説明

置敷化粧床材

【課題】タイル毎に樹脂基台から簡単に着脱できるようにして、樹脂基台毎の交換による多大なる無駄を解消し、かつ可燃物として扱えないタイルと樹脂基台との分別廃棄を簡単に行うことができる置敷化粧床材を提供する。
【解決手段】9枚のタイル2を樹脂基台3に止着して床置き使用される置敷化粧床材1を前提とする。各タイル本体20の裏面の四隅に、突起42を有する有底円筒形状の係合部材4を設ける一方、基台本体30に、係合部材4の突起42を下端で係脱自在に係止する円筒形状の係止部を設ける。各タイル本体20の係合部材4の突起42を基台本体30の係止部5の孔部51に対して弾性変形させつつ挿通させて下端で係止することによって各タイル2を樹脂基台3に止着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルコニーやベランダなどに敷設される置敷化粧床材に関し、詳しくは、複数枚の表面材とこの各表面材を下方から受けて支持する樹脂基台とを備えたものに係る。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種置敷化粧床材としては、複数枚の表面材が樹脂基台の上面に、整列配置されるとともに、接着剤を介して樹脂基台に止着されるようにしたものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2783127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記従来のものでは、複数枚の表面材が樹脂基台に接着剤を介して止着されているため、たとえ1枚の表面材が破損したり傷付いたりしても、樹脂基台毎交換しなければならず、残る表面材に破損も傷付きもないために多大なる無駄となってしまう。
しかも、表面材と樹脂基台との材質が異なっている場合、リフォームなどで置敷化粧床材を廃棄する際に表面材が樹脂基台と同様に可燃物として扱えないことがあり、接着剤を介した止着では表面材と樹脂基台とを分別するのが非常に困難なものとなる。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、表面材毎に樹脂基台から簡単に着脱できるようにして、樹脂基台毎の交換による多大なる無駄を解消し、かつ表面材が可燃物として扱えない際の樹脂基台との分別廃棄を簡単に行うことができる置敷化粧床材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明では、複数枚の表面材と、この各表面材を下方から受けて支持する樹脂基台とを備えた置敷化粧床材を前提とする。そして、前記各表面材及び前記樹脂基台の一方に、突起を有する係合部を設ける一方、前記各表面材及び前記樹脂基台の他方に、前記係合部の突起を係脱自在に係止する係止部を設けている。
【0007】
この特定事項により、各表面材が樹脂基台に対し突起を有する係合部とこの係合部の突起を係止する係止部とによって止着されているので、1枚の表面材が破損したり傷付いたりすれば、当該表面材のみと樹脂基台との間において係合部の突起を係止部から離脱させればよく、該当する表面材のみの交換が行える。これにより、1枚の表面材が破損したり傷付いたりした際の樹脂基台毎の交換による多大なる無駄を解消することが可能となる。
しかも、リフォームなどで置敷化粧床材を廃棄する際に表面材と樹脂基台との材質が異なって表面材が樹脂基台と同様の可燃物として扱えなくても、各表面材が樹脂基台から容易に取り外され、各表面材と樹脂基台との分別廃棄を簡単に行うことが可能となる。
【0008】
また、前記係止部を、略円筒形状に形成する一方、前記係合部を、前記係止部に対し挿通可能な略円筒形状に形成し、この係合部に、前記係止部に挿通された際に前記突起を半径方向内方に弾性変形させるスリットを設けていてもよい。
【0009】
この場合には、係合部を係止部に対し挿通する際に突起を半径方向内方へ弾性変形させるスリットによって、係止部に対し係合部の突起を無理なく挿通させて円滑に係止することができる。しかも、表面材本体を基台本体から取り外す際に突起を半径方向内方へ弾性変形させれば係止部による係止が容易に解除され、表面材本体を基台本体から簡単に取り外すことができる。
【発明の効果】
【0010】
以上、要するに、突起を有する係合部とこの係合部の突起を係止する係止部とによって表面材を樹脂基台に止着することで、破損又は傷付いた表面材のみを樹脂基台から取り外して交換でき、樹脂基台毎の交換による多大なる無駄を解消することができる。しかも、リフォームなどで置敷化粧床材を廃棄する際に表面材が可燃物として扱えなくても、表面材と樹脂基台との分別廃棄を簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る置敷化粧床材を表側から見た平面図である。
【図2】図1の置敷化粧床材の基台本体に1枚のタイル本体のみを取り付けた状態で該基台本体を表側から見た平面図である。
【図3】図2の置敷化粧床材を裏側から見た背面図である。
【図4】図2の置敷化粧床材を裏側から見た斜視図である。
【図5】図2のタイル本体付近で切断した置敷化粧床材一部分の縦断側面図である。
【図6】図2のタイル本体を取り付けた置敷化粧床材の一部分を裏側から見た斜視図である。
【図7】図6のタイル本体に取り付けた係合部材を裏側から見た斜視図である。
【図8】図6の係合部材を下方から見た下面図である。
【図9】図8の係合部材を下方から見た斜視図である。
【図10】図8の係合部材を突起の位置から周方向に90°位相をずらせた位置から見た側面図である。
【図11】図10の係合部材を突起の位置から見た側面図である。
【図12】図5の係合部材の突起を弾性変形させて表面材を樹脂基台に取り付ける直前の状態を示す置敷化粧床材一部分の縦断側面図である。
【図13】図1の置敷化粧床材を雄嵌合部側の辺から見た側面図である。
【図14】図1の置敷化粧床材を雌嵌合部側の辺から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0013】
図1において、1は本発明の実施の形態に係る置敷化粧床材であって、この置敷化粧床材1は、複数枚、例えば9枚の表面材としての磁器よりなる平面視で略正方形状のタイル2,2,…と、これらのタイル2が止着され、ポリエチレンやEVA(エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂)などの樹脂よりなる樹脂基台3とを備えている。また、各タイル2のタイル本体20は、全て同一形状、同一寸法に形成されている。そして、置敷化粧床材1は、図示しないバルコニーやベランダなどに床置きして使用される。
【0014】
図2〜図4に示すように、樹脂基台3の基台本体30は、略正方形枠状の枠体31を多数の縦桟32及び横桟33により格子状に繋いで形成されてなり、各縦桟32及び各横桟33の交差部より裏面側(図4では上方)に突出する脚部34を備えている。この基台本体30は、タイル2が縦方向及び横方向にそれぞれ3つずつ配列されて止着される大きさに形成されている。また、各縦桟32及び各横桟33のうち、各タイル本体20の縁部に対応する縦桟32及び横桟33は、その他の縦桟32及び横桟33(各タイル本体20の縁部に対応しない縦桟32及び横桟33)よりも幅広に形成されている。なお、枠体31は、その外端縁を下方に延ばした断面略L字状に形成され、下端が脚部34の下端よりも上方に位置している。
【0015】
また、図5に示すように、各タイル本体20の裏面の四隅には、それぞれ下方に突出する有底円筒形状の係合部としての係合部材4,4,…が取り付けられている。各係合部材4は、その底部の表側に接着剤貯留用の凹部41を有し、この凹部41に貯留された接着剤40によって各タイル本体20の裏面に接着されている。また、各係合部材4は、PVC(ポリ塩化ビニル)、ABS樹脂(アクリロニトリル ブタジエン スチレン共重合樹脂)又はAES樹脂(アクリロニトリル エチレン-プロピレン-ジエン スチレン共重合樹脂)などの樹脂からなる。
【0016】
一方、図6及び図7に示すように、各タイル本体20の四隅の係合部材4にそれぞれ対応する基台本体30の対応部位、つまり、枠体31、幅広な縦桟32及び横桟33の交差部には、係合部材4が挿通可能な孔部51を下方に連続させるように下方へ向かって突出する略円筒形状の係止部5,5,…が一体的に形成されている。この各係止部5の下端は、枠体31の外端縁の下端よりも上方に位置している。この場合、係合部材4及び係止部5は、係合部材4が係止部5に対して挿通されるように互いの径を異ならせていて、係合部材4の外径と係止部5の孔部51の内径との間に若干の隙間を存在させている。
【0017】
また、図8〜図11に示すように、係合部材4には、その周方向で互いに180度位相をずらせた位置より下方に延び、かつその延出端より半径方向外方に突出する突起42,42が一体的に設けられている。また、係合部材4には、各突起42を半径方向内方(縮径方向)へ弾性変形させるスリット43が設けられている。このスリット43は、各突起42の周方向両側にその下端から上部位置に亘って連続的に形成されている。
【0018】
そして、係止部5の下端は、各突起42の上面と略一致している。また、図12に示すように、係合部材4の各突起42は、係止部5の孔部51に挿通された際に各スリット43により係合部材4の縮径方向へ弾性変形し、係止部5の下端を超えた際に縮径方向への弾性変形から復帰して係止部5の下端に係止されるようになっている。
【0019】
更に、図13及び図14に示すように、基台本体30の枠体31の4辺のうちの互いに隣接する2辺(図3では下辺及び右辺)に雄雌嵌合可能な雄嵌合部35,35,…がそれぞれ各辺毎に間隔を隔てて6つずつ一体的に設けられている一方、残る2辺(図3では上辺及び左辺)に各雄嵌合部35に嵌合する雌嵌合部36,36,…がそれぞれ各辺毎に間隔を隔てて6つずつ一体的に設けられている。この場合、枠体31の各辺毎の各雄嵌合部35及び各雌嵌合部36は、図示しない同種の樹脂基台の基台本体の枠体の各辺毎の各雌嵌合部及び各雄嵌合部とそれぞれ対応しており、互いの枠体31の辺同士が雌雄嵌合して当該枠体31の辺に隣接する2辺をそれぞれ一致させた状態で延ばすように連結されている。
【0020】
また、各雄嵌合部35は、基台本体30の枠体31の下端より下方に突出する突出片よりなり、その下端が脚部34の下端と略一致している。一方、各雌嵌合部36は、各雄嵌合部35(突出片)を上方から挿通させて嵌合するように、樹脂基台3の枠体31の下端より下方向きにかつ外方向きに突出させた突出部を上下方向に貫通する孔部よりなり、その下端(突出部の下端)が脚部34の下端と略一致している。この場合、同種の樹脂基台の基台本体同士を連結する際に、各雌嵌合部36は、各雄嵌合部の下方に入り込んだ状態で当該各雄嵌合部と嵌合され、これによって置敷化粧床材1同士が隙間なく連結されるようにしている。
【0021】
したがって、本実施の形態では、各タイル本体20に設けた係合部材4の突起42が基台本体30に設けた係止部5の孔部51に挿通されて下端で係止されることによって止着されるので、9枚のうち、たとえば1枚のタイル2が破損したり傷付いたりすれば、当該タイル2のみと樹脂基台3との間においてそのタイル本体20の各係合部材4の突起42を係止部5の下端から離脱させればよく、該当するタイル2のみの交換が行える。これにより、たとえば1枚のタイル2が破損したり傷付いたりした際の樹脂基台3毎の交換による多大なる無駄を解消することができる。
【0022】
しかも、リフォームなどで置敷化粧床材1を廃棄する際、磁器製のタイル本体20と基台本体30との互いの材質が異なっているためにタイル2が樹脂基台3と同様の可燃物として扱えなくても、各タイル本体20が基台本体30から容易に取り外され、各タイル2と樹脂基台3との分別廃棄を簡単に行うことができる。
【0023】
また、各タイル本体20の裏面に係合部材4が接着剤40により接着されているので、各タイル2とは材質の異なる係合部材4を用いることができる上、各タイル本体20の裏面に対し係合部材4を接着剤40により簡単に取り付けることができる。
【0024】
また、係合部材4の各突起42の周方向両側に、各突起42を半径方向内方に弾性変形させるスリット43が設けられているので、係合部材4を係止部5の孔部51に挿通する際に各突起42が半径方向内方に弾性変形して無理なく挿通され、当該突起42が係止部5の下端に円滑に係止することができる。しかも、タイル本体20を基台本体30から取り外す際に各突起42を半径方向内方に弾性変形させれば係止部の下端からの係止が容易に解除され、タイル2を樹脂基台3から簡単に取り外すことができる。
【0025】
更に、基台本体30とこれと同種の基台本体とは、互いの枠体部31の辺同士の各雄嵌合部35(又は各雌嵌合部36)に対し各雌嵌合部(又は雄嵌合部)を雄雌嵌合させることで、枠体部31の辺同士の連結がなされるので、バルコニーやベランダなどの敷設領域に則して複数の基台本体30の辺同士を繋げて置敷化粧床材1を敷設することができる。
【0026】
なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、その他種々の変形例を包含している。例えば、本実施の形態では、表面材として磁器製のタイル2を用いたが、陶器製、ガラス製、木製又は合成樹脂製などの表面材であってもよい。この場合、合成樹脂製の表面材が適用されていれば、この表面材本体の裏面に係合部又は係止部を一体的に設けることも可能となり、各表面材本体の裏面に係合部又は係止部を取り付ける作業が不要となって置敷化粧床材1の生産性を向上させることが可能となる。
【0027】
また、本実施の形態では、係合部材4を各タイル本体20に、係止部5を基台本体30にそれぞれ設けたが、突起を有する係合部が基台本体に、係止部としての係止部材が各タイル本体にそれぞれ設けられていてもよい。この場合、係合部の内周に係止部材の外周が挿通されるように係止部材及び係合部の互いの径を異ならせていれば、係合部の半径方向内方に突出する突起を係脱自在に係止する孔部などを係止部材に設けておく必要がある。一方、係止部材の内周に係合部の外周が挿通されるように係止部材及び係合部の互いの径を異ならせていれば、係合部の半径方向外方に突出する突起を係脱自在に係止する孔部などを係止部材に設けておく必要がある。
【0028】
また、本実施の形態では、9枚のタイル20を樹脂基台3に対し縦方向及び横方向にそれぞれ3つずつ配列して止着したが、タイルなどの表面材の数量はこれに限定されるものではなく、複数であれば樹脂基台に何枚止着されていてもよい。
【0029】
更に、本実施の形態では、タイル本体20の裏面の四隅に係合部材4を設けたが、タイル本体の裏面の1〜3箇所又は5箇所以上に係合部(係合部材)又は係止部が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 置敷化粧床材
2 タイル(表面材)
20 タイル本体
3 樹脂基台
30 基台本体
4 係合部材(係合部)
42 突起
43 スリット
5 係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の表面材と、この各表面材を下方から受けて支持する樹脂基台とを備えた置敷化粧床材であって、
前記各表面材及び前記樹脂基台の一方には、突起を有する係合部が設けられている一方、
前記各表面材及び前記樹脂基台の他方には、前記係合部の突起を係脱自在に係止する係止部が設けられていることを特徴とする置敷化粧床材。
【請求項2】
前記係止部が、略円筒形状に形成されている一方、
前記係合部が、前記係止部に対し挿通可能な略円筒形状に形成され、前記係止部に挿通された際に前記突起を半径方向内方に弾性変形させるスリットを備えている請求項1に記載の置敷化粧床材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−172302(P2012−172302A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31912(P2011−31912)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】