説明

美容用固形混練物、その製法および用法

【課題】爪の管理はヤスリ等で研磨する方法があるが、爪の生え際の処理が難しいため、皮膚を傷めたりする。爪や皮膚の健康管理にも関わる様々な問題がある。肘、踵においては角質層をヤスリ等で研磨して除去しているが、浴場などの特定の場所でなければ使用できないという煩雑である。
【解決手段】研磨剤を、固形のりの固化物中に分散させて美容用品として用いる。研磨剤と固形のり組成物又は添加物を含む固形のり組成物を、加熱攪拌装置で混合して溶解した後、混合物をポンプで移送して製品容器に充填し、混合物を製品容器ごと冷却して当該混合物を固化させる。固形のり中に研磨剤が均一に分散した固形混練物を製造する。固形混練物を爪、踵、又は肘の表面に塗布した後、液化、再固化の過程を経て複数個の塊と化して当該塗布部から離脱するまで、手指又は用具を用いて上記塗布部を軽く擦りつけたりする用法により塗布部の汚れを除去すると共に、光沢が出る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は美容用品の製造技術および用法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、爪の管理方法としてはヤスリ等で磨く方法がとられている。しかしながら、爪の生え際や側面の研磨は難しく、指の表皮を傷めることがあり、研磨後は、研磨カスをふき取ったりして除去する必要があり、研磨後の爪の表面は放置せずに爪保護のためコーティング剤等を塗布する必要があった。さらに、塗布剤は除光液等の溶剤で除去しているため、爪表面のダメージを大きくするという問題点もある。甚だしい場合は、爪にデコレーションをほどこし長期間放置してカビ等が発生するケースもあって、爪の健康管理にも関わる様々な問題があるといえる。肘、踵においては角質層を軽石やヤスリ等で研磨して除去しているが、この場合には身体の研磨部位を温水等で洗浄し、洗浄水をふき取るため浴場や洗面所などの特定の場所でなければ使用できないという煩雑さがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−228856
【特許文献2】特開2008−245711
【特許文献3】特開2005−066744
【特許文献4】実用新案登録第3048599号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来技術の課題等に鑑み、これを解消しようとするものであり、爪、踵、又は肘などの身体部位の表面の汚れを除去すると共に、当該表面に光沢を付与するための美容用品とその製法および簡便な用法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記従来技術の課題等について鋭意検討を重ねた結果、空気に触れれば液化した後固まって接着するという固形混練物の持つ性質と、凝固・硬化(のりだま形成)しやすいという従来は固形のりの欠点とされてきた性質を利用し、かつ、固形の最終製品に研磨剤を均一に分散配合するための製法上の工夫を加えることにより、上記目的の美容用品とその製法および簡便な用法を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の課題解決手段は次の(1)〜(4)に存する。
(1)セラミック微粒子、シラス微粒子、ガラス微粒子、サンゴ微粒子、木屑微粒子及びゴム微粒子より選ばれる1種又は復数種の研磨剤を、固形のりの固化物中に分散させて成ることを特徴とする固形混練物を美容用品として用いる。
(2)研磨剤と固形のり組成物又は添加物を含む固形のり組成物を、加熱攪拌装置で混合して当該混合物中の固形のり組成物を加熱攪拌により溶解した後、当該混合物の流動状態が攪拌装置による攪拌が可能でありかつ当該混合物をポンプで移送することが可能な温度を維持した状態で、好ましくは、その流動状態が攪拌装置による攪拌が可能でありかつ当該混合物をポンプで移送することが可能な最低限度の温度以上でありかつその近傍の温度を維持した状態で、当該混合物をポンプで移送して製品容器に充填し、当該充填された混合物を製品容器ごと冷却して当該混合物を固化させることにより、固形のり中に研磨剤が均一に分散した固形混練物の製造を可能ならしめる。
(3)上記固形混練物を爪、踵、又は肘の身体部位の表面に塗布した後、塗布された固形混練物が液化、再固化の過程を経て複数個の塊と化して当該塗布部から離脱するまで、手指又は用具を用いて上記塗布部を軽く叩いたり擦りつけたりするだけの、簡便な用法により上記塗布部の汚れを除去すると共に、上記塗布部に光沢を付与することを可能ならしめる。
(4)固形混練物に化粧品等に用いられる保湿作用成分、抗菌作用成分、香気成分等を配合すれば、爪、踵、又は肘に上記用法を施すときや施した後の爪、踵、又は肘の表面の損傷防止・治癒、保健、快適性向上等をはかることを可能ならしめる。
【発明の効果】
【0006】
従来の爪、踵、肘の美容用品を用いる場合、適用皮膚部位だけでなくその周辺の皮膚の損傷を伴うという問題があり、また、適用後の皮膚部位を洗浄するため洗面所等の特定の場所でなければ使用できないという煩雑さがあった。本発明により、皮膚の損傷はなく、どこでも手軽に適用でき、適用後の洗浄は不要でそのままで汚れがきれいに除去され、踵や肘はスベスベとなり、光沢のある爪になるような、爪、踵、肘の美容用品が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明における固形混練物の配合組成は特に限定されるものではなく、好ましくは、従来における固形のりの配合組成に研磨剤を加えて構成することができ、少なくとも研磨剤、接着剤成分、ゲル化剤、並びに溶剤及び/又は水を含有する構成が望ましい。接着剤成分としては、特に限定されるものではなく、従来の固形のりに用いられている接着剤成分を用いることができ、例えば、平均分子量1万〜300万のポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール等の合成樹脂、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース類、デンプン、ゼラチン、コーンスターチ等の天然樹脂等が挙げられ、これらは単独又は2種以上混合して使用することが可能であり、その含有量は、組成物全量に対して、5〜50重量%である。好ましくは、10〜40重量%である。
【0008】
ゲル化剤としては、特に限定されるものではなく、従来の固形接着剤に用いられているゲル化剤を用いることができ、例えば、ソルビット・ベンズアルデヒド縮合物、キシリット・ベンズアルデヒド縮合物等のベンズアルデヒドと4〜6価の脂肪族多価アルコールとの縮合により得られる縮合物、炭素数8〜36の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、N−ラウロイル−グルタミン酸−α,γ−ジ−n−ブチル
アミド、デキストリン脂肪酸エステル、脂肪酸アマイド、ステアリン酸ナトリウム等の脂肪酸のアルカリ金属塩、有機ベントナイト、アルミニウムシリケート、シリカ等が挙げられ、これらは1種又は2種以上混合して使用することができる。ゲル化剤の含有量は、組成物全量に対して、0.1〜15重量%、好ましくは、1〜10重量%である。
【0009】
また、溶剤としては、特に限定されるものではなく、従来の固形のりに用いられている溶剤を用いることができ、例えば、エチルアルコ−ル、プロピルアルコ−ル、イソプロピルアルコ−ル等の低級アルコールや、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素や、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の低級脂肪族ケトンや、酢酸エチル、酢酸ブチル等の低級脂肪酸の低級アルコールエステルや、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪酸炭化水素や、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素やグリコールのアルキルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル等が挙げられ、これらは単独又は2種以上混合して使用することが可能であり、その含有量は、組成物全量に対して、30〜90重量%、好ましくは、40〜70重量%である。また、上記溶剤は水及び/又は溶剤の混合物等であってもよい。
【0010】
上記の固形のり組成物は、全組成物を混合し加熱して溶融した後冷却することにより、固形のり製品を製造することができるが、本発明において配合しようとする研磨剤だけは、高温溶融し低温固化する性質を有していないため、研磨剤を上記の固形のり組成物と混合して加熱溶融し冷却固化する従来の固形のり製造方法と同様の処理を施した場合には、固化した製品中に研磨剤は均一に分散せず、研磨剤だけが固化した製品の底部に沈着しているようなものとなる。
【0011】
そこで、本発明の固形混練物を製造するに当たっては、研磨剤と固形のり組成物を混合し混合物中の固形のり組成物を加熱溶融しその後冷却固化する間も混合物の攪拌を続行して研磨剤の均一分散をはかり、冷却により混合物の温度が下がりその流動状態が半流動の状態と化すも、混合容器の攪拌が可能でありかつ半流動状態の混合物をポンプ圧送することが可能な限度以上の温度を維持した状態で、混合物をポンプ圧送して最終製品の容器に分注し、最終的に冷却固化させる。このようにして、固化した製品中に研磨剤が均一に分散した本発明の固形混練物を製造することができるようになる。
【0012】
研磨剤としては、特に限定されるものではなく、さまざまな研磨剤を用いることができ、例えば、セラミック微粒子、シラス由来微粒子、ガラス微粒子、サンゴ微粒子、木屑微粒子やゴム微粒子等が挙げられ、これらは1種又は2種以上混合して使用することができる。研磨剤の含有量は、組成物全量に対して、0.3〜5重量%、好ましくは、1〜10重量%である。
【0013】
なお、上記固形混練物を構成する組成物には、化粧品等に用いられている種々の添加剤、例えば、着色剤、香料、防黴剤、湿潤剤、増量剤、防腐剤などを含有せしめることができる。また、本発明の固形混練物は、例えば、キャップ付きの繰り出し容器(スティック型)又はキャップ付きの押出容器の容器等に収容して使用に供される。
【0014】
このように構成される本発明では、軽い力又は塗布回数が少なくとも、爪、踵、又は肘などの身体部位の表面に良好な塗布性能を実現する固形混練物とすることができる。
【0015】
本発明の固形混練物は、上述のように構成されるものであるが、上記実施形態に限定されるものでなく、本発明の技術思想の範囲内で、種々変更等して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(適用前の爪表面)
【図2】(適用後の爪表面)
【図3】(製品形態を示す断面図)
【図4】(固形混練物の概念図)
【実施例1】
【0017】
次に、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0018】
撹拌容器に、(研磨剤)サンゴ微粒子(平均直径40〜100ミクロン)5重量%、(溶剤)水50重量%、(湿潤剤)グリセリン5重量%を投入し、加熱撹拌しながら徐々にポリビニルピロリドン(平均分子量約40万)30重量%、ポリビニルピロリドン(平均分子量約4万)10重量%(合計100重量%)を投入する。約1時間撹拌後攪拌容器の加熱を止めて、自然冷却により混合物の温度が下がりその流動状態が半流動の状態と化すのを待ち、その後半流動混合物をペリスタポンプで圧送して各容器(試作容器)に充填し、そのまま室温にて冷却する。
【実施例2】
【0019】
撹拌容器に、(研磨剤)セラミック微粒子(平均直径5〜100ミクロン)2重量%、サンゴ微粒子(平均直径20〜100ミクロン)3重量%、(溶剤)プロピレングリコールモノメチルエーテル50重量%、n−プロピルアルコール9重量%を投入し、加熱撹拌しながら徐々にコーンスターチ30重量%、ゲルオールD(ゲル化剤:ソルビット・ベンズアルデヒド縮合物)6重量%(合計100重量%)を投入する。約1時間撹拌後攪拌容器の加熱を止めて、自然冷却により混合物の温度が下がりその流動状態が半流動の状態と化すのを待ち、その後半流動混合物をペリスタポンプで圧送して各容器(試作容器)に充填し、そのまま室温にて冷却する。
【実施例3】
【0020】
実施例1及び2で製造した固形混練物を薬さじで削り取り、図1に示すような爪に塗布して手指で塗布部を軽く叩いたり、擦りつけたりしたところ、固形混練物は液化〜再度固化〜塊化の過程を経て変化し、爪の表面から自然に除去され、最終的に図2に示すように爪の汚れは除去され爪に光沢がでた。
【産業上の利用可能性】
【0021】
一般消費者向けの美容用品として、またネールサロン、エステサロン等の業者向けの美容用品として利用される。皮膚表面の小さなキズをなくす作用があるので、たとえば病院看護婦、高齢者介護施設従業員向け医療用品としても利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0022】
a)爪表面のキズ
b)爪表面のキズが除去された様子
c)爪の生え際のキズが除去された様子
d)爪両端のキズが除去された様子
e)固形混練物
f)研磨剤
g)外装容器
h)固形混練物内装容器
i)添加剤入り組成物
j)研磨剤



【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック微粒子、シラス微粒子、ガラス微粒子、サンゴ微粒子、木屑微粒子及びゴム微粒子より選ばれる1種又は復数種の研磨剤を、固形のりの固化物中に分散させて成ることを特徴とする固形混練物。
【請求項2】
a)美容用品であり、
b)セラミック微粒子、シラス微粒子、ガラス微粒子、サンゴ微粒子、木屑微粒子及びゴム微粒子より選ばれる1種又は復数種の研磨剤を、固形のりの固化物中に分散させて成ることを特徴とする固形混練物。
【請求項3】
請求項1及び2に記載の固形のりの組成物が、少なくとも接着剤成分、ゲル化剤、並びに、溶剤及び/又は水を含有する構成で成ることを特徴とする、請求項1及び2に記載の固形混練物。
【請求項4】
請求項1から3に記載の固形混練物が、美容保湿作用成分、抗菌作用成分、及び香気作用成分より選ばれる1種又は復数種を添加されて成ることを特徴とする、請求項1から3に記載の固形混練物。
【請求項5】
請求項1から4に記載の固形混練物が、ニンジンエキス、植物性コラーゲン、ヒアルロン酸塩、メチルパラペン、サクラ葉エキス、アロエ成分、コンドロイチン、尿素、乳酸、アミノ酸、クエン酸塩、酸化チタン、香料、精油、オリーブオイル、セラシン、ミネラルオイル、ハチミツ、及びシリカより選ばれる1種又は復数種を添加されて成ることを特徴とする、請求項1から4に記載の固形混練物。
【請求項6】
請求項1から5に記載の固形混練物の組成物のうち請求項1に記載の研磨剤を除く固形のり組成物を、加熱攪拌装置で混合して当該混合物中の固形のり組成物を加熱攪拌により溶解した後、当該加熱攪拌を行いつつ、請求項1に記載の研磨剤の所定量を、漸次、上記溶解された溶液に投入し、上記研磨剤が上記溶液中に分散する状態となした後、当該研磨剤が分散した状態の混合物を、その流動状態が攪拌装置による攪拌が可能でありかつ当該混合物をポンプで圧送することが可能な限度以上の温度まで冷却し、当該温度を維持した状態で、上記混合物をポンプで移送して製品容器に充填し、当該充填された混合物を製品容器ごと冷却して当該混合物を固化させて成ることを特徴とする、請求項1から5に記載の固形混練物の製造方法。
【請求項7】
請求項1から6に記載の固形混練物を爪、踵、又は肘の身体部位の表面に塗布して用い、当該身体部位の表面の汚れを除去すると共に、当該表面に光沢を付与することを特徴とする、請求項1から6に記載の固形混練物の用法。
【請求項8】
請求項1から6に記載の固形混練物を爪、踵、又は肘の身体部位の表面に塗布した後、塗布された固形混練物が液化、再固化の過程を経て複数個の塊と化して当該塗布部から離脱するまでの間において、まず手指又は用具を用いて上記塗布部を軽く叩いて当該塗布された混練物の接着力向上を促し、次に当該接着力の向上した混練物を上記塗布部に擦りつけることにより、上記塗布部の汚れを除去すると共に、上記塗布部に光沢を付与することを特徴とする、請求項1から6に記載の固形混練物の用法


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−1320(P2011−1320A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146919(P2009−146919)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(308015186)株式会社福元技研 (4)
【Fターム(参考)】