説明

美容のための肌の活性化

人の皮膚の美容処置のための装置は、皮膚内に挿入するための針と、針に電気的に接続され、針に負の電流を供給するDC電源と、正の電流を受けるようにDC電源に電気的に接続された陽極と、針に結合された少なくとも1つのRFトランスミッタとを備え、陽極は、人の皮膚に接触して配置されるように構成されており、針は、皮膚に挿入されて閉じた電気回路を形成し、少なくとも1つのRFトランスミッタは、針が挿入されている箇所の周辺の領域に放射して、針が配置されている間、熱を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、美容目的の肌の活性化(rejuvenation)に関し、より具体的には、電磁エネルギを利用した肌の活性化に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、人のからだに対する環境影響に耐える一次的なバリアである。環境影響は、太陽、寒さ、風、湿度および他の条件等の要因に起因する。環境要因は、老化と共に、肌に見た目の若さを失わせ、しわを増やす。この現象は、肌の老化として知られている。
【0003】
図1は、人の皮膚100およびその下の層の一部の側断面の概略図である。人の皮膚100は、その最外層に角質層10を含む、厚さが約100μmの表皮でできている。その表皮の下には真皮30があり、その真皮は、表面から約4mmまで伸びている。皮下層40は、真皮30の下に位置している。これら3つの層は、皮膚の全体的な外観(例えば、若さまたは老い)を制御する。真皮30は、エラスチン、コラーゲン70、グリコサミノグリカンおよびプロテオグリカンでできている。皮下層40は、それを通って横切り、および真皮コラーゲン70と皮下層40を結合する垂直線維帯を有する脂肪領域を含む。コラーゲン70は、皮膚に復元力および弾力性を与える。老いや日光曝露は、線維代謝を低下させ、コラーゲン70にその弾力性および引張強度を失わせ、その結果、皮膚は、見た目の若々しい張りをなくす。
【0004】
皮下層40の下には、加齢に伴う皮膚の見た目のしわの一因にもなる筋50および筋神経がある。
上記の現象に対抗することによる、肌の活性化のための多くの方法が説明されてきている。
【0005】
例えば、肌の活性化のために最もポピュラーで幅広く用いられている処置は、削皮術、レーザーピールおよびケミカルピールである。これらの皮膚の剥離法は、深すぎないが、治癒をもたらす軽度の損傷を皮膚に生じさせる。自然治癒力を備えた皮膚は、再生のプロセスを開始し、それによって、生じた損傷を修復し、および表面的外見を改善する。
【0006】
削皮術は、研磨またはサンディングによって皮膚を除去するという方法である。古い皮膚が擦りむかれると、皮膚の新たな層が、除去された古いものと置換わる。
ケミカルピーリングにおいては、化学溶液が皮膚に塗布されて、皮膚の最上層の剥離を促す。皮膚の古い層が除去されると、血色がよく、かつしみのない皮膚の新たな層が形成されて、剥離された層と置換わる。異なる種類のケミカルピールは、異なる患者のニーズに適した、軽度で、適度なまたは深い剥離の実現を可能にする。軽度の剥離は、表面の皮膚層を除去する手法である。このケミカルピールは、希釈した酸性溶液を必要とし、その溶液は、通常、数分間、皮膚の上にとどまる。ミディアムピール手法は、皮膚の表面層を少し越える。化学溶液は、軽度の剥離と比較して、より長い時間、皮膚の上に保持される。軽度で、中深度の剥離とは違って、深いケミカルピールは、より顕著な皮膚色素沈着およびしわに対処するために、より深く真皮層に浸透する。
【0007】
これらの剥離法の1つの大きな欠点は、何らかの剥離後、および治癒プロセス中に、処理された領域が痂皮になって、皮膚色素沈着問題を生じる可能性がある。従って、剥離の深さ、潜在的な色素変化、および瘢痕化のリスクをコントロールする難しさが、ケミカルピーリングに付随するリスクにはある。
【0008】
上述した方法は、侵襲性であること、および著しい不快感、痛み、ダウンタイムおよび潜在的な副作用を伴うことに悩まされる。これらの美容のための処置は、すべて選択的処置であるため、痛みおよび偶発的な副作用は、肌の問題に対処したい多くの潜在的な顧客にとって著しい妨げになっている。
【0009】
侵襲的方法に付随する問題点のいくつかを克服するために、レーザおよび高周波(radio frequency)エネルギベースのしわ取り処置が提案されてきた。例えば、特許文献1は、光活性化治療と呼ばれる方法について記載しており、この場合、コラーゲンを加熱して収縮させ、それによって、皮膚の弾力性を回復させるために、パルス光が用いられる。コラーゲンは、真皮中にあるため、コラーゲンを標的にするレーザは、表皮を、および真皮表皮境界部を貫通しなければならない。Beer(ベール)の吸収法則により、レーザビームは、典型的には、皮膚の表面で最も強い。このことは、皮膚の上層に関して許容できない加熱を招く。皮膚の下の層を所望の温度に保ちながら、皮膚の上層を冷やすための様々なアプローチが説明されてきている。一つのアプローチは、表面が冷たいままで、下にある層(すなわち、コラーゲン)が加熱されるように、その表面に寒剤をスプレーすることである。このようなアプローチは、特許文献2に記載されている。特許文献3に記載されている別のアプローチは、皮膚の表面と接触する氷、ゲルまたは水晶等の冷却された透明物質の利用である。その冷却剤の透明性は、レーザビームが、異なる皮膚層を貫通し、同時に、皮膚の表面を許容可能な温度レベルに維持することを可能にするであろう。
【0010】
光活性化治療は、フィルター処理した光からなる強力なパルスの使用を要する。その光は、外皮層を貫通して、その外皮層にわずかなダメージを生じさせ、およびより深部の組織によって吸収される。光活性化治療は、細かいしわまたは中位のしわを治療する場合にのみ用いられる。
【0011】
光活性化治療のリスクは、腫れ、瘢痕化、水疱形成、色素沈着過剰/色素沈着低下、日光過敏および化粧過敏を含む。より浅黒の肌の人は、治療後の数ヶ月で、色素沈着過剰に悩まされる可能性がある。回復期においては、色素沈着過剰等の副作用を最小限にするために、日光曝露は避けなければならない。
【0012】
広範囲の日光曝露は、慢性的な紫外線照射につながる可能性がある。このことは、正常な表皮および真皮構造と、独特の萎縮との段階的な置換と、弾力性真皮基質成分の蓄積とを伴う、皮膚内に機能不全の創傷修復経路をもたらすように思われる。
【0013】
現在、新たな真皮コラーゲンの生成を誘導する皮膚損傷を与えることにより、光による老化の逆のことが試みられている。そのような皮膚損傷は、機械的処置(例えば、削皮術)、化学治療(例えば、レチノイドおよびアシッドピール)またはレーザ療法を用いて実施することができる。これらの皮膚損傷は、上方の網状および乳頭真皮コンパートメントの正常な線維増殖反応を開始して、回復した肌をもたらすことが期待されている。特許文献4は、標的にする真皮領域内の、線維芽細胞を活性化するための熱損傷コラーゲンについて記載している。線維芽細胞は、細胞外基質成分の増加分を同様に付着させる。しかし、削皮術またはピーリング等の機械的表面アブレーションプロセスに付随する表皮損傷は炎症期を促進し、このことは、活性化プロセスを妨げる。そのため、上述した、真皮コンパートメントの正常な線維増殖反応を開始するための現在用いられている方法は、回復した肌を産生することができるが、それらのプロセスと共に起きる表皮損傷により、その活性化プロセスは評判を落としている。
【0014】
非アブレーションの光活性化治療は、(皮膚の表面の約100〜400μm下の)乳頭および上方網状真皮コンパートメント内に熱損傷修復反応を誘導すると共に、表皮コンパートメントを温存することである。表皮を温存するために、典型的には、低フルエンス(レーザエネルギ密度)を用いる。あいにく、そのような低レベルは、所望の真皮効果を引き起こすのに必要なある種のシミュレーションを促進するのには、一般的には不十分である。従って、従来のアプローチは、低い有効性をもたらす。たいていの場合、低真皮基質再構築および臨床反応(例えば、しわ取り、リテクスチャリング、色素異常低減および毛細血管拡張除去)は、これらの治療によって実現される。従って、表皮層を温存するが、臨床的に有効な真皮基質再構築の十分な刺激を実現するための満たされていない要求がある。
【0015】
皮膚の上方層(表皮および真皮)の好ましくない加熱に付随する問題のいくつかを克服するために、特許文献5は、RFエネルギと、皮膚の表面に置くRF電極を備える構成とを用いることについて記載している。メラニン細胞および他の上皮細胞に外見上は実質的に影響を及ぼさない逆温度勾配が生じる。しかし、このような非侵襲的な方法でさえ、特定の関心部位、例えば、真皮30にエネルギを効率的に集中させることができないという顕著な限界がある。
【0016】
電気外科的リサーフェシングは、皮膚にエネルギを伝える微小電気高周波の利用を伴う。この処置は、軽度〜中程度の皮膚の欠陥をなくすかまたは改善する際に有効となる可能性がある。
【0017】
より多くの表面層を加熱することなく、真皮を加熱する他のアプローチが説明されてきている。それらは、皮膚の表面を貫通して組織に入り込み、加熱を実行できる導電性針を用いることを含む。特許文献6および特許文献7のようなシステムについて記載している。あいにく、そのようなアプローチは、皮下層の広範囲の加熱、およびその皮下層内の脂肪の潜在的な溶解をもたらす。このことは、組織の好ましくない瘢痕化につながる。
【0018】
これまで説明されてきた、組織の概して均一な加熱を制限するための一つのアプローチは、特許文献8に記載されているような、組織のフラクショナル治療である。この出願は、皮膚内に所望の形状の治療ゾーンを形成するためのレーザエネルギの利用について記載しており、この場合、治療されていない健全な組織は、治療された組織の領域間に位置している。このことは、治療されていない組織が、治癒および回復過程を経ることを可能にする。
【0019】
標的組織の全面を治療する従来のレーザーリサーフェシングとは対照的に、フラクショナルレーザースキンリサーフェシング(fractional laser skin resurfacing)は、フラクショナルフォトサーモライシス(fractional photothermolysis)を用いる。これは、分散スポットからなるパターンで組織を標的にする。このことは、皮膚が正常な外見を保持する間に数週間にわたって癒える組織凝固の微小ゾーンからなるパターンを生じる。この方法は、標的組織の表面に、または、真皮内のみに、広範囲の組織の影響を招くのではなく、治療された皮膚の極一部に損傷をもたらし、表皮を通って、1mmの深さに達する真皮の深部まで伸びる、直径70〜100ミクロンの多数の組織柱を凝固させる。これらのレーザ柱は、正常な組織によって囲まれている組織凝固の微小熱ゾーンを生成する。治療されたゾーンは、表面の約15〜20%からなる。組織は蒸発せず、角質層10は、元の状態のままである。正常な組織は、損傷を免れ、および治癒過程を加速させる真皮乳頭層内に、幹細胞およびメラニン細胞の豊富なリザーバを生成する。小サイズの損傷部と、温存された組織からのケラチン生成細胞のための短い経路は、急速な再上皮化と、変色しない表皮修復とをもたらす。真皮内のコラーゲン変性のゾーンは、炎症カスケードのアップレギュレーションを引き起こし、このことは、皮膚の引き締めをもたらす400〜700ミクロンの深さまでのコラーゲン再構築につながる。患者が開放創を持たないということは、最小限のダウンタイムにつながる。そのため、フラクショナルレーザーリサーフェシングは、最小限の患者ダウンタイムおよび最小限のリスクでのスキンリサーフェシングのための優しいが効果的な方法を提供する非アブレーション法である。この方法は、改善された肌のきめ、色合い、色素沈着、小皺および肌の引き締めを提供する。この方法は、あらゆる肌質に対して安全であると断言し、また、デリケートで傷跡がつきやすい首、胸および手等の顔以外の領域で用いることができる。フラクショナルリサーフェシングは、一度の治療を要するアブレーションレーザーとは対照的に、3〜5回の一連の治療を要する。
【0020】
フラクショナルレーザーリサーフェシングの欠点は、劇的な結果を実現するために、組織の加熱が、壊死部の温度で約70℃に達し、およびその組織は、主に細胞、ケラチン生成細胞およびそれらの派生物あるいはコラーゲンで形成されているか否かに関わらず、壊死または変性するということである。組織内の温度が100℃以上であると、その組織内に蒸気を生じさせる可能性があり、このことは、破壊的効果を招く可能性がある。このような温度は、痛み、紅斑、腫れ、偶発的な瘢痕化、長い治癒時間および感染症等の好ましくない副作用をもたらす可能性がある。
【0021】
従って、組織損傷を生じ、組織治癒過程をもたらすが、変性および組織の凝固を生じる組織加熱によって生じるリスクおよび複雑さを伴わないフラクショナル治療に対する満たされていない要求がある。
【0022】
しわの治療に関する別の方法は、ボトックスの利用である。ボトックスとは、患者の筋肉に注射される毒素である。その毒素は、神経インパルスを遮断し、筋肉を一時的にまひさせて、その筋肉を弛緩させる。その結果、しわの多い皮膚が伸ばされる。しわ伸ばし効果は、ほぼすぐに現れ、その後、数日間にわたって良くなる。一般的には、ボトックス注射の効果は、しわの程度により、および使用するボトックスの投与量により、3〜6ヶ月間続く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】米国特許第6387089号明細書
【特許文献2】米国特許第6514244号明細書
【特許文献3】米国特許第6387089号明細書
【特許文献4】米国特許第6120497号明細書
【特許文献5】米国特許第6311090号明細書
【特許文献6】米国特許第6277116号明細書
【特許文献7】米国特許第6920883号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2005/0049582号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の一実施形態の観点は、皮膚の外見を改善しおよびより若々しくするために、皮膚の様々な内部層を美容のために治療する装置および方法に関する。その方法は、人肌の選択された深さに挿入される針電極の使用、及びその針に負のDC電圧を印加することに基づいている。随意的には、選択される深さは、脱毛によって処理されない皮膚100のより深い要素を処理するために、毛包の位置よりも下である。そのDC電圧は、細胞の選択的破壊を引き起こす、その針を囲む細胞内での低温の化学的プロセスを誘導する。その化学的プロセスは、電気分解によって水酸化ナトリウム(NaOH)を生成し、そして、水酸化ナトリウムが周りの細胞を破壊する。本発明のいくつかの実施形態において、その装置は、その針に結合され、および皮膚の表面に配置されると共に、治療領域および結果として生じる溶液を加熱するためにDC電圧を印加して、それによってその化学的プロセスを加速させるRFトランスミッタをさらに含む。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態において、その針は、塩類または他の物質(例えば、麻酔薬、リドカイン、エピネフリン、成長因子、幹細胞、ボツリヌス毒素)を、その化学的プロセスを加速させるためにDC電圧が印加される位置に供給できるように中空になっている。随意的には、その中空針は、流体を除去するための吸引部としても機能することができる。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態において、その針の一部は、皮膚細胞と接触し、および負電荷を生成する領域を制限するために絶縁材で被覆され、例えば、絶縁されていない針の先端部のみを残しておく。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態において、その針は、抵抗を測定するセンサとして機能し、その結果、ユーザは、その針の先端に位置している皮膚層を判断することができる。
本発明の例示的な実施形態においては、その針は、筋繊維および筋繊維神経細胞を損傷させるように配置され、その結果、それらの筋線維が消滅して、しわが消えることになる。別法として、または加えて、その針は、皮下層内の脂肪細胞を損傷させて、皮膚の厚さを低減するように配置される。随意的には、損傷した脂肪細胞によって生成された液体は、吸引によって取除かれる。本発明のいくつかの実施形態において、その針は、コラーゲン線維を再生できるように、それらのコラーゲン線維を損傷させるように配置される。DC電圧を伴う針の使用の利点の一つは、その損傷が、その針を囲む位置に対してピンポイントであり、それによって、所望の領域に対して正確な損傷を可能にするということである。
【0028】
従って、本発明の例示的な実施形態によれば、人の皮膚の美容処置のための装置であって、
皮膚内に挿入するための針と、
針に電気的に接続され、針に負の電流を供給するDC電源と、
正の電流を受けるようにDC電源に電気的に接続された陽極であって、該陽極は、人の皮膚に接触して配置されるように構成されており、針は、皮膚に挿入されて閉じた電気回路を形成する、陽極と、
針に結合された少なくとも1つのRFトランスミッタであって、針が挿入されている箇所の周辺の領域に放射して、針が配置されている間、熱を提供する少なくとも1つのRFトランスミッタと
を備える装置が提供される。
【0029】
本発明の例示的な実施形態においては、その針は、その針が配置されている間、皮膚内への、または皮膚からの流体の移動を可能にするように中空になっている。随意的には、その装置は、その針を介して流体を注入するためのシリンジを含む。本発明の例示的な実施形態においては、その装置は、そのシリンジからの液体の注入を制御するためのモータを含む。随意的には、皮膚内のその針の位置に対応する、そのDC回路の抵抗を測定するための抵抗センサを含む。本発明の例示的な実施形態において、その装置は、測定した抵抗に関する表示(indication)を提供するように構成されている。随意的には、その装置は、情報をユーザに与えるためのディスプレイを含む。本発明の例示的な実施形態においては、その装置は、ユーザからの情報を受け入れるための1つ以上のダイヤルを含む。随意的には、その装置は、DC電流およびRF放射の供給のタイミングを自動的に制御するように構成されている。随意的には、そのタイミングは、ユーザが選択可能である。本発明の例示的な実施形態において、その装置は、DC電流とRF放射を同時に供給するように構成されている。別法として、その装置は、DC電流とRF放射を断続的に供給するように構成されている。随意的には、その針は、部分的に絶縁されている。本発明の例示的な実施形態においては、その針の先端のみが絶縁されていない。
【0030】
本発明の例示的な実施形態において、その装置は、皮膚に挿入するための、およびそのDC電源からの電流によって帯電する陰極として機能するための針のアレイを含む。随意的には、全ての針に、同じ電流が供給される。別法として、これらの針のうちのいくつかには、他とは異なる電流が供給される。本発明の例示的な実施形態において、その装置は、RF放射を生成するAC電流源を含む。
【0031】
本発明の例示的な実施形態によれば、皮膚を処置する方法であって、
人の皮膚の、人の毛包の毛根より下の特定の深さに針を配置すること、
人が、正の電極に接触して、その人の体を介してDC電流の閉回路が形成されている間に、その針に負のDC電圧を印加すること、
予め選択した時間、DC電流を供給して、その針の接触箇所に水酸化ナトリウムを生成する化学反応を誘導すること
を含む方法がさらに提供される。
【0032】
本発明の例示的な実施形態において、その方法は、配置された針に向かってRF放射を伝送して、配置領域を温めることを含む。随意的には、その伝送および供給は、同時に実行される。別法として、その伝送および供給は、断続的に実行される。本発明の例示的な実施形態において、その方法は、その針の中空導管を介して、液体を皮膚内に供給することを含む。随意的には、その配置は、針のアレイからなる。本発明の例示的な実施形態においては、その針の深さを測定するために、その回路の抵抗を測定することを含む。随意的には、その方法は、その深さの表示をユーザに与えることを含む。本発明の例示的な実施形態において、その針は、その先端が、皮下層の下の筋の近傍に位置するように配置される。別法として、その針は、その先端が、真皮内のコラーゲン線維の近傍に位置するように配置される。さらに別法として、その針は、その先端が、皮下層内の脂肪細胞の近傍に位置するように配置される。随意的には、その抵抗は、処置の成功の度合いを判断するために処置の前後に測定される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】皮膚および下にある層の側断面の概略図である。
【図2】本発明の例示的な実施形態による、皮膚を処置するための装置の概略図である。
【図3】本発明の例示的な実施形態による、針のアレイを有する代替的なハンドピースの概略図である。
【図4】本発明の例示的な実施形態による、美容のための皮膚処置プロセスのフロー図である。
【図5】本発明の例示的な実施形態による、皮下層の下の筋線維を処置するために針が配置された皮膚の側断面の概略図である。
【図6】本発明の例示的な実施形態による、皮下層内の脂肪細胞を処置するために針が配置された皮膚の側断面の概略図である。
【図7】本発明の例示的な実施形態による、真皮層内のコラーゲンを処置するために針が配置された皮膚の側断面の概略図である。
【図8A】本発明の例示的な実施形態による、電気分解を行う単回注射針の概略図である。
【図8B】本発明の例示的な実施形態による、電気分解を行う注射針のアレイの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、図面と共に解釈すれば、以下の詳細な説明によって理解され、およびより良く認識されるであろう。1つ以上の図に出てくる同一の構造、要素または部材には、それらが出てくる全ての図において、同じかまたは同様の数字が概して付けられている。
【0035】
図2は、本発明の例示的な実施形態による、皮膚100を処置するための装置200の概略図である。本発明の例示的な実施形態においては、DC回路の負電極が、装置200の針240として設けられている。針240は、電気分解を行うために、人の皮膚100に挿入されるように構成されている。随意的には、その針は、皮膚に挿入したときに、その皮膚の外側層に目立つ損傷を生じさせないように、小径、例えば、50〜500ミクロンの直径を有する。
【0036】
人の皮膚100は、水(HO)と塩(NaCl)とでできた水分を含んでいる。その水分の量は、より皮膚の深部に浸透するほど増す傾向があり、例えば、真皮30は、表皮20よりも湿潤する傾向があり、および皮下層40内の脂肪領域は、真皮30よりも湿潤する傾向がある。負の電流は、水分の水および塩の分子の一部をイオン(Na、Cl、HおよびOH)に分解する。正イオン(NaおよびOH)は、その負電極の方へ移動して、再結合してアルカリ性の水酸化ナトリウム(NaOH)を生成する。水酸化ナトリウムは、苛性が高く、負のDC電圧を印加すると、針240の領域内にある細胞組織を破壊する。
【0037】
一般に、苛性アルカリの単位と呼ばれる水酸化ナトリウムの量は、電流の強度およびその電流の印加期間に依存する。苛性アルカリの単位は、10分の1ミリアンペアの電流を1秒間印加した積として定義される。皮膚100の水分含有量は、導電性を増加させ、その結果、水分が多い場合、電流はより速く流れ、苛性アルカリの生成が増加することになる。
【0038】
本発明の例示的な実施形態において、針240は、ハンドピース220から伸びており、そのハンドピースは、人の皮膚100を処置するために、ユーザが保持することができる。随意的には、針240は、導管を形成する中空であり、ハンドピース220は、シリンジ236を含み、そのシリンジは、液体、例えば、外部容器235からの生理食塩水を充填することができる。その針への電流の印加中、シリンジ236は、針240の中空を介して液体をその先端に送って、化学的プロセスを促進することができる。本発明のいくつかの実施形態において、ハンドピース220は、液体の量を正確に供給できるように、シリンジ236を制御し、例えば、数秒ごとに滴下を制御するモータ234を含む。本発明のいくつかの実施形態においては、様々な目的のために、他の材料、例えば、麻酔剤、リドカイン、エピネフリン、成長因子、幹細胞またはボツリヌス毒素を供給することができる。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態において、針240は、DC電流が、より正確に、すなわち、針240の先端のみに供給されるように、絶縁材260で被覆され、またはコーティングされている。別法として、そのDC電流は、針240の全長に沿った、皮膚100との接触によって供給することができる。
【0040】
本発明の例示的な実施形態において、ハンドピース220は、皮膚100に向けられる高周波電磁波放射を生成する1つ以上のRFトランスミッタ232を含む。随意的には、針240を皮膚100内に配置した場合、RFトランスミッタ232は、化学的プロセスが起きて、その化学的プロセスを加速させる位置を加熱するのに用いられる。随意的には、RF放射は、その領域を暖かく保つために継続的に印加することができ、または、DC電圧が印加されたときに、あるいは、DC電圧がターンオフされたときにのみ独立して同時に印加してもよい。本発明のいくつかの実施形態において、そのRF放射は、単に、その化学的プロセスの効率を高めるのに十分な熱を生成する。別法として、そのRF放射は、そのDC電圧によって誘導される化学的プロセスに加えて、例えば、焼灼または凝固を用いた熱分解によって自然に細胞を破壊するのに十分な熱を生成することができる。
【0041】
随意的には、DC電圧とRF放射の同時のまたは断続的な印加は、所望の結果を実現するのに必要な時間を短縮し、および例えば、0.5〜1ミリアンペアの代わりに、0.2〜0.7ミリアンペアを用いて、所要の電流を低減することができる。
【0042】
本発明の例示的な実施形態において、装置200は、電力を供給するための、およびハンドピース220の機能を制御するための電気ユニット210を含む。随意的には、電気ユニット210は、電気ケーブル226によってハンドピース220に結合されている。本発明の例示的な実施形態において、電気ユニット210は、調整された負の電圧を針240に供給するDC電流供給部222を含む。本発明の例示的な実施形態において、DC電流供給部222は、負荷に関係なく一定の電流を生成し、そのため、その電流は、処置中に変化する抵抗の影響を受けない。
【0043】
また、電気ユニット210は、RFトランスミッタ232に電流を供給するAC電流源を含むことができ、または、そのRFトランスミッタは、DC電流によって作動させてもよい。本発明の例示的な実施形態において、陽極230は、ケーブル228によって電気ユニット210に接続されている。陽極230は、処置される人のからだを通る閉回路を形成するために、その処置されるヒトによって保持され、あるいは、その人に付着する。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態において、電気ユニット210は、陰極として機能する針240と、陽極230との間のDC回路の抵抗を測定する抵抗センサを含む。随意的には、その抵抗値は、ディスプレイ214に表示することができ、または、(例えば、より急速なまたはあまり急速ではない)音響信号あるいは他の兆候を発してもよく、その結果、皮膚100の抵抗は、様々な深さで異なるため、装置200のユーザは、その信号に基づいて、針240の深さを判定することができる。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態において、電気ユニット210は、制御ユニット218を支援するプロセッサまたは論理回路を含むことができる。随意的には、制御ユニット218は、その装置を制御するためのいくつかのプログラムを含むことができ、ユーザは、例えば、スイッチまたはダイヤル212を設定することにより、所望のプログラムを選択する。本発明のいくつかの実施形態において、制御ユニット218はプログラム可能である。随意的には、装置200は、装置200の制御に関するコマンドを受取るために、(例えば、I/Oポートを介して)コンピュータに接続することができる。
【0046】
随意的には、制御ユニット218によって制御される機能は、以下のこと、すなわち、
1.状態の詳細のディスプレイ214への表示
2.その装置の様々なユニットへの電力(例えば、DCまたはAC)の供給
3.シリンジモータ234の制御
4.そのシリンジへの生理食塩水の供給の制御
5.音響信号の生成
6.電気信号が互いに同期するように、それらの電気信号のタイミングを制御することを含むことができる。
【0047】
本発明の例示的な実施形態において、そのDC信号は、皮膚内の処置される位置により、異なる量の電流を異なる時間、供給することができ、例えば、筋線維および筋繊維神経を処置する場合、制御部218は、1〜2ミリアンペアの直流を、10〜30秒間、印加することができ、一方、皮下層内の脂肪を処置する場合には、0.1〜0.8ミリアンペアの直流を、5〜15秒間、用いることができる。
【0048】
本発明の例示的な実施形態において、ハンドピース220は、針位置決めモータ270を含む。随意的には、針位置決めモータ270は、ハンドピース220に対するその針のX−Y−Z座標を自動的に位置決めするため、ハンドピース220が静止して保持されている場合、その針を正確かつ自動的に制御することができる。針位置決めモータ270の使用は、施術者がハンドピース220を手動で動かすことによって実現可能な精度よりも良い精度を可能にする。
【0049】
本発明の例示的な実施形態においては、2つ以上の針240を、同時に処置される箇所の数を増加させるのに用いることができる。図3は、本発明の例示的な実施形態による、針340のアレイを備えた代替的なハンドピース300の概略図である。随意的には、アレイ340は、任意の形状で、および任意の数の針で設けることができる。随意的には、それらの針は、均等にまたは不均等に間を空けてもよい。また、それらの針は、対称的なパターンまたは非対称的なパターンを形成してもよい。本発明のいくつかの実施形態において、各針は、別々に制御してもよく、あるいは、特定の処置パターンを形成するために、そのアレイからの針の群を一緒に制御してもよい。
【0050】
図4は、本発明の例示的な実施形態による装置200を用いた美容のための皮膚処置プロセス400を簡単にまとめた概略図である。図4に示すように、ユーザは、まず、人の皮膚100の所望の深さに針240を配置する(ステップ410)。その所望の深さは、実行される処置の種類に依存し、および/または処置されるからだの領域に依存し、例えば、顔や首の表皮20は、厚さが100ミクロンであり、真皮30は、厚さが1900ミクロンである。体の他の部分においては、その表皮および真皮は、これらの値よりも厚いかまたは薄い可能性がある。随意的には、針240は、約1〜12mmの貫入を可能にするように設計される。随意的には、装置200は、その陰極と陽極との間で測定された抵抗に基づく、皮膚100内の位置の表示(indication)をユーザに与える。別法として、または加えて、ユーザは、人体構造に基づいて、針240が配置される深さを認識することを要求される。針240が、一旦、位置決めされると、ユーザは、予め選択した時間、予め選択した電流レベルで、負のDC電圧を針240に印加することができ(ステップ420)、例えば、その電圧は、1〜40ボルトとすることができ、電流は、0.1〜1ミリアンペアとすることができ、および時間は、1〜30秒とすることができる。本発明の例示的な実施形態において、ユーザは、所望のパラメータを選択するために選択ダイヤル212を設定し、針240を配置した後、作動ボタンを押したときに、装置100によって、それらのパラメータを自動的かつ正確に適用する。
【0051】
本発明の例示的な実施形態においては、その抵抗は、貫入深さまたは組織層によって変化するため、その貫入深さは、その回路の電流または抵抗を測定することによって判定される。本発明のいくつかの実施形態において、その抵抗は、標的とする領域を損傷させた際の成功の度合いを判断するために、処置の前、および処置の後に測定される。
【0052】
本発明の例示的な実施形態において、その処置の間に適用されるパラメータは、多くの特性、例えば、
1.処置される皮膚の欠陥の種類(例えば、染み、しわ、瘢痕、ケロイド、脂質、タトゥー);
2.処置される人の痛みの許容度;
3.処置される人の皮膚および組織の刺激感応性;
4.処置される面積;
に依存する。
【0053】
随意的には、ユーザは、その処置の成功の度合いを高めるために、生理食塩水または他の液体を添加する(ステップ430)ように装置200に指示することができる。そのDC電圧は、人の皮膚100内の針240の接触箇所で電気分解を引き起こす。その電気分解は、針240に引き付けられているナトリウムイオンおよび水酸基イオンを解放して、それらを結合させてアルカリ、すなわち、水酸化ナトリウム(NaOH)を生成する(ステップ440)。その水酸化ナトリウムは、苛性であり、その接触箇所を囲む細胞を破壊する。その水酸化ナトリウムは、その針の先端での、またはその針の絶縁されていない長さに沿った滴として生成される。その結果として、そのプロセスは、皮膚100の外側層に目立つ痕を残すことなく、皮膚100の表面の下で、選択された層に対して正確な損傷を生じさせる。
【0054】
本発明の例示的な実施形態において、装置200は、処置される領域に向けられる放射を生じさせて、処置される領域に熱を加えさせる(ステップ450)RFトランスミッタを含む。随意的には、そのRFトランスミッタは、その放射が、人の皮膚100内で熱として感じられるように、0.5〜40MHzの周波数で伝送する。随意的には、その熱は、水酸化ナトリウムの生成を加速させおよび/またはその接触箇所を囲む細胞を破壊するのを補助する。
【0055】
本発明の例示的な実施形態において、その破壊プロセスは、(例えば、除去されるのに必要な面積のサイズに基づく)予め選択した時間、適用される(ステップ460)。随意的には、針240は、不要な流体、例えば、溶けた脂肪を除去するための吸引部として用いることができる(ステップ470)。特定の領域を処置した後、ユーザは、その針を取除いて(ステップ480)、新たな箇所を処置するためにその針を移動させることができる。随意的には、アレイ340を用いれば、一箇所ではなく、より大きな領域を同時に処置することができる。たいていの場合、より大きな領域を迅速にカバーすることが有利である可能性があるが、別の場合では、ピンポイントの精度が望ましい可能性がある。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態において、針位置決めモータ270は、各針または針の群の動きを制御する。随意的には、針位置決めモータ270は、特定の領域を処置すると共に、針240の空間座標(X−Y−Z)を自動的に制御するようにプログラムされる。
【0057】
図8Aは、上述したような方法400に従って電気分解を行う単回注射針240の概略図である。図8Bは、上述したような方法400に従って電気分解を行う注射針340のアレイの概略図である。図8Aにおいて、針240は、絶縁材260で被覆されており、その化学的プロセスは、針240の先端の絶縁されていない領域に限定されている。対照的に、図8Bにおいては、アレイの針340は絶縁されていないため、その化学的プロセスは、皮膚内でのその針の長さに沿って生じ、その水分傾斜によって限定され、この場合、より深い層は、上層よりも湿潤しており、そのため、より下方の層に、より多くの水酸化ナトリウムが生じる。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態において、装置200およびプロセス400は、筋線維50および筋神経細胞の除去に、例えば、ボトックスを用いて、人の額から、または人の顔または体の他の箇所からしわを取除くことの代替として適用される。随意的には、筋線維50および筋神経細胞を損傷させることは、毒性物質の適用を要することなく、ボトックスを用いた場合のように、筋線維50を消滅させるという効果があるであろう。別法として、または加えて、上記のプロセスを用いている間に、ボトックスを(例えば、針240の中空を介して)例えば、少量適用してもよい。随意的には、生理食塩水の適用に加えて、ボトックスを適用してもよい。本発明のいくつかの実施形態においては、他の物質、例えば、感染症を防ぐための薬剤を用いることができる。
【0059】
図5は、本発明の例示的な実施形態による、針240が、皮下層40の下の筋線維50を治療するために配置された状態の皮膚100の側断面の概略図である。
本発明のいくつかの実施形態において、装置200およびプロセス400は、皮下層40からの脂肪細胞の削減に適用することができる。随意的には、針240は、絶縁部260を要することなく、または、DC電流による影響を受ける領域を拡げるためにより少ない絶縁部で用いることができる。随意的には、このプロセスは、脂肪吸引術を行うのに用いることができる。本発明の例示的な実施形態において、針240は、人の皮膚100内に位置決めされて、脂肪細胞を溶かすのに利用することができる。その脂肪細胞は、油性液状物質に乳化されて、体の自然の廃棄物処理プロセスによって捨てられる。随意的には、針240の中空は、溶けた細胞を吸い出すのに用いられる。本発明のいくつかの実施形態において、針240の中空は、薬剤、例えば、リドカインおよびエピネフリンから成る腫張性溶液を注入するのに用いられる。リドカインは、局所麻酔薬として作用し、エピネフリンは、より少ない失血およびより少ない傷につながる血管収縮をもたらす。随意的には、DC電流と共に針240を使用すると、薬剤の用いる必要性を低減することができ、または、その必要性をなくすことができる。
【0060】
図6は、本発明の例示的な実施形態による、針240が、皮下層内の脂肪領域を処置するために配置されている状態の皮膚100の側断面の概略図である。
本発明のいくつかの実施形態において、装置200およびプロセス400は、真皮30からのコラーゲン線維を損傷させるのに適用することができる。随意的には、針240は、コラーゲン線維70の上に挿入されて、それらを破壊するのに用いられる。真皮30内の損傷は、体の自然の治癒過程を促進させて、新たな健全な皮膚100およびコラーゲン70を生み出す。本発明のいくつかの実施形態において、RFトランスミッタ232によって生じた熱は、コラーゲン再生および皮膚の引き締めをもたらすコラーゲン収縮を生じる。コラーゲン収縮と、創傷治癒の複合効果は、皮膚100を回復させる。アブレーションがピンポイントで行われ、および損傷される領域が健全な組織によって囲まれているということは、治癒過程を加速させ、および人が治療されるダウンタイムを最小限にする。
【0061】
図7は、本発明の例示的な実施形態による、針240が、真皮層内のコラーゲン70を処置するために配置された状態の皮膚100の側断面の概略図である。
本発明の例示的な実施形態において、皮膚組織層の水分傾斜は、水分濃度が、より深い層でより高くなるようになっているということは、針240の上部が絶縁層260で被覆されているか否かに関わらず、上方の皮膚層に対する損傷を最小限にする。随意的には、皮膚の表面は、針の侵入跡を除いて、化学的プロセスの跡を示さないであろう。従って、針340のアレイを用いた場合、または、針240を複数回挿入した場合であっても、皮膚100は、明確に上層を狙わない限り、およびそのプロセスを促進するために生理食塩水を用いない限り、処置の跡はほとんど示さないであろう。対照的に、AC電流によって帯電される針を用いる方法は、処置中に過剰な加熱を引き起こして、乳化による瘢痕を残す傾向がある。
【0062】
本発明の例示的な実施形態において、上記の方法による皮膚100の内層の処置は、軽度の腫れを伴ってその皮膚を一時的に赤くするが、皮膚剥離をもたらさず、あるいは、患者のダウンタイムを要しない。
【0063】
本発明の例示的な実施形態において、上述した装置および方法のいくつかの態様をテストするために、多くの実験を行った。
第1の実験においては、卵白に対する影響を調べることにより、上記の方法の効率をテストした。
【0064】
新鮮な卵の卵白をガラス瓶の中に配置した。2つの電極を、そのビンの対向する2つの内壁に接着した。それらの電極を、1MHzの周波数および約5Wの出力のAC電流源ジェネレータに接続した。
【0065】
第3の電極を、DC電流源の正極に接続した。この電極をそのビンに挿入した。第4の電極を、例えば、脱毛に用いるための針の片側に接続した。その針は、直径が、0.003インチであり、Ballet社製のモデルF3である。その電極の他方の側は、そのDC源の負に帯電される極(陰極)に接続した。
【0066】
その実験の第1の段階では、DC電流のみを印加した。このことは、その針を取囲んでいる卵白の初期破壊を引き起こした。その継続時間を、その針の周りに、死滅細胞からなる白い層が形成されるまで、そのDC電流を作用させて測定した。
【0067】
その実験の第2の段階では、DCおよびACの両電流を同時に印加した。このことは、その針を取囲んでいる卵白の初期破壊を引き起こした。ここでもまた、継続時間を、その針の周りに、死滅細胞からなる白い層が形成されるまで、その電流作用によって測定した。
【0068】
第1の段階で測定した継続時間は、第2の段階で測定した時間の2〜4倍長いことが分かった。別の観察では、その針の先端を取囲んでいる死滅細胞の量は、その針に沿った死滅細胞の量よりも著しく多いという結論に達した。
【0069】
第2の実験では、生理食塩水の注入を伴ってまたは伴わずに、DCおよび/またはAC電流を併用して印加した場合の動物の組織(新鮮かつ脂質)に対して上記の方法をテストした。
【0070】
豚肉のベーコンスライスをガラスプレート上に配置した。ビデオカメラをそのガラスプレートの下に配置して、その実験をビデオ撮影した。Vボルトの電圧で作用するDC電流と、Aミリアンペアの電流強度を用いた。この実験を行うために、シリンジ、カテーテルおよび絶縁されていない針を備えたEuromi社製のDermatic1型メソガンを使用した。そのDC源の負極(陰極)をシリンジ針に接続した。電気的ループを閉じるために、そのDC源の正極(陽極)をそのメソガンに接続した。1MHzの周波数および出力Wで作動するAC電流源を用いた。豚肉のスライスに付着された2つの電極間にRF放射場を生成するために、AC電流を用いた。そのメソセラピーシリンジ針を、それら2つのAC電極間のそのスライスに注入した。そのメソセラピーシリンジ針は、約1〜2mmの貫入深さで、1分までの継続時間でそのスライスに注入した。そのメソガンは、そのスライスへの注入のための生理食塩水溶液を含んでいた。
【0071】
以下のシナリオを実験した。
1.生理食塩水溶液、DC電流、AC電流を伴わないシリンジ針注入
2.生理食塩水溶液を伴わず、DC電流を伴い、AC電流を伴わないシリンジ針注入
3.生理食塩水溶液、DC電流を伴い、AC電流を伴わないシリンジ針注入
4.生理食塩水溶液を伴わず、DC電流、AC電流を伴うシリンジ針注入
5.生理食塩水溶液、DC電流、AC電流を伴うシリンジ針注入
以下の結果を観察した。
【0072】
1.シナリオ1−針穴の形成を除いて、スライスに対して影響なし。
2.シナリオ2−その針を流れるDC電流は、そのスライスに化学反応を引き起こした。その針を取囲んでいる小領域は、油性液体に乳化した。乳化した組織内には穴が形成された。そのプロセスは、約1分かかった。ビデオ撮影したものを見ると、初期の影響は、脂肪の液体への乳化であることが分かる。次の段階では、乳化は、最終的にますます大きく成長する組織内の小穴を生じる。
【0073】
3.シナリオ3−そのスライスへの生理食塩水溶液の注入は、その化学反応を強めた。乳化は、より速く、およびその針を取囲む乳化のより大きな領域を生成するより大きな規模で発生した。組織が乳化した箇所の組織には、穴が形成された。
【0074】
4.シナリオ4−AC電流は、その化学反応を強めて、かなり速い乳化を、その針を取囲むより大きな領域で劇的に引き起こした。
5.シナリオ5−そのスライスへの生理食塩水溶液の注入は、その化学反応を強めた。乳化は、より速く、より大きな領域で発生した。組織が乳化した箇所の組織には、穴が形成された。このシナリオにおいては、その影響は最も大きかった。
(結果)
新鮮な脂肪を乳化させるための最も有効な方法は、最も劇的な影響を与えるシナリオ5を用いることである。その新鮮な脂肪は、湿潤していなければならない。生理食塩水溶液は、処置領域を湿潤させるために、その領域内に注入することができる。注入した針は、負のDC電流で帯電させなければならず、また、周囲の処置ゾーンは、高周波AC信号により放射しなければならない。
【0075】
上述した方法および装置は、ステップの省略または追加、ステップの順序および使用する装置の種類の変更を含む様々な方法で変更することができることが、正しく理解されるべきである。異なる機能を異なる方法で組合わせることができることが、正しく理解されるべきである。具体的には、具体的な実施形態における上述した機能の全てが、本発明の全ての実施形態に必要なわけではない。上記の特徴のさらなる組合せもまた、本発明のいくつかの実施形態の範囲内にあると考えられる。
【0076】
当業者には、本発明が、本願明細書において、具体的に示し、かつ説明してきたことに限定されないことが、正しく認識されるであろう。正確に言えば、本発明の範囲は、下記のクレームによってのみ定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の皮膚の美容処置のための装置であって、
前記皮膚内に挿入するための針と、
前記針に電気的に接続され、前記針に負の電流を供給するDC電源と、
正の電流を受けるように前記DC電源に電気的に接続された陽極であって、該陽極は、人の皮膚に接触して配置されるように構成されており、前記針は、前記皮膚に挿入されて閉じた電気回路を形成する、前記陽極と、
前記針に結合された少なくとも1つのRFトランスミッタであって、前記針が挿入されている箇所の周辺の領域に放射して、前記針が配置されている間、熱を提供する前記少なくとも1つのRFトランスミッタと
を備える装置。
【請求項2】
前記針は、前記針が配置されている間に、前記皮膚内への、または前記皮膚からの流体の移動を可能にするように中空になっている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置は、前記針を介して流体を注入するシリンジを含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記装置は、前記シリンジからの液体の注入を制御するモータを含む、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記装置は、前記皮膚内の針の位置に対応するDC回路内の抵抗を測定する抵抗センサを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記装置は、測定された抵抗に関する表示を提供するように構成されている、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記装置は、ユーザに情報を与えるためのディスプレイを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記装置は、ユーザからの情報を受け入れるための1つ以上のダイヤルを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記装置は、DC電流及びRF放射の供給のタイミングを自動的に制御するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記タイミングは、ユーザが選択可能である、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記装置は、DC電流及びRF放射を同時に供給するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記装置は、DC電流及びRF放射を断続的に供給するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記針は、部分的に絶縁されている、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記針の先端のみが絶縁されていない、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記皮膚に挿入し、前記DC電源からの電流によって帯電される陰極として機能するための針のアレイをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
全ての針に同じ電流が供給される、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
針のうちのいくつかには、他の針とは異なる電流が供給される、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
RF放射を生成するAC電流源をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
皮膚を処置する方法であって、
人の毛包の毛根より下の、人の皮膚の特定の深さに針を配置すること、
前記人が正の電極に接触して、前記人の体を介してDC電流の閉回路を形成している間に、前記針に負のDC電圧を印加すること、
予め選択した時間、DC電流を提供して、前記針の接触箇所に水酸化ナトリウムを生成する化学反応を誘導すること
を含む方法。
【請求項20】
配置された針に向かってRF放射を伝送して、配置された領域を温めることをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記伝送することおよび前記提供することは、同時に実行される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記伝送することおよび前記提供することは、断続的に実行される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記針の中空導管を介して、前記皮膚内に液体を供給することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記配置することは、針のアレイを配置することである、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記回路の抵抗を測定して、前記針の深さを判定することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記深さの表示をユーザに与えることをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記針は、その先端が、皮下層よりも下の筋の近傍に位置するように配置される、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
前記針は、その先端が、真皮内のコラーゲン線維の近傍に位置するように配置される、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
前記針は、その先端が、皮下層内の脂肪細胞の近傍に位置するように配置される、請求項19に記載の方法。
【請求項30】
抵抗が、処置の成功の度合いを判断するために、処置の前後に測定される、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−500817(P2013−500817A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523428(P2012−523428)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【国際出願番号】PCT/IL2010/000583
【国際公開番号】WO2011/016019
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(508004306)ポロゲン リミテッド (3)