説明

置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子を含有する光吸収分散液、ならびにこれを用いた光吸収部材用組成物および光吸収部材

【課題】長期間にわたって再凝集することなく安定な分散状態を保ち、且つ優れた耐光性を持続し、従来遮蔽困難であったUV−Aをも遮蔽することができる金属錯体の微粒子分散液、およびこれを用いた光吸収部材用組成物、およびこれを用いた光吸収部材を提供する。
【解決手段】式(1)で表されるような置換ベンゼンジチオール金属錯体を含有する光吸収分散液であって、該置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子が、水、有機溶剤および重合性モノマーよりなる群から選択される1以上の単独または混合分散媒中に分散されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子を含有する光吸収分散液、およびこれを用いた光吸収部材用組成物、およびこれを用いた光吸収部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、可視光線を十分に透過すると同時に、紫外線や近赤外線のみを選択的に遮蔽する機能を有する部材が様々な分野で使用されている。例えば、自動車のウインドウガラスや建築物の窓ガラス等においては、日焼けや内装材の劣化を引き起こす紫外線を遮蔽するために紫外線遮蔽ガラスが、また車内や室内の冷暖房負荷を軽減する目的で、熱線遮蔽ガラスが広く使用されている。
【0003】
また、カーポート、ショーウインドウ、ショーケース、照明用透明シェード等に使用される透明樹脂板や、各種透明容器等の用途においても、紫外線遮蔽機能を付与したアクリル樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂等の透明な熱可塑性樹脂の成形体が用いられている。
【0004】
さらに、PDP(プラズマディスプレイパネル)においては、PDPから前面に放射される近赤外線が家電機器のリモコンの誤作動を引き起こす等の悪影響を及ぼすことから、近赤外線遮蔽フィルムが使用されている。
【0005】
このように、ガラスや樹脂等の基材に紫外線や近赤外線を遮蔽する機能を付与するためには、光吸収剤として無機系金属酸化物微粒子や有機系光吸収剤を用いる方法が一般的に知られている。
【0006】
例えば、ガラス基材や樹脂基材に紫外線遮蔽機能を付与する場合、金属酸化物微粒子や有機系紫外線吸収剤等を、ガラス基材や樹脂基材自体に混入配合した後に成形するものや(特許文献1、2)、あらかじめ成形したガラス基材や樹脂基材の表面にこれら光吸収剤を含むコーティング層を設けたりする方法が一般的に知られている(特許文献3、4)。
【0007】
光吸収剤として無機系金属酸化物微粒子を使用する場合、一般的に金属酸化物は溶剤に溶解させることができないため、微粒子の状態で分散させて使用するが、金属酸化物微粒子は可視光隠蔽性が高いため可視光透過率の低下を招くことが多い。これを防止するためにはより細かく微粒化する必要があるが、粒子径が小さくなると粒子間の相互作用によって微粒子同士が再凝集しやすくなるため、微粒子分散液の状態で長期間安定に保存することが難しいことに加え、再凝集によってかえって大きな粒子となりさらに可視光透過率が低下する等といった問題がある。
【0008】
さらに、微粒化された無機系金属酸化物は、光触媒活性を有するため、望まぬ化学反応を伴い、併用する有機材料を劣化させてしまうといった問題がある。
【0009】
一方、有機系光吸収剤は溶剤溶解性が良好であるため、一般的に溶剤に溶解させて使用することが多く、分子レベルで溶解した状態で基材中に混入配合、または基材上にコーティングされるため、可視光透過率が良好であり、また多量に添加せずとも十分な遮蔽効果が得られる場合が多いが、有機系光吸収剤はそれ自身の耐光性に問題があり、連続的な光照射により経時的に劣化が進行し、光遮蔽性能を長期間維持することが難しいといった問題がある。
【0010】
さらに、紫外線遮蔽という観点から見ると、無機系金属酸化物微粒子、有機系光吸収剤を問わず、従来公知の光吸収剤においては、遮蔽可能な紫外線は380nm以下のものに限られ、380〜400nmのUV−Aと呼ばれる紫外線を十分に遮蔽でき、且つ長期間に渡る光照射に耐え得る光吸収剤はほとんど知られていなかった。
【0011】
ここでUV−Aとは、比較的波長の長い紫外線(320〜400nm)であり、地表に到達する太陽光の紫外線としては最も多く含まれるが、人体にとっては皮膚への浸透程度が深いため、長時間の曝露が色素沈着(シミ)やシワを引き起こすことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−174607号公報
【特許文献2】特開2000−63647号公報
【特許文献3】特許2957924
【特許文献4】特開2009−35703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、前記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであり、長期間にわたって再凝集することなく安定な分散状態を保ち、且つ優れた耐光性を持続し、例えば、式(1)または(2)におけるMが銅原子の場合には、従来遮蔽困難であったUV−Aを十分に遮蔽することができる、置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子分散液、およびこれを用いた光吸収部材用組成物、およびこれを用いた光吸収部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
すなわち、本発明は、以下を提供する。
1)式(1):
【0015】
【化1】

【0016】
(式中、RおよびRは、独立して、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルキルアミノ基、置換基を有していてもよいモルホリノ基、置換基を有していてもよいピペリジノ基、置換基を有していてもよいピロリジノ基、置換基を有していてもよいチオモルホリノ基、置換基を有していてもよいピペラジノ基または置換基を有していてもよいフェニル基を示す。Mは、金属原子を示し、Aは第4級アンモニウムカチオンまたは第4級ホスホニウムカチオンを示す。またnは任意の整数で、金属原子Mの酸化数に応じて異なる。);および/または
式(2):
【0017】
【化2】

【0018】
(式中、RおよびRは、独立して、炭素数1〜8のアルキル基を示す。Mは、金属原子を示し、Aは第4級アンモニウムカチオンまたは第4級ホスホニウムカチオンを示す。またnは任意の整数で、金属原子Mの酸化数に応じて異なる。)
で表される置換ベンゼンジチオール金属錯体を含有する光吸収分散液において、該置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子が、水、有機溶剤および重合性モノマーよりなる群から選択される1以上の単独または混合分散媒中に分散されていることを特徴とする該光吸収分散液。
【0019】
2)式(1)および/または式(2)における金属原子Mが、錫原子、亜鉛原子、ニッケル原子、銅原子またはコバルト原子である前記1)に記載の光吸収分散液。
3)該置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子の平均粒子径が、10nm以上200nm以下である前記1)または2)に記載の光吸収分散液。
4)前記1)〜3)のいずれかに記載の光吸収分散液と、少なくとも1種類のマトリックス材料とを含む光吸収部材用組成物。
5)前記1)〜3)のいずれかに記載の光吸収分散液を含み、ここに、該光吸収分散液は、分散媒として重合性モノマーを含み、および別途にマトリックス材料を含まない光吸収部材用組成物。
6)前記1)〜3)のいずれかに記載の光吸収分散液を含み、ここに、該光吸収分散液は、分散媒として重合性モノマーを含み、および別途にマトリックス材料を含む光吸収部材用組成物。
7)前記4)〜6)のいずれかに記載の光吸収部材用組成物を用いて作製される光吸収部材。
8)基材上に置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子が分散されたマトリックス材料の膜を有する積層体としての光吸収部材である前記7)に記載の光吸収部材。
9)置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子がマトリックス材料の膜中に分散した薄膜形態の光吸収部材である前記7)に記載の光吸収部材。
【0020】
本発明は、光吸収剤として置換ベンゼンジチオール金属錯体を用いた、置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子分散液を提供する。置換ベンゼンジチオール金属錯体を平均粒子径10nm以上200nm以下まで微粒化し、分散媒中に分散させた置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子分散液は、長期間にわたって静置しても再凝集することなく分散状態を安定に維持することができる。
【0021】
また、本発明は、前記の置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子分散液を有機系バインダーまたは無機系バインダー等のマトリックス材料と混合して得られる光吸収部材用組成物を提供する。
【0022】
置換ベンゼンジチオール金属錯体は、その疎水性により有機系バインダーに対する分散性が良好である一方、高極性であるためポリシロキサン系バインダー等の無機系バインダーに対する分散性も良好であることを特徴とする。すなわち、有機系、無機系を問わず、種々のマトリックス材料と混合した光吸収部材用組成液を、安定な分散状態を保ったまま、簡便に得ることができる。
【0023】
また、本発明は、前記の光吸収部材用組成物を用いて、ガラス基材や樹脂基材上にコーティング膜を施して得られる光吸収部材を提供する。
置換ベンゼンジチオール金属錯体は、一般的な有機系光吸収剤に比べてはるかに良好な耐光性を示し、長期間にわたって光を照射し続けても、その光吸収能が低下しにくい。
【0024】
置換ベンゼンジチオール金属錯体が、一般的な有機系光吸収剤に比べてはるかに高い耐光性を示す理由は詳らかではないが、おそらく以下に述べる機構によるものと考えられる。
【0025】
本発明における置換ベンゼンジチオール金属錯体を含め、一般的に光吸収剤は、光を吸収し励起状態に至る。次に、生じた不安定な励起種は、主に「(i)基底状態へと緩和する」あるいは「(ii)他の分子と反応する」という2つの競争過程を伴って安定化される。これら2つの過程のうちどちらが優先するかは、材料自身の化学特性によって異なる。一般的な有機系光吸収剤の場合、(ii)の過程が優先して起こるため、光照射により経時的に劣化する。しかしながら本発明における置換ベンゼンジチオール金属錯体の場合は、(i)の緩和過程が優先的に起こり、長期間に渡って光を照射しても「励起⇔緩和」を繰り返すことで光吸収能を持続することができる。
【0026】
また、置換ベンゼンジチオール金属錯体は、中心金属の種類によってそれぞれ特徴的な吸収波長を有する。すなわち、特定の吸収波長の光を遮蔽する用途において、遮蔽したい波長の光を吸収する置換ベンゼンジチオール金属錯体を適宜選択し、使用することができる。例えば、置換ベンゼンジチオール銅錯体は優れた紫外線吸収能を有しており、従来技術において十分に遮蔽できなかったUV−Aも容易に遮蔽できる。また置換ベンゼンジチオールニッケル錯体は優れた近赤外線吸収能を有している。
【0027】
これら置換ベンゼンジチオール金属錯体は、単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。例えば、置換ベンゼンジチオール銅錯体と置換ベンゼンジチオールニッケル錯体を併用すれば、紫外線と近赤外線を遮蔽し、可視光のみを透過させる透明性の高い光吸収部材を作製することができる。
【0028】
前記のように数種類の領域の光を同時に遮蔽する光吸収部材を作製する場合、従来技術では数種類の光吸収剤を併用する必要があった。しかしながら従来公知の光吸収剤の中から数種類を選択し、同一の分散系で分散・加工する場合、安定な分散状態を保つことが難しく、多大な労力を要することが多い。
【0029】
一般的に安定な分散液を得るためには、分散媒や分散剤を併用する。分散安定性を高める上で最適な分散媒および分散剤は、分散質(光吸収剤)の種類、より詳しくは分散質の分子構造(酸−塩基性、疎水性、極性等)によって大きく異なることが知られている。すなわち分子構造の大きく異なる数種類の分散質を、同一の分散系において安定に分散・加工することは困難である場合が多い。
【0030】
光吸収剤として、本発明における置換ベンゼンジチオール金属錯体を用いれば、中心金属の種類を変更するだけで、すなわちほとんど同じ分子構造を保ったまま吸収波長を変更することができる。それゆえ数種類の置換ベンゼンジチオール金属錯体を同一の分散系で分散・加工する場合においても、比較的容易に安定な分散液を得ることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によると、長期間にわたって再凝集することなく安定な分散状態を保ち、且つ優れた耐光性を持続し、例えば、式(1)および(2)におけるMが銅原子の場合には、従来遮蔽困難であったUV−Aを十分に遮蔽することができる、置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子分散液、およびこれを用いた光吸収部材用組成物、およびこれを用いた光吸収部材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、式(1):
【0033】
【化3】

【0034】
(式中、RおよびRは、独立して、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルキルアミノ基、置換基を有していてもよいモルホリノ基、置換基を有していてもよいピペリジノ基、置換基を有していてもよいピロリジノ基、置換基を有していてもよいチオモルホリノ基、置換基を有していてもよいピペラジノ基または置換基を有していてもよいフェニル基を示す。Mは、金属原子を示し、Aは第4級アンモニウムカチオンまたは第4級ホスホニウムカチオンを示す。またnは任意の整数で、金属原子Mの酸化数に応じて異なる。)
および/または式(2):
【0035】
【化4】

【0036】
(式中、RおよびRは、独立して、炭素数1〜8のアルキル基を示す。Mは、金属原子を示し、Aは第4級アンモニウムカチオンまたは第4級ホスホニウムカチオンを示す。またnは任意の整数で、金属原子Mの酸化数に応じて異なる。)
で表される置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子を含有する光吸収分散液、およびこれを用いた光吸収部材用組成物、およびこれを用いた光吸収部材を提供するものである。
【0037】
また、式(1)におけるRおよびR、ならびに式(2)におけるRおよびRについて、以下に例示する。
【0038】
炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基およびイソヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等が挙げられる。
【0039】
炭素数1〜8のアルキルアミノ基としては、例えば、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N−イソプロピルアミノ基、N−n−プロピルアミノ基、N−n−ブチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−メチルエチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−エチルイソプロピルアミノ基、N,N−ジイソプロピルアミノ基、N,N−ジ−n−プロピルアミノ基およびN,N−ジ−n−ブチルアミノ基、N,N−ジイソブチル基等が挙げられる。
【0040】
置換基を有していてもよいモルホリノ基としては、例えば、モルホリノ基、2−メチルモルホリノ基、3−メチルモルホリノ基、2−エチルモルホリノ基、3−n−プロピルモルホリノ基、3−n−ブチルモルホリノ基、2,3−ジメチルモルホリノ基、2,6−ジメチルモルホリノ基、および3−フェニルモルホリノ基等が挙げられる。
【0041】
置換基を有していてもよいピペリジノ基としては、例えば、ピペリジノ基、2−メチルピペリジノ基、3−メチルピペリジノ基、4−メチルピペリジノ基、2−エチルピペリジノ基、4−n−プロピルピペリジノ基、3−n−ブチルピペリジノ基、2,4−ジメチルピペリジノ基、2,6−ジメチルピペリジノ基および4−フェニルピペリジノ基等が挙げられる。
【0042】
置換基を有していてもよいピロリジノ基としては、例えば、ピロリジノ基、2−メチルピロリジノ基、3−メチルピロリジノ基、2−エチルピロリジノ基、3−n−プロピルピロリジノ基、3−n−ブチルピロリジノ基、2,4−ジメチルピロリジノ基、2,5−ジメチルピロリジノ基および4−フェニルピロリジノ基等が挙げられる。
【0043】
置換基を有していてもよいチオモルホリノ基としては、例えば、チオモルホルノ基、2−メチルチオモルホリノ基、3−メチルチオモルホリノ基、2−エチルチオモルホリノ基、3−n−プロピルチオモルホリノ基、3−n−ブチルチオモルホリノ基、2,3−ジメチルチオモルホリノ基、2,6−ジメチルチオモルホリノ基および3−フェニルチオモルホリノ基等が挙げられる。
【0044】
置換基を有していてもよいピペラジノ基としては、例えば、ピペラジノ基、2−メチルピペラジノ基、3−メチルピペラジノ基、4−メチルピペラジノ基、2−エチルピペラジノ基、4−n−プロピルピペラジノ基、3−n−ブチルピペラジノ基、2,4−ジメチルピペラジノ基、2,6−ジメチルピペラジノ基、4−フェニルピペラジノ基および2−ピリミジルピペラジノ基等が挙げられる。
【0045】
置換基を有していてもよいフェニル基としては、例えば、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、4−エチルフェニル基、2−n−プロピルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、2−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2−ブロモフェニル基、4−ブロモフェニル基、2−クロロ−4−ブロモフェニル基、4−アミノフェニル基、2,4−ジアミノフェニル基、2,4−ジニトロフェニル基、2−アセチルフェニル基、4−アセチルフェニル基、2−ヒドロキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−(メチルチオ)フェニル基および4−(メチルチオ)フェニル基等が挙げられる。
【0046】
また、本発明の式(1)および(2)で表される置換ベンゼンジチオール金属錯体において、Mは、金属原子を示し、Aは、第4級アンモニウムカチオンまたは第4級ホスホニウムカチオンを示す。
【0047】
前記Aで示される第4級アンモニウムカチオンとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラ−n−ブチルアンモニウムカチオン、トリメチルベンジルアンモニウムカチオンおよびトリブチルベンジルアンモニウムカチオン等が、
前記Aで示される第4級ホスホニウムカチオンとしては、例えば、テトラメチルホスホニウムカチオン、テトラエチルホスホニウムカチオン、テトラ−n−ブチルホスホニウムカチオン、テトラフェニルホスホニウムカチオン、トリメチルベンジルホスホニウムカチオンおよびトリブチルベンジルホスホニウムカチオン等が挙げられる。
【0048】
前記Mで表される金属原子は、具体的には、典型金属として錫原子、亜鉛原子等が挙げられ、遷移金属としては、ニッケル原子、銅原子およびコバルト原子等が挙げられる。
【0049】
式(1)で表される置換ベンゼンジチオール金属錯体は、例えば、1,2−ジハロゲノベンゼンを出発原料とし、これから合成される中間体を経て合成することができる。以下、製造方法を工程毎に説明する。
【0050】
(工程1)
1,2−ジハロゲノベンゼンとクロロスルホン酸とを、反応溶媒中、無水硫酸ナトリウムの存在下、反応させ、3,4−ジハロゲノベンゼンスルホン酸を合成する。
前記クロロスルホン酸の使用割合は、1,2−ジハロゲノベンゼン1モルに対して1.5〜3.0モルであるのが好ましく、1.7〜2.1モルであるのがより好ましい。
前記無水硫酸ナトリウムの使用割合は1,2−ジハロゲノベンゼン1モルに対して0.05〜0.15モルであるのが好ましく、0.07〜0.1モルであるのがより好ましい。
【0051】
前記反応溶媒としては、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−エチレンジクロライド等のハロゲン化炭化水素溶媒が好ましい。
反応温度は、50〜100℃であるのが好ましく、70〜85℃であるのがより好ましい。反応時間は、反応温度により異なるが、通常、1〜4時間である。
【0052】
(工程2)
工程1で得られた3,4−ジハロゲノベンゼンスルホン酸と塩化チオニルとを反応させて、3,4−ジハロゲノベンゼンスルホニルクロライドを合成する。
前記塩化チオニルの使用割合は、3,4−ジハロゲノベンゼンスルホン酸1モルに対して、1.0〜2.0モルであるのが好ましく、1.1〜1.5モルであるのがより好ましい。
【0053】
反応溶媒としては、工程1の場合と同様、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−エチレンジクロライド等のハロゲン化炭化水素溶媒が好ましく用いられる。工程1と同様の反応溶媒を用いた場合、反応を連続して行うことができるため、作業効率や収率等の点で有利である。
反応温度は、45〜70℃であるのが好ましく、50〜60℃であるのがより好ましい。反応時間は、反応温度により異なるが、通常、1〜4時間である。
【0054】
(工程3)
工程2で得られた3,4−ジハロゲノベンゼンスルホニルクロライドに対して、炭素数1〜8のアルキル化合物、炭素数1〜8のアルキルアミン、置換基を有していてもよいモルホリン、置換基を有していてもよいピペリジン、置換基を有していてもよいピロリジン、置換基を有していてもよいチオモルホリン、置換基を有していてもよいピペラジンまたは、置換基を有していてもよいベンゼンを反応させ、4−置換スルホニル−1,2−ジハロゲノベンゼンを合成する。なお、必要に応じて、塩化アルミニウム等の反応触媒を用いてもよい。
【0055】
例えば、4−(N,N−ジエチルアミノスルホニル)−1,2−ベンゼンジチオール金属錯体を製造する場合には、炭素数1〜8のアルキルアミンとして、N,N−ジエチルアミンを用いることにより、4−(N,N−ジエチルアミノスルホニル)−1,2−ジハロゲノベンゼンを合成する。
【0056】
また、4−モルホリノスルホニル−1,2−ベンゼンジチオール金属錯体を製造する場合には、置換基を有していてもよいモルホリンとして、モルホリンを用いることにより、4−モルホリノスルホニル−1,2−ジハロゲノベンゼンを合成する。
【0057】
また、4−ピペリジノスルホニル−1,2−ベンゼンジチオール金属錯体を製造する場合には、置換基を有していてもよいピペリジンとして、ピペリジンを用いることにより、4−ピペリジノスルホニル−1,2−ジハロゲノベンゼンを合成する。
【0058】
また、4−ピロリジノスルホニル−1,2−ベンゼンジチオール金属錯体を製造する場合には、置換基を有していてもよいピロリジンとして、ピロリジンを用いることにより、4−ピロリジノスルホニル−1,2−ジハロゲノベンゼンを合成する。
【0059】
また、4−チオモルホリノスルホニル−1,2−ベンゼンジチオール金属錯体を製造する場合には、置換基を有していてもよいチオモルホリンとして、チオモルホリンを用いることにより、4−チオモルホリノスルホニル−1,2−ジハロゲノベンゼンを合成する。
【0060】
また、4−ピペラジノスルホニル−1,2−ベンゼンジチオール金属錯体を製造する場合には、置換基を有していてもよいピペラジンとして、ピペラジンを用いることにより、4−ピペラジノスルホニル−1,2−ジハロゲノベンゼンを合成する。
【0061】
また、4−フェニルスルホニル−1,2−ベンゼンジチオール金属錯体を製造する場合には、置換基を有していてもよいベンゼンとして、ベンゼンを用い、さらに反応触媒として塩化アルミニウムを添加することにより、4−フェニルスルホニル−1,2−ジハロゲノベンゼンを合成する。
【0062】
工程3において、工程2で得られた3,4−ジハロゲノベンゼンスルホニルクロライドを全量用いる場合、前記N,N−ジエチルアミン、モルホリン、ピペリジン、ピロリジン、チオモルホリン、ピペラジン、ベンゼンの使用割合は、工程2で用いた3,4−ジハロゲノベンゼンスルホン酸1モルに対して、1.0〜4.0モルであることが好ましく、1.1〜3.0モルであることがより好ましい。
【0063】
なお、塩化アルミニウム等の反応触媒を用いる場合、その使用割合としては、3,4−ジハロゲノベンゼンスルホニルクロライド1モルに対して、0.5〜2.5モルであるのが好ましく、1.0〜1.5モルであるのがより好ましい。
【0064】
反応溶媒としては、工程2の場合と同様、クロロホルム、四塩化炭素および1,2−エチレンジクロライド等のハロゲン化炭化水素溶媒、並びにモノクロロベンゼンおよびトルエン等の芳香族炭化水素溶媒が好ましく用いられる。工程2と同様の反応溶媒を用いた場合、反応を連続して行うことができるため、作業効率性や収率等の点で有利である。
【0065】
反応温度は、15〜40℃であるのが好ましく、20〜30℃であるのがより好ましい。反応時間は、反応温度により異なるが、通常、1〜3時間である。
なお、工程3で得られる4−置換スルホニル−1,2−ジハロゲノベンゼンは、下記式(3)で表される。
【0066】
【化5】

【0067】
前記式(3)において、XおよびXは、同一であっても異なっていても良く、塩素原子および臭素原子等のハロゲン原子を示し、Rは、前記式(1)中のR1またはRに相当する基であって、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルキルアミノ基、置換基を有していてもよいモルホリノ基、置換基を有していてもよいピペリジノ基、置換基を有していてもよいピロリジノ基、置換基を有していてもよいチオモルホリノ基、置換基を有していてもよいピペラジノ基または、置換基を有していてもよいフェニル基を示す。
【0068】
(工程4)
工程3で得られた4−置換スルホニル−1,2−ジハロゲノベンゼンのハロゲノ基をチオール基に置換し、式(4);
【0069】
【化6】

【0070】
で示される4−置換スルホニル−1,2−ベンゼンジチオールを合成する。なお、式(4)中のRは、前記式(3)中のRと同じ基である。
【0071】
4−置換スルホニル−1,2−ジハロゲノベンゼンのハロゲノ基をチオール基に置換する方法は、例えば、特開平6−25151号公報および特開平5−117225号公報に記載された方法に従って実施することができる。
【0072】
具体的には、工程3で得られた4−置換スルホニル−1,2−ジハロゲノベンゼンに、鉄粉と硫黄末とを触媒として、水硫化ナトリウムと反応させることにより、ハロゲノ基がチオール基に置換され、鉄錯体が形成される。当該鉄錯体を、酸化亜鉛を用いて分解することで、目的とする4−置換スルホニル−1,2−ベンゼンジチオールが得られる。
【0073】
前記水硫化ナトリウムの使用割合は、4−置換スルホニル−1,2−ジハロゲノベンゼン1モルに対して、1.5〜4.0モルであるのが好ましく、1.8〜2.5モルであるのがより好ましい。
【0074】
前記鉄粉の使用割合は、4−置換スルホニル−1,2−ジハロゲノベンゼン1モルに対して、0.4〜2.0モルであるのが好ましく、0.5〜1.0モルであるのがより好ましい。
【0075】
前記硫黄末の使用量は、4−置換スルホニル−1,2−ジハロゲノベンゼン100重量部に対して、1.0〜20.0重量部であることが好ましく、1.0〜5.0重量部であることがより好ましい。
【0076】
反応温度は、60〜140℃であるのが好ましく、70〜110℃であるのがより好ましい。
【0077】
前記鉄錯体を分解するために用いられる酸化亜鉛の使用量は、4−置換スルホニル−1,2−ジハロゲノベンゼン100重量部に対して、20〜80重量部であることが好ましく、30〜50重量部であることがより好ましい。
【0078】
分解温度としては、60〜140℃であるのが好ましく、70〜110℃であるのがより好ましい。
【0079】
(工程5)
工程4で得られた4−置換スルホニル−1,2−ベンゼンジチオールを低級アルコール中において、金属塩と、第4級アンモニウム塩または第4級ホスホニウム塩との存在下に反応させる方法、または、工程4で得られた4−置換スルホニル−1,2−ベンゼンジチオール鉄錯体のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液に、低級アルコールを加え、金属塩と、第4級アンモニウム塩または第4級ホスホニウム塩との存在下に反応させる方法等により、式(1)で表される置換ベンゼンジチオール金属錯体を得ることができる。
【0080】
前記低級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール(IPA)、およびtert−ブタノール等を挙げることができる。中でも、経済性の観点からメタノールを用いるのが好ましい。
【0081】
前記金属塩としては、例えば、塩化錫(II)、塩化亜鉛(II)、塩化銅(II)、塩化コバルト、塩化ニッケル(II)、臭化錫(II)、臭化亜鉛(II)、臭化銅(II)、臭化コバルト、ヨウ化錫(II)、ヨウ化亜鉛(II)、ヨウ化コバルトおよびヨウ化ニッケル等の金属ハロゲン化物、硝酸銅および硝酸コバルト等の金属硝酸塩、硫酸銅および硫酸コバルト等の金属硫酸塩、並びに酢酸銅および酢酸コバルト等の金属酢酸塩等を挙げることができる。
中でも、経済性や反応性の観点から、ハロゲン化物であることが好ましく、塩化物であることがより好ましい。
【0082】
前記金属塩の使用割合は、4−置換スルホニル−1,2−ベンゼンジチオール1モルに対して、0.3〜10モルであるのが好ましい。金属塩の使用割合が0.3モル未満の場合、収率が低くなり、10モルを超える場合、使用量に見合う効果がなく経済的でない。
【0083】
前記第4級アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウムブロマイドおよびテトラメチルアンモニウムクロライド等のテトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウムブロマイドおよびテトラエチルアンモニウムクロライド等のテトラエチルアンモニウム塩、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイドおよびテトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド等のテトラ−n−ブチルアンモニウム塩、トリメチルベンジルアンモニウムブロマイドおよびトリメチルベンジルアンモニウムクロライド等のトリメチルベンジルアンモニウム塩、並びにトリブチルベンジルアンモニウムブロマイドおよびトリブチルベンジルアンモニウムクロライド等のトリブチルベンジルアンモニウム塩等を挙げることができる。
【0084】
前記第4級ホスホニウム塩としては、例えば、テトラメチルホスホニウムブロマイドおよびテトラメチルホスホニウムクロライド等のテトラメチルホスホニウム塩、テトラエチルホスホニウムブロマイドおよびテトラエチルホスホニウムクロライド等のテトラエチルホスホニウム塩、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイドおよびテトラ−n−ブチルホスホニウムクロライド等のテトラ−n−ブチルホスホニウム塩、テトラフェニルホスホニウムブロマイドおよびテトラフェニルホスホニウムクロライド等のテトラフェニルホスホニウム塩、トリメチルベンジルホスホニウムブロマイドおよびトリメチルベンジルホスホニウムクロライド等のトリメチルベンジルホスホニウム塩、並びにトリブチルベンジルホスホニウムブロマイドおよびトリブチルベンジルホスホニウムクロライド等のトリブチルベンジルホスホニウム塩等を挙げることができる。
【0085】
これらの中でも、経済性や反応性等の観点から、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイドまたはテトラエチルアンモニウムクロライドのような第4級アンモニウム塩であることが好ましい。
【0086】
前記第4級アンモニウム塩または第4級ホスホニウム塩の使用割合は、式(1)において中心金属Mが錫原子、銅原子、コバルト原子、ニッケル原子等の場合にはn=1となるため、4−置換スルホニル−1,2−ベンゼンジチオール1モルに対して、0.3〜1.0モルであるのが好ましく、0.4〜0.9モルであるのがより好ましい。使用割合が0.3モル未満の場合、収率が低くなり、1.0モルを超える場合、使用量に見合う効果がなく経済的でない。
【0087】
また、式(1)において中心金属Mが亜鉛原子の場合にはn=2となるため、4−置換スルホニル−1,2−ベンゼンジチオール1モルに対して、0.6〜2.0モルであるのが好ましく、0.8〜1.8モルであるのがより好ましい。使用割合が0.6モル未満の場合、収率が低くなり、2.0モルを超える場合、使用量に見合う効果がなく経済的でない。
【0088】
なお、この工程での反応は、収率を高める観点から、金属アルコキシドの存在下で実施するのが好ましい。前記金属アルコキシドとしては、例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドおよびカリウム−tert−ブトキシド等が挙げられる。中でも、経済性の観点から、ナトリウムメトキシドを用いるのが好ましい。
金属アルコキシドの使用割合は、4−置換スルホニル−1,2−ベンゼンジチオール1モルに対して、1.5〜10モルであるのが好ましく、2.0〜3.0モルであるのがより好ましい。
【0089】
1.5モル未満の場合、収率が向上せず、10モルを超える場合、使用量に見合う効果がなく経済でない。
反応温度は、15〜40℃であるのが好ましく、25〜35℃であるのがより好ましい。なお、反応時間は、反応温度により異なるが、通常、1〜10時間である。
かくして得られる置換ベンゼンジチオール金属錯体は、晶析、抽出、カラムクロマトグラフィー等の、通常の分離精製操作によって単離することができる。
【0090】
また、式(2)で表される置換ベンゼンジチオール金属錯体は、例えば、特公平06−15550号に基づいて、4−tert−ブチルベンゼンチオールあるいはジ(4−tert−ブチルフェニル)ジスルフィドを出発原料とし、合成することができる。以下、製造方法を工程毎に説明する。
【0091】
4−tert−ブチルベンゼンチオールあるいはジ(4−tert−ブチルフェニル)ジスルフィドと、一塩化硫黄をヨウ素またはルイス酸触媒の存在下、溶媒中で反応させた後、亜鉛,錫,鉄から選ばれた少なくとも1種の金属粒または金属末で還元させることにより製造できる。
【0092】
前記一塩化硫黄の使用量は、4−tert−ブチルベンゼンチオール1モルに対して0.5〜2.0モル、好ましくは0.55〜1.5モルである。
一方、原料としてジ(4−tert−ブチルフェニル)ジスルフィドを使用する場合は、ジ(4−tert−ブチルフェニル)ジスルフィド1モルに対して1.0〜4.0モル、好ましくは1.1〜3.0モルの一塩化硫黄を使用する。
【0093】
前記ルイス酸触媒としては、例えば、塩化亜鉛、塩化第二鉄、塩化アルミニウム、塩化第二錫、三弗化ホウ素、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン等が挙げられ、中でも塩化亜鉛を用いるのが好ましい。これらルイス酸触媒の使用量は、4−tert−ブチルベンゼンチオール1モルに対して0.05〜2.0モルであるのが好ましく、0.1〜1.0モルであるのがより好ましい。また、ジ(4−tert−ブチルフェニル)ジスルフィド1モルに対しては、0.1〜4.0モルであるのが好ましく、0.2〜2.0モルであるのがより好ましい。
【0094】
また、ヨウ素を使用した場合、4−tert−ブチルベンゼンチオール1モル、またはジ(4−tert−ブチルフェニル)ジスルフィド1モルに対して、0.1〜4.0モルであるのが好ましく、0.2〜2.0モルであるのがより好ましい。
【0095】
前記反応溶媒としては、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−エチレンクロライド等のハロゲン化炭化水素溶媒が好ましい。
【0096】
反応温度は、20〜140℃であるのが好ましく、特にヨウ素を使用した場合、20〜40℃、ルイス酸触媒を使用した場合には60〜100℃であるのがより好ましい。
反応時間は触媒の添加量、反応温度により異なるが、通常、12〜72時間で行う。
【0097】
反応生成物を還元することにより、4−tert−ブチル−1,2−ベンゼンジチオールが得られるが、還元反応の際に使用する金属粒または金属末の使用量は4−tert−ブチルベンゼンチオール1モルに対して1.0〜10モル、好ましくは3.0〜7.0モル、ジ(4−tert−ブチルフェニル)ジスルフィド1モルに対して2.0〜13モル、好ましくは4.0〜11モルである。還元に際して反応液を酸性に保つため酸を添加するが、用いる酸としては、酢酸、塩酸、硫酸から選ばれた1種を使用すればよい。還元の際に用いる金属粒または金属末としては、亜鉛、錫、鉄等がある。還元反応温度は、金属粒または金属末の添加および酸の添加時には室温以下に保持し、その後は40〜80℃に保持して行えばよい。また反応時間は通常0.5〜3時間である。
【0098】
かくして得られた4−tert−ブチル−1,2−ベンゼンジチオールに金属アルコキシド、および金属塩、および第4級アンモニウム塩または第4級ホスホニウム塩を低級アルコール中で反応させることにより、目的物である4−tert−ブチル−1,2−ベンゼンジチオール金属錯体を得ることができ、晶析、抽出、カラムクロマトグラフィー等の、通常の分離精製操作によって単離することができる。
【0099】
前記金属アルコキシドとしては、例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドおよびカリウム−tert−ブトキシド等が挙げられる。中でも、経済性の観点から、ナトリウムメトキシドを用いるのが好ましい。
金属アルコキシドの使用割合は、4−置換スルホニル−1,2−ベンゼンジチオール1モルに対して、1.5〜10モルであるのが好ましく、2.0〜3.0モルであるのがより好ましい。1.5モル未満の場合、収率が向上せず、10モルを超える場合、使用量に見合う効果がなく経済的でない。
【0100】
また、前記金属塩としては、例えば、塩化錫(II)、塩化亜鉛(II)、塩化銅(II)、塩化コバルト、塩化ニッケル(II)、臭化錫(II)、臭化亜鉛(II)、臭化銅(II)、臭化コバルト、ヨウ化錫(II)、ヨウ化亜鉛(II)、ヨウ化コバルトおよびヨウ化ニッケル等の金属ハロゲン化物、硝酸銅および硝酸コバルト等の金属硝酸塩、硫酸銅および硫酸コバルト等の金属硫酸塩、並びに酢酸銅および酢酸コバルト等の金属酢酸塩等を挙げることができる。
【0101】
中でも、経済性や反応性の観点から、ハロゲン化物であることが好ましく、塩化物であることがより好ましい。
【0102】
前記金属塩の使用割合は、4−置換スルホニル−1,2−ベンゼンジチオール1モルに対して、0.3〜10モルであるのが好ましい。金属塩の使用割合が0.3モル未満の場合、収率が低くなり、10モルを超える場合、使用量に見合う効果がなく経済的でない。
【0103】
前記第4級アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウムブロマイドおよびテトラメチルアンモニウムクロライド等のテトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウムブロマイドおよびテトラエチルアンモニウムクロライド等のテトラエチルアンモニウム塩、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイドおよびテトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド等のテトラ−n−ブチルアンモニウム塩、トリメチルベンジルアンモニウムブロマイドおよびトリメチルベンジルアンモニウムクロライド等のトリメチルベンジルアンモニウム塩、並びにトリブチルベンジルアンモニウムブロマイドおよびトリブチルベンジルアンモニウムクロライド等のトリブチルベンジルアンモニウム塩等を挙げることができる。
【0104】
前記第4級ホスホニウム塩としては、例えば、テトラメチルホスホニウムブロマイドおよびテトラメチルホスホニウムクロライド等のテトラメチルホスホニウム塩、テトラエチルホスホニウムブロマイドおよびテトラエチルホスホニウムクロライド等のテトラエチルホスホニウム塩、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイドおよびテトラ−n−ブチルホスホニウムクロライド等のテトラ−n−ブチルホスホニウム塩、テトラフェニルホスホニウムブロマイドおよびテトラフェニルホスホニウムクロライド等のテトラフェニルホスホニウム塩、トリメチルベンジルホスホニウムブロマイドおよびトリメチルベンジルホスホニウムクロライド等のトリメチルベンジルホスホニウム塩、並びにトリブチルベンジルホスホニウムブロマイドおよびトリブチルベンジルホスホニウムクロライド等のトリブチルベンジルホスホニウム塩等を挙げることができる。
【0105】
これらの中でも、経済性や反応性等の観点から、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイドまたはテトラエチルアンモニウムクロライドのような第4級アンモニウム塩であることが好ましい。
【0106】
前記第4級アンモニウム塩または第4級ホスホニウム塩の使用割合は、式(2)において中心金属Mが錫原子、銅原子、コバルト原子、ニッケル原子等の場合にはn=1となるため、4−置換スルホニル−1,2−ベンゼンジチオール1モルに対して、0.3〜1.0モルであるのが好ましく、0.4〜0.9モルであるのがより好ましい。使用割合が0.3モル未満の場合、収率が低くなり、1.0モルを超える場合、使用量に見合う効果がなく経済的でない。
【0107】
また、式(2)において中心金属Mが亜鉛原子の場合にはn=2となるため、4−置換スルホニル−1,2−ベンゼンジチオール1モルに対して、0.6〜2.0モルであるのが好ましく、0.8〜1.8モルであるのがより好ましい。使用割合が0.6モル未満の場合、収率が低くなり、2.0モルを超える場合、使用量に見合う効果がなく経済的でない。
【0108】
本反応で用いる溶媒としては、メタノール、エタノール、IPA、tert−ブタノールなどの低級アルコール類が好適である。反応は室温付近で15分〜5時間攪拌することにより行うのが好ましい。
【0109】
《置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子が分散された光吸収分散液》
かくして得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体と、分散媒および分散剤を混合し、従来公知の分散機を用いて粉砕、分散することで、平均粒子径が10nm以上200nm以下の置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子を含有する光吸収分散液を得ることができる。
【0110】
前記置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子の平均粒子径は10nm以上200nm以下、より好ましくは10nm以上150nm以下、さらに好ましくは10nm以上100nm以下である。平均粒子径が200nmよりも大きいと、可視光透過率が著しく低下し、また最終的に得られるコーティング膜の機械的強度が低下するおそれがある。さらに粒子径が200nmよりも大きい場合、粒子表面の面積が小さくなるため、添加量に見合う光吸収能が得られず、所望する光吸収能を得るためには置換ベンゼンジチオール金属錯体を大量に添加する必要があり、経済性の面で不利である。また、平均粒子径が10nm以下の場合には、分子サイズに近いレベルまで微粒化され、溶解状態すなわち分子状態に近い状態で存在することとなり、耐光性が低下するおそれがある。
【0111】
置換ベンゼンジチオール金属錯体が分子状態で存在する場合、光照射により分子が直接破壊されるため劣化が大きい。一方、微粒子として存在する場合には、微粒子表面の分子が破壊されても内側から新たに分子が現れること、さらに微粒子の場合には結晶格子間の安定エネルギー分だけ光エネルギーに対して耐性を得ること等の理由により、耐光性が良好となる。
【0112】
ここで、平均粒子径とは、一般的な粒度分布計、例えば動的光散乱式の粒度分布計(例えばシスメックス社製「ゼータサイザーナノZS」)で測定されるZ−Average sizeの値を示す。
【0113】
以下、置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子を含有する光吸収分散液の製造方法についてより詳細に説明する。
【0114】
(分散機)
前記置換ベンゼンジチオール金属錯体を微粒化するにあたって、使用できる分散機としては、特に限定されるものではないが、例えば、ペイントシェーカー、ボールミル、ナノミル、アトライター、バスケットミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、スパイクミル、アジテーターミル等のメディア型分散機や、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ナノマイザー、デゾルバー、ディスパー、高速インペラー分散機等のメディアレス型分散機が挙げられる。
中でも、コスト、処理能力の面から、メディア型分散機を使用するのが好ましい。また、これらのうちの1つを単独で用いても良く、2種類以上の装置を組み合わせて使用しても良い。
【0115】
(分散メディア)
分散メディアとしては、用いる分散機の分散室内部の材質に応じて、ステンレス鋼、スチール等の鋼球ビーズや、
アルミナ、ステアタイト、ジルコニア、ジルコン、シリカ、炭化ケイ素、窒化ケイ素等のセラミックスビーズや、
ソーダガラス、ハイビー等のガラスビーズや、
WC等の超硬ビーズ等の中から適宜選択し使用することができ、そのビーズの直径は0.03〜1.5mmの範囲が好ましい。
【0116】
当該分散工程では、置換ベンゼンジチオール金属錯体と分散メディアの衝突により、置換ベンゼンジチオール金属錯体に十分な剪断力を負荷し、粉砕・分散させ、平均粒子径200nm以下まで微粒化する。ここで、置換ベンゼンジチオール金属錯体と分散メディアの衝突エネルギーにより、分散液の液温が上昇するため、公知の冷却装置により、分散液を冷却しながら分散を実施するのが好ましい。冷却温度は特に限定されるものではないが、通常−50〜120℃、好ましくは−30〜80℃、さらに好ましくは−20〜60℃である。
【0117】
(分散媒)
分散媒としては、置換ベンゼンジチオール金属錯体の溶解性が十分低く、且つ後工程において混合するマトリックス材料との相溶性が良好なものの範囲内で、適宜選択することができる。例えば、水や、
メタノール、エタノール、IPA、ブタノール等のアルコール類、エチレングリコールや1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール等のグリコール類、
アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2 − ヘプタノン、3−ヘプタノン、3 − オクタノン等のケトン類、
酢酸エチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、3−メチル−3−メトキシプロピオン酸−n−ブチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸−n−アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸−n−ブチル、酪酸エチル、酪酸イソプロピル、酪酸−n−ブチル、ピルビン酸エチル、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル等のエステル類、
ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、トルエン、キシレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族類、n−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘプタン等の炭化水素類、
2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ε−カプロラクタム等のラクタム類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル類、その他アセトニトリル、スルホラン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0118】
用いる置換ベンゼンジチオール金属錯体ならびにマトリックス材料の種類に応じて好ましい分散媒は異なるが、経済性や分散性、分散液の安定性の観点から、水、メタノール、エタノール、IPA、ブタノール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、アセトン、MEK、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、ε−カプロラクタム、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、PGMEA、ジエチレングリコールジメチルエーテルであることが好ましく、より好ましくは、水、メタノール、エタノール、IPA、エチレングリコール、トルエン、キシレン、シクロへキサン、n−ヘプタン、PGMEAである。
【0119】
また、分散媒として重合性モノマーを用いてもよい。有機系重合性モノマーとしては例えば、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、α−エチルスチレン、α−ブチルスチレン、α−ヘキシルスチレン、4−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−ブロモスチレン、4−ニトロスチレン、4−メトキシスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系モノマーや、(メタ)アクリル酸や、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−メチルブチル(メタ)アクリレート、2−エチルブチル(メタ)アクリレート、3−メチルブチル(メタ)アクリレート、1,3−ジメチルブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−エトキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エトキシブチル(メタ)アクリレート、3−エトキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチル−α−(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリレート、メチル−α−(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルや、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキシド、アリルシクロヘキセンジオキシド、3,4−エポキシ−4−メチルシクロヘキシル−2−プロピレンオキシドおよびビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)エーテル等の脂環式エポキシ化合物や、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ブロモ化ビスフェノールA、ビフェノール、レゾルシン等をグリシジルエーテル化した化合物や、トリメチレンオキシド、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3,3−ジメチルオキセタン、3,3−ジクロルメチルオキセタン、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン、3−エチル−3−[{(3−エチルオキセタニル)メトキシ}メチル]オキセタン、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス[{(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ}メチル]ベンゼン、トリ[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルフェニル]エーテル、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)オリゴジメチルシロキサン等のオキセタン化合物等が挙げられる。
なお、(メタ)アクリルとは、メタクリルおよびアクリルを示す。
【0120】
無機系重合性モノマーとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等の4官能アルコキシシランや、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、エチル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリプロポキシシラン、ヘキシルトリブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルトリブトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチルジメトキシ(エトキシ)シラン、エチルジエトキシ(メトキシ)シラン等の3官能アルコキシシランや、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ビス(2−メトキシエトキシ)ジメチルシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等の2官能アルコキシシランや、チタンアルコキシド、セリウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、スズアルコキシド、アルミニウムアルコキシド、ニッケルアルコキシド、亜鉛アルコキシド等の金属アルコキシド等が挙げられる。
ここで、無機系重合性モノマーとは、重合反応により形成されるポリマー主鎖に炭素原子を含まないものを示す。
【0121】
これらの分散媒は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。2種類以上を組み合わせた混合分散媒を使用する場合の混合比率は適宜選択することができる。
【0122】
分散媒として重合性モノマーを用いる場合において、後述の光吸収部材を作製する際に重合工程を設ける場合には、別途重合開始剤を併用してもよい。重合開始剤としては特に限定されるものではなく、使用する重合性モノマーの種類に応じて適宜選択することができる。また、その使用量は、重合性モノマーおよび重合開始剤の活性に応じて適宜選択することができる。
【0123】
使用する分散媒が、置換ベンゼンジチオール金属錯体の溶解性が十分低いものでなければ、置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒化が阻害され、安定な分散液が得られない。この理由は、詳らかではないが、おそらく以下に述べる機構によるものと考えられる。
【0124】
置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子の分散安定化は、粉砕・分散過程において生成した置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子表面に、後述の分散剤が吸着し、その吸着した分散剤同士の静電反発、立体反発により微粒子同士の再凝集が抑制され、安定な分散状態がもたらされる。しかしこの分散系に置換ベンゼンジチオール金属錯体の良溶媒が存在すると、置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子に対する「分散剤の吸着作用」と「溶媒の溶解作用」の二つの作用が競争し、溶媒の溶解作用により分散剤の吸着が一部妨げられ、結果として微粒化が阻害され、分散安定性も低下してしまう。
【0125】
前記分散媒の使用量は、所望する光吸収分散液の濃度に応じて適宜調整することができ、特に限定されるものではないが、通常置換ベンゼンジチオール金属錯体100重量部に対して40〜9900重量部、好ましくは100〜1900重量部である。40重量部より少ないと、得られる光吸収分散液の粘度が上昇しすぎたり、分散安定性が低下するおそれがある。また9900重量部よりも多いと、固形分濃度が低下するため十分な剪断力を与えることができず、平均粒子径が200nm以下になるまで粉砕、分散するためにかかる時間が長くなり効率が低下するおそれがある。
【0126】
(分散剤)
分散剤は、置換ベンゼンジチオール金属錯体を分散媒中に安定に分散させるために、必要に応じて配合される。分散剤としては、アルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、テトラアルキルアンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジニウム塩、イミダゾリウム塩等のカチオン性分散剤や、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルジアリールジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩等のアニオン性分散剤や、アルキルベタインやアミドベタイン等の両性分散剤や、ノニオン性分散剤や、フッ素系分散剤や、シリコン系分散剤や、高分子系分散剤等を使用することができる。中でも、次に例示するようなノニオン性分散剤や高分子系分散剤が特に好ましい。
【0127】
ノニオン性分散剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類や、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類や、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコールジエステル類や、ソルビタン脂肪酸エステル類が好ましく用いられる。分散性や経済性の観点から、より好ましくは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類およびポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類である。
【0128】
高分子系分散剤としては、例えばポリウレタン、ポリカルボン酸エステル、不飽和ポリアミド、ポリカルボン酸及びその塩、スチレン−アクリル酸共重合体、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの水溶性樹脂や水溶性高分子化合物、ポリエステル系、変性ポリアクリレート、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加物等が好ましく用いられる。
【0129】
これらの分散剤は単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0130】
分散剤による分散は主に、微粒子表面に吸着した分散剤が微粒子に電気的な反発力を与えることによってもたらされる「静電反発」と、微粒子表面に吸着した分散剤同士の「立体反発」の2種類の作用により、分散安定化を図るものである。一般的に静電反発による分散効果は、水系での分散には有利であるが、誘電率の低い有機溶剤系においては不利とされている。また、立体反発による分散効果は、微粒子表面と分散剤との相互作用が不十分である場合には、分散剤が微粒子表面から容易に外れてしまい、安定化効果が損なわれ再凝集してしまう。本発明において、置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子は、前記分散剤との相互作用が非常に強固であるため、用いる分散媒の種類によらず、すなわち、水系、有機溶剤系いずれにおいても、良好な分散安定性を実現することができる。
【0131】
前記分散剤の使用量は、通常置換ベンゼンジチオール金属錯体100重量部に対して5〜100重量部、好ましくは10〜60重量部である。5重量部未満の場合、分散効率が低下する傾向が見られ、100重量部を超えて添加した場合には添加量に見合う分散効果が得られず、経済的でない。
【0132】
以上の方法で置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子分散液を得た後に、所望する濃度に希釈してもよい。
【0133】
希釈溶媒は特に限定されず、適宜選択し使用することができるが、希釈時における置換ベンゼンジチオール金属錯体微粒子の再凝集を抑制するために、分散工程で用いた分散媒を使用することが好ましい。分散工程において、分散媒を2種類以上組み合わせて用いた場合には、同一の組成比率の混合溶媒を用いることが好ましい。
【0134】
希釈方法としては、前記置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子分散液を攪拌しながら、希釈溶媒を添加する方法が好ましい。希釈溶媒中に前記置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子分散液を添加すると、置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子が再凝集するおそれがある。
【0135】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて従来公知の光吸収剤を置換ベンゼンジチオール金属錯体と混合し、併用することも可能である。
【0136】
併用することのできる光吸収剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、有機系光吸収剤としては、フタロシアニン系、キナクリドン系、キナクリドンキノン系、ベンズイミダゾロン系、キノン系、アントアントロン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、アンサンスロン系、インダンスロン系、フラバンスロン系、ペリノン系、ペリレン系、イソインドリン系、イソインドリノン系、アゾ系、シアニン系、アザシアニン系、スクアリリウム系、トリアリールメタン系等の有機色素や、ベンゼンジチオール金属錯体系、ジチオレン金属錯体系、アゾ金属系、金属フタロシアニン系、金属ナフタロシアニン系、ポルフィリン金属錯体系等の金属錯体系色素や、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、サルチレート系、サリチル酸フェニルエステル系、ヒンダードアミン系、ヒンダードフェノール系、ベンゾエート系、リン系、アミド系、アミン系、硫黄系等の有機系紫外線吸収剤等が挙げられる。経済性や光吸収性能の観点から、好ましくは、フタロシアニン系、キノン系、ペリレン系、アゾ系、シアニン系、アザシアニン系、スクアリリウム系、トリアリールメタン系等の有機色素や、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ヒンダードアミン系、ヒンダードフェノール系、ベンゾエート系、リン系、アミン系、硫黄系等の有機系紫外線吸収剤である。
また、無機系光吸収剤としては、六ホウ化物や、酸化タングステン、複合酸化タングステン、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化錫、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化スカンジウム、酸化イットリウム、酸化カルシウム、酸化ガリウム、酸化リチウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化インジウム、酸化タリウム、酸化ニッケル、酸化ネオジム、酸化コバルト、酸化クロム、酸化ランタン、酸化ニオブ、酸化ハフニウム、酸化プラセオジウム、酸化サマリウム、酸化ユウロピウム、酸化ガドリニウム、酸化テルビニウム、酸化ジスプロシウム、酸化ホルミニウム、酸化エルビウム、酸化ツリウム、酸化イッテルビウム、酸化ルテチウム等の金属酸化物や、ITO(インジウム−錫複合酸化物)、ATO(アンチモン−錫複合酸化物)等の複合金属酸化物や、窒化チタン、窒化クロム酸等の金属窒化物等が挙げられる。
【0137】
《光吸収分散液とマトリックス材料とを含む光吸収部材用組成物》
かくして得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子を含有する光吸収分散液と、有機系バインダーおよび/または無機系バインダー等のマトリックス材料を混合することで、光吸収部材用組成物を得ることができる。ここで、無機系バインダーとはポリマー主鎖に炭素原子を含まないものを示す。
【0138】
ここで用いるマトリックス材料は、ペレット等の固体状態のものであってもよいし、任意の溶媒に溶解した溶液状態のもの(例えば市販のバインダー溶液)であってもよい。溶液の場合、その溶媒は前記置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子分散液との相溶性が良好であり、且つ置換ベンゼンジチオール金属錯体の溶解性が十分低いものであれば特に制限されない。
すなわち、前記の分散媒として例示したものの中から適宜選択し、使用することができる。
【0139】
前記置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子分散液とマトリックス材料とを混合する際には、前記置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子分散液を公知の方法で攪拌しながら、マトリックス材料を添加する方法が好ましい。マトリックス材料に前記置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子分散液を添加すると、置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子が再凝集するおそれがある。
【0140】
用いるマトリックス材料が固体の場合には、あらかじめマトリックス材料(例えば、有機系バインダー)を適当な溶媒に溶解させておき、これを置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子分散液に添加、混合してもよいし、置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子分散液にマトリックス材料を加え、攪拌して、当該微粒子分散液にマトリックス材料を溶解させてもよい。
なお、光吸収分散液の分散媒として、重合性モノマーを用いる場合、別途、重合開始剤を添加し、重合工程を設けてもよい。該重合工程は、後述の光吸収部材を作製する各工程のうち、乾燥工程の代わりに、あるいは乾燥工程の後に設けることが好ましい。重合工程とは、加熱処理やUV照射等の硬化処理を施すことを示す。光吸収分散液の分散媒として、重合性モノマーを用いる場合、当該重合物が、マトリックスとなるため、別途、マトリックス材料を添加することなく、光吸収部材用組成物としてもよい。なお、必要に応じて、別途、マトリックス材料を添加してもよい。
【0141】
(マトリックス材料)
マトリックス材料としては、有機系または無機系バインダーのいずれであっても使用することができる。
【0142】
有機系バインダーとしては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等のポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂や、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル共重合体や、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)等のポリスチレン系樹脂や、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル系共重合体等のスチレン系共重合体や、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂や、ポリオキシメチレン、ポリエチレンオキシド等のポリエーテル系樹脂や、シリコーン系樹脂や、ポリスルホン系樹脂や、ポリアミド系樹脂や、ポリイミド系樹脂や、ポリウレタン系樹脂や、ポリカーボネート系樹脂や、エポキシ系樹脂や、フェノール系樹脂や、メラミン樹脂や、ユリア樹脂や、ポリビニル系樹脂等の熱可塑性もしくは熱硬化性合成樹脂や、エチレン−プロピレン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等の合成ゴムもしくは天然ゴム等が挙げられる。
なお、(メタ)アクリルとは、メタクリルおよびアクリルを示す。
【0143】
基材への密着性や透明性の観点から、好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン系共重合体、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリビニル系樹脂等の熱可塑性もしくは熱硬化性合成樹脂であり、より好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン系共重合体、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリビニル系樹脂である。
【0144】
無機系バインダーとしては、ポリシロキサン系バインダーを好適に用いることができる。この場合、ポリシロキサン系バインダー前駆体としてシリコンアルコキシドの加水分解・重縮合反応により得られるゾル溶液(シロキサンオリゴマー溶液)を好適に用いることができる。
【0145】
シリコンアルコキシドのゾル溶液は、通常、有機溶媒中で酸触媒存在下、シリコンアルコキシドに水を添加し、加水分解・重縮合させることにより、調製することができるが、市販のゾル溶液を使用しても良い。以下、シリコンアルコキシドのゾル溶液の調整方法を具体的に説明する。
【0146】
(シリコンアルコキシド)
シリコンアルコキシドとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等の4官能アルコキシシランや、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、エチル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリプロポキシシラン、ヘキシルトリブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルトリブトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチルジメトキシ(エトキシ)シラン、エチルジエトキシ(メトキシ)シラン等の3官能アルコキシシランや、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ビス(2−メトキシエトキシ)ジメチルシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等の2官能アルコキシシランが挙げられる。これらの中でも、得られる膜の状態や強度、経済性の観点から、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランであることが好ましい。
【0147】
これらのシリコンアルコキシドは、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。2種類以上を組み合わせて使用する場合の混合比率は所望に応じて適宜選択することができる。
【0148】
また、最終的に得られるコーティング膜に所望の物性を付与するために、必要に応じて、チタンアルコキシド、セリウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、スズアルコキシド、アルミニウムアルコキシド、ニッケルアルコキシド、亜鉛アルコキシド等の金属アルコキシドを添加・併用してもよい。
【0149】
例えば、反射率を高くしたい場合にはチタンアルコキシドや亜鉛アルコキシドを、また機械的強度、耐アルカリ性を高くしたい場合にはジルコニウムアルコキシドを、耐候性を向上させたい場合にはニッケルアルコキシドを添加・併用することが効果的である。
【0150】
(酸触媒)
酸触媒としては、特に限定されないが、例えば硝酸、塩酸、硫酸等の無機酸や、蟻酸、酢酸、蓚酸等の有機酸が挙げられる。加水分解・重縮合反応終了後に酸が残存すると、縮合安定性が悪化するため、低沸点で揮発性が高く、PKaの小さな蟻酸を用いることが好ましい。
酸触媒の添加量としては、十分な触媒作用を発揮する限り、特に限定されるものではないが、通常シリコンアルコキシド1モルに対して0.01モル以上、より好ましくは0.3モル以上を配合することが好ましい。0.01モル未満では十分な触媒作用が得られないおそれがあり、また過剰に添加した場合には、最終的に得られるシリコンアルコキシドのゾル溶液が、残存する酸により経時的に劣化するおそれがある。よってシリコンアルコキシド1モルに対して1モル以下の割合で配合することが好ましい。
【0151】
(水)
上記シリコンアルコキシドの加水分解を引き起こし得る限り、特に限定されないが、シリコンアルコキシド1モルに対し、2〜6モルの割合で水を添加することが好ましい。2モル未満では十分に加水分解が進行しないおそれがあり、6モルを超えると加水分解が速く進行しすぎてしまい、続く重縮合反応の進行を妨げることに加え、反応後に除去する水の量が多くなり効率的でない。
【0152】
(反応溶媒)
シリコンアルコキシド、水、酸触媒に加えて反応溶媒を添加することにより、加水分解速度を適度に低め、確実に加水分解・重縮合を進行させることができる。さらに、最終的に得られるシリコンアルコキシドのゾル溶液(シロキサンオリゴマー溶液)の粘度をハンドリングしやすいレベルにまで調整するための希釈剤としての役割も兼ねる。
【0153】
反応溶媒としては、前記シリコンアルコキシドが溶解するものであれば特に限定されることなく、適宜選択し使用することができる。例えば、メタノール、エタノール、IPA、ブタノール等のアルコール類、エチレングリコールや1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール等のグリコール類、アセトン、MEK、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、3−オクタノン等のケトン類、酢酸エチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、3−メチル−3−メトキシプロピオン酸−n−ブチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸−n−アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸−n−ブチル、酪酸エチル、酪酸イソプロピル、酪酸−n−ブチル、ピルビン酸エチル、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル等のエステル類、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、トルエン、キシレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族類、n−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘプタン等の炭化水素類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ε−カプロラクタム等のラクタム類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、PGMEA、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル類、その他アセトニトリル、スルホラン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
反応性や経済性の観点から、好ましくは、メタノール、エタノール、IPA、ブタノール等のアルコール類、エチレングリコールや1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール等のグリコール類、酢酸エチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、3−メチル−3−メトキシプロピオン酸−n−ブチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸−n−アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸−n−ブチル、酪酸エチル、酪酸イソプロピル、酪酸−n−ブチル、ピルビン酸エチル、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル等のエステル類、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、PGMEA、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル類等である。
【0154】
前記反応溶媒の使用量は、シリコンアルコキシド100重量部に対し、50〜1000重量部、好ましくは100〜500重量部の範囲とすることが望ましい。50重量部未満では、加水分解・重縮合反応を適度な反応速度で進行させることが困難になることがあり、1000重量部を超えると、加水分解・重縮合反応の速度が低下するため効率的でないことに加えて、後述の減圧・留去工程に長時間を必要とするおそれがある。
【0155】
まず、1種類または2種類以上のシリコンアルコキシドを、酸触媒、水及び溶媒と混合する。この溶液を0〜150℃、好ましくは50〜100℃ の温度に維持することにより、加水分解・重縮合反応を進行させる。0℃未満では、加水分解・重縮合反応が進行しにくい場合がある。また150℃を超えると加水分解・重縮合反応が急速に進行するため、未反応のアルコキシ基が残存したり、ゲル化や着色を招くおそれがある。加水分解・重縮合反応の時間は、温度条件にもよるが、通常1〜24時間、より好ましくは2〜8時間である。1時間未満では、十分に加水分解・重縮合反応が進行しないおそれがあり、24時間を超えてもそれ以上反応が進まないことから経済的でない。
【0156】
加水分解・重縮合反応により副生するアルコールと水を系外に除去するために、反応終了後、あるいは反応中に、反応液を減圧留去することが好ましい。減圧留去しながら反応を進行させれば、重縮合反応の反応速度を向上させる効果も見込めるためより好ましい。この工程において、前記酸触媒として蟻酸等の低沸点で揮発性の高い触媒を用いれば、溶媒とともに酸触媒も系外に除去でき、反応終了後のゾル溶液の安定性を確保することができる。
【0157】
このようにして加水分解・重縮合反応の進行により、無機系バインダー:ポリシロキサン系バインダー前駆体としての、シリコンアルコキシドのゾル溶液(シロキサンオリゴマー溶液)を得ることができる。
【0158】
これらのマトリックス材料は単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。組み合わせて使用する場合、有機系バインダーから選ばれる異なる2種類以上を組み合わせてもよいし、無機系バインダーから選ばれる異なる2種類以上を組み合わせてもよいし、有機系バインダーと無機系バインダーのそれぞれから選ばれる異なる2種類以上を組み合わせてもよい。
マトリックス材料の使用量は、置換ベンゼンジチオール金属錯体100重量部に対して、固形分(あるいは加熱残分)として、好ましくは200〜1000重量部、より好ましくは250〜800重量部、さらに好ましくは300〜700重量部である。
【0159】
また、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、硬化剤、硬化触媒、架橋剤、カップリング剤、レベリング剤、潤滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、難燃剤、フィラー、着色剤、光触媒材料、防錆剤、撥水剤、導電性材料、アンチブロッキング材、軟化剤、離型剤、蛍光増白剤等を適宜添加してもよい。
【0160】
《光吸収部材用組成物を用いて作製される光吸収部材》
かくして得られた光吸収部材用組成物を用いて光吸収部材を作製することができる。本発明における光吸収部材は主に以下の2種類の形態を示す。
【0161】
(I)基材上に置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子を分散させたマトリックス材料の膜(以下、マトリックス膜という)を有する積層体としての光吸収部材
前記で得られた光吸収部材用組成物を基材に塗布し、乾燥および/または硬化することにより、基材上に置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子を分散させたマトリックス膜を有する積層体としての光吸収部材を作製することができる。
【0162】
前記光吸収部材用組成物を基材に塗布する方法としては、特に限定されないが、例えばディップコート法、スピンコート法、フローコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、バーコート法、スプレー法、リバースコート法等の公知の塗布方法が挙げられる。
【0163】
基材は、所望によりフィルムでもボードでも良く、形状は限定されない。材質についても特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜選択し、使用することができる。例えば、ガラス、金属板、セラミックス等の無機系基材や、ポリ(シクロ)オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂等の有機系基材が挙げられる。中でも、透明性の観点から、ガラス、ポリ(シクロ)オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂等が好ましい。
【0164】
また、層間剥離、コートムラを防ぐ目的で、塗布前に基材表面を洗浄してもよい。洗浄方法としては特に限定されず、基材の種類に応じて適宜選択し、実施することができる。通常、超音波洗浄、UV洗浄、セリ粉洗浄、酸洗浄、アルカリ洗浄、界面活性剤洗浄、有機溶剤洗浄等を単独で、または組み合わせて実施することができる。洗浄終了後は、洗浄剤が残留しないように濯ぎ及び乾燥を行う。
【0165】
塗布により形成されるマトリックス材料のコーティング被膜の膜厚は特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜調整することができるが、通常0.1〜500μm、好ましくは0.5〜100μm、さらに好ましくは1〜100μmである。0.1μm未満では、十分な光吸収能が得られないおそれがあり、500μmを超えると、乾燥時に分散媒やバインダーの溶媒等が膜内部から蒸発し、膜表面に凹凸が生じたり、クラックを生じる可能性がある。
【0166】
乾燥温度、乾燥時間は、用いる分散媒やバインダーの溶媒等の種類によって適宜設定することができる。
乾燥後、マトリックス膜の機械的強度等の物性を目的に見合うようにコントロールするため、養生工程や焼成工程を設けてもよい。
【0167】
例えば、マトリックス材料としてポリシロキサン系バインダーを用いた場合、前記乾燥工程の後に100〜400℃、好ましくは130〜250℃での焼成工程を設けることによって膜自体の機械的強度を向上させることができる。
すなわち、前記乾燥工程において、ゾル(シロキサンオリゴマー)同士が重縮合反応を起こすことでシロキサンネットワークを拡大し、ゲル体の骨格構造を形成する。このゲル体を焼成することでさらにシロキサンネットワークが拡大する。このシロキサンネットワーク(ポリシロキサンの分子量)の大きさにより、得られるマトリックス膜の機械的強度をコントロールすることができる。
【0168】
100℃より低温では、機械的強度が十分向上しないおそれがあり、400℃より高温では、マトリックス膜中に分散された置換ベンゼンジチオール金属錯体が熱分解するおそれがある。
【0169】
焼成時間は、所望のマトリックス膜の物性に応じて適宜調整可能であるが、通常、10分間〜5時間、好ましくは30分間〜3時間である。10分間より短いと機械的強度が十分向上しないおそれがあり、5時間より長いと、時間に見合う効果が得られず経済的でない。
【0170】
また、重合処理を設ける場合、加熱処理やUV照射等の処理を設けることができる。加熱条件やUV照射条件は、使用する重合開始剤や重合性モノマーの種類に応じて適宜選択することができる。
【0171】
なお、後述の剥離性基材を用い、この上にコーティングを施した後、所望の別基材に該コーティング層を転写して得られた積層体も(I)の形態に含まれる。別基材としては前記の基材が例示される。
具体的な方法としては、例えば、光吸収部材用組成物を剥離性基材(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム)上に塗布し乾燥させた後、ラミネーター等を用いて別基材(例えば、ガラス基材)と貼り合わせ、その後剥離性基材を剥離することで、別基材上に置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子を分散させたマトリックス膜を有する積層体としての光吸収部材を作製することができる。この場合にも、必要に応じて前記重合処理を設けてもよい。
例えば、所望の基材上に異なる成分からなるマトリックス膜を多層化させた積層体を作製する場合に、このような転写法を用いることができる。すなわち、前記のように基材上に直接光吸収部材用組成物を塗布し、コーティング層を形成する方法で多層膜を形成しようとする場合、例えば、n+1層目(nは自然数を表す)を形成する際に使用する光吸収部材用組成物は、n層目の構成成分が溶解したり膨潤したりしないものでなければならず、n+1層目を構成する光吸収部材用組成物の構成成分が制限されてしまうが、かかる転写法を用いることにより、これらの制限を回避することができる。
【0172】
(II)置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子がマトリックス膜中に分散した薄膜形態の光吸収部材
前記で得られた光吸収部材用組成物を、剥離性基材上に塗布し、乾燥または硬化した後に、剥離性基材から該コーティング膜を剥離することによって得られる、置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子がマトリックス膜中に分散した薄膜形態の光吸収部材を作製することができる。
【0173】
光吸収部材用組成物を剥離性基材に塗布する方法としては、特に限定されず、例えばディップコート法、スピンコート法、フローコート法、ロールコート法、グラビアコート法。フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、バーコート法、スプレー法、リバースコート法等の公知の塗布方法が挙げられる。
【0174】
剥離性基材は、所望によりフィルムでもボードでも良く、形状は限定されない。剥離性基材は、基材を構成する素材が剥離性を有するものであれば基材単独でもよいし、基材を構成する素材が剥離性を有しない場合、または剥離性が乏しい場合には基材に剥離性層を積層したものであってもよい。前者の基材を構成する素材が剥離性を有するものである場合には、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂等を用いることができる。
後者の、基材に剥離性層を積層したものである場合、基材としては前記(I)で例示したような基材を用いることがきる。これら基材の表面に基材とは接着性を有し、光吸収部材用組成物から作製される置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子を分散させた薄膜層に対しては剥離性を有する剥離性層を積層したものを使用することができる。
【0175】
剥離性層は、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、剥離性物質をバインダー樹脂中に溶解または分散させたもの等で構成される。
剥離性物質としては、特に制限されるものではなく、例えば長鎖アルキル化合物、カルナバワックスやモンタンワックスや酸化ポリエチレンや非酸化ポリエチレン等の合成ワックス等が挙げられる。
これらから選択される少なくとも1種以上を溶媒(分散媒)中に溶解、分散、希釈し、得られた組成物を基材上に公知の方法で塗布または印刷した後、乾燥または硬化することによって基材上に剥離性層を形成することができる。剥離性層の膜厚は、0.5μm〜10μm程度であることが好ましい。
【0176】
光吸収部材用組成物を剥離性基材上に塗布することによって形成される置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子がマトリックス膜中に分散した薄膜の膜厚は特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜調整することができるが、通常0.1〜500μm、好ましくは0.5〜100μm、さらに好ましくは1〜100μmである。0.1μm未満では、十分な光吸収能が得られないおそれがあり、500μmを超えると、乾燥時に分散媒やバインダーの溶媒等が膜内部から蒸発し、膜表面に凹凸が生じたり、クラックを生じる可能性がある。
【0177】
乾燥温度、乾燥時間は、用いる分散媒やバインダーの溶媒等の種類によって適宜設定することができる。
乾燥後、置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子を分散させた薄膜の機械的強度等の物性を目的に見合うようにコントロールするため、養生工程や焼成工程を設けてもよい。
【0178】
例えば、マトリックス材料としてポリシロキサン系バインダーを用いた場合、前記乾燥工程の後に100〜400℃、好ましくは130〜250℃での焼成工程を設けることによって膜自体の機械的強度を向上させることができる。
すなわち、前記乾燥工程において、ゾル(シロキサンオリゴマー)同士が重縮合反応を起こすことでシロキサンネットワークを拡大し、ゲル体の骨格構造を形成する。このゲル体を焼成することでさらにシロキサンネットワークが拡大する。このシロキサンネットワーク(ポリシロキサンの分子量)の大きさにより、得られる薄膜の機械的強度をコントロールすることができる。
【0179】
100℃より低温では、機械的強度が十分向上しないおそれがあり、400℃より高温では、薄膜中に分散された置換ベンゼンジチオール金属錯体が熱分解するおそれがある。
【0180】
焼成時間は、所望の薄膜の物性に応じて適宜調整可能であるが、通常、10分間〜5時間、好ましくは30分間〜3時間である。10分間より短いと機械的強度が十分向上しないおそれがあり、5時間より長いと、時間に見合う効果が得られず経済的でない。
【0181】
また、重合処理を設ける場合、加熱処理やUV照射等の処理を設けることができる。加熱条件やUV照射条件は、使用する重合開始剤や重合性モノマーの種類に応じて適宜選択することができる。
【実施例】
【0182】
以下に実施例および比較例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0183】
製造例1
1,2−エチレンジクロライド90g、クロロスルホン酸71.5g(0.61モル)および無水硫酸ナトリウム4.3g(0.03モル)を加えて窒素ガスを緩やかに通じながら、1,2−ジクロロベンゼン53.0g(0.36モル)を滴下し、75℃で2時間反応させた。次に得られた3,4−ジクロロベンゼンスルホン酸を含む反応生成液を50℃に冷却し、塩化チオニル47.6g(0.40モル)を滴下して50〜55℃で2時間反応させた。この反応生成液を室温まで冷却した後に水360g中に滴下し、0〜10℃で0.5時間攪拌した。得られた反応生成液を分液し、水層を除去して得られた有機層210gを、モルホリン66.2g(0.76モル)および1,2−エチレンジクロライド240gの混合溶液中に滴下して室温で1時間反応させた。これに水185gを更に添加し、分液して水層を除去した後に溶媒を減圧留去して4−モルホリノスルホニル−1,2−ジクロロベンゼン101.3gを得た。収率は95%であった。
【0184】
得られた4−モルホリノスルホニル−1,2−ジクロロベンゼン59.2g(0.2モル)に、DMF183gおよび70重量%水硫化ナトリウム水溶液33.6g(0.42モル)を加え、65℃で3時間反応させた。この溶液に、鉄粉5.9g(0.11モル)および硫黄末6.7g(0.21モル)を添加し、90〜95℃で6時間反応させた。
【0185】
得られた反応液に室温でメタノール1080gを加えた後、28%ナトリウムメトキシド/メタノール溶液77.2g(ナトリウムメトキシドとして0.21モル)を添加して1時間攪拌し、塩化銅(II)2水和物17.0g(0.1モル)を添加して、さらに室温で3時間反応させた。次いで、この反応液にテトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド32.2g(0.1モル)を添加し、室温で空気を吹き込みながら2時間反応させた。
かくして得られた反応液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、置換ベンゼンジチオール金属錯体として、緑色のテトラ−n−ブチルアンモニウム=ビス(4−モルホリノスルホニル−1,2−ベンゼンジチオラート−S,S’−)銅(C1:下記の表1を参照)78.7gを得た。得られたテトラ−n−ブチルアンモニウム=ビス(4−モルホリノスルホニル−1,2−ベンゼンジチオラート−S,S’−)銅(C1)の収率は、4−モルホリノスルホニル−1,2−ジクロロベンゼンに対して89%であった。
【0186】
製造例2
製造例1において、モルホリン66.2g(0.76モル)に代えて2,6−ジメチルモルホリン87.5g(0.76モル)を用いた以外は製造例1と同様にして、置換ベンゼンジチオール金属錯体として、緑色のテトラ−n−ブチルアンモニウム=ビス[4−(2,6−ジメチルモルホリノ)スルホニル−1,2−ベンゼンジチオラート−S,S’−]銅(C2:下記の表1を参照)81.9gを得た。得られたテトラ−n−ブチルアンモニウム=ビス[4−(2,6−ジメチルモルホリノ)スルホニル−1,2−ベンゼンジチオラート−S,S’−]銅(C2)の収率は、4−(2,6−ジメチルモルホリノ)スルホニル−1,2−ジクロロベンゼンに対して87%であった。
【0187】
製造例3
製造例1において、モルホリン66.2g(0.76モル)に代えてチオモルホリン78.4g(0.76モル)を、塩化銅(II)2水和物17.0g(0.1モル)に代えて塩化ニッケル(II)6水和物23.8g(0.1モル)を用いた以外は製造例1と同様にして、置換ベンゼンジチオール金属錯体として、緑色のテトラ−n−ブチルアンモニウム=ビス(4−チオモルホリノスルホニル−1,2−ベンゼンジチオラート−S,S’−)ニッケル(C3:下記の表1を参照)77.5gを得た。得られたテトラ−n−ブチルアンモニウム=ビス(4−チオモルホリノスルホニル−1,2−ベンゼンジチオラート−S,S’−)ニッケル(C3)の収率は、4−チオモルホリノスルホニル−1,2−ジクロロベンゼンに対して85%であった。
【0188】
製造例4
製造例1において、モルホリン66.2g(0.76モル)に代えてピペリジン64.7g(0.76モル)を、塩化銅(II)2水和物17.0g(0.1モル)に代えて塩化錫(II)無水物19.0g(0.1モル)を用いた以外は製造例1と同様にして、置換ベンゼンジチオール金属錯体として、黄色のテトラ−n−ブチルアンモニウム=ビス(4−ピペリジノスルホニル−1,2−ベンゼンジチオラート−S,S’−)錫(C4:下記の表1を参照)67.4gを得た。得られたテトラ−n−ブチルアンモニウム=ビス(4−ピペリジノスルホニル−1,2−ベンゼンジチオラート−S,S’−)錫(C4)の収率は、4−ピペリジノスルホニル−1,2−ジクロロベンゼンに対して72%であった。
【0189】
製造例5
製造例1において、モルホリン66.2g(0.76モル)に代えてジイソブチルアミン98.2g(0.76モル)を、塩化銅(II)2水和物17.0g(0.1モル)に代えて塩化亜鉛(II)13.6g(0.1モル)を用い、さらにテトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイドの使用量を32.2g(0.1モル)から64.4g(0.2モル)に変えた以外は製造例1と同様にして、置換ベンゼンジチオール金属錯体として、微黄色のビス(テトラ−n−ブチルアンモニウム)=ビス{4−(N,N−ジイソブチルアミノスルホニル)−1,2−ベンゼンジチオラート−S,S’−}亜鉛(C5:下記の表1を参照)91.0gを得た。得られたビス(テトラ−n−ブチルアンモニウム)=ビス{4−(N,N−ジイソブチルアミノスルホニル)−1,2−ベンゼンジチオラート−S,S’−}亜鉛(C5)の収率は、4−(N,N−ジイソブチルアミノスルホニル)−1,2−ジクロロベンゼンに対して75%であった。
【0190】
製造例6
クロロホルム340gにジ(4−tert−ブチルフェニル)ジスルフィド50g、ヨウ素8.5g、一塩化硫黄45gを加え、室温で24時間反応させ、冷却しながら亜鉛64gを加え、更に濃塩酸240gを加えて60℃で1時間反応させた。反応生成液をろ過し、クロロホルムで抽出を行い、クロロホルムを留去し、減圧蒸留して沸点125℃(4mmHg)、4−tert−ブチル−1,2−ベンゼンジチオール41gを得た。純度は99.3%であり、収率は68%であった。
得られた4−tert−ブチル−1,2−ベンゼンジチオール39.7g(0.2モル)をメタノール400gに溶解させ、28%ナトリウムメチラート/メタノール溶液85.6g(ナトリウムメチラートとして0.44モル)を加え攪拌し、ここに塩化錫(II)無水物19.0g(0.1モル)を添加した。続いてテトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド32.2g(0.1モル)を水400gに溶解させた液を加えて、空気雰囲気下、室温で1時間攪拌した。反応液をろ過した後に水洗浄を行い、乾燥し、置換ベンゼンジチオール金属錯体として、黄色のテトラ−n−ブチルアンモニウム=ビス(4−tert−ブチル−1,2−ベンゼンジチオラート−S,S’−)錫(C6:下記の表1を参照)56.5gを得た。得られたテトラ−n−ブチルアンモニウム=ビス(4−tert−ブチル−1,2−ベンゼンジチオラート−S,S’−)錫(C6)の収率は、4−tert−ブチル−1,2−ベンゼンジチオールに対して75%であった。
【0191】
製造例7
製造例6において、塩化錫(II)無水物19.0g(0.1モル)に代えて塩化亜鉛(II)13.6g(0.1モル)を用い、さらにテトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイドの使用量を32.2g(0.1モル)から64.4g(0.2モル)に変えた以外は製造例6と同様にして、置換ベンゼンジチオール金属錯体として、微黄色のビス(テトラ−n−ブチルアンモニウム)=ビス(4−tert−ブチル−1,2−ベンゼンジチオラート−S,S’−)亜鉛(C7:下記の表1を参照)73.6gを得た。得られたビス(テトラ−n−ブチルアンモニウム)=ビス(4−tert−ブチル−1,2−ベンゼンジチオラート−S,S’−)亜鉛(C7)の収率は、4−tert−ブチル−1,2−ベンゼンジチオールに対して78%であった。
【0192】
得られた各置換ベンゼンジチオール金属錯体について、式(1)におけるR、Rに相当する官能基およびn、式(2)におけるR、Rに相当する基およびnを表1に示す。
【0193】
【表1】

【0194】
(光吸収分散液)
実施例1
製造例1で得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体(C1)8.3gと、分散媒としてエタノール30.0g、水30.0g、さらに分散剤としてポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル2.6gを混合し、分散メディアとして0.1mmφのジルコニアビーズを用い、分散機としてDYNO−MILL(シンマルエンタープライゼス製、型番:KDL)を用いてジャケット温を10℃に保温しながら周速15m/sで1時間分散処理を行い、分散液Aを得た。
【0195】
実施例2
製造例2で得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体(C2)8.3gと、分散媒としてエタノール30.0g、水30.0g、さらに分散剤としてポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル2.6gを混合し、分散メディアとして0.1mmφのジルコニアビーズを用い、分散機としてDYNO−MILL(シンマルエンタープライゼス製、型番:KDL)を用いてジャケット温を10℃に保温しながら周速15m/sで1時間分散処理を行い、分散液Bを得た。
【0196】
実施例3
製造例3で得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体(C3)8.3gと、分散媒としてエタノール30.0g、水30.0g、さらに分散剤としてポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル2.7gを混合し、分散メディアとして0.1mmφのジルコニアビーズを用い、分散機としてDYNO−MILL(シンマルエンタープライゼス製、型番:KDL)を用いてジャケット温を10℃に保温しながら周速15m/sで1時間分散処理を行い、分散液Cを得た。
【0197】
実施例4
製造例4で得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体(C4)8.3gと、分散媒としてエタノール30.0g、水30.0g、さらに分散剤としてポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル2.7gを混合し、分散メディアとして0.1mmφのジルコニアビーズを用い、分散機としてDYNO−MILL(シンマルエンタープライゼス製、型番:KDL)を用いてジャケット温を10℃に保温しながら周速15m/sで1時間分散処理を行い、分散液Dを得た。
【0198】
実施例5
製造例5で得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体(C5)8.3gと、分散媒としてエタノール30.0g、水30.0g、さらに分散剤としてポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル2.8gを混合し、分散メディアとして0.1mmφのジルコニアビーズを用い、分散機としてDYNO−MILL(シンマルエンタープライゼス製、型番:KDL)を用いてジャケット温を10℃に保温しながら周速15m/sで1時間分散処理を行い、分散液Eを得た。
【0199】
実施例6
製造例6で得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体(C6)8.3gと、分散媒としてエタノール30.0g、水30.0g、さらに分散剤としてポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル2.6gを混合し、分散メディアとして0.1mmφのジルコニアビーズを用い、分散機としてDYNO−MILL(シンマルエンタープライゼス製、型番:KDL)を用いてジャケット温を10℃に保温しながら周速15m/sで1時間分散処理を行い、分散液Fを得た。
【0200】
実施例7
製造例7で得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体(C7)8.3gと、分散媒としてエタノール30.0g、水30.0g、さらに分散剤としてポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル2.6gを混合し、分散メディアとして0.1mmφのジルコニアビーズを用い、分散機としてDYNO−MILL(シンマルエンタープライゼス製、型番:KDL)を用いてジャケット温を10℃に保温しながら周速15m/sで1時間分散処理を行い、分散液Gを得た。
【0201】
実施例8
製造例1で得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体(C1)8.3gと、分散媒としてトルエン52.0g、さらに分散剤としてポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル3.1gを混合し、分散メディアとして0.1mmφのジルコニアビーズを用い、分散機としてDYNO−MILL(シンマルエンタープライゼス製、型番:KDL)を用いてジャケット温を10℃に保温しながら周速15m/sで1時間分散処理を行い、分散液Hを得た。
【0202】
実施例9
製造例2で得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体(C2)8.3gと、分散媒としてトルエン52.0g、さらに分散剤としてポリオキシエチレン(20)セチルエーテル3.4gを混合し、分散メディアとして0.1mmφのジルコニアビーズを用い、分散機としてDYNO−MILL(シンマルエンタープライゼス製、型番:KDL)を用いてジャケット温を10℃に保温しながら周速15m/sで1時間分散処理を行い、分散液Iを得た。
【0203】
実施例10
製造例3で得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体(C3)8.3gと、分散媒としてトルエン52.8g、さらに分散剤としてポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル2.8gを混合し、分散メディアとして0.1mmφのジルコニアビーズを用い、分散機としてDYNO−MILL(シンマルエンタープライゼス製、型番:KDL)を用いてジャケット温を10℃に保温しながら周速15m/sで1時間分散処理を行い、分散液Jを得た。
【0204】
実施例11
製造例4で得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体(C4)8.3gと、分散媒としてトルエン52.5g、さらに分散剤としてポリオキシエチレン(20)セチルエーテル2.9gを混合し、分散メディアとして0.1mmφのジルコニアビーズを用い、分散機としてDYNO−MILL(シンマルエンタープライゼス製、型番:KDL)を用いてジャケット温を10℃に保温しながら周速15m/sで1時間分散処理を行い、分散液Kを得た。
【0205】
実施例12
製造例5で得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体(C5)8.3gと、分散媒としてトルエン51.5g、さらに分散剤としてポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル3.2gを混合し、分散メディアとして0.1mmφのジルコニアビーズを用い、分散機としてDYNO−MILL(シンマルエンタープライゼス製、型番:KDL)を用いてジャケット温を10℃に保温しながら周速15m/sで1時間分散処理を行い、分散液Lを得た。
【0206】
実施例13
製造例6で得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体(C6)8.3gと、分散媒としてトルエン52.0g、さらに分散剤としてポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル3.1gを混合し、分散メディアとして0.1mmφのジルコニアビーズを用い、分散機としてDYNO−MILL(シンマルエンタープライゼス製、型番:KDL)を用いてジャケット温を10℃に保温しながら周速15m/sで1時間分散処理を行い、分散液Mを得た。
【0207】
実施例14
製造例7で得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体(C7)8.3gと、分散媒としてトルエン52.5g、さらに分散剤としてポリオキシエチレン(20)セチルエーテル2.9gを混合し、分散メディアとして0.1mmφのジルコニアビーズを用い、分散機としてDYNO−MILL(シンマルエンタープライゼス製、型番:KDL)を用いてジャケット温を10℃に保温しながら周速15m/sで1時間分散処理を行い、分散液Nを得た。
【0208】
実施例15
製造例1で得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体(C1)8.3gと、分散媒として水62.0g、さらに分散剤としてポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル2.7gを混合し、分散メディアとして0.1mmφのジルコニアビーズを用い、分散機としてDYNO−MILL(シンマルエンタープライゼス製、型番:KDL)を用いてジャケット温を10℃に保温しながら周速15m/sで1時間分散処理を行い、分散液Oを得た。
【0209】
実施例16
製造例1で得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体(C1)5.1gと、製造例3で得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体(C3)5.2gと、分散媒としてエタノール30.0g、水30.0g、さらに分散剤としてポリオキシエチレン(20)セチルエーテル2.9gを混合し、分散メディアとして0.1mmφのジルコニアビーズを用い、分散機としてDYNO−MILL(シンマルエンタープライゼス製、型番:KDL)を用いてジャケット温を10℃に保温しながら周速15m/sで1時間分散処理を行い、分散液Pを得た。
【0210】
実施例17
製造例1で得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体(C1)5.0gと、製造例3で得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体(C3)5.0gと、分散媒としてトルエン52.1g、さらに分散剤としてポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル3.2gを混合し、分散メディアとして0.1mmφのジルコニアビーズを用い、分散機としてDYNO−MILL(シンマルエンタープライゼス製、型番:KDL)を用いてジャケット温を10℃に保温しながら周速15m/sで1時間分散処理を行い、分散液Qを得た。
【0211】
分散直後の各分散液中の置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子の平均粒子径を表2に示す。
また、得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子分散液を密閉容器に入れ、40℃の恒温槽内に1ヶ月間静置した後の、各分散中の置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子の平均粒子径を表2に示す。
ここで平均粒子径とは、一般的な粒度分布計、例えば動的光散乱式の粒度分布計(例えばシスメックス社製「ゼータサイザーナノZS」)で測定されるZ−Average sizeの値を示す。
表2に示す平均粒子径は、シスメックス社製「ゼータサイザーナノZS」を用いて、光源:He−Neレーザー(633nm)、セル:ガラス角セル、測定温度:25℃、Measure position:0.85(mm)の条件下で測定した。また、それぞれの試料について3回ずつ測定し、得られた値の平均値を示した。
【0212】
【表2】

【0213】
実施例1〜17において得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子分散液A〜Qは、40℃の温度下で1ヶ月の長期間に渡り再凝集することなく安定な分散状態を保つことが確認された。
【0214】
(光吸収部材用組成物)
製造例8
メチルトリエトキシシラン50.0g(0.28モル)と、フェニルトリエトキシシラン25.0g(0.10モル)と、PGMEA80gとを混合し、室温で攪拌し、溶液を得た。この溶液に、触媒としてギ酸3.0g ( 0.01モル)および水25.0gを添加し、室温で30分間攪拌することにより、加水分解を行った。次に加水分解後の溶液を70 ℃まで昇温し、4時間保温し、加水分解・重縮合反応を進行させ、さらに減圧下で、副生したアルコールと水を留去しつつ、さらに1時間加水分解・重縮合反応を進行させることで、無機系バインダー:ポリシロキサン系バインダー前駆体としての、シリコンアルコキシドのゾル/PGMEA溶液(シロキサンオリゴマー/PGMEA溶液,加熱残分40.5%)を得た。
【0215】
製造例9
製造例8において、PGMEA80gに代えてIPA80gを用いた以外は製造例8と同様にして、無機系バインダー:ポリシロキサン系バインダー前駆体としての、シリコンアルコキシドのゾル/IPA溶液(シロキサンオリゴマー/IPA溶液,加熱残分41.7%)を得た。
【0216】
製造例10
製造例8において、PGMEA80gに代えてトルエン80gを用いた以外は製造例8と同様にして、無機系バインダー:ポリシロキサン系バインダー前駆体としての、シリコンアルコキシドのゾル/トルエン溶液(シロキサンオリゴマー/トルエン溶液,加熱残分40.9%)を得た。
【0217】
製造例11
製造例8において、PGMEA80gに代えてMEK80gを用いた以外は製造例8と同様にして、無機系バインダー:ポリシロキサン系バインダー前駆体としての、シリコンアルコキシドのゾル/MEK溶液(シロキサンオリゴマー/MEK溶液,加熱残分42.1%)を得た。
【0218】
実施例18
製造例8で得られたシロキサンオリゴマー/PGMEA溶液2.0gにPGMEAを1.0g加え、混合した。次いで、これを実施例1で得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子分散液(分散液A)1.5gに攪拌しながら加え、混合することにより、光吸収部材用組成液Aを得た。
【0219】
実施例19
製造例8で得られたシロキサンオリゴマー/PGMEA溶液2.0gにPGMEAを1.0g加え、混合した。次いで、これを実施例2で得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子分散液(分散液B)1.5gに攪拌しながら加え、混合することにより、光吸収部材用組成液Bを得た。
【0220】
実施例20
製造例9で得られたシロキサンオリゴマー/IPA溶液2.0gにIPAを0.5g加え、混合した。次いで、これを実施例3で得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子分散液(分散液C)1.6gに攪拌しながら加え、混合することにより、光吸収部材用組成液Cを得た。
【0221】
実施例21
製造例8で得られたシロキサンオリゴマー/PGMEA溶液2.0gにPGMEAを0.5g加え、混合した。次いで、これを実施例4で得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子分散液(分散液D)1.6gに攪拌しながら加え、混合することにより、光吸収部材用組成液Dを得た。
【0222】
実施例22
製造例9で得られたシロキサンオリゴマー/IPA溶液2.0gにIPAを0.5g加え、混合した。次いで、これを実施例5で得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子分散液(分散液E)1.5gに攪拌しながら加え、混合することにより、光吸収部材用組成液Eを得た。
【0223】
実施例23
製造例8で得られたシロキサンオリゴマー/PGMEA溶液2.0gにPGMEAを0.4g加え、混合した。次いで、これを実施例6で得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子分散液(分散液F)1.5gに攪拌しながら加え、混合することにより、光吸収部材用組成液Fを得た。
【0224】
実施例24
製造例9で得られたシロキサンオリゴマー/IPA溶液2.0gにIPAを0.5g加え、混合した。次いで、これを実施例7で得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子分散液(分散液G)1.5gに攪拌しながら加え、混合することにより、光吸収部材用組成液Gを得た。
【0225】
実施例25
有機系バインダーとしてアクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体(ローム・アンド・ハース社製の商品名;パラロイド B−72)0.8gをトルエン1.7gに溶解させ、これを実施例8で得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子分散液(分散液H)1.5gに攪拌しながら加え、混合することにより、光吸収部材用組成液Hを得た。
【0226】
実施例26
有機系バインダーとしてアクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体(ローム・アンド・ハース社製の商品名;パラロイド B−72)0.8gをトルエン1.7gに溶解させ、これを実施例9で得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子分散液(分散液I)1.5gに攪拌しながら加え、混合することにより、光吸収部材用組成液Iを得た。
【0227】
実施例27
有機系バインダーとしてアクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体(ローム・アンド・ハース社製の商品名;パラロイド B−72)0.8gをトルエン1.7gに溶解させ、これを実施例10で得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子分散液(分散液J)1.5gに攪拌しながら加え、混合することにより、光吸収部材用組成液Jを得た。
【0228】
実施例28
有機系バインダーとしてアクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体(ローム・アンド・ハース社製の商品名;パラロイド B−72)0.8gをトルエン1.7gに溶解させ、これを実施例11で得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子分散液(分散液K)1.5gに攪拌しながら加え、混合することにより、光吸収部材用組成液Kを得た。
【0229】
実施例29
有機系バインダーとしてアクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体(ローム・アンド・ハース社製の商品名;パラロイド B−72)0.8gをトルエン1.7gに溶解させ、これを実施例12で得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子分散液(分散液L)1.5gに攪拌しながら加え、混合することにより、光吸収部材用組成液Lを得た。
【0230】
実施例30
有機系バインダーとしてアクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体(ローム・アンド・ハース社製の商品名;パラロイド B−72)0.8gをトルエン1.7gに溶解させ、これを実施例13で得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子分散液(分散液M)1.5gに攪拌しながら加え、混合することにより、光吸収部材用組成液Mを得た。
【0231】
実施例31
有機系バインダーとしてアクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体(ローム・アンド・ハース社製の商品名;パラロイド B−72)0.8gをトルエン1.7gに溶解させ、これを実施例14で得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子分散液(分散液N)1.5gに攪拌しながら加え、混合することにより、光吸収部材用組成液Nを得た。
【0232】
実施例32
製造例9で得られたシロキサンオリゴマー/IPA溶液2.0gにIPAを0.4g加え、混合した。次いで、これを実施例15で得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子分散液(分散液O)1.5gに攪拌しながら加え、混合することにより、光吸収部材用組成液Oを得た。
【0233】
実施例33
製造例8で得られたシロキサンオリゴマー/PGMEA溶液2.0gにPGMEAを0.4g加え、混合した。次いで、これを実施例16で得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子分散液(分散液P)1.5gに攪拌しながら加え、混合することにより、光吸収部材用組成液Pを得た。
【0234】
実施例34
有機系バインダーとしてアクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体(ローム・アンド・ハース社製の商品名;パラロイド B−72)0.8gをトルエン1.7gに溶解させ、これを実施例17で得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子分散液(分散液Q)1.5gに攪拌しながら加え、混合することにより、光吸収部材用組成液Qを得た。
【0235】
実施例35
製造例2で得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体(C2)2.1gと、分散媒兼重合性モノマーとして3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート26.0gおよび3−エチル−3−[{(3−エチルオキセタニル)メトキシ}メチル]オキセタン51.0g、熱重合開始剤(三新化学株式会社製の商品名;SI−60L)2.7g、さらに分散剤としてポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル0.88gを混合し、分散メディアとして0.3mmφのジルコニアビーズを用い、分散機としてDYNO−MILL(シンマルエンタープライゼス製、型番:KDL)を用いてジャケット温を10℃に保温しながら周速15m/sで1時間分散処理を行い、光吸収部材用組成液Rを得た。
【0236】
実施例18〜35で得られた光吸収部材用組成液A〜Rを、室温下で100日間静置保管し、保管前後での凝集の有無を目視で評価した。結果、いずれについても凝集体および沈降物の存在は確認されなかった。
【0237】
(光吸収部材)
実施例36
実施例18で得られた光吸収部材用組成液Aを、スピンコーター(株式会社アクティブ製、型番:ACT−300A)を用いてソーダライムガラス基材上に塗布し、その後、室温下、窒素雰囲気において10分間予備乾燥させた後に200℃で30分間焼成し、光吸収部材Aを得た。コーティング膜の膜厚は10μmであった。
【0238】
実施例37
実施例20で得られた光吸収部材用組成液Cを、スピンコーター(株式会社アクティブ製、型番:ACT−300A)を用いてソーダライムガラス基材上に塗布し、その後、室温下、窒素雰囲気において10分間予備乾燥させた後に200℃で30分間焼成し、光吸収部材Cを得た。コーティング膜の膜厚は9μmであった。
【0239】
実施例38
実施例25で得られた光吸収部材用組成液Hを、スピンコーター(株式会社アクティブ製、型番:ACT−300A)を用いてソーダライムガラス基材上に塗布し、その後、室温下、窒素雰囲気において10分間予備乾燥させた後に80℃で3分間乾燥し、光吸収部材Hを得た。コーティング膜の膜厚は9μmであった。
【0240】
実施例39
実施例27で得られた光吸収部材用組成液Jを、スピンコーター(株式会社アクティブ製、型番:ACT−300A)を用いてソーダライムガラス基材上に塗布し、その後、室温下、窒素雰囲気において10分間予備乾燥させた後に80℃で3分間乾燥し、光吸収部材Jを得た。コーティング膜の膜厚は10μmであった。
【0241】
実施例40
実施例33で得られた光吸収部材用組成液Pを、スピンコーター(株式会社アクティブ製、型番:ACT−300A)を用いてソーダライムガラス基材上に塗布し、その後、室温下、窒素雰囲気において10分間予備乾燥させた後に200℃で30分間焼成し、光吸収部材Pを得た。コーティング膜の膜厚は8μmであった。
【0242】
実施例41
実施例34で得られた光吸収部材用組成液Qを、スピンコーター(株式会社アクティブ製、型番:ACT−300A)を用いてソーダライムガラス基材上に塗布し、その後、室温下、窒素雰囲気において10分間予備乾燥させた後に80℃で3分間乾燥し、光吸収部材Qを得た。コーティング膜の膜厚は9μmであった。
【0243】
実施例42
実施例35で得られた光吸収部材用組成液Rを、スピンコーター(株式会社アクティブ製、型番:ACT−300A)を用いてソーダライムガラス基材上に塗布し、その後、室温下、窒素雰囲気において10分間予備乾燥させた後に、160℃で30分間かけて硬化し、光吸収部材Rを得た。コーティング膜の膜厚は11μmであった。
【0244】
比較例1
製造例9で得られたシロキサンオリゴマー/IPA溶液2.0gにIPAを0.4g加え、混合した。この混合液を攪拌しながら、酸化亜鉛微粒子分散液(ハクスイテック株式会社製、製品名:パゼットGK−IPA分散体、粉体一次粒子径:20〜40nm)2.0gを加え、混合することにより、光吸収部材用組成液Sを得た。
この光吸収部材用組成液を、スピンコーター(株式会社アクティブ製、型番:ACT−300A)を用いてソーダライムガラス基材上に塗布し、その後、室温下、窒素雰囲気において10分間予備乾燥させた後に200℃で30分間焼成し、光吸収部材Sを得た。コーティング膜の膜厚は8μmであった。
【0245】
比較例2
有機系バインダーとしてアクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体(ローム・アンド・ハース社製の商品名;パラロイド B−72)0.8gをMEK1.7gに溶解させ、この溶液を攪拌しながら、酸化亜鉛微粒子分散液(ハクスイテック株式会社製、製品名:パゼットGK−MEK分散体、粉体一次粒子径:20〜40nm)2.0gを加え、混合することにより、光吸収部材用組成液Tを得た。
この光吸収部材用組成液を、スピンコーター(株式会社アクティブ製、型番:ACT−300A)を用いてソーダライムガラス基材上に塗布し、その後、室温下、窒素雰囲気において10分間予備乾燥させた後に80℃で3分間乾燥し、光吸収部材Tを得た。コーティング膜の膜厚は11μmであった。
【0246】
比較例3
製造例11で得られたシロキサンオリゴマー/MEK溶液2.0gにMEK0.4gを加え、混合した。この溶液に、製造例1で得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体(C1)0.2gを加え、溶解させることにより、光吸収部材用組成液Uを得た。
この光吸収部材用組成液Uを、スピンコーター(株式会社アクティブ製、型番:ACT−300A)を用いてソーダライムガラス基材上に塗布し、その後、室温下、窒素雰囲気において10分間予備乾燥させた後に200℃で30分間焼成し、光吸収部材Uを得た。コーティング膜の膜厚は11μmであった。
【0247】
比較例4
有機系バインダーとしてアクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体(ローム・アンド・ハース社製の商品名;パラロイド B−72)0.8gをMEK1.7gに溶解させ、この溶液に、製造例1で得られた置換ベンゼンジチオール金属錯体(C1)0.2gを加え、溶解させることにより、光吸収部材用組成液Vを得た。
この光吸収部材用組成液Vを、スピンコーター(株式会社アクティブ製、型番:ACT−300A)を用いてソーダライムガラス基材上に塗布し、その後、室温下、窒素雰囲気において10分間予備乾燥させた後に80℃で3分間乾燥し、光吸収部材Vを得た。コーティング膜の膜厚は8μmであった。
【0248】
[光吸収部材の評価]
実施例36〜42および比較例1〜4で得られた光吸収部材について、以下の手順により実施した。
(1)透過率
実施例36〜42および比較例1〜4で得られた光吸収部材について、分光光度計(株式会社日立製作所製、型番:U−4100)を用いて特定波長(λ=380nm:紫外線UV−A、λ=545nm:可視光線、λ=900nm:近赤外線)における透過率を測定し、光吸収能の評価を実施した。
(2)耐光性試験
(1)の手順により実施例36〜42および比較例1〜4で得られた光吸収部材について透過率を測定した後、キセノンウェザーメーター(スガ試験機株式会社製、型番:X25)を用いて、これら光吸収部材に放射強度60W/m(300〜400nm域における積算)の光を1000時間照射した。このとき、光吸収部材のソーダライムガラス基材側からではなく、コーティング層側から光を照射した。すなわちこれは、ソーダライムガラスは短波長域の紫外線を吸収する性質があるので、光吸収部材のソーダライムガラス基材側からではなくコーティング層側から光を照射することにより、光源から放射された光を、コーティング層中に分散された光吸収剤に直接照射し、光吸収剤にとってより過酷な条件とすることを意図したものである。直接光照射後の光吸収部材について、透過率を測定し、光照射による光吸収能の変化を評価した。
【0249】
以下の表3に結果を示す。
表中のΔ%Tは光照射後の透過率から光照射前の透過率を差し引きした値を示す。
【0250】
【表3】

【0251】
実施例36、実施例38および実施例42は、光吸収剤として置換ベンゼンジチオール銅錯体(式(1)または式(2)におけるMが銅原子)を使用した系であり、UV−Aを十分に遮蔽し、且つ光照射による透過率の変化も小さく、優れた耐光性を示すことが確認された。
【0252】
実施例37および実施例39は、光吸収剤として置換ベンゼンジチオールニッケル錯体(式(1)または式(2)におけるMがニッケル原子)を使用した系であり、近赤外線を十分に遮蔽し、且つ光照射による透過率の変化も小さく、優れた耐光性を示すことが確認された。
【0253】
実施例40および実施例41は、光吸収剤として置換ベンゼンジチオール銅錯体(式(1)におけるMが銅原子)と置換ベンゼンジチオールニッケル錯体(式(1)におけるMがニッケル原子)を混合使用した系であり、UV−Aおよび近赤外線を十分に遮蔽し、且つ光照射による透過率の変化も小さく、優れた耐光性を示すことが確認された。
【0254】
比較例1および比較例2は、紫外線吸収剤として従来公知の酸化亜鉛微粒子を使用した系であるが、耐光性は非常に良好であるものの、UV−Aを十分に遮蔽することはできないことが確認された。
【0255】
比較例3および比較例4は、置換ベンゼンジチオール銅錯体(式(1)におけるMが銅原子)を使用した系であるが、微粒子として分散させるのではなく、良溶媒に溶解させて使用した系である。この場合、UV−Aは十分に遮蔽することができるが、光照射による透過率の変化が非常に大きく、耐光性面で問題があることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】

(式中、RおよびRは、独立して、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルキルアミノ基、置換基を有していてもよいモルホリノ基、置換基を有していてもよいピペリジノ基、置換基を有していてもよいピロリジノ基、置換基を有していてもよいチオモルホリノ基、置換基を有していてもよいピペラジノ基または置換基を有していてもよいフェニル基を示す。Mは、金属原子を示し、Aは第4級アンモニウムカチオンまたは第4級ホスホニウムカチオンを示す。またnは任意の整数で、金属原子Mの酸化数に応じて異なる。);および/または
式(2):
【化2】

(式中、RおよびRは、独立して、炭素数1〜8のアルキル基を示す。Mは、金属原子を示し、Aは第4級アンモニウムカチオンまたは第4級ホスホニウムカチオンを示す。またnは任意の整数で、金属原子Mの酸化数に応じて異なる。)
で表される置換ベンゼンジチオール金属錯体を含有する光吸収分散液において、該置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子が、水、有機溶剤および重合性モノマーよりなる群から選択される1以上の単独または混合分散媒中に分散されていることを特徴とする該光吸収分散液。
【請求項2】
式(1)および/または式(2)における金属原子Mが、錫原子、亜鉛原子、ニッケル原子、銅原子またはコバルト原子である請求項1に記載の光吸収分散液。
【請求項3】
該置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子の平均粒子径が、10nm以上200nm以下である請求項1または2に記載の光吸収分散液。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の光吸収分散液と、少なくとも1種類のマトリックス材料とを含む光吸収部材用組成物。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の光吸収分散液を含み、ここに、該光吸収分散液は、分散媒として重合性モノマーを含み、および別途にマトリックス材料を含まない光吸収部材用組成物。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載の光吸収分散液を含み、ここに、該光吸収分散液は、分散媒として重合性モノマーを含み、および別途にマトリックス材料を含む光吸収部材用組成物。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれかに記載の光吸収部材用組成物を用いて作製される光吸収部材。
【請求項8】
基材上に置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子が分散されたマトリックス材料の膜を有する積層体としての光吸収部材である請求項7記載の光吸収部材。
【請求項9】
置換ベンゼンジチオール金属錯体の微粒子がマトリックス材料の膜中に分散した薄膜形態の光吸収部材である請求項7記載の光吸収部材。

【公開番号】特開2013−107917(P2013−107917A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61064(P2010−61064)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000195661)住友精化株式会社 (352)
【Fターム(参考)】