説明

置物玩具

【課題】レンチキュラーレンズを通して見た場合の形態変化に富み、その形態変化に意外性がある置物玩具を提供すること。
【解決手段】液体を充填させたケースと、液体中で遊泳可能な遊泳体と、を備え、ケースの前壁が透明で表面がレンチキュラーレンズとなっており、遊泳体にはストライプ状の絵柄が形成され、レンチキュラーレンズを通して遊泳するストライプ状の絵柄を見るように構成することによって、絵柄の形態変化を楽しめるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンチキュラーレンズを通して見ることによって形態変化を楽しむことができる置物玩具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レンチキュラーレンズとは、シリンドリカル状の細長い凸レンズを一定方向に所定ピッチで並設してなるものである。このレンチキュラーレンズを用いた玩具としては、従来、次のような玩具が知られている。
第1の玩具は、レンチキュラーレンズをケースに対して上下動可能に設置し、このレンチキュラーレンズを上下方向に移動させるもの(特許文献1)である。
第2の玩具は、外表面にレンチキュラーレンズを設置し、インターレース状に並べた複数の短冊状絵柄部分からなる複数の絵柄が描かれたシートをレンチキュラーレンズの裏面側に装着したもの(特許文献2)である。
他方、液体中で魚模型(遊泳体)を磁力作用によって遊泳させる水中磁力線作動玩具も知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3033636号公報
【特許文献2】特開平10−327925号公報
【特許文献3】実公平5−15359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された玩具は、レンチキュラーレンズの移動によってキューブの絵柄が振動するのを見て楽しむものであるが、絵柄自体は変化せず、絵柄が細かく振動するだけであるので、形態変化に乏しいものであった。
また、特許文献2に開示された玩具は、レンチキュラーレンズに対して見る角度を変化させて絵柄が変化するのを見て楽しむものであるが、決まり切った絵柄の間で形態が整然と変化するのみで、形態変化の意外性に乏しいものであった。
また、特許文献3に開示された玩具は、魚模型が液体中を遊泳するのを見て楽しむものであるが、魚模型自体の移動はあるものの、魚模型の形態が大きくは変化しないため、やはり、形態変化の意外性に乏しいものであった。
【0005】
本発明は、レンチキュラーレンズを通して見た場合の形態変化に富み、その形態変化に意外性がある置物玩具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明に係る置物玩具は、
液体を充填させたケースと、
前記液体中で遊泳可能な遊泳体と、
を備え、
前記ケースは、少なくとも一部が透明であり、その透明な部分の表面の少なくとも一部は、細長い凸レンズを一定ピッチで並設してなるレンチキュラーレンズとなっており、
前記遊泳体には絵柄が形成され、この絵柄は前記一定ピッチでインターレース状に複数並べられた短冊状絵柄部分で構成され、
前記ケースの外部から前記レンチキュラーレンズを通して前記絵柄を視認し得るように構成されている
ことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明に係る置物玩具は、請求項1に記載の置物玩具において、前記液体の流れを形成するための液流形成手段を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明に係る置物玩具は、請求項1又は2に記載の置物玩具において、 前記遊泳体の表面には、変化の前後に亘る前記絵柄が複数形成され、この複数の絵柄の間では、互いに、前記短冊状絵柄部分の位相がずらしてあることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明に係る置物玩具は、請求項1から3いずれか一項に記載の置物玩具において、前記遊泳体は、静止する前記液体中に置かれた場合に、前記短冊状絵柄部分の並び方向が上下方向となるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の置物玩具によれば、遊泳体が液体中で遊泳したとき、レンチキュラーレンズを通して見る絵柄は、刻々変化することになる。例えば、レンチキュラーレンズの凸レンズの延在方向と、短冊状絵柄部分の延在方向とが合致する時には、視覚上で、絵柄が消失したり、出現したりする。また、凸レンズの延在方向と、短冊状絵柄部分の延在方向とが合致しない時には、視覚上で、崩れた絵柄が出現する。すなわち、遊泳体が液体中で方向性なく遊泳した際には、視覚上で、絵柄が突然崩れたり、出現したり、消失したりする。この順番は遊泳体の遊泳状況によって変化する。
よって、形態変化に富むとともに、意外性のある形態変化を行う置物玩具が実現できることになる。
なお、複数の遊泳体に同一絵柄を担持させておくことも可能である。この場合、視覚上で消失した絵柄が突然他の場所から出現したり、同時に同じ絵柄が見え隠れしたりするので、さらに、全体としての形態変化の意外性が増すことになる。
【0011】
請求項2の置物玩具によれば、液流形成手段によって液流を形成することによって、簡単に、液体中で遊泳体を遊泳させることができる。
【0012】
請求項3の置物玩具によれば、レンチキュラーレンズの凸レンズの延在方向と、短冊状絵柄部分の延在方向とが合致している状態で、凸レンズの延在方向と直交する方向に遊泳体が移動すると、レンチキュラーレンズを通して見た絵柄は2つの絵柄の間で交互に変化する。
【0013】
請求項4の置物玩具によれば、遊泳体の姿勢が比較的に安定し、レンチキュラーレンズの凸レンズの延在方向と、短冊状絵柄部分の延在方向とが合致する方向に遊動体は姿勢調節されるので、絵柄が整然と形態変化する確率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る置物玩具の実施形態に係る置物玩具の斜視図である。
【図2】図1の置物玩具のケースの一部を側方から見た場合の断面図である。
【図3】遊泳体に形成される絵柄を説明するための図であり、(A)は海月の第1の姿態の絵柄、(B)は海月の第2の姿態の絵柄、(C)は第1の姿態の絵柄と第2の姿態の絵柄とを組み合わせた絵柄である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る置物玩具の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
本実施形態の置物玩具1は、図1に示したように、ケース10と、このケース10に充填された液体20(図2参照)と、前記ケース10内に設置され前記液体20中で遊泳可能な遊泳体30と、前記液体20の流れを形成する液流形成手段40と、前記ケース10を支持する基台50とを備えている。
【0017】
ケース10は扁平な箱状に形成されている。このケース10は基台50に起立状態で支持されている。すなわち、ケース10は、大きな面(主面)が正面を向き且つ奥行き寸法が小さくなるように、基台50に支持されている。この場合の奥行き寸法は、遊泳体30が前後に倒れない程度とすることが好ましい。
ケース10の少なくとも前壁11は、ガラス又はアクリル樹脂等からなる透明板から構成されている。全ての壁が透明板で構成されていてもよいし、前壁11の一部が透明となっていてもよい。
ケース10の前壁11の表面にはレンチキュラーレンズ11aが形成されている。レンチキュラーレンズ11aは、シリンドリカル状の細長い凸レンズを一定のピッチで並設して構成されるものである。実施形態の置物玩具1の場合、レンチキュラーレンズ11aは、細長い凸レンズが上下方向に一定のピッチで並ぶように前壁11の表面に形成されている。このレンチキュラーレンズ11aの形成にあたっては、ケース10の前壁11と一体にレンチキュラーレンズ11aを成型してもよいし、前壁11の基体にレンチキュラーレンズ11aを形成したシートを貼り付けてもよい。
また、ケース10の後壁12の内側には、遊泳体30の遊泳場所の背景を構成する海底の絵柄13、例えば岩や海草の絵柄が形成されている。この絵柄13の形成にあたっては、ケース10の後壁12の内面に絵柄13を直接描いてもよいし、絵柄13が予め描かれたシートを後壁12の内面に貼り付けてもよいし、また、絵柄13が予め描かれた板を後壁12の前に設置してもよい。さらには、ケース10の後壁12も透明板とし、その後面に絵柄13を形成してもよい。
また、ケース10の上壁には、液体20の給排口が形成され、この給排口にはキャップ14が着脱自在に装着されている。
【0018】
液体20としては、水,油等が充填されている。
【0019】
遊泳体30は、例えば、円形又は楕円形の合成樹脂製の平板によって形成されている。この遊泳体30は、他の平面的形状であってもよいし、立体形象物であってもよい。
この遊泳体30は、後述する「海月(くらげ)」の絵柄31を担持している。この絵柄31は、遊泳体30の表面に絵柄31を直接描いたものでもよいし、絵柄31が予め描かれたシートを遊泳体30の表面に貼り付けたものであってもよい。或いは、遊泳体30を前後2枚の平板を貼り合わせることによって形成し、このうち前側の平板を透明とし、その2枚の平板の間で絵柄31を挟み込んだものであってもよい。さらには、絵柄31は、遊泳体30を透明板とし、その後面に形成したものであってもよい。
この遊泳体30は、液体20よりも僅かに大きい比重であり、液体20中に入れた際に自然状態では沈下し、液流がある場合には液体20の中を遊泳する程度の比重を有することが好ましい。
また、遊泳体30は、静止する液体20中に置かれた場合に、後述の短冊状絵柄部分の並び方向が上下方向となるように、形状及び重心位置が調整されている。この場合、必要があれば、遊泳体30に重りを設けてもよい。
【0020】
続いて、遊泳体30が担持する絵柄31について説明する。
遊泳体30が担持する絵柄31は、縦方向に伸びた「海月」の姿態を示すストライプ状の絵柄31a(図3(A))と、縦方向に縮んだ「海月」の姿態を示すストライプ状の絵柄31b(図3(B))とを一部重ね合わせるようにして合成した絵柄となっている。
まず、絵柄31aについて説明すれば、絵柄31aは、図3(A)に示すように、短冊状絵柄部分を、レンチキュラーレンズ11aの凸レンズの並設ピッチと同じピッチでインターレース状に並設することによって形成されている。同様に、絵柄31bは、図3(B)に示すように、短冊状絵柄部分を、凸レンズの並設ピッチと同じピッチでインターレース状に並設することによって形成されている。そして、この2つの絵柄31a,31bをピッチの1/2だけ位相がずれるようにして一部重ね合わせた状態で合成することによって、絵柄31(図3(C))を形成している。
なお、ここでは1つの遊泳体30に2つのストライプ状の絵柄31a,31bを形成したが、3つ以上のストライプ状の絵柄を形成してもよい。この場合、3つ以上のストライプ状の絵柄を形成する場合には、全てのストライプ状の絵柄の短冊状絵柄部分の並設ピッチを同じにするとともに、重ね合わせ数をNとした場合、1/Nピッチずつ位相をずらすように、ストライプ状の絵柄を形成することが好ましい。このようにして3つ以上のストライプ状の絵柄を形成する場合には、2つの場合と比較して、絵柄の変化の過程をより繊細に表現できることになる。
【0021】
次に、液流形成手段40について説明する。
液流形成手段40は、基台50の前壁に付設されたベローズ(操作部)41を備えている。ベローズ41の基端側は基台50に取り付けられている。このベローズ41の基端側は、パイプ42の一端に連結され、このパイプ42の他端はケース10の底壁(図示せず)に連結されている。これによって、ベローズ41の内部とケース10の内部がパイプ42を介して連通され、ベローズ41の内部はケース10に充填された液体20で満たされることになる。その結果、ベローズ41を縮めることによって、ベローズ41から液体20が押し出され、パイプ42を介してケース10に液体20が噴出されることとなり、ケース10内の液体20に流れを生じさせることができる。また、縮んだベローズ41から手を離せば、液体20が一時的にベローズ41内に流れてベローズ41が元の状態に戻る。この際にも、ケース10内の液体20に流れを生じさせることができる。
なお、液体20を循環させる方式に代えて、ベローズによって空気を噴出させる方式を採用することも可能である。
【0022】
次に、本実施形態の置物玩具1の作用を説明する。
この置物玩具1は、常態では、ケース10の液体20がベローズ41に流入した状態にある。この状態で、ベローズ41を縮めると、ベローズ41内の液体20がケース10内に噴出する。これによって、ケース10内の液体20に流れが発生し、この液体20の流れによって遊泳体30が液体20の中で遊泳する。また、縮んだベローズ41から手を離すと一時的にベローズ41に向けて液体20が逆流する。したがって、ケース10内には複雑な液体20の流れが生じ、遊泳体30の動作は複雑となる。
この場合、レンチキュラーレンズ11aを通して遊泳体30の絵柄31を観察すると、レンチキュラーレンズ11aの凸レンズの延在方向と短冊状絵柄部分の延在方向とが合致したまま、凸レンズの延在方向と直交する方向(上下方向)に遊泳体30が移動した場合には、上下方向に伸びた「海月」の絵柄(図3(A)参照)と、上下方向に縮んだ「海月」の絵柄(図3(B)参照)とが選択的に見えることになる。この場合には、「海月」が伸縮しているイメージが醸し出される。
また、凸レンズの延在方向と短冊状絵柄部分の延在方向とが合致しない場合には、「海月」とは判別できないような崩れた絵柄が見えることになる。また、この崩れた絵柄の出現後に、凸レンズの延在方向と短冊状絵柄部分の延在方向とが合致した場合には、上下方向に伸びた「海月」の絵柄(図3(A)参照)又は上下方向に縮んだ「海月」の絵柄(図3(B)参照)が出現する。この場合には、「海月」の誕生のイメージが醸し出される。
【0023】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であることは言うまでもない。
【0024】
例えば、上記実施形態では、液流形成手段40としてベローズ41を使用しているが、風船状のゴム嚢を使用することもでき、遊泳体30に磁性体を配設して磁力作用によって遊泳体30を遊泳させるようにしてもよい。また、モータを設け、モータ動力によってポンプ、羽根車又はスクリュ等を動作させることによって液流を形成するようにしてもよい。さらに、単に、ケース10をユーザが振ることによって遊泳体30を移動させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 置物玩具
10 ケース
20 液体
30 遊泳体
40 液流形成手段
50 基台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を充填させたケースと、
前記液体中で遊泳可能な遊泳体と、
を備え、
前記ケースは、少なくとも一部が透明であり、その透明な部分の表面の少なくとも一部は、細長い凸レンズを一定ピッチで並設してなるレンチキュラーレンズとなっており、
前記遊泳体には絵柄が形成され、この絵柄は前記一定ピッチでインターレース状に複数並べられた短冊状絵柄部分で構成され、
前記ケースの外部から前記レンチキュラーレンズを通して前記絵柄を視認し得るように構成されている
ことを特徴とする置物玩具。
【請求項2】
前記液体の流れを形成するための液流形成手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の置物玩具。
【請求項3】
前記遊泳体の表面には、変化の前後に亘る前記絵柄が複数形成され、この複数の絵柄の間では、互いに、前記短冊状絵柄部分の位相がずらしてあることを特徴とする請求項1又は2に記載の置物玩具。
【請求項4】
前記遊泳体は、静止する前記液体中に置かれた場合に、前記短冊状絵柄部分の並び方向が上下方向となるように構成されていることを特徴とする請求項1から3いずれか一項に記載の置物玩具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−200506(P2011−200506A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71631(P2010−71631)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000003584)株式会社タカラトミー (248)
【Fターム(参考)】