説明

美白剤

【課題】安全性が高く、皮膚に対して優れた美白効果を有する美白剤及び、この美白剤を配合した飲食品、飼料、化粧品の提供。
【解決手段】炭酸及び/又は重炭酸−金属−LF類の複合体、その複合体の分解物及び、炭酸及び/又は重炭酸−金属−LF類分解物の複合体を有効成分とする美白剤及び、これらを配合した飲食品、飼料、化粧品。炭酸及び/又は重炭酸−金属−LF類の複合体、その複合体の分解物及び、炭酸及び/又は重炭酸−金属−LF類分解物の複合体は日常的に摂取しても安全性が高く、また優れた美白効果を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚の美白効果に優れ、シミ、ソバカス等の予防及び治療に有用な美白剤に関する。本発明はさらにこの美白剤を配合した飲食品や飼料、化粧品、医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の色は主にメラニンやヘモグロビン、カロチノイド等の着色成分の表皮及び真皮内における種類や量によって決まるが、これらは様々な外的・内的因子によって制御されている。また、メラニン色素は皮膚において主にメラノサイトによって合成され、紫外線刺激、ホルモン分泌や周囲の角化細胞から放出される刺激因子によって活性化される。メラニン色素の主な役割は紫外線による皮膚障害を緩和することにあるが、過剰なメラニン合成等の代謝異常は局所的な色素沈着、いわゆるシミ、ソバカス等を引き起こし、美容上の大きな問題となっている。皮膚への色素沈着を改善する方法としては、メラノサイトへの選択的な毒性やメラノサイト内のメラニン生成経路の抑制など、メラニン生成自体を抑制する方法と、既に生成されたメラニンに対して還元や排出を促進する方法が挙げられる。一般的に、美白作用物質としては、還元作用を有するL−アスコルビン酸及びその誘導体が広く用いられているが、十分な美白効果は得られていない。また、メラニン合成酵素であるチロシナーゼの阻害物質であるハイドロキノン、アルブチン、コウジ酸、甘草エキス、プラセンタエキス等も美白効果を目的として用いられるが、これらの物質には安定性や安全性等の問題がある。このような背景から、安全で日常的な摂取及び塗布が可能であり、なおかつ優れた美白効果を有する美白剤の開発が望まれている。
【0003】
ラクトフェリン(以下、LFと表記)類は、哺乳類の乳等の分泌液から分離される鉄結合性タンパク質であり、鉄吸収促進作用、抗炎症作用、過酸化脂質生成抑制作用、免疫系の制御作用等様々な生理機能を有していることが報告されいる。また、これらLF類の生理機能を利用し、様々な飲食品や飼料、化粧品等が開発されている。一方、鉄だけでなく、各種の金属とLF類との結合性についても研究され、複数種の金属をLF類に結合させる方法や、それを用いたミネラル補給用医薬及び飲食品等も開発されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は安全性が高く、皮膚に対して優れた美白効果を有する美白剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、安全で日常的な摂取及び塗布が可能であり、なおかつ優れた美白効果を有する素材の探求を目的として鋭意研究を行った結果、炭酸及び/又は重炭酸−金属−LF類の複合体、その複合体の分解物及び、炭酸及び/又は重炭酸−金属−LF類分解物の複合体に優れた美白効果があることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
本発明の美白剤の有効成分である炭酸及び/又は重炭酸−金属−LF類の複合体は、特許第2884045号公報、特許第3223958号公報等に記載されている方法により製造することができる。例えば、鉄、銅、亜鉛、マンガン、コバルト、ニッケル及びアルミニウム等の金属、単一又は複数種の金属を含む溶液に、炭酸イオン、重炭酸イオン、又は炭酸イオン及び重炭酸イオンを含有する溶液、LF類を含む溶液を加えて混合することにより調製することができる。
【0007】
本発明におけるLF類とは、一般にトランスフェリンファミリーと呼ばれる鉄結合性タンパク質であり、ヒトやウシ等、哺乳類の乳等の分泌液から分離されるLFや、血液や臓器等から分離されるトランスフェリン、卵等から分離されるオボトランスフェリン等を使用することができる。これらのLF類については、既に大量に調製する方法がいくつも知られており、どのような方法で調製されたLF類であっても良い。また、LF類は完全に単離されている必要はなく、他の成分が含まれていても構わない。さらに、遺伝子操作により、微生物、動物細胞、トランスジェニック動物等から生産されたLF類を使用することも可能である。
【0008】
また、本発明の美白剤の有効成分である炭酸及び/または重炭酸−金属−LF類分解物の複合体は、炭酸イオン及び/又は重炭酸イオンを含有する溶液と、単一又は複数種の金属を含む溶液と、LF類分解物を含む溶液とを混合することにより調製することができる。LF類分解物とは、LF類をトリプシン、ペプシン、キモトリプシン等の蛋白分解酵素により、あるいは、酸やアルカリにより分解したものである。これらは、分子量 1,000Da以上70,000Da以下程度の分解物が好適である。さらに、炭酸及び/又は重炭酸−金属−LF類複合体分解物は、炭酸イオン及び/又は重炭酸イオンを含有する溶液、1種または複数種の金属を含む溶液にLF類を含む溶液を加えて混合することにより調製した、炭酸及び/又は重炭酸−金属−LF複合体をトリプシン、ペプシン、キモトリプシン等の蛋白分解酵素により、あるいは、酸やアルカリにより分解することにより調製することができる。
【0009】
本発明において使用することができる金属としては、塩化第二鉄、グルコン酸銅、グルコン酸亜鉛、塩化マンガン(II)、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化アルミニウム等を使用することができ、また、各種金属の硫酸塩や燐酸塩等を使用することもできる。また、これらの金属化合物はヘム鉄等の有機化合物を使用することもできる。そして、添加する金属量は、LF類1Mに対し、それぞれの金属イオンが好ましくは3M以上である。添加する金属の一種類の量が1000Mを越えると、製造中あるいは保存中に沈澱が生じたり、完全に結合せずに金属がイオンの状態で残存したりする。
【0010】
また、本発明において使用することができる炭酸及び/又は重炭酸を含む溶液としては、炭酸水、重炭酸アンモニウム溶液、重炭酸ナトリウム溶液、重炭酸カリウム溶液、炭酸ナトリウム溶液、炭酸カルシウム溶液等であり、これらの溶液を混合して使用しても良い。また、これらの溶液には、その他の成分、例えば、糖質、蛋白質、脂肪等が含まれていても構わない。
【発明の効果】
【0011】
本発明の美白剤はこれらを経皮及び経口摂取することにより、優れた美白効果が得られることに加え、摂取しても安全であるといえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の美白剤は、常法により錠剤、カプセル剤、顆粒剤、懸濁剤、散剤、粉剤、シロップ剤、ドリンク剤、外用剤等に製剤化して用いることが出来る。また、栄養剤やヨーグルト、乳飲料、ウエハース、パン、スナック菓子、ケーキ、プリン、飲料、発酵乳、麺類、ソーセージ、各種粉乳や離乳食等の飲食品、飼料、化粧品及び医薬に配合して用いることも可能である。また、本発明の美白剤は、単独で美白剤として用いることができることに加え、糖類、脂質、フレーバー、ビタミン、ミネラル、フラボノイド、ポリフェノール等の他の食品や飼料、及び医薬に通常含まれる原材料と共に用いることも可能である。
【0013】
なお、本発明の美白剤は、その優れた美白効果を得るために、成人一人一日あたり2mg以上摂取することが望ましい。そのためには、飲食品、飼料、化粧品及び医薬の形態にもよるが、これらの0.001〜30%(重量/重量)、好ましくは0.1〜10%(重量/重量)含まれることが望ましい。
【0014】
本発明の美白用化粧品としては、乳液、クリーム、ローション、パック等通常の化粧品形態に用いることができる。これらの化粧品は常法により製造し、本発明の美白剤はその製造過程で適宜配合すればよい。また、そのような化粧品を原材料として、化粧品を製造することも可能である。化粧品における本発明の美白剤の配合量は、特に制限はないが、全質量に対して一般に0.001〜30%(重量/重量)、好ましくは0.1〜10%(重量/重量)含有していることが好ましい。
【0015】
以下に、実施例及び試験例を示し、本発明についてより詳細に説明するが、これらは単に例示するのみであり、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
(重炭酸‐金属‐LF類の複合体の調製)
以下の溶液を調製した後、混合して重炭酸−金属−LFの複合体を調製した。
(A溶液)1M重炭酸ナトリウムを含む溶液1L
(B1溶液) 各濃度各金属塩を含む溶液0.2L
但し、1種の金属を含む溶液の場合は、金属塩100mMを含む溶液を調整した。2種の金属を含む溶液の場合は、各金属塩を等量混合し、金属塩 200mMを含む溶液を調製した。また、3種の金属を含む溶液の場合は、各金属塩を等量混合し、金属塩300mMを含む溶液を調製した。
(B2溶液)1mM LF類を含む溶液0.8L
まず、A溶液に、B1溶液とB2溶液を混合したB溶液を加えて撹拌し、各金属が結合したLF類を含む溶液を調製した。そして、この溶液300ml を分子量10kDaの透析膜で超純水に対して透析し、結合しなかった金属を除去して完全に脱塩した後、凍結乾燥し、LF類に結合している各金属量を誘導結合プラズマ発光分光分析器(ICP)で測定した。その結果を表1に示す。この結果、重炭酸−金属−LF類の複合体をLFに対し、90%以上の収率で得ることができた。
【0017】
【表1】

【0018】
表中、2種の金属塩を用いた場合はそのモル比を金属塩の順に記載した。例えば鉄+銅の項の98+62は鉄98mM、銅62mMを示す。以下の表も同様である。なお、本試験で使用した金属塩は、鉄が塩化第二鉄、銅がグルコン酸銅、亜鉛がグルコン酸銅、マンガンが塩化マンガン(II)、コバルトが塩化コバルト、ニッケルが塩化ニッケル、アルミニウムが塩化アルミニウムである。
【実施例2】
【0019】
(重炭酸‐金属‐LF類の複合体分解物の調製)
以下の溶液を調製した後、混合して重炭酸−金属−LF類の複合体分解物を調製した。実施例1で得られた重炭酸−金属−LF類の複合体にトリプシン(TYPEIII、シグマ社製)を1重量%添加し、37℃で24時間加水分解した。その後、さらにトリプシン1重量%を添加し、37℃で24時間加水分解することにより、重炭酸−金属−LF類の複合体を完全に加水分解した。なお、この加水分解反応を行うに際し、反応液を除菌フィルターにより除菌して菌の増殖を抑制し、さらに、トルエン一滴を滴下した状態で反応に供した。次に、分子量 1kDaの透析膜で透析し、凍結乾燥して、分子量が主として55kDa及び30kDa及び10kDaからなり、その他分子量 1kDa以上のペプチドからなる重炭酸−金属−LF類の複合体分解物を得た。重炭酸−金属−LF類の複合体分解物に結合している各金属量をICPで測定した。その結果を表2に示す。
【0020】
【表2】

【実施例3】
【0021】
(重炭酸−金属−LF類分解物の複合体の調製)
以下の溶液を調製した後、混合して重炭酸−金属−LF類分解物の複合体を調製した。
(A溶液)1M重炭酸ナトリウムを含む溶液1L
(B1溶液) 各濃度各金属塩を含む溶液0.2L
但し、1種の金属を含む溶液の場合は、金属塩100mMを含む溶液を調整した。2種の金属を含む溶液の場合は、各金属塩を等量混合し、金属塩 200mMを含む溶液を調製した。また、3種の金属を含む溶液の場合は、各金属塩を等量混合し、金属塩300mMを含む溶液を調製した。
(B2溶液)LF類換算で13.2μM/L となるようLF類分解物を水に溶解した溶液0.8L
なお、LF類分解物は、特許第3223958号公報の参考例1の方法に従って得られたものを使用した。まず、A溶液に、B1溶液とB2溶液を混合したB溶液を加えて撹拌し、各金属が結合したLF類分解物を含む溶液を調製した。そして、この溶液を4℃で90時間、分子量 1kDaの透析膜で超純水に対して透析し、完全に脱塩した後、凍結乾燥し、LF類分解物に結合している各金属量をICPで測定した。その結果を表3に示す。
【0022】
【表3】

【0023】
なお、本試験で使用した金属塩は、鉄が塩化第二鉄、銅がグルコン酸銅、亜鉛がグルコン酸亜鉛、マンガンが塩化マンガン(II)、コバルトが塩化コバルト、ニッケルが塩化ニッケル、アルミニウムが塩化アルミニウムである。
【0024】
[試験例1]
(メラニン生成阻害効果の検証)
実験はマウス悪性黒色腫B16-F0細胞(大日本住友製薬社より購入)を使用した。牛胎児血清を10%含むEagle’s MEM培地(Sigama‐Aldrich社)を使用し、CO2インキュベーター(5% CO2、37℃)内で培養した。B16細胞を細胞濃度3×105個/mlの懸濁液とし、この1mlを培地が9ml入っている100mmディッシュに分注した。翌日、0.01〜1%LF、実施例1における重炭酸−金属−LF複合体(FeLF(70)、FeLF(200)、CuLF(32)、CuLF(160)、Fe+CuLF(98+62))及び金属塩とLFまたはLF分解物をそれぞれを含む培地に交換し、4日間培養した。培養終了後、細胞をはがし、各群の細胞数を5×106個にそろえ遠心した。1M NaOHを500ml添加して溶解した後、その溶解液の405nmにおける吸光度を吸光光度計で測定した。無添加群を100%として各群のメラニン生成阻害率を算出した結果を下の表4に示す。
【0025】
【表4】

【0026】
この結果、LFは0.01%から1%の濃度で濃度依存的にメラニン生成阻害効果が認められた。一方、LFと塩化第二鉄及び塩化銅(II)を同時添加したものではLFと比較して、メラニン生成阻害効果の上昇はほとんど認められなかったが、FeLF(70)、FeLF(200)、CuLF(32)、CuLF(160)、Fe+CuLF(98+62)は0.01%から1%の濃度で濃度依存的にメラニン生成を抑制し、LF単独よりも強い効果が認められた。これは、LF、塩化第二鉄又は塩化銅(II)を単独あるいは同時に用いた場合よりも、本発明の美白剤のほうがより高い美白効果を得ることができることを示している。
【0027】
[試験例2]
(チロシナーゼ活性阻害作用の検証)
チロシナーゼはチロシンからメラニンを合成する経路に関わる酵素であり、チロシンをドーパに、さらにドーパをドーパキノンへ変換する。そこで、本発明の美白剤によるメラニン合成経路に対する抑制効果を検討するため、チロシナーゼ活性阻害作用について検証した。実験は、チロシナーゼ(Sigama‐Aldrich社、マッシュルーム由来)を用い、LF、実施例1の重炭酸−金属−LFの複合体、実施例2の炭酸−金属−LFの複合体分解物、実施例3の重炭酸−金属−LF分解物の複合体又は金属塩を加え37℃で15分間前処理を行った。基質としてドーパ(Sigama‐Aldrich社)を添加し、さらに37℃で5分間反応させた後、476nmにおける吸光度を測定した。無添加の値を100%として阻害率を算出した。重炭酸−金属−LFの複合体を用いた場合の結果を表5に、重炭酸−金属−LFの複合体分解物を用いた場合の結果を表6に、重炭酸−金属−LF分解物の複合体を用いた場合の結果を表7に示す。
【0028】
【表5】

【0029】
【表6】

【0030】
【表7】

【0031】
以上の結果より、LFは0.001%から0.1%の濃度で濃度依存的に酵素活性を抑制することが明らかとなった。重炭酸−金属−LFの複合体はそれぞれ0.001%から0.1%の濃度で濃度依存的に酵素活性を抑制し、金属の種類や数に関係なく複合体を形成させることにより強くなる事がわかった。この効果は重炭酸−金属−LFの複合体分解物及び重炭酸−金属−LF分解物の複合体においても同様であった。また、重炭酸−金属−LFの複合体、その分解物及び重炭酸−金属−LF分解物の複合体の阻害効果はLF単独、LF分解物単独、LFと金属又はLF分解物と金属を共存させた時よりも強く、複合体として用いることでより高い美白効果を得られることが明らかとなった。
【0032】
[試験例3]
(経口投与によるメラニン分解/排出促進効果の検証)
A-1系雌モルモット、体重約400gの背部を除毛し、背部に紫外線(UVA(max.360nm)30.3kJ/m2、UVB(max.312nm)4.8kJ/m2)照射を1回/日、4日行った。その後、生理食塩水をモルモット体重1kgあたり5ml投与する群(A群)、FeLF(70)(実施例1)をモルモット体重1kgあたり2mg/5ml投与する群(B群)、FeLF(70)をモルモット体重1kgあたり5mg/5ml投与する群(C群)、FeLF(70)をモルモット体重1kgあたり10mg/5ml投与する群(D群)の4試験群(各群10匹ずつ)にわけ、それぞれを毎日1回ゾンデで経口投与して4週間飼育した。試料投与開始時と試料投与終了時にモルモット背部皮膚の色素沈着への影響をそれぞれMINOLTA社製の色差計(CHROMA METER CR-200)で測定した。紫外線照射前の明度と照射後の明度の差から照射前の明度を100%として回復率を算出した。その結果を表8に示す。
【0033】
【表8】

【0034】
表8から、FeFL(70)はコントロール群と比較して顕著な明度の改善効果を示し、その効果は濃度依存的であった。この結果から、本発明の美白剤は経口投与により色素沈着予防・改善効果を示すことが明らかとなった。
【0035】
[試験例4]
(塗布によるメラニン分解/排出促進効果の検証)
A-1系雌モルモット、体重約400gの背部を除毛し、背部に紫外線(UVA(max.360nm)30.3kJ/m2、UVB(max.312nm)4.8kJ/m2)照射を1回/日、4日行った。その後、1日2回、4週間被験部位に試料を連続塗布した。被験試料は水、エタノール、プロピレングリコールを2:2:1の比率で混和したものに溶解してを塗布した。コントロール群)(A群)、0.01%FeLF(70)(実施例1)(B群)、0.1%FeLF(70)(C群)、1%FeLF(70)(D群)の4試験群(各群10匹ずつ)にわけた。試料塗布開始時と試料塗布終了時にモルモット背部皮膚の色素沈着への影響をそれぞれMINOLTA社製の色差計(CHROMA METER CR-200)で測定した。紫外線照射前の明度と照射後の明度の差から、照射前の明度を100%として回復率を算出した。その結果を表9に示す。
【0036】
【表9】

【0037】
表9から、FeLF(70)はコントロール群と比較して0.01〜1%の範囲で濃度依存的に効果が認められた。この結果は、本発明の美白剤が直接皮膚に塗布することにより色素沈着予防・改善効果を持つことを示す。
【0038】
以上の結果より、本発明の美白剤は、メラニンの合成経路を阻害すると共に、メラニンの分解、あるいは排出を促す作用を持つことが明らかとなった。また、経口、経皮を問わず美白効果が得られることが明らかとなった。本発明の美白剤はメラニンが関与する複数の系に作用することで、より高い美白効果が得られるものと考えられる。
【実施例4】
【0039】
(美白クリームの製造)
実施例1の美白剤を用い、表10の配合で混合して美白クリームを製造した。
【0040】
【表10】

【実施例5】
【0041】
(美白ローションの製造)
実施例1の美白剤を用い、表11の配合で混合し、美白ローションを製造した。
【0042】
【表11】

【実施例6】
【0043】
(美肌錠剤の製造)
実施例1の美白剤を用い、表12に示す配合で原料を混合後、常法により1gに成型、打錠して本発明の美白錠剤を製造した。なお、この美肌錠剤1g中には、FeLF(70)が100mg含まれていた。
【0044】
【表12】

【実施例7】
【0045】
(美白用液状栄養組成物の調製)
実施例1の美白剤を用い、以下の方法で美白用液状栄養組成物を調製した。実施例1のCuLF(32)50g及びカゼイン1000gを3950gの脱イオン水に溶解し、50℃まで加熱後、TKホモミクサー(TK ROBO MICS;特殊機化工業社製)にて、6000rpmで30分間撹拌混合してCuLF含量50g/5kgのCuLF溶液を得た。このCuLF溶液5.0kgに、カゼイン4.0kg、大豆タンパク質5.0kg、魚油1.0kg、シソ油3.0kg、デキストリン18.0kg、ミネラル混合物6.0kg、ビタミン混合物1.95kg、乳化剤2.0kg、安定剤4.0kg、香料0.05kgを配合し、200mlのレトルトパウチに充填し、レトルト殺菌機 (第1種圧力容器、TYPE: RCS-4CRTGN、日阪製作所製)で121℃、20分間殺菌して、本発明の美白用液状栄養組成物50kgを製造した。なお、この美白用液状栄養組成物には、100gあたり、CuLF(32)が100mg含まれていた。
【実施例8】
【0046】
(美白用ゲル状食品の調製)
実施例2の美白剤を用い、以下の方法で美白用ゲル状食品を調製した。実施例2のCuLF(32)分解物2g及びペクチン10g、乳清タンパク質濃縮物10gを978gの脱イオン水に溶解し、ウルトラディスパーサー(ULTRA-TURRAX T-25;IKAジャパン社製)にて、9500rpmで3分間撹拌混合した。その後、上記の溶液に、ソルビトール80g、酸味料4g、香料4g、乳酸カルシウム2g、水910gを添加して、撹拌混合し、本発明の美白用ゲル状食品を調製した。200mlのチアパックに充填し、85℃、20分間殺菌後、密栓し、本発明の美白用ゲル状食品10袋を調製した。なお、この美白用ゲル状食品には、100gあたりCuLF(32)分解物が100mg含まれていた。
【実施例9】
【0047】
(美白用飲料の調製)
実施例3の美白剤を用い、以下の方法で美白用飲料を調製した。
脱脂粉乳 300gを409gの脱イオン水に溶解した後、実施例3のFeLF分解物(201)1gを溶解し、50℃まで加熱後、ウルトラディスパーサー(ULTRA-TURRAX T-25;IKAジャパン社製)にて、9500rpmで30分間撹拌混合した。マルチトール100g、酸味料 2g、還元水飴20g、香料2g、脱イオン水166gを添加した後、100mlのガラス瓶に充填し、90℃、15分間殺菌後、密栓し、本発明の美白用飲料10本(100ml入り)を調製した。なお、この美白用飲料には、100mlあたりFeLF分解物(201)が100mg含まれていた。
【実施例10】
【0048】
(美白用イヌ用飼料の調製)
実施例1の美白剤を用い、以下の方法で美白用犬用飼料を調整した。実施例1のFeLF(70)0.2kgを99.8kgの脱イオン水に溶解し、50℃まで加熱後、TKホモミクサー(MARK II 160型;特殊機化工業社製)にて、3600rpmで40分間撹拌混合してFeLF含量2g/100gのFeLF溶液を得た。このFeLF溶液10kgに大豆粕12kg、脱脂粉乳14kg、大豆油4kg、コーン油2kg、パーム油23.2kg、トウモロコシ澱粉14kg、小麦粉9kg、ふすま2kg、ビタミン混合物5kg、セルロース2.8kg、ミネラル混合物2kgを配合し、120℃、4分間殺菌して、本発明のイヌ用美肌用飼料100kgを製造した。なお、この美白用イヌ用飼料には、100gあたりFeLF(70)が20mg含まれていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトフェリン類又はその分解物と金属、炭酸及び/又は重炭酸の複合体を有効成分とする美白剤。
【請求項2】
複合体が炭酸イオン及び/又は重炭酸イオンを含有する溶液と、単一あるいは複数種の金属を含む溶液と、ラクトフェリン類又はその分解物を含む溶液とを混合することにより得られる請求項1記載の美白剤。
【請求項3】
ラクトフェリン類と金属、炭酸及び/又は重炭酸の複合体を加水分解した分解物を有効成分とする美白剤。
【請求項4】
複合体がラクトフェリン類又はその分解物1分子当り、単一あるいは複数種の金属が3〜1000分子、炭酸及び/又は重炭酸が15分子以上を含むことを特徴とする複合体である請求項1又は3記載の美白剤。
【請求項5】
金属が鉄、銅、亜鉛、マンガン、コバルト、ニッケル及びアルミニウムの中から選択される1又は2種以上のミネラルである請求項1〜4記載の美白剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の美白剤を配合した飲食品、飼料、化粧品、及び医薬。




【公開番号】特開2008−290975(P2008−290975A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138522(P2007−138522)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(000006699)雪印乳業株式会社 (155)
【Fターム(参考)】