説明

置換二安息香酸誘導体およびそれらの使用

本発明は、新規の式(I)の置換二安息香酸誘導体(式中、Aは式(II)または(III)の基を表す)、それらの製造方法、並びに、疾患の処置および/または予防におけるそれらの使用に関する。本発明はまた、疾患の処置および/または予防用の、特に心血管疾患の処置および/または予防用の医薬を製造するためのそれらの使用に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、新規の置換二安息香酸誘導体、それらの製造方法、疾患の処置および/または予防のためのそれらの使用、並びに、疾患の処置および/または予防用の、特に心血管障害の処置および/または予防用の医薬を製造するためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳動物細胞における最も重要な細胞の伝達システムの1つは、環状グアノシン一リン酸(cGMP)である。それは、内皮から放出され、ホルモン的および機械的シグナルを伝達する一酸化窒素(NO)と共に、NO/cGMPシステムを形成する。グアニル酸シクラーゼは、グアノシン三リン酸(GTP)からのcGMPの生合成を触媒する。今日までに開示されたこのファミリーの代表例は、構造的特徴およびリガンドのタイプの両方に従って、2つのグループに分類できる:ナトリウム利尿ペプチドにより刺激され得る粒子性グアニル酸シクラーゼ、および、NOにより刺激され得る可溶性グアニル酸シクラーゼ。可溶性グアニル酸シクラーゼは2個のサブユニットからなり、恐らくヘテロ二量体毎に1個のヘムを含有し、それは調節部位の一部である。後者は、活性化メカニズムにとって中心的に重要なものである。NOは、ヘムの鉄原子に結合でき、かくして、この酵素の活性を顕著に増加させる。一方、ヘムを含まない調製物は、NOにより刺激され得ない。一酸化炭素(CO)もヘムの中心鉄原子に結合できるが、COによる刺激は、NOによるものよりも顕著に少ない。
【0003】
グアニル酸シクラーゼは、cGMPの産生、および、それに起因するホスホジエステラーゼ、イオンチャネルおよびタンパク質キナーゼの調節を介して、様々な生理的過程において、特に、平滑筋細胞の弛緩および増殖において、血小板の凝集および接着において、神経のシグナル伝達において、上述の過程の欠陥に起因する障害において、重要な役割を果たす。病的条件下では、NO/cGMP系は抑制されることがあり、例えば、高血圧、血小板活性化、細胞増殖の増加、内皮の機能不全、アテローム性動脈硬化、狭心症、心不全、血栓症、卒中および心筋梗塞を導き得る。
【0004】
NOから独立した、生物におけるcGMPシグナル伝達経路に影響を与えることを目的とするそのような障害の可能な処置方法は、予測される高い有効性および少ない副作用のために、有望なアプローチである。
【0005】
有機硝酸塩などの、それらの効果がNOをベースとする化合物は、今日まで、可溶性グアニル酸シクラーゼの治療的刺激に専ら使用されてきた。NOは、生物変換により産生され、ヘムの中心鉄原子に結合することにより、可溶性グアニル酸シクラーゼを活性化する。副作用の他に、耐性の発生がこの処置様式の重大な欠点の1つである。
【0006】
可溶性グアニル酸シクラーゼを直接、即ち、事前のNO放出を伴わずに、刺激するいくつかの物質、例えば、3−(5'−ヒドロキシメチル−2'−フリル)−1−ベンジルインダゾール [YC-1, Wu et al., Blood 84 (1994), 4226; Muelsch et al., Brit. J. Pharmacol. 120 (1997), 681]、脂肪酸 [Goldberg et al., J. Biol. Chem. 252 (1977), 1279]、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート [Pettibone et al., Eur. J. Pharmacol. 116 (1985), 307]、イソリキリチゲニン(isoliquiritigenin)[Yu et al., Brit. J. Pharmacol. 114 (1995), 1587] および様々な置換ピラゾール誘導体(WO98/16223、WO98/16507およびWO98/23619)が、近年記載された。
【0007】
上記の可溶性グアニル酸シクラーゼの刺激剤は、ヘム基の鉄中心との相互作用およびそれに起因して酵素活性の上昇を導く立体構造の変化により、ヘム基を介して(一酸化炭素、一酸化窒素またはジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート)[Gerzer et al., FEBS Lett. 132 (1981), 71]、または、NOから独立しているがNOまたはCOの刺激効果の増強を導くヘム依存的メカニズムを介して[例えば、YC-1, Hoenicka et al., J. Mol. Med. 77 (1999) 14;または、WO98/16223、WO98/16507およびWO98/23619に記載のピラゾール誘導体]、直接的に酵素を刺激する。
【0008】
イソリキリチゲニンおよび脂肪酸、例えば、アラキドン酸、プロスタグランジン、エンドペルオキシドおよび脂肪酸ヒドロペルオキシドの可溶性グアニル酸シクラーゼに対する文献で主張された刺激効果を確認することは不可能であった [例えば、Hoenicka et al., J. Mol. Med. 77 (1999), 14]。
【0009】
可溶性グアニル酸シクラーゼからヘム基を除去すると、この酵素は、依然として検出可能な基底の触媒活性を示す。即ち、cGMPは依然として産生される。ヘムを含まない酵素の残っている基底の触媒活性は、上記の既知の刺激剤のいずれでも刺激され得ない。
【0010】
ヘムを含まない可溶性グアニル酸シクラーゼのプロトポルフィリンIXによる刺激が記載された[Ignarro et al., Adv. Pharmacol. 26 (1994), 35]。しかしながら、プロトポルフィリンIXは、NO−ヘム付加体の模倣物とみなすことができるので、プロトポルフィリンIXの可溶性グアニル酸シクラーゼへの付加が、NOにより刺激されるヘムを含有する可溶性グアニル酸シクラーゼに相当する酵素の構造をもたらすのは当然である。これは、また、プロトポルフィリンIXの刺激効果が、上記のNOから独立しているがヘムに依存する刺激剤YC−1により増加するという事実によっても証明される[Muelsch et al., Naunyn Schmiedebergs Arch. Pharmacol. 355, R47]。
【0011】
上記の可溶性グアニル酸シクラーゼの刺激剤と対照的に、本発明の化合物は、可溶性グアニル酸シクラーゼのヘムを含有する形態およびヘムを含まない形態の両方を活性化できる。従って、これらの新規活性化剤により、この酵素は、ヘムから独立した経路で刺激される。このことは、また、第一に、これらの新規活性化剤はヘムを含有する酵素に対してNOとの相乗効果を示さず、第二に、これらの新規活性化剤の効果は、可溶性グアニル酸シクラーゼのヘムに依存する阻害剤である1H−1,2,4−オキサジアゾール−(4,3−a)−キノキサリン−1−オン(ODQ)により遮断され得ないという事実により証明される[Schmidt et al., J. Clin. Invest. 116 (2006), 2552; Stasch et al., Nature Rev. Drug Disc. 5 (2006), 755]。
【0012】
EP0341551−A1は、循環器および呼吸器系の障害の処置用のロイコトリエンアンタゴニストとして、アルケン酸誘導体を開示している。WO01/19355、WO01/19776、WO01/19778、WO01/19780、WO02/070462およびWO02/070510は、心血管障害の処置用の可溶性グアニル酸シクラーゼの刺激剤として、ジカルボン酸およびアミノジカルボン酸誘導体を記載している。しかしながら、これらの化合物は、それらの薬物動態学的特性、例えば、特に、低いバイオアベイラビリティーおよび/または経口投与後の短時間しかない作用期間に関して、欠点を有することがわかってきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、可溶性グアニル酸シクラーゼの刺激因子として作用するが、上記の先行技術の化合物の欠点を持たない新規化合物を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、本明細書に記載する本発明の化合物により達成される。これらの化合物は、先行技術の化合物と比較して、3−(カルボキシフェネチル)−5−フェニルペント−4−エン−1−イル安息香酸コア構造により構造的に相違する。
【0015】
具体的には、本発明は、一般式(I)
【化1】

[式中、
Aは、式
【化2】

{式中、
*は基Dへの結合点を表し、そして、
Eは、結合、−CH−、−CH−CH−または−CH=CH−を表す}
の基を表し、
Dは、結合を表すか、または、(C−C)−アルカンジイル、(C−C)−アルカンジイル−O−、(C−C)−アルケンジイルまたは(C−C)−アルキンジイルを表し、これらの各々は、フッ素により一置換または多置換されていてもよく、ここで、は、基Aへの結合点を表し、
、R、R、R、RおよびRは、相互に独立して、ハロゲン、(C−C)−アルキル、(C−C)−アルコキシ、シアノおよびニトロからなる群から選択される置換基を表し、ここで、アルキルおよびアルコキシは、フッ素により一置換または多置換されていてもよく、
そして、
n、o、p、q、rおよびsは、相互に独立して、各々0、1、2、3または4の数を表し、
ここで、R、R、R、R、RまたはRが1個より多く存在するならば、それらの意味は各場合で同一であっても異なっていてもよい]
の化合物、並びにそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明による化合物は、式(I)の化合物並びにそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物、式(I)に包含される後述の式の化合物並びにそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物、および、式(I)に包含される例示的実施態様として後述する化合物並びにそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物(式(I)に包含される後述の化合物が、まだ塩、溶媒和物および塩の溶媒和物ではない場合に)である。
【0017】
本発明による化合物は、それらの構造次第で、立体異性体(エナンチオマー、ジアステレオマー)で存在し得る。従って、本発明は、エナンチオマーまたはジアステレオマーおよびそれらの各々の混合物に関する。立体異性的に純粋な構成々分は、そのようなエナンチオマーおよび/またはジアステレオマーの混合物から、既知方法で単離できる。
本発明による化合物が互変異性体で存在できるならば、本発明は、全ての互変異性体を含む。
【0018】
本発明の目的上、好ましいは、本発明による化合物の生理的に許容し得る塩である。しかしながら、それら自体は医薬適用に適さないが、例えば本発明による化合物の単離または精製に使用できる塩も包含される。
【0019】
本発明による化合物の生理的に許容し得る塩には、無機酸、カルボン酸およびスルホン酸の酸付加塩、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸および安息香酸の塩が含まれる。
【0020】
本発明による化合物の生理的に許容し得る塩には、また、常套の塩基の塩、例えば、そして、好ましくは、アルカリ金属塩(例えばナトリウムおよびカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えばカルシウムおよびマグネシウム塩)およびアンモニアまたは1個ないし16個のC原子を有する有機アミン(例えば、そして、好ましくは、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジメチルアミノエタノール、プロカイン、ジベンジルアミン、N−メチルモルホリン、アルギニン、リジン、エチレンジアミンおよびN−メチルピペリジン)から誘導されるアンモニウム塩も含まれる。
【0021】
溶媒和物は、本発明の目的上、固体または液体状態で溶媒分子との配位により錯体を形成している本発明による化合物の形態を表す。水和物は、配位が水と起こる、溶媒和物の特別な形態である。本発明に関して好ましい溶媒和物は水和物である。
【0022】
本発明は、また、本発明による化合物のプロドラッグも包含する。用語「プロドラッグ」は、それら自体は生物学的に活性であっても不活性であってもよいが、それらの体内残存時間中に(例えば代謝的または加水分解的に)本発明による化合物に変換される化合物を包含する。
【0023】
本発明に関して、置換基は、断りの無い限り以下の意味を有する:
(C−C)−アルキルおよび(C−C)−アルキルは、本発明に関して、各々1個ないし6個および1個ないし4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキルラジカルである。1個ないし4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキルラジカルが好ましい。好ましく言及し得る例は:メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、1−エチルプロピル、n−ペンチルおよびn−ヘキシルである。
【0024】
(C−C)−アルカンジイルおよび(C−C)−アルカンジイルは、本発明に関して、各々1個ないし7個および2個ないし6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の二価のアルキルラジカルである。1個ないし6個または2個ないし5個の炭素原子を有する直鎖のアルカンジイルラジカルが好ましい。好ましく言及し得る例は:メチレン、1,2−エチレン、エタン−1,1−ジイル、1,3−プロピレン、プロパン−1,1−ジイル、プロパン−1,2−ジイル、プロパン−2,2−ジイル、1,4−ブチレン、ブタン−1,2−ジイル、ブタン−1,3−ジイル、ブタン−2,3−ジイル、ペンタン−1,5−ジイル、ペンタン−2,4−ジイル、3−メチルペンタン−2,4−ジイルおよびヘキサン−1,6−ジイルである。
【0025】
(C−C)アルケンジイルは、本発明に関して、2個ないし7個の炭素原子および3個までの二重結合を有する直鎖または分枝鎖の二価のアルケニルラジカルである。2個ないし6個の炭素原子および2個までの二重結合を有する直鎖のアルケンジイルラジカルが好ましい。好ましく言及し得る例は:エテン−1,1−ジイル、エテン−1,2−ジイル、プロペン−1,1−ジイル、プロペン−1,2−ジイル、プロペン−1,3−ジイル、ブト−1−エン−1,4−ジイル、ブト−1−エン−1,3−ジイル、ブト−2−エン−1,4−ジイル、ブタ−1,3−ジエン−1,4−ジイル、ペント−2−エン−1,5−ジイル、ヘキサ−3−エン−1,6−ジイルおよびヘキサ−2,4−ジエン−1,6−ジイルである。
【0026】
(C−C)アルキンジイルは、本発明に関して、2個ないし7個の炭素原子および3個までの三重結合を有する直鎖または分枝鎖の二価のアルキニルラジカルである。2個ないし6個の炭素原子および2個までの三重結合を有する直鎖のアルキンジイルラジカルが好ましい。好ましく言及し得る例は:エチン−1,2−ジイル、プロピン−1,3−ジイル、ブト−1−イン−1,4−ジイル、ブト−1−イン−1,3−ジイル、ブト−2−イン−1,4−ジイル、ペント−2−イン−1,5−ジイル、ペント−2−イン−1,4−ジイルおよびヘキサ−3−イン−1,6−ジイルである。
【0027】
(C−C)−アルコキシおよび(C−C)−アルコキシは、本発明に関して、各々1個ないし6個および1個ないし4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルコキシラジカルである。1個ないし4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルコキシラジカルが好ましい。好ましく言及し得る例は:メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペントキシおよびn−ヘキソキシである。
【0028】
(C−C)−アルコキシカルボニルは、本発明に関して、1個ないし4個の炭素原子を有し、カルボニル基を介して結合している、直鎖または分枝鎖のアルコキシラジカルである。好ましく言及し得る例は:メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニルおよびtert−ブトキシカルボニルである。
【0029】
ハロゲンは、本発明に関して、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を含む。塩素、フッ素または臭素が好ましく、フッ素または塩素が特に好ましい。
【0030】
本発明による化合物中のラジカルが置換されているならば、断りの無い限り、そのラジカルは、一置換または多置換されていてよい。本発明に関して、1個より多く存在する全てのラジカルは、相互に独立した意味を有する。1個、2個または3個の同一かまたは異なる置換基による置換が好ましい。1個または2個の置換基による置換がことさら特に好ましい。
本発明による化合物中のラジカルがフッ素により多置換されていてもよいならば、これは、本発明に関して、過フルオロ置換を含む。
【0031】
本発明に関して、好ましいのは、式中、
Aが、式
【化3】

{式中、*は基Dへの結合点を表す}
の基を表し、
Dが、結合または(C−C)−アルカンジイルを表し、
、R、RおよびRが、相互に独立して、フッ素、塩素、臭素、(C−C)−アルキル、トリフルオロメチル、(C−C)−アルコキシおよびトリフルオロメトキシからなる群から選択される置換基を表し、
n、q、rおよびsが、相互に独立して、各々、0、1または2の数を表し、
ここで、R、R、RまたはRが1個より多く存在するならば、それらの意味は各場合で同一であっても異なっていてもよく、
およびRが、各々フッ素を表し、
そして、
oおよびpが、相互に独立して、各々、0または1の数を表す、
式(I)の化合物、並びにそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物である。
【0032】
本発明に関して、特に好ましいのは、式(I−A)
【化4】

[式中、
Dは、(C−C)−アルカンジイルを表し、
は、水素またはフッ素を表し、
は、フッ素、塩素、メチル、tert−ブチル、トリフルオロメチル、メトキシおよびトリフルオロメトキシからなる群から選択される置換基を表し、
そして、
qは、0、1または2の数を表し、
ここで、置換基Rが2個存在するならば、その意味は同一であっても異なっていてもよい]
の化合物並びにそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物である。
【0033】
ラジカルの各々の組合せまたは好ましい組合せにおいて特別に示されるラジカルの定義は、また、それらのラジカルについて示される特定の組合せに拘わらず、所望により他の組合せのラジカルの定義によっても置き換えられる。
2個またはそれ以上の上述の好ましい範囲の組合せがことさら特に好ましい。
【0034】
本発明は、さらに、本発明の式(I)の化合物の製造方法に関し、それは、式(II)
【化5】

(式中、R、R、oおよびpは、各々上記の意味を有し、そして、
およびTは、同一であるかまたは異なり、(C−C)−アルコキシカルボニルを表す)
の化合物を、
[A]不活性溶媒中、塩基の存在下、式(III−A)
【化6】

(式中、A、D、Rおよびnは、各々上記の意味を有し、そして、
Lは、フェニルまたはo−、m−またはp−トリルを表し、
そして、
Xは、ハライドまたはトシレートを表す)
の化合物を用いて、式(IV−A)
【化7】

(式中、A、D、R、R、R、n、o、p、TおよびTは、各々上記の意味を有する)
の化合物に変換するか、
【0035】
または、
[B]不活性溶媒中、塩基の存在下、式(III−B)
【化8】

(式中、R、n、LおよびXは、各々上記の意味を有する)
の化合物を用いて、先ず、式(IV−B)
【化9】

(式中、R、R、R、n、o、p、TおよびTは、各々上記の意味を有する)
の化合物に変換し、次いで、これらを、不活性溶媒中、塩基の存在下、式(V)
【化10】

(式中、AおよびDは上記の意味を有し、そして、
Qは、ハロゲン、トシレートまたはメシレートなどの脱離基を表す)
の化合物とカップリングし、式(IV−C)
【化11】

(式中、A、D、R、R、R、n、o、p、TおよびTは、各々上記の意味を有する)
の化合物を得、
次いで、得られる式(IV−A)または(IV−C)の化合物を、エステル基TおよびTの加水分解により、式(I)のジカルボン酸に変換し、
そして、式(I)の化合物を、必要に応じて、当業者に知られている方法でそれらのエナンチオマーおよび/またはジアステレオマーに分離し、かつ/または、必要に応じて、適当な(i)溶媒および/または(ii)塩基もしくは酸と反応させ、これらの溶媒和物、塩および/または塩の溶媒和物を得ることを特徴とする。
【0036】
工程(II)+(III−A)→(IV−A)および(II)+(III−B)→(IV−B)の不活性溶媒の例は、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、グリコールジメチルエーテルまたはジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、または、ベンゼン、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンまたは石油留分などの炭化水素類、または、これらの溶媒の混合物である。好ましいのは、テトラヒドロフランおよびヘキサンの混合物の使用である。
【0037】
これらの工程に適する塩基は、ウィティッヒ反応に常套の塩基である。これらには、特に、n−、sec−またはtert−ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)またはリチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドまたはカリウムビス(トリメチルシリル)アミドなどの強塩基が含まれる。好ましいのは、n−ブチルリチウムである。
【0038】
反応(II)+(III−A)→(IV−A)および(II)+(III−B)→(IV−B)は、一般的に、−78℃ないし+20℃、好ましくは−20℃ないし+10℃の温度範囲で実施する。
【0039】
得られる化合物(IV−A)のシス/トランス混合物は、必要に応じて、反応(II)+(III−A)→(IV−A)において、この段階で、または、後続の化合物(I)の段階で、常套の方法により、例えばクロマトグラフィーにより、分離し得る。反応(II)+(III−B)→(IV−B)は、通常、トランス選択的である。
【0040】
工程(IV−B)+(V)→(IV−C)の不活性溶媒の例は、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、グリコールジメチルエーテルまたはジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンまたは石油留分などの炭化水素類、または、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N’−ジメチルプロピレンウレア(DMPU)またはN−メチルピロリドン(NMP)などの他の溶媒である。該溶媒の混合物を用いることも可能である。好ましいのは、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジオキサンまたはトルエンの使用である。
【0041】
この工程に適する塩基は、特に、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムまたは炭酸セシウム、水素化ナトリウムまたは水素化カリウム、リチウムジイソプロピルアミドまたはn−ブチルリチウムである。好ましいのは、炭酸カリウム、炭酸セシウムまたは水素化ナトリウムの使用である。
【0042】
反応(IV−B)+(V)→(IV−C)は、一般的に、+20℃ないし+150℃、好ましくは+50℃ないし+120℃の温度範囲で実施する。
【0043】
工程(IV−A)→(I)および(IV−C)→(I)のエステル基TおよびTの加水分解は、常套の方法により、エステルを不活性溶媒中で酸または塩基で処理することにより行い、後者では最初に産生された塩を酸処理により遊離カルボン酸に変換する。tert−ブチルエステルの場合のエステル開裂は、好ましくは酸を用いて行う。
【0044】
2つの異なる基TおよびTの場合、加水分解は、必要に応じて、同時にワンポット反応で、または、2つの別個の反応段階で、実施し得る。
【0045】
これらの反応に適する不活性溶媒は、水またはエステル開裂に通常の有機溶媒である。これらには、好ましくは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールまたはtert−ブタノールなどのアルコール類、または、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンまたはグリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、または、アセトン、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドなどの他の溶媒が含まれる。上述の溶媒の混合物を用いることも可能である。塩基性エステル加水分解の場合、好ましくは、水と、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メタノールおよび/またはエタノールの混合物を用いる。トリフルオロ酢酸を用いる反応の場合、好ましくはジクロロメタンを使用し、塩化水素を用いる反応の場合、好ましくはテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサンまたは水を使用する。
【0046】
適する塩基は、通常の無機塩基である。これらには、好ましくは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムまたは水酸化バリウム、または、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムまたは炭酸カルシウムが含まれる。特に好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化リチウムを使用する。
【0047】
エステル開裂に適する酸は、一般的に、硫酸、塩化水素/塩酸、臭化水素/臭化水素酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸またはトリフルオロメタンスルホン酸、または、これらの混合物であり、必要に応じて水を添加する。tert−ブチルエステルの場合、塩化水素またはトリフルオロ酢酸が、そして、メチルエステルの場合、塩酸が好ましい。
【0048】
エステル開裂は、一般的に、0℃ないし+100℃、好ましくは+20℃ないし+60℃の温度範囲で行う。
【0049】
上述の各反応は、大気圧、加圧または減圧下で実施できる(例えば、0.5ないし5bar)。それらは、一般的に、大気圧下で実施する。
【0050】
式(II)のアルデヒドは、文献から知られている方法と同様に、例えば、ジアリルマロネートを式(VI)および(VII)
【化12】

(式中、R、R、o、p、TおよびTは、各々上記の意味を有し、そして、
およびYは、同一であるかまたは異なり、ハロゲン、メシレートまたはトシレートなどの脱離基を表す)
の化合物で二重にアルキル化し、式(VIII)
【化13】

(式中、R、R、o、p、TおよびTは、各々上記の意味を有する)
の化合物を得、続いてエステル開裂し、式(IX)
【化14】

(式中、R、R、o、p、TおよびTは、各々上記の意味を有する)
の化合物を得、続いてカルボン酸の基を還元することにより製造できる(下記の反応スキーム1および2も参照)。
【0051】
式(III−A)および(III−B)の化合物は、式(X−A)または(X−B)
【化15】

(式中、A、D、Rおよびnは、各々上記の意味を有し、そして、
Zは、ハロゲンまたはトシレートなどの脱離基を表すか、または、ヒドロキシルを表す)
の化合物を、例えばトリフェニルホスフィンまたは(Z=OHの場合)トリフェニルホスフィンヒドロブロミドと反応させることにより、文献中の常套の方法で得ることができる(下記の反応スキーム3も参照)。
【0052】
式(V)、(VI)、(VII)、(X−A)および(X−B)の化合物は、購入できるか、文献から知られているか、または、文献から知られている方法と同様にして製造できる。式(X−A)の化合物は、例えば、工程(IV−B)+(V)→(IV−C)と同様に、式(X−B)の化合物(式中、Zはヒドロキシルを表す)を、式(V)の化合物と反応させることにより得ることができる(反応スキーム3参照)。
【0053】
本発明の化合物の対応するエナンチオマーおよび/またはジアステレオマーへの分離は、必要に応じて、便宜的に、化合物(IV−A)、(IV−B)、(IV−C)または(IX)の段階でも行うことができ、次いで、これを分離した形態で上述の工程順序に従いさらに反応させる。そのような立体異性体の分画は、当業者に周知の常套の方法により実施できる;クロマトグラフィー法またはジアステレオマーの塩を介する分離を好ましくは使用する。
【0054】
本発明の化合物の製造は、以下の合成スキームにより例示説明できる:
スキーム1
【化16】

【0055】
スキーム2
【化17】

【0056】
スキーム3
【化18】

[略号:Ac=アセチル;BHxTHF=ボラン/テトラヒドロフラン錯体;Bu=ブチル;DMF=ジメチルホルムアミド;PCC=ピリジニウムクロロクロメート;Ph=フェニル;Q=脱離基、例えば、ハロゲン;THF=テトラヒドロフラン]。
【0057】
本発明による化合物は、価値ある薬理特性を有し、ヒトおよび動物における障害の予防および処置に使用できる。
【0058】
本発明の化合物は、特別な驚くべき特徴として、有利な薬物動態学的特性、例えば、高いバイオアベイラビリティーおよび/または経口投与後の長い作用期間を示す。
【0059】
本発明による化合物は、血管弛緩、血小板凝集の阻害、血圧の低下および冠血流の増加を導く。これらの効果は、可溶性グアニル酸シクラーゼの直接的活性化およびcGMPの細胞内増加により媒介される。
【0060】
従って、本発明による化合物は、心血管障害の処置用、例えば、高血圧および心不全、安定および不安定狭心症、肺高血圧、末梢および心臓の血管障害、不整脈の処置用、血栓塞栓性障害および虚血、例えば心筋梗塞、卒中、一過性および虚血性の発作、末梢血流の障害の処置用、血栓溶解治療、経皮経管的血管形成術(PTA)、経皮経管冠動脈形成術(PTCA)、バイパス術後の再狭窄の予防用、動脈硬化症、喘息性障害、並びに、前立腺肥大、勃起不全、女性の性機能不全および失禁などの泌尿器系の疾患、骨粗鬆症、緑内障並びに胃不全麻痺の処置用の医薬において用いることができる。
【0061】
本発明による化合物は、さらに、一次および二次レイノー現象、微小循環の障害、跛行、末梢および自律神経ニューロパシー、糖尿病性微小血管障害、糖尿病性網膜症、四肢の糖尿病性潰瘍、CREST症候群、エリテマトーデス、爪真菌症およびリウマチ性障害の処置に使用できる。
【0062】
本発明による化合物は、さらに、呼吸促迫症候群および慢性閉塞性気道疾患(COPD)、急性および慢性腎不全の処置、および、創傷治癒の促進に適する。
【0063】
本発明で説明する化合物は、また、NO/cGMP系の撹乱を特徴とする中枢神経系の疾患を制御するための有効成分でもある。それらは、特に、軽度認知障害、加齢関連学習および記憶障害、加齢関連記憶喪失、血管性認知症、頭蓋大脳外傷、卒中、卒中後に生じる認知症(「卒中後認知症」)、外傷後の頭蓋大脳外傷、一般的な集中障害、学習および記憶に問題のある小児の集中障害、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、ピック症候群を含む前頭葉の変性を伴う認知症、パーキンソン病、進行性核麻痺、大脳皮質基底核変性症を伴う認知症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、多発性硬化症、視床変性、クロイツフェルト−ヤコブ型認知症、HIV認知症、認知症を伴う統合失調症またはコルサコフ精神病などの症状/疾患/症候群に関連して生じるもののような、認知障害後の知覚力、集中力、学習力または記憶力の改善に特に適する。それらは、また、不安、緊張および抑鬱状態などの中枢神経系の障害、CNS関連性機能不全および睡眠障害の処置、および、食物、刺激物および嗜癖性物質の摂取の病的撹乱の制御にも適する。
【0064】
本発明による化合物は、さらに、脳血流の制御にも適し、従って、偏頭痛の制御に有効な物質である。それらは、また、卒中などの脳梗塞(脳卒中)、脳虚血および頭蓋脳外傷の後遺症の予防および制御にも適する。本発明による化合物は、同様に、疼痛状態の制御にも用いることができる。
【0065】
加えて、本発明による化合物は、抗炎症効果を有し、従って、抗炎症剤として用いることができる。
【0066】
本発明は、さらに、障害、特に上述の障害の処置および/または予防のための、本発明による化合物の使用に関する。
【0067】
本発明は、さらに、障害、特に上述の障害の処置および/または予防用の医薬を製造するための、本発明による化合物の使用に関する。
【0068】
本発明は、さらに、少なくとも1種の本発明による化合物の有効量を使用することによる、障害、特に上述の障害の処置および/または予防方法に関する。
【0069】
本発明による化合物は、単独で、または、必要であれば、他の有効成分と組み合わせて用いることができる。本発明は、さらに、特に上述の障害の処置および/または予防のための、少なくとも1種の本発明による化合物および1種またはそれ以上のさらなる有効成分を含む医薬に関する。好ましく言及し得る、適する組合せの有効成分の例は、以下のものである:
・有機硝酸塩およびNO供給源、例えば、ニトロプルシドナトリウム、ニトログリセリン、一硝酸イソソルビド、二硝酸イソソルビド、モルシドミンまたはSIN−1および吸入NO;
・環状グアノシン一リン酸(cGMP)の分解を阻害する化合物、例えば、ホスホジエステラーゼ(PDE)1、2および/または5の阻害剤、特にシルデナフィル、バルデナフィルおよびタダラフィルなどのPDE5阻害剤;
・NOから独立しているがヘムに依存するグアニル酸シクラーゼの刺激剤、例えば、特に、WO00/06568、WO00/06569、WO02/42301およびWO03/095451に記載の化合物;
・例えば、そして好ましくは、血小板凝集阻害剤、抗凝血剤または線維素溶解促進性物質の群からの、抗血栓活性を有する物質;
・例えば、そして好ましくは、カルシウム拮抗薬、アンジオテンシンAIIアンタゴニスト、ACE阻害剤、エンドセリンアンタゴニスト、レニン阻害剤、アルファ−受容体遮断薬、ベータ−受容体遮断薬、鉱質コルチコイド受容体アンタゴニストおよび利尿剤の群からの、血圧を下げる有効成分;および/または、
・例えば、そして好ましくは、甲状腺受容体アゴニスト、コレステロール合成阻害剤、例えば、そして好ましくは、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤またはスクアレン合成阻害剤、ACAT阻害剤、CETP阻害剤、MTP阻害剤、PPAR−アルファ、PPAR−ガンマおよび/またはPPAR−デルタアゴニスト、コレステロール吸収阻害剤、リパーゼ阻害剤、ポリマー性胆汁酸吸着剤、胆汁酸再吸収阻害剤およびリポタンパク質(a)アンタゴニストの群からの、脂質代謝を改変する有効成分。
【0070】
抗血栓活性を有する物質は、好ましくは、血小板凝集阻害剤、抗凝血剤または線維素溶解促進性物質の群からの化合物を意味する。
【0071】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、血小板凝集阻害剤、例えば、そして好ましくは、アスピリン、クロピドグレル、チクロピジンまたはジピリダモールと組み合わせて投与する。
【0072】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、トロンビン阻害剤、例えば、そして好ましくは、キシメラガトラン、メラガトラン、ビバリルジンまたはクレキサンと組み合わせて投与する。
【0073】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、GPIIb/IIIaアンタゴニスト、例えば、そして好ましくは、チロフィバンまたはアブシキシマブと組み合わせて投与する。
【0074】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、Xa因子阻害剤、例えば、そして好ましくは、BAY59−7939、DU−176b、フィデキサバン(fidexaban)、ラザキサバン(razaxaban)、フォンダパリナックス、イドラパリナックス、PMD−3112、YM−150、KFA−1982、EMD−503982、MCM−17、MLN−1021、DX9065a、DPC906、JTV803、SSR−126512またはSSR−128428と組み合わせて投与する。
【0075】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、ヘパリンまたは低分子量(LMW)ヘパリン誘導体と組み合わせて投与する。
【0076】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、ビタミンKアンタゴニスト、例えば、そして好ましくは、クマリンと組み合わせて投与する。
【0077】
血圧を下げる物質は、好ましくは、カルシウム拮抗薬、アンジオテンシンAIIアンタゴニスト、ACE阻害剤、エンドセリンアンタゴニスト、レニン阻害剤、アルファ−受容体遮断薬、ベータ−受容体遮断薬、鉱質コルチコイド受容体アンタゴニストおよび利尿剤の群からの化合物を意味する。
【0078】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、カルシウム拮抗薬、例えば、そして好ましくは、ニフェジピン、アムロジピン、ベラパミルまたはジルチアゼムと組み合わせて投与する。
【0079】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、アルファ−1−受容体遮断薬、例えば、そして好ましくは、プラゾシンと組み合わせて投与する。
【0080】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、ベータ−受容体遮断薬、例えば、そして好ましくは、プロプラノロール、アテノロール、チモロール、ピンドロール、アルプレノロール、オクスプレノロール、ペンブトロール、ブプラノロール、メチプラノロール、ナドロール、メピンドロール、カラザロール(carazalol)、ソタロール、メトプロロール、ベタキソロール、セリプロロール、ビソプロロール、カルテオロール、エスモロール、ラベタロール、カルベジロール、アダプロロール(adaprolol)、ランジオロール、ネビボロール、エパノロールまたはブシンドロールと組み合わせて投与する。
【0081】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、アンジオテンシンAIIアンタゴニスト、例えば、そして好ましくは、ロサルタン、カンデサルタン、バルサルタン、テルミサルタンまたはエンブサルタン(embusartan)と組み合わせて投与する。
【0082】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、ACE阻害剤、例えば、そして好ましくは、エナラプリル、カプトプリル、リシノプリル、ラミプリル、デラプリル、ホシノプリル、キノプリル(quinopril)、ペリンドプリルまたはトランドプリル(trandopril)と組み合わせて投与する。
【0083】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、エンドセリンアンタゴニスト、例えば、そして好ましくは、ボセンタン、ダルセンタン(darusentan)、アンブリセンタンまたはシタキセンタン(sitaxsentan)と組み合わせて投与する。
【0084】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、レニン阻害剤、例えば、そして好ましくは、アリスキレン、SPP−600またはSPP−800と組み合わせて投与する。
【0085】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、鉱質コルチコイド受容体アンタゴニスト、例えば、そして好ましくは、スピロノラクトンまたはエプレレノンと組み合わせて投与する。
【0086】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、利尿剤、例えば、そして好ましくは、フロセミドと組み合わせて投与する。
【0087】
脂質代謝を改変する物質は、好ましくは、CETP阻害剤、甲状腺受容体アゴニスト、コレステロール合成阻害剤、例えばHMG−CoAレダクターゼ阻害剤またはスクアレン合成阻害剤、ACAT阻害剤、MTP阻害剤、PPAR−アルファ、PPAR−ガンマおよび/またはPPAR−デルタアゴニスト、コレステロール吸収阻害剤、ポリマー性胆汁酸吸着剤、胆汁酸再吸収阻害剤、リパーゼ阻害剤およびリポタンパク質(a)アンタゴニストの群からの化合物を意味する。
【0088】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、CETP阻害剤、例えば、そして好ましくは、トルセトラピブ(CP−529414)、JJT−705またはCETPワクチン(Avant)と組み合わせて投与する。
【0089】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、甲状腺受容体アゴニスト、例えば、そして好ましくは、D−チロキシン、3,5,3'−トリヨードサイロニン(T3)、CGS23425またはアキシチロム(axitirome)(CGS26214)と組み合わせて投与する。
【0090】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、スタチン類のクラスからのHMG−CoAレダクターゼ阻害剤、例えば、そして好ましくは、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチン、セリバスタチンまたはピタバスタチンと組み合わせて投与する。
【0091】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、スクアレン合成阻害剤、例えば、そして好ましくは、BMS−188494またはTAK−475と組み合わせて投与する。
【0092】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、ACAT阻害剤、例えば、そして好ましくは、アバシミブ(avasimibe)、メリナミド、パクチミブ(pactimibe)、エフルシミブ(eflucimibe)またはSMP−797と組み合わせて投与する。
【0093】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、MTP阻害剤、例えば、そして好ましくは、インプリタピド(implitapide)、BMS−201038、R−103757またはJTT−130と組み合わせて投与する。
【0094】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、PPAR−ガンマアゴニスト、例えば、そして好ましくは、ピオグリタゾンまたはロシグリタゾンと組み合わせて投与する。
【0095】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、PPAR−デルタアゴニスト、例えば、そして好ましくは、GW501516またはBAY68−5042と組み合わせて投与する。
【0096】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、コレステロール吸収阻害剤、例えば、そして好ましくは、エゼチミブ、チクエシド(tiqueside)またはパマクエシドと組み合わせて投与する。
【0097】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、リパーゼ阻害剤、例えば、そして好ましくは、オーリスタットと組み合わせて投与する。
【0098】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、ポリマー性胆汁酸吸着剤、例えば、そして好ましくは、コレスチラミン、コレスチポール、コレソルバム(colesolvam)、コレスタゲル(CholestaGel)またはコレスチミドと組み合わせて投与する。
【0099】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、胆汁酸再吸収阻害剤、例えば、そして好ましくは、ASBT(=IBAT)阻害剤、例えば、AZD−7806、S−8921、AK−105、BARI−1741、SC−435またはSC−635と組み合わせて投与する。
【0100】
本発明の好ましい実施態様では、本発明による化合物を、リポタンパク質(a)アンタゴニスト、例えば、そして好ましくは、ゲンカベン(gemcabene)カルシウム(CI−1027)またはニコチン酸と組み合わせて投与する。
【0101】
本発明は、さらに、少なくとも1種の本発明による化合物を、通常は1種またはそれ以上の、不活性、非毒性の医薬的に適する補助剤と共に含む医薬、および上述の目的でのそれらの使用に関する。
【0102】
本発明による化合物は、全身的および/または局所的に作用できる。この目的で、それらを、例えば、経口で、非経腸で、肺に、鼻腔に、舌下に、舌に、頬側に、直腸に、皮膚に、経皮で、結膜に、耳経路に、またはインプラントもしくはステントとしてなど、適する方法で投与できる。
本発明による化合物は、これらの投与経路に適する投与形で投与できる。
【0103】
経口投与に適するのは、先行技術に準じて機能し、本発明による化合物を、迅速に、かつ/または、改変された様式で送達し、本発明による化合物を結晶形および/または不定形および/または溶解形で含有する投与形、例えば、錠剤(非被覆または被覆錠剤、例えば、腸溶性被覆、または、不溶であるか、もしくは遅れて溶解し、本発明による化合物の放出を制御する被覆を有するもの)、口中で迅速に崩壊する錠剤、またはフィルム/オブラート、フィルム/凍結乾燥剤、カプセル剤(例えば、ハードまたはソフトゼラチンカプセル剤)、糖衣錠、顆粒剤、ペレット剤、粉末剤、乳剤、懸濁剤、エアゾル剤または液剤である。
【0104】
非経腸投与は、吸収段階を回避して(例えば、静脈内、動脈内、心臓内、脊髄内または腰椎内に)、または吸収を含めて(例えば、筋肉内、皮下、皮内、経皮または腹腔内)、行うことができる。非経腸投与に適する投与形は、とりわけ、液剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥剤または滅菌粉末剤形態の注射および点滴用製剤である。
【0105】
他の投与経路に適するのは、例えば、吸入用医薬形態(とりわけ、粉末吸入器、噴霧器)、点鼻薬、液またはスプレー;舌に、舌下にまたは頬側に投与するための錠剤、フィルム/オブラートまたはカプセル剤、坐剤、耳または眼用製剤、膣用カプセル剤、水性懸濁剤(ローション、振盪混合物)、親油性懸濁剤、軟膏、クリーム、経皮治療システム(例えば、パッチ)、ミルク、ペースト、フォーム、散布用粉末剤(dusting powder)、インプラントまたはステントである。
【0106】
経口または非経腸投与、特に経口および静脈内投与が好ましい。
【0107】
本発明による化合物は、上述の投与形に変換できる。これは、不活性、非毒性、医薬的に適する補助剤と混合することにより、それ自体既知の方法で行うことができる。これらの補助剤には、とりわけ、担体(例えば結晶セルロース、ラクトース、マンニトール)、溶媒(例えば液体ポリエチレングリコール類)、乳化剤および分散剤または湿潤剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシソルビタンオレエート)、結合剤(例えばポリビニルピロリドン)、合成および天然ポリマー(例えばアルブミン)、安定化剤(例えば抗酸化剤、例えばアスコルビン酸など)、着色料(例えば無機色素、例えば酸化鉄など)および香味および/または臭気の矯正剤が含まれる。
【0108】
非経腸投与で、約0.001ないし1mg/体重kg、好ましくは約0.01ないし0.5mg/体重kgの量を投与するのが、有効な結果を得るために有利であると一般的に証明され、経口投与では、投与量は、約0.01ないし100mg/体重kg、好ましくは約0.01ないし20mg/体重kg、ことさら特に好ましくは0.1ないし10mg/体重kgである。
【0109】
それにも拘わらず、必要に応じて、特に、体重、投与経路、有効成分に対する個体の応答、製剤の性質および投与を行う時間または間隔に応じて、上述の量から逸脱することが必要であり得る。従って、上述の最小量より少なくても十分な場合があり得、一方上述の上限を超えなければならない場合もある。大量に投与する場合、これらを1日に亘る複数の個別投与量に分割するのが望ましいことがある。
【0110】
以下の例示的実施態様は、本発明を例示説明する。本発明は、これらの実施例に限定されない。
下記の試験および実施例における百分率のデータは、断りの無い限り、重量パーセントである;部は、重量部である。液体/液体溶液の溶媒比、希釈比および濃度のデータは、各場合で体積を基準とする。
【実施例】
【0111】
A. 実施例
略号:
【表1】

【0112】
LC/MSの方法:
方法1(LC−MS)
MS装置タイプ:Micromass ZQ;HPLC装置タイプ:HP 1100 series; UV DAD;カラム:Phenomenex Synergi 2μ Hydro-RP Mercury 20 mm x 4 mm;移動相A:水1l+50%ギ酸0.5ml、移動相B:アセトニトリル1l+50%ギ酸0.5ml;グラジエント:0.0分90%A→2.5分30%A→3.0分5%A→4.5分5%A;流速:0.0分1ml/分→2.5分/3.0分/4.5分2ml/分;オーブン:50℃;UV検出:210nm。
【0113】
方法2(LC−MS)
MS装置タイプ:Micromass ZQ;HPLC装置タイプ:Waters Alliance 2795;カラム:Phenomenex Synergi 2μ Hydro-RP Mercury 20 mm x 4 mm;移動相A:水1l+50%ギ酸0.5ml、移動相B:アセトニトリル1l+50%ギ酸0.5ml;グラジエント:0.0分90%A→2.5分30%A→3.0分5%A→4.5分5%A;流速:0.0分1ml/分→2.5分/3.0分/4.5分2ml/分;オーブン:50℃;UV検出:210nm。
【0114】
方法3(LC−MS)
装置:HPLC Agilent Series 1100 を備えた Micromass Platform LCZ;カラム:Phenomenex Synergi 2μ Hydro-RP Mercury 20 mm x 4 mm;移動相A:水1l+50%ギ酸0.5ml、移動相B:アセトニトリル1l+50%ギ酸0.5ml;グラジエント:0.0分90%A→2.5分30%A→3.0分5%A→4.5分5%A;流速:0.0分1ml/分→2.5分/3.0分/4.5分2ml/分;オーブン:50℃;UV検出:210nm。
【0115】
方法4(LC−MS)
装置:HPLC Agilent Series 1100 を備えた Micromass Quattro LCZ;カラム:Phenomenex Synergi 2μ Hydro-RP Mercury 20 mm x 4 mm;移動相A:水1l+50%ギ酸0.5ml、移動相B:アセトニトリル1l+50%ギ酸0.5ml;グラジエント:0.0分90%A→2.5分30%A→3.0分5%A→4.5分5%A;流速:0.0分1ml/分→2.5分/3.0分/4.5分2ml/分;オーブン:50℃;UV検出:208−400nm。
【0116】
方法5(LC−MS)
装置:HPLC Agilent Series 1100 を備えた Micromass Platform LCZ;カラム:Thermo Hypersil GOLD 3μ 20 mm x 4 mm;移動相A:水1l+50%ギ酸0.5ml、移動相B:アセトニトリル1l+50%ギ酸0.5ml;グラジエント:0.0分100%A→0.2分100%A→2.9分30%A→3.1分10%A→5.5分10%A;オーブン:50℃;流速:0.8ml/分;UV検出:210nm。
【0117】
方法6(LC−MS)
MS装置タイプ:Micromass ZQ;HPLC装置タイプ:Waters Alliance 2795;カラム:Merck Chromolith SpeedROD RP-18e 100 mm x 4.6 mm;移動相A:水+50%ギ酸500μl/l、移動相B:アセトニトリル+50%ギ酸500μl/l;グラジエント:0.0分10%B→7.0分95%B→9.0分95%B;流速:0.0分1.0ml/分→7.0分2.0ml/分→9.0分2.0ml/分;オーブン:35℃;UV検出:210nm。
【0118】
方法7(LC−MS)
MS装置タイプ:Micromass ZQ;HPLC装置タイプ:HP 1100 Series; UV DAD;カラム:Phenomenex Gemini 3μ 30 mm x 3.00 mm;移動相A:水1l+50%ギ酸0.5ml、移動相B:アセトニトリル1l+50%ギ酸0.5ml;グラジエント:0.0分90%A→2.5分30%A→3.0分5%A→4.5分5%A;流速:0.0分1ml/分→2.5分/3.0分/4.5分2ml/分;オーブン:50℃;UV検出:210nm。
【0119】
方法8(LC−MS)
装置:HPLC Agilent Series 1100を備えた Micromass Quattro LCZ;カラム:Phenomenex Onyx Monolithic C18, 100 mm x 3 mm;移動相A:水1l+50%ギ酸0.5ml、移動相B:アセトニトリル1l+50%ギ酸0.5ml;グラジエント:0.0分90%A→2分65%A→4.5分5%A→6分5%A;流速:2ml/分;オーブン:40℃;UV検出:208−400nm。
【0120】
方法9(LC−MS)
MS装置タイプ:Waters ZQ;HPLC装置タイプ:Waters Alliance 2795;カラム:Phenomenex Onyx Monolithic C18, 100 mm x 3 mm;移動相A:水1l+50%ギ酸0.5ml、移動相B:アセトニトリル1l+50%ギ酸0.5ml;グラジエント:0.0分90%A→2分65%A→4.5分5%A→6分5%A;流速:2ml/分;オーブン:40℃;UV検出:210nm。
【0121】
GC/MSの方法:
方法1(GC−MS)
装置:Micromass GCT, GC6890;カラム:Restek RTX-35MS, 30 m x 250 μm x 0.25 μm;一定のヘリウム流速:0.88ml/分;オーブン:60℃;入口:250℃;グラジエント:60℃(0.30分間維持)、50℃/分→120℃、16℃/分→250℃、30℃/分→300℃(1.7分間維持)。
【0122】
方法2(GC−MS)
装置:Micromass GCT, GC6890;カラム:Restek RTX-35MS, 30 m x 250 μm x 0.25 μm;一定のヘリウム流速:0.88ml/分;オーブン:60℃;入口:250℃;グラジエント:60℃(0.30分間維持)、50℃/分→120℃、16℃/分→250℃、30℃/分→300℃(8.7分間維持)。
【0123】
HPLCの方法:
方法1(HPLC)
装置:DAD 検出を備えた HP 1100;カラム:Kromasil 100 RP-18, 60 mm x 2.1 mm, 3.5 μm;移動相A:HClO(70%)5ml/水1l、移動相B:アセトニトリル;グラジエント:0分2%B→0.5分2%B→4.5分90%B→9分90%B→9.2分2%B→10分2%B;流速:0.75ml/分;カラム温度:30℃;UV検出:210nm。
【0124】
方法2(HPLC)
装置:DAD 検出を備えた HP 1100;カラム:Kromasil 100 RP-18, 60 mm x 2.1 mm, 3.5 μm;移動相A:HClO(70%)5ml/水1l、移動相B:アセトニトリル;グラジエント:0分2%B→0.5分2%B→4.5分90%B→15分90%B→15.2分2%B→16分2%B;流速:0.75ml/分;カラム温度:30℃;UV検出:210nm。
【0125】
出発化合物および中間体:
実施例1A
(5−ブロモペンチル)ベンゼン
【化19】

0℃で、5−フェニルペンタン−1−オール50g(0.304mol)を48%強度臭化水素酸416.7ml(1.83mol)の溶液に添加し、混合物を0℃で30分間撹拌する。次いで、反応溶液を100℃で12時間撹拌する。反応が完了した後、混合物を室温に冷却し、酢酸エチル200mlを添加する。抽出後、有機相を分離し、飽和重炭酸ナトリウムで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させる。濾過後、濾液を蒸発乾固する。得られる粗生成物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(移動相:シクロヘキサン)により精製する。これにより、無色の液体59.4g(0.26mol、理論値の86%)を得る。
1H-NMR (300 MHz, CDCl3, δ/ppm): 7.32-7.22 (2H, m), 7.21-7.11 (3H, m), 3.40 (2H, t), 2.61 (2H, t), 1.97-1.81 (2H, m), 1.72-1.58 (2H, m), 1.56-1.39 (2H, m).
MS (CI): m/z = 226 (M+).
【0126】
実施例2A
4−フルオロ−2−(ヒドロキシメチル)フェノール
【化20】

酸素を排除して、メチル5−フルオロ−2−ヒドロキシベンゾエート27.1g(159.28mmol)を、先ず、乾燥THF500mlに加え、0℃に冷却する。次いで、冷却しながら、THF中の1M水素化リチウムアルミニウム溶液238ml(238mmol)をゆっくりと滴下して添加し、次いで、混合物を0℃で1時間撹拌し、次いで室温で終夜撹拌する。反応が完了した後、飽和塩化アンモニウム溶液を添加し、混合物をジクロロメタンに取る。有機相を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させる。濾過後、溶媒を減圧下で除去する。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(移動相:シクロヘキサン/酢酸エチル20:1)で精製する。これにより、無色の固体18.0g(126.6mmol、理論値の79%)を得る。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6, δ/ppm): 9.32 (1H, s), 7.06-7.03 (1H, m), 6.86-6.81 (1H, m), 6.74-6.71 (1H, m), 5.09 (1H, t), 4.45 (2H, d).
【0127】
実施例3A
(5−フルオロ−2−ヒドロキシベンジル)(トリフェニル)ホスホニウムブロミド
【化21】

アセトニトリル186ml中、4−フルオロ−2−(ヒドロキシメチル)フェノール18.6g(130.87mmol)およびトリフェニルホスホニウムヒドロブロミド42.67g(124.32mmol)を還流下で3時間撹拌する。冷却後、形成される沈殿を吸引濾過し、乾燥させる。これにより、表題化合物58g(124mmol、理論値の100%)を得る。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6, δ/ppm): 9.82 (1H, s), 7.95-7.84 (3H, m), 7.79-7.62 (12H, m), 7.02-6.91 (1H, m), 6.75-6.67 (1H, m), 6.66-6.58 (1H, m), 4.90 (2H, d).
【0128】
実施例4A
メチル4−(2−ヨードエチル)ベンゾエート
【化22】

メチル4−(2−クロロエチル)ベンゾエート[CAS登録番号65787−72−6]70g(352.4mmol)およびヨウ化カリウム146.2g(880.9mmol)を、アセトニトリル800mlに懸濁し、還流下で3日間撹拌する。反応が完了した後、反応溶液を冷却し、濾過し、濾液を減圧下で蒸発乾固する。得られる残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーにより精製する(移動相:石油エーテル/酢酸エチル30:1→20:1)。これにより、黄色がかった油状物101g(348.3mmol、理論値の98.8%)を得る。
LC-MS (方法 7): Rt = 2.66 分; m/z = 291 (M+H)+.
【0129】
実施例5A
ジアリルビス{2−[4−(メトキシカルボニル)フェニル]エチル}マロネート
【化23】

室温で、炭酸セシウム61.9g(190.02mmol)を、DMF100ml中のジアリルマロネート10g(54.3mmol)およびメチル4−(2−ヨードエチル)ベンゾエート47.25g(純度80%、130.3mmol)の溶液に添加し、次いで、混合物を室温で終夜撹拌する。反応が完了した後、反応溶液を蒸発乾固し、残渣を水100mlおよびジエチルエーテル100mlに取る。水相をジエチルエーテルで5回抽出し、合わせた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させる。濾過後、溶媒を減圧下で除去し、残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(移動相:石油エーテル/酢酸エチル10:1→5:1)で精製する。これにより、黄色がかった油状物22.64g(44.52mmol、理論値の82%)を得る。
LC-MS (方法 7): Rt = 3.14 分; m/z = 509 (M+H)+.
【0130】
実施例6A
4−[4−(メトキシカルボニル)フェニル]−2−{2−[4−(メトキシカルボニル)フェニル]エチル}ブタン酸
【化24】

室温で、ジオキサン50ml中のトリエチルアミン20.48ml(146.9mmol)およびギ酸4.2ml(111.29mmol)の溶液を、ジオキサン250ml中のジアリルビス{2−[4−(メトキシカルボニル)フェニル]エチル}マロネート22.64g(44.52mmol)、トリフェニルホスフィン0.82g(3.12mmol)および酢酸パラジウム200mgの溶液に添加する。次いで、反応混合物を100℃で終夜撹拌する。反応が完了した後、反応溶液を冷却し、溶媒を減圧下で除去する。得られる残渣を水および酢酸エチルに取る。水相を酢酸エチルで3回抽出し、合わせた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させる。濾過後、溶媒を減圧下で除去し、残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(移動相:シクロヘキサン/酢酸エチル4:1)で精製する。これにより、無色の固体10.4g(27.1mmol、理論値の61%)を得る。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6, δ/ppm): 12.30 (1H, s), 7.86 (4H, d), 7.31 (4H, d), 3.84 (6H, s), 2.72-2.56 (4H, m), 2.29-2.18 (1H, m), 1.92-1.69 (4H, m).
LC-MS (方法 7): Rt = 2.55 分; m/z = 385 (M+H)+.
【0131】
実施例7A
ジメチル4,4'−[3−(ヒドロキシメチル)ペンタン−1,5−ジイル]ジベンゾエート
【化25】

−10℃で、1Mボラン/THF錯体溶液54.1ml(54.1mmol)を、THF260ml中の4−[4−(メトキシカルボニル)フェニル]−2−{2−[4−(メトキシカルボニル)フェニル]エチル}ブタン酸10.4g(27.1mmol)の溶液に滴下して添加する。次いで、反応混合物を0℃に温め、この温度で4時間撹拌する。反応が完了した後、飽和塩化アンモニウム溶液を添加し、反応混合物を水および酢酸エチルで希釈し、水相を酢酸エチルで2回抽出する。合わせた有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去する。これにより、無色の油状物8.73g(23.56mmol、理論値の87%)を得る。
LC-MS (方法 7): Rt = 2.62 分; m/z = 371 (M+H)+.
【0132】
実施例8A
ジメチル4,4'−(3−ホルミルペンタン−1,5−ジイル)ジベンゾエート
【化26】

ピリジニウムクロロクロメート(PCC)6.1g(28.3mmol)を、ジクロロメタン280ml中のジメチル4,4'−[3−(ヒドロキシメチル)ペンタン−1,5−ジイル]ジベンゾエート8.73g(23.6mmol)の溶液に添加し、混合物を室温で12時間撹拌する。反応が完了した後、約10gのシリカゲルを添加し、乾燥するまで減圧下で溶媒を除去する。残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(移動相:シクロヘキサン/酢酸エチル4:1)により精製する。これにより、無色の油状物7.08g(19.22mmol、理論値の81.5%)を得る。
LC-MS (方法 2): Rt = 2.61 分; m/z = 369 (M+H)+.
【0133】
実施例9A
メチル4−[(4E)−5−(5−フルオロ−2−ヒドロキシフェニル)−3−{2−[4−(メトキシカルボニル)フェニル]エチル}ペント−4−エン−1−イル]ベンゾエート
【化27】

0℃で、ヘキサン中の2.5Mn−ブチルリチウム溶液2.95ml(7.39mmol)を、THF40ml中の(5−フルオロ−2−ヒドロキシベンジル)(トリフェニル)ホスホニウムブロミド1479mg(3.2mmol)の溶液にゆっくりと滴下して添加する。反応混合物をこの温度でさらに45分間撹拌する。次いで、0℃で、THF10ml中のジメチル4,4'−(3−ホルミルペンタン−1,5−ジイル)ジベンゾエート1080mg(2.64mmol)をゆっくりと量り入れる。反応溶液を0℃で5時間撹拌し、次いで、飽和塩化アンモニウム溶液を添加し、混合物を水および酢酸エチルで希釈する。有機相を分離し、水相を酢酸エチルでもう2回抽出する。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を乾燥するまで除去する。得られる粗生成物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(移動相:シクロヘキサン/酢酸エチル4:1)により精製する。これにより無色の油状物529mg(1.11mmol、理論値の42%)を得る。
LC-MS (方法 2): Rt = 3.01 分; m/z = 477 (M+H)+.
【0134】
実施例10A
メチル4−[(4E)−5−(2−ヒドロキシフェニル)−3−{2−[4−(メトキシカルボニル)フェニル]エチル}ペント−4−エン−1−イル]ベンゾエート
【化28】

0℃で、ヘキサン中の2.5Mn−ブチルリチウム溶液2.95ml(7.39mmol)を、THF40ml中の(2−ヒドロキシベンジル)(トリフェニル)ホスホニウムブロミド1422mg(3.2mmol)の溶液にゆっくりと滴下して添加する。反応混合物をこの温度でさらに45分間撹拌する。次いで、0℃で、THF10ml中のジメチル4,4'−(3−ホルミルペンタン−1,5−ジイル)ジベンゾエート1080mg(2.64mmol)をゆっくりと量り入れる。反応溶液を0℃で5時間撹拌し、次いで、飽和塩化アンモニウム溶液を添加し、混合物を水および酢酸エチルで希釈する。有機相を分離し、水相を酢酸エチルでもう2回抽出する。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を乾燥するまで除去する。得られる粗生成物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(移動相:シクロヘキサン/酢酸エチル4:1)により精製する。これにより、無色の油状物169mg(0.37mmol、理論値の14%)を得る。
LC-MS (方法 2): Rt = 3.02 分; m/z = 459 (M+H)+.
【0135】
実施例11A
メチル4−[(4E)−5−(5−フルオロ−2−{[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]オキシ}フェニル)−3−{2−[4−(メトキシカルボニル)フェニル]エチル}ペント−4−エン−1−イル]ベンゾエート
【化29】

1−(ブロモメチル)−4−(トリフルオロメチル)ベンゼン280mg(1.2mmol)および無水炭酸カリウム162mg(1.2mmol)を、乾燥アセトニトリル6.5ml中のメチル4−[(4E)−5−(5−フルオロ−2−ヒドロキシフェニル)−3−{2−[4−(メトキシカルボニル)フェニル]エチル}ペント−4−エン−1−イル]ベンゾエート279mg(0.59mmol)の溶液に添加し、次いで、混合物を60℃で12時間加熱する。次いで、混合物を濾過し、濾液を蒸発乾固する。残渣を分取HPLCにより精製する。これにより、無色の油状物274mg(0.43mmol、理論値の74%)を得る。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6, δ/ppm): 7.81 (4H, d), 7.74-7.62 (4H, m), 7.41-7.34 (1H, m), 7.29 (4H, d), 7.14-7.01 (2H, m), 6.63 (1H, d), 6.27-6.15 (1H, m), 5.24 (2H, s), 3.83 (6H, s), 2.75-2.55 (4H, m), 2.19-2.06 (1H, m), 1.85-1.73 (2H, m), 1.73-1.60 (2H, m).
LC-MS (方法 7): Rt = 3.50 分; m/z = 635 (M+H)+.
【0136】
例示的実施態様:
実施例1
4−[(4E)−3−[2−(4−カルボキシフェニル)エチル]−5−(5−フルオロ−2−{[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]オキシ}フェニル)ペント−4−エン−1−イル]安息香酸
【化30】

水酸化リチウム29mg(1.23mmol)を、THF10mlおよび水10ml中のメチル4−[(4E)−5−(5−フルオロ−2−{[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]オキシ}フェニル)−3−{2−[4−(メトキシカルボニル)フェニル]エチル}ペント−4−エン−1−イル]ベンゾエート260mg(0.41mmol)の溶液に添加し、混合物を50℃で12時間撹拌する。次いで、1M塩酸を使用して混合物をpH2に調節し、濃縮する。得られる残渣を分取HPLCにより直接精製する。これにより、表題化合物182mg(0.29mmol、理論値の72%)を得る。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6, δ/ppm): 12.80 (2H, broad), 7.80 (4H, d), 7.75-7.64 (4H, m), 7.41-7.35 (1H, m), 7.27 (4H, d), 7.15-7.00 (2H, m), 6.66 (1H, d), 6.28-6.18 (1H, m), 5.75 (2H, s), 2.74-2.55 (4H, m), 2.22-2.11 (1H, m), 1.85-1.72 (2H, m), 1.72-1.59 (2H, m).
LC-MS (方法 9): Rt = 4.38 分; m/z = 607 (M+H)+.
【0137】
下表で与えられる実施例は、実施例1の合成と同様の方法で得られる:
【表2】

【0138】
【表3】

【0139】
B. 薬理活性の評価
本発明による化合物の薬理効果を、以下のアッセイで示すことができる:
B−1. インビトロの血管弛緩効果:
ウサギを麻酔し、チオペンタールナトリウム(約50mg/kg)の静脈内注射により殺し、失血させる。伏在動脈を取り出し、3mm幅の輪に分ける。端の開いた、厚さ0.3mmの特別なワイヤー(Remanium(登録商標))からなる各々一対の三角形のフックに、輪を1つずつ載せる。各輪を、Krebs-Henseleit 溶液(37℃であり、95%O/5%COでガス処理され、以下の組成:NaCl 119mM;KCl 4.8mM;CaClx2HO 1mM;MgSOx7HO 1.4mM;KHPO 1.2mM;NaHCO 25mM;グルコース10mM;ウシ血清アルブミン0.001%を有する)を含む5mlの器官浴中で、当初張力下に置く。Statham UC2 セルで収縮力を検出し、A/D変換器 (DAS-1802 HC、Keithley Instruments, Munich)で増幅およびデジタル化し、チャートレコーダーで平行して記録する。フェニレフリンの添加により収縮を誘導する。
【0140】
数回(一般的に4回)の対照試行の後、被験物質を各々の実施毎に増大する用量で添加し、試験物質の影響下で達成される収縮の高さを、最後の先行する実施で達した収縮の高さと比較する。先行する対照で達した収縮を50%まで低減するのに必要な濃度をこれから算出する(IC50)。標準的適用量は、5μlである。浴溶液中のDMSOの割合は、0.1%に相当する。
【0141】
本発明による化合物の代表的な結果を表1に挙げる:
表1:インビトロの血管弛緩効果
【表4】

【0142】
B−2. インビトロの組換え可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)の刺激:
ニトロプルシドナトリウムの有無およびヘム依存性sGC阻害剤1H−1,2,4−オキサジアゾール−(4,3a)−キノキサリン−1−オン(ODQ)の有無のもとで、本発明の化合物による組換え可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)の刺激に関する調査を、以下の参考文献中で詳細に説明された方法により実施する:M. Hoenicka, E.M. Becker, H. Apeler, T. Sirichoke, H. Schroeder, R. Gerzer and J.-P. Stasch, "Purified soluble guanylyl cyclase expressed in a baculovirus/Sf9 system: Stimulation by YC-1, nitric oxide, and carbon oxide", J. Mol. Med. 77 (1999), 14-23。ヘム不含グアニル酸シクラーゼを、Tween20をサンプルバッファーに添加することにより得る(最終濃度0.5%)。
【0143】
試験物質によるsGCの活性化は、基底活性のn倍の刺激として報告される。実施例1の結果を表2に示す:
表2:実施例1によるインビトロの組換え可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)の刺激(n倍)
【表5】

[DEA/NO=2−(N,N−ジエチルアミノ)ジアゼノレート2−オキシド;ODQ=1H−1,2,4−オキサジアゾール−(4,3a)−キノキサリン−1−オン]
【0144】
ヘム含有およびヘム不含酵素の両方の刺激が達成されることが、表2から明らかである。さらに、実施例1と2−(N,N−ジエチルアミノ)ジアゼノレート2−オキシド(DEA/NO)(NO供給源)の組合せは、相乗効果を示さない。即ち、DEA/NOの効果は、ヘムに依存するメカニズムを介して作用するsGC活性化剤に予測される通りには増強されない。加えて、本発明によるsGC活性化剤の効果は、可溶性グアニル酸シクラーゼのヘムに依存する阻害剤であるODQにより遮断されず、実際には増加する。従って、表2の結果は、本発明による化合物の可溶性グアニル酸シクラーゼ活性化剤としての作用メカニズムを裏付ける。
【0145】
B−3. 覚醒SHラットの血圧および心拍数のラジオテレメトリー(radiotelemetric)測定
購入できる Data Sciences International DSI, USA の遠隔測定システムを、下記の覚醒SHラットの測定に用いる。
そのシステムは、3つの主要部からなる:(1)埋込式伝達装置、(2)受信装置これは、マルチプレクサを介して(3)データ取得コンピューターに連結している。遠隔測定システムは、覚醒している動物の血圧および心拍数を、それらの通常の生息環境で連続的に記録することを可能にする。
【0146】
体重>200gの成体の雌の自然発症高血圧ラット(SHラット)で調査を実施する。伝達装置の埋込後、タイプ3の Makrolon ケージで実験動物を一匹ずつ飼育する。それらは、標準的な飼料および水に自由に接近できる。実験室の昼/夜リズムを、室内照明により朝の6.00および晩の19.00に切り替える。
【0147】
用いる遠隔測定の伝達装置 (TAM PA C40、DSI) を、最初の実験的使用の少なくとも14日前に、外科的に無菌条件下で実験動物に埋め込む。かくして装置を備えた動物を、創傷が治癒し、埋込が確立した後、繰り返し用いることができる。
【0148】
埋込のために、絶食動物をペントバルビタール(Nembutal, Sanofi, 50 mg/kg i.p.)で麻酔し、腹部側面の大領域にわたり除毛および消毒する。白線に沿って腹腔を開き、液体で満たされたシステムの測定カテーテルを、下行大動脈に頭蓋方向に二分岐の上で挿入し、組織接着剤(VetBonD(商標), 3M)で固定する。伝達装置の収納箱を腹腔内で腹壁筋に固定し、創傷の層閉鎖(layered closure)を実施する。感染予防のために、抗生物質(Tardomyocel COMP, Bayer, 1 ml/kg s.c.)を術後に投与する。
【0149】
実験の概要:
被験物質を、各場合で動物の群(n=6)に胃管栄養により経口投与する。試験物質を、5ml/体重kgの投与量に適するように、適する溶媒混合物に溶解するか、または、0.5%強度 Tylose に懸濁する。動物の溶媒処置群を対照として用いる。
24匹の動物に遠隔測定ユニットを設定する。各実験を実験番号で記録する。
【0150】
システム中で生きている装置を備えたラットの各々に、別々の受診アンテナ(1010 Receiver, DSI)を割り当てる。埋め込まれた伝達装置は、組み込まれた磁気スイッチを利用して外側から起動でき、実験直前に伝達に切り替えられる。発信されたシグナルを、データ取得システム(Dataquest(商標) A.R.T. for Windows, DSI)によりオンラインで検出でき、適切に処理できる。各場合で実験番号のついたファイルにデータを保存し、それをこの目的で開く。
【0151】
標準的な方法で、以下のものを各場合で10秒間測定する:(1)収縮期血圧(SBP)、(2)拡張期血圧(DBP)、(3)平均動脈圧(MAP)および(4)心拍数(HR)。
【0152】
コンピューター制御下で測定値の取得を5分間隔で繰り返す。絶対値として得られる原始データを、図中で現在の測定された気圧により補正し、個々のデータに保存した。さらなる技術的詳細は、製造会社(DSI)の資料に記載されている。
【0153】
実験当日の9.00時に試験物質を投与する。投与後、上記のパラメーターを24時間にわたり測定する。実験終了後、分析ソフトウエア(Dataquest(商標)A.R.T. Analysis)を使用して、取得した個々のデータを分類する。選択されるデータのセットが実験当日の7.00時から翌日の9.00時までの期間を含むように、無効値を物質投与の2時間前の時間であると仮定する。
【0154】
事前に設定できる時間にわたって、平均(15分平均、30分平均)を決定することによりデータをならし、テキストファイルとして記録媒体に移す。かくして予め分類および圧縮された測定値を、Excel テンプレートに移し、表を作成する。
【0155】
C. 医薬組成物の例示的実施態様
本発明による化合物は、以下の方法で医薬製剤に変換できる:
錠剤:
組成:
本発明による化合物100mg、ラクトース(一水和物)50mg、トウモロコシデンプン(天然)50mg、ポリビニルピロリドン(PVP25)10mg(BASFより、Ludwigshafen, Germany)およびステアリン酸マグネシウム2mg。
錠剤重量212mg。直径8mm、曲率半径12mm。
製造:
本発明による化合物、ラクトースおよびスターチの混合物を、5%強度PVP水溶液(m/m)で造粒する。顆粒を乾燥させ、ステアリン酸マグネシウムと5分間混合する。この混合物を常套の打錠機で打錠する(錠剤の形状について、上記参照)。打錠のためのガイドラインの打錠力は、15kNである。
【0156】
経口投与できる懸濁剤:
組成:
本発明による化合物1000mg、エタノール(96%)1000mg、Rhodigel(登録商標) (FMC のキサンタンガム、Pennsylvania, USA) 400mgおよび水99g。
経口懸濁剤10mlは、本発明による化合物100mgの単回用量に相当する。
製造:
Rhodigel をエタノールに懸濁し、本発明による化合物を懸濁液に添加する。撹拌しながら水を添加する。Rhodigel の膨潤が完了するまで、混合物を約6時間撹拌する。
【0157】
経口投与できる液剤:
組成:
本発明による化合物500mg、ポリソルベート2.5gおよびポリエチレングリコール400 97g。経口液剤20gは、本発明による化合物100mgの単回用量に相当する。
製造:
本発明による化合物を、ポリエチレングリコールおよびポリソルベートの混合物に撹拌しながら懸濁する。本発明による化合物が完全に溶解するまで、混合過程を継続する。
【0158】
i.v.溶液:
本発明による化合物を、生理的に耐容される溶媒(例えば、等張塩水、5%グルコース溶液および/または30%PEG400溶液)に飽和溶解度より低い濃度で溶解する。溶液を濾過滅菌し、無菌のパイロジェンを含まない注射容器に満たすのに使用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[式中、
Aは、式
【化2】

{式中、
*は基Dへの結合点を表し、そして、
Eは、結合、−CH−、−CH−CH−または−CH=CH−を表す}
の基を表し、
Dは、結合を表すか、または、(C−C)−アルカンジイル、(C−C)−アルカンジイル−O−、(C−C)−アルケンジイルまたは(C−C)−アルキンジイルを表し、これらの各々は、フッ素により一置換または多置換されていてもよく、ここで、は、基Aへの結合点を表し、
、R、R、R、RおよびRは、相互に独立して、ハロゲン、(C−C)−アルキル、(C−C)−アルコキシ、シアノおよびニトロからなる群から選択される置換基を表し、ここで、アルキルおよびアルコキシは、フッ素により一置換または多置換されていてもよく、
そして、
n、o、p、q、rおよびsは、相互に独立して、各々0、1、2、3または4の数を表し、
ここで、R、R、R、R、RまたはRが1個より多く存在するならば、それらの意味は各場合で同一であっても異なっていてもよい]
の化合物、並びにその塩、溶媒和物および塩の溶媒和物。
【請求項2】
式中、
Aが、式
【化3】

{式中、*は基Dへの結合点を表す}
の基を表し、
Dが、結合または(C−C)−アルカンジイルを表し、
、R、RおよびRが、相互に独立して、フッ素、塩素、臭素、(C−C)−アルキル、トリフルオロメチル、(C−C)−アルコキシおよびトリフルオロメトキシからなる群から選択される置換基を表し、
n、q、rおよびsが、相互に独立して、各々、0、1または2の数を表し、
ここで、R、R、RまたはRが1個より多く存在するならば、それらの意味は各場合で同一であっても異なっていてもよく、
およびRが、各々フッ素を表し、
そして、
oおよびpが、相互に独立して、各々、0または1の数を表す、
請求項1に記載の式(I)の化合物、並びにその塩、溶媒和物および塩の溶媒和物。
【請求項3】
式(I−A)
【化4】

[式中、
Dは、(C−C)−アルカンジイルを表し、
は、水素またはフッ素を表し、
は、フッ素、塩素、メチル、tert−ブチル、トリフルオロメチル、メトキシおよびトリフルオロメトキシからなる群から選択される置換基を表し、
そして、
qは、0、1または2の数を表し、
ここで、置換基Rが2個存在するならば、その意味は同一であっても異なっていてもよい]
の請求項1または請求項2に記載の化合物並びにその塩、溶媒和物および塩の溶媒和物。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の式(I)または(I−A)の化合物の製造方法であって、式(II)
【化5】

(式中、R、R、oおよびpは、各々請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の意味を有し、そして、
およびTは、同一であるかまたは異なり、(C−C)−アルコキシカルボニルを表す)
の化合物を、
[A]不活性溶媒中、塩基の存在下、式(III−A)
【化6】

(式中、A、D、Rおよびnは、各々請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の意味を有し、そして、
Lは、フェニルまたはo−、m−またはp−トリルを表し、
そして、
Xは、ハライドまたはトシレートを表す)
の化合物を用いて、式(IV−A)
【化7】

(式中、A、D、R、R、R、n、o、p、TおよびTは、各々上記の意味を有する)
の化合物に変換するか、
または、
[B]不活性溶媒中、塩基の存在下、式(III−B)
【化8】

(式中、R、n、LおよびXは、各々上記の意味を有する)
の化合物を用いて、先ず、式(IV−B)
【化9】

(式中、R、R、R、n、o、p、TおよびTは、各々上記の意味を有する)
の化合物に変換し、次いで、これらを、不活性溶媒中、塩基の存在下、式(V)
【化10】

(式中、AおよびDは請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の意味を有し、そして、
Qは、ハロゲン、トシレートまたはメシレートなどの脱離基を表す)
の化合物とカップリングし、式(IV−C)
【化11】

(式中、A、D、R、R、R、n、o、p、TおよびTは、各々上記の意味を有する)
の化合物を得、
次いで、得られる式(IV−A)または(IV−C)の化合物を、エステル基TおよびTの加水分解により、式(I)のジカルボン酸に変換し、
そして、式(I)の化合物を、必要に応じて、当業者に知られている方法でそれらのエナンチオマーおよび/またはジアステレオマーに分離し、かつ/または、必要に応じて、適当な(i)溶媒および/または(ii)塩基もしくは酸と反応させ、これらの溶媒和物、塩および/または塩の溶媒和物を得ることを特徴とする、方法。
【請求項5】
疾患の処置および/または予防のための、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
心不全、狭心症、高血圧、肺高血圧、虚血、血管障害、血栓塞栓性障害および動脈硬化症の処置および/または予防用の医薬を製造するための、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項7】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の化合物を、不活性、非毒性の医薬的に適する補助剤と組み合わせて含む、医薬。
【請求項8】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の化合物を、有機硝酸塩、NO供給源、cGMP−PDE阻害剤、グアニル酸シクラーゼの刺激剤、抗血栓活性を有する物質、血圧を下げる物質および脂質代謝を改変する物質からなる群から選択される1種またはそれ以上のさらなる有効成分と組み合わせて含む、医薬。
【請求項9】
心不全、狭心症、高血圧、肺高血圧、虚血、血管障害、血栓塞栓性障害および動脈硬化症の処置および/または予防のための、請求項7または請求項8に記載の医薬。
【請求項10】
少なくとも1種の請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の化合物または請求項7ないし請求項9のいずれかに記載の医薬の有効量の投与による、ヒトおよび動物の心不全、狭心症、高血圧、肺高血圧、虚血、血管障害、血栓塞栓性障害および動脈硬化症の処置および/または予防方法。

【公表番号】特表2010−522703(P2010−522703A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500107(P2010−500107)
【出願日】平成20年3月15日(2008.3.15)
【国際出願番号】PCT/EP2008/002091
【国際公開番号】WO2008/119458
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
【出願人】(507113188)バイエル・シェーリング・ファルマ・アクチェンゲゼルシャフト (141)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Schering Pharma Aktiengesellschaft
【Fターム(参考)】