説明

美容方法

【課題】目尻、口元、額、首部など、皺が発生している、あるいは発生するおそれのある部位の保湿を行って、皺の改善又は発生抑制を図るための美容方法を提供すること。
【解決手段】皮膚上に、油性成分を5〜50質量%含有する乳化化粧料を塗布した後、シート基材層と皮膚表面に粘着可能な粘着剤層を有し、かつ、シート基材層と粘着剤層を含むシート全体の水蒸気透過度が200〜2,000g/m・24hrsである皮膚貼付用シートを貼付することからなる美容方法である。シート基材層と粘着剤層を含むシート全体の引張強度が20〜200N/cm、シート基材層がポリウレタン、シート基材層の厚みが30〜250μm、粘着剤層が有機液状成分を含有するゲル系粘着剤であることなどが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目尻、口元、額、首部など、皺が発生している、あるいは発生するおそれのある部位の保湿を行って、皺の改善又は発生の抑制を図るための美容方法に関する。本発明は、純粋な美容に関する発明であり、治療を対象とするものではない。
【背景技術】
【0002】
従来、医療、衛生、化粧等様々な用途に対して皮膚に接着するテープやシートが開発されてきた。例えば、弾性を少なくとも12ヶ月間維持するエラストマー繊維を組合せたものを含み、少なくとも200%の伸張性を有するオレフィン樹脂のブレンドを含む、身体適合性の高い整形外科用キャスティングテープ(特許文献1参照)や、肌追従型薄層フィルムである支持体の上面に膏体層が形成され、該膏体層の上面に、一対の剥離ライナーからなる剥離材が重ね合わされた、肌への追従性がよく、全体的に薄く、膏体層を均一にでき、屈曲部位に貼り付けても皺ができずに剥がれにくい貼付剤(特許文献2参照)が報告されている。
【0003】
また、皺を物理的に伸ばすために、シートを用いる例も知られており、例えば、粘着性を有する、外観が透明または半透明のシート状製剤であって、同シートの内部またはその表面に、開口率が十分に大きい編織布及び/又は不織布を厚み方向に積層させてあることを特徴とする、目尻、口元、額、首部の皺を伸ばして固定する目的の皺伸ばしシート(特許文献3参照)や、ストレッチ性のある基材層に粘着剤を35g/m以上の厚塗りで塗布したことを特徴とする、皮膚の表面の皺を引っ張って伸ばし固定するストレッチ・テ−プ(特許文献4参照)が報告されている。
【0004】
ところで、これらの医療、衛生用の粘着テープやシートは、発汗により生じた水分を外部へ逃がし、ムレを防ぐために透湿性に優れていることが通常要求される。そのため、例えば、ジオール成分として、ポリオキシテトラメチレングリコール、ブタンジオール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも一種と、イソシアネート成分として、メタンジフェニレンジイソシアネートとから得られるエーテル系ウレタン樹脂から成ることを特徴とする皮膚貼付材用フィルム基材(特許文献5参照)や、40℃の水に5分間浸漬した際の長さ変化で表される水膨潤率が5%以下であることを特徴とする厚みが10μm〜50μmであるウレタン系樹脂からなる皮膚貼付材用フィルム基材(特許文献6参照)や、厚みが10μm〜50μmのエーテル系ウレタン樹脂からなり、少なくとも一方向の引張強度が5〜30N/20mm幅、少なくとも一方向の伸びが400〜1,000%、少なくとも一方向の引裂強度が400〜1,000N/cm厚であることを特徴とする皮膚貼付材用フィルム基材(特許文献7参照)であって、それぞれ透湿度が、800〜4,000g/m・24hrsであるフィルム基材が提案されている。
【0005】
かかるシートの皮膚に対する接着性を高めること等を目的として、粘着剤の開発も行われており、アクリル系重合体100質量部と、この重合体と相溶する室温で液状ないしはペースト状の成分が30〜100質量部からなる粘着剤組成物であって、この液状ないしはペースト状の成分が、炭素数8〜18の一塩基酸ないしは多塩基酸と炭素数が14〜18の分岐アルコールのエステル及び/又は炭素数が14〜18の不飽和脂肪酸ないしは分岐酸と4価以下のアルコールのエステルからなり、且つ上記アクリル系重合体の40〜80質量%が架橋により不溶化されていることを特徴とする医療用粘着剤を支持体の少なくとも片面に設けてなる医療用外用材(特許文献8参照)や、基材フィルムの片面に感圧性接着剤層を設けてなる貼付材であって、前記接着剤層はアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル単量体40〜80質量%、アルコキシル基含有エチレン性不飽和単量体10〜50質量%及びカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体1〜10質量%からなる共重合体を主体とし、該共重合体のガラス転移点が250K以下であり、且つ乾燥後の共重合体のゲル分率が25%以上であることを特徴とする外用貼付材(特許文献9参照)や、アルキル基の炭素数が4以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分として共重合した共重合体および当該共重合体と相溶する液体成分とを含む架橋ゲル層が支持体の少なくとも片面に形成されてなり、当該共重合体と当該液体成分との含有質量比が、1.0:0.6〜1.0:1.8であり、かつベークライト板への接着力が250g/12mm幅以下であるアクリル系ゲル材(特許文献10参照)や、支持体の少なくとも片面にアクリル酸エステル系重合体と、該重合体と相溶する液状成分とを含む粘着剤層を形成してなる粘着シートであって、粘着剤層は剪断応力を加えた場合に凝集破壊または界面破壊が生じない弾性体であると共に、剪断応力を加えた際のずれ変形移動完了距離が粘着剤層の厚みの0.5〜6倍であることを特徴とするアクリル系粘着シート(特許文献11参照)や、エラストマーフィルムの片面に担持フィルムを設けてなる積層フィルムのエラストマーフィルム側に、粘着剤層が形成された粘着シートであって、該粘着剤層はアクリル系重合体を主成分としており、この重合体と相溶する常温で液状ないしはペースト状の成分が、上記粘着剤層および担持フィルムの両方に存在しており、担持フィルムが剥離可能な状態でエラストマーフィルムの片面に形成されていることを特徴とする皮膚貼付用粘着シート(特許文献12参照)が報告されている。
【0006】
また、ポリオール成分が、繰返し単位がポリオキシアルキレン骨格を有するポリエーテルポリオールを少なくとも1種類含んでおり、前記ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを反応させて得られるポリエーテルウレタンからなるフィルム上に、アクリル酸エステル系ポリマーと、該アクリル酸エステル系ポリマーに対して相溶可能であり、常温で液状もしくはペースト状である、炭素数が16以上のカルボン酸エステルと、架橋剤成分とを含む樹脂組成物から形成した粘着剤層を有し、40℃、30%RHの雰囲気下で24時間保存したときの透湿度が800g/m・24h・40℃・30RH以上、2,400g/m・24h・40℃・30RH以下であることを特徴とする皮膚貼着用粘着シート(特許文献13参照)や、屈折率が1.45以上1.55以下であるポリウレタンを含有する樹脂シート上に、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤及びポリウレタン系粘着剤の一種以上を含有する粘着層を有する皮膚のたるみを改善するために用いられる粘着シート(特許文献14参照)や、ポリエチレンとポリスチレンを共重合したジェル状の皮膚保護用シートの片面、又はシリコンジェルシートの片面にポリウレタンフィルムを貼り着け、さらに当該片面の反対側の面は剥離紙を貼り着けたことを特徴とする皮膚保護用シート(特許文献15参照)などが提案されている。
【0007】
その他、化粧用シートとしては、可撓性の熱可塑性エラストマ若しくはゴムからなり、ラジウムを含む湯の花を含有するラジウム放射性セラミックスが混練されている、シリコーンゴム又はポリウレタンからなることを特徴とする、人の肌に被せて使用する美肌シート(特許文献16参照)や、皮膚表面に粘着可能な粘着層を設けてなる基材シートの粘着層に剥離可能な離型シートが接合されてなる化粧シートにおいて、該離型シートには、ループ状の切離し線が形成されており、該切離し線は基材シートの輪郭線の内側に設けられ、かつ、該基材シートへの皮膚外用剤又は薬液の塗布、含浸域に相当することを特徴とする、物理的な引張りによって、皮膚を引き締めて活性化すると同時に、薬剤を速やかに皮膚面に浸透させ、パックを短時間で完結させるための機能を具備する化粧シート(特許文献17参照)や、液体を含浸させて顔面に載置される化粧用シート体において、顔面の左右の頬のそれぞれに対向する第1及び第2の頬対向部と、前記第1及び第2の頬対向部のそれぞれに連続して顔面の左右の鼻翼のそれぞれに対向する第1及び第2の鼻翼対向部と、横方向の中央部に形成されて前記第1及び第2の鼻翼対向部を互いに分離する分離形状と、を設けた化粧用シート体(特許文献18参照)などが提案されている。
【0008】
一方、皮膚の保湿性を高めることを目的とする乳化化粧料としては、プロピレン又は1−ブテンをモノマーとする単独重合体であるオレフィン重合体と20℃でペースト状を示す抱水性油剤を含有することを特徴とし、抱水性油剤が、N−ラウロイル−L−グルタミン酸(コレステリル又はフィトステリル・べへニル・オクチルドデシル)、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル、マカデミアンナッツ油脂肪酸フィトステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル等からから選ばれる保湿効果とその持続性が高い乳化化粧料(特許文献19参照)や、ダイマー酸とダイマージオールとのエステル、N−アシルグルタミン酸のジエステル、(ピロリドンカルボン酸/脂肪酸)グリセリル等の抱水性の液状油性成分を含有するマイクロエマルション剤形の粘度1000〜4000mPsの液状化粧料を含む化粧料セット(特許文献20参照)や、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの単独重合体または、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと疎水性モノマーとの共重合体から選ばれる一種又は二種以上と、抱水性油剤を1〜50質量%含有することを特徴とする乳化化粧料(特許文献21参照)や、コレステロールエステル等の抱水性油分を抱水性組成物全量中の5〜80質量%含有する抱水組成物含有する乳化化粧料(特許文献22参照)や、油溶性N−長鎖アシル酸性アミノ酸モノ又はジエステルなどの、50℃で抱水させ室温に戻したとき自重の135%以上の水を抱水することが可能な抱水性油分を0.1〜90質量%含むほか、水膨潤性粘土鉱物を第四級アンモニウム塩で処理して得られる有機変性粘土鉱物と水とを含有してなる油中水型乳化組成物(特許文献23参照)などが報告されている。
【0009】
さらに、化粧料を皮膚に塗布した後にテープやシートを貼付する組合せに関するものとして、ヒアルロン酸を必須有効成分とし、ビオセラミド、ソウハクヒ抽出液、アミノカプロン酸、ローヤルゼリー、イノシット、海洋性コラーゲン、酵母エキス、グリチルリチン酸ジカリウムの中から一成分、あるいは二成分以上を補助成分として、スクワランを用いてクリーム状にし、これを適用部位に塗布した後、絹不織布シートで保温する基礎化粧方法(特許文献24参照)や、皮膚上の前記エマルジョンの上に貼付される感圧接着剤物品が、前記皮膚に直接貼付される前記感圧接着剤テープの接着力のレベルの少なくとも約50%で接着する油中水エマルジョン(特許文献25参照)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−308919号公報
【特許文献2】特開2004−188005号公報
【特許文献3】特開2001−335430号公報
【特許文献4】特開2004−313277号公報
【特許文献5】特開2005−218494号公報
【特許文献6】特開2005−218495号公報
【特許文献7】特開2005−218496号公報
【特許文献8】特許第2539330号公報
【特許文献9】特許第2584866号公報
【特許文献10】特許第2700835号公報
【特許文献11】特許第2971998号公報
【特許文献12】特許第3808771号公報
【特許文献13】特許第3884995号公報
【特許文献14】特開2008−143876号公報
【特許文献15】特開2008−266232号公報
【特許文献16】特開2004−357833号公報
【特許文献17】特開2005−185391号公報
【特許文献18】特開2008−188085号公報
【特許文献19】特開2008−247833号公報
【特許文献20】特開2007−99654号公報
【特許文献21】特開2004−143063号公報
【特許文献22】特開平9−208423号公報
【特許文献23】特開平8−20529号公報
【特許文献24】特開2006−188480号公報
【特許文献25】特表2005−517518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
これまで、目尻、口元、額、首部などの皮膚の皺を改善のためには、シートやテープを貼付して引っ張る方法、保湿用化粧料を塗布する方法、保湿用化粧料を含浸したシートを貼付する方法、保湿用化粧料を塗った後、シートで被覆する方法などがあったが、いずれも、皺の改善に充分な効果を奏していないか、あるいは手間が掛かり過ぎるという問題点があった。そこで、本発明は、皺を充分に改善し、併せて皺の発生を抑制することのできる簡便な美容方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、皮膚の皺の改善が必要な部位に保湿用化粧料として乳化化粧料を塗った後、水蒸気透過性が比較的低い皮膚貼付用粘着シートを貼付して、適用部位の保湿を行うことにより皮膚を充分に改善することができることを見出した。さらに皮膚貼付用粘着シートの粘着剤として、一般的に用いられているようなアクリル系粘着剤やゴム系粘着剤を使用した場合には、化粧料を塗布した部位へ貼付した際にはがれやすいのに対して、有機液状成分を含有するゲル系粘着剤を用いた場合には、乳化化粧料を塗布した部位に貼付した際にもはがれにくい点で好ましいことを見出し、本発明の美容方法を完成した。
【0013】
すなわち本発明は、
(1)皮膚上に、油性成分を5〜50質量%含有する乳化化粧料を塗布した後、シート基材層と皮膚表面に粘着可能な粘着剤層を有し、かつ、シート基材層と粘着剤層を含むシート全体の水蒸気透過度が200〜2,000g/m・24hrsである皮膚貼付用シートを貼付することからなる美容方法、
(2)皮膚の皺を改善又は皺の発生を抑制する美容方法であることを特徴とする上記(1)記載の美容方法、
(3)シート基材層と粘着剤層を含むシート全体の引張強度が20〜200N/cmであることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の美容方法、
(4)シート基材層がポリウレタンからなることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の美容方法、
(5)シート基材層の厚みが30〜250μmであることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の美容方法、
(6)粘着剤層が、有機液状成分を含有するゲル系粘着剤からなることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の美容方法、
(7)油性成分中に抱水性油性成分を10〜80質量%含有することを特徴とする、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の美容方法、及び、
(8)乳化化粧料が、高級アルコール、脂肪酸モノグリセリル及びグリセリンアルキルエーテルから選ばれる一種又は二種以上の両親媒性物質を0.5〜6質量%含有することを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の美容方法に関する。
【0014】
また、本発明は、
(9)シート基材層、皮膚表面に粘着可能な粘着剤層及び剥離層を有し、かつ水蒸気透過度が200〜2,000g/m・24hrsである皮膚貼付用シート、及び、油性成分を5〜50質量%含有する乳化化粧料を有する美容キットに関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の方法により、顕著な皺の改善・発生の抑制、皺改善期間の短縮化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の皮膚貼付用シートの具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の詳細について説明する。
(皮膚貼付用シート)
本発明において使用する皮膚貼付用シートは、シート基材層と皮膚表面に粘着可能な粘着剤層を有する。粘着剤層側には、剥離可能な剥離層を設け、使用前に剥離するようにしてもよい。また、シート基材層における粘着剤層形成面と反対側には印刷層などを有していてもよい。剥離層を設ける場合は、剥離層を皮膚貼付用シート1枚ごとに設けてもよいし、1枚の剥離シートに複数枚の皮膚貼付用シートを設けるようにしてもよい。
【0018】
また、本発明における皮膚貼付用シートは、乳化化粧料中の水分が容易に蒸発しない程度に水蒸気透過性が比較的小さいものが使用され、水蒸気透過度(Dry法)が200〜2,000g/m・24hrsであリ、好ましくは200〜1,500g/m・24hrsである。ここで、水蒸気透過度とは、所定の条件下におけるシートの1m当りの水蒸気の透過量であり、所定量の水を所定の口径を有する容器内部に入れた後、容器の口をシートで覆い、温度40℃、相対湿度30%R.H.の条件下で24時間放置したときの水の減少量を1m当りに換算した値である。水蒸気透過性が小さすぎると長時間貼付時に皮膚がふやけ角層水分量が上昇しバリア機能の低下を招き、赤斑やかゆみが生じる場合がある。さらに、貼付した皮膚表面と本発明の皮膚貼付用シートとの間が湿潤状態になりやすく、粘着力の低下を招いて皮膚面からの脱落を生じやすくなる。一方、水分透過性が高すぎると皺改善効果が低下する傾向を示す。
【0019】
本発明における皮膚貼付用シートは、貼付する部位の皮膚全体のカーブに追従する程度の柔らかさを有するが、皮膚の皺の凹凸や微細な表情の動きがあっても、それに追従して凹凸を作らない程度の硬さを有する必要がある。皮膚の皺の凹凸や微細な表情の動きに合わせて湾曲すると皺の改善効果が少なくなる。上記水蒸気透過性及び硬さを有するため、シート全体の厚さは、通常、30〜250μmであり、50〜200μmが好ましい。また、本発明の皮膚貼付用シートは、皮膚上の適用部位に応じて、適宜、サイズを設定すればよい。
【0020】
上記皮膚貼付用シートの硬さの指標としては、JIS L1096に規定する剛軟性A法による剛軟度(45°カンチレバー法、基材幅20mm、基材長さ150mm)を、15〜25mmの範囲とすることによって、貼付使用中の皮膚面の動きや皺の凹凸に対する追従性や取扱性、貼付中の違和感低減に効果的である。
【0021】
(シート基材層)
本発明において使用するシート基材層は、上記のとおり、乳化化粧料中の水分が容易に蒸発しない程度に水蒸気透過度が大きくないことが必要であると共に、貼付する部位の皮膚全体のカーブに追従する程度の柔らかさを有し、かつ、皮膚の皺の凹凸や微細な表情の動きには追従しない程度の硬さを有する必要がある。このようなシート基材層を構成するための材質としては、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリテトラエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリエーテルポリウレタンやポリエステルポリウレタンなどのポリウレタン、ポリアミド、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの各種プラスチック材料の単層体もしくは積層体を用いることができる。これらのうち、皮膚追従性等の優れた柔軟性を発揮させるためには、特にポリウレタンが好ましい。本発明のシート基材層として用いられるポリウレタンは、主鎖の繰り返し単位中にウレタン結合(−NHCOO−)を有する重合体であって、本発明の皮膚貼付用シートとして使用しうるものであれば特に制限はないが、主として、イソシアネート類とポリヒドロキシ化合物との反応により製造されるポリエーテル系、ポリエステル系の重合体である。
【0022】
イソシアネート類としては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、トリジンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、トリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、1,8−ジイソシアネートメチルオクタン、リジンエステルトリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等を例示することができ、これらの中でも、入手のし易さや機械的強度に優れたポリマー構造が得られる点から、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を用いることが好ましい。
【0023】
また、ポリヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、グリセリン等の脂肪族ポリオール、1,4−ジメチロールベンゼン、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物などの芳香族グリコール等を例示することができ、これらの中でも、水膨潤性を抑制しつつ高透湿性を確保することができるという点からは、ポリオキシテトラメチレングリコールと、ポリエチレングリコールおよび/またはポリプロピレングリコールのランダム重合体を用いることが好ましく、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールは、用途に応じて適当な分子量を有するものが選択されることが好ましいが、例えば質量平均分子量が500〜3000のものが好ましいものとして挙げられる。
【0024】
これらのうち、ポリウレタンとしては、イソシアネート類としてMDIを用い、ポリヒドロキシ化合物としてポリオキシテトラメチレングリコールとポリエチレングリコールおよび/またはポリプロピレングルコールを用いることが好ましく、ポリエーテル系ポリウレタン中にポリヒドロキシ化合物として、ポリオキシテトラメチレングリコール5〜60質量%、ポリエチレングリコール10〜50質量%含有させることがさらに好ましく、特にポリエーテル系ポリウレタン中にポリヒドロキシ化合物として、ポリオキシテトラメチレングリコール5〜45質量%、ポリエチレングリコール20〜45質量%を含有することが好ましい。さらに、鎖延長剤を使用することができ、鎖延長剤としては従来公知の材料を用いることができるが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等のジオール類、エチレンジアミン、トリレンジアミン等のジアミン類を挙げることができる。また、ポリウレタンの基材の厚さとしては、通常30〜250μmであり、特に、50〜150μmが好ましい。また、引張強度として、20〜200N/cmの範囲、特に、20〜100N/cmの範囲とすることが、貼付時の違和感の低減や皺伸ばし効果の点から好ましい。
【0025】
本発明に使用されるポリウレタンは、上記イソシアネート類とポリヒドロキシ化合物を原料として公知の製造法により製造することができるが、例えば、特開2005−218495号公報などに記載された方法により製造することができる。即ち、本発明に使用されるポリウレタンは、例えば、ワンショット法又はプレポリマー法を用いて重合することができる。また、溶剤を使用しないバルク重合であっても、粘度低減のために溶液中で重合を行ってもよい。このうち、バルク重合について説明すると以下のとおりである。反応容器にポリヒドロキシ化合物を投入し、温度が50〜80℃になるように調整し攪拌しつつ、イソシアネート類を添加してウレタン化を起こさせる。さらに鎖延長剤を添加して反応させた後、反応生成物をトレーに移動して、100〜150℃で4時間以上保持し、反応を完結させることによって、塊状のポリウレタンを得ることができる。
【0026】
次に、塊状のポリウレタンを粉砕してペレット化し、この樹脂ペレットを溶融させた後、Tダイ押出し機やインフレーションダイ押出機を用いて、シート状に押出すことにより、ポリウレタンからなるフィルム基材を形成することができる。なお、シート状に押出されたフィルム基材は、通常、巻き取られる。あるいは、カレンダー加工により、2本の加熱したロール間でポリウレタンを圧延、伸展し、シート化することによりポリウレタンからなるフィルム基材が形成され、フィルム基材は必要に応じて巻き取られる。あるいはまた、樹脂ペレットをN,N−ジメチルアミド等の溶剤に溶解し、この溶液をバーコーター等を用いて例えばポリエステルフィルム等の剥離ライナー上に塗布し、乾燥させて溶剤を除去することにより、ポリウレタンからなるフィルム基材を形成してもよい。
【0027】
必要に応じて、フィルムに通常使用される添加剤、例えば紫外線吸収剤、老化防止剤、充填剤、顔料、着色剤、難燃剤、帯電防止剤などを添加することができる。これらの添加剤は、その種類に応じて通常の量で用いられる。
【0028】
(粘着剤層)
本発明の粘着剤層に使用される粘着剤は、シート基材層に塗布でき、かつ、貼着した皮膚に対して粘弾性を有し、皮膚に対して刺激の少ないものであることが必要である。さらに、乳化化粧料中の水分が容易に蒸発しない程度に水蒸気透過性が小さいことが必要であると共に、貼付する部位の皮膚全体のカーブに追従する程度の柔らかさを有し、かつ、皮膚の皺の凹凸に追従しない硬さを有する必要がある。そのため、粘着剤層に使用される粘着剤としては、その材料について特に限定されるものではなく、アクリル系粘着剤やゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤などを用いることができる。これらのうち、粘着特性の調整、皮膚低刺激性などの観点から、アクリル系粘着剤を用いることが好ましい。また、粘着剤の性状の点からは皮膚面への低刺激性や乳化化粧料との相性(相溶性等)の観点から、ゲル系粘着剤が好ましく、特に、有機液状成分を含有するゲル系粘着剤が好ましい。
【0029】
ゲル系粘着剤としては、一般的にヒドロゲル系粘着剤、オルガノゲル系粘着剤などがあるが、本発明では皮膚面上に塗布した乳化化粧料上に皮膚貼付用シートを貼付し、しかも貼付中はしっかりと粘着固定しておく必要があるので、水分を保持しているヒドロゲル系粘着剤よりも貼付中での粘着特性の変動が少ないオルガノゲル系粘着剤を用いることが好ましい。
【0030】
このようなオルガノゲル系粘着剤としては、有機液状成分を多く含んだアクリル系粘着剤を用いることが好ましく、有機液状成分とアクリル系粘着剤が相溶することによって粘着剤層の凝集力が低下する場合には、凝集力の低下を防止するために架橋剤によって架橋する。それにより、含有する有機液状成分の相分離や、粘着剤層中からの溶出を防止することが出来る。
【0031】
粘着剤層において使用するアクリル系粘着剤に用いるモノマー混合物は、皮膚接着性(粘着性)を付与するための(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主モノマーとし、凝集力等を付与するための共重合可能な不飽和モノマーを副モノマーとし、これらを共重合させてアクリル系粘着剤とする。
【0032】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、アクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル、具体的には炭素数が1〜12、好ましくは4〜9のアルキルエステルを1種類もしくは2種類以上併用して用いることができる。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合する不飽和モノマーとしては、アルコキシ基含有エチレン性不飽和モノマーや、カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーなどを用いることができる。
【0033】
アルコキシ基含有エチレン性不飽和モノマーは、粘着剤層に親水性や透湿性を付与するために含有させることが好ましく、具体的には、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレートなどの炭素数が1〜4のアルコキシ基を有するアルコキシアルキル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
また、カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、粘着剤層に凝集性を与えたり、粘着剤を架橋処理する際の反応点を確保するため含有させることが好ましく、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、(無水)マレイン酸が挙げられる。これらのうち、共重合性や取り扱い性などの点から、アクリル酸やメタクリル酸を用いることが好ましい。
【0034】
さらに粘着剤層に親水性の付与が必要な場合、共重合性モノマーとして、スチレンや酢酸ビニル、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートなどのモノマーも必要に応じて適宜共重合してもよい。
【0035】
アクリル系粘着剤からなる粘着剤層をオルガノゲル系粘着剤にする場合には、得られるオルガノゲル粘着剤中のアクリル系共重合体の質量平均分子量は150万以下、好ましくは50万〜100万程度に調整することが、粘着剤層の凝集性付与の点から望ましいものである。
また、貼付する皮膚面の凹凸に対する粘着剤層表面の密着性を向上させ、さらに耐汗接着性を発揮させる観点からは、アクリル系粘着剤100質量部に対して20〜120質量部の有機液状成分を含有させてオルガノゲル状の粘着剤を作製することが好ましい。
【0036】
有機液状成分とは油状成分であって、代表的には脂肪酸エステルやカルボン酸エステル、グリセリンエステルなどが挙げられる。脂肪酸エステルとしては、前記アクリル系重合体に親和性、相溶性を示すと共に、発汗時の水分に対しても親和性を示すものであって、具体的には、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、イソステアリン酸イソプロピル、ラウリル酸ヘキシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、フタル酸ジエチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、2−エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸イソセチル、2−エチルヘキサン酸ステアリル、コハク酸ジオクチルなどの一価アルコールを用いたカルボン酸エステルや、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジイソステアリン酸プロピレングリコール、モノカプリル酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリオレイン酸グリセリル、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパンなどの二価以上の多価アルコールを用いたカルボン酸エステルを用いることができる。
【0037】
上記のカルボン酸エステルのうち、酸化劣化を防止するという観点から不飽和二重結合を有さない飽和脂肪酸を用い、皮膚への低刺激性や経済性の点からグリセリンエステルとすることが望ましい。従って、飽和脂肪酸としては、カプリル酸やカプリン酸、2−エチルヘキサン酸などの飽和脂肪酸と、一価もしくは多価アルコールとのエステル化物を用いることが好ましく、最も好ましくはカプリル酸トリグリセリル、2−エチルヘキサン酸トリグリセリルを用いることが望ましい。
【0038】
上記、カルボン酸エステルのうち、不飽和結合を有するものを用いた場合、大気中の酸素によって酸化劣化して物性変化を起こし、所望の特性を発揮しない恐れがあるので、このような場合には酸化防止剤を粘着剤中に配合しておくことが好ましい。
【0039】
上記組成物を含むオルガノゲル系粘着剤におけるアクリル系共重合体は、その30〜80質量%、好ましくは35〜70質量%が不溶化(ゲル化)するものであることが好ましい。なお、ここでの「不溶化」とは、具体的にはトルエンに溶解しないという意味である。また、不溶化率は、乾燥したサンプルをトルエン中に常温で7日間浸漬し、平均孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン膜(日東電工社製、NTF膜)にて不溶分を濾別、乾燥して浸漬前の乾燥サンプル質量との比率で算出した値である。
【0040】
上記不溶化率が30質量%に満たない場合は形成した粘着層の内部凝集力が不十分となって、皮膚面への貼付中にずれが生じたり、皮膚面から剥離したときに皮膚面に粘着剤が残留する、所謂糊残り現象を生じる恐れがある。
【0041】
一方、不溶化率が80質量%を超える場合には、皮膚接着性が極端に低下し、貼付使用中に端部剥がれや、剥離脱落現象を生じる恐れがある。
【0042】
また、アクリル系粘着剤を不溶化する方法として、一般的に架橋処理を施す方法を採用することができる。架橋処理としては、有機過酸化物やイソシアネート化合物、有機金属塩、金属アルコラート、金属キレート、エポキシ化合物、一級アミノ化合物等の架橋剤を用いた化学的架橋や、電子線や紫外線等の電離性放射線を照射してなる架橋を行うことができる。
【0043】
さらに、上記のようにして得られた粘着剤に対して、必要に応じてグリセリンやポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの多価アルコールに代表される可塑剤や、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸架橋体、ポリビニルピロリドンに代表される水溶性もしは吸水性の樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂に代表される粘着性付与樹脂、各種軟化剤、各種充填剤、顔料などの各種添加剤を配合してもよい。
【0044】
粘着剤層の厚さとしては、通常5〜80μmであり、特に、10〜50μmが好ましい。
さらに、皮膚に対する粘着力は以下の測定方法で0.2〜1.5N/10mmが好ましい。
【0045】
測定方法:前腕内側部に0.02gの乳化化粧料を塗布。その後、シート貼付部を意識し、人指し指で往復10回擦り込む。化粧料を塗りこんだ肌に皮膚貼付用シート(2cm×5cm)を貼付し、指で軽く圧着した。15分間腕を動かさないよう安静にし、その後はがしたときの抵抗を引張試験機で90°ピールをし、最大値の値を粘着力とした。測定機器はテンシロン型引張試験機を用いた。(剥離速度300mm/分、n=3)本測定方法における乳化化粧料としては、後述の実施例の「2乳化化粧料の製造」において調製されたものを使用した。
【0046】
(シート形状)
本発明に使用されるシート形状としては、皮膚下の筋肉に沿った形状であることが望ましい。筋肉に沿った形状でない場合は、微細な表情の動きに追随してシート自体が波打つことにより物理的な力による皺伸ばし効果が減少するからである。特に顔への貼付に関しては表情筋にそった形が望ましく、目じりの周辺の皺に関しては、眼輪筋に沿った形状が好ましい。一つの具体例を図1に示す。
【0047】
(乳化化粧料)
本発明の乳化化粧料における油性成分としては、動物油、植物油、合成油等の起源を問わず、炭化水素類、エステル類、脂肪酸類、シリコーン油類、フッ素系油類等を挙げることができ、具体的には、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ポリブテン、ポリイソブチレン等の炭化水素油類;オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、イソステアリン酸イソセチル、イソノナン酸イソトリデシル、ステアリン酸イソセチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸−2−エチルヘキシル、パルミチン酸−2−ヘキシルデシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸ミリスチル、オクタン酸セチル、テトラ−2−エチルヘキサン酸セチル、コハク酸−2−エチルヘキシル、モノイソステアリン酸アルキレングリコール、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、イソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリベヘン酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、テトラ−2−エチルへキサン酸ペンタエリトリット、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・べへニル・オクチルドデシル)エステル等のエステル類;低重合度ジメチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等のシリコーン類;パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類を挙げることができ、これらは一種又は二種以上用いることができる。油性成分を配合することにより、水分だけでなく皮膚への油分の浸透を促し柔らかくしたり、シート除去時に皮膚がひっぱられて感じる痛みを緩和したり、シート除去後に皮膚の乾燥を防ぎ保護する他、皮膚を柔軟にすることにより皺伸ばし効果を持続させる。なかでも分子量300〜400の油性成分を配合すると皺改善効果がさらに高くなり好ましい。分子量300〜400の油剤としては、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、イソノナン酸イソトリデシル、2−エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸オクチル、コハク酸ジ2−エチルヘキシル、オレイン酸エチルなどが挙げられる。
【0048】
本発明に用いられる乳化化粧料における油性成分の含有量は、乳化化粧料全量中の5〜50質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。5質量%未満では、充分な弾力性、ツヤや潤い感、効果感が得られず、50質量%を超えると適度で均一な膜厚感や密着感が得られず好ましくない。また先に記載の分子量300〜400の油剤の配合量は限定されないが、好ましくは、3〜20質量%であり、更に好ましくは5〜10質量%である。
【0049】
上記油性成分の中でも、自重と等量以上の水を抱え込むことのできる抱水性油性成分が肌への親和性を高めるために含まれることが好ましい。本発明で用いる「抱水性」とは、以下の抱水力試験により測定される抱水力(%)が100%以上を示すものである。抱水力試験方法は、50℃に加熱した試料(油性成分)10gを200mLビーカーに秤り取り、ディスパーミキサーにて3000rpmで攪拌しながら、50℃の水を徐々に、水が試料から排液してくるまで添加し、水が排液しない最大量(質量)を測定し、この数値を試料10gで除し、100倍して抱水力(%)として評価している。本発明ではこのような抱水性油性成分のなかでも、とりわけN−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・べへニル・オクチルドデシル)エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・べへニル・オクチルドデシル)エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・オクチルドデシル)エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・オクチルドデシル)エステル、ダイマー酸ジリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸フィトステリル、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、ステアリン酸硬化ヒマシ油、マカデミアンナッツ脂肪酸コレステリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル等が好ましい。抱水性油性成分の含有量は、油性成分中の10〜80質量%が好ましく、30〜70質量%がより好ましい。
【0050】
本発明に用いられる乳化化粧料には、乳化を安定させるために高級アルコール、脂肪酸モノグリセリル、及び、グリセリンアルキルエーテルから選ばれる分子内に親水性基と親油性基の両方を有している両親媒性物質を用いることが好ましい。なかでも25℃において固形の両親媒性物質は、べたつき感を与えずに、化粧膜に柔軟性を与え、化粧膜を厚くすることにより潤い感を高め、さらには皺を改善又は皺の発生を抑制する効果も期待することができ、特に好ましいものである。
【0051】
このような高級アルコールとして、炭素原子数14〜30の直鎖飽和高級アルコールを挙げることができ、具体的には、ベヘニルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール等の直鎖飽和脂肪族アルコールやラノリンアルコール等を例示することができる。
【0052】
脂肪酸モノグリセリルとしては、炭素原子数は16〜18のものであり、具体的には、ステアリン酸グリセリル、パルミチン酸グリセリル等を例示することができる。
グリセリンアルキルエーテルとしては、炭素原子数は16〜18のものであり、具体的には、グリセリンモノステアリルエーテル、グリセリンモノセチルエーテル等を例示することでできる。これらは必要に応じて1種、又は2種以上用いることができる。
【0053】
両親媒性物質の含有量は、乳化化粧料全量中、0.5〜6質量%であり、より好ましくは2〜6質量%である。この範囲とすることにより、乳化化粧料の安定性が向上し、また塗布時の使用感に優れるものとなる。
【0054】
本発明においては、前記抱水性油性成分と、前記両親媒性物質の含有質量比[抱水性油性成分量]/[両親媒性物質量]が0.8〜5の範囲とすることで、皺改善の効果として好ましく、2〜4の比率とすることで、さらに皺改善の効果に優れるものとすることができる。
【0055】
本発明に用いられる乳化化粧料に配合される界面活性剤としては、油性成分を安定に乳化する目的のために配合され、通常化粧料に用いられている界面活性剤であれば特に限定されず、例えば、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤を挙げることができる。
【0056】
上記非イオン性界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、プロピレグリコール脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビトールの脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、グリセリンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ラノリンのアルキレングリコール付加物、ポリオキシアルキレンアルキル共変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーンを例示することができる。
【0057】
上記アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼン硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、α−スルホン化脂肪酸塩、アシルメチルタウリン塩、N−メチル−N−アルキルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩、N−アシルアミノ酸塩、N−アシル−N−アルキルアミノ酸塩、Ο−アルキル置換リンゴ酸塩、アルキルスルホコハク酸塩を例示することができる。
【0058】
上記カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、ポリアミン及びアルカノールアミン脂肪酸誘導体、アルキル四級アンモニウム塩、環式四級アンモニウム塩等を例示することができる。
【0059】
上記両性界面活性剤としては、アミノ酸タイプやベタインタイプのカルボン酸型、硫酸エステル型、スルホン酸型、リン酸エステル型のものがあり、人体に対して安全とされるものが使用できる。例えば、N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシルメチルアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキルアミノアルキレンカルボン酸、N,N,N−トリアルキル−N−スルフォアルキレンアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキル−N,N−ビス(ポリオキシエチレン硫酸)アンモニウムベタイン、2−アルキル−1−ヒドロキシエチル−1−カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイン、レシチンを例示することができる。
【0060】
また、本発明の乳化化粧料の構成成分として、レシチンが配合されることが好ましい。
レシチンは、大豆やその他植物由来でも、卵黄由来でも、水素添加されていてもされてなくとも良い。また、酵素処理でリゾ化していても良い。レシチンの配合により、配合成分の肌への浸透性が高まり、より高い皺改善効果が得られる。
【0061】
本発明に用いられる乳化化粧料には、上記記載の成分以外にも必要に応じて、保湿剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、エモリエント剤、美容成分、香料、水溶性高分子、保湿顔料、着色顔料、光輝性顔料、有機粉体、疎水化処理顔料、タール色素等通常化粧料に用いられる成分を配合することができる。
【0062】
本発明の乳化型化粧料の剤型としては、水中油型乳化化粧料又は油中水型乳化化粧料のいずれでもよく、形態としては、液状、低粘度乳液状、クリーム状のいずれも適用できる。また、本発明の乳化型化粧料としては、化粧水、美容液、乳液、クリーム、等の肌に直接適用する化粧料を好適に挙げることができる。
【0063】
(皮膚の皺を改善する美容方法)
目尻、口元、額、首部など、皺のできている部位あるいはできやすい部位に、まず、上記乳化化粧料を適量塗布する。塗布後、その上に上記皮膚貼付用シートを貼付する。皮膚貼付用シートの貼付時間は、適宜設定しうるが、通常、一回当り1時間〜1日、必要ならば繰り返し行う。皮膚貼付用シートは、使用の都度取り替えてもよく、繰り返し使用してもよい。また就寝前に使用し、起床後シートを剥がすといった使用方法が、皮膚の動きが少なくもっとも効果が高い。
【0064】
(保湿用化粧キット)
本発明は、上記乳化化粧料1種類以上と上記皮膚貼付用シート1枚以上とをセットにしたキットとすることもできる。
【0065】
以下に実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲は実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0066】
[実施例1〜10及び比較例1〜3]
1 皮膚添付用シートの製造
(1)シート基材の評価
まず、シート基材の違いによる肌への使用性について検討した。
本発明のシート基材を用いた皮膚添付用シートを下記の試験方法に従って皮膚面へ貼付した際の使用感を試験し、下記の表に記載した。また、各シート基材の剛軟度をJIS L1096に規定する剛軟性A法(45°カンチレバー法)に従って測定した結果(n=5)を表1中に併記した。
<使用感の試験方法>
前腕内側部の中央部に縦1cm×横5cmの大きさに裁断した皮膚貼付用シートを貼付し、指で軽く圧着した。貼付圧着後、約5時間経過した際の使用感を以下の判断基準で3段階評価し、その平均点を表1に示した。(n=5)
<評価基準>
3:全く違和感がない。
2:ほとんど違和感がない。
1:やや違和感がある。
【0067】
【表1】

【0068】
上記表から明らかなように、比較的柔軟性を有するポリウレタンシートの中でも、剛軟度が15〜25mmの厚み範囲にある100μm厚のシート基材や70μm厚のシート基材は使用感に特に優れたものであった。
【0069】
(2)皮膚貼付用シートの製造
<粘着剤Aを使用した皮膚貼付用シート>
不活性ガス雰囲気下で、イソノニルアクリレート65部、2−メトキシエチルアクリレート30部、アクリル酸5部を共重合させて得られたアクリル系共重合体100部にカプリル酸トリグリセリル100部、架橋剤として三官能性イソシアネート(日本ポリウレタン社製、コロネートHL)0.1部をトルエン中で配合し、粘着剤の溶液を調製した。 得られた粘着剤の溶液をセパレーター上に塗布、乾燥し、粘着剤の厚みが30μmになるように調整し、以下の実施例及び比較例における表3〜5に示される様に、シート基材の片面に積層、転写した。シート基材は図1に示される形状の物を使用した。
【0070】
<粘着剤Bを使用した皮膚貼付用シート>
窒素ガス雰囲気下でアクリル酸5部、アクリル酸2−エチルヘキシルエステル95部を共重合させて得られたアクリル系共重合体100部にトリオレイン酸ソルビタン67部、架橋剤として三官能性イソシアネート(日本ポリウレタン社製、コロネートHL)0.14部を酢酸エチル中で配合し、粘着剤の溶液を調製した。
得られた粘着剤の溶液をセパレーター上に塗布、乾燥し、粘着剤の厚みが50μmになるように調整し、接着剤Aと同様に、シート基材の片面に積層、転写した。
【0071】
<粘着剤Cを使用した皮膚貼付用シート>
窒素ガス雰囲気下でアクリル酸5部、アクリル酸2−エチルヘキシルエステル95部を共重合させて得られたアクリル系共重合体100部にトリオレイン酸ソルビタン40部、架橋剤として三価のエポキシ化合物(日産化学工業社製、テピック−S)0.05部を酢酸エチル中で配合し、粘着剤の溶液を調製した。
得られた粘着剤の溶液を、接着剤Aと同様に、シート基材の片面に直接塗布、乾燥し、不織布より上の粘着剤の厚みが20μmになるように調整した。
【0072】
2 乳化化粧料の製造
表2に示す処方の乳化化粧料(保湿用アイクリーム)を以下に示す方法で調製した。
【0073】
【表2】

【0074】
製法
1.No.1〜No.10を均一に混合し、70℃に加熱する。
2.No.11及びNo.12を70℃に加熱する。
3.No.13及びNo.14をアジディスパーにて、3000rpmで20min分散する。
4.アジディスパーにて3000rpmで攪拌しながら2に1を徐注入し3min混合する。
5.4を40℃まで冷却し、3を投入しアジディスパーで1500rpmで3min混合後、No.15及びNo.16を注ぎ、さらに3min混合する。
【0075】
3 評価試験
女性ボランティア14名に、夜のお手入れ後に上記2で製造した保湿用アイクリーム(表中では「クリーム1」という)を0.05g塗布した後、上記2で製造した表3〜5に示すような各種の皮膚貼付用シート(図1の形状で実施例1〜10、比較例1〜3の組成)を目じりに貼付し、指で軽く圧着した。
【0076】
そのまま就寝し起床後シートを除去した。これを2週間連続使用し、以下のような評価を行った。
皺の評価に関しては、「皺改善度」、「肌の弾力」、「肌のキメ」、「皮膚粘着性」、「皮膚トラブル」、「はがすときの痛みのなさ」に関して以下のような評価を行った。なお、「はがすときの痛みのなさ」については、シート単独・粘着剤違いの評価のときのみ行った。
【0077】
「皺改善度」
日本香粧品学会の抗皺製品評価ガイドライン(日本化粧品学会誌 30(4),316−336(2006)より)に基づいて判定し、皺スコアを0〜7の8段階のスコアで評価した。初期の皺スコアから2週間使用後の皺スコアの差の4人の平均を皺改善度として表に示す。
【0078】
「肌の弾力」
1.使用前と変化なし
2.使用前より肌の弾力がわずかに上がった。
3.使用前より肌の弾力が上がった
4.使用前より肌の弾力がかなり上がった。

「肌のキメ」
1.使用前と変化なし
2.使用前より皮溝・皮丘がわずかに鮮明になった。
3.使用前より皮溝・皮丘が鮮明になった。
4.使用前より皮溝・皮丘がかなり鮮明になった。

「皮膚粘着性」
1.使用中シートがはがれることが5回以上であった。
2.使用中シートがはがれることが3回から4回であった。
3.使用中シートがはがれることが2回以内であった。
4.使用中シートがはがれることがなかった。

「皮膚トラブル」
1.皮膚に違和感を感じ、皮膚がかゆくなる若しくは赤くなる。
2.皮膚に違和感を感じることがある。
3.皮膚に違和感をほとんど感じない
4.皮膚に違和感を全く感じない

「はがすときの痛みのなさ」
1.シートをはがすときに強い痛みがあった。
2.シートをはがすときに痛みがあった。
3.シートをはがすときにほとんど痛みはなかった。
4.シートをはがすときにまったく痛みはなかった。
【0079】
<評価の判定>
専門の評価者4名が評価を行い、以下の判定を行った。
◎:評点の平均が3.5以上4以下
○:評点の平均が3以上3.5未満
△:評点の平均が2以上3未満
×:評点の平均が2未満
【0080】
シート基材層の材質違い、厚さ違い、粘着剤層の粘着剤違いについての評価結果を以下表3〜5に示す。
【0081】
【表3】

【0082】
水蒸気透過性が高いものでは、皺の改善が満足いくものではなく、逆に水蒸気透過性が低い場合は、皮膚トラブルが起こる場合があった。
【0083】
【表4】

【0084】
シート基材がポリウレタンの場合、30μm未満のシートは、シートが柔らかいため、シートがよれて、皺に対して高い効果を発揮しにくい。一方、250μmを越えるシートはシートが硬いために、使用時に違和感を感じる場合があった。
【0085】
【表5】

【0086】
粘着剤層の厚さにより皮膚粘着性とはがすときの痛みに差はあるが、使用性には問題がなかった。
粘着剤の種類としては、有機液状成分を含有するアクリル系粘着剤のようなゲル系粘着剤が好ましい。
【0087】
[実施例11〜21、比較例4〜10]
目じりに、表6及び7に示される実施例11〜21、比較例4〜10の水中油型の乳化化粧料保湿用アイクリームを0.05g塗布し、実施例1と同じゲル系粘着剤の皮膚貼付用シート(ブーメラン型 図1参照)を貼付し指で軽く圧着する。そのまま就寝し起床後シートを除去するといった生活を2週間続けた後、評価を行った。各実施品につきn=4で測定。女性ボランティア36名対象。比較例10に関しては、クリーム塗布後、シートを貼付せずに就寝し、シート貼付部と同様に評価を行った。
【0088】
表6及び7に示す処方のアイクリームは、以下に示す方法で調製した。
1.No.11及びNo.12をアジディスパーにて、3000rpmで20min分散する。
2.No.1〜No.9を均一に混合し、70℃に加熱する。
3.No.10を70℃に加熱する。
4.アジディスパーにて3000rpmで攪拌しながら、3に2を徐注入し3min混合する。
5.4を40℃まで冷却し、1を投入しアジディスパーで1500rpmで3min混合後、水酸化ナトリウムを溶解させたNo.14を注ぎ、さらに3min混合する。
【0089】
(評価試験)
評価は、「皺改善度」「肌の弾力」「肌のキメ」「皮膚粘着性」の4項目で、各効果の判定についても、実施例1〜10の評価試験と同様に行った。なお、表中、各成分の数値の単位は質量%を示す。
【0090】
【表6】

(注)商品名 ペミュレンTR−1(NOVEON社製)
【0091】
【表7】

(注)商品名 ペミュレンTR−1(NOVEON社製)
【0092】
N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)やジペンタエリトリット脂肪酸エステルはペースト系油剤であるのとともに抱水性が高く、非常に効果が高かった。
流動パラフィン等非極性油は単独塗布ではゲル系粘着剤の粘着力を低下させるのであるが、実施例19−21のように乳化することによって粘着性は向上した。さらに、非極性油も極性油と混合することによって、使用中にはがれないものとなり、皺改善することができた。また被験者の使用後の感想から、ペースト系油剤配合のサンプルは、被験者自身の肌改善効果感が非常に高いことがわかった。
【0093】
比較例4は、油剤の配合がなくエモリエント効果に欠けたため、肌の弾力改善やキメの回復がなかった。比較例5−7は、水分の配合がされていないため、肌の乾燥を押さえることが不十分であり、スキンケアの基本である保湿効果に欠けた。肌状態が乾燥していると、肌自体の持つ酵素活性などの回復効果が期待できない。比較例8は油剤の配合がないため、シート剥離時にやや痛みが伴ったほか、皺の回復も見られなかった。比較例9は油剤の配合量が多すぎ、粘着テープの粘着力が保てず、就寝中にシートが剥がれ落ちたため良い結果が得られなかった。比較例10は、クリームだけでも効果実感はあったが、皺改善効果はなかった。
【0094】
[実施例22]
表8に示す処方のアイクリーム(油中水型乳化化粧料:乳液)を以下に示す方法で調製した。
【0095】
【表8】

【0096】
製法
1.No.1〜No.7を均一に混合する。
2.No.8〜No.10を均一に混合する。
3.アジディスパーにて3000rpmで攪拌しながら1に2を徐注入し5min混合する。
【0097】
実施例22の乳液を顔全体に塗布し、気になる皺の部分に適当に大きさを整えた実施例1と同じ皮膚貼付用シートを貼付し、就寝した。翌日シート貼付部を観察したところ、角質層の乾燥状態、キメを改善することができた。2週間連続使用後の皺改善度は0.125であった。
【0098】
[実施例23]
表9に示す処方のアイクリーム(水中油型乳化化粧料:マッサージクリーム)を以下に示す方法で調製した。
【0099】
【表9】

【0100】
製法
1.No.1〜No.4を75℃に加温し均一に混合する。
2.No.5〜No.11を75℃に加温し均一に混合する。
3.75℃にてアジディスパーにて3000rpmで攪拌しながら1に2を徐注入し5min混合する。
【0101】
実施例23のマッサージクリームにて目じりをマッサージ後、皮膚貼付用シートを貼付し、就寝した。翌日目じりを観察したところ、小じわの低減が見られ、角質層の乾燥状態、キメを改善が確認できた。2週間連続使用後の皺改善度は0.5であった。
【0102】
[実施例24]
表10に示す処方のアイクリーム(水中油型乳化化粧料)を以下に示す方法で調製した。
【0103】
【表10】

【0104】
製法
1.No.1〜No.6を75℃に加温し均一に混合する。
2.No.7〜No.9を75℃に加温し均一に混合する。
3.75℃にてアジディスパーにて3000rpmで攪拌しながら1に2を徐注入し5min混合する。
4.75℃にてアジディスパーにて3000rpmで攪拌しながら3に75℃まで加温したNo.10を徐注入し5min混合する。
5.4を40℃まで冷却する。
6.アジディスパーにて1500rpmで攪拌しながら5にNo.11〜No.13を混合する。
7.アジディスパーにて1500rpmで攪拌しながら6にNo.14及びNo.15を混合する。
【0105】
実施例24のアイクリームを目じりに塗布後、皮膚貼付用シートを貼付し、就寝した。
翌日目じりを観察したところ、小じわの低減が見られ、角質層の乾燥状態、キメを改善が確認できた。2週間連続使用後の皺改善度は0.5であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚上に、油性成分を5〜50質量%含有する乳化化粧料を塗布した後、シート基材層と皮膚表面に粘着可能な粘着剤層を有し、かつ、シート基材層と粘着剤層を含むシート全体の水蒸気透過度が200〜2,000g/m・24hrsである皮膚貼付用シートを貼付することからなる美容方法。
【請求項2】
皮膚の皺を改善又は皺の発生を抑制する美容方法である請求項1記載の美容方法。
【請求項3】
シート基材層と粘着剤層を含むシート全体の引張強度が20〜200N/cmであることを特徴とする請求項1又は2記載の美容方法。
【請求項4】
シート基材層がポリウレタンからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の美容方法。
【請求項5】
シート基材層の厚みが30〜250μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の美容方法。
【請求項6】
粘着剤層が、有機液状成分を含有するゲル系粘着剤からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の美容方法。
【請求項7】
油性成分中に抱水性油性成分を10〜80質量%含有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の美容方法。
【請求項8】
乳化化粧料が、高級アルコール、脂肪酸モノグリセリル及びグリセリンアルキルエーテルから選ばれる一種又は二種以上の両親媒性物質を0.5〜6質量%含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の美容方法。
【請求項9】
シート基材層、皮膚表面に粘着可能な粘着剤層及び剥離層を有し、かつ水蒸気透過度が200〜2,000g/m・24hrsである皮膚貼付用シート、及び、油性成分を5〜50質量%含有する乳化化粧料を有する美容キット。

【図1】
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【公開番号】特開2011−178693(P2011−178693A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42873(P2010−42873)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】