説明

美容方法及び美容用キット

【課題】本発明はフェースラインのリフトアップに好適な美容方法及びこれに用いる美容用キットに関し、効率よくフェースラインのリフトアップを図ることを課題とする。
【解決手段】顎及び/又は頬に20%以上30%以下の油分を含むクリーム状美容料を塗布するステップと、このクリーム状美容料が塗布された顎及び/又は頬に対してマッサージを行うステップと、マッサージの施術後に伸縮性を有する不織布を基材とし耳掛け部12を有するマスク10を用いて顎及び頬をリフトアップさせるステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は美容方法及び美容用キットに係り、特にフェースラインのリフトアップに好適な美容方法及びこれに用いる美容用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、顔に施術する美容方法が種々提案されているが、その一つとしてフェースラインのリフトアップを図る美容方法が知られている。人の顔の皮膚及び筋肉組織は加齢に伴い張りや弾力が低下するため、これが顔の弛みや皺を発生させる原因となっている。
【0003】
特に、顎や頬の近傍においては、この弛みや皺が発生し易い傾向にある。この顎や頬の近傍におけるフェースラインをリフトアップする方法として、美容マスクを用いる方法が提案されている(特許文献1,2参照)。
【0004】
従来の美容マスクを用いたフェースラインをリフトアップする方法では、化粧液が塗布されたマスクを顎に当てると共に、マスクの両側部に設けられた耳掛けをマスクを引き上げながら耳に掛けることにより顎から頬を引き上げ、これによりフェースラインをリフトアップを図ることが行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3120502号
【特許文献2】特開2005−013486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の従来のマスクを用いた美容方法では、化粧液を顔に塗布した後にマスクを顔に装着するか、或いは化粧液が塗布されたマスクを顔に装着して顎及び頬を引き上げることが行われていた。しかしながら、この方法では顔に対するリフトアップ効果が十分でなく、また使用感も悪いという問題点があった。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、効率よくフェースラインのリフトアップを図れる美容方法及び美容用キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は、第1の観点からは、
顎及び/又は頬にクリーム状美容料を塗布するステップと、
該クリーム状美容料が塗布された顎及び/又は頬に対してマッサージを行うステップと、
前記マッサージの施術後、耳掛け部を有するマスクを用いて顎及び頬をリフトアップさせるステップとを有することを特徴とする美容方法により解決することができる。
【0009】
上記の発明において、前記クリーム状美容料は、20%以上30%以下の油分を含むことが望ましい。
【0010】
また上記発明において、前記マスクは伸縮性を有する不織布を基材とすることが望ましい。
【0011】
また上記発明において、前記マスクはポリアクリル酸系の水溶性ジェルが展膏されてなることが望ましい。
【0012】
また上記の課題は、第2の観点からは、
伸縮性を有する不織布にポリアクリル酸系の水溶性ジェルが展膏されてなるマスクを含むことを特徴とする美容用キットにより解決することができる。
【0013】
また上記発明において、20%以上30%以下の油分を含むクリーム状美容料を更に含むことが望ましい。
【0014】
また上記発明において、前記不織布は、長手方向の長さが22.0cm以上24.0cm以下であり、短手方向の長さが8.0cm以上11.0cm以下であることが望ましい。
【0015】
また上記発明において、前記不織部の長手方向の両側部に、長手方向の長さが2.5cm以上4.0cm以下であり、短手方向の長さが1.0cm以上2.0cm以下の耳掛け孔を形成してなることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
開示の美容方法及び美容用キットを用いることにより、フェースラインを有効にリフトアップすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の一実施形態である美容方法を示す工程図である。
【図2】図2は本発明の一実施形態である美容方法を示す図であり、化粧料を塗布するステップを説明するための図である。
【図3】図3は本発明の一実施形態である美容方法を示す図であり、マッサージを行うステップを説明するための図である。
【図4】図4は本発明の一実施形態である美容方法を示す図であり、マスクを装着するステップを説明するための図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態である美容方法に用いるマスクの平面図である。
【図6】図6は、本発明の一実施形態である美容用キットを説明するための図である。
【図7】図7は、本発明の一実施形態である美容方法に用いるクリーム状美容料の組成の一例を示す図である。
【図8】図8、本発明の一実施形態である美容方法に用いるマスクに展膏する美容料の組成の一例を示す図である。
【図9】図9は、本発明の一実施形態である美容方法の施術後に実施した官能試験の結果を示す図である。
【図10】図10は、比較例1としてマスクのみを装着後に実施した官能試験の結果を示す図である。
【図11】図11は、比較例2として化粧料の塗布とマッサージの施術を実施した後に実施した官能試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施の形態について図面と共に説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態である美容方法を示す工程図である。本実施形態に係る美容方法は、被施術者AA(美容方法が施される者)の顎や頬の近傍における弛みや皺の発生を抑制或いは是正するために実施されるものであり、顎や頬の近傍におけるフェースラインをリフトアップさせる処理を含む美容方法である。
【0020】
本実施形態に係る美容方法では、図2に示すように、先ず被施術者AAの顎及び/又は頬に対して化粧料の塗布を行う(ステップ10)。この時に使用する化粧料は、保湿剤が10%以上20%以下で、油分が20%以上で30%以下のクリーム状化粧料を用いる。ここで、保湿剤を10%以上としたのは、肌に適度なうるおいを与え柔軟にするためであり、20%を超えるとマッサージを施術する際にべたつき感が生じてしまい使用感が低下するからである。
【0021】
また、油分を20%以上としたのは、油分が20%未満であると後述するマッサージを施術するときに指に印加される摩擦が大きくなり、良好なマッサージを実施することができなくなるからである。また、油分を30%以下としたのは、油分が30%を超えるとマッサージを施術する際にべたつき感が生じてしまい使用感が低下するからである。
【0022】
図7は、本実施形態で使用するクリーム状化粧料の組成を示している。同図に示すように、本実施形態で使用するクリーム状化粧料は保湿剤の含有量が13%となっており、また油分の含有量が27.5%となっている。よって、このクリーム状化粧料を用いることにより、マッサージの施術時に良好なマッサージを実施することができる。尚、クリーム状化粧料の組成は、図7に示すものに限定されるものではなく、上記した油分の条件の範囲内で適宜変更することが可能である。
【0023】
上記の化粧料の塗布処理が終了すると、続いて被施術者AAの顎及び/又は頬に対してマッサージを施術する(ステップ20)。本実施形態に係る美容方法は、顎や頬の近傍におけるフェースラインをリフトアップさせることを目的としている。このため被施術者AAに対して実施するマッサージは、図3に矢印で示すように、顎から耳の方向に向けて下から上へと実施する。この際、両手を交互に交差させながらマッサージを行うことにより、効率よくマッサージを行うことができる。
【0024】
マッサージを実施することにより、フェースラインをリフトアップさせる一定機の効果を得ることができる。また、マッサージを施術することにより、顎及び/又は頬における血行が良好となり、肌の活性化を図ることができる。尚、マッサージの方向及び方法は、特に限定されるものではなく、フェースラインをリフトアップさせる効果があるマッサージ方法であれば、他のマッサージ方法を適用することも可能である。
【0025】
上記のマッサージの施術が終了すると、続いて被施術者AAに対してマスク10が装着される。図4はマスク10を装着した被施術者AAを示しており、また図5はマスク10を拡大して示している。
【0026】
本実施形態に係るマスク10は、マスク本体11に耳掛け部12、耳掛け穴13、及び顎掛け部14を形成した構成とされている。マスク本体11は、伸縮性を有する不織布を基材としている。よって、マスク10を装着することにより、顎及び頬は伸縮性を有するマスクにより上方に持ち上げられ、これによりフェースラインをリフトアップすることができる。
【0027】
また、マスク本体11の被施術者AAの肌と接する領域には、ポリアクリル酸系の水溶性ジェル(ヒドロゲル)が展膏されている。この水溶性ジェルに添加する添加剤の具体的な組成を図8に示す。水溶性ジェルを図8に示す組成とすることにより、塗布した化粧料の保湿成分、油分の肌への浸透を図ることができる。
【0028】
一方、マスク10によりフェースラインを確実にリフトアップするには、マスク10を被施術者AAの顎及び頬に密着させ、上方向(具体的には耳に向かう方向)に向けて確実に顎及び頬をリフトアップする必要がある。このためには、マスク10の形状を適正化することが重要である。そこで本実施形態に係るマスク10は、各所の寸法を次のように設定した。
【0029】
図5を用い、マスク10の各所の寸法について説明する。尚、以下説明するマスク10の各所の寸法は、マスク10を装着する前の状態における寸法である。また、マスク10の基材となる不織布としては、一般に市販されているシップ剤に適用されている不織布と同等の特性を有するもの、具体的には同等の伸縮性を有するものを基準とし、これについての寸法を特定した。
【0030】
先ず、不織布よりなるマスク10の長手方向(図中矢印Xで示す方向)の長さ(L1)は、22.0cm≦L1≦24.0cmとした。これは、L1<22.0cmとすると、マスク10と顎及び頬との接触面積が小さくなると共にマスク装着時に耳に強い引張り力が作用し装着感が悪化するからである。またL1>24.0cmとすると、顎及び頬に対するリフトアップ力が小さくなり、フェースラインをリフトアップする効果が低減するからである。
【0031】
また、マスク10の短手方向(図中矢印Yで示す方向)の長さ(W1)は、8.0cm≦W1≦11.0cmとした。これは、W1<8.0cmとすると、マスク10を装着した際に顎及び頬に対してマスクが装着される面積が狭くなり、リフトアップ効果が低減すると共に装着感が不良となるからである。またW1>11.0cmとすると、マスクを装着した際に顎掛け部14が顎及び頬から外にはみ出してしまい、装着感が不良となるからである。
【0032】
また、マスク本体11の長手方向の両端部希望位置には、耳掛け穴13が形成されている。この耳掛け穴13の形状は、被施術者AAの耳への装着性を考慮して、長手方向の長さ(L2)を2.5cm≦L2≦4.0cmに設定すると共に、短手方向の長さ(W2)を1.0cm≦W2≦2.0cmに設定した。
【0033】
更に、この一対の耳掛け穴13の離間距離(各耳掛け穴13の中央位置間の距離)であるL3を15.0cm≦L3≦19.0cmに設定した。これは、L3<15.0cmとするとマスク10を装着した際に耳に強い引張り力が作用し装着感が悪化するからである。また、L3>19.0cmとすると、装着時に十分なリフトアップ力が得られなくなるからである。
【0034】
また、マスク10の形状としては、マスク本体11の図中上方が直線状な端面11aとされているのに対し、これと反対側の端面11bは凹部が形成された掲示用とされている。これは、マスク本体11の端面11aを直線状とすることにより、マスク10を装着した際にこの上端面11aは顎及び頬を直線状に押し上げるため、強いリフトアップ力を発生させることができる。また、マスク本体11の下部(装着した際に前側となる部位)に凹部を形成するよう端面11bを形成したことにより、マスク10の装着時に顎から前方にマスク本体11が突出することがなくなり、使用性を高めることができる。
【0035】
上記したマスク10は、図6に示すように、密封容器であるマスク収納用包装体17に収納された状態で販売される。この際、前記した美容方法で実施する化粧料の塗布ステップ(図1のステップ10)で使用するクリーム状化粧料を装填したクリーム状美容液チューブ16を用意し、このマスク収納用包装体17とクリーム状美容液チューブ16を透明容器18等に入れて美容用キットとして販売する形態を取ることもできる。これにより、被施術者AAはこの美容用キット15を購入することにより、図1〜図4を用いて説明した本実施形態に係る美容方法を容易に実施することが可能となる。
【0036】
次に、本実施形態に係る美容方法を施術したとき、被施術者がどのように感じたかを調べる官能評価を実施した。その結果を比較例と共に図9〜図11に示す。
【0037】
この図9〜図11に示す官能評価は、10人のパネラーに対して後述する各種美容方法を施術し、その結果をアンケートとして回答してもらい、これを纏めたものである。また、官能評価の項目は、「肌へ密着する」、「清涼感がある」、「リフトアップ感がある」、「使用後の肌がしっとりする」、「使用後の肌にハリを感じる」、「使用後の肌にべたつきを感じない」、「フェースラインが引き締まりそう」、「肌にハリが出そう」、「たるみにくい肌になりそう」の9項目とした。
【0038】
更に、評価の分類としては、普通を「0」評価とし、「ややする」,「ややある」,「やや感じる」,「ややそう思う」を「1」評価とし、「する」,「ある」,「感じる」,「そう思う」を「2」評価とした。また、「あまりしない」,「あまりない」,「あまり感じない」,「あまり思わない」を「−1」評価とし、「しない」,「ない」,「感じない」,「そう思わない」を「−2」評価とした。更に、各図においてマスク10の製品評価を「●」で示し、各パネラーが使用した際の嗜好評価(好きか、嫌いか)を「□」で示した。
【0039】
図9は、本実施形態に係る美容方法(化粧料の塗布+マッサージ+マスク装着)を施術したときの官能評価の結果(以下、実施例という)を示している。
【0040】
これに対し、図10及び図11は比較例となる官能評価の結果を示している。具体的には、図10に示すのはマスク装着のみを行い、化粧料の塗布及びマッサージを施術しない化粧方法である場合の官能評価の結果(以下、比較例1という)を示している。更に、図11に示すのは、化粧料の塗布及びマスクの装着のみを行い、マッサージを施術しない化粧方法である場合の官能評価の結果(以下、比較例2という)を示している。
【0041】
先ず、図9に示す実施例と図10に示す比較例1とを比較すると、実施例1は「使用後の肌にべたつきを感じない」の項目を除き、他の項目においては比較例1よりも良好な結果を得ている。ここで、「使用後の肌にべたつきを感じない」の項目において官能評価が低下しているのは、比較例1ではクリーム状化粧料を塗布していないため、クリーム状化粧料を塗布する実施例1に比べて「べたつき感」が増大しているからであると考えられる。
【0042】
しかしながら他の官能評価については、他の全てにおいて実施例は比較例1に比べて良好な結果となっている。特に、「フェースラインが引き締まりそう」、「肌にハリが出そう」、「たるみにくい肌になりそう」の各項目においては、著しい効果の向上が見られた。
【0043】
一方、図9に示す実施例と図11に示す比較例2とを比較すると、実施例1は全ての項目においては比較例2よりも良好な結果を得ている。特に、「肌へ密着する」、「清涼感がある」、「使用後の肌にハリを感じる」、「使用後の肌にべたつきを感じない」、「フェースラインが引き締まりそう」、「肌にハリが出そう」、「たるみにくい肌になりそう」の各項目において、著しい効果の向上が見られた。
【0044】
更に、「たるみにくい肌になりそう」の項目では、比較例1より比較例2の方が良好な効果を得ており、実施例では比較例2よりも更に良好な効果を得ている。これは、マッサージ効果(肌の柔軟効果)とマスクのリフトアップ効果の相乗効果によるものと考えられる。
【0045】
以上説明した図9〜図11に示す官能評価の実験結果から、化粧料の塗布、マッサージの施術、及びマスクの装着を行う本実施形態に係る美容方法を実施することにより、使用感覚が良好で、かつフェースラインのリフトアップを有効に行うことができることが立証された。
【0046】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上記した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能なものである。
【符号の説明】
【0047】
10 マスク
11 マスク本体
12 耳掛け部
13 耳掛け穴
14 顎掛け部
15 美容用キット
16 クリーム状美容液チューブ
17 マスク収納用包装体
18 透明容器
AA 被施術者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顎及び/又は頬にクリーム状美容料を塗布するステップと、
該クリーム状美容料が塗布された顎及び/又は頬に対してマッサージを行うステップと、
前記マッサージの施術後、耳掛け部を有するマスクを用いて顎及び頬をリフトアップさせるステップとを有することを特徴とする美容方法。
【請求項2】
前記クリーム状美容料は、20%以上30%以下の油分を含むこと特徴とする請求項1記載の美容方法。
【請求項3】
前記マスクは、伸縮性を有する不織布を基材とすることを特徴とする請求項1又は2記載の美容方法。
【請求項4】
前記マスクは、ポリアクリル酸系の水溶性ジェルが展膏されてなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の美容方法。
【請求項5】
伸縮性を有する不織布にポリアクリル酸系の水溶性ジェルが展膏されてなるマスクを含むことを特徴とする美容用キット。
【請求項6】
20%以上30%以下の油分を含むクリーム状美容料を更に含むことを特徴とする請求項5記載の美容用キット。
【請求項7】
前記不織布は、長手方向の長さが22.0cm以上24.0cm以下であり、短手方向の長さが8.0cm以上10.0cm以下であることを特徴とする美容用キット。
【請求項8】
前記不織部の長手方向の両側部に、長手方向の長さが2.5cm以上4.0cm以下であり、短手方向の長さが1.0cm以上2.0cm以下の耳掛け孔を形成してなることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載の美容用キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−136019(P2011−136019A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297572(P2009−297572)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【特許番号】特許第4695208号(P4695208)
【特許公報発行日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)