置換有機硫黄化合物およびその使用方法
【課題】置換ジ−スルフィド化合物、トリ−スルフィド化合物、テトラ−スルフィド化合物及びペンタ−スルフィド化合物及び組成物、並びに細胞増殖性疾患の処置及び/又は予防のためのその使用方法を提供すること。
【解決手段】本発明はまた、トリスルフィド化合物及び組成物の調製方法を提供する。本発明に記載される化合物は、抗腫瘍活性、抗癌活性、抗炎症活性、抗感染活性、及び/又は抗増殖活性を示す。本発明は有機硫黄化合物の製造及び製剤化方法にも関する。
【解決手段】本発明はまた、トリスルフィド化合物及び組成物の調製方法を提供する。本発明に記載される化合物は、抗腫瘍活性、抗癌活性、抗炎症活性、抗感染活性、及び/又は抗増殖活性を示す。本発明は有機硫黄化合物の製造及び製剤化方法にも関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2004年4月20日に出願された米国特許仮出願第60/564,151号に関する。この文書の内容は、本明細書中で参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は有機硫黄化合物及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
癌は依然として、人類にとって最も重要な、未だかなえられていない医学的課題の一つである。外科手術、放射線療法、化学療法,又はこれらの方法の組み合わせなど、腫瘍を治療するためのいくつかの選択肢が利用可能である。これらの中で、化学療法は全てのタイプの癌、特に、手術不可能な、あるいは転移性の癌に対して広く使用されている。様々な化学療法化合物が臨床において使用されているにもかかわらず、化学療法は概して治癒的でなく、病気の進行を遅らせるにすぎない。通常、腫瘍及びその転移に対して化学療法は効かなくなってくるが、これは、腫瘍細胞が多剤耐性能を発達するからである。いくつかの場合において、腫瘍はあるクラスの化学療法薬に対して本質的に耐性を示す。別の場合では、化学療法による治療中に、その化学療法薬に対し獲得された耐性が発達する。したがって、様々なクラスの腫瘍を治療する際の、利用可能な化学療法化合物の有効性に対する大きな制約が依然として存在する。さらに、腫瘍の化学的治療のために使用される多くの細胞傷害性及び細胞増殖抑制性の薬剤は重篤な副作用を示し、結果的に化学療法を停止する患者もいる。したがって、新規な化学療法薬が依然として必要とされている。
【0004】
ジベンジルトリスルフィド(DBTS)は、亜熱帯地方の低木Petiveria alliacea L.(Phytolaccaceae)から単離された、生物学的に活性なポリスルフィド二次代謝産物である。DBTSは免疫調節活性を有することが報告されている(非特許文献1;非特許文献2)。その免疫調節活性におけるDBTSの細胞的及び分子的メカニズムを研究して、Rosnerとその同僚らは、DBTSがウシ血清アルブミンの芳香族領域に優先的に結合し、又、SH−SY5Y神経芽細胞腫細胞においてMAPキナーゼ(erk1/erk2)のチロシン残基の脱リン酸化を低減することを報告した(非特許文献3)。さらに、彼らは、DBTSが、SH−SY5Y神経芽細胞腫細胞及びWistar38ヒト肺線維芽細胞において、微小管の不可逆的な分解を引き起こし、又、アクチンの運動性には影響を与えなかったことを報告した。さらに、彼らは、DBTSが神経芽細胞腫細胞の増殖および脊髄外移植片からの神経突起伸長も抑制することを報告した。
【0005】
別の研究において、Mata−Greenwoodとその同僚らは、様々な植物由来の多数の抽出物セットにおける抗増殖活性及び分化活性について調べた(非特許文献4)。彼らは、Petiveria alliacea L.の根の親油性抽出物、及びこの親油性抽出物からの活性画分が、HL−60前骨髄球細胞において抗増殖活性及び抗分化活性を示すことを報告した。この親油性抽出物の活性画分から、彼らは、2つの活性有機硫黄化合物、すなわち、2−[(フェニルメチル)ジチオ]エタノール及びジベンジルトリスルフィドを単離した。彼らはこれら2つの有機硫黄化合物が単球に類似した分化と強い細胞傷害性を誘導することを報告した。さらに、彼らは、これら2つの単離物がいずれもHL−60細胞において抗増殖活性を示さないことを報告した。
【非特許文献1】Williams,L.A.D.,Gardner,T.L.,Fletcher,C.K.,Naravane,A.,Gibbs,N.およびFleischhacker,R.“Immunomodulatory activities of Petiveria alliacea.”,Phytother.Res.,1997,11,251−253
【非特許文献2】Williams,L.A.D.,Vasquez,E.,Klaiber,I.,Kraus,W.およびRosner,H.“A sulfonic anhydride derivative from dibenzyl trisulphide with agro−chemical activities”,Chemosphere,2003,51,701−706
【非特許文献3】Rosner,H.,Williams,L.A.D.,Jung,A.およびKraus,W“Disassembly of microtubles and inhibition of neurite outgrowth,neuroblastoma cell proliferation,and MAP kinase tyrosine dephosphorylation by dibenzyl trisulphide”,.Biochim.Biophy.Acta,2001,1540,166−177
【非特許文献4】Mata−Greenwood,E.,Ito A.,Westernburg,H.,Cui,B.,Mehta,R.G.,Kinghorn,A.D.およびPezzuto,J.M.“Discovery of novel inducers of cellular differentiation using HL−60 promyeolocytic cells”Anticancer Res.2001,21,1763−1770
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の開示)
本発明は、有機硫黄化合物、医薬組成物、及びその使用方法に関する。より詳細には、本発明は、置換ジ−スルフィド化合物、トリ−スルフィド化合物、テトラ−スルフィド化合物及びペンタ−スルフィド化合物に関し、この化合物には、その薬学上許容し得る塩及び部分的に酸化されたスルホン誘導体も含まれる。本発明に記載される化合物は、抗腫瘍活性、抗癌活性、抗炎症活性、抗感染活性、及び/又は抗増殖活性を示す。本発明は有機硫黄化合物の製造及び製剤化方法にも関する。
【0007】
一実施形態において、本発明は、以下の式で表される化合物
【0008】
【化14】
式中、A及びBは、同じであるか又は異なり、且つ、独立して、置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール、又は単環式若しくは多環式であってもよく、そしてヘテロ原子を含んでいてもよい5〜14員環であり;
各Sは酸化物の形態であってもよく;
S1及びS2は、独立して、S、SO又はSO2であり;
各Rは、H、ハロゲン、カルボキシル、シアノ、アミノ、アミド、無機置換基、SR1、OR1又はR1であり、この場合、各R1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、炭素環又は複素環であり、それらの各々が置換されていてもよく、又、ヘテロ原子を含んでいてもよく;
m、n及びpは、独立して、0〜3である、化合物;
又は、以下の式(3)若しくは(4)で表される化合物:
【0009】
【化15】
式中、A、B、R、S、n及びpは上記定義の通りである、化合物;
又は、以下の式(5)で表される化合物:
【0010】
【化16】
式中、A、B、S、n及びpは上記定義の通りであり;且つ、
Zは(CR12)q又は(CR1=CR1)q*であり、この場合、qは0〜3であり、且つ、*は、アルキニル、O、S、NRによって置換されていてもよいC=Cを表し;又は、Zは置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール又は複素環であり;
式中、AとBは一緒に環状環系を形成してもよい、化合物;
但し、前記化合物が、ジベンジルトリスルフィド、ジ(p−クロロベンジル)トリスルフィド、(p−クロロベンジル)ベンジルトリスルフィド、ジ(p−ニトロベンジル)トリスルフィド、ジ(3−フェニル−2−プロペニル)−トリスルフィド、ジフェニルトリスルフィド、又はジ(p−t−ブチルフェニル)トリスルフィドでない、化合物;
及びその薬学上許容し得る塩、エステル、プロドラッグ又は代謝産物;
を提供する。
【0011】
上記式1〜5において、各Zは、
【0012】
【化17】
であることができ、
式中、各Wは、独立して、結合、CR、N、NR、S、又はOであり;
各Rは、上記定義の通りである。
【0013】
上記式1〜5において、各Rは、H、ハロ、OR1、SR1、CO2R1、CONR12、C=O、CN、CF3、OCF3、NO2、NR1R1、OCOR1であるか;又は、Rは、それぞれがヘテロ原子を含んでいてもよい、C1−10アルキル、C3−10環状アルキル、C2−10アルケニル、C2−10アルキニル、アリール、ヘテロアリール、炭素環又は複素環であることができる。
【0014】
上記式1〜5において、それぞれA及びBは、ベンゼン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、イソオキサゾール、イソチアゾール、オキサジアゾール、[1,2,4]オキサジアゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ピロール、フラン、チオフェンインドリジン、インドール、イソインドール、インドリン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、プリン、キノキサリン、キノリン、イソキノリン、シノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、プテリジン、アクリジン、フェナジン、フェノチアジン、インデン、ナフタレン、ベンゾオキサジアゾール,又はベンゾ[1,2,5]−オキサジアゾールであることができる。
【0015】
別の態様において、それぞれA及びBは、独立して、
【0016】
【化18】
であり、
式中、X及びWは、独立して、S、O、NR7、CR7であるか;
又は、6員の単環若しくは二環において1つのWは結合であってもよく;且つ、
各R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7は、H、ハロゲン、カルボキシル、シアノ、アミノ、アミド、無機置換基、SR1、OR1又はR1であり、この場合、各R1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、炭素環又は複素環であって、それらの各々が置換されていてもよく、又、ヘテロ原子を含んでいてもよい。例えば、各R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7は、独立して、H、ハロ、OR1、SR1、CO2R1、CONR12、C=O、CN、CF3、OCF3、NO2、NR1R1、OCOR1であるか;又は、各R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7は、それらの各々がヘテロ原子を含んでいてもよい、C1−10アルキル、C3−10環状アルキル、C2−10アルケニル、C2−10アルキニル、アリール、ヘテロアリール、炭素環又は複素環であることができる。
【0017】
アリール、ヘテロアリール、又は複素環の例は、限定するものではないが、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、フェニル、フラニル、チオフェニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、キノキサリニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、キノリニル、ナフタレニル、ピリダジニル、ピラゾロピリミジニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゼン−チオフェン、ピラゾリル、ピロリル、インドリル、イソインドリル、キノリジニル、キノリニル、イソキノリニル、又はキナゾリニルであり、それぞれは、O、N、S及びハロから選択されるヘテロ原子によって置換されていてもよく;又は、それらの各々がヘテロ原子を含んでいてもよい、C1−10アルキル、C3−10環状アルキル、C2−10アルケニル、C2−10アルキニル、アリール、又は複素環によって置換されていてもよい。
【0018】
上記式1〜5において、各Sは、一酸化物又は二酸化物であることができる。
【0019】
別の態様において、本化合物は、以下の式(6)
【0020】
【化19】
で表され、
各nは、1〜3であり;且つ、
Rは、H、ハロ、アルキル又はハロゲン化アルキルである。
【0021】
さらに別の態様において、本化合物は、以下の式(7)
【0022】
【化20】
で表され、
この場合、Arは、置換されていてもよい、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピリジン又はピラジンである。
【0023】
式1〜5で表される化合物の例は、限定するものではないが、ジ(フルオロベンジル)トリスルフィド、ジ(o−クロロベンジル)トリスルフィド、ジ(メチルベンジル)トリスルフィド、ジ(トリフルオロメチルベンジル)トリスルフィド、ジ(2−フェニルエチル)トリスルフィド、ジ(2−チオフェン−イル−メチル)トリスルフィド、ジ(4−ピリジン−イル−エチル)トリスルフィド、ジ(2−ピリミジン−イル−エチル)トリスルフィド、又はジ(3−ベンゾチオフェン−イル−メチル)トリスルフィドである。特定の例において、本化合物は、ジ(p−フルオロベンジル)トリスルフィド、ジ(m−メチルベンジル)トリスルフィド、又はジ−(p−メチルベンジル)トリスルフィドが挙げられる。
【0024】
別の実施形態において、本発明は、上記の式1〜5で表される化合物を含む組成物の製造方法を提供し、その方法に従って調製された組成物も提供する。一態様において、本発明は、a)溶液を得るために、請求項1に記載の化合物を、水溶性有機溶媒、非イオン性溶媒、水溶性脂質、シクロデキストリン、ビタミン、脂肪酸、脂肪酸エステル、リン脂質、又はこれらの組み合わせ中に溶解させる工程;及び、b)生理食塩水又は1〜10%の炭水化物溶液を含むバッファーを添加する工程;を含む方法を提供する。有機溶媒は、ポリエチレングリコール(PEG)、アルコール、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、又はこれらの組み合わせであることができる。
【0025】
上記方法において、非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレングリセロール−トリリシノレート35、PEG−コハク酸、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポリエチレングリコール660 12−ヒドロキシステアレート、ソルビタンモノオレエート、ポリオキサマー、エトキシル化杏仁油、カプリル−カプロイルマクロゴール−8−グリセリド、グリセロールエステル、PEG6カプリルグリセリド、グリセリン、グリコール−ポリソルベート、又はこれらの組み合わせであることができる。非イオン性界面活性剤の特定の例は、ポリエチレングリコール改変CREMOPHOR(登録商標)(ポリオキシエチレングリセロールトリリシノレート35)、CREMOPHOR(登録商標)EL、水素化CREMOPHOR(登録商標)RH40、水素化CREMOPHOR(登録商標)RH60、SOLUTOL(登録商標)HS(ポリエチレングリコール660 12−ヒドロキシステアレート)、LABRAFIL(登録商標)(エトキシル化杏仁油)、LABRASOL(登録商標)(カプリル−カプロイルマクロゴール−8−グリセリド)、GELUCIRE(登録商標)(グリセロールエステル)、及びSOFTIGEN(登録商標)(PEG6カプリリルグリセリド)である。
【0026】
上記方法において、脂質は、植物性油脂、トリグリセリド、植物油、又はこれらの組み合わせであることができる。例えば、脂質は、ヒマシ油、ポリオキシルヒマシ油、トウモロコシ油、オリーブ油、綿実油、ピーナッツ油、ペパーミント油、サフラワー油、ゴマ油、大豆油、硬化植物性油脂、硬化大豆油、ココナッツ油のトリグリセリド、ヤシ種子油、及びこれらの硬化形態、又はこれらの組み合わせであることができる。
【0027】
上記方法において、ビタミンはトコフェロールであることができ、脂肪酸及び脂肪酸エステルはオレイン酸、モノグリセリド、ジグリセリド、PEGのモノ−脂肪酸エステル又はジ−脂肪酸エステル、又はこれらの組み合わせであることができる。
【0028】
上記方法において、シクロデキストリンは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、又はスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリンであることができる。リン脂質は、大豆ホスファチジルコリン、又はジステアロイルホスファチジルグリセロール、及びこれらの硬化形態、又はこれらの組み合わせであることができる。さらに、炭水化物は、上記方法において、デキストロースを含むことができる。
【0029】
さらに別の実施形態において、本発明は、a)N−トリメチルシリルイミダゾールを二塩化硫黄のハロゲン化溶媒溶液と接触させてジイミダゾリルスルフィドを得る工程;及びb)該ジイミダゾリルスルフィドをメルカプタンと接触させる工程;を含む、上記式1〜2の化合物の調製方法を提供する。一実施例において、ハロゲン化溶媒はジクロロメタンである。
【0030】
一態様において、N−トリメチルシリルイミダゾールのヘキサン溶液を二塩化硫黄のジクロロメタン溶液と接触させる。別の態様において、ニート化合物として二塩化硫黄を、N−トリメチルシリルイミダゾールのヘキサン及びジクロロメタン溶液に接触させる。さらに別の態様において、本方法は、トリスルフィドを再結晶化する工程をさらに含む。一実施例において、トリスルフィドは、n−ヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル又はこれらの組み合わせ中で再結晶化される。
【0031】
別の実施形態において、本発明は、上記式1〜5で表される化合物及び薬学上許容し得る賦形剤を含む医薬組成物を提供する。かかる化合物及びその医薬組成物は神経芽細胞腫を改善又は処置するために使用することができる。したがって、本発明は、有効量の式1〜5で表される化合物又はその医薬組成物を、任意で抗増殖性物質と一緒に、それらを必要とする系又は対象に投与する工程を含み、それにより、神経芽細胞腫が改善又は処置される、神経芽細胞腫を改善又は処置する方法も提供する。
【0032】
本発明は、式1〜5で表されるいずれかの化合物又はその医薬組成物を、それを必要とする対象又は系に投与することを含む、症状を改善又は処置する方法であって、その化合物が、ジベンジルトリスルフィド、ジ(p−クロロベンジル)トリスルフィド、(p−クロロベンジル)ベンジルトリスルフィド、ジ(p−ニトロベンジル)トリスルフィド、ジ(3−フェニル−2−プロペニル)−トリスルフィド、ジフェニルトリスルフィド、又はジ(p−t−ブチルフェニル)トリスルフィドであることができる方法も提供する。対象はヒト又は哺乳動物などの動物であることができる。系は、細胞若しくは組織、又は化合物をin vitroで投与し得るその他の系であることができる。
【0033】
一実施形態において、本発明は、式1〜5で表される有効量の化合物又はその医薬組成物を、任意で抗増殖性物質と一緒に、それらを必要とする系又は対象に投与する工程を含み、それにより、その系又は対象における細胞増殖性疾患が改善又は処置される、神経芽細胞腫以外の細胞増殖性疾患を改善又は処置する方法を提供する。本発明は、細胞増殖を低減若しくは抑制するための、又は細胞死を誘導するための方法も提供する。本発明はアポトーシスを誘導するための方法をさらに提供する。特定の例において、本発明の方法で使用される化合物は、任意で抗増殖性物質を伴う、ジベンジルトリスルフィド、ジ(p−フルオロベンジル)トリスルフィド、ジ(p−メチルベンジル)トリスルフィド又はジ(m−メチルベンジル)トリスルフィドである。
【0034】
一態様において、細胞増殖が低減されるか、又は細胞死が誘導される。細胞増殖性疾患は、限定するものではないが、白血病、リンパ腫、肺癌、大腸癌、CNS癌、メラノーマ、卵巣癌、腎臓癌、前立腺癌、乳癌、頭頸部癌、膵臓癌,又は腎臓癌などの腫瘍又は癌であることができる。別の態様において、細胞アポトーシスが誘導される。別の態様において、チューブリンの組み立て若しくは分解が妨害されるか、又は細胞周期のG2/Mの進行、細胞有糸分裂、若しくはこれらの組み合わせが抑制される。さらに別の態様において、内皮細胞増殖、血管新生、又はその組み合わせが抑制される。
【0035】
別の実施形態において、本発明は、式1〜5で表されるいずれかの化合物又はその医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含み、それにより、その対象の再狭窄が改善又は処置される、再狭窄を改善又は処置する方法を提供する。再狭窄は新生内膜過形成に関連し得る。本化合物は、経口投与若しくは非経口投与を介して、又はステントを介して投与することができる。さらに別の実施形態において、本発明は、式1〜5で表される化合物のいずれかと薬学上許容し得る賦形剤を含む、細胞増殖性疾患の治療のための医薬組成物を提供する。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
以下の式で表される化合物:
【化1】
式中、A及びBは、同じであるか又は異なり、且つ、独立して、置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール、又は単環式若しくは多環式であってもよく、又、ヘテロ原子を含んでいてもよい5〜14員環であり;
各Sは酸化物の形態であってもよく;
S1及びS2は、独立して、S、SO又はSO2であり;
各Rは、H、ハロゲン、カルボキシル、シアノ、アミノ、アミド、無機置換基、SR1、OR1又はR1であり、この場合、各R1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、炭素環又は複素環であり、それらの各々が置換されていてもよく、又、ヘテロ原子を含んでいてもよく;
m、n及びpは、独立して、0〜3である、化合物;
又は、以下の式(3)又は(4)で表される化合物:
【化2】
式中、A、B、R、S、n及びpは上記定義の通りである、化合物;
又は、以下の式(5)で表される化合物:
【化3】
式中、A、B、S、n及びpは上記定義の通りであり;且つ、
Zは(CR12)q又は(CR1=CR1)q*であり、この場合、qは0〜3であり、且つ、*は、アルキニル、O、S、NRによって置換されていてもよいC=Cを表し;又は、Zは置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール又は複素環であり;
式中、AとBは一緒に環状環系を形成してもよい、化合物;
但し、前記化合物が、ジベンジルトリスルフィド、ジ(p−クロロベンジル)トリスルフィド、(p−クロロベンジル)ベンジルトリスルフィド、ジ(p−ニトロベンジル)トリスルフィド、ジ(3−フェニル−2−プロペニル)−トリスルフィド、ジフェニルトリスルフィド、又はジ(p−t−ブチルフェニル)トリスルフィドでない、化合物
及びその薬学上許容し得る塩、エステル、プロドラッグ又は代謝産物。
(項目2)
式中、Zが以下の式
【化4】
で表され、
式中、各Wは、独立して、結合、CR、N、NR、S、又はOであり;
各Rは、項目1における定義の通りである、
項目1に記載の化合物。
(項目3)
式中、Rが、独立して、H、ハロ、OR1、SR1、CO2R1、CONR12、C=O、CN、CF3、OCF3、NO2、NR1R1、OCOR1であるか;又は、Rが、それぞれがヘテロ原子を含んでいてもよい、C1−10アルキル、C3−10環状アルキル、C2−10アルケニル、C2−10アルキニル、アリール、ヘテロアリール、炭素環又は複素環である、項目1に記載の化合物。
(項目4)
式中、A及びBが、独立して、ベンゼン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、イソオキサゾール、イソチアゾール、オキサジアゾール、[1,2,4]オキサジアゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ピロール、フラン、チオフェンインドリジン、インドール、イソインドール、インドリン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、プリン、キノキサリン、キノリン、イソキノリン、シノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、プテリジン、アクリジン、フェナジン、フェノチアジン、インデン、ナフタレン、ベンゾオキサジアゾール,又はベンゾ[1,2,5]−オキサジアゾールである、項目1に記載の化合物。
(項目5)
式中、A及びBが、独立して、
【化5】
であり、
式中、X及びWは、独立して、S、O、NR7、CR7であるか;
又は、6員の単環若しくは二環において1つのWは結合であってもよく;且つ、
各R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7は、H、ハロゲン、カルボキシル、シアノ、アミノ、アミド、無機置換基、SR1、OR1又はR1であり、この場合、各R1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、炭素環又は複素環であって、それらの各々が置換されていてもよく、又、ヘテロ原子を含んでいてもよい、項目1に記載の化合物。
(項目6)
式中、各R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7が、独立して、H、ハロ、OR1、SR1、CO2R1、CONR12、C=O、CN、CF3、OCF3、NO2、NR1R1、OCOR1であるか;又は、各R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7が、C1−10アルキル、C3−10環状アルキル、C2−10アルケニル、C2−10アルキニル、アリール、ヘテロアリール、炭素環又は複素環であって、それらの各々がヘテロ原子を含んでいてもよい、項目5に記載の化合物。
(項目7)
前記アリール、ヘテロアリール、又は複素環が、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、フェニル、フラニル、チオフェニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、キノキサリニル、チアゾリニル、オキサゾリル、イミダゾリル、キノリニル、ナフタレニル、ピリダジニル、ピラゾロピリミジニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゼン−チオフェン、ピラゾリル、ピロリル、インドリル、イソインドリル、キノリジニル、キノリニル、イソキノリニル、又はキナゾリニルであり、それらの各々がO、N、S及びハロから選択されるヘテロ原子によって置換されていてもよく;又は、それぞれがヘテロ原子を含んでいてもよい、C1−10アルキル、C3−10環状アルキル、C2−10アルケニル、C2−10アルキニル、アリール、又は複素環によって置換されていてもよい、項目6に記載の化合物。
(項目8)
式中、各Sが、一酸化物又は二酸化物であってもよい、項目1に記載の化合物。
(項目9)
前記化合物が以下の式(6)
【化6】
で表され、
各nが、1−3であり;且つ、
Rが、H、ハロ、アルキル又はハロゲン化アルキルである、
項目1に記載の化合物。
(項目10)
前記化合物が以下の式(7)
【化7】
で表され、
この場合、Arが、置換されたチオフェン、ベンゾチオフェン、ピリジン又はピラジンであってもよい、項目1に記載の化合物。
(項目11)
前記化合物が、ジ(フルオロベンジル)トリスルフィド、ジ(o−クロロベンジル)トリスルフィド、ジ(メチルベンジル)トリスルフィド、ジ(トリフルオロメチルベンジル)トリスルフィド、ジ(2−フェニルエチル)トリスルフィド、ジ(2−チオフェン−イル−メチル)トリスルフィド、ジ(4−ピリジン−イル−エチル)トリスルフィド、ジ(2−ピリミジン−イル−エチル)トリスルフィド、又はジ(3−ベンゾチオフェン−イル−メチル)トリスルフィドである、項目1に記載の化合物。
(項目12)
前記化合物が、ジ(p−フルオロベンジル)トリスルフィド、ジ(m−メチルベンジル)トリスルフィド、又はジ−(p−メチルベンジル)トリスルフィドである、項目1に記載の化合物。
(項目13)
神経芽細胞腫を改善又は処置する方法であって、有効量の項目1に記載される化合物又はその医薬組成物を、任意で抗増殖性物質と一緒に、それらを必要とする系又は対象に投与する工程を含み、それにより、前記神経芽細胞腫が改善又は処置される、方法。
(項目14)
神経芽細胞腫以外の細胞増殖性疾患を改善又は処置する方法であって、
以下の式を有する化合物:
【化8】
式中、A及びBは、同じであるか又は異なり、且つ、独立して、置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール、又は単環式若しくは多環式であってもよく、そしてヘテロ原子を含んでいてもよい5〜14員環であり;
各Sは酸化物の形態であってもよく;
S1及びS2は、独立して、S、SO又はSO2であり;
各Rは、H、ハロゲン、カルボキシル、シアノ、アミノ、アミド、無機置換基、SR1、OR1又はR1であり、この場合、各R1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、炭素環又は複素環であり、それらの各々が置換されていてもよく、又、ヘテロ原子を含んでいてもよく;
m、n及びpは、独立して、0〜3である、化合物;
又は、以下の式(3)若しくは(4)で表される化合物:
【化9】
式中、A、B、R、S、n及びpは上記定義の通りである、化合物;
又は、以下の式(5)で表される化合物:
【化10】
式中、A、B、R、S、n及びpは上記定義の通りであり;且つ、
Zは(CR12)q又は(CR1=CR1)q*であり、この場合、qは0〜3であり、且つ、*は、アルキニル、O、S、NRによって置換されていてもよいC=Cを表し;又は、Zは置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール又は複素環であり;
式中、AとBは一緒に環状環系を形成してもよい、化合物;
で表される有効量の化合物、又はその医薬組成物を、任意で抗増殖性物質と一緒に、それらを必要とする系又は対象に投与する工程を含み、それにより前記の系又は対象における細胞増殖性疾患が改善又は処置される、方法。
(項目15)
前記細胞増殖が低減されるか、又は前記細胞死が誘導される、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記対象がヒト又は動物であり、且つ、前記系が細胞又は組織である、項目14に記載の方法。
(項目17)
前記細胞増殖性疾患が腫瘍又は癌である、項目14に記載の方法。
(項目18)
前記癌が、白血病、リンパ腫、肺癌、大腸癌、CNS癌、メラノーマ、卵巣癌、腎臓癌、前立腺癌、乳癌、頭頸部癌、膵臓癌、又は腎臓癌である、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記化合物が、ジベンジルトリスルフィド、ジ(p−フルオロベンジル)トリスルフィド、ジ(p−メチルベンジル)トリスルフィド又はジ(m−メチルベンジル)トリスルフィドである、項目14に記載の方法。
(項目20)
細胞増殖を低減若しくは抑制するか、又は細胞死を誘導する方法であって、有効量の項目14に定義される化合物又はその医薬組成物を、任意で抗増殖性物質と一緒に、系又は対象に投与する工程を含み、それにより、前記の系又は対象において細胞増殖を低減若しくは抑制するか、又は前記細胞死が誘導される、方法。
(項目21)
細胞アポトーシスが誘導される、項目20に記載の方法。
(項目22)
チューブリンの組み立て若しくは分解が妨害されるか、又は前記細胞周期におけるG2/Mの進行、細胞有糸分裂、若しくはこれらの組み合わせが抑制される、項目20に記載の方法。
(項目23)
内皮細胞増殖、血管新生、又はその組み合わせが抑制される、項目20に記載の方法。
(項目24)
前記対象がヒト又は動物であり、且つ、前記系が細胞又は組織である、項目20に記載の方法。
(項目25)
前記化合物が、ジベンジルトリスルフィド、ジ(p−フルオロベンジル)トリスルフィド、ジ(p−メチルベンジル)トリスルフィド又はジ(m−メチルベンジル)トリスルフィドである、項目20に記載の方法。
(項目26)
再狭窄を改善又は処置する方法であって、有効量の項目14に定義される化合物又はその医薬組成物を、それを必要とする対象に投与する工程を含み、それにより、前記対象の再狭窄が改善又は処置される、方法。
(項目27)
前記再狭窄が新生内膜過形成に関連するものである、項目26に記載される方法。
(項目28)
前記投与工程が経口投与若しくは非経口投与であるか、ステントを介して投与される、項目26に記載の方法。
(項目29)
前記化合物が、ジベンジルトリスルフィド、ジ(p−フルオロベンジル)トリスルフィド、ジ(p−メチルベンジル)トリスルフィド又はジ(m−メチルベンジル)トリスルフィドである、項目26に記載の方法。
(項目30)
項目1に記載される化合物及び薬学上許容し得る賦形剤を含む医薬組成物。
(項目31)
以下の式で表される化合物:
【化11】
式中、A及びBは、同じであるか又は異なり、且つ、独立して、置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール、又は単環式若しくは多環式であってもよく、又、ヘテロ原子を含んでいてもよい5〜14員環であり;
各Sは酸化物の形態であってもよく;
S1及びS2は、独立して、S、SO又はSO2であり;
各Rは、H、ハロゲン、カルボキシル、シアノ、アミノ、アミド、無機置換基、SR1、OR1又はR1であり、この場合、各R1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、炭素環又は複素環であり、それぞれが置換されていてもよく、又、ヘテロ原子を含んでいてもよく;
m、n及びpは、独立して、0〜3である、化合物;
又は、以下の式(3)又は(4)で表される化合物:
【化12】
式中、A、B、R、S、n及びpは上記定義の通りである、化合物;
又は、以下の式(5)で表される化合物:
【化13】
式中、A、B、R、S、n及びpは上記定義の通りであり;且つ、
Zは(CR12)q又は(CR1=CR1)q*であり、この場合、qは0〜3であり、且つ、*は、アルキニル、O、S、NRによって置換されていてもよいC=Cを表し;又は、Zは置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール又は複素環であり;
式中、AとBは一緒に環状環系を形成してもよい、化合物;
及び薬学上許容し得る賦形剤を含む、細胞増殖疾患の処置のための医薬組成物。
(項目32)
a) N−トリメチルシリルイミダゾールを二塩化硫黄のハロゲン化溶媒溶液と接触させ、ジイミダゾリルスルフィドを得る工程;及び
b) 前記ジイミダゾリルスルフィドをメルカプタンと接触させる工程;
を含む、項目31に記載される式1−2で表される化合物の調製方法。
(項目33)
前記溶媒がジクロロメタンである、項目32に記載の方法。
(項目34)
N−トリメチルシリルイミダゾールのヘキサン溶液を、二塩化硫黄のジクロロメタン溶液と接触させる、項目32に記載の方法。
(項目35)
ニート化合物としての二塩化硫黄を、N−トリメチルシリルイミダゾールのヘキサン及びジクロロメタン溶液と接触させる、項目32に記載の方法。
(項目36)
前記トリスルフィドを再結晶化する工程をさらに含む、項目32に記載の方法。
(項目37)
前記トリスルフィドを、n−ヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル又はこれらの組み合わせの中で再結晶化させる、項目36に記載の方法。
(項目38)
a) 溶液を得るために、項目1に記載の化合物を、水溶性有機溶媒、非イオン性溶媒、水溶性脂質、シクロデキストリン、ビタミン、脂肪酸、脂肪酸エステル、リン脂質、又はこれらの組み合わせの中に溶解させる工程;及び
b) 生理食塩水又は1〜10%の炭水化物溶液を含むバッファーを添加する工程;
を含む、項目1に記載の化合物を含む組成物を調製する方法。
(項目39)
前記有機溶媒が、ポリエチレングリコール(PEG)、アルコール、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、又はこれらの組み合わせである、項目38に記載の方法。
(項目40)
非イオン性の界面活性剤が、ポリオキシエチレングリセロールトリリシノレート35、PEG−コハク酸、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポリエチレングリコール660 12−ヒドロキシステアレート、ソルビタンモノオレイン酸、ポロキサマー、エトキシル化杏仁油、カプリル−カプロイルマクロゴール−8−グリセリド、グリセロールエステル、PEG6カプリルグリセリド、グリセリン、グリコール−ポリソルベート、又はそれらの組み合わせである、項目38に記載の方法。
(項目41)
前記脂質が、植物性油脂、トリグリセリド、植物油又はそれらの組み合わせである、項目38に記載の方法。
(項目42)
前記脂質がヒマシ油、ポリオキシヒマシ油、コーン油、オリーブ油、綿実油、落花生油、ペパーミント油、サフラワー油、ゴマ油、大豆油、硬化植物性油脂、硬化大豆油、ココナツ油のトリグリセリド、ヤシ種子油、及びそれらの硬化形態又はそれらの組み合わせである、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記ビタミンがトコフェロールである、項目38に記載の方法。
(項目44)
前記脂肪酸がオレイン酸である、項目38に記載の方法。
(項目45)
前記脂肪酸エステルが、モノグリセリド、ジグリセリド、PEGのモノ−脂肪酸エステル若しくはジ−脂肪酸エステル、又はこれらの組み合わせである、項目38に記載の方法。
(項目46)
前記シクロデキストリンが、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、又はスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリンである、項目38に記載の方法。
(項目47)
前記リン脂質が、大豆ホスファチジルコリン、又はジステアロイルホスファチジルグリセロール及びその硬化形態、又はこれらの組み合わせである、項目38に記載の方法。
(項目48)
前記炭水化物がデキストロースを含む、項目38に記載の方法。
(項目49)
アポトーシスの促進方法であって、有効量の項目14に定義される化合物又はその医薬組成物を、任意で抗増殖性物質と一緒に、それらを必要とする系又は対象に投与することを含み、それにより、前記対象又は系中のアポトーシスが促進される、方法。
(項目50)
細胞のチューブリン又は微小チューブリンが誘導される、項目49に記載の方法。
(項目51)
項目38に記載の方法に従って調製された組成物。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1A】図1A−Cは、リアルタイム電子的センシングシステム(RT−CESシステム)で測定された、種々の濃度のDBTS、コルセミド、及びパクリタキセルそれぞれに対するH460細胞(非小細胞肺癌株)の応答を示す。
【図1B】図1A−Cは、リアルタイム電子的センシングシステム(RT−CESシステム)で測定された、種々の濃度のDBTS、コルセミド、及びパクリタキセルそれぞれに対するH460細胞(非小細胞肺癌株)の応答を示す。
【図1C】図1A−Cは、リアルタイム電子的センシングシステム(RT−CESシステム)で測定された、種々の濃度のDBTS、コルセミド、及びパクリタキセルそれぞれに対するH460細胞(非小細胞肺癌株)の応答を示す。
【図2】図2は、RT−CESシステムで測定された、種々の濃度のジベンジルトリスルフィド(DBTS)に対するMV522細胞(肺癌細胞株)の応答を示す。
【図3】図3は、RT−CESシステムで測定された、種々の濃度のジベンジルトリスルフィド(DBTS)に対するMCF−7細胞(乳癌細胞株)の応答を示す。
【図4】図4は、RT−CESシステムで測定された、種々の濃度のジベンジルトリスルフィド(DBTS)に対するA549細胞(肺癌細胞株)の応答を示す。
【図5】図5は、RT−CESシステムで測定された、種々の濃度のジベンジルトリスルフィド(DBTS)(図6A)及び5−フルオロウラシル(図6B)に対するPC3細胞(前立腺癌細胞株)の応答を示す。
【図6A】図6は、RT−CESシステムで測定された、種々の濃度のジベンジルトリスルフィド(DBTS)に対するA431細胞(類表皮癌細胞株)の応答を示す。
【図6B】図6は、RT−CESシステムで測定された、種々の濃度のジベンジルトリスルフィド(DBTS)に対するA431細胞(類表皮癌細胞株)の応答を示す。
【図7】図7は、RT−CESシステムで測定された、種々の濃度のジベンジルトリスルフィド(DBTS)に対するHT1080細胞(線維肉腫細胞株)の応答を示す。
【図8】図8は、RT−CESシステムで測定された、種々の濃度のジベンジルトリスルフィド(DBTS)に対するMDA−231細胞(乳癌細胞株)の応答を示す。
【図9】図9は、RT−CESシステムで測定された、種々の濃度のジベンジルトリスルフィド(DBTS)に対するHT−29細胞(大腸癌細胞株)の応答を示す。
【図10】図10は、RT−CESシステムで測定された、種々の濃度のジベンジルトリスルフィド(DBTS)に対するHC−2998細胞(大腸癌細胞株)の応答を示す。
【図11】図11は、RT−CESシステムで測定された、種々の濃度のジベンジルトリスルフィド(DBTS)に対するOVCAR4細胞(卵巣癌細胞株)の応答を示す。
【図12】図12は、RT−CESシステムで測定された、種々の濃度のジベンジルトリスルフィド(DBTS)に対するA2780細胞(大腸癌細胞株)の応答を示す。
【図13】図13は、RT−CESシステムで測定された、種々の濃度のジベンジルトリスルフィド(DBTS)に対するHepG2細胞(ヒト肝臓癌細胞株)の応答を示す。
【図14】図14は、ジベンジルトリスルフィド(DBTS)を用いて処理されたマウス肉腫S180腫瘍(皮下移植によりマウスに移植)を示す。
【図15】図15は、ジベンジルトリスルフィド(DBTS)を用いて処理されたマウスルイス肺癌(皮下移植によりマウスに移植)を示す。
【図16】図16は、皮下播種により免疫欠損ヌードマウスに異種移植片移植され、化合物ACEA100108を用いて処理されたBcap−37ヒト乳房腫瘍を示す。
【図17】図17は、皮下移植により免疫欠損ヌードマウスに異種移植片移植されたBcap−37ヒト乳癌に対する化合物ACEA100108のin vivo抗腫瘍効果試験での腫瘍サイズの動的変化を示す。
【図18】図18は、皮下移植により免疫欠損ヌードマウスに異種移植片移植されたBcap−37ヒト乳癌に対する化合物ACEA100108(100108)のin vivo抗腫瘍効果試験での担体マウスの体重の動的変化を示す。
【図19】図19は、皮下播種により免疫欠損ヌードマウスに異種移植片移植され、化合物ACEA100108を用いて処置されたHCT−8ヒト大腸腫瘍を示す。
【図20】図20は、皮下移植により免疫欠損ヌードマウスに異種移植片移植されたHCT−8ヒト大腸癌に対する化合物ACEA100108のin vivo抗腫瘍効果試験での腫瘍の大きさにおける動的変化を示す。
【図21】図21は、皮下移植により免疫欠損ヌードマウスに異種移植片移植されたHCT−8ヒト大腸癌に対する化合物ACEA100108(100108)のin vivo抗腫瘍効果試験での担体マウスの体重の動的変化を示す。
【図22】図22は、皮下播種により免疫欠損ヌードマウスに異種移植片移植され、化合物ACEA100108を用いて処理されたao10/17ヒト卵巣腫瘍を示す。
【図23】図23は、皮下移植により免疫欠損ヌードマウスに異種移植片移植されたao10/17ヒト卵巣癌に対する化合物ACEA100108のin vivo抗腫瘍効果試験での腫瘍の大きさにおける動的変化を示す。
【図24】図24は、皮下移植により免疫欠損ヌードマウスに異種移植片移植されたao10/17ヒト卵巣癌に対する化合物ACEA100108(100108)のin vivo抗腫瘍効果試験での担体マウスの体重における動的変化を示す。
【図25】図25は、皮下移植により免疫欠損ヌードマウスに異種移植片移植され、化合物ACEA100108を用いて処置されたBcap−37ヒト乳房腫瘍を示す。
【図26−1】図26は、RT−CESシステムで測定された、ACEA100108に対する各種細胞株の応答を示す。
【図26−2】図26は、RT−CESシステムで測定された、ACEA100108に対する各種細胞株の応答を示す。
【図27−1】図27は、RT−CESシステムで測定された、種々のDBTS誘導体に対するHT1080細胞の応答を示す。
【図27−2】図27は、RT−CESシステムで測定された、種々のDBTS誘導体に対するHT1080細胞の応答を示す。
【図27−3】図27は、RT−CESシステムで測定された、種々のDBTS誘導体に対するHT1080細胞の応答を示す。
【図28】図28は、いかなる薬物によっても処置されていない対照COS細胞における微小管の画像を示す。
【図29】図29は、種々の濃度のパクリタキセルを用いて4時間処理されたCOS細胞の微小管の画像を示す。
【図30】図30は、種々の濃度のパクリタキセルを用いて24時間処理されたCOS細胞の微小管の画像を示す。
【図31】図31は、種々の濃度のビンブラスチンを用いて4時間処理されたCOS細胞の微小管の画像を示す。
【図32】図32は、種々の濃度のビンブラスチンを用いて24時間処理されたCOS細胞の微小管の画像を示す。
【図33】図33は、種々の濃度のDBTSを用いて4時間処理されたCOS細胞の微小管の画像を示す。
【図34】図34は、種々の濃度のDBTSを用いて24時間処理されたCOS細胞の微小管の画像を示す。
【図35】図35は、種々の濃度のACEA100108を用いて4時間処理されたCOS細胞の微小管の画像を示す。
【図36】図36は、種々の濃度のACEA100108を用いて24時間処理されたCOS細胞の微小管の画像を示す。
【図37】図37は、種々の濃度のACEA100116を用いて4時間処理されたCOS細胞の微小管の画像を示す。
【図38】図38は、種々の濃度のACEA100116を用いて24時間処理されたCOS細胞の微小管の画像を示す。
【図39A】図39aは、純粋なチューブリン(MAP不含)及びDBTSを用いたin vitro微小管組み立てアッセイの結果を示す。
【図39B】図39bは、いかなる薬物も存在しない条件下でin vitroで組み立てられた微小管の電子顕微鏡画像を示す。
【図39C】図39cは、3μM DBTSの存在下でin vitroで組み立てられた微小管の電子顕微鏡画像を示す。
【図40】図40は、純粋なチューブリン(MAP不含)及びACEA100108を用いたin vitro微小管組み立てアッセイの結果を示す。
【図41】図41は、純粋なチューブリン(MAP不含)及びACEA100116を用いたin vitro微小管組み立てアッセイの結果を示す。
【図42】図42は、1μM ACEA100108、50nM パクリタキセル、10nM ビンブラスチン又はDMSOを用いて24時間処理したA549ヒト肺癌細胞を6−CFDA(上段パネル)及びアネキシンV(下段パネル)染色した蛍光顕微鏡画像を示す。
【図43】図43は、25μM ACEA100108、7.8nM パクリタキセル、又はDMSOを用いて24時間処理された後のA549ヒト肺癌細胞のフローサイトメトリーで分析された細胞周期分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(発明の実施の形態)
限定のためでなく、開示の明確さのために、本発明の詳細な説明を以下の小節に分けて記載する。
【0038】
(A.定義)
特に明記しないかぎり、本明細書中で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者により通常理解されているものと同一の意味を有する。本明細書中で参照されている全ての特許、特許出願、公開された出願及びその他の刊行物は、参照によりその全体を組み入れるものとする。本節において示されている定義が、参照によって本明細書中に組み入れられている特許、特許出願、公開された出願及びその他の刊行物において示されている定義と矛盾する、又はさもなければ一致しない場合は、本節において示されている定義が、参照によって本明細書中に組み入れられている定義よりも優先される。
【0039】
本明細書中で使用する時、「a」又は「an」は「少なくとも一つ」又は「1以上」を意味する。
【0040】
本明細書中で使用する時、用語「アルキル」とは、直鎖状、分枝鎖状、又は環状構造の飽和炭化水素基を意味し、特に意図されるアルキル基としては、低級アルキル基(すなわち、10個以下の炭素原子を有するもの)が挙げられる。典型的アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第2ブチル、第3ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル等である。本明細書中で使用する時、用語「アルケニル」とは、上記定義のアルキルであって、少なくとも一つの二重結合を有するものを意味する。このようにして、特に意図されるアルケニル基としては、2〜10個の炭素原子を有する直鎖状、分枝鎖状、又は環状のアルケニル基(例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル等)が挙げられる。同様に、本明細書中で使用する時、用語「アルキニル」とは、上記定義のアルキル又はアルケニルであって、少なくとも一つの三重結合を有するものを意味する。特に意図されるアルキニルとしては、合計2〜10個の炭素原子を有する直鎖状、分枝鎖状、又は環状のアルキン(例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル等)が挙げられる。
【0041】
本明細書中で使用する時、用語「シクロアルキル」とは、環状アルカン(すなわち、この場合、炭化水素の炭素原子鎖が環を形成している)を意味し、3〜8個の炭素原子を含むものが好ましい。このようにして、典型的シクロアルカンとしては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルが挙げられる。さらに、シクロアルキルは1又は2つの二重結合を含み、「シクロアルケニル」基を形成する。また、シクロアルキル基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ及び他の一般的基によってさらに置換される。
【0042】
本明細書中で使用する時、用語「アリール」又は「芳香族部分」とは、1以上の非炭素原子をさらに含んでいてもよい芳香族環系を意味する。したがって、意図されるアリール基としては(例えば、フェニル、ナフチル等)及びピリジルが挙げられる。さらに意図されるアリール基は、1個又は2個の5員又は6員のアリール又は複素環基と縮合(すなわち、第1の芳香環上の2原子と共有結合する)していてもよく、したがって、「縮合アリール」又は「縮合芳香族」と称される。
【0043】
本明細書中でも使用されるように、用語「複素環」、「シクロヘテロアルキル」、及び「複素環部分」は、本明細書中において同義的に使用され、複数の共有結合を介して複数の原子が一つの環を形成しているいずれかの化合物を意味し、この場合、この環は炭素原子以外の少なくとも1つの原子を含む。特に意図される複素環の基部としては、非炭素原子として窒素、硫黄、又は酸素を有する5員及び6員環(例えば、イミダゾール、ピロール、トリアゾール、ジヒドロピリミジン、インドール、ピリジン、チアゾール、テトラゾール等)が挙げられる。さらに意図される複素環は、1個又は2個の環又は複素環と縮合(すなわち、第1の複素環上の2原子と共有結合する)していてもよく、したがって、本明細書中で使用する時、「縮合複素環基部」又は「縮合複素環部分」と呼ばれる。
【0044】
本明細書中で使用する時、用語「アルコキシ」とは、アルコキシドと呼ばれる酸素原子と結合している直鎖状又は分枝鎖状のアルキルを意味し、この場合、炭化水素部分は任意の数の炭素原子を含んでいてもよく、二重結合又は三重結合をさらに含んでいてもよく、そしてアルキル鎖中に1個又は2個の酸素、硫黄又は窒素原子を含んでいてもよい。例えば、適当なアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロポキシ、メトキシエトキシ等が挙げられる。同様に、用語「アルキルチオ」とは、直鎖状又は分枝鎖状のアルキルスルフィドを意味し、この場合、この炭化水素部分は任意の数の炭素原子を含んでいてもよく、二重結合又は三重結合をさらに含んでいてもよく、そしてアルキル鎖中に1個又は2個の酸素、硫黄又は窒素原子を含んでいてもよい。例えば、意図されるアルキルチオ基としては、メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ、メトキシエチルチオ等が挙げられる。
【0045】
同様に、用語「アルキルアミノ」とは、直鎖状又は分枝鎖状のアルキルアミンを意味し、この場合、アミノ窒素「N」は1個又は2個のアルキルと置換することができ、炭化水素部分は任意の数の炭素原子を含んでいてもよく、二重結合又は三重結合をさらに含んでいてもよい。さらに、アルキルアミノの水素は別のアルキル基によって置換されていてもよい。したがって、典型的なアルキルアミノ基としては、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ等が挙げられる。
【0046】
本明細書中で使用する時、用語「アリールオキシ」とは、酸素原子と結合しているアリール基を意味し、この場合、このアリール基はさらに置換されていてもよい。例えば、適当なアリールオキシ基としてはフェニルオキシ等が挙げられる。同様に、本明細書中で使用する時、用語「アリールチオ」とは、硫黄原子と結合しているアリール基を意味し、この場合、このアリール基はさらに置換されていてもよい。例えば、適当なアリールチオ基としてはフェニルチオ等が挙げられる。
【0047】
本明細書中で使用する時、用語「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を意味する。
【0048】
本明細書中で使用する時、用語「アミノ酸」とは、D−若しくはL−構造又はその混合状態を伴う置換された天然及び非天然アミノ酸であって、そこにおいてアミノ基及び酸性基が意図される化合物を誘導体化するために使用されるものを意味する。
【0049】
全ての上記に定義される基は、さらに1以上の置換基により置換されていてもよく、言い換えれば置換されていてもよいことがさらに認識されるべきである。例えば、本明細書中で使用する時、「アルキル」はヘテロ原子で置換されたアルキルを包含する。
【0050】
本明細書中で使用する時、用語「置換された」は、原子又は化学基(例えば、H、NH2、又はOH)の官能基への置き換えを意味し、特に求核基(例えば、−NH2、−OH、−SH、−NC等)、求電子基(例えば、C(O)OR、C(X)OH等)、極性基(例えば、−OH)、非極性基(例えば、複素環、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル等)、イオン性基(例えば、−NH3+)、及びハロゲン(例えば、−F、−Cl)、NHCOR、NHCONH2、OCH2COOH、OCH2CONH2、OCH2CONHR、NHCH2COOH、NHCH2CONH2、NHSO2R、OCH2−複素環、PO3H、SO3H、アミノ酸、及び技術的に知られた各種の組み合わせを含む官能基が意図される。さらに、用語「置換された」は、複数の度合の置換をも含み、複数の置換基が開示されるか又は特許請求される場合、その置換化合物は、開示されるか又は特許請求される置換基部分の1以上によって独立して置換され得る。
【0051】
本明細書中で使用する時、用語「有機硫黄誘導体」は、2以上の「硫黄」原子を含有する有機化合物を意味する。本明細書中で使用する時、用語「ジスルフィド」「トリフルフィド」「テトラスルフィド」「ペンタスルフィド」は、2、3、4又は5個の硫黄原子が直鎖上に連結し(−S−S−S−)、そこにおいて、そのうちの1個又は2個または3個がさらにS=O又はSO2へと酸化されてよく、ジ−スルフィド誘導体、トリ−スルフィド誘導体、テトラ−スルフィド誘導体及びペンタ−スルフィド誘導体が、ジ−スルフィド、トリ−スルフィド、テトラ−スルフィド及びペンタ−スルフィドの2つの末端において、2個の官能基、アリール、アルケニル、複素環基または置換基で置換されたもの(R−S−(S)0−3−S−R)を意味する。2以上のトリスルフィド(−S−S−S−)部分は芳香族又は直鎖により共に連結されることができ、これもまた「トリスルフィド」又は有機硫黄を指す。1つ又は2つのトリスルフィド又は有機硫黄部分は共に連結されて環状系を形成し得る。
【0052】
(B.置換有機硫黄誘導体及びその医薬組成物)
本発明の化合物は、以下の式で表される化合物
【0053】
【化21】
式中、A及びBは、同じであるか又は異なり、且つ、独立して、置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール、又は単環式若しくは多環式であってもよく、そしてヘテロ原子を含んでいてもよい5〜14員環であり;
各Sはオキシドの形態であってもよく;
S1及びS2は、独立して、S、SO又はSO2であり;
各Rは、H、ハロゲン、カルボキシル、シアノ、アミノ、アミド、無機置換基、SR1、OR1又はR1であり、この場合、各R1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、炭素環又は複素環であり、そのうちの各々が置換されていてもよく、そしてヘテロ原子を含んでいてもよく;
m、n及びpは、独立して、0〜3である、化合物;
又は、以下の式(3)若しくは(4)で表される化合物:
【0054】
【化22】
式中、A、B、R、S、n及びpは上記定義の通りである、化合物;
又は、以下の式(5)で表される化合物:
【0055】
【化23】
式中、A、B、S、n及びpは上記定義の通りであり;且つ、
Zは(CR12)q又は(CR1=CR1)q*であり、この場合、qは0〜3であり、且つ、*は、アルキニル、O、S、NRによって置換されていてもよいC=Cを表し;又は、Zは置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール又は複素環であり;
式中、AとBは一緒に環状環系を形成してもよい、化合物;
及びその薬学上許容し得る塩、エステル、プロドラッグ又は代謝産物;
但し、前記化合物が、ジベンジルトリスルフィド、ジ(p−クロロベンジル)トリスルフィド、(p−クロロベンジル)ベンジルトリスルフィド、ジ(p−ニトロベンジル)トリスルフィド、ジ(3−フェニル−2−プロペニル)−トリスルフィド、ジフェニルトリスルフィド、又はジ(p−t−ブチルフェニル)トリスルフィドでないもの、を提供する。
【0056】
他の実施形態において、上記式1〜5中の各Rは非干渉性置換基であることができる。一般的に、「非干渉性置換基」とは、その存在により化合物が治療用物質として挙動する能力が無効にならない置換基である。例えば、非干渉性置換基は効力及びPK特性を向上させることができる。別の例では、非干渉性置換基は毒性を低減させることができる。適当な非干渉性置換基としては、ハロ、ニトロ、カルボキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アルコキシ、アルキルチオ、アリールアルキニル、複素環、アミノ酸が挙げられ、そのうちの各々がさらに1以上の非干渉性置換基によって置換されていてもよい。さらに、非干渉性置換基は、Rもまた上記定義の非干渉性置換基であるCOOR、SR、ORを含んでいてもよい。
【0057】
上記式1〜5において、A及びBは、独立して、
【0058】
【化24】
であり、
式中、X及びWは、独立して、S、O、NR7、CR7であるか;
又は、6員の単環若しくは二環において1つのWは結合であってもよく;且つ、
各R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7は前記定義の通りである。
【0059】
他の実施形態において、それぞれR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7は極性又は非極性の置換基であることができる。他の例において、それぞれR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7は求核性又は求電子性の非干渉性置換基であることができる。
【0060】
本発明は、式1〜5を有する化合物、並びにそれらの塩及びプロドラッグも包含する。このような塩は、例えば、化合物における正に荷電した置換基(例えば、A及び/又はBにおけるアミノ基)と薬学的に適切な陰イオンから形成され得る。適切な陰イオンとしては、限定するものではないが、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、及び酢酸塩が挙げられる。薬学的に受容可能な塩は、化合物における負に荷電した置換基(例えば、A及び/又はBにおけるカルボキシル基)と陽イオンからも形成され得る。適切な陽イオンの非限定的な例は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、及びテトラメチルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオンなどの有機アンモニウムイオン、並びに、その他の有機カチオンである。
【0061】
トリスルフィドはスキーム1に示される手順にしたがって合成することができる。例えば、芳香族式又は複素環式メチレンハライド(X=I又はBr又はCl)をチオウレアと反応させる。得られたイソチオウロニウムハライドを水酸化ナトリウムで処理することにより対応するチオール誘導体が得られる(Furniss,B.S.;Hannaford,A.J.;Rogers,V.;Smith,P.W.G.;Tatchell,A.R.Vogel’s Textbook of Practical Organic
Chemistry,Longman Group Limited,London,1978,pp582−583)。
【0062】
【化25】
対称トリスルフィド誘導体は方法Aを使用して合成することができる。方法Aにおいては、N−トリメチルシリルイミダゾールを二塩化硫黄と反応させる。得られたジイミダゾリルスルフィドを次にチオールと反応させて対応するトリスルフィドが得られる。方法Bを使用することにより、対称及び非対称トリスルフィドを合成することができる。方法Bにおいては、第1のチオールを二塩化硫黄と低温で定量的に反応させる。得られた中間体チオスルフェニルクロリドを次に第2のチオールと反応させて、第2の工程で使用されるチオールに応じて、所望の非対称又は対称トリスルフィドが得られる。
【0063】
代表的な芳香族メチレンチオール1〜6(スキーム2)は、Vogel’s Practical Organic Chemistry、pp582〜583に記載されるものと同様の手順を使用して合成することができる。さらに、対称トリスルフィド誘導体7〜32(スキーム2)は、報告されている手順(Banerji,A.;Kalena,G.P.Tetrahedron Letters 1980,21,3003−3004)と同様の方法Aにより合成した。例えば、二塩化硫黄(14mmol)の無水ヘキサン又はジクロロメタン溶液を、N−トリメチルシリルイミダゾール(28mmol)を含むヘキサンの攪拌溶液に室温で添加した。30分間攪拌した後、反応混合物を0℃に冷却し、指定されたチオール(28mmol)を含む無水ヘキサンの溶液を30分間滴下添加した。反応混合物を30分間攪拌し、沈殿したイミダゾール副生成物を濾過して取り除いた。濾過物を水とブラインを用いて洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を蒸発させ、溶出液としてヘキサン−酢酸エチル100:1〜20:1を使用するシリカゲルカラム上でのフラッシュクロマトグラフィーにより残渣を精製することにより、所望のトリスルフィド7〜32を収率60〜90%で取得した。芳香族トリスルフィド33〜39を同様の手順により収率30〜70%で合成した。
【0064】
ジ(p−フルオロベンジル)トリスルフィド(8)。トリスルフィド8を77%の収率で合成した。クロマトグラフィー精製に続くヘキサンからの再結晶化により白色の結晶が得られた。シリカゲルTLCのRf=0.46(40:1 ヘキサン−酢酸エチル)。1H NMR(499.1MHz、CDCl3)δ4.00(s,4H)、7.01(t,4H,J=8.8Hz)、7.27(dd,4H,J=8.8,5.4Hz);13C NMR(125.7MHz、CDCl3)δ42.4、115.6、115.8、131.2、131.3、132.4、162.5(C−F、J=250Hz);19F NMR(376.5MHz、CDCl3)δ−114.2;ES MS m/z337/338(M+Na)+;C14H12F2S3に対する解析計算値:C、53.48;H、3.85;S、30.59。実測値:C、53.16;H、4.22;S、30.24。
【0065】
ジ(p−クロロベンジル)トリスルフィド(9)。トリスルフィド9を90%の収率で合成した。クロマトグラフィー精製に続くヘキサンからの再結晶化により白色の結晶が得られた。シリカゲルTLCのRf=0.45(40:1 ヘキサン−酢酸エチル)。1H
NMR(499.1MHz、CDCl3)δ3.98(s,4H)、7.22(d,4H,J=8.4Hz)、7.29(d,4H,J=8.4Hz)。
【0066】
【化26】
ジ(m−トリフルオロメチルベンジル)トリスルフィド(12)。トリスルフィド12を99%の収率で合成した。クロマトグラフィー精製に続くヘキサンからの再結晶化により白色の結晶が得られた。シリカゲルTLCのRf=0.33(40:1 ヘキサン−酢酸エチル)。1H NMR(499.1MHz、CDCl3)δ4.04(s,4H)、7.41−7.49(m,4H)、7.51−7.58(m,4H)。
【0067】
ジ(ベンゾ[B]チオフェン−3−イル−メタン)トリスルフィド(22)。トリスルフィド22を45%の収率で合成した。クロマトグラフィー精製により白色の固体が得られた。シリカゲルTLCのRf=0.45(40:1 ヘキサン−酢酸エチル)。1H NMR(499.1MHz、CDCl3)δ3.74(s,4H)、7.01(s,2H)、7.34−7.45(m,4H)、7.75(d,2H,J=7.4Hz)、7.85(dd,2H,J=7.8,1.1Hz)。ES MS m/z391(M+H)+、413(M+Na)+。
【0068】
ジ(p−ブロモベンジル)トリスルフィド(25)。トリスルフィド25を84%の収率で合成した。クロマトグラフィー精製に続くヘキサンからの再結晶化により白色の結晶が得られた。シリカゲルTLCのRf=0.55(40:1 ヘキサン−酢酸エチル)。1H NMR(499.1MHz、CDCl3)δ3.96(s,4H)、7.17(d,4H,J=8.3Hz)、7.45(d,4H,J=8.3Hz)。
【0069】
ジ(p−メチルベンジル)トリスルフィド(26)。トリスルフィド26を99%の収率で合成した。クロマトグラフィー精製に続くヘキサンからの再結晶化により白色の結晶が得られた。シリカゲルTLCのRf=0.66(40:1 ヘキサン−酢酸エチル)。1H NMR(499.1MHz、CDCl3)δ2.33(s,6H)、4.01(s,4H)、7.14(d,4H,J=8.0Hz)、7.21(d,4H,J=8.0Hz)。
【0070】
ジ(p−t−ブチルベンジル)トリスルフィド(28)。トリスルフィド28を96%の収率で合成した。クロマトグラフィー精製に続くヘキサンからの再結晶化により白色の結晶が得られた。シリカゲルTLCのRf=0.50(40:1 ヘキサン−酢酸エチル)。1H NMR(499.1MHz、CDCl3)δ1.30(s,18H)、4.02(s,4H)、7.25(d,4H,J=8.3Hz)、7.35(d,4H,J=8.3Hz)。
【0071】
ジ(o−クロロベンジル)トリスルフィド(30)。トリスルフィド30を77%の収率で合成した。クロマトグラフィー精製に続くヘキサンからの再結晶化により白色の結晶が得られた。シリカゲルTLCのRf=0.44(40:1 ヘキサン−酢酸エチル)。1H NMR(499.1MHz、CDCl3)δ4.17(s,4H)、7.23−7.28(m,4H)、7.35−7.43(m,4H)。
【0072】
【化27】
ジ(2,4,6−トリメチルベンジル)トリスルフィド(32)。トリスルフィド32を59%の収率で合成した。クロマトグラフィー精製に続くヘキサンからの再結晶化により白色の結晶が得られた。シリカゲルTLCのRf=0.65(40:1 ヘキサン−酢酸エチル)。1H NMR(499.1MHz、CDCl3)δ2.27(s,6H)、2.42(s,12H)、4.23(s,4H)、6.87(s,4H)。
【0073】
ジ(p−メトキシフェニル)トリスルフィド(33)。トリスルフィド33を98%の収率で合成した。クロマトグラフィー精製に続くヘキサンからの再結晶化により白色の結晶が得られた。シリカゲルTLCのRf=0.32(20:1 ヘキサン−酢酸エチル)。1H NMR(499.1MHz、CDCl3)δ3.80(s,4H)、6.81(d,4H,J=8.8Hz)、7.47(d,4H,J=8.8Hz)。
【0074】
ジ(4−トリフルオロメチルピリジン−2−イル)トリスルフィド(34)。トリスルフィド34を53%の収率で合成した。クロマトグラフィー精製に続くヘキサンからの再結晶化により白色の結晶が得られた。シリカゲルTLCのRf=0.61(10:1 ヘキサン−酢酸エチル)。1H NMR(499.1MHz、CDCl3)δ7.70(d,4H,J=8.4Hz)、7.84(dd,4H,J=8.4,2.4Hz)8.73(s,2H)。
【0075】
表1〜8に示される非対称トリスルフィド誘導体は、化合物41〜68に対する手順と同様の手順にしたがい、対応するチオールを使用することにより、合成することができる。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
【表5】
【0081】
【表6】
【0082】
【表7】
【0083】
【表8】
スキーム4及び5に示される二置換(トリスルフィド)誘導体は同様の手順(方法B)によって合成することができる。例えば、1,3−ベンゼンジメタンチオール又は2−ブテン−1,4−ジチオール(10mmol)及び無水ピリジン(20mmol)を含む30mLのジエチルエーテルの溶液を、二塩化硫黄(20mmol)を含む80mLの無水ジエチルエーテルの冷却された(−78℃)攪拌溶液に30分間かけて滴下添加する。この反応混合物を30分間攪拌する。対応する第2のチオール(20mmol)及び無水ピリジン(20mmol)を含む40mLのジエチルエーテルを−78℃にて30分間かけて滴下添加し、反応混合物をさらなる30分間さらに攪拌する。pHが中性になるまで、反応混合物を水(2回)、1N水酸化ナトリウム溶液(2回)、次いで、水(2回)を用いて洗浄する。有機相をCaCl2又は無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮する。溶出液としてヘキサン−酢酸エチルを用いてシリカゲルの短い詰め物に残渣を通過させることにより二置換トリスルフィドを収率40〜90%で取得した。
【0084】
【化28】
【0085】
【化29】
トリスルフィド誘導体は、上記方法により、又はスキーム6に示されたアプローチにより合成することができる。テトラ−及びペンタ−スルフィド誘導体は報告されている手順(Sinha,P.;Jundu,A.;Roy,S.;Prabhakar,S.;Vairamani,M.;Sankar,A.R.;Kunwar,A.C.Organometallics 2001,20,157−162)に基づく同様のストラテジーにより合成される。
【0086】
【化30】
対称又は非対称スルフェンスルホンチオ無水物誘導体(スキーム7)は、報告されている手順(Karpp,D.N.;Gleason,J.G.;Ash,D.K.J.Org.Chem.1971,36,322−326;およびHarpp,D.N.;Ash,D.K.;Smith,R.A.J.Org.Chem.1979,44,4135−4140)に基づいて合成することができる。
【0087】
本発明は、必要に応じて抗増殖性因子と共に、有効量の式1〜5を有する化合物と薬学的に受容可能な賦形剤を含む、薬学的組成物も提供する。本明細書中で使用する場合、「有効量」とは、処置される被験体に治療的効果を及ぼすために必要とされる化合物の量を意味する。有効量又は用量は、当業者によって理解されるように、処置される腫瘍のタイプ、投与経路、及びその他の抗腫瘍性因子又は放射線療法の使用などのその他の治療的処置とともに可能な同時投与に依存して変動する。
【0088】
本明細書中で使用する場合、用語「抗増殖性因子」とは、腫瘍又は癌などの細胞増殖性疾患を処置又は改善するために使用することができる治療用因子を意味する。抗増殖性因子の例としては、限定するものではないが、抗腫瘍薬、アルキル化剤、植物性アルカロイド、抗菌剤、スルホンアミド、抗ウイルス剤、プラチナ剤、及び当該分野で公知のその他の抗癌剤が挙げられる。抗増殖性因子の特定の例としては、限定するものではないが、シスプラチン、カルボプラチン、ブスルファン、メトトレキセート、ダウノルビシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、メファラン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、クロラムブシル、パクリタキセル、ゲンシタビン、及び当該分野で公知のその他のものが挙げられる。(例えば、Goodman & Gilman’s,The Pharmacological Basis of Therapeutics(第9版)(Goodmanら編)(McGraw−Hill)(1996);及び1999 Physician’s Desk Reference(1998)を参照のこと)。
【0089】
本明細書中に記載される化合物のいずれの適切な製剤も調製することができる。安定した非毒性の酸性又は塩基性塩を形成するために化合物が十分塩基性又は酸性である場合、塩としての化合物の投与が適切であり得る。薬学的に受容可能な塩の例は、生理学的に受容可能な陰イオンを形成する酸によって形成される有機酸付加塩、例えば、トシル酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、α−ケトグルタル酸塩、及びα−グリセロリン酸塩である。適切な無機塩も形成することができ、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、重炭酸塩、及び炭酸塩が挙げられる。薬学的に受容可能な塩は、当該分野において周知の標準的手順を使用して(例えば、適切な酸と共にアミンなどの十分に塩基性の化合物によって)、生理学的に受容可能な陰イオンが得られることにより得られる。カルボン酸のアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム若しくはリチウム)又はアルカリ土類金属(例えば、カルシウム)塩も作られる。
【0090】
本明細書中に記載される式1〜5を有する化合物は、一般的に、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、酢酸エチル、エタノール、メタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、グリセロール,N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の有機溶媒に可溶性である。一実施形態において、本発明は、薬学的に受容可能なキャリアと共に式1〜5を有する化合物を混合することにより調製される製剤を提供する。一局面において、この製剤は、a)溶液を得るために、請求項1に記載の化合物を、水溶性有機溶媒、非イオン性溶媒、水溶性脂質、シクロデキストリン、トコフェロールなどのビタミン、脂肪酸、脂肪酸エステル、リン脂質、又はこれらの組み合わせの中に溶解させる工程;及びb)生理食塩水又は1〜10%の炭水化物溶液を含むバッファーを添加する工程;を含む方法を使用して調製することができる。一実施例において、この炭水化物はデキストロースを含む。本方法を使用して得られた薬学的組成物は安定であり、動物及び臨床での適用に対して有用である。
【0091】
本発明の方法において使用するための水溶性有機溶媒の代表的な例としては、限定するものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)、アルコール、アセトニトリル、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、又はこれらの組み合わせである。アルコールの例としては、限定するものではないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、グリセロール、又はプロピレングリコールが挙げられる。
【0092】
本発明の方法において使用するための水溶性非イオン性界面活性剤の具体例は、限定するものではないが、ポリオキシエチレングリセロールトリリシノレート35、PEG−コハク酸、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポリエチレングリコール660 12−ヒドロキシステアレート、ソルビタンモノオレエート、ポロキサマー、エトキシル化杏仁油、カプリル−カプロイルマクロゴール−8−グリセリド、グリセロールエステル、PEG6カプリルグリセリド、グリセリン、グリコール−ポリソルベート、又はこれらの組み合わせである。非イオン性界面活性剤の特定の例は、ポリエチレングリコール改変CREMOPHOR(登録商標)(ポリオキシエチレングリセロールトリリシノレート35)、CREMOPHOR(登録商標)EL、水素化CREMOPHOR(登録商標)RH40、水素化CREMOPHOR(登録商標)RH60、SOLUTOL(登録商標)HS(ポリエチレングリコール660 12−ヒドロキシステアレート)、LABRAFIL(登録商標)(エトキシル化杏仁油)、LABRASOL(登録商標)(カプリル−カプロイルマクロゴール−8−グリセリド)、GELUCIRE(登録商標)(グリセロールエステル)、及びSOFTIGEN(登録商標)(PEG6カプリリルグリセリド)である。
【0093】
本発明の方法において使用するための水溶性脂質の代表的な例としては、限定するものではないが、植物性油脂(vegetable oil)、トリグリセリド、植物性油脂(plant oil)、又はこれらの組み合わせが挙げられる。脂質油の例としては、限定するものではないが、ヒマシ油、ポリオキシルヒマシ油、コーン油、オリーブ油、綿実油、落花生油、ペパーミント油、サフラワー油、ゴマ油、大豆油、硬化植物油、硬化大豆油、ココナッツ油のトリグリセリド、ヤシ種子油、及びそれらの硬化形態又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0094】
本発明の方法において使用するための脂肪酸及び脂肪酸エステルの代表的な例としては、限定するものではないが、オレイン酸、モノグリセリド、ジグリセリド、PEGのモノ脂肪酸エステルもしくはジ脂肪酸エステル、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0095】
本発明の方法において使用するためのシクロデキストリンの代表的な例としては、限定するものではないが、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、又はスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリンが挙げられる。
【0096】
本発明の方法において使用するためのリン脂質の代表的な例としては、限定するものではないが、大豆ホスファチジルコリン、又はジステアロイルホスファチジルグリセロール及びその硬化形態、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0097】
当業者であれば、特定の投与経路のための多くの製剤を得るために、本明細書の教示内の製剤を改変することができる。特に、水又は他のビヒクル中でより可溶性にするために、この化合物を改変することができる。患者において最大限の有益な効果をもたらすように本発明の化合物の薬物動態を管理するために特定の化合物の投与経路及び投薬レジメンを改変することも十分に当業者の能力の範囲内である。
【0098】
(C.置換有機硫黄誘導体及びその薬学的組成物の使用方法)
本明細書中に記載される化合物は、癌又はその他のタイプの増殖性疾患を処置する際の細胞傷害性且つ/又は細胞増殖抑制性因子として使用することができる。これらの化合物は、あらゆるタイプの作用機構を通じて機能することができる。例えば、本化合物は、細胞周期のG2/Mの進行を抑制することができ、最終的に、腫瘍細胞においてアポトーシスを誘導することができる(例えば、Weungら、Biochim.Biophys.Res.Comm.1997,263,398−404を参照のこと)。ある化合物はチューブリンの組み立てを妨害することができ、又、別の化合物はチューブリンの分解を妨害することができる。これにより、細胞有糸分裂を抑制することができ、又、細胞アポトーシスを誘導することができる(例えば、Pandaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1997,94,10560−10564を参照のこと)。本化合物は内皮細胞増殖及び血管新生の影響も抑制することができる(例えば、Witteら、Cancer Metastasis Rev.1998,17,155−161を参照のこと)。
【0099】
本発明は、式1〜5を有するいずれかの化合物、例えば、限定するものではないが、ジベンジルトリスルフィド、ジ(p−クロロベンジル)トリスルフィド、(p−クロロベンジル)ベンジルトリスルフィド、ジ(p−ニトロベンジル)トリスルフィド、ジ(3−フェニル−2−プロペニル)−トリスルフィド、ジフェニルトリスルフィド、又はジ(p−t−ブチルフェニル)トリスルフィドを含む、細胞増殖性疾患の処置のための薬学的組成物も提供する。
【0100】
本発明の方法を実施するために、式1〜5を有する化合物及びその薬学的組成物は、経口的に、非経口的に、吸入スプレーにより、局所的に、経直腸的に、経鼻的に、口腔的に、経膣的に、移植されたリザーバーを介して、又はその他の薬物投与方法により投与することができる。本明細書中で使用する場合、用語「非経口的な」は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、病変内、及び頭蓋内注射又は注入技法を含む。
【0101】
無菌の注射可能な組成物、例えば、無菌の水性又は油性懸濁液は、適当な分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を使用する当該分野において公知の技法にしたがって製剤化することができる。無菌の注射可能な調製物は、非毒性の、非経口的に受容可能な希釈剤又は溶媒中の無菌の注射可能な溶液又は懸濁液であることもできる。使用することができる受容可能なビヒクル及び溶媒としては、マンニトール、水、リンゲル溶液及び等張性塩化ナトリウム溶液が挙げられる。さらに、溶媒又は懸濁媒体として、通常、無菌の不揮発性油が使用される(例えば、合成のモノグリセリド又はジグリセリド)。脂肪酸、例えば、オレイン酸及びそのグリセリド誘導体は、オリーブ油又はヒマシ油などの薬学的に受容可能な油と同様に、特に、そのポリオキシエチル化された形態において、注射物質の調製に有用である。これらの油性溶液又は懸濁液は、長鎖アルコール希釈剤若しくは分散剤、又はカルボキシメチルセルロース若しくは同様の分散剤を含むこともできる。薬学的に受容可能な固体、液体、又はその他の剤形の製造において通常使用されている様々な乳化剤又はバイオアベイラビリティー促進剤も製剤化のために使用することができる。
【0102】
経口投与のための組成物は、いずれかの経口的に受容可能な剤形であることができ、例えば、限定するものではないが、錠剤、カプセル剤、エマルジョン及び水性懸濁液、分散液及び溶剤が挙げられる。経口用途のための錠剤の場合、一般的に使用されるキャリアとしてはラクトース及びコーンスターチが挙げられる。ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤も添加することができる。カプセル形態での経口投与のために有用な希釈剤としては、ラクトース及び乾燥コーンスターチが挙げられる。水性懸濁液又はエマルジョンを経口投与するとき、活性成分は、乳化剤又は懸濁化剤と共に油相中に懸濁又は溶解させることができる。必要であれば、特定の甘味剤、矯味矯臭剤、又は着色剤を添加することができる。経鼻エアロゾル又は吸入組成物は医薬製剤の技術分野において周知の技術にしたがって調製することができ、適切な保存剤(例えば、ベンジルアルコール)、バイオアベイラビリティーを増大させるための吸収促進剤、及び/又は、当該分野で公知のその他の可溶化剤若しくは分散剤を使用して、例えば、生理食塩水中の溶液として調製することができる。
【0103】
さらに、式1〜5を有する化合物は、様々な癌又は症状の処置のために、単独又はその他の抗癌剤と共に投与することができる。本発明による組み合わせ療法は、少なくとも一つの本発明の化合物又はその機能的誘導体と、少なくとも一つのその他の薬学的に活性な成分との投与を含む。活性成分と薬学的に活性な因子は別々に又は一緒に投与することができる。活性成分と薬学的に活性な因子の量、並びに、投与の相対的なタイミングは、所望の組み合わせ療法の効果を達成するために選択される。
【0104】
一実施形態において、本発明は、白血病、リンパ腫、肺癌、大腸癌、CNS癌、メラノーマ、卵巣癌、腎臓癌、前立腺癌、乳癌、膵臓癌、腎臓癌、及びその他のタイプの増殖性疾患などが挙げられるが、これらに限定されない組織又は臓器の癌を処置又は改善する方法に関し、この方法は、治療的有効量の式1〜5を有する化合物を投与する工程を包含する。
【0105】
別の実施形態において、本発明は、冠動脈疾患を有する患者に対する冠動脈ステント挿入後の再狭窄を、ジベンジルトリスルフィド及びその他のトリスルフィド誘導体などの式1〜5を有する化合物を用いて処置する方法に関する。冠動脈疾患を有する患者に対する冠動脈ステント挿入後の再狭窄の主要な原因の一つは、平滑筋細胞の増殖及び移動と細胞外マトリックス産生から生じ得る新生内膜過形成である(例えば、Farb,A.,Sangiorgi,G.,Certer,A.J.らによる“Pathology of acute and chronic coronary stenting in humans”,Circulation,1999,99,44−52を参照のこと)。抗増殖能を有する化合物は、その化合物が適切な手段によって送達される場合、臨床的且つ血管造影的再狭窄のリスク低減に効果を有し得る(例えば、Stone,G.W.,Ellis,S.G.,Cox,D.A.らによる“A polymer−based,paclitaxel−eluting stent in patients with
coronary artery disease”,New Engl.J.Med.,2004,350,221−231を参照のこと)。したがって、ジベンジルトリスルフィド及び式1〜5を有する化合物はまた、新生内膜過形成を伴う細胞増殖を抑制し、それにより、新生内膜過形成及び再狭窄の発生を低減させるのに有用であり得る。
【0106】
式1〜5を有する化合物をそれらのターゲット、例えば、細胞に効果的に送達するために様々な方法を使用することができる。例えば、ジベンジルトリスルフィド又は式1〜5を有する別の化合物を含む組成物は、経口的に、非経口的に、又は移植されたリザーバーにより投与することができる。その他の実施例においては、参照により本明細書中に援用される以下の文献に記載される方法を使用することもできる:Stone,G.W.,Ellis,S.G.,Cox,D.A.らによる“A polymer−based,paclitaxel−eluting stent in patients with
coronary artery disease”,New Engl.J.Med.2004,350,221−231;Morice,M.−C.,Serruys,P.W.,Sousa,J.E.らによる“A randomized comparison of a sirolimus−eluting stent with a standard stent for coronary revascularization”,New Engl.J.Med.2002,346,1773−1780;Moses,J.W.,Leon,M.B.,Popma,J.J.らによる“Sirolimus−eluting stents versus standard stents in patients with stenosis in a native coronary artery”,New Engl.J.Med.2003,349,1315−1323。
【0107】
ジベンジルトリスルフィド及び上記の置換有機硫黄アナログにおける前記抗癌効果は、標準的なエンドポイントアッセイ様式(以下の詳細な説明を参照のこと)、又は抗癌剤に曝した後の動的な細胞応答情報を提供するリアルタイム電子的細胞センシング(RT−CES)システムによって癌細胞株パネルを用いて、インビトロで予備的にスクリーニングされ得る。抗癌剤発見及び検証のために、いくつかのエンドポイント細胞ベースのスクリーニングアッセイ様式を使用することができる。例えば、国立癌研究所(NCI)は60の癌細胞株パネルを用いたエンドポイント細胞傷害性アッセイ系を提供しており、これは抗癌剤の大規模な細胞をべースとするスクリーニングに用いられ得る(例えば、Monks、Aら、J Natl.Cancer Inst.1991、83、757−766;Alley、M.C.ら、Cancer Res.1988、48、589−601;Shoemaker、R.H.ら、Proc.Clin.Biol.Res.1988、276、265−286;及びStinsonら、Proc.Am.Asso.Cancer Res.1989、30、613を参照のこと)。
【0108】
このスクリーニング方法において、所望の細胞濃度へと稀釈された細胞懸濁液を、各ウェルが1000個台(例えば、5000個)から10000個台(例えば、40,000個)の間の数の細胞を含む約100マイクロリットルの溶液を有するように96ウェルマイクロタイタープレートのウェル中に加える。個々のウェルに添加される細胞の数は、細胞のタイプ、細胞の大きさ、細胞の生育特性に依存する。プレート中の細胞を、標準的な細胞培養インキュベーター中で、37℃、飽和湿度及び5%のCO2雰囲気下で約24時間インキュベートする。対象化合物を連続的な希釈濃度で試験溶液へと調製する。1例において、連続希釈溶液における稀釈係数は10倍(又は2、3、4倍)であり、最高濃度から最低濃度まで10,000倍の比率を有する5(又は6〜10)種類の異なる濃度である。その他の稀釈係数及びその他の各種濃度も使用される。通常、試験化合物の最高濃度は10−4Mである。ウェルへの最初の細胞播種から24時間後に、約100マイクロリットルの試験溶液を各ウェル中に添加する。各化合物濃度の試験溶液を、2連で行う目的で、少なくとも2つのウェルに添加する。試験化合物はDMSOなどの有機溶媒に溶解し得、100マイクロリットルの試験溶液を、有機溶媒をべースとした溶液又は懸濁液と混合した水性溶液としてもよい。
【0109】
化合物の添加後、次いで細胞を、さらに48時間、37℃、5%のCO2雰囲気及び飽和湿度下で化合物と共にインキュベートする。この細胞を次いで、例えば、スルホローダミンBアッセイ(Rubinstein,L.V.ら,J.Natl.Cancer Inst.1990,82,1113−1118;及びSkehan,P.ら,J.Natl.Cancer Inst.1990,82,1107−1112に記載するように)等の各種のアッセイにより、その生存細胞数をアッセイする。次いで吸光度を読むためにプレートリーダーを用い、また50%の生育阻害が起こる薬物濃度であるIC50の値(又は開始時に計数される細胞に対する補正を重視したGI50値)を投与量応答曲線に基づいて導き出す。従って、GI50値は試験化合物の生育阻害強度を測定するために用いられる。Boydら,Cytotoxic Anticancer Drugs:Models and Concepts for Drug Discovery and Development;Vleriote,F.A.,Corbett T.H.,Baker L.H.(編);Kluwer Academic:Hingham,Mass.,1992,pp11−34中の記載を参照されたい。
【0110】
その他のアッセイ様式においては、エンドポイントアッセイ法を用いて、試験化合物の細胞傷害性及び/又はある種の癌細胞タイプにおける細胞増殖抑制効果についてアッセイする。NCI癌細胞パネルにおける細胞を使用してもよい。一定の長さの時間(例えば、8時間又は24時間)のプレインキュベーション後に、細胞を連続的に稀釈した濃度(例えば、5つの10倍稀釈系列)の試験化合物と、24時間及び/又は48時間、あるいは及び/又はその他の特定の長さの時間インキュベートする。次いで、試験化合物の投与量依存的な細胞傷害性及び/又は細胞増殖抑制効果を、例えばBoyd(Principle of Practice of Oncology,Devita,J.T.,Hellman,S.及びRosenberg S.A.(編),1989,Vol,3,PPO Update,No.10中)により先に記載されたような、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)アッセイ法を用いて試験し評価することができる。
【0111】
その他のin vitroアッセイが、細胞周期進行の停止における化合物の効果を評価するために使用され得る。より具体的には、ある種の細胞株の細胞に対し試験化合物を濃度依存的な方法で添加する。細胞を一定の特定時間インキュベートした後に、細胞をヨウ化プロピジウムにより染色し、フローサイトメトリー試験のために使用した。G0前/G1、G0/G1、S及びG2/M期における細胞集団を調べる。全ての上記in vitroアッセイは、細胞をベースとした、単回時刻ポイント(又は複数のプレートを用いた複数時刻ポイント)のエンドポイントアッセイである。
【0112】
試験化合物はまた、細胞−基質又は細胞−電極インピーダンスの電子的測定に基づく新規なin vitroの細胞ベースのスクリーニングアッセイ系を用いてスクリーニングしてもよい。全てのエンドポイントアッセイ系とは対照的に、この細胞ベースのスクリーニングアッセイ系は、抗癌剤に対する癌細胞の動的な応答を、細胞を標識することなくリアルタイムでモニタリングすることを可能にする。このシステムはまた、大規模な、in
vitroでの細胞をベースとした抗癌剤のハイスループットスクリーニングに使用することができる。このアプローチはマイクロエレクトロニクスと組み合わせた分子生物学及び細胞生物学の融合を特徴とし、生物学的アッセイプロセスの電子的な検出に基づいている。
【0113】
この細胞の電子的な検知技術の詳細は、リアルタイム細胞電子センシング(RT−CESTM)と称され、関連する装置、システム及び使用方法は2002年7月20日に提出された米国特許仮出願第60/397,749号、;2002年12月20日に提出された米国特許仮出願第60/435,400号;2003年5月9日に提出された米国特許仮出願第60/469,572号、2003年7月18に提出された国際出願PCT/US03/22557号;2003年7月18日に提出された国際出願PCT/US03/22537号;2004年11月12日に提出された国際出願PCT/US04/37696号;2005年2月9日に提出された国際出願PCT/US05/04481号;2003年11月10日に提出された米国特許出願第10/705,447号;2003年11月10日に提出された米国特許出願第10/705,615号;2004年11月12日に提出された米国特許出願第10/987,732号;2005年2月9日に提出された米国特許出願第11/055,639号に記載されており、それらの各々は、参考として援用される。さらなるRT−CES技術の詳細はさらに、2003年11月12日に提出された米国特許仮出願第60/519,567号、及び2004年2月9日に提出された米国特許仮出願第60/542,927号、2004年2月27日に提出された米国特許仮出願第60/548,713号、2004年8月4日に提出された米国特許仮出願第60/598,608号;2004年8月4日に提出された米国特許仮出願第60/598,609号;2004年9月27日に提出された米国特許仮出願第60/613,749号;2004年9月27日に提出された米国特許仮出願第60/613,872号;2004年9月29日に提出された米国特許仮出願第60/614,601号;2004年11月22日に提出された米国特許仮出願第60/630,071号;2004年11月22日に提出された米国特許仮出願第60/630,131号において開示され、それらの各々は、本明細書中で参考として援用される。
【0114】
RT−CES技術を用いた細胞−基質又は細胞−電極インピーダンスの測定のために、適切な形状を備えた微小電極が、マイクロタイタープレート又は類似の装置の底表面上に、ウェルに向かう方向で備えられる。細胞はこの装置のウェルへと導入され、電極表面と接近し、また接触する。細胞の存在、非存在又は特性の変化は電極センサー表面上の電子及びイオンの通過に影響を及ぼす。電極間又は電極の中におけるインピーダンスの測定は、センサー上に存在する細胞の生物学的状態についての重要な情報を提供する。細胞アナログの生物学的状態に変化がある場合、電子的な読み出しシグナルは自動的に且つリアルタイムで測定され、処理及び解析のためにデジタルシグナルに変換される。RT−CESシステムにおいて、細胞指数は、測定される電極インピーダンス値に基づいて自動的に導き出され提供される。所定のウェルについて得られた細胞指数は:1)このウェル中で何個の細胞が電極表面に付着しているか;2)このウェル中で細胞がどの程度良好に電極表面に付着しているか、を反映する。すなわち、類似の生理学的条件において同タイプの細胞がより多く電極表面に付着するほど、細胞指数はより大きくなる。そして、電極表面へと細胞がより良く付着するほど(例えば、細胞がより大きな接触面積を有するように広がる、又は細胞が電極表面に、より強固に付着する)、細胞指数はより大きくなる。
【0115】
RT−CESシステムの使用を通じ、ジベンジルトリスルフィドが多様な癌のタイプの増殖を阻害することが示されている。ジベンジルトリスルフィドは従来、標準的なエンドポイントアッセイを用いては見出されていなかった。ジベンジルトリスルフィドは抗増殖活性を有さないというネガティブな結論が先の研究者によってなされていた(“Discovery of novel inducers of cellular differentiation using HL−60 promyelocytic cells”、Mata−Greenwood、E.、Ito、A.、Westernburg、H.、Cui、B.、Mehta、R.G.,Kinghorn、A.D.及びPezzuto、J.M.Anticancer Res.2001、21、1763−1770)。
【0116】
ジベンジルトリスルフィドの抗癌効果を評価し、可能性ある抗癌作用のメカニズムを予測するために、12種の癌細胞株のパネルを利用し、ジベンジルトリスルフィドを既知の作用メカニズムと並べて、10種の抗癌化合物を試験した。(ある種の濃度における)ジベンジルトリスルフィドの時間依存的な、細胞応答性のパターンは、パクリタキセル、ビンブラスチン及びコルセミド(ある特定の濃度における)のものといくぶん類似していた。従って、ジベンジルトリスルフィドはパクリタキセル、ビンブラスチン及びコルセミドに類似する抗癌作用メカニズムを有し得る。ジベンジルトリスルフィドはパクリタキセル、ビンブラスチン及びコルセミドとは異なるその他の作用メカニズムを通じて癌細胞に作用し得る。ジベンジルトリスルフィドが、パクリオタキセル、ビンブラスチン及びコルセミドに類似するメカニズムを含む複数の作用メカニズムを通じて癌細胞に作用する可能性もある。
【0117】
さらに、in vitro細胞モデル及びアッセイ様式に対し、化合物の抗腫瘍活性がさらに調べられ、移植された癌を伴うin vivo動物モデルによって評価され得る。ほとんどのin vivoモデルはマウスモデルである。
【0118】
(リアルタイム細胞電子センシング(RT−CES)システムを使用したin vitroの細胞に基づくスクリーニング)
RT−CESシステムは電子的センサー分析装置、デバイスステーション及び16又は96ウェルのマイクロタイタープレートデバイスの3つの要素を含む。微小電極センサーアレイがスライドガラス上にリソグラフ微細加工法を用いて加工され、電極を含むスライドは電極を含むウェルを形成するためにプラスチック製のトレイへと組み立てられる。RT−CESシステムに使用する16ウェル(又は96ウェル)の各マイクロタイタープレートデバイスは、16(又は96)ウェルまでのこのような電極を含むウェルを含む。デバイスステーションは16又は96ウェルのマイクロタイタープレートデバイスを受け入れ、インピーダンス測定のためウェルの任意のひとつをセンサー分析装置へと電子的に切り替えることができる。操作において、ウェル中で培養された細胞を伴うデバイスは、インキュベーター内部に配置されたデバイスステーションへと配置される。電気的ケーブルがこのデバイスステーションをセンサー分析装置へと連結する。RT−CESソフトウェアの制御下で、センサー分析装置は測定されるウェルを自動的に選択し得、連続的にインピーダンス測定を実施し得る。分析装置から得られたインピーダンスデータはコンピューターへと送られ、統合ソフトウェアにより解析され処理される。
【0119】
個々のウェル中の電極間で測定されるインピーダンスは、電極の形状、ウェル中のイオン濃度、及び電極に付着している細胞があるかどうかに依存する。細胞が存在しない場合、電極インピーダンスは主として、電極/溶液インターフェースにおいて、及びバルク溶液中での両方のイオン環境により決定される。細胞が存在する場合、電極センサー表面に付着した細胞は電極/溶液インターフェースにおける局部的なイオン環境を変化させ、インピーダンスの増加を導くであろう。電極上に存在する細胞が増えるほど、細胞−電極インピーダンスは増加する。さらに、インピーダンスの変化は、細胞の形態及び電極に付着した細胞の面積にも依存する。
【0120】
測定された細胞−電極インピーダンスに基づく細胞の状態を評価するために、細胞指数と称するパラメーターが以下の式
【0121】
【化31】
に従い導き出される。式中、Rb(f)及びRcell(f)はそれぞれ、細胞が存在しない場合又は細胞が存在する場合の周波数依存性電極抵抗(インピーダンスの一要素)である。Nはインピーダンスが測定される頻度の点の数である。従って細胞指数は、電極を含むウェル中の細胞における状態の定量的測定である。同一の生理学的条件下で電極に付着した細胞数がより多いことは、より大きいRcell(f)値を導き、細胞指数についてのより大きな値を導く。さらに、ウェル中に存在する同数の細胞については、形態のような細胞の状態における変化が細胞指数における変化を導く。例えば、細胞吸着又は細胞拡長における増加は、より大きい細胞−電極接触面積を導き、Rcell(f)の増大を導き、従って、細胞指数について、より大きな値を導く。細胞指数はまた、本明細書中に記載のものと異なる式を用いて計算することもできる。インピーダンス測定に基づいて細胞指数を計算するその他の方法は、2004年11月12日に提出された国際出願PCT/US04/37696号、2005年2月9日に提出された国際出願PCT/US05/04481号、2004年11月12日に提出された米国特許出願第10/987,732号、及び2005年2月9日に提出された米国特許出願第11/055,639号中に見出すことができる。
【0122】
NCI−H460(非小細胞肺癌細胞)、MV522SW(非小細胞肺癌細胞)、MCF7(乳癌細胞)、A549(非小細胞肺癌細胞)、PC3(前立腺癌細胞)、A431(類表皮癌細胞)、HT1080(線維肉腫細胞)、MDA.MB2321(乳癌細胞)、HT29(結腸癌細胞)、HCC2998(結腸癌細胞)、OVCAR4(卵巣癌細胞)、A2780(卵巣癌細胞)及びHepG2(ヒト肝臓肉腫)を含む、異なるタイプのヒト癌細胞を、異なる数(ウェルあたり4000〜20,000個)で16又は96ウェルマイクロタイタープレートデバイス中に播種し、RT−CESTMシステムによりモニタリングした。細胞を、DMSO溶液中に溶解したジベンジルトリスルフィド(最終DMSO濃度:0.2%;最終ジベンジルトリスルフィド濃度:1.5625μM〜100μM)を添加する前に、約24時間生育させた。細胞−電極インピーダンスを連続的に測定し、相当する時間依存的な細胞指数を導き出して記録した。
【0123】
図1〜5、6A、及び7〜12は、ジベンジルトリスルフィドを各種濃度で添加する前及び後の、多数の細胞株についての時間依存性の細胞指数を示す。図に示すように、ジベンジルトリスルフィドは多数の癌細胞株における増殖に阻害的影響を呈した。ジベンジルトリスルフィドに対する感受性は癌細胞のタイプにより異なる。いくつかの癌細胞タイプについては、低投与量のジベンジルトリスルフィドで顕著に癌細胞増殖を阻害するために十分であり、他方その他の癌細胞タイプにおいては、類似の阻害の程度を達成するためには、より高投与量が必要とされる。
【0124】
一例において、図1B及び1Cは、各種濃度のコルセミド及びパクリタキセルの添加前及び添加後のH460(非小細胞肺癌細胞株)細胞に関する時間依存性の細胞指数を示す。図1B及び1Cに示すように、コルセミド及びパクリタキセルは、試験された濃度におけるA431細胞の増殖に対して阻害能力を呈した。さらに、これらの図は、化合物(コルセミド又はパクリタキセル)添加後、H460細胞に関する細胞指数がまず時間と共に減少し、次いで増加して、H460細胞がコルセミド及びパクリタキセルのいずれかに対し複雑な動的応答を有することを示す。図1Aに示す、25μM以上のジベンジルトリスルフィド(DBTS)濃度の影響下でのH460細胞に関する細胞指数曲線が図1B及び1Cにおける曲線にいくぶん類似していることは特筆すべきであり、すなわち、DBTS(25μM以上)の添加後に、H460細胞に関する細胞指数がまず時間と共に減少し、次いで増加する。
【0125】
その他の例において、図6Bは、各濃度の5−フルオロウラシルの添加前及び添加後のA431(類表皮癌細胞株)細胞に関する時間依存性の細胞指数を示す。図6Bに示すように、5−フルオロウラシルは12.5μM以上の濃度においてA431細胞の増殖に対して阻害能力を呈した。図6Bに示す時間依存的な細胞指数曲線は、図6Aにおけるものと顕著に異なっている。
【0126】
その他の例において、図13はジベンジルトリスルフィドの影響下におけるHepaG−2細胞株の細胞指数データを示す。図13に示すように、ジベンジルトリスルフィドはHepaG−2細胞において抗増殖能力を示さなかった。
【0127】
(抗癌活性に関するin vivoスクリーニング)
DBTS及びACEA100108(DBTSの誘導体、表33参照)を含む試験化合物のin vivo抗癌効果を評価するため、マウス肉腫S180モデル、マウスルイス肺癌モデル、P388リンパ性白血病モデル、及び免疫欠損ヌードマウスにおける3種のヒト腫瘍異種移植片モデル(Bcap−37ヒト乳癌、HCT−8ヒト結腸癌、ao12/17ヒト卵巣癌)を含む各種マウスモデルを使用した。試験化合物のin vivo抗癌効果における詳細を以下に示す。
【0128】
(DBTS及び化合物ACEA100108の急性毒性試験)
DBTS及びACEA100108(DBTSの誘導体、表33参照)の、in vivoにおける急性の、静脈内毒性を評価するために、DBTS又はACEA100108の静脈内注入(i.v.)による単回投与に対するマウスの急性応答をモニタリングすることにより、腫瘍を有さない、正常なKunmingマウスにおける試験を実施した。処置したマウスに関する死亡数をモニタリングし記録した。これらの化合物に対するLD50値を計算した。研究の詳細を以下に示す。
【0129】
以下の実施例は例示のために提供されるものであり、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0130】
(実施例1)
(マウス肉腫S180及びマウスルイス肺癌に対するDBTSの抗癌活性)
試験化合物のin vivoの抗癌効果を評価するため、in vivo評価に関し2つのマウス移植腫瘍モデル:マウス肉腫S180モデル及びマウスルイス肺癌モデルを使用した。試験用のマウスはShanghai Pharmaceutical Industry Instituteの薬理学研究室において維持した。マウスの供給源及び種類は以下のようである。Academic Sinica、Experimental Animal Centerから供給されたマウスC57BL/6及びKunming株、認定番号:Academic Sinica Experimental Animal Certificate、No.5。マウスの体重は18〜20gであった。オス及びメスの両方のマウスを使用した。しかし、試験毎に同性の動物を使用した。試験された動物の数は以下である:試験化合物群に関し、高投与量群について10匹、中投与量群について10匹、及び低投与量群について10匹を含む30匹のマウス;陽性化合物群について10匹のマウス;陰性対照群について、生理食塩水群について10匹及び溶媒のみの群について10匹を含む20匹のマウス。DBTSの高、中及び低投与量はそれぞれ、50、25及び12.5mg/kg/日であった。
【0131】
試験対照 陰性対照として、2つの群:溶媒のみの対照群と生理食塩水対照群を設定した。溶媒のみの対照群において、各マウスには、高投与量DBTS試験で使用された溶媒と、同量かつ同濃度(肉腫S180モデルについて10%及びルイス肺癌モデルについて5%)の溶媒のみを、連続した7又は10日間にわたり、1日1回静脈内投与した。生理食塩水群においては、各マウスは0.5mlの生理食塩水を1日1回、7又は10日間連続投与された。陽性対照群については、抗癌化合物のシクロホスファミド(CTX)が、30mg/kg、1日1回、7又は10日間連続で腹腔内投与された。
【0132】
試験化合物の調製及び投与 抗腫瘍効果癌モデルを評価するために、試験化合物溶液を次のように調製した。マウス肉腫S180マウスモデルにおいて、200mgのDBTSを10mLのヒマシ油(ポリオキシエチル化されたもの)中にまず溶解し、次いで90mLの生理食塩水と混合した。最終的な溶液中のDBTS濃度は0.2%であり、最終的な溶媒濃度は10%であった。各マウスにそれぞれ0.5mL(高投与量)、0.3mL(中投与量)及び0.15mL(低投与量)の化合物溶液を静脈内投与した。
【0133】
マウスルイス肺癌モデルにおいて、200mgのDBTSを5mLのヒマシ油(ポリオキシエチル化されたもの)中に溶解した。毎回使用前に、この溶液を生理食塩水で希釈して、最終DBTS濃度をそれぞれ0.2%(高投与量)、0.1%(中投与量)及び0.05%(低投与量)にした。この場合、各マウス(体重約20g)に、所定の化合物濃度を有する0.5mLの化合物溶液を静脈内投与した。静脈注入の速度は約0.5mL/0.5分であった。
【0134】
試験化合物の投与量は、薬理学における当業者によく知られた知識の範囲内である。例えば、試験化合物は、ある試験化合物溶液を1日2回、7日間連続で静脈注入することにより投与してもよい。別の方法においては、試験化合物を、ある試験化合物を1日1回、10日間連続で静脈注入することにより投与してもよい。
【0135】
移植用腫瘍細胞の調製及び化合物の効果測定 腫瘍細胞を調製するために、迅速に成長した腫瘍をまず移植腫瘍マウス(肉腫S180モデル又はルイス肺癌モデル)から除去し、この腫瘍組織を切開し、切開された組織から腫瘍細胞濃度が2〜4×107個/mlである腫瘍細胞懸濁液を調製した。次いで、0.2mLの腫瘍細胞懸濁液(400〜800万個の腫瘍細胞)を皮下注入により試験用マウスに戻して移植した。移植24時間後、マウスに所定の投与量のDBTS、生理食塩水、又は陰性対照として供される溶媒のみを静脈内投与し、あるいは陽性対照として供される50mg/kgのCTXを腹腔内投与した。移植2週間後、マウスを屠殺し、移植された腫瘍を試験マウスから除去した。除去された各固形腫瘍の重量を測定し、DBTS処置群とCTX処置群における腫瘍阻害率を以下の式:
腫瘍阻害率%=(陰性対照群における腫瘍重量の平均−化合物処置群における腫瘍重量の平均)/陰性対照群における腫瘍重量の平均 × 100(2)
に従って計算した。
【0136】
マウス肉腫S180モデルについては、S180細胞をマウス1匹あたり約500万個の細胞数で皮下移植した。移植24時間後、試験群の各マウスにジベンジルトリスルフィドを、それぞれ1日あたり50、25又は12.5mg/kg、連続した7又は10日間、静脈内投与した。陽性対照群としては、各マウスにシクロホスファミド(サイトキサン、CTX)を1日あたり50mg/kg、7日間連続して腹腔内投与した。陰性対照群としては、各マウスに、生理食塩水又は試験群における1日あたりのジベンジルトリスルフィドに対する濃度と同濃度の溶媒のみのいずれかを、7日間連続して、静脈内投与した。各群について10匹のマウスを使用した。
【0137】
マウスルイス肺癌モデルに関して、ルイス肺癌細胞をマウス1匹あたり約500万個の細胞数で皮下移植した。移植24時間後、試験群における各マウスにジベンジルトリスルフィドを、1日あたり50、25又は12.5mg/kg、10日間連続して静脈内投与した。陽性対照としては、各マウスにCTXを1日あたり50mg/kg、10日間連続して腹腔内投与した。陰性対照としては、各マウスに、生理食塩水又は試験群における1日あたりのジベンジルトリスルフィドに対する濃度と同濃度の溶媒のみを、10日間連続して、静脈内投与した。各群について10匹のマウスを使用した。
【0138】
結果 マウス肉腫S180モデルにおいてDBTSは、50、25及び12.5mg/kgの投与量群についてそれぞれ63.30%、54.68%及び48.69%の平均腫瘍阻害率を示した(生理食塩水対照に対して)。詳細な結果を、マウス肉腫S180モデルにおける0.2%DBTSのin vivo効果実験を表す表9及び図14に示す。図14において、7つの列(それぞれ1−7)は以下の投与化合物(iv×7qd):1)陰性対照;2)生理食塩水対照;3)DBTS(25ml/kg);4)DBTS(15ml/kg);5)DBTS(7.5ml/kg);6)溶媒対照(15ml/kg)及び7)陽性対照 CTX(30mg/kg)から得られた結果を表す。
【0139】
DBTSの静脈内注入の直後、マウスが、跳躍、頻呼吸、及び横たわって活動が低下するということを含む一時的な異常な反応を呈することが観察された。このような反応は通常10〜15分間持続する。同様な異常な反応はまた、溶媒のみを静脈内注入されたマウスにおいてもみられた。従って、注入速度と、DBTSではなく高濃度の溶媒は、マウスにおいて一時的な異常な反応をもたらし得る。
【0140】
ルイス肺癌モデルにおいて、DBTSは、50、25及び12.5mg/kgの投与量群についてそれぞれ67.05%、51.34%及び45.21%の平均腫瘍阻害率を示した(生理食塩水対照に対して)。詳細な結果を、マウスルイス肺癌モデルにおける0.2%DBTSの効果研究を表す表10及び図15にまとめる。図15において、7つの列(それぞれ1〜7)は以下の投与化合物:1)陰性対照;2)生理食塩水対照;3)DBTS(25ml/kg);4)DBTS(15ml/kg);5)DBTS(7.5ml/kg);6)溶媒対照(15ml/kg)及び7)陽性対照 CTX(30mg/kg)から得られた結果を表す。DBTS及び溶媒対照はiv×10qdにて投与し;陽性対照はip×7qdにて投与した。マウス肉腫S180の実験に用いられたマウスとは対照的に、この実験でDBTS又は溶媒のいずれかを静脈内注入されたマウスは、より軽微な一時的な異常反応を示した。
【0141】
陰性対照として溶媒のみを使用することにより、肉腫S180に対するDBTSのin
vivoの腫瘍阻害率の平均値は、表11に示すように、50、25及び12.5mg/kgの投与量群についてそれぞれ50.25%、38.58%及び30.46%であった。ルイス肺癌モデルに対しては、DBTSのin vivoの腫瘍阻害率の平均値は、表12に示すように、50、25及び12.5mg/kgの投与量群についてそれぞれ62.28%、44.30%及び37.38%であった。
【0142】
2つのマウス移植腫瘍モデルから得られた結果は、DBTSを静脈内投与されたマウスにおける、移植腫瘍の増殖の特異的阻害を示す。高投与量のDBTS(50mg/kg/日、7又は10日間連続)を静脈内投与された場合、生理食塩水を陰性対照として用いることにより、いずれのマウス移植腫瘍モデルにおいても65%の腫瘍阻害率が達成された。DBTS溶液の調製に使用した溶媒は、マウス移植腫瘍モデル中での腫瘍の増殖に弱い阻害効果を示し、また静脈内注入後にマウスにおける一時的な異常反応をも引き起こし得る。
【0143】
【表9】
【0144】
【表10】
【0145】
【表11】
【0146】
【表12】
(実施例2)
(マウスルイス肺癌に対するDBTSの抗癌活性)
本研究は、実施例1のようなマウスルイス肺癌モデルにおけるジベンジルトリスルフィド(DBTS)のインビボ抗癌効力を評価する。その実験用マウスを、Shanghai
Pharmaceutical Industry Instituteの薬理学研究室において維持した。実験用マウスは、Academic Sinica、Experimental Animal Centerから提供されたマウスC57BL/6系統(認定番号:SCXK(Shanghai)2003−0003)であった。マウスの体重は、18g〜20gであった。メスのマウスのみを使用した。試験した動物の数は以下の通りであった:各投与量群に対し10匹、陽性対照群について10匹、および陰性対照群について20匹(生理的対照群について10匹および溶媒対照群について10匹)。
【0147】
(試験対照) 陰性対照として、2つの群(溶媒のみの対照群および正常生理食塩水対照群)を設定した。溶媒のみの対照群において、各マウスに、高投与量DBTS試験で使用したものと同量かつ同濃度を有する溶媒(正常生理食塩水中、5%溶媒)のみを、連続7日間または10日間にわたり、1日1回静脈内投与した。正常生理食塩水群においては、各マウスに、0.5mlの正常生理食塩水を1日1回、10日間連続投与した。陽性対照群については、抗癌化合物のシクロホスファミド(サイトキサン、CTX、腹腔内使用用)を、30mg/kgで、1日1回、7日間連続で腹腔内投与した。さらに、参照群として、抗癌化合物のタキソールを、15mg/kg、10mg/kgおよび7.5mg/kgにて、1日1回、5日間連続で静脈内投与した。
【0148】
(試験化合物の調製および投与) 400mgのDBTSを、10mLのヒマシ油(溶媒)中に溶解し、この溶媒中で40mg/mlのDBTS濃度を有するようにした。使用前に毎回、この溶液を正常生理食塩水で希釈して、所望のDBTS濃度である、0.2%(高投与量)、0.1%(中投与量)および0.05%(低投与量)をそれぞれ達成した。各マウスに、この化合物溶液0.5mLを、0.5ml/0.5分という制御された注入速度で静脈内投与した。腫瘍移植の24時間後に、化合物のキャリアマウスへの静脈内注入を1日1回、7日間または10日間連続して実行した。
【0149】
(移植用腫瘍細胞の調製および化合物の効力測定) 腫瘍細胞を調製するために、迅速に増殖する腫瘍を、まず移植腫瘍マウスから除去し、この腫瘍組織を切開し、濃度2×107/ml〜4×107/mlを有する腫瘍細胞懸濁液を、正常生理食塩水中で調製した。0.2mLの細胞懸濁液を皮下注入により各マウスの腋窩部に注入した。移植の24時間後、マウスに所定の投与量のDBTS、生理食塩水、または陰性対照として役立つ溶媒のみを静脈内投与するか、あるいは陽性対照として役立つ30mg/kgのCTXを腹腔内投与した。移植の約2週間後に、マウスを屠殺し、移植された腫瘍を実験マウスから取り出した。取り出した各固形腫瘍の重量を測定し、各投与量群における腫瘍阻害率を、実施例1(マウス肉腫S180およびマウスルイス肺癌に対するDBTSの抗癌活性)中の式(2)に従って計算した。
【0150】
マウスルイス肺癌モデルに関して、ルイス肺癌細胞を、マウス1匹あたり約600万個の細胞数で皮下移植した。移植24時間後、試験群における各マウスに、ジベンジルトリスルフィドを1日あたり50mg/kg、25mg/kgまたは12.5mg/kgにて、連続10日間静脈内投与した。陽性対照としては、各マウスに、CTXを1日あたり30mg/kg、連続7日間腹腔内投与した。陰性対照としては、各マウスに、正常生理食塩水か、または試験群における1日あたりの濃度と同濃度のジベンジルトリスルフィド用溶媒を、連続10日間または連続7日間にわたり静脈内投与した。各群について、10匹のマウスを使用した。タキソール参照群については、試験群における各マウスに、15mg/kg、10mg/kgおよび7.5mg/kgにて、1日1回、5日間連続してタキソールを静脈内投与した。
【0151】
(結果) ルイス肺癌モデルにおいて、DBTSは、50mg/kg、25mg/kgおよび12.5mg/kgの投与量群について、(正常生理食塩水対照に対して)それぞれ65.77%、51.61%および43.10%の平均腫瘍阻害率を示した。詳細な結果を表13に示す。陰性対照として溶媒のみを使用することにより、相当する腫瘍阻害率は、それぞれ61.02%、46.94%および35.10%である(表14)。DBTSの静脈内注入直後、マウスが、一時的な異常な反応(跳躍、速い呼吸、および横たわって活動が低下することを含む)を呈することが観察された。このような反応は、代表的には10分間〜15分間持続した。同じ異常な反応が、溶媒のみを静脈内注入したマウスにおいても観察された。
【0152】
参照試験において、タキソールは、15mg/kg、10mg/kgおよび7.5mg/kgの投与量群についてそれぞれ(正常生理食塩水対照に対して)48.94%、36.97%および30.28%の平均腫瘍阻害率を示した。詳細な結果を表15に示す。
【0153】
マウスルイス肺癌モデルにおいて得られた結果は、DBTSを静脈内投与されたマウスにおける、移植腫瘍の増殖の特異的阻害を示す。高投与量のDBTS(50mg/kg/日、連続10日間)を静脈内投与された時、正常生理食塩水を陰性対照として用いることにより、上記マウス移植腫瘍モデルにおいて65%の腫瘍阻害率が達成された。このようなデータは、再現性を有することが示されている。DBTS溶液の調製に使用した溶媒は、マウス移植腫瘍モデル中での腫瘍増殖に対して弱い阻害効果を示した。この溶媒はまた、静脈内注入後にマウスにおける一時的な異常反応をも引き起こし得る。
【0154】
【表13】
【0155】
【表14】
【0156】
【表15】
(実施例3)
(マウスにおけるルイス肺癌およびP388リンパ性白血病、ならびにヌードマウスにおけるBcap−37ヒト乳癌およびHCT−8ヒト結腸癌に対する、ACEA100108のインビボ抗癌活性)
化合物ACEA100108(DBTS誘導体、表33参照)のインビボ抗癌効力を評価するため、移植された癌を有するマウスモデル(ルイス肺癌モデルおよびP388リンパ性白血病モデル、ならびに免疫不全ヌードマウスにおける2つのヒト腫瘍異種移植片モデル(Bcap−37ヒト乳癌およびHCT−8ヒト結腸癌)が挙げられる)を使用した。すべてのマウスモデルは、Shanghai Pharmaceutical Industry Instituteの薬理学研究室において維持した。ヒト腫瘍異種移植片モデルについては、本研究のためにヌードマウスへと移植する前に、癌細胞を2度、インビボで継代した。フラスコ中の培養ヒト癌細胞を、まず、免疫不全ヌードマウスへと異種移植片移植した。癌細胞がヌードマウス中で一定の大きさの腫瘍にまで増殖した後に、その腫瘍をヌードマウスから取り出し、腫瘍組織を切開した。この切開した腫瘍組織から細胞懸濁液を調製し、免疫不全ヌードマウスへと再び移植し戻した(すなわち、ヒト癌異種移植片移植モデルにおける癌細胞の2度目の継代)。この癌細胞が一定の大きさに増殖した後に、腫瘍をヌードマウスから取り出し、この腫瘍組織を切開した。切開した組織から細胞懸濁液を調製し、本明細書中に記載のヒト癌異種移植片モデルの研究のために使用した。
【0157】
実験用のマウスは、Academic Sinica、Experimental Animal Centerから提供されたマウスC57BL/6ヌードマウス系統、DBF1ヌードマウス系統およびBALB/cヌードマウス系統、認定番号:SCXK(Shanghai)2003−0003であった。マウスの体重は、18g〜22gであった。オスおよびメスのマウスを使用した。しかし、実験毎に同性の動物を使用した。マウス移植腫瘍モデルについて、試験した動物の数は以下の通りであった:各投与量群に対し10匹、陽性対照群について10匹、および陰性対照群について20匹。ヒト腫瘍異種移植片モデルに関し、試験した動物の数は以下の通りであった:各投与量に対し6匹、陽性対照群について6匹、および陰性対照群について12匹。
【0158】
(試験対照) 陰性対照として、各マウスには、高投与量ACEA100108試験で使用されたものと同量かつ同濃度を有する溶媒のみを連続7日間にわたり1日1回静脈内投与した。陽性対照群については、抗癌化合物のタキソールを、10mg/kgにて、1日1回、7日間連続して静脈内投与した。参照群において、DBTSを、50mg/kgにて、1日1回、7日間連続して静脈内投与した。
【0159】
(試験化合物の調製および投与) 化合物ACEA100108を硬化ヒマシ油(溶媒)中に溶解し、この溶媒中20mg/mlの化合物ACEA100108濃度を有するようにした。使用前に毎回、この溶液を正常生理食塩水中に希釈して、所望のACEA100108濃度を達成した。各マウス(体重約20g)に、この化合物溶液0.5mLを、0.5mL/0.5分という制御された注入速度で静脈内投与した。腫瘍移植24時間後に、化合物溶液のキャリアマウスへの静脈内注入を、1日1回、連続7日間または連続10日間実行した。100mg/kg〜6.25mg/kgの範囲の種々の投与量の化合物ACEA100108を、本研究において使用した。
【0160】
(移植用腫瘍細胞の調製および化合物効力の測定) マウスルイス肺癌モデル、ヒト乳癌異種移植片モデルおよびヒト結腸癌異種移植片モデルのための腫瘍細胞を調製するために、迅速に増殖する腫瘍を、まず移植腫瘍マウスから取り出した。この腫瘍組織を切開し、濃度×107/ml2〜4×107/mlを有するように腫瘍細胞懸濁液の正常生理食塩水中に調製した。0.2mLの細胞懸濁液を、皮下注入により各マウスの腋窩部(右側)に注入した。移植24時間後、マウスに、所定の投与量のACEA100108、または陰性対照として役割を果たす溶媒のみ、または陽性対照として役立つ10mg/kgのタキソール、または参照試験として役立つ50mg/kgのDBTSを投与した。移植2〜4週間後、マウスを屠殺し、移植された腫瘍を実験マウスから取り出した。取り出した各固形腫瘍の重量を測定し、実施例1に記載の式(2)に従って、各投与量群における腫瘍阻害率を計算した。
【0161】
ヒト腫瘍異種移植片モデルについては、動物の餌、動物のケージ、動物が接触する支持材および装置を含む、すべての使用物品は高圧滅菌した。ヌードマウスは、SPF条件下で、ラミナーフロー形式の棚において維持した。腫瘍移植後に、各化合物投与量群におけるマウスの体重および腫瘍の大きさを動的にモニターし、プロットした。腫瘍の大きさは、腫瘍の長軸(a)および短軸(b)を測定することにより測定し、腫瘍の体積は、式
腫瘍体積=a×b2/2 (3)
に従って計算した。
【0162】
P388マウスリンパ性白血病モデルのための癌細胞を調製するために、滅菌条件下でP388白血病保有マウスの腹水を取り出した。この腹水を正常生理食塩水中に(腹水対正常生理食塩水が1:6で)希釈して、細胞懸濁液を調製した。0.2mLの細胞懸濁液を腹腔内に注入した。癌細胞をマウスへと移植した24時間後に、マウスに、所定の投与量のACEA100108、または陰性対照として役割を果たす溶媒のみ、あるいは陽性対照として役立つ10mg/kgのタキソールおよび陽性対照として役立つ2mg/kgのMMC(マイトマイシンC)、または参照試験として役立つ50mg/kgのDBTSを、投与した。キャリアマウスの寿命は、30日間以内に判断された。各化合物処置群におけるキャリアマウスの、陰性対照群と比較した寿命比は、式:
寿命比%=化合物処置群の平均寿命/陰性対照群の平均寿命 × 100%(4)
に従って計算した。
【0163】
(結果) ルイス肺癌モデルにおいて、ACEA100108は、100mg/kg(毒性を有するため5回のみ投与した)、25mg/kgおよび6.25mg/kgの投与量群について、(溶媒のみの対照に対して)それぞれ60.15%、55.35%および34.32%のインビボ平均腫瘍阻害率を示した。同じ試験において、DBTSは、100mg/kg(毒性を有するため5回のみ投与した)および25mg/kgの投与量群について、それぞれ63.10%および57.93%のインビボ平均腫瘍阻害率を示し、タキソールは、10mg/kgの慣用的投与量群について43.91%のインビボ平均腫瘍阻害率を示した。結果を表16にまとめる。
【0164】
マウスリンパ性白血病モデルにおいて、化合物ACEA100108で処置したマウスの寿命における平均増加は、50mg/kg、25mg/kgおよび12.5mg/kgの投与量群についてそれぞれ106.18%、107.22%および109.28%であった。同じ実験において、50mg/kgの投与量でDBTS化合物で処置したマウスについて、マウス寿命における平均増加は、109.28%であり、10mg/kgのタキソール化合物で処置したマウスの寿命における平均増加は109.28%であった。詳細を表17中に示す。
【0165】
ヌードマウスにおけるBcap−37ヒト乳癌異種移植片モデルでは、ACEA100108は、50mg/kg、25mg/kgおよび8mg/kgの投与量群についてそれぞれ64.13%、56.10%および31.40%の平均インビボ腫瘍阻害率を示した。同じ実験において、DBTSは、50mg/kgの投与量群について66.98%の平均インビボ腫瘍阻害率を示し、タキソールは、10mg/kgの慣用的投与量について48.84%の平均インビボ腫瘍阻害率を示した。表18および図16に、詳細を示す。これは、ヌードマウスに移植されたBcap−37ヒト乳癌異種移植片に対するDBTSおよびACEA100108の効力研究を表す。図16において、7つの列(それぞれ1〜7)は、以下の投与化合物:1)陰性対照;2)溶媒;3)ACEA100108(50mg/kg);4)ACEA100108(20mg/kg);5)ACEA100108(8mg/kg);6)DBTS(50mg/kg);および7)陽性対照(タキソール、10mg/kg)を表す。試験化合物および対照を、iv×7qdで投与した。腫瘍の大きさの動的な変化を表19および図17に示す。キャリアマウスの体重における動的変化を、表20および図18中にまとめる。
【0166】
ヌードマウスにおけるHCT−8ヒト結腸癌異種移植モデルでは、ACEA100108は、50mg/kg、25mg/kgおよび8mg/kgの投与量群についてそれぞれ45.62%、28.10%および15.03%の平均インビボ腫瘍阻害率を示した。同じ実験において、DBTSは、50mg/kgの投与量について46.08%の平均インビボ腫瘍阻害率を示し、タキソールは、10mg/kgの慣用的投与量について33.33%の平均インビボ腫瘍阻害率を示した。表21および図19に、詳細を示す。これらは、ヌードマウスに移植されたHCT−8ヒト結腸癌異種移植片に対するDBTSおよびACEA100108の効力研究を表す。図19において、7つの列(それぞれ1〜7)は、以下の投与化合物:1)陰性対照;2)溶媒;3)ACEA100108(50mg/kg);4)ACEA100108(20mg/kg);5)ACEA100108(8mg/kg);6)DBTS(50mg/kg);および7)陽性対照(タキソール、10mg/kg)を表す。試験化合物および対照を、静脈内注入を毎日7日間(iv×7qd)投与した。腫瘍の大きさの動的な変化を、表22および図20に示す。キャリアマウスの体重における動的変化を、表23および図21中にまとめる。
【0167】
2つのマウス腫瘍モデルおよび2つのヒト腫瘍異種移植片モデルのインビボ評価から得られた結果に基づくと、ACEA100108は、50mg/kgで静脈内注入を毎日7日間(iv×7qd)にて効果的に投与され得る。さらに、マウスルイス肺癌モデルおよびBcap−37ヒト乳癌モデルに対するACEA100108の抗癌効果はHCT−8ヒト結腸癌モデルにおける効果よりも強力である。しかし、ACEA100108は、P388マウス白血病モデルに対しては抗癌効果を呈さなかった。さらに、同一投与量かつ同一薬剤の投与手順に関して、化合物ACEA100108の上記モデルに関する抗癌効果は、DBTSのものに匹敵し、慣用的な処置の投与条件下でのタキソールの効果よりも優れている。
【0168】
【表16】
【0169】
【表17】
【0170】
【表18】
【0171】
【表19】
【0172】
【表20】
【0173】
【表21】
【0174】
【表22】
【0175】
【表23】
(実施例4)
(ヌードマウスにおけるao10/17ヒト卵巣癌に対するACEA100108のインビボ抗癌活性)
化合物ACEA100108のインビボ抗癌効力を評価するため、免疫不全ヌードマウスにおけるao10/17ヒト卵巣癌異種移植片モデルを使用した。細胞株およびマウスは、Shanghai Pharmaceutical Industry Instituteの薬理学研究室において維持した。ao10/17ヒト卵巣癌異種移植片モデルについては、本研究のためにヌードマウスへと移植する前に、癌細胞を2度、インビボで継代した。言い換えれば、フラスコ中の培養ヒト卵巣癌ao10/17細胞を、まず、免疫不全ヌードマウスへと異種移植片移植した。この癌細胞がこのヌードマウス中で一定の大きさの腫瘍へと増殖した後に、その腫瘍をヌードマウスから取り出し、腫瘍組織を切開した。切開した腫瘍組織から細胞懸濁液を調製し、免疫不全ヌードマウスへと再び移植して戻した(すなわち、ヒト癌異種移植片移植モデルにおける癌細胞の2度目の継代)。その癌細胞が一定の大きさへと増殖した後に、腫瘍をヌードマウスから取り出し、この腫瘍組織を切開した。切開した腫瘍組織から細胞懸濁液を調製し、本明細書中に記載のヒト癌異種移植片移植モデルの研究のために使用した。
【0176】
実験用のマウスは、Academic Sinica、Experimental Animal Centerから提供されたマウスC57BL/6系統、DBF1系統およびBALB/c(ヌードマウス)系統、認定番号:SCXK(Shanghai)2003−0003であった。マウスの体重は、18〜22gであった。メスのマウスのみを本研究において使用した。ヒト腫瘍異種移植モデルについて、試験された動物の数は、以下の通りであった:各投与量群に対し6匹、陽性対照群について6匹、および陰性対照(溶媒のみ)群について12匹。ACEA100108の高投与量、中投与量および低投与量は、それぞれ50mg/kg/日、25mg/kg/日および8mg/kg/日であった。
【0177】
(試験対照) 陰性対照として、各マウスは、高投与量ACEA100108試験で使用されたものと同量かつ同濃度を有する溶媒のみを、連続7日間にわたり、1日1回静脈内投与した。陽性対照群については、抗癌化合物のタキソールを、10mg/kgにて、1日1回、7日間連続で静脈内投与した。参照群においては、DBTSを、50mg/kgにて、1日1回、7日間連続で静脈内投与した。
【0178】
(試験化合物の調製および投与) 化合物ACEA100108を、硬化ヒマシ油(溶媒)中に溶解し、その溶媒中20mg/mlのACEA100108濃度を有するようにした。使用前に毎回、この溶液を正常生理食塩水で希釈して、所望のACEA100108濃度を達成した。各マウス(体重約20g)に、この化合物溶液0.5mLを、0.5mL/0.5分という制御された注入速度で静脈内投与した。腫瘍移植24時間後に、化合物溶液のキャリアマウスへの静脈内注入を、1日1回、7日間連続して実行した。ACEA100108の高投与量、中投与量および低投与量は、それぞれ50mg/kg/日、25mg/kg/日および8mg/kg/日であった。
【0179】
(移植用腫瘍細胞の調製および化合物効力の測定) ヒト卵巣癌異種移植片のための腫瘍細胞を調製するために、迅速に増殖している腫瘍を、まず、移植腫瘍マウスから取り出した。この腫瘍組織を正常生理食塩水(腫瘍体積 対 生理食塩水が1:6)中で粉砕し、腫瘍細胞懸濁液のこの正常生理食塩水中にて調製した。0.2mLの細胞懸濁液を皮下注入により各マウスの腋窩部(右側)に注入した。移植24時間後、マウスに、所定の投与量のACEA100108、または陰性対照として役割を果たす溶媒のみ、または陽性対照として役立つ10mg/kgのタキソール、または参照試験として役立つ50mg/kgのDBTSを投与した。移植2週間〜4週間後、マウスを屠殺し、移植された腫瘍を実験試験マウスから取り出した。取り出した各固形腫瘍の重量を測定し、実施例1に記載の式(2)に従って、各投与量群における腫瘍阻害率を計算した。
【0180】
ヒト卵巣癌異種移植片モデルについては、動物の餌、動物のケージ、動物が接触する支持材および装置を含む、すべての使用物品は高圧滅菌した。ヌードマウスは、SPF条件下で、ラミナーフロー形式の棚において維持した。腫瘍移植後に、各化合物投与量群におけるマウスの体重および腫瘍の大きさを動的にモニターし、プロットした。腫瘍の大きさは、腫瘍の長軸(a)および短軸(b)を測定することにより決定し、腫瘍の体積は、実施例3に記載の式(3)に従って計算した。
【0181】
(結果) ao10/17ヒト卵巣癌異種移植片において、ACEA100108は、50mg/kg、25mg/kgおよび8mg/kgの投与量群について、それぞれ53.40%、46.67%および33.19%のインビボ平均腫瘍阻害率を示した。同じ試験において、DBTSは、50mg/kgの投与量群について57.30%のインビボ平均腫瘍阻害率を示し、タキソールは、10mg/kgの投与量群について45.39%のインビボ平均腫瘍阻害率を示した。表24および図22に、詳細を示す。これらは、ヌードマウスに移植されたao10/17ヒト卵巣癌異種移植片に対するDBTSおよびACEA100108の効力研究を表す。図22において、7つの列(それぞれ1〜7)は、以下の投与化合物:1)陰性対照;2)溶媒;3)ACEA100108(50mg/kg);4)ACEA100108(20mg/kg);5)ACEA100108(8mg/kg);6)DBTS(50mg/kg);および7)陽性対照(タキソール、10mg/kg)を表す。試験化合物および対照は、1日1回7日間(7qd)において静脈内(iv)投与した。
【0182】
腫瘍の大きさの動的な変化を、表25および図23に示す。キャリアマウスの体重における動的変化を、表26および図24中にまとめる。同一投与量かつ同一薬剤の投与手順に関して、化合物ACEA100108のao10/17ヒト卵巣癌モデルにおける抗癌効果は、化合物ACEA100101のものに匹敵し、定期的な処置の投与条件下でのタキソールの効果よりも優れている。
【0183】
【表24】
【0184】
【表25】
【0185】
【表26】
(実施例5)
(ヌードマウスにおけるBcap−37ヒト乳癌におけるACEA100108の抗癌活性)
化合物ACEA100108のin vivo抗癌効果を評価するため、免疫不全ヌードマウスにおけるBcap−37ヒト乳癌異種移植片モデルを使用した。細胞株及びマウスモデルはShanghai Pharmaceutical Industry Instituteの薬理学研究室において維持した。Bcap−37ヒト乳癌異種移植片モデルについては、試験のため、ヌードマウスへと移植する前に、癌細胞を2度、in vivoで継代した。言い換えれば、フラスコ中で培養されたヒト乳癌Bcap−37細胞を、まず免疫不全ヌードマウスへと異種移植片移植した。癌細胞がこのヌードマウス中で一定の大きさの腫瘍に生長した後に、腫瘍をヌードマウスから除去し、腫瘍を切開した。切開された腫瘍組織から細胞懸濁液を調製し、免疫不全ヌードマウスへと再び戻して移植した(すなわち、ヒト癌異種移植片移植モデルにおける癌細胞の2度目の継代)。癌細胞が一定の大きさに生長した後に腫瘍をヌードマウスから除去し、この腫瘍組織を切開した。切開された腫瘍組織から細胞懸濁液を調製し、本明細書中に記載のヒト癌異種移植片移植モデルの試験に使用した。
【0186】
試験用のマウスはAcademic Sinica、Experimental Animal Centerから提供されるBALB/c(ヌードマウス)株、認定番号:SCXK(Shanghai)2003−0003であった。マウスの体重は18〜22gであった。メスのマウスのみをこの試験のために使用した。ヒト腫瘍異種移植モデルについて、試験された動物の数は以下の通りである:各投与量群に対し6匹、陽性対照群について6匹、及び陰性対照(溶媒のみ)群について12匹。ACEA100108の高投与量、中高投与量及び低投与量はそれぞれ50mg/kg/日、25mg/kg/日及び8mg/kg/日であった。
【0187】
(試験対照)
陰性対照として、各マウスは、高投与量ACEA100108試験で使用されたものと同様に、同量かつ同濃度の溶媒のみを、1日1回、7日間連続で静脈内投与した。陽性対照群については、抗癌化合物のタキソールが10mg/kg、1日1回、7日間連続で静脈内投与された。
【0188】
(試験化合物の調製及び投与)
化合物ACEA100108を硬化ヒマシ油(溶媒)中に溶解し、溶媒中20mg/mlのACEA100108濃度となるようにした。毎回使用前に、この溶液を生理食塩水で希釈して、所望のACEA100108濃度を達成した。各マウス(体重約20g)に、この化合物溶液0.5mLを、0.5mL/0.5分に制御された注入速度で静脈内投与した。腫瘍の移植7日後、移植された腫瘍は、その動物に手で触れた時に感じることができる程度に十分に大きく生長した。その時点から化合物溶液の担体マウスへの静脈内注入を1日1回、7日間又は10日間連続して実行した。ACEA100108の高投与量、中高投与量及び低投与量はそれぞれ50mg/kg/日、25mg/kg/日及び8mg/kg/日であった。
【0189】
(移植用腫瘍細胞の調製及び化合物の効果測定)
ヒト乳癌異種移植片についての腫瘍細胞を調製するために、迅速に成長している腫瘍をまず移植腫瘍マウスから除去した。この腫瘍組織を生理食塩水(腫瘍体積と生理食塩水が1:6)中ですり潰し、細胞濃度が2〜4×107個/mlである腫瘍細胞懸濁液の生理食塩水溶液を調製した。0.2mLの細胞懸濁液を皮下注入により各マウスの腋窩部(右側)に注入した。移植7日後、マウスにおける腫瘍は、その動物に手で触れた時に感じることができる程度に十分に大きく生長した。その時点からマウスに所定の投与量のACEA100108、又は陰性対照として役割を果たす溶媒のみ、あるいは陽性対照として機能する10mg/kgのタキソールを投与した。移植から3〜4週間後、マウスを屠殺し、移植された腫瘍を試験マウスから除去した。除去された各固形腫瘍の重量を測定し、実施例1に記載の式(2)に従って、各投与量群における腫瘍阻害率を計算した。腫瘍の体積に基づき、その他のパラメーター、すなわち腫瘍体積阻害率も、以下の式:
T/C(%)=化合物処置群における平均腫瘍体積/陰性対照群における平均腫瘍重量 × 100% (5)
に従って計算した。
【0190】
ヒト乳癌異種移植片モデルについては、動物が接触する動物の餌、動物のケージ、支持材及び装置を含む全ての使用された物品は高圧滅菌した。ヌードマウスはSPF条件下で、層流の棚(laminar flow shelve)において維持した。腫瘍移植後に、各化合物投与量群におけるマウスの体重と腫瘍の大きさを動的にモニターし、プロットした。腫瘍の大きさは腫瘍の長軸(a)及び短軸(b)を測定することにより測定し、腫瘍の体積は実施例3に記載の式(3)に従って計算した。
【0191】
(結果)
ヌードマウスにおけるBcap−37ヒト乳癌異種移植片モデルにおいて、ACEA100108は、iv×7qdの手順に従い投与した場合、50mg/kg、25mg/kg及び8mg/kgの投与量群についてそれぞれ52.24%、47.31%及び28.21%のin vivo平均腫瘍阻害率を示した。さらに、10qdの手順に従い投与した場合、50mg/kgの投与量群について56.92%のin vivo平均腫瘍阻害率を示した。同様の試験において、タキソールは10mg/kgの投与量群について44.33%のin vivo平均腫瘍阻害率を示した。ヌードマウスに移植されたBcap−37ヒト乳癌異種移植片に対するACEA100108の効果試験を表す表27及び図25に、詳細を示す。図25中、7つの列(それぞれ1−7)は、以下の投与化合物:1)陰性対照;2)溶媒;3)ACEA100108(50mg/kg);4)ACEA100108(20mg/kg);5)ACEA100108(8mg/kg);6)ACEA100108(50mg/kg);及び7)陽性対照(タキソール、10mg/kg)を表す。試験化合物及び対照は、ACEA100108を50mg/kgで、iv×10qdで投与したもの以外は、7qdにおいてivで投与した。腫瘍体積阻害率を表28に示す。腫瘍の大きさの動的な変化を表26にまとめる。担体マウスの体重における動的変化は表27にまとめる。
【0192】
ヌードマウスにおけるBcap−37ヒト乳癌異種移植片モデルにおいて、ACEA100108は、手で触れることにより感じることができるほど腫瘍が十分に大きく生長した後でこの化合物を投与するという投与手順について、50%を超える腫瘍体積阻害率を示した。さらに、ヌードマウスにおける投与回数を増加させた場合、マウスに対する毒性効果は明白には増加せず、一方で腫瘍阻害は増大した。加えて、ここでヌードマウスに投与された中投与量のACEA100108は、定期的な処置の投与条件下でのタキソールの効果よりも優れた抗癌効果を示した。
【0193】
【表27】
【0194】
【表28】
【0195】
【表29】
【0196】
【表30】
(実施例6)
(DBTS及び化合物ACEA100108の急性毒性試験:マウスにおける静脈内注入のLD50の測定)
DBTS及びACEA100108の急性毒性を試験するための実験をマウスにおいて行った。試験マウスはランダムに6つの群に分けられた(5つの投与量群及び1つの対照群)。各群は20匹のKunming株マウスを含み、それらの中で50%はオス、50%はメスであった。静脈内注入(i.v.)によるDBTS又はACEA100108の単回投与後、DBTS又はACEA100108化合物に対する急性応答、及び、処置されたマウスの最初の2週間での死亡をモニターし、記録した。LD50値はBliss法を用いて計算した。DBTSのマウス単回静脈内投与におけるLD50値は258.53mg/kg(234.96〜284.46mg/kg)であり、ACEA100108のマウス単回静脈内投与におけるLD50値は316mg/kg(284.26〜351.28mg/kg)であった。
【0197】
(材料及び方法)
試験化学化合物はDBTS及びACEA100108であり、予め加温した湯浴中で硬化ヒマシ油中に溶解し、20mg/mlの溶液とした。この溶液をさらに希釈して、所望の試験濃度にした。マウスあたり0.5mLの静脈内投与量及び注入速度は0.5mL/0.5分であった。
【0198】
試験用マウスはShanghai Pharmaceutical Industry
InstituteのExperimental Animal Departmentから供給されたKunming株であった。その施設の認定番号はAnimal Facility Certification No.107であった。マウスの体重は18〜20gであった。各試験群は20匹のKunming株マウスを含み、それらのうち、10匹のマウスはオス、10匹はメスであった。400mg/kg、320mg/kg、256mg/kg、204.8mg/kg及び163.8mg/kgの5種類の試験投与量を使用した。対照群におけるマウスは、希釈された硬化ヒマシ油である同量の溶媒のみを投与された。全ての試験用マウスに、DBTS及びACEA100108、又は対照として役割を果たす溶媒を、0.5ml/0.5分の注入速度で単回静脈内投与した。投与後に迅速に起こるDBTS、ACEA100108又は溶媒に対する急性応答ならびに体重変化、及び投与2週間以内での死亡をモニターし、記録した。マウスにおける静脈内注入のLD50値はBliss法を用いて計算した。
【0199】
(結果)
静脈内注入直後、マウスは、跳躍する、走る、けいれん、息切れ(呼吸亢進)を含む異常な反応を示した。高投与量群において、数匹のマウスは、けいれん発作により注入3分以内に死亡した。死亡は投与後1時間以内に起こり、そのピークは投与後12時間目であった。病理解剖により、死亡したマウスの臓器における生理学的異常は見出されなかった。生き残ったマウスは、早期に活動が低下し脱毛する以外の深刻な中毒症状を示さず、それらは徐々に回復し、その後14日の観察の間に遅れて起こる中毒の兆候は見られなかった。生き残ったマウスは健康で、正常な挙動をしたものの、それらのマウスの体重はいくぶん減少した。試験データに基づくと、DBTSのマウス単回静脈内投与のLD50値は258.53mg/kg(234.96〜284.56mg/kg)であり、ACEA100108のマウス単回静脈内投与のLD50値は316mg/kg(284.26〜351.28mg/kg)であった。オスのマウスとメスのマウスの間でLD50値の顕著な差異はみられなかった(p値>0.05)。DBTS及びACEA100108の急性毒性の結果を表31及び32にまとめる。マウスにおける、溶媒の陽性の中毒効果を評価するため、対照群のマウスに同量の溶媒を投与した。溶媒を投与されたマウスは、DBTS及びACEA100108を投与されたマウスよりも軽度の、早期における異常な兆候及び体重減少を示した。このことは、投与マウスにおいてみられる急性毒性は、DBTS又はACEA100108に関連することを示す。
【0200】
【表31】
【0201】
【表32】
(実施例7)
(DBTS、コルセミド及びパクリタキセルによる細胞増殖の阻害)
H460細胞(ヒト肺癌細胞)を16又は96ウェルのマイクロタイタープレート装置(電子プレート、すなわち、プレートのウェル中に電極センサーを有するプレート)のウェル中に、開始時の播種密度が1ウェルあたり8,000個の細胞数となるように播種し、標準的な細胞培養条件下でインキュベーター中で約22時間プレインキュベートした。DMSO中で各種濃度にしたジベンジルトリスルフィド(DBTS)、コルセミド及びパクリタキセルをウェル中に添加し、次いでインキュベートした。RT−CESシステムを用いて、化合物添加前後の細胞の状態をモニターした。化合物添加直前のDBTS及びコルセミド溶液に対する様々なウェルにおける細胞指数は1.7〜1.9であり、パクリタキセルに対しては1.4〜1.9であった。図1A〜Cは、化合物添加前及び添加後の時刻の関数としての正規化した細胞指数を示す。細胞指数は、化合物添加直後の時点(細胞播種後約23時間)における細胞指数値に対し正規化した。
【0202】
(実施例8)
(MV522細胞におけるDBTSによる細胞増殖の阻害)
MV522細胞(ヒト肺癌細胞)を16又は96ウェルのマイクロタイタープレート装置(電子プレート、すなわち、プレートのウェル中に電極センサーを有するプレート)のウェル中に、開始時の播種密度が1ウェルあたり10,000個の細胞数となるように播種し、標準的な細胞培養条件下でインキュベーター中で約22時間プレインキュベートした。ジベンジルトリスルフィドのDMSO溶液をウェル中に添加し、次いでインキュベートした。RT−CESシステムを用いて、化合物添加前後の細胞の状態をモニターした。化合物添加直前の様々なウェルにおける細胞指数は1.0〜1.6であった。図2は、化合物添加前及び添加後の時刻の関数としての正規化した細胞指数を示す。細胞指数は、化合物添加直後の時点(細胞播種後約23時間)における細胞指数値に対し正規化した。
【0203】
(実施例9)
(MCF−7細胞におけるジベンジルトリスルフィドによる細胞増殖の阻害)
MCF−7細胞(ヒト乳癌細胞)を16又は96ウェルのマイクロタイタープレート装置(電子プレート、すなわち、プレートのウェル中に電極センサーを有するプレート)のウェル中に、開始時の播種密度が1ウェルあたり10,000個の細胞数となるように播種し、標準的な細胞培養条件下でインキュベーター中で約44時間プレインキュベートした。ジベンジルトリスルフィドのDMSO溶液をウェル中に添加し、次いでインキュベートした。RT−CESシステムを用いて、化合物添加前後の細胞の状態をモニターした。化合物添加直前の様々なウェルにおける細胞指数は1.2〜1.5であった。図3は、化合物添加前及び添加後の時刻の関数としての正規化した細胞指数を示す。細胞指数は、化合物添加直後の時点(細胞播種後約44.5時間)における細胞指数値に対し正規化した。
【0204】
(実施例10)
(A549細胞におけるジベンジルトリスルフィドによる細胞増殖の阻害)
A549細胞(ヒト肺癌細胞)を16又は96ウェルのマイクロタイタープレート装置(電子プレート、すなわち、プレートのウェル中に電極センサーを有するプレート)のウェル中に、開始時の播種密度が1ウェルあたり8,000個の細胞数となるように播種し、標準的な細胞培養条件下でインキュベーター中で約17時間プレインキュベートした。ジベンジルトリスルフィドのDMSO溶液をウェル中に添加し、次いでインキュベートした。RT−CESシステムを用いて、化合物添加前後の細胞の状態をモニターした。化合物添加直前の様々なウェルにおける細胞指数は0.72〜1.26であった。図4は、化合物添加前及び添加後の時刻の関数としての正規化した細胞指数を示す。細胞指数は、化合物添加直後の時点(細胞播種後約18時間)における細胞指数値に対し正規化した。
【0205】
(実施例11)
(PC3細胞におけるジベンジルトリスルフィドによる細胞増殖の阻害)
PC3細胞(ヒト前立腺癌細胞)を16又は96ウェルのマイクロタイタープレート装置(電子プレート、すなわち、プレートのウェル中に電極センサーを有するプレート)のウェル中に、開始時の播種密度が1ウェルあたり10,000個の細胞数となるように播種し、標準的な細胞培養条件下でインキュベーター中で約22.5時間プレインキュベートした。ジベンジルトリスルフィドのDMSO溶液をウェル中に添加し、次いでインキュベートした。RT−CESシステムを用いて、化合物添加前後の細胞の状態をモニターした。化合物添加直前の様々なウェルにおける細胞指数は0.34〜0.54であった。図5は、化合物添加前及び添加後の時刻の関数としての正規化した細胞指数を示す。細胞指数は、化合物添加直後の時点(細胞播種後約23.5時間)における細胞指数値に対し正規化した。
【0206】
(実施例12)
(A431細胞におけるDBTS及び5−フルオロウラシルによる細胞増殖の阻害)
A431細胞(ヒト扁平上皮癌細胞)をマイクロタイタープレート装置(電子プレート、すなわち、プレートのウェル中に電極センサーを有するプレート)のウェル中に、開始時の播種密度が1ウェルあたり10,000個の細胞数となるように播種し、標準的な細胞培養条件下でインキュベーター中で約22.3時間プレインキュベートした。各種濃度のDBTS及び5−フルオロウラシル溶液をウェル中に添加し、次いでインキュベートした。RT−CESシステムを用いて、化合物添加前後の細胞の状態をモニターした。化合物の添加直前のDBTSに対する様々なウェルにおける細胞指数は0.6〜1.2であり、5−フルオロウラシルに対しては0.6〜1.2であった。図6A〜Bは、化合物添加前及び添加後の時刻の関数としての正規化した細胞指数を示す。細胞指数は、化合物添加直後の時点(細胞播種後約22.6時間)における細胞指数値に対し正規化した。
【0207】
(実施例13)
(HT1080細胞におけるDBTSによる細胞増殖の阻害)
HT1080細胞(ヒト線維肉腫細胞)を16又は96ウェルのマイクロタイタープレート装置(電子プレート、すなわち、プレートのウェル中に電極センサーを有するプレート)のウェル中に、開始時の播種密度が1ウェルあたり4,000個の細胞数となるように播種し、標準的な細胞培養条件下でインキュベーター中で約18.6時間プレインキュベートした。ジベンジルトリスルフィドのDMSO溶液をウェル中に添加し、次いでインキュベートした。RT−CESシステムを用いて、化合物添加前後の細胞の状態をモニターした。化合物の添加直前の様々なウェルにおける細胞指数は0.72〜1.45であった。図7は、化合物添加前及び添加後の時刻の関数としての正規化した細胞指数を示す。細胞指数は、化合物添加直後の時点(細胞播種後約20時間)における細胞指数値に対し正規化した。
【0208】
(実施例14)
(MDA−231細胞におけるDBTSによる細胞増殖の阻害)
MDA−231細胞(ヒト乳癌細胞)を16又は96ウェルのマイクロタイタープレート装置(電子プレート、すなわち、プレートのウェル中に電極センサーを有するプレート)のウェル中に、開始時の播種密度が1ウェルあたり5,000個の細胞数となるように播種し、標準的な細胞培養条件下でインキュベーター中で約18.7時間プレインキュベートした。ジベンジルトリスルフィドのDMSO溶液をウェル中に添加し、次いでインキュベートした。RT−CESシステムを用いて、化合物添加前後の細胞の状態をモニターした。化合物の添加直前の様々なウェルにおける細胞指数は0.65〜0.82であった。図8は、化合物添加前及び添加後の時刻の関数としての正規化した細胞指数を示す。細胞指数は、化合物添加直後の時点(細胞播種後約19.6時間)における細胞指数値に対し正規化した。
【0209】
(実施例15)
(H−29細胞におけるDBTSによる細胞増殖の阻害)
H−29細胞(ヒト結腸癌細胞)を16又は96ウェルのマイクロタイタープレート装置(電子プレート、すなわち、プレートのウェル中に電極センサーを有するプレート)のウェル中に、開始時の播種密度がウェルあたり10,000個の細胞数となるように播種し、標準的な細胞培養条件下でインキュベーター中で約25時間プレインキュベートした。ジベンジルトリスルフィドのDMSO溶液をウェル中に添加し、次いでインキュベートした。RT−CESシステムを用いて、化合物添加前後の細胞の状態をモニターした。化合物の添加直前の様々なウェルにおける細胞指数は0.95〜1.13であった。図9は、化合物添加前及び添加後の時刻の関数としての正規化した細胞指数を示す。細胞指数は、化合物添加直後の時点(細胞播種後約26時間)における細胞指数値に対し正規化した。
【0210】
(実施例16)
(HC−2998細胞におけるDBTSによる細胞増殖の阻害)
HC−2998細胞(ヒト結腸癌細胞)を16又は96ウェルのマイクロタイタープレート装置(電子プレート、すなわち、プレートのウェル中に電極センサーを有するプレート)のウェル中に、開始時の播種密度が1ウェルあたり10,000個の細胞数となるように播種し、標準的な細胞培養条件下でインキュベーター中で約24.7時間プレインキュベートした。ジベンジルトリスルフィドのDMSO溶液をウェル中に添加し、次いでインキュベートした。RT−CESシステムを用いて、化合物添加前後の細胞の状態をモニターした。化合物の添加直前の様々なウェルにおける細胞指数は0.33〜0.68であった。図10は、化合物添加前及び添加後の時刻の関数としての正規化した細胞指数を示す。細胞指数は、化合物添加直後の時点(細胞播種後約25.7時間)における細胞指数値に対し正規化した。
【0211】
(実施例17)
(OVCAR4細胞におけるDBTSによる細胞増殖の阻害)
OVCAR4細胞(ヒト卵巣癌細胞)を16又は96ウェルのマイクロタイタープレート装置(電子プレート、すなわち、プレートのウェル中に電極センサーを有するプレート)のウェル中に、開始時の播種密度が1ウェルあたり10,000個の細胞数となるように播種し、標準的な細胞培養条件下でインキュベーター中で約27時間プレインキュベートした。ジベンジルトリスルフィドのDMSO溶液をウェル中に添加し、次いでインキュベートした。RT−CESシステムを用いて、化合物添加前後の細胞の状態をモニターした。化合物の添加直前の様々なウェルにおける細胞指数は1.4〜1.7であった。図11は、化合物添加前及び添加後の時刻の関数としての正規化した細胞指数を示す。細胞指数は、化合物添加直後の時点(細胞播種後約28時間)における細胞指数値に対し正規化した。
【0212】
(実施例18)
(A2780細胞におけるDBTSによる細胞増殖の阻害)
A2780細胞(ヒト結腸癌細胞)を16又は96ウェルのマイクロタイタープレート装置(電子プレート、すなわち、プレートのウェル中に電極センサーを有するプレート)のウェル中に、開始時の播種密度が1ウェルあたり20,000個の細胞数となるように播種し、標準的な細胞培養条件下でインキュベーター中で約16.4時間プレインキュベートした。ジベンジルトリスルフィドのDMSO溶液をウェル中に添加し、次いでインキュベートした。RT−CESシステムを用いて、化合物添加前後の細胞の状態をモニターした。化合物添加直前の様々なウェルにおける細胞指数は2.2〜3.7であった。図12は、化合物添加前及び添加後の時刻の関数としての正規化した細胞指数を示す。細胞指数は、化合物添加直後の時点(細胞播種後約17.5時間)における細胞指数値に対し正規化した。
【0213】
(実施例19)
(DBTSに対するHepG2細胞の応答)
HepG2細胞(ヒト肝臓肉腫細胞)を16又は96ウェルのマイクロタイタープレート装置(電子プレート、すなわち、プレートのウェル中に電極センサーを有するプレート)のウェル中に、開始時の播種密度が1ウェルあたり15,000個の細胞数となるように播種し、標準的な細胞培養条件下でインキュベーター中で約22時間プレインキュベートした。ジベンジルトリスルフィドのDMSO溶液をウェル中に添加し、次いでインキュベートした。RT−CESシステムを用いて、化合物添加前後の細胞の状態をモニターした。化合物添加直前の様々なウェルにおける細胞指数は0.7〜0.97であった。図13は、化合物添加前及び添加後の時刻の関数としての正規化した細胞指数を示す。細胞指数は、化合物添加直後の時点(細胞播種後約22.7時間)における細胞指数値に対し標準化した。本明細書中に示された細胞指数からは、ジベンジルトリスルフィドがHepG2細胞の増殖に阻害効果を示さず、曝した投与量範囲内においてはHepG2細胞に何ら細胞傷害性の影響を示さないようである。
【0214】
(実施例20)
(DBTS及びその誘導体による細胞増殖の阻害)
RT−CESシステム及びMTTアッセイを使用し、8つの異なるタイプのヒト癌細胞株においてDBTS及びその誘導体の抗癌効果を試験した。この8つの癌細胞株はHT1080(ヒト繊維肉腫細胞株)、H460(ヒト非小細胞肺癌細胞株)、OVCAR4(ヒト卵巣癌細胞株)、MCF7(ヒト乳癌細胞株)MDA−MB231(M231、ヒト乳癌細胞株)A2780(ヒト結腸癌細胞株)Jurkat(ヒトT細胞白血病細胞株)であった。試験用DBTS誘導体としては、ACEA100107、ACEA100108、ACEA100109、ACEA100111、ACEA100115、ACEA100116、ACEA100117、ACEA100118、ACEA100119、およびACEA100120が挙げられる。ACEA100129はHT1080、HELA及びMCF7細胞中でも試験され、それぞれ0.82μM、0.42μM及び2.3μMのIC50値を有していた。誘導体の化学構造を表33及び34に示す。
【0215】
RT−CESシステムにおいて実行されるアッセイのために、細胞を16又は96ウェルのマイクロタイタープレート装置(電子プレート、すなわち、プレートのウェル中に電極センサーを有するプレート)のウェル中に、開始時の播種密度範囲が1ウェルあたり5,000〜15,000個の細胞数となるように播種した。この細胞を、細胞指数が増殖期(細胞指数が0.8〜1.2)に到達するまで、5%のCO2及び37℃において一晩インキュベートした。連続的に希釈した化合物を次いでこの細胞に添加し、細胞増殖及び細胞毒性に及ぼす影響を動的にモニターした。各誘導体についての時間依存的なIC50値を、化合物処置後の様々な時点の細胞指数における投与量応答に基づいて計算した。処置後、化合物が最大の阻害を示す時点に相当するIC50値を表35に示す。
【0216】
MTTアッセイのために、細胞を通常の96ウェルプレートに播種密度範囲が1ウェルあたり5,000〜15,000個の細胞数となるように播いた。この細胞を5%のCO2及び37℃において一晩インキュベートした。誘導体を連続的に希釈し、この細胞へと添加した。この処理を、48時間のインキュベーション後に、MTT染色試薬の添加によって終了させた。4時間後、停止バッファーの添加によって染色を停止し、次いでマイクロタイタープレートリーダー上で、2つの波長、650nm及び550nmにおいて、比色測定を実行した。試験誘導体についてのIC50値を、比色読取り機を用いて計算し、表36に列挙した。
【0217】
【表33】
【0218】
【表34】
【0219】
【表35】
【0220】
【表36】
(実施例21)
(ACEA100108による癌細胞増殖の動力学的阻害)
RT−CESシステムにおいて、7つの癌細胞株におけるDBTS誘導体、ACEA100108の抗癌効果を試験した。細胞株はHT1080、H460、OVCAR4、MCF7、MDA−MB231、HepG2、及びA2780であった。癌細胞を16又は96ウェルのマイクロタイタープレート装置(すなわち、電子プレート)のウェル中に、開始時の播種密度がウェルあたり5,000個〜15,000個の細胞数の範囲となるように播き、播かれた細胞を次いで37℃及び5%のCO2においてインキュベートした。癌細胞の増殖を、RT−CESシステム上で、細胞が増殖期にいたるまでの約20時間リアルタイムでモニターした。次いで、細胞を50μM〜0.38μMの濃度範囲で連続的に稀釈したACEA100108で処理した。ACEA100108の癌増殖阻害及びACEA100108に対する各種細胞株の細胞傷害性の応答を、RT−CESシステムにおいてリアルタイムでモニターした。次いで細胞−化合物相互作用の動力学的曲線を記録し、図26に示す。細胞指標曲線は、化合物添加直後の時点(細胞播種後約18〜24時間)における細胞指数値に対し標準化した。
【0221】
(実施例22)
(DBTS誘導体による癌細胞増殖の動力学的阻害)
HT1080癌細胞の動力学的増殖阻害及びHT1080癌細胞におけるDBTS誘導体の細胞傷害性の影響を、RT−CESシステムにおいて測定した。DBTS誘導体は、ACEA100107、ACEA100109、ACEA100111、ACEA100114、ACEA100115、ACEA100116、ACEA100117、ACEA100118、ACEA100119及びACEA100120であった。HT1080細胞(ヒト繊維肉腫)を16又は96ウェルのマイクロタイタープレート装置(電子プレート)のウェル中に、播種密度がウェルあたり5,000個の細胞数となるように播いた。この細胞を増殖期にいたるまでの約20時間、37℃及び5%のCO2においてインキュベートした後、50μM〜0.38μMの濃度範囲で連続的に稀釈したDBTS誘導体を細胞に添加し、DBTS誘導体の細胞応答をRT−CESシステムにおいてリアルタイムで48時間モニターした。図27は異なる濃度における細胞とDBTS誘導体の相互作用の動力学的曲線を示す。細胞指標曲線は、化合物添加直後の時点(細胞播種後約18〜24時間)における細胞指数値に対し標準化した。
【0222】
(実施例23)
(DBTS及びその誘導体化合物であるACEA100108及びACEA100116による微小管動力学抑制の概要)
微小管は、細胞が2個の娘細胞へと分裂する前に、複製された染色体が2つの同一のセットへと分離するときの有糸分裂を含む多数の細胞プロセスにおいて重要である。有糸分裂及び細胞分裂における微小管の重要な役割及びその動態により、微小管は抗癌薬の重要な標的となっている。間期の細胞において微小管は、そのチューブリンを、半減期が3分以内から数時間である細胞質プール中に可溶性のチューブリンに変化させる。有糸分裂の開始に伴い、間期の微小管ネットワークは再組み立てされて、紡錘体を形成し染色体を動かす高度に動的な微小管の集合に置き換えられる。紡錘体微小管は間期細胞中の微小管よりも20〜50倍動的であり、紡錘体微小管には15秒という迅速な半減期を伴ってそのチューブリンを可溶性チューブリンに変化させるものもある。
【0223】
紡錘体微小管の動態は、モジュレーターによる調節及び微小管活性化薬物による破壊に対し極めて敏感に反応する。微小管を標的とする薬物は、微小管のポリマー化及び動態を広範な方法により変化させ得る。(1)培養細胞における微小管ネットワークに影響を及ぼす能力、(2)in vitroの微小管組み立てに影響を及ぼす能力、及び(3)in vitroの微小管動態に影響を及ぼす能力、に関するDBTS、ACEA100108及びACEA100116として設計された3種のACEA化合物の作用メカニズムを以下に記す。
【0224】
(方法)
細胞培養及び免疫細胞化学 COS細胞を非必須アミノ酸、10%のFBS、抗生物質−抗カビ剤(Gibco BRL)を添加したDMEM培地中で37℃、5.5% CO2において生育させた。免疫蛍光顕微鏡観察のために細胞をポリリジン被覆したカバースリップ上に載せ、各種濃度の3種のACEA化合物、パクリタキセル又はビンブラスチンを用いて4又は24時間処理した(任意の所定の試験で使用される濃度については各図を参照されたい)。細胞を次いで温かいPBSで一度洗浄し、冷エタノールで固定し、再度PBSで洗浄してPBT(PBS、1%のBSA、0.5%のTritonX−100)中、1晩4℃でブロックした。全てのその後の染色および洗浄は、別に記載のない限りPBT中で室温において行った。細胞を抗チューブリンマウス抗体DM−1を用いて1:1000にて1時間染色し、各15分間、4回洗浄し、Cy−3コンジュゲートヤギ抗マウス抗体を用いて1:100にて1時間、暗所で染色した。次に、サンプルを各15分間、PBT中で暗所にて4回洗浄し、次いで最後に15分間、PBT中で暗所にて洗浄した。サンプルを次いでレーザー走査共焦点顕微鏡により観察した。
【0225】
微小管組み立てアッセイ 精製ウシ脳チューブリンを、1mMのGTP、10%のグリセロール及び10%のDMSOと共に35℃、30分間インキュベートして微小管の種を合成し、次いで27ゲージの針を通し、組み立てた微小管を6回通過させることにより剪断した。微小管組み立ては、27.5μlの微小管の種を、1mMのGTP(及び適用可能な薬物)を添加した247.5μlの精製ウシ脳チューブリンのPEM−100バッファー(100mMのPipes pH=6.8、1mM EDTA、1mM MgSO4)を含む分光光度計キュベット(35℃に維持されている)に加え、OD400を2時間モニターすることによりアッセイした。化合物がDMSO中に溶解され、DMSOは微小管組み立てにおいて顕著な効果を有し得ることから、DMSOは、反応に対し加えられた最大量の薬物と同量となるよう全てのキュベット中に添加された。微小管組み立て反応の初発速度は非常に速く、サンプルを準備している間にそれが起こるために、光散乱プロファイルの初発の上昇を常に捕らえることはできないということは留意されるべきである。しかし、導入される薬物以外は全て同一であるから、全てのサンプルは同じ吸光度から開始される。
【0226】
チューブリンの精製及び微小管動態アッセイ チューブリンは文献に記載されるように精製した(”Kinetic stabilization of microtubule dynamic instability in vitro by vinblastine”、Toso、R.J.、Jordan、M.A.、Farrell、K.W.、Matsumoto、B.及びWilson、L.、Biochemistry、1993、32、1285−1293)。手短に言えば、微小管に関連した蛋白質に富むウシ脳微小管蛋白質を3サイクルの組み立て及び分解によって調製した。チューブリンを、PEM50(50mM Pipes、1mM MgSO4、1mM EGTA、0.1mM GTP)中に平衡化したWhatman P−11ホスホセルロースカラムを通して溶出することにより、その他の微小管蛋白質から精製した。精製されたチューブリン(純度 >99%)を液体窒素中に滴下して凍結し、−70℃に保存した。精製チューブリン(15M チューブリンダイマー)を、キタムラサキウニ(Strongylocentrotus purpuratus)軸糸の種の末端部において、PMEMバッファー(87mM Pipes、36mM MES、1.4mM MgCl2、1mM EDTA、pH6.8)及び2mM GTP中のACEA01、08又は16の存在又は非存在下で、37℃においてポリマー化した。個々の微小管の動態を、微分干渉コントラスト増強ビデオ顕微鏡を用いて37℃で記録した。結果は、生育速度、種の向かい合う末端において成長する微小管の数、及びその微小管の相対的な長さを基準にして、プラス又はマイナスとして指定された(Panda、D.、Goode、B.L.、Feinstein、S.C.及びWilson、L.、Kinetic stabilization of microtubule dynamics at steady state by tau and microtubule−binding domains of tau、Biochemistry、1995、34、11117−11127;Walker、R.A.、O’Brien、E.T.、Pryer、N.K.、Soboeiro、M.F.、Voter、W.A.、Erickson、H.P.及びSalmon、E.D.、Dynamic instability of individual microtubules analyzed by video light microscopy:rate constants and transition frequencies、J.Cell Biol.1988、107、1437−1448)。プラスの末端は、ポリマー化の定常状態(ポリマー化開始後45分まで)の間、スライドごとに10分間解析された。個々の微小管の生育史は、Pandaらにより改変とともに1995年に記述されたものとして集められている(Panda、D.、Goode、B.L.、Feinstein、S.C.及びWilson、L.、Kinetic stabilization of microtubule dynamics at steady state by tau and microtubule−binding domains of tau、Biochemistry、1995、34、11117−11127)。データポイントは1〜3秒の間隔で収集した。
【0227】
微小管は、>0.5μm/分の速度で長さが増加又は減少する場合に、成長している又は短縮されているとみなした。30秒間以上成長速度が0.5μm/分を下回る微小管は減衰期にあるとみなした。平均の速度、長さ及び持続は独立した事象の平均である。危険頻度は短縮事象の数を生育及びその後の減衰の合計時間で割ることにより計算し、レスキュー頻度はレスキュー事象の数をその後の短縮の合計時間で割ることにより計算した。実験誤差を制御するために、少なくとも2つの異なるチューブリン/GTP混合物を使用し(各2−3枚のスライド)、各条件は複数日にわたり固定した。所定の条件における混合物又はスライドの間で、微小管の動態における全体的な変化は観察されなかった。動態の不安定性アッセイに使用された薬物の濃度は、微小管組み立てアッセイに用いられたものの半量を用いて安定化された微小管を最初に観察することにより選択した。スライド上のほとんどの微小管は安定であり、薬物の濃度は、追跡された任意の所定の微小管が10分間に少なくとも2つの生育又は短縮事象を有するまで低減されるものとした。
【0228】
図28〜38は、DBTS及び有機硫黄化合物ACEA100108及びACEA100116の、培養細胞における微小管ネットワークに及ぼす影響を示す。図28は、薬物にさらされていない調節された細胞における微小管の画像を示す。微小管ネットワークは予測されたとおりにみえる。図29は、タキソールに4時間曝した細胞における微小管の画像を示す。微小管はいくつかの位置で束ねられている;濃度が増加すると、束ねられたところがより広範になるが、微小管はしばしば、対照細胞中のものよりも短い。図30は、タキソールに24時間曝した細胞における微小管の画像を示す。投与量が増加すると微小管の異常は増加する。この図は、束ねられ短くなった微小管の増加が存続していることを示す。さらに、大きな細胞の異常が明らかになっている。
【0229】
図31は、ビンブラスチンに4時間曝した細胞における微小管の画像を示す。投与量が増加すると微小管ネットワークは崩壊し、微小管はより短くなる。図32は、ビンブラスチンに24時間曝した細胞における微小管の画像を示す。この図が示すように、大きな細胞の異常は微小管ネットワーク中に広がっている。
【0230】
図33は、DBTSに4時間曝した細胞における微小管の画像を示す。微小管ネットワークは完全に崩壊している;非常に短い微小管のみが存在し、微小管中のチューブリンの全体的なレベルは顕著に減少している。この影響は非イオン性の界面活性剤抽出及びイムノブロッティングによって生物化学的に定量し得る。図34は、DBTSに24時間曝した細胞における微小管の画像を示す。最も低い投与量において、いくらかの微小管が存在し、薬物にわずか4時間曝した細胞と比較して、細胞が部分的に回復しているように見える。;6μM又は18μMのいずれかのDBTSで24時間処置した後に生存する細胞は無かった。
【0231】
図35は、ACEA100108に4時間曝した細胞における微小管の画像を示し、微小管ネットワークは試験した全ての濃度において顕著に変化している。微小管は非常に短く、微小管中内容物の全体的なレベルは減少しているようにみえる。最も高い濃度において、細胞はしばしば寄り集まっている。図36は、ACEA100108に24時間曝した細胞における微小管の画像を示す。1μM及び3μMの両方において、細胞は4〜24時間の間でいくぶん回復しているように見える。両方の場合における微小管ネットワークは比較的正常に見える。しかし、9μMにおいては、微小管は短く、そのネットワークは異常であるように見える。
【0232】
図37は、ACEA100116に4時間曝した細胞における微小管の画像を示す。微小管ネットワークの残留が1μMにおいては残っているが、2つのより高い濃度において微小管は非常に短く、異常である。細胞は伸長していないが、むしろ投与量依存的に寄り集まっているように見える。図38は、ACEA100116に24時間曝した細胞における微小管の画像を示す。わずか1μM ACEA100116で処理された細胞は比較的正常である;3μM又は9μMで処理された本質的に全ての細胞は、ACEA100116に曝して24時間後に死滅した。
【0233】
図39〜41は、in vitroの微小管組み立てにおけるDBTS及び有機硫黄化合物ACEA100108及びACEA100116の効果を示す。図39aに示すように、DBTSの全ての投与量は微小管組み立ての程度を顕著に阻害する。効果は特に9μMにおいて顕著である。対照(図39b)及び薬物処理された(図39c)サンプルの両方の微小管構造を電子顕微鏡により視覚化した。図40に示すように、より低い投与量のACEA100108は、微小管組み立てに与える影響が最も小さかった。対照的に、27μMのACEA100108は微小管組み立ての程度に顕著な阻害効果を与えた。
【0234】
図41に示すように、ACEA100116はDBTS及びACEA100108とは非常に異なっている。その他の2つの薬物が微小管組み立てを阻害するのに対して、ACEA100116は微小管組み立てを促進する。このことは、9μM及び27μMの両方において明白である。このプロットは、一般的であるがよく理解されていない“オーバーシュート”として知られる現象を呈してもおり、そこにおいて光散乱のパターンはプラトーに達しておらずむしろ徐々に低下する。にもかかわらず、ACEA100116がin vitroで微小管組み立てを阻害するよりもむしろ促進することは明らかである。
【0235】
さらに、DBTS、ACEA100108及びACEA100116がin vitroの微小管の挙動に影響することが示された。表37に示すように、全ての3つの薬物は微小管動態のパターンを変化させた。DBTSは微小管の生育速度に影響を及ぼさなかったが、生育事象の平均的な持続を増加させ、結果的に生育事象における平均的な生育の長さを増加させた。このことがまた生育にかかる時間の割合を増加させた。短縮事象の平均的な長さも減少した。
【0236】
ACEA100108もまた、生育事象の持続を増加させ、生育事象の平均的な長さを増加させた;これもまた、短縮事象の長さにおいて強い効果を有した;この効果は、その他の2薬物のいずれかとも顕著に異なる効果を呈したDBTS及びACEA100116の効果よりも、なお顕著であった。ACEA100116は生育速度を増加させたが、生育事象の長さにはほとんど影響しなかった。それは短縮事象の速度には影響を及ぼさなかったが、短縮事象の長さには強い影響を及ぼした。細胞イメージングデータがチューブリン又は微小管関連蛋白質へ結合している薬物を識別できないときには、in vitro微小管組み立て及びin vitro微小管動態アッセイの両者は、精製されたMAPを含まないチューブリンのみを使用した。これらの観察は、全ての3つの薬物が直接的にチューブリンと相互作用することを示す。
【0237】
【表37】
(実施例24)
(ACEA100108が癌細胞においてアポトーシスを誘導する)
ACEA100108化合物が癌細胞におけるアポトーシスを誘導するか否かを試験するために、A549ヒト肺癌細胞を1μMのACEA100108及び50nMのパクリタキセル又は10nMのビンブラスチンで処理した。パクリタキセル及びビンブラスチンという2つの微小管動態抑制剤は陽性対照として使用した。A549細胞をチャンバースライド中にウェルあたり10,000個の細胞数となるように撒き、18時間後に指定された濃度の抗有糸分裂化合物ACEA100108、パクリタキセル及びビンブラスチンによって処理した。細胞を薬物とともに24時インキュベートし、次いでPBSで2回、及び結合バッファー(10mM HEPES、pH7.5、140mM NaCl、2.5mM CaCl2)で3回洗浄した。細胞を、1μg/mLのアネキシンV−Cy3コンジュゲート(赤色、アポトーシスの段階を開始した細胞を染色する)及び500μMの6−CFDA(緑色、生存している細胞を染色する)の1×結合バッファー中で20分間染色した。この細胞を1×結合バッファー中で緩やかに3回洗浄し、マウントして、免疫蛍光顕微鏡下で取り付けられたCCDカメラを用いて観察した。生存する細胞が6−CFDAのみで染色され(緑色)、一方壊死している細胞がアネキシンV−Cy3のみで染色される(赤色)ことに留意されたい。アポトーシスの段階を開始した細胞はアネキシンV−Cy3と6−CFDAの両方で染まるであろう。
【0238】
図42に示すように、ACEA100108、パクリタキセル及びビンブラスチンで処理された細胞はアネキシンVでの強い染色を示し、一方DMSOのみで処理された対照細胞はアネキシンVで染まらなかった。このことは、ACEA100108がA549ヒト肺癌細胞におけるアポトーシスを誘導することを示す。
【0239】
(実施例25)
(ACEA100108は癌細胞においてG2/M細胞周期停止を誘導する)
微小管は、細胞が2個の娘細胞へと分裂する前に、複製された染色体が2つの同一のセットへと分離するときの有糸分裂において極めて重要である。微小管を標的とするパクリタキセル及びビンブラスチン等の化合物は、微小管の動態を抑制し、有糸分裂のプロセスをブロックする。結果として、細胞はG2/M期において停止される。ACEA100108が癌細胞の分裂における有糸分裂のプロセスに影響を及ぼすか否かを試験するために、A549ヒト肺癌細胞を25μMのACEA100108及び7.8nMのパクリタキセルで処理し、この化合物の細胞周期への影響をフローサイトメトリーにより検出した。
【0240】
手短に言えば、A549細胞を、60mm組織培養ディッシュ中に500,000個の細胞数となる密度で撒いた。約18時間後に細胞を指定された濃度の抗有糸分裂化合物により処理し、さらに24時間インキュベートした。細胞をPBS中で洗浄し、トリプシン処理し、計数して、氷冷70%のメタノール中で固定化し、4℃で保存した。細胞をPBSで洗浄し、プロピジウムアイオダイドで染色し、フローサイトメトリー分析まで氷中に保存した。図43に示すように、G2/M期にある細胞の数は、ACEA100108及びパクリタキセルの両方で処理した細胞中では、DMSOのみで処理された細胞と比較して顕著に増加した。
【0241】
(実施例26)
(ジ(p−クロロベンジル)トリスルフィド(9)の大規模合成)
N−トリメチルシリルイミダゾール(10.67mL、97%、d=0.956、実重量=9.89g、70.54mmol)を、乾燥した250mL容丸底フラスコ中で70mLの無水ヘキサン中に溶解した。この攪拌溶液に対してゆっくりと(40〜50分)二塩化硫黄のジクロロメタン溶液(35.3mL、1.0M、35.3mmol)を窒素下、室温にて添加した。白色の沈殿が形成された。この反応混合物を50分間攪拌し、次いで窒素下、0℃まで冷却した。4−クロロベンジルメルカプタン(9.5mL、96%、実重量=11.19g、70.53mmol)の無水ヘキサン溶液50mLを、攪拌しながら窒素下で40〜50分間かけて滴下した。得られた反応混合物を0℃、1時間攪拌し、次いで室温にて3時間攪拌した。セライトの詰め物を通過させ、少量のヘキサンで洗浄することにより、白色から淡い黄色の固体を濾過除去した。濾液を、水(200mL、100mL)で洗浄し、次いで飽和塩化ナトリウム溶液(200mL)で洗浄した。有機溶媒相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥剤を濾過除去し、濾液を減圧下で濃縮した。
【0242】
白色の固体残留物を、ヘキサン−酢酸エチル(60:1)を溶出液としたシリカゲルカラム上のフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。画分を、ヘキサン−酢酸エチル(40:1)を展開溶媒とするシリカゲルTLCでモニターした(Rf=0.45)。所望の画分を回収し、溶媒をエバポレーションした。得られた白色の個体生成物をヘキサンから再結晶し、11.06g(90%)の所望の生成物9を白色の針状結晶として得た。
【0243】
【化32】
(実施例27)
(ジ(p−フルオロベンジル)トリスルフィド(8)の大規模合成)
N−トリメチルシリルイミダゾール(21.42mL、97%、d=0.956、実重量=19.86g、141.6mmol)を、乾燥した500mL容丸底フラスコ中で140mLの無水ヘキサン中に溶解した。この攪拌溶液に対してゆっくりと(40〜50分)二塩化硫黄のジクロロメタン溶液(70.8mL、1.0M、70.8mmol)を窒素下、室温にて添加した。白色の沈殿が形成された。この反応混合物を50分間攪拌し、次いで窒素下、0℃まで冷却した。4−フルオロベンジルメルカプタン(18.04mL、20.86g、96%、実重量=20.0g、140.8mmol)の無水ヘキサン溶液100mLを、攪拌しながら窒素下で40〜50分間かけて滴下した。得られた反応混合物を0℃、1時間攪拌し、次いで室温にて3時間攪拌した。セライトの詰め物を通過させ、少量のヘキサンで洗浄することにより、白色から淡い黄色の固体を濾過除去した。濾液を、水(400mL、300mL)で洗浄し、次いで飽和塩化ナトリウム溶液(400mL)で洗浄した。有機溶媒相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥剤を濾過除去し、濾液を減圧下で濃縮した。
【0244】
白色の固体残留物を、ヘキサン−酢酸エチル(60:1)を溶出液としたシリカゲルカラム上のフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。画分を、ヘキサン−酢酸エチル(40:1)を展開溶媒とするシリカゲルTLCでモニターした(Rf=0.46)。所望の画分を回収し、溶媒をエバポレーションした。得られた白色の固体生成物をヘキサンから再結晶し、14.7g(67%)の白色の針状結晶として所望の生成物を得た。母液を濃縮した。さらなる再結晶は10〜15%多い結晶生成物を提供した。
【0245】
【化33】
(実施例28)
(純粋な二塩化硫黄を用いたジ(p−フルオロベンジル)トリスルフィド(8)の大規模合成)
N−トリメチルシリルイミダゾール(226.6mL、97%、d=0.956、実重量=205.7g、1467mmol)を、乾燥した3000mL容三つ首フラスコ中で1200mLの無水ヘキサン及び560mLの無水ジクロロメタン(分子ふるいタイプ3Aで乾燥)中に溶解した。この攪拌溶液に対してゆっくりと(40〜50分)二塩化硫黄のジクロロメタン溶液(55.9mL、90.63g、880mmol、0.6eq)を窒素下、室温にて添加した。反応は沈殿を伴って迅速に起こった。反応混合物を50分間攪拌し、次いで窒素下で0℃まで冷却した。4−フルオロベンジルメルカプタン(176mL、96%、実重量=200.17g、1408mmol)の無水ジクロロメタン溶液250mL及び100mLの無水ヘキサンを、攪拌しながら窒素下で40〜50分間かけて滴下した。得られた反応混合物を0℃、1時間攪拌し、次いで室温にて3時間攪拌した。反応物をヘキサン−酢酸エチル(40:1)を展開溶媒とするシリカゲルTLCでモニターし、その結果反応が正常に完了したことが示された。セライトの詰め物を通過させ、少量のヘキサンで洗浄することにより、白色から淡い黄色の固体を濾過除去した。濾液を、水で2回(1000mL×2)洗浄し、次いで飽和塩化ナトリウム溶液(1000mL)で1回洗浄した。有機溶媒相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥剤を濾過除去し、濾液を減圧下で濃縮した。粗生成物を、石油エーテル(60〜90℃画分)−酢酸エチル(80:1、60:1、40:1及び次いで20:1)をグラジェント溶出液としたシリカゲルカラム(8×36cm)上のフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。画分を、n−ヘキサン−酢酸エチル(40:1)を展開溶媒とするシリカゲルTLCでモニターした(Rf=0.46)。所望の画分を回収し、溶媒をエバポレーションした。得られた白色の固体生成物を1000mLのヘキサンから再結晶し、131.0gの所望の生成物8を、収率59.2%の白色針状結晶として得た(T収量221.16g)。
【0246】
【化34】
【化35】
非対称トリスルフィド41〜68(スキーム3)は、報告されている手法(Derbesy、G.;Harpp、D.N.Tetrahedron Letters、1994、35、5381−5384)と類似の方法Bにより合成することができる。例えば、フェニルチオール(C6H5CH2SH)(10mmol)溶液及び無水ピリジン(10mmol)のジエチルエーテル溶液25mLを、30分間かけて、冷却され(−78℃)攪拌された二塩化硫黄(10mmol)の無水ジエチルエーテル溶液50mLへと滴下する。反応混合物を30分間攪拌する。対応する第2のチオール(10mmol)及び無水ピリジン(10mmol)のジエチルエーテル溶液25mLを、−78℃で30分間かけて滴下し、反応混合物をさらに30分間攪拌する。pHが中性になるまで、反応混合物を水(2回)、1Nの水酸化ナトリウム溶液(2回)、及び次いで水(2回)で洗浄する。有機溶媒相をCaCl2、又は無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過して濃縮する。残ったものを、ヘキサン−酢酸エチルを溶出液として用いたシリカゲルの短い詰め物に通過させ、高純度の生成物41〜68を40〜100%の収率で得る。
【0247】
上述の詳細な説明及びそれに伴う実施例は説明的なものにすぎず、本発明の範囲を限定するものと解釈されるものではない。開示される実施形態に対する各種の変更及び改変は当業者にとって明らかであろう。本発明の化学構造、置換基、誘導体、中間体、合成、製剤及び/又はその使用方法に関する限定を伴わないこのような変更及び改変は、本発明の精神及び範囲を逸脱することなくなされ得る。本明細書中に参照される米国特許及び出版物は参照として援用される。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2004年4月20日に出願された米国特許仮出願第60/564,151号に関する。この文書の内容は、本明細書中で参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は有機硫黄化合物及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
癌は依然として、人類にとって最も重要な、未だかなえられていない医学的課題の一つである。外科手術、放射線療法、化学療法,又はこれらの方法の組み合わせなど、腫瘍を治療するためのいくつかの選択肢が利用可能である。これらの中で、化学療法は全てのタイプの癌、特に、手術不可能な、あるいは転移性の癌に対して広く使用されている。様々な化学療法化合物が臨床において使用されているにもかかわらず、化学療法は概して治癒的でなく、病気の進行を遅らせるにすぎない。通常、腫瘍及びその転移に対して化学療法は効かなくなってくるが、これは、腫瘍細胞が多剤耐性能を発達するからである。いくつかの場合において、腫瘍はあるクラスの化学療法薬に対して本質的に耐性を示す。別の場合では、化学療法による治療中に、その化学療法薬に対し獲得された耐性が発達する。したがって、様々なクラスの腫瘍を治療する際の、利用可能な化学療法化合物の有効性に対する大きな制約が依然として存在する。さらに、腫瘍の化学的治療のために使用される多くの細胞傷害性及び細胞増殖抑制性の薬剤は重篤な副作用を示し、結果的に化学療法を停止する患者もいる。したがって、新規な化学療法薬が依然として必要とされている。
【0004】
ジベンジルトリスルフィド(DBTS)は、亜熱帯地方の低木Petiveria alliacea L.(Phytolaccaceae)から単離された、生物学的に活性なポリスルフィド二次代謝産物である。DBTSは免疫調節活性を有することが報告されている(非特許文献1;非特許文献2)。その免疫調節活性におけるDBTSの細胞的及び分子的メカニズムを研究して、Rosnerとその同僚らは、DBTSがウシ血清アルブミンの芳香族領域に優先的に結合し、又、SH−SY5Y神経芽細胞腫細胞においてMAPキナーゼ(erk1/erk2)のチロシン残基の脱リン酸化を低減することを報告した(非特許文献3)。さらに、彼らは、DBTSが、SH−SY5Y神経芽細胞腫細胞及びWistar38ヒト肺線維芽細胞において、微小管の不可逆的な分解を引き起こし、又、アクチンの運動性には影響を与えなかったことを報告した。さらに、彼らは、DBTSが神経芽細胞腫細胞の増殖および脊髄外移植片からの神経突起伸長も抑制することを報告した。
【0005】
別の研究において、Mata−Greenwoodとその同僚らは、様々な植物由来の多数の抽出物セットにおける抗増殖活性及び分化活性について調べた(非特許文献4)。彼らは、Petiveria alliacea L.の根の親油性抽出物、及びこの親油性抽出物からの活性画分が、HL−60前骨髄球細胞において抗増殖活性及び抗分化活性を示すことを報告した。この親油性抽出物の活性画分から、彼らは、2つの活性有機硫黄化合物、すなわち、2−[(フェニルメチル)ジチオ]エタノール及びジベンジルトリスルフィドを単離した。彼らはこれら2つの有機硫黄化合物が単球に類似した分化と強い細胞傷害性を誘導することを報告した。さらに、彼らは、これら2つの単離物がいずれもHL−60細胞において抗増殖活性を示さないことを報告した。
【非特許文献1】Williams,L.A.D.,Gardner,T.L.,Fletcher,C.K.,Naravane,A.,Gibbs,N.およびFleischhacker,R.“Immunomodulatory activities of Petiveria alliacea.”,Phytother.Res.,1997,11,251−253
【非特許文献2】Williams,L.A.D.,Vasquez,E.,Klaiber,I.,Kraus,W.およびRosner,H.“A sulfonic anhydride derivative from dibenzyl trisulphide with agro−chemical activities”,Chemosphere,2003,51,701−706
【非特許文献3】Rosner,H.,Williams,L.A.D.,Jung,A.およびKraus,W“Disassembly of microtubles and inhibition of neurite outgrowth,neuroblastoma cell proliferation,and MAP kinase tyrosine dephosphorylation by dibenzyl trisulphide”,.Biochim.Biophy.Acta,2001,1540,166−177
【非特許文献4】Mata−Greenwood,E.,Ito A.,Westernburg,H.,Cui,B.,Mehta,R.G.,Kinghorn,A.D.およびPezzuto,J.M.“Discovery of novel inducers of cellular differentiation using HL−60 promyeolocytic cells”Anticancer Res.2001,21,1763−1770
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の開示)
本発明は、有機硫黄化合物、医薬組成物、及びその使用方法に関する。より詳細には、本発明は、置換ジ−スルフィド化合物、トリ−スルフィド化合物、テトラ−スルフィド化合物及びペンタ−スルフィド化合物に関し、この化合物には、その薬学上許容し得る塩及び部分的に酸化されたスルホン誘導体も含まれる。本発明に記載される化合物は、抗腫瘍活性、抗癌活性、抗炎症活性、抗感染活性、及び/又は抗増殖活性を示す。本発明は有機硫黄化合物の製造及び製剤化方法にも関する。
【0007】
一実施形態において、本発明は、以下の式で表される化合物
【0008】
【化14】
式中、A及びBは、同じであるか又は異なり、且つ、独立して、置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール、又は単環式若しくは多環式であってもよく、そしてヘテロ原子を含んでいてもよい5〜14員環であり;
各Sは酸化物の形態であってもよく;
S1及びS2は、独立して、S、SO又はSO2であり;
各Rは、H、ハロゲン、カルボキシル、シアノ、アミノ、アミド、無機置換基、SR1、OR1又はR1であり、この場合、各R1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、炭素環又は複素環であり、それらの各々が置換されていてもよく、又、ヘテロ原子を含んでいてもよく;
m、n及びpは、独立して、0〜3である、化合物;
又は、以下の式(3)若しくは(4)で表される化合物:
【0009】
【化15】
式中、A、B、R、S、n及びpは上記定義の通りである、化合物;
又は、以下の式(5)で表される化合物:
【0010】
【化16】
式中、A、B、S、n及びpは上記定義の通りであり;且つ、
Zは(CR12)q又は(CR1=CR1)q*であり、この場合、qは0〜3であり、且つ、*は、アルキニル、O、S、NRによって置換されていてもよいC=Cを表し;又は、Zは置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール又は複素環であり;
式中、AとBは一緒に環状環系を形成してもよい、化合物;
但し、前記化合物が、ジベンジルトリスルフィド、ジ(p−クロロベンジル)トリスルフィド、(p−クロロベンジル)ベンジルトリスルフィド、ジ(p−ニトロベンジル)トリスルフィド、ジ(3−フェニル−2−プロペニル)−トリスルフィド、ジフェニルトリスルフィド、又はジ(p−t−ブチルフェニル)トリスルフィドでない、化合物;
及びその薬学上許容し得る塩、エステル、プロドラッグ又は代謝産物;
を提供する。
【0011】
上記式1〜5において、各Zは、
【0012】
【化17】
であることができ、
式中、各Wは、独立して、結合、CR、N、NR、S、又はOであり;
各Rは、上記定義の通りである。
【0013】
上記式1〜5において、各Rは、H、ハロ、OR1、SR1、CO2R1、CONR12、C=O、CN、CF3、OCF3、NO2、NR1R1、OCOR1であるか;又は、Rは、それぞれがヘテロ原子を含んでいてもよい、C1−10アルキル、C3−10環状アルキル、C2−10アルケニル、C2−10アルキニル、アリール、ヘテロアリール、炭素環又は複素環であることができる。
【0014】
上記式1〜5において、それぞれA及びBは、ベンゼン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、イソオキサゾール、イソチアゾール、オキサジアゾール、[1,2,4]オキサジアゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ピロール、フラン、チオフェンインドリジン、インドール、イソインドール、インドリン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、プリン、キノキサリン、キノリン、イソキノリン、シノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、プテリジン、アクリジン、フェナジン、フェノチアジン、インデン、ナフタレン、ベンゾオキサジアゾール,又はベンゾ[1,2,5]−オキサジアゾールであることができる。
【0015】
別の態様において、それぞれA及びBは、独立して、
【0016】
【化18】
であり、
式中、X及びWは、独立して、S、O、NR7、CR7であるか;
又は、6員の単環若しくは二環において1つのWは結合であってもよく;且つ、
各R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7は、H、ハロゲン、カルボキシル、シアノ、アミノ、アミド、無機置換基、SR1、OR1又はR1であり、この場合、各R1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、炭素環又は複素環であって、それらの各々が置換されていてもよく、又、ヘテロ原子を含んでいてもよい。例えば、各R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7は、独立して、H、ハロ、OR1、SR1、CO2R1、CONR12、C=O、CN、CF3、OCF3、NO2、NR1R1、OCOR1であるか;又は、各R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7は、それらの各々がヘテロ原子を含んでいてもよい、C1−10アルキル、C3−10環状アルキル、C2−10アルケニル、C2−10アルキニル、アリール、ヘテロアリール、炭素環又は複素環であることができる。
【0017】
アリール、ヘテロアリール、又は複素環の例は、限定するものではないが、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、フェニル、フラニル、チオフェニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、キノキサリニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、キノリニル、ナフタレニル、ピリダジニル、ピラゾロピリミジニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゼン−チオフェン、ピラゾリル、ピロリル、インドリル、イソインドリル、キノリジニル、キノリニル、イソキノリニル、又はキナゾリニルであり、それぞれは、O、N、S及びハロから選択されるヘテロ原子によって置換されていてもよく;又は、それらの各々がヘテロ原子を含んでいてもよい、C1−10アルキル、C3−10環状アルキル、C2−10アルケニル、C2−10アルキニル、アリール、又は複素環によって置換されていてもよい。
【0018】
上記式1〜5において、各Sは、一酸化物又は二酸化物であることができる。
【0019】
別の態様において、本化合物は、以下の式(6)
【0020】
【化19】
で表され、
各nは、1〜3であり;且つ、
Rは、H、ハロ、アルキル又はハロゲン化アルキルである。
【0021】
さらに別の態様において、本化合物は、以下の式(7)
【0022】
【化20】
で表され、
この場合、Arは、置換されていてもよい、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピリジン又はピラジンである。
【0023】
式1〜5で表される化合物の例は、限定するものではないが、ジ(フルオロベンジル)トリスルフィド、ジ(o−クロロベンジル)トリスルフィド、ジ(メチルベンジル)トリスルフィド、ジ(トリフルオロメチルベンジル)トリスルフィド、ジ(2−フェニルエチル)トリスルフィド、ジ(2−チオフェン−イル−メチル)トリスルフィド、ジ(4−ピリジン−イル−エチル)トリスルフィド、ジ(2−ピリミジン−イル−エチル)トリスルフィド、又はジ(3−ベンゾチオフェン−イル−メチル)トリスルフィドである。特定の例において、本化合物は、ジ(p−フルオロベンジル)トリスルフィド、ジ(m−メチルベンジル)トリスルフィド、又はジ−(p−メチルベンジル)トリスルフィドが挙げられる。
【0024】
別の実施形態において、本発明は、上記の式1〜5で表される化合物を含む組成物の製造方法を提供し、その方法に従って調製された組成物も提供する。一態様において、本発明は、a)溶液を得るために、請求項1に記載の化合物を、水溶性有機溶媒、非イオン性溶媒、水溶性脂質、シクロデキストリン、ビタミン、脂肪酸、脂肪酸エステル、リン脂質、又はこれらの組み合わせ中に溶解させる工程;及び、b)生理食塩水又は1〜10%の炭水化物溶液を含むバッファーを添加する工程;を含む方法を提供する。有機溶媒は、ポリエチレングリコール(PEG)、アルコール、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、又はこれらの組み合わせであることができる。
【0025】
上記方法において、非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレングリセロール−トリリシノレート35、PEG−コハク酸、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポリエチレングリコール660 12−ヒドロキシステアレート、ソルビタンモノオレエート、ポリオキサマー、エトキシル化杏仁油、カプリル−カプロイルマクロゴール−8−グリセリド、グリセロールエステル、PEG6カプリルグリセリド、グリセリン、グリコール−ポリソルベート、又はこれらの組み合わせであることができる。非イオン性界面活性剤の特定の例は、ポリエチレングリコール改変CREMOPHOR(登録商標)(ポリオキシエチレングリセロールトリリシノレート35)、CREMOPHOR(登録商標)EL、水素化CREMOPHOR(登録商標)RH40、水素化CREMOPHOR(登録商標)RH60、SOLUTOL(登録商標)HS(ポリエチレングリコール660 12−ヒドロキシステアレート)、LABRAFIL(登録商標)(エトキシル化杏仁油)、LABRASOL(登録商標)(カプリル−カプロイルマクロゴール−8−グリセリド)、GELUCIRE(登録商標)(グリセロールエステル)、及びSOFTIGEN(登録商標)(PEG6カプリリルグリセリド)である。
【0026】
上記方法において、脂質は、植物性油脂、トリグリセリド、植物油、又はこれらの組み合わせであることができる。例えば、脂質は、ヒマシ油、ポリオキシルヒマシ油、トウモロコシ油、オリーブ油、綿実油、ピーナッツ油、ペパーミント油、サフラワー油、ゴマ油、大豆油、硬化植物性油脂、硬化大豆油、ココナッツ油のトリグリセリド、ヤシ種子油、及びこれらの硬化形態、又はこれらの組み合わせであることができる。
【0027】
上記方法において、ビタミンはトコフェロールであることができ、脂肪酸及び脂肪酸エステルはオレイン酸、モノグリセリド、ジグリセリド、PEGのモノ−脂肪酸エステル又はジ−脂肪酸エステル、又はこれらの組み合わせであることができる。
【0028】
上記方法において、シクロデキストリンは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、又はスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリンであることができる。リン脂質は、大豆ホスファチジルコリン、又はジステアロイルホスファチジルグリセロール、及びこれらの硬化形態、又はこれらの組み合わせであることができる。さらに、炭水化物は、上記方法において、デキストロースを含むことができる。
【0029】
さらに別の実施形態において、本発明は、a)N−トリメチルシリルイミダゾールを二塩化硫黄のハロゲン化溶媒溶液と接触させてジイミダゾリルスルフィドを得る工程;及びb)該ジイミダゾリルスルフィドをメルカプタンと接触させる工程;を含む、上記式1〜2の化合物の調製方法を提供する。一実施例において、ハロゲン化溶媒はジクロロメタンである。
【0030】
一態様において、N−トリメチルシリルイミダゾールのヘキサン溶液を二塩化硫黄のジクロロメタン溶液と接触させる。別の態様において、ニート化合物として二塩化硫黄を、N−トリメチルシリルイミダゾールのヘキサン及びジクロロメタン溶液に接触させる。さらに別の態様において、本方法は、トリスルフィドを再結晶化する工程をさらに含む。一実施例において、トリスルフィドは、n−ヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル又はこれらの組み合わせ中で再結晶化される。
【0031】
別の実施形態において、本発明は、上記式1〜5で表される化合物及び薬学上許容し得る賦形剤を含む医薬組成物を提供する。かかる化合物及びその医薬組成物は神経芽細胞腫を改善又は処置するために使用することができる。したがって、本発明は、有効量の式1〜5で表される化合物又はその医薬組成物を、任意で抗増殖性物質と一緒に、それらを必要とする系又は対象に投与する工程を含み、それにより、神経芽細胞腫が改善又は処置される、神経芽細胞腫を改善又は処置する方法も提供する。
【0032】
本発明は、式1〜5で表されるいずれかの化合物又はその医薬組成物を、それを必要とする対象又は系に投与することを含む、症状を改善又は処置する方法であって、その化合物が、ジベンジルトリスルフィド、ジ(p−クロロベンジル)トリスルフィド、(p−クロロベンジル)ベンジルトリスルフィド、ジ(p−ニトロベンジル)トリスルフィド、ジ(3−フェニル−2−プロペニル)−トリスルフィド、ジフェニルトリスルフィド、又はジ(p−t−ブチルフェニル)トリスルフィドであることができる方法も提供する。対象はヒト又は哺乳動物などの動物であることができる。系は、細胞若しくは組織、又は化合物をin vitroで投与し得るその他の系であることができる。
【0033】
一実施形態において、本発明は、式1〜5で表される有効量の化合物又はその医薬組成物を、任意で抗増殖性物質と一緒に、それらを必要とする系又は対象に投与する工程を含み、それにより、その系又は対象における細胞増殖性疾患が改善又は処置される、神経芽細胞腫以外の細胞増殖性疾患を改善又は処置する方法を提供する。本発明は、細胞増殖を低減若しくは抑制するための、又は細胞死を誘導するための方法も提供する。本発明はアポトーシスを誘導するための方法をさらに提供する。特定の例において、本発明の方法で使用される化合物は、任意で抗増殖性物質を伴う、ジベンジルトリスルフィド、ジ(p−フルオロベンジル)トリスルフィド、ジ(p−メチルベンジル)トリスルフィド又はジ(m−メチルベンジル)トリスルフィドである。
【0034】
一態様において、細胞増殖が低減されるか、又は細胞死が誘導される。細胞増殖性疾患は、限定するものではないが、白血病、リンパ腫、肺癌、大腸癌、CNS癌、メラノーマ、卵巣癌、腎臓癌、前立腺癌、乳癌、頭頸部癌、膵臓癌,又は腎臓癌などの腫瘍又は癌であることができる。別の態様において、細胞アポトーシスが誘導される。別の態様において、チューブリンの組み立て若しくは分解が妨害されるか、又は細胞周期のG2/Mの進行、細胞有糸分裂、若しくはこれらの組み合わせが抑制される。さらに別の態様において、内皮細胞増殖、血管新生、又はその組み合わせが抑制される。
【0035】
別の実施形態において、本発明は、式1〜5で表されるいずれかの化合物又はその医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含み、それにより、その対象の再狭窄が改善又は処置される、再狭窄を改善又は処置する方法を提供する。再狭窄は新生内膜過形成に関連し得る。本化合物は、経口投与若しくは非経口投与を介して、又はステントを介して投与することができる。さらに別の実施形態において、本発明は、式1〜5で表される化合物のいずれかと薬学上許容し得る賦形剤を含む、細胞増殖性疾患の治療のための医薬組成物を提供する。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
以下の式で表される化合物:
【化1】
式中、A及びBは、同じであるか又は異なり、且つ、独立して、置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール、又は単環式若しくは多環式であってもよく、又、ヘテロ原子を含んでいてもよい5〜14員環であり;
各Sは酸化物の形態であってもよく;
S1及びS2は、独立して、S、SO又はSO2であり;
各Rは、H、ハロゲン、カルボキシル、シアノ、アミノ、アミド、無機置換基、SR1、OR1又はR1であり、この場合、各R1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、炭素環又は複素環であり、それらの各々が置換されていてもよく、又、ヘテロ原子を含んでいてもよく;
m、n及びpは、独立して、0〜3である、化合物;
又は、以下の式(3)又は(4)で表される化合物:
【化2】
式中、A、B、R、S、n及びpは上記定義の通りである、化合物;
又は、以下の式(5)で表される化合物:
【化3】
式中、A、B、S、n及びpは上記定義の通りであり;且つ、
Zは(CR12)q又は(CR1=CR1)q*であり、この場合、qは0〜3であり、且つ、*は、アルキニル、O、S、NRによって置換されていてもよいC=Cを表し;又は、Zは置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール又は複素環であり;
式中、AとBは一緒に環状環系を形成してもよい、化合物;
但し、前記化合物が、ジベンジルトリスルフィド、ジ(p−クロロベンジル)トリスルフィド、(p−クロロベンジル)ベンジルトリスルフィド、ジ(p−ニトロベンジル)トリスルフィド、ジ(3−フェニル−2−プロペニル)−トリスルフィド、ジフェニルトリスルフィド、又はジ(p−t−ブチルフェニル)トリスルフィドでない、化合物
及びその薬学上許容し得る塩、エステル、プロドラッグ又は代謝産物。
(項目2)
式中、Zが以下の式
【化4】
で表され、
式中、各Wは、独立して、結合、CR、N、NR、S、又はOであり;
各Rは、項目1における定義の通りである、
項目1に記載の化合物。
(項目3)
式中、Rが、独立して、H、ハロ、OR1、SR1、CO2R1、CONR12、C=O、CN、CF3、OCF3、NO2、NR1R1、OCOR1であるか;又は、Rが、それぞれがヘテロ原子を含んでいてもよい、C1−10アルキル、C3−10環状アルキル、C2−10アルケニル、C2−10アルキニル、アリール、ヘテロアリール、炭素環又は複素環である、項目1に記載の化合物。
(項目4)
式中、A及びBが、独立して、ベンゼン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、イソオキサゾール、イソチアゾール、オキサジアゾール、[1,2,4]オキサジアゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ピロール、フラン、チオフェンインドリジン、インドール、イソインドール、インドリン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、プリン、キノキサリン、キノリン、イソキノリン、シノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、プテリジン、アクリジン、フェナジン、フェノチアジン、インデン、ナフタレン、ベンゾオキサジアゾール,又はベンゾ[1,2,5]−オキサジアゾールである、項目1に記載の化合物。
(項目5)
式中、A及びBが、独立して、
【化5】
であり、
式中、X及びWは、独立して、S、O、NR7、CR7であるか;
又は、6員の単環若しくは二環において1つのWは結合であってもよく;且つ、
各R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7は、H、ハロゲン、カルボキシル、シアノ、アミノ、アミド、無機置換基、SR1、OR1又はR1であり、この場合、各R1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、炭素環又は複素環であって、それらの各々が置換されていてもよく、又、ヘテロ原子を含んでいてもよい、項目1に記載の化合物。
(項目6)
式中、各R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7が、独立して、H、ハロ、OR1、SR1、CO2R1、CONR12、C=O、CN、CF3、OCF3、NO2、NR1R1、OCOR1であるか;又は、各R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7が、C1−10アルキル、C3−10環状アルキル、C2−10アルケニル、C2−10アルキニル、アリール、ヘテロアリール、炭素環又は複素環であって、それらの各々がヘテロ原子を含んでいてもよい、項目5に記載の化合物。
(項目7)
前記アリール、ヘテロアリール、又は複素環が、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、フェニル、フラニル、チオフェニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、キノキサリニル、チアゾリニル、オキサゾリル、イミダゾリル、キノリニル、ナフタレニル、ピリダジニル、ピラゾロピリミジニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゼン−チオフェン、ピラゾリル、ピロリル、インドリル、イソインドリル、キノリジニル、キノリニル、イソキノリニル、又はキナゾリニルであり、それらの各々がO、N、S及びハロから選択されるヘテロ原子によって置換されていてもよく;又は、それぞれがヘテロ原子を含んでいてもよい、C1−10アルキル、C3−10環状アルキル、C2−10アルケニル、C2−10アルキニル、アリール、又は複素環によって置換されていてもよい、項目6に記載の化合物。
(項目8)
式中、各Sが、一酸化物又は二酸化物であってもよい、項目1に記載の化合物。
(項目9)
前記化合物が以下の式(6)
【化6】
で表され、
各nが、1−3であり;且つ、
Rが、H、ハロ、アルキル又はハロゲン化アルキルである、
項目1に記載の化合物。
(項目10)
前記化合物が以下の式(7)
【化7】
で表され、
この場合、Arが、置換されたチオフェン、ベンゾチオフェン、ピリジン又はピラジンであってもよい、項目1に記載の化合物。
(項目11)
前記化合物が、ジ(フルオロベンジル)トリスルフィド、ジ(o−クロロベンジル)トリスルフィド、ジ(メチルベンジル)トリスルフィド、ジ(トリフルオロメチルベンジル)トリスルフィド、ジ(2−フェニルエチル)トリスルフィド、ジ(2−チオフェン−イル−メチル)トリスルフィド、ジ(4−ピリジン−イル−エチル)トリスルフィド、ジ(2−ピリミジン−イル−エチル)トリスルフィド、又はジ(3−ベンゾチオフェン−イル−メチル)トリスルフィドである、項目1に記載の化合物。
(項目12)
前記化合物が、ジ(p−フルオロベンジル)トリスルフィド、ジ(m−メチルベンジル)トリスルフィド、又はジ−(p−メチルベンジル)トリスルフィドである、項目1に記載の化合物。
(項目13)
神経芽細胞腫を改善又は処置する方法であって、有効量の項目1に記載される化合物又はその医薬組成物を、任意で抗増殖性物質と一緒に、それらを必要とする系又は対象に投与する工程を含み、それにより、前記神経芽細胞腫が改善又は処置される、方法。
(項目14)
神経芽細胞腫以外の細胞増殖性疾患を改善又は処置する方法であって、
以下の式を有する化合物:
【化8】
式中、A及びBは、同じであるか又は異なり、且つ、独立して、置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール、又は単環式若しくは多環式であってもよく、そしてヘテロ原子を含んでいてもよい5〜14員環であり;
各Sは酸化物の形態であってもよく;
S1及びS2は、独立して、S、SO又はSO2であり;
各Rは、H、ハロゲン、カルボキシル、シアノ、アミノ、アミド、無機置換基、SR1、OR1又はR1であり、この場合、各R1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、炭素環又は複素環であり、それらの各々が置換されていてもよく、又、ヘテロ原子を含んでいてもよく;
m、n及びpは、独立して、0〜3である、化合物;
又は、以下の式(3)若しくは(4)で表される化合物:
【化9】
式中、A、B、R、S、n及びpは上記定義の通りである、化合物;
又は、以下の式(5)で表される化合物:
【化10】
式中、A、B、R、S、n及びpは上記定義の通りであり;且つ、
Zは(CR12)q又は(CR1=CR1)q*であり、この場合、qは0〜3であり、且つ、*は、アルキニル、O、S、NRによって置換されていてもよいC=Cを表し;又は、Zは置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール又は複素環であり;
式中、AとBは一緒に環状環系を形成してもよい、化合物;
で表される有効量の化合物、又はその医薬組成物を、任意で抗増殖性物質と一緒に、それらを必要とする系又は対象に投与する工程を含み、それにより前記の系又は対象における細胞増殖性疾患が改善又は処置される、方法。
(項目15)
前記細胞増殖が低減されるか、又は前記細胞死が誘導される、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記対象がヒト又は動物であり、且つ、前記系が細胞又は組織である、項目14に記載の方法。
(項目17)
前記細胞増殖性疾患が腫瘍又は癌である、項目14に記載の方法。
(項目18)
前記癌が、白血病、リンパ腫、肺癌、大腸癌、CNS癌、メラノーマ、卵巣癌、腎臓癌、前立腺癌、乳癌、頭頸部癌、膵臓癌、又は腎臓癌である、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記化合物が、ジベンジルトリスルフィド、ジ(p−フルオロベンジル)トリスルフィド、ジ(p−メチルベンジル)トリスルフィド又はジ(m−メチルベンジル)トリスルフィドである、項目14に記載の方法。
(項目20)
細胞増殖を低減若しくは抑制するか、又は細胞死を誘導する方法であって、有効量の項目14に定義される化合物又はその医薬組成物を、任意で抗増殖性物質と一緒に、系又は対象に投与する工程を含み、それにより、前記の系又は対象において細胞増殖を低減若しくは抑制するか、又は前記細胞死が誘導される、方法。
(項目21)
細胞アポトーシスが誘導される、項目20に記載の方法。
(項目22)
チューブリンの組み立て若しくは分解が妨害されるか、又は前記細胞周期におけるG2/Mの進行、細胞有糸分裂、若しくはこれらの組み合わせが抑制される、項目20に記載の方法。
(項目23)
内皮細胞増殖、血管新生、又はその組み合わせが抑制される、項目20に記載の方法。
(項目24)
前記対象がヒト又は動物であり、且つ、前記系が細胞又は組織である、項目20に記載の方法。
(項目25)
前記化合物が、ジベンジルトリスルフィド、ジ(p−フルオロベンジル)トリスルフィド、ジ(p−メチルベンジル)トリスルフィド又はジ(m−メチルベンジル)トリスルフィドである、項目20に記載の方法。
(項目26)
再狭窄を改善又は処置する方法であって、有効量の項目14に定義される化合物又はその医薬組成物を、それを必要とする対象に投与する工程を含み、それにより、前記対象の再狭窄が改善又は処置される、方法。
(項目27)
前記再狭窄が新生内膜過形成に関連するものである、項目26に記載される方法。
(項目28)
前記投与工程が経口投与若しくは非経口投与であるか、ステントを介して投与される、項目26に記載の方法。
(項目29)
前記化合物が、ジベンジルトリスルフィド、ジ(p−フルオロベンジル)トリスルフィド、ジ(p−メチルベンジル)トリスルフィド又はジ(m−メチルベンジル)トリスルフィドである、項目26に記載の方法。
(項目30)
項目1に記載される化合物及び薬学上許容し得る賦形剤を含む医薬組成物。
(項目31)
以下の式で表される化合物:
【化11】
式中、A及びBは、同じであるか又は異なり、且つ、独立して、置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール、又は単環式若しくは多環式であってもよく、又、ヘテロ原子を含んでいてもよい5〜14員環であり;
各Sは酸化物の形態であってもよく;
S1及びS2は、独立して、S、SO又はSO2であり;
各Rは、H、ハロゲン、カルボキシル、シアノ、アミノ、アミド、無機置換基、SR1、OR1又はR1であり、この場合、各R1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、炭素環又は複素環であり、それぞれが置換されていてもよく、又、ヘテロ原子を含んでいてもよく;
m、n及びpは、独立して、0〜3である、化合物;
又は、以下の式(3)又は(4)で表される化合物:
【化12】
式中、A、B、R、S、n及びpは上記定義の通りである、化合物;
又は、以下の式(5)で表される化合物:
【化13】
式中、A、B、R、S、n及びpは上記定義の通りであり;且つ、
Zは(CR12)q又は(CR1=CR1)q*であり、この場合、qは0〜3であり、且つ、*は、アルキニル、O、S、NRによって置換されていてもよいC=Cを表し;又は、Zは置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール又は複素環であり;
式中、AとBは一緒に環状環系を形成してもよい、化合物;
及び薬学上許容し得る賦形剤を含む、細胞増殖疾患の処置のための医薬組成物。
(項目32)
a) N−トリメチルシリルイミダゾールを二塩化硫黄のハロゲン化溶媒溶液と接触させ、ジイミダゾリルスルフィドを得る工程;及び
b) 前記ジイミダゾリルスルフィドをメルカプタンと接触させる工程;
を含む、項目31に記載される式1−2で表される化合物の調製方法。
(項目33)
前記溶媒がジクロロメタンである、項目32に記載の方法。
(項目34)
N−トリメチルシリルイミダゾールのヘキサン溶液を、二塩化硫黄のジクロロメタン溶液と接触させる、項目32に記載の方法。
(項目35)
ニート化合物としての二塩化硫黄を、N−トリメチルシリルイミダゾールのヘキサン及びジクロロメタン溶液と接触させる、項目32に記載の方法。
(項目36)
前記トリスルフィドを再結晶化する工程をさらに含む、項目32に記載の方法。
(項目37)
前記トリスルフィドを、n−ヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル又はこれらの組み合わせの中で再結晶化させる、項目36に記載の方法。
(項目38)
a) 溶液を得るために、項目1に記載の化合物を、水溶性有機溶媒、非イオン性溶媒、水溶性脂質、シクロデキストリン、ビタミン、脂肪酸、脂肪酸エステル、リン脂質、又はこれらの組み合わせの中に溶解させる工程;及び
b) 生理食塩水又は1〜10%の炭水化物溶液を含むバッファーを添加する工程;
を含む、項目1に記載の化合物を含む組成物を調製する方法。
(項目39)
前記有機溶媒が、ポリエチレングリコール(PEG)、アルコール、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、又はこれらの組み合わせである、項目38に記載の方法。
(項目40)
非イオン性の界面活性剤が、ポリオキシエチレングリセロールトリリシノレート35、PEG−コハク酸、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポリエチレングリコール660 12−ヒドロキシステアレート、ソルビタンモノオレイン酸、ポロキサマー、エトキシル化杏仁油、カプリル−カプロイルマクロゴール−8−グリセリド、グリセロールエステル、PEG6カプリルグリセリド、グリセリン、グリコール−ポリソルベート、又はそれらの組み合わせである、項目38に記載の方法。
(項目41)
前記脂質が、植物性油脂、トリグリセリド、植物油又はそれらの組み合わせである、項目38に記載の方法。
(項目42)
前記脂質がヒマシ油、ポリオキシヒマシ油、コーン油、オリーブ油、綿実油、落花生油、ペパーミント油、サフラワー油、ゴマ油、大豆油、硬化植物性油脂、硬化大豆油、ココナツ油のトリグリセリド、ヤシ種子油、及びそれらの硬化形態又はそれらの組み合わせである、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記ビタミンがトコフェロールである、項目38に記載の方法。
(項目44)
前記脂肪酸がオレイン酸である、項目38に記載の方法。
(項目45)
前記脂肪酸エステルが、モノグリセリド、ジグリセリド、PEGのモノ−脂肪酸エステル若しくはジ−脂肪酸エステル、又はこれらの組み合わせである、項目38に記載の方法。
(項目46)
前記シクロデキストリンが、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、又はスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリンである、項目38に記載の方法。
(項目47)
前記リン脂質が、大豆ホスファチジルコリン、又はジステアロイルホスファチジルグリセロール及びその硬化形態、又はこれらの組み合わせである、項目38に記載の方法。
(項目48)
前記炭水化物がデキストロースを含む、項目38に記載の方法。
(項目49)
アポトーシスの促進方法であって、有効量の項目14に定義される化合物又はその医薬組成物を、任意で抗増殖性物質と一緒に、それらを必要とする系又は対象に投与することを含み、それにより、前記対象又は系中のアポトーシスが促進される、方法。
(項目50)
細胞のチューブリン又は微小チューブリンが誘導される、項目49に記載の方法。
(項目51)
項目38に記載の方法に従って調製された組成物。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1A】図1A−Cは、リアルタイム電子的センシングシステム(RT−CESシステム)で測定された、種々の濃度のDBTS、コルセミド、及びパクリタキセルそれぞれに対するH460細胞(非小細胞肺癌株)の応答を示す。
【図1B】図1A−Cは、リアルタイム電子的センシングシステム(RT−CESシステム)で測定された、種々の濃度のDBTS、コルセミド、及びパクリタキセルそれぞれに対するH460細胞(非小細胞肺癌株)の応答を示す。
【図1C】図1A−Cは、リアルタイム電子的センシングシステム(RT−CESシステム)で測定された、種々の濃度のDBTS、コルセミド、及びパクリタキセルそれぞれに対するH460細胞(非小細胞肺癌株)の応答を示す。
【図2】図2は、RT−CESシステムで測定された、種々の濃度のジベンジルトリスルフィド(DBTS)に対するMV522細胞(肺癌細胞株)の応答を示す。
【図3】図3は、RT−CESシステムで測定された、種々の濃度のジベンジルトリスルフィド(DBTS)に対するMCF−7細胞(乳癌細胞株)の応答を示す。
【図4】図4は、RT−CESシステムで測定された、種々の濃度のジベンジルトリスルフィド(DBTS)に対するA549細胞(肺癌細胞株)の応答を示す。
【図5】図5は、RT−CESシステムで測定された、種々の濃度のジベンジルトリスルフィド(DBTS)(図6A)及び5−フルオロウラシル(図6B)に対するPC3細胞(前立腺癌細胞株)の応答を示す。
【図6A】図6は、RT−CESシステムで測定された、種々の濃度のジベンジルトリスルフィド(DBTS)に対するA431細胞(類表皮癌細胞株)の応答を示す。
【図6B】図6は、RT−CESシステムで測定された、種々の濃度のジベンジルトリスルフィド(DBTS)に対するA431細胞(類表皮癌細胞株)の応答を示す。
【図7】図7は、RT−CESシステムで測定された、種々の濃度のジベンジルトリスルフィド(DBTS)に対するHT1080細胞(線維肉腫細胞株)の応答を示す。
【図8】図8は、RT−CESシステムで測定された、種々の濃度のジベンジルトリスルフィド(DBTS)に対するMDA−231細胞(乳癌細胞株)の応答を示す。
【図9】図9は、RT−CESシステムで測定された、種々の濃度のジベンジルトリスルフィド(DBTS)に対するHT−29細胞(大腸癌細胞株)の応答を示す。
【図10】図10は、RT−CESシステムで測定された、種々の濃度のジベンジルトリスルフィド(DBTS)に対するHC−2998細胞(大腸癌細胞株)の応答を示す。
【図11】図11は、RT−CESシステムで測定された、種々の濃度のジベンジルトリスルフィド(DBTS)に対するOVCAR4細胞(卵巣癌細胞株)の応答を示す。
【図12】図12は、RT−CESシステムで測定された、種々の濃度のジベンジルトリスルフィド(DBTS)に対するA2780細胞(大腸癌細胞株)の応答を示す。
【図13】図13は、RT−CESシステムで測定された、種々の濃度のジベンジルトリスルフィド(DBTS)に対するHepG2細胞(ヒト肝臓癌細胞株)の応答を示す。
【図14】図14は、ジベンジルトリスルフィド(DBTS)を用いて処理されたマウス肉腫S180腫瘍(皮下移植によりマウスに移植)を示す。
【図15】図15は、ジベンジルトリスルフィド(DBTS)を用いて処理されたマウスルイス肺癌(皮下移植によりマウスに移植)を示す。
【図16】図16は、皮下播種により免疫欠損ヌードマウスに異種移植片移植され、化合物ACEA100108を用いて処理されたBcap−37ヒト乳房腫瘍を示す。
【図17】図17は、皮下移植により免疫欠損ヌードマウスに異種移植片移植されたBcap−37ヒト乳癌に対する化合物ACEA100108のin vivo抗腫瘍効果試験での腫瘍サイズの動的変化を示す。
【図18】図18は、皮下移植により免疫欠損ヌードマウスに異種移植片移植されたBcap−37ヒト乳癌に対する化合物ACEA100108(100108)のin vivo抗腫瘍効果試験での担体マウスの体重の動的変化を示す。
【図19】図19は、皮下播種により免疫欠損ヌードマウスに異種移植片移植され、化合物ACEA100108を用いて処置されたHCT−8ヒト大腸腫瘍を示す。
【図20】図20は、皮下移植により免疫欠損ヌードマウスに異種移植片移植されたHCT−8ヒト大腸癌に対する化合物ACEA100108のin vivo抗腫瘍効果試験での腫瘍の大きさにおける動的変化を示す。
【図21】図21は、皮下移植により免疫欠損ヌードマウスに異種移植片移植されたHCT−8ヒト大腸癌に対する化合物ACEA100108(100108)のin vivo抗腫瘍効果試験での担体マウスの体重の動的変化を示す。
【図22】図22は、皮下播種により免疫欠損ヌードマウスに異種移植片移植され、化合物ACEA100108を用いて処理されたao10/17ヒト卵巣腫瘍を示す。
【図23】図23は、皮下移植により免疫欠損ヌードマウスに異種移植片移植されたao10/17ヒト卵巣癌に対する化合物ACEA100108のin vivo抗腫瘍効果試験での腫瘍の大きさにおける動的変化を示す。
【図24】図24は、皮下移植により免疫欠損ヌードマウスに異種移植片移植されたao10/17ヒト卵巣癌に対する化合物ACEA100108(100108)のin vivo抗腫瘍効果試験での担体マウスの体重における動的変化を示す。
【図25】図25は、皮下移植により免疫欠損ヌードマウスに異種移植片移植され、化合物ACEA100108を用いて処置されたBcap−37ヒト乳房腫瘍を示す。
【図26−1】図26は、RT−CESシステムで測定された、ACEA100108に対する各種細胞株の応答を示す。
【図26−2】図26は、RT−CESシステムで測定された、ACEA100108に対する各種細胞株の応答を示す。
【図27−1】図27は、RT−CESシステムで測定された、種々のDBTS誘導体に対するHT1080細胞の応答を示す。
【図27−2】図27は、RT−CESシステムで測定された、種々のDBTS誘導体に対するHT1080細胞の応答を示す。
【図27−3】図27は、RT−CESシステムで測定された、種々のDBTS誘導体に対するHT1080細胞の応答を示す。
【図28】図28は、いかなる薬物によっても処置されていない対照COS細胞における微小管の画像を示す。
【図29】図29は、種々の濃度のパクリタキセルを用いて4時間処理されたCOS細胞の微小管の画像を示す。
【図30】図30は、種々の濃度のパクリタキセルを用いて24時間処理されたCOS細胞の微小管の画像を示す。
【図31】図31は、種々の濃度のビンブラスチンを用いて4時間処理されたCOS細胞の微小管の画像を示す。
【図32】図32は、種々の濃度のビンブラスチンを用いて24時間処理されたCOS細胞の微小管の画像を示す。
【図33】図33は、種々の濃度のDBTSを用いて4時間処理されたCOS細胞の微小管の画像を示す。
【図34】図34は、種々の濃度のDBTSを用いて24時間処理されたCOS細胞の微小管の画像を示す。
【図35】図35は、種々の濃度のACEA100108を用いて4時間処理されたCOS細胞の微小管の画像を示す。
【図36】図36は、種々の濃度のACEA100108を用いて24時間処理されたCOS細胞の微小管の画像を示す。
【図37】図37は、種々の濃度のACEA100116を用いて4時間処理されたCOS細胞の微小管の画像を示す。
【図38】図38は、種々の濃度のACEA100116を用いて24時間処理されたCOS細胞の微小管の画像を示す。
【図39A】図39aは、純粋なチューブリン(MAP不含)及びDBTSを用いたin vitro微小管組み立てアッセイの結果を示す。
【図39B】図39bは、いかなる薬物も存在しない条件下でin vitroで組み立てられた微小管の電子顕微鏡画像を示す。
【図39C】図39cは、3μM DBTSの存在下でin vitroで組み立てられた微小管の電子顕微鏡画像を示す。
【図40】図40は、純粋なチューブリン(MAP不含)及びACEA100108を用いたin vitro微小管組み立てアッセイの結果を示す。
【図41】図41は、純粋なチューブリン(MAP不含)及びACEA100116を用いたin vitro微小管組み立てアッセイの結果を示す。
【図42】図42は、1μM ACEA100108、50nM パクリタキセル、10nM ビンブラスチン又はDMSOを用いて24時間処理したA549ヒト肺癌細胞を6−CFDA(上段パネル)及びアネキシンV(下段パネル)染色した蛍光顕微鏡画像を示す。
【図43】図43は、25μM ACEA100108、7.8nM パクリタキセル、又はDMSOを用いて24時間処理された後のA549ヒト肺癌細胞のフローサイトメトリーで分析された細胞周期分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(発明の実施の形態)
限定のためでなく、開示の明確さのために、本発明の詳細な説明を以下の小節に分けて記載する。
【0038】
(A.定義)
特に明記しないかぎり、本明細書中で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者により通常理解されているものと同一の意味を有する。本明細書中で参照されている全ての特許、特許出願、公開された出願及びその他の刊行物は、参照によりその全体を組み入れるものとする。本節において示されている定義が、参照によって本明細書中に組み入れられている特許、特許出願、公開された出願及びその他の刊行物において示されている定義と矛盾する、又はさもなければ一致しない場合は、本節において示されている定義が、参照によって本明細書中に組み入れられている定義よりも優先される。
【0039】
本明細書中で使用する時、「a」又は「an」は「少なくとも一つ」又は「1以上」を意味する。
【0040】
本明細書中で使用する時、用語「アルキル」とは、直鎖状、分枝鎖状、又は環状構造の飽和炭化水素基を意味し、特に意図されるアルキル基としては、低級アルキル基(すなわち、10個以下の炭素原子を有するもの)が挙げられる。典型的アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第2ブチル、第3ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル等である。本明細書中で使用する時、用語「アルケニル」とは、上記定義のアルキルであって、少なくとも一つの二重結合を有するものを意味する。このようにして、特に意図されるアルケニル基としては、2〜10個の炭素原子を有する直鎖状、分枝鎖状、又は環状のアルケニル基(例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル等)が挙げられる。同様に、本明細書中で使用する時、用語「アルキニル」とは、上記定義のアルキル又はアルケニルであって、少なくとも一つの三重結合を有するものを意味する。特に意図されるアルキニルとしては、合計2〜10個の炭素原子を有する直鎖状、分枝鎖状、又は環状のアルキン(例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル等)が挙げられる。
【0041】
本明細書中で使用する時、用語「シクロアルキル」とは、環状アルカン(すなわち、この場合、炭化水素の炭素原子鎖が環を形成している)を意味し、3〜8個の炭素原子を含むものが好ましい。このようにして、典型的シクロアルカンとしては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルが挙げられる。さらに、シクロアルキルは1又は2つの二重結合を含み、「シクロアルケニル」基を形成する。また、シクロアルキル基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ及び他の一般的基によってさらに置換される。
【0042】
本明細書中で使用する時、用語「アリール」又は「芳香族部分」とは、1以上の非炭素原子をさらに含んでいてもよい芳香族環系を意味する。したがって、意図されるアリール基としては(例えば、フェニル、ナフチル等)及びピリジルが挙げられる。さらに意図されるアリール基は、1個又は2個の5員又は6員のアリール又は複素環基と縮合(すなわち、第1の芳香環上の2原子と共有結合する)していてもよく、したがって、「縮合アリール」又は「縮合芳香族」と称される。
【0043】
本明細書中でも使用されるように、用語「複素環」、「シクロヘテロアルキル」、及び「複素環部分」は、本明細書中において同義的に使用され、複数の共有結合を介して複数の原子が一つの環を形成しているいずれかの化合物を意味し、この場合、この環は炭素原子以外の少なくとも1つの原子を含む。特に意図される複素環の基部としては、非炭素原子として窒素、硫黄、又は酸素を有する5員及び6員環(例えば、イミダゾール、ピロール、トリアゾール、ジヒドロピリミジン、インドール、ピリジン、チアゾール、テトラゾール等)が挙げられる。さらに意図される複素環は、1個又は2個の環又は複素環と縮合(すなわち、第1の複素環上の2原子と共有結合する)していてもよく、したがって、本明細書中で使用する時、「縮合複素環基部」又は「縮合複素環部分」と呼ばれる。
【0044】
本明細書中で使用する時、用語「アルコキシ」とは、アルコキシドと呼ばれる酸素原子と結合している直鎖状又は分枝鎖状のアルキルを意味し、この場合、炭化水素部分は任意の数の炭素原子を含んでいてもよく、二重結合又は三重結合をさらに含んでいてもよく、そしてアルキル鎖中に1個又は2個の酸素、硫黄又は窒素原子を含んでいてもよい。例えば、適当なアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロポキシ、メトキシエトキシ等が挙げられる。同様に、用語「アルキルチオ」とは、直鎖状又は分枝鎖状のアルキルスルフィドを意味し、この場合、この炭化水素部分は任意の数の炭素原子を含んでいてもよく、二重結合又は三重結合をさらに含んでいてもよく、そしてアルキル鎖中に1個又は2個の酸素、硫黄又は窒素原子を含んでいてもよい。例えば、意図されるアルキルチオ基としては、メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ、メトキシエチルチオ等が挙げられる。
【0045】
同様に、用語「アルキルアミノ」とは、直鎖状又は分枝鎖状のアルキルアミンを意味し、この場合、アミノ窒素「N」は1個又は2個のアルキルと置換することができ、炭化水素部分は任意の数の炭素原子を含んでいてもよく、二重結合又は三重結合をさらに含んでいてもよい。さらに、アルキルアミノの水素は別のアルキル基によって置換されていてもよい。したがって、典型的なアルキルアミノ基としては、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ等が挙げられる。
【0046】
本明細書中で使用する時、用語「アリールオキシ」とは、酸素原子と結合しているアリール基を意味し、この場合、このアリール基はさらに置換されていてもよい。例えば、適当なアリールオキシ基としてはフェニルオキシ等が挙げられる。同様に、本明細書中で使用する時、用語「アリールチオ」とは、硫黄原子と結合しているアリール基を意味し、この場合、このアリール基はさらに置換されていてもよい。例えば、適当なアリールチオ基としてはフェニルチオ等が挙げられる。
【0047】
本明細書中で使用する時、用語「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を意味する。
【0048】
本明細書中で使用する時、用語「アミノ酸」とは、D−若しくはL−構造又はその混合状態を伴う置換された天然及び非天然アミノ酸であって、そこにおいてアミノ基及び酸性基が意図される化合物を誘導体化するために使用されるものを意味する。
【0049】
全ての上記に定義される基は、さらに1以上の置換基により置換されていてもよく、言い換えれば置換されていてもよいことがさらに認識されるべきである。例えば、本明細書中で使用する時、「アルキル」はヘテロ原子で置換されたアルキルを包含する。
【0050】
本明細書中で使用する時、用語「置換された」は、原子又は化学基(例えば、H、NH2、又はOH)の官能基への置き換えを意味し、特に求核基(例えば、−NH2、−OH、−SH、−NC等)、求電子基(例えば、C(O)OR、C(X)OH等)、極性基(例えば、−OH)、非極性基(例えば、複素環、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル等)、イオン性基(例えば、−NH3+)、及びハロゲン(例えば、−F、−Cl)、NHCOR、NHCONH2、OCH2COOH、OCH2CONH2、OCH2CONHR、NHCH2COOH、NHCH2CONH2、NHSO2R、OCH2−複素環、PO3H、SO3H、アミノ酸、及び技術的に知られた各種の組み合わせを含む官能基が意図される。さらに、用語「置換された」は、複数の度合の置換をも含み、複数の置換基が開示されるか又は特許請求される場合、その置換化合物は、開示されるか又は特許請求される置換基部分の1以上によって独立して置換され得る。
【0051】
本明細書中で使用する時、用語「有機硫黄誘導体」は、2以上の「硫黄」原子を含有する有機化合物を意味する。本明細書中で使用する時、用語「ジスルフィド」「トリフルフィド」「テトラスルフィド」「ペンタスルフィド」は、2、3、4又は5個の硫黄原子が直鎖上に連結し(−S−S−S−)、そこにおいて、そのうちの1個又は2個または3個がさらにS=O又はSO2へと酸化されてよく、ジ−スルフィド誘導体、トリ−スルフィド誘導体、テトラ−スルフィド誘導体及びペンタ−スルフィド誘導体が、ジ−スルフィド、トリ−スルフィド、テトラ−スルフィド及びペンタ−スルフィドの2つの末端において、2個の官能基、アリール、アルケニル、複素環基または置換基で置換されたもの(R−S−(S)0−3−S−R)を意味する。2以上のトリスルフィド(−S−S−S−)部分は芳香族又は直鎖により共に連結されることができ、これもまた「トリスルフィド」又は有機硫黄を指す。1つ又は2つのトリスルフィド又は有機硫黄部分は共に連結されて環状系を形成し得る。
【0052】
(B.置換有機硫黄誘導体及びその医薬組成物)
本発明の化合物は、以下の式で表される化合物
【0053】
【化21】
式中、A及びBは、同じであるか又は異なり、且つ、独立して、置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール、又は単環式若しくは多環式であってもよく、そしてヘテロ原子を含んでいてもよい5〜14員環であり;
各Sはオキシドの形態であってもよく;
S1及びS2は、独立して、S、SO又はSO2であり;
各Rは、H、ハロゲン、カルボキシル、シアノ、アミノ、アミド、無機置換基、SR1、OR1又はR1であり、この場合、各R1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、炭素環又は複素環であり、そのうちの各々が置換されていてもよく、そしてヘテロ原子を含んでいてもよく;
m、n及びpは、独立して、0〜3である、化合物;
又は、以下の式(3)若しくは(4)で表される化合物:
【0054】
【化22】
式中、A、B、R、S、n及びpは上記定義の通りである、化合物;
又は、以下の式(5)で表される化合物:
【0055】
【化23】
式中、A、B、S、n及びpは上記定義の通りであり;且つ、
Zは(CR12)q又は(CR1=CR1)q*であり、この場合、qは0〜3であり、且つ、*は、アルキニル、O、S、NRによって置換されていてもよいC=Cを表し;又は、Zは置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール又は複素環であり;
式中、AとBは一緒に環状環系を形成してもよい、化合物;
及びその薬学上許容し得る塩、エステル、プロドラッグ又は代謝産物;
但し、前記化合物が、ジベンジルトリスルフィド、ジ(p−クロロベンジル)トリスルフィド、(p−クロロベンジル)ベンジルトリスルフィド、ジ(p−ニトロベンジル)トリスルフィド、ジ(3−フェニル−2−プロペニル)−トリスルフィド、ジフェニルトリスルフィド、又はジ(p−t−ブチルフェニル)トリスルフィドでないもの、を提供する。
【0056】
他の実施形態において、上記式1〜5中の各Rは非干渉性置換基であることができる。一般的に、「非干渉性置換基」とは、その存在により化合物が治療用物質として挙動する能力が無効にならない置換基である。例えば、非干渉性置換基は効力及びPK特性を向上させることができる。別の例では、非干渉性置換基は毒性を低減させることができる。適当な非干渉性置換基としては、ハロ、ニトロ、カルボキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アルコキシ、アルキルチオ、アリールアルキニル、複素環、アミノ酸が挙げられ、そのうちの各々がさらに1以上の非干渉性置換基によって置換されていてもよい。さらに、非干渉性置換基は、Rもまた上記定義の非干渉性置換基であるCOOR、SR、ORを含んでいてもよい。
【0057】
上記式1〜5において、A及びBは、独立して、
【0058】
【化24】
であり、
式中、X及びWは、独立して、S、O、NR7、CR7であるか;
又は、6員の単環若しくは二環において1つのWは結合であってもよく;且つ、
各R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7は前記定義の通りである。
【0059】
他の実施形態において、それぞれR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7は極性又は非極性の置換基であることができる。他の例において、それぞれR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7は求核性又は求電子性の非干渉性置換基であることができる。
【0060】
本発明は、式1〜5を有する化合物、並びにそれらの塩及びプロドラッグも包含する。このような塩は、例えば、化合物における正に荷電した置換基(例えば、A及び/又はBにおけるアミノ基)と薬学的に適切な陰イオンから形成され得る。適切な陰イオンとしては、限定するものではないが、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、及び酢酸塩が挙げられる。薬学的に受容可能な塩は、化合物における負に荷電した置換基(例えば、A及び/又はBにおけるカルボキシル基)と陽イオンからも形成され得る。適切な陽イオンの非限定的な例は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、及びテトラメチルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオンなどの有機アンモニウムイオン、並びに、その他の有機カチオンである。
【0061】
トリスルフィドはスキーム1に示される手順にしたがって合成することができる。例えば、芳香族式又は複素環式メチレンハライド(X=I又はBr又はCl)をチオウレアと反応させる。得られたイソチオウロニウムハライドを水酸化ナトリウムで処理することにより対応するチオール誘導体が得られる(Furniss,B.S.;Hannaford,A.J.;Rogers,V.;Smith,P.W.G.;Tatchell,A.R.Vogel’s Textbook of Practical Organic
Chemistry,Longman Group Limited,London,1978,pp582−583)。
【0062】
【化25】
対称トリスルフィド誘導体は方法Aを使用して合成することができる。方法Aにおいては、N−トリメチルシリルイミダゾールを二塩化硫黄と反応させる。得られたジイミダゾリルスルフィドを次にチオールと反応させて対応するトリスルフィドが得られる。方法Bを使用することにより、対称及び非対称トリスルフィドを合成することができる。方法Bにおいては、第1のチオールを二塩化硫黄と低温で定量的に反応させる。得られた中間体チオスルフェニルクロリドを次に第2のチオールと反応させて、第2の工程で使用されるチオールに応じて、所望の非対称又は対称トリスルフィドが得られる。
【0063】
代表的な芳香族メチレンチオール1〜6(スキーム2)は、Vogel’s Practical Organic Chemistry、pp582〜583に記載されるものと同様の手順を使用して合成することができる。さらに、対称トリスルフィド誘導体7〜32(スキーム2)は、報告されている手順(Banerji,A.;Kalena,G.P.Tetrahedron Letters 1980,21,3003−3004)と同様の方法Aにより合成した。例えば、二塩化硫黄(14mmol)の無水ヘキサン又はジクロロメタン溶液を、N−トリメチルシリルイミダゾール(28mmol)を含むヘキサンの攪拌溶液に室温で添加した。30分間攪拌した後、反応混合物を0℃に冷却し、指定されたチオール(28mmol)を含む無水ヘキサンの溶液を30分間滴下添加した。反応混合物を30分間攪拌し、沈殿したイミダゾール副生成物を濾過して取り除いた。濾過物を水とブラインを用いて洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を蒸発させ、溶出液としてヘキサン−酢酸エチル100:1〜20:1を使用するシリカゲルカラム上でのフラッシュクロマトグラフィーにより残渣を精製することにより、所望のトリスルフィド7〜32を収率60〜90%で取得した。芳香族トリスルフィド33〜39を同様の手順により収率30〜70%で合成した。
【0064】
ジ(p−フルオロベンジル)トリスルフィド(8)。トリスルフィド8を77%の収率で合成した。クロマトグラフィー精製に続くヘキサンからの再結晶化により白色の結晶が得られた。シリカゲルTLCのRf=0.46(40:1 ヘキサン−酢酸エチル)。1H NMR(499.1MHz、CDCl3)δ4.00(s,4H)、7.01(t,4H,J=8.8Hz)、7.27(dd,4H,J=8.8,5.4Hz);13C NMR(125.7MHz、CDCl3)δ42.4、115.6、115.8、131.2、131.3、132.4、162.5(C−F、J=250Hz);19F NMR(376.5MHz、CDCl3)δ−114.2;ES MS m/z337/338(M+Na)+;C14H12F2S3に対する解析計算値:C、53.48;H、3.85;S、30.59。実測値:C、53.16;H、4.22;S、30.24。
【0065】
ジ(p−クロロベンジル)トリスルフィド(9)。トリスルフィド9を90%の収率で合成した。クロマトグラフィー精製に続くヘキサンからの再結晶化により白色の結晶が得られた。シリカゲルTLCのRf=0.45(40:1 ヘキサン−酢酸エチル)。1H
NMR(499.1MHz、CDCl3)δ3.98(s,4H)、7.22(d,4H,J=8.4Hz)、7.29(d,4H,J=8.4Hz)。
【0066】
【化26】
ジ(m−トリフルオロメチルベンジル)トリスルフィド(12)。トリスルフィド12を99%の収率で合成した。クロマトグラフィー精製に続くヘキサンからの再結晶化により白色の結晶が得られた。シリカゲルTLCのRf=0.33(40:1 ヘキサン−酢酸エチル)。1H NMR(499.1MHz、CDCl3)δ4.04(s,4H)、7.41−7.49(m,4H)、7.51−7.58(m,4H)。
【0067】
ジ(ベンゾ[B]チオフェン−3−イル−メタン)トリスルフィド(22)。トリスルフィド22を45%の収率で合成した。クロマトグラフィー精製により白色の固体が得られた。シリカゲルTLCのRf=0.45(40:1 ヘキサン−酢酸エチル)。1H NMR(499.1MHz、CDCl3)δ3.74(s,4H)、7.01(s,2H)、7.34−7.45(m,4H)、7.75(d,2H,J=7.4Hz)、7.85(dd,2H,J=7.8,1.1Hz)。ES MS m/z391(M+H)+、413(M+Na)+。
【0068】
ジ(p−ブロモベンジル)トリスルフィド(25)。トリスルフィド25を84%の収率で合成した。クロマトグラフィー精製に続くヘキサンからの再結晶化により白色の結晶が得られた。シリカゲルTLCのRf=0.55(40:1 ヘキサン−酢酸エチル)。1H NMR(499.1MHz、CDCl3)δ3.96(s,4H)、7.17(d,4H,J=8.3Hz)、7.45(d,4H,J=8.3Hz)。
【0069】
ジ(p−メチルベンジル)トリスルフィド(26)。トリスルフィド26を99%の収率で合成した。クロマトグラフィー精製に続くヘキサンからの再結晶化により白色の結晶が得られた。シリカゲルTLCのRf=0.66(40:1 ヘキサン−酢酸エチル)。1H NMR(499.1MHz、CDCl3)δ2.33(s,6H)、4.01(s,4H)、7.14(d,4H,J=8.0Hz)、7.21(d,4H,J=8.0Hz)。
【0070】
ジ(p−t−ブチルベンジル)トリスルフィド(28)。トリスルフィド28を96%の収率で合成した。クロマトグラフィー精製に続くヘキサンからの再結晶化により白色の結晶が得られた。シリカゲルTLCのRf=0.50(40:1 ヘキサン−酢酸エチル)。1H NMR(499.1MHz、CDCl3)δ1.30(s,18H)、4.02(s,4H)、7.25(d,4H,J=8.3Hz)、7.35(d,4H,J=8.3Hz)。
【0071】
ジ(o−クロロベンジル)トリスルフィド(30)。トリスルフィド30を77%の収率で合成した。クロマトグラフィー精製に続くヘキサンからの再結晶化により白色の結晶が得られた。シリカゲルTLCのRf=0.44(40:1 ヘキサン−酢酸エチル)。1H NMR(499.1MHz、CDCl3)δ4.17(s,4H)、7.23−7.28(m,4H)、7.35−7.43(m,4H)。
【0072】
【化27】
ジ(2,4,6−トリメチルベンジル)トリスルフィド(32)。トリスルフィド32を59%の収率で合成した。クロマトグラフィー精製に続くヘキサンからの再結晶化により白色の結晶が得られた。シリカゲルTLCのRf=0.65(40:1 ヘキサン−酢酸エチル)。1H NMR(499.1MHz、CDCl3)δ2.27(s,6H)、2.42(s,12H)、4.23(s,4H)、6.87(s,4H)。
【0073】
ジ(p−メトキシフェニル)トリスルフィド(33)。トリスルフィド33を98%の収率で合成した。クロマトグラフィー精製に続くヘキサンからの再結晶化により白色の結晶が得られた。シリカゲルTLCのRf=0.32(20:1 ヘキサン−酢酸エチル)。1H NMR(499.1MHz、CDCl3)δ3.80(s,4H)、6.81(d,4H,J=8.8Hz)、7.47(d,4H,J=8.8Hz)。
【0074】
ジ(4−トリフルオロメチルピリジン−2−イル)トリスルフィド(34)。トリスルフィド34を53%の収率で合成した。クロマトグラフィー精製に続くヘキサンからの再結晶化により白色の結晶が得られた。シリカゲルTLCのRf=0.61(10:1 ヘキサン−酢酸エチル)。1H NMR(499.1MHz、CDCl3)δ7.70(d,4H,J=8.4Hz)、7.84(dd,4H,J=8.4,2.4Hz)8.73(s,2H)。
【0075】
表1〜8に示される非対称トリスルフィド誘導体は、化合物41〜68に対する手順と同様の手順にしたがい、対応するチオールを使用することにより、合成することができる。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
【表5】
【0081】
【表6】
【0082】
【表7】
【0083】
【表8】
スキーム4及び5に示される二置換(トリスルフィド)誘導体は同様の手順(方法B)によって合成することができる。例えば、1,3−ベンゼンジメタンチオール又は2−ブテン−1,4−ジチオール(10mmol)及び無水ピリジン(20mmol)を含む30mLのジエチルエーテルの溶液を、二塩化硫黄(20mmol)を含む80mLの無水ジエチルエーテルの冷却された(−78℃)攪拌溶液に30分間かけて滴下添加する。この反応混合物を30分間攪拌する。対応する第2のチオール(20mmol)及び無水ピリジン(20mmol)を含む40mLのジエチルエーテルを−78℃にて30分間かけて滴下添加し、反応混合物をさらなる30分間さらに攪拌する。pHが中性になるまで、反応混合物を水(2回)、1N水酸化ナトリウム溶液(2回)、次いで、水(2回)を用いて洗浄する。有機相をCaCl2又は無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮する。溶出液としてヘキサン−酢酸エチルを用いてシリカゲルの短い詰め物に残渣を通過させることにより二置換トリスルフィドを収率40〜90%で取得した。
【0084】
【化28】
【0085】
【化29】
トリスルフィド誘導体は、上記方法により、又はスキーム6に示されたアプローチにより合成することができる。テトラ−及びペンタ−スルフィド誘導体は報告されている手順(Sinha,P.;Jundu,A.;Roy,S.;Prabhakar,S.;Vairamani,M.;Sankar,A.R.;Kunwar,A.C.Organometallics 2001,20,157−162)に基づく同様のストラテジーにより合成される。
【0086】
【化30】
対称又は非対称スルフェンスルホンチオ無水物誘導体(スキーム7)は、報告されている手順(Karpp,D.N.;Gleason,J.G.;Ash,D.K.J.Org.Chem.1971,36,322−326;およびHarpp,D.N.;Ash,D.K.;Smith,R.A.J.Org.Chem.1979,44,4135−4140)に基づいて合成することができる。
【0087】
本発明は、必要に応じて抗増殖性因子と共に、有効量の式1〜5を有する化合物と薬学的に受容可能な賦形剤を含む、薬学的組成物も提供する。本明細書中で使用する場合、「有効量」とは、処置される被験体に治療的効果を及ぼすために必要とされる化合物の量を意味する。有効量又は用量は、当業者によって理解されるように、処置される腫瘍のタイプ、投与経路、及びその他の抗腫瘍性因子又は放射線療法の使用などのその他の治療的処置とともに可能な同時投与に依存して変動する。
【0088】
本明細書中で使用する場合、用語「抗増殖性因子」とは、腫瘍又は癌などの細胞増殖性疾患を処置又は改善するために使用することができる治療用因子を意味する。抗増殖性因子の例としては、限定するものではないが、抗腫瘍薬、アルキル化剤、植物性アルカロイド、抗菌剤、スルホンアミド、抗ウイルス剤、プラチナ剤、及び当該分野で公知のその他の抗癌剤が挙げられる。抗増殖性因子の特定の例としては、限定するものではないが、シスプラチン、カルボプラチン、ブスルファン、メトトレキセート、ダウノルビシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、メファラン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、クロラムブシル、パクリタキセル、ゲンシタビン、及び当該分野で公知のその他のものが挙げられる。(例えば、Goodman & Gilman’s,The Pharmacological Basis of Therapeutics(第9版)(Goodmanら編)(McGraw−Hill)(1996);及び1999 Physician’s Desk Reference(1998)を参照のこと)。
【0089】
本明細書中に記載される化合物のいずれの適切な製剤も調製することができる。安定した非毒性の酸性又は塩基性塩を形成するために化合物が十分塩基性又は酸性である場合、塩としての化合物の投与が適切であり得る。薬学的に受容可能な塩の例は、生理学的に受容可能な陰イオンを形成する酸によって形成される有機酸付加塩、例えば、トシル酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、α−ケトグルタル酸塩、及びα−グリセロリン酸塩である。適切な無機塩も形成することができ、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、重炭酸塩、及び炭酸塩が挙げられる。薬学的に受容可能な塩は、当該分野において周知の標準的手順を使用して(例えば、適切な酸と共にアミンなどの十分に塩基性の化合物によって)、生理学的に受容可能な陰イオンが得られることにより得られる。カルボン酸のアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム若しくはリチウム)又はアルカリ土類金属(例えば、カルシウム)塩も作られる。
【0090】
本明細書中に記載される式1〜5を有する化合物は、一般的に、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、酢酸エチル、エタノール、メタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、グリセロール,N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の有機溶媒に可溶性である。一実施形態において、本発明は、薬学的に受容可能なキャリアと共に式1〜5を有する化合物を混合することにより調製される製剤を提供する。一局面において、この製剤は、a)溶液を得るために、請求項1に記載の化合物を、水溶性有機溶媒、非イオン性溶媒、水溶性脂質、シクロデキストリン、トコフェロールなどのビタミン、脂肪酸、脂肪酸エステル、リン脂質、又はこれらの組み合わせの中に溶解させる工程;及びb)生理食塩水又は1〜10%の炭水化物溶液を含むバッファーを添加する工程;を含む方法を使用して調製することができる。一実施例において、この炭水化物はデキストロースを含む。本方法を使用して得られた薬学的組成物は安定であり、動物及び臨床での適用に対して有用である。
【0091】
本発明の方法において使用するための水溶性有機溶媒の代表的な例としては、限定するものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)、アルコール、アセトニトリル、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、又はこれらの組み合わせである。アルコールの例としては、限定するものではないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、グリセロール、又はプロピレングリコールが挙げられる。
【0092】
本発明の方法において使用するための水溶性非イオン性界面活性剤の具体例は、限定するものではないが、ポリオキシエチレングリセロールトリリシノレート35、PEG−コハク酸、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポリエチレングリコール660 12−ヒドロキシステアレート、ソルビタンモノオレエート、ポロキサマー、エトキシル化杏仁油、カプリル−カプロイルマクロゴール−8−グリセリド、グリセロールエステル、PEG6カプリルグリセリド、グリセリン、グリコール−ポリソルベート、又はこれらの組み合わせである。非イオン性界面活性剤の特定の例は、ポリエチレングリコール改変CREMOPHOR(登録商標)(ポリオキシエチレングリセロールトリリシノレート35)、CREMOPHOR(登録商標)EL、水素化CREMOPHOR(登録商標)RH40、水素化CREMOPHOR(登録商標)RH60、SOLUTOL(登録商標)HS(ポリエチレングリコール660 12−ヒドロキシステアレート)、LABRAFIL(登録商標)(エトキシル化杏仁油)、LABRASOL(登録商標)(カプリル−カプロイルマクロゴール−8−グリセリド)、GELUCIRE(登録商標)(グリセロールエステル)、及びSOFTIGEN(登録商標)(PEG6カプリリルグリセリド)である。
【0093】
本発明の方法において使用するための水溶性脂質の代表的な例としては、限定するものではないが、植物性油脂(vegetable oil)、トリグリセリド、植物性油脂(plant oil)、又はこれらの組み合わせが挙げられる。脂質油の例としては、限定するものではないが、ヒマシ油、ポリオキシルヒマシ油、コーン油、オリーブ油、綿実油、落花生油、ペパーミント油、サフラワー油、ゴマ油、大豆油、硬化植物油、硬化大豆油、ココナッツ油のトリグリセリド、ヤシ種子油、及びそれらの硬化形態又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0094】
本発明の方法において使用するための脂肪酸及び脂肪酸エステルの代表的な例としては、限定するものではないが、オレイン酸、モノグリセリド、ジグリセリド、PEGのモノ脂肪酸エステルもしくはジ脂肪酸エステル、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0095】
本発明の方法において使用するためのシクロデキストリンの代表的な例としては、限定するものではないが、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、又はスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリンが挙げられる。
【0096】
本発明の方法において使用するためのリン脂質の代表的な例としては、限定するものではないが、大豆ホスファチジルコリン、又はジステアロイルホスファチジルグリセロール及びその硬化形態、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0097】
当業者であれば、特定の投与経路のための多くの製剤を得るために、本明細書の教示内の製剤を改変することができる。特に、水又は他のビヒクル中でより可溶性にするために、この化合物を改変することができる。患者において最大限の有益な効果をもたらすように本発明の化合物の薬物動態を管理するために特定の化合物の投与経路及び投薬レジメンを改変することも十分に当業者の能力の範囲内である。
【0098】
(C.置換有機硫黄誘導体及びその薬学的組成物の使用方法)
本明細書中に記載される化合物は、癌又はその他のタイプの増殖性疾患を処置する際の細胞傷害性且つ/又は細胞増殖抑制性因子として使用することができる。これらの化合物は、あらゆるタイプの作用機構を通じて機能することができる。例えば、本化合物は、細胞周期のG2/Mの進行を抑制することができ、最終的に、腫瘍細胞においてアポトーシスを誘導することができる(例えば、Weungら、Biochim.Biophys.Res.Comm.1997,263,398−404を参照のこと)。ある化合物はチューブリンの組み立てを妨害することができ、又、別の化合物はチューブリンの分解を妨害することができる。これにより、細胞有糸分裂を抑制することができ、又、細胞アポトーシスを誘導することができる(例えば、Pandaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1997,94,10560−10564を参照のこと)。本化合物は内皮細胞増殖及び血管新生の影響も抑制することができる(例えば、Witteら、Cancer Metastasis Rev.1998,17,155−161を参照のこと)。
【0099】
本発明は、式1〜5を有するいずれかの化合物、例えば、限定するものではないが、ジベンジルトリスルフィド、ジ(p−クロロベンジル)トリスルフィド、(p−クロロベンジル)ベンジルトリスルフィド、ジ(p−ニトロベンジル)トリスルフィド、ジ(3−フェニル−2−プロペニル)−トリスルフィド、ジフェニルトリスルフィド、又はジ(p−t−ブチルフェニル)トリスルフィドを含む、細胞増殖性疾患の処置のための薬学的組成物も提供する。
【0100】
本発明の方法を実施するために、式1〜5を有する化合物及びその薬学的組成物は、経口的に、非経口的に、吸入スプレーにより、局所的に、経直腸的に、経鼻的に、口腔的に、経膣的に、移植されたリザーバーを介して、又はその他の薬物投与方法により投与することができる。本明細書中で使用する場合、用語「非経口的な」は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、病変内、及び頭蓋内注射又は注入技法を含む。
【0101】
無菌の注射可能な組成物、例えば、無菌の水性又は油性懸濁液は、適当な分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を使用する当該分野において公知の技法にしたがって製剤化することができる。無菌の注射可能な調製物は、非毒性の、非経口的に受容可能な希釈剤又は溶媒中の無菌の注射可能な溶液又は懸濁液であることもできる。使用することができる受容可能なビヒクル及び溶媒としては、マンニトール、水、リンゲル溶液及び等張性塩化ナトリウム溶液が挙げられる。さらに、溶媒又は懸濁媒体として、通常、無菌の不揮発性油が使用される(例えば、合成のモノグリセリド又はジグリセリド)。脂肪酸、例えば、オレイン酸及びそのグリセリド誘導体は、オリーブ油又はヒマシ油などの薬学的に受容可能な油と同様に、特に、そのポリオキシエチル化された形態において、注射物質の調製に有用である。これらの油性溶液又は懸濁液は、長鎖アルコール希釈剤若しくは分散剤、又はカルボキシメチルセルロース若しくは同様の分散剤を含むこともできる。薬学的に受容可能な固体、液体、又はその他の剤形の製造において通常使用されている様々な乳化剤又はバイオアベイラビリティー促進剤も製剤化のために使用することができる。
【0102】
経口投与のための組成物は、いずれかの経口的に受容可能な剤形であることができ、例えば、限定するものではないが、錠剤、カプセル剤、エマルジョン及び水性懸濁液、分散液及び溶剤が挙げられる。経口用途のための錠剤の場合、一般的に使用されるキャリアとしてはラクトース及びコーンスターチが挙げられる。ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤も添加することができる。カプセル形態での経口投与のために有用な希釈剤としては、ラクトース及び乾燥コーンスターチが挙げられる。水性懸濁液又はエマルジョンを経口投与するとき、活性成分は、乳化剤又は懸濁化剤と共に油相中に懸濁又は溶解させることができる。必要であれば、特定の甘味剤、矯味矯臭剤、又は着色剤を添加することができる。経鼻エアロゾル又は吸入組成物は医薬製剤の技術分野において周知の技術にしたがって調製することができ、適切な保存剤(例えば、ベンジルアルコール)、バイオアベイラビリティーを増大させるための吸収促進剤、及び/又は、当該分野で公知のその他の可溶化剤若しくは分散剤を使用して、例えば、生理食塩水中の溶液として調製することができる。
【0103】
さらに、式1〜5を有する化合物は、様々な癌又は症状の処置のために、単独又はその他の抗癌剤と共に投与することができる。本発明による組み合わせ療法は、少なくとも一つの本発明の化合物又はその機能的誘導体と、少なくとも一つのその他の薬学的に活性な成分との投与を含む。活性成分と薬学的に活性な因子は別々に又は一緒に投与することができる。活性成分と薬学的に活性な因子の量、並びに、投与の相対的なタイミングは、所望の組み合わせ療法の効果を達成するために選択される。
【0104】
一実施形態において、本発明は、白血病、リンパ腫、肺癌、大腸癌、CNS癌、メラノーマ、卵巣癌、腎臓癌、前立腺癌、乳癌、膵臓癌、腎臓癌、及びその他のタイプの増殖性疾患などが挙げられるが、これらに限定されない組織又は臓器の癌を処置又は改善する方法に関し、この方法は、治療的有効量の式1〜5を有する化合物を投与する工程を包含する。
【0105】
別の実施形態において、本発明は、冠動脈疾患を有する患者に対する冠動脈ステント挿入後の再狭窄を、ジベンジルトリスルフィド及びその他のトリスルフィド誘導体などの式1〜5を有する化合物を用いて処置する方法に関する。冠動脈疾患を有する患者に対する冠動脈ステント挿入後の再狭窄の主要な原因の一つは、平滑筋細胞の増殖及び移動と細胞外マトリックス産生から生じ得る新生内膜過形成である(例えば、Farb,A.,Sangiorgi,G.,Certer,A.J.らによる“Pathology of acute and chronic coronary stenting in humans”,Circulation,1999,99,44−52を参照のこと)。抗増殖能を有する化合物は、その化合物が適切な手段によって送達される場合、臨床的且つ血管造影的再狭窄のリスク低減に効果を有し得る(例えば、Stone,G.W.,Ellis,S.G.,Cox,D.A.らによる“A polymer−based,paclitaxel−eluting stent in patients with
coronary artery disease”,New Engl.J.Med.,2004,350,221−231を参照のこと)。したがって、ジベンジルトリスルフィド及び式1〜5を有する化合物はまた、新生内膜過形成を伴う細胞増殖を抑制し、それにより、新生内膜過形成及び再狭窄の発生を低減させるのに有用であり得る。
【0106】
式1〜5を有する化合物をそれらのターゲット、例えば、細胞に効果的に送達するために様々な方法を使用することができる。例えば、ジベンジルトリスルフィド又は式1〜5を有する別の化合物を含む組成物は、経口的に、非経口的に、又は移植されたリザーバーにより投与することができる。その他の実施例においては、参照により本明細書中に援用される以下の文献に記載される方法を使用することもできる:Stone,G.W.,Ellis,S.G.,Cox,D.A.らによる“A polymer−based,paclitaxel−eluting stent in patients with
coronary artery disease”,New Engl.J.Med.2004,350,221−231;Morice,M.−C.,Serruys,P.W.,Sousa,J.E.らによる“A randomized comparison of a sirolimus−eluting stent with a standard stent for coronary revascularization”,New Engl.J.Med.2002,346,1773−1780;Moses,J.W.,Leon,M.B.,Popma,J.J.らによる“Sirolimus−eluting stents versus standard stents in patients with stenosis in a native coronary artery”,New Engl.J.Med.2003,349,1315−1323。
【0107】
ジベンジルトリスルフィド及び上記の置換有機硫黄アナログにおける前記抗癌効果は、標準的なエンドポイントアッセイ様式(以下の詳細な説明を参照のこと)、又は抗癌剤に曝した後の動的な細胞応答情報を提供するリアルタイム電子的細胞センシング(RT−CES)システムによって癌細胞株パネルを用いて、インビトロで予備的にスクリーニングされ得る。抗癌剤発見及び検証のために、いくつかのエンドポイント細胞ベースのスクリーニングアッセイ様式を使用することができる。例えば、国立癌研究所(NCI)は60の癌細胞株パネルを用いたエンドポイント細胞傷害性アッセイ系を提供しており、これは抗癌剤の大規模な細胞をべースとするスクリーニングに用いられ得る(例えば、Monks、Aら、J Natl.Cancer Inst.1991、83、757−766;Alley、M.C.ら、Cancer Res.1988、48、589−601;Shoemaker、R.H.ら、Proc.Clin.Biol.Res.1988、276、265−286;及びStinsonら、Proc.Am.Asso.Cancer Res.1989、30、613を参照のこと)。
【0108】
このスクリーニング方法において、所望の細胞濃度へと稀釈された細胞懸濁液を、各ウェルが1000個台(例えば、5000個)から10000個台(例えば、40,000個)の間の数の細胞を含む約100マイクロリットルの溶液を有するように96ウェルマイクロタイタープレートのウェル中に加える。個々のウェルに添加される細胞の数は、細胞のタイプ、細胞の大きさ、細胞の生育特性に依存する。プレート中の細胞を、標準的な細胞培養インキュベーター中で、37℃、飽和湿度及び5%のCO2雰囲気下で約24時間インキュベートする。対象化合物を連続的な希釈濃度で試験溶液へと調製する。1例において、連続希釈溶液における稀釈係数は10倍(又は2、3、4倍)であり、最高濃度から最低濃度まで10,000倍の比率を有する5(又は6〜10)種類の異なる濃度である。その他の稀釈係数及びその他の各種濃度も使用される。通常、試験化合物の最高濃度は10−4Mである。ウェルへの最初の細胞播種から24時間後に、約100マイクロリットルの試験溶液を各ウェル中に添加する。各化合物濃度の試験溶液を、2連で行う目的で、少なくとも2つのウェルに添加する。試験化合物はDMSOなどの有機溶媒に溶解し得、100マイクロリットルの試験溶液を、有機溶媒をべースとした溶液又は懸濁液と混合した水性溶液としてもよい。
【0109】
化合物の添加後、次いで細胞を、さらに48時間、37℃、5%のCO2雰囲気及び飽和湿度下で化合物と共にインキュベートする。この細胞を次いで、例えば、スルホローダミンBアッセイ(Rubinstein,L.V.ら,J.Natl.Cancer Inst.1990,82,1113−1118;及びSkehan,P.ら,J.Natl.Cancer Inst.1990,82,1107−1112に記載するように)等の各種のアッセイにより、その生存細胞数をアッセイする。次いで吸光度を読むためにプレートリーダーを用い、また50%の生育阻害が起こる薬物濃度であるIC50の値(又は開始時に計数される細胞に対する補正を重視したGI50値)を投与量応答曲線に基づいて導き出す。従って、GI50値は試験化合物の生育阻害強度を測定するために用いられる。Boydら,Cytotoxic Anticancer Drugs:Models and Concepts for Drug Discovery and Development;Vleriote,F.A.,Corbett T.H.,Baker L.H.(編);Kluwer Academic:Hingham,Mass.,1992,pp11−34中の記載を参照されたい。
【0110】
その他のアッセイ様式においては、エンドポイントアッセイ法を用いて、試験化合物の細胞傷害性及び/又はある種の癌細胞タイプにおける細胞増殖抑制効果についてアッセイする。NCI癌細胞パネルにおける細胞を使用してもよい。一定の長さの時間(例えば、8時間又は24時間)のプレインキュベーション後に、細胞を連続的に稀釈した濃度(例えば、5つの10倍稀釈系列)の試験化合物と、24時間及び/又は48時間、あるいは及び/又はその他の特定の長さの時間インキュベートする。次いで、試験化合物の投与量依存的な細胞傷害性及び/又は細胞増殖抑制効果を、例えばBoyd(Principle of Practice of Oncology,Devita,J.T.,Hellman,S.及びRosenberg S.A.(編),1989,Vol,3,PPO Update,No.10中)により先に記載されたような、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)アッセイ法を用いて試験し評価することができる。
【0111】
その他のin vitroアッセイが、細胞周期進行の停止における化合物の効果を評価するために使用され得る。より具体的には、ある種の細胞株の細胞に対し試験化合物を濃度依存的な方法で添加する。細胞を一定の特定時間インキュベートした後に、細胞をヨウ化プロピジウムにより染色し、フローサイトメトリー試験のために使用した。G0前/G1、G0/G1、S及びG2/M期における細胞集団を調べる。全ての上記in vitroアッセイは、細胞をベースとした、単回時刻ポイント(又は複数のプレートを用いた複数時刻ポイント)のエンドポイントアッセイである。
【0112】
試験化合物はまた、細胞−基質又は細胞−電極インピーダンスの電子的測定に基づく新規なin vitroの細胞ベースのスクリーニングアッセイ系を用いてスクリーニングしてもよい。全てのエンドポイントアッセイ系とは対照的に、この細胞ベースのスクリーニングアッセイ系は、抗癌剤に対する癌細胞の動的な応答を、細胞を標識することなくリアルタイムでモニタリングすることを可能にする。このシステムはまた、大規模な、in
vitroでの細胞をベースとした抗癌剤のハイスループットスクリーニングに使用することができる。このアプローチはマイクロエレクトロニクスと組み合わせた分子生物学及び細胞生物学の融合を特徴とし、生物学的アッセイプロセスの電子的な検出に基づいている。
【0113】
この細胞の電子的な検知技術の詳細は、リアルタイム細胞電子センシング(RT−CESTM)と称され、関連する装置、システム及び使用方法は2002年7月20日に提出された米国特許仮出願第60/397,749号、;2002年12月20日に提出された米国特許仮出願第60/435,400号;2003年5月9日に提出された米国特許仮出願第60/469,572号、2003年7月18に提出された国際出願PCT/US03/22557号;2003年7月18日に提出された国際出願PCT/US03/22537号;2004年11月12日に提出された国際出願PCT/US04/37696号;2005年2月9日に提出された国際出願PCT/US05/04481号;2003年11月10日に提出された米国特許出願第10/705,447号;2003年11月10日に提出された米国特許出願第10/705,615号;2004年11月12日に提出された米国特許出願第10/987,732号;2005年2月9日に提出された米国特許出願第11/055,639号に記載されており、それらの各々は、参考として援用される。さらなるRT−CES技術の詳細はさらに、2003年11月12日に提出された米国特許仮出願第60/519,567号、及び2004年2月9日に提出された米国特許仮出願第60/542,927号、2004年2月27日に提出された米国特許仮出願第60/548,713号、2004年8月4日に提出された米国特許仮出願第60/598,608号;2004年8月4日に提出された米国特許仮出願第60/598,609号;2004年9月27日に提出された米国特許仮出願第60/613,749号;2004年9月27日に提出された米国特許仮出願第60/613,872号;2004年9月29日に提出された米国特許仮出願第60/614,601号;2004年11月22日に提出された米国特許仮出願第60/630,071号;2004年11月22日に提出された米国特許仮出願第60/630,131号において開示され、それらの各々は、本明細書中で参考として援用される。
【0114】
RT−CES技術を用いた細胞−基質又は細胞−電極インピーダンスの測定のために、適切な形状を備えた微小電極が、マイクロタイタープレート又は類似の装置の底表面上に、ウェルに向かう方向で備えられる。細胞はこの装置のウェルへと導入され、電極表面と接近し、また接触する。細胞の存在、非存在又は特性の変化は電極センサー表面上の電子及びイオンの通過に影響を及ぼす。電極間又は電極の中におけるインピーダンスの測定は、センサー上に存在する細胞の生物学的状態についての重要な情報を提供する。細胞アナログの生物学的状態に変化がある場合、電子的な読み出しシグナルは自動的に且つリアルタイムで測定され、処理及び解析のためにデジタルシグナルに変換される。RT−CESシステムにおいて、細胞指数は、測定される電極インピーダンス値に基づいて自動的に導き出され提供される。所定のウェルについて得られた細胞指数は:1)このウェル中で何個の細胞が電極表面に付着しているか;2)このウェル中で細胞がどの程度良好に電極表面に付着しているか、を反映する。すなわち、類似の生理学的条件において同タイプの細胞がより多く電極表面に付着するほど、細胞指数はより大きくなる。そして、電極表面へと細胞がより良く付着するほど(例えば、細胞がより大きな接触面積を有するように広がる、又は細胞が電極表面に、より強固に付着する)、細胞指数はより大きくなる。
【0115】
RT−CESシステムの使用を通じ、ジベンジルトリスルフィドが多様な癌のタイプの増殖を阻害することが示されている。ジベンジルトリスルフィドは従来、標準的なエンドポイントアッセイを用いては見出されていなかった。ジベンジルトリスルフィドは抗増殖活性を有さないというネガティブな結論が先の研究者によってなされていた(“Discovery of novel inducers of cellular differentiation using HL−60 promyelocytic cells”、Mata−Greenwood、E.、Ito、A.、Westernburg、H.、Cui、B.、Mehta、R.G.,Kinghorn、A.D.及びPezzuto、J.M.Anticancer Res.2001、21、1763−1770)。
【0116】
ジベンジルトリスルフィドの抗癌効果を評価し、可能性ある抗癌作用のメカニズムを予測するために、12種の癌細胞株のパネルを利用し、ジベンジルトリスルフィドを既知の作用メカニズムと並べて、10種の抗癌化合物を試験した。(ある種の濃度における)ジベンジルトリスルフィドの時間依存的な、細胞応答性のパターンは、パクリタキセル、ビンブラスチン及びコルセミド(ある特定の濃度における)のものといくぶん類似していた。従って、ジベンジルトリスルフィドはパクリタキセル、ビンブラスチン及びコルセミドに類似する抗癌作用メカニズムを有し得る。ジベンジルトリスルフィドはパクリタキセル、ビンブラスチン及びコルセミドとは異なるその他の作用メカニズムを通じて癌細胞に作用し得る。ジベンジルトリスルフィドが、パクリオタキセル、ビンブラスチン及びコルセミドに類似するメカニズムを含む複数の作用メカニズムを通じて癌細胞に作用する可能性もある。
【0117】
さらに、in vitro細胞モデル及びアッセイ様式に対し、化合物の抗腫瘍活性がさらに調べられ、移植された癌を伴うin vivo動物モデルによって評価され得る。ほとんどのin vivoモデルはマウスモデルである。
【0118】
(リアルタイム細胞電子センシング(RT−CES)システムを使用したin vitroの細胞に基づくスクリーニング)
RT−CESシステムは電子的センサー分析装置、デバイスステーション及び16又は96ウェルのマイクロタイタープレートデバイスの3つの要素を含む。微小電極センサーアレイがスライドガラス上にリソグラフ微細加工法を用いて加工され、電極を含むスライドは電極を含むウェルを形成するためにプラスチック製のトレイへと組み立てられる。RT−CESシステムに使用する16ウェル(又は96ウェル)の各マイクロタイタープレートデバイスは、16(又は96)ウェルまでのこのような電極を含むウェルを含む。デバイスステーションは16又は96ウェルのマイクロタイタープレートデバイスを受け入れ、インピーダンス測定のためウェルの任意のひとつをセンサー分析装置へと電子的に切り替えることができる。操作において、ウェル中で培養された細胞を伴うデバイスは、インキュベーター内部に配置されたデバイスステーションへと配置される。電気的ケーブルがこのデバイスステーションをセンサー分析装置へと連結する。RT−CESソフトウェアの制御下で、センサー分析装置は測定されるウェルを自動的に選択し得、連続的にインピーダンス測定を実施し得る。分析装置から得られたインピーダンスデータはコンピューターへと送られ、統合ソフトウェアにより解析され処理される。
【0119】
個々のウェル中の電極間で測定されるインピーダンスは、電極の形状、ウェル中のイオン濃度、及び電極に付着している細胞があるかどうかに依存する。細胞が存在しない場合、電極インピーダンスは主として、電極/溶液インターフェースにおいて、及びバルク溶液中での両方のイオン環境により決定される。細胞が存在する場合、電極センサー表面に付着した細胞は電極/溶液インターフェースにおける局部的なイオン環境を変化させ、インピーダンスの増加を導くであろう。電極上に存在する細胞が増えるほど、細胞−電極インピーダンスは増加する。さらに、インピーダンスの変化は、細胞の形態及び電極に付着した細胞の面積にも依存する。
【0120】
測定された細胞−電極インピーダンスに基づく細胞の状態を評価するために、細胞指数と称するパラメーターが以下の式
【0121】
【化31】
に従い導き出される。式中、Rb(f)及びRcell(f)はそれぞれ、細胞が存在しない場合又は細胞が存在する場合の周波数依存性電極抵抗(インピーダンスの一要素)である。Nはインピーダンスが測定される頻度の点の数である。従って細胞指数は、電極を含むウェル中の細胞における状態の定量的測定である。同一の生理学的条件下で電極に付着した細胞数がより多いことは、より大きいRcell(f)値を導き、細胞指数についてのより大きな値を導く。さらに、ウェル中に存在する同数の細胞については、形態のような細胞の状態における変化が細胞指数における変化を導く。例えば、細胞吸着又は細胞拡長における増加は、より大きい細胞−電極接触面積を導き、Rcell(f)の増大を導き、従って、細胞指数について、より大きな値を導く。細胞指数はまた、本明細書中に記載のものと異なる式を用いて計算することもできる。インピーダンス測定に基づいて細胞指数を計算するその他の方法は、2004年11月12日に提出された国際出願PCT/US04/37696号、2005年2月9日に提出された国際出願PCT/US05/04481号、2004年11月12日に提出された米国特許出願第10/987,732号、及び2005年2月9日に提出された米国特許出願第11/055,639号中に見出すことができる。
【0122】
NCI−H460(非小細胞肺癌細胞)、MV522SW(非小細胞肺癌細胞)、MCF7(乳癌細胞)、A549(非小細胞肺癌細胞)、PC3(前立腺癌細胞)、A431(類表皮癌細胞)、HT1080(線維肉腫細胞)、MDA.MB2321(乳癌細胞)、HT29(結腸癌細胞)、HCC2998(結腸癌細胞)、OVCAR4(卵巣癌細胞)、A2780(卵巣癌細胞)及びHepG2(ヒト肝臓肉腫)を含む、異なるタイプのヒト癌細胞を、異なる数(ウェルあたり4000〜20,000個)で16又は96ウェルマイクロタイタープレートデバイス中に播種し、RT−CESTMシステムによりモニタリングした。細胞を、DMSO溶液中に溶解したジベンジルトリスルフィド(最終DMSO濃度:0.2%;最終ジベンジルトリスルフィド濃度:1.5625μM〜100μM)を添加する前に、約24時間生育させた。細胞−電極インピーダンスを連続的に測定し、相当する時間依存的な細胞指数を導き出して記録した。
【0123】
図1〜5、6A、及び7〜12は、ジベンジルトリスルフィドを各種濃度で添加する前及び後の、多数の細胞株についての時間依存性の細胞指数を示す。図に示すように、ジベンジルトリスルフィドは多数の癌細胞株における増殖に阻害的影響を呈した。ジベンジルトリスルフィドに対する感受性は癌細胞のタイプにより異なる。いくつかの癌細胞タイプについては、低投与量のジベンジルトリスルフィドで顕著に癌細胞増殖を阻害するために十分であり、他方その他の癌細胞タイプにおいては、類似の阻害の程度を達成するためには、より高投与量が必要とされる。
【0124】
一例において、図1B及び1Cは、各種濃度のコルセミド及びパクリタキセルの添加前及び添加後のH460(非小細胞肺癌細胞株)細胞に関する時間依存性の細胞指数を示す。図1B及び1Cに示すように、コルセミド及びパクリタキセルは、試験された濃度におけるA431細胞の増殖に対して阻害能力を呈した。さらに、これらの図は、化合物(コルセミド又はパクリタキセル)添加後、H460細胞に関する細胞指数がまず時間と共に減少し、次いで増加して、H460細胞がコルセミド及びパクリタキセルのいずれかに対し複雑な動的応答を有することを示す。図1Aに示す、25μM以上のジベンジルトリスルフィド(DBTS)濃度の影響下でのH460細胞に関する細胞指数曲線が図1B及び1Cにおける曲線にいくぶん類似していることは特筆すべきであり、すなわち、DBTS(25μM以上)の添加後に、H460細胞に関する細胞指数がまず時間と共に減少し、次いで増加する。
【0125】
その他の例において、図6Bは、各濃度の5−フルオロウラシルの添加前及び添加後のA431(類表皮癌細胞株)細胞に関する時間依存性の細胞指数を示す。図6Bに示すように、5−フルオロウラシルは12.5μM以上の濃度においてA431細胞の増殖に対して阻害能力を呈した。図6Bに示す時間依存的な細胞指数曲線は、図6Aにおけるものと顕著に異なっている。
【0126】
その他の例において、図13はジベンジルトリスルフィドの影響下におけるHepaG−2細胞株の細胞指数データを示す。図13に示すように、ジベンジルトリスルフィドはHepaG−2細胞において抗増殖能力を示さなかった。
【0127】
(抗癌活性に関するin vivoスクリーニング)
DBTS及びACEA100108(DBTSの誘導体、表33参照)を含む試験化合物のin vivo抗癌効果を評価するため、マウス肉腫S180モデル、マウスルイス肺癌モデル、P388リンパ性白血病モデル、及び免疫欠損ヌードマウスにおける3種のヒト腫瘍異種移植片モデル(Bcap−37ヒト乳癌、HCT−8ヒト結腸癌、ao12/17ヒト卵巣癌)を含む各種マウスモデルを使用した。試験化合物のin vivo抗癌効果における詳細を以下に示す。
【0128】
(DBTS及び化合物ACEA100108の急性毒性試験)
DBTS及びACEA100108(DBTSの誘導体、表33参照)の、in vivoにおける急性の、静脈内毒性を評価するために、DBTS又はACEA100108の静脈内注入(i.v.)による単回投与に対するマウスの急性応答をモニタリングすることにより、腫瘍を有さない、正常なKunmingマウスにおける試験を実施した。処置したマウスに関する死亡数をモニタリングし記録した。これらの化合物に対するLD50値を計算した。研究の詳細を以下に示す。
【0129】
以下の実施例は例示のために提供されるものであり、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0130】
(実施例1)
(マウス肉腫S180及びマウスルイス肺癌に対するDBTSの抗癌活性)
試験化合物のin vivoの抗癌効果を評価するため、in vivo評価に関し2つのマウス移植腫瘍モデル:マウス肉腫S180モデル及びマウスルイス肺癌モデルを使用した。試験用のマウスはShanghai Pharmaceutical Industry Instituteの薬理学研究室において維持した。マウスの供給源及び種類は以下のようである。Academic Sinica、Experimental Animal Centerから供給されたマウスC57BL/6及びKunming株、認定番号:Academic Sinica Experimental Animal Certificate、No.5。マウスの体重は18〜20gであった。オス及びメスの両方のマウスを使用した。しかし、試験毎に同性の動物を使用した。試験された動物の数は以下である:試験化合物群に関し、高投与量群について10匹、中投与量群について10匹、及び低投与量群について10匹を含む30匹のマウス;陽性化合物群について10匹のマウス;陰性対照群について、生理食塩水群について10匹及び溶媒のみの群について10匹を含む20匹のマウス。DBTSの高、中及び低投与量はそれぞれ、50、25及び12.5mg/kg/日であった。
【0131】
試験対照 陰性対照として、2つの群:溶媒のみの対照群と生理食塩水対照群を設定した。溶媒のみの対照群において、各マウスには、高投与量DBTS試験で使用された溶媒と、同量かつ同濃度(肉腫S180モデルについて10%及びルイス肺癌モデルについて5%)の溶媒のみを、連続した7又は10日間にわたり、1日1回静脈内投与した。生理食塩水群においては、各マウスは0.5mlの生理食塩水を1日1回、7又は10日間連続投与された。陽性対照群については、抗癌化合物のシクロホスファミド(CTX)が、30mg/kg、1日1回、7又は10日間連続で腹腔内投与された。
【0132】
試験化合物の調製及び投与 抗腫瘍効果癌モデルを評価するために、試験化合物溶液を次のように調製した。マウス肉腫S180マウスモデルにおいて、200mgのDBTSを10mLのヒマシ油(ポリオキシエチル化されたもの)中にまず溶解し、次いで90mLの生理食塩水と混合した。最終的な溶液中のDBTS濃度は0.2%であり、最終的な溶媒濃度は10%であった。各マウスにそれぞれ0.5mL(高投与量)、0.3mL(中投与量)及び0.15mL(低投与量)の化合物溶液を静脈内投与した。
【0133】
マウスルイス肺癌モデルにおいて、200mgのDBTSを5mLのヒマシ油(ポリオキシエチル化されたもの)中に溶解した。毎回使用前に、この溶液を生理食塩水で希釈して、最終DBTS濃度をそれぞれ0.2%(高投与量)、0.1%(中投与量)及び0.05%(低投与量)にした。この場合、各マウス(体重約20g)に、所定の化合物濃度を有する0.5mLの化合物溶液を静脈内投与した。静脈注入の速度は約0.5mL/0.5分であった。
【0134】
試験化合物の投与量は、薬理学における当業者によく知られた知識の範囲内である。例えば、試験化合物は、ある試験化合物溶液を1日2回、7日間連続で静脈注入することにより投与してもよい。別の方法においては、試験化合物を、ある試験化合物を1日1回、10日間連続で静脈注入することにより投与してもよい。
【0135】
移植用腫瘍細胞の調製及び化合物の効果測定 腫瘍細胞を調製するために、迅速に成長した腫瘍をまず移植腫瘍マウス(肉腫S180モデル又はルイス肺癌モデル)から除去し、この腫瘍組織を切開し、切開された組織から腫瘍細胞濃度が2〜4×107個/mlである腫瘍細胞懸濁液を調製した。次いで、0.2mLの腫瘍細胞懸濁液(400〜800万個の腫瘍細胞)を皮下注入により試験用マウスに戻して移植した。移植24時間後、マウスに所定の投与量のDBTS、生理食塩水、又は陰性対照として供される溶媒のみを静脈内投与し、あるいは陽性対照として供される50mg/kgのCTXを腹腔内投与した。移植2週間後、マウスを屠殺し、移植された腫瘍を試験マウスから除去した。除去された各固形腫瘍の重量を測定し、DBTS処置群とCTX処置群における腫瘍阻害率を以下の式:
腫瘍阻害率%=(陰性対照群における腫瘍重量の平均−化合物処置群における腫瘍重量の平均)/陰性対照群における腫瘍重量の平均 × 100(2)
に従って計算した。
【0136】
マウス肉腫S180モデルについては、S180細胞をマウス1匹あたり約500万個の細胞数で皮下移植した。移植24時間後、試験群の各マウスにジベンジルトリスルフィドを、それぞれ1日あたり50、25又は12.5mg/kg、連続した7又は10日間、静脈内投与した。陽性対照群としては、各マウスにシクロホスファミド(サイトキサン、CTX)を1日あたり50mg/kg、7日間連続して腹腔内投与した。陰性対照群としては、各マウスに、生理食塩水又は試験群における1日あたりのジベンジルトリスルフィドに対する濃度と同濃度の溶媒のみのいずれかを、7日間連続して、静脈内投与した。各群について10匹のマウスを使用した。
【0137】
マウスルイス肺癌モデルに関して、ルイス肺癌細胞をマウス1匹あたり約500万個の細胞数で皮下移植した。移植24時間後、試験群における各マウスにジベンジルトリスルフィドを、1日あたり50、25又は12.5mg/kg、10日間連続して静脈内投与した。陽性対照としては、各マウスにCTXを1日あたり50mg/kg、10日間連続して腹腔内投与した。陰性対照としては、各マウスに、生理食塩水又は試験群における1日あたりのジベンジルトリスルフィドに対する濃度と同濃度の溶媒のみを、10日間連続して、静脈内投与した。各群について10匹のマウスを使用した。
【0138】
結果 マウス肉腫S180モデルにおいてDBTSは、50、25及び12.5mg/kgの投与量群についてそれぞれ63.30%、54.68%及び48.69%の平均腫瘍阻害率を示した(生理食塩水対照に対して)。詳細な結果を、マウス肉腫S180モデルにおける0.2%DBTSのin vivo効果実験を表す表9及び図14に示す。図14において、7つの列(それぞれ1−7)は以下の投与化合物(iv×7qd):1)陰性対照;2)生理食塩水対照;3)DBTS(25ml/kg);4)DBTS(15ml/kg);5)DBTS(7.5ml/kg);6)溶媒対照(15ml/kg)及び7)陽性対照 CTX(30mg/kg)から得られた結果を表す。
【0139】
DBTSの静脈内注入の直後、マウスが、跳躍、頻呼吸、及び横たわって活動が低下するということを含む一時的な異常な反応を呈することが観察された。このような反応は通常10〜15分間持続する。同様な異常な反応はまた、溶媒のみを静脈内注入されたマウスにおいてもみられた。従って、注入速度と、DBTSではなく高濃度の溶媒は、マウスにおいて一時的な異常な反応をもたらし得る。
【0140】
ルイス肺癌モデルにおいて、DBTSは、50、25及び12.5mg/kgの投与量群についてそれぞれ67.05%、51.34%及び45.21%の平均腫瘍阻害率を示した(生理食塩水対照に対して)。詳細な結果を、マウスルイス肺癌モデルにおける0.2%DBTSの効果研究を表す表10及び図15にまとめる。図15において、7つの列(それぞれ1〜7)は以下の投与化合物:1)陰性対照;2)生理食塩水対照;3)DBTS(25ml/kg);4)DBTS(15ml/kg);5)DBTS(7.5ml/kg);6)溶媒対照(15ml/kg)及び7)陽性対照 CTX(30mg/kg)から得られた結果を表す。DBTS及び溶媒対照はiv×10qdにて投与し;陽性対照はip×7qdにて投与した。マウス肉腫S180の実験に用いられたマウスとは対照的に、この実験でDBTS又は溶媒のいずれかを静脈内注入されたマウスは、より軽微な一時的な異常反応を示した。
【0141】
陰性対照として溶媒のみを使用することにより、肉腫S180に対するDBTSのin
vivoの腫瘍阻害率の平均値は、表11に示すように、50、25及び12.5mg/kgの投与量群についてそれぞれ50.25%、38.58%及び30.46%であった。ルイス肺癌モデルに対しては、DBTSのin vivoの腫瘍阻害率の平均値は、表12に示すように、50、25及び12.5mg/kgの投与量群についてそれぞれ62.28%、44.30%及び37.38%であった。
【0142】
2つのマウス移植腫瘍モデルから得られた結果は、DBTSを静脈内投与されたマウスにおける、移植腫瘍の増殖の特異的阻害を示す。高投与量のDBTS(50mg/kg/日、7又は10日間連続)を静脈内投与された場合、生理食塩水を陰性対照として用いることにより、いずれのマウス移植腫瘍モデルにおいても65%の腫瘍阻害率が達成された。DBTS溶液の調製に使用した溶媒は、マウス移植腫瘍モデル中での腫瘍の増殖に弱い阻害効果を示し、また静脈内注入後にマウスにおける一時的な異常反応をも引き起こし得る。
【0143】
【表9】
【0144】
【表10】
【0145】
【表11】
【0146】
【表12】
(実施例2)
(マウスルイス肺癌に対するDBTSの抗癌活性)
本研究は、実施例1のようなマウスルイス肺癌モデルにおけるジベンジルトリスルフィド(DBTS)のインビボ抗癌効力を評価する。その実験用マウスを、Shanghai
Pharmaceutical Industry Instituteの薬理学研究室において維持した。実験用マウスは、Academic Sinica、Experimental Animal Centerから提供されたマウスC57BL/6系統(認定番号:SCXK(Shanghai)2003−0003)であった。マウスの体重は、18g〜20gであった。メスのマウスのみを使用した。試験した動物の数は以下の通りであった:各投与量群に対し10匹、陽性対照群について10匹、および陰性対照群について20匹(生理的対照群について10匹および溶媒対照群について10匹)。
【0147】
(試験対照) 陰性対照として、2つの群(溶媒のみの対照群および正常生理食塩水対照群)を設定した。溶媒のみの対照群において、各マウスに、高投与量DBTS試験で使用したものと同量かつ同濃度を有する溶媒(正常生理食塩水中、5%溶媒)のみを、連続7日間または10日間にわたり、1日1回静脈内投与した。正常生理食塩水群においては、各マウスに、0.5mlの正常生理食塩水を1日1回、10日間連続投与した。陽性対照群については、抗癌化合物のシクロホスファミド(サイトキサン、CTX、腹腔内使用用)を、30mg/kgで、1日1回、7日間連続で腹腔内投与した。さらに、参照群として、抗癌化合物のタキソールを、15mg/kg、10mg/kgおよび7.5mg/kgにて、1日1回、5日間連続で静脈内投与した。
【0148】
(試験化合物の調製および投与) 400mgのDBTSを、10mLのヒマシ油(溶媒)中に溶解し、この溶媒中で40mg/mlのDBTS濃度を有するようにした。使用前に毎回、この溶液を正常生理食塩水で希釈して、所望のDBTS濃度である、0.2%(高投与量)、0.1%(中投与量)および0.05%(低投与量)をそれぞれ達成した。各マウスに、この化合物溶液0.5mLを、0.5ml/0.5分という制御された注入速度で静脈内投与した。腫瘍移植の24時間後に、化合物のキャリアマウスへの静脈内注入を1日1回、7日間または10日間連続して実行した。
【0149】
(移植用腫瘍細胞の調製および化合物の効力測定) 腫瘍細胞を調製するために、迅速に増殖する腫瘍を、まず移植腫瘍マウスから除去し、この腫瘍組織を切開し、濃度2×107/ml〜4×107/mlを有する腫瘍細胞懸濁液を、正常生理食塩水中で調製した。0.2mLの細胞懸濁液を皮下注入により各マウスの腋窩部に注入した。移植の24時間後、マウスに所定の投与量のDBTS、生理食塩水、または陰性対照として役立つ溶媒のみを静脈内投与するか、あるいは陽性対照として役立つ30mg/kgのCTXを腹腔内投与した。移植の約2週間後に、マウスを屠殺し、移植された腫瘍を実験マウスから取り出した。取り出した各固形腫瘍の重量を測定し、各投与量群における腫瘍阻害率を、実施例1(マウス肉腫S180およびマウスルイス肺癌に対するDBTSの抗癌活性)中の式(2)に従って計算した。
【0150】
マウスルイス肺癌モデルに関して、ルイス肺癌細胞を、マウス1匹あたり約600万個の細胞数で皮下移植した。移植24時間後、試験群における各マウスに、ジベンジルトリスルフィドを1日あたり50mg/kg、25mg/kgまたは12.5mg/kgにて、連続10日間静脈内投与した。陽性対照としては、各マウスに、CTXを1日あたり30mg/kg、連続7日間腹腔内投与した。陰性対照としては、各マウスに、正常生理食塩水か、または試験群における1日あたりの濃度と同濃度のジベンジルトリスルフィド用溶媒を、連続10日間または連続7日間にわたり静脈内投与した。各群について、10匹のマウスを使用した。タキソール参照群については、試験群における各マウスに、15mg/kg、10mg/kgおよび7.5mg/kgにて、1日1回、5日間連続してタキソールを静脈内投与した。
【0151】
(結果) ルイス肺癌モデルにおいて、DBTSは、50mg/kg、25mg/kgおよび12.5mg/kgの投与量群について、(正常生理食塩水対照に対して)それぞれ65.77%、51.61%および43.10%の平均腫瘍阻害率を示した。詳細な結果を表13に示す。陰性対照として溶媒のみを使用することにより、相当する腫瘍阻害率は、それぞれ61.02%、46.94%および35.10%である(表14)。DBTSの静脈内注入直後、マウスが、一時的な異常な反応(跳躍、速い呼吸、および横たわって活動が低下することを含む)を呈することが観察された。このような反応は、代表的には10分間〜15分間持続した。同じ異常な反応が、溶媒のみを静脈内注入したマウスにおいても観察された。
【0152】
参照試験において、タキソールは、15mg/kg、10mg/kgおよび7.5mg/kgの投与量群についてそれぞれ(正常生理食塩水対照に対して)48.94%、36.97%および30.28%の平均腫瘍阻害率を示した。詳細な結果を表15に示す。
【0153】
マウスルイス肺癌モデルにおいて得られた結果は、DBTSを静脈内投与されたマウスにおける、移植腫瘍の増殖の特異的阻害を示す。高投与量のDBTS(50mg/kg/日、連続10日間)を静脈内投与された時、正常生理食塩水を陰性対照として用いることにより、上記マウス移植腫瘍モデルにおいて65%の腫瘍阻害率が達成された。このようなデータは、再現性を有することが示されている。DBTS溶液の調製に使用した溶媒は、マウス移植腫瘍モデル中での腫瘍増殖に対して弱い阻害効果を示した。この溶媒はまた、静脈内注入後にマウスにおける一時的な異常反応をも引き起こし得る。
【0154】
【表13】
【0155】
【表14】
【0156】
【表15】
(実施例3)
(マウスにおけるルイス肺癌およびP388リンパ性白血病、ならびにヌードマウスにおけるBcap−37ヒト乳癌およびHCT−8ヒト結腸癌に対する、ACEA100108のインビボ抗癌活性)
化合物ACEA100108(DBTS誘導体、表33参照)のインビボ抗癌効力を評価するため、移植された癌を有するマウスモデル(ルイス肺癌モデルおよびP388リンパ性白血病モデル、ならびに免疫不全ヌードマウスにおける2つのヒト腫瘍異種移植片モデル(Bcap−37ヒト乳癌およびHCT−8ヒト結腸癌)が挙げられる)を使用した。すべてのマウスモデルは、Shanghai Pharmaceutical Industry Instituteの薬理学研究室において維持した。ヒト腫瘍異種移植片モデルについては、本研究のためにヌードマウスへと移植する前に、癌細胞を2度、インビボで継代した。フラスコ中の培養ヒト癌細胞を、まず、免疫不全ヌードマウスへと異種移植片移植した。癌細胞がヌードマウス中で一定の大きさの腫瘍にまで増殖した後に、その腫瘍をヌードマウスから取り出し、腫瘍組織を切開した。この切開した腫瘍組織から細胞懸濁液を調製し、免疫不全ヌードマウスへと再び移植し戻した(すなわち、ヒト癌異種移植片移植モデルにおける癌細胞の2度目の継代)。この癌細胞が一定の大きさに増殖した後に、腫瘍をヌードマウスから取り出し、この腫瘍組織を切開した。切開した組織から細胞懸濁液を調製し、本明細書中に記載のヒト癌異種移植片モデルの研究のために使用した。
【0157】
実験用のマウスは、Academic Sinica、Experimental Animal Centerから提供されたマウスC57BL/6ヌードマウス系統、DBF1ヌードマウス系統およびBALB/cヌードマウス系統、認定番号:SCXK(Shanghai)2003−0003であった。マウスの体重は、18g〜22gであった。オスおよびメスのマウスを使用した。しかし、実験毎に同性の動物を使用した。マウス移植腫瘍モデルについて、試験した動物の数は以下の通りであった:各投与量群に対し10匹、陽性対照群について10匹、および陰性対照群について20匹。ヒト腫瘍異種移植片モデルに関し、試験した動物の数は以下の通りであった:各投与量に対し6匹、陽性対照群について6匹、および陰性対照群について12匹。
【0158】
(試験対照) 陰性対照として、各マウスには、高投与量ACEA100108試験で使用されたものと同量かつ同濃度を有する溶媒のみを連続7日間にわたり1日1回静脈内投与した。陽性対照群については、抗癌化合物のタキソールを、10mg/kgにて、1日1回、7日間連続して静脈内投与した。参照群において、DBTSを、50mg/kgにて、1日1回、7日間連続して静脈内投与した。
【0159】
(試験化合物の調製および投与) 化合物ACEA100108を硬化ヒマシ油(溶媒)中に溶解し、この溶媒中20mg/mlの化合物ACEA100108濃度を有するようにした。使用前に毎回、この溶液を正常生理食塩水中に希釈して、所望のACEA100108濃度を達成した。各マウス(体重約20g)に、この化合物溶液0.5mLを、0.5mL/0.5分という制御された注入速度で静脈内投与した。腫瘍移植24時間後に、化合物溶液のキャリアマウスへの静脈内注入を、1日1回、連続7日間または連続10日間実行した。100mg/kg〜6.25mg/kgの範囲の種々の投与量の化合物ACEA100108を、本研究において使用した。
【0160】
(移植用腫瘍細胞の調製および化合物効力の測定) マウスルイス肺癌モデル、ヒト乳癌異種移植片モデルおよびヒト結腸癌異種移植片モデルのための腫瘍細胞を調製するために、迅速に増殖する腫瘍を、まず移植腫瘍マウスから取り出した。この腫瘍組織を切開し、濃度×107/ml2〜4×107/mlを有するように腫瘍細胞懸濁液の正常生理食塩水中に調製した。0.2mLの細胞懸濁液を、皮下注入により各マウスの腋窩部(右側)に注入した。移植24時間後、マウスに、所定の投与量のACEA100108、または陰性対照として役割を果たす溶媒のみ、または陽性対照として役立つ10mg/kgのタキソール、または参照試験として役立つ50mg/kgのDBTSを投与した。移植2〜4週間後、マウスを屠殺し、移植された腫瘍を実験マウスから取り出した。取り出した各固形腫瘍の重量を測定し、実施例1に記載の式(2)に従って、各投与量群における腫瘍阻害率を計算した。
【0161】
ヒト腫瘍異種移植片モデルについては、動物の餌、動物のケージ、動物が接触する支持材および装置を含む、すべての使用物品は高圧滅菌した。ヌードマウスは、SPF条件下で、ラミナーフロー形式の棚において維持した。腫瘍移植後に、各化合物投与量群におけるマウスの体重および腫瘍の大きさを動的にモニターし、プロットした。腫瘍の大きさは、腫瘍の長軸(a)および短軸(b)を測定することにより測定し、腫瘍の体積は、式
腫瘍体積=a×b2/2 (3)
に従って計算した。
【0162】
P388マウスリンパ性白血病モデルのための癌細胞を調製するために、滅菌条件下でP388白血病保有マウスの腹水を取り出した。この腹水を正常生理食塩水中に(腹水対正常生理食塩水が1:6で)希釈して、細胞懸濁液を調製した。0.2mLの細胞懸濁液を腹腔内に注入した。癌細胞をマウスへと移植した24時間後に、マウスに、所定の投与量のACEA100108、または陰性対照として役割を果たす溶媒のみ、あるいは陽性対照として役立つ10mg/kgのタキソールおよび陽性対照として役立つ2mg/kgのMMC(マイトマイシンC)、または参照試験として役立つ50mg/kgのDBTSを、投与した。キャリアマウスの寿命は、30日間以内に判断された。各化合物処置群におけるキャリアマウスの、陰性対照群と比較した寿命比は、式:
寿命比%=化合物処置群の平均寿命/陰性対照群の平均寿命 × 100%(4)
に従って計算した。
【0163】
(結果) ルイス肺癌モデルにおいて、ACEA100108は、100mg/kg(毒性を有するため5回のみ投与した)、25mg/kgおよび6.25mg/kgの投与量群について、(溶媒のみの対照に対して)それぞれ60.15%、55.35%および34.32%のインビボ平均腫瘍阻害率を示した。同じ試験において、DBTSは、100mg/kg(毒性を有するため5回のみ投与した)および25mg/kgの投与量群について、それぞれ63.10%および57.93%のインビボ平均腫瘍阻害率を示し、タキソールは、10mg/kgの慣用的投与量群について43.91%のインビボ平均腫瘍阻害率を示した。結果を表16にまとめる。
【0164】
マウスリンパ性白血病モデルにおいて、化合物ACEA100108で処置したマウスの寿命における平均増加は、50mg/kg、25mg/kgおよび12.5mg/kgの投与量群についてそれぞれ106.18%、107.22%および109.28%であった。同じ実験において、50mg/kgの投与量でDBTS化合物で処置したマウスについて、マウス寿命における平均増加は、109.28%であり、10mg/kgのタキソール化合物で処置したマウスの寿命における平均増加は109.28%であった。詳細を表17中に示す。
【0165】
ヌードマウスにおけるBcap−37ヒト乳癌異種移植片モデルでは、ACEA100108は、50mg/kg、25mg/kgおよび8mg/kgの投与量群についてそれぞれ64.13%、56.10%および31.40%の平均インビボ腫瘍阻害率を示した。同じ実験において、DBTSは、50mg/kgの投与量群について66.98%の平均インビボ腫瘍阻害率を示し、タキソールは、10mg/kgの慣用的投与量について48.84%の平均インビボ腫瘍阻害率を示した。表18および図16に、詳細を示す。これは、ヌードマウスに移植されたBcap−37ヒト乳癌異種移植片に対するDBTSおよびACEA100108の効力研究を表す。図16において、7つの列(それぞれ1〜7)は、以下の投与化合物:1)陰性対照;2)溶媒;3)ACEA100108(50mg/kg);4)ACEA100108(20mg/kg);5)ACEA100108(8mg/kg);6)DBTS(50mg/kg);および7)陽性対照(タキソール、10mg/kg)を表す。試験化合物および対照を、iv×7qdで投与した。腫瘍の大きさの動的な変化を表19および図17に示す。キャリアマウスの体重における動的変化を、表20および図18中にまとめる。
【0166】
ヌードマウスにおけるHCT−8ヒト結腸癌異種移植モデルでは、ACEA100108は、50mg/kg、25mg/kgおよび8mg/kgの投与量群についてそれぞれ45.62%、28.10%および15.03%の平均インビボ腫瘍阻害率を示した。同じ実験において、DBTSは、50mg/kgの投与量について46.08%の平均インビボ腫瘍阻害率を示し、タキソールは、10mg/kgの慣用的投与量について33.33%の平均インビボ腫瘍阻害率を示した。表21および図19に、詳細を示す。これらは、ヌードマウスに移植されたHCT−8ヒト結腸癌異種移植片に対するDBTSおよびACEA100108の効力研究を表す。図19において、7つの列(それぞれ1〜7)は、以下の投与化合物:1)陰性対照;2)溶媒;3)ACEA100108(50mg/kg);4)ACEA100108(20mg/kg);5)ACEA100108(8mg/kg);6)DBTS(50mg/kg);および7)陽性対照(タキソール、10mg/kg)を表す。試験化合物および対照を、静脈内注入を毎日7日間(iv×7qd)投与した。腫瘍の大きさの動的な変化を、表22および図20に示す。キャリアマウスの体重における動的変化を、表23および図21中にまとめる。
【0167】
2つのマウス腫瘍モデルおよび2つのヒト腫瘍異種移植片モデルのインビボ評価から得られた結果に基づくと、ACEA100108は、50mg/kgで静脈内注入を毎日7日間(iv×7qd)にて効果的に投与され得る。さらに、マウスルイス肺癌モデルおよびBcap−37ヒト乳癌モデルに対するACEA100108の抗癌効果はHCT−8ヒト結腸癌モデルにおける効果よりも強力である。しかし、ACEA100108は、P388マウス白血病モデルに対しては抗癌効果を呈さなかった。さらに、同一投与量かつ同一薬剤の投与手順に関して、化合物ACEA100108の上記モデルに関する抗癌効果は、DBTSのものに匹敵し、慣用的な処置の投与条件下でのタキソールの効果よりも優れている。
【0168】
【表16】
【0169】
【表17】
【0170】
【表18】
【0171】
【表19】
【0172】
【表20】
【0173】
【表21】
【0174】
【表22】
【0175】
【表23】
(実施例4)
(ヌードマウスにおけるao10/17ヒト卵巣癌に対するACEA100108のインビボ抗癌活性)
化合物ACEA100108のインビボ抗癌効力を評価するため、免疫不全ヌードマウスにおけるao10/17ヒト卵巣癌異種移植片モデルを使用した。細胞株およびマウスは、Shanghai Pharmaceutical Industry Instituteの薬理学研究室において維持した。ao10/17ヒト卵巣癌異種移植片モデルについては、本研究のためにヌードマウスへと移植する前に、癌細胞を2度、インビボで継代した。言い換えれば、フラスコ中の培養ヒト卵巣癌ao10/17細胞を、まず、免疫不全ヌードマウスへと異種移植片移植した。この癌細胞がこのヌードマウス中で一定の大きさの腫瘍へと増殖した後に、その腫瘍をヌードマウスから取り出し、腫瘍組織を切開した。切開した腫瘍組織から細胞懸濁液を調製し、免疫不全ヌードマウスへと再び移植して戻した(すなわち、ヒト癌異種移植片移植モデルにおける癌細胞の2度目の継代)。その癌細胞が一定の大きさへと増殖した後に、腫瘍をヌードマウスから取り出し、この腫瘍組織を切開した。切開した腫瘍組織から細胞懸濁液を調製し、本明細書中に記載のヒト癌異種移植片移植モデルの研究のために使用した。
【0176】
実験用のマウスは、Academic Sinica、Experimental Animal Centerから提供されたマウスC57BL/6系統、DBF1系統およびBALB/c(ヌードマウス)系統、認定番号:SCXK(Shanghai)2003−0003であった。マウスの体重は、18〜22gであった。メスのマウスのみを本研究において使用した。ヒト腫瘍異種移植モデルについて、試験された動物の数は、以下の通りであった:各投与量群に対し6匹、陽性対照群について6匹、および陰性対照(溶媒のみ)群について12匹。ACEA100108の高投与量、中投与量および低投与量は、それぞれ50mg/kg/日、25mg/kg/日および8mg/kg/日であった。
【0177】
(試験対照) 陰性対照として、各マウスは、高投与量ACEA100108試験で使用されたものと同量かつ同濃度を有する溶媒のみを、連続7日間にわたり、1日1回静脈内投与した。陽性対照群については、抗癌化合物のタキソールを、10mg/kgにて、1日1回、7日間連続で静脈内投与した。参照群においては、DBTSを、50mg/kgにて、1日1回、7日間連続で静脈内投与した。
【0178】
(試験化合物の調製および投与) 化合物ACEA100108を、硬化ヒマシ油(溶媒)中に溶解し、その溶媒中20mg/mlのACEA100108濃度を有するようにした。使用前に毎回、この溶液を正常生理食塩水で希釈して、所望のACEA100108濃度を達成した。各マウス(体重約20g)に、この化合物溶液0.5mLを、0.5mL/0.5分という制御された注入速度で静脈内投与した。腫瘍移植24時間後に、化合物溶液のキャリアマウスへの静脈内注入を、1日1回、7日間連続して実行した。ACEA100108の高投与量、中投与量および低投与量は、それぞれ50mg/kg/日、25mg/kg/日および8mg/kg/日であった。
【0179】
(移植用腫瘍細胞の調製および化合物効力の測定) ヒト卵巣癌異種移植片のための腫瘍細胞を調製するために、迅速に増殖している腫瘍を、まず、移植腫瘍マウスから取り出した。この腫瘍組織を正常生理食塩水(腫瘍体積 対 生理食塩水が1:6)中で粉砕し、腫瘍細胞懸濁液のこの正常生理食塩水中にて調製した。0.2mLの細胞懸濁液を皮下注入により各マウスの腋窩部(右側)に注入した。移植24時間後、マウスに、所定の投与量のACEA100108、または陰性対照として役割を果たす溶媒のみ、または陽性対照として役立つ10mg/kgのタキソール、または参照試験として役立つ50mg/kgのDBTSを投与した。移植2週間〜4週間後、マウスを屠殺し、移植された腫瘍を実験試験マウスから取り出した。取り出した各固形腫瘍の重量を測定し、実施例1に記載の式(2)に従って、各投与量群における腫瘍阻害率を計算した。
【0180】
ヒト卵巣癌異種移植片モデルについては、動物の餌、動物のケージ、動物が接触する支持材および装置を含む、すべての使用物品は高圧滅菌した。ヌードマウスは、SPF条件下で、ラミナーフロー形式の棚において維持した。腫瘍移植後に、各化合物投与量群におけるマウスの体重および腫瘍の大きさを動的にモニターし、プロットした。腫瘍の大きさは、腫瘍の長軸(a)および短軸(b)を測定することにより決定し、腫瘍の体積は、実施例3に記載の式(3)に従って計算した。
【0181】
(結果) ao10/17ヒト卵巣癌異種移植片において、ACEA100108は、50mg/kg、25mg/kgおよび8mg/kgの投与量群について、それぞれ53.40%、46.67%および33.19%のインビボ平均腫瘍阻害率を示した。同じ試験において、DBTSは、50mg/kgの投与量群について57.30%のインビボ平均腫瘍阻害率を示し、タキソールは、10mg/kgの投与量群について45.39%のインビボ平均腫瘍阻害率を示した。表24および図22に、詳細を示す。これらは、ヌードマウスに移植されたao10/17ヒト卵巣癌異種移植片に対するDBTSおよびACEA100108の効力研究を表す。図22において、7つの列(それぞれ1〜7)は、以下の投与化合物:1)陰性対照;2)溶媒;3)ACEA100108(50mg/kg);4)ACEA100108(20mg/kg);5)ACEA100108(8mg/kg);6)DBTS(50mg/kg);および7)陽性対照(タキソール、10mg/kg)を表す。試験化合物および対照は、1日1回7日間(7qd)において静脈内(iv)投与した。
【0182】
腫瘍の大きさの動的な変化を、表25および図23に示す。キャリアマウスの体重における動的変化を、表26および図24中にまとめる。同一投与量かつ同一薬剤の投与手順に関して、化合物ACEA100108のao10/17ヒト卵巣癌モデルにおける抗癌効果は、化合物ACEA100101のものに匹敵し、定期的な処置の投与条件下でのタキソールの効果よりも優れている。
【0183】
【表24】
【0184】
【表25】
【0185】
【表26】
(実施例5)
(ヌードマウスにおけるBcap−37ヒト乳癌におけるACEA100108の抗癌活性)
化合物ACEA100108のin vivo抗癌効果を評価するため、免疫不全ヌードマウスにおけるBcap−37ヒト乳癌異種移植片モデルを使用した。細胞株及びマウスモデルはShanghai Pharmaceutical Industry Instituteの薬理学研究室において維持した。Bcap−37ヒト乳癌異種移植片モデルについては、試験のため、ヌードマウスへと移植する前に、癌細胞を2度、in vivoで継代した。言い換えれば、フラスコ中で培養されたヒト乳癌Bcap−37細胞を、まず免疫不全ヌードマウスへと異種移植片移植した。癌細胞がこのヌードマウス中で一定の大きさの腫瘍に生長した後に、腫瘍をヌードマウスから除去し、腫瘍を切開した。切開された腫瘍組織から細胞懸濁液を調製し、免疫不全ヌードマウスへと再び戻して移植した(すなわち、ヒト癌異種移植片移植モデルにおける癌細胞の2度目の継代)。癌細胞が一定の大きさに生長した後に腫瘍をヌードマウスから除去し、この腫瘍組織を切開した。切開された腫瘍組織から細胞懸濁液を調製し、本明細書中に記載のヒト癌異種移植片移植モデルの試験に使用した。
【0186】
試験用のマウスはAcademic Sinica、Experimental Animal Centerから提供されるBALB/c(ヌードマウス)株、認定番号:SCXK(Shanghai)2003−0003であった。マウスの体重は18〜22gであった。メスのマウスのみをこの試験のために使用した。ヒト腫瘍異種移植モデルについて、試験された動物の数は以下の通りである:各投与量群に対し6匹、陽性対照群について6匹、及び陰性対照(溶媒のみ)群について12匹。ACEA100108の高投与量、中高投与量及び低投与量はそれぞれ50mg/kg/日、25mg/kg/日及び8mg/kg/日であった。
【0187】
(試験対照)
陰性対照として、各マウスは、高投与量ACEA100108試験で使用されたものと同様に、同量かつ同濃度の溶媒のみを、1日1回、7日間連続で静脈内投与した。陽性対照群については、抗癌化合物のタキソールが10mg/kg、1日1回、7日間連続で静脈内投与された。
【0188】
(試験化合物の調製及び投与)
化合物ACEA100108を硬化ヒマシ油(溶媒)中に溶解し、溶媒中20mg/mlのACEA100108濃度となるようにした。毎回使用前に、この溶液を生理食塩水で希釈して、所望のACEA100108濃度を達成した。各マウス(体重約20g)に、この化合物溶液0.5mLを、0.5mL/0.5分に制御された注入速度で静脈内投与した。腫瘍の移植7日後、移植された腫瘍は、その動物に手で触れた時に感じることができる程度に十分に大きく生長した。その時点から化合物溶液の担体マウスへの静脈内注入を1日1回、7日間又は10日間連続して実行した。ACEA100108の高投与量、中高投与量及び低投与量はそれぞれ50mg/kg/日、25mg/kg/日及び8mg/kg/日であった。
【0189】
(移植用腫瘍細胞の調製及び化合物の効果測定)
ヒト乳癌異種移植片についての腫瘍細胞を調製するために、迅速に成長している腫瘍をまず移植腫瘍マウスから除去した。この腫瘍組織を生理食塩水(腫瘍体積と生理食塩水が1:6)中ですり潰し、細胞濃度が2〜4×107個/mlである腫瘍細胞懸濁液の生理食塩水溶液を調製した。0.2mLの細胞懸濁液を皮下注入により各マウスの腋窩部(右側)に注入した。移植7日後、マウスにおける腫瘍は、その動物に手で触れた時に感じることができる程度に十分に大きく生長した。その時点からマウスに所定の投与量のACEA100108、又は陰性対照として役割を果たす溶媒のみ、あるいは陽性対照として機能する10mg/kgのタキソールを投与した。移植から3〜4週間後、マウスを屠殺し、移植された腫瘍を試験マウスから除去した。除去された各固形腫瘍の重量を測定し、実施例1に記載の式(2)に従って、各投与量群における腫瘍阻害率を計算した。腫瘍の体積に基づき、その他のパラメーター、すなわち腫瘍体積阻害率も、以下の式:
T/C(%)=化合物処置群における平均腫瘍体積/陰性対照群における平均腫瘍重量 × 100% (5)
に従って計算した。
【0190】
ヒト乳癌異種移植片モデルについては、動物が接触する動物の餌、動物のケージ、支持材及び装置を含む全ての使用された物品は高圧滅菌した。ヌードマウスはSPF条件下で、層流の棚(laminar flow shelve)において維持した。腫瘍移植後に、各化合物投与量群におけるマウスの体重と腫瘍の大きさを動的にモニターし、プロットした。腫瘍の大きさは腫瘍の長軸(a)及び短軸(b)を測定することにより測定し、腫瘍の体積は実施例3に記載の式(3)に従って計算した。
【0191】
(結果)
ヌードマウスにおけるBcap−37ヒト乳癌異種移植片モデルにおいて、ACEA100108は、iv×7qdの手順に従い投与した場合、50mg/kg、25mg/kg及び8mg/kgの投与量群についてそれぞれ52.24%、47.31%及び28.21%のin vivo平均腫瘍阻害率を示した。さらに、10qdの手順に従い投与した場合、50mg/kgの投与量群について56.92%のin vivo平均腫瘍阻害率を示した。同様の試験において、タキソールは10mg/kgの投与量群について44.33%のin vivo平均腫瘍阻害率を示した。ヌードマウスに移植されたBcap−37ヒト乳癌異種移植片に対するACEA100108の効果試験を表す表27及び図25に、詳細を示す。図25中、7つの列(それぞれ1−7)は、以下の投与化合物:1)陰性対照;2)溶媒;3)ACEA100108(50mg/kg);4)ACEA100108(20mg/kg);5)ACEA100108(8mg/kg);6)ACEA100108(50mg/kg);及び7)陽性対照(タキソール、10mg/kg)を表す。試験化合物及び対照は、ACEA100108を50mg/kgで、iv×10qdで投与したもの以外は、7qdにおいてivで投与した。腫瘍体積阻害率を表28に示す。腫瘍の大きさの動的な変化を表26にまとめる。担体マウスの体重における動的変化は表27にまとめる。
【0192】
ヌードマウスにおけるBcap−37ヒト乳癌異種移植片モデルにおいて、ACEA100108は、手で触れることにより感じることができるほど腫瘍が十分に大きく生長した後でこの化合物を投与するという投与手順について、50%を超える腫瘍体積阻害率を示した。さらに、ヌードマウスにおける投与回数を増加させた場合、マウスに対する毒性効果は明白には増加せず、一方で腫瘍阻害は増大した。加えて、ここでヌードマウスに投与された中投与量のACEA100108は、定期的な処置の投与条件下でのタキソールの効果よりも優れた抗癌効果を示した。
【0193】
【表27】
【0194】
【表28】
【0195】
【表29】
【0196】
【表30】
(実施例6)
(DBTS及び化合物ACEA100108の急性毒性試験:マウスにおける静脈内注入のLD50の測定)
DBTS及びACEA100108の急性毒性を試験するための実験をマウスにおいて行った。試験マウスはランダムに6つの群に分けられた(5つの投与量群及び1つの対照群)。各群は20匹のKunming株マウスを含み、それらの中で50%はオス、50%はメスであった。静脈内注入(i.v.)によるDBTS又はACEA100108の単回投与後、DBTS又はACEA100108化合物に対する急性応答、及び、処置されたマウスの最初の2週間での死亡をモニターし、記録した。LD50値はBliss法を用いて計算した。DBTSのマウス単回静脈内投与におけるLD50値は258.53mg/kg(234.96〜284.46mg/kg)であり、ACEA100108のマウス単回静脈内投与におけるLD50値は316mg/kg(284.26〜351.28mg/kg)であった。
【0197】
(材料及び方法)
試験化学化合物はDBTS及びACEA100108であり、予め加温した湯浴中で硬化ヒマシ油中に溶解し、20mg/mlの溶液とした。この溶液をさらに希釈して、所望の試験濃度にした。マウスあたり0.5mLの静脈内投与量及び注入速度は0.5mL/0.5分であった。
【0198】
試験用マウスはShanghai Pharmaceutical Industry
InstituteのExperimental Animal Departmentから供給されたKunming株であった。その施設の認定番号はAnimal Facility Certification No.107であった。マウスの体重は18〜20gであった。各試験群は20匹のKunming株マウスを含み、それらのうち、10匹のマウスはオス、10匹はメスであった。400mg/kg、320mg/kg、256mg/kg、204.8mg/kg及び163.8mg/kgの5種類の試験投与量を使用した。対照群におけるマウスは、希釈された硬化ヒマシ油である同量の溶媒のみを投与された。全ての試験用マウスに、DBTS及びACEA100108、又は対照として役割を果たす溶媒を、0.5ml/0.5分の注入速度で単回静脈内投与した。投与後に迅速に起こるDBTS、ACEA100108又は溶媒に対する急性応答ならびに体重変化、及び投与2週間以内での死亡をモニターし、記録した。マウスにおける静脈内注入のLD50値はBliss法を用いて計算した。
【0199】
(結果)
静脈内注入直後、マウスは、跳躍する、走る、けいれん、息切れ(呼吸亢進)を含む異常な反応を示した。高投与量群において、数匹のマウスは、けいれん発作により注入3分以内に死亡した。死亡は投与後1時間以内に起こり、そのピークは投与後12時間目であった。病理解剖により、死亡したマウスの臓器における生理学的異常は見出されなかった。生き残ったマウスは、早期に活動が低下し脱毛する以外の深刻な中毒症状を示さず、それらは徐々に回復し、その後14日の観察の間に遅れて起こる中毒の兆候は見られなかった。生き残ったマウスは健康で、正常な挙動をしたものの、それらのマウスの体重はいくぶん減少した。試験データに基づくと、DBTSのマウス単回静脈内投与のLD50値は258.53mg/kg(234.96〜284.56mg/kg)であり、ACEA100108のマウス単回静脈内投与のLD50値は316mg/kg(284.26〜351.28mg/kg)であった。オスのマウスとメスのマウスの間でLD50値の顕著な差異はみられなかった(p値>0.05)。DBTS及びACEA100108の急性毒性の結果を表31及び32にまとめる。マウスにおける、溶媒の陽性の中毒効果を評価するため、対照群のマウスに同量の溶媒を投与した。溶媒を投与されたマウスは、DBTS及びACEA100108を投与されたマウスよりも軽度の、早期における異常な兆候及び体重減少を示した。このことは、投与マウスにおいてみられる急性毒性は、DBTS又はACEA100108に関連することを示す。
【0200】
【表31】
【0201】
【表32】
(実施例7)
(DBTS、コルセミド及びパクリタキセルによる細胞増殖の阻害)
H460細胞(ヒト肺癌細胞)を16又は96ウェルのマイクロタイタープレート装置(電子プレート、すなわち、プレートのウェル中に電極センサーを有するプレート)のウェル中に、開始時の播種密度が1ウェルあたり8,000個の細胞数となるように播種し、標準的な細胞培養条件下でインキュベーター中で約22時間プレインキュベートした。DMSO中で各種濃度にしたジベンジルトリスルフィド(DBTS)、コルセミド及びパクリタキセルをウェル中に添加し、次いでインキュベートした。RT−CESシステムを用いて、化合物添加前後の細胞の状態をモニターした。化合物添加直前のDBTS及びコルセミド溶液に対する様々なウェルにおける細胞指数は1.7〜1.9であり、パクリタキセルに対しては1.4〜1.9であった。図1A〜Cは、化合物添加前及び添加後の時刻の関数としての正規化した細胞指数を示す。細胞指数は、化合物添加直後の時点(細胞播種後約23時間)における細胞指数値に対し正規化した。
【0202】
(実施例8)
(MV522細胞におけるDBTSによる細胞増殖の阻害)
MV522細胞(ヒト肺癌細胞)を16又は96ウェルのマイクロタイタープレート装置(電子プレート、すなわち、プレートのウェル中に電極センサーを有するプレート)のウェル中に、開始時の播種密度が1ウェルあたり10,000個の細胞数となるように播種し、標準的な細胞培養条件下でインキュベーター中で約22時間プレインキュベートした。ジベンジルトリスルフィドのDMSO溶液をウェル中に添加し、次いでインキュベートした。RT−CESシステムを用いて、化合物添加前後の細胞の状態をモニターした。化合物添加直前の様々なウェルにおける細胞指数は1.0〜1.6であった。図2は、化合物添加前及び添加後の時刻の関数としての正規化した細胞指数を示す。細胞指数は、化合物添加直後の時点(細胞播種後約23時間)における細胞指数値に対し正規化した。
【0203】
(実施例9)
(MCF−7細胞におけるジベンジルトリスルフィドによる細胞増殖の阻害)
MCF−7細胞(ヒト乳癌細胞)を16又は96ウェルのマイクロタイタープレート装置(電子プレート、すなわち、プレートのウェル中に電極センサーを有するプレート)のウェル中に、開始時の播種密度が1ウェルあたり10,000個の細胞数となるように播種し、標準的な細胞培養条件下でインキュベーター中で約44時間プレインキュベートした。ジベンジルトリスルフィドのDMSO溶液をウェル中に添加し、次いでインキュベートした。RT−CESシステムを用いて、化合物添加前後の細胞の状態をモニターした。化合物添加直前の様々なウェルにおける細胞指数は1.2〜1.5であった。図3は、化合物添加前及び添加後の時刻の関数としての正規化した細胞指数を示す。細胞指数は、化合物添加直後の時点(細胞播種後約44.5時間)における細胞指数値に対し正規化した。
【0204】
(実施例10)
(A549細胞におけるジベンジルトリスルフィドによる細胞増殖の阻害)
A549細胞(ヒト肺癌細胞)を16又は96ウェルのマイクロタイタープレート装置(電子プレート、すなわち、プレートのウェル中に電極センサーを有するプレート)のウェル中に、開始時の播種密度が1ウェルあたり8,000個の細胞数となるように播種し、標準的な細胞培養条件下でインキュベーター中で約17時間プレインキュベートした。ジベンジルトリスルフィドのDMSO溶液をウェル中に添加し、次いでインキュベートした。RT−CESシステムを用いて、化合物添加前後の細胞の状態をモニターした。化合物添加直前の様々なウェルにおける細胞指数は0.72〜1.26であった。図4は、化合物添加前及び添加後の時刻の関数としての正規化した細胞指数を示す。細胞指数は、化合物添加直後の時点(細胞播種後約18時間)における細胞指数値に対し正規化した。
【0205】
(実施例11)
(PC3細胞におけるジベンジルトリスルフィドによる細胞増殖の阻害)
PC3細胞(ヒト前立腺癌細胞)を16又は96ウェルのマイクロタイタープレート装置(電子プレート、すなわち、プレートのウェル中に電極センサーを有するプレート)のウェル中に、開始時の播種密度が1ウェルあたり10,000個の細胞数となるように播種し、標準的な細胞培養条件下でインキュベーター中で約22.5時間プレインキュベートした。ジベンジルトリスルフィドのDMSO溶液をウェル中に添加し、次いでインキュベートした。RT−CESシステムを用いて、化合物添加前後の細胞の状態をモニターした。化合物添加直前の様々なウェルにおける細胞指数は0.34〜0.54であった。図5は、化合物添加前及び添加後の時刻の関数としての正規化した細胞指数を示す。細胞指数は、化合物添加直後の時点(細胞播種後約23.5時間)における細胞指数値に対し正規化した。
【0206】
(実施例12)
(A431細胞におけるDBTS及び5−フルオロウラシルによる細胞増殖の阻害)
A431細胞(ヒト扁平上皮癌細胞)をマイクロタイタープレート装置(電子プレート、すなわち、プレートのウェル中に電極センサーを有するプレート)のウェル中に、開始時の播種密度が1ウェルあたり10,000個の細胞数となるように播種し、標準的な細胞培養条件下でインキュベーター中で約22.3時間プレインキュベートした。各種濃度のDBTS及び5−フルオロウラシル溶液をウェル中に添加し、次いでインキュベートした。RT−CESシステムを用いて、化合物添加前後の細胞の状態をモニターした。化合物の添加直前のDBTSに対する様々なウェルにおける細胞指数は0.6〜1.2であり、5−フルオロウラシルに対しては0.6〜1.2であった。図6A〜Bは、化合物添加前及び添加後の時刻の関数としての正規化した細胞指数を示す。細胞指数は、化合物添加直後の時点(細胞播種後約22.6時間)における細胞指数値に対し正規化した。
【0207】
(実施例13)
(HT1080細胞におけるDBTSによる細胞増殖の阻害)
HT1080細胞(ヒト線維肉腫細胞)を16又は96ウェルのマイクロタイタープレート装置(電子プレート、すなわち、プレートのウェル中に電極センサーを有するプレート)のウェル中に、開始時の播種密度が1ウェルあたり4,000個の細胞数となるように播種し、標準的な細胞培養条件下でインキュベーター中で約18.6時間プレインキュベートした。ジベンジルトリスルフィドのDMSO溶液をウェル中に添加し、次いでインキュベートした。RT−CESシステムを用いて、化合物添加前後の細胞の状態をモニターした。化合物の添加直前の様々なウェルにおける細胞指数は0.72〜1.45であった。図7は、化合物添加前及び添加後の時刻の関数としての正規化した細胞指数を示す。細胞指数は、化合物添加直後の時点(細胞播種後約20時間)における細胞指数値に対し正規化した。
【0208】
(実施例14)
(MDA−231細胞におけるDBTSによる細胞増殖の阻害)
MDA−231細胞(ヒト乳癌細胞)を16又は96ウェルのマイクロタイタープレート装置(電子プレート、すなわち、プレートのウェル中に電極センサーを有するプレート)のウェル中に、開始時の播種密度が1ウェルあたり5,000個の細胞数となるように播種し、標準的な細胞培養条件下でインキュベーター中で約18.7時間プレインキュベートした。ジベンジルトリスルフィドのDMSO溶液をウェル中に添加し、次いでインキュベートした。RT−CESシステムを用いて、化合物添加前後の細胞の状態をモニターした。化合物の添加直前の様々なウェルにおける細胞指数は0.65〜0.82であった。図8は、化合物添加前及び添加後の時刻の関数としての正規化した細胞指数を示す。細胞指数は、化合物添加直後の時点(細胞播種後約19.6時間)における細胞指数値に対し正規化した。
【0209】
(実施例15)
(H−29細胞におけるDBTSによる細胞増殖の阻害)
H−29細胞(ヒト結腸癌細胞)を16又は96ウェルのマイクロタイタープレート装置(電子プレート、すなわち、プレートのウェル中に電極センサーを有するプレート)のウェル中に、開始時の播種密度がウェルあたり10,000個の細胞数となるように播種し、標準的な細胞培養条件下でインキュベーター中で約25時間プレインキュベートした。ジベンジルトリスルフィドのDMSO溶液をウェル中に添加し、次いでインキュベートした。RT−CESシステムを用いて、化合物添加前後の細胞の状態をモニターした。化合物の添加直前の様々なウェルにおける細胞指数は0.95〜1.13であった。図9は、化合物添加前及び添加後の時刻の関数としての正規化した細胞指数を示す。細胞指数は、化合物添加直後の時点(細胞播種後約26時間)における細胞指数値に対し正規化した。
【0210】
(実施例16)
(HC−2998細胞におけるDBTSによる細胞増殖の阻害)
HC−2998細胞(ヒト結腸癌細胞)を16又は96ウェルのマイクロタイタープレート装置(電子プレート、すなわち、プレートのウェル中に電極センサーを有するプレート)のウェル中に、開始時の播種密度が1ウェルあたり10,000個の細胞数となるように播種し、標準的な細胞培養条件下でインキュベーター中で約24.7時間プレインキュベートした。ジベンジルトリスルフィドのDMSO溶液をウェル中に添加し、次いでインキュベートした。RT−CESシステムを用いて、化合物添加前後の細胞の状態をモニターした。化合物の添加直前の様々なウェルにおける細胞指数は0.33〜0.68であった。図10は、化合物添加前及び添加後の時刻の関数としての正規化した細胞指数を示す。細胞指数は、化合物添加直後の時点(細胞播種後約25.7時間)における細胞指数値に対し正規化した。
【0211】
(実施例17)
(OVCAR4細胞におけるDBTSによる細胞増殖の阻害)
OVCAR4細胞(ヒト卵巣癌細胞)を16又は96ウェルのマイクロタイタープレート装置(電子プレート、すなわち、プレートのウェル中に電極センサーを有するプレート)のウェル中に、開始時の播種密度が1ウェルあたり10,000個の細胞数となるように播種し、標準的な細胞培養条件下でインキュベーター中で約27時間プレインキュベートした。ジベンジルトリスルフィドのDMSO溶液をウェル中に添加し、次いでインキュベートした。RT−CESシステムを用いて、化合物添加前後の細胞の状態をモニターした。化合物の添加直前の様々なウェルにおける細胞指数は1.4〜1.7であった。図11は、化合物添加前及び添加後の時刻の関数としての正規化した細胞指数を示す。細胞指数は、化合物添加直後の時点(細胞播種後約28時間)における細胞指数値に対し正規化した。
【0212】
(実施例18)
(A2780細胞におけるDBTSによる細胞増殖の阻害)
A2780細胞(ヒト結腸癌細胞)を16又は96ウェルのマイクロタイタープレート装置(電子プレート、すなわち、プレートのウェル中に電極センサーを有するプレート)のウェル中に、開始時の播種密度が1ウェルあたり20,000個の細胞数となるように播種し、標準的な細胞培養条件下でインキュベーター中で約16.4時間プレインキュベートした。ジベンジルトリスルフィドのDMSO溶液をウェル中に添加し、次いでインキュベートした。RT−CESシステムを用いて、化合物添加前後の細胞の状態をモニターした。化合物添加直前の様々なウェルにおける細胞指数は2.2〜3.7であった。図12は、化合物添加前及び添加後の時刻の関数としての正規化した細胞指数を示す。細胞指数は、化合物添加直後の時点(細胞播種後約17.5時間)における細胞指数値に対し正規化した。
【0213】
(実施例19)
(DBTSに対するHepG2細胞の応答)
HepG2細胞(ヒト肝臓肉腫細胞)を16又は96ウェルのマイクロタイタープレート装置(電子プレート、すなわち、プレートのウェル中に電極センサーを有するプレート)のウェル中に、開始時の播種密度が1ウェルあたり15,000個の細胞数となるように播種し、標準的な細胞培養条件下でインキュベーター中で約22時間プレインキュベートした。ジベンジルトリスルフィドのDMSO溶液をウェル中に添加し、次いでインキュベートした。RT−CESシステムを用いて、化合物添加前後の細胞の状態をモニターした。化合物添加直前の様々なウェルにおける細胞指数は0.7〜0.97であった。図13は、化合物添加前及び添加後の時刻の関数としての正規化した細胞指数を示す。細胞指数は、化合物添加直後の時点(細胞播種後約22.7時間)における細胞指数値に対し標準化した。本明細書中に示された細胞指数からは、ジベンジルトリスルフィドがHepG2細胞の増殖に阻害効果を示さず、曝した投与量範囲内においてはHepG2細胞に何ら細胞傷害性の影響を示さないようである。
【0214】
(実施例20)
(DBTS及びその誘導体による細胞増殖の阻害)
RT−CESシステム及びMTTアッセイを使用し、8つの異なるタイプのヒト癌細胞株においてDBTS及びその誘導体の抗癌効果を試験した。この8つの癌細胞株はHT1080(ヒト繊維肉腫細胞株)、H460(ヒト非小細胞肺癌細胞株)、OVCAR4(ヒト卵巣癌細胞株)、MCF7(ヒト乳癌細胞株)MDA−MB231(M231、ヒト乳癌細胞株)A2780(ヒト結腸癌細胞株)Jurkat(ヒトT細胞白血病細胞株)であった。試験用DBTS誘導体としては、ACEA100107、ACEA100108、ACEA100109、ACEA100111、ACEA100115、ACEA100116、ACEA100117、ACEA100118、ACEA100119、およびACEA100120が挙げられる。ACEA100129はHT1080、HELA及びMCF7細胞中でも試験され、それぞれ0.82μM、0.42μM及び2.3μMのIC50値を有していた。誘導体の化学構造を表33及び34に示す。
【0215】
RT−CESシステムにおいて実行されるアッセイのために、細胞を16又は96ウェルのマイクロタイタープレート装置(電子プレート、すなわち、プレートのウェル中に電極センサーを有するプレート)のウェル中に、開始時の播種密度範囲が1ウェルあたり5,000〜15,000個の細胞数となるように播種した。この細胞を、細胞指数が増殖期(細胞指数が0.8〜1.2)に到達するまで、5%のCO2及び37℃において一晩インキュベートした。連続的に希釈した化合物を次いでこの細胞に添加し、細胞増殖及び細胞毒性に及ぼす影響を動的にモニターした。各誘導体についての時間依存的なIC50値を、化合物処置後の様々な時点の細胞指数における投与量応答に基づいて計算した。処置後、化合物が最大の阻害を示す時点に相当するIC50値を表35に示す。
【0216】
MTTアッセイのために、細胞を通常の96ウェルプレートに播種密度範囲が1ウェルあたり5,000〜15,000個の細胞数となるように播いた。この細胞を5%のCO2及び37℃において一晩インキュベートした。誘導体を連続的に希釈し、この細胞へと添加した。この処理を、48時間のインキュベーション後に、MTT染色試薬の添加によって終了させた。4時間後、停止バッファーの添加によって染色を停止し、次いでマイクロタイタープレートリーダー上で、2つの波長、650nm及び550nmにおいて、比色測定を実行した。試験誘導体についてのIC50値を、比色読取り機を用いて計算し、表36に列挙した。
【0217】
【表33】
【0218】
【表34】
【0219】
【表35】
【0220】
【表36】
(実施例21)
(ACEA100108による癌細胞増殖の動力学的阻害)
RT−CESシステムにおいて、7つの癌細胞株におけるDBTS誘導体、ACEA100108の抗癌効果を試験した。細胞株はHT1080、H460、OVCAR4、MCF7、MDA−MB231、HepG2、及びA2780であった。癌細胞を16又は96ウェルのマイクロタイタープレート装置(すなわち、電子プレート)のウェル中に、開始時の播種密度がウェルあたり5,000個〜15,000個の細胞数の範囲となるように播き、播かれた細胞を次いで37℃及び5%のCO2においてインキュベートした。癌細胞の増殖を、RT−CESシステム上で、細胞が増殖期にいたるまでの約20時間リアルタイムでモニターした。次いで、細胞を50μM〜0.38μMの濃度範囲で連続的に稀釈したACEA100108で処理した。ACEA100108の癌増殖阻害及びACEA100108に対する各種細胞株の細胞傷害性の応答を、RT−CESシステムにおいてリアルタイムでモニターした。次いで細胞−化合物相互作用の動力学的曲線を記録し、図26に示す。細胞指標曲線は、化合物添加直後の時点(細胞播種後約18〜24時間)における細胞指数値に対し標準化した。
【0221】
(実施例22)
(DBTS誘導体による癌細胞増殖の動力学的阻害)
HT1080癌細胞の動力学的増殖阻害及びHT1080癌細胞におけるDBTS誘導体の細胞傷害性の影響を、RT−CESシステムにおいて測定した。DBTS誘導体は、ACEA100107、ACEA100109、ACEA100111、ACEA100114、ACEA100115、ACEA100116、ACEA100117、ACEA100118、ACEA100119及びACEA100120であった。HT1080細胞(ヒト繊維肉腫)を16又は96ウェルのマイクロタイタープレート装置(電子プレート)のウェル中に、播種密度がウェルあたり5,000個の細胞数となるように播いた。この細胞を増殖期にいたるまでの約20時間、37℃及び5%のCO2においてインキュベートした後、50μM〜0.38μMの濃度範囲で連続的に稀釈したDBTS誘導体を細胞に添加し、DBTS誘導体の細胞応答をRT−CESシステムにおいてリアルタイムで48時間モニターした。図27は異なる濃度における細胞とDBTS誘導体の相互作用の動力学的曲線を示す。細胞指標曲線は、化合物添加直後の時点(細胞播種後約18〜24時間)における細胞指数値に対し標準化した。
【0222】
(実施例23)
(DBTS及びその誘導体化合物であるACEA100108及びACEA100116による微小管動力学抑制の概要)
微小管は、細胞が2個の娘細胞へと分裂する前に、複製された染色体が2つの同一のセットへと分離するときの有糸分裂を含む多数の細胞プロセスにおいて重要である。有糸分裂及び細胞分裂における微小管の重要な役割及びその動態により、微小管は抗癌薬の重要な標的となっている。間期の細胞において微小管は、そのチューブリンを、半減期が3分以内から数時間である細胞質プール中に可溶性のチューブリンに変化させる。有糸分裂の開始に伴い、間期の微小管ネットワークは再組み立てされて、紡錘体を形成し染色体を動かす高度に動的な微小管の集合に置き換えられる。紡錘体微小管は間期細胞中の微小管よりも20〜50倍動的であり、紡錘体微小管には15秒という迅速な半減期を伴ってそのチューブリンを可溶性チューブリンに変化させるものもある。
【0223】
紡錘体微小管の動態は、モジュレーターによる調節及び微小管活性化薬物による破壊に対し極めて敏感に反応する。微小管を標的とする薬物は、微小管のポリマー化及び動態を広範な方法により変化させ得る。(1)培養細胞における微小管ネットワークに影響を及ぼす能力、(2)in vitroの微小管組み立てに影響を及ぼす能力、及び(3)in vitroの微小管動態に影響を及ぼす能力、に関するDBTS、ACEA100108及びACEA100116として設計された3種のACEA化合物の作用メカニズムを以下に記す。
【0224】
(方法)
細胞培養及び免疫細胞化学 COS細胞を非必須アミノ酸、10%のFBS、抗生物質−抗カビ剤(Gibco BRL)を添加したDMEM培地中で37℃、5.5% CO2において生育させた。免疫蛍光顕微鏡観察のために細胞をポリリジン被覆したカバースリップ上に載せ、各種濃度の3種のACEA化合物、パクリタキセル又はビンブラスチンを用いて4又は24時間処理した(任意の所定の試験で使用される濃度については各図を参照されたい)。細胞を次いで温かいPBSで一度洗浄し、冷エタノールで固定し、再度PBSで洗浄してPBT(PBS、1%のBSA、0.5%のTritonX−100)中、1晩4℃でブロックした。全てのその後の染色および洗浄は、別に記載のない限りPBT中で室温において行った。細胞を抗チューブリンマウス抗体DM−1を用いて1:1000にて1時間染色し、各15分間、4回洗浄し、Cy−3コンジュゲートヤギ抗マウス抗体を用いて1:100にて1時間、暗所で染色した。次に、サンプルを各15分間、PBT中で暗所にて4回洗浄し、次いで最後に15分間、PBT中で暗所にて洗浄した。サンプルを次いでレーザー走査共焦点顕微鏡により観察した。
【0225】
微小管組み立てアッセイ 精製ウシ脳チューブリンを、1mMのGTP、10%のグリセロール及び10%のDMSOと共に35℃、30分間インキュベートして微小管の種を合成し、次いで27ゲージの針を通し、組み立てた微小管を6回通過させることにより剪断した。微小管組み立ては、27.5μlの微小管の種を、1mMのGTP(及び適用可能な薬物)を添加した247.5μlの精製ウシ脳チューブリンのPEM−100バッファー(100mMのPipes pH=6.8、1mM EDTA、1mM MgSO4)を含む分光光度計キュベット(35℃に維持されている)に加え、OD400を2時間モニターすることによりアッセイした。化合物がDMSO中に溶解され、DMSOは微小管組み立てにおいて顕著な効果を有し得ることから、DMSOは、反応に対し加えられた最大量の薬物と同量となるよう全てのキュベット中に添加された。微小管組み立て反応の初発速度は非常に速く、サンプルを準備している間にそれが起こるために、光散乱プロファイルの初発の上昇を常に捕らえることはできないということは留意されるべきである。しかし、導入される薬物以外は全て同一であるから、全てのサンプルは同じ吸光度から開始される。
【0226】
チューブリンの精製及び微小管動態アッセイ チューブリンは文献に記載されるように精製した(”Kinetic stabilization of microtubule dynamic instability in vitro by vinblastine”、Toso、R.J.、Jordan、M.A.、Farrell、K.W.、Matsumoto、B.及びWilson、L.、Biochemistry、1993、32、1285−1293)。手短に言えば、微小管に関連した蛋白質に富むウシ脳微小管蛋白質を3サイクルの組み立て及び分解によって調製した。チューブリンを、PEM50(50mM Pipes、1mM MgSO4、1mM EGTA、0.1mM GTP)中に平衡化したWhatman P−11ホスホセルロースカラムを通して溶出することにより、その他の微小管蛋白質から精製した。精製されたチューブリン(純度 >99%)を液体窒素中に滴下して凍結し、−70℃に保存した。精製チューブリン(15M チューブリンダイマー)を、キタムラサキウニ(Strongylocentrotus purpuratus)軸糸の種の末端部において、PMEMバッファー(87mM Pipes、36mM MES、1.4mM MgCl2、1mM EDTA、pH6.8)及び2mM GTP中のACEA01、08又は16の存在又は非存在下で、37℃においてポリマー化した。個々の微小管の動態を、微分干渉コントラスト増強ビデオ顕微鏡を用いて37℃で記録した。結果は、生育速度、種の向かい合う末端において成長する微小管の数、及びその微小管の相対的な長さを基準にして、プラス又はマイナスとして指定された(Panda、D.、Goode、B.L.、Feinstein、S.C.及びWilson、L.、Kinetic stabilization of microtubule dynamics at steady state by tau and microtubule−binding domains of tau、Biochemistry、1995、34、11117−11127;Walker、R.A.、O’Brien、E.T.、Pryer、N.K.、Soboeiro、M.F.、Voter、W.A.、Erickson、H.P.及びSalmon、E.D.、Dynamic instability of individual microtubules analyzed by video light microscopy:rate constants and transition frequencies、J.Cell Biol.1988、107、1437−1448)。プラスの末端は、ポリマー化の定常状態(ポリマー化開始後45分まで)の間、スライドごとに10分間解析された。個々の微小管の生育史は、Pandaらにより改変とともに1995年に記述されたものとして集められている(Panda、D.、Goode、B.L.、Feinstein、S.C.及びWilson、L.、Kinetic stabilization of microtubule dynamics at steady state by tau and microtubule−binding domains of tau、Biochemistry、1995、34、11117−11127)。データポイントは1〜3秒の間隔で収集した。
【0227】
微小管は、>0.5μm/分の速度で長さが増加又は減少する場合に、成長している又は短縮されているとみなした。30秒間以上成長速度が0.5μm/分を下回る微小管は減衰期にあるとみなした。平均の速度、長さ及び持続は独立した事象の平均である。危険頻度は短縮事象の数を生育及びその後の減衰の合計時間で割ることにより計算し、レスキュー頻度はレスキュー事象の数をその後の短縮の合計時間で割ることにより計算した。実験誤差を制御するために、少なくとも2つの異なるチューブリン/GTP混合物を使用し(各2−3枚のスライド)、各条件は複数日にわたり固定した。所定の条件における混合物又はスライドの間で、微小管の動態における全体的な変化は観察されなかった。動態の不安定性アッセイに使用された薬物の濃度は、微小管組み立てアッセイに用いられたものの半量を用いて安定化された微小管を最初に観察することにより選択した。スライド上のほとんどの微小管は安定であり、薬物の濃度は、追跡された任意の所定の微小管が10分間に少なくとも2つの生育又は短縮事象を有するまで低減されるものとした。
【0228】
図28〜38は、DBTS及び有機硫黄化合物ACEA100108及びACEA100116の、培養細胞における微小管ネットワークに及ぼす影響を示す。図28は、薬物にさらされていない調節された細胞における微小管の画像を示す。微小管ネットワークは予測されたとおりにみえる。図29は、タキソールに4時間曝した細胞における微小管の画像を示す。微小管はいくつかの位置で束ねられている;濃度が増加すると、束ねられたところがより広範になるが、微小管はしばしば、対照細胞中のものよりも短い。図30は、タキソールに24時間曝した細胞における微小管の画像を示す。投与量が増加すると微小管の異常は増加する。この図は、束ねられ短くなった微小管の増加が存続していることを示す。さらに、大きな細胞の異常が明らかになっている。
【0229】
図31は、ビンブラスチンに4時間曝した細胞における微小管の画像を示す。投与量が増加すると微小管ネットワークは崩壊し、微小管はより短くなる。図32は、ビンブラスチンに24時間曝した細胞における微小管の画像を示す。この図が示すように、大きな細胞の異常は微小管ネットワーク中に広がっている。
【0230】
図33は、DBTSに4時間曝した細胞における微小管の画像を示す。微小管ネットワークは完全に崩壊している;非常に短い微小管のみが存在し、微小管中のチューブリンの全体的なレベルは顕著に減少している。この影響は非イオン性の界面活性剤抽出及びイムノブロッティングによって生物化学的に定量し得る。図34は、DBTSに24時間曝した細胞における微小管の画像を示す。最も低い投与量において、いくらかの微小管が存在し、薬物にわずか4時間曝した細胞と比較して、細胞が部分的に回復しているように見える。;6μM又は18μMのいずれかのDBTSで24時間処置した後に生存する細胞は無かった。
【0231】
図35は、ACEA100108に4時間曝した細胞における微小管の画像を示し、微小管ネットワークは試験した全ての濃度において顕著に変化している。微小管は非常に短く、微小管中内容物の全体的なレベルは減少しているようにみえる。最も高い濃度において、細胞はしばしば寄り集まっている。図36は、ACEA100108に24時間曝した細胞における微小管の画像を示す。1μM及び3μMの両方において、細胞は4〜24時間の間でいくぶん回復しているように見える。両方の場合における微小管ネットワークは比較的正常に見える。しかし、9μMにおいては、微小管は短く、そのネットワークは異常であるように見える。
【0232】
図37は、ACEA100116に4時間曝した細胞における微小管の画像を示す。微小管ネットワークの残留が1μMにおいては残っているが、2つのより高い濃度において微小管は非常に短く、異常である。細胞は伸長していないが、むしろ投与量依存的に寄り集まっているように見える。図38は、ACEA100116に24時間曝した細胞における微小管の画像を示す。わずか1μM ACEA100116で処理された細胞は比較的正常である;3μM又は9μMで処理された本質的に全ての細胞は、ACEA100116に曝して24時間後に死滅した。
【0233】
図39〜41は、in vitroの微小管組み立てにおけるDBTS及び有機硫黄化合物ACEA100108及びACEA100116の効果を示す。図39aに示すように、DBTSの全ての投与量は微小管組み立ての程度を顕著に阻害する。効果は特に9μMにおいて顕著である。対照(図39b)及び薬物処理された(図39c)サンプルの両方の微小管構造を電子顕微鏡により視覚化した。図40に示すように、より低い投与量のACEA100108は、微小管組み立てに与える影響が最も小さかった。対照的に、27μMのACEA100108は微小管組み立ての程度に顕著な阻害効果を与えた。
【0234】
図41に示すように、ACEA100116はDBTS及びACEA100108とは非常に異なっている。その他の2つの薬物が微小管組み立てを阻害するのに対して、ACEA100116は微小管組み立てを促進する。このことは、9μM及び27μMの両方において明白である。このプロットは、一般的であるがよく理解されていない“オーバーシュート”として知られる現象を呈してもおり、そこにおいて光散乱のパターンはプラトーに達しておらずむしろ徐々に低下する。にもかかわらず、ACEA100116がin vitroで微小管組み立てを阻害するよりもむしろ促進することは明らかである。
【0235】
さらに、DBTS、ACEA100108及びACEA100116がin vitroの微小管の挙動に影響することが示された。表37に示すように、全ての3つの薬物は微小管動態のパターンを変化させた。DBTSは微小管の生育速度に影響を及ぼさなかったが、生育事象の平均的な持続を増加させ、結果的に生育事象における平均的な生育の長さを増加させた。このことがまた生育にかかる時間の割合を増加させた。短縮事象の平均的な長さも減少した。
【0236】
ACEA100108もまた、生育事象の持続を増加させ、生育事象の平均的な長さを増加させた;これもまた、短縮事象の長さにおいて強い効果を有した;この効果は、その他の2薬物のいずれかとも顕著に異なる効果を呈したDBTS及びACEA100116の効果よりも、なお顕著であった。ACEA100116は生育速度を増加させたが、生育事象の長さにはほとんど影響しなかった。それは短縮事象の速度には影響を及ぼさなかったが、短縮事象の長さには強い影響を及ぼした。細胞イメージングデータがチューブリン又は微小管関連蛋白質へ結合している薬物を識別できないときには、in vitro微小管組み立て及びin vitro微小管動態アッセイの両者は、精製されたMAPを含まないチューブリンのみを使用した。これらの観察は、全ての3つの薬物が直接的にチューブリンと相互作用することを示す。
【0237】
【表37】
(実施例24)
(ACEA100108が癌細胞においてアポトーシスを誘導する)
ACEA100108化合物が癌細胞におけるアポトーシスを誘導するか否かを試験するために、A549ヒト肺癌細胞を1μMのACEA100108及び50nMのパクリタキセル又は10nMのビンブラスチンで処理した。パクリタキセル及びビンブラスチンという2つの微小管動態抑制剤は陽性対照として使用した。A549細胞をチャンバースライド中にウェルあたり10,000個の細胞数となるように撒き、18時間後に指定された濃度の抗有糸分裂化合物ACEA100108、パクリタキセル及びビンブラスチンによって処理した。細胞を薬物とともに24時インキュベートし、次いでPBSで2回、及び結合バッファー(10mM HEPES、pH7.5、140mM NaCl、2.5mM CaCl2)で3回洗浄した。細胞を、1μg/mLのアネキシンV−Cy3コンジュゲート(赤色、アポトーシスの段階を開始した細胞を染色する)及び500μMの6−CFDA(緑色、生存している細胞を染色する)の1×結合バッファー中で20分間染色した。この細胞を1×結合バッファー中で緩やかに3回洗浄し、マウントして、免疫蛍光顕微鏡下で取り付けられたCCDカメラを用いて観察した。生存する細胞が6−CFDAのみで染色され(緑色)、一方壊死している細胞がアネキシンV−Cy3のみで染色される(赤色)ことに留意されたい。アポトーシスの段階を開始した細胞はアネキシンV−Cy3と6−CFDAの両方で染まるであろう。
【0238】
図42に示すように、ACEA100108、パクリタキセル及びビンブラスチンで処理された細胞はアネキシンVでの強い染色を示し、一方DMSOのみで処理された対照細胞はアネキシンVで染まらなかった。このことは、ACEA100108がA549ヒト肺癌細胞におけるアポトーシスを誘導することを示す。
【0239】
(実施例25)
(ACEA100108は癌細胞においてG2/M細胞周期停止を誘導する)
微小管は、細胞が2個の娘細胞へと分裂する前に、複製された染色体が2つの同一のセットへと分離するときの有糸分裂において極めて重要である。微小管を標的とするパクリタキセル及びビンブラスチン等の化合物は、微小管の動態を抑制し、有糸分裂のプロセスをブロックする。結果として、細胞はG2/M期において停止される。ACEA100108が癌細胞の分裂における有糸分裂のプロセスに影響を及ぼすか否かを試験するために、A549ヒト肺癌細胞を25μMのACEA100108及び7.8nMのパクリタキセルで処理し、この化合物の細胞周期への影響をフローサイトメトリーにより検出した。
【0240】
手短に言えば、A549細胞を、60mm組織培養ディッシュ中に500,000個の細胞数となる密度で撒いた。約18時間後に細胞を指定された濃度の抗有糸分裂化合物により処理し、さらに24時間インキュベートした。細胞をPBS中で洗浄し、トリプシン処理し、計数して、氷冷70%のメタノール中で固定化し、4℃で保存した。細胞をPBSで洗浄し、プロピジウムアイオダイドで染色し、フローサイトメトリー分析まで氷中に保存した。図43に示すように、G2/M期にある細胞の数は、ACEA100108及びパクリタキセルの両方で処理した細胞中では、DMSOのみで処理された細胞と比較して顕著に増加した。
【0241】
(実施例26)
(ジ(p−クロロベンジル)トリスルフィド(9)の大規模合成)
N−トリメチルシリルイミダゾール(10.67mL、97%、d=0.956、実重量=9.89g、70.54mmol)を、乾燥した250mL容丸底フラスコ中で70mLの無水ヘキサン中に溶解した。この攪拌溶液に対してゆっくりと(40〜50分)二塩化硫黄のジクロロメタン溶液(35.3mL、1.0M、35.3mmol)を窒素下、室温にて添加した。白色の沈殿が形成された。この反応混合物を50分間攪拌し、次いで窒素下、0℃まで冷却した。4−クロロベンジルメルカプタン(9.5mL、96%、実重量=11.19g、70.53mmol)の無水ヘキサン溶液50mLを、攪拌しながら窒素下で40〜50分間かけて滴下した。得られた反応混合物を0℃、1時間攪拌し、次いで室温にて3時間攪拌した。セライトの詰め物を通過させ、少量のヘキサンで洗浄することにより、白色から淡い黄色の固体を濾過除去した。濾液を、水(200mL、100mL)で洗浄し、次いで飽和塩化ナトリウム溶液(200mL)で洗浄した。有機溶媒相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥剤を濾過除去し、濾液を減圧下で濃縮した。
【0242】
白色の固体残留物を、ヘキサン−酢酸エチル(60:1)を溶出液としたシリカゲルカラム上のフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。画分を、ヘキサン−酢酸エチル(40:1)を展開溶媒とするシリカゲルTLCでモニターした(Rf=0.45)。所望の画分を回収し、溶媒をエバポレーションした。得られた白色の個体生成物をヘキサンから再結晶し、11.06g(90%)の所望の生成物9を白色の針状結晶として得た。
【0243】
【化32】
(実施例27)
(ジ(p−フルオロベンジル)トリスルフィド(8)の大規模合成)
N−トリメチルシリルイミダゾール(21.42mL、97%、d=0.956、実重量=19.86g、141.6mmol)を、乾燥した500mL容丸底フラスコ中で140mLの無水ヘキサン中に溶解した。この攪拌溶液に対してゆっくりと(40〜50分)二塩化硫黄のジクロロメタン溶液(70.8mL、1.0M、70.8mmol)を窒素下、室温にて添加した。白色の沈殿が形成された。この反応混合物を50分間攪拌し、次いで窒素下、0℃まで冷却した。4−フルオロベンジルメルカプタン(18.04mL、20.86g、96%、実重量=20.0g、140.8mmol)の無水ヘキサン溶液100mLを、攪拌しながら窒素下で40〜50分間かけて滴下した。得られた反応混合物を0℃、1時間攪拌し、次いで室温にて3時間攪拌した。セライトの詰め物を通過させ、少量のヘキサンで洗浄することにより、白色から淡い黄色の固体を濾過除去した。濾液を、水(400mL、300mL)で洗浄し、次いで飽和塩化ナトリウム溶液(400mL)で洗浄した。有機溶媒相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥剤を濾過除去し、濾液を減圧下で濃縮した。
【0244】
白色の固体残留物を、ヘキサン−酢酸エチル(60:1)を溶出液としたシリカゲルカラム上のフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。画分を、ヘキサン−酢酸エチル(40:1)を展開溶媒とするシリカゲルTLCでモニターした(Rf=0.46)。所望の画分を回収し、溶媒をエバポレーションした。得られた白色の固体生成物をヘキサンから再結晶し、14.7g(67%)の白色の針状結晶として所望の生成物を得た。母液を濃縮した。さらなる再結晶は10〜15%多い結晶生成物を提供した。
【0245】
【化33】
(実施例28)
(純粋な二塩化硫黄を用いたジ(p−フルオロベンジル)トリスルフィド(8)の大規模合成)
N−トリメチルシリルイミダゾール(226.6mL、97%、d=0.956、実重量=205.7g、1467mmol)を、乾燥した3000mL容三つ首フラスコ中で1200mLの無水ヘキサン及び560mLの無水ジクロロメタン(分子ふるいタイプ3Aで乾燥)中に溶解した。この攪拌溶液に対してゆっくりと(40〜50分)二塩化硫黄のジクロロメタン溶液(55.9mL、90.63g、880mmol、0.6eq)を窒素下、室温にて添加した。反応は沈殿を伴って迅速に起こった。反応混合物を50分間攪拌し、次いで窒素下で0℃まで冷却した。4−フルオロベンジルメルカプタン(176mL、96%、実重量=200.17g、1408mmol)の無水ジクロロメタン溶液250mL及び100mLの無水ヘキサンを、攪拌しながら窒素下で40〜50分間かけて滴下した。得られた反応混合物を0℃、1時間攪拌し、次いで室温にて3時間攪拌した。反応物をヘキサン−酢酸エチル(40:1)を展開溶媒とするシリカゲルTLCでモニターし、その結果反応が正常に完了したことが示された。セライトの詰め物を通過させ、少量のヘキサンで洗浄することにより、白色から淡い黄色の固体を濾過除去した。濾液を、水で2回(1000mL×2)洗浄し、次いで飽和塩化ナトリウム溶液(1000mL)で1回洗浄した。有機溶媒相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥剤を濾過除去し、濾液を減圧下で濃縮した。粗生成物を、石油エーテル(60〜90℃画分)−酢酸エチル(80:1、60:1、40:1及び次いで20:1)をグラジェント溶出液としたシリカゲルカラム(8×36cm)上のフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。画分を、n−ヘキサン−酢酸エチル(40:1)を展開溶媒とするシリカゲルTLCでモニターした(Rf=0.46)。所望の画分を回収し、溶媒をエバポレーションした。得られた白色の固体生成物を1000mLのヘキサンから再結晶し、131.0gの所望の生成物8を、収率59.2%の白色針状結晶として得た(T収量221.16g)。
【0246】
【化34】
【化35】
非対称トリスルフィド41〜68(スキーム3)は、報告されている手法(Derbesy、G.;Harpp、D.N.Tetrahedron Letters、1994、35、5381−5384)と類似の方法Bにより合成することができる。例えば、フェニルチオール(C6H5CH2SH)(10mmol)溶液及び無水ピリジン(10mmol)のジエチルエーテル溶液25mLを、30分間かけて、冷却され(−78℃)攪拌された二塩化硫黄(10mmol)の無水ジエチルエーテル溶液50mLへと滴下する。反応混合物を30分間攪拌する。対応する第2のチオール(10mmol)及び無水ピリジン(10mmol)のジエチルエーテル溶液25mLを、−78℃で30分間かけて滴下し、反応混合物をさらに30分間攪拌する。pHが中性になるまで、反応混合物を水(2回)、1Nの水酸化ナトリウム溶液(2回)、及び次いで水(2回)で洗浄する。有機溶媒相をCaCl2、又は無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過して濃縮する。残ったものを、ヘキサン−酢酸エチルを溶出液として用いたシリカゲルの短い詰め物に通過させ、高純度の生成物41〜68を40〜100%の収率で得る。
【0247】
上述の詳細な説明及びそれに伴う実施例は説明的なものにすぎず、本発明の範囲を限定するものと解釈されるものではない。開示される実施形態に対する各種の変更及び改変は当業者にとって明らかであろう。本発明の化学構造、置換基、誘導体、中間体、合成、製剤及び/又はその使用方法に関する限定を伴わないこのような変更及び改変は、本発明の精神及び範囲を逸脱することなくなされ得る。本明細書中に参照される米国特許及び出版物は参照として援用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26−1】
【図26−2】
【図27−1】
【図27−2】
【図27−3】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39A】
【図39B】
【図39C】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26−1】
【図26−2】
【図27−1】
【図27−2】
【図27−3】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39A】
【図39B】
【図39C】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【公開番号】特開2011−162562(P2011−162562A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−112874(P2011−112874)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【分割の表示】特願2007−509600(P2007−509600)の分割
【原出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【出願人】(506352603)エイシア バイオサイエンシーズ インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112874(P2011−112874)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【分割の表示】特願2007−509600(P2007−509600)の分割
【原出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【出願人】(506352603)エイシア バイオサイエンシーズ インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】
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