説明

置換洗浄容器およびこの置換洗浄容器を使用した置換洗浄装置

【課題】加水分解後の繊維体にエアロゲル前駆体を担持したゲルシートから、水分と低融点繊維の残渣とを有効に取り除くことを可能にする置換洗浄容器と、この置換洗浄容器を利用した置換洗浄装置とを提供する。
【解決手段】容器本体2と、蓋体3と、ゲルシートの上辺を係止するフック42を有するハンガー4とを具備し、容器本体2は、複数本のハンガー4を所定の間隔で配置可能なハンガー支持部材21が形成され、各ハンガー4の下側に保持したゲルシート5を収納可能な大きさとなされ、ハンガー4の一端側上部と他端側下部とには分岐管22が設けられ、分岐管22は、容器本体2の外部から有機溶媒を供給および排出する給排管22a,23aが設けられ、容器本体2内に向けて、長手方向に沿って所定の間隔で複数の有機溶媒給排口22b,23bが設けられてなる置換洗浄容器1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維体にエアロゲルが担持されたエアロゲルシートの製造工程において使用される置換洗浄容器と、この置換洗浄容器を使用した置換洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、エアロゲルを生成する方法として、エアロゲル製造用に調製されたゾル溶液を加水分解反応させてゲル化し、この加水分解の際に発生した水分を有機溶媒で置換洗浄した後、このゲルを臨界点未満の温度および圧力で乾燥させてエアロゲルを得ることが開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
この場合、加水分解後のエアロゲルは、厚みを有する塊状に形成した場合、内部まで充分に置換洗浄ができなくなってしまう。しかし、置換洗浄し易いように薄いシート状にした場合は、脆く崩れてしまう。
【0004】
一方、シート状にしても保形性が得られるように、ゾル溶液を繊維体に含浸させた後、加水分解反応させてゲル化し、繊維体にエアロゲルを担持させたエアロゲルシートとすることが提案されている(特許文献2)。
【0005】
しかし、繊維体にエアロゲルを担持させたエアロゲルシートの場合、加水分解反応やその後の超臨界乾燥などで繊維構造体が破壊されてしまうため、置換洗浄を行う以前に、良好なエアロゲルシートにはなっていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開2007/010949号公報
【特許文献2】特開2004−3410194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明者は、融点の異なる2種類の繊維が絡み合った繊維体を使用し、加水分解反応時に低融点の繊維を積極的に溶融させてエアロゲルが生成・分散するスペースを確保してエアロゲルシートを製造する方法を提案した。この方法の場合、低融点の繊維が溶融した部分にエアロゲルが生成するため、残った高融点の繊維体にエアロゲルが充分に分散した三次元網目構造の状態となる。
【0008】
しかし、この方法でエアロゲルシートを製造する場合、加水分解によって発生する水分と、溶融してしまった低融点繊維の残渣とを取り除く必要があり、それに好適な置換洗浄容器が必要となる。
【0009】
本発明は、係る実情に鑑みてなされたものであって、繊維体にエアロゲル前駆体を担持したゲルシートから、水分と低融点繊維の残渣とを有効に取り除くことを可能にする置換洗浄容器と、この置換洗浄容器を利用した置換洗浄装置とを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明の置換洗浄容器は、繊維体に含浸させたゾル溶液を加水分解して、繊維体にエアロゲル前駆体を担持したゲルシートとした後、このゲルシートに含有される水分を有機溶媒で置換洗浄する際に使用する容器であって、上面が開口した容器本体と、この容器本体の開口部を閉塞する蓋体と、ゲルシートの上辺を係止または挟持する保持部を有するハンガーとを具備し、容器本体は、開口部近傍に複数本のハンガーを平行して所定の間隔で配置可能なハンガー支持部が形成されるとともに、各ハンガーの下側に保持したゲルシートを収納可能な大きさとなされ、ハンガーの一端側であって、このハンガーと直行する面の上辺部分と、ハンガーの他端側であって、このハンガーと直行する面の下辺部分とには、これら上辺および下辺に沿って分岐管がそれぞれ設けられ、これら分岐管には、容器本体外部から有機溶媒を供給または排出する給排管が設けられるとともに、容器本体内に向けて、長手方向に沿って複数の有機溶媒給排口が設けられてなるものである。
【0011】
また、上記置換洗浄容器において、有機溶媒給排口は、ハンガーの下側に保持された各ゲルシートの間隙に位置するように設けられたものであってもよい。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の置換洗浄装置は、上記置換洗浄容器と、有機溶媒タンクと、洗浄後の有機溶媒を蒸留再生する蒸留再生装置とを具備し、有機溶媒タンクは、置換洗浄容器の上部の給排管と下部の給排管とにそれぞれ接続され、有機溶媒タンクからの有機溶媒を置換洗浄容器内に供給循環させることができるようになされ、蒸留再生装置は、有機溶媒タンクとの間に設けられ、有機溶媒タンク内の有機溶媒を再生した後、有機溶媒タンクに戻すようになされたものである。
【0013】
また、上記課題を解決するための本発明の置換洗浄装置は、上記置換洗浄容器と、有機溶媒タンクと、洗浄後の有機溶媒を蒸留再生する蒸留再生装置と、再生有機溶媒タンクとを具備し、有機溶媒タンクは、置換洗浄容器の上部の給排管と下部の給排管とにそれぞれ接続され、有機溶媒タンクからの有機溶媒を置換洗浄容器内に供給循環させることができるようになされ、蒸留再生装置は、有機溶媒タンクと再生有機溶媒タンクとの間に設けられ、有機溶媒タンク内の有機溶媒を再生した後、再生有機溶媒タンクに戻すようになされ、再生有機溶媒タンクは、有機溶媒タンクの減量分を有機溶媒タンクに供給するようになされたものである。
【0014】
さらに、上記課題を解決するための本発明の置換洗浄装置は、上記置換洗浄装置において、さらに乾燥室を具備し、乾燥室で乾燥した際に発生する蒸気を蒸留再生装置に排出して、この蒸気から有機溶媒を回収するとともに、乾燥室は、置換洗浄容器のハンガーをそのまま内部に収納して内部に、置換洗浄したゲルシートを吊り下げ可能となされたものである。
【発明の効果】
【0015】
以上述べたように、本発明によると、容器本体内に収納したゲルシートの両面で、シート面に沿って有機溶媒を供給循環させて置換洗浄を効率良く行うことができる。また、ゲルシートのシート面に沿って有機溶媒を供給循環させることができるので、繊維体に担持されたエアロゲル前駆体に形成されている細孔を破壊することなく、置換洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る置換洗浄容器の蓋体を除く全体構成の概略を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る置換洗浄容器の全体構成の概略を示す断面図である。
【図3】図2のI-I線断面図である。
【図4】図2のII-II線断面図である。
【図5】本発明に係る置換洗浄装置の全体構成の概略を示すブロック図である。
【図6】本発明に係る置換洗浄装置の他の実施の形態を示すブロック図である。
【図7】本発明に係る置換洗浄装置のさらに他の実施の形態を示すブロック図である。
【図8】本発明に係るの置換洗浄装置のさらに他の実施の形態を示すブロック図である。
【図9】図8に示す置換洗浄装置で用いられている乾燥室の内部構成の概略を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0018】
図1ないし図4は、本発明に係るエアロゲルシートの置換洗浄容器1を示し、図5は同置換洗浄容器1を用いた置換洗浄装置10の全体構成を示している。
【0019】
すなわち、この置換洗浄容器1は、容器本体2と、蓋体3と、ハンガー4とを具備して構成され、加水分解後のゲルシート5に含有される水分や反応残渣を有機溶媒で置換洗浄する際に使用される。
【0020】
容器本体2は、長さ約1200mm、幅約500mmの矩形底面で、高さ約1200mmの有底矩形状に形成され上面が開口されている。この容器本体2の幅方向に沿った側面2a,2bの開口部20近傍の位置には、幅方向に沿ってハンガー支持部材21が設けられている。このハンガー支持部材21は、容器本体2の長さ方向に沿って、容器本体2内にハンガー4を収納した際に、ハンガー4の両端部が支持される溝部21aを形成した長尺の部材で、幅方向に沿って等間隔で複数の溝部21aが設けられている。ハンガー支持部材21の各溝部21aは、対向する側面2a,2bにおいて、互いに対向する位置に設けられている。
【0021】
一方の側面2aは、上記ハンガー支持部材21の下側に、幅方向に沿って分岐管22が設けられている。この分岐管22は、容器本体2の外部から有機溶媒を供給または排出するための給排管22aが設けらている。また、この分岐管22は、容器本体2内に向けて、容器本体2の幅方向に沿って等間隔で複数の有機溶媒給排口22bが設けられている。この有機溶媒給排口22bは、ハンガー4にゲルシート5を吊り下げて各溝部21aにハンガー4をセットした状態で、容器本体2内に収納される各ゲルシート5の間隙、またはゲルシート5と容器本体2との間隙に位置するように設けられている。
【0022】
また、他方の側面2bは、底部近傍の位置に、幅方向に沿って分岐管23が設けられている。この分岐管23には、容器本体2の外部から有機溶媒を供給および排出するための給排管23aが設けらている。また、この分岐管23には、容器本体2内に向けて、容器本体2の幅方向に沿って等間隔で複数の有機溶媒給排口23bが設けられている。この有機溶媒給排口23bは、ハンガー4にゲルシート5を吊り下げて溝部21aにハンガー4をセットした状態で、容器本体2内に収納される各ゲルシート5の間隙、またはゲルシート5と容器本体2との間隙に位置するように設けられている。なお、図3および図4に示すように、有機溶媒給排口22b、23bはゲルシートの間隙に一つずつ設けられているが、特に一つずつ設けられたものに限定されるものではなく、各ゲルシート5の間隙、またはゲルシート5と容器本体2との間隙に二つ以上の有機溶媒給排口22b、23bが位置するように複数の有機溶媒給排口22b、23bが所定の間隔で設けられたものであってもよい。また、逆に有機溶媒給排口22b、23bが等間隔で設けられ、ゲルシート5を吊り下げたハンガー4が、所定の間隔で設けられることによって、各ゲルシート5の間隙、またはゲルシート5と容器本体2との間隙に二つ以上の有機溶媒給排口22b、23bが位置するように構成されたものであってもよい。
【0023】
これにより、有機溶媒は、下方の有機溶媒給排口23bから各ゲルシート5の両面で面に沿って供給し、上方の有機溶媒給排口22bから排出することによって、容器本体2内に循環流を形成することができる。なお、有機溶媒は、上方の有機溶媒給排口22bから供給して下方の有機溶媒給排口23bから排出して循環流を形成するものであってもよい。
【0024】
この容器本体2の上面開口部20には、蓋体3と接続するためのフランジ面24が形成されている。このフランジ面24には断面溝型のクランプ部材25が設けられている。このクランプ部材25は、対向する一方の側面25aがフランジ面24に対して接近または離隔できるように回動可能に連結されている。他方の側面25bには、押圧面を有するネジ部材26が螺合するように構成されている。すなわち、クランプ部材25は、フランジ面24から離隔した状態で、このフランジ面24上に蓋体3を設けた後、回動させてフランジ面24に接近させた後、ネジ部材26を上方の側面25bから螺合して蓋体3の上面をフランジ面24上に押圧して容器本体2内を蓋体3で密閉できるようになされている。
【0025】
蓋体3は、フランジ面24と合致して開口部20を閉塞することが可能な板状に形成されている。この蓋体3と容器本体2のフランジ面24との間には、シール材(図示省略)を介在させて密閉する。
【0026】
ハンガー4は、その両端が、ハンガー支持部材21の溝部21aに納まる断面形状に形成され、上記した容器本体2の対向する側面2a,2bに設けたハンガー支持部材21の溝部21a間に架け渡すことが可能な長尺の長さの棒状に形成されている。このハンガー4の上側には、取っ手41が設けられている。また、ハンガー4の下側には、等間隔で複数のフック42が設けられている。これらフック42にゲルシート5を係止させることで、ハンガー4の下側にゲルシート5を吊り下げることができるようになされている。
【0027】
なお、本実施の形態では、幅500mm、長さ1000mmのゲルシート5を横並びに2枚吊り下げるようになされているが、このゲルシート5は、本実施の形態のように2枚横並びでなく、1枚を吊り下げるものであってもよい。ただし、この置換洗浄容器1は、ゲルシート5の面に沿って有機溶媒を供給循環するように構成しているため、容器本体2内にゲルシード5を吊り下げた状態でゲルシート5と容器本体2との間に余分な間隙が形成されすぎると、ゲルシート5の面に沿った有機溶媒の流れが阻害される可能性があるため、ゲルシート5を収納した大きさに略合致する容器本体2の大きさとしておくことが好ましい。
【0028】
また、本実施の形態において、容器本体2の大きさとしては、特に限定されるものではなく、その内部に収納されるゲルシート5の大きさに応じて形成された各種大きさのものを使用することができる。
【0029】
なお、ゲルシート5は、低融点と高融点の2種類の繊維が絡み合った繊維体にゾル溶液を含浸させた後、ゾル溶液を加水分解して得られる。この状態で、ゲルシートは、低融点繊維が溶融した場所にエアロゲル前駆体が生じ、高融点繊維の繊維体にエアロゲル前駆体を担持した状態となり、加水分解の際の加熱で溶融した低融点繊維は、ゲルシート5全体に残渣が分散した状態で保持されている。また、加水分解の際に発生した水分もゲルシート5全体に分散した状態で保持されている。
【0030】
この置換洗浄容器1は、熱伝導加熱可能な金属で構成され、底部から電磁加熱する際にも対応することができるようになされている。
【0031】
次に、この置換洗浄容器1を使用した置換洗浄装置10について説明する。
【0032】
この置換洗浄装置10は、有機溶媒タンク6と、洗浄後の有機溶媒を蒸留再生する蒸留再生装置7とを具備して構成される。
【0033】
有機溶媒タンク6は、置換洗浄容器1の上部の給排管22と下部の給排管23とにそれぞれ接続され、有機溶媒タンク6からの有機溶媒を置換洗浄容器1内に供給循環させることができるようになされている。有機溶媒としては、ゲルシート5に含まれる水分を洗浄置換することができ、低融点繊維の反応残渣を溶解して洗浄除去することができるものが使用される。具体的には使用する低融点繊維によっても異なるが、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、アセトン、アセトニトリル、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、クロロホルム、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸、およびギ酸などの各種有機溶媒が使用される。
【0034】
蒸留再生装置7は、有機溶媒タンク6との間に接続され、有機溶媒タンク6内の有機溶媒を蒸留再生した後、再度有機溶媒タンク6に戻すように構成されている。
【0035】
次に、この置換洗浄装置10を用いたゲルシート5の置換洗浄について説明する。
【0036】
まず、上記したゲルシート5の上辺近傍をハンガー4のフック42に突き刺し、ハンガー4の下側にゲルシート5を吊り下げた状態とする。
【0037】
このハンガー4の両端部分を、容器本体2内のハンガー支持部材21の溝部21aに嵌め込んで、容器本体2内にゲルシート5を吊り下げた複数のハンガー4をセットする。これにより、隣接するゲルシート5との間に間隙を設けた状態で複数枚のゲルシート5を容器本体2内に収納した状態とする。
【0038】
容器本体2のフランジ面24にシール材(図示省略)を介して蓋体3を設け、クランブ部材25で圧接固定する。
【0039】
この状態にしてから置換洗浄を開始する。
【0040】
置換洗浄は、有機溶媒タンク6からの有機溶媒を、容器本体2の他方の側面2bの下方の有機溶媒給排口23bから容器本体2内に供給し、上方の有機溶媒給排口22bから排出することによって、容器本体2内に、ゲルシート5の面に沿った循環流を形成して行う。なお、容器本体2内に有機溶媒が充填された状態で、有機溶媒の供給および排出を止め、繊維体を構成する低融点繊維の融点以上の温度まで有機溶媒を加熱して一定時間放置し、熱対流による洗浄を行う。この加熱は置換洗浄容器1の底部に電磁加熱器(図示省略)を設けておき、置換洗浄容器1全体を底部からの電磁加熱によって加熱することによって行うことができる。この加熱洗浄により、低融点繊維の反応残渣を置換洗浄することができる。加熱洗浄後は、再度有機溶媒の供給および排出を行い容器本体2内の有機溶媒を入れ替える。この操作を一定時間毎に数回行って断続的に置換洗浄を行う。
【0041】
なお、上記では有機溶媒の供給および排出を止めて加熱洗浄し、その後有機溶媒を入れ替えて断続的に置換洗浄を行うようになされているが、有機溶媒タンク6から置換洗浄装置1に到る経路の途中に有機溶媒加熱装置(図示省略)を設け、あらかじめ加熱した有機溶媒を置換洗浄容器1に循環させることによって加熱洗浄するものであってもよい。この場合、有機溶媒の循環流を止めることなく、有機溶媒を常時循環させて連続的に置換洗浄を行うことができる。
【0042】
上記したように連続的に有機溶媒を循環させた場合であっても、断続的に有機溶媒を循環させた場合であっても、容器本体2内で循環する有機溶媒は、有機溶媒給排口22bおよび有機溶媒給排口23bが各ゲルシート5の間隙またはゲルシート5と容器本体2との間隙に位置するように設けられているので、各ゲルシート5の両面で面に沿って供給し、循環させた後、面に沿って排出させることができる。
【0043】
したがって、有機溶媒の偏流を生じることなく、各ゲルシート5の両面から均等に置換洗浄を行うことが可能となり、効率の良い置換洗浄を行うことができる。また、各ゲルシート5の面に沿ってやさしく有機溶媒を供給し循環させ、排出することができるので、洗浄によってエアロゲル前駆体の細孔を破壊することなく洗浄することができる。
【0044】
なお、洗浄後、有機溶媒タンク6に回収された有機溶媒は、蒸留再生装置7で蒸留して水分や低融点繊維の反応残渣を取り除いた後、有機溶媒タンク6に戻されることによって再生される。
【0045】
図6は上記した置換洗浄容器1を使用した置換洗浄装置10の他の実施の形態を示している。この置換洗浄装置11は、有機溶媒タンク6とは別に、蒸留再生装置7で再生した有機溶媒を回収する再生有機溶媒タンク60をさらに備えている。
【0046】
有機溶媒タンク6は、置換洗浄容器1の上部の給排管22と下部の給排管23とにそれぞれ接続され、有機溶媒タンク6からの有機溶媒を置換洗浄容器1内に供給循環させることができるようになされている。
【0047】
蒸留再生装置7は、有機溶媒タンク6と再生有機溶媒タンク60との間に接続され、有機溶媒タンク6内の有機溶媒を蒸留再生した後、再生有機溶媒タンク60に戻すように構成されている。
【0048】
この置換洗浄装置11は、再生有機溶媒タンク60に貯留していた再生有機溶媒を、有機溶媒タンク6の減量分に応じて有機溶媒タンク6に供給することができる。
【0049】
すなわち、ゲルシート5に含まれる水分や低融点繊維の反応残渣を、有機溶媒によって置換洗浄すると、ゲルシート5に有機溶媒が吸収されるので、置換洗浄容器1で洗浄する毎に有機溶媒が消費される。したがって、置換洗浄を繰り返し何回も行っていると、有機溶媒タンク6の液量が減量すると同時に、有機溶媒の濃度が低下して来る。しかし、有機溶媒タンク6からの有機溶媒を置換洗浄容器1内に供給循環させている最中に、蒸留再生装置7を稼働させると、有機溶媒タンク6の有機溶媒が無くなってしまうことが懸念されるため、蒸留再生装置7を稼働させることができない。しかし、このような場合に再生有機溶媒タンク60に貯留しておいた高純度の再生有機溶媒を有機溶媒タンク6に供給すれば、有機溶媒タンク6からの有機溶媒を置換洗浄容器1内に供給循環させている最中であっても、蒸留再生装置7を稼働させて有機溶媒の再生を行うことができる。
【0050】
なお、本実施の形態において、置換洗浄容器1は、図面上一つしか接続されていないが、複数の置換洗浄容器1を並列接続するようになされたものであってもよい。上記した置換洗浄装置11は、このように複数の置換洗浄容器1を並列接続した場合のように、有機溶媒の消費と濃度低下が激しくなる場合に特に有効に使用することができる。
【0051】
有機溶媒タンク6の容量は、接続する置換洗浄容器1の容量や数にあわせて調整される。また、蒸留再生装置7の容量や蒸留段数も、有機溶媒タンク6の容量にあわせて調整される。
【0052】
図7および図8は、上記した置換洗浄装置10,11に乾燥室8をさらに具備して構成した置換洗浄装置10a、11aである。
【0053】
乾燥室8は、図9に示すように、置換洗浄容器1で置換洗浄した後のゲルシート5を乾燥させるためのもので、その内部の天井面には、ラック4の取っ手41の部分を係止するレール81が設けられている。このレール81にラック4の取っ手41を係止させることによって、乾燥室8内にゲルシート5を吊り下げることができるようになされている。この乾燥室8は、側壁下部に設けた熱風の導入管82から乾燥室8内に熱風を導入し、この側壁と対向する側壁の上部に設けた排気管83から排気するように構成されている。この排気中には、上記した置換洗浄容器1で置換洗浄した際に使用した有機溶媒が大量に含まれているため、排気管83からの排気は、蒸留再生装置7に供給して有機溶媒を回収するようになされている。
【0054】
なお、上記実施の形態では、熱風乾燥するように構成されているが、乾燥室8内に遠赤外線ヒータやその他の輻射熱加熱装置(図示省略)を設けてゲルシート5を加熱乾燥させるように構成されたものであってもよいし、上記した熱風乾燥と併用するものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係る置換洗浄容器および置換洗浄装置は、繊維体にエアロゲルを担持させたエアロゲルシートの製造に使用される。
【符号の説明】
【0056】
1 置換洗浄容器
10 置換洗浄装置
10a 置換洗浄装置
11 置換洗浄装置
11a 置換洗浄装置
2 容器本体
20 開口部
21 ハンガー支持部材
22 分岐管
22a 給排管
22b 給排口
23a 給排管
23b 給排口
3 蓋体
4 ハンガー
42 フック(保持部)
5 ゲルシート
6 有機溶媒タンク
60 再生有機溶媒タンク
7 蒸留再生装置
8 乾燥室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維体に含浸させたゾル溶液を加水分解して、繊維体にエアロゲル前駆体を担持したゲルシートとした後、このゲルシートに含有される水分を有機溶媒で置換洗浄する際に使用する容器であって、
上面が開口した容器本体と、この容器本体の開口部を閉塞する蓋体と、ゲルシートの上辺を係止または挟持する保持部を有するハンガーとを具備し、
容器本体は、開口部近傍に複数本のハンガーを平行して所定の間隔で配置可能なハンガー支持部が形成されるとともに、各ハンガーの下側に保持したゲルシートを収納可能な大きさとなされ、ハンガーの一端側であって、このハンガーと直行する面の上辺部分と、ハンガーの他端側であって、このハンガーと直行する面の下辺部分とには、これら上辺および下辺に沿って分岐管がそれぞれ設けられ、
これら分岐管には、容器本体外部から有機溶媒を供給または排出する給排管が設けられるとともに、容器本体内に向けて、長手方向に沿って複数の有機溶媒給排口が設けられてなることを特徴とする置換洗浄容器。
【請求項2】
有機溶媒給排口は、ハンガーの下側に保持された各ゲルシートの間隙に位置するように設けられた請求項1記載の置換洗浄容器。
【請求項3】
請求項1または2記載の置換洗浄容器と、有機溶媒タンクと、洗浄後の有機溶媒を蒸留再生する蒸留再生装置とを具備し、
有機溶媒タンクは、置換洗浄容器の上部の給排管と下部の給排管とにそれぞれ接続され、有機溶媒タンクからの有機溶媒を置換洗浄容器内に供給循環させることができるようになされ、
蒸留再生装置は、有機溶媒タンクとの間に設けられ、有機溶媒タンク内の有機溶媒を再生した後、有機溶媒タンクに戻すようになされたことを特徴とする置換洗浄装置。
【請求項4】
請求項1または2記載の置換洗浄容器と、有機溶媒タンクと、洗浄後の有
機溶媒を蒸留再生する蒸留再生装置と、再生有機溶媒タンクとを具備し、
有機溶媒タンクは、置換洗浄容器の上部の給排管と下部の給排管とにそれぞれ接続され、有機溶媒タンクからの有機溶媒を置換洗浄容器内に供給循環させることができるようになされ、
蒸留再生装置は、有機溶媒タンクと再生有機溶媒タンクとの間に設けられ、有機溶媒タンク内の有機溶媒を再生した後、再生有機溶媒タンクに戻すようになされ、
再生有機溶媒タンクは、有機溶媒タンクの減量分を有機溶媒タンクに供給するようになされたことを特徴とする置換洗浄装置。
【請求項5】
請求項3または4記載の置換洗浄装置において、さらに乾燥室を具備し、
乾燥室で乾燥した際に発生する蒸気を蒸留再生装置に排出して、この蒸気から有機溶媒を回収するとともに、乾燥室は、置換洗浄容器のハンガーをそのまま内部に収納して内部に、置換洗浄したゲルシートを吊り下げ可能となされたことを特徴とする置換洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−190548(P2011−190548A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56081(P2010−56081)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(510057752)アサヒ科学株式会社 (4)
【Fターム(参考)】