説明

美白剤及び皮膚外用剤

【課題】皮膚外用剤に容易に配合でき、美白効果が高い美白剤、及びそれを含有した安定性が良く、肌感触が良好で、及び高い美白作用のある皮膚外用剤を提供する。
【解決手段】マツ科マツ属の球果の抽出物を有効成分とする美白剤、及びそれを有効成分として含有する皮膚外用剤である。好ましくは、さらに、アスコルビン酸又はその誘導体、及びアルブチンから選ばれる一種以上を含有する前記皮膚外用剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美白剤及びそれを含有する皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料等の皮膚外用剤の有効成分として、種々の植物由来の成分が利用されている。例えば、マツ科植物の樹皮の抽出物には、チロシナーゼ活性阻害作用及びマトリックスメタプロテアーゼ活性阻害作用が知られていて化粧料等の皮膚外用剤に利用することが提案されている(特許文献1〜4)。また、特許文献5には、イヌカラマツ抽出物を含有する皮膚外用剤、及び特許文献6には、マツ科の植物又はその溶媒抽出物を含有する皮膚外用剤が、それぞれ提案されているが、特許文献5では、「イヌカラマツ抽出物」とはイヌカラマツの樹皮または根皮の抽出物であることが記載され、及び特許文献6では、好ましい使用部位として幹又は樹皮が例示され、実施例により実際に効果が確認されているのはマツ科植物の樹皮の抽出物についてのみである。また、特許文献7には、マツの抽出物を含有する化粧料等が提案され、その保湿作用が確認されているが、マツのいずれの部位の抽出物であるかについては、記載がない。また、特許文献8には、松等の植物群から少なくとも1種類以上を選択し抽出して得られるクロロゲン酸とパンテトン酸等からなる抽出液と、茶の浸出液、とを配合してなる薬用化粧品が提案され、その美白作用が確認されているが、実際に松のいずれの部位の抽出液を使用したかについては記載がない。
この様に、上記特許文献には、マツ科植物の樹皮、根皮、又は幹の部位の抽出物について、その美白作用等の効能が記載されているものの、マツ科植物の球果の抽出物について、その美白作用等の効能を具体的に示す記載はない。
【特許文献1】特開平7−196640号公報
【特許文献2】特開平10−25238号公報
【特許文献3】特開2003−238425号公報
【特許文献4】特開2003−277223号公報
【特許文献5】特開2000−226323号公報
【特許文献6】特開2004−352658号公報
【特許文献7】特開2001−31521号公報
【特許文献8】特開2003−192529号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、従来、美白作用のある植物抽出物が種々知られているが、充分な美白効果を得るという観点から、実際には、アルブチンやアスコルビン酸及びその誘導体、コウジ酸、エラグ酸などの美白剤が汎用されている。しかし、これらの汎用されている美白剤は美白効果に優れるものの、皮膚外用剤中への配合に制約が多く、これらの美白剤を含有する皮膚外用剤は、経時的に変色もしくは着色、分離、及び結晶析出等の種々の問題が生じ易い。さらに、べたつきがあるなど肌感触について欠点がある。
【0004】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、皮膚外用剤に容易に配合でき、美白効果が高い美白剤、及びそれを含有した安定性が良く、肌感触が良好で、及び高い美白作用のある皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は前記課題を解決するため、マツ科マツ属の球果の抽出物を有効成分とする美白剤、及びそれを含有する皮膚外用剤を提供する。
本発明の美白剤は、メラニン産生抑制能を有する美白剤である。
前記マツ科マツ属の植物の例には、セイヨウアカマツが含まれる。
また、本発明の皮膚外用剤は、他の美白剤を含有していてもよく、その例としては、アスコルビン酸又はその誘導体、及びアルブチンから選ばれる一種以上が好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、水系剤型や乳化剤型等、剤型を選ばずに幅広く皮膚外用剤に容易に配合でき、優れた美白効果を有する美白剤を提供することができる。
また、本発明によれば、優れた美白作用を示すとともに、安定性が良好で、肌感触も良好で、及び高い美白作用のある用皮膚外用剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、「〜」はその前後の数値を含む範囲を意味するものとする。
本発明は、マツ科マツ属の球果の抽出物を有効成分とする美白剤に関する。マツ科マツ属の他の部位の抽出物については、上記した通り、チロシナーゼ活性阻害能が確認されている。しかし、部位によっては、その抽出物の細胞毒性が強いため、そのチロシナーゼ活性阻害能に起因する美白効果を得るのに充分な程度まで、高濃度で配合するのが困難な場合がある。本発明者が鋭意検討した結果、マツ科マツ属の球果の抽出物は、高いメラニン産生抑制能を有し、しかも細胞毒性が低いことを見出した。さらに、マツ科マツ属の球果の抽出物は、べたつき感といった不快な皮膚感触を生じさせることなく、高い美白作用を発揮するので、皮膚に適用される皮膚外用剤への利用に適している。
【0008】
前記マツ科マツ属(Pinus densiflora)植物としては、セイヨウアカマツ(Pinus sylvestris Linne (Pinaceae):別名 ヨーロッパアカマツ)が好ましい。本発明では、マツ科マツ属の球果、所謂まつぼっくりの抽出物を用いる。抽出は一般的な方法に従って行うことができる。具体的には、セイヨウアカマツ等のマツ科マツ属植物の球果を抽出溶媒に所定の時間浸漬することによって調製することができる。所望により加熱又は加圧下で行ってもよい。また、抽出を容易にするために、球果を小片に裁断する、及び粉状に粉砕する等の前処理を行ってもよい。
【0009】
抽出溶媒としては特に限定されないが、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール等の低級一価アルコール;グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の液状多価アルコール;アセトン等のケトン類;エチルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル等のエステル類;等の1種又は2種以上を用いることができる。水、低級一価アルコール、及び液状多価アルコール、並びに水−低級一価アルコール混合液、及び水−液状多価アルコール混合液が好ましい。また、1%程度の尿素を添加した、低級一価アルコール及び液状多価アルコールも好ましい。
【0010】
抽出によって得られた抽出物は、そのまま美白剤として用いることもできるし、適宜の期間そのまま放置し熟成させた後に用いることもできる。必要ならば、本発明の効果に影響のない範囲で、更に、濾過又はイオン交換樹脂等により、脱臭、脱色等の精製処理を施して用いることもできる。又、液体クロマトグラフィー等の分離手段を用い、活性の高い画分を取り出して用いることもできる。
【0011】
前記抽出物は、液状、ペースト状、ゲル状等いずれの形態であってもよい。抽出溶媒を含む液状の抽出物を、減圧乾燥、又は凍結乾燥などにより乾固させて固体状とした後に用いることもできる。また、スプレードライ等により乾燥させて粉末として用いることもできる。
【0012】
また、マツ科マツ属の球果抽出物は、市販されているものもあり、例えば、セイヨウアカマツの球果の抽出物は、「マツカサ抽出液BG」、「ベゲトール水溶性マツ」の商品名で種々提供されているので、これらをそのまま、または処理等した後、本発明の美白剤として利用することもできる。
【0013】
本発明は、本発明の美白剤、即ちマツ科マツ属の球果抽出物、を有効成分として含有する皮膚外用剤にも関する。本発明の皮膚外用剤は、前記球果抽出物による高い美白作用を示すので、皮膚に適用することにより皮膚を白くする又は皮膚の黒化を予防もしくは改善する作用を示す、美白用皮膚外用剤として有用である。前記球果抽出物の皮膚外用剤における含有量は、乾燥固形分に換算して好ましくは0.00001〜1質量%(以下単に「%」で示す)であり、より好ましくは0.0001〜0.1%である。この範囲内であれば、前記抽出物を安定に配合することができ、かつ高い美白効果を発揮することができる。又、溶液として抽出物を使用する場合は、溶質である乾燥固形分の含有量が上記範囲内であれば、その抽出液濃度は何ら限定されるものではない。
【0014】
本発明の皮膚外用剤は、本発明の美白剤とともに、他の美白剤を含有していてもよい。他の美白剤の例には、アスコルビン酸又はその誘導体、アルブチン、リノール酸、ビタミンE及びその誘導体、グリチルリチン酸及びその誘導体、トラネキサム酸、胎盤抽出物、カミツレ抽出物、カンゾウ抽出物、エイジツ抽出物、オウゴン抽出物、海藻抽出物、クジン抽出物、ケイケットウ抽出物、ゴカヒ抽出物、コメヌカ抽出物、小麦胚芽抽出物、サイシン抽出物、サンザシ抽出物、サンペンズ抽出物、シラユリ抽出物、シャクヤク抽出物、センプクカ抽出物、大豆抽出物、茶抽出物、糖蜜抽出物、ビャクレン抽出物、ブドウ抽出物、ホップ抽出物、マイカイカ抽出物、モッカ抽出物、ユキノシタ抽出物等が含まれる。中でも、他の美白剤としては、アスコルビン酸又はその誘導体、アルブチンから選ばれる一種以上が好ましい。これらの美白剤は、高い美白効果を奏するが、一方、高濃度配合が経時安定性及び使用感の点で困難な場合がある。本発明の美白剤と併用することで、経時安定性及び使用感を損なうことなく、従来の美白用皮膚外用剤の美白効果以上の美白効果を得ることができる。前記他の美白剤と本発明の美白剤との配合比(他の美白剤/本発明の美白剤)は、質量比で3000:1〜1:3000であるのが好ましく、より高い美白効果が得られる点から300:1〜1:300であるのがより好ましい。
【0015】
また、本発明の皮膚外用剤を調製するにあたり、本発明の効果を損なわない範囲で他の有効成分、例えば、老化防止効果、又は紫外線暴露によるシワ形成抑効果等を奏する他の有効成分、を配合してもよい。より具体的には、紫外線防御剤、抗菌剤、抗炎症剤、細胞賦活剤、活性酸素除去剤、保湿剤などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。
【0016】
紫外線防御剤としては、例えば、パラメトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−硫酸ナトリウム、4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、2−フェニル−ベンズイミダゾール−5−硫酸、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0017】
抗菌剤としては、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル、塩化ベンザルコニウム、フェノキシエタノール、イソプロピルメチルフェノール等が挙げられる。
【0018】
抗炎症剤は日焼け後の皮膚のほてりや紅斑等の炎症を抑制する作用を有しており、例えば、イオウ及びその誘導体、グリチルリチン酸及びその誘導体、グリチルレチン酸及びその誘導体、アルテア抽出物、アシタバ抽出物、アルニカ抽出物、インチンコウ抽出物、イラクサ抽出物、オウバク抽出物、オトギリソウ抽出物、カミツレ抽出物、キンギンカ抽出物、クレソン抽出物、コンフリー抽出物、サルビア抽出物、シコン抽出物、シソ抽出物、シラカバ抽出物、ゲンチアナ抽出物等が挙げられる。
【0019】
細胞賦活剤は肌荒れの改善等の目的で用いられ、例えば、カフェイン、鶏冠抽出物、貝殻抽出物、貝肉抽出物、ローヤルゼリー、シルクプロテイン及びその分解物又はそれらの誘導体、ラクトフェリン又はその分解物、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸等のムコ多糖類またはそれらの塩、コラーゲン、酵母抽出物、乳酸菌抽出物、ビフィズス菌抽出物、醗酵代謝抽出物、イチョウ抽出物、オオムギ抽出物、センブリ抽出物、タイソウ抽出物、ニンジン抽出物、ローズマリー抽出物、グリコール酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸等が挙げられる。
【0020】
活性酸素除去剤は、過酸化脂質生成抑制等の作用を有しており、例えば、スーパーオキサイドディスムターゼ、マンニトール、クエルセチン、カテキン及びその誘導体、ルチン及びその誘導体、ボタンピ抽出物、ヤシャジツ抽出物、メリッサ抽出物、羅漢果抽出物、レチノール及びその誘導体、カロチノイド等のビタミンA類、チアミンおよびその誘導体、リボフラビンおよびその誘導体、ピリドキシンおよびその誘導体、ニコチン酸およびその誘導体等のビタミンB類、トコフェロール及びその誘導体等のビタミンE類、ジブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソール等が挙げられる。
【0021】
保湿剤としては、例えば、エラスチン、ケラチン等のタンパク質またはそれらの誘導体、加水分解物並びにそれらの塩、グリシン、セリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、テアニン等のアミノ酸及びそれらの誘導体、ソルビトール、エリスリトール、トレハロース、イノシトール、グルコース、蔗糖およびその誘導体、デキストリン及びその誘導体、ハチミツ等の糖類、D−パンテノール及びその誘導体、尿素、リン脂質、セラミド、オウレン抽出物、ショウブ抽出物、ジオウ抽出物、センキュウ抽出物、ゼニアオイ抽出物、タチジャコウソウ抽出物、ドクダミ抽出物、ハマメリス抽出物、ボダイジュ抽出物、マロニエ抽出物、マルメロ抽出物等が挙げられる。
【0022】
また、本発明の皮膚外用剤には、本発明の美白剤以外の任意の成分を配合することができる。そのような成分としては、例えば、アミノ酸、脂質、糖、ホルモン、酵素、核酸などの生理活性物質等を挙げることができるが、これらに限定されることはない。また、本発明の効果を損なわない範囲で、化粧料や医薬部外品、皮膚外用剤等の製造に通常使用される成分、例えば、水(精製水、温泉水、深層水等)、油剤、界面活性剤、金属セッケン、ゲル化剤、粉体、アルコール類、水溶性高分子、皮膜形成剤、樹脂、包接化合物、香料、消臭剤、塩類、pH調整剤、清涼剤、植物・動物・微生物由来の抽出物、血行促進剤、収斂剤、抗脂漏剤、キレート剤、角質溶解剤、酵素、ホルモン類、他のビタミン類等を必要に応じて用いることができる。
【0023】
本発明の皮膚外用剤は、パウダー、パウダーファンデーション等の粉体;石けん、リップスティック等の固体;クリーム、乳液、クリームファンデーション等の乳化物;化粧水、美容液等の液体;など、種々の形態の化粧料組成物であるのが好ましい。但し、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。なお、以下「部」とは、特に断らない限り、「質量部」を意味する。
【0025】
[例1:セイヨウアカマツ球果の抽出物の調製]
セイヨウアカマツの球果を細切し、水−エチルアルコールの混合液(エチルアルコールを50vol%含む)を用い抽出し、得られた抽出液を乾燥させて粉末状にしてセイヨウアカマツ球果の抽出物を得た。
【0026】
[例2(比較例用):シベリア落葉松(球果以外の部位)抽出物の調製]
シベリア落葉松の辺材部の形成層及び木部について、例1と同様に抽出処理し、シベリア落葉松(球果以外の部位)抽出物を得た。
【0027】
[例3:細胞培養によるメラニン生成抑制効果(白色化率)及び細胞生育率試験]
マウス由来のB16メラノーマ培養細胞を使用し、上記で調製したセイヨウアカマツ球果抽出物について、メラニン生成抑制効果及び細胞生育率を調べた。
具体的には、2枚の6穴プレートに10vol/vol%FBS含有MEM培地を適量とり、B16メラノーマ細胞を播種し、37℃、二酸化炭素濃度5%中にて静置した。翌日、例1で調製したセイヨウアカマツ球果抽出物を、培地に対してその最終濃度が0μg/mL(対照)、40μg/mL、80μg/mL、120μg/mL、160μg/mL、200μg/mLとなるように添加し、混和した。培養5日目に培地を交換し、再度検体調製液を添加した。翌日、培地を除き、1枚のプレートについて、細胞をリン酸緩衝液にて洗浄した後、回収し、B16メラノーマ培養細胞の白色化度を以下の基準にて評価した。なお、比較対照の陽性コントロールとして美白効果が既知であるコウジ酸を用いた。
(判定基準)
++:コウジ酸200ug/mLを添加した試料と同程度の美白効果を示す。
+:コウジ酸100ug/mLを添加した試料と同程度の美白効果を示す。
±:コウジ酸50ug/mLを添加した試料と同程度の美白効果を示す。
−:美白効果なし。
n.d.:細胞生育率が低く、判定できず。
【0028】
残りの1枚のプレートについて、細胞をホルマリン固定後、1w/vol%クリスタルバイオレット溶液に添加し染色した。各検体濃度に対する細胞生育率(%)をモノセレーター(オリンパス社製)で測定した。
結果を下記表に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
表1の結果から、例1で調製したセイヨウアカマツ球果抽出物は、「++」という特筆すべき高い美白作用を示すとともに、その高い美白作用を示す濃度において細胞生育率の低下が少ないという、優れた美白剤であることを理解できる。
一方、例2で調製したシベリア落葉松抽出物を添加した試料については、いずれも細胞生育率が低下し過ぎて、美白効果を判定できなかった。
【0031】
[例4:セイヨウアカマツ球果抽出液の調製]
セイヨウアカマツの球果10kgを細切し、1,3-ブチレングリコールを50vol%含む水−1,3-ブチレングリコール混合液 約70Lを加え、加熱抽出した後、ろ過して、固形物を除去した。ろ液を冷所に3日間以上放置して熟成させ、この工程で生じるオリや沈殿をろ過して除去し、さらに、1,3-ブチレングリコールを50vol%含む水−1,3-ブチレングリコール混合液を追加して、セイヨウアカマツ球果の抽出液約100kgを得た。この抽出液におけるセイヨウアカマツ球果抽出物の含有量は、乾燥固形分で0.8%であった。
【0032】
[例5:化粧水1の調製]
下記表に示す組成の化粧水サンプルをそれぞれ調製した。
(製法)
A.下記表中の成分No.1〜8を混合溶解する。
B.下記表中の成分No.9〜17を混合溶解する。
C.BにAを加え、混合し化粧水を得る。
【0033】
(評価)
調製した各化粧水について、以下の評価を行った。結果を下記表中に示す。
美白効果(白さ、くすみ、しみ等全体観察)に関する評価:
各サンプルを15名ずつに、毎日朝晩2回、顔面に塗布してもらい、1ヶ月間連用した後に、肌状態を自己観察してもらい、下記判断基準で美白効果を評価した。
有効 :使用前に比べかなり改善された。
やや有効:使用前に比べ改善された。
変化なし:使用前に比べ変わらない。
悪化 :使用前に比べ悪化した。
さらに、被検者の評価結果を統計し、各サンプルについて以下の基準で美白効果を評価した。
◎:有効、やや有効の合計人数が12名以上
○:有効/やや有効の合計人数が8〜11名
△:有効/やや有効の合計人数が5〜7名
×:有効/やや有効の合計人数が4名以下
【0034】
べたつきに関する評価:
専門の官能パネル員 10名により、各サンプルを実際に皮膚に適用し、そのベタツキ感を、以下の基準で評価した。
ベツツキを全く感じない。 5点
ベツツキをほとんど感じない。 4点
ベツツキをやや感じるが気にならない。 3点
ベタツキを感じ、やや気になる。 2点
ベタツキをかなり感じる。 1点
さらに、パネル員の評価結果を統計し、各サンプルについて以下の基準でべたつき感評価した。
◎:10人の平均点が、4点以上
○:10人の平均点が、3点を超え4点未満
△:10人の平均点が、2点を超え3点以下
×:10人の平均点が、2点以下
【0035】
安定性に関する評価:
各サンプルを2個用意しそれぞれ、40℃及び5℃の雰囲気下に1ヶ月保管した後、各サンプルの外観(着色、変色、変臭、沈殿、結晶析出等の外観変化)を目視にて観察し、以下の基準で評価した。
◎:全く変化が見られない。
○:わずかに変化が見られるが問題のない程度。
△:変化がみられる、やや問題となる。
×:大きな変化が見られ、問題である。
【0036】
【表2】

【0037】
本発明品1〜5は、比較品1〜3に比べ、美白効果、べたつきのなさ、安定性の何れの評価においても優れたものであった。
【0038】
[例6:化粧水2の調製]
(製法)
A.下記成分(1)〜(7)を混合溶解する。
B.下記成分(8)〜(11)を混合溶解する。
C.AにBを加え混合し、化粧水を得た。
(成分) %
(1)クエン酸 0.05
(2)クエン酸ナトリウム 0.2
(3)ピロリドンカルボン酸ナトリウム(50%)液 0.5
(4)グリセリン 3.0
(5)1,3−ブチレングリコール 8.0
(6)セイヨウアカマツ球果抽出液*1 0.05
(7)精製水 残量
(8)エチルアルコール 10.0
(9)香料 適量
(10)防腐剤 適量
(11)モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)
ソルビタン 0.5
*1:例4で調製した抽出液
【0039】
調製した化粧水は、べたつきもなく、みずみずしい肌感触を有し、美白効果に優れ、変臭、変色、沈殿などもなく安定性も良好なものであった。
【0040】
[例7:乳液の調製]
(製法)
A.下記成分(1)〜(10)を加熱溶解し、70℃に保つ。
B.下記成分(11)〜(16)を加熱溶解し、70℃に保つ。
C.AにBを加え乳化し、更に下記成分(17)を加え混合する。
D.Cを冷却し、下記成分(18)を加え混合し、乳液を得る。
(成分) %
(1)ステアリン酸 1.0
(2)セタノール 0.5
(3)親油型モノステアリン酸グリセリン 0.5
(4)流動パラフィン 2.0
(5)スクワラン 3.0
(6)ホホバ油 3.0
(7)パルミチン酸セチル 0.2
(8)防腐剤 適量
(9)モノステアリン酸ソルビタン 0.3
(10)モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)
ソルビタン 0.5
(11)トリエタノールアミン 0.5
(12)1,3−ブチレングリコール 15.0
(13)グリセリン 3.0
(14)ポリエチレングリコール6000 0.5
(15)セイヨウアカマツ球果抽出液*1 0.1
(16)精製水 残量
(17)カルボキシビニルポリマー1%溶液 8.0
(18)香料 適量
*1:例4で調製した抽出液
【0041】
調製した乳液は、べたつきもなく、なめらかな肌感触を有し、美白効果に優れ、変臭、変色、分離などもなく安定性も良好なものであった。
【0042】
[例8:クリームの調製]
(製法)
A.下記成分(1)〜(13)を加熱溶解し、70℃に保つ。
B.下記成分(14)〜(19)を加熱溶解し、70℃に保つ。
C.AにBを加え乳化し、更に下記成分(20)を加え混合する。
D.Cを冷却し、下記成分(21)を加え混合し、乳液を得る。
(成分) %
(1)ステアリン酸 2.5
(2)セタノール 2.5
(3)親油型モノステアリン酸グリセリン 2.0
(4)ワセリン 2.0
(5)ジペンタエリトリット脂肪酸エステル*1 2.0
(6)ミリスチン酸イソトリデシル 5.0
(7)流動パラフィン 8.0
(8)スクワラン 5.0
(9)ミツロウ 1.0
(10)パルミチン酸セチル 2.0
(11)セスキオレイン酸ソルビタン 0.5
(12)モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)
ソルビタン 1.5
(13)防腐剤 適量
(14)トリエタノールアミン 1.2
(15)1,3−ブチレングリコール 8.0
(16)グリセリン 2.0
(17)ポリエチレングリコール20000 0.5
(18)セイヨウアカマツ球果抽出液*2 1.0
(19)精製水 残量
(20)カルボキシビニルポリマー1%水溶液 10.0
(21)香料 適量
*1:コスモール168AR(日清オイリオグループ社製)
*2:例4で調製した抽出液
【0043】
調製したクリームは、べたつきもなく、なめらかでコクのある肌感触を有し、美白効果に優れ、変臭、変色などもなく安定性も良好なものであった。
【0044】
[例9:美容液の調製]
(製法)
A.下記成分(1)〜(8)を混合溶解する。
B.下記成分(9)〜(17)を混合溶解する。
C.BにAを加え混合し、美容液を得る。
(成分) %
(1)トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 0.1
(2)メドウホーム油 0.05
(3)ホホバ油 0.05
(4)防腐剤 適量
(5)香料 適量
(6)モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)
ソルビタン 0.5
(7)イソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化
ヒマシ油(50E.O.) 1.5
(8)エチルアルコール 5.0
(9)グリセリン 4.0
(10)ジプロピレングリコール 8.0
(11)1,3−ブチレングリコール 8.0
(12)乳酸ナトリウム 0.5
(13)ピロリドンカルボン酸ナトリウム(50%)液 0.5
(14)セイヨウアカマツ球果抽出液*1 0.5
(15)ヒドロキシエチルセルロース 0.08
(16)アルギン酸ナトリウム 0.05
(17)精製水 残量
*1:例4で調製した抽出液
【0045】
調製した美容液は、べたつきもなく、マイルドでなめらかな肌感触を有し、美白効果に優れ、変臭、変色、沈殿などもなく安定性も良好なものであった。
【0046】
[例10:パックの調製]
(製法)
A.下記成分(1)〜(6)を加熱溶解する。
B.下記成分(7)〜(11)を混合溶解する。
C.Aを冷却後、Bを加え混合し、パックを得る。
(成分) %
(1)ポリビニルアルコール 12.0
(2)メチルセルロース 0.1
(3)グリセリン 3.0
(4)1,3−ブチレングリコール 5.0
(5)セイヨウアカマツ球果抽出物*1 0.5
(6)精製水 残量
(7)香料 適量
(8)防腐剤 適量
(9)トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 0.1
(10)モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)
ソルビタン 1.0
(11)エチルアルコール 13.0
*1:例4で調製した抽出液
【0047】
調整したパックは、肌に塗布すると適度な緊張感があり、パックを剥がしたあとはべたつきもなく、みずみずしいものであり、美白効果に優れ、変臭、変色、分離などのなく安定性も良好なものであった。
【0048】
[例11:リキッドファンデーション(O/W型)]
(製法)
A.下記成分(1)〜(7)を加熱溶解する。
B.Aに下記成分(8)〜(11)を加え、均一に混合し、70℃に保つ。
C.下記成分(12)〜(16)を加熱溶解し、70℃に保つ。
D.CにBを加えて乳化する。
E.Dを冷却後、下記成分(17)を加え混合し、リキッドファンデーション(O/W型)を得た。
(成分) %
(1)ステアリン酸 2.0
(2)セタノール 0.5
(3)ベヘニルアルコール 1.0
(4)ワセリン 2.5
(5)流動パラフィン 5.0
(6)自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 1.0
(7)防腐剤 適量
(8)酸化チタン 6.0
(9)着色顔料 4.0
(10)マイカ 2.0
(11)タルク 4.0
(12)カルボキシメチルセルロース 0.2
(13)ベントナイト 0.4
(14)セイヨウアカマツ球果抽出液*1 0.1
(15)1,3−ブチレングリコール 8.0
(16)精製水 残量
(17)香料 適量
*1:例4で調製した抽出液
【0049】
調製したリキッドファンデーションは、伸びひろがりが良く、べたつきもなく、仕上がりも美しく、美白効果に優れ、変臭、分離などもなく安定性も良好なものであった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、皮膚外用剤に容易に配合でき、美白効果が高い美白剤、及びそれを含有した安定性が良く、肌感触が良好で、及び高い美白作用のある皮膚外用剤を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マツ科マツ属の球果の抽出物を有効成分とする美白剤。
【請求項2】
メラニン産生抑制能を有することを特徴とする請求項1に記載の美白剤。
【請求項3】
前記球果が、セイヨウアカマツの球果である請求項1又は2に記載の美白剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の美白剤を有効成分として含有する皮膚外用剤。
【請求項5】
さらに、マツ科マツ属の球果の抽出物以外の美白剤を含有する請求項4に記載の皮膚外用剤。
【請求項6】
マツ科マツ属の球果の抽出物以外の美白剤がアスコルビン酸又はその誘導体、及びアルブチンから選ばれる一種以上である請求項5に記載の皮膚外用剤。
【請求項7】
セイヨウアカマツの球果の抽出物を含有する美白用皮膚外用剤。

【公開番号】特開2009−256314(P2009−256314A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−325423(P2008−325423)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】