説明

美白剤、並びに、皮膚外用剤及び飲食品

【課題】優れた美白作用(チロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用等)を有し、かつ、安全性の高い美白剤、並びに、前記美白剤を利用した皮膚外用剤及び飲食品を提供すること。
【解決手段】発酵ギンネムの抽出物、発酵グアバの抽出物、及び発酵ウコンの抽出物から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする美白剤、並びに、前記美白剤を含有することを特徴とする皮膚外用剤及び飲食品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物発酵抽出物を含有する美白剤、並びに、前記美白剤を利用した皮膚外用剤及び飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚においてメラニンは紫外線から生体を保護する役目も果たしているが、過剰生成や不均一な蓄積は、皮膚の黒化やシミの原因となる。一般に、メラニンは色素細胞の中で生合成される酵素チロシナーゼの働きによって、チロシンからドーパ、ドーパからドーパキノンに変化し、次いで、5,6−ジヒドロキシインドフェノール等の中間体を経て形成される。したがって、皮膚の色黒(皮膚色素沈着症)を予防・改善するため、即ち美白のためには、メラニン産生過程を阻害すること、或いは既に産生したメラニンを淡色漂白することが有効であると考えられる。
このようなチロシナーゼ阻害作用を有する生薬としては、例えば、藤茶抽出物(特許文献1参照)、ヤナギタデ抽出物(特許文献2参照)などが報告されている。
【0003】
しかしながら、現在までのところ、入手が容易で安価であり、安全性の高い天然物系のものであって、味、匂い、使用感等の点で添加対象物の品質に悪影響を及ぼさず、皮膚外用剤及び飲食品に広く使用可能な美白剤は未だ提供されておらず、その速やかな提供が強く求められているのが現状である。
【0004】
【特許文献1】特開2002−370962号公報
【特許文献2】特開2004−083488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、優れた美白作用(チロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用等)を有し、かつ、安全性の高い美白剤、並びに、前記美白剤を利用した皮膚外用剤及び飲食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を行ったところ、ギンネム、グアバ、及びウコンの各植物をそれぞれ発酵させて得られる各植物発酵物を、更に抽出することにより得られる各植物発酵抽出物が、チロシナーゼ活性阻害作用、及びメラニン産生抑制作用の少なくともいずれかに基づく、優れた美白作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 発酵ギンネムの抽出物、発酵グアバの抽出物、及び発酵ウコンの抽出物から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする美白剤である。
<2> チロシナーゼ活性阻害作用、及びメラニン産生抑制作用の少なくともいずれかを有する前記<1>に記載の美白剤である。
<3> 前記<1>から<2>のいずれかに記載の美白剤を含有することを特徴とする皮膚外用剤である。
<4> 前記<1>から<2>のいずれかに記載の美白剤を含有することを特徴とする飲食品である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、従来における諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、優れた美白作用(チロシナーゼ活性阻害作用、メラニン産生抑制作用等)を有し、かつ、安全性の高い美白剤、並びに、前記美白剤を利用した皮膚外用剤及び飲食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(美白剤)
本発明の美白剤は、発酵ギンネムの抽出物、発酵グアバの抽出物、及び発酵ウコンの抽出物から選択される少なくとも1種を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
ここで、前記発酵ギンネムの抽出物、発酵グアバの抽出物、及び発酵ウコンの抽出物とはそれぞれ、ギンネム、グアバ、及びウコンの各植物をそれぞれ発酵させて得られる発酵物(本明細書中において、「植物発酵物」と称することがある)を、更に抽出することにより得られる抽出物(本明細書中において、「植物発酵抽出物」と称することがある)をいう。
【0010】
前記美白剤は、チロシナーゼ活性阻害作用、及びメラニン産生抑制作用の少なくともいずれかに基づく美白作用を有するものである。
前記発酵ギンネムの抽出物、発酵グアバの抽出物、及び発酵ウコンの抽出物における、美白作用を発揮する物質の詳細については不明であるが、前記各植物発酵抽出物がこのような優れた作用を有し、美白剤として有用であることは、従来には全く知られておらず、本発明者らによる新たな知見である。
【0011】
前記ギンネムは、マメ科の植物であり、学名はLeucaena leucocephalaである、前記ギンネムは、多年性植物であり、熱帯、亜熱帯地方に広く分布しており、また、日本では沖縄地方でも栽培されており、これらの地域から容易に入手可能である。
発酵原料として使用する前記ギンネムの部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、花、蕾、果実、果皮、種子、種皮、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根、根茎、根皮、これらの混合物などが挙げられ、これらの中でも、葉、茎が好ましい。
前記グアバは、フトモモ科の植物であり、学名はPsidium guajava Linnである。前記グアバは、常緑樹であり、東南アジア、中国南部、ハワイなどの熱帯、亜熱帯地域に広く分布しており、これらの地域から容易に入手可能である。
発酵原料として使用する前記グアバの部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、花、蕾、果実、果皮、種子、種皮、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根、根茎、根皮、これらの混合物などが挙げられ、これらの中でも、葉が好ましい。
前記ウコンは、ショウガ科の植物であり、学名はCurcuma longa L.である。前記ウコンは、多年草であり、インド、東南アジア、中国南部などの熱帯地方や、日本では沖縄地方でも栽培されており、これらの地域から容易に入手可能である。
発酵原料として使用する前記ウコンの部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、花、蕾、果実、果皮、種子、種皮、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根、根茎、根皮、これらの混合物などが挙げられ、これらの中でも、根茎が好ましい。
【0012】
前記各植物は、各植物発酵物を得るための発酵原料として使用される。前記各植物を、任意の方法で発酵させることにより、各植物発酵物を得ることができる。前記各植物の発酵方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、特許第2596472号公報(ギンネム)、特許第4031637号公報(グアバ)、特許第2949411号(ウコン)、特開2004−345986号公報(ウコン)に記載の方法などを、好適に採用することができる。具体的には、例えば、前記各植物を、乾燥した後に、そのままの状態で又は粗砕機等を用いて粉砕した状態で、乳酸菌、酵母、枯草菌などの微生物による発酵処理に供することにより、前記各植物発酵物を得ることができる。
【0013】
前記のようにして得られた各植物発酵物は、各植物発酵抽出物を得るための抽出原料として使用される。前記各植物発酵物は、例えば、乾燥した後、溶媒抽出に供することができる。前記乾燥は、例えば、天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。また、前記各植物発酵物は、滅菌処理を施してから、抽出原料として使用してもよい。前記滅菌処理は、例えば、加熱等の公知の方法により行うことができる。なお、前記各植物発酵物は、ヘキサン、ベンゼン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから、抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、前記各植物発酵物の極性溶媒による抽出処理を、効率よく行うことができる。
【0014】
前記各植物発酵抽出物は、植物の抽出に一般に用いられる方法を利用して、前記植物発酵物に抽出処理を施すことにより、容易に得ることができる。また、前記各植物発酵抽出物としては、市販品を使用してもよい。なお、前記各植物発酵抽出物には、前記各植物発酵物の抽出液、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、又は、これらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。
【0015】
前記抽出に用いる溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、親水性有機溶媒、又は、これらの混合溶媒を、室温又は溶媒の沸点以下の温度で用いることが好ましい。前記各植物発酵物に含まれる美白作用を示す成分は、極性溶媒を抽出溶媒とする抽出処理によって、容易に抽出することができる。
【0016】
前記抽出溶媒として使用し得る水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等の他、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、ろ過、イオン交換、浸透圧の調整、緩衝化等が含まれる。したがって、前記抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0017】
前記抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコールなどが挙げられ、該親水性有機溶媒と水との混合溶媒なども用いることができる。なお、前記水と前記親水性有機溶媒との混合溶媒を使用する際には、低級アルコールの場合は水10質量部に対して1〜90質量部、低級脂肪族ケトンの場合は水10質量部に対して1〜40質量部を混合したものを使用することが好ましい。また、多価アルコールの場合は水10質量部に対して1〜90質量部を混合したものを使用することが好ましい。
【0018】
抽出原料である前記各植物発酵物から、美白作用を有する抽出物を抽出するにあたって、特殊な抽出方法を採用する必要はなく、室温又は還流加熱下で、任意の抽出装置を用いて抽出することができる。
具体的には、抽出溶媒を満たした処理槽内に、前記各抽出原料を投入し、更に必要に応じて時々攪拌しながら、30分〜4時間静置して可溶性成分を溶出した後、ろ過して固形物を除去し、得られた抽出液から抽出溶媒を留去し、乾燥することにより抽出物を得ることができる。抽出溶媒量は通常、抽出原料の5〜15倍量(質量比)である。抽出条件は、抽出溶媒として水を用いた場合には、通常50〜95℃にて1〜4時間程度である。また、抽出溶媒として水とエタノールとの混合溶媒を用いた場合には、通常40〜95℃にて30分間〜4時間程度である。なお、溶媒で抽出することにより得られる抽出液は、抽出溶媒が安全性の高いものであれば、そのまま本発明の美白剤の有効成分として用いることができる。
【0019】
抽出により得られる前記各植物発酵物の抽出液は、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物を得るため、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してもよい。なお、得られる前記各植物発酵物の抽出液は、そのままでも美白剤の有効成分として使用することができるが、濃縮液又はその乾燥物としたものの方が利用しやすい。抽出液の乾燥物を得るにあたっては、常法を利用することができ、また、吸湿性を改善するためにデキストリン、シクロデキストリン等のキャリアーを添加してもよい。また、抽出原料である前記各植物発酵物は特有の匂いと味を有している場合があり、そのため、前記各植物発酵物の抽出物に対しては、生理活性の低下を招かない範囲で、脱色、脱臭等を目的とする精製を行うことも可能であるが、例えば皮膚化粧料に添加する場合などには大量に使用するものではないから、未精製のままでも実用上支障はない。なお、精製は、具体的には、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理等によって行うことができる。
【0020】
以上のようにして得られる前記各植物発酵物の抽出物(植物発酵抽出物)は、チロシナーゼ活性阻害作用、及びメラニン産生抑制作用の少なくともいずれかを有し、これらの作用に基づき、本発明の美白剤の有効成分として好適に利用可能なものである。なお、前記植物発酵抽出物は、前記した各作用に基づき、チロシナーゼ活性阻害剤、メラニン産生抑制剤としても、それぞれ好適に利用可能である。
前記美白剤中の前記各植物発酵抽出物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、また、前記美白剤は、前記各植物発酵抽出物そのものであってもよい。
また、前記美白剤中、前記各植物発酵抽出物は、いずれか1種のみが含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。前記美白剤中に2種以上の植物発酵抽出物が含まれる場合の、各々の含有量比としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0021】
また、前記美白剤中に含まれ得る、前記各植物発酵抽出物以外のその他の成分としても、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記各植物発酵抽出物を所望の濃度に希釈等するための、生理食塩液などが挙げられる。また、前記美白剤中の前記その他の成分の含有量にも、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
また、前記美白剤は、必要に応じて製剤化することにより、粉末状、顆粒状、錠剤状等、任意の剤形とすることができる。
【0022】
本発明の美白剤は、チロシナーゼ活性阻害作用、及びメラニン産生抑制作用の少なくともいずれかに基づく優れた美白作用を有すると共に、安全性に優れるため、例えば、後述する本発明の皮膚外用剤、本発明の飲食品などへの利用に好適である。
【0023】
(皮膚外用剤)
本発明の皮膚外用剤は、前記した本発明の美白剤を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
ここで、前記皮膚外用剤とは、皮膚に適用される各種の薬剤を意味し、その区分としては特に制限されるものではなく、例えば、皮膚化粧料、医薬部外品、医薬品などを幅広く含むものである。
前記皮膚外用剤は、前記各植物発酵抽出物を、その活性を妨げないように任意の皮膚外用剤に配合したものであってもよいし、前記各植物発酵抽出物を主成分とした皮膚外用剤であってもよい。また、前記皮膚外用剤は、前記各植物発酵抽出物そのものであってもよい。
【0024】
前記皮膚外用剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、軟膏、クリーム、乳液、美容液、ローション、パック、ファンデーション、リップクリーム、入浴剤、ヘアートニック、ヘアーローション、石鹸、ボディシャンプーなどが挙げられる。
【0025】
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、皮膚外用剤を製造するにあたって通常用いられる成分、例えば、収斂剤、殺菌、抗菌剤、美白剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、抗老化剤、消炎・抗アレルギー剤、抗酸化・活性酸素除去剤、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料などが挙げられる。
【0026】
前記皮膚外用剤中の、前記美白剤の含有量としては、特に制限はなく、皮膚外用剤の種類などに応じて適宜選択することができるが、例えば、前記各植物発酵抽出物の量として、0.0001〜10質量%が好ましく、0.001〜5質量%がより好ましい。
【0027】
(飲食品)
本発明の飲食品は、前記した本発明の美白剤を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
ここで、前記飲食品とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通常の社会生活において、経口又は消化管投与により摂取されるものをいい、行政区分上の食品、医薬品、医薬部外品などの区分に制限されるものではなく、例えば、経口的に摂取される一般食品、健康食品、保健機能食品、医薬部外品、医薬品などを幅広く含むものを意味する。
前記飲食品は、前記各植物発酵抽出物を、その活性を妨げないように任意の飲食物に配合したものであってもよいし、前記各植物発酵抽出物を主成分とする栄養補助食品であってもよい。また、前記飲食品は、前記各植物発酵抽出物そのものであってもよい。
【0028】
前記飲食品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料;アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子、パン等の菓子類;カニ、サケ、アサリ、マグロ、イワシ、エビ、カツオ、サバ、クジラ、カキ、サンマ、イカ、アカガイ、ホタテ、アワビ、ウニ、イクラ、トコブシ等の水産物;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;カレー、シチュー、親子丼、お粥、雑炊、中華丼、かつ丼、天丼、うな丼、ハヤシライス、おでん、マーボドーフ、牛丼、ミートソース、玉子スープ、オムライス、餃子、シューマイ、ハンバーグ、ミートボール等のレトルトパウチ食品;種々の形態の健康食品や栄養補助食品;錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、トローチ等の医薬品、医薬部外品などが挙げられる。
【0029】
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、飲食品を製造するにあたって通常用いられる、補助的原料又は添加物などが挙げられる。
前記補助的原料又は添加物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、ルブソサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L−アスコルビン酸、dl−α−トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンB類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤などが挙げられる。
【0030】
前記飲食品中の、前記美白剤の含有量としては、対象となる飲食品の種類に応じて異なり、一概には規定することができないが、例えば、飲食品本来の味を損なわない範囲で任意の飲食物に配合することを目的とする場合には、有効成分である前記各植物発酵抽出物の量として、0.001質量%〜50質量%が好ましく、0.01質量%〜20質量%がより好ましい。また、例えば、前記各植物発酵抽出物を主成分とする顆粒、錠剤、カプセル形態等の栄養補助飲食品を製造することを目的とする場合には、有効成分である前記各植物発酵抽出物の量として、0.01質量%〜100質量%が好ましく、5質量%〜100質量%がより好ましい。
【0031】
(効果)
本発明の美白剤、並びに、皮膚外用剤及び飲食品は、日常的に使用することが可能であり、有効成分である前記各植物発酵抽出物の働きによって、チロシナーゼ活性阻害作用、及びメラニン産生抑制作用の少なくともいずれかに基づく美白作用を、極めて効果的に発揮させることができるものである。そのため、本発明の美白剤、並びに、皮膚外用剤及び飲食品によれば、例えば、皮膚の色黒(皮膚色素沈着症)の予防・改善を、効果的に行えるようになることが期待される。
【0032】
なお、本発明の美白剤、並びに、皮膚外用剤及び飲食品は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、その作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、サルなど)に対して適用することも可能である。また、本発明の美白剤、並びに、皮膚外用剤及び飲食品は、天然由来の各植物発酵抽出物を有効成分としたものであり、安全性に優れる点でも、有利である。
【実施例】
【0033】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0034】
(製造例1)
−各植物発酵物の水抽出物の製造−
抽出原料となる植物発酵物として、発酵ギンネム、発酵グアバ、及び発酵ウコン(いずれも株式会社琉球バイオリソース開発製)をそれぞれ使用した。前記各植物発酵物100gを、水1000mlに投入し、穏やかに攪拌しながら2時間、90℃に保った後、ろ過した。ろ液を40℃で減圧下に濃縮し、更に減圧乾燥機で乾燥して、粉末状の抽出物を得た。得られた抽出物(植物発酵抽出物)の収率を表1に示す。
【0035】
(製造例2)
−各植物発酵物の50質量%エタノール抽出物の製造−
抽出原料となる植物発酵物として、発酵ギンネム、発酵グアバ、及び発酵ウコン(いずれも株式会社琉球バイオリソース開発製)をそれぞれ使用した。前記各植物発酵物100gを、50質量%エタノール(水とエタノールとの質量比1:1)1000mlに投入し、穏やかに攪拌しながら2時間、90℃に保った後、ろ過した。ろ液を40℃で減圧下に濃縮し、更に減圧乾燥機で乾燥して、粉末状の抽出物を得た。得られた抽出物(植物発酵抽出物)の収率を表1に示す。
【0036】
(製造例3)
−各植物発酵物の80質量%エタノール抽出物の製造−
抽出原料となる植物発酵物として、発酵ギンネム、発酵グアバ、及び発酵ウコン(いずれも株式会社琉球バイオリソース開発製)をそれぞれ使用した。前記各植物発酵物100gを、80質量%エタノール(水とエタノールとの質量比1:4)1000mlに投入し、穏やかに攪拌しながら2時間、90℃に保った後、ろ過した。ろ液を40℃で減圧下に濃縮し、更に減圧乾燥機で乾燥して、粉末状の抽出物を得た。得られた抽出物(植物発酵抽出物)の収率を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
(実施例1:チロシナーゼ活性阻害作用試験)
前記植物発酵抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法によりチロシナーゼ活性阻害作用を試験した。
【0039】
48wellプレートに、Mcllvaine緩衝液(pH6.8)0.2mL、0.3mg/mL チロシン溶液0.06mL、被験試料の25%DMSO溶液0.18mLを加え、37℃で10分間静置した。これに、2500units/mL チロシナーゼ溶液0.02mLを加え、引き続き37℃で15分間反応した。反応終了後、波長475nmにおける吸光度を測定した。同様の方法で空試験を行い補正した。
チロシナーゼ活性阻害作用の計算方法は以下のとおりである。結果を表2〜4に示す。
チロシナーゼ活性阻害率(%)={1−(St−Sb)/(Ct−Cb)}×100
St:被験試料溶液の波長475nmにおける吸光度
Sb:被験試料溶液ブランクの波長475nmにおける吸光度
Ct:コントロール溶液の波長475nmにおける吸光度
Cb:コントロール溶液ブランクの波長475nmにおける吸光度
【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
【表4】

【0043】
(実施例2:メラニン産生抑制作用試験)
前記植物発酵抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法によりメラニン産生抑制作用を試験した。
【0044】
B16メラノーマ細胞を10%FBS含有ダルベッコMEMを用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を10%FBS及び1mmol/L テオフィリン含有ダルベッコMEMで5.0×10cells/mLの濃度に希釈した後、48wellプレートに1well当たり300μLずつ播種し、6時間培養した。培養終了後、10%FBS及び1mmol/L テオフィリン含有ダルベッコMEMで溶解した被験試料を各wellに300μL添加し、4日間培養した。培養終了後、各wellから培地を取り除き、1mol/L NaOH溶液200μLを添加して超音波破砕器により細胞を破壊し、波長475nmにおける吸光度を測定した。同時に濁度として波長650nmにおける吸光度を測定し、両者の差をもってメラニン産生量とした。
また細胞生存率の測定のため、同様に培養後、400μLのPBS(−)で洗浄し、終濃度0.05mg/mLで1%FBS含有ダルベッコMEMに溶解したニュートラルレッドを各wellに200μL添加した。2.5時間培養した後、ニュートラルレッド溶液を捨て、エタノール・酢酸溶液(エタノール:酢酸:水=50:1:49)を各wellに300μL添加し、色素を抽出した。抽出後、波長540nmにおける吸光度を測定した。
空試験として、1mmol/L テオフィリン含有ダルベッコMEMのみで培養した細胞を同様の方法で試験した。
メラニン産生抑制作用及び細胞生存率の計算方法は以下のとおりである。結果を表5に示す。
メラニン産生抑制率(%)={1−(B/D)/(A/C)}×100
細胞生存率(%)=(D/C)×100
A:被験試料無添加での475nmにおける吸光度
B:被験試料添加での475nmにおける吸光度
C:被験試料無添加での540nmにおける吸光度
D:被験試料添加での540nmにおける吸光度
【0045】
【表5】

【0046】
実施例1〜2の結果から、発酵ギンネムの抽出物、発酵グアバの抽出物、及び発酵ウコンの抽出物は、チロシナーゼ活性阻害作用、及びメラニン産生抑制作用の少なくともいずれかを有することが確認され、これらのことから、発酵ギンネムの抽出物、発酵グアバの抽出物、及び発酵ウコンの抽出物が、美白剤の有効成分として、好適に利用可能であることが示唆された。
【0047】
(配合例1)
−乳液−
下記組成に従い、乳液を常法により製造した。
・発酵ギンネムの50質量%エタノール抽出物・・・0.10g
・ホホバオイル・・・4.00g
・1,3−ブチレングリコール・・・3.00g
・ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.)・・・2.50g
・オリーブオイル・・・2.00g
・スクワラン・・・2.00g
・セタノール・・・2.00g
・モノステアリン酸グリセリル・・・2.00g
・オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)・・・2.00g
・パラオキシ安息香酸メチル・・・0.15g
・黄杞エキス・・・0.10g
・グリチルリチン酸ジカリウム・・・0.10g
・イチョウ葉エキス・・・0.10g
・コンキオリン・・・0.10g
・オウバクエキス・・・0.10g
・カツミレエキス・・・0.10g
・香料・・・0.05g
・精製水・・・残部(合計100.00g)
【0048】
(配合例2)
−化粧水−
下記組成に従い、化粧水を常法により製造した。
・発酵グアバの50質量%エタノール抽出物・・・0.10g
・グリセリン・・・3.00g
・1,3−ブチレングリコール・・・3.00g
・オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)・・・2.00g
・パラオキシ安息香酸メチル・・・0.15g
・クエン酸・・・0.10g
・クエン酸ソーダ・・・0.10g
・油溶性甘草エキス・・・0.10g
・海藻エキス・・・0.10g
・クジンエキス・・・0.10g
・キシロビオースミクスチャー・・・0.05g
・香料・・・0.05g
・精製水・・・残部(合計:100.00g)
【0049】
(配合例3)
−クリーム−
下記組成に従い、クリームを常法により製造した。
・発酵ウコンの50質量%エタノール抽出物・・・0.10g
・スクワラン・・・10.00g
・1,3−ブチレングリコール・・・6.00g
・流動パラフィン・・・5.00g
・サラシミツロウ・・・4.00g
・セタノール・・・3.00g
・モノステアリン酸グリセリル・・・3.00g
・ラノリン・・・2.00g
・オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)・・・1.50g
・パラオキシ安息香酸メチル・・・1.50g
・ステアリン酸・・・1.00g
・酵母抽出液・・・0.10g
・シソ抽出液・・・0.10g
・シナノキ抽出液・・・0.10g
・ジユ抽出液・・・0.10g
・香料・・・0.10g
・精製水・・・残部(合計:100.00g)
【0050】
(配合例4)
−パック−
下記組成に従い、パックを常法により製造した。
・発酵ギンネムの80質量%エタノール抽出物・・・0.20g
・ポリビニルアルコール・・・15.00g
・エタノール・・・10.00g
・プロピレングリコール・・・7.00g
・ポリエチレングリコール・・・3.00g
・セージ抽出液・・・0.10g
・トウキ抽出液・・・0.10g
・ニンジン抽出液・・・0.10g
・パラオキシ安息香酸エチル・・・0.05g
・香料・・・0.05g
・精製水・・・残部(合計:100.00g)
【0051】
(配合例5)
−錠剤状栄養補助食品−
下記の混合物を打錠して、錠剤状栄養補助食品を製造した。
・発酵グアバの80質量%エタノール抽出物・・・30g
・粉糖(ショ糖)・・・178g
・ソルビット・・・10g
・グリセリン脂肪酸エステル・・・12g
【0052】
(配合例6)
−顆粒状栄養補助食品−
下記の混合物を顆粒状に形成して、顆粒状栄養補助食品を製造した。
・発酵ウコンの80質量%エタノール抽出物・・・20g
・ビートオリゴ糖・・・1000g
・ビタミンC・・・167g
・ステビア抽出物・・・10g
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の美白剤、並びに、皮膚外用剤及び飲食品は、優れた美白作用を有するので、例えば、皮膚の色黒(皮膚色素沈着症)の予防・改善を目的とした皮膚外用剤や飲食品に、好適に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵ギンネムの抽出物、発酵グアバの抽出物、及び発酵ウコンの抽出物から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする美白剤。
【請求項2】
チロシナーゼ活性阻害作用、及びメラニン産生抑制作用の少なくともいずれかを有する請求項1に記載の美白剤。
【請求項3】
請求項1から2のいずれかに記載の美白剤を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項4】
請求項1から2のいずれかに記載の美白剤を含有することを特徴とする飲食品。

【公開番号】特開2009−242262(P2009−242262A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−88514(P2008−88514)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(591082421)丸善製薬株式会社 (239)
【出願人】(397031784)株式会社琉球バイオリソース開発 (21)
【Fターム(参考)】