美爪料組成物
【課題】下地カラーやトップコートによるラインの乱れが少なく、乾燥が早く、塗布環境で湿度が高い場合であっても塗膜に結露が発生することがなく、レベリングや色ムラも少ない、乾燥性、密着性、屈曲性、隠蔽性、仕上がり性、吐出性能及び再攪拌性に優れたフレンチネイルタイプの美爪料組成物を提供する。
【解決手段】溶媒として、エタノールとプロピレングリコールモノメチルエーテルと、平均一次粒子径が200nmから400nmの酸化チタンAと、平均一次粒子径が10nmから80nmの酸化チタンBと、アクリル樹脂と、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンと、可塑剤とを少なくとも含有することを特徴とする美爪料組成物。
【解決手段】溶媒として、エタノールとプロピレングリコールモノメチルエーテルと、平均一次粒子径が200nmから400nmの酸化チタンAと、平均一次粒子径が10nmから80nmの酸化チタンBと、アクリル樹脂と、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンと、可塑剤とを少なくとも含有することを特徴とする美爪料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヌードカラー(半透明のネイル)を爪全体にコート、次に、ホワイトのマニキュアを爪先部分に塗る、いわゆる二つの色で塗り分けるネイルアートで、爪先に塗布するフレンチネイルタイプの美爪料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ヌードカラー(半透明のネイル)を爪全体にコート、次に、ホワイトのマニキュアを爪先部分に塗る、いわゆるフレンチネイルタイプの美爪料組成物は、溶剤として、酢酸エステル類、樹脂として、ニトロセルロース類を混合した、ネイルエナメル液に酸化チタンを混合した白色の液で、一般的なネイルエナメルと同様にブラシで塗布するものであった。
【0003】
これまでのフレンチネイルタイプなどの美爪料組成物やその塗布具等としては、
1) 皮膜形成剤が、ニトロセルロース、アルキッド−1のうち1種または2種で、可塑剤がクエン酸アセチルトリブチル、フタル酸ジブチル及び安息香酸スクロースのうち1種または2種以上からなり、溶剤がアセトン、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、イソプロパノール、ブタノール、酢酸エトキシエチル及び酢酸エチルのうち1種または2種以上からなるネイルアート用爪化粧料であって、溶媒の主剤は、一般的なネイルエナメル組成物と同じで、さらに、アセトンとメチルエチルケトンを添加することで、境界線をぼかすネイルアート用爪化粧料(例えば、特許文献1参照))、
2) 爪の健康保持機能、使用感触、化粧持ちの全てにわたって優れた美爪料を提供するために、特定のアルキレンオキシド誘導体と、皮膜剤とを含有することを特徴とする美爪料、この美爪料として、実施例3−5及び3−6に、水、アクリル系エマルジョン、アルコール系溶剤、酸化チタン、消泡剤を含有する組成となる水系ネイルエナメル(例えば、特許文献2参照)、
3) 皮膜形成助剤の非存在下で測定される最低皮膜形成温度MFT、および乾燥皮膜の少なくとも1つのガラス転移温度Tgを有する(ただし、35℃≦Tg≦80℃およびTg−MFT≧8℃である)エマルジョンポリマーを含むネイルエナメルまたは毛髪セット用製品に有用となる水性化粧用組成物、この水性化粧用組成物として、その実施例15には、水、アクリル系エマルジョン、アルコール系溶剤、シリコーン系溶剤が含まれる組成の水性ネイルエナメル(例えば、特許文献3参照)、
4) 爪に絵を画いて楽しむ際に、特にフレンチネイルの場合におけるように、爪に一定幅のラインを、正確に、かつ簡単に、しかも利き手か否かに関係なく、描ける塗布具として、液体の吸収保持が可能な棒状の塗布主体と、この塗布主体上に爪先を誘導するネイルガイド部、および前記ネイルガイドに連設され、表面が平面状または曲面状に形成されているネイル塗布部とから構成されていることを特徴とするネイルアート用塗布具(例えば、特許文献4参照)、
5) 各個人毎の爪の形に合致し、人工爪のような不自然な印象を与えることはなく、簡単かつ短時間にフレンチネイルを仕上げることができるフレンチネイル用粘着シールとして、粘着性及び伸縮性を備えた物質で作られ、薄い平坦状に形成され、フレンチネイルのスマイルラインに相当する湾曲部が形成され、爪先に着脱可能に貼付されることを特徴とするフレンチネイル用粘着シール(例えば、特許文献5参照)が知られている。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1〜3を含む従来のネイルエナメルの白色組成物は、粘性も高く、また、細いブラシで塗布するため、2色の境界ラインが明確に決まらない、また、最初に塗ったヌードカラーが完全に乾いた後に、フレンチネイルを塗布し、乾燥後、持ちをよくするために、トップコートを塗布するといった形態がとられるのが現状であった。
この場合には、下地カラーや、トップコートを施すとき、十分な乾燥を伴わないと、同じ組成であるため、ラインが滲んだり、また、細いブラシで塗布するため、うまくラインが描けないといった不具合が生じるなどの課題がある。
更に、上記特許文献4及び5に記載のネイルアート用塗布具、フレンチネイル用粘着シールは、本発明とはその技術思想が相違するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−231554号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開2005−154403号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】特表2003−507399号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献4】特開2006−204332号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献5】特開2006−296620号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題及び現状に鑑み、これを解消しようとするものであり、下地カラーやトップコートによるラインの乱れが少なく、乾燥が早く、塗布環境で湿度が高い場合であっても塗膜に結露が発生することがなく、レベリングや色ムラも少ない、乾燥性、密着性、屈曲性、隠蔽性、仕上がり性、吐出性能及び再攪拌性に優れたフレンチネイルタイプの美爪料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記従来の課題等に鑑み、これを解消しようとするものであり、溶媒として、エタノールとプロピレングリコールモノメチルエーテルと、平均一次粒子径の範囲が相違する2種類の酸化チタンと、アクリル樹脂と、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンと、可塑剤とを少なくとも含有することにより、上記目的の美爪料組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0008】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(4)に存する。
(1) 溶媒として、エタノールとプロピレングリコールモノメチルエーテルと、平均一次粒子径が200nmから400nmの酸化チタンAと、平均一次粒子径が10nmから80nmの酸化チタンBと、アクリル樹脂と、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンと、可塑剤を少なくとも含有することを特徴とする美爪料組成物。
(2) 前記平均一次粒子径が200nmから400nmの酸化チタンAの含有量を1としたとき、前記平均一次粒子径が10nmから80nmの酸化チタンBの配合比率が質量比で0.5〜1.5であることを特徴とする上記(1)記載の美爪料組成物。
(3) 前記プロピレングリコールモノメチルエーテルの含有量を1としたとき、エタノールの配合比率が質量比で1〜50であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の美爪料組成物。
(4) 25℃におけるずり速度3.83(s−1)の粘度が10〜40(mPa・s)であり、ずり速度383(s−1)の粘度が10〜30(mPa・s)であることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか一つに記載の美爪料組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、下地カラーやトップコートによるラインの乱れが少なく、乾燥が早く、塗布環境で湿度が高い場合であっても塗膜に結露が発生することがなく、レベリングや色ムラも少ない、乾燥性、密着性、屈曲性、隠蔽性、仕上がり性、吐出性能及び再攪拌性に優れたフレンチネイルタイプの美爪料組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)、(b)、(c)は、本発明の美爪料組成物を収容する美爪料塗布具の一例を示す外観図、縦断面図、C−C線に沿う横断面図である。
【図2】(a)〜(d)は、図1の美爪料塗布具のバルブ機構の各作動工程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明の美爪料組成物は、溶媒として、エタノールとプロピレングリコールモノメチルエーテルと、平均一次粒子径が200nmから400nmの酸化チタンAと、平均一次粒子径が10nmから80nmの酸化チタンBと、アクリル樹脂と、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンと、可塑剤を少なくとも含有することを特徴とするものである。
【0012】
本発明に用いる溶媒としては、エタノールとプロピレングリコールモノメチルエーテルとを併用するものである。本発明では、酢酸エステル類や水を含有するものでなく、溶媒としてエタノールとプロピレングリコールモノメチルエーテルを併用することにより、下地カラーやトップコートによるラインの乱れが少ないものとなる。また、エタノール単独溶媒のとき、塗布環境で湿度が高い場合、塗膜に結露が発生する、不具合が防止できるものとなる。
用いるプロピレングリコールモノメチルエーテルの含有量は、美爪料組成物全量に対して、1〜40質量%、また、エタノールの含有量は美爪料組成物全量に対して、1〜60質量%とすることが好ましい。なお、プロピレングリコールモノメチルエーテルの含有量が、40質量%を超えると、乾燥性が遅くなり、煩雑となり、好ましくない。
好ましくは、下地カラーやトップコートによるラインの乱れを更に少なくする点、早く乾燥せしめる(速乾の)点から、プロピレングリコールモノメチルエーテルの含有量を1としたとき、エタノールの配合比率は質量比で1〜50(1:1〜1:50)とすることが望ましい。これらの配合範囲となる溶媒を併用することにより、乾燥が、従来の酢酸エチル・酢酸ブチルが溶媒のネイルエナメル組成物などよりも早く乾燥することができるものとなる。
特に、本発明の溶媒の併用による効果を最大限に発揮する点から、プロピレングリコールモノメチルエーテルとエタノールの配合比率を質量比で1:1〜1:10とすることが望ましい。
【0013】
本発明に用いる酸化チタンは、平均一次粒子径の範囲が相違する2種類の酸化チタンを用いるものであり、一方が、平均一次粒子径が200nmから400nmの酸化チタンAと、他方が、平均一次粒子径が10nmから80nmの酸化チタンBとを併用するものである。
これらの平均一次粒子径の範囲が相違する酸化チタンA、Bを併用することにより、各単独の酸化チタンA又はBの使用よりも、レベリングや色ムラを少なくし、優れた隠蔽性、仕上がり性能を発揮できるものとなる。すなわち、平均一次粒子径が、10nmから80nmの酸化チタンBは、単体では、光散乱は、少なく、白色度も少ないが、凝集状態の形態をとり、一般的な平均粒子径が200nmから400nmの酸化チタンとの混合により、色ムラ(白色度)が少なく、またレベリングが良くなる。また、上記平均一次粒子径が10nmから80nmの範囲外、または、200nmから400nmの範囲外となる酸化チタンの使用では、本発明の効果を発揮できないものとなる。
なお、本発明(後述する実施例を含む)において、「平均一次粒子径」とは、透過型電子顕微鏡画像解析による、粒子径をいう。
【0014】
用いることができる平均一次粒子径が200nmから400nmの酸化チタンAとしては、具体的には、CR−50、CR−60(以上、石原産業社製)、JR−800、JR−301(以上、テイカ社製)、UNIPURE WHITE LC 987(LCW社製)、KEMIRA 402(KEMIRA社製)などの少なくとも1種が挙げられ、また、平均一次粒子径が10nmから80nmの酸化チタンBとしては、具体的には、TTO−55(A)、TTO−51(A)(以上、石原産業社製)、MT−100TV、MT−500B(以上、テイカ社製)、などの少なくとも1種が挙げられる。
【0015】
用いる酸化チタンAの含有量は、美爪料組成物全量に対して、1〜20質量%、また、酸化チタンBの含有量は美爪料組成物全量に対して、0.5〜20質量%とすることが好ましい。
好ましくは、レベリングや色ムラを更に少なくし、優れた隠蔽性、仕上がり性能を更に発揮する点から、酸化チタンAの含有量を1としたとき、酸化チタンBの配合比率は、質量比で0.1〜5(1:0.1〜1:5)、更に好ましくは、0.5〜1.5(1:0.5〜1:1.5)とすることが望ましい。
本発明において、酸化チタンAの含有量が20質量%を超えて高すぎると、色ムラになりやすく、一方、1質量%未満になると、隠ぺい力の低下につながることとなり、好ましくない。
【0016】
本発明に用いるアクリル樹脂は、塗膜(皮膜)形成剤、分散安定剤として機能するものであり、具体的には、アクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸アルキル・スチレン共重合体などの少なくとも1種を含有することができ、好ましくは、分散安定性、塗膜性能の点から、アクリル酸アルキル共重合体の使用が望ましい。
これらのアクリル樹脂の含有量は、美爪料組成物全量に対して、1〜20質量%、好ましくは、5〜15質量%とすることが望ましい。
このアクリル樹脂の含有量が1質量%未満であると、下地との密着力が無く、仕上がりが悪く、再撹拌性も悪くなり、一方、20質量%を越えると、増粘し吐出性能が悪く、仕上がりも悪くなり、好ましくない。
【0017】
本発明に用いるポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンは、溶媒となるエタノールやプロピレングルコールモノメチルエーテルで構成された蒸発速度の高い溶媒の場合に、発生する、ラインの境界部分にフレンチ液が移動することが、防止され、塗膜が均一になる点から含有するものである。
具体的に用いることができるポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンとしては、SH3775M、SH3749(東レ・ダウコーニング社製)、KF6017、KF6013(信越シリコーン社製)などの少なくとも1種が挙げられる。
これらのポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンの含有量は、美爪料組成物全量に対して、0.0001〜1質量%、好ましくは、0.001〜0.1質量%とすることが望ましい。
このポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンの含有量が0.0001質量%未満であると、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンを含有せしめる効果が少なく、一方、1質量%を越えると、仕上がりが悪くなる。
【0018】
本発明に用いる可塑剤は、塗膜の可塑剤として用いるものであり、例えば、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、セバシン酸ジイソプロピルなどの少なくとも1種が挙げられる。
これらの可塑剤の含有量は、美爪料組成物全量に対して、0.5〜10質量%、好ましくは、1〜5質量%とすることが望ましい。
この可塑剤の含有量が0.5質量%未満であると、塗膜が硬くなりすぎるため脆くなり、一方、10質量%を越えると、乾燥が遅く、やわらかい塗膜となり、好ましくない。
【0019】
本発明の美爪料組成物は、温度25℃でのコーンプレート型粘度計による粘度測定において、ずり速度3.83(s−1)の粘度が10〜40(mPa・s)であり、ずり速度383(s−1)の粘度が10〜30(mPa・s)とすることが好ましい。
上記所定のずり速度において、上記各粘度範囲内とすることにより、繊維を樹脂等で固めた、または、繊維同士を融着した、いわゆるペン芯で、本発明の美爪料組成物の流出が可能となり、マーカのような塗布が可能となり、細いブラシで塗布といった、力加減で、塗布面積の変動が少なく、ラインが描きやすく、塗りやすいものとなる。従って、従来の特許文献4等に記載される複雑な段部を形成した、塗布具を使用しなくとも、塗布が容易となる。
なお、25℃における粘度で、ずり速度3.83(s−1)と383(s−1)での差が10倍以上になると、塗布体へ浸み込みづらく、使用性が悪くなる。
また、上記粘度の調整は、用いる平均一次粒子径が相違する酸化チタンA及びB、アクリル樹脂、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン、可塑剤、溶媒の併用を好適な含有量となるように組み合わせることにより調整することができる。
【0020】
本発明の美爪料組成物には、上記各成分の他、指先の白色以外の色変えのために、赤色201号、202号、220号、黄色4号ALレーキ、コンジョウ、ベンガラなどの顔料や、パール顔料、その他光輝性顔料を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有せしめることができ、また、分散剤としてニトロセルロース、アクリル樹脂などを本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有せしめることができる。
【0021】
本発明の美爪料組成物は、上述した各成分を上記各範囲の含有量等で混合分散機、例えば、ビーズミル、ホモミキサー、ディスパー、アトライター、ボールミル、サンドグラインダー等で混合分散することで調製される。
【0022】
このように構成される本発明の美爪料組成物は、本発明の美爪料組成物を収容したボトル(容器体)とキャップに付いた塗布体となるハケとから構成される美爪料塗布具や、少なくとも、美爪料組成物を収容する液体収容空間と、繊維を樹脂等で固めた、または、繊維同士を融着した、いわゆるペン芯タイプの塗布体とを備え、毛細管力によって前記液体収容空間から前記塗布体へ液体が輸送される塗布具の前記液体収容空間に収容される美爪料塗布具に収容して好適に使用することができる。
【0023】
用いることができる美爪料組成物塗布具としては、例えば、図1に示す、上記構成の美爪料組成物が内蔵される美爪料塗布具Aが挙げられる。図1(a)、(b)、(c)は、美爪料塗布具Aの外観図、縦断面図、C−C線に沿う横断面図であり、図2(a)〜(d)は、図1の美爪料塗布具Aのバルブ機構の各作動工程説明図である。
この美爪料塗布具Aは、図1及び図2に示すように、後端部10bの開放された概略円筒状の外軸10内に進退動可能にタンク状の内軸12が配置されていて、ユーザーが内軸12後端部12bをノックすることによって内軸が外軸10に対して前進して後述するバルブ機構14を作動させ、本発明の美爪料組成物Hを外軸10先端部10aに設けた塗布体16に供給するようになっている。
外軸10先端部10aは、段状に細径になっており、その先端部10a前面に、美爪料導入管(バルブ機構14から塗布体16側に美爪料組成物Hを流通させる管路)18の椀状の先端部18a外周(フランジ状に拡がっている)を当接させている。その美爪料導入管18の先端部18aには、シールリング20を介して塗布体16後部を挿入している。中空で先細い筒状の先軸22の中空部に前記塗布体16中央部からシールリング20および前記美爪料導入管18の先端部18aを通した状態で、該先軸22を前記外軸先端部10aに外嵌することによって、塗布体16、シールリング20および美爪料導入管先端部18aを外軸10に固定するようになっている。なお、外軸先端部10aには、塗布体16を覆って保護するキャップ24が着脱可能に外嵌するようになっており、キャップ24は、内側のインナーキャップ24aがスプリング24bによって先軸22を押圧するように付勢している。
【0024】
前記内軸12は、後端部12bが閉鎖されて内部が塗布体16を収容する液体収容空間12cになっており(撹拌ボール12dを収容する場合がある)、一方、前端部(内軸の先端部)12aに前記バルブ機構14を内装した状態で内先軸26によって固定している。詳しくは、内軸12の先方側を細くした前端部12aにバルブ機構14を内装した状態で、美爪料導入管18の後端部18bをバルブ機構14に摺動自在に繋ぎ、バルブ機構14前端部にパッキング28を介装して内先軸26を内軸前端部12aに螺合等によって固定している。
ここで、前記バルブ機構14は、美爪料組成物Hを収容する前記液体収容空間12cと塗布体16との連通路途上に、弁座体30および弁棒体38が軸方向に相対移動することによって美爪料組成物Hの塗布体16に向けての供給を許容・制止するものである。バルブ機構14の弁座体30は、軸方向の両端部に開口がある略筒体であって、内部の先方側(先側弁部材32)および後方側(後側弁部材34)に弁棒に摺接する液密部が形成され、前記後方側開口が液体収容空間12cに面し、かつ、先方側開口が塗布体16側に面して設けられる。また、図1(b)に示すように、弁座体30の後側弁部材34の内壁部には、長手方向の略中心から後方側にかけて、内壁部から径中心方向に突出した弁棒体38をガイドするガイド柱34cがリブ状に形成されている。このガイド柱34cは、外軸10が落下した際に、衝撃によって弁棒体38が傾き先側弁部材32の端面に乗り上げ、ノック不良になることを防ぐことができる。具体的には、先側弁部材32は、先方端にフランジ32aが拡径し後方側内周面が先方側内周面より拡径した全体が略筒形状を呈しており、この後方側内周面が図2(a)、(b)に示す先方側液密部32bに相当する。また、後側弁部材34は先方端にフランジ34aが拡径し後方側端が段状に縮径して開口した略筒形状を呈しており、この縮径部内周面が後方側液密部34bに相当する。先側弁部材32を後側弁部材34内に先方側から同心状に挿入し重畳した状態でフランジ32a、34aを重ねて、さらにパッキング28を先方に重ねた状態で、内先軸26で覆って内軸前端部12aに螺合して固定する。なお、後側弁部材34の後方側端の縮径部の前面が後述するスプリング部材36を受ける部分になっている。
前記弁棒体38は、前記先側弁部材32および後側弁部材34の中空内に進退動可能に収容されている。弁棒体38の外周部に、前記弁座体30内の先側弁部材32先方側液密部32bに液密状態で摺接する先方側のピストン部38aが、前記弁座体30内の後側弁部材34の後方側液密部34bに液密状態で摺接する後方側のピストン部38bがそれぞれ設けられると共に、該弁棒体38のほぼ中央部の外周部と前記弁座体30内面との間に美爪料組成物Hを流通する空間40が設けられる。具体的には、弁棒体38の先方側のピストン部38aは、拡径した傘状のフランジが可撓性を有した形成されたものである。また、後方側のピストン部38bは、後方窄まりに平滑外周面に形成されており、弁棒体38が後方に移動するときに、後側弁部材34の開口を細径の後端部が通過したあとに太径の中央部が後側弁部材34の後方側液密部34bに密着して摺接するようになっているものである。
【0025】
上記のようにバルブ機構14は、弁座体30および弁棒体38間にスプリング部材36を介装しており、スプリング部材36は弁棒体38の先方側のピストン部38aを後方から当設していて、弁座体30に対して先方側端に位置するように付勢している。したがって、内軸12の後端をノックして押圧力を加えないと、図1(b)及び図2(a)、(b)に示すように、スプリング部材36によって先方側のピストン部38aが先方側液密部32b先端に内接して位置する。なお、外軸10内の環状突起42に内先軸26が当接して内軸12がそれ以上後方に移動して抜けてしまうのを防止している。
また、弁座体30の先方側開口(先側弁部材32の先端側開口)には、当該先方側開口を塗布体16に連通する美爪料導入管(管路)18の後端部18bが挿入されて設けられ、この美爪料導入管18内には、美爪料組成物Hを塗布体16に向けて誘導する誘導棒体44が挿入されている。誘導棒体44と美爪料導入管18内面との間の間隙は、美爪料組成物Hを誘導させる寸法になっている。誘導棒体44の美爪料導入管18との位置関係に関しては、誘導棒体44が美爪料導入管18の径方向中心に位置するように導入管18先端部18a側内部に図示しないが複数条突出形成したリブによって誘導棒体44を支持して径方向のガタツキを無くしている。また、誘導棒体44先端部は、塗布体16の後部内に挿入している。
この形態の美爪料塗布具Aのバルブ機構14では、前記弁座体30内の先方側液密部32bおよび後方側液密部34bの間の距離よりも弁棒体38の先方側のピストン部38aおよび後方側のピストン部38bの間の距離を短く設定している。すなわち、弁座体30および弁棒体38同士が相対移動することによって、弁棒体38の先方側のピストン部38aが前記弁座体30内の先方側液密部32bに摺接する第1の状態と、弁棒体38の先方側のピストン部38aおよび後方側のピストン部38bの前記弁座体30内の双方の液密部に摺接しない第2の状態と、弁棒体38の後方側のピストン部38bが弁座体30内の後方側液密部34bに摺接する第3の状態とを取り得るように形成したものである。
【0026】
このように構成される美爪料塗布具Aでは、ユーザーが内軸後端部12bをノックしない通常状態(非ノック時)では、図2(a)に示すように、スプリング部材36は弁棒体38の先方側のピストン部38aに後方から当設していて、弁座体30に対して先方側端に位置するように付勢している。内軸後端部12bのノックを開始した状態では、まず図2(b)に示すように、まず、前記第1の状態のように、前記弁棒体38が弁座体30に対して先方側端の位置から後方に第1の距離未満移動したときであり、弁棒体38先方側のピストン部38aが弁座体30の先方側液密部32bに密接しながら摺接し、かつ、弁棒体38後方側のピストン部38bが弁座体30の後方側液密部34bから離れていて、液体収容空間12c側を加圧する状態になる。この際、弁棒体38後方側のピストン部38bが弁座体30の後方側液密部34bから離れているが、弁棒体38先方側のピストン部38aが弁座体30の先方側液密部32bに密接しながら摺接しているので、液体収容空間12cの内圧が上昇しても美爪料組成物Hは吹き出さない状態である。さらに、内軸後端部12bのノックを継続していった状態では、図2(c)に示すように、前記第2の状態のように、前記弁棒体38が弁座体30に対して後方に前記第1の距離以上であって第2の距離未満移動したときであり、弁棒体38先方側のピストン部38aが弁座体30の先方側液密部32bを離れる。その際、弁棒体38後方側のピストン部38bが弁座体30の後方側液密部34bから離れていて、弁座体30内部を通してその先方側開口と後方側開口が連通する状態になる。このように大気と連通するため、内圧が上昇している場合は、美爪料組成物Hが塗布体側に流出しようとするが、押圧操作上、この状態になるタイミングは一瞬であり、美爪料組成物Hの吹き出しはない。また、液体収容空間12cの空気置換性が向上する。また、美爪料組成物Hが誘導棒体44を伝わって塗布体16側に流出する。続けて内軸後端部12bのノックを継続していった状態では、図2(d)に示すように、前記第3の状態のように、前記弁棒体38が弁座体30に対して後方側に前記第2の距離以上移動したときであり、弁棒体38先方側のピストン部38aが弁座体30の先方側液密部32bを離れ、かつ、弁棒体38後方側のピストン部38bが弁座体30の後方側液密部34bに密接しながら摺接して塗布体16へ美爪料組成物Hを誘導するようになっている。この場合、美爪料組成物Hの流通する空間40は、液体収容空間と完全に遮断されるため、バルブ機構14内に溜まった美爪料組成物Hが美爪料導入管18内をスムーズに伝わって塗布体16側に流出する。
この場合、弁棒体38および弁座体30が軸方向に相対移動する際には、前記第2の状態になる距離は、第1の状態および第3の状態になる距離よりもはるかに小さく、液体収容空間12c内の圧力を美爪料組成物Hのボタ落ちなく外部に抜ける少しの距離(一瞬で通過する距離)になっている。先方側を下方にむけてバルブ機構14を操作して弁座体30および弁棒体38を相対移動する際には、第1の状態で、先方側のピストン部38aによって塗布体16側を閉じて美爪料組成物Hが弁座内面との間の空間に流れ込み、次いで、第2の状態で、該弁座内面との間の空間を通して液体収容空間12cを塗布体16から大気に連通し、さらに、第3の状態で、後方側のピストン部38bによって塗布体16側を閉じて弁座内面との間の美爪料組成物Hが塗布体16に流れるというポンピング動作を行う構造になっている。
【0027】
したがって、この形態の美爪料塗布具Aでは、バルブ機構14の操作によって第1の状態で液体収容空間12c内を加圧して第2の状態で液体収容空間12cの圧力を抜き、第3の状態で塗布体16に美爪料組成物液Hをスムーズに流しだすので、空気置換性が極めて良好であり、また、温度上昇等によって液体収容空間12c内の空気等が体積膨張していても、液体収容空間12cの圧力が高まりすぎても、美爪料組成物Hの不意の吐出によるボタオチが生じることがなく、ヌードカラー(半透明のネイル)を爪全体にコートした後、塗布体16から本発明のフレンチネイルタイプの美爪料組成物Hがスムーズに流出するので、爪先部分に塗ったり、爪上に直接線や模様を描くか、または、予め爪の上に塗布したニトロセルロース、樹脂、酢酸エステル類等からなる、ネイルエナメルの塗膜の上に描くことなどにより完成する。
【0028】
このように構成される本発明の美爪料組成物では、溶媒として、エタノールとプロピレングリコールモノメチルエーテルと、平均一次粒子径が200nmから400nmの酸化チタンAと、平均一次粒子径が10nmから80nmの酸化チタンBと、アクリル樹脂と、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンと、可塑剤を少なくとも含有することにより、下地カラーやトップコートによるラインの乱れが少なく、乾燥が早く、塗布環境で湿度が高い場合であっても塗膜に結露が発生することがなく、レベリングや色ムラも少ない、乾燥性、密着性、屈曲性、隠蔽性、仕上がり性、吐出性能及び再攪拌性に優れたフレンチネイルタイプの美爪料組成物が提供されることとなる。
従来のフレンチネイルタイプの美爪料組成物では、爪先に、美麗な線及び模様を描こうとすると、滲んだり、境界が不鮮明となったり、乾燥性や隠蔽性が不十分となる場合があったが、本発明では、下地カラーやトップコートによるラインの滲みや境界の乱れがなく、極めて優れたフレンチネイルタイプの美爪料組成物とすることができる。
【実施例】
【0029】
次に、実施例及び比較例により、本発明を更に詳述するが、本発明は下記実施例等により制限されるものではない。
【0030】
〔実施例1〜11及び比較例1〜7〕
下記表1に示す配合処方で、ホモミキサーあるいはディスパーで混合分散して、各美爪料組成物を調製した。
上記で得られた実施例1〜11及び比較例1〜7の各美爪料組成物について、下記方法により、ずり速度3.83(s−1)、383(s−1)における25℃の各粘度、乾燥性、密着性、屈曲性、隠蔽性、仕上がり、吐出性能及び再攪拌性について評価した。
これらの結果を下記表1に示す。
【0031】
〔粘度の測定方法〕
得られた各美爪料組成物について、温度25℃で、コーンプレート型粘度計(TV−30型粘度計のうち、EMD型粘度計、標準コーンプレート、トキメック社製)を用いて所定のずり速度における粘度を測定した。
【0032】
〔乾燥性の評価方法〕
平滑な試験板に一定の厚みで塗膜をひき、一定時間おきに綿棒等でひっかくことで、塗膜の乾燥時間を測定し、乾燥性を下記評価基準で評価した。
評価基準:
1:速過ぎる(×)
2:速乾、良好(○)
3:やや遅い(△)
4:遅すぎる(×)
【0033】
〔屈曲性の評価方法〕
JIS K5600−5−1に準じて試験を行い、屈曲性を下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:屈曲に耐える(塗膜に亀裂が全く入らない)
△:屈曲にやや耐える(塗膜の一部に亀裂が入る)
×:屈曲に耐えられない(塗膜に亀裂が入る)
【0034】
〔隠蔽性の評価方法〕
下地カラーの上に試料を塗布し、下地の色の透け具合を確認し、隠蔽性を下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:下地が全く透けない
△:やや透けるが使用可能
×:透けてしまい、下地を隠せない
【0035】
〔仕上がり性の評価方法〕
各美爪料組成物を図1に示す塗布具に充填し、爪先の上にフレンチネイル描線を描き、仕上がり性を下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:美麗ではじきのない簡単かつ短時間にフレンチネイル描線が描けている。
△:やや劣るが思い通りにフレンチネイル描線が描ける。
×:フレンチネイル描線がきたない、平滑でない、はじきが目立つ、など。
【0036】
〔吐出性能の評価方法〕
各美爪料組成物を図1に示す塗布具に充填し、内容液を吐出させ、吐出性能を下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:吐出動作数回で塗布可能な状態になる
△:吐出動作回数は多いが、使用できる範囲
×:内容液が吐出できない、吐出に難がある
【0037】
〔再攪拌性の評価方法〕
各美爪料組成物を図1に示す塗布具に充填し、50℃で1ケ月静置させる。これを手で振り、撹拌ボールの動きを観察し、下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:1〜3回の振りで撹拌ボールが動く。
△:4〜9回の振りで撹拌ボールが動く。
×:撹拌ボールが動くまで10回以上振らなければいけない。
【0038】
【表1】
【0039】
上記表1中の*1〜*5は、以下のとおりである。
*1:平均一次粒子径:250nm、石原産業社製
*2:平均一次粒子径:30nm〜50nm、石原産業社製
*3:アクリル酸アルキル共重合体(Luvimer100P、BASF社製)
*4:PEG−12ジメチコン(SH3775M、東レ・ダウコーニング社製)
*5:クエン酸アセチルトリエチル
【0040】
上記表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜11は、本発明の範囲外となる比較例1〜7に較べ、乾燥性、密着性、屈曲性、隠蔽性、仕上がり、吐出性能及び再攪拌性に優れたフレンチネイルタイプの美爪料組成物であることが判明した。
比較例を個別的に見ると、比較例1及び2は、本発明範囲となる平均一次粒子径が相違する酸化チタンを併用しない場合であり、比較例3は、アクリル樹脂を含有しない場合であり、比較例4は可塑剤を含有しない場合であり、比較例5及び7は溶媒を併用しない場合であり、比較例6はポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンを含有しない場合であり、これらの場合は、本発明の効果を発揮できないことが判った。
【産業上の利用可能性】
【0041】
フレンチネイルタイプに好適な美爪料組成物となる。
【符号の説明】
【0042】
A 美爪料塗布具
H 美爪料組成物
10 外軸
12 内軸
14 バルブ機構
16 塗布体
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヌードカラー(半透明のネイル)を爪全体にコート、次に、ホワイトのマニキュアを爪先部分に塗る、いわゆる二つの色で塗り分けるネイルアートで、爪先に塗布するフレンチネイルタイプの美爪料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ヌードカラー(半透明のネイル)を爪全体にコート、次に、ホワイトのマニキュアを爪先部分に塗る、いわゆるフレンチネイルタイプの美爪料組成物は、溶剤として、酢酸エステル類、樹脂として、ニトロセルロース類を混合した、ネイルエナメル液に酸化チタンを混合した白色の液で、一般的なネイルエナメルと同様にブラシで塗布するものであった。
【0003】
これまでのフレンチネイルタイプなどの美爪料組成物やその塗布具等としては、
1) 皮膜形成剤が、ニトロセルロース、アルキッド−1のうち1種または2種で、可塑剤がクエン酸アセチルトリブチル、フタル酸ジブチル及び安息香酸スクロースのうち1種または2種以上からなり、溶剤がアセトン、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、イソプロパノール、ブタノール、酢酸エトキシエチル及び酢酸エチルのうち1種または2種以上からなるネイルアート用爪化粧料であって、溶媒の主剤は、一般的なネイルエナメル組成物と同じで、さらに、アセトンとメチルエチルケトンを添加することで、境界線をぼかすネイルアート用爪化粧料(例えば、特許文献1参照))、
2) 爪の健康保持機能、使用感触、化粧持ちの全てにわたって優れた美爪料を提供するために、特定のアルキレンオキシド誘導体と、皮膜剤とを含有することを特徴とする美爪料、この美爪料として、実施例3−5及び3−6に、水、アクリル系エマルジョン、アルコール系溶剤、酸化チタン、消泡剤を含有する組成となる水系ネイルエナメル(例えば、特許文献2参照)、
3) 皮膜形成助剤の非存在下で測定される最低皮膜形成温度MFT、および乾燥皮膜の少なくとも1つのガラス転移温度Tgを有する(ただし、35℃≦Tg≦80℃およびTg−MFT≧8℃である)エマルジョンポリマーを含むネイルエナメルまたは毛髪セット用製品に有用となる水性化粧用組成物、この水性化粧用組成物として、その実施例15には、水、アクリル系エマルジョン、アルコール系溶剤、シリコーン系溶剤が含まれる組成の水性ネイルエナメル(例えば、特許文献3参照)、
4) 爪に絵を画いて楽しむ際に、特にフレンチネイルの場合におけるように、爪に一定幅のラインを、正確に、かつ簡単に、しかも利き手か否かに関係なく、描ける塗布具として、液体の吸収保持が可能な棒状の塗布主体と、この塗布主体上に爪先を誘導するネイルガイド部、および前記ネイルガイドに連設され、表面が平面状または曲面状に形成されているネイル塗布部とから構成されていることを特徴とするネイルアート用塗布具(例えば、特許文献4参照)、
5) 各個人毎の爪の形に合致し、人工爪のような不自然な印象を与えることはなく、簡単かつ短時間にフレンチネイルを仕上げることができるフレンチネイル用粘着シールとして、粘着性及び伸縮性を備えた物質で作られ、薄い平坦状に形成され、フレンチネイルのスマイルラインに相当する湾曲部が形成され、爪先に着脱可能に貼付されることを特徴とするフレンチネイル用粘着シール(例えば、特許文献5参照)が知られている。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1〜3を含む従来のネイルエナメルの白色組成物は、粘性も高く、また、細いブラシで塗布するため、2色の境界ラインが明確に決まらない、また、最初に塗ったヌードカラーが完全に乾いた後に、フレンチネイルを塗布し、乾燥後、持ちをよくするために、トップコートを塗布するといった形態がとられるのが現状であった。
この場合には、下地カラーや、トップコートを施すとき、十分な乾燥を伴わないと、同じ組成であるため、ラインが滲んだり、また、細いブラシで塗布するため、うまくラインが描けないといった不具合が生じるなどの課題がある。
更に、上記特許文献4及び5に記載のネイルアート用塗布具、フレンチネイル用粘着シールは、本発明とはその技術思想が相違するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−231554号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開2005−154403号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】特表2003−507399号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献4】特開2006−204332号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献5】特開2006−296620号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題及び現状に鑑み、これを解消しようとするものであり、下地カラーやトップコートによるラインの乱れが少なく、乾燥が早く、塗布環境で湿度が高い場合であっても塗膜に結露が発生することがなく、レベリングや色ムラも少ない、乾燥性、密着性、屈曲性、隠蔽性、仕上がり性、吐出性能及び再攪拌性に優れたフレンチネイルタイプの美爪料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記従来の課題等に鑑み、これを解消しようとするものであり、溶媒として、エタノールとプロピレングリコールモノメチルエーテルと、平均一次粒子径の範囲が相違する2種類の酸化チタンと、アクリル樹脂と、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンと、可塑剤とを少なくとも含有することにより、上記目的の美爪料組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0008】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(4)に存する。
(1) 溶媒として、エタノールとプロピレングリコールモノメチルエーテルと、平均一次粒子径が200nmから400nmの酸化チタンAと、平均一次粒子径が10nmから80nmの酸化チタンBと、アクリル樹脂と、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンと、可塑剤を少なくとも含有することを特徴とする美爪料組成物。
(2) 前記平均一次粒子径が200nmから400nmの酸化チタンAの含有量を1としたとき、前記平均一次粒子径が10nmから80nmの酸化チタンBの配合比率が質量比で0.5〜1.5であることを特徴とする上記(1)記載の美爪料組成物。
(3) 前記プロピレングリコールモノメチルエーテルの含有量を1としたとき、エタノールの配合比率が質量比で1〜50であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の美爪料組成物。
(4) 25℃におけるずり速度3.83(s−1)の粘度が10〜40(mPa・s)であり、ずり速度383(s−1)の粘度が10〜30(mPa・s)であることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか一つに記載の美爪料組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、下地カラーやトップコートによるラインの乱れが少なく、乾燥が早く、塗布環境で湿度が高い場合であっても塗膜に結露が発生することがなく、レベリングや色ムラも少ない、乾燥性、密着性、屈曲性、隠蔽性、仕上がり性、吐出性能及び再攪拌性に優れたフレンチネイルタイプの美爪料組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)、(b)、(c)は、本発明の美爪料組成物を収容する美爪料塗布具の一例を示す外観図、縦断面図、C−C線に沿う横断面図である。
【図2】(a)〜(d)は、図1の美爪料塗布具のバルブ機構の各作動工程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明の美爪料組成物は、溶媒として、エタノールとプロピレングリコールモノメチルエーテルと、平均一次粒子径が200nmから400nmの酸化チタンAと、平均一次粒子径が10nmから80nmの酸化チタンBと、アクリル樹脂と、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンと、可塑剤を少なくとも含有することを特徴とするものである。
【0012】
本発明に用いる溶媒としては、エタノールとプロピレングリコールモノメチルエーテルとを併用するものである。本発明では、酢酸エステル類や水を含有するものでなく、溶媒としてエタノールとプロピレングリコールモノメチルエーテルを併用することにより、下地カラーやトップコートによるラインの乱れが少ないものとなる。また、エタノール単独溶媒のとき、塗布環境で湿度が高い場合、塗膜に結露が発生する、不具合が防止できるものとなる。
用いるプロピレングリコールモノメチルエーテルの含有量は、美爪料組成物全量に対して、1〜40質量%、また、エタノールの含有量は美爪料組成物全量に対して、1〜60質量%とすることが好ましい。なお、プロピレングリコールモノメチルエーテルの含有量が、40質量%を超えると、乾燥性が遅くなり、煩雑となり、好ましくない。
好ましくは、下地カラーやトップコートによるラインの乱れを更に少なくする点、早く乾燥せしめる(速乾の)点から、プロピレングリコールモノメチルエーテルの含有量を1としたとき、エタノールの配合比率は質量比で1〜50(1:1〜1:50)とすることが望ましい。これらの配合範囲となる溶媒を併用することにより、乾燥が、従来の酢酸エチル・酢酸ブチルが溶媒のネイルエナメル組成物などよりも早く乾燥することができるものとなる。
特に、本発明の溶媒の併用による効果を最大限に発揮する点から、プロピレングリコールモノメチルエーテルとエタノールの配合比率を質量比で1:1〜1:10とすることが望ましい。
【0013】
本発明に用いる酸化チタンは、平均一次粒子径の範囲が相違する2種類の酸化チタンを用いるものであり、一方が、平均一次粒子径が200nmから400nmの酸化チタンAと、他方が、平均一次粒子径が10nmから80nmの酸化チタンBとを併用するものである。
これらの平均一次粒子径の範囲が相違する酸化チタンA、Bを併用することにより、各単独の酸化チタンA又はBの使用よりも、レベリングや色ムラを少なくし、優れた隠蔽性、仕上がり性能を発揮できるものとなる。すなわち、平均一次粒子径が、10nmから80nmの酸化チタンBは、単体では、光散乱は、少なく、白色度も少ないが、凝集状態の形態をとり、一般的な平均粒子径が200nmから400nmの酸化チタンとの混合により、色ムラ(白色度)が少なく、またレベリングが良くなる。また、上記平均一次粒子径が10nmから80nmの範囲外、または、200nmから400nmの範囲外となる酸化チタンの使用では、本発明の効果を発揮できないものとなる。
なお、本発明(後述する実施例を含む)において、「平均一次粒子径」とは、透過型電子顕微鏡画像解析による、粒子径をいう。
【0014】
用いることができる平均一次粒子径が200nmから400nmの酸化チタンAとしては、具体的には、CR−50、CR−60(以上、石原産業社製)、JR−800、JR−301(以上、テイカ社製)、UNIPURE WHITE LC 987(LCW社製)、KEMIRA 402(KEMIRA社製)などの少なくとも1種が挙げられ、また、平均一次粒子径が10nmから80nmの酸化チタンBとしては、具体的には、TTO−55(A)、TTO−51(A)(以上、石原産業社製)、MT−100TV、MT−500B(以上、テイカ社製)、などの少なくとも1種が挙げられる。
【0015】
用いる酸化チタンAの含有量は、美爪料組成物全量に対して、1〜20質量%、また、酸化チタンBの含有量は美爪料組成物全量に対して、0.5〜20質量%とすることが好ましい。
好ましくは、レベリングや色ムラを更に少なくし、優れた隠蔽性、仕上がり性能を更に発揮する点から、酸化チタンAの含有量を1としたとき、酸化チタンBの配合比率は、質量比で0.1〜5(1:0.1〜1:5)、更に好ましくは、0.5〜1.5(1:0.5〜1:1.5)とすることが望ましい。
本発明において、酸化チタンAの含有量が20質量%を超えて高すぎると、色ムラになりやすく、一方、1質量%未満になると、隠ぺい力の低下につながることとなり、好ましくない。
【0016】
本発明に用いるアクリル樹脂は、塗膜(皮膜)形成剤、分散安定剤として機能するものであり、具体的には、アクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸アルキル・スチレン共重合体などの少なくとも1種を含有することができ、好ましくは、分散安定性、塗膜性能の点から、アクリル酸アルキル共重合体の使用が望ましい。
これらのアクリル樹脂の含有量は、美爪料組成物全量に対して、1〜20質量%、好ましくは、5〜15質量%とすることが望ましい。
このアクリル樹脂の含有量が1質量%未満であると、下地との密着力が無く、仕上がりが悪く、再撹拌性も悪くなり、一方、20質量%を越えると、増粘し吐出性能が悪く、仕上がりも悪くなり、好ましくない。
【0017】
本発明に用いるポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンは、溶媒となるエタノールやプロピレングルコールモノメチルエーテルで構成された蒸発速度の高い溶媒の場合に、発生する、ラインの境界部分にフレンチ液が移動することが、防止され、塗膜が均一になる点から含有するものである。
具体的に用いることができるポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンとしては、SH3775M、SH3749(東レ・ダウコーニング社製)、KF6017、KF6013(信越シリコーン社製)などの少なくとも1種が挙げられる。
これらのポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンの含有量は、美爪料組成物全量に対して、0.0001〜1質量%、好ましくは、0.001〜0.1質量%とすることが望ましい。
このポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンの含有量が0.0001質量%未満であると、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンを含有せしめる効果が少なく、一方、1質量%を越えると、仕上がりが悪くなる。
【0018】
本発明に用いる可塑剤は、塗膜の可塑剤として用いるものであり、例えば、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、セバシン酸ジイソプロピルなどの少なくとも1種が挙げられる。
これらの可塑剤の含有量は、美爪料組成物全量に対して、0.5〜10質量%、好ましくは、1〜5質量%とすることが望ましい。
この可塑剤の含有量が0.5質量%未満であると、塗膜が硬くなりすぎるため脆くなり、一方、10質量%を越えると、乾燥が遅く、やわらかい塗膜となり、好ましくない。
【0019】
本発明の美爪料組成物は、温度25℃でのコーンプレート型粘度計による粘度測定において、ずり速度3.83(s−1)の粘度が10〜40(mPa・s)であり、ずり速度383(s−1)の粘度が10〜30(mPa・s)とすることが好ましい。
上記所定のずり速度において、上記各粘度範囲内とすることにより、繊維を樹脂等で固めた、または、繊維同士を融着した、いわゆるペン芯で、本発明の美爪料組成物の流出が可能となり、マーカのような塗布が可能となり、細いブラシで塗布といった、力加減で、塗布面積の変動が少なく、ラインが描きやすく、塗りやすいものとなる。従って、従来の特許文献4等に記載される複雑な段部を形成した、塗布具を使用しなくとも、塗布が容易となる。
なお、25℃における粘度で、ずり速度3.83(s−1)と383(s−1)での差が10倍以上になると、塗布体へ浸み込みづらく、使用性が悪くなる。
また、上記粘度の調整は、用いる平均一次粒子径が相違する酸化チタンA及びB、アクリル樹脂、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン、可塑剤、溶媒の併用を好適な含有量となるように組み合わせることにより調整することができる。
【0020】
本発明の美爪料組成物には、上記各成分の他、指先の白色以外の色変えのために、赤色201号、202号、220号、黄色4号ALレーキ、コンジョウ、ベンガラなどの顔料や、パール顔料、その他光輝性顔料を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有せしめることができ、また、分散剤としてニトロセルロース、アクリル樹脂などを本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有せしめることができる。
【0021】
本発明の美爪料組成物は、上述した各成分を上記各範囲の含有量等で混合分散機、例えば、ビーズミル、ホモミキサー、ディスパー、アトライター、ボールミル、サンドグラインダー等で混合分散することで調製される。
【0022】
このように構成される本発明の美爪料組成物は、本発明の美爪料組成物を収容したボトル(容器体)とキャップに付いた塗布体となるハケとから構成される美爪料塗布具や、少なくとも、美爪料組成物を収容する液体収容空間と、繊維を樹脂等で固めた、または、繊維同士を融着した、いわゆるペン芯タイプの塗布体とを備え、毛細管力によって前記液体収容空間から前記塗布体へ液体が輸送される塗布具の前記液体収容空間に収容される美爪料塗布具に収容して好適に使用することができる。
【0023】
用いることができる美爪料組成物塗布具としては、例えば、図1に示す、上記構成の美爪料組成物が内蔵される美爪料塗布具Aが挙げられる。図1(a)、(b)、(c)は、美爪料塗布具Aの外観図、縦断面図、C−C線に沿う横断面図であり、図2(a)〜(d)は、図1の美爪料塗布具Aのバルブ機構の各作動工程説明図である。
この美爪料塗布具Aは、図1及び図2に示すように、後端部10bの開放された概略円筒状の外軸10内に進退動可能にタンク状の内軸12が配置されていて、ユーザーが内軸12後端部12bをノックすることによって内軸が外軸10に対して前進して後述するバルブ機構14を作動させ、本発明の美爪料組成物Hを外軸10先端部10aに設けた塗布体16に供給するようになっている。
外軸10先端部10aは、段状に細径になっており、その先端部10a前面に、美爪料導入管(バルブ機構14から塗布体16側に美爪料組成物Hを流通させる管路)18の椀状の先端部18a外周(フランジ状に拡がっている)を当接させている。その美爪料導入管18の先端部18aには、シールリング20を介して塗布体16後部を挿入している。中空で先細い筒状の先軸22の中空部に前記塗布体16中央部からシールリング20および前記美爪料導入管18の先端部18aを通した状態で、該先軸22を前記外軸先端部10aに外嵌することによって、塗布体16、シールリング20および美爪料導入管先端部18aを外軸10に固定するようになっている。なお、外軸先端部10aには、塗布体16を覆って保護するキャップ24が着脱可能に外嵌するようになっており、キャップ24は、内側のインナーキャップ24aがスプリング24bによって先軸22を押圧するように付勢している。
【0024】
前記内軸12は、後端部12bが閉鎖されて内部が塗布体16を収容する液体収容空間12cになっており(撹拌ボール12dを収容する場合がある)、一方、前端部(内軸の先端部)12aに前記バルブ機構14を内装した状態で内先軸26によって固定している。詳しくは、内軸12の先方側を細くした前端部12aにバルブ機構14を内装した状態で、美爪料導入管18の後端部18bをバルブ機構14に摺動自在に繋ぎ、バルブ機構14前端部にパッキング28を介装して内先軸26を内軸前端部12aに螺合等によって固定している。
ここで、前記バルブ機構14は、美爪料組成物Hを収容する前記液体収容空間12cと塗布体16との連通路途上に、弁座体30および弁棒体38が軸方向に相対移動することによって美爪料組成物Hの塗布体16に向けての供給を許容・制止するものである。バルブ機構14の弁座体30は、軸方向の両端部に開口がある略筒体であって、内部の先方側(先側弁部材32)および後方側(後側弁部材34)に弁棒に摺接する液密部が形成され、前記後方側開口が液体収容空間12cに面し、かつ、先方側開口が塗布体16側に面して設けられる。また、図1(b)に示すように、弁座体30の後側弁部材34の内壁部には、長手方向の略中心から後方側にかけて、内壁部から径中心方向に突出した弁棒体38をガイドするガイド柱34cがリブ状に形成されている。このガイド柱34cは、外軸10が落下した際に、衝撃によって弁棒体38が傾き先側弁部材32の端面に乗り上げ、ノック不良になることを防ぐことができる。具体的には、先側弁部材32は、先方端にフランジ32aが拡径し後方側内周面が先方側内周面より拡径した全体が略筒形状を呈しており、この後方側内周面が図2(a)、(b)に示す先方側液密部32bに相当する。また、後側弁部材34は先方端にフランジ34aが拡径し後方側端が段状に縮径して開口した略筒形状を呈しており、この縮径部内周面が後方側液密部34bに相当する。先側弁部材32を後側弁部材34内に先方側から同心状に挿入し重畳した状態でフランジ32a、34aを重ねて、さらにパッキング28を先方に重ねた状態で、内先軸26で覆って内軸前端部12aに螺合して固定する。なお、後側弁部材34の後方側端の縮径部の前面が後述するスプリング部材36を受ける部分になっている。
前記弁棒体38は、前記先側弁部材32および後側弁部材34の中空内に進退動可能に収容されている。弁棒体38の外周部に、前記弁座体30内の先側弁部材32先方側液密部32bに液密状態で摺接する先方側のピストン部38aが、前記弁座体30内の後側弁部材34の後方側液密部34bに液密状態で摺接する後方側のピストン部38bがそれぞれ設けられると共に、該弁棒体38のほぼ中央部の外周部と前記弁座体30内面との間に美爪料組成物Hを流通する空間40が設けられる。具体的には、弁棒体38の先方側のピストン部38aは、拡径した傘状のフランジが可撓性を有した形成されたものである。また、後方側のピストン部38bは、後方窄まりに平滑外周面に形成されており、弁棒体38が後方に移動するときに、後側弁部材34の開口を細径の後端部が通過したあとに太径の中央部が後側弁部材34の後方側液密部34bに密着して摺接するようになっているものである。
【0025】
上記のようにバルブ機構14は、弁座体30および弁棒体38間にスプリング部材36を介装しており、スプリング部材36は弁棒体38の先方側のピストン部38aを後方から当設していて、弁座体30に対して先方側端に位置するように付勢している。したがって、内軸12の後端をノックして押圧力を加えないと、図1(b)及び図2(a)、(b)に示すように、スプリング部材36によって先方側のピストン部38aが先方側液密部32b先端に内接して位置する。なお、外軸10内の環状突起42に内先軸26が当接して内軸12がそれ以上後方に移動して抜けてしまうのを防止している。
また、弁座体30の先方側開口(先側弁部材32の先端側開口)には、当該先方側開口を塗布体16に連通する美爪料導入管(管路)18の後端部18bが挿入されて設けられ、この美爪料導入管18内には、美爪料組成物Hを塗布体16に向けて誘導する誘導棒体44が挿入されている。誘導棒体44と美爪料導入管18内面との間の間隙は、美爪料組成物Hを誘導させる寸法になっている。誘導棒体44の美爪料導入管18との位置関係に関しては、誘導棒体44が美爪料導入管18の径方向中心に位置するように導入管18先端部18a側内部に図示しないが複数条突出形成したリブによって誘導棒体44を支持して径方向のガタツキを無くしている。また、誘導棒体44先端部は、塗布体16の後部内に挿入している。
この形態の美爪料塗布具Aのバルブ機構14では、前記弁座体30内の先方側液密部32bおよび後方側液密部34bの間の距離よりも弁棒体38の先方側のピストン部38aおよび後方側のピストン部38bの間の距離を短く設定している。すなわち、弁座体30および弁棒体38同士が相対移動することによって、弁棒体38の先方側のピストン部38aが前記弁座体30内の先方側液密部32bに摺接する第1の状態と、弁棒体38の先方側のピストン部38aおよび後方側のピストン部38bの前記弁座体30内の双方の液密部に摺接しない第2の状態と、弁棒体38の後方側のピストン部38bが弁座体30内の後方側液密部34bに摺接する第3の状態とを取り得るように形成したものである。
【0026】
このように構成される美爪料塗布具Aでは、ユーザーが内軸後端部12bをノックしない通常状態(非ノック時)では、図2(a)に示すように、スプリング部材36は弁棒体38の先方側のピストン部38aに後方から当設していて、弁座体30に対して先方側端に位置するように付勢している。内軸後端部12bのノックを開始した状態では、まず図2(b)に示すように、まず、前記第1の状態のように、前記弁棒体38が弁座体30に対して先方側端の位置から後方に第1の距離未満移動したときであり、弁棒体38先方側のピストン部38aが弁座体30の先方側液密部32bに密接しながら摺接し、かつ、弁棒体38後方側のピストン部38bが弁座体30の後方側液密部34bから離れていて、液体収容空間12c側を加圧する状態になる。この際、弁棒体38後方側のピストン部38bが弁座体30の後方側液密部34bから離れているが、弁棒体38先方側のピストン部38aが弁座体30の先方側液密部32bに密接しながら摺接しているので、液体収容空間12cの内圧が上昇しても美爪料組成物Hは吹き出さない状態である。さらに、内軸後端部12bのノックを継続していった状態では、図2(c)に示すように、前記第2の状態のように、前記弁棒体38が弁座体30に対して後方に前記第1の距離以上であって第2の距離未満移動したときであり、弁棒体38先方側のピストン部38aが弁座体30の先方側液密部32bを離れる。その際、弁棒体38後方側のピストン部38bが弁座体30の後方側液密部34bから離れていて、弁座体30内部を通してその先方側開口と後方側開口が連通する状態になる。このように大気と連通するため、内圧が上昇している場合は、美爪料組成物Hが塗布体側に流出しようとするが、押圧操作上、この状態になるタイミングは一瞬であり、美爪料組成物Hの吹き出しはない。また、液体収容空間12cの空気置換性が向上する。また、美爪料組成物Hが誘導棒体44を伝わって塗布体16側に流出する。続けて内軸後端部12bのノックを継続していった状態では、図2(d)に示すように、前記第3の状態のように、前記弁棒体38が弁座体30に対して後方側に前記第2の距離以上移動したときであり、弁棒体38先方側のピストン部38aが弁座体30の先方側液密部32bを離れ、かつ、弁棒体38後方側のピストン部38bが弁座体30の後方側液密部34bに密接しながら摺接して塗布体16へ美爪料組成物Hを誘導するようになっている。この場合、美爪料組成物Hの流通する空間40は、液体収容空間と完全に遮断されるため、バルブ機構14内に溜まった美爪料組成物Hが美爪料導入管18内をスムーズに伝わって塗布体16側に流出する。
この場合、弁棒体38および弁座体30が軸方向に相対移動する際には、前記第2の状態になる距離は、第1の状態および第3の状態になる距離よりもはるかに小さく、液体収容空間12c内の圧力を美爪料組成物Hのボタ落ちなく外部に抜ける少しの距離(一瞬で通過する距離)になっている。先方側を下方にむけてバルブ機構14を操作して弁座体30および弁棒体38を相対移動する際には、第1の状態で、先方側のピストン部38aによって塗布体16側を閉じて美爪料組成物Hが弁座内面との間の空間に流れ込み、次いで、第2の状態で、該弁座内面との間の空間を通して液体収容空間12cを塗布体16から大気に連通し、さらに、第3の状態で、後方側のピストン部38bによって塗布体16側を閉じて弁座内面との間の美爪料組成物Hが塗布体16に流れるというポンピング動作を行う構造になっている。
【0027】
したがって、この形態の美爪料塗布具Aでは、バルブ機構14の操作によって第1の状態で液体収容空間12c内を加圧して第2の状態で液体収容空間12cの圧力を抜き、第3の状態で塗布体16に美爪料組成物液Hをスムーズに流しだすので、空気置換性が極めて良好であり、また、温度上昇等によって液体収容空間12c内の空気等が体積膨張していても、液体収容空間12cの圧力が高まりすぎても、美爪料組成物Hの不意の吐出によるボタオチが生じることがなく、ヌードカラー(半透明のネイル)を爪全体にコートした後、塗布体16から本発明のフレンチネイルタイプの美爪料組成物Hがスムーズに流出するので、爪先部分に塗ったり、爪上に直接線や模様を描くか、または、予め爪の上に塗布したニトロセルロース、樹脂、酢酸エステル類等からなる、ネイルエナメルの塗膜の上に描くことなどにより完成する。
【0028】
このように構成される本発明の美爪料組成物では、溶媒として、エタノールとプロピレングリコールモノメチルエーテルと、平均一次粒子径が200nmから400nmの酸化チタンAと、平均一次粒子径が10nmから80nmの酸化チタンBと、アクリル樹脂と、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンと、可塑剤を少なくとも含有することにより、下地カラーやトップコートによるラインの乱れが少なく、乾燥が早く、塗布環境で湿度が高い場合であっても塗膜に結露が発生することがなく、レベリングや色ムラも少ない、乾燥性、密着性、屈曲性、隠蔽性、仕上がり性、吐出性能及び再攪拌性に優れたフレンチネイルタイプの美爪料組成物が提供されることとなる。
従来のフレンチネイルタイプの美爪料組成物では、爪先に、美麗な線及び模様を描こうとすると、滲んだり、境界が不鮮明となったり、乾燥性や隠蔽性が不十分となる場合があったが、本発明では、下地カラーやトップコートによるラインの滲みや境界の乱れがなく、極めて優れたフレンチネイルタイプの美爪料組成物とすることができる。
【実施例】
【0029】
次に、実施例及び比較例により、本発明を更に詳述するが、本発明は下記実施例等により制限されるものではない。
【0030】
〔実施例1〜11及び比較例1〜7〕
下記表1に示す配合処方で、ホモミキサーあるいはディスパーで混合分散して、各美爪料組成物を調製した。
上記で得られた実施例1〜11及び比較例1〜7の各美爪料組成物について、下記方法により、ずり速度3.83(s−1)、383(s−1)における25℃の各粘度、乾燥性、密着性、屈曲性、隠蔽性、仕上がり、吐出性能及び再攪拌性について評価した。
これらの結果を下記表1に示す。
【0031】
〔粘度の測定方法〕
得られた各美爪料組成物について、温度25℃で、コーンプレート型粘度計(TV−30型粘度計のうち、EMD型粘度計、標準コーンプレート、トキメック社製)を用いて所定のずり速度における粘度を測定した。
【0032】
〔乾燥性の評価方法〕
平滑な試験板に一定の厚みで塗膜をひき、一定時間おきに綿棒等でひっかくことで、塗膜の乾燥時間を測定し、乾燥性を下記評価基準で評価した。
評価基準:
1:速過ぎる(×)
2:速乾、良好(○)
3:やや遅い(△)
4:遅すぎる(×)
【0033】
〔屈曲性の評価方法〕
JIS K5600−5−1に準じて試験を行い、屈曲性を下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:屈曲に耐える(塗膜に亀裂が全く入らない)
△:屈曲にやや耐える(塗膜の一部に亀裂が入る)
×:屈曲に耐えられない(塗膜に亀裂が入る)
【0034】
〔隠蔽性の評価方法〕
下地カラーの上に試料を塗布し、下地の色の透け具合を確認し、隠蔽性を下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:下地が全く透けない
△:やや透けるが使用可能
×:透けてしまい、下地を隠せない
【0035】
〔仕上がり性の評価方法〕
各美爪料組成物を図1に示す塗布具に充填し、爪先の上にフレンチネイル描線を描き、仕上がり性を下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:美麗ではじきのない簡単かつ短時間にフレンチネイル描線が描けている。
△:やや劣るが思い通りにフレンチネイル描線が描ける。
×:フレンチネイル描線がきたない、平滑でない、はじきが目立つ、など。
【0036】
〔吐出性能の評価方法〕
各美爪料組成物を図1に示す塗布具に充填し、内容液を吐出させ、吐出性能を下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:吐出動作数回で塗布可能な状態になる
△:吐出動作回数は多いが、使用できる範囲
×:内容液が吐出できない、吐出に難がある
【0037】
〔再攪拌性の評価方法〕
各美爪料組成物を図1に示す塗布具に充填し、50℃で1ケ月静置させる。これを手で振り、撹拌ボールの動きを観察し、下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:1〜3回の振りで撹拌ボールが動く。
△:4〜9回の振りで撹拌ボールが動く。
×:撹拌ボールが動くまで10回以上振らなければいけない。
【0038】
【表1】
【0039】
上記表1中の*1〜*5は、以下のとおりである。
*1:平均一次粒子径:250nm、石原産業社製
*2:平均一次粒子径:30nm〜50nm、石原産業社製
*3:アクリル酸アルキル共重合体(Luvimer100P、BASF社製)
*4:PEG−12ジメチコン(SH3775M、東レ・ダウコーニング社製)
*5:クエン酸アセチルトリエチル
【0040】
上記表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜11は、本発明の範囲外となる比較例1〜7に較べ、乾燥性、密着性、屈曲性、隠蔽性、仕上がり、吐出性能及び再攪拌性に優れたフレンチネイルタイプの美爪料組成物であることが判明した。
比較例を個別的に見ると、比較例1及び2は、本発明範囲となる平均一次粒子径が相違する酸化チタンを併用しない場合であり、比較例3は、アクリル樹脂を含有しない場合であり、比較例4は可塑剤を含有しない場合であり、比較例5及び7は溶媒を併用しない場合であり、比較例6はポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンを含有しない場合であり、これらの場合は、本発明の効果を発揮できないことが判った。
【産業上の利用可能性】
【0041】
フレンチネイルタイプに好適な美爪料組成物となる。
【符号の説明】
【0042】
A 美爪料塗布具
H 美爪料組成物
10 外軸
12 内軸
14 バルブ機構
16 塗布体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒として、エタノールとプロピレングリコールモノメチルエーテルと、平均一次粒子径が200nmから400nmの酸化チタンAと、平均一次粒子径が10nmから80nmの酸化チタンBと、アクリル樹脂と、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンと、可塑剤を少なくとも含有することを特徴とする美爪料組成物。
【請求項2】
前記平均一次粒子径が200nmから400nmの酸化チタンAの含有量を1としたとき、前記平均一次粒子径が10nmから80nmの酸化チタンBの配合比率が質量比で0.5〜1.5であることを特徴とする請求項1に記載の美爪料組成物。
【請求項3】
前記プロピレングリコールモノメチルエーテルの含有量を1としたとき、エタノールの配合比率が質量比で1〜50であることを特徴とする請求項1又は2記載の美爪料組成物。
【請求項4】
25℃におけるずり速度3.83(s−1)の粘度が10〜40(mPa・s)であり、ずり速度383(s−1)の粘度が10〜30(mPa・s)であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の美爪料組成物。
【請求項1】
溶媒として、エタノールとプロピレングリコールモノメチルエーテルと、平均一次粒子径が200nmから400nmの酸化チタンAと、平均一次粒子径が10nmから80nmの酸化チタンBと、アクリル樹脂と、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンと、可塑剤を少なくとも含有することを特徴とする美爪料組成物。
【請求項2】
前記平均一次粒子径が200nmから400nmの酸化チタンAの含有量を1としたとき、前記平均一次粒子径が10nmから80nmの酸化チタンBの配合比率が質量比で0.5〜1.5であることを特徴とする請求項1に記載の美爪料組成物。
【請求項3】
前記プロピレングリコールモノメチルエーテルの含有量を1としたとき、エタノールの配合比率が質量比で1〜50であることを特徴とする請求項1又は2記載の美爪料組成物。
【請求項4】
25℃におけるずり速度3.83(s−1)の粘度が10〜40(mPa・s)であり、ずり速度383(s−1)の粘度が10〜30(mPa・s)であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の美爪料組成物。
【図1】
【図2】
【図2】
【公開番号】特開2012−72123(P2012−72123A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185889(P2011−185889)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】
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