説明

羊毛フェルトテンプレート

【課題】手芸の分野において、原毛を針で突いてフェルト化した作品を得る手法について、複雑な形状の作品を安定した品質で作成することの出来る容器を提供する。
【解決手段】透明ないし半透明の合成樹脂製本体(1)に、様々な直径を持つ円、多角形、ないし星型、花弁型、ハート型等の図案を横断面に持つ柱状の空洞(2)を設け、柱状空洞の側面に目盛り(3)を設ける。
フェルト製品を作成する時は、本発明をスポンジ状の基台の上に置き、柱状の空洞に原毛を充填し、凹凸を持った針で方向を変えながら繰り返し突くことによって繊維を絡み合わせてフェルト化の効果を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、手芸でフェルト製品を製作する場合において、羊毛等の原毛を針で突いてフェルト化する際、一定の形状の作品を安定して製作するための容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来羊毛をフェルト化するためには、圧縮による方法、石鹸水を加えて摩擦する方法、凹凸を有した針で繰り返し突く方法が知られている。いずれも原毛の繊維を絡み合わせることによって圧縮固化させ、容易に剥離や変形を生じないフェルト製品を得るための技術である。
【0003】
手芸の分野においてフェルトでできた特定の形状の製品を得るためには、既成のシート状のフェルトを切断し、これを縫製又は接着の方法によりつなぎ合わせて目的の形状を得る方法と、前記第3の方法により原毛の塊を大まかに整形した後に針で繰り返し突き、その突き具合により目的の形状に徐々に近づけていく方法があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の方法には次のような欠点があった。
(イ)既成のシート状のフェルトを切断し、これをつなぎあわせることによって目的の形状を得ようとする場合、切り捨てられて廃棄する材料が発生して無駄が多かった。
(ロ)既成のシート状のフェルトを切断し目的の形状を得ようとする場合、一つの部品の中で細かく原毛の色を変えることは技術上困難であるため、色の違う多数の材料から少しずつ部品を切り取り、それをつなぎ合わせる方法で目的の製品を得ることが通常であるが、これに要する手間は大きく、多数の色の材料を準備することや、切り捨てられて廃棄される材料も多くなり無駄が多かった。
(ハ)原毛の塊を大まかに整形した後針で突いて目的の形状に近づけていく方法は、主に手芸の分野で用いられ、上記(イ)(ロ)の欠点は見られないが、正確な形状を再現するためには熟練を必要とし、鋭い凸部をもった幾何学図形や複雑な図案を正確に再現することが出来なかった。
本発明は、上記の問題を解消するためになされたもので、針で繰り返し突いて作成するフェルト製品を、初心者でも正確な形状で再現するためのフェルト製品製作容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、底面が平坦な合成樹脂本体(1)に、柱状の空洞(2)を貫通させ、羊毛等の原毛を充填する容器とし、これをスポンジ状の基台の上に置き、原毛を凹凸を持った針で突くことによって、繊維を絡み合わせ原毛のフェルト化を実現するフェルト製品製作容器である。このとき製品は原毛の量ないし針で突いた回数に相違があっても常に柱状空洞の底面の形状になり、安定した形状の製品を作成できることを特徴としている。なお、必要とする柱状空洞(2)の底面積が合成樹脂本体(1)の底面積と比較して十分に小さい場合は、図1のように一つの合成樹脂本体に複数の柱状空洞を配してもよい。
【0006】
また、請求項2に記載の発明は、上記柱状空洞(2)の横断面に様々な直径を持つ円、多角形、ないし星型、花弁型、ハート型等の図案を採用することにより、これら様々な形状の製品を得ることを可能とし、切断の方法によらないで複雑な図案を鮮明な輪郭で再現できることを特徴としている。
【0007】
また、請求項3に記載の発明は、上記合成樹脂本体に透明ないし半透明の素材を用いることにより、フェルト化作業の過程で常に原毛の配色及び圧縮状態を把握することを可能とし、安定した配色及び圧縮状態の製品を得ることができることを特徴としている。
【0008】
また、請求項4に記載の発明は、上記柱状空洞(2)の側面に、平坦な底面からの距離を示す目盛り(3)を印刷または刻印の方法で表示することにより、目的とする製品の厚みを確認しながら作業することを可能とする特徴を持っている。合成樹脂本体が透明ないし半透明の場合、目盛りは合成樹脂本体の外側に表示してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る容器を使用するときは、容器を平坦で軟鉄製の針が容易に貫入できるスポンジ状基台の上に置き、次に原毛を容器内に押し込み、側面に凹凸を持った針で貫入方向を変化させながら繰り返し数百回突くことにより、原毛の繊維を絡み合わせ、フェルト化の効果を生じ、容器の底面の形状を持ったフェルト製品を得ることが出来る。
本発明を用いて製作されるフェルト製品の形状は、常に容器の底面形状と同じになることから、手芸の分野において初心者でも安定した形状のフェルト製品を作成することが可能になることを特長としている。
また、本製品を用いてフェルト製品を作成する場合、用いられる原毛は過不足なくすべて製品に加工され、切除され廃棄される部分を生じないことも本発明の特長である。
【0010】
また、請求項2に記載された発明に係るフェルト製品製作容器は、容器をなす柱状空洞の横断面に様々な直径を持つ円、多角形、ないし星型、花弁型、ハート型等の図案を採用しており、この容器に原毛を入れ、凹凸のある針で繰り返し突くことにより、作成されるフェルト製品は複雑な図案を鮮明な輪郭で再現できることを特長としており、特に凸部を持った輪郭を持つデザインを再現する時に大きな効果を発揮する。
これにより作成される円、多角形、ないし星型、花弁型、ハート型等の輪郭を持つフェルト製品は、これらを部品として複数配置し、部品の境界部を凹凸のある針で繰り返し突くことにより、各部品の繊維が互いに絡み合い、接着の効果を生じることによってより大きく複雑な製品を作成することができる。
この効果は、手芸の分野においてフェルト製品の形状表現の手法を広げ、複雑で創造的な作品を制作することを可能にするとともに、凹凸のある針で突いて製作する羊毛フェルトの製作手法において、従来大まかな形でしか作品の形を指示することが出来なかった明確な形状の組み合わせを的確に指示し、作品の再現性を保障する手段としても大きな効果を発揮することを特長としている。
【0011】
また、請求項3に記載された発明に係るフェルト製品製作容器は、透明ないし半透明の素材を用いることにより、この容器に原毛を入れ、凹凸のある針で繰り返し突く作業の過程で、原毛の密度およびフェルト化の程度ないし配色や繊維の絡み合いによる混色の程度を随時確認しながらフェルト化作業が進められることを特長としている。
この効果は、一定の品質を持つフェルト製品の製作を著しく容易にするとともに、手芸の分野において配色及び混色による表現の手法を広げ、かつ、あらかじめデザインされた作品の再現性を高めるという点で大きな効果を発揮することを特長としている。
【0012】
また、請求項4に記載された発明に係るフェルト製品製作容器は、平坦な底面からの距離を示す目盛りを有することにより、この容器に原毛を入れ、凹凸のある針で繰り返し突く作業の過程で、目的とする製品の厚みを随時確認しながらフェルト化作業が進められることを特長としている。
この効果は、一つの容器により様々な厚みを持った製品を作成することができ、容器使用の効率を高めることを可能としている。
また、材料とする原毛の重量と、圧縮後の厚みを指定することにより、圧縮の程度を定量的に表現することが可能になることから、手芸の分野において、指導者が生徒に製作法を教える際や、作家にデザインされたフェルト作品の製作法を書籍に掲載するときなどに、作品の再現性を高める効果があることを特長としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本案を実施するための最良の形態について説明する。
(イ)本発明の形状を再現するための鋳型を作り、合成樹脂を注入することにより柱状空洞を有した合成樹脂本体を得る。
(ロ)本発明に用いる合成樹脂は、アクリル樹脂が最適である。強度に問題を生じない形状の場合はポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂を用いてもよい。
(ハ)柱状空洞の内側に請求項4に記載された目盛りを刻印する方法は、鋳型にあらかじめ目盛りを刻印しておく方法が最適である。この場合柱状空洞部分の鋳型材料はわずかに弾性を持つ材料で作っておくことにより、鋳型の抜き取りを容易にする。
(ニ)請求項4に記載された目盛りは、上記(ハ)の方法で刻印する以外に、印刷によってもよい。また、自動制御されたケガキ針ないしリューターによって刻印してもよい。
【0014】
本発明を使用するときは、柱状空洞(2)に原毛を充填し、目盛り(3)で厚みを確認しながら凹凸のある針で原毛を繰り返し方向を変えながら突き、予定した厚みまで原毛を圧縮固化させることにより、目的とする形状と厚みを持ったフェルト製品を得ることが出来る。
【0015】
均質な製品を得るためには、目的とする厚みを得るために必要な原毛の重量を算出しておき、これを所定の厚みまで突き固めた時が必要な圧縮度合いであると知ることが出来る。上記の方法で圧縮度合いを的確に伝達することは、手芸の初心者に失敗のないようフェルト製品の製作法を教授する時や、書籍にフェルト製品の製作法を掲載する時に非常に有益である。
【0016】
さらに複雑な意匠のフェルト製品を実現するためには、本発明によって制作された比較的単純な図案のフェルト製品を部品として用い、それらを接合することによって複雑な意匠のフェルト製品を実現することが出来る。
例えば、図1の形状を持った本発明は、単にハート型のフェルト作品を作るために用いるばかりでなく、これにより作成したハート型の部品を花弁として用い、互いに接合することで図4に示すようなフェルト製の花を作ることが可能である。
図4に示した例では、図1に示した本発明により小さいハート型のフェルト部品(以下、「花弁小」と略記)(5)を3枚と、大きいハート型のフェルト部品(以下、「花弁大」と略記)(6)3枚を作成し、花弁小を内側に、花弁大を外側にして巻き込むように配置し、接合することにより花の形を作ることが出来る。
フェルト部品を接合するには、凹凸を持った針でフェルト部品同士の境界部を繰り返し刺し、繊維を絡み合わせるだけでよく、接着剤や芯材を用いる必要がないため、健康に悪影響が予想される合成樹脂や有機溶剤を使用せず、結果として子供が口に入れたりしても安全な玩具の製作に向いている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のうち1つの合成樹脂本体に複数の柱状空洞を配する場合の一例の斜視図である。
【図2】本発明のうち1つの合成樹脂本体に複数の柱状空洞を配する場合の一例の上面図である。
【図3】本発明のうち1つの合成樹脂本体に複数の柱状空洞を配する場合の一例の側面図である。
【図4】図1に示される本発明により作成された、フェルト部品を花弁として用いた花の製作例
【図5】本発明のうち1つの合成樹脂本体に一つの柱状空洞を配する場合の一例の斜視図である。
【符号の説明】
1 合成樹脂本体
2 柱状空洞
3 目盛り
4 フェルト製の花
4 花弁小
5 花弁大

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状の空洞を持つ合成樹脂製の容器に羊毛等の原毛を充填し、凹凸を持った針で突くことによって、繊維を絡み合わせ、その空洞の底面の形状を有したフェルト製品を作成することを特徴としたフェルト製品製作容器。
【請求項2】
上記柱状空洞の横断面形状に様々な直径を持つ円、多角形、ないし星型、花弁型、ハート型等の図案を用いることによって、一定した形状のフェルト部品を安定して作成するために役立つことを特徴とした請求項1に記載のフェルト製品製作容器。
【請求項3】
上記合成樹脂製の容器に透明ないし半透明の素材を用いることにより、フェルト化途中の段階で原毛の圧縮状態を把握し、安定した圧縮状態の製品を得ることができることを特徴とした請求項1に記載のフェルト製品製作容器。
【請求項4】
上記柱状空洞の側面に目盛りを付けることによって、目標とする製品の厚みを一定にすることが出来ることを特徴とした請求項1に記載のフェルト製品製作容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−202201(P2008−202201A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−69448(P2007−69448)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(000105039)クロバー株式会社 (14)
【Fターム(参考)】