組成物は、組織、組織型、器官、若しくは酸化ストレス疾患によりその機能が損なわれている器官系に直接受け取られる)。投与経路は、他のパラメータの中でも特に、本開示を利用する当業者による日常的な治験の問題として、組成物と疾患に応じて変わり得る。例示的な投与経路には、特に、経皮、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内、髄腔内投与(intrathacal)、腹腔内、経口、直腸、及び鼻が含まれる。一実施形態において、投与経路は経口又は静脈内である。
【0159】
フラーレンは、一般に、カーボンのそれらに似た毒物学的性質を持っており、置換フラーレンは一般に毒性を持つとは予想されない。例えば、Nelson et al.、Toxicology&Indus.Health(1993)9(4):623−630;或いは、Zakharenko et al.、Doklady Akademii Nauk.(1994)335(2):261−262を参照。
【0160】
理論には束縛されないが、置換フラーレンは、フラーレンコアと酸化剤との間の反応により、その酸化剤より低い酸化ポテンシャルを持つ酸化剤生成物を生じることによって、酸化ストレス疾患を改善できるようである。本明細書では、「酸化ポテンシャル」は、その作用剤が生体分子に行うことができる酸化反応の最大回数を表すために使用されている。
【0161】
酸化ストレス疾患に罹患しているか、或いは罹患する可能性のあるどの哺乳動物も、投与された本発明の組成物を受け入れることができる。例示的な哺乳動物はヒトであるが、経済的若しくは美的有用性がある他の哺乳動物(例えば、ウシ、ヒツジ、若しくはウマのような家畜;例えば、イヌ及びネコのようなペット)も投与された本発明の組成物を受け入れることができる。
【0162】
置換フラーレンの有効量は、疾患の改善に影響を与えるのに十分な量である。有効量は、特に、どの置換フラーレンであるか、或いはどのような疾患であるかに応じて変わり得る。一実施形態において、有効量は、患者への置換フラーレンの投薬量が、約1μg/体重1kg/日から約100g/体重1kg/日であるようなものである。さらなる実施形態において、有効量は、患者への置換フラーレンの投薬量が、約1mg/体重1kg/日から約1g/体重1kg/日であるようなものである。
【0163】
1回静注投与組成物は、約1μg/mLから10mg/mL(10,000mg/リットル)の置換フラーレンを含み得る。点滴投与組成物は、好ましくは、約50mg/リットルから500mg/リットルの置換フラーレンを含み得る。
【0164】
一実施形態において、経口投薬組成物は、50mgから500mgの置換フラーレンを含むカプセル若しくは錠剤の形態である。慢性疾患を改善するために、本発明の方法は、定まっていない期間、1日に1回又は複数回、実施され得る。急性疾患(例えば、特に、卒中若しくは虚血性心疾患)を改善するためには、本発明の方法は、急性発作の開始に続く短い期間に、1回又は複数回、実施され得る。方法実施の別の期間は、本開示を利用する当業者の日常的な治験の問題である。
【0165】
一実施形態において、本発明は、移植組織、食品、マイクローブ、若しくはタバコを、前記のような、置換フラーレンと薬学的に許容される或いは食用として許容される担体とを含む組成物の有効量に接触させること
を含む、移植組織に対する損傷を改善する、食品の腐敗を改善する、マイクローブを抑制する、若しくは、タバコのフリーラジカルレベルを低減させる方法に関する。置換フラーレンの「有効量」は、適用できるように、損傷を改善し、腐敗を改善し、マイクローブを抑制し、或いは、フリーラジカルを減らすのに十分な量である。
【0166】
移植組織への損傷を「改善する」により、保管される組織への酸化損傷を低減させることを意味する。保管される組織は、死体、生きている提供者、或いは、in vitroの技術によって現に若しくは将来において成長し得る組織に由来し得る。保管される組織は、ヒト又は他の動物(例えば、特に、ウシ若しくはブタ)に由来し、ヒト又は他の動物への移植に備えて保管され得る。このような組織の例には、これらに限定されないが、特に、全血、血液分画物、循環系からの弁、循環系からの管(vessel)若しくは管の部分、心臓、肺、角膜、腎臓、及び肝臓が含まれる。一実施形態において、組織は、分化した細胞、前駆細胞、又は幹細胞であってよい。本明細書では、「幹細胞」は、細胞分裂により自己再生する能力と、成熟した個別細胞に分化する能力との両方を有する細胞を表す。本明細書では、「前駆細胞」は、成熟した個別細胞に分化する能力を有する細胞を表す。一実施形態において、細胞は哺乳動物の多能性幹細胞である。一実施形態において、細胞は哺乳動物の全能性幹細胞である。
【0167】
食品の腐敗を「改善する」により、本開示を利用する当業者にとって明らかであることの中でも特に、保管される食品の酸化損傷を少なくすること、或いは、保管される食品の貯蔵寿命を延ばすことの少なくとも一方を意味する。「食品」は、(a)ヒト又は動物(ヒトにとって経済的、美的、若しくは研究用の価値があるもの)にとって栄養としての価値がある、(b)胃腸管へと経口摂取するのに適する、産物を表す。
【0168】
マイクローブを「抑制する」により、本開示を利用する当業者にとって明らかであることの中でも特に、以下の少なくとも1つを意味する:マイクローブの培養が可能な基材におけるマイクローブの数を減らすこと、このような基材におけるマイクローブ個体数の増加率を小さくすること、このような基材におけるマイクローブ個体数の最大個体数を減少させること、或いは、このような基材におけるマイクローブの培養を確立するために必要なマイクローブの数を大きくすること。「マイクローブ」は、任意の微生物、ウイルス、プリオン、或いは、それら自体で複製できるか、若しくは、このような複製に適するin vitro若しくはin vivoの特殊な条件の下で複製され得る他の生体分子若しくは生体分子の集合体であり、ここで、微生物その他は、100ミクロン以下の最大寸法を持つ。マイクローブの例には、特に様々な無脊椎動物、真菌、バクテリア、シアノバクテリア、古細菌、ウイルス、及びプリオンが含まれる。
【0169】
タバコのフリーラジカルのレベルを「減らす」により、タバコ構成物の全体としての酸化ポテンシャルを小さくすることを意味する。「タバコ構成物」は、ニコチン(例えば、約0.1wt%を超えるニコチン)を含むすべての化合物である。通常(必ずしもそうとは限らないが)、タバコ構成物は、タバコ属植物の生体産生物を含む。例示的なタバコ構成物には、これらに限定されないが、特に、タバコの葉(特に、新鮮な、乾燥した、処理した、丸ごとの、或いは、細かくした葉)、シガレットフィラー、シガーフィラー、パイプタバコ、噛みタバコ、嗅ぎタバコ、前記のいずれかのマセラシオン(maceration)生成物、並びに、前記のいずれかの燃焼生成物が含まれる。
【0170】
改善すること、抑制すること、或いは減らすことの前記の例は相対的な関係で定められるので、適切な比較は、組成物が改善などをするために移植組織、食品、マイクローブ、或いはタバコ構成物にまったく投与されず、改善などをするために如何なる方法も実施されない場合に得られる状態に対して行われる。
【0171】
組成物と、それに含まれる置換フラーレン及び担体は、前記のものであり得る。担体は、薬学的に許容される担体或いは食用に許容される担体であり得る。
【0172】
接触させるステップにおいて、移植組織、食品、マイクローブ、或いはタバコ構成物を、置換フラーレンを含む組成物と接触させることができる。接触方法は、本開示を利用する当業者の日常的な知見の問題として、他のパラメータの中でも特に、接触させられるものと置換フラーレンを含む組成物に応じて変わり得る。
【0173】
一実施形態において、接触させられるものが移植組織である場合、本発明の組成物は液体であり、組成物は、組織に注ぐ、或いは注入するなどすることができる。
【0174】
一実施形態において、接触させられるものが固体の食品であり、本発明の組成物が固体である場合、組成物は食品に分散される、或いは、食品の中に置かれるか、食品を入れた容器の内側表面に添付される小さな袋(sachet)に入れることができる。
【0175】
一実施形態において、接触させられるものが液体の食品であり、本発明の組成物が固体である場合、組成物は、食品に溶解若しくは懸濁される、或いは、食品の中に置かれるか、若しくは、食品を入れた容器の内側表面に添付される小さな袋に入れられ得る。
【0176】
一実施形態において、接触させられるものが液体の食品であり、本発明の組成物が液体である場合、組成物は食品に溶解若しくは混合される、或いは、食品の中に置かれるか、若しくは、食品を入れた容器の内側表面に添付される小さな袋に入れられ得る。
【0177】
一実施形態において、接触させられるものが基材(例えば、微生物の抑制が望ましい表面)上にあるマイクローブであり、本発明の組成物が液体である場合、組成物は、基材上にスプレされる、注がれるなどされ得る。
【0178】
一実施形態において、接触させられるものがタバコ構成物であり、置換フラーレン組成物が固体である場合、組成物は、タバコ構成物に混合される、或いは、シガレットフィルターに詰め込まれ得る。一実施形態において、接触させられものがタバコ構成物であり、置換フラーレン組成物が液体である場合、この組成物は、タバコ構成物若しくはシガレットフィルターにスプレされ得る。
【0179】
以下の実施例は本発明の好ましい実施形態を例示するために含められている。以下の実施例において開示されている方法は、本発明の実施においてうまく機能することが本発明者により見出された方法を表しており、本発明の実施の好ましい形態をなしていると見なされ得ることが、当業者により理解されるべきである。しかし、開示されている具体的な実施形態に多くの変更がなされ得ること、本発明の精神と範囲から逸脱することなく同様の又は類似の結果がやはり得られることを、当業者は本開示に照らして理解すべきである。
【実施例1】
【0180】
スーパーオキシドラジカルを、キサンチン/キサンチンオキシダーゼ/シトクロムc系を用いて生成させた。この反応を、キサンチンオキシダーゼ(7.5×10−3単位量)をインキュベーション混合物に加えることによって開始し、続いて、シトクロムcが還元され、550nmの吸光度がそれに応じて増加した。フェリシトクロムcのフェロシトクロムcへの還元を、酸化及び還元型のそれぞれ、9mmol−1cm−1及び27.7mmol−1cm−1のモル吸光係数を用いて求めた。すべてのアッセイを室温で実施した。インキュベーション混合物は、指定された濃度の酸化防止剤と共に、50mMのリン酸カリウム、0.1mMのEDTA、0.01mMのシトクロムc、及び、0.05mMのキサンチンからなっていた。それぞれの実験で、3mLの全容積を用いた。
【0181】
図10に示すように、様々な置換フラーレン(当技術分野において知られているものと、本明細書において報告されているものの両方)を試験した。フラーレンでない既知の酸化防止剤であるTrolexを比較例として試験した。シトクロムcの還元に対するベースラインを確定するために、陰性コントロール(酸化防止剤なし、示していない)を用いた。図10に、化合物とそれらのIC50の値を記す。比較化合物を「比較」と表記して示している。
【0182】
比較化合物の中で、DF−1のIC50が最小(102μM)であった。しかし、本発明の化合物の多くのIC50値はずっと小さく、酸化防止性が高いことを示した。
【0183】
本明細書において開示され主張されている組成物及び方法のすべては、本開示に照らして、それほどの経験がなくても製造され、実施され得る。本発明の組成物及び方法が特定の実施形態により説明されたが、本発明の考え方、精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載されている組成物及び方法に、方法ステップ又はステップの連鎖において、変形形態が適用され得ることが当業者には明らかであろう。より具体的には、本明細書において記載されている作用剤の代わりに、化学的及び生理学的に関連する特定の作用剤に置き換え、同じ若しくは類似の結果が実現され得ることは明らかであろう。当業者に明らかなすべてのこのような類似の置換及び変更は、添付の請求範囲によって定められる本発明の精神、範囲及び考え方の範囲内にあると見なされている。
【図面の簡単な説明】
【0184】
【図1A】構造式として例示的な置換フラーレンを示す図である。
【図1B】概略式として同じ置換フラーレンを示す図である。
【図2】C3のC3ペンタ酸への、さらにそこからC3テトラ酸への脱炭酸反応を示す図である。
【図3】C3−テトラ酸からC3−トリス酸への脱炭酸反応を示す図である。
【図4】C3のキラリティを示す図である。
【図5】脱炭酸反応により生成する異性体へのC3のキラリティの影響を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態による例示的な置換フラーレンを示す図である。上側左のC3は比較である。
【図7A】例示的な置換フラーレンの図である。
【図7B】例示的な置換フラーレンの図である。
【図8A】例示的なデンドロフラーレンの図である。
【図8B】例示的なデンドロフラーレンの図である。
【図8C】例示的なデンドロフラーレンの図である。
【図8D】例示的なデンドロフラーレンの図である。
【図8E】例示的なデンドロフラーレンの図である。
【図8F】例示的なデンドロフラーレンの図である。
【図8G】例示的なデンドロフラーレンの図である。
【図9】デンドロフラーレンDF−1を示す図である。
【図10A】実施例1に記載されている置換フラーレン(及び、フラーレンでない、知られている酸化防止剤であるTrolox)のIC50の値を報告する図である。
【図10B】実施例1に記載されているように、様々な置換フラーレンのIC50の値を報告する図である。
【図10C】実施例1に記載されているように、様々な置換フラーレンのIC50の値を報告する図である。
【図10D】実施例1に記載されているように、様々な置換フラーレンのIC50の値を報告する図である。
【図10E−1】実施例1に記載されているように、様々な置換フラーレンのIC50の値を報告する図である。
【図10E−2】実施例1に記載されているように、様々な置換フラーレンのIC50の値を報告する図である。
【図10F】実施例1に記載されているように、様々な置換フラーレンのIC50の値を報告する図である。
【図10G】実施例1に記載されているように、様々な置換フラーレンのIC50の値を報告する図である。
【図10H】実施例1に記載されているように、様々な置換フラーレンのIC50の値を報告する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラーレンコア(Cn)(nは60以上の偶数である)と;
(i)フラーレンコアに結合したt個の−X基であって、
(i−a)tは1から12の整数(両端の数を含む)であり、
(i−b)各−Xは独立に、
【化1】


(ただし、各R10は独立に、>O、>C(R)(R)、>CHN(R)(R)(R)、又は>CHN(R)(R)(R)であり、R、R及びRは独立に、−H又は−(CH−CH(dは0から約20の整数である)であり、各Rは独立に、−(CH−SO、−(CH−PO、又は−(CH−COOである(fは1から約20の整数である))から選択される、t個の−X基と;
(ii)フラーレンコアに結合したu個の>O基であって、uは0から12の整数である(両端の数を含む)、u個の>O基と;
を含む置換フラーレン。
【請求項2】
60個の炭素原子又は70個の炭素原子を持つフラーレンコア(Cn)を含む請求項1に記載の置換フラーレン。
【請求項3】
各R10が独立に、>CHN(R)(R)(R)であり、tが4であり、uが1である請求項2に記載の置換フラーレン。
【請求項4】
各R、R、及びRが独立に、−H又は−CHである請求項3に記載の置換フラーレン。
【請求項5】
担体、並びに、
フラーレンコア(Cn)(nは60以上の偶数である)と;
(i)フラーレンコアに結合したt個の−X基であって、
(i−a)tは1から12の整数(両端の数を含む)であり、
(i−b)各−Xは独立に、
【化2】


(ここで、各R10は独立に、>O、>C(R)(R)、>CHN(R)(R)(R)、又は>CHN(R)(R)(R)であり、R、R及びRは独立に、−H又は−(CH−CH(dは0から約20の整数である)であり、各Rは独立に、−(CH−SO、−(CH−PO、又は−(CH−COOである(fは1から約20の整数である))から選択される、t個の−X基と;
(ii)フラーレンコアに結合したu個の>O基であって、uは0から12の整数である(両端の数を含む)、u個の>O基と;
を含む置換フラーレン
を含む組成物。
【請求項6】
前記担体が、薬学的に許容される担体又は食用に許容される担体である請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記置換フラーレンが、60個の炭素原子又は70個の炭素原子を持つフラーレンコア(Cn)を含む請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
各R10が独立に、>CHN(R)(R)(R)であり、tが4であり、uが1である請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
各R、R、及びRが独立に、−H又は−CHである請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
フラーレンコア(Cn)(nは60以上の偶数である)と;
(i)フラーレンコアに結合したt個の−X基であって、
(i−a)tは1から12の整数(両端の数を含む)であり、
(i−b)各−Xは独立に、
【化3】


(ここで、各R10は独立に、>O、>C(R)(R)、>CHN(R)(R)(R)、又は>CHN(R)(R)(R)であり、R、R及びRは独立に、−H又は−(CH−CH(dは0から約20の整数である)であり、各Rは独立に、−(CH−SO、−(CH−PO、又は−(CH−COOである(fは1から約20の整数である))から選択される、t個の−X基と;
(ii)フラーレンコアに結合したu個の>O基であって、uは0から12の整数である(両端の数を含む)、u個の>O基と;
を含む置換フラーレンを含む組成物の有効量を哺乳動物に投与すること
を含む、酸化ストレス疾患の改善方法。
【請求項11】
前記哺乳動物が、中枢神経系(CNS)神経変異疾患、卒中、アテローム性動脈硬化症、虚血性心疾患、心筋再還流障害、糖尿病、糖尿病の合併症、循環障害、網膜症、失明、腎臓疾患、膵臓疾患、神経障害、歯周病、白内障、皮膚病、皮膚障害、放射線障害、喫煙に起因する障害、過剰な血管新生、不十分な血管新生、難聴、化学療法に付随する障害、粘膜炎、老化、出血性ショック、血液分布異常性ショック、敗血症性ショック、熱射病、重度の熱傷ショック、又は非出血性外傷性ショックから選択される酸化ストレス疾患に罹患しているか或いは罹患しやすい、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
CNS神経変性疾患が、パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、或いは、ハンチントン病である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物が、薬学的に許容される担体又は食用に許容される担体をさらに含む請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記置換フラーレンが、60個の炭素原子又は70個の炭素原子を持つフラーレンコア(Cn)を含む請求項10に記載の方法。
【請求項15】
各R10が独立に、>CHN(R)(R)(R)であり、tが4であり、uが1である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
各R、R、及びRが独立に、−H又は−CHである請求項15に記載の方法。
【請求項17】
置換フラーレン、並びに、担体を含む組成物の有効量に、移植組織、食品、マイクローブ、又はタバコを接触させることを含む、移植組織に対する損傷を改善する、食品の腐敗を改善する、マイクローブを抑制する、又は、タバコのフリーラジカルレベルを低減させる方法であって、
置換フラーレンは、
フラーレンコア(Cn)(nは60以上の偶数である)と;
(i)フラーレンコアに結合したt個の−X基であって、
(i−a)tは1から12の整数(両端の数を含む)であり、
(i−b)各−Xは独立に、
【化4】


(ここで、各R10は独立に、>O、>C(R)(R)、>CHN(R)(R)(R)、又は>CHN(R)(R)(R)であり、R、R及びRは独立に、−H又は−(CH−CH(dは0から約20の整数である)であり、各Rは独立に、−(CH−SO、−(CH−PO、又は−(CH−COOである(fは1から約20の整数である))から選択される、t個の−X基と;
(ii)フラーレンコアに結合したu個の>O基であって、uは0から12の整数である(両端の数を含む)、u個の>O基と;
を含む、方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図8F】
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【図8G】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E−1】
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【図10E−2】
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【図10F】
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【図10G】
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【図10H】
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【公開番号】特開2007−145813(P2007−145813A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−284440(P2006−284440)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(506352120)シー スィクスティ、インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】