説明

美容用ハンドマスク

【課題】装着が容易でフィット性に優れ、薬液を含浸させることによって人の手の甲側部分の肌に対する美容効果が得られる美容用ハンドマスクを提供すること。
【解決手段】本発明の美容用ハンドマスク1は、1枚のシート材からなるマスク本体2を備え、マスク本体2は、手の甲を被覆する甲対応部3と、親指を除く複数本の手指を被覆する複数指対応部4とを有している。複数指対応部4は、該複数指対応部4における使用者の指先に対応する側から甲対応部3に向かって延びる1本以上の切断線7により、複数の領域に分割されている。切断線7における甲対応部3寄りの内側端部72から、平面視して切断線7に向けて凸の凸状(略V字状)の切断部9Aが、内側端部72をその凸(V字)の頂部とするように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美容用ハンドマスクに関し、詳しくは、美容料や化粧料等の各種薬液を含浸させて人の手の甲側部分を被覆し得る美容用ハンドマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、美顔用のマスクとして、人の顔面の形状に合わせ成形されたマスク本体に、美容効果を有する剤を含有させたものが知られている(例えば特許文献1参照)。また、近年、人の手の肌をケアするための美容用ハンドマスクも開発されており、例えば特許文献2には、不織布を手袋状に成形してなるインナー用手袋と、これとは別体のアウター用手袋とを備え、該インナー用手袋に海洋深層水等が配合された美容液を含浸させたものが記載されている。特許文献2に記載のハンドマスクは、インナー用手袋を装着後、更に重ねてアウター用手袋を装着して使用され、アウター用手袋の作用により、水分を逃がさず且つ装着したままの就寝や水仕事が可能であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−168587号公報
【特許文献2】特開2011−63575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に記載のハンドマスクは、手の甲と手の平と五指とを被覆可能ないわゆる手袋であり、その装着には、手袋の開口部から手を挿入して指先を該手袋の指先対応部分まで到達させる操作が必要であるところ、そのような装着操作は時として煩雑に感じる場合がある。特に、美容液が含浸され湿潤状態となっている布製の手袋を装着する場合、使用者の指先が該手袋の指先対応部分に到達する前に該手袋が手に貼り付いてしまい、装着が困難となったり、十分なフィット性が得られない場合があり、また、装着操作中に手袋が破れる場合もあり、湿潤状態の布製の手袋は装着性やフィット性の点で改良の余地があった。一方、通常、人の手において、露出頻度が高く肌の管理が特に必要な部分は甲側部分であり、手の甲側部分の肌に保湿及び栄養供給して肌を柔らかくきれいに管理し得る美容用ハンドマスクが求められている。
【0005】
従って本発明の課題は、装着が容易でフィット性に優れ、薬液を含浸させることによって人の手の甲側部分の肌に対する美容効果が得られる美容用ハンドマスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、人の手の甲側にあてがわれて使用され、手の甲及びそれに続く複数本の手指それぞれにおける手の甲側部分を被覆する美容用ハンドマスクであって、1枚のシート材からなるマスク本体を備え、該マスク本体は、手の甲を被覆する甲対応部と、親指を除く複数本の手指を被覆する複数指対応部とを有し、前記複数指対応部は、該複数指対応部における使用者の指先に対応する側から前記甲対応部に向かって延びる1本以上の切断線により、複数の領域に分割されている美容用ハンドマスクを提供することにより、前記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、装着が容易でフィット性に優れ、美容料や化粧料等の各種薬液を含浸させることによって人の手の甲側部分の肌に対する美容効果が得られる美容用ハンドマスクが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の美容用ハンドマスクの一実施形態の平面図である。
【図2】図2(a)は、図1に示すハンドマスクの使用状態を示す斜視図、図2(b)は、使用状態のハンドマスクの一部を拡大して示す拡大斜視図である。
【図3】図3は、図1に示すハンドマスクの包装体の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の美容用ハンドマスクについて、その好ましい一実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本実施形態のハンドマスク1の未使用状態(薬液が含浸される前の乾燥状態)が示されており、図2には、ハンドマスク1の使用状態(薬液が含浸された湿潤状態)が示されている。本実施形態のハンドマスク1は、図2に示すように、薬液が含浸された湿潤状態で人の手の甲側にあてがわれて使用され、手の甲及びそれに続く複数本(5本)の手指それぞれにおける手の甲側部分を被覆する美容用ハンドマスクであり、図1に示すように、1枚のシート材からなるマスク本体2を備え、マスク本体2は、手の甲を被覆する甲対応部3と、親指を除く複数本(4本)の手指を被覆する複数指対応部4とを有している。
【0010】
本実施形態においては、マスク本体2は、図1に示すように、平面視形状が人の手の外形に沿った形状の1枚のシート材からなり、甲対応部3及び複数指対応部4に加えて更に、使用者の親指を被覆する親指対応部5を有している。ここでいう、「人の手の外形」は、通常は、手指と手指との間の付け根部分(指又部分)が露出するように各手指を開いた状態の外形であるが、指又部分が隠れるように各手指を閉じた状態の外形であっても良い。マスク本体2は、通常の大人(成人女性)の手のサイズ(面積)よりも若干大きめのサイズに作られている。
【0011】
複数指対応部4は、親指を除く使用者の4本の手指(小指、薬指、中指、人差し指)を被覆可能に構成されており、小指対応部41、薬指対応部42、中指対応部43及び人差し指対応部44を有している。各指対応部41〜44は、親指を除く使用者の4本の手指に1対1で対応する。各指対応部41〜44における使用者の指先に対応する先端部は、平面視して該指先の外形に対応した形状となっており、具体的には図1に示すように、平面視して各指対応部の長手方向の外方に向けて凸の凸部となっている。
【0012】
本実施形態のハンドマスク1の主たる特長の1つとして、マスク本体2の使用者の肌に対するフィット性の向上の観点から、複数指対応部4は、図1に示すように、該複数指対応部4における使用者の指先に対応する側(甲対応部3側とは反対側)から甲対応部3に向かって延びる1本以上の切断線(以下、第1切断線ともいう)7により、複数の領域に分割されている点が挙げられる。本実施形態においては、複数指対応部4は、3本の第1切断線7により、4つの領域、即ち、4つの指対応部41〜44に分割されており、これら4つの指対応部41〜44は、1本の第1切断線7によって互いに切り分けられており、1本の第1切断線7を介して2つの該領域(指対応部)が隣接している。各第1切断線7は、隣り合う2つの指対応部の輪郭線の交点40を起点として、甲対応部3に向かって直線状に延びて形成されている。尚、交点40は、後述する第1切断線7の外側端部71(切断線7の長さ方向の両端部71,72のうち、相対的にマスク本体2の外方側に位置する端部71)に一致する。
【0013】
また同様に、使用者の肌に対するフィット性の向上の観点の観点から、親指対応部5は、図1に示すように、該親指対応部5の輪郭線と複数指対応部4の輪郭線との交点50から所定方向に延びる1本の第2切断線8により、複数指対応部4から分離されている。本実施形態においては、第2切断線8は、交点50を起点として複数指対応部4(人差し指対応部44)の輪郭線の延長線(図示せず)を引いた場合に、該延長線に沿って親指対応部5の内方に向かって延びている。尚、交点50は、後述する第2切断線8の外側端部(切断線8の長さ方向の両端部81,82のうち、相対的にマスク本体2の外方側に位置する端部81)に一致する。
【0014】
また、本実施形態においては、使用者の手指と手指との間の付け根部分(指又部分)を被覆可能にし、前述した切断線7,8による作用効果と相俟って、マスク本体2の使用者の肌に対するフィット性を更に向上させる観点から、図1に示すように、第1切断線7及び第2切断線8それぞれの内側端部(切断線の長さ方向の両端部のうち、相対的にマスク本体2の内方側に位置する端部)72,82から、平面視して各切断線7,8に向けて凸の凸状の切断部9A,9Bが、該内側端部72,82をその凸の頂部とするように形成されている。本実施形態においては、凸状の切断部9A,9Bは、略V字状をなし、内側端部72,82をそのV字の頂部とするように形成されている。
【0015】
即ち、複数本(3本)の第1切断線7それぞれにおける甲対応部3寄りの内側端部72から、平面視して略V字状(凸状)の切断部9Aが、内側端部72をそのV字(凸)の頂部とするように形成されており、また、第2切断線8における前記交点50とは反対側の内側端部82から、平面視して略V字状(凸状)の切断部9Bが、内側端部82をそのV字(凸)の頂部とするように形成されている。従って、複数指対応部4における隣り合う指対応部の間(指対応部41,42の間、指対応部42,43の間、指対応部43,44の間)には、第1切断線7とその内側端部72に形成された略V字状の切断部9Aとにより、平面視略Y字状の切断線が形成されており、また、複数指対応部4(人差し指対応部44)と親指対応部5との間には、第2切断線8とその内側端部82に形成された略V字状の切断部9Bとにより、平面視略Y字状の切断線が形成されている。
【0016】
切断部9Aにおいては、V字(凸)を形成する2本の切り込み(以下、切断部形成線ともいう)の長さが略同じであるのに対し、切断部9Bにおいては、V字(凸)を形成する2本の切断部形成線の長さが異なっており、親指対応部5の内方に向かって延びる一方の切断部形成線(図1中右側の切断部形成線)の方が、甲対応部3の内方に向かって延びる他方の切断部形成線よりも長い。
【0017】
また、本実施形態においては、マスク本体2は、図1に示すように、甲対応部3から少なくとも使用者の手首に達する延長部6を有している。そして、延長部6と甲対応部3との境界又はその近傍には、ハンドマスク1(マスク本体2)の肌に対するフィット性の向上の観点から、マスク本体2の長手方向(図1中のX方向)に沿う両側縁21,21それぞれから該マスク本体2の内方に向かって延びる一対の切り込み10A,10Bが形成されている。
【0018】
一対の切り込み10A,10Bは、それぞれ、マスク本体2の長手方向Xと直交する方向(図1中のY方向。マスク本体2の幅方向。)に直線状に延びて形成されており、各切り込み10A,10Bについて個別にマスク本体2の内方に向かう延長線(図示せず)を引いた場合に、それらの延長線が一致するように配されている。ここで、「延長部と甲対応部との境界」とは、マスク本体2の輪郭線における親指対応部5の付け根を起点として、マスク本体2の幅方向Yに延びる仮想直線(図示せず)を引いた場合の該仮想直線に相当し、本実施形態においては、切り込み10A又は10Bのマスク本体2の内方に向かう前記延長線に一致する。尚、「親指対応部の付け根」とは、親指対応部5から延長部6に続く部分であり、図1に示す形態においては、切り込み10Bの外側端部に相当する部分である。また、「延長部と甲対応部との境界の近傍」とは、前記仮想直線から10mm以内の部位を意味する。
【0019】
本実施形態のハンドマスク1は、1枚のシート材を人の手の外形に沿って裁断し、裁断されたシート材の所定箇所に切断線7,8を設け、更に切断線7,8の内側端部72,82に略V字状(凸状)の切断部9A,9Bを設けることによってマスク本体2を製造し、こうして得られたマスク本体2(シート材)に、美容料や化粧料等の薬液を含浸させることによって製造される。従って、ハンドマスク1(マスク本体2)は、未使用時においてその全体が湿潤状態となっている。シート材の裁断方法は、複数枚(2〜30枚程度)のシート材を重ね合わせた状態でこれらをまとめて裁断する方法でも良い。マスク本体(シート材)に薬液を含浸させる方法としては、この種のシート材に薬液を含浸させる公知の方法を特に制限無く利用することができ、例えば、容器に収容された薬液中にマスク本体を浸漬する方法、マスク本体にスプレー等により薬液を噴霧する方法等が挙げられる。
【0020】
図3には、湿潤状態のハンドマスク1の包装形態の一例が示されている。図3に示すハンドマスクの包装体30は、収容体31とその内部に収容された1枚のハンドマスクとを具備している。収容体31は扁平なものであり、複数の非通気性のフィルム材を貼り合わせて、ハンドマスク1が収容される密閉空間が形成されたものである。非通気性のフィルム材としては、例えばアルミニウム箔のような金属薄膜、シリカ蒸着フィルム、アルミ蒸着フィルム、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。ハンドマスク1は、収容体31の内部において、2枚の台紙32,32に挟まれた状態で収容されている。台紙32は、ハンドマスク1を物理的に保護すると共に、マスク本体2の外部に薬液が滲み出した場合に、その滲み出した薬液を吸収保持する役割を担うもので、紙、不織布等の吸水性シートからなる。包装体30には複数枚のハンドマスク1を収容しても良く、その場合、収容体31の内部において、ハンドマスク1と台紙32とを交互に積層し且つ最上層及び最下層を台紙32とすれば良い。
【0021】
本実施形態のハンドマスク1を手に装着する操作としては、予め薬液が含浸されて湿潤状態となっている1枚のシート状のマスク本体2を、図2に示すように、符号90で示す人の手の甲側にあてがうだけであり、ハンドマスク1の装着操作の容易性は、特許文献2に記載の如き手袋状のハンドマスクに比して格段に向上している。ハンドマスク1(マスク本体2)には表裏の区別は無く、マスク本体2の一面及び他面のどちらを手の甲に対向させても構わない。即ち、1枚のハンドマスク1は、左右の区別が無く、右手にも左手にも使用できる。マスク本体2が使用者の手よりも十分に大きなサイズを有している場合は、手の甲側部分のみならず、図2に示すように、手の甲から手の平に続く部分(手指側面)もマスク本体2によって被覆される。ハンドマスク1の装着時間は、通常、薬液の肌への浸透時間によって決まる。
【0022】
マスク本体2は湿潤状態となっているため、これを手の甲側にあてがうだけで手の甲の表面形状に自然と追従し、手の甲側の肌、更には手指側面に良好にフィットする。特に、ハンドマスク1においては、複数指対応部4が第1切断線7によって複数の領域(指対応部41〜44)に分割され、また、親指対応部5が第2切断線8によって複数指対応部4から分離されているため、これら各指対応部41〜44及び5は、それぞれ、使用者の手指に対して独立した追従性を有し、使用者の各手指の形状に柔軟に対応することが可能であり、各手指をフィット性良く被覆できる。
【0023】
また、本実施形態においては、切断線7,8の内側端部72,82に略V字状(凸状)の切断部9A,9Bが設けられているため、ハンドマスク1を図2(a)に示す如く手の甲側に装着したときに、図2(b)に示すように、マスク本体2における切断部9A,9Bで挟まれた三角形状の部分が、使用者の手指と手指との間の付け根部分(指又部分)を被覆する。従って、凸状の切断部9A,9Bを有する本実施形態のハンドマスク1によれば、切断線7,8によるフィット性の向上効果と相俟って、マスク本体2が手の甲側全体に立体的にフィットして手の甲側の肌、手指側面及び指又部分を被覆するため、優れたフィット性が得られると共に、手指側面や指又部分を含む手の甲側全体に薬液を浸透させることができる。
【0024】
また、本実施形態のハンドマスク1は、使用者の手首を被覆する延長部6を有しているため、手のみならず手首の甲側部分にも薬液を浸透させることができる。特に、本実施形態においては、延長部6と甲対応部3との境界又はその近傍に、一対の切り込み10A,10Bが設けられているため、ハンドマスク1の装着時には、使用者の手首の甲側部分における凹凸部分(骨が出っ張っている部分)又はその近傍に切り込み10A,10Bが位置し、それによって延長部6及び甲対応部3が該凹凸部分及びその近傍の肌に追従し、優れたフィット性が得られる。
【0025】
前述したハンドマスク1による作用効果、特にフィット性を一層高める観点から、各部の寸法等は次のように設定することが好ましい。
略V字状の切断部9A,9Bの切断深さは、それぞれ、好ましくは3〜20mm、更に好ましくは5〜15mmである。前記切断深さは、V字を形成する2本の切断部形成線(切り込み)それぞれにおける、内側端部72(82)とは反対側の端部を結ぶ1本の直線を引き、更に、該直線と直交し且つ内側端部72(82)を通過する1本の垂線を引いた場合に、該直線と該垂線との交点から内側端部72(82)に亘る長さである。
V字を形成する2本の切断部形成線の長さは、互いに同じであっても良く、異なっていても良い。
略V字状の切断部9A,9Bにおける、V字を形成する2本の切断部形成線のなす角度α(図1参照)は、好ましくは10〜170°、更に好ましくは25〜90°、特に好ましくは40〜55°である。
【0026】
尚、本発明に係る凸状の切断部は、図1に示す切断部9A,9Bの如き、凸の頂部が屈曲した略V字状の切断部に限定されず、例えば、凸の頂部が湾曲した略U字状の切断部であっても良い。その場合、略U字状の切断部の切断深さは、略V字状の切断部と同様に設定することができる。また、U字を形成する2本の切断部形成線の長さは、互いに同じであっても良く、異なっていても良い。
【0027】
第2切断線8の長さ(交点50と切断部9BのV字の頂部との間の長さ)は、好ましくは10〜40mm、更に好ましくは15〜25mmである。
一対の切り込み10A,10Bの長さは、それぞれ、好ましくは10〜25mm、更に好ましくは15〜20mmである。一対の切り込み10A,10Bの長さは、互いに同じであっても良く、異なっていても良い。
【0028】
また、ハンドマスク1(マスク本体2)の寸法は、使用者の手の大きさに合わせて適宜調整される。例えば、使用者が成人女性の場合、長手方向Xの全長L1(図1参照)は、好ましくは150〜300mm、更に好ましくは200〜250mmであり、延長部6(甲対応部3の後端部)の幅方向Yの長さL2(図1参照)は、好ましくは70〜100mm、更に好ましくは80〜90mmである。また、各指対応部41〜44の幅L3(図1参照。代表的に小指対応部41のみに符号L3を付しているが、他の指対応部42〜44についても同じ。)は、好ましくは25〜35mm、更に好ましくは25〜30mmであり、親指対応部45の幅L4(図1参照)は、好ましくは30〜45mm、更に好ましくは30〜40mmである。
【0029】
また、マスク本体2(シート材)の坪量は、含浸させる薬液の量、装着時の風合い等に応じて適宜調整され、特に制限されないが、好ましくは6〜30g/cm2、更に好ましくは20〜30g/cm2である。
【0030】
マスク本体2を形成するシート材について説明すると、シート材としては、薬液を吸収保持し得るものを特に制限無く用いることができ、例えば、湿式抄紙により抄造された紙;織布;スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、エアスルー不織布、ニードルパンチ不織布等の各種不織布;植物性炭素繊維からなるシート状物等が挙げられ、これらの2種以上を積層してなる複合シートを用いることもできる。マスク本体2を形成する1枚のシート材は、単層構造であっても良く、2層以上が積層された多層構造であっても良い。また、本発明で用いられるシート材の構成繊維としては、例えば、木材パルプ、綿等の天然セルロース繊維;レーヨン、キュプラ等の再生セルロース繊維;ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂からなる合成繊維;植物炭素繊維等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
本発明で用いられるシート材の好ましい一例として、バイオセルロースを含有するシート材が挙げられる。バイオセルロースは、セルロ−ス合成能を有する微生物、例えば、アセトバクタ−キシリナム、アセトバクタ−バストウリアン等の酢酸菌、シュ−ドモナス属細菌、アクロバクテリウム属細菌等の微生物の代謝の過程で細胞外に排出されるセルロ−スであり、ナノサイズの繊維径をもった微細セルロース繊維(セルロースナノファイバー)である。マスク本体2を形成するシート材にバイオセルロースが含有されていると、マスク本体2に薬液を含浸させる場合に、バイオセルロースが含有されていない場合に比して薬液の含浸量が増加するため、ハンドマスクが乾燥しにくくなり長時間マスクを使用することができる(薬液浸透時間を長くとれる)、バイオセルロース自体の作用により肌荒れ防止等の皮膚状態の改善効果等が得られる、等の優れた効果が奏される。バイオセルロースによる斯かる効果をより確実に奏させるようにする観点から、バイオセルロースの含有率は、本発明で用いられるシート材中の全繊維の乾燥質量に対して、好ましくは50質量%以上、更に好ましくは100質量%であり、シート材中の全繊維がバイオセルロースであることが好ましい。
【0032】
バイオセルロースを含有するシート材は、公知のバイオセルロース膜の製造方法に準じて製造することができる。即ち、本発明で用いられるシート材は、バイオセルロース膜であっても良く、その場合、シート材(バイオセルロース膜)中の全繊維がバイオセルロースとなる。例えば、酢酸菌等のセルロ−ス合成能を有する微生物を静置培養することにより、空気−液体培地界面にバイオセルロース膜が形成される。培養によって得られたバイオセルロース膜を水で洗浄し、培地を除去し、次いでアルカリ処理を行い、微生物及び不純物を除去した後、中性になるまで水洗する。以上の操作を経たバイオセルロース膜を、本発明に係るシート材として用いることができる。
【0033】
また、マスク本体2に含浸される薬液としては、特に制限されず、例えば、美容料、化粧料、乳液等を用いることができる。例えば、薬液にプラセンタエキスを含有させた場合には、色素沈着防止、メラニン形成阻害作用、シミ・ソバカスの改善作用、皮膚柔軟化作用、保湿効果、小じわ・肌荒れ改善作用、しわの予防、末梢血流障害の改善作用、ニキビ・赤ら顔改善作用、抗炎症作用(アレルギー)等の美容効果が期待できる。プラセンタエキスは、植物あるいは動物の胎盤由来の成分であり、植物あるいは動物の胎盤をたんぱく分解酵素処理し、抽出して得られる。
【0034】
以上、本発明の美容用ハンドマスクをその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば、前記実施形態における複数指対応部4は、複数本(3本)の切断線7によって、親指を除く複数の手指(小指、薬指、中指、人差し指)と同数の領域(指対応部41〜44)に分割されていたが、切断線7によって分割された複数指対応部4の領域(指対応部)の数は、複数の手指と同数でなくても良い。即ち、切断線7によって分割された複数指対応部4の複数の領域(指対応部)は、親指を除く複数の手指に1対1で対応する必要は無く、1つの領域(指対応部)で複数の手指を被覆するように構成されていても良い。例えば、4本の手指に対して、1本の切断線7によって複数指対応部4を2つの領域(指対応部)に分割しても良い。その場合、2つの領域(指対応部)のうちの一方で、隣り合う2本の指(例えば小指と薬指)を被覆し、他方で他の2本の指(例えば中指と人差し指)を被覆するように構成することができる。また、マスク本体2は親指対応部5を有していなくても良い。また、切断部9A,9Bは無くても良い。
【0035】
また、前記実施形態における延長部6は、甲対応部3から使用者の手首に達する程度の長さを有するものであったが、更に長いものであっても良く、肘に達する程度の長さ、あるいは肘を越えて肩又はその近傍に達する程度の長さを有していても良い。また、前記実施形態における一対の切り込み10A,10Bは、マスク本体2の幅方向Yに直線状に延びて形成されていたが、幅方向Yと交差する方向に延びていても良く、また、直線状ではなく、曲線状でも良い。また、切り込み10A,10Bは無くても良い。また、本発明に係る切り込みは、延長部と甲対応部との境界又はその近傍に複数対形成されていても良い。
【0036】
また、前記実施形態のハンドマスク1は、手の甲側部分及び手の甲から手の平に続く部分(手指側面)を被覆可能に構成されていたが、本発明の美容用ハンドマスクは、少なくとも手の甲側部分を被覆可能に構成されていれば良い。また、本発明の美容用ハンドマスクの流通形態は、図3に示す如き、予め薬液が含浸された湿潤状態のマスク本体を密封した形態に制限されず、例えば、薬液が含浸されていない乾燥状態のマスク本体(ハンドマスク)と、これとは別体の容器に収容された薬液とからなるハンドマスクセットとしても良い。その場合、薬液を収容する容器としては、例えば、スプレー容器の如き、薬液付与手段を備えた容器を用いることができる。斯かるハンドマスクセットは、使用直前に乾燥状態のマスク本体に薬液を付与してこれを含浸させ、こうして湿潤状態となったマスク本体を手の甲側にあてがうことで使用できる。
【符号の説明】
【0037】
1 美容用ハンドマスク
2 マスク本体
3 甲対応部
4 複数指対応部
41 小指対応部
42 薬指対応部
43 中指対応部
44 人差し指対応部
5 親指対応部
50 親指対応部の輪郭線と複数指対応部の輪郭線との交点
6 延長部
7 切断線(第1切断線)
8 第2切断線
9A,9B 切断部
10A,10B 切り込み
30 ハンドマスクの包装体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の手の甲側にあてがわれて使用され、手の甲及びそれに続く複数本の手指それぞれにおける手の甲側部分を被覆する美容用ハンドマスクであって、
1枚のシート材からなるマスク本体を備え、該マスク本体は、手の甲を被覆する甲対応部と、親指を除く複数本の手指を被覆する複数指対応部とを有し、
前記複数指対応部は、該複数指対応部における使用者の指先に対応する側から前記甲対応部に向かって延びる1本以上の切断線により、複数の領域に分割されている美容用ハンドマスク。
【請求項2】
前記切断線における前記甲対応部寄りの内側端部から、平面視して該切断線に向けて凸の凸状の切断部が、該内側端部をその凸の頂部とするように形成されている請求項1記載の美容用ハンドマスク。
【請求項3】
前記マスク本体は、使用者の親指を被覆する親指対応部を有し、該親指対応部は、該親指対応部の輪郭線と前記複数指対応部の輪郭線との交点から所定方向に延びる1本の第2切断線により、該複数指対応部から分離されている請求項1又は2記載の美容用ハンドマスク。
【請求項4】
前記第2切断線における前記交点とは反対側の内側端部から、平面視して該第2切断線に向けて凸の凸状の切断部が、該内側端部をその凸の頂部とするように形成されている請求項3記載の美容用ハンドマスク。
【請求項5】
前記切断部は平面視して略V字状である請求項2又は4記載の美容用ハンドマスク。
【請求項6】
前記マスク本体は、前記甲対応部から少なくとも使用者の手首に達する延長部を有し、
前記延長部と前記甲対応部との境界又はその近傍に、前記マスク本体の長手方向に沿う両側縁それぞれから該マスク本体の内方に向かって延びる一対の切り込みが形成されている請求項1〜5の何れか一項に記載の美容用ハンドマスク。
【請求項7】
前記マスク本体に薬液が含浸されている請求項1〜6の何れか一項に記載の美容用ハンドマスク。
【請求項8】
前記シート材にバイオセルロースが含有されている請求項1〜7の何れか一項に記載の美容用ハンドマスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−76183(P2013−76183A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216380(P2011−216380)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(311012756)ファーストテック株式会社 (1)
【Fターム(参考)】